(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023071618
(43)【公開日】2023-05-23
(54)【発明の名称】ボビン、袋状容器の製造装置および袋状容器の製造方法
(51)【国際特許分類】
B65H 75/14 20060101AFI20230516BHJP
【FI】
B65H75/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022177768
(22)【出願日】2022-11-07
(31)【優先権主張番号】P 2021183787
(32)【優先日】2021-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】500163366
【氏名又は名称】出光ユニテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】片田 亮
【テーマコード(参考)】
3F058
【Fターム(参考)】
3F058AA06
3F058AB03
3F058AC12
3F058BB11
3F058CA09
3F058CA11
3F058CA12
3F058CA14
3F058DA05
3F058DB03
3F058DB18
3F058DC01
3F058JA05
3F058JA06
(57)【要約】
【課題】ボビンの胴部の内側に部材を大きく突出させることなく、胴部と側板とが互いに対して回転するのを防止する。
【解決手段】紐状部材が巻回される筒状の胴部と、上記胴部の軸方向の両端部に取り付けられる1対の側板とを備え、上記胴部の軸方向の両端部の周面または端面に第1の係合部が形成され、上記側板に、上記第1の係合部に係合する第2の係合部が形成されるボビンが提供される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紐状部材が巻回される筒状の胴部と、
前記胴部の軸方向の両端部に取り付けられる1対の側板と
を備え、
前記胴部の軸方向の両端部の周面または端面に第1の係合部が形成され、
前記側板に、前記第1の係合部に係合する第2の係合部が形成されるボビン。
【請求項2】
前記第1の係合部は、前記胴部の端面に形成される前記胴部の軸方向の凸部または凹部の少なくともいずれか一以上を含み、
前記第2の係合部は、前記側板の表面、または前記側板の表面に形成された環状溝部の底面に形成され、前記第1の係合部の凸部または凹部の少なくともいずれか一以上に対応する前記側板の表面の法線方向の凹部または凸部を含む、請求項1に記載のボビン。
【請求項3】
前記第1の係合部は、前記胴部の周面から前記胴部の径方向に突出して前記胴部の周方向に延びるリブが前記周方向の一部で切り欠かれた切り欠き部を含み、
前記第2の係合部は、前記側板の表面、または前記側板の表面に形成され前記胴部の内径に対応する外径を有する環状突出部の端面に形成され、前記側板の表面の法線方向に突出する凸部を含む、請求項1に記載のボビン。
【請求項4】
前記第1の係合部は、前記胴部の内周面から前記胴部の径方向内側に突出する凸部を含み、
前記第2の係合部は、前記側板の表面に形成され前記胴部の内径に対応する外径を有する管状突出部の端面に形成される凹部を含む、請求項1に記載のボビン。
【請求項5】
前記胴部は、円弧断面の複数の板状部材を組み合わせることによって円筒状に形成される、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のボビン。
【請求項6】
前記第1の係合部および前記第2の係合部は、前記胴部の周方向について2箇所以上に形成される、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のボビン。
【請求項7】
前記第1の係合部および前記第2の係合部は、前記胴部の周方向について3箇所以上6箇所以下に形成される、請求項6に記載のボビン。
【請求項8】
前記胴部の内側を通過して前記1対の側板の間に架設される1または複数のシャフト部材をさらに備える、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のボビン。
【請求項9】
前記紐状部材としてテープ状部材が巻回された請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のボビンを含むテープ状部材供給手段と、
前記テープ状部材をフィルムに接合する接合手段と、
前記フィルムを袋状に成形する製袋手段と
を備える、袋状容器の製造装置。
【請求項10】
前記テープ状部材供給手段は、2つ以上の前記ボビンを含み、
前記テープ状部材は、2つ以上の前記ボビンに連続して巻回される、請求項9に記載の袋状容器の製造装置。
【請求項11】
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のボビンに前記紐状部材としてテープ状部材を巻回し、前記ボビンを前記胴部の軸回りに回転させながら前記テープ状部材を巻き出す工程と、
巻き出された前記テープ状部材をフィルムに接合する工程と、
前記フィルムを袋状に成形する工程と
を含む、袋状容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボビン、袋状容器の製造装置および袋状容器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ジッパーテープやバンドなどの紐状部材を巻回して保管および輸送するためにボビンが使用されている。一般的なボビンにおいて、紐状部材は筒状の胴部(巻き芯)に巻回される。特許文献1には、紐状部材が最後まで繰り出された後のボビンの回収時の輸送コストを低減するために、胴部を展開して平板状にし、積み重ねることができるボビンが記載されている。また、特許文献2には、巻回された紐状部材の巻き崩れを防止するために胴部の両端に側板を取り付けたボビンが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3363446号公報
【特許文献2】特許第4542754号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、例えば紐状部材を巻回したボビンを2つ以上連続して用いる場合、胴部に巻回された紐状部材の端を側板に取り付けた治具に固定して、それぞれのボビンの紐状部材を互いにつなぎ合わせる。このような場合において、ボビンの胴部と側板とが胴部の軸回りで互いに対して回転できる状態だと、胴部と側板との回転がずれることによって紐状部材が治具から外れる可能性がある。
【0005】
上記の特許文献2には、ボビンの胴部の内側に突出した固定部の鉤部を側板の凹部に係合させることによって胴部と側板とを固定する構造も記載されている。しかしながら、この場合、胴部を展開しても固定部が大きく突出しているために平板状にはならず、展開された胴部を積み重ねられないために回収時の輸送コストなどが低減されない。
【0006】
そこで、本発明は、ボビンの胴部の内側に部材を大きく突出させることなく、胴部と側板とが互いに対して回転するのを防止することが可能なボビン、袋状容器の製造装置および袋状容器の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1]紐状部材が巻回される筒状の胴部と、上記胴部の軸方向の両端部に取り付けられる1対の側板とを備え、上記胴部の軸方向の両端部の周面または端面に第1の係合部が形成され、上記側板に、上記第1の係合部に係合する第2の係合部が形成されるボビン。
[2]上記第1の係合部は、上記胴部の端面に形成される上記胴部の軸方向の凸部または凹部の少なくともいずれか一以上を含み、上記第2の係合部は、上記側板の表面、または上記側板の表面に形成された環状溝部の底面に形成され、上記第1の係合部の凸部または凹部の少なくともいずれか一以上に対応する上記側板の表面の法線方向の凹部または凸部を含む、[1]に記載のボビン。
[3]上記第1の係合部は、上記胴部の周面から上記胴部の径方向に突出して上記胴部の周方向に延びるリブが上記周方向の一部で切り欠かれた切り欠き部を含み、上記第2の係合部は、上記側板の表面、または上記側板の表面に形成され上記胴部の内径に対応する外径を有する環状突出部の端面に形成され、上記側板の表面の法線方向に突出する凸部を含む、[1]に記載のボビン。
[4]上記第1の係合部は、上記胴部の内周面から上記胴部の径方向内側に突出する凸部を含み、上記第2の係合部は、上記側板の表面に形成され上記胴部の内径に対応する外径を有する管状突出部の端面に形成される凹部を含む、[1]に記載のボビン。
[5]上記胴部は、円弧断面の複数の板状部材を組み合わせることによって円筒状に形成される、[1]から[4]のいずれか1項に記載のボビン。
[6]上記第1の係合部および上記第2の係合部は、上記胴部の周方向について2箇所以上に形成される、[1]から[5]のいずれか1項に記載のボビン。
[7]上記第1の係合部および上記第2の係合部は、上記胴部の周方向について3箇所以上6箇所以下に形成される、[6]に記載のボビン。
[8]上記胴部の内側を通過して上記1対の側板の間に架設される1または複数のシャフト部材をさらに備える、[1]から[7]のいずれか1項に記載のボビン。
[9]上記紐状部材としてテープ状部材が巻回された[1]から[8]のいずれか1項に記載のボビンを含むテープ状部材供給手段と、上記テープ状部材をフィルムに接合する接合手段と、上記フィルムを袋状に成形する製袋手段とを備える、袋状容器の製造装置。
[10]上記テープ状部材供給手段は、2つ以上の上記ボビンを含み、上記テープ状部材は、2つ以上の上記ボビンに連続して巻回される、[9]に記載の袋状容器の製造装置。
[11][1]から[8]のいずれか1項に記載のボビンに上記紐状部材としてテープ状部材を巻回し、上記ボビンを上記胴部の軸回りに回転させながら上記テープ状部材を巻き出す工程と、巻き出された上記テープ状部材をフィルムに接合する工程と、上記フィルムを袋状に成形する工程とを含む、袋状容器の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
上記の構成によれば、胴部の周面または端面に形成される第1の係合部に、側板に形成される第2の係合部を係合させることによって、胴部の内側に部材を大きく突出させることなく、胴部と側板とが互いに対して回転するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係るボビンの斜視図である。
【
図2】
図1に示されたボビンの一方の側板を取り出して示す図である。
【
図3】
図1に示されたボビンの胴部を取り出して示す図である。
【
図5】
図3に示された胴部を展開した状態を示す図である。
【
図6】
図5に示されたように展開された胴部を重ね合わせた状態を示す図である。
【
図7】本発明の第2の実施形態に係るボビンの一方の側板を取り出して示す図である。
【
図8】本発明の第2の実施形態に係るボビンの胴部を取り出して示す図である。
【
図9】本発明の第3の実施形態に係るボビンの一方の側板を取り出して示す図である。
【
図10】本発明の第3の実施形態に係るボビンの胴部を取り出して示す図である。
【
図12】
図10に示された胴部を展開した状態を示す図である。
【
図13】本発明の実施形態に係るボビンを2つ以上連続して用いる例を示す図である。
【
図14】
図13の例で生じうる問題について説明するための図である。
【
図15】本発明の実施形態に係るボビンを用いてテープ状部材が接合された袋状容器を製造する三方製袋機を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省略する。
【0011】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係るボビンの斜視図である。図示された例において、ボビン1は、筒状の胴部10と、胴部10の軸方向の両端部に取り付けられる側板20A,20Bと、胴部10の内側を通過して側板20A,20Bの間に架設されるシャフト部材30とを含む。例えばジッパーテープなどの紐状部材(図示せず)が胴部10に巻回される。胴部10の軸方向の両端部に側板20A,20Bが取り付けられていることによって、胴部10に巻回された紐状部材が胴部10の両端部から脱落して巻き崩れることが防止される。
【0012】
側板20A,20Bは、例えば合成樹脂製の円板状の部材である。図示された例では、側板20A,20Bに、外周付近で周方向に配列される円孔21、中心付近に形成される周方向リブ22、および周方向リブ22から外側に向かって延びる放射状リブ23が形成される。円孔21を形成することによって、例えば紐状部材の巻き取りまたは巻き出しの際に、指や治具などをかけてボビン1を胴部10の軸回りに容易に回転させることができる。また、周方向リブ22および放射状リブ23を形成することによって、側板20A,20Bを補強することができる。なお、円孔21、周方向リブ22および放射状リブ23はボビン1の用途や材質に応じて適宜設けられる構成要素であり、その有無および数、配置は図示された例に限定されない。側板20A,20Bは、キャップ24によってシャフト部材30に固定されている。側板20A,20Bとシャフト部材30との間に係合部などの回り止め構造を設けることによって、シャフト部材30を介して側板20A,20Bを互いに対して固定することができる。
【0013】
なお、他の例では、側板20A,20Bの間に胴部10の内側を通過する複数のシャフト部材が架設されてもよい。この場合、側板20A,20Bとそれぞれのシャフト部材との間に回り止め構造を設けなくても、複数のシャフト部材を介して側板20A,20Bを互いに対して固定することができる。
【0014】
図2は、
図1に示されたボビンの一方の側板を取り出して示す図である。
図1では主に側板20A,20Bの胴部10とは反対側の面に設けられる構成要素について説明したが、
図2では側板20Aの胴部10側の面に設けられる構成要素について説明する。なお、
図2には示されていないが、側板20Bについても同様に構成される。側板20Aの中心には、開孔25が形成される。シャフト部材30は胴部10側から開孔25に挿通され、胴部10とは反対側から
図1に示したキャップ24を用いて固定される。開孔25に近い側板20Aの中心付近には、側板20Aの表面から突出する環状突出部26が形成される。環状突出部26は、
図1に示したように側板20Aを胴部10に取り付けたときには胴部10の内側に嵌合する部分である。従って、環状突出部26の外径は、胴部10の内径に対応する。
【0015】
本実施形態では、環状突出部26の端面に凸部261が形成される。凸部261は、全体として側板20Aの表面の法線方向に突出している環状突出部26から、同じ方向にさらに突出した部分である。凸部261が次に説明する胴部10側の係合部と係合することによって、胴部10と側板20Aとが胴部10の軸回りで互いに対して回転することが防止される。
【0016】
図示された例では、環状突出部26の外側に、胴部10の軸方向の端部が嵌合する環状溝部27が形成されている。環状突出部26を胴部10の内側に嵌合させ、さらに環状溝部27に胴部10の端部を嵌合させることによって側板20A,20Bをより安定的に胴部10に取り付けることができるが、本実施形態の場合は環状溝部27を省略してもよい。
【0017】
図3は
図1に示されたボビンの胴部を取り出して示す図、
図4は
図3のIV-IV線に沿った断面図、
図5は
図3に示された胴部を展開した状態を示す図である。胴部10は、例えば合成樹脂製の板状部材11A~11Fを組み合わせることによって円筒状に形成される。板状部材11A~11Fは円弧断面で形成され、それぞれの板状部材の幅方向の端部に形成されるヒンジ12A~12Eで互いに連結されている。ヒンジ12A~12Eは、互いに隣接する板状部材の間を胴部10の外周側で接続する薄肉部分である。
【0018】
図5に示されるように、ヒンジ12A~12Eで板状部材11A~11Fを互いに対して回動させることによって、板状部材11A,11Fを両端にして胴部10を全体として平板状に展開することができる。板状部材11A,11Fのヒンジがない側の端部には重ね部13A,13Bが形成される。重ね部13A,13Bを互いに重ね合わせることによって、
図3および
図4に示されるように外周面が平滑な円筒状の胴部10を形成することができる。
【0019】
胴部10の内周面には、軸方向リブ14および周方向リブ15が形成される。軸方向リブ14は、胴部10の内周面から胴部10の径方向に突出して、胴部10の軸方向に延びる。周方向リブ15は、同様に胴部10の内周面から胴部10の径方向に突出して、胴部10の周方向に延びる。
図5では、胴部10の軸方向に配列される複数の周方向リブ15A~15Eが示されている。軸方向リブ14および周方向リブ15を形成することによって、板状部材11A~11Fを補強することができる。
【0020】
加えて、本実施形態では、胴部10の軸方向端部に形成される周方向リブ15が胴部10の周方向の一部で切り欠かれることによって切り欠き部16が形成される。この切り欠き部16に、上記で説明した側板20A,20Bの環状突出部26の凸部261を係合させることによって、胴部10と側板20A,20Bとが胴部10の軸回りで互いに対して回転することを防止できる。切り欠き部16には凸部261が係合するため、胴部10の周方向ついて、切り欠き部16の長さは凸部261の長さ以上である。
【0021】
なお、
図5に示されるように、胴部10の内周面には、軸方向の両端部に形成されて切り欠き部16が形成される周方向リブ15A,15E以外にも、それらの中間部に周方向リブ15B~15Dが形成される。胴部10の軸方向の両端部以外に形成されるこれらの周方向リブ15B~15Dには、切り欠き部が形成されなくてもよい。
【0022】
図6は、
図5に示されたように展開された胴部を重ね合わせた状態を示す図である。胴部10が展開された板状部材11A~11Fでは、胴部10の内周面にあたる面から軸方向リブ14および周方向リブ15が突出しているが、これらのリブはいずれも胴部10の内周面に沿って形成され、内周面から大きく突出することはない。従って、本実施形態では、
図6に示されるようにリブを含めて全体として平板状に展開された胴部10を積み重ね、回収時の輸送コストなどを低減することができる。
【0023】
以上で説明したように、本発明の第1の実施形態では、胴部10の内周面に設けられる周方向リブ15の切り欠き部16に側板20A,20Bの凸部261を係合させることによって、ボビン1の胴部10の内側に部材を大きく突出させることなく、胴部10と側板20A,20Bとが互いに対して回転するのを防止することができる。
【0024】
(第2の実施形態)
図7は本発明の第2の実施形態に係るボビンの一方の側板を取り出して示す図であり、
図8はボビンの胴部を取り出して示す図である。第2の実施形態に係るボビンは全体について上記の第1の実施形態と同様に構成されるが、胴部10と側板20A,20Bとの間の係合部の構成が第1の実施形態とは異なる。本実施形態では、胴部10側に設けられる第1の係合部が、胴部10の端面に形成される胴部10の軸方向の凸部または凹部の少なくともいずれか一以上を含む。また、側板20A,20B側に設けられる第2の係合部が、側板20A,20Bの表面、または側板20A,20Bの表面に形成された環状溝部27の底面に形成され、胴部10側の第1の係合部の凸部または凹部の少なくともいずれか一以上に対応する側板20A,20Bの表面の法線方向の凹部または凸部を含む。
【0025】
具体的には、
図7に示された側板20Aについて、胴部10側の面に設けられる環状突出部26に第1の実施形態のような凸部は形成されず、代わりに環状溝部27に凹部271が形成される。凹部271は、全体として側板20Aの表面の法線方向に陥凹している環状溝部27から、同じ方向にさらに陥凹した部分である。凹部271は、側板20Aの反対側の面まで貫通して貫通孔を形成していてもよい。側板20Bについても同様である。環状突出部26および環状溝部27の両方を形成することによって側板20A,20Bをより安定的に胴部10に取り付けることができるが、本実施形態の場合は環状突出部26を省略してもよい。
【0026】
一方、
図8に示された胴部10について、本実施形態では周方向リブ15に切り欠き部が形成されず、代わりに胴部10の軸方向端面から胴部10の軸方向に突出する凸部17が形成される。胴部10の
図8に示されたのとは反対側の端部についても同様である。図示された例のように、胴部10の両端部に周方向リブ15が形成されていなくてもよい。
【0027】
上記のような第2の実施形態では、側板20A,20Bに設けられる環状溝部27の凹部271に、胴部10の軸方向の端面に形成される凸部17が係合する。凸部17は胴部10の軸方向の端面に形成され、胴部10の内周面から突出することがないため、本実施形態でも上記の第1の実施形態と同様に、ボビン1の胴部10の内側に部材を大きく突出させることなく、胴部10と側板20A,20Bとが互いに対して回転するのを防止することができる。
【0028】
なお、第2の実施形態の変形例では、環状溝部27が形成されず、凹部271が側板20A,20Bから陥凹した部分として形成されてもよい。あるいは、上記の例では胴部10側に凸部、側板20A,20B側に凹部が形成されているが、この関係は逆でもよい。つまり、胴部10の軸方向端面が部分的に胴部10の軸方向に切り欠かれることによって凹部が形成され、側板20A,20Bには環状溝部27の底面が側板20A,20Bの表面の法線方向に突出した凸部が形成されてもよい。
【0029】
(第3の実施形態)
図9は本発明の第3の実施形態に係るボビンの一方の側板を取り出して示す図であり、
図10はボビンの胴部を取り出して示す図である。
図11は
図10のXI-XI線に沿った断面図であり、
図12は
図10に示された胴部を展開した状態を示す図である。第3の実施形態に係るボビンは全体について上記の第1の実施形態と同様に構成されるが、胴部10と側板20A,20Bとの間の係合部の構成が第1の実施形態とは異なる。本実施形態では、胴部10側に設けられる第1の係合部が、胴部10の内周面から胴部10の径方向内側に突出する凸部18を含む。また、側板20A,20B側に設けられる第2の係合部が、側板20A,20Bの表面から突出する環状突出部26に形成され、胴部10側の第1の係合部である凸部18に対応する寸法の凹部262を含む。なお、凹部262は、環状突出部26を側板20A,20Bの表面の高さまで切り欠いた切り欠き部であってもよい。
【0030】
具体的には、
図12に示された側板20Aについて、胴部10側の面に設けられる環状突出部26の端面に凹部262が形成される。凹部262は、全体として側板20Aの表面の法線方向に突出している環状突出部26が、部分的に切り欠かれることによって陥凹した部分である。側板20Bについても同様である。一方、
図13、
図14および
図15に示された胴部10について、本実施形態では軸方向の両端部付近には周方向リブが形成されず、それ以外の部分に周方向リブ15A~15Cが形成される。胴部10の軸方向の両端部では、胴部10の内周面から胴部10の径方向内側に突出する凸部18が形成される。胴部10の端部を側板20A,20Bの環状溝部27に嵌合させたときに、側板20A,20Bの環状突出部26は胴部10の内周面に沿い、凹部262と凸部18とが係合する。環状溝部27は省略されてもよく、その場合は胴部10の端部を側板20A,20Bの表面に当接させたときに、凹部262と凸部18とが係合する。
【0031】
上記のような第3の実施形態では、側板20A,20Bに設けられる環状突出部26の凹部262に、胴部10の内周面に形成される凸部18が係合する。凸部18は胴部10の内周面から突出するが、その突出高さは周方向リブ15A~15Cと同程度であるため、本実施形態でも上記の第1の実施形態と同様に、ボビン1の胴部10の内側に部材を大きく突出させることなく、胴部10と側板20A,20Bとが互いに対して回転するのを防止することができる。
【0032】
また、本実施形態では、胴部10の端面、および側板20A,20Bの表面から凸部が突出しないため、輸送時などに凸部が他の胴部や側板に接触することに起因する傷が発生しにくい。
【0033】
上記で説明したような本発明の実施形態において、胴部10側に設けられる第1の係合部(第1の実施形態では切り欠き部16、第2の実施形態では凸部17、第3の実施形態では凸部18)と、側板20A,20B側に設けられる第2の係合部(第1の実施形態では凸部261、第2の実施形態では凹部271、第3の実施形態では凹部262)とは、それぞれ胴部10の周方向で対応する位置に形成される。これらの係合部の数は特に限定されないが、例えば、胴部10の片側あたりで、胴部10の周方向について1箇所以上の係合部を形成することによって、胴部10と側板20A,20Bとの間の回転を安定的に防止することができる。係合部は2箇所以上であることが好ましく、3箇所以上であることがより好ましく、4箇所であることが特に好ましい。また、係合部の数の上限は特に限定されないが、胴部10や側板20A,20Bの加工性や部材強度の観点から6箇所以下であることが好ましく、5箇所以下であることがより好ましく、4箇所であることが特に好ましい。
【0034】
また、上記の実施形態では第1の係合部および第2の係合部を構成する切り欠き部、凸部および凹部が略矩形である例について説明したが、係合部を構成する部分の形状はこの例には限定されない。例えば、凸部が凹部または切り欠き部に円滑に嵌合するように、凹部または切り欠き部を略矩形にし、凸部を丸みを帯びた形状にしてもよい。胴部10と側板20A,20Bの相対的な回転を安定的に防止する観点からは、凸部および凹部または切り欠き部の少なくともいずれか、または両方が略矩形状であることが好ましい。
【0035】
図13は、本発明の実施形態に係るボビンを2つ以上連続して用いる例を示す図である。なお、
図13ではボビンの側板20が簡略化されて単なる円板として図示されている。図示された例では、3つのボビン1A,1B,1Cが連続して用いられる。それぞれのボビンの胴部には紐状部材であるジッパーテープ2が巻回されている。最初にボビン1Aに巻回されたジッパーテープ2が巻き出され、次にボビン1Bに巻回されたジッパーテープ2が巻き出され、最後にボビン1Cに巻回されたジッパーテープ2が巻き出される。この場合において、ボビン1Aの胴部に巻回されたジッパーテープ2の巻き始め部分(最も内側の部分)が治具(図示せず)で胴部に固定され、そこから引き出されたジッパーテープ2が側板20の外周部に取り付けられる治具3を介してボビン1Bに巻回されたジッパーテープ2の巻き終わり部分(最も外側で露出された部分)に接続される。ボビン1Bとボビン1Cとの間も同様に構成される。
【0036】
図14は、
図13の例で生じうる問題について説明するための図である。上記の本発明の実施形態とは異なり、側板20と胴部10とが互いに対して回転するのが防止されない場合、
図14(a)に示すようにジッパーテープ2に接している胴部10が先行して回転し、側板20の回転が相対的に遅れる。この場合、胴部10に治具4で固定されたジッパーテープ2の巻き始め部分と、側板20に治具3で固定されたジッパーテープ2の巻き終わり部分との間が引っ張られて、治具3,4のいずれかが外れてしまう可能性がある。本発明の実施形態では、側板20と胴部10とが互いに対して回転するのが防止されるため、
図14(b)に示すように胴部10の回転が側板20よりも先行することはなく、治具3,4を用いてジッパーテープ2を安定的に固定することができる。
【0037】
図15は、本発明の実施形態に係るボビンを用いてテープ状部材が接合された袋状容器を製造する三方製袋機を示す図である。図示されているように、三方製袋機600では、フィルム供給部601が、フィルムロール602に巻回されたフィルム110を繰り出し、切断刃(図示せず)を用いて幅方向に切断して互いに対向する1対の部分を形成する。一方、テープ供給部603は、上記で説明したボビン1A,1B,1Cに巻回されたテープ状部材120(上記の
図13および
図14の例では、ジッパーテープ2)を繰り出し、ガイド部材(図示せず)を用いてフィルム110の間の所定の位置に供給する。シールバー605は、テープ状部材120をフィルム110の所定の領域にそれぞれ接合する。接合には、ヒートシール、超音波による溶着、または接着剤を用いた接着などが用いられる。
【0038】
テープ状部材120が接合された後のフィルム110には、シールバー606,607によって、容器の収納空間を画定するシール部、具体的にはボトムシールやサイドシールが形成される。フィルム110を長手方向および幅方向に切断する切断刃608,609を用いてフィルム110袋状に成形する工程を経て、袋状容器100が製造される。袋状容器100においてフィルム110に接合されるテープ状部材120は、例えばジッパー構造を含んだジッパーテープであり、この場合、袋状容器100は、ジッパー構造を係合させることによって再封止可能である。あるいは、テープ状部材120は、例えば切裂き条片(カットテープ)を含み、切裂き条片を引っ張ることによって袋状容器100を容易に開封可能にするものであってもよい。また、テープ状部材120は、ジッパー構造および切裂き条片の両方を含んでいてもよい。
【0039】
なお、上記の例では袋状容器100が三方製袋機によって製造されたが、三方製袋機には限られず、他の各種の製袋機においても袋状容器100を製造することが可能であり、本発明の実施形態に係るボビン1は各種の製袋機においてテープ状部材を供給するために利用することができる。
【0040】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はこれらの例に限定されない。本発明の属する技術の分野の当業者であれば、請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0041】
1,1A,1B,1C…ボビン、10…胴部、11A,11B,11C,11D,11E,11F…板状部材、12A,12B,12C,12D,12E…ヒンジ、13A,13B…重ね部、14…軸方向リブ、15,15A,15B,15C,15D,15E…周方向リブ、16…切り欠き部、17,18…凸部、20,20A,20B…側板、21…円孔、22…周方向リブ、23…放射状リブ、24…キャップ、25…開孔、26…環状突出部、261…凸部、262…凹部、27…環状溝部、271…凹部、30…シャフト部材、2…ジッパーテープ、3,4…治具、600…三方製袋機、601…フィルム供給部、602…フィルムロール、603…テープ供給部、605,606,607…シールバー、608,609…切断刃。