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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023071633
(43)【公開日】2023-05-23
(54)【発明の名称】ディファレンシャルシステム
(51)【国際特許分類】
   F16H 48/08 20060101AFI20230516BHJP
   F16D 27/118 20060101ALI20230516BHJP
   B60K 23/08 20060101ALN20230516BHJP
【FI】
F16H48/08
F16D27/118
B60K23/08 C
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022180427
(22)【出願日】2022-11-10
(31)【優先権主張番号】202111354019.2
(32)【優先日】2021-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】511268454
【氏名又は名称】ジン-ジン エレクトリック テクノロジーズ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【弁理士】
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(74)【代理人】
【識別番号】100218604
【弁理士】
【氏名又は名称】池本 理絵
(72)【発明者】
【氏名】ヤン・カオ
(72)【発明者】
【氏名】ピン・ユー
(72)【発明者】
【氏名】ジャンウェン・リー
(72)【発明者】
【氏名】グゥオシァン・リュウ
(72)【発明者】
【氏名】フェイ・ワン
【テーマコード(参考)】
3D036
3J027
【Fターム(参考)】
3D036GA14
3D036GD02
3D036GD08
3D036GF10
3D036GH05
3D036GH06
3D036GH07
3D036GJ01
3J027FA34
3J027FA36
3J027FB04
3J027HA01
3J027HB07
3J027HC07
3J027HC19
3J027HC21
3J027HC29
3J027HE05
3J027HF44
(57)【要約】      (修正有)
【課題】伝達効率が高く、構造がコンパクトなディファレンシャルシステムの提供。
【解決手段】ディファレンシャル外殻と、ディファレンシャル内殻とを含み、ディファレンシャル外殻は、ディファレンシャルの前段伝動構造と伝動接続するためのものであり、ディファレンシャル断接機構は、断接クラッチと、第1端面歯と、第2端面歯とを含み、第1端面歯がディファレンシャル外殻とディファレンシャル内殻との間に設けられてディファレンシャル外殻と可動接続され、第1端面歯をディファレンシャル外殻に対して軸方向に移動させるとともに同期に回転させるようになっており、第2端面歯がディファレンシャル内殻と固定接続されており、断接クラッチは、第1端面歯と接続され、第1端面歯を第2端面歯に対して軸方向に移動させるように駆動し、第1端面歯と第2端面歯との噛合又は分離を制御するためのものである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディファレンシャルシステムであって、
ディファレンシャルと、ディファレンシャル断接機構とを含み、
前記ディファレンシャルは、ディファレンシャル外殻と、ディファレンシャル内殻とを含み、前記ディファレンシャル外殻は、前記ディファレンシャルの前段伝動構造と伝動接続するためのものであり、
前記ディファレンシャル断接機構は、断接クラッチと、第1端面歯と、第2端面歯とを含み、前記第1端面歯が前記ディファレンシャル外殻と前記ディファレンシャル内殻との間に設けられて前記ディファレンシャル外殻と可動接続され、前記第1端面歯を前記ディファレンシャル外殻に対して軸方向に移動させるとともに同期に回転させるようになっており、前記第2端面歯が前記ディファレンシャル内殻と固定接続されており、
前記断接クラッチは、前記第1端面歯と接続され、前記第1端面歯を前記第2端面歯に対して軸方向に移動させるように駆動し、前記第1端面歯と前記第2端面歯との噛合又は分離を制御するためのものである、ことを特徴とするディファレンシャルシステム。
【請求項2】
前記ディファレンシャル断接機構は、可動プレートスリーブ及びピンポストをさらに含み、
前記可動プレートスリーブが前記ディファレンシャル外殻に隙間をもって外装され、前記可動プレートスリーブが前記断接クラッチと固定接続されており、前記ピンポストは、一端が前記ディファレンシャル外殻における貫通孔を通って前記第1端面歯と固定接続され、他端が前記可動プレートスリーブと固定接続されており、前記断接クラッチは、前記可動プレートスリーブ及び前記ピンポストを介して、前記第1端面歯を軸方向に移動させるように駆動する、ことを特徴とする請求項1に記載のディファレンシャルシステム。
【請求項3】
前記断接クラッチの可動部品が前記可動プレートスリーブに外装され、前記断接クラッチの可動部品と前記可動プレートスリーブとの間にベアリングが設けられており、前記断接クラッチの固定部品は、外部構造と固定接続される、ことを特徴とする請求項2に記載のディファレンシャルシステム。
【請求項4】
前記第1端面歯の外周に第1雄スプラインが設けられ、前記ディファレンシャル外殻の内壁には、前記第1雄スプラインと合わせる第1雌スプラインが設けられており、前記第1雄スプラインが前記第1雌スプラインと噛合接続されるとともに、前記第1端面歯が前記ディファレンシャル外殻に対して軸方向に移動可能になっている、ことを特徴とする請求項1に記載のディファレンシャルシステム。
【請求項5】
前記ディファレンシャルシステムは、ディファレンシャルロック機構をさらに含み、前記ディファレンシャル断接機構が前記ディファレンシャルの一側の第1出力アクスルシャフトに外装され、前記ディファレンシャルロック機構が前記ディファレンシャルの他側の第2出力アクスルシャフトに外装されており、
前記ディファレンシャルロック機構は、ロッククラッチと、第3端面歯と、第4端面歯とを含み、前記第3端面歯が軸方向のみに移動可能に前記第2出力アクスルシャフトに外装されており、前記第4端面歯が前記ディファレンシャル外殻又は前記ディファレンシャル内殻と固定接続されており、前記ロッククラッチは、前記第2出力アクスルシャフトに外装され、前記第3端面歯を軸方向に移動させるように駆動するためのものであり、前記第3端面歯と前記第4端面歯とが噛み合うことで、前記第2出力アクスルシャフトを前記ディファレンシャル外殻又は前記ディファレンシャル内殻とロックさせ、前記第1出力アクスルシャフトと前記第2出力アクスルシャフトとの同じ回転速度を実現するようになっている、ことを特徴とする請求項1に記載のディファレンシャルシステム。
【請求項6】
前記ロッククラッチの可動部品が前記第3端面歯に外装され、前記ロッククラッチの可動部品と前記第3端面歯との間にベアリングが設けられており、前記ロッククラッチの固定部品は、外部構造と固定接続される、ことを特徴とする請求項5に記載のディファレンシャルシステム。
【請求項7】
前記第2出力アクスルシャフトに第2雄スプラインが設けられ、前記第3端面歯には、前記第2雄スプラインと合わせる第2雌スプラインが設けられており、前記第2雄スプラインが前記第2雌スプラインと噛合接続されるとともに、前記第3端面歯が前記第2出力アクスルシャフトに対して軸方向に移動可能になっている、ことを特徴とする請求項5に記載のディファレンシャルシステム。
【請求項8】
前記ディファレンシャル外殻と前記ディファレンシャル内殻とは、ベアリング又は潤滑リングを介して支持及び位置決めされており、
前記ディファレンシャル外殻は、ベアリングを介して外部構造と固定接続される、ことを特徴とする請求項1に記載のディファレンシャルシステム。
【請求項9】
前記ディファレンシャルは、4つの遊星歯車と、キャリアとをさらに含み、
前記キャリアは、4つの前記遊星歯車の頂端に設けられ、前記遊星歯車の位置を規制するためのものである、ことを特徴とする請求項1に記載のディファレンシャルシステム。
【請求項10】
前記断接クラッチ及び前記ロッククラッチは、ともに自己保持型電磁クラッチであり、前記自己保持型電磁クラッチは、それぞれ弾性部品又は磁性鋼を利用して自己保持し、分離状態及び接合状態を保持する時には、通電する必要がない、ことを特徴とする請求項1~請求項9のいずれか1つに記載のディファレンシャルシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディファレンシャル(差動装置)の技術分野に属し、特に、ディファレンシャルシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のディファレンシャルは、左右(又は前後)の駆動輪を異なる回転速度で回転させることを実現できる機構であり、その役割は、自動車が旋回走行したり、不整地を走行したりするときに、左右の車輪を異なる回転速度で転動させることであり、即ち、両側の駆動車輪が純粋な転動運動をするのを保証することである。
【0003】
自動車が異なる複雑な道路状況の走行中に、ディファレンシャルの動力の切断又は接合を必要とする可能性があり、例えば、自動車が四輪駆動と二輪駆動との間で切り替える場合、前/後のディファレンシャルの動力を切断又は接合する必要がある。しかし、従来の自動車では、ディファレンシャルの動力の切断又は接合には摩擦の方式が多く採用されているが、摩擦式ディファレンシャル動力系は、トルクの伝達効率が高くないとともに、体積が大きく、車内に配置するのが不便である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記課題に対して、本発明は、上記問題を解消し、又は、上記問題を少なくとも部分的に解決するために、ディファレンシャルシステムを開示している。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明には、以下の技術案が用いられている。
【0006】
本発明には、ディファレンシャルシステムが提供されており、前記ディファレンシャルシステムは、ディファレンシャルと、ディファレンシャル断接機構とを含み、
前記ディファレンシャルは、ディファレンシャル外殻と、ディファレンシャル内殻とを含み、前記ディファレンシャル外殻は、前記ディファレンシャルの前段伝動構造と伝動接続するためのものであり、
前記ディファレンシャル断接機構は、断接クラッチと、第1端面歯と、第2端面歯とを含み、前記第1端面歯が前記ディファレンシャル外殻と前記ディファレンシャル内殻との間に設けられて前記ディファレンシャル外殻と可動接続され、前記第1端面歯を前記ディファレンシャル外殻に対して軸方向に移動させるとともに同期に回転させるようになっており、前記第2端面歯が前記ディファレンシャル内殻と固定接続されており、
前記断接クラッチは、前記第1端面歯と接続され、前記第1端面歯を前記第2端面歯に対して軸方向に移動させるように駆動し、前記第1端面歯と前記第2端面歯との噛合又は分離を制御するためのものである。
【0007】
さらに、前記ディファレンシャル断接機構は、可動プレートスリーブ及びピンポストをさらに含み、
前記可動プレートスリーブが前記ディファレンシャル外殻に隙間をもって外装され、前記可動プレートスリーブが前記断接クラッチと固定接続されており、前記ピンポストは、一端が前記ディファレンシャル外殻における貫通孔を通って前記第1端面歯と固定接続され、他端が前記可動プレートスリーブと固定接続されており、前記断接クラッチは、前記可動プレートスリーブ及び前記ピンポストを介して、前記第1端面歯を軸方向に移動させるように駆動する。
【0008】
さらに、前記断接クラッチの可動部品が前記可動プレートスリーブに外装され、前記断接クラッチの可動部品と前記可動プレートスリーブとの間にベアリングが設けられており、前記断接クラッチの固定部品は、外部構造と固定接続される。
【0009】
さらに、前記第1端面歯の外周に第1雄スプラインが設けられ、前記ディファレンシャル外殻の内壁には、前記第1雄スプラインと合わせる第1雌スプラインが設けられており、前記第1雄スプラインが前記第1雌スプラインと噛合接続されるとともに、前記第1端面歯が前記ディファレンシャル外殻に対して軸方向に移動可能になっている。
【0010】
さらに、前記ディファレンシャルシステムは、ディファレンシャルロック機構をさらに含み、前記ディファレンシャル断接機構が前記ディファレンシャルの一側の第1出力アクスルシャフトに外装され、前記ディファレンシャルロック機構が前記ディファレンシャルの他側の第2出力アクスルシャフトに外装されており、
前記ディファレンシャルロック機構は、ロッククラッチと、第3端面歯と、第4端面歯とを含み、前記第3端面歯が軸方向のみに移動可能に前記第2出力アクスルシャフトに外装されており、前記第4端面歯が前記ディファレンシャル外殻又は前記ディファレンシャル内殻と固定接続されており、前記ロッククラッチは、前記第2出力アクスルシャフトに外装され、前記第3端面歯を軸方向に移動させるように駆動するためのものであり、前記第3端面歯と前記第4端面歯とが噛み合うことで、前記第2出力アクスルシャフトを前記ディファレンシャル外殻又は前記ディファレンシャル内殻とロックさせ、前記第1出力アクスルシャフトと前記第2出力アクスルシャフトとの同じ回転速度を実現するようになっている。
【0011】
さらに、前記ロッククラッチの可動部品が前記第3端面歯に外装され、前記ロッククラッチの可動部品と前記第3端面歯との間にベアリングが設けられており、前記ロッククラッチの固定部品は、外部構造と固定接続される。
【0012】
さらに、前記第2出力アクスルシャフトに第2雄スプラインが設けられ、前記第3端面歯には、前記第2雄スプラインと合わせる第2雌スプラインが設けられており、前記第2雄スプラインが前記第2雌スプラインと噛合接続されるとともに、前記第3端面歯が前記第2出力アクスルシャフトに対して軸方向に移動可能になっている。
【0013】
さらに、前記ディファレンシャル外殻と前記ディファレンシャル内殻とは、ベアリング又は潤滑リングを介して支持及び位置決めされており、
前記ディファレンシャル外殻は、ベアリングを介して外部構造と固定接続される。
【0014】
さらに、前記ディファレンシャルは、4つの遊星歯車と、キャリアとをさらに含み、
前記キャリアは、4つの前記遊星歯車の頂端に設けられ、前記遊星歯車の位置を規制するためのものである。
【0015】
さらに、前記断接クラッチ及び前記ロッククラッチは、ともに自己保持型電磁クラッチであり、前記自己保持型電磁クラッチは、それぞれ弾性部品又は磁性鋼を利用して自己保持し、分離状態及び接合状態を保持する時には、通電する必要がない。
【発明の効果】
【0016】
本発明の利点及び有益な効果は、以下の通りである。
【0017】
本発明のディファレンシャルシステムにおいて、ディファレンシャル外殻は、ディファレンシャルの前段伝動構造と伝動接続するためのものであり、断接クラッチによって第1端面歯と第2端面歯との分離又は噛合を駆動し、さらに、ディファレンシャル外殻とディファレンシャル内殻との間の動力伝送の遮断又は接続を実現し、当該ディファレンシャルシステムは、ディファレンシャルの動力の切断又は接合を迅速に実現することができ、トルクの伝達効率が高く、使用寿命が長く、構造がコンパクトであり、車内に配置し易いなどの利点を有する。
【0018】
以下の好ましい実施形態の詳細な説明を読むことにより、様々な他の利点及びメリットが当業者にとって明らかになる。図面は、好ましい実施形態を例示するためのものに過ぎず、本発明を制限するものとして解釈されるべきではない。また、図面全体において、同じ部品には同じ参照符号が付されている。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施例1におけるディファレンシャルシステムの軸方向断面図
図2】本発明の実施例1におけるディファレンシャルシステムの分解構造図
図3】本発明の実施例1における双安定電磁クラッチの分解構造図
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の目的、技術案及び利点が更に明白になるように、以下、本発明の具体的な実施例及び対応する図面と併せて、本発明の技術案を明確且つ完全に説明する。明らかなことに、記載された実施例は、本発明の一部の実施例に過ぎず、すべての実施例ではない。本発明の実施例に基づいて創造的な努力をすることなく当業者によって得られる他のすべての実施例は、本発明の保護範囲内に含まれる。
【0021】
以下、図面を参照して、本発明の各実施例による技術案を詳しく説明する。
【0022】
[実施例1]
【0023】
本実施例には、ディファレンシャルと、ディファレンシャル断接機構とを含むディファレンシャルシステムが提供されている。
【0024】
図1図2に示すように、ディファレンシャルは、ディファレンシャル外殻(アウタハウジング)1と、ディファレンシャル内殻(インナーハウジング)2とを含み、ディファレンシャル内殻2がディファレンシャル外殻1内に設けられており、ディファレンシャル外殻1がディファレンシャル内殻2に対して回転可能である。ディファレンシャル外殻1とディファレンシャル内殻2との組立を容易にするために、ディファレンシャル外殻1は、別体構造設計を採用し、ディファレンシャル前外殻1-1とディファレンシャル後外殻1-2とからなるとともに、ディファレンシャル前外殻1-1とディファレンシャル後外殻1-2とが軸方向に沿って固定接続され、例えばボルトを介して固定接続されている。
【0025】
また、ディファレンシャル外殻は、ベアリングを介して外部構造と固定接続されて、ディファレンシャル外殻の位置制限が実現されるとともに、ディファレンシャル外殻が外部構造に対して相対的に回転可能になる。そのうち、外部構造は、減速機ケーシング又は減速ボックスであってもよい。
【0026】
ディファレンシャル外殻1は、ディファレンシャルの前段伝動構造と伝動接続され、ディファレンシャルの前段伝動構造によって、車両動力系の動力をディファレンシャルに伝達することが実現される。そのうち、本実施例のディファレンシャル外殻1に大歯車3が設けられており、大歯車3がディファレンシャルの前段伝動構造と伝動接続されることにより、大歯車3を介して動力伝達が行われる。
【0027】
さらに、大歯車3は、固定ボルト4を介してディファレンシャル外殻1に固定されており、ディファレンシャルの構造を簡素化するために、固定ボルト4によって、ディファレンシャル前外殻1-1と、ディファレンシャル後外殻1-2と、大歯車3との三者の固定接続を実現してもよい。他の実施例において、大歯車3は、ディファレンシャル外殻1と一体鋳造されてもよく、又は、大歯車3は、例えばフランジ接続のような他の構造形式でディファレンシャル外殻1に固定されてもよい。
【0028】
ディファレンシャルの両側には、第1出力アクスルシャフト(第1出力ハーフシャフト)5及び第2出力アクスルシャフト(第2出力ハーフシャフト)6がそれぞれ接続されている。第1出力アクスルシャフト5は、一端がディファレンシャル外殻1を通ってディファレンシャル内殻2と伝動接続され、他端が車両の車輪と接続されている。第2出力アクスルシャフト6は、一端がディファレンシャル外殻1を通ってディファレンシャル内殻2と伝動接続され、他端が車両の車輪と接続されている。ディファレンシャルは、第1出力アクスルシャフト5及び第2出力アクスルシャフト6を介して車輪に動力を伝達する。
【0029】
具体的に、図1図2に示すように、ディファレンシャル断接機構が第1出力アクスルシャフト5に外装されており、ディファレンシャル断接機構は、断接クラッチ40と、第1端面歯7と、第2端面歯8とを含み、第1端面歯7がディファレンシャル外殻1とディファレンシャル内殻2との間に設けられてディファレンシャル外殻1と可動接続され、第1端面歯7をディファレンシャル外殻1に対して軸方向に相対移動させながら、同期回転を保持させることができるようになっている。第2端面歯8がディファレンシャル内殻2と固定接続されており、本実施例の第2端面歯8は、ディファレンシャル内殻2と一体鋳造成形されているが、勿論、他の実施例では、第2端面歯8は、ボルト又はネジを介してディファレンシャル内殻2に固定されてもよい。
【0030】
断接クラッチ40は、第1出力アクスルシャフト5に外装されて第1端面歯7と接続され、第1端面歯7を第2端面歯8に対して軸方向に移動させるように駆動し、第1端面歯7と第2端面歯8との噛合又は分離を制御するためのものである。
【0031】
本実施例によるディファレンシャルシステムの作動原理は、以下の通りである。断接クラッチが第1端面歯を第2端面歯と噛み合わせるように駆動すると、ディファレンシャル外殻とディファレンシャル内殻とが伝動接続され、ディファレンシャル外殻がディファレンシャル内殻へ動力を伝達して、ディファレンシャルを回転駆動し、ディファレンシャルがさらに動力を第1出力アクスルシャフト及び第2出力アクスルシャフトに伝達し、このとき、車両動力系が車輪に動力を提供する。一方、断接クラッチが第1端面歯を第2端面歯と分離させるように駆動すると、ディファレンシャル外殻とディファレンシャル内殻との間に伝動接続が存在しなくなり、ディファレンシャル外殻がディファレンシャル内殻へ動力を伝達せず、ディファレンシャルの動力が切断され、このとき、車両動力系が車輪に動力を提供しない。
【0032】
以上をまとめて、本実施例によるディファレンシャルシステムにおいて、ディファレンシャル外殻がディファレンシャルの前段伝動構造と伝動接続され、断接クラッチによって第1端面歯と第2端面歯との分離又は噛合を駆動し、さらに、ディファレンシャル外殻とディファレンシャル内殻との間の動力伝送の遮断又は接続を実現する。当該ディファレンシャルシステムは、ディファレンシャルの動力の切断又は接合を迅速に実現することができ、トルクの伝達効率が高く、使用寿命が長く、構造がコンパクトであり、車内に配置し易いなどの利点を有する。
【0033】
本実施例において、図1図2に示すように、ディファレンシャル断接機構は、可動プレートスリーブ9及びピンポスト10をさらに含む。
【0034】
具体的に、ディファレンシャル外殻1が両側へ延びており、可動プレートスリーブ9がディファレンシャル前外殻1-1に隙間をもって外装され、可動プレートスリーブ9が断接クラッチ40と固定接続されており、ピンポスト10は、一端がディファレンシャル前外殻1-1における貫通孔を通って第1端面歯7と固定接続され、他端が可動プレートスリーブ9と固定接続されており、そして、貫通孔とピンポスト10とが隙間ばめとされることで、ピンポスト10が貫通孔内を軸方向に移動可能になり、さらに、可動プレートスリーブ9がディファレンシャル外殻1に対して軸方向に移動するように限定される。このように、断接クラッチ40は、可動プレートスリーブ9及びピンポスト10を介して第1端面歯7を軸方向に移動させるように駆動し、さらに第1端面歯7と第2端面歯8との噛合又は分離を制御する。そのうち、ピンポスト10の数量及び位置は、設計ニーズに応じて調整可能である。
【0035】
さらに、図1に示すように、断接クラッチ40の可動部品が可動プレートスリーブ9に外装されており、可動プレートスリーブ9と断接クラッチ40との間が相対回転可能になるように、断接クラッチ40の可動部品と可動プレートスリーブ9との間にベアリングが設けられており、断接クラッチ40の固定部品は、外部構造と固定接続され、断接クラッチ40の可動部品は、断接クラッチ40の固定部品に対して軸方向に移動可能であり、断接クラッチ40の分離及び接合により、第1端面歯7を軸方向に移動させるように駆動することが実現される。そのうち、外部構造は、減速機ケーシング又は減速ボックスであってもよい。
【0036】
本実施例において、第1端面歯がディファレンシャル外殻に対して軸方向に移動しながら、同期回転を保持することを実現するために、第1端面歯の外周に第1雄スプラインが設けられ、ディファレンシャル外殻の内壁には、第1雄スプラインと合わせる第1雌スプラインが設けられており、第1雄スプラインと第1雌スプラインとは、噛合接続されるとともに隙間をもって設けられることで、第1端面歯がディファレンシャル外殻に対してのみ軸方向に移動可能であり、他の相対運動はない。第1端面歯と第2端面歯とが噛み合っている場合、第1雄スプライン及び第1雌スプラインによって、ディファレンシャル外殻とディファレンシャル内殻との間のモーメント伝達が実現される。
【0037】
本実施例において、ディファレンシャルにロック機能を持たせ、第1出力アクスルシャフトと第2出力アクスルシャフトとの同じ回転速度での回転を実現するために、ディファレンシャルシステムは、ディファレンシャルロック機構をさらに含む。
【0038】
具体的に、図1に示すように、ディファレンシャルロック機構が第2出力アクスルシャフト6に外装されており、ディファレンシャルロック機構は、ロッククラッチ50と、第3端面歯11と、第4端面歯12とを含み、第3端面歯11が軸方向のみに移動可能に第2出力アクスルシャフト6に外装されており、第4端面歯12がディファレンシャル後外殻1-2と固定接続されている。そのうち、本実施例の第4端面歯12は、ディファレンシャル後外殻1-2と一体鋳造されているが、勿論、他の実施例において、第4端面歯12は、ボルト又はネジを介してディファレンシャル後外殻1-2に固定されてもよい。また、ロッククラッチ50も、第2出力アクスルシャフト6に外装され、第3端面歯11を軸方向に移動させるように駆動するためのものであり、第3端面歯11と第4端面歯12とが噛み合うことで、さらに第2出力アクスルシャフト6をディファレンシャル外殻1とロックさせ、第1出力アクスルシャフト5と第2出力アクスルシャフト6との同じ回転速度を実現するようになっている。
【0039】
断接クラッチが第1端面歯を第2端面歯と噛み合わせるように駆動する場合、ディファレンシャルは、動力を第1出力アクスルシャフト及び第2出力アクスルシャフトに伝達し、ロッククラッチが第3端面歯を第4端面歯と分離させるように駆動する場合、第1出力アクスルシャフトと第2出力アクスルシャフトは、同じ出力モーメント、異なる回転速度の出力を実現し、さらに2つの車輪の差動回転を実現することができる。ロッククラッチが第3端面歯を第4端面歯と噛み合わせるように駆動する場合、第1出力アクスルシャフトと、第2出力アクスルシャフトと、ディファレンシャル外殻との三者は、同じ回転速度で回転し、ディファレンシャルの差動作用が失われる。例えば、1つの駆動輪がスリップした場合、第1出力シャフトと第2出力シャフトとが同じ回転速度であれば、すべてのトルクがもう1つの駆動輪に移転することで、自動車は、苦境から抜け出すのに十分な走行動力を得られる。
【0040】
断接クラッチが第1端面歯を第2端面歯と分離させるように駆動する場合、ディファレンシャル外殻とディファレンシャル内殻との間の伝動接続が切断され、ディファレンシャルは、動力を第1出力アクスルシャフト及び第2出力アクスルシャフトに伝達することができなくなるが、ロッククラッチが第3端面歯を第4端面歯と噛み合わせるように駆動すると、ディファレンシャル外殻の動力は、第4端面歯と第3端面歯との噛み合いによって第2出力アクスルシャフトに伝達可能であり、第2出力アクスルシャフトのみが回転駆動され、このとき、すべてのトルクは、第2出力アクスルシャフトに対応する駆動輪に移転され、且つ第1出力アクスルシャフトと第2出力アクスルシャフトとは、異なる回転速度で回転可能であり、即ち、2つの車輪は、差動回転可能である。例えば、第1出力アクスルシャフトに対応する駆動輪がスリップして駆動力を提供できない場合、第2出力アクスルシャフトのみを回転駆動して、車両が苦境から抜け出すことを実現可能であり、そして、このとき、第1出力アクスルシャフトと第2出力アクスルシャフトとが差動回転可能であり、第1出力アクスルシャフトに対応する駆動輪と地面との摺動摩擦が減少され、さらにタイヤ摩耗と動力消費が減少される。
【0041】
図1に示すように、ロッククラッチ50の可動部品が第3端面歯11に外装されており、第3端面歯11がロッククラッチ50の可動部品に対して相対回転可能になるように、ロッククラッチ50の可動部品と第3端面歯11との間にベアリングが設けられている。ロッククラッチ50の可動部品が断接クラッチ40の固定部品に対して軸方向に移動可能であるため、断接クラッチ40の分離及び接合により、第3端面歯11を軸方向に移動させるように駆動することが実現され、ロッククラッチ50の固定部品は、外部構造と固定接続される。そのうち、外部構造は、減速機ケーシング又は減速ボックスであってもよい。
【0042】
本実施例において、第3端面歯が第2出力アクスルシャフトにて軸方向のみに移動可能であることを実現するために、第2出力アクスルシャフトに第2雄スプラインが設けられ、第3端面歯には、第2雄スプラインと合わせる第2雌スプラインが設けられており、第2雄スプラインと第2雌スプラインとは、噛合接続されるとともに隙間ばめとされることで、第3端面歯が第2出力アクスルシャフトに対してのみ軸方向に移動可能であり、他の相対運動はない。第3端面歯と第4端面歯とが噛み合っている場合、第2雄スプライン及び第2雌スプラインによって、ディファレンシャル外殻と第2出力アクスルシャフトとの間のモーメント伝達が実現される。
【0043】
本実施例において、図1図2に示すように、ディファレンシャル外殻1とディファレンシャル内殻2との間に潤滑リング13が設けられており、潤滑リング13によって両者の支持及び位置決めが実現され、さらにディファレンシャル外殻1とディファレンシャル内殻2との相対回転が実現される。
【0044】
本実施例において、図1図2に示すように、ディファレンシャルは、4つの遊星歯車14と、キャリア15とをさらに含み、そのうち、2つの遊星歯車14は、同じ長ピン軸の両端にそれぞれ外装され、他の2つの遊星歯車14は、2つの短ピン軸16にそれぞれ外装されている。
【0045】
具体的に、キャリア15は、4つの遊星歯車14の頂端に設けられ、長ピン軸は、キャリア15を通っており、キャリア15は、遊星歯車14の位置を規制して、ディファレンシャルの構造をより安定させるためのものである。そして、4つの遊星歯車14の設計により、ディファレンシャルの耐荷重強度が増加され、ディファレンシャルの使用寿命が延長される。
【0046】
本実施例において、断接クラッチ及びロッククラッチは、ともに双安定電磁クラッチを用いている。当該双安定電磁クラッチは、固定部品と、可動部品と、弾性部品とを含む。固定部品は、電磁クラッチの軸方向で位置が固定されるように保持され、可動部品は、電磁クラッチの軸方向に沿って移動可能であることで、電磁クラッチは、接合位置と分離位置との間で切り替えることができるようになっている。
【0047】
具体的に、図1図3に示すように、固定部品は、ヨーク17と、鉄心18と、電磁コイル19とを含み、そのうち、複数の鉄心18は、ヨーク17の円周方向に沿ってヨーク17の同じ側面に配設されており、複数の電磁コイル19は、それぞれ複数の鉄心18に外装されており、且つ電磁コイル19の通電時に電磁力を発生することができる。
【0048】
可動部品は、アーマチュアディスク20及び導磁ディスク21を含む。そのうち、導磁ディスク21は、アーマチュアディスク20におけるヨーク17から離れた側に固定されており、ヨーク17と、アーマチュアディスク20と、導磁ディスク21との三者は、電磁クラッチの軸方向に沿って対応して設けられる関係を形成している。アーマチュアディスク20に複数の磁性鋼22が設けられており、そして、鉄心18と磁性鋼22とが正確に接合され易くなるように、複数の磁性鋼22の軸線は、それぞれ複数の鉄心18の軸線と同じ直線上にある。
【0049】
本実施例において、ヨークとアーマチュアディスクとの間の接合の安定性を保証するために、ヨーク及びアーマチュアディスクの寸法に応じて、8つの鉄心及び8つの磁性鋼が設けられている。他の実施例において、異なる設計要求に応じて、鉄心及び磁性鋼の設置数量及び位置を調整可能である。また、本実施例のヨーク及び導磁ディスクは、いずれも一体型構造設計を採用しており、即ち、ヨーク及び導磁ディスクは、いずれも円環構造設計を採用しているが、勿論、異なる使用環境に応じて、ヨーク及び/又は導磁ディスクを非円環構造形式に設計してもよい。
【0050】
弾性部品は、アーマチュアディスク20とヨーク17との間の位置関係を調整するためのものである。そのうち、本実施例において、弾性部品がアーマチュアディスク20とヨーク17との間に設けられるとともに、弾性部品が圧縮状態の付勢力を有しているため、アーマチュアディスク20とヨーク17とを自然状態での分離位置に保持することができる。
【0051】
本実施例において、鉄心が独立して設けられているため、電磁コイルから生じる磁気誘導強度を磁性鋼に対してより集中的、且つ密集的にすることができ、その結果、より高い電気エネルギー変換率が得られる。このとき、同極同士が反発し合い、異極同士が引き合うという原理に基づいて、電磁コイルを順方向通電と逆方向通電の間で切り替えるように制御することにより、大きな差値のある電磁力を形成することができ、さらに弾性部品と協働すれば、アーマチュアディスクとヨークとの間の位置関係の調整が実現される。
【0052】
電磁コイルが順方向通電されると、電磁コイルから生じる電磁力によって、鉄心と磁性鋼との間の接合力が増加されることで、アーマチュアディスクは、弾性部品の付勢力に抗して、ヨークとの接合位置に移動するように駆動される。
【0053】
電磁コイルが逆方向通電されると、電磁コイルから生じる電磁力によって、鉄心と磁性鋼との間の接合力が低減されることで、アーマチュアディスクが弾性部品の付勢力の作用でヨークから離れる方向に移動することにより、アーマチュアディスクは、ヨークと分離した位置まで押し出される。
【0054】
好ましくは、本実施例において、隣接する2つの電磁コイルが1組とされ、且つ同じ組内の2つの電磁コイルは、磁極が同じとなる巻線を1組構成するように巻回され、即ち、コンシクエントポール(consequent-pole)型巻線を構成し、それと対応する2つの磁性鋼は、磁極が同じとなる起磁力組を1組構成するように設けられる。このとき、同じ組内にある2つの電磁コイルは、通電後にU字型の磁路をヨークと形成し、そして、対応する磁気鋼及び導磁ディスクを介して、閉じた環状磁路を形成し、このように、磁気漏れ現象の発生を効果的に回避し、電磁利用率を向上させ、磁気鋼及び電磁コイルの利用率を向上させることができる。
【0055】
本実施例における双安定電磁クラッチの作動原理は、以下の通りである。
【0056】
電磁コイルが非通電状態にある場合、電磁コイルが鉄心に電磁力を発生せず、弾性部品の付勢力が鉄心と磁性鋼との間の自然接合力よりも大きいため、アーマチュアディスクとヨークとは、弾性部品の付勢力の作用で、自然に分離した位置にあり、即ち、アーマチュアディスクとヨークとの間に大きなエアギャップが保持される。
【0057】
電磁コイルが順方向通電されている場合、電磁コイルが鉄心に順方向の電磁力を発生し、鉄心と磁性鋼との間の接合力を弾性部品の付勢力よりも大きくなるように上昇させるため、アーマチュアディスクは、ヨークとの接合位置に移動され、即ち、アーマチュアディスクとヨークとの間に小さなエアギャップが形成される。このとき、電磁コイルへの通電を切断し、電磁コイルから生じる電磁力を排除した後でも、鉄心と磁性鋼との間に形成された接合力が依然として弾性部品の付勢力よりも大きい状態に保持されることで、アーマチュアディスクがヨークとの接合位置に保持され、電磁コイルが電気エネルギーを消費しない状態になる。
【0058】
電磁コイルが逆方向通電されている場合、電磁コイルが鉄心に逆方向の電磁力を発生し、鉄心と磁性鋼との間の接合力を弾性部品の付勢力より小さくなるように低減させるため、アーマチュアディスクは、弾性部品の付勢力の作用で、ヨークとの分離位置に移動され、即ち、アーマチュアディスクとヨークとの間により大きな寸法のエアギャップが形成される。
【0059】
以上をまとめて、本実施例の双安定電磁クラッチは、分離状態と接合状態とのいずれでも、通電する必要も、いかなる他の形式のエネルギーを消費する必要もなく、エネルギー消費がなく、発熱もなく、使用寿命が長いという利点を有し、電源喪失によるクラッチの突然の切断などのリスクが効果的に防止されることで、システム全体の安全性及び信頼性が向上される。同時に、本実施例の双安定電磁クラッチにおいて、隣接する2つの電磁コイルを1組とし、磁極が同じとなる巻線を1組構成するように同じ組内の2つの電磁コイルを巻回し、磁極が同じとなる起磁力組を1組構成するように、対応する2つの磁性鋼を設けることで、同じ組内の2つの電磁コイルによって、閉じた磁路回路が構成され、磁気漏れ現象が効果的に回避され、磁性鋼及び電磁コイルの利用率が向上され、電磁クラッチの軽量化及びコンパクト化の設計が達成される。
【0060】
本実施例において、図1図3に示すように、ヨーク17にガイドピン23がさらに設けられ、アーマチュアディスク20には、軸方向に沿ってガイドピン23に対応するガイド孔24が設けられている。このとき、アーマチュアディスク20とヨーク17とが軸方向で対応した設置を形成した場合、ガイドピン23の端部がガイド孔24にちょうど挿入され、且つガイドピン23がガイド孔24内を軸方向に移動可能である。このとき、ガイドピン23とガイド孔24との間の協働により、アーマチュアディスク20とヨーク17とは、相対的に回転することなく、軸方向のみに相対移動を形成することができるため、当該双安定電磁クラッチの分離及び接合の過程において、電磁コイル19と磁性鋼22との位置が一対一の対応関係を保持することが保証され、さらに当該双安定電磁クラッチの分離と接合との間での切り替えの正確性と信頼性が保証される。
【0061】
さらに、図3に示すように、本実施例のガイドピン23に位置規制フランジ25がさらに設けられている。位置規制フランジ25は、ガイドピン23の外周に設けられており、その外径寸法がガイド孔24の孔径寸法よりも大きい。このとき、双安定電磁クラッチが接合状態にある場合、ガイドピン23がガイド孔24に入り込むとともに、位置規制フランジ25とアーマチュアディスク20とが直接接触を形成することにより、鉄心18と磁性鋼22とが接合位置に保持される。このように、位置規制フランジ25とアーマチュアディスク20との直接接触を利用して位置決め鉄心18と磁性鋼22との間のギャップ距離を形成できるだけでなく、鉄心18と磁性鋼22との長時間の直接接触による摩耗を回避することもできるため、鉄心18及び磁性鋼22に対する保護が向上され、双安定電磁クラッチの使用寿命が延ばされる。
【0062】
そのうち、本実施例において、ガイドピンに強磁性材料が用いられており、図3に示すように、ガイドピン23に誘導コイル26が設けられており、隣接する2つのガイドピン23に巻回された2つの誘導コイル26が1組とされ、同じ組内の2つの誘導コイル26は、磁極が同じとなる巻線を1組構成するように巻回されている。
【0063】
このとき、同じ組内の2つのガイドピンは、ガイド孔を通って、導磁ディスクに設けられた誘導ブロックと軸方向エアギャップを形成し、即ち、同じ組内の2つのガイドピンは、同じ誘導ブロックに対応しており、そのうち、双安定電磁クラッチが分離位置にある場合、ガイドピンと誘導ブロックとの間のエアギャップが大きいのに対して、双安定電磁クラッチが接合位置にある場合、ガイドピンと誘導ブロックとの間のエアギャップが小さい。
【0064】
ガイドピンと誘導ブロックとの間の軸方向エアギャップが誘導コイルの誘導係数に影響するため、軸方向エアギャップの大きさが異なると、対応する誘導コイルから出力される電流信号も異なる。そのため、誘導コイルに1つの入力電流信号を与えた後に、誘導コイルから出力される電流信号によって、ガイドピンと誘導ブロックとの間のエアギャップの大きさを特定し、さらにヨークに対するアーマチュアディスクの位置を判断すれば、双安定電磁クラッチの状態が判断される。
【0065】
本実施例において、誘導コイル及び誘導ブロックが双安定電磁クラッチの構造に基づいて設計されるため、電磁クラッチの体積を増加させないとともに電磁クラッチの対称性に影響を与えることなく、電磁クラッチの状態の監視を実現でき、統合化の度合いが高く、構造が簡単であり、製造コストが低いという利点を有する。
【0066】
なお、本実施例において、ガイドピンには位置規制フランジが設けられているため、位置規制フランジによって、ガイドピンに巻回された誘導コイルに対して軸方向位置の位置規制を行い、誘導コイルの軸方向での位置移動の発生を防止することができる。
【0067】
また、図3を参照して、導磁ディスク21と誘導ブロック27との間に磁気シールドスリーブ28がさらに設けられている。磁気シールドスリーブ28によって、導磁ディスク21上の磁路を遮蔽する役割が果たされることで、誘導コイル26から生じる誘導磁路と電磁コイル19から生じる電磁磁路とは、互いに独立して、互いに干渉しないようになる。そのうち、磁気シールドスリーブ28は、磁気シールドアルミニウムスリーブであることが好ましい。
【0068】
本実施例において、断接クラッチの弾性部品として圧縮スプリングが用いられ、且つ圧縮スプリングがガイドピンに外装されており、具体的に、スプリングが誘導コイルの外側に外装され、スプリングの一端がヨークと直接に固定接続されている。弾性部品としてスプリングを用いることで、双安定電磁クラッチ内部の空間体積を十分に活用し、その構造をよりコンパクトにすることができる。ロッククラッチの弾性部品には、同様に圧縮スプリングが用いられ、スプリングは、ヨーク及びアーマチュアディスクと同軸に設けられており、スプリングの一端がアーマチュアディスクと接続され、他端がヨークと接続されている。
【0069】
本実施例において、図1及び図3に示すように、アーマチュアディスク20における導磁ディスク21に近い側には、位置決めフランジ29がさらに設けられ、且つ導磁ディスク21が位置決めフランジ29に外装されている。これにより、導磁ディスク21とアーマチュアディスク20との位置決め及び接続が実現されるとともに、導磁ディスク21とアーマチュアディスク20とが同じ軸方向直線上にあることを保証される。
【0070】
図3に示すように、本実施例のアーマチュアディスク20には磁性鋼溝30が設けられ、且つ磁性鋼22が磁性鋼溝30内に固定されている。具体的に、磁性鋼22がポッティング又は射出方式で磁性鋼溝30内に固定されている。これにより、アーマチュアディスクの厚さ寸法が低減され、さらにクラッチ全体の寸法が低減され、小型化設計が達成される。
【0071】
なお、異なる設計要求に応じて、磁性鋼の頂端面は、例えば長方形、正方形、三角形又は円形などの異なる形状を採用することが可能である。
【0072】
また、本実施例において、各電磁コイル間は、並列接続、直列接続、組分け直列接続、組分け並列接続又はハイブリッド接続のいずれかの方式で接続することが可能であり、即ち、各電磁コイルは、直列接続又は組分け直列接続の方式で接続されてもよく、並列接続又は組分け並列接続の方式で接続されてもよく、また、直並列接続の方式で接続し、例えば複数の電磁コイルを1組として選択して直列に接続してから、直列に接続されたいくつかの組の電磁コイルを並列に接続するといったように、ハイブリッド接続の方式で接続されてもよい。
【0073】
[実施例2]
【0074】
本実施例は、断接クラッチ及びロッククラッチがともに自己保持型電磁クラッチである点で、実施例1と異なっており、その構造及び機能については、具体的に、「ディファレンシャルのロック構造」(中国特許出願番号:202110480211.X)という特許出願に記載の自己保持型電磁クラッチを参照されたい。自己保持型電磁クラッチは、それぞれ弾性部品又は磁性鋼を利用して自己保持し、分離状態及び接合状態を保持する時には、通電する必要がなく、エネルギー消費が小さく、発熱が少なく、使用寿命が長いなどの利点を有する。
【0075】
[実施例3]
【0076】
本実施例は、第4端面歯がディファレンシャル内殻と固定接続されており、ロッククラッチが第3端面歯を第4端面歯と噛み合わせるように駆動することで、第2出力シャフトをディファレンシャル内殻とロックさせ、ディファレンシャル内殻と、第1出力シャフトと、第2出力シャフトとの同じ回転速度を実現するという点で、実施例1と異なっている。
【0077】
本実施例において、断接クラッチが第1端面歯を第2端面歯と噛み合わせるように駆動する場合にのみ、第1出力シャフトと第2出力シャフトが駆動力を得ることができ、即ち、断接クラッチによってディファレンシャルの動力の完全切断を実現でき、ディファレンシャルシステムの制御性が向上される。
【0078】
[実施例4]
【0079】
本実施例は、ディファレンシャル外殻とディファレンシャル内殻とがベアリングを介して支持及び位置決めされるという点で、実施例1と異なっている。
【0080】
上記したのは、あくまでも本発明の具体的な実施形態であり、本発明の上記教示の下で、当業者は、上記実施例に基づいて他の改良又は変形を行うことが可能である。当業者であれば、上記具体的な記載は本発明の目的をより良く解釈するためのものであり、本発明の保護範囲は特許請求の範囲の保護範囲に基づくものであることが理解されるべきである。
【符号の説明】
【0081】
1…ディファレンシャル外殻、1-1…ディファレンシャル前外殻、1-2…ディファレンシャル後外殻、2…ディファレンシャル内殻、3…大歯車、4…固定ボルト、5…第1出力アクスルシャフト、6…第2出力アクスルシャフト、7…第1端面歯、8…第2端面歯、9…可動プレートスリーブ、10…ピンポスト、11…第3端面歯、12…第4端面歯、13…潤滑リング、14…遊星歯車、15…キャリア、16…短ピン軸、17…ヨーク、18…鉄心、19…電磁コイル、20…アーマチュアディスク、21…導磁ディスク、22…磁性鋼、23…ガイドピン、24…ガイド孔、25…位置規制フランジ、26…誘導コイル、27…誘導ブロック、28…磁気シールドスリーブ、29…位置決めフランジ、30…磁性鋼溝、40…断接クラッチ、50…ロッククラッチ。
図1
図2
図3
【外国語明細書】