(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023071580
(43)【公開日】2023-05-23
(54)【発明の名称】キャパシタ部品及びキャパシタ部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20230516BHJP
【FI】
H01G4/30 201K
H01G4/30 512
H01G4/30 515
H01G4/30 201L
H01G4/30 201D
H01G4/30 516
H01G4/30 517
H01G4/30 311D
H01G4/30 311F
H01G4/30 311Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022069183
(22)【出願日】2022-04-20
(31)【優先権主張番号】10-2021-0154816
(32)【優先日】2021-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ-メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヨー、ジョン ホーン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ス ビーン
(72)【発明者】
【氏名】リー、キュン リュル
(72)【発明者】
【氏名】ジェオン、ジョン スク
(72)【発明者】
【氏名】セオ、チュン ヒー
(72)【発明者】
【氏名】ヨー、ドン ゲオン
(72)【発明者】
【氏名】コン、ヒュン ジュン
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AC10
5E001AE02
5E001AE03
5E001AE04
5E001AH01
5E001AH05
5E001AH07
5E001AH09
5E001AJ01
5E001AJ03
5E082BC35
5E082BC36
5E082EE04
5E082EE22
5E082EE23
5E082EE26
5E082EE35
5E082FG26
5E082FG54
5E082GG10
5E082LL02
5E082MM24
(57)【要約】 (修正有)
【課題】誘電体層が薄くなっても信頼性を確保するキャパシタ部品及びキャパシタ部品の製造方法を提供する。
【解決手段】キャパシタ部品は、誘電体層110及び内部電極層121、122を含む本体100と、本体100に配置され、内部電極層121、122と連結される外部電極210、220と、を含む。本体100は、内部電極層121、122の境界から誘電体層110に向かう方向に沿って0超30nm以下の領域に配置され、誘電体層110のイオン移動度(ionic mobility)より低いイオン移動度(ionic mobility)を有する耐電圧層をさらに含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の誘電体層、及び前記誘電体層を介して互いに交互に配置された複数の内部電極層を含む本体と、
前記本体に配置され、前記内部電極層と連結される外部電極と、を含み、
前記誘電体層は、
中央部領域、前記中央部領域の上部に配置され、前記内部電極層との境界から前記中央部領域に向かう方向に0超過30nm以下の領域である上部領域、及び前記中央部領域の下部に配置された下部領域を有し、
前記誘電体層の上部領域のイオン移動度(ionic mobility)は、前記誘電体層の中央部領域のイオン移動度(ionic mobility)より低い、キャパシタ部品。
【請求項2】
前記誘電体層の上部領域は、Zn及びInのうち少なくとも一つを含む、請求項1に記載のキャパシタ部品。
【請求項3】
前記誘電体層の上部領域において、Zn及びInのうち少なくとも一つは1at%以上10at%以下含有された、請求項2に記載のキャパシタ部品。
【請求項4】
前記誘電体層は、誘電体セラミック粒子を含み、
前記誘電体層の上部領域の誘電体セラミック粒子の平均サイズは、前記誘電体層の中央部領域の誘電体セラミック粒子の平均サイズより小さい、請求項1から3のいずれか一項に記載のキャパシタ部品。
【請求項5】
前記誘電体層の上部領域の誘電体セラミック粒子の平均サイズは、前記誘電体層の中央部領域の誘電体セラミック粒子の平均サイズに対して20%以上50%以下である、請求項4に記載のキャパシタ部品。
【請求項6】
前記誘電体層は、バリウム(Ba)及びチタン(Ti)を共に含む誘電体セラミック粒子を含み、
前記誘電体層の上部領域は、チタン(Ti)のうち少なくとも一部がスズ(Sn)及びジルコニウム(Zr)のうち少なくとも一つで置換された誘電体セラミック粒子を含む、請求項4に記載のキャパシタ部品。
【請求項7】
前記内部電極層の内部にはセラミック粒子が配置され、
前記内部電極層のセラミック粒子は、スズ(Sn)及びジルコニウム(Zr)のうち少なくとも一つを含む、請求項6に記載のキャパシタ部品。
【請求項8】
前記内部電極層のセラミック粒子は、バリウム(Ba)及びチタン(Ti)をさらに含む、請求項7に記載のキャパシタ部品。
【請求項9】
前記誘電体層の中央部領域の平均厚さは380nm以下である、請求項8に記載のキャパシタ部品。
【請求項10】
前記誘電体層の上部領域は、複数の前記誘電体層のうち少なくとも一つに配置された、請求項1に記載のキャパシタ部品。
【請求項11】
誘電体グリーンシートを形成する段階と、
スパッタリングによりZnO及びIn2O3のうち少なくとも一つを前記誘電体グリーンシートの一面に形成する段階と、
前記誘電体グリーンシートに導電性ペーストを塗布する段階と、を含む、キャパシタ部品の製造方法。
【請求項12】
バリウム(Ba)及びチタン(Ti)を含む誘電体セラミック粒子を有する誘電体グリーンシートを形成する段階と、
導電性粉末、及びバリウム(Ba)及びチタン(Ti)を含むセラミック粒子を含む導電性ペーストを前記誘電体グリーンシートに塗布する段階と、を含み、
前記セラミック粒子は、
チタン(Ti)のうち少なくとも一部がスズ(Sn)及びジルコニウム(Zr)のうち少なくとも一つで置換された組成を有する、キャパシタ部品の製造方法。
【請求項13】
前記導電性ペーストが塗布された前記誘電体グリーンシートを複数積層して積層体を形成する段階と、
前記積層体を焼結して誘電体層及び内部電極層を含む本体を形成する段階と、をさらに含む、請求項11又は12に記載のキャパシタ部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャパシタ部品及びキャパシタ部品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
キャパシタ部品の一つである積層セラミックキャパシタ(Multi-Layered Ceramic Capacitor、MLCC)は、小型でありながらも高容量が保障され、実装が容易であるという利点により、通信、コンピュータ、家電、自動車などの産業に使用される重要なチップ部品であり、特に、携帯電話、コンピュータ、デジタルTVなど、各種電気、電子、情報通信機器に使用される核心受動素子である。
【0003】
一般に、MLCCは、誘電体グリーンシートに内部電極層形成用導電性ペーストをスクリーン印刷し、導電性ペーストが印刷された誘電体グリーンシートを複数積層した後、これを焼結して製造する。導電性ペーストは、一般に、ニッケル(Ni)などの導電性粉末、セラミック粉末、バインダー、及びソルベントなどを互いに混合して作製する。
【0004】
誘電体層の厚さが薄くなるほど酸素空孔等で表されるイオンの移動が容易になって誘電体層が半導体化し、その結果、部品の信頼性が低下するという問題などが発生する可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】日本公開特許第2014-145117号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一例による目的の一つは、誘電体層が薄くなっても信頼性を確保することができるキャパシタ部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面によると、誘電体層及び内部電極層を含む本体と、上記本体に配置され、上記内部電極層と連結される外部電極と、を含み、上記本体は、上記内部電極層の境界から上記誘電体層に向かう方向に沿って0超過30nm以下の領域に配置され、上記誘電体層のイオン移動度(ionic mobility)より低いイオン移動度(ionic mobility)を有する耐電圧層をさらに含むキャパシタ部品が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一側面によるキャパシタ部品は、誘電体層が薄くなっても信頼性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態によるキャパシタ部品の斜視図を概略的に示す図である。
【
図2】
図1のI-I'線に沿った断面図を概略的に示す図である。
【
図3】
図2のAに対するSEM画像を示す図である。
【
図4】他の例によるキャパシタ部品に関するものであって、
図3に対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本出願で使用された用語は、単に特定の実施形態を説明するために使用されたものであって、本発明を限定することを意図するものではない。単数の表現は、文脈上明らかに異なる意味を有さない限り、複数の表現を含む。本出願において、「含む」又は「有する」などの用語は、本明細書上に記載の特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品、又はそれらを組み合わせたものが存在することを指定するものであり、一つ又はそれ以上の他の特徴や数字、段階、動作、構成要素、部品、又はそれらを組み合わせたものの存在又は付加の可能性を予め排除しないものとして理解すべきである。そして、明細書全体において、「上に」とは、対象部分の上または下に位置することを意味するものであり、必ずしも重力方向を基準にして上側に位置することを意味するものではない。
【0011】
なお、「結合」とは、各構成要素間の接触関係において、各構成要素間で物理的に直接接触する場合のみを意味するものではなく、他の構成が各構成要素の間に介在され、その異なる構成に構成要素がそれぞれ接触している場合まで包括する概念として使用する。
【0012】
図面に示された各構成の大きさ及び厚さは説明の便宜上任意に示されているため、本発明は必ずしも示されたものに限定されない。
【0013】
図面において、第1方向はT方向又は厚さ方向、第2方向はL方向又は長さ方向、第3方向はW方向又は幅方向と定義することができる。
【0014】
以下では、本発明の実施形態によるキャパシタ部品及びキャパシタ部品の製造方法を添付の図面を参照して詳細に説明する。また、添付の図面を参照して説明するにあたり、同一又は対応する構成要素については同一の図面符号を付し、これに対する重複説明は省略する。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態によるキャパシタ部品の斜視図を概略的に示す図であり、
図2は、
図1のI-I'線に沿った断面図を概略的に示す図であり、
図3は、
図2のAに対するSEM画像を示す図である。
【0016】
図1~
図3を参照すると、本実施形態によるキャパシタ部品1000は、本体100及び外部電極210、220を含む。本実施形態において、本体100は、誘電体層110、内部電極層121、122、カバー層130及び耐電圧層140を含む。
【0017】
本体100は、本実施形態によるキャパシタ部品1000の外観をなす。本体100の具体的な形状に特に限定はないが、図示のように、本体100は六面体形状又はこれと類似の形状からなることができる。焼結過程で本体100に含まれたセラミック粉末の収縮により、本体100は完全な直線を有する六面体形状ではないが、実質的に六面体形状を有することができる。
【0018】
本体100は、
図1及び
図2を基準にして、厚さ方向Zに互いに相対する第1面101と第2面102、長さ方向Xに互いに相対する第3面103と第4面104、幅方向Yに相対する第5面105及び第6面106を含む。本体100の第3~第6面103、104、105、106のそれぞれは、本体100の第1面101と第2面102を連結する本体100の壁面に該当する。以下では、本体100の両端面(一端面及び他端面)は、本体の第3面103及び第4面104を意味し、本体100の両側面(一側面及び他側面)は、本体の第5面105及び第6面106を意味することができる。また、本体100の一面と他面は、それぞれ本体100の第1面101と第2面102を意味することができる。本体100の一面101は、本実施形態によるキャパシタ部品1000を印刷回路基板等の実装基板に実装する際に、実装面として用いられることができる。
【0019】
本体100は、誘電体層110、及び誘電体層110を間に挟んで交互に配置される第1及び第2内部電極層121、122を含む。誘電体層110、第1内部電極層121及び第2内部電極層122のそれぞれは、複数の層で形成される。以下では、第1及び第2内部電極層121、122間の区別が必要な場合を除き、内部電極層121、122と通称する。したがって、内部電極層121、122と通称された部分に対する説明は、第1及び第2内部電極層121、122に共通して適用することができる。
【0020】
本体100を形成する複数の誘電体層110は焼結された状態であって、隣接する誘電体層110の間の境界は走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を利用せずには確認しにくいほど一体化することができる。
【0021】
誘電体層110を形成する原料は、十分な静電容量が得られる限り特に限定されず、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO3)粉末であってよい。誘電体層110を形成する材料は、チタン酸バリウム(BaTiO3)などのパウダーに本発明の目的に応じて様々なセラミック添加剤、有機溶剤、可塑剤、結合剤、分散剤などを添加することができる。
【0022】
誘電体層110の厚さは400nm以下であってよく、好ましくは380nm以下であってよい。誘電体層110の厚さが400nmを超える場合は、部品全体の厚さを薄型化するのに不利である。さらに、誘電体層110の厚さが400nmを超える場合は、同じ部品の厚さを仮定すると、内部電極層121、122の厚さが薄くならなければならず、これにより内部電極層121、122の連結性が低下して静電容量が減少することができる。
【0023】
誘電体層110の厚さは、キャパシタ部品を幅方向Yの中央部で切断したXZ断面(cross-section)をスキャンした光学画像又はSEM画像を用いて測定することができる。一例として、誘電体層110の厚さは、上記画像に示される誘電体層110のうちいずれか一つを選択し、選択された一つの誘電体層110のZ方向に沿った数値(dimension)をX方向に沿って複数回測定し、これを算術平均したものを意味することができる。このようなX方向に沿った複数回測定は、X方向に沿って等間隔で行われることができるが、これに限定されるものではない。また、誘電体層110の厚さは、上記画像に示された複数の誘電体層110のそれぞれについて前述した方法で各誘電体層110の厚さを算出し、これを上記画像に示された誘電体層110の総数で除したものを意味することができる。
【0024】
本体100の上部及び下部、すなわち、厚さ方向(Z方向)の両端部にはカバー層130が配置されることができる。カバー層130は、外部衝撃に対してキャパシタ部品の信頼性を維持する役割を果たすことができる。カバー層130は、誘電体層110を形成するための材料、又は誘電体層110を形成するための材料と異なる材料を用いて形成することができる。例として、後者の場合、誘電体層110を形成するための材料と、カバー層130を形成するための材料とは、材料内のセラミック粒子の組成、大きさ、含量及び分散の度合いのうち少なくとも一つが互いに異なるか、又は材料内の副成分の組成、大きさ、含量及び分散の度合いのうち少なくとも一つが異なることができる。
【0025】
内部電極層121、122は誘電体層110と交互に配置され、第1及び第2内部電極層121、122を含むことができる。第1及び第2内部電極層121、122は、誘電体層110を間に挟んで互いに相対するように交互に配置され、本体100の第3及び第4面103、104にそれぞれ露出することができる。内部電極層121、122は、全体として板状の形態と類似の形態を有することができる。
【0026】
内部電極層121、122は、それぞれ本体100の長さ方向Xの両端面である第3面103及び第4面104に交互に露出し、第1及び第2外部電極210、220と連結される。すなわち、第1内部電極層121は、本体100の第3面103に露出して第1外部電極210と連結され、本体100の第4面104に露出しないため第2外部電極220とは連結されない。第2内部電極層122は、本体100の第4面104に露出して第2外部電極220と連結され、本体100の第3面103に露出しないため第1外部電極210とは連結されない。したがって、第1内部電極層121は本体100の第4面104から一定距離離隔し、第2内部電極層122は本体100の第3面103から一定距離離隔する。このとき、内部電極層121、122は、中間に配置された誘電体層110によって互いに電気的に分離することができる。
【0027】
内部電極層121、122は、例として、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、ニッケル(Ni)及び銅(Cu)のうち一つ以上の導電体を含むことができる。一例として、内部電極層121、122は、ニッケル(Ni)を含む導電性粉末、バインダー及びソルベント等を含む導電性ペーストを誘電体グリーンシートに積層した後、これを焼結して形成することができる。したがって、内部電極層121、122はニッケル(Ni)を含むことができる。
【0028】
内部電極層121、122のそれぞれの厚さは10nm以上500nm以下であってよい。内部電極層121、122の厚さが10nm未満の場合は、内部電極層121、122の連結性が低下して静電容量が減少することができる。内部電極層121、122の厚さが500nmを超える場合は、同じ大きさの部品を基準にして、誘電体層110の厚さが薄く形成され、内部電極層121、122間の電気的絶縁を図りにくくなる可能性がある。
【0029】
内部電極層121、122の厚さは、キャパシタ部品を幅方向Yの中央部で切断したXZ断面(cross-section)をスキャンした光学画像又はSEM画像を用いて測定することができる。一例として、内部電極層121、122の厚さは、上記画像に示される内部電極層121、122のいずれか一つを選択し、選択された一つの内部電極層のZ方向に沿った数値(dimension)をX方向に沿って複数回測定し、これを算術平均したものを意味することができる。このようなX方向に沿った複数回の測定は、X方向に沿って等間隔で行われることができるが、これに限定されるものではない。また、内部電極層121、122の厚さは、上記画像に示された複数の内部電極層121、122のそれぞれについて前述した方法で各内部電極層121、122の厚さを算出し、これを内部電極層121、122の総数で除したものを意味することができる。
【0030】
内部電極層121、122の内部にはセラミック粒子Cが配置されることができる。セラミック粒子Cは、例として、内部電極層形成のための導電性ペーストに、さらにチタン酸バリウム(BaTiO3)などのセラミック粉末を追加することにより形成されたものであってよい。セラミック粒子Cは、誘電体層110の誘電体と同様にチタン酸バリウム系物質であってよく、この場合、本実施形態によるキャパシタ部品の信頼性が向上することができる。内部電極層121、122内には空隙(void)Vを形成することができる。空隙Vは、導電性ペーストに含まれた導電性粉末の焼結過程における拡散及び再結晶により形成されるか、導電性ペーストに含まれた溶媒等の有機物質が焼結過程で除去されることにより形成されるか、導電性ペーストに含まれたセラミック粉末が焼結過程で、誘電体層110及び/又は後述する耐電圧層140に拡散して形成されるものであってよい。なお、空隙Vは、その大きさが内部電極層121、122の厚さと類似となり、内部電極層121、122を貫通するホールの形態で配置されることができる。上記ホールには、誘電体層110及び/又は耐電圧層140を構成する物質の少なくとも一部が配置されることができる。
【0031】
耐電圧層140は、誘電体層110と内部電極層121、122との間に配置され、誘電体層110のイオン移動度(ionic mobility)より低いイオン移動度(ionic mobility)を有する。一方、本明細書において、耐電圧層140は、内部電極層121、122の厚さ方向の境界から厚さ方向に沿って20nmまでの領域又は30nmまでの領域と定義することができ、当該範囲を超える領域は誘電体層110と定義することができる。さらに、耐電圧層140は、誘電体層の一部として表すことができる。すなわち、前述した誘電体層110を誘電体層の一部である誘電体層の中央部領域と定義し、前述した耐電圧層140を誘電体層の一部である誘電体層の上部領域又は誘電体層の下部領域と定義することができる。以下では、説明の便宜上、耐電圧層140と誘電体層110を別途に区別する。
【0032】
一般に、キャパシタ部品の小型化及び高容量化に伴う誘電体層の厚さは、ますます薄くなるべきであり、部品の高信頼性及びユーザ環境において十分な容量を実現するために誘電体層の組成制御、すなわち、新たな誘電体材料の開発が必要である。さらに、誘電体層の厚さが薄くなるにつれて、相対的に絶縁抵抗特性に優れた粒界の割合が減少し、これにより、酸素空孔(Oxygen Vacancy)に代表されるイオンの移動度(ion mobility)が誘電体層で増加するようになる。隣接した内部電極層の間に介在された誘電体層でイオン移動度が増加する場合、誘電体層への酸素空孔の移動が容易になり、誘電体層が半導体化するという問題が発生する可能性がある。本実施形態の場合、誘電体層110と内部電極層121、122との間に、誘電体層110のイオン移動度(ionic mobility)より低いイオン移動度(ionic mobility)を有する耐電圧層140を配置して、酸素空孔が誘電体層110に移動すること及び/又は誘電体層110の外部に移動することを防止する。耐電圧層140の相対的に低いイオン移動度により、酸素空孔の移動を減少させ、誘電体層110に印加される電界を一次的に相殺することができる。したがって、誘電体層110を薄層化しても部品の信頼性を一定水準担保することができる。
【0033】
図3を参照すると、本発明の一実施形態によるキャパシタ部品1000に適用される耐電圧層140は、亜鉛(Zn)及びインジウム(In)のうち少なくとも一つを含む。
【0034】
例として、本実施形態に適用される耐電圧層140は、誘電体層形成のための誘電体グリーンシートにスパッタリングでZnO及びIn2O3のうち少なくとも一つを含む層を形成し、上記層に内部電極層形成のための導電性ペーストを印刷し、このような誘電体グリーンシートを複数枚積層して積層体を製造し、積層体を焼結することにより製造することができる。ZnO及びIn2O3は、相対的に低い酸素空孔のイオン移動度を有する物質であって、製造工程中で酸素空孔が誘電体層に移動すること及び/又は誘電体層110の外部に移動することを防止することができる。したがって、本実施形態に適用される耐電圧層140には、亜鉛(Zn)及びインジウム(In)のうち少なくとも一つが含有されることができる。
【0035】
耐電圧層140は、内部電極層121、122と誘電体層110間の複数の界面のうち少なくとも一つに配置されることができる。例として、耐電圧層140は、内部電極層121、122と誘電体層110間の複数の界面のそれぞれに配置されることができるが、本発明の範囲がこれに限定されるものではない。
【0036】
耐電圧層140の厚さは10nm以上30nm以下であってよい。耐電圧層140の厚さが10nm未満の場合は、前述した電界相殺効果が僅かである可能性がある。耐電圧層140の厚さが30nmを超える場合は、誘電体層110に印加される有効電界が減少し、容量の実現が困難になる可能性がある。耐電圧層140の厚さは、キャパシタ部品を幅方向Yの中央部で切断したXZ断面(cross-section)をスキャンした光学画像又はSEM画像を用いて測定することができる。一例として、耐電圧層140の厚さは、上記画像に示された耐電圧層140のうちいずれか一つを選択し、選択された一つの耐電圧層140のZ方向に沿った数値(dimision)をX方向に沿って複数回測定し、これを算術平均したものを意味することができる。このようなX方向に沿った複数回の測定は、X方向に沿って等間隔で行われることができるが、これに限定されるものではない。また、耐電圧層140の厚さは、上記画像に示された複数の耐電圧層140のそれぞれについて前述した方法で各耐電圧層140の厚さを算出し、これを耐電圧層140の総数で除したものを意味することができる。
【0037】
本実施形態において、耐電圧層140中の亜鉛(Zn)及びインジウム(In)のうち少なくとも一つは、1at%以上10at%以下にして含有されることができる。上記割合が1at%未満の場合は、耐電圧層140の前述した電界相殺効果が僅かである可能性がある。上記割合が10at%を超える場合は、内部電極層121、122と耐電圧層140間の結合力が低下し、信頼性が低下する可能性がある。
【0038】
一方、耐電圧層140に含まれたZn及びInの存在は、SEM-EDS又はTEM line profile分析によって判定することができる。具体的に、
図3のように、幅方向Yの中央部からとった長さ方向X-厚さ方向Zの断面(XZ cross-section)のうち、内部電極層121、122の厚さ方向の境界から外側に30nmまでの領域において、例として、SEM-EDSを使用すると、当該領域がジルコニウム(Zr)及び/又はインジウム(In)元素を含むことが分かり、その含量も測ることができる。
【0039】
図4は、他の例によるキャパシタ部品に関するものであって、
図3に対応する図である。一方、以下では、
図4を中心に他の例によるキャパシタ部品を説明するに当たり、
図3と相違する耐電圧層140の構成についてのみ説明する。したがって、以下に説明しない耐電圧層140の定義及び厚さなどは、
図3で説明した内容をそのまま適用することができる。
【0040】
図4を参照すると、本発明の他の例による耐電圧層140は、誘電体層110に含まれた誘電体セラミック粒子と類似の組成を有し、且つ耐電圧層140の誘電体セラミック粒子141の平均サイズは、誘電体層110の誘電体セラミック粒子111の平均サイズより小さい。一方、以下では、誘電体セラミック粒子とは、誘電体セラミック結晶粒(グレイン、grain)を意味するものとして使用されるが、本発明の範囲がこれに限定されるものではない。
【0041】
耐電圧層140の誘電体セラミック粒子141の平均サイズは、誘電体層110の誘電体セラミック粒子111の平均サイズに対して20%以上50%以下であってよい。上記割合が20%未満の場合は、耐電圧層140と内部電極層121、122間の結合力及び耐電圧層140と誘電体層110間の結合力が低下し、部品の信頼性が低下する可能性がある。上記割合が50%を超える場合は、グレインバウンダリの割合が低下し、耐電圧層140の前述の電界相殺効果が僅かである可能性がある。
【0042】
ここで、誘電体セラミック粒子111、141の大きさは、キャパシタ部品を幅方向Yの中央部で切断したXZ断面(cross-section)に対するSEM画像又はTEM画像を用いて測定することができる。一例として、耐電圧層140のグレイン141の大きさは、上記画像において内部電極層121、122の厚さ方向の境界から30nmまでの領域である耐電圧層140のうちいずれか一つを選択し、選択された一つの耐電圧層140に示された複数のグレインの全てについて長軸と短軸の数値(dimension)を測定し、これらの数値の50%に該当する値を選択したものであってよい。または、耐電圧層140のグレイン141の大きさは、上記画像に示された複数の耐電圧層140のそれぞれについて前述した方法で各耐電圧層140におけるグレインの大きさを算出し、これを上記画像に示された耐電圧層140の総数で除したものを意味することができる。上述した耐電圧層140の誘電体セラミック粒子141のサイズ測定方法に対する説明は、誘電体層110の誘電体セラミック粒子111のサイズ測定方法にも同様に適用することができる。
【0043】
一例として、耐電圧層140及び誘電体層110のそれぞれは、バリウム(Ba)及びチタン(Ti)を共に含む誘電体セラミックグレインを含み、且つ耐電圧層140は、チタン(Ti)のうち少なくとも一部がスズ(Sn)及びジルコニウム(Zr)のうち少なくとも一つで置換されたBaTi1-x(Sn及び/又はZr)xO3(ここで、xは0.2以上0.5以下)で表される誘電体セラミック粒子を含むことができる。すなわち、耐電圧層140は、BaTiO3のチタン(Ti)の少なくとも一部がスズ(Sn)及びジルコニウム(Zr)のうち少なくとも一つで置換された誘電体セラミックグレインを含むことができる。
【0044】
本例の場合、耐電圧層140が誘電体層110と類似の誘電体セラミックを含み、且つ誘電体セラミックのグレイン141の大きさを誘電体層110のそれより小さくすることにより、耐電圧層140において粒界(grain boundary)の体積分率を誘電体層110における粒界の体積分率より大きくすることができる。粒界はグレイン111、141より相対的に酸素空孔のイオン移動度が低いため、製造工程中で酸素空孔が誘電体層に移動すること及び/又は誘電体層の外部に移動することを防止することができる。ここで、耐電圧層140の誘電体セラミック粒子がBa、Ti、Sn及びZrを含むか否か及びその含量は、幅方向Yの中央部からとった長さ方向X-厚さ方向Zの断面(XZ cross-section)のうち、内部電極層121、122と誘電体層110間の界面領域において、Ba、Ti、Sn、Zrのそれぞれに対するスキャニングを行えば分かる。なお、上記領域がチタン酸バリウムのチタンの一部がSn及び/又はZrで置換された構造であることは、X線回折分析法(X-Ray Diffraction、XRD)によって判断することができる。
【0045】
本実施形態に適用される耐電圧層140は、例として、誘電体層形成のための誘電体グリーンシートに、セラミック粉末及び導電性粉末を含む内部電極層形成用導電性ペーストを印刷し、このような誘電体グリーンシートを複数枚積層して積層体を製造し、積層体を焼結することにより製造することができる。ここで、導電性ペーストに含まれるセラミック粉末は、一部が前述のセラミック粒子Cの形態で内部電極層121、122内に残存し、一部は誘電体層110に拡散して耐電圧層140を形成することができる。セラミック粉末は、バリウム(Ba)及びチタン(Ti)を含むチタン酸バリウム(BaTiO3)のチタン(Ti)のうち一部がスズ(Sn)及びジルコニウム(Zr)のうち少なくとも一つで置換されたものであってよい。限定されない例として、セラミック粉末は、チタン酸バリウムのコアと、スズ(Sn)及び/又はジルコニウム(Zr)を含むシェルとを含む、いわゆるコア-シェル構造の粉末であってよい。ここで、シェルは、チタン酸バリウムのチタンのうち少なくとも一部がスズ(Sn)及び/又はジルコニウム(Zr)で置換されたものであってよい。このようなコア-シェル構造のセラミック粉末は、他の表現として、チタン酸バリウムにスズ(Sn)及び/又はジルコニウム(Zr)がドーピングされたものと表現することができる。
【0046】
外部電極210、220は本体100に配置され、内部電極層121、122と連結される。外部電極210、220は、
図1及び
図2に示すように、本体100の第3及び第4面103、104にそれぞれ配置され、第1及び第2内部電極層121、122とそれぞれ接続された第1及び第2外部電極210、220を含むことができる。
【0047】
第1及び第2外部電極210、220は、本体100の第3及び第4面103、104にそれぞれ配置され、第1及び第2内部電極層121、122と連結された第1及び第2連結部と、第1及び第2連結部から本体100の第1面101に延びる第1及び第2延長部とを含むことができる。第1及び第2延長部は、本体100の第1面101において互いに離隔して配置される。一方、第1及び第2延長部は、本体100の第1面101だけでなく、本体100の第2、第5及び第6面102、105、106のそれぞれに延びることができるが、本発明の範囲がこれに限定されるものではない。すなわち、
図1に示すように、本発明の外部電極210、220のそれぞれは、本体100の5つの面に形成されるnormalタイプであってよいが、これに限定されるものではなく、本体100の2つの面に形成されるLタイプ、本体100の3つの面に形成されるCタイプなどであってよい。
【0048】
外部電極210、220は、金属などのように電気伝導性を有するものであれば、如何なる物質を使用して形成されてもよく、電気的特性、構造的安定性などを考慮して具体的な物質が決定されてよく、さらに多層構造を有してよい。例として、外部電極210、220のそれぞれは、第1層及び第2層を含むことができ、第1層は、導電性金属及びガラスを含む焼結型導電性ペーストを焼結して形成されるか、導電性金属及びベース樹脂を含む硬化型導電性ペーストを硬化して形成されるか、又は気相蒸着で形成されることができる。第2層は、めっき法で第1層に順次形成されたニッケル(Ni)めっき層及びスズ(Sn)めっき層であってよい。
【0049】
一方、本実施形態では、キャパシタ部品1000が2つの外部電極210、220を有する構造を説明しているが、外部電極210、220の個数や形状などは内部電極層121、122の形態やその他の目的に応じて変わることができる。
【0050】
以上のように、本発明の一実施形態について説明したが、当該技術分野において通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された本発明の思想から逸脱しない範囲内で、構成要素の付加、変更又は削除等により本発明を様々に修正及び変更することができ、これも本発明の権利範囲内に含まれると言える。
【符号の説明】
【0051】
100:本体
110:誘電体層
121、122:内部電極層
130:カバー層
140:耐電圧層
210、220:外部電極
1000:キャパシタ部品