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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023071617
(43)【公開日】2023-05-23
(54)【発明の名称】固形組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/137 20060101AFI20230516BHJP
   A61K 31/485 20060101ALI20230516BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230516BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20230516BHJP
   A61P 3/02 20060101ALI20230516BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20230516BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20230516BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20230516BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20230516BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20230516BHJP
【FI】
A61K31/137
A61K31/485
A61P43/00 121
A61P11/00
A61P3/02
A61K9/20
A61K9/14
A61K9/16
A61K9/48
A61K47/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022177767
(22)【出願日】2022-11-07
(31)【優先権主張番号】P 2021183778
(32)【優先日】2021-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002819
【氏名又は名称】大正製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】西島 正道
(72)【発明者】
【氏名】藤井 純輝
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA30
4C076AA31
4C076AA36
4C076AA53
4C076BB01
4C076CC15
4C076CC21
4C076DD49Q
4C076DD53Q
4C076FF36
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC27
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA34
4C086NA03
4C086NA05
4C086ZA59
4C086ZC21
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA11
4C206KA01
4C206MA03
4C206MA05
4C206MA54
4C206NA03
4C206NA05
4C206ZA59
4C206ZC21
4C206ZC75
(57)【要約】
【課題】
メトキシフェナミン又はその塩とデキストロメトルファン又はその塩を含有しても、固形組成物の膨張が抑制された固形組成物を提供すること。また、メトキシフェナミン又はその塩とトラネキサム酸を含有しても、固形組成物の膨張が抑制された固形組成物を提供すること。
【解決手段】
(a)メトキシフェナミン又はその塩、(b)デキストロメトルファン又はその塩、及び(c)トラネキサム酸を含有することを特徴とする固形組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)メトキシフェナミン又はその塩、(b)デキストロメトルファン又はその塩、及び(c)トラネキサム酸を含有することを特徴とする固形組成物。
【請求項2】
(a)メトキシフェナミンの塩がメトキシフェナミン塩酸塩である請求項1に記載の固形組成物。
【請求項3】
(b)デキストロメトルファンの塩がデキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物である請求項1に記載の固形組成物。
【請求項4】
錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、丸剤、又はカプセル剤である請求項1~3のいずれかに記載の固形組成物。
【請求項5】
(c)トラネキサム酸を配合することによって、(a)メトキシフェナミン又はその塩及び(b)デキストロメトルファン又はその塩を含有する固形組成物の膨張を抑制する方法。
【請求項6】
(b)デキストロメトルファン又はその塩を配合することによって、(a)メトキシフェナミン又はその塩及び(c)トラネキサム酸を含有する固形組成物の膨張を抑制する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メトキシフェナミン又はその塩を含有する固形組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般用医薬品(OTC)の分野においては、如何に効果的に風邪の諸症状を除去等する
かが薬剤開発において重要である。風邪症候群のうち、特に咳の発作を抑制すること(鎮咳)は、患者の負担が軽減されるため大変重要である。
メトキシフェナミンは交感神経興奮作用に基づく気管支拡張作用を有する医薬品であり、総合感冒薬の鎮咳成分として配合されている(非特許文献1)。
今までに、メトキシフェナミン塩酸塩とトラネキサム酸を配合した固形組成物が知られている(特許文献1)。しかしながら、保存安定性に問題を生じるか否かについては、開示されていない。また、メトキシフェナミン又はその塩及びデキストロメトルファン又はその塩を含有する固形組成物については今までに報告されておらず、当然のことながらこれらを含有する固形組成物において、製剤の膨張が生じるか否かについて報告されていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】OTCハンドブック2002-03-基礎から応用まで-株式会社学術情報流通センター 第128-129頁
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-70285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、メトキシフェナミン又はその塩及びデキストロメトルファン又はその塩を含有する固形組成物を製造したところ、固形組成物が膨張するという知見を得た。また、メトキシフェナミン又はその塩と、トラネキサム酸を含有する固形組成物を製造したところ、固形組成物が膨張するという知見を得た。
【課題を解決するための手段】
【0006】
しかしながら、意外なことに、メトキシフェナミン又はその塩、トラネキサム酸、及びデキストロメトルファン又はその塩を組み合わせると、固形組成物の膨張が抑制されることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は
(1)(a)メトキシフェナミン又はその塩、(b)デキストロメトルファン又はその塩、及び(c)トラネキサム酸を含有することを特徴とする固形組成物、
(2)(a)メトキシフェナミンの塩がメトキシフェナミン塩酸塩である(1)に記載の固形組成物、
(3)(b)デキストロメトルファンの塩がデキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物である(1)~(2)のいずれかに記載の固形組成物、
(4)錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、丸剤、又はカプセル剤である(1)~(3)のいずれかに記載の固形組成物、
(5)(c)トラネキサム酸を配合することによって、(a)メトキシフェナミン又はその塩及び(b)デキストロメトルファン又はその塩を含有する固形組成物の膨張を抑制する方法、
(6)(b)デキストロメトルファン又はその塩を配合することによって、(a)メトキシフェナミン又はその塩及び(c)トラネキサム酸を含有する固形組成物の膨張を抑制する方法、
である。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、膨張が抑制された固形組成物の提供が可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に用いられるメトキシフェナミン又はその塩は、化学式C1117NOで示される化合物又はその塩であり、これらのうちの一種を単独で用いても二種以上を組み合わせて用いてもよい。このようなメトキシフェナミン又はその塩としては、公知の方法により製造できるほか、市販のものを用いることができる。また、メトキシフェナミン又はその塩は医薬的に許容されるものであれば特に限定されないが、前記塩とは、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩等の無機酸の塩、及び酢酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、炭酸塩等の有機酸塩等が挙げられ、特に好ましくは塩酸塩である。本発明の固形組成物中におけるメトキシフェナミン又はその塩の含有量(メトキシフェナミン又はその塩のうちの2種以上が含有される場合にはそれらの合計含有量、以下同じ)は、その薬効を示す量であれば特に限定されないが、通常0.1~70質量%、好ましくは1~50質量%、より好ましくは5~20質量%である。
【0010】
本発明に用いられるデキストロメトルファン又はその塩は、化学式C1825NOで示される化合物又はその塩であり、これらのうちの一種を単独で用いても二種以上を組み合わせて用いてもよい。このようなデキストロメトルファン又はその塩としては、公知の方法により製造できるほか、市販のものを用いることができる。また、デキストロメトルファン又はその塩は医薬的に許容されるものであれば特に限定されないが、前記塩とは、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、フェノールフタリン酸塩、リン酸塩等の無機酸の塩、及び酢酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、炭酸塩等の有機酸塩等が挙げられ、特に好ましくは臭化水素酸塩又はフェノールフタリン酸塩である。本発明の固形組成物中におけるデキストロメトルファン又はその塩の含有量(デキストロメトルファン又はその塩のうちの2種以上が含有される場合にはそれらの合計含有量、以下同じ)は、その薬効を示す量であれば特に限定されないが、通常0.1~50質量%、好ましくは0.5~30質量%、より好ましくは1~10質量%である。
【0011】
本発明に用いられるトラネキサム酸は、化学式C15NOで示される化合物である.このようなトラネキサム酸としては、公知の方法により製造できるほか、市販のものを用いることができる。本発明の固形組成物中におけるトラネキサム酸の含有量は、その薬効を示す量であれば特に限定されないが、通常1~80質量%、好ましくは5~70質量%、より好ましくは20~65質量%である。
【0012】
(a)メトキシフェナミン又はその塩と(b)デキストロメトルファン又はその塩の配合比は、(b)デキストロメトルファン又はその塩1質量部に対し、(a)メトキシフェナミン又はその塩が0.001~20質量部、好ましくは0.05~15質量部、さらに好ましくは1~10質量部である。
【0013】
(b)デキストロメトルファン又はその塩と(c)トラネキサム酸の配合比は、(b)デキストロメトルファン又はそれらの塩1質量部に対し、(c)トラネキサム酸が、特に限定されないが、0.001~40質量部、好ましくは0.01~35質量部、さらに好ましくは1~30質量部である。
【0014】
(a)メトキシフェナミン又はその塩と(c)トラネキサム酸の配合比は、(a)メトキシフェナミン又はその塩1質量部に対し、(c)トラネキサム酸が、特に限定されないが、0.01~30質量部、好ましくは0.1~20質量部、さらに好ましくは1~10質量部である。
【0015】
本発明の固形組成物中には本発明の効果を損なわない質的、量的範囲で、通常用いられる他の有効成分、賦形剤、崩壊剤、結合剤、流動化剤、滑沢剤、清涼化剤、着色剤、矯味剤、矯臭剤、香料、コーティング剤などを配合することができる。本発明の固形組成物に配合できる他の有効成分としては、例えば、解熱鎮痛剤、抗ヒスタミン剤、鎮咳剤、ノスカピン類、気管支拡張剤、去痰剤、催眠鎮静剤、ビタミン類、抗炎症剤、胃粘膜保護剤、生薬類、漢方処方、カフェイン類等があげられ、これらからなる群より選ばれる1種又は2種以上を含有しても良い。
【0016】
本発明の固形組成物に配合できる賦形剤としては、例えば、乳糖、デンプン類、結晶セルロース、ショ糖、糖アルコール等が挙げられ、崩壊剤としては、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスポビドン、カルメロース、カルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、アルファー化デンプン等が挙げられ、結合剤としては、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、ゼラチン、アルファー化デンプン、ポリビニルピロリドン、プルラン等が挙げられ、流動化剤としては、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素等が挙げられ、滑沢剤としては、ショ糖脂肪酸エステル、硬化油、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム等が挙げられ、清涼化剤としては、メントール、ハッカ油、ユーカリ油等が挙げられる。
【0017】
本発明の固形組成物は、常法により製造することができ、その方法は特に限定されるものではない。
例えば、(a)メトキシフェナミン又はその塩(以下、(a)成分ともいう)、(b)デキストロメトルファン又はそれらの塩(以下、(b)成分ともいう)、(c)トラネキサム酸を単に混合するだけでも良く、混合後に造粒しても良く、得られた造粒物を被覆してもよい。また、(a)成分、(b)成分又は(c)成分は必ずしも同一の造粒物に含まれている必要はない。 例えば、(a)成分と(c)成分を含有する造粒物を製造後に、(b)成分を混合する、あるいは、(a)成分と(b)成分を含有する造粒物を製造後に、(c)成分を混合する、あるいは、(a)成分と(c)成分を含有する造粒物と、(b)成分と(c)成分を含有する造粒物を製造後、2つの造粒物を混合する、等である。
【0018】
本願発明において、(a)成分と(b)成分を別々に造粒しても固形組成物の膨張が発生し、(c)成分がこれらと同一の造粒物に含まなくても膨張は抑制される。また、(a)成分と(c)成分を別々に造粒しても固形組成物の膨張が発生し、(b)成分がこれらと同一の造粒物に含まなくても膨張は抑制される。
【0019】
造粒方法も特に限定されず、湿式造粒法、乾式造粒法又は溶融造粒法などにより製造できるが、好ましくは湿式造粒法である。湿式造粒法には、例えば撹拌造粒法、流動層造粒法、練合造粒法、押し出し造粒法、転動流動造粒法が挙げられる。また得られた造粒物に適宜上記有効成分や賦形剤などの慣用の製剤添加剤を配合してもよい。また、このようにして得た混合物を打錠して錠剤とすることもできる。錠剤を製造する場合は、直接打錠法により製造してもよい。
【0020】
本発明の固形組成物は、通常、日本薬局方の製剤通則に規定されている剤形であれば特に限定されないが、好ましくは錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、丸剤、カプセル剤である。日本薬局方の製剤通則に規定されている錠剤には、口腔内崩壊錠、チュアブル錠、発泡錠、分散錠及び溶解錠、フィルムコーティング錠、糖衣錠、有核錠、積層錠などが含まれる。また、錠剤に割線や識別性向上のためのマーク、刻印を設けることができる。さらに、本製剤の錠剤は、丸錠であってもよいし、異型錠であってもよい。
【実施例0021】
以下に実施例及び比較例を挙げ、本発明をより詳しく説明するが、本発明はこれら実施例等に限定されるものではない。
【0022】
(比較例1~3、実施例1~3)
表1及び2に示す処方に従い各成分を量り取った後に混合、打錠し、固形組成物を得た。
【0023】
(試験例1)
比較例1~3、実施例1~3の固形組成物を40℃75%RH条件下で12時間保存した。保存後の固形組成物について、保存開始時の錠厚に対するそれぞれ組成物の錠厚変化率を以下の式にて算出した。結果を表1及び2に示した。

錠厚変化率(%)
=40℃75%RH-12時間で保存後の錠厚(mm)÷ 保存開始時の錠厚(mm)×100
【0024】
【表1】
【0025】
表1に示すように、実施例1及び2では、比較例1及び2と比較して40℃75%RH-12時間保存後の錠厚変化率が低値を示した。
【0026】
【表2】
【0027】
表2に示すように、実施例3では、比較例3と比較して40℃75%RH-12時間保存後の錠厚変化率が低値を示した。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明により、膨張を抑制し、保存安定性に優れた固形組成物の提供が可能となった。