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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023071606
(43)【公開日】2023-05-23
(54)【発明の名称】非侵入式の還元剤注入器詰まり検出
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/08 20060101AFI20230516BHJP
   G06N 3/02 20060101ALI20230516BHJP
   F01N 11/00 20060101ALI20230516BHJP
【FI】
F01N3/08 B
G06N3/02
F01N11/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022173890
(22)【出願日】2022-10-31
(31)【優先権主張番号】21207745.7
(32)【優先日】2021-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】512272672
【氏名又は名称】ボルボトラックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100169018
【弁理士】
【氏名又は名称】網屋 美湖
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【弁理士】
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(72)【発明者】
【氏名】サミュエル・ジャッティ
(72)【発明者】
【氏名】ダヴィデ・リッツィ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】還元剤(例えば、尿素)注入器が詰まっているかどうかを決定するためのコンピュータ実施方法が提供される。
【解決手段】コンピュータ実施方法100は、注入器デューティサイクルXおよびポンプデューティサイクルXを示すデータを受信し、訓練された機械学習モジュール120を使用して、少なくとも、注入器が詰まっている確率を示す第1の値(Pclog)が計算される。本方法は、第1の値に基づいて、還元剤注入器が詰まっているかどうかの指標Iを提供する。本方法を使用して指標を提供するためのデバイス、コンピュータプログラム、還元剤注入器システム、およびそのような還元剤注入器システムを含む、例えば、燃焼エンジンに提供される。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
還元剤注入器が詰まっているかどうかを決定するためのコンピュータ実施方法(100)であって、
少なくともi)前記還元剤注入器のための注入器デューティサイクル(X)およびii)還元剤を前記還元剤注入器に提供するポンプのためのポンプデューティサイクル(X)を示すデータを受信すること(S1)と、
前記データを入力として決定モジュール(110)に提供すること(S2)であって、前記決定モジュールは、前記注入器デューティサイクルおよび前記ポンプデューティサイクルを示す前記データに基づいて、前記還元剤注入器が詰まっている確率を示す第1の値(Pclog)を少なくとも含む1つまたは複数の統計値のセット(P={Pclog,…})を推測するように訓練される、1つまたは複数の機械学習アルゴリズム(120)を使用する、前記データを入力として決定モジュール(110)に提供すること(S2)と、
前記1つまたは複数の統計値に基づいて、前記還元剤注入器が詰まっているかどうかの指標(I)を提供すること(S3)と
を含む方法。
【請求項2】
前記決定モジュールは、少なくとも入力層、前記入力層に接続される隠れ層、および前記隠れ層に接続される出力層を含む、人工ニューラルネットワーク(ANN)を使用して少なくとも部分的に実施され、
前記隠れ層または前記出力層は、前記第1の値を提供するための少なくとも1つのニューロンを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記入力層は、少なくとも2N個の入力ニューロンを含み、
N個の入力ニューロンの第1のセットは、N個の異なる第1の時間インスタンスの第1の時間窓にわたってサンプリングされる前記注入器デューティサイクルを示す値を受信するように構成され、
N個の入力ニューロンの第2のセットは、N個の異なる第2の時間インスタンスの第2の時間窓にわたってサンプリングされる前記ポンプデューティサイクルを示す値を受信するように構成される、
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の時間窓は、前記第2の時間窓に等しく、
前記第1の時間インスタンスおよび前記第2の時間インスタンスのすべては、同じ時間差(dt)によって分離される、
請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記還元剤注入器が詰まっているという前記指標を提供することは、1つまたは複数の条件のフルセット(c={c,…})の満足を確認することを含み、
前記1つまたは複数の条件は、少なくとも1つの時間インスタンスについて、前記第1の値または前記第1の値に適用される第1の関数の値が、少なくとも第1のしきい値(CTclog)を下回らないという第1の条件(c)を含む、
請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記1つまたは複数の統計値は、前記還元剤注入器が詰まっていない確率を示す第2の値(Pgood)をさらに含み、
前記1つまたは複数の条件は、前記少なくとも1つの時間インスタンスについて、前記第2の値または前記第2の値に適用される第2の関数の値が、少なくとも第2のしきい値(CTgood)を上回らないという第2の条件(c)をさらに含む、
請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記1つまたは複数の条件は、前記少なくとも1つの時間インスタンスに先行する、および任意選択的に前記少なくとも1つの時間インスタンスも含む、少なくとも第1の時間期間(Ten)の間、前記還元剤注入器のための要求された質量流量(MFreq)および/または要求された質量流量の時間平均(MFreq_avg)が、少なくとも質量流量しきい値(MFTreq)を下回っていなかったという第3の条件をさらに含む、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
前記1つまたは複数の条件は、前記少なくとも1つの時間インスタンスに先行する、および任意選択的に前記少なくとも1つの時間インスタンスも含む、少なくとも第2の時間期間(Tvote)の間、前記1つまたは複数の条件のうちの他のもののすべてが満足されていた時間インスタンスの計数(Cclog)が、少なくとも第1の投票しきい値(MCclog)を下回らないという第4の条件をさらに含み、
前記第2の時間期間は、最大で、前記第4の条件が最後に満足された時間インスタンスまで遡って延びる、
請求項5から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記第2の時間期間は、最大で、前記第4の条件が最後に満足された前記時間インスタンス、および、前記1つまたは複数の条件のうちの前記他のもののすべてが満足されていなかった時間インスタンスの計数(Cgood)が最後に少なくとも第2の投票しきい値(CTgood)を下回らなかった時間インスタンスのうちの、最新の方まで遡って延びる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記1つまたは複数の条件は、前記1つまたは複数の条件のうちの前記他のもののすべてが満足されていた各時間インスタンスにおいて増加され、前記1つまたは複数の条件のうちの前記他のもののすべてが満足されていなかった各時間インスタンスにおいて減少される、第2の計数(Cbucket)が、少なくとも第3の投票しきい値(CTbucket)を下回らないという第5の条件をさらに含む、請求項5から9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記1つまたは複数の統計値は、前記還元剤注入器が部分的にのみ詰まっている確率を示す少なくとも1つの追加の値(Pclog_p)をさらに含む、請求項1から10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
還元剤注入器が詰まっているかどうかを決定するためのデバイスであって、
少なくともi)前記還元剤注入器のための注入器デューティサイクル(X)およびii)還元剤を前記還元剤注入器に提供するポンプのためのポンプデューティサイクル(X)を示すデータを受信することと、
請求項1から11のいずれか1項に記載の方法を実施することによって、前記還元剤注入器が詰まっているかどうかの指標(I)を生成することと、
前記指標を含む信号を出力することと
を前記デバイスに行わせるように構成される処理回路を備える、デバイス。
【請求項13】
還元剤注入器が詰まっているかどうかを決定するためのコンピュータプログラムであって、前記コンピュータプログラムは、デバイスの処理回路上で実行するとき、
少なくともi)前記還元剤注入器のための注入器デューティサイクル(X)およびii)還元剤を前記還元剤注入器に提供するポンプのためのポンプデューティサイクル(X)を示すデータを受信することと、
請求項1から11のいずれか1項に記載の方法を実施することによって、前記還元剤注入器が詰まっているかどうかの指標(I)を生成することと、
前記指標を含む信号を出力することと
を前記デバイスに行わせるコンピュータコードを備える、コンピュータプログラム。
【請求項14】
燃焼エンジンのための還元剤注入システムであって、
前記エンジンの排気システムに還元剤を注入するように構成される還元剤注入器と、
前記還元剤注入器に還元剤を提供するように構成されるポンプと、
前記還元剤注入器のための注入器デューティサイクル(X)および前記ポンプのためのポンプデューティサイクル(X)を制御するように構成される制御装置と、
請求項13に記載の、前記還元剤注入器が詰まっているかどうかを決定するためのデバイスと
を備える、還元剤注入システム。
【請求項15】
請求項14に記載の還元剤注入システムを備える燃焼エンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃焼エンジンの排気システムにおいて使用される還元剤(例えば、尿素)注入器の分野に関する。特に、本開示は、そのような還元剤注入器の詰まりの検出に関する。
【背景技術】
【0002】
地方/地域の当局によって設定された排出基準を満たすために、燃焼エンジン、特に、ディーゼル駆動エンジンの製造業者は、エンジン使用中の酸化窒素(NOx)の排出が特定の最大許容レベルを下回るように自社のエンジンおよび付随の排気システムを設計することが求められている。そのような目標を達成するため、選択的触媒還元(SCR)が使用され得、触媒は、望ましくないNOx分子を、例えば、2原子窒素(N)および水(HO)に変換するために使用される。そのようなプロセスのための還元剤を提供するため、普及している選択肢は、排気ガスの中に、例えば、尿素(カルバミドとしても知られる)を提供することである。排気ガスの高い温度に起因して、尿素は、アンモニアおよび二酸化炭素(CO)へと熱分解し、次いでアンモニアが、NOx分子と反応して、例えば、水素および水への、NOx分子の上記所望の変換を達成し得る。
【0003】
還元剤を提供するため、還元剤投与システムは、通常、SCR触媒の上流に、エンジンの排気システム内への還元剤(例えば、尿素および水の混合物、例えば、DEF(Diesel Exhaust Fluid)とも称される)の噴霧を作り出す還元剤注入器を含む。しかしながら、還元剤の化学的特性に起因して、結晶体が、注入器の周り(または内側)に形成されて、還元剤注入器の部分的詰まりまたは完全な詰まりのいずれかをもたらし得る。還元剤注入器が詰まった場合、還元剤は、排気ガスの中に適切に導入されることができず、NOx分子の所望の還元は不可能になる。エンジンが稼働している間、排出基準を依然として満たすために、他の行為(例えば、SCR触媒の上流でのNOx分子の生成を減少させるために、エンジントルクの強制的な低減など)がなされなければならず、例えば、エンジンのユーザの全体的体験の望ましくない低下を引き起こす。したがって、還元剤注入器の適切な修理や交換さえもできる限り速やかに実施するために、還元剤注入器が詰まっているかどうかを検出することができることが望ましい。
【0004】
しかしながら、例えば尿素注入器の、詰まりの検出のための現在利用可能なソリューションは、多くの場合、侵入式であり、例えば、エンジンが稼働している間に尿素を投与する通常の戦略から一時的に外れ、これを妨害することを必要とする。
【発明の概要】
【0005】
還元剤注入器の詰まりの検出のための現在利用可能な方法における上記の識別された問題を少なくとも部分的に解決するために、本開示は、還元剤注入器が詰まっているかどうかを決定するための改善された(コンピュータ実施)方法、還元剤注入器が詰まっているかどうかを決定するための改善されたデバイス、還元剤注入器が詰まっているかどうかを決定するための改善されたコンピュータプログラム、燃焼エンジンのための改善された還元剤注入システム、および添付の独立請求項において既定されるような改善された燃焼エンジンを提供する。他の態様はまた、燃焼エンジンのための改善された排気システム、および改善された車両を提供する。様々な代替的な実施形態が、従属請求項において規定される。
【0006】
本開示の第1の態様によると、還元剤注入器が詰まっているかどうかを決定するためのコンピュータ実施方法が提供される。本方法は、データを受信することを含む。データは、少なくともi)還元剤注入器のための注入器デューティサイクル、およびii)還元剤を還元剤注入器に提供するポンプのためのポンプデューティサイクルを示す。本方法は、データを入力として決定モジュールに提供することをさらに含む。決定モジュールは、1つまたは複数の機械学習アルゴリズムを実施する。1つまたは複数の機械学習アルゴリズムは、注入器デューティサイクルおよびポンプデューティサイクルを示すデータに基づいて、1つまたは複数の統計値を推測するように訓練される。1つまたは複数の統計値は、少なくとも第1の値を含む。第1の値は、還元剤注入器が詰まっている確率を示す。本方法は、1つまたは複数の統計値に基づいて(すなわち、少なくとも第1の値に基づいて)、還元剤注入器が詰まっているかどうかの指標を提供することをさらに含む。
【0007】
第1の態様による方法の本開示は、提案された方法が、排出制御のために提供される通常の投与戦略およびコマンドを積極的に妨げることがないという意味で、受動的であるという点において、既存の技術を改善する。加えて、提案された方法はまた、それが、継続的に利用可能である少しの信号(すなわち、注入器デューティサイクルおよびポンプデューティサイクル)に依拠し、故に、本方法を実行するために必要とされる有効化条件が、あまり厳しくないため、エンジンが稼働している間継続的に実行され得る。通常の投与戦略と一緒に継続的に実行することができることに加えて、提案された方法はまた、還元剤注入器の内部(例えば、針の周り)および外部両方の詰まりを検出することを可能にするが、これは、両方のタイプの詰まりが、決定モジュールに提供されるデータに影響を及ぼすためである。
【0008】
本明細書で使用される場合、用語「還元剤」は、稼働しているときに燃焼エンジンから環境内へ放出されるNOx分子の量を低減するために、燃焼エンジンの排気システム内へ噴霧され得る流体/液体状態にある任意の物質、分子、またはそれらの混合物を含むと想定される。例えば、想定された還元剤は、尿素、または、DEF、もしくは、例えば、AUS32に見られる、また、例えば「AdBlue」という商品名で販売されるものなど、例えば、尿素および例えば水の混合物である。還元剤注入器を使用して注入される還元剤は、例えば、アンモニア、または同様のものであることも想定され得る。
【0009】
本方法の1つまたは複数の実施形態において、決定モジュールは、人工ニューラルネットワーク(ANN)を使用して少なくとも部分的に実施され得る。ANNは、少なくとも入力層、入力層に接続される隠れ層、および隠れ層に接続される出力層を含み得る。隠れ層または出力層は、第1の値を提供するための少なくとも1つのニューロンを含み得る。
【0010】
本方法の1つまたは複数の実施形態において、入力層は、少なくとも2N個の入力ニューロンを含み得る。N個の入力ニューロンの第1のセットは、N個の異なる第1の時間インデックスの第1の時間窓にわたってサンプリングされる注入器デューティサイクルを示す値を受信するように構成され得る。N個の入力ニューロンの第2のセットは、N個の異なる第2の時間インスタンスの第2の時間窓にわたってサンプリングされるポンプデューティサイクルを示す値を受信するように構成され得る。
【0011】
本方法の1つまたは複数の実施形態において、第1の時間窓は、第2の時間窓に等しくてもよい。第1の時間インスタンスおよび第2の時間インスタンスのすべては、同じ時間差によって分離され得る。
【0012】
本方法の1つまたは複数の実施形態において、還元剤注入器が詰まっているという指標を提供することは、1つまたは複数の条件のフルセットの満足を確認することを含み得る。1つまたは複数の条件は、第1の条件を含み得る。第1の条件は、少なくとも1つの時間インスタンスについて、第1の値、または第1の値に適用される第1の関数の値が、少なくとも第1のしきい値を下回らないことであり得る。本明細書では、特定の値が「少なくとも特定のしきい値を下回らない」ということは、特定の値が特定のしきい値を上回ることを確認することによって、および/または、特定の値が特定のしきい値に等しいことを検証することによって、検証され得る。
【0013】
本方法の1つまたは複数の実施形態において、第1の関数は、低域フィルタリングを第1の値に適用することを含み得る。これは、入力データ内に存在する最終的な雑音を、そのような雑音が本方法によって実施される決定に影響を及ぼす機会を得る前に取り除くことに役立ち得る。
【0014】
本方法の1つまたは複数の実施形態において、第1の条件は、第1の複数の後続時間インスタンスの各々について、第1の値、または第1の値に適用される第1の関数の値が、第1のしきい値に等しいか、それを超えることをさらに含み得る。
【0015】
本方法の1つまたは複数の実施形態において、1つまたは複数の統計値は、第2の値をさらに含み得る。第2の値は、還元剤注入器が詰まっていない確率を示し得る。1つまたは複数の条件は、少なくとも1つの時間インスタンスについて、第2の値、または第2の値に適用される第2の関数の値が、少なくとも第2のしきい値を上回らないという第2の条件をさらに含み得る。
【0016】
本方法の1つまたは複数の実施形態において、第2の関数は、低域フィルタリングを第2の値に適用することを含み得る。第2の値のフィルタリングは、第1の値の場合と同様、本方法の決定の、入力データ信号内の最終的な雑音への依存を減らし得る。
【0017】
本方法の1つまたは複数の実施形態において、第2の条件は、第2の複数の後続時間インスタンスの各々について、第2の値、または第2の値に適用される第2の関数の値が、第2のしきい値に等しいか、それを超えることをさらに含み得る。
【0018】
本方法の1つまたは複数の実施形態において、1つまたは複数の条件は、少なくとも1つの時間インスタンスに先行する、および任意選択的に少なくとも1つの時間インスタンスも含む、少なくとも第1の時間期間の間、還元剤注入器のための要求された質量流量および/または要求された質量流量の時間平均が、少なくとも質量流量しきい値を下回っていなかったという第3の条件をさらに含み得る。
【0019】
本方法の1つまたは複数の実施形態において、1つまたは複数の条件は、少なくとも1つの時間インスタンスに先行する、および任意選択的に少なくとも1つの時間インスタンスも含む、少なくとも第2の時間期間の間、1つまたは複数の条件のうちの他のもののすべてが満足されていた時間インスタンスの計数が、少なくとも第1の投票しきい値を下回らないという第4の条件をさらに含み得る。第2の時間期間は、いくつかの実施形態において、最大で、第4の条件が最後に満足された時間インスタンスまで遡って延び得る。
【0020】
本方法の1つまたは複数の実施形態において、第2の時間期間は、最大で、第4の条件が最後に満足された時間インスタンス、および、1つまたは複数の条件のうちの他のもののすべてが満足されていなかった時間インスタンスの計数が最後に少なくとも第2の投票しきい値を下回らなかった時間インスタンスのうちの、最新の方まで遡って延び得る。
【0021】
本方法の1つまたは複数の実施形態において、1つまたは複数の条件は、1つまたは複数の条件のうちの他のもののすべてが満足されていた各時間インスタンスにおいて増加され、1つまたは複数の条件のうちの他のもののすべてが満足されていなかった各時間インスタンスにおいて減少される(第2の)計数が、少なくとも第3の投票しきい値を下回らないという第5の条件をさらに含み得る。
【0022】
本方法の1つまたは複数の実施形態において、1つまたは複数の統計値は、還元剤注入器が部分的にのみ詰まっている確率を示す少なくとも1つの追加の値をさらに含み得る。
【0023】
本開示の第2の態様によると、還元剤注入器が詰まっているかどうかを決定するためのデバイスが提供される。本デバイスは、処理回路を含む。処理回路は、少なくともi)還元剤注入器のための注入器デューティサイクル、およびii)還元剤を還元剤注入器に提供するポンプのためのポンプデューティサイクルを示すデータを受信することを本デバイスに行わせるように構成される。処理回路は、第1の態様による方法を実施することによって、還元剤注入器が詰まっているかどうかの指標を生成するようにさらに構成される。処理回路はまた、指標を含む信号を出力するように構成される。
【0024】
本開示の第3の態様によると、還元剤注入器が詰まっているかどうかを決定するためのコンピュータプログラムが提供される。コンピュータプログラムは、デバイスの処理回路上で実行するとき、少なくともi)還元剤注入器のための注入器デューティサイクル、およびii)還元剤を還元剤注入器に提供するポンプのためのポンプデューティサイクルを示すデータを受信することをデバイスに行わせるコンピュータコードを含む。本デバイスは、第1の態様による方法を実施することによって、還元剤注入器が詰まっているかどうかの指標を生成すること、および指標を含む信号を出力することを(デバイスの処理回路上で実行するコンピュータコードによって)さらに行わされる。
【0025】
本開示の第4の態様によると、燃焼エンジン(のための排気システム)のための還元剤注入システムが提供される。本システムは、還元剤を排気システム内に注入するように構成される還元剤注入器を含む。本システムは、還元剤注入器に還元剤を提供するように構成されるポンプをさらに含む。本システムは、還元剤注入器のための注入器デューティサイクルおよびポンプのためのポンプデューティサイクルを制御するように構成される制御装置をさらに含む。本システムはまた、第2の態様による、還元剤注入器が詰まっているかどうかを決定するためのデバイスを含む。
【0026】
還元剤注入システムの1つまたは複数の実施形態において、デバイスは、制御装置の一部として実装され得るか、またはその逆も然りである。
【0027】
本開示の第5の態様によると、燃焼エンジンのための排気システムが提供される。排気システムは、第4の態様による還元剤注入システムを含む。
【0028】
本開示の第6の態様によると、燃焼エンジンが提供される。燃焼エンジンは、第4の態様による還元剤注入システム、および/または第5の態様による排気システムを含む。
【0029】
本開示の第7の態様によると、車両が提供される。車両は、燃焼エンジンおよび第5の態様による排気システムを含む。
【0030】
本開示の他の目的および利点は、以下の詳細な説明、図面、および特許請求項から明らかになるものとする。本開示の範囲内で、例えば、第1の態様の方法に関して説明されるすべての特徴および利点は、第2の態様のデバイス、第3の態様のコンピュータプログラム、第4の態様の還元剤注入システム、第5の態様の排気システム、第6の態様の燃焼エンジン、および第7の態様の車両に関して説明される任意の特徴および利点に適切である、これらに当てはまる、およびこれらと組み合わせて使用され得、またその逆も然りであることが想定される。
【0031】
例示的な実施形態が、これより添付の図面を参照して以下に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1A】本開示による方法の様々な実施形態のフローチャートを概略的に例示する図である。
図1B】本開示による方法の様々な実施形態のフローチャートを概略的に例示する図である。
図1C】本開示による方法の様々な実施形態のフローチャートを概略的に例示する図である。
図1D】本開示による方法の様々な実施形態のフローチャートを概略的に例示する図である。
図1E】本開示による方法の様々な実施形態のフローチャートを概略的に例示する図である。
図1F】本開示による方法の様々な実施形態のフローチャートを概略的に例示する図である。
図1G】本開示による方法の様々な実施形態のフローチャートを概略的に例示する図である。
図2】本開示による機械学習モジュールの実施の実施形態を概略的に例示する図である。
図3A】本開示の方法の機能を検証するために実施される様々な試運転からのデータを概略的に例示する図である。
図3B】本開示の方法の機能を検証するために実施される様々な試運転からのデータを概略的に例示する図である。
図3C】本開示の方法の機能を検証するために実施される様々な試運転からのデータを概略的に例示する図である。
図4】本開示によるデバイスの実施形態を概略的に例示する図である。
図5】本開示による、還元剤(例えば、尿素)注入システム、排気システム、および燃焼エンジンの実施形態を概略的に例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図面において、同じ参照番号は、別途記載のない限り、同じ要素に対して使用されるものとする。逆のことが明示的に記載されない限り、図面は、例となる実施形態を例示するために必要であるそのような要素のみを示す一方で、他の要素は、明確性のために、省略されるか、単に示唆され得る。図に例示されるように、要素および領域の(絶対または相対)サイズは、例示の目的のため、それらの真の値に対して誇張または過少表現され得、故に、実施形態の一般構造を例示するために提供される。
【0034】
本開示による、想定された方法、デバイス、コンピュータプログラム、還元剤注入システム、排気システム、燃焼エンジン、および車両の例示的な実施形態は、これより添付の図面を参照して以後より完全に説明されるものとする。図面は、現在好ましい実施形態を示すが、本発明は、しかしながら、多くの異なる形態で具現化され得、本明細書に明記される実施形態に限定されるものと解釈されるべきではなく、むしろ、これらの実施形態は、徹底性および完全性のために提供され、本開示の範囲を当業者に完全に伝える。
【0035】
本明細書内で先に説明されるように、「還元剤」は、例えば、尿素(または、尿素および例えば水の混合物)であり得ることが想定される。還元剤は、例えば、アンモニアなど、他のものであり得ることも想定されるが、尿素が、以下において(単に例示の理由から)還元剤の例として使用されるものとする。この理由のため、用語「還元剤」および「尿素」は、同義に使用されるものとする。同様に、用語「還元剤/尿素注入器」および単に「注入器」は、同様に同義に使用されるものとする。
【0036】
図1Aは、本開示の1つの実施形態によるコンピュータ実施方法100のフローチャートを概略的に例示する。以下において、この実施形態および他の実施形態は、コンピュータ実施方法のみに関連するということ、および、同様に以下において、そのようなコンピュータ実施方法は、簡単に「方法」と称されるということが前提とされる。
【0037】
方法100は、還元剤/尿素注入器が詰まっているかどうかを決定するように構成される決定モジュール110を含む。それを行うため、決定モジュール110は、1つまたは複数の機械学習アルゴリズムを実施し、その入力として、少なくとも、注入器の注入器デューティサイクルXを示すデータおよび尿素を注入器に提供するポンプのためのポンプデューティサイクルXを示すデータを受信する機械学習モジュール120を含む。当然ながら、この実施形態および他の実施形態において、任意選択的に、同様に機械学習モジュール120に提供される他の追加の入力データ111が存在し得る。本明細書内で後でより詳細に説明されるように、機械学習モジュール120は、少なくとも入力データXおよびXに基づいて(およびいくつかの実施形態においては、任意選択の入力データ111にも基づいて)、1つまたは複数の統計値のセットP={Pclog,…}を推測するように訓練されている。セットPは、注入器が詰まっている確率を示す第1の値(または統計値)Pclogを少なくとも含む。例えば、適切なスケーリングの後、値Pclogは、0と1との間のデシマル値をとり得、例えば、0は、注入器が詰まっている予測された0%確率を表し、0.5は、注入器が詰まっている予測された50%確率を表し、1は、注入器が詰まっている予測された100%確率を表す。セットPの値の他のスケーリングも当然ながら可能である。機械学習モジュール120は、当然ながら、この実施形態または他の実施形態において、任意選択的に、追加の出力データ112も出力し得る。
【0038】
少なくともセットP、および任意選択的に、任意選択の追加の出力データ112を含む、機械学習モジュール110からの出力は、セットP(第1の値Pclogを含む)に基づいて、注入器が詰まっているか否かの決定を行い、行った決定を示す信号Iを出力する決定モジュール130に提供される。例えば、注入器が詰まっていることが決定モジュール130によって決定される場合、信号Iは、論理値の「1」に対応し得る一方、決定が、注入器が詰まっていないことである場合、信号Iは、代わりに、論理値の「0」、例えば、不確定の状態に対応し得る。当然ながら、信号Iが決定モジュール130よって行われた決定をそこから推測するために十分な情報を含む限り、信号Iの厳密な形式は重要ではない。信号Iは、アナログ信号、デジタル信号、または同様のものであり得る。決定を行うため、決定モジュール130はまた、この実施形態または他の実施形態において、任意選択的に、追加の入力データ113を受信および使用し得る。
【0039】
入力データXおよびXは、好ましくは、離散時間インスタンスtにおいて取られた、それぞれ、真の注入器デューティサイクルおよびポンプデューティサイクルのサンプルとして提供され、iは、特定のサンプルに対応する整数であり、結果として、X(i)=X(t=t)およびX(j)=X(t=t)である。いくつかの実施形態において、すべての時間インスタンスは、時間的に等距離である。他の実施形態において、時間インスタンスの間の時間的な空間は異なり得ることが想定される。時間インスタンスは、好ましくは、注入器およびポンプデューティサイクルの両方について同じであるが、例えば、注入器デューティサイクルのためのデータが、ポンプデューティサイクルの時間インスタンスとは異なる時間インスタンスで提供されることも想定され得る。例えば、結果として生じる時間インスタンスの間の時間は、両方のデューティサイクルについて同じであり得るが、例えば、注入器デューティサイクルの時間インスタンスは、ポンプデューティサイクルの時間インスタンスより固定量だけ遅れ得るか、その逆も然りである。他の実施形態において、例えば、一方のデューティサイクルが他方よりも高いまたは低い頻度でサンプリングされるなどということもあり得る。いずれにせよ、機械学習モジュール120および対応する機械学習アルゴリズムは、好ましくは、方法100が動作することになる実際の生データと同じやり方でサンプリングされる訓練データを使用して訓練される。
【0040】
以下において、すべての信号は、離散時間インスタンスにおいてサンプリングされると仮定される。
【0041】
決定モジュール130
図1Bは、方法100の1つの実施形態のフローチャートを概略的に例示する。ここで、図1Aに示される決定モジュール130は、値Pclogが少なくとも第1のしきい値PTclogよりも低くないことに対応する、第1の条件cをチェックすることによって実施される。この条件cが満足される場合(すなわち、Pclog≧PTclogである場合)、c=1(または「真」)である。さもなければ、c=0(または「偽」)である。指標Iは、Pclog≧PTclogである場合にのみ注入器が詰まっていることが示されるように、cの値に等しい。第1のしきい値PTclogを導入し、それに対して比較することによって、指標は、それが、何らかの最小レベルに到達するために機械学習モジュール120によって行われる確率的推量の確実性を必要とするため、より有用かつ信頼性のあるものにされ得る。
【0042】
図1Cは、図1Bに例示される方法100のさらなる想定された展開のフローチャートを概略的に例示する。図1Cにおいて、Pclogに加えて、機械学習モジュール120は、注入器が詰まっていない予測確率を示す第2の値(または統計値)Pgoodも出力する。こうして、機械学習モジュール120は、注入器の状態を「詰まっている」または「詰まっていない」(または「良好」)のいずれかとして分類することを試み、注入器がいずれかのそのようなクラスに属する予測確率を提供する分類子として機能する。単一のクラス(「詰まっている」)のみが使用される図1Bに例示される方法100と比較して、これは、予測が合理的であるかどうかを、すなわち、比較することによって、機械学習モジュール120が、注入器が同時に両方のクラスのメンバである可能性があることを示さないことを、さらにチェックされ得るため、機械学習モジュール120からの出力の信頼性を強化し得る。図1Cに示されるように、これは、同様に第2の値Pgoodを第2のしきい値PTgoodに対して比較することによって、およびPgoodが少なくとも第2のしきい値を上回らないことに対応する第2の条件cが、注入器が詰まっていることが決定される前に満足される必要があることを確実にするために、達成され得る。これは、すべての入力cおよびcを検討し、cおよびcの両方が真である場合にのみ正の信号(すなわち「詰まっている」)を出力する確認モジュール131の使用によって得られる。確認モジュール131は、例えば、AND論理ゲートの形態にあり得、すなわち、c∧cを出力する。機械学習モジュール120が、Pclogが高く、Pgoodが低いことを提供する場合、条件Pclog≧PTclogおよびPgood<PTgoodの両方が満足されることがまず必要とされることから、より強い確信を持って、注入器が実際に詰まっている(I=1)ことが決定され得る。同様に、機械学習モジュール120からの出力が、Pclogが低く、Pgoodが高いであった場合、Pclog≧PTclogもPgood<PTgoodも満足されないことから、より強い確信を持って、注入器が詰まっていない(I=0)ことが決定され得る。しかしながら、機械学習モジュール120が、例えば、PclogおよびPgoodの両方が高いことを出力することになった場合、結果は非決定的であり、2つのクラスの両方ならびに2つのしきい値の使用は、Pclog≧PTclogが依然として満足されたとしても、Pgood<PTgoodが同時に満足されないことなどから、出力Iが1/真になることを防ぐ。
【0043】
図1Dおよび図1Eは、図1Bおよび図1Cに例示される方法100のさらに想定された展開のフローチャートを概略的に例示する。
【0044】
図1Dにおいて、機械学習モジュール120は、ちょうど図1Bのように単一のクラス「詰まっている」を使用するが、第1の条件cは、指標Iが正になる前に同じく満足されなければならない追加の第3の条件cによって補足される。第1の条件cおよび第3の条件cの両方は、確認モジュール131に提供され、これは、cおよびcの両方が真である(すなわち、I=c∧c)である場合にのみ正の指標Iを出力する。ここで、第3の条件cは、質量流量しきい値MFTreqと一緒に、注入器のための要求された質量流量MFreqの形態(注入器の通常動作を担う制御システムによって要求され、例えば、グラム/秒単位で測定される)にある決定モジュール130への追加の入力データ113に基づく。各時間インスタンスについて、MFreqが少なくともしきい値MFTreqを下回らないかどうかがチェックされる。タイマモジュール132は、次いで、第1の時間期間Ten(現在の時間インスタンスに先行し、おそらくはこれも含む)の間、値MFreqが常に、少なくともMFTreqを下回っていたかどうかをチェックする。タイマモジュール132が、これが真であることを見出す場合、その出力cは真である。間隔Tenの間の1つまたは複数の時間インスタンスにおいて、タイマモジュール132が、MFreqがMFTreqを下回っていたことを見出すと、それは代わりに、cの負の値を出力する。第1の時間期間Tenは、例えば、現在の時間インスタンスおよびM前の時間インスタンスを含む、例えば、ローリング時間期間、または同様のものであり得る。他の実施形態は、例えば、MFreqの単一インスタンスのみの代わりに、
【数1】
の(ローリング)時間平均(第1の時間期間Tenに取って代わる)が、Tenの間のいかなる点においても少なくともMFTreqを下回っていなかったかどうかをチェックし、この条件が満足される場合、cが真であると出力すること、およびさもなければcが偽であると出力することを含み得る。追加の条件として注入器への要求された質量流量の履歴を含むことは、本方法によって出力される最終決定(すなわち、指標I)の信頼性を増大させるのにさらに役立ち得る。例えば、最新の時間間隔の間注入器への要求された質量流量がわずかであった場合、注入器の動作時間(すなわち、デューティサイクル)は、注入器が詰まっているのか、または、例えば、ポンプデューティサイクルもしくは同様のものに目立った影響を引き起こすのに十分に長く開いていないだけであるのかを区別するのが難しくなるほどに低い場合がある。しきい値MFTreqは、最後の時間間隔の間の低い要求質量流量(またはその欠如)が検出され得るように、これに応じて選択され得る。1つの例となる実施形態において、要求された最小質量流量は、例えば、MFTreq=0.5g/sであり得る。当然ながら、例えばエンジンの正確な構成および寸法、排気システム、使用される還元剤のタイプ、ならびにその他もろもろに応じて、他のしきい値もまた使用され得ることが想定される。本明細書では、指標Iの「正の」値(例えば、「1」または「高」)は、注入器が詰まっていることに対応すると見なされることにも留意されたい。当然ながら、注入器が詰まっているとき、指標Iが、代わりに「負」(例えば、「0」または「低」)であるように、例えば、決定モジュール130を再構成することも可能であり得る。これは、例えば、機械学習モジュール120にも当てはまり、例えば、ニューラルネットワークも同様に、低出力値が高確率に対応するように、およびその逆であるように訓練され得、決定モジュール130は、これに応じて指標Iを適合させるように再構成され得る。異なる言い方をすると、重要なのは、注入器が詰まっていない状態から詰まっている状態になるとき、およびその逆であるとき、指標Iが、何らかの形でその値を変化させることであり、その結果として、そのような変化は、例えば、オペレータ、ドライバなどに、注入器の詰まり状態が変化したことを示すために使用され得る。
【0045】
図1Eにおいて、原則は図1Dと同じであるが、第2のクラス(「詰まっていない」または「良好」)もまた、図1Cに関して本明細書内で先に説明されるように、考慮される。確認モジュール131は、c、c、およびcのすべてを受信し、条件のすべてが真である(すなわち、I=c∧(c∧c))である場合にのみ、正の指標Iを出力する。注入器が詰まっていることを決定する前に、cおよびcが真であることのみを必要とする代わりに、追加の条件cを追加することもまた、特に、それが、PclogおよびPgoodの両方が共に高いときなどの非決定的な状況が、注入器が詰まっているという決定に導くことを防ぐため、方法100によって行われる決定の信頼性をさらに強化し得る。
【0046】
図1B図1Eに例示されるすべての方法100に共通するのは、決定が行われる前に、値Pclogが、しきい値PTclog(第1の条件c)に対して常にチェックされることである。これは、Iに対して決定が行われる前に機械学習モジュール120によって行われる予測の最小限の確実性を要求することによって信頼性を改善するのに役立つ。図1Cおよび図1Eに例示される方法100において、さらなる条件cが追加され、これは、機械学習モジュール120が、まず、注入器が詰まっていない確率Pgoodを計算すること、ならびに、注入器が詰まっていることを決定する前にPclogおよびPgoodが同時に高くないことが確実にされることが必要とされる。最後に、図1Dおよび図1Eに例示される方法100において、追加の条件cも追加され、注入器が詰まっていることを決定するために、注入器への要求された質量流量(または少なくともそのような要求された質量流量の平均)が、最大で現在の時間に至る特定の時間の間、特定のしきい値を超えていなければならないことを求める。
【0047】
図1Fおよび図1Gは、図1Dおよび図1Fの方法100の依然としてさらに想定された展開のフローチャートを概略的に例示する。
【0048】
図1Fにおいて、機械学習モジュール120は、注入器への要求された質量流量の履歴の要求と組み合わせて、単一のクラス「詰まっている」を使用する。異なる言い方をすると、上の条件cおよびc(cではない)は、共に使用されチェックされる。加えて、図1Fに例示される方法100はまた、以下に説明され得るいわゆる「投票条件」を含む第4の条件cを追加する。特定の先行する第2の時間期間Tvoteの間、投票タイマモジュール133は、確認モジュール131からの出力が何回正であったかをチェックする。すなわち、投票タイマモジュール133は、scおよびcが共に同時に真であった、第2の時間期間Tvoteの間の先行する時間インスタンスの数の計数Cclogを行う。第2の時間期間Tvoteの間、計数Cclogが少なくとも第1の投票しきい値CTclogを下回らないことが決定される(すなわち、例えばCclog≧CTclogであることが決定される)場合、投票タイマモジュール133からの出力cは、真に設定される。計数Cclogは、次いでリセットされ得、新規の第2の期間Tvoteが開始され得る。同様に、計数Cclogが、全第2の時間期間Tvoteの間、第1の投票しきい値CTclogを下回ったままである場合、出力cは、偽に設定され、計数Cclogは、リセットされ、新規の第2の時間期間Tvoteが開始する。第2の時間期間Tvoteの終了後、例えば、条件cは、新規の決定が新規の第2の時間期間Tvoteの終わりに行われる前、以前の第2の時間期間と同じままであることが想定され得る。第2の時間期間Tvoteをそのようなやり方で再開することによって、第2の時間期間Tvoteは、条件cが満足され、真に設定された最後の時間よりも時間的にさらに遡って延びないことが確認され得る。
【0049】
上の「投票システム」を使用することにより、方法100の信頼性は、確認モジュール131からのいくつかの等しい出力が、注入器が詰まっていることを示すために方法の状態(すなわち、指標I)が変化し得る前の特定の時間間隔の間、必要とされるという点で、改善され得る。これは、例えば、確認モジュール131からの単一の誤った出力が、結果に大きく影響を及ぼすことを防ぐ。同様に、投票プロセスがやり直される前に特定の第2の時間期間Tvoteの間待機するだけで、後の時間に発生する検出器の潜在的な「詰まり解消」もまた、方法100によって取り上げられ得、指標Iはこれに応じて変化され得る。指標Iは、ここでは、条件c、c、およびcのすべてが真であるかどうかを、すなわち、I=(c∧(c∧c))であるように、チェックする確認モジュール131によって提供される。
【0050】
図1Gは、機械学習モジュール120がクラス「詰まっている」および「詰まっていない」(または「良好」)の両方を使用する方法100の実施形態を例示する。図1Fのように、投票タイマモジュール133は、条件c、c、およびcのすべてが同時に真であった、第2の時間期間Tvoteの間の時間インスタンスの数(すなわち、確認モジュール131からの出力が何回真であったか)の計数Cclogを行う。いくつかの実施形態において、投票タイマモジュール133はさらに、図1Fと全く同じに挙動し、Cclogが、全第2の時間期間Tvoteの間、CTclogより下に留まらない場合に、cを真として出力し得る。
【0051】
しかしながら、いくつかの実施形態において、投票タイマモジュール133はまた、条件c、c、およびcが同時に真であることができなかった、第2の時間期間Tvoteの間の時間インスタンスの数(すなわち、確認モジュール131からの出力が何回偽であったか)の第2の計数Cgoodを行い得る。第2の時間期間Tvoteの間、第2の計数Cgoodが少なくとも第2の投票しきい値CTgoodを下回らないことが決定される場合、カウンタCclogおよびCgoodは、リセットされ得、新規の第2の時間期間Tvoteが開始される。それを行うことで、これは、カウンタCclogが、さもなければ至っていたであろうものよりも早くに(すなわち、全第2の時間期間Tvoteの経過前に)リセットされ得るため、条件cが満足されることをより困難にする。これは、すべての条件c、c、およびcが同時に満足されないという大量の出来事が、方法100のためのより高いレベルの決断力欠如を示し得るため、方法100からの出力の信頼性をさらに強化し得る。異なる言い方をすると、図1Gに例示されるような、およびこれを参照して説明される投票システムでは、確認モジュール131からの正の出力の数Cclogと確認モジュール131からの負の出力の数Cgoodとの間での進行する競争が存在し、確認モジュール131からの正の出力の数Cclogは、注入器が詰まっていることが決定されるためには、第2の時間期間Tvoteの間、そのしきい値CTclogに達するために十分に素早く増加しなければならない。図1Gに例示されるような投票システムでは、第2の時間期間Tvoteは、cが真にセットされた最後の時間、および計数Cgoodが少なくとも第2の投票しきい値CTgoodを下回らなかった最後の時間のうちの最新の方よりも時間的にさらに遡って延びることが決してないように、設定され得る。
【0052】
例えば、図1Gに例示されるような方法100の別の想定された実施形態において、投票タイマモジュール133は、代わりに、以下のように機能する。2つの計数CclogおよびCgoodを有する代わりに、単一の計数Cbucketが使用される。確認モジュール131からの出力が正であるたびに、単一の計数Cbucketは、増加される。同様に、確認モジュール131からの出力が負であるたびに、単一の計数Cbucketは、代わりに減少される。第4の条件cが真であるためには、単一の計数Cbucketは、少なくとも第3の投票しきい値CTbucketを下回ってはならない。そのような条件は、代わりに、第4の条件cの代わりに提供され得る第5の条件cと見なされ得る。これは、いわゆる「リーキーバケット」投票アルゴリズムを表し、確認モジュール131からの大量の一連の正の出力は、第5の(または第4の)条件c(またはc)が真から偽へ変化する、またはその逆であるためには、確認モジュール131からの大量の一連の負の出力を必要とする。計数Cbucketは、下限(CTminなど、例えば、ゼロ)を下回ることができないように、および上限(CTmaxなど)を超えることができないように、制限されることが想定され得る。他の実施形態において、計数Cbucketが常に、確認モジュール131からの正の出力の数と確認モジュール131からの負の出力の数との間の差を表すように、そのような制限が存在しないことが想定され得る。リーキーバケットアルゴリズムでは、例えば、計数が実施される任意の特定の時間期間を使用することが必要とされない場合がある。このとき投票タイマモジュール133は、その結果が計算される関連した任意の先行の時間期間が必ずしも存在しないため、単に「投票モジュール」133と称され得る。
【0053】
図1Fおよび図1Gに例示されるすべての方法100に共通するのは、投票システムの使用であり、その利点は上に既に説明されている。例えば、図1Fおよび図1Gは共に、要求された質量流量履歴の包含(タイマモジュール132を介した)を示すが、方法100のいくつかの実施形態において、要求された質量流量に関連したすべてのこと(第3の条件cを使用することを含む)は、任意選択であり、図1Fおよび図1Gに例示されるような方法100の一部を形成しない場合があることが想定されるということに留意されたい。
【0054】
本明細書内のいかなる図にも具体的に例示されないが、機械学習モジュール120は、単なる単一のクラス(「詰まっている」)よりも多くのクラス、または単なる2つのクラス(「詰まっている」および「詰まっていない」/「良好」)よりも多くを使用するように構成されることも想定され得る。例えば、注入器が単に「部分的に詰まっている」ためのクラスも存在し得、対応する値
【数2】
が、入力データXおよびXに基づいて機械学習モジュール120によって推測される統計値のセットPに提供されることが想定される。例えば、注入器が「25%詰まっている」という予測に対応する1つのクラス、「50%詰まっている」のための別のクラス、および「75%詰まっている」のためのさらに別のクラスなどが存在し得る。「部分的に詰まっている」注入器のためのクラスも有することは、それが、例えば、注入器への尿素の提供を制御するために使用され得るという点で有益であり得る。例えば、注入器が「25%詰まっている」ことが決定される場合、これは、注入器または同様のものへの尿素の質量流量を増加させる制御システムによって補償され得る。そのような追加のクラスを有する場合、当然ながら、満足される必要のある様々な条件がこれに応じて変化することが想定される。
【0055】
機械学習モジュール120
本明細書内の様々な実施形態において想定されるように、機械学習モジュール120は、例えば、XおよびXの直近の時間インスタンスサンプルに対して動作するだけでなく、各デューティサイクルの履歴も考慮し得る。例えば、2つのクラスを使用する場合、P(i)が時間インスタンスiにおける第1のクラスに属する注入器の予測確率を示し、P(i)が時間インスタンスiにおける第2のクラスに属する注入器の予測確率を示し、機械学習モジュール120の出力は、以下のように定式化され得、
[P(i),P(i)]=F[X(i),X(i-1),…,X(i-L);X(i),X(i-1),…,X(i-L)]、(1)
式中、LおよびLは、デューティサイクルXおよびXの各々について考慮される過去の時間インスタンスの数である。例えば、L=L=Lであることが仮定され得るが、本明細書内で先に説明されるように、L≠Lであることも仮定され得る。故に、機械学習モジュール120は、デューティサイクルの直近の利用可能なサンプルだけでなく変数XおよびXの過去の値にも依拠し得る。
【0056】
例えば、単一のクラスのみを使用する場合、機械学習モジュール120からの出力は、単にP(i)であることが想定され得る。2つを超えるクラスを使用する場合、機械学習モジュール120からの出力は、代わりに、[P(i),P(i),…,P(i)]であり得、Qは、使用されるクラスの合計数を示す整数である。本明細書で使用される場合、第1のクラスは、例えば、P(i)=Pclog(i)であるように、注入器が詰まっていることに対応し得る。同様に、第2のクラスは、例えば、P(i)=Pgood(i)であるように、注入器が詰まっていないことに対応し得る。当然ながら、様々なクラスの正確な番号付けは、すべての実施された動作および計算の間で一貫性が維持される限りは重要ではない。
【0057】
機械学習モジュール120の他の実施形態において、分類の代わりに回帰が使用され得る。そのような場合、特定のクラスは存在せず、代わりに、注入器の詰まりの予測レベルに対応する単一の出力P(i)が存在する場合がある。例えば、好適なスケーリングの後、P(i)=0.5の予測は、例えば、注入器が50%詰まっていること(機械学習モジュール120によって予測されるように)に対応し得る一方、P(i)=0.1は、注入器が10%詰まっていることに対応し得るなどである。そのような方法は、その簡便性およびアナログの性質に起因して望ましい場合がある。
【0058】
本明細書内で想定されるように、機械学習モジュール120は、任意の特定のタイプの機械学習アルゴリズムを、そのようなアルゴリズムが訓練され、上に説明されるような分類確率P(i),P(i),…またはアナログ値P(i)のいずれかを提供するために好適である限り、実施し得る。アルゴリズムの例は、例えば、一般に、例えば多層パーセプトロン(MLP)を含む、人工ニューラルネットワーク(ANN)であり得るが、例えば、サポートベクターマシン(SVM)、決定木、ランダムフォレスト、および長短期メモリニューラルネットワーク(LSTM)などの機械学習技術の領域からの他の例もある。
【0059】
図2を参照すると、本明細書内で想定されるような機械学習モジュール120の例となる実施形態がこれより、好適な機械学習アルゴリズム例としてMLPの形態でANNを使用して、より詳細に説明される。
【0060】
図2は、機械学習モジュール120によって実施される機械学習アルゴリズムの実施形態の例として、MLP200の形態にあるANNを概略的に例示する。この特定の例において、MLP200は、入力層210、隠れ層220、および出力層230を有して構成される。各時間インスタンスtにおいて、MLP200への入力信号は、注入器デューティサイクルXおよびポンプデューティサイクルXの各々の最後のN個のサンプルによって形成される信号であり、すなわち、
=[X(j),X(j-1),…X(j-N+1),X(j),X(j-1),…,X(j-N+1)]
であり、式中、本明細書内で先に説明されるように、X(j)=X(t=t)は、例えば、時間インスタンスtにおいて取られる信号Xの特定のサンプルに対応する。各デューティサイクルの最後のN個のサンプルを使用することにより、使用される時間窓のサイズはNであると言える。入力層は、合計でN=2N個の入力ニューロン211を含み、これは、N個の入力ニューロンの第1のグループ212およびN個の入力ニューロンの第2のグループ213に分割される。入力ニューロンの第1のグループ212は、入力信号Xの最初のN個のサンプル[X(j),…,X(j-N+1)]を受信する一方、入力ニューロンの第2のグループ213は、入力信号xの残りのN個のサンプル[X(j),…,X(j-N+1)]を受信する。各々のi番目の入力ニューロン211の出力
【数3】
は、その入力と同じであり、すなわち、
【数4】
であり、式中、x(i)は、ベクトルXのi番目の要素である。
【0061】
隠れ層220は、合計でN個の隠れニューロン221を含む。入力層210および隠れ層220は、完全に接続され、すなわち、結果として、各入力ニューロン211は、隠れニューロン221の各々に対する接続214を形成する。特定のi番目の入力ニューロン221と対応するh番目の隠れニューロン221との間の各々のそのような接続は、
【数5】
で示され、その接続のための特定の重みに対応する。
【0062】
各々のh番目の隠れニューロン221からの出力
【数6】
は、
【0063】
【数7】
として書かれ得、式中、σは、隠れニューロン221において使用される(非線形)活性化関数であり、bは、バイアス項である。隠れニューロン221の場合、活性化関数σは、例えば、形式
σ(x)=max(0,x)
のRectified Linear Unit(ReLU)であってもよい。
【0064】
出力層230は、合計でN個の出力ニューロン231を含む。出力ニューロン231は、各隠れニューロン221が出力ニューロン231の各々への接続222を形成するように、隠れニューロン221と完全に接続される。特定のh番目の隠れニューロン221と対応するo番目の出力ニューロン231との間の各々のそのような接続は、
【数8】
で示され、その接続のための特定の重みに対応する。
【0065】
各々のo番目の出力ニューロン231からの出力
【数9】
は、
【0066】
【数10】
として書かれ得、式中、σは、出力ニューロン231において使用される(非線形)活性化関数であり、bは、バイアス項である。出力ニューロン231の場合、活性化関数σは、例えば、形式
【0067】
【数11】
のシグモイド関数であってもよい。出力として分類子を使用する場合、各出力
【数12】
は、例えば、それぞれの分類子Yに対応し得る。本明細書内で想定されるように、そのような分類子Yは、注入器がo番目のクラス(例えば、Pclog、Pgoodなど)に属する予測確率Pに対応し得る。
【0068】
MLP200は、一般的に知られる逆方向伝搬方法を使用して、例えば、勾配降下ベースのAdam最適化装置、および誤差関数として平均平方誤差(MSE)を使用して、訓練され得る。単一の隠れ層よりも多く、例えば、2つの隠れ層、3つの隠れ層、またはそれ以上が存在し得、各々が
【数13】
個の隠れニューロンを含むことも想定され、kは、隠れ層の数である。
【0069】
訓練データの生成
本明細書内で想定されるような機械学習モジュール120を訓練するのに好適なデータを獲得する1つの例示的なやり方がこれより、より詳細に説明される。
【0070】
図2に例示されるMLP200のトポロジは、N=20個の入力ニューロン211、N=5個の隠れニューロン221、およびN=2個の出力ニューロン231が存在するように選択された。故に、MLP200は、各入力デューティサイクル信号XおよびXについて10個のサンプルの時間窓、ならびに合計で2つのクラス(「詰まっている」および「詰まっていない」/「良好」に対応する)を使用するように構成された。
【0071】
尿素投与試験のために設定された研究室エンジン設備が使用され、(ディーゼル)エンジンは、既知の詰まった注入器および既知の詰まっていない注入器の両方を排気システムにおいて使用して稼働された。各タイプの注入器について、エンジンは、合計5回のWorld Harmonized Transient Cycles(WHTC)および合計1回のIn-Service Conformity Cycle(ISC)にわたって稼働された。稼働中、データは、100ミリ秒(ms)の一定のサンプリング速度で記録され、すなわち、結果として、サンプリングの時間インスタンスは、t=t+j*0.1秒と規定され、式中、tは、信号サンプリングの開始時間である。記録されたデータから、注入器制御デューティサイクルXおよびポンプ制御デューティサイクルXという2つの信号を抽出した。これらの2つの信号は、尿素投与システムが通常動作条件下で稼働していること(すなわち、稼働状態)を要求しながら抽出され、排出戦略から要求される尿素の質量流量は、少なくとも、予め規定されたしきい値を上回っていた。予め規定されたしきい値は、この特定の例では、0.5グラム/秒(g/s)であった。サンプリングされたデータは、次いで、2次元マトリクス
【数14】
を形成するために連結され、上記マトリクスの各行
【数15】
は、
【0072】
【数16】
と規定され、式中、追加の列YおよびYは、時間サンプル/インスタンスiにおける注入器の実際のクラスに対応する。例えば、注入器が時間インスタンスiにおいて詰まっていなかったことが分かっていた場合、Y(i)は、「0」に設定され、Y(i)は、「1」に設定された。同様に、注入器が別の時間インスタンスjにおいて詰まっていたことが分かっていた場合、Y(j)は、「1」に設定され、Y(j)は、「0」に設定された。詰まっていない注入器に対応するすべての行、それに続いて詰まった注入器に対応するすべての行を挿入した後、マトリクス
【数17】
の行は、次いで、新規のマトリクス
【数18】
内へと再シャッフルされた。シャッフルは、当然ながら、各時間窓および関連クラスの整合性を守る、すなわち、列の順序には影響を及ぼさないようなものであった。
【0073】
図2に例示されるMLP200への入力データの説明に戻ると、各入力ベクトルxは、このように、マトリクス
【数19】
のj番目の行
【数20】
の最初の20列に対応する一方、j番目の行の残りの2つの列は、j番目の時間インスタンスにおけるそれぞれのクラスYおよびYについての「正しい」確率に対応する。マトリクス
【数21】
がリシャッフルされているため、j番目の行は、時間間隔t+j*0.1秒~t+(j+9)*0.1秒の間の実際の記録されたサンプルに対応しないということが追加されるべきである。代わりに、マトリクス
【数22】
内のj番目の行は、元々サンプリングされた信号XおよびXの別の時間間隔t+j’*0.1秒~t+(j’+9)*0.1秒に対応し、jからj’へのマッピングはランダムである。
【0074】
マトリクス
【数23】
を構築した後、行の最初のX%が訓練セットとして選択され、行の次のY%が検証セットとして選択され、行の残りのZ%が試験セットとして選択された。ここで、X+Y+Z=100%であり、説明される特定の例において、それは、X=60%、Y=20%、およびZ=20%であるように決定された。加えて、デューティサイクルXおよびXに関するすべての値は、100で除算することによって正規化され、0.0~1.0の間の値が結果として生じた。
【0075】
想定された機械学習モジュール120の検証
上のように集められた訓練セットを使用して、MLP200は、次いで、0.001の学習率で逆伝搬および勾配降下ベースのAdam最適化装置を使用して重み
【数24】
および
【数25】
を更新することによって訓練された。訓練セット内のサンプルの合計数は、288219であり、使用されたバッチ(すなわち、MLPにおける第1の重み更新が発生するまで誤差を累積するために使用されるサンプルの数)は32であった。誤差関数は、MSEであり、訓練セット全体は、30回(エポック)使用された。エポック30の後、モデル損失が十分に少ない数で安定化されたことが確認され、次いで検証セットは、モデルの過学習が発生しなかったことを確認するために使用された。各ステップにおいて、MSEは、P(i)およびP(i)の最近予測された値、ならびに各行
【数26】
の最後の2つの列において見つかった「正しい」解答を使用して、計算された。
【0076】
残りの試験データセット(すなわち、マトリクス
【数27】
の行の最後の20%)が、次いで、モデルの性能をチェックするために使用された。使用された性能基準は、
【0077】
【数28】
として規定される、単純平均精度(AP)であったが、
式中、TPは、真の陽性分類の比であり、FPは、偽の陽性分類の比である。AP=0.927の性能が決定された(TP=0.4721およびFP=0.0372から得られる)。真の陰性分類の決定された比は、TN=0.4721であり、偽の陰性分類の比は、FN=0.0186であった。約93%という高いAPで、こうして、想定された方法の性能は満足のいくものであったこと、およびそれが、注入器が詰まっているか、または詰まっていないかについての合理的な確率を予測することを、高い確実性を持って学習したということが結論付けられた。
【0078】
想定された決定モジュール130および方法100の検証
図1Gに例示されるような方法100を使用して、追加の試験が、エンジン試験設備において実施されたが、注入器の実際の自然の詰まりが発生した実際の車両(トラック)から集められたデータに対しても実施され、それらのデータは、詰まり事象の前、間、および後のいずれにおいても利用可能であった。
【0079】
図3Aは、エンジン試験設備において実施された第1の試験の結果を例示する。注入器の故障を「シミュレート」するために、ソフトウェア修正を使用して注入器を停止し、注入器が故障したとモニタに信じ込ませた。グラフ310は、0~1.4時間の時間間隔にわたって記録されるような、注入器におけるセンサ/注入器内のセンサによって検出されるような尿素圧力を示す。グラフ311は、ポンプデューティサイクルXを示し、グラフ312は、注入器デューティサイクルXを示す。グラフ313は、「詰まっている」状態についての投票計数Ccountを示し、グラフ314は、「詰まっていない」状態についての投票計数Cgoodを示す。グラフ315は、機械学習モジュール120による出力として、注入器が詰まっている予測確率Pclogを示す一方、グラフ316は、同じく機械学習モジュール120による出力として、注入器が詰まっていない予測確率Pgoodを示す。最後に、方法100によって描写される結論、すなわち、指標Iが、グラフ317に示される。デューティサイクル値XおよびXは、間隔[0,1]へ正規化される一方、それぞれの投票計数CclogおよびCgoodは、それぞれ、対応する投票しきい値CTclogおよびCTgoodで除算することによって正規化される。バイナリ指標Iの場合、「0」は、「詰まっていない」を意味する一方、「1」は、「詰まっている」を意味する。
【0080】
図3Aを見て分かるように、ソフトウェア「バイパス」は、例えば、グラフ312に示されるように、約2~3分において注入器を停止して試運転にするために使用された。グラフ317を見ても分かるように、本方法は、注入器の詰まりを、その状態を「0」から「1」へ変更することによって、ほぼすぐに正しく検出する。
【0081】
図3Bおよび図3Cは、実際の車両(トラック)において実施された測定の結果を例示し、この測定の間に、注入器には自然に詰まりが発生していた。図3Aは、詰まりが発生する前の測定の部分を示す一方、図3Bは、注入器の詰まりの発生を含む測定の部分を示す。図3Aおよび図3Bの両方において、示される測定時間は、0~0.7時間である。様々なグラフの番号付けは、図3Aのものと同じである。図3Bおよび図3Cの両方において、グラフ310は、尿素圧力である。グラフ311および312は、それぞれ、ポンプデューティサイクルXおよび注入器デューティサイクルXである。グラフ313および314は、それぞれ、投票計数CclogおよびCgoodである。グラフ315および316は、それぞれ、予測確率PclogおよびPgoodである。グラフ317は、指標Iである。図3Bおよび図3Cもまた、2つの追加のグラフ、具体的には、車両の排気システムに入るNOxの正規化された量を示すグラフ318、および車両の排気システムから出るNOxの正規化された量を示すグラフ319を含み得る。NOx入力/出力のためのセンサが、排気マフラが特定の温度に達した後にのみ測定を開始することができるということに起因して、NOx入力/出力についての測定データは、試運転の最初の約15分間は提供されないということに留意されたい。グラフ310~317の正規化は、図3A内のものと同じである。グラフ318と319との差を研究することにより、注入器が動作すべきときまたは動作すべきでないときに動作しているかどうかが分かる。出ていくNOxの量が低い場合、排気システムおよび注入器は動作しており、注入器が詰まっていないことが分かる。しかしながら、故障した(詰まった)注入器では、出ていくNOxは、入ってくるNOxと同様であり、排気システムにおいて達成されるNOxの除去が存在しないことを示す。
【0082】
図3Bを見て分かるように、グラフ319に示されるような出ていくNOxの量は、およそゼロであり、グラフ317の指標Iは、Iが示される全時間間隔にわたって「0」のままであるため、方法100が、注入器が詰まっていないという結論を正しく描写することを示す。
【0083】
図3Cを見て分かるように、注入器は、グラフ319に示される出ていくNOxがその後増加し始めると、大体9~10分のどこかで詰まり始めて試運転になる。図3Cを見て分かるように、方法100は、正しく、および素早く、注入器が詰まったことをほぼ同時に示し始める。故に、この現実世界の例において、本明細書内で想定され、例えば、図1Gを参照して説明されるような方法100は、注入器の詰まりを正しく識別する。
【0084】
図3A~Cの概要において、本明細書内で想定されるような方法100は、研究室環境および現実世界環境の両方において実施される測定によって示されるように、注入器の詰まりを正しく識別することを十分に成し遂げるということが結論付けられる。特に、使用される唯一の信号が、注入器およびポンプデューティサイクルXおよびXであるため、ならびにこれらの信号が、例えば、注入器のための制御システムから、その通常動作の間に、容易に入手可能であるため、本明細書内で想定されるような方法100は、注入器の通常動作を邪魔することなく、また注入器の状態が検出され得る前に任意の特定の他の条件が満足されることを必要することなしに、非侵襲性のやり方で機能する。
【0085】
他の態様
図4は、本明細書内で同じく想定されるような、還元剤(例えば、尿素)注入器が詰まっているかどうかを決定するためのデバイス400の実施形態を概略的に例示する。デバイス400は、処理回路410を含む。処理回路410は、上で既に論じられるような注入器デューティサイクルおよびポンプデューティサイクルに対応するデータ信号XおよびXを受信するように構成される。処理回路410は、注入器が詰まっているかどうかを示す指標Iを生成するようにさらに構成され、またこの目的のため、処理回路410は、本明細書内で論じられるような方法100を実施する。指標Iは、処理回路410から出力される信号420に含まれる。
【0086】
本明細書で使用される場合、「処理回路」は、例えば、何らかのメモリ内に、例えば、機械語命令として記憶される命令を実施することができる任意の集積回路を含み得、プロセッサがこのメモリへのアクセスを有するか、またはメモリは処理回路の一部として含まれる。処理回路の例は、例えば、中央処理装置(CPU)、グラフィック処理装置(GPU)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)などを含み得るが、これらに限定されない。処理回路は、例えば、コンピュータ、エンジン制御装置、後処理制御モジュール(ACM)、または同様のものの一部として提供され得る。
【0087】
注入器が詰まっているかどうかを決定するためのコンピュータプログラムを提供することも想定される。コンピュータプログラムは、図4に例示されるデバイス400の処理回路410などの処理回路上で実行するとき、データXおよびXを受信すること、本明細書内で想定される任意の方法100を使用して指標Iを生成すること、ならびに指標Iを含む信号420を出力することをデバイス400に行わせるコンピュータコードを含む。
【0088】
本明細書で使用される場合、想定されたコンピュータプログラムは、例えば、データ担体に記憶または分配され得る。「データ担体」は、例えば、変調された電磁波または変調された光波など、一時的なデータ担体であってもよい。データ担体はまた、例えば、磁気、光学、または固体タイプの永久または非永久ストレージ媒体などの揮発性および不揮発性メモリを含め、非一時的であってもよい。そのようなメモリは、ポータブル(例えば、USBスティック、CDロム、DVDなどにおいて見られるように)、または固定取り付け式(例えば、HDD、SSD、など)であってもよい。
【0089】
図5は、本明細書内で想定されるような、燃焼エンジン600のための還元剤(例えば、尿素)注入システム500の実施形態を概略的に例示する。システム500は、エンジン600の排気システム610内に尿素を注入するように構成される尿素注入器510を含む。排気システム610は、例えば、触媒612を含み得、尿素注入器510は、図5に例示されるように、触媒612の上流に尿素512(または、例えば、尿素/水混合物)の噴霧を注入するように配置され得ることが想定される。システム500は、注入器510に、好ましくは、尿素(またはその混合物)が貯蔵され得るタンク(図示されない)または同様のものから、尿素を提供するように構成されるポンプ520をさらに含む。システム500は、特定の排出制御戦略に従って注入器510およびポンプ520を動作させるために、注入器510のための注入器デューティサイクルXおよびポンプデューティサイクルXの両方を制御するように構成される制御装置530をさらに含む。この目的のため、当然ながら、例えば、排気システム610内の排気ガスの様々な性質を測定するための、および/または例えば、エンジン600自体の様々な性質を測定するための追加のセンサ(例示されない)も提供され得る。最後に、システム500はまた、図4を参照して説明されるようなデバイス400を含む。デバイス400は、エンジン600の稼働中、注入器510が詰まっているかどうかを決定するために使用される。本明細書内で先に説明されるように、この目的のため、デバイス400は、制御装置530から、注入器デューティサイクルXおよびポンプデューティサイクルX(のコピー)を受信する。システム500のいくつかの実施形態において、デバイス400が制御装置530の一部として実装されること、または制御装置530がデバイス400の一部として実装されることが想定される。デバイス400は、注入器が詰まっていることが決定される場合、例えば、車両内の警告ランプを点灯するため、可聴アラームを鳴らすため、または、例えば、指標を含む遠隔メッセージを、例えば、サービスセンタもしくは同様のものに送信するために、使用され得る指標Iを出力する。本明細書内で先に論じられたように、これは、注入器がそれ以上遅れることなく交換および/または修理され得るように、注入器が詰まっていることに気付くのに役立ち得る。いくつかの実施形態において、指標Iが、注入器が詰まっていることを示す場合、例えば、ソフトウェアを使用して、注入器が修理/交換される前に燃焼エンジンが(再)開始しないことが強制され得るようにされ得ることが想定される。
【0090】
本明細書内で想定されるのはさらに、エンジン600を含む、および、例えば排気システム610も含む、および特に、還元剤(例えば、尿素)注入システム500を含む、態様である。本明細書内の任意の特定の図には例示されないが、エンジン600(ならびに排気システム610および尿素注入システム500)を含む車両もまた、本開示の別の態様として想定される。本開示の別の態様は、排気システム610および還元剤/尿素注入システム500のみを含む。
【0091】
本明細書内で想定されるように、「燃焼エンジン」(または内燃エンジン(ICE))は、必ずしもディーゼル駆動エンジンではない。燃焼エンジンは、例えば、いくつかの想定された実施形態において、代わりに、例えば、火花点火(SI)燃焼エンジンであってもよい。そのような燃焼エンジンは、例えば、水素によって駆動され得る。同様に、本明細書内で想定されるように、燃焼エンジンは、例えば、トラック、バス、自動車、加工機械、および同様のものを含む多数の異なるタイプの車両を推進するために使用され得る。燃焼エンジンはまた、例えば、船舶、または、推進力が燃焼エンジンによって提供される任意の他のタイプの船の一部を形成し得る。燃焼エンジンが、例えば、(定置型)発電装置または同様のものなど、車両そのものではない何かを駆動するためにも使用され得ることも想定される。特に、還元剤注入器が詰まっているかどうかを検出するための提案された方法(およびデバイス)は、他のタイプの注入器、特に、デューティサイクル(例えば、パルス幅変調(PWM)または同様のものに基づく)を使用して駆動されるように構成される、および任意の種類の加圧された非圧縮性流体を注入するように構成される任意の種類の注入器にも適用され得ることが想定される。そのような他の注入器は、例えば、エンジンディーゼル注入システムの一部を形成するディーゼル注入器、または、例えば、マッフルにおいてディーゼルを注入して再生成のためにより高いレベルまで温度を上昇させるのを助けるために使用される後処理炭化水素注入器(AHI)であってもよい。
【0092】
特徴および要素は、特定の組み合わせで上に説明され得るが、各特徴または要素は、他の特徴もしくは要素なしに単独で、または他の特徴および要素ありもしくはなしで様々な組み合わせで使用され得る。追加的に、開示された実施形態に対する変異形は、図面、本開示、および添付の特許請求項の研究から、特許請求された発明を実践する当業者によって理解および達成され得る。
【0093】
特許請求項において、「備える」および「含む」という言葉は、他の要素を除外せず、不定冠詞「a(1つの)」または「an(1つの)」は、複数形を除外しない。特定の特徴が相互に異なる従属請求項において列挙されるということだけでは、これらの特徴の組み合わせを有利に使用することができないということは示さない。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図1G
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5
【外国語明細書】