(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023071688
(43)【公開日】2023-05-23
(54)【発明の名称】リン酸化タウペプチドの組成物およびその使用
(51)【国際特許分類】
A61K 38/04 20060101AFI20230516BHJP
A61K 38/16 20060101ALI20230516BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20230516BHJP
A61K 39/05 20060101ALI20230516BHJP
A61K 39/08 20060101ALI20230516BHJP
A61K 39/095 20060101ALI20230516BHJP
A61K 39/39 20060101ALI20230516BHJP
A61K 9/127 20060101ALI20230516BHJP
A61K 47/24 20060101ALI20230516BHJP
A61K 47/64 20170101ALI20230516BHJP
A61P 21/02 20060101ALI20230516BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20230516BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20230516BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230516BHJP
A61K 31/711 20060101ALI20230516BHJP
C07K 14/47 20060101ALN20230516BHJP
C12N 15/117 20100101ALN20230516BHJP
【FI】
A61K38/04 ZNA
A61K38/16
A61K39/00 H
A61K39/05
A61K39/08
A61K39/095
A61K39/39
A61K9/127
A61K47/24
A61K47/64
A61P21/02
A61P25/00
A61P25/28
A61P43/00 121
A61K31/711
C07K14/47
C12N15/117 Z
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023018374
(22)【出願日】2023-02-09
(62)【分割の表示】P 2020523284の分割
【原出願日】2018-10-24
(31)【優先権主張番号】62/577,157
(32)【優先日】2017-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.プルロニック
3.SPAN
(71)【出願人】
【識別番号】514010601
【氏名又は名称】ヤンセン ファーマシューティカルズ,インコーポレーテッド
(71)【出願人】
【識別番号】513022966
【氏名又は名称】エーシー イミューン エス.エー.
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100093676
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】ラムスバーグ,エリザベス アン
(72)【発明者】
【氏名】デ マルコ,ドナタ
(72)【発明者】
【氏名】チャッカムカル,アニッシュ
(72)【発明者】
【氏名】サダカ,シャーロット
(72)【発明者】
【氏名】ゴーズミット,ジャープ
(72)【発明者】
【氏名】ムース,アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】ピルグレン ボッシュ,マリア
(72)【発明者】
【氏名】ヴキチェヴィッチ ヴェリル,マリヤ
(72)【発明者】
【氏名】ヒックマン,デヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】ピオット,ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】ギミレ,サロージ ラージ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】タウペプチドのリポソームまたはコンジュゲート、ならびにアルツハイマー病などのタウオパチーを防止または処置するためのその使用法を提供する。
【解決手段】タウペプチド、好ましくはリン酸化タウペプチドを含有するリポソーム、および免疫原性担体とコンジュゲートさせた、タウペプチド、好ましくはリン酸化タウペプチドを含有するコンジュゲートによる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.タウペプチドと、
b.ヘルパーT細胞エピトープと
を含み、
前記タウペプチドがリポソームの表面上に提示されている、リポソーム。
【請求項2】
トール様受容体4リガンドおよびトール様受容体9リガンドのうちの少なくとも1つを
さらに含む、請求項1に記載のリポソーム。
【請求項3】
a.タウホスホペプチドと、
b.ヘルパーT細胞エピトープと、
c.脂質付加CpGオリゴヌクレオチドと、
d.トール様受容体4リガンドを含有するアジュバントと
を含み、
前記タウホスホペプチドがリポソームの表面上に提示されている、リポソーム。
【請求項4】
1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DMPC)、1,2-
ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホリル-3’-rac-グリセロール(DM
PG)、およびコレステロールからなる群から選択される1つまたは複数の脂質をさらに
含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のリポソーム。
【請求項5】
前記タウペプチドが配列番号1~配列番号12からなる群から選択されるアミノ酸配列
を有し、
前記アミノ酸配列が、前記タウホスホペプチドが前記リポソームの表面上に提示される
ことを可能にする1つまたは複数の修飾をさらに含む、請求項1から4のいずれか一項に
記載のリポソーム。
【請求項6】
前記ヘルパーT細胞エピトープが、配列番号23~配列番号26からなる群から選択さ
れる少なくとも1つのアミノ酸配列を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載のリポ
ソーム。
【請求項7】
配列番号18~配列番号22からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有する前記
脂質付加CpGオリゴヌクレオチドを含み、前記CpGオリゴヌクレオチドは1つまたは
複数のホスホロチオエートヌクレオチド間結合を有し、前記CpGオリゴヌクレオチドは
少なくとも1つの親油性基と共有結合している、請求項1から6のいずれか一項に記載の
リポソーム。
【請求項8】
前記トール様受容体4リガンドがモノホスホリル脂質A(MPLA)である、請求項1
から7のいずれかに記載のリポソーム。
【請求項9】
a.配列番号27~配列番号38からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するタウ
ペプチドと、
b.配列番号39~配列番号44からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するヘル
パーT細胞エピトープ、好ましくは、配列番号13~配列番号17からなる群から選択さ
れるアミノ酸配列からなる前記ヘルパーT細胞エピトープと、
c.配列番号18~配列番号22からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有し、
1つまたは複数のホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含み、リンカーを介して少な
くとも1つのコレステロールと共有結合している、脂質付加CpGオリゴヌクレオチドと
d.モノホスホリル脂質A(MPLA)と
を含む、リポソーム。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載のリポソームと薬学的に許容される担体とを含む
、医薬組成物。
【請求項11】
タウホスホペプチドと、リンカーを介してそれとコンジュゲートさせた免疫原性担体と
を含むコンジュゲートであって、以下の構造:
(i)式(I):
【化1】
または
(ii)式(II):
【化2】
[式中、
xは、0~10、好ましくは2~6、最も好ましくは3の整数であり、
nは、3~15、好ましくは3~12の整数である]、
を有する、コンジュゲート。
【請求項12】
前記免疫原性担体が、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、破傷風トキソイ
ド、CRM197、および髄膜炎菌(N. meningitidis)由来の外膜タンパク質混合物(
OMP)、またはその誘導体からなる群から選択される、請求項11に記載のコンジュゲ
ート。
【請求項13】
前記タウペプチドが配列番号1~配列番号12からなる群から選択されるアミノ酸配列
を有する、請求項11または12に記載のコンジュゲート。
【請求項14】
式(I)の構造を有し、前記免疫原性担体がCRM197である、請求項13に記載の
コンジュゲート。
【請求項15】
以下の構造:
【化3】
[式中、
nは、3~7の整数である]、
を有する、請求項14に記載のコンジュゲート。
【請求項16】
請求項11から15のいずれか一項に記載のコンジュゲートと薬学的に許容される担体
とを含む、医薬組成物。
【請求項17】
神経変性障害を患っている対象において免疫応答を誘導する方法であって、前記対象に
、請求項10に記載の医薬組成物または請求項16に記載の医薬組成物を投与することを
含む、方法。
【請求項18】
それを必要としている対象において神経変性疾患または障害を処置または防止する方法
であって、前記対象に、請求項10に記載の医薬組成物または請求項16に記載の医薬組
成物を投与することを含む、方法。
【請求項19】
前記神経変性疾患または障害が、神経原線維病変の形成によって引き起こされる、また
はそれに関連している、請求項17および18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記神経変性疾患または障害が、アルツハイマー病、パーキンソン病、クロイツフェル
ト-ヤコブ病、拳闘家認知症、ダウン症候群、ゲルストマン-ストロイスラー-シャイン
カー病、封入体筋炎、プリオンタンパク質脳アミロイド血管症、外傷性脳傷害、筋萎縮性
側索硬化症、グアムのパーキンソン認知症複合、神経原線維のもつれを伴う非グアム型運
動ニューロン疾患、嗜銀顆粒性認知症、大脳皮質基底核変性症、レビー認知症、筋萎縮性
側索硬化症、石灰化を伴うびまん性の神経原線維のもつれ、17番染色体に連鎖するパー
キンソニズムを伴う前頭側頭型認知症(FTDP-17)、ハレルフォルデン-スパッツ
病、多系統萎縮症、ニーマン-ピック病C型、ピック病、進行性皮質下グリオーシス、進
行性核上性麻痺、亜急性硬化性汎脳炎、もつれのみの認知症、脳炎後パーキンソニズム、
筋緊張性ジストロフィー、慢性外傷性脳障害(CTE)、原発性加齢関連タウオパチー(
PART)、またはレビー小体認知症(LBD)である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記神経変性疾患または障害が、アルツハイマー病、パーキンソン病、ダウン症候群、
前頭側頭型認知症と17番染色体に連鎖するパーキンソニズム(FTDP-17)、大脳
皮質基底核変性症、レビー認知症、筋萎縮性側索硬化症、筋緊張性ジストロフィー(disp
hasy)、慢性外傷性脳障害(CTE)、脳血管症、原発性加齢関連タウオパチー(PAR
T)、またはレビー小体認知症(LBD)である、請求項17から20のいずれか一項に
記載の方法。
【請求項22】
それを必要としている対象において神経変性疾患または障害の処置または防止において
使用するための、請求項10に記載の医薬組成物および請求項16に記載の医薬組成物の
うちの少なくとも1つを含む、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医学分野のものである。本発明は、特に、タウペプチドのリポソームまたはコ
ンジュゲート、およびアルツハイマー病などのタウオパチーを防止または処置するための
その使用に関する。
【背景技術】
【0002】
アルツハイマー病(AD)は、世界中で推定4400万人が冒されている進行性衰弱性
神経変性疾患である(Alzheimers.net)。診療所において現在利用可能なAD治療は臨床
症状の進行を遅らせることを目的とするが、疾患の根底にある病原性プロセスを標的とし
ない。残念ながら、これらの治療は最小限にしか有効でなく、したがって、追加の防止的
および治療的手段を開発および試験する緊急の必要性が存在する。
【0003】
アルツハイマー病の特徴的な病態は、凝集したアミロイドベータタンパク質を含む細胞
外溶菌斑、および高リン酸化タウタンパク質の細胞内「もつれ」または凝集の蓄積である
。これらのタンパク質の蓄積をもたらす分子学的事象の特徴づけは不十分である。アミロ
イドでは、アミロイド前駆体タンパク質の異常切断が、アミノ酸1~42を含む、凝集す
る傾向のある断片の蓄積をもたらすと仮定されている。タウでは、キナーゼ、ホスファタ
ーゼのどちらか、または両方の調節不全が、タウの異常リン酸化をもたらすと仮定されて
いる。タウは、高リン酸化された後、微小管と有効に結合してそれを安定化する能力を失
い、その代わりに患部ニューロンの細胞質に蓄積される。未結合かつ高リン酸化のタウが
最初のオリゴマー、その後により高次の凝集体を形成すると考えられ、その存在は、おそ
らくは正常な軸索輸送の中断を介して、それが形成されるニューロンの機能に負の影響を
与えると推定される。
【0004】
先進国では、アルツハイマー病又は他の認知症性タウオパチーを診断された個体は、一
般的にコリンエステラーゼ阻害剤(たとえばAricept(登録商標))またはメマン
チン(たとえばNamenda(商標))を用いて処置する。これらの薬物は、合理的に
良好な耐用性を示すが、有効性が非常に控えめである。たとえば、Aricept(登録
商標)は、処置した個体の約50%において症状の悪化を6~12カ月遅延させる。残り
の処置は非薬理学的であり、患者の認知能力が低下するについて、その日々の日常課題の
管理を可能にすることに焦点を当てている。
【0005】
いくつかの公開された研究(Asuni AA et al,. J Neurosci. 2007 Aug 22;27(34):9115
-29、Theunis C et al., PLoS One. 2013; 8(8): e72301、Kontsekova E et al., Alzhei
mers Res Ther. 2014 Aug 1;6(4):44)は、タウペプチドを含有する活性ワクチンが、マ
ウスまたはラットにおいて抗タウ免疫応答を誘導することができる、げっ歯類の脳におけ
る病理学的タウ凝集体の蓄積を低下させることができる、およびアルツハイマー病の動物
モデルにおいて認知低下の進行速度を低下させることができることを実証している。病理
学的タウタンパク質に対する活性ワクチンは、アルツハイマー病を有するヒト患者におい
て免疫原性であることが示されている(Novak P et al., Lancet Neurology 2017, 16:12
3-134)。国際公開2010/115843号パンフレットは、タンパク質タウの主要な
病理学的ホスホエピトープを模倣する抗原性ホスホペプチド、ならびにアルツハイマー病
を含めたタウオパチーの処置における治療的および診断的使用のための関連組成物を記載
している。しかし、現在、タウ媒介性疾患の発症を防止するために認可された有効なワク
チンは、依然として市場に存在しない。疾患が始まった後にその経過を妨害または遅らせ
るための有効な薬物も、市場に存在しない。したがって、これらの疾患を防止することが
できる新しい防止手段(たとえばワクチン)の同定が差し迫って必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
一般的な一態様では、本発明は、
a.好ましくはタウホスホペプチドであるタウペプチドと、
b.ヘルパーT細胞エピトープと
を含み、タウペプチドがリポソームの表面上に提示されている、リポソームに関する。
【0007】
一実施形態では、リポソームは、トール様受容体リガンドを含む少なくとも1つのアジ
ュバントをさらに含む。好ましくは、リポソームは、トール様受容体4リガンドおよびト
ール様受容体9リガンドのうちの少なくとも1つをさらに含む。
【0008】
好ましい実施形態では、本発明は、
a.好ましくはタウホスホペプチドであるタウペプチドと、
b.ヘルパーT細胞エピトープと、
c.i.トール様受容体9リガンド、好ましくは脂質付加CpGオリゴヌクレオチド、
および
ii.トール様受容体4リガンド、好ましくはトール様受容体4作用剤
のうちの少なくとも1つと
を含み、タウペプチドがリポソームの表面上に提示されている、リポソームに関する。
【0009】
さらなる好ましい実施形態では、本発明は、
a.タウホスホペプチドと、
b.ヘルパーT細胞エピトープと、
c.脂質付加CpGオリゴヌクレオチドと、
d.トール様受容体4リガンドを含有するアジュバントと
を含み、
タウホスホペプチドがリポソームの表面上に提示されている、リポソームに関する。
【0010】
別の一般的な態様では、本発明は、タウペプチド、好ましくはタウホスホペプチドと、
それとコンジュゲートさせた免疫原性担体とを含み、タウペプチドがリンカーを介して担
体とコンジュゲートしている、コンジュゲートに関する。リンカーは、ポリエチレングリ
コール(PEG)、スクシンイミジル3-(ブロモアセトアミド)プロピオネート(SB
AP)、およびm-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(M
BS)のうちの1つまたは複数を含むことができる。本発明において有用な免疫原性担体
の例には、それだけには限定されないが、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)
、破傷風トキソイド(TT)、CRM197、および髄膜炎菌(N. meningitidis)由来
の外膜タンパク質混合物(OMP)、またはその誘導体が含まれる。
【0011】
好ましい一実施形態では、本発明は、式(I)の構造:
【0012】
【0013】
【化2】
[式中、
xは、0~10、好ましくは2~6、最も好ましくは3の整数であり、
nは、2~11、好ましくは3~11の整数である]
を有するコンジュゲートに関する。
【0014】
本発明のさらなる態様は、本発明のリポソームまたはコンジュゲートと薬学的に許容さ
れる担体とを含む医薬組成物、医薬組成物を調製する方法、および、それを必要としてい
る対象における、タウに対する免疫応答の誘導、または神経変性疾患もしくは障害の処置
もしくは防止における、医薬組成物の使用に関する。
【0015】
一実施形態では、本発明は、神経変性障害を患っている対象において免疫応答を誘導す
る方法、または、それを必要としている対象において神経変性疾患もしくは障害を処置も
しくは防止することに関する。方法は、対象に、本発明のリポソームと薬学的に許容され
る担体とを含む医薬組成物、または本発明のコンジュゲートと薬学的に許容される担体と
を含む医薬組成物を投与することを含む。好ましくは、方法は、対象に、免疫化をプライ
ミングするための本発明の医薬組成物、および免疫化をブーストするための本発明の医薬
組成物を投与することを含む。
【0016】
本発明のさらなる態様、特長、および利点は、以下の発明を実施するための形態および
特許請求の範囲を読むことによってより良好に理解されるであろう。
【0017】
前述の概要および以下の本出願の好ましい実施形態の詳述は、添付の図面と併せて読ん
だ際により良好に理解されるであろう。しかし、本出願は図面中に示すこれらの詳細な実
施形態に限定されないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態による新規ワクチンを例示する図である。本発明の一実施形態によるタウリポソーム(上)および本発明の一実施形態によるタウコンジュゲート(下)である。
【
図2】
図2は、カプセル封入されたヘルパーT細胞エピトープ(たとえば破傷風ポリペプチド(tet))を含有する本発明の一実施形態によるリポソーム(第二世代リポソーム)を含むワクチンが、ヘルパーT細胞を活性化させることを例示する図である。
【
図3】
図3は、非自己または免疫原性担体タンパク質を含有する本発明の一実施形態によるコンジュゲートを含むワクチンが、ヘルパーT細胞を活性化させることを例示する図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施形態によるタウワクチンが、アカゲザルマカクにおいて持続的な高力価の抗リン酸化タウ抗体を誘導することを示す図である。酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)によって経時的に測定した1群あたりのエンドポイント力価の幾何平均は、ヘルパーT細胞エピトープなしの対照リポソームワクチンよりも、本発明の一実施形態によるリポソーム(リポソームZ)を含むワクチンまたは本発明の一実施形態によるコンジュゲート(コンジュゲートA)を含むワクチンの方が高い。
【
図5】
図5は、本発明の一実施形態によるリポソーム(リポソームZ)を用いて免疫化したアカゲザルマカクからの血清は、健康なヒト脳切片(右パネル)と比較して、ヒトAD脳切片(左パネル)において病理学的タウ構造と結合することを示す図である。
【
図6】
図6は、可溶性CpGおよびミョウバン水酸化物(alum hydroxide)を含有する組成物中で配合した、本発明の一実施形態によるコンジュゲート(コンジュゲートA)を用いて免疫化したアカゲザルマカクからの血清は、健康なヒト脳切片(下段)と比較して、ヒトAD脳切片(上段)において病理学的タウ構造と結合することを示す図である。
【
図7】
図7は、そのそれぞれがカプセル封入されたT細胞エピトープT50と1つまたは複数のアジュバントとを含有する、本発明の実施形態によるリポソームワクチン、リポソームX、Y、およびZによって誘導された、アカゲザルマカクにおける抗リン酸化タウ抗体の力価を示す図である。力価はELISAによって測定し、個々のサルにおける経時的なエンドポイント力価で提示されている。具体的には以下の通りである。
図7Aは、TLR4リガンドMPLA(3D-(6-アシル)PHAD(登録商標))を単独でアジュバントとして有するリポソームXによって誘導された抗リン酸化タウ抗体の力価を示す図である。
図7Bは、TLR9リガンド(脂質付加CpGオリゴヌクレオチド)を単独でアジュバントとして有するリポソームYによって誘導された抗リン酸化タウ抗体の力価を示す図である。
図7Cは、TLR4リガンドMPLA(3D-(6-アシル)PHAD(登録商標))とTLR9リガンド(脂質付加CpGオリゴヌクレオチド)との組合せをアジュバントとして有するリポソームZによって誘導された抗リン酸化タウ抗体の力価を示す図であり、2つのアジュバントの組合せは、個々のサル間で誘導される抗体価のばらつきがより少ないことも示している。
図7Dは、上述の免疫化群、およびTLR4リガンドMPLAを有するがT細胞エピトープを有さない対照リポソームワクチンとの抗体価の幾何平均を表し、本発明の実施形態によるワクチンが、対照リポソームワクチンよりも高い抗リン酸化タウ抗体の抗体価をもたらすことを示す図である。力価はELISAによって測定し、経時的な1群あたりのエンドポイント力価の幾何平均+/-95%の信頼区間で表されている。
【
図8】
図8は、本発明の一実施形態によるリポソームワクチン(たとえば、リポソームX、Y、もしくはZ)またはコンジュゲートワクチン(コンジュゲートA)を使用した免疫化が、アルツハイマー病患者の死後脳から単離した濃縮対らせん状細線維(ePHF)に特異的な抗体IgG力価を誘導することを示す図である。抗体価はMeso Scale Discovery(MSD)の技術によって測定し、50日目での個々のサルの値および最初の免疫化後の幾何平均+/-95%のCIとして表されている。
【
図9】
図9は、カプセル封入されたT50およびTLR4リガンド(3D-(6-アシル)PHAD(登録商標))とTLR9リガンド(脂質付加CpGオリゴヌクレオチド)との組合せをアジュバントとして含有する、本発明の一実施形態によるリポソームワクチン(リポソームZ)を用いた免疫化は、ほとんど配列番号2のリン酸化タウペプチドのN末端と結合する抗体を誘導する(
図9A)一方で、本発明の一実施形態によるコンジュゲートワクチン(コンジュゲートA)を用いて免疫化したサルは、リン酸化ペプチド(左)および非リン酸化ペプチド(右)のどちらについても、ほとんどペプチドのC末端部分と結合するIgG抗体を生じる(
図9B)ことを示す図である。
【
図10】
図10AおよびBは、カプセル封入されたT細胞エピトープT50およびTLR4リガンド(3D-(6-アシル)PHAD(登録商標))をアジュバントとして含有する、本発明の一実施形態によるリポソームワクチン(リポソームS)を用いたワクチン接種が、マウスにおいて、対照リポソームワクチン(TLR4リガンド、3D-(6-アシル)PHAD(登録商標)を有するがT細胞エピトープT50を有さない、リポソームR)ならびに表面T細胞エピトープT57(ジパルミトイル化T50)およびTLR4リガンド(3D-(6-アシル)PHAD(登録商標))を含有する本発明の一実施形態によるリポソームワクチン(リポソームT)よりも顕著に高い抗体価を誘導することを示す図である。最初の免疫化後の21日目(
図10A)および35日目(
図10B)での抗体価をELISAによって測定し、個々の値および1群あたりの幾何平均±95%のCIとして表されている。(
**:p<0.01、
***:p<0.001)。
【
図11】
図11は、T細胞ペプチドT48またはT52のリポソーム内へのカプセル封入(それぞれリポソームMまたはN)が、マウスにおいてカプセル封入されたペプチドに特異的なT細胞応答を誘導することを示す図である。T細胞応答はIFN-γ(
図11A)およびIL-4(
図11B)ELISPOTによって評価した。
【
図12】
図12は、カプセル封入されたT細胞エピトープを含有するリポソームワクチン(リポソームL)および繋留されたT細胞エピトープを含有するリポソームワクチン(リポソームO)はそれぞれ、T細胞エピトープを有さない対照リポソームワクチンよりも高いタウホスホペプチド特異的抗体価を誘導したことを示す図である。リポソームL、リポソームO、および対照リポソームのそれぞれは、MPLAをアジュバントとしてさらに含有する。
【
図13】
図13は、タウコンジュゲート(KLH-TAUVAC-p7.1またはKLH-TAUVAC-p22.1)が野生型マウスにおいてTfH細胞およびタウペプチドに対する頑強なAb力価を誘導することを示す図である。具体的には以下の通りである。
図13Aは、成体雌Balb/Cマウス(n=14匹/群)の群を、合計4回、100ugのアジュバント化KLH-タウコンジュゲートワクチン(KLH-TAUVAC-p7.1もしくはKLH-TAUVAC-p22.1)、活性プラセボワクチン(KLH+ミョウバンもしくはRibi)、または不活性のプラセボ(PBS)を用いて、示したスケジュールに従って免疫化したことを例示する図である。それぞれの免疫化群から4匹の動物を一次免疫化の7日後に屠殺し、注射部位を排出するリンパ節を採取した。
図13Bは、免疫化群(n=4匹のマウス/群、個々に分析)毎の排出リンパ節中のTfHの幾何平均パーセントを示す図である。活性ワクチンまたはプラセボを受けているすべての群が測定可能なTfHを有していた。さらに、ワクチンKLH-TAUVAC-p7.1、KLH-TAUVAC-p22.1、または活性プラセボKLH+ミョウバンを受けている動物は、不活性のプラセボを与えた動物よりもTfHを顕著に多く有していた(KLH-TAUVAC-p7.1ではp=0.0044、KLH-TAUVAC-p22.1ではp=0.0482、KLHではp=0.0063、ANOVA検定を使用、次いで多重比較用にダネットの調整)。
図13C~Hは、免疫化後の4つの時点(14、28、56、および84日目)での、ベースライン(0日目)からの血清力価の変化を、群の平均(n=5~10匹)について95%の信頼区間と共に示す図である。アスタリスクは、KLH-TAUVAC誘導性の抗体応答が、活性プラセボによって誘導されたものよりも顕著に高い時点を示す(p≦0.05、ANOVA検定を使用して測定、次いで多重比較用にチューキーの調整)、より詳細には以下の通りである。
図13Cは、リン酸化タウペプチドp7.1に対する結合力価を示す図である。
図13Dは、リン酸化タウペプチドp22.1に対する結合力価を示す図である。
図13Eは、非リン酸化タウペプチド7.1に対する結合力価を示す図である。
図13Fは、非リン酸化タウペプチド22.1に対する結合力価を示す図である。
図13GおよびHはそれぞれ、担体タンパク質KLHに対する結合力価を示す図である。
【
図14】
図14は、タウコンジュゲートを用いて免疫化したマウスからの血清が、他のタウオパチーからの病理学的タウ構造とも結合したことを示す図である。一次免疫化の84日後のそれぞれのワクチン接種群からプールした血清(n=6匹)を使用して、MAPT突然変異(MAPT P301S、前頭皮質)を有する前頭側頭認知症症例、ピック病(前頭皮質)、進行性核上性麻痺(PSP、尾状核)、および原発性加齢関連タウオパチー(PART、海馬)を有する症例からの脳組織を染色した。活性ワクチンを受けている動物からの血清では、それぞれのタウオパチーに典型的なタウ関連構造を強調された一方で、活性プラセボ(KLH-ミョウバンもしくはKLH-Ribi)または不活性のもの(PBS)を用いて免疫化した動物からの血清では、これらの構造のどれも染色されなかった。参考として、対応する領域のAT8を用いた免疫染色を示し、スケールバー=50umである。
【
図15】
図15は、ワクチン誘導性の抗体が加速タウオパチーモデルにおいて凝集タウを低下させることを示す図である。具体的には以下の通りである。
図15Aは、3カ月齢のP301Lトランスジェニックマウス(n=15匹/群)がKLH-TAUVAC-p7.1+RIBIまたは活性プラセボKLH+RIBIのどちらかを用いて免疫化したマウスからの精製IgGと共にプレインキュベートしたヒトePHFの定位注射を受けたことを示す図である。注射の2カ月後、すべてのマウスを屠殺し、マウスにおける全画分およびサルコシル不溶性画分中の凝集タウの量を決定した。
図15Bおよび15Cは、それぞれの動物の注射した半球から採取した全画分(B)およびサルコシル不溶性画分(C)を示す図である。グラフはMSDによって測定されたタウの量を示す。全画分および不溶性画分のどちらにおいても、KLH-TAUVAC-p7.1で免疫化したマウスからのIgGと共にプレインキュベートしたePHFを受けているマウスの脳は、対照抗体と共にプレインキュベートしたePHFを受けているマウスよりも顕著に少ない凝集タウを有していた。(p<0.0001、ANOVA検定を使用、次いで多重比較用にホルム-ボンフェローニ調整)
【
図16】
図16は、本発明の一実施形態によるタウコンジュゲート(コンジュゲートB)が、非ヒト霊長類においてリン酸化タウおよびePHFに対する高力価の抗体を誘導することを示す図である。アカゲザルマカクを、ミョウバンとCpGアジュバント化KLH-TAUVAC-p7.1(n=6匹)またはKLH(n=2匹)を用いて、1、29、85、および169日目に免疫化した。血液を14日毎に採取した。具体的には以下の通りである。
図16Aは、KLH-TAUVAC-p7.1を用いて免疫化した動物からの血清を、免疫化ペプチドp7.1に対する反応性について、ELISAを使用して試験したことを示す図である。
図16Bは、一次免疫化の50日後にすべての動物から採取した血清は、MSDを使用してヒトePHFに対して測定可能な抗体レベルを有しており、6匹の動物のうちの3匹がこの抗原に対して高い反応性を示していたことを示す図である。
図16Cは、一次免疫化の50日後に動物から採取した血清を健康な個体またはAD患者からのヒト脳切片に適用し、KLH-TAUVAC-p7.1群からの免疫後血清はAD脳組織中の病理学的タウ構造、すなわち、神経原線維のもつれ、神経絨毛糸、および神経突起老人斑を染色した一方で、KLHで免疫化したマウスからの血清はいかなる反応性も示さず、対照組織では染色は観察されなかったことを示す図である。
図16Dは、タウ免疫枯渇アッセイにて試験した場合に、KLH-TAUVAC-p7.1を受けている動物は、タウ種と結合して枯渇させることができる抗体を有していた一方で(50日目ではp=0.03、ANOVA検定を使用、次いで多重比較用にダネットの調整)、KLHを用いた免疫化はそのような抗体を始動させなかったことを示す図である。
図16Eは、免疫化前および後の血清も連続希釈した個々の試料として中和アッセイにおいて試験したことを示す図である。ベースラインからの変化(CFB)を、ワクチン接種前の-14日目(ベースライン)とワクチン接種後50、106、および190日目のそれぞれとの間の、読取り値のFRET計数の差異として計算した。その後、特定のワクチン接種後の日での応答(日
i)を以下のように計算した。 "応答 = %FRET_日
i - %FRET_ベースライン" 動物を変量効果として用いた、前述の応答に対する一般的な線形混合モデルを、カテゴリー変数として扱ったワクチン群、日、および血清レベルの変数ならびにすべてのその相互作用を用いて適用した。
【
図17】
図17は、本発明の一実施形態によるコンジュゲートワクチン(コンジュゲートA)ならびにミョウバン水酸化物(ミョウバン)とオリゴCpG(CpG)アジュバントとの組合せを用いて免疫化したマウスが、ワクチンペプチドに対してより高い力価抗体応答をもたらすことを示す図である。成体雌C57BL/6マウス(n=5~6匹/群)を、2ugまたは0.2ugのどちらかのコンジュゲートAワクチンを用いて、筋肉内で免疫化し、コンジュゲートワクチンを、単独で、ミョウバンと共に、CpGと共に、またはミョウバンとCpGの組合せと共にのいずれかで投与した。すべてのマウスに、研究の0日目に一次免疫化を与え、次いで28日目に単一のブースター免疫化を与えた。ミョウバンアジュバントの用量は500ug/マウス/注射であり、CpGアジュバントの用量は20ug/マウス/注射であった。グラフは、ワクチンペプチドT3.5をコーティング抗原として用いた免疫化マウスから採取した血清を使用した結合ELISAの結果を示し、免疫化前(0日目)ならびに免疫化後の2つの時点(28および42日目)に1群あたりのT3.5特異的平均エンドポイント力価をプロットし、エラーバーは標準誤差を表す。表は、ノンパラメトリックなクラスカル-ワリス検定を使用して抗体価を比較し、クラスカルワリス検定の事後としてウィルコクソン符号順位検定を使用して対での群の比較を評価した結果の統計分析を示す。具体的には以下の通りである。
図17Aは、マウスを、2ugのコンジュゲートAワクチンを用いて免疫化したことを示す図である。
図17Bは、マウスを、0.2ugのコンジュゲートAワクチンを用いて免疫化したことを示す図である。
【
図18】
図18は、様々なタウペプチド対T細胞エピトープの比を有する本発明の実施形態によるタウワクチンが、アカゲザルマカクにおいて持続的な高力価の抗リン酸化タウ抗体を誘導することを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
様々な刊行物、論文、および特許が背景技術および明細書全体にわたって引用または記
載されており、これらの参考文献のそれぞれが、その全体で本明細書中に参考として組み
込まれている。本明細書中に含められた文書、行為、材料、装置、論文などの議論は、本
発明のコンテクストを提供する目的のものである。そのような議論は、これらの事項の任
意のものまたは全体が、開示または特許請求されている任意の発明に関して従来技術の一
部を形成することを承認するものではない。
【0020】
別段に定義しない限りは、本明細書中で使用するすべての技術用語および科学用語は、
本発明が属する分野の技術者に一般的に理解されるものと同じ意味を有する。そうでない
場合は、本明細書中で使用する特定の用語は本明細書中に記載する意味を有する。
【0021】
本明細書および添付の特許請求の範囲中で使用する単数形「1つの(a)」、「1つの
(an)」、および「その(th)」には、コンテクストにより明らかにそうでないと指
示されない限り、複数形の指示対象が含まれることに注意する必要がある。
【0022】
別段に記述しない限りは、本明細書中に記載の濃度または濃度範囲などの任意の数値は
、すべての場合において用語「約」によって修飾されるとして理解されるものである。し
たがって、数値には、典型的には言及した値の±10%が含まれる。たとえば、1mg/
mLの濃度には0.9mg/mL~1.1mg/mLが含まれる。同様に、1%~10%
(w/v)の濃度範囲には0.9%(w/v)~11%(w/v)が含まれる。本明細書
中で使用する数値範囲の使用は、コンテクストにより明らかにそうでないと指示されない
限り、すべての可能な部分範囲、その範囲内にあるすべての個々の数値(そのような範囲
内にある整数が含まれる)、および値の分数が明白に含まれる。
【0023】
別段に指定しない限りは、一連の要素に先行する用語「少なくとも」とは、その一連に
あるすべての要素をいうと理解されるものである。当業者は、本明細書中に記載の本発明
の具体的な実施形態の多くの均等物を理解する、または日常的な実験以上のものを使用せ
ずにそれを確認できるであろう。そのような均等物は本発明によって包含されることを意
図する。
【0024】
本明細書中で使用する用語「含むこと」、「含む」、「含まれること」、「含まれる」
、「有すること」、「有する」、「含有すること」、もしくは「含有する」、またはその
任意の他の変形は、記述した整数または整数群の包含を暗示するが、任意の他の整数また
は整数群の排除を暗示せず、また、非排他的または開放型であることを意図すると理解さ
れるものとする。たとえば、要素のリストを含む組成物、混合物、プロセス、方法、論文
、または器具は、必ずしもそれらの要素のみに限定されず、明白に列挙されていない、ま
たはそのような組成物、混合物、プロセス、方法、論文、もしくは器具に固有でない他の
要素も含まれることができる。さらに、反対のことが明白に記述されていない限りは、「
または」とは、排他的なまたはではなく、包括的なまたはをいう。たとえば、条件Aまた
はBは、以下のうちの任意の1つによって満たされる:Aが真である(または存在する)
かつBが偽である(または存在しない)、Aが偽である(または存在しない)かつBが真
である(または存在する)、およびAおよびBがどちらも真である(または存在する)。
【0025】
当業者には理解されるであろうことに、好ましい発明の構成要素の寸法または特徴に言
及する場合に本明細書中で使用する用語「約」、「約」、「一般に」、「実質的に」、お
よび同様の用語は、記載した寸法/特徴が厳密な境界またはパラメーターではなく、機能
的に同じまたは同様である、それからの軽微な変形を排除しないことを示すことを理解さ
れたい。最小限でも、数値パラメーターが含まれるそのような言及には、当分野において
認められている数学的および工業的原理(たとえば、丸め、測定誤差または他の系統誤差
、製作公差など)を使用して、最小有効数字を変化させない変形が含まれるであろう。
【0026】
微小管関連タンパク質タウ、MAPT、神経原線維のもつれタンパク質、対らせん状細
線維-タウ、PHF-タウ、MAPTL、MTBT1としても知られる、本明細書中で使
用する用語「タウ」または「タウタンパク質」、複数のアイソフォームを有する、豊富な
中枢および末梢神経系のタンパク質をいう。ヒト中枢神経系(CNS)では、選択的スプ
ライシングが原因で、352~441個のアミノ酸の長さの大きさの範囲の、6個の主要
なタウアイソフォームが存在する(Hanger et al., Trends Mol Med. 15:112-9, 2009)
。タウの例には、それだけには限定されないが、4つの反復および2つの挿入を有する、
441個のアミノ酸の最も長いタウアイソフォーム(4R2N)、ならびに3つの反復を
有し、挿入なしの、352個のアミノ酸の長さの最も短い(胎児)アイソフォーム(3R
0N)などの、CNS中のタウアイソフォームが含まれる。また、タウの例には、300
個の追加の残基(エクソン4a)を含有する、末梢神経中で発現される「ビッグタウ(bi
g tau)」アイソフォームも含まれる。Friedhoff et al., Biochimica et Biophysica Ac
ta 1502 (2000) 122-132。タウの例には、6762個のヌクレオチドの長さのmRNA転
写物(NM_016835.4)によってコードされている、758個のアミノ酸の長さ
のタンパク質であるヒトビッグタウ、またはそのアイソフォームが含まれる。例示したヒ
トビッグタウのアミノ酸配列はGenBank受託番号NP_058519.3に表され
ている。本明細書中で使用する用語「タウ」には、(カニクイ(cynomolgous)ザル(Mac
aca Fascicularis))または(チンパンジー(Pan troglodytes))などのヒト以外の種
からのタウの相同体が含まれる。本明細書中で使用する用語「タウ」には、完全長野生型
タウの突然変異、たとえば、点突然変異、断片、挿入、欠失、およびスプライス変異体を
含むタンパク質が含まれる。また、用語「タウ」には、タウアミノ酸配列の翻訳後修飾も
包含される。翻訳後修飾には、それだけには限定されないがリン酸化が含まれる。
【0027】
本明細書中で使用する用語「ペプチド」または「ポリペプチド」とは、ペプチド結合に
よって連結された、アミノ酸残基から構成されるポリマー、関連する天然に存在する構造
的変異体、およびその合成の天然に存在しない類似体をいう。この用語は、任意の大きさ
、構造、または機能のペプチドをいう。典型的には、ペプチドは少なくとも3個のアミノ
酸の長さである。ペプチドは、天然に存在する、組換え、もしくは合成のもの、またはそ
の任意の組合せであることができる。合成ペプチドは、たとえば自動ポリペプチド合成機
を使用して合成することができる。タウペプチドの例には、約5~約30個のアミノ酸の
長さ、好ましくは約10~約25個のアミノ酸の長さ、より好ましくは約16~約21個
のアミノ酸の長さのタウタンパク質の任意のペプチドが含まれる。本開示では、ペプチド
をNからC末端に標準の3文字または1文字のアミノ酸略記を使用して列挙し、リン酸残
基を「p」で示す。本発明において有用なタウペプチドの例には、それだけには限定され
ないが、配列番号1~12のいずれかのアミノ酸配列を含むタウペプチド、または配列番
号1~12のいずれかのアミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、も
しくは95%同一であるアミノ酸配列を有するタウペプチドが含まれる。
【0028】
本明細書中で使用する用語「ホスホペプチド」または「ホスホエピトープ」とは、1つ
または複数のアミノ酸残基でリン酸化されたペプチドをいう。タウホスホペプチドの例に
は、1つまたは複数のリン酸化されたアミノ酸残基を含む任意のタウペプチドが含まれる
。本発明において有用なタウホスホペプチドの例には、それだけには限定されないが、配
列番号1~3もしくは5~12のいずれかのアミノ酸配列を含むタウホスホペプチド、ま
たは配列番号1~3もしくは5~12のいずれかのアミノ酸配列と少なくとも75%、8
0%、85%、90%、もしくは95%同一であるアミノ酸配列を有するタウホスホペプ
チドが含まれる。
【0029】
本発明のタウペプチドは、固相ペプチド合成または組換え発現系によって合成すること
ができる。自動ペプチド合成機は、Applied Biosystems(カリフォル
ニア州Foster City)などの数々の供給業者から販売されている。組換え発現
系には、大腸菌(E. coli)などの細菌、酵母、昆虫細胞、または哺乳動物細胞などを含
むことができる。組換え発現のための手順は、Sambrook et al., Molecular Cloning: A
Laboratory Manual (C.S.H.P. Press, NY 2d ed., 1989)によって記載されている。
【0030】
タウはヒト「自己」タンパク質である。このことは、原則的に、タウに特異的な受容体
を保有するすべてのリンパ球は、発生の間に消失している(中枢性寛容)、または末梢性
寛容機構によって不応性とされているはずであることを意味する。この問題は、自己また
は「変更された自己」タンパク質(たとえば腫瘍抗原)に対するワクチンの開発における
顕著な障害であることが判明している。
【0031】
抗原(自己または感染性)に対する高品質の抗体の生成は、抗体を産生するBリンパ球
だけでなく、CD4+T「ヘルパー」リンパ球の作用も必要とする。CD4+T細胞は重
大な生存および成熟シグナルをBリンパ球に提供し、CD4+T細胞欠乏動物は免疫抑制
が深刻である。また、CD4+T細胞は寛容機構の影響を受けやすく、強力な抗自己(た
とえば抗タウ)抗体応答を生じることのさらなる障害は、タウ反応性CD4+T細胞がヒ
ト/動物レパートリーにおいて希少または存在しない可能性も高いことである。
【0032】
理論に束縛されることを望まず、いかなる様式でも本発明の範囲を限定しないが、この
問題は本発明のワクチン組成物によって回避されると考えられている。
【0033】
一実施形態では、HLA DR(ヒト白血球抗原-抗原D関連)分子のほとんどまたは
全部と結合することができるT細胞エピトープも含む、タウペプチドを含むリポソーム(
一例を
図1の上部に示す)を生成する。その後、T細胞エピトープはCD4
+T細胞を活
性化させることができ、必須の成熟および生存シグナルをタウ特異的B細胞に提供する(
図2)。別の実施形態では、タウペプチドと担体タンパク質とのコンジュゲートを生成し
(一例を
図1の下部に示す)、これは強力なヘルパーT細胞応答(
図3)を生じる。本実
施形態では、担体に特異的なT細胞が生存および成熟シグナルを自己反応性B細胞に提供
する、「非連結認識」を使用する。したがって、タウ特異的B細胞は、親和性成熟、免疫
グロブリンクラススイッチを始動させ、長期的な記憶プールを確立するために重大なシグ
ナルを受け取る。タウリポソームおよびタウコンジュゲートを使用して、同種または異種
の免疫化スキームにおいて、プライムおよび/またはブーストにおいてリポソームまたは
コンジュゲートのいずれかを用いて、タウ抗原に対する高品質な抗体を生成することがで
きる。
【0034】
リポソーム
一般的な一態様では、本発明は、
a.好ましくはタウホスホペプチドであるタウペプチドと、
b.ヘルパーT細胞エピトープと、
を含み、タウペプチドがリポソームの表面上に提示されている、リポソームに関する。
【0035】
本発明の実施形態によるリポソームは、本明細書中、「改善リポソーム」、「改善リポ
ソームワクチン」または「本発明の実施形態によるリポソームワクチン」または「タウリ
ポソーム」または「最適化リポソームワクチン」または「第二世代リポソーム」とも呼ば
れる。
【0036】
本明細書中で使用する用語「リポソーム」とは、一般に、高い脂質含有量を有する材料
、たとえば、リン脂質、コレステロールから作られる脂質小胞をいう。これらの小胞の脂
質は、一般に、脂質二重層の形態で組織化されている。脂質二重層は、一般に、脂質二重
層の複数のタマネギ様の殻の間に散在しており多重膜脂質小胞(MLV)を形成している
か、または非晶質中心腔内に含有されている、体積をカプセル封入している。非晶質中心
腔を有する脂質小胞は単層脂質小胞である、すなわち、腔を取り囲む単一の末梢二重層を
有するものである。大型単層膜ベシクル(LUV)は、一般に、100nm~数マイクロ
メートル、たとえば100~200nm以上の直径を有する一方で、小型単層脂質小胞(
SUV)は、一般に、100nm未満、たとえば20~100nm、典型的には15~3
0mmの直径を有する。
【0037】
特定の実施形態によれば、リポソームは1つまたは複数のタウペプチドを含む。特定の
実施形態によれば、リポソーム中のタウペプチドは同じまたは異なり得る。
【0038】
当業者に知られている任意の適切なタウペプチドを、本開示に鑑みて本発明において使
用することができる。特定の実施形態によれば、タウペプチドのうちの1つまたは複数は
、配列番号1~12のうちの1つのアミノ酸配列を含む。他の実施形態では、タウペプチ
ドのうちの1つまたは複数は、配列番号1~12のうちの1つのアミノ酸配列と少なくと
も75%、80%、85%、90%、もしくは95%同一であるアミノ酸配列を含み、こ
こで、アミノ酸残基はどれもリン酸化されていない、または1つもしくは複数のアミノ酸
残基がリン酸化されている。
【0039】
特定の実施形態によれば、タウペプチドのうちの1つまたは複数はタウホスホペプチド
である。特定の実施形態によれば、1つまたは複数のタウホスホペプチドは、配列番号1
~3もしくは5~12のうちの1つのアミノ酸配列、または配列番号1~3もしくは5~
12のうちの1つのアミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、もしく
は95%同一であるアミノ酸配列を含み、ここで、示したアミノ酸残基のうちの1つまた
は複数はリン酸化されている。好ましくは、タウホスホペプチドは配列番号1~3のうち
の1つのアミノ酸配列を含む。タウペプチドはC末端がアミド化され得る。
【0040】
本出願の実施形態によれば、タウペプチドはリポソームの表面上に提示されている。タ
ウペプチド、好ましくはタウホスホペプチドは、本開示に鑑みて当分野で知られている方
法を使用して、リポソームの表面上に提示させることができる。たとえば、その内容が本
明細書中に参考として組み込まれている米国特許第8,647,631号明細書および第
9,687,447号明細書中の関連開示を参照されたい。特定の実施形態によれば、ホ
スホペプチドを含めた1つまたは複数のタウペプチドは、タウペプチドがリポソームの表
面上に提示されることを可能にする、パルミトイル化またはドデシル修飾などの1つまた
は複数の修飾をさらに含む。修飾を容易にするために、Lys、Cys、または場合によ
ってはSerもしくはThrなどの追加のアミノ酸残基をタウペプチドに付加することが
できる。脂質アンカーの位置が、ペプチド配列の様々なコンホメーションを誘導すること
が報告されている(Hickman et al., J. Biol. Chem. vol. 286, NO. 16, pp. 13966-139
76, April 22, 2011)。理論に束縛されることを望まないが、両末端に疎水性部分を付加
することが、タウペプチドの病理学的ベータシートコンホメーションを増加させ得ると考
えられている。したがって、1つまたは複数のタウペプチドは、両末端に疎水性部分をさ
らに含む。修飾されたタウペプチドはC末端がアミド化され得る。好ましくは、リポソー
ムの表面上に提示されたタウペプチドは、配列番号27~配列番号38のうちの1つアミ
ノ酸配列からなる。
【0041】
本明細書中で使用する用語「ヘルパーT細胞エピトープ」とは、ヘルパーT細胞による
認識が可能なエピトープを含むポリペプチドをいう。ヘルパーT細胞エピトープの例には
、それだけには限定されないが、破傷風トキソイド(たとえば、P2およびP30エピト
ープ、それぞれT2およびT30とも呼ばれる)、B型肝炎表面抗原、コレラ毒素B、ト
キソイド、ジフテリアトキソイド、麻疹ウイルスFタンパク質、トラコーマクラミジア(
Chlamydia trachomatis)主要外膜タンパク質、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falcip
arum)スポロゾイト周辺(circumsporozite)T、熱帯熱マラリア原虫(P. falciparum)
CS抗原、マンソン住血吸虫(Schistosoma mansoni)トリオースリン酸イソメラーゼ、
百日咳菌(Bordetella pertussis)、破傷風菌(Clostridium tetani)、パーツサリア・
トラキサリナ(Pertusaria trachythallina)、大腸菌(Escherichia coli)TraT、
およびインフルエンザウイルス赤血球凝集素(HA)が含まれる。
【0042】
当業者に知られている任意の適切なヘルパーT細胞エピトープを、本開示に鑑みて本発
明において使用することができる。特定の実施形態によれば、ヘルパーT細胞エピトープ
は、配列番号23~配列番号26からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸配
列を含む。好ましくは、ヘルパーT細胞エピトープは、1つまたは複数のアミノ酸、たと
えば、Val(V)、Ala(A)、Arg(R)、Gly(G)、Ser(S)、Ly
s(K)を含むペプチドリンカーなどのリンカーを介して一緒に融合された、配列番号2
3~配列番号26のアミノ酸配列のうちの2つ以上を含む。リンカーの長さは変動するこ
とができ、好ましくは1~5個のアミノ酸である。好ましくは、ヘルパーT細胞エピトー
プは、VVR、GS、RR、RKからなる群から選択される1つまたは複数のリンカーを
介して一緒に融合された、配列番号23~配列番号26のアミノ酸配列のうちの3つ以上
を含む。ヘルパーT細胞エピトープはそのC末端がアミド化され得る。
【0043】
本出願の実施形態によれば、ヘルパーT細胞エピトープは、たとえば共有結合した疎水
性部分によって繋留させて、リポソーム表面上に取り込ませることができ、ここで、前記
疎水性部分は、アルキル基、脂肪酸、トリグリセリド、ジグリセリド、ステロイド、スフ
ィンゴ脂質、糖脂質、またはリン脂質、特にアルキル基または脂肪酸、特に少なくとも3
個の炭素原子、特に少なくとも4個の炭素原子、特に少なくとも6個の炭素原子、特に少
なくとも8個の炭素原子、特に少なくとも12個の炭素原子、特に少なくとも16個の炭
素原子の炭素主鎖を有するものである。本発明の一実施形態では、疎水性部分はパルミチ
ン酸である。あるいは、ヘルパーT細胞エピトープはリポソーム内にカプセル封入させる
ことができる。特定の実施形態によれば、ヘルパーT細胞エピトープはリポソーム内にカ
プセル封入されている。
【0044】
ヘルパーT細胞エピトープは、本開示に鑑みて当分野で知られている方法を使用して、
リポソーム中のその所望の位置を修飾することができる。特定の実施形態によれば、本発
明において有用なヘルパーT細胞エピトープは、配列番号39~配列番号44のうちの1
つのアミノ酸配列を含む。好ましくは、ヘルパーT細胞エピトープは、配列番号13~配
列番号17からなる群から選択されるアミノ酸配列からなる。
【0045】
特定の実施形態によれば、リポソームは、タウペプチドとヘルパーT細胞エピトープと
を1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、または6:1の重量比で含む。
【0046】
一実施形態では、リポソームは、トール様受容体リガンドを含む少なくとも1つのアジ
ュバントをさらに含む。したがって、別の一般的な態様では、本発明は、
a.タウペプチド、好ましくはタウホスホペプチドと、
b.ヘルパーT細胞エピトープと、
c.i.トール様受容体9リガンド、および
ii.トール様受容体4リガンド
のうちの少なくとも1つと
を含む、リポソームに関する。
【0047】
本明細書中で使用する用語「トール様受容体」または「TLR」とは、自然免疫応答に
おいて主要な役割を果たすパターン認識受容体(PRR)タンパク質のクラスをいう。T
LRは、細菌、真菌、寄生生物、およびウイルスなどの微生物病原体からの病原体関連分
子パターン(PAMP)を認識し、これは宿主分子とは区別することができる。TLRは
、典型的には二量体として機能する膜貫通タンパク質であり、抗原提示樹状細胞および食
作用マクロファージを含めた自然免疫応答に関与する細胞によって発現される。少なくと
も10個のヒトTLRファミリーメンバー、すなわちTLR1~TLR10、ならびに少
なくとも12個のネズミTLRファミリーメンバー、すなわちTLR1~TLR9および
TLR11~TLR13が存在し、これらは、それが認識する抗原の種類が異なる。たと
えば、TLR4は、多くのグラム陰性細菌中に存在する構成要素であるリポ多糖(LPS
)、ならびに低密度リポタンパク質、ベータ-デフェンシン、および熱ショックタンパク
質などのウイルスのタンパク質、多糖、および内在性タンパク質を認識し、TLR9は、
原核ゲノムでは豊富であるが脊椎動物ゲノムでは希少である、非メチル化シトシン-リン
酸-グアニン(CpG)一本鎖または二本鎖ジヌクレオチドによって活性化される、ヌク
レオチド感知TLRである。TLRの活性化は、I型インターフェロン(IFN)、炎症
性サイトカイン、およびケモカインの産生、ならびに免疫応答の誘導をもたらす、一連の
シグナル伝達事象をもたらす。最終的に、この炎症は適応免疫系も活性化し、その後、浸
潤病原体および感染細胞の排除をもたらす。
【0048】
本明細書中で使用する用語「リガンド」とは、生体分子(たとえば受容体)と複合体を
形成して生物学的目的を果たす分子をいう。特定の実施形態によれば、トール様受容体リ
ガンドはトール様受容体作用剤である。
【0049】
本明細書中で使用する用語「作用剤」とは、1つまたは複数のTLRと結合し、受容体
媒介性の応答を誘導する分子をいう。たとえば、作用剤は、受容体の活性を誘導、刺激、
増加、活性化、促進、増強、またはアップレギュレートすることができる。そのような活
性は「作用活性」という。たとえば、TLR4またはTLR9作用剤は、結合した受容体
を介して細胞シグナル伝達を活性化または増加することができる。作用剤には、それだけ
には限定されないが、核酸、小分子、タンパク質、炭水化物、脂質、または受容体と結合
もしくは相互作用する任意の他の分子が含まれる。作用剤は、天然受容体リガンドの活性
を模倣することができる。作用剤は、受容体によって認識されることができるように、配
列、コンホメーション、電荷、または他の特徴に関してこれら天然受容体リガンドと相同
的であることができる。この認識は、細胞が、天然受容体リガンドが存在していた場合と
同じ様式で作用剤の存在に反応するような、細胞内での生理的および/または生化学的な
変化をもたらすことができる。特定の実施形態によれば、トール様受容体作用剤はトール
様受容体4作用剤およびトール様受容体9作用剤のうちの少なくとも1つである。
【0050】
本明細書中で使用する用語「トール様受容体4作用剤」とは、TLR4の作用剤として役
割を果たす任意の化合物をいう。当業者に知られている任意の適切なトール様受容体4作
用剤を、本開示に鑑みて本発明において使用することができる。本発明において有用なト
ール様受容体4リガンドの例には、それだけには限定されないがモノホスホリル脂質A(
MPLA)を含めたTLR4作用剤が含まれる。本明細書中で使用する用語「モノホスホ
リル脂質A」またはMPLA」とは、グラム陰性細菌リポ多糖(LPS)内毒素の生物活
性部分である、脂質Aの修飾された形態をいう。MPLAは、免疫賦活活性を維持しつつ
も、LPSより毒性が低い。ワクチンアジュバントとしては、MPLAはワクチン抗原に
対する細胞応答および液性応答をどちらも刺激する。MPLAの例には、それだけには限
定されないが、3-O-脱アシル-4’-モノホスホリル脂質A、モノホスホリルヘキサ
-アシル脂質A、3-脱アシル、モノホスホリル3-脱アシル脂質A、および構造的に関
連するその変異体が含まれる。本発明において有用なMPLAは、当分野で知られている
方法を使用して、または、Avanti Polar Lipids(米国アラバマ州A
labaster)の3D-(6-アシル)PHAD(登録商標)、PHAD(登録商標
)、PHAD(登録商標)-504、3D-PHAD(登録商標)、もしくは様々な商業
的供給源のMPL(商標)などの商業的供給源から得ることができる。特定の実施形態に
よれば、トール様受容体4作用剤はMPLAである。本明細書中で使用する用語「トール
様受容体9作用剤」とは、TLR9の作用剤として作用する任意の化合物をいう。当業者
に知られている任意の適切なトール様受容体9作用剤を、本開示に鑑みて本発明において
使用することができる。本発明において有用なトール様受容体9リガンドの例には、それ
だけには限定されないがCpGオリゴヌクレオチドを含めたTLR9作用剤が含まれる。
【0051】
本明細書中で使用する用語「CpGオリゴヌクレオチド」、「CpGオリゴデオキシヌ
クレオチド」、または「CpG ODN」とは、少なくとも1つのCpGモチーフを含む
オリゴヌクレオチドをいう。本明細書中で使用する「オリゴヌクレオチド」、「オリゴデ
オキシヌクレオチド」、または「ODN」とは、複数の連結したヌクレオチド単位から形
成されたポリヌクレオチドをいう。そのようなオリゴヌクレオチドは、既存の核酸源から
得ることができるか、または合成方法によって生成することができる。本明細書中で使用
する用語「CpGモチーフ」とは、リン酸結合またはリン酸ジエステル主鎖もしくは他の
ヌクレオチド間結合によって連結された非メチル化シトシン-リン酸-グアニン(CpG
)ジヌクレオチド(すなわち、シトシン(C)次いでグアニン(G))を含有するヌクレ
オチド配列をいう。
【0052】
特定の実施形態によれば、CpGオリゴヌクレオチドは脂質付加されている、すなわち
脂質部分とコンジュゲートされている(共有結合している)。
【0053】
本明細書中で使用する「脂質部分」とは、親油性構造を含有する部分をいう。アルキル
基、脂肪酸、トリグリセリド、ジグリセリド、ステロイド、スフィンゴ脂質、糖脂質、ま
たはリン脂質、特にコレステロールなどのステロールまたは脂肪酸などの脂質部分は、核
酸などの高親水性分子に付着した場合に、血漿タンパク質の結合、結果的には親水性分子
の循環半減期を実質的に増強させることができる。さらに、リポタンパク質などの特定の
血漿タンパク質との結合は、対応するリポタンパク質受容体(たとえば、LDL受容体、
HDL受容体、またはスカベンジャー受容体SR-B1)を発現する特定の組織中への取
り込みを増加させることが示されている。特に、ホスホペプチドおよび/またはCpGオ
リゴヌクレオチドとコンジュゲートさせた脂質部分は、前記ペプチドおよび/またはオリ
ゴヌクレオチドが疎水性部分を介してリポソームの膜内に繋留されることを可能にする。
【0054】
特定の実施形態によれば、本開示に鑑みて、CpGオリゴヌクレオチドは任意の適切な
ヌクレオチド間結合を含むことができる。
【0055】
本明細書中で使用する用語「ヌクレオチド間結合」とは、隣接するヌクレオシド間のリ
ン原子と荷電基または中性基からなる、2つのヌクレオチドをその糖を介して結合させる
化学結合をいう。ヌクレオチド間結合の例には、リン酸ジエステル(po)、ホスホロチ
オエート(ps)、ホスホロジチオエート(ps2)、メチルホスホネート(mp)、お
よびメチルホスホロチオエート(rp)が含まれる。ホスホロチオエート、ホスホロジチ
オエート、メチルホスホネート、およびメチルホスホロチオエートは安定化ヌクレオチド
間結合である一方で、リン酸ジエステルは天然に存在するヌクレオチド間結合である。オ
リゴヌクレオチドホスホロチオエートは、典型的にはRpおよびSpホスホロチオエート
結合のランダムなラセミ混合物として合成される。
【0056】
当業者に知られている任意の適切なCpGオリゴヌクレオチドを、本開示に鑑みて本発
明において使用することができる。そのようなCpGオリゴヌクレオチドの例には、それ
だけには限定されないが、CpG2006(CpG7909としても知られる)、CpG
1018、CpG2395、CpG2216、またはCpG2336が含まれる。
【0057】
本開示に鑑みて当分野で知られている方法を使用して、CpGオリゴヌクレオチドに脂
質付加することができる。一部の実施形態では、CpGオリゴヌクレオチドの3’末端は
、任意選択でPEGリンカーを介して、リン酸結合を介してコレステロール分子と共有結
合している。また、他の親油性部分もCpGオリゴヌクレオチドの3’末端と共有結合す
ることができる。たとえば、CpGオリゴヌクレオチドは、任意選択でPEGリンカーを
介して、リポソームからのリン脂質と同じ長さの脂質アンカー、すなわち、1本のパルミ
チン酸鎖(Pal-OHもしくは類似のものを使用、カップリング用に活性化)または2
本のパルミチン酸(たとえば1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタ
ノールアミン-N-(スクシニル)もしくは類似のものを使用、カップリング用に活性化
)と共有結合することができる。たとえば、その内容が本明細書中に参考として組み込ま
れている米国特許第7,741,297号明細書中の関連開示を参照されたい。PEGの
長さは、たとえば1~5個のPEG単位で変動することができる。
【0058】
他のリンカーも、CpGオリゴヌクレオチドを親油性部分(コレステロール分子など)
と共有結合させるために使用することができ、その例には、それだけには限定されないが
3~12個の炭素を有するアルキルスペーサーが含まれる。オリゴヌクレオチド化学に適
合性のある短いリンカーがアミノジオールとして必要である。一部の実施形態では、共有
結合にリンカーを使用しない。たとえば、その関連開示が本明細書中に参考として組み込
まれているRies et al., “Convenient synthesis and application of versatile nucle
ic acid lipid membrane anchors in the assembly and fusion of liposomes, Org. Bio
mol. Chem., 2015, 13, 9673を参照されたい。
【0059】
特定の実施形態によれば、本発明において有用な脂質付加CpGオリゴヌクレオチドは
、配列番号18~配列番号22からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含み、ヌク
レオチド配列は、1つまたは複数のホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含んでおり
、リンカーを介して少なくとも1つのコレステロールと共有結合している。任意の適切な
リンカーを使用してCpGオリゴヌクレオチドをコレステロール分子と共有結合させるこ
とができる。好ましくは、リンカーはポリエチレングリコール(PEG)を含む。
【0060】
特定の実施形態によれば、リポソームは、
a.タウホスホペプチドと、
b.ヘルパーT細胞エピトープと、
c.脂質付加CpGオリゴヌクレオチドと、
d.トール様受容体4リガンドと
を含み、タウホスホペプチドはリポソームの表面上に提示されており、ヘルパーT細胞エ
ピトープはリポソーム内にカプセル封入されている。
【0061】
特定の実施形態によれば、リポソームは、
a.配列番号27~配列番号38からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するタウ
ペプチドと、
b.配列番号39~配列番号44からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するヘル
パーT細胞エピトープ、好ましくは、配列番号13~配列番号17からなる群から選択さ
れるアミノ酸配列からなるヘルパーT細胞エピトープと、
c.配列番号18~配列番号22からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有し、
1つまたは複数のホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含み、リンカーを介して少な
くとも1つのコレステロールと共有結合している、脂質付加CpGオリゴヌクレオチドと
d.モノホスホリル脂質A(MPLA)と
を含む。
【0062】
特定の実施形態によれば、リポソームは、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-
3-ホスホコリン(DMPC)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホ
リル-3’-rac-グリセロール(DMPG)、およびコレステロールからなる群から
選択される1つまたは複数の脂質をさらに含む。
【0063】
特定の実施形態によれば、リポソームは緩衝液をさらに含む。当業者に知られている任
意の適切な緩衝液を、本開示に鑑みて本発明において使用することができる。一実施形態
では、リポソームはリン酸緩衝生理食塩水を含む。特定の実施形態によれば、緩衝液はヒ
スチジンおよびスクロースを含む。
【0064】
特定の実施形態によれば、リポソームは、DMPC、DMPG、コレステロール、タウ
ホスホペプチド、およびヘルパーT細胞エピトープを9:1:7:0.07:0.04の
モル比で含む。
【0065】
本発明のリポソームは、本開示に鑑みて当分野で知られている方法を使用して作製する
ことができる。
【0066】
本出願の例示的なリポソームを
図1に例示する。より詳細には、タウテトラパルミトイ
ル化ホスホペプチド(pタウペプチドT3、配列番号28)は、タウペプチドのそれぞれ
の末端で2つのパルミチン酸を介してリポソームの表面上に提示されている。脂質付加C
pG(アジュバントCpG7909-Chol)を含むTLR-9リガンドは、共有結合
しているコレステロールを介してリポソーム膜内に取り込まれている。TLR-4リガン
ド(アジュバント3D-(6-アシル)PHAD(登録商標))も膜内に取り込まれてい
る。ヘルパーT細胞エピトープ(PAN-DR結合剤T50)はカプセル封入されている
。
【0067】
コンジュゲート
一般的な一態様では、本発明は、タウペプチドと、それとコンジュゲートさせた免疫原
性担体とを含むコンジュゲートに関する。
【0068】
特定の態様によれば、コンジュゲートは、以下の構造:
【0069】
【0070】
【化4】
[式中、
xは、0~10の整数であり、
nは、2~15、好ましくは3~11の整数である]
を有する。
【0071】
特定の実施形態によれば、xは、1~10、2~9、2~8、2~7、2~6、2~5
、2~4、または2~3の整数である。特定の実施形態によれば、xは3である。
【0072】
特定の実施形態によれば、nは、2~15、3~11、3~9、3~8、または3~7
である。
【0073】
特定の実施形態によれば、コンジュゲートは1つまたは複数のタウペプチドを含む。特
定の実施形態によれば、コンジュゲートのタウペプチドは同じまたは異なり得る。
【0074】
特定の実施形態によれば、任意の適切なタウペプチドを、本開示に鑑みて本発明におい
て使用することができる。特定の実施形態によれば、タウペプチドのうちの1つまたは複
数は、配列番号1~12のうちの1つのアミノ酸配列、または配列番号1~12のうちの
1つのアミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、もしくは95%同一
であるアミノ酸配列を含み、ここで、アミノ酸残基のうちの0個、1個、または複数がリ
ン酸化されている。
【0075】
特定の実施形態によれば、タウペプチドのうちの1つまたは複数はタウホスホペプチド
である。特定の実施形態によれば、1つまたは複数のタウホスホペプチドは、配列番号1
~3もしくは5~12のうちの1つのアミノ酸配列、または配列番号1~3もしくは5~
12のうちの1つのアミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、もしく
は95%同一であるアミノ酸配列を含み、ここで、示したアミノ酸残基のうちの1つまた
は複数はリン酸化されている。
【0076】
特定の実施形態によれば、タウホスホペプチドは配列番号1~3のうちの1つのアミノ
酸配列からなる。
【0077】
本明細書中で使用する用語「免疫原性担体」とは、タウペプチドとカップリングさせる
ことができる免疫原性物質をいう。タウペプチドとカップリングされた免疫原性部分は、
免疫応答を誘導し、タウペプチドと特異的に結合することができる抗体の産生を誘発する
ことができる。免疫原性部分は、外来物として認識され、したがって宿主から免疫応答を
誘発させる、タンパク質、ポリペプチド、糖タンパク質、複合多糖、粒子、核酸、ポリヌ
クレオチドなどを含めた作動可能な部分である。当業者に知られている任意の適切な免疫
原性担体を、本開示に鑑みて本発明において使用することができる。特定の実施形態によ
れば、免疫原性担体は、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、破傷風トキソイ
ド、CRM197(ジフテリア毒素の無毒性形態)、髄膜炎菌(N. meningitidis)由来
の外膜タンパク質混合物(OMP)、またはその誘導体である。特定の実施形態によれば
、免疫原性担体はKLHまたはCRM197である。
【0078】
特定の実施形態によれば、タウペプチドはリンカーを介して担体とコンジュゲートして
いる。本明細書中で使用する用語「リンカー」とは、免疫原性担体をタウペプチドと結合
させる化学部分をいう。当業者に知られている任意の適切なリンカーを、本開示に鑑みて
本発明において使用することができる。リンカーは、たとえば、単一共有結合、置換もし
くは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル部分、ポリエチレングリコ
ール(PEG)リンカー、ペプチドリンカー、糖に基づくリンカー、ジスルフィド結合も
しくはプロテアーゼ切断部位などの切断可能なリンカー、アミノ酸、またはその組合せで
あることができる。リンカーの例は、ポリエチレングリコール(PEG)、スクシンイミ
ジル3-(ブロモアセトアミド)プロピオネート(SBAP)、m-マレイミドベンゾイ
ル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(MBS)のうちの1つまたは複数、Cys
、Lys、または場合によってはSerもしくはThrなどの1つまたは複数のアミノ酸
、あるいはその組合せを含むことができる。
【0079】
特定の実施形態によれば、リンカーは、(C2H4O)x-システイン-アセトアミド
プロピオンアミドまたはm-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドエス
テル-システイン-(C2H4O)xを含む[式中、xは、0~10の整数、たとえば、
0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10である]。
【0080】
特定の実施形態によれば、担体はリンカーを介してタウペプチドのN末端と共有結合し
ている。
【0081】
他の特定の実施形態によれば、担体はリンカーを介してタウペプチドのC末端と共有結
合している。
【0082】
特定の実施形態によれば、コンジュゲートは、以下の構造:
【0083】
【化5】
[式中、nは、2~15、好ましくは3~11、より好ましくは3~7の整数である]
を有する。
【0084】
本発明のコンジュゲートは、本開示に鑑みて当分野で知られている方法によって作製す
ることができる。たとえば、上記コンジュゲートは、スクシンイミジル-3-(ブロモア
セトアミド)プロピオネート(SBAP):
【0085】
【化6】
をCRM197のアミノ基と反応させてアミド結合を形成させることによって、形成する
ことができる。続いて、このCRM197前駆体を、そのN末端またはそのC末端で遊離
求核性チオール基を有するPEG-システインリンカーとコンジュゲートしているタウペ
プチド(たとえば配列番号2のリン酸化タウペプチド)と反応させて、タウホスホペプチ
ドコンジュゲートを形成することができる。
【0086】
本出願の一実施形態による例示的なコンジュゲートを
図1に例示する。より詳細には、
複数のタウホスホペプチド(pタウペプチドT3.76)が担体タンパク質CRM197
と共有結合している。
【0087】
医薬組成物
一般的な一態様では、本発明は、治療有効量の本発明のリポソームまたはコンジュゲー
トを、薬学的に許容される賦形剤および/または担体と一緒に含む、医薬組成物に関する
。薬学的に許容される賦形剤および/または担体は当分野で周知である(Remington’s P
harmaceutical Science (15th ed.), Mack Publishing Company, Easton, Pa., 1980を参
照)。医薬組成物の好ましい配合は、意図する投与様式および治療的適用に依存する。組
成物には、動物またはヒト投与のための医薬組成物を配合するために一般的に使用される
ビヒクルとして定義される、薬学的に許容される無毒性の担体または希釈剤が含まれるこ
とができる。希釈剤は、組合せの生物活性に影響を与えないように選択する。そのような
希釈剤の例は、蒸留水、生理的リン酸緩衝食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液、お
よびハンクス液である。さらに、医薬組成物または配合物には、他の担体、アジュバント
、または無毒性の非治療的な非免疫原性の安定化剤なども含まれ得る。担体、賦形剤、ま
たは希釈剤の特徴は特定の適用の投与経路に依存することが理解されよう。
【0088】
医薬組成物は、同じ免疫原性タウペプチドの混合物を含有することができる。あるいは
、医薬組成物は、本発明の異なる免疫原性タウペプチドの混合物を含有することができる
。
【0089】
神経疾患に対するワクチンに関連する別の問題は、有効性を保証するために並外れて高
い抗体価が必要な可能性があることである。これは、ワクチンの標的抗原が脳内に位置し
ているからである。脳は、血液脳関門(BBB)と呼ばれる特殊な細胞構造によって循環
から分離されている。BBBは、循環から脳内への物質の通過を制限する。これにより、
毒素、微生物などが中枢神経系内に入ることが防止される。また、BBBは、免疫媒介物
質(抗体など)の、脳を取り囲む間質液および脳脊髄液内への効率的な侵入を防止すると
いう、潜在的により望ましくない効果も有する。
【0090】
全身循環中に存在する抗体の約0.1%がBBBを横断して脳に入る。このことは、C
NS抗原を標的とするワクチンによって誘導される全身性力価が、脳内で有効となるため
には、最小有効力価よりも少なくとも1000倍高くなければならないことを意味する。
【0091】
特定の実施形態によれば、本発明の医薬組成物はしたがって1つまたは複数の適切なア
ジュバントをさらに含む。したがって、リポソームまたはコンジュゲート中に存在する本
発明のタウペプチドは、対象において所望の免疫応答を達成するために適切なアジュバン
トと組み合わせて投与することができる。適切なアジュバントは、本発明のリポソームま
たはコンジュゲートの投与の前、後、またはそれと同時に投与することができる。好まし
いアジュバントは、応答の定性的形態に影響を与える免疫原のコンホメーション変化を引
き起こさずに、本来備わっている免疫原に対する応答を増大させる。アジュバントの例は
、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、および硫酸アルミニウムなどのアルミニウ
ム塩(ミョウバン)である。そのようなアジュバントは、MPLAクラス(3脱-O-ア
シル化モノホスホリル脂質A(MPL(商標))、モノホスホリルヘキサ-アシル脂質A
3-脱アシル合成(3D-(6-アシル)PHAD(登録商標))、PHAD(商標)、
PHAD(登録商標)-504、3D-PHAD(登録商標))脂質A)、ポリグルタミ
ン酸またはポリリシンなどのポリマーまたは単量体のアミノ酸等の、他の特定の免疫賦活
剤を用いてまたは用いずに使用することができる。そのようなアジュバントは、ムラミル
ペプチド(たとえば、N-アセチルムラミル-L-スレオニル-D-イソグルタミン(t
hr-MDP)、N-アセチル-ノルムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミン(n
or-MDP)、N-アセチルムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミニル-L-ア
ラニン-2-(1’-2’ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ヒドロキシホスホリル
オキシ)-エチルアミン(MTP-PE)、N-アセチルグルコサミニル-N-アセチル
ムラミル-L-Al-D-イソグル-L-Ala-ジパルミトキシプロピルアミド(DT
P-DPP)Theramide(商標))、または他の細菌細胞壁構成要素などの、他
の特定の免疫賦活剤を用いてまたは用いずに使用することができる。水中油乳濁液には、
5%のスクアレン、0.5%のTween80、および0.5%のSpan85を含有す
る(任意選択で様々な量のMTP-PEを含有する)MF59(微小流動化装置を使用し
てサブミクロン粒子へと配合)(国際公開第90/14837号パンフレット参照)、1
0%のスクアレン、0.4%のTween80、5%のプルロニックブロックポリマーL
121、およびthr-MDPを含有するSAF(サブミクロン乳濁液へと微小流動化ま
たはボルテックスしてより大きな粒径の乳濁液を生成するかのいずれか)、Ribi(商
標)アジュバント系(RAS)(Ribi ImmunoChem、モンタナ州Hami
lton)0.2%のTween80、ならびに、モノホスホリル脂質A(MPL(商標
))、トレハロースジミコレート(TDM)、および細胞壁骨格(CWS)、好ましくは
MPL(商標)+CWS(Detox(商標))からなる群から選択される1つまたは複
数の細菌細胞壁構成要素が含まれる。他のアジュバントには、完全フロイントアジュバン
ト(CFA)、ならびにインターロイキン(IL-1、IL-2、およびIL-12)、
マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、および腫瘍壊死因子(TNF)などの
サイトカインが含まれる。
【0092】
2つ以上の治療を対象に投与するコンテクストにおいて本明細書中で使用する用語「組
み合わせて」とは、複数の治療薬の使用をいう。用語「組み合わせて」の使用は、治療薬
を対象に投与する順序を制限しない。たとえば、第1の治療薬(たとえば本明細書中に記
載の組成物)を、第2の治療薬を対象に投与する前(たとえば、5分、15分、30分、
45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、16時間、24時間、48時間、
72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間、もし
くは12週間前)、それと同時に、またはそれに続いて(たとえば、5分、15分、30
分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、16時間、24時間、48時
間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間、
もしくは12週間後)に投与することができる。
【0093】
本発明の医薬組成物は、当分野で周知の方法によって配合することができる。組成物中
のそれぞれの構成要素の最適な比は、本開示に鑑みて当業者に周知の技法によって決定す
ることができる。
【0094】
使用方法
本発明の別の一般的な態様は、対象に本発明の一実施形態による医薬組成物を投与する
ことを含む、神経変性疾患、障害、または状態を患っている対象においてタウタンパク質
に対する免疫応答を誘導する方法に関する。特定の態様によれば、免疫応答はリン酸化タ
ウタンパク質、好ましくはePHFに対して誘導される。
【0095】
本発明の別の一般的な態様は、神経変性疾患、障害、または状態、対象に本発明の一実
施形態による医薬組成物を投与することを含む、処置または防止する方法に関する。
【0096】
本明細書中で使用する用語「誘導する」および「刺激する」ならびにその変形は、細胞
活性のいかなる量の測定可能な増加をいう。免疫応答の誘導には、たとえば、免疫細胞集
団の活性化、増殖、もしくは成熟、サイトカイン産生の増加、および/または増加した免
疫機能の別の指標が含まれることができる。特定の実施形態では、免疫応答の誘導には、
B細胞の増殖の増加、抗原特異的抗体の産生、抗原特異的T細胞の増殖の増加、樹状細胞
抗原提示の改善、ならびに/または特定のサイトカイン、ケモカイン、および共刺激マー
カーの発現の増加が含まれることができる。
【0097】
動物またはヒト生物への投与の際に抗タウ免疫応答を誘導または刺激する能力は、当分
野において標準的である様々なアッセイを使用してin vitroまたはin viv
oのどちらかで評価することができる。免疫応答の開始および活性化を評価するために利
用可能な技法の一般的な説明には、たとえばColigan et al. (1992 and 1994, Current P
rotocols in Immunology; ed. J Wiley & Sons Inc, National Institute of Health)を
参照されたい。細胞性免疫の測定は、当分野で容易に知られている方法によって、たとえ
ば、CD4+およびCD8+T細胞に由来するものを含めた活性化されたエフェクター細
胞によって分泌されたサイトカインプロファイルの測定によって(たとえば、ELISP
OTによるIL-4またはIFNガンマ産生細胞の定量)、免疫エフェクター細胞の活性
化状態の決定によって(たとえば、古典的な[3H]チミジン取り込みによるT細胞増殖
アッセイ)、感作された対象において抗原特異的Tリンパ球をアッセイすることによって
(たとえば、細胞毒性アッセイにおけるペプチド特異的溶解など)、行うことができる。
【0098】
細胞応答および/または液性応答を刺激する能力は、対象からの生体試料(たとえば、
血液、血漿、血清、PBMC、尿、唾液、糞便、CSF、またはリンパ液)を、医薬組成
物中で投与した免疫原性タウペプチドに向けられた抗体の存在について試験することによ
って、決定することができる(たとえばHarlow, 1989, Antibodies, Cold Spring Harbor
Pressを参照)。たとえば、免疫原を提供する組成物の投与に応答して産生された抗体の
力価は、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ドットブロット、SDS-PAGE
ゲル、ELISPOT、または抗体依存性細胞貪食(ADCP)アッセイによって測定す
ることができる。
【0099】
本明細書中で使用する用語「対象」とは、動物をいう。特定の実施形態によれば、対象
は、非霊長類(たとえば、ラクダ、ロバ、シマウマ、ウシ、ブタ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、
ネコ、イヌ、ラット、ウサギ、モルモット、もしくはマウス)または霊長類(たとえば、
サル、チンパンジー、もしくはヒト)を含めた哺乳動物である。特定の実施形態によれば
、対象はヒトである。
【0100】
本明細書中で使用する用語「治療有効量」とは、対象において所望の生物学的または医
薬的応答を誘発する、活性成分または構成要素の量をいう。治療有効量は、記述した目的
に関連して、経験的にかつルーチン的な様式で決定することができる。たとえば、最適な
用量範囲の同定を助けるために、in vitroアッセイを任意選択で用いることがで
きる。特定の有効用量の選択は、処置または防止する疾患、関与する症状、患者の体重、
患者の免疫状態、および当業者に知られている他の要因を含めたいくつかの要因の考慮に
基づいて、当業者によって(たとえば臨床治験を介して)決定することができる。また、
配合物中で用いる正確な用量も投与経路および疾患の重症度に依存し、従事者の判断およ
びそれぞれの患者の状況に従って決定されるべきである。有効用量は、in vitro
または動物モデル試験系から導き出された用量応答曲線から外挿することができる。
【0101】
本明細書中で使用する用語「処置する」、「処置すること」、および「処置」はすべて
、神経変性疾患、障害、または状態に関連する少なくとも1つの測定可能な物理的パラメ
ーターの寛解または逆転をいうことを意図し、これらは必ずしも対象において識別可能で
ある必要はないが、対象において識別可能であることができる。また、用語「処置する」
、「処置すること」、および「処置」は、疾患、障害、または状態の回帰を引き起こすこ
と、進行を防止すること、または進行を少なくとも遅らせることもいうことができる。特
定の実施形態では、「処置する」、「処置すること」、および「処置」とは、神経変性疾
患、障害、または状態に関連する1つまたは複数の症状の軽減、発生もしくは発症の防止
、または持続期間の短縮をいう。特定の実施形態では、「処置する」、「処置すること」
、および「処置」とは、疾患、障害、または状態の再発の防止をいう。特定の実施形態で
は、「処置する」、「処置すること」、および「処置」とは、疾患、障害、または状態を
有する対象の生存の増加をいう。特定の実施形態では、「処置する」、「処置すること」
、および「処置」とは、対象における疾患、障害、または状態の排除をいう。
【0102】
特定の実施形態によれば、治療有効量とは、以下の効果のうちの1つ、2つ、3つ、4
つ、またはそれより多くを達成するために十分な治療薬の量をいう:(i)処置する疾患
、障害、もしくは状態、またはそれに関連する症状の重症度の軽減または寛解、(ii)
処置する疾患、障害、もしくは状態、またはそれに関連する症状の持続期間の短縮、(i
ii)処置する疾患、障害、もしくは状態、またはそれに関連する症状の進行の防止、(
iv)処置する疾患、障害、もしくは状態、またはそれに関連する症状の回帰を引き起こ
すこと、(v)処置する疾患、障害、もしくは状態、またはそれに関連する症状の発生ま
たは発症の防止、(vi)処置する疾患、障害、もしくは状態、またはそれに関連する症
状の再発の防止、(vii)処置する疾患、障害、もしくは状態、またはそれに関連する
症状を有する対象の入院の短縮、(viii)処置する疾患、障害、もしくは状態、また
はそれに関連する症状を有する対象の入院の長さの短縮、(ix)処置する疾患、障害、
もしくは状態、またはそれに関連する症状を有する対象の生存の増加、(x)対象におけ
る処置する疾患、障害、もしくは状態、またはそれに関連する症状の阻害または軽減、お
よび/あるいは(xi)別の治療薬の予防的または治療的効果の増強または改善。
【0103】
本明細書中で使用する「神経変性疾患、障害、または状態」には、本開示に鑑みて当業
者に知られている任意の神経変性疾患、障害、または状態が含まれる。神経変性疾患、障
害、または状態の例には、タウオパチーと呼ばれるタウ関連の疾患、障害、または状態な
どの、神経原線維病変の形成によって引き起こされるまたはそれに関連する神経変性疾患
または障害が含まれる。特定の実施形態によれば、神経変性疾患、障害、または状態には
、それだけには限定されないが、アルツハイマー病、パーキンソン病、クロイツフェルト
-ヤコブ病、拳闘家認知症、ダウン症候群、ゲルストマン-ストロイスラー-シャインカ
ー病、封入体筋炎、プリオンタンパク質脳アミロイド血管症、外傷性脳傷害、筋萎縮性側
索硬化症、グアムのパーキンソン認知症複合、神経原線維のもつれを伴う非グアム型運動
ニューロン疾患、嗜銀顆粒性認知症、大脳皮質基底核変性症、レビー認知症、筋萎縮性側
索硬化症、石灰化を伴うびまん性の神経原線維のもつれ、前頭側頭型認知症、好ましくは
17番染色体に連鎖するパーキンソニズムを伴う前頭側頭型認知症(FTDP-17)、
前頭側頭葉認知症、ハレルフォルデン-スパッツ病、多系統萎縮症、ニーマン-ピック病
C型、ピック病、進行性皮質下グリオーシス、進行性核上性麻痺、亜急性硬化性汎脳炎、
もつれのみの認知症、脳炎後パーキンソニズム、筋緊張性ジストロフィー、慢性外傷性脳
障害(CTE)、原発性加齢関連タウオパチー(PART)、またはレビー小体認知症(
LBD)を含めた、タウおよびアミロイド病理の共存を示す疾患または障害のうちの任意
のものが含まれる。特定の実施形態によれば、神経変性疾患、障害、または状態はアルツ
ハイマー病または別のタウオパチーである。
【0104】
また、本発明は、対象の脳からのタウ凝集体の排除を促進するために有効な条件下で、
対象に本発明の一実施形態による医薬組成物を投与することを含む、対象の脳からのタウ
凝集体の排除を促進する方法も提供する。特定の実施形態によれば、タウ凝集体は神経原
線維のもつれまたはその病理学的タウ前駆体である。
【0105】
また、本発明は、対象におけるタウ病理に関連する行動性表現型の進行を遅延させるた
めに有効な条件下で、対象に本発明の一実施形態による医薬組成物を投与することを含む
、対象におけるタウ病理に関連する行動性表現型の進行を遅延させる方法も提供する。
【0106】
本発明の好ましい実施形態では、本発明の一実施形態による医薬組成物の投与を介した
タウペプチドの投与は、対象においてタウペプチドおよびタウの病理学的形態に対する活
性免疫応答を誘導し、したがって、関連するタウ凝集体の排除を容易にする、タウ病理に
関連する行動の進行を遅延させる、および/または根底にあるタウオパチーを処置する。
本発明のこの態様によれば、免疫応答は、タウペプチドに対して向けられた液性(抗体媒
介性)応答およびT細胞エピトープまたは免疫原性担体に対して向けられた細胞(抗原特
異的T細胞またはその分泌産物によって媒介)応答の有益な発生を含む。
【0107】
本明細書中で使用する、タウ病理に関連する行動性表現型には、それだけには限定され
ないが、認知機能障害、早期人格変化および脱抑制、アパシー、無為、無言症、失行症、
固執、常同動作/行動、口愛過度、混乱、連続課題の計画または構築不能、利己的/無感
覚、反社会的特質、共感欠如、口ごもり、頻繁な錯誤的な誤りを伴うが理解は比較的保た
れている失文法的な発話、理解障害および字句発見欠損症、緩徐進行性歩行不安定症、後
方突進、すくみ、頻繁な転倒、レボドパ不応性軸性硬直、核上性中止麻痺、矩形波眼球運
動、ゆっくりとした垂直サッケード、仮性球麻痺、肢失行症、ジストニア、皮質性感覚消
失、および振戦が含まれる。
【0108】
本発明の方法を実施するにあたって、本発明の免疫原性ペプチドまたは抗体を投与する
前に、アルツハイマー病もしくは他のタウオパチーに罹患しているもしくは罹患する危険
性にある対象、脳内にタウ凝集体を有する対象、またはもつれ関連の行動性表現型を示し
ている対象を選択することが好ましい。処置に従順な対象には、疾患の危険性にあるが症
状を示していない個体、および現在症状を示している患者が含まれる。アルツハイマー病
の場合、事実上誰もがアルツハイマー病を罹患する危険性にある。したがって、本方法は
、対象患者の危険性のいかなる評価も必要とせずに、一般集団に予防的に投与することが
できる。本方法は、既知のアルツハイマー病の遺伝的リスクを有する個体に特に有用であ
る。そのような個体には、疾患を経験した親族を有する者、および遺伝子または生化学的
マーカーの分析によってその危険性が決定されている者が含まれる。
【0109】
無症候性の患者では、処置を任意の年齢(たとえば、10、20、30歳)で開始する
ことができる。しかし、通常は、患者が40、50、60、または70歳に達するまで処
置を開始する必要はない。処置は、典型的には、一定期間にわたる複数回の投薬を伴う。
処置は、抗体、または治療剤に対する活性化されたT細胞もしくはB細胞の応答を、経時
的にアッセイすることによってモニタリングすることができる。応答が減少した場合はブ
ースター用量を指示している。
【0110】
予防的適用では、タウペプチドを含有する医薬組成物を、アルツハイマー病または他の
タウオパチーに罹患しやすい、または他の様式でその危険性がある患者に、疾患の生化学
的、組織学的および/または行動学的症状、疾患の発生中に提示されるその合併症および
中間病理学的表現型を含めた危険性を排除もしくは低下させる、重症度を軽くする、また
は疾患の発症を遅延させるために十分な量で投与する。治療的適用では、タウペプチドを
含有する医薬組成物を、そのような疾患が疑われる、または既にそれに罹患している患者
に、疾患の発生におけるその合併症および中間病理学的表現型を含めた疾患の症状(生化
学的、組織学的、および/または、行動学的)を治癒する、または少なくとも部分的に停
止するために十分な量で、投与する。
【0111】
神経変性疾患、障害、または状態を防止および/または処置するために有効な用量の本
発明の医薬組成物は、投与様式、標的部位、患者の生理的状態、投与した他の医薬品、お
よび処置が予防的であるか治療的であるかを含めた、多くの様々な要因に応じて変動する
。ペプチドの量はアジュバントも投与するかどうかに依存し、アジュバントの非存在下で
はより高用量が必要となる。注射のタイミングは、1日1回から1年に1回から10年に
1回まで、顕著に変動する可能性がある。典型的なレジメンは、免疫化、次いで、6週間
間隔などの時間間隔でのブースター注射からなる。別のレジメンは、免疫化、次いで、1
、2、6、9、および12カ月後のブースター注射からなる。別のレジメンは、一生涯2
カ月ごとの注射を伴う。あるいは、ブースター注射は、免疫応答のモニタリングによって
指示されるように不規則であることができる。
【0112】
当業者には、プライムおよびブースト用の投与のレジメンは、投与後の測定した免疫応
答に基づいて調整できることが容易に理解されよう。たとえば、ブースト用組成物は、一
般に、プライム用組成物の投与の数週間または数カ月後、たとえば、プライム用組成物の
投与の約2~3週間後、または4週間後、または8週間後、または16週間後、または2
0週間後、または24週間後、または26週間後、または28週間後、または30週間後
、または32週間後、または36週間後、または1~2年後に投与する。
【0113】
ペプチドは、予防的および/または治療的処置のために、非経口、局所、静脈内、経口
、皮下、動脈内、頭蓋内、腹腔内、皮内、鼻腔内、または筋肉内の手段によって投与する
ことができる。免疫原性剤の最も典型的な投与経路は皮下または筋肉内注射である。この
後者の種類の注射は、最も典型的には腕または脚の筋肉内に行われる。
【0114】
特定の態様によれば、1つまたは複数のブースト免疫化を投与することができる。それ
ぞれのプライム用およびブースト用組成物中の抗原は、いかに多数のブースト用組成物を
用いようとも、同一である必要はないが、抗原決定基を共有するまたは互いに実質的に類
似であるべきである。
【0115】
組成物は、所望する場合は、活性成分を含有する1つまたは複数の単位剤形を含有する
ことができる、キット、パック、またはディスペンサーで提示することができる。キット
は、たとえば、ブリスターパックなどの金属またはプラスチックの箔を含むことができる
。キット、パック、またはディスペンサーには投与の指示書を添付することができる。
【0116】
特定の実施形態によれば、キットは、本発明の一実施形態によるリポソームを含む医薬
組成物および本発明の一実施形態によるコンジュゲートを含む医薬組成物のうちの少なく
とも1つを含む。
【0117】
実施形態
また、本発明は、以下の非限定的な実施形態も提供する。
【0118】
実施形態1は、
a.タウペプチドと、
b.ヘルパーT細胞エピトープと
を含み、タウペプチドがリポソームの表面上に提示されている、リポソームである。
【0119】
実施形態2は、タウペプチドがタウホスホペプチドである、実施形態1に記載のリポソ
ームである。
【0120】
実施形態3は、トール様受容体リガンドをさらに含む、実施形態1または2に記載のリ
ポソームである。
【0121】
実施形態4は、トール様受容体リガンドがトール様受容体4リガンドおよびトール様受
容体9リガンドのうちの少なくとも1つを含む、実施形態3に記載のリポソームである。
【0122】
実施形態5は、トール様受容体リガンドがトール様受容体4リガンドである、実施形態
3または4に記載のリポソームである。
【0123】
実施形態6は、トール様受容体4リガンドがモノホスホリル脂質A(MPLA)を含む
、実施形態5に記載のリポソームである。
【0124】
実施形態7は、トール様受容体リガンドがトール様受容体9リガンドである、実施形態
3または4に記載のリポソームである。
【0125】
実施形態8は、トール様受容体9リガンドが脂質付加CpGオリゴヌクレオチドを含む
、実施形態7に記載のリポソームである。
【0126】
実施形態9は、
a.タウペプチドと、
b.ヘルパーT細胞エピトープと、
c.i.トール様受容体9リガンド、および
ii.トール様受容体4リガンド
のうちの少なくとも1つと
を含む、実施形態1に記載のリポソームである。
【0127】
実施形態10は、タウペプチドがタウホスホペプチドである、実施形態9に記載のリポ
ソームである。
【0128】
実施形態11は、トール様受容体9リガンドが脂質付加CpGオリゴヌクレオチドであ
る、実施形態9または10に記載のリポソームである。
【0129】
実施形態12は、トール様受容体4リガンドおよびトール様受容体9リガンドを含む、
実施形態9から11のいずれかに記載のリポソームである。
【0130】
実施形態13は、トール様受容体4リガンドがモノホスホリル脂質A(MPLA)を含
む、実施形態12に記載のリポソームである。
【0131】
実施形態14は、
a.タウホスホペプチドと、
b.ヘルパーT細胞エピトープと、
c.脂質付加CpGオリゴヌクレオチドと、
d.トール様受容体4リガンドを含有するアジュバントと
を含み、
タウホスホペプチドがリポソームの表面上に提示されている、リポソームである。
【0132】
実施形態15は、トール様受容体4リガンドがモノホスホリル脂質A(MPLA)を含
む、実施形態14に記載のリポソームである。
【0133】
実施形態16は、ヘルパーT細胞エピトープがリポソーム内にカプセル封入されている
、実施形態1から15のいずれかに記載のリポソームである。
【0134】
実施形態16aは、ヘルパーT細胞エピトープがリポソームの膜内に取り込まれている
、実施形態1から15のいずれかに記載のリポソームである。
【0135】
実施形態16bは、ヘルパーT細胞エピトープがリポソームの表面上に提示されている
、実施形態1から15のいずれかに記載のリポソームである。
【0136】
実施形態17は、
a.タウホスホペプチドと、
b.ヘルパーT細胞エピトープと、
c.脂質付加CpGオリゴヌクレオチドと、
d.モノホスホリル脂質A(MPLA)と
を含み、
タウホスホペプチドがリポソームの表面上に提示されており、
T細胞エピトープがリポソーム内にカプセル封入されている、
リポソーム組成物である。
【0137】
実施形態17aは、MPLAが3-O-脱アシル-4’-モノホスホリル脂質A、好ま
しくはMPL(商標)である、実施形態17に記載のリポソームである。
【0138】
実施形態17bは、MPLAがモノホスホリルヘキサ-アシル脂質A、3-脱アシル、
好ましくは3D-(6-アシル)PHAD(登録商標)である、実施形態17に記載のリ
ポソームである。
【0139】
実施形態17cは、MPLAがモノホスホリル3-脱アシル脂質A、好ましくは3D-
PHAD(登録商標)である、実施形態17に記載のリポソームである。
【0140】
実施形態18は、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DM
PC)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホリル-3’-rac-グ
リセロール(DMPG)、およびコレステロールからなる群から選択される1つまたは複
数の脂質をさらに含む、実施形態1から17cのいずれかに記載のリポソームである。
【0141】
実施形態19は、タウペプチドが、配列番号1~配列番号12からなる群から選択され
るアミノ酸配列、または配列番号1~配列番号12からなる群から選択されるアミノ酸配
列と少なくとも85%、90%、もしくは95%同一であるアミノ酸配列を有する、実施
形態1から18のいずれかに記載のリポソームである。
【0142】
実施形態19-1は、タウペプチドが、配列番号1~3および5~12からなる群から
選択されるアミノ酸配列を含むホスホペプチドである、実施形態19に記載のリポソーム
である。
【0143】
実施形態19-2は、タウホスホペプチドが配列番号1のアミノ酸配列を含む、実施形
態19-1に記載のリポソームである。
【0144】
実施形態19-3は、タウホスホペプチドが配列番号2のアミノ酸配列を含む、実施形
態19-1に記載のリポソームである。
【0145】
実施形態19-4は、タウホスホペプチドが配列番号3のアミノ酸配列を含む、実施形
態19-1に記載のリポソームである。
【0146】
実施形態19aは、アミノ酸配列が、タウペプチドがリポソームの表面上に提示される
ことを可能にする1つまたは複数の修飾をさらに含む、実施形態19、19-1、19-
2、19-3、および19-4のいずれか一項に記載のリポソームである。
【0147】
実施形態19bは、1つまたは複数の修飾が、パルミトイル化およびドデシル修飾のう
ちの少なくとも1つを含む、実施形態19aに記載のリポソームである。
【0148】
実施形態19cは、タウペプチドがそのN末端で1つまたは複数の修飾によって修飾さ
れている、実施形態19aまたは19bに記載のリポソームである。
【0149】
実施形態19dは、タウペプチドがそのC末端で1つまたは複数の修飾によって修飾さ
れている、実施形態19aから19cのいずれかに記載のリポソームである。
【0150】
タウペプチドがそのN末端およびC末端の両方でパルミトイル化されている、実施形態
19eは、実施形態19dに記載のリポソームである。
【0151】
実施形態19fは、タウペプチドが、1つまたは複数の修飾を容易にするための1つま
たは複数の追加のアミノ酸をさらに含む、実施形態19aから19eのいずれかに記載の
リポソームである。
【0152】
実施形態19gは、1つまたは複数の追加のアミノ酸が、Lys、Cys、Ser、お
よびThrからなる群から選択される、実施形態19fに記載のリポソームである。
【0153】
実施形態19hは、タウペプチドがそのC末端でアミド化されている、実施形態19か
ら19gのいずれかに記載のリポソームである。
【0154】
実施形態19iは、タウペプチドが配列番号27~配列番号38からなる群から選択さ
れるアミノ酸配列からなる、実施形態19から19hのいずれかに記載のリポソームであ
る。
【0155】
実施形態19jは、タウペプチドが配列番号27のアミノ酸配列からなる、実施形態1
9から19iのいずれかに記載のリポソームである。
【0156】
実施形態19kは、タウペプチドが配列番号28のアミノ酸配列からなる、実施形態1
9から19iのいずれかに記載のリポソームである。
【0157】
実施形態19lは、タウペプチドが配列番号29のアミノ酸配列からなる、実施形態1
9から19iのいずれかに記載のリポソームである。
【0158】
実施形態20は、ヘルパーT細胞エピトープが、配列番号23~配列番号26からなる
群から選択される少なくとも1つのアミノ酸配列を含む、実施形態1から19lのいずれ
かに記載のリポソームである。
【0159】
実施形態20aは、ヘルパーT細胞エピトープが、配列番号23~配列番号26からな
る群から選択される少なくとも2つのアミノ酸配列を含む、実施形態20に記載のリポソ
ームである。
【0160】
実施形態20bは、ヘルパーT細胞エピトープが、配列番号23~配列番号26からな
る群から選択される少なくとも3つのアミノ酸配列を含む、実施形態20に記載のリポソ
ームである。
【0161】
実施形態20cは、ヘルパーT細胞エピトープが、配列番号23~配列番号26の4つ
のアミノ酸配列を含む、実施形態20に記載のリポソームである。
【0162】
実施形態20dは、配列番号23~配列番号26からなる群から選択される2つ以上の
アミノ酸配列がリンカーによって共有結合されている、実施形態20aから20cのいず
れかに記載のリポソームである。
【0163】
実施形態20eは、リンカーが、Val(V)、Ala(A)、Arg(R)、Gly
(G)、Ser(S)、Lys(K)からなる群から選択される1つまたは複数のアミノ
酸を含む、実施形態20dに記載のリポソームである。
【0164】
実施形態20fは、リンカーが、VVR、GS、RR、およびRKからなる群から選択
されるアミノ酸配列を含む、実施形態20eに記載のリポソームである。
【0165】
実施形態20gは、ヘルパーT細胞エピトープがそのC末端でアミド化されている、実
施形態20から20fのいずれかに記載のリポソームである。
【0166】
実施形態20hは、ヘルパーT細胞エピトープが、ヘルパーT細胞エピトープの意図す
る位置に応じて、リポソームの膜内への挿入、リポソームの表面上での提示、またはリポ
ソーム内へのカプセル封入のために修飾されている、実施形態20から20gのいずれか
に記載のリポソームである。
【0167】
実施形態20iは、ヘルパーT細胞エピトープが配列番号13~配列番号17からなる
群から選択されるアミノ酸配列からなる、実施形態20から20hのいずれかに記載のリ
ポソームである。
【0168】
実施形態20jは、タウペプチドとヘルパーT細胞エピトープとを6:1の重量比で含
む、実施形態1から20iのいずれかに記載のリポソームである。
【0169】
実施形態20kは、タウペプチドとヘルパーT細胞エピトープとを5:1の重量比で含
む、実施形態1から20iのいずれかに記載のリポソームである。
【0170】
実施形態20lは、タウペプチドとヘルパーT細胞エピトープとを4:1の重量比で含
む、実施形態1から20iのいずれかに記載のリポソームである。
【0171】
実施形態20mは、タウペプチドとヘルパーT細胞エピトープとを3:1の重量比で含
む、実施形態1から20iのいずれかに記載のリポソームである。
【0172】
実施形態20nは、タウペプチドとヘルパーT細胞エピトープとを2:1の重量比で含
む、実施形態1から20iのいずれかに記載のリポソームである。
【0173】
実施形態20oは、タウペプチドとヘルパーT細胞エピトープとを1:1の重量比で含
む、実施形態1から20iのいずれかに記載のリポソームである。
【0174】
実施形態21は、脂質付加CpGオリゴヌクレオチドが配列番号18~配列番号22か
らなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む、実施形態1から20oのいずれかに記
載のリポソームである。
【0175】
実施形態21aは、CpGオリゴヌクレオチドが1つまたは複数のホスホロチオエート
ヌクレオチド間結合を有する、実施形態21に記載のリポソームである。
【0176】
実施形態21bは、CpGオリゴヌクレオチドがすべてホスホロチオエートヌクレオチ
ド間結合を有する、実施形態21aに記載のリポソームである。
【0177】
実施形態21cは、脂質付加CpGオリゴヌクレオチドが、リンカーを介して少なくと
も1つの親油性基と共有結合しているCpGオリゴヌクレオチドを含む、実施形態21か
ら21bのいずれかに記載のリポソームである。
【0178】
実施形態21dは、リンカーが(C2H4O)nを含む[式中、nは0~10の整数で
ある]、実施形態21cに記載のリポソームである。
【0179】
実施形態21eは、リンカーが3~12個の炭素を有するアルキルスペーサーを含む、
実施形態21cに記載のリポソームである。
【0180】
実施形態21fは、少なくとも1つの親油性基がコレステロールである、実施形態21
から21eのいずれかに記載のリポソームである。
【0181】
実施形態21gは、脂質付加CpGオリゴヌクレオチドが、(C2H4O)n[式中、
nは3~5の整数である]を含むリンカーを介してコレステロール分子と共有結合してい
る配列番号18または配列番号19のヌクレオチド配列を含む、実施形態21から21f
のいずれかに記載のリポソームである。
【0182】
実施形態22は、
a.配列番号27~配列番号38からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するタウ
ペプチドと、
b.配列番号39~配列番号44からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するヘル
パーT細胞エピトープ、好ましくは、配列番号13~配列番号17からなる群から選択さ
れるアミノ酸配列からなるヘルパーT細胞エピトープと、
c.配列番号18~配列番号22からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有し、
1つまたは複数のホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含み、リンカーを介して少な
くとも1つのコレステロールと共有結合している、脂質付加CpGオリゴヌクレオチドと
d.モノホスホリル脂質A(MPLA)と
を含む、リポソームである。
【0183】
実施形態22aは、
a.配列番号27、配列番号28、または配列番号29のアミノ酸配列からなるタウホ
スホペプチドと、
b.配列番号13のアミノ酸配列からなるヘルパーT細胞エピトープと、
c.(C2H4O)n[式中、nは3~7の整数である]を含むリンカーを介してコレ
ステロールと共有結合している配列番号18または配列番号19のヌクレオチド配列から
なる脂質付加CpGオリゴヌクレオチドと、
d.モノホスホリル脂質A(MPLA)と
を含む、実施形態22に記載のリポソームである。
【0184】
実施形態22bは、MPLAが3-O-脱アシル-4’-モノホスホリル脂質A、好ま
しくはMPL(商標)である、実施形態22または22aに記載のリポソームである。
【0185】
実施形態22cは、MPLAが好ましくは3D-(6-アシル)PHAD(登録商標)
である、実施形態22または22aに記載のリポソームである。
【0186】
実施形態22dは、MPLAが好ましくは3D-PHAD(登録商標)である、実施形
態22または22aに記載のリポソームである。
【0187】
実施形態23は、ヘルパーT細胞エピトープがリポソーム内にカプセル封入されている
、実施形態22から22dのいずれかに記載のリポソームである。
【0188】
実施形態24は、実施形態1から23のいずれかに記載のリポソームと薬学的に許容さ
れる担体とを含む、医薬組成物である。
【0189】
実施形態25は、以下の構造:
【0190】
【化7】
[式中、
xは、0~10の整数であり、
nは、2~15の整数である]
を有する、タウホスホペプチドと、リンカーを介してそれとコンジュゲートさせた免疫原
性担体とを含むコンジュゲートである。
【0191】
実施形態25aは、式(II)の構造:
【0192】
【化8】
[式中、
xは、0~10の整数であり、
nは、2~15の整数である]
を有する、タウホスホペプチドと、リンカーを介してそれとコンジュゲートさせた免疫原
性担体とを含むコンジュゲートである。
【0193】
実施形態26は、xが2~6の整数である、実施形態25または25aのいずれかに記
載のコンジュゲートである。
【0194】
実施形態27は、xが3である、実施形態25または25aのいずれかに記載のコンジ
ュゲートである。
【0195】
実施形態28は、nが3~7である、実施形態25から25aのいずれかに記載のコン
ジュゲートである。
【0196】
実施形態29は、担体が、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、破傷風トキ
ソイド、CRM197、および髄膜炎菌(N. meningitidis)由来の外膜タンパク質混合
物(OMP)、またはその誘導体からなる群から選択される免疫原性担体である、実施形
態25から28のいずれかに記載のコンジュゲートである。
【0197】
実施形態30は、タウホスホペプチドが、配列番号1~配列番号12からなる群から選
択されるアミノ酸配列からなる、実施形態25から29のいずれかに記載のコンジュゲー
トである。
【0198】
実施形態30aは、タウホスホペプチドが、配列番号1、配列番号2、または配列番号
3のアミノ酸配列からなる、実施形態30に記載のコンジュゲートである。
【0199】
実施形態31は、担体がCRM197である、実施形態25から30のいずれかに記載
のコンジュゲートである。
【0200】
実施形態32は、以下の構造:
【0201】
【化9】
[式中、nは3~7である]
を有する、実施形態25に記載のコンジュゲートである。
【0202】
実施形態32aは、
KLH-[m-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル-シス
テイン-(C2H4O)x-タウペプチド]n
【0203】
【化10】
[式中、
タウペプチドは、配列番号1または配列番号3からなり、
xは、0~10の整数であり、
nは、2~15の整数である]
である、実施形態25に記載のコンジュゲートである。
【0204】
実施形態33は、実施形態25から32aのいずれかに記載のコンジュゲートと薬学的
に許容される担体とを含む、医薬組成物である。
【0205】
実施形態33aは、アジュバントをさらに含む、請求項33に記載の医薬組成物である
。
【0206】
実施形態33bは、アジュバントがTLR-4リガンドおよびTLR-9リガンドのう
ちの少なくとも1つを含む、請求項33aに記載の医薬組成物である。
【0207】
実施形態34は、対象に、実施形態24および33から33bの医薬組成物のうちの少
なくとも1つを投与することを含む、神経変性障害を患っている対象において免疫応答を
誘導する方法。
【0208】
実施形態35は、対象に、免疫化をプライムするための実施形態24および33から3
3bの医薬組成物のうちの少なくとも1つを投与することと、対象に、免疫化をブースト
するための実施形態24および33から33bの医薬組成物のうちの少なくとも1つを投
与することとを含む、実施形態34に記載の方法である。
【0209】
実施形態36は、対象に、実施形態24または33の医薬組成物のうちの少なくとも1
つを投与することを含む、それを必要としている対象において神経変性疾患または障害を
処置または防止する方法である。
【0210】
実施形態37は、対象に、免疫化をプライムするための実施形態24および33から3
3bの医薬組成物のうちの少なくとも1つを投与することと、対象に、免疫化をブースト
するための実施形態24および33から33bの医薬組成物のうちの少なくとも1つを投
与することとを含む、実施形態36に記載の方法である。
【0211】
実施形態38は、神経変性疾患または障害が、神経原線維病変の形成によって引き起こ
される、またはそれに関連している、実施形態34から37のいずれかに記載の方法であ
る。
【0212】
実施形態39は、神経変性疾患または障害が、アルツハイマー病、パーキンソン病、ク
ロイツフェルト-ヤコブ病、拳闘家認知症、ダウン症候群、ゲルストマン-ストロイスラ
ー-シャインカー病、封入体筋炎、プリオンタンパク質脳アミロイド血管症、外傷性脳傷
害、筋萎縮性側索硬化症、グアムのパーキンソン認知症複合、神経原線維のもつれを伴う
非グアム型運動ニューロン疾患、嗜銀顆粒性認知症、大脳皮質基底核変性症、レビー認知
症、筋萎縮性側索硬化症、石灰化を伴うびまん性の神経原線維のもつれ、前頭側頭型認知
症、好ましくは17番染色体に連鎖するパーキンソニズムを伴う前頭側頭型認知症(FT
DP-17)、前頭側頭葉認知症、ハレルフォルデン(Hallevorden)-スパッツ病、多
系統萎縮症、ニーマン-ピック病C型、ピック病、進行性皮質下グリオーシス、進行性核
上性麻痺、亜急性硬化性汎脳炎、もつれのみの認知症、脳炎後パーキンソニズム、筋緊張
性ジストロフィー、慢性外傷性脳障害(CTE)、原発性加齢関連タウオパチー(PAR
T)、またはレビー小体認知症(LBD)である、実施形態34から38のいずれかに記
載の方法である。
【0213】
実施形態40は、神経変性疾患または障害が、アルツハイマー病、パーキンソン病、ダ
ウン症候群、進行性核上性麻痺(PSP)、前頭側頭型認知症と17番染色体に連鎖する
パーキンソニズム(FTDP-17)、ピック病、大脳皮質基底核変性症、レビー認知症
、筋萎縮性側索硬化症、筋緊張性ジストロフィー(disphasy)、慢性外傷性脳障害(CT
E)、脳血管症、原発性加齢関連タウオパチー(PART)、またはレビー小体認知症(
LBD)である、実施形態34から39のいずれかに記載の方法である。
【0214】
実施形態40bは、神経変性疾患または障害が、アルツハイマー病、進行性核上性麻痺
(PSP)、前頭側頭型認知症と17番染色体に連鎖するパーキンソニズム(FTDP-
17)、またはピック病、およびPART(原発性加齢関連タウオパチー)である、実施
形態34から39のいずれかに記載の方法である。
【0215】
実施形態40cは、神経変性疾患または障害が、アルツハイマー病、パーキンソン病、
ダウン症候群、前頭側頭型認知症と17番染色体に連鎖するパーキンソニズム(FTDP
-17)、大脳皮質基底核変性症、レビー認知症、筋萎縮性側索硬化症、筋緊張性ジスト
ロフィー(disphasy)、慢性外傷性脳障害(CTE)、脳血管症、原発性加齢関連タウオ
パチー(PART)、またはレビー小体認知症(LBD)である、実施形態34から39
のいずれかに記載の方法である。
【0216】
実施形態41は、実施形態24の医薬組成物および実施形態33、33a、または33
bの医薬組成物のうちの少なくとも1つを含む、キットである。
【0217】
実施形態42は、配列番号13~配列番号17からなる群から選択されるアミノ酸配列
からなるヘルパーT細胞エピトープである。
【0218】
実施形態43は、実施形態42に記載のヘルパーT細胞エピトープを含む医薬組成物で
ある。
【0219】
実施形態44は、対象に、抗原を、実施形態43の医薬組成物と一緒に投与することを
含む、それを必要としている対象において抗原に対する免疫応答を増強させる方法である
。
【実施例0220】
以下の本発明の実施例は、本発明の性質をさらに例示するためのものである。以下の実
施例は本発明を限定せず、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によって決定されること
を理解されたい。
【0221】
以下の実施例中で使用する実験方法は、別段に指定しない限りは、すべて常法である。
以下の実施形態で使用する試薬は、別段に指定しない限りは、すべて通常の試薬供給業者
から購入したものである。
【0222】
[実施例1]
リポソームワクチンの調製
対照リポソームワクチンの調製(エタノール注入技法)
対照リポソームワクチンを、エタノール(EtOH)注入技法、次いで押出し成形によ
って生成した。最初に、DMPC(Lipoid GmbH、ドイツLudwigsha
fen)、DMPG(Lipoid GmbH、ドイツLudwigshafen)、コ
レステロール(Dishman、オランダ)、およびMPLA(Avanti Pola
r Lipids、米国アラバマ州)を、9:1:7:0.05のモル比で、EtOHお
よびtert-ブタノール(t-BuOH)の20:1(V/V)混合物中に60℃で可
溶化した。10%のEtOH濃度を維持するために脂質/エタノール溶液をリン酸緩衝液
生理食塩水(PBS)、pH7.4に60℃で希釈し、多重膜リポソーム小胞(MLV)
の形成がもたらされた。その後、EmulsiFlex-C5(Avestin、カナダ
)を使用して、MLVを0.08umの孔径を有する直列の3枚のポリカーボネートフィ
ルター(Whatman)を通した、5回の連続した押出し成形に供した。生じたリポソ
ームをPBS、pH7.4で希釈し、60℃まで加熱して、タウペプチドを添加する前の
リポソーム溶液が得られた。
【0223】
本明細書中以降、医薬品有効成分(API)と呼ぶ配列番号2の酢酸テトラパルミトイ
ル化(acetate tetrapalmitoylated)リン酸化タウペプチド(Bachem AG、スイ
ス)を、1mg/mLの濃度の2.0%のオクチルβ-D-グルコピラノシド(Sigm
a-Aldrich、米国)を含むPBS、pH11.4に溶かし、ペプチド溶液を60
℃でリポソーム溶液内に注入し、次いで、30分間、60℃で撹拌した。濃縮は、標的最
終体積までの限外濾過によって行い、緩衝液交換は、ダイアフィルトレーション中にPB
S、pH7.4を用いて10回実施した。その後、APIがリポソームの表面上に提示さ
れた生じたリポソームを、2枚の直列の0.2umのポリカーボネートシリンジフィルタ
ーを通すことによって滅菌濾過し、最終産物を5℃で保存した。
【0224】
リポソームX、Y、Z、およびZ+ワクチンの調製
リポソームXおよびYワクチンは、脂質薄層技術、次いでホモジナイゼーションおよび
押出し成形によって生成した。
【0225】
1200ug/mlの最終API濃度および1200ug/mlの最終T50濃度を有
するリポソームZ+ワクチンは、エタノール注入技法、次いで押出し成形によって生成し
、400ug/mlの最終API濃度および100ug/mlの最終T50濃度を有する
リポソームZワクチンは、脂質薄層技術、次いでホモジナイゼーションおよび押出し成形
によって生成した。
【0226】
400ug/mlの最終API濃度および400ug/mlの最終T50濃度を有する
リポソームZ++ワクチンは、脂質薄層技術、次いでホモジナイゼーションおよび押出し
成形によって生成した。
【0227】
1200ug/mlの最終API濃度および300ug/mlの最終T50濃度を有す
るリポソームZ+++ワクチンは、エタノール注入技法、次いで押出し成形によって生成
した。
【0228】
脂質薄層技法によるリポソームX、Y、Z、およびZ++ワクチンの調製
リポソームX、Y、Z、およびZ++ワクチンは、脂質薄層技術、次いでホモジナイゼ
ーションおよび押出し成形によって生成した。最初に、DMPC(Lipoid Gmb
H、ドイツLudwigshafen)、DMPG(Lipoid GmbH、ドイツL
udwigshafen)、コレステロール(Dishman、オランダ)、およびモノ
ホスホリルヘキサ-アシル脂質A3-脱アシル合成(3D-(6-アシル)PHAD(登
録商標))(Avanti Polar Lipids、米国アラバマ州)を、9:1:
7:0.05のモル比でEtOHに60℃で可溶化したが、リポソームYは例外で、3D
-(6-アシル)PHAD(登録商標)を含有していなかった。エタノールを真空下のr
otavaporで蒸発させて、脂質薄層が得られた。
【0229】
脂質フィルムを、0.15mg/mLのT50ペプチド(Peptides&Elep
hants、ドイツ)を含有するPBS、pH7.4、5%のDMSO(すべてSigm
a-Aldrich)を用いて再水和させた。試料を15分間穏やかに撹拌し、脂質薄層
を溶かすためにさらに激しくボルテックスした。生じた多重膜小胞を10回の凍結解凍サ
イクル(液体N2および37℃での水浴)に供し、ホモジナイゼーション、次いで0.0
8umの孔径を有するポリカーボネート膜(Whatman、英国)を通した連続押出し
成形に供した。ホモジナイゼーションおよび押出し成形ステップはどちらもEmulsi
Flex-C5(Avestin、カナダ)にて行った。カプセル封入されたT50ペプ
チドを有する押出し成形したリポソームを限外濾過によって濃縮し、ダイアフィルトレー
ションによって緩衝液をPBS、pH7.4に交換した。生じたリポソームをPBS、p
H7.4で希釈し、60℃まで加熱して、タウペプチドおよびアジュバントを添加する前
のリポソーム溶液が得られた。
【0230】
CpG2006-コレステロール(CpG2006-Chol)(Microsynt
h、スイス)は、すべてのヌクレオチド間結合をチオホスフェートとして有しており、5
’末端が、PEGスペーサーによってリン酸結合を介してコレステロール分子で修飾され
ている、DNAオリゴヌクレオチドである。CpG2006-コレステロール(CpG2
006-Chol)(Microsynth、スイス)をPBS、pH7.4に1mg/
mLで溶かし、リポソーム溶液内に注入し(リポソームXは例外で、CpG2006-C
holを含有していなかった)、次いで15分間インキュベーションした後に、APIを
挿入した。
【0231】
API(Bachem AG、スイス)を、1mg/mLの濃度の2%のオクチルβ-
D-グルコピラノシド(Sigma-Aldrich、米国)を含むPBS、pH11.
4に溶かし、ペプチド溶液を60℃でリポソーム溶液内に注入し、次いで、30分間、6
0℃で撹拌した。濃縮は限外濾過によって行って標的値(リポソームX、Y、Zでは40
0ug/mlのAPIおよび100ug/mlのT50、リポソームZ++では400u
g/mlのAPIおよび400ug/mlのT50)を得て、緩衝液交換は、ダイアフィ
ルトレーション中にPBS、pH7.4を用いて10回実施した。その後、APIがリポ
ソームの表面上に提示された生じたリポソームを、0.2umのポリカーボネートシリン
ジフィルターを通すことによって滅菌濾過し、最終産物を5℃で保存した。
【0232】
エタノール注入技法によるリポソームOの調製
リポソームOワクチンを、エタノール(EtOH)注入技法、次いで押出し成形によっ
て生成した。最初に、DMPC(Lipoid GmbH、ドイツLudwigshaf
en)、DMPG(Lipoid GmbH、ドイツLudwigshafen)、コレ
ステロール(Dishman、オランダ)、およびMPLA(Avanti Polar
Lipids、米国アラバマ州)を、9:1:7:0.05のモル比で、EtOHおよ
びtert-ブタノール(t-BuOH)の20:1(V/V)混合物中に60℃で可溶
化した。10%のEtOH濃度を維持するために脂質/エタノール溶液をリン酸緩衝液生
理食塩水(PBS)、pH7.4に60℃で希釈し、多重膜リポソーム小胞(MLV)の
形成がもたらされた。その後、EmulsiFlex-C5(Avestin、カナダ)
を使用して、MLVを0.08umの孔径を有する直列の3枚のポリカーボネートフィル
ター(Whatman)を通した、5回の連続した押出し成形に供した。生じたリポソー
ムをPBS、pH7.4で希釈し、60℃まで加熱して、タウペプチドを添加する前のリ
ポソーム溶液が得られた。
【0233】
T46ペプチド(Pepscan、オランダ)をPBS、pH7.4に1mg/mLで
溶かし、リポソーム溶液内に注入し、次いで15分間インキュベーションした後に、AP
Iを挿入した。
【0234】
API(Bachem、スイス)を、1mg/mLの濃度の2%のオクチルβ-D-グ
ルコピラノシド(Sigma-Aldrich、米国)を含むPBS、pH11.4に溶
かし、ペプチド溶液を60℃でリポソーム溶液内に注入し、次いで、30分間、60℃で
撹拌した。濃縮は限外濾過によって行って標的値(400ug/mlのAPIおよび10
0ug/mlのT46)を得て、緩衝液交換は、ダイアフィルトレーション中にPBS、
pH7.4を用いて10回実施した。その後、APIがリポソームの表面上に提示された
生じたリポソームを、0.2umのポリカーボネートシリンジフィルターを通すことによ
って滅菌濾過し、最終産物を5℃で保存した。
【0235】
エタノール注入によるリポソームZ+およびリポソームZ+++ワクチンの調製
リポソームZ+およびリポソームZ+++ワクチンは、エタノール注入に基づくプロセ
スを使用して生成した。最初に、DMPC(Lipoid GmbH、ドイツLudwi
gshafen)、DMPG(Lipoid GmbH、ドイツLudwigshafe
n)、コレステロール(Dishman、オランダ)、および3D-(6-アシル)PH
AD(登録商標)(Avanti Polar Lipids、米国アラバマ州)を、約
9:1:7:0.04のモル比でEtOHに60℃で可溶化した。T50ペプチド(Ba
chem AG、スイス)を10mMのHis/270mMのスクロース(pH5.8~
6.0)に溶かした。その後、脂質エタノール溶液を、T50ペプチドを含有する溶液内
に注入し、15分間穏やかに撹拌して、多重膜小胞(MLV)が生じた。MLVを、ホモ
ジナイゼーション(リポソームZ+では6回、リポソームZ+++ではホモジナイゼーシ
ョンなし)、次いで0.08umの孔径を有するポリカーボネート膜(Whatman、
英国)を通した連続押出し成形(リポソームZ+では5回、リポソームZ+++では3~
5回)に供した。リポソームZ+では、ホモジナイゼーションおよび押出し成形ステップ
はどちらもEmulsiFlex-C5(Avestin、カナダ)にて行った。リポソ
ームZ+++の押出し成形はLIPEXフィルター押出し成形機を使用して行った。押出
し成形したリポソームを限外濾過によって濃縮し、ダイアフィルトレーションによって緩
衝液を20mMのHis/145mMのNaCL、pH7.4に交換した。カプセル封入
されたT50ペプチドを有する生じたリポソームを20mMのHis/145mMのNa
CL、pH7.4で希釈し、60℃まで加熱して、APIおよびアジュバントを添加する
前のリポソーム溶液が得られた。
【0236】
CpG2006-Chol(リポソームZ+ではMicrosynth、スイス、リポ
ソームZ+++ではAvecia、米国)を1mg/mLの20mMのHis/145m
MのNaCl、pH7.4に溶かし、リポソーム溶液内に注入し、次いで15分間インキ
ュベーションした後に、APIを挿入した。
【0237】
API(Bachem AG、スイス)を、1mg/mLの濃度の1%のオクチルβ-
D-グルコピラノシド(Sigma-Aldrich、米国)と共に炭酸緩衝液、pH1
0.2に溶かし、ペプチド溶液を60℃でリポソームZ+溶液内に注入し、次いで、30
分間、60℃で撹拌した。T-Line Mixingを使用してペプチド溶液を60℃
でリポソームZ+溶液内に混合し、次いで、30分間、60℃で撹拌した。濃縮は限外濾
過によって行って標的値(リポソームZ+では1200ug/mlのAPIおよび120
0ug/mlのT50、リポソームZ+++では1200ug/mlのAPIおよび30
0ug/mlのT50)を得て、緩衝液交換は、ダイアフィルトレーション中に10mM
のHis/270mMのスクロース、pH6.5を用いて10回実施した。その後、AP
Iがリポソームの表面上に提示された生じたZ+リポソームおよびAPIがリポソームの
表面上に提示された生じたZ+++リポソームを、0.2umのポリカーボネートシリン
ジ/カプセルフィルターを通すことによって滅菌濾過し、最終産物を5℃で保存した。
【0238】
リポソームL、M、およびNワクチンの調製
リポソームL、M、およびNワクチンは、脂質薄層技術、次いでホモジナイゼーション
および押出し成形によって生成した。最初に、DMPC(Lipoid GmbH、ドイ
ツLudwigshafen)、DMPG(Lipoid GmbH、ドイツLudwi
gshafen)、コレステロール(Dishman、オランダ)、およびMPLA(A
vanti Polar Lipids、米国アラバマ州)を、9:1:7:0.05の
モル比でEtOHに60℃で可溶化した。エタノールを真空下のrotavaporで蒸
発させることで、脂質薄層が得られた。
【0239】
脂質フィルムを、以下のうちのいずれかを含有するPBS、pH7.4、5%のDMS
O(すべてSigma-Aldrich)を用いて再水和させた:
リポソームMでは0.15mg/mLのT48ペプチド(Peptides&Elep
hants、ドイツ)、または
リポソームL0.13mg/mLのT50ペプチド(Peptides&Elepha
nts、ドイツ)、または
リポソームNでは0.15mg/mLのT52ペプチド(Peptides&Elep
hants、ドイツ)。
【0240】
試料を15分間穏やかに撹拌し、脂質薄層を溶かすためにさらに激しくボルテックスし
た。生じた多重膜小胞を10回の凍結解凍サイクル(液体N2および37℃での水浴)に
供し、ホモジナイゼーション、次いで0.08umの孔径を有するポリカーボネート膜(
Whatman、英国)を通した連続押出し成形に供した。ホモジナイゼーションおよび
押出し成形ステップはどちらもEmulsiFlex-C5(Avestin、カナダ)
にて行った。押出し成形したリポソームを限外濾過によって濃縮し、ダイアフィルトレー
ションによって緩衝液をPBS、pH7.4に交換した。カプセル封入されたT48、T
50、またはT52ペプチドを有する生じたリポソームを、PBS、pH7.4で希釈し
、60℃まで加熱して、タウペプチドを添加する前のリポソーム溶液が得られた。
【0241】
API(Bachem AG、スイス)を、1mg/mLの濃度の2%のオクチルβ-
D-グルコピラノシド(Sigma-Aldrich、米国)を含むPBS、pH11.
4に溶かし、ペプチド溶液を60℃でリポソーム溶液内に注入し、次いで、30分間、6
0℃で撹拌した。濃縮は限外濾過によって行って標的値(400ug/mlのAPIおよ
び100ug/mlのT48、T50、またはT52)を得て、緩衝液交換は、ダイアフ
ィルトレーション中にPBS、pH7.4を用いて10回実施した。その後、APIがリ
ポソームの表面上に提示された生じたリポソームを、0.2umのポリカーボネートシリ
ンジフィルターを通すことによって滅菌濾過し、最終産物を5℃で保存した。
【0242】
リポソームR、S、およびTワクチンの調製
リポソームR、S、およびTワクチンは、エタノール注入に基づくプロセス、次いで押
出し成形を使用して生成した。最初に、DMPC(Lipoid GmbH、ドイツLu
dwigshafen)、DMPG(Lipoid GmbH、ドイツLudwigsh
afen)、コレステロール(Dishman、オランダ)、および3D-(6-アシル
)PHAD(登録商標)(Avanti Polar Lipids、米国アラバマ州)
を、9:1:7:0.04のモル比でEtOHに60℃で可溶化した。リポソームRおよ
びTでは、10%の溶媒(EtOH)に到達するように上記脂質エタノール溶液を270
mMのスクロースを補充した10mMのヒスチジン、pH5.8に混合し、その後、30
分間、60℃でインキュベートした。リポソームSでは、T50ペプチド(Bachem
AG、スイス)を10mMのHis/270mMのスクロース(pH5.8~6.0)
に溶かした。リポソームR、S、およびTに関する脂質-緩衝液混合液を15分間穏やか
に撹拌して、多重膜小胞(MLV)が生じた。生じた多重膜小胞を、EmulsiFle
x-C5高圧システム(Avestin、カナダ)において0.08umの孔径を有する
ポリカーボネート膜(Whatman、英国)を通した押出し成形に供した(5回)。
【0243】
押出し成形したリポソームを限外濾過によって濃縮し、ダイアフィルトレーションによ
って緩衝液を20mMのHis/145mMのNaCL、pH7.4に交換した。カプセ
ル封入されたT50を有する生じたリポソーム(リポソームS)、ならびに生じたリポソ
ームRおよびTを、20mMのHis/145mMのNaCL、pH7.4でさらに希釈
し、60℃まで加熱して、APIおよびT57(リポソームT)を添加する前のリポソー
ム溶液が得られた。
【0244】
リポソームTでは、T57を脱イオン蒸留水中に1%のオクチルβ-D-グルコピラノ
シド(Sigma-Aldrich、米国)で1mg/mLに溶かし、リポソーム中に挿
入、次いで15分間、60℃でインキュベーションした後に、API挿入を行った。
【0245】
API(Bachem AG、スイス)を、1mg/mLの濃度の1%のオクチルβ-
D-グルコピラノシド(Sigma-Aldrich、米国)と共に炭酸緩衝液、pH1
0.2に溶かし、ペプチド溶液を60℃でリポソーム溶液中に混合し、次いで、30分間
、60℃で撹拌した。濃縮は限外濾過によって行って、以下の標的値が得られた:
-リポソームRでは1200ug/mlのAPI、
-リポソームSでは1200ug/mlのAPIおよび300ug/mlのT50、な
らびに
-リポソームTでは1200ug/mlのAPIおよび300ug/mlのT57。
【0246】
緩衝液交換は、ダイアフィルトレーション中に10mMのHis/270mMのスクロ
ース、pH6.5を用いて10回実施した。その後、APIがリポソームの表面上に提示
された生じたリポソームを、0.2umのポリカーボネートシリンジフィルターを通すこ
とによって滅菌濾過し、最終産物を5℃で保存した。
【0247】
[実施例2]
コンジュゲートワクチンの調製
ペプチドおよびアジュバント
2つの多重リン酸化ペプチドエピトープ(それぞれ3つおよび2つのリン酸化されたア
ミノ酸を有するTAUVAC-p7.1およびTAUVAC-p22.1)の配列を、B
細胞の表面免疫グロブリンとより良好に結合し得るように、また、ヒトHLAクラスI
A、B、およびC分子と高い親和性で結合すると予測されるエピトープを配列が含有しな
いように、長さを最適化することによって、洗練した。後者の基準は、健著な神経損傷を
引き起こす可能性のある、タウに対する細胞毒性CD8+T細胞応答の誘導を回避するた
めに重要であった。免疫エピトープデータベースおよび分析資源(Immune Epi
tope Database and Analysis Resources)のT細
胞エピトープ予測ツールを使用して、ペプチドTAUVAC-p7.1は、ヒトHLAク
ラスI A、B、CならびにHLAクラスII DQおよびDR分子と高い親和性で結合
することができる予測されるエピトープを示さなかった一方で、ペプチドTAUVAC-
p22.1は、HLAクラスII DQおよびDR分子と中程度/高い親和性で結合する
エピトープを含有すると予測された(データ示さず)。
【0248】
この研究において使用したリン酸化タウペプチド(配列番号1、配列番号2、配列番号
3)は合成によって生成し(Pepscan、オランダ)、ホスホ残基を合成中に付加し
た。リンカーを介してKLH担体と共有結合している配列番号1または配列番号3のアミ
ノ酸配列を有するリン酸化タウペプチドを含むコンジュゲートは、本明細書中でそれぞれ
コンジュゲートBまたはコンジュゲートCと呼ばれる。リンカーを介してCRM担体と共
有結合している配列番号2のアミノ酸配列を有するリン酸化タウペプチドを含むコンジュ
ゲートは本明細書中でコンジュゲートAと呼ばれる。
【0249】
コンジュゲートBおよびCを製造するために、ワクチンペプチドを、m-マレイミドベ
ンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(MBS)リンカーおよびペプチドの
N末端の余分なシステインを介して、担体タンパク質KLHとコンジュゲートさせた。S
ephadex G25カラムを使用して未結合のペプチドを除去した後に、コンジュゲ
ートを濃縮した。コンジュゲートを混合した後、強力な多構成要素アジュバント(Sig
ma Adjuvant System、Sigma-Aldrich)または単一構成
要素デポーアジュバント(水酸化アルミニウム、Alhydrogel(登録商標)、I
nvivogen)のどちらかに、製造者の指示に従って注入した。
【0250】
ワクチンペプチドを、ポリエチレングリコール(PEG)-システイン-アセトアミド
プロピオンアミドリンカーを介して、担体タンパク質CRM197とコンジュゲートさせ
た。配列番号2のアミノ酸配列を有するリン酸化タウペプチドは合成によって生成し(P
olypeptide Laboratories SAS)、ホスホ残基およびPEG
3スペーサーを合成中に付加した。コンジュゲートAは、担体タンパク質CRM197を
、スクシンイミジル3-(ブロモアセトアミド)プロピオネート(SBAP)リンカーを
介して、ペプチドのN末端のシステインとコンジュゲートさせることによって製造した。
NHSエステル反応化学を介してSBAPをCRM197タンパク質第一級アミン(-N
H2)とライゲーションさせた。過剰なSBAPリンカーは限外濾過およびダイアフィル
トレーション(UF/DF)を使用して除去した。CRM197-SBAP中間体をリン
酸化タウペプチドとコンジュゲートさせ、反応が完了した後、過剰量のL-シスチンを加
えて反応をクエンチすることで、コンジュゲーション反応を停止させた。粗CRM197
-ペプチドコンジュゲート生成物をCapto Q ImpRes(GE Health
care)クロマトグラフィーカラムを使用して精製し、塩均一濃度方法を使用して溶出
させた。その後、UF/DFを使用して、精製したCRM197-ペプチド生成物を、2
0mMのトリス、250mMのスクロース、pH8.1中で0.5mg/mLの濃度まで
配合した。10%のPS80ストック緩衝液を加えて0.01%のPS80の最終濃度に
到達させることによって、CRM197-タウペプチド原薬(DS)を生成した。溶液は
濾過の前に十分に混合した。
【0251】
[実施例3]
ワクチンがタウホスホペプチド特異的IgG抗体を誘導した
すべての動物実験は認可されており、動物実験に関する現地の規制に従って行った。ア
カゲザルマカク(Macaca mulatta)は、Kunming Biomed Interna
tional Ltd、中国、Yunnan Yinmore Bio-Tech Co
. LTD、中国、およびYunnan Laboratory Primates I
nc.、中国から入手した。動物は免疫化の開始時に2~5歳であり、最小体重は2.5
kgであった。処置の開始前、およびそれ以降は週に1回、詳細な臨床検査を行った。さ
らに、マカクを日に2回観察し、臨床的徴候を記録した。
【0252】
成体のアカゲザルマカク(n=3匹の雄および3匹の雌/群)を、1800μgの配列
番号2の酢酸テトラパルミトイル化リン酸化タウペプチド/用量の、対照リポソームワク
チン(配列番号2のテトラパルミトイル化リン酸化タウペプチドおよびMPLAを有する
リポソーム)もしくは本出願の実施形態によるリポソームワクチン、たとえば、リポソー
ムZ(配列番号2のテトラパルミトイル化リン酸化タウペプチド、3D-(6-アシル)
PHAD(登録商標)、脂質付加CpGオリゴヌクレオチドCpG2006、およびT細
胞ペプチドT50を有するリポソーム)、または15μg/用量の本発明の一実施形態に
よるコンジュゲートワクチン(たとえば、コンジュゲートA、CRM197と連結させた
配列番号2のリン酸化タウペプチド)を用いて、1、29、および85日目に、ミョウバ
ンおよびCpGオリゴヌクレオチドCpG2006と共に同時注射して、皮下で免疫化し
た。出血を、免疫化前ならびに8、22、36、50、64、78、92、106、12
0、134、および148日目に行い、血清を単離した。
【0253】
特異的IgG抗体価は、配列番号2のリン酸化タウペプチドをコーティング抗原として
使用して、ELISAによって決定した。個々の免疫化したサルからの血清をアッセイ緩
衝液(PBS、0.05%のTween20、1%のBSA)中で連続希釈し、関連ペプ
チドでコーティングされた96ウェルプレートに適用した。2時間インキュベーションし
た後、試料を除去し、プレートをPBST(PBS、0.05%のTween20)で洗
浄した。抗体は、HRPとコンジュゲートさせた抗サルIgG(KPL)、次いでABT
S基質(Roche)を使用して検出した。すべての試料は8つの2倍希釈液で実行し、
それぞれのプレートに陽性および陰性の対照試料を含めた。データは1群あたりのエンド
ポイント力価(肯定応答を誘導する最後の血清希釈率)の幾何平均として表した。
【0254】
図4に示すように、リポソームZワクチンおよびコンジュゲートAはどちらも対照リポ
ソームワクチンと比較してより高いホスホペプチド特異的IgG力価を誘導した。
【0255】
[実施例4]
ワクチンがヒト脳において病理学的タウ構造に特異的な抗体を誘導した
すべての脳組織はオランダ脳バンク(Netherlands Brain Bank
、NBB)から入手し、脳剖検ならびに試料およびその臨床情報の研究目的での使用のた
めのインフォームドコンセントの署名後に、ドナーから採取した。認知症でない対照(健
康)、アルツハイマー病(AD)、タウ病理を伴った前頭側頭認知症(FTD-タウ)、
ピック病、原発性加齢関連タウオパチー(PART)、および進行性核上性麻痺(PSP
)からのパラフィン切片を使用した。脳領域には、頭頂葉皮質、中前頭回、海馬、または
尾状核が含まれていた。
【0256】
具体的には、対照ヒト対象(健康)およびアルツハイマー病を患っているヒト対象(A
DブラークV/VI)の頭頂葉皮質からのホルマリン固定しパラフィン包埋した切片を、
通常抗体希釈剤(Immunologic)中で1:100に希釈した免疫後のマカク血
清を用いて染色した。その後、切片を洗浄し、ヤギ抗サル-HRP(Abcam)で染色
した。最後に、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)の存在下で茶色の特異的染色を沈
着させる3,3’-ジアミノベンジジン(DAB、Dako)を使用して、染色を可視化
した。スライドをヘマトキシリンで対比染色し、脱水し、Quick D封入剤(Kli
nipath)を用いて搭載した。写真はLeica DC500顕微鏡を用いて撮影し
た。
【0257】
図5の結果は、リポソームZ(配列番号2のテトラパルミトイル化リン酸化タウペプチ
ド、3D-(6-アシル)PHAD(登録商標)、脂質付加CpGオリゴヌクレオチドC
pG2006、およびT細胞ペプチドT50を有するリポソーム)を用いて免疫化したア
カゲザルマカクからの免疫後血清が、ヒト脳切片中の病理学的タウ構造を染色したことを
示す。改善リポソームを用いた一次免疫化後の106日目に、アカゲザルマカクから血清
を採取した。このマカクは、血清採取の0、1、および3カ月前に免疫化を受けていた。
左(ADブラークV/VI)パネルは、ブラークステージVドナーからの頭頂葉皮質の染
色を示す。矢印はタウのもつれの染色を示す。右(健康)パネルは、ブラークステージ0
ドナーからの頭頂葉皮質の染色を示す。血清を1:100の希釈率で切片に適用し、次い
でヤギ抗サル抗体を1:100で適用し、DAB発色剤を使用して染色を可視化した。
【0258】
図6の結果は、配列番号2のリン酸化タウペプチド+可溶性CpGおよびミョウバン水
酸化物を含有するコンジュゲートAを用いて免疫化したアカゲザルマカクからの血清が、
ヒトAD脳切片中の病理学的タウ構造と結合することを示す。CRMコンジュゲートワク
チンを用いた一次免疫化後の106日目に血清を採取した。これらのマカクは、血清採取
の0、1、および3カ月前に免疫化を受けていた。上(AD)パネルは、ブラークステー
ジVドナーからのタウのもつれを含めた頭頂葉皮質の染色を示す。下(対照)パネルは、
ブラークステージ0ドナーからの頭頂葉皮質の染色を示す。血清を1:100の希釈率で
切片に適用し、次いでヤギ抗サル抗体を1:100で適用し、DAB発色剤を使用して染
色を可視化した。
【0259】
[実施例5]
1つまたは2つのアジュバントを用いたリポソームワクチン
改善リポソームワクチンに2つのアジュバントを加えることで、タウホスホペプチド特
異的IgG抗体価のレベル、および個体間での抗体応答の一貫性が増加する。
【0260】
成体のアカゲザルマカク(n=3匹の雄および3匹の雌/群)を、1、29、85、お
よび169日目に、1800μgの配列番号2の酢酸テトラパルミトイル化リン酸化タウ
ペプチド/用量の対照リポソームワクチン、または、3D-(6-アシル)PHAD(登
録商標)アジュバント単独(リポソームX、
図7A)、脂質付加CpG2006オリゴヌ
クレオチドアジュバント単独(リポソームY、
図7B)のどちらか、もしくは3D-(6
-アシル)PHAD(登録商標)および脂質付加CpG2006オリゴヌクレオチドアジ
ュバントの両方(リポソームZ、
図7C)を含有する、カプセル封入されたT50 T細
胞エピトープを有する改善リポソームワクチンを用いて、皮下で免疫化した。出血を、免
疫化前ならびに8、22、36、50、64、78、92、106、120、134、1
48、162、176、および190日目に行い、抗体を単離した。血清中の特異的Ig
G抗体価を、配列番号2のリン酸化タウペプチドをコーティング抗原として、および抗サ
ルIgG二次抗体を使用して、ELISAによって決定した。生じる抗体レベルを、それ
ぞれの個々のサルの経時的なエンドポイント力価(肯定応答を誘導する最後の血清希釈率
)として提示する。それぞれの免疫化群を1つのパネルに表す(
図7A~C)。1群あた
りのエンドポイント力価の幾何平均±95%の信頼区間を
図7Dに提示する。要約すると
、
図7A~Dは、カプセル封入されたT50を含有するリポソームワクチンに2つのアジ
ュバントを含めることで、タウホスホペプチドに対する抗体応答のレベルおよび一貫性が
改善され、個々のサル間でより少ない抗体応答のばらつきがもたらされたことを示す。よ
り詳細には、
図7Dに示すように、配列番号2のリン酸化タウペプチド、T50 T細胞
エピトープ(リポソームX、Y、およびZ)、ならびに1つまたは2つのアジュバントを
有する改善リポソームワクチンは、T細胞エピトープを有さない対照リポソームワクチン
よりも高い、タウホスホペプチドに対する力価を誘導した。改善リポソームワクチンのそ
れぞれを注射した場合はすべてのサルがレスポンダーであった一方で、対照リポソームワ
クチンの場合は6匹のうち4匹の動物がレスポンダーであった。
【0261】
[実施例6]
ワクチンが濃縮対らせん状細線維(ePHF)に特異的な抗体を誘導した
アカゲザルマカクの群(n=3匹の雄および3匹の雌/群)を、1日目および29日目
に、ワクチン接種によって、(i)T50 T細胞エピトープおよび3D-(6-アシル
)PHAD(登録商標)アジュバント単独(リポソームX)を含有する改善リポソームワ
クチン、(ii)T50 T細胞エピトープおよび脂質付加CpG2006アジュバント
単独(リポソームY)を含有する改善リポソームワクチン、(iii)T50 T細胞エ
ピトープならびに2つのアジュバント(3D-(6-アシル)PHAD(登録商標)およ
び脂質付加CpG2006、リポソームZ)を含有する改善リポソームワクチン、または
(iv)コンジュゲートワクチン(CRM197と連結させた配列番号2のリン酸化タウ
ペプチド)を用いて、ミョウバンおよびCpGオリゴヌクレオチドCpG2006(コン
ジュゲートA)と同時注射して、皮下で免疫化した。
【0262】
濃縮対らせん状細線維(ePHF)の調製物は、組織学的に確認されたAD対象の死後
脳組織から、不溶性タウのサルコシル抽出によって、GreenbergおよびDavi
esの改変方法(Greenberg and Davies, 1991, Proc Natl Acad Sci U S A, 87(15):582
7-31)を使用して得た。濃縮対らせん状細線維(ePHF)に特異的な抗体価はMeso
scale Discovery(MSD)プラットフォームを使用して評価した。MS
Dストレプトアビジンプレートを、ビオチン標識した抗タウ捕捉抗体(HT7-ビオチン
、ThermoScientific)でコーティングした後、アルツハイマー病患者か
ら単離したePHFと共にインキュベーションした一方で、ePHFに特異的なIgG抗
体を、サルIgG抗体と交叉反応する、スルホタグ標識した抗ヒトIgG抗体を使用して
さらに検出した。より詳細には、ePHFを、事前に1%のBSAで飽和し、ビオチン標
識したHT-7(Thermo Scientific)でコーティングした、MSD
Gold小スポットストレプトアビジン96ウェルプレート(MSD)に加えた。1時間
インキュベーションした後、プレートをPBSTで洗浄し、血清の段階希釈液を加え、2
時間インキュベートした。スルホタグ標識した抗ヒトIgG抗体を使用して結合抗体を検
出し、次いで、1%のPFA中の固定ステップの後にRead Buffer Tを加え
た。Sector Imager(MSD)を使用してプレートを分析した。結果は、そ
れぞれの個々のサルについて1ミリリットルあたりの任意単位(AU/mL)で、1群あ
たりの幾何平均と共に表した。最初の免疫化後の50日目でのePHF特異的抗体価を表
す。
【0263】
図8は、すべてのワクチンが高力価のePHF特異的IgG抗体を誘導したことを示す
。
【0264】
また、高力価のePHF特異的IgG抗体の同様の結果が、筋肉内投与を介してアカゲ
ザルマカクに投与したリポソームZ+などの他のリポソームでも得られた。
【0265】
[実施例7]
アカゲザルにおいてリポソームワクチンおよびコンジュゲートワクチンによって誘導され
たタウホスホペプチド特異的抗体の幅
アカゲザルマカクの群(n=3匹の雄および3匹の雌/群)を、1および29日目に、
(i)カプセル封入されたT50ならびに2つのアジュバント:TLR4リガンド(3D
-(6-アシル)PHAD(登録商標))および脂質付加CpG2006オリゴヌクレオ
チド(リポソームZ)を含有する改善リポソームワクチン、(ii)コンジュゲートワク
チン(CRMと連結させた配列番号2のリン酸化タウペプチド)(コンジュゲートA)を
用いて、ミョウバンおよびCpGオリゴヌクレオチドCpG2006と共に同時注射して
、皮下で免疫化した。抗体のエピトープ認識プロファイルは、2回目の免疫化(50日目
)の3時間後に、1つのアミノ酸をシフトしたN末端ビオチン標識した8量体ペプチドの
ライブラリー、およびカバーする配列番号2のリン酸化タウペプチドの配列、ならびに配
列番号4の配列(VYKSPVVSGDTSPRHL、配列番号2と同じアミノ酸配列を
有する非リン酸化タウペプチド)および対応するビオチン標識した完全長ペプチドを使用
して、エピトープマッピングELISAによって決定した。
【0266】
図9は、リポソームZを用いて免疫化したサルは、配列番号2のリン酸化ペプチドのN
末端部分とほとんど結合したIgG抗体を生じた一方で(
図9A)、コンジュゲートワク
チン(CRMと連結させた配列番号2のリン酸化タウペプチド)を用いて免疫化したサル
は、配列番号2のタウペプチドのC末端部分とほとんど結合したIgG抗体を生じた(図
9B)ことを示す。
【0267】
[実施例8]
カプセル封入されたT細胞エピトープを有するリポソームワクチンによって誘導されたタ
ウホスホペプチド特異的IgG抗体の増加した力価
3つの群のC57BL/6Jマウス(n=10匹/群)を、0および14日目に、i)
TLR4作用剤を含有するリポソームワクチン(3D-(6-アシル)PHAD(登録商
標))(リポソームR)、ii)カプセル封入されたT細胞エピトープT50およびTL
R4リガンド(3D-(6-アシル)PHAD(登録商標))をアジュバントとして含有
するリポソームワクチン(リポソームS)、またはiii)リポソーム表面上に繋留され
たT細胞エピトープT57(すなわちジパルミトイル化T50)およびTLR4リガンド
(3D-(6-アシル)PHAD(登録商標))をアジュバントとして含有するリポソー
ムワクチン(リポソームT)を用いて、皮下で免疫化した。配列番号2のリン酸化タウペ
プチドに特異的なIgG抗体のレベルを、マウス血漿への最初の注射の21および35日
後にELISAによって測定した。結果は、個々のマウスの値として、任意単位(AU)
/mLで表した1群あたりの幾何平均±95%のCIと共に、提示した。
図10Aに示す
ように、カプセル封入されたT50を含有するリポソームワクチン(リポソームS)を用
いたワクチン接種は、最初の免疫化の21日後に、対照リポソームワクチン(リポソーム
R)および繋留されたT細胞エピトープを含有するリポソームワクチン(リポソームT)
よりも有意に高い抗体価を誘導し(クラスカル-ワリス検定:それぞれp=0.0089
およびp=0002)、また、最初の免疫化の35日後に、対照リポソームワクチンより
も高い抗体価、および繋留されたT細胞エピトープを含有するリポソームワクチンより有
意に高い抗体価を誘導した(クラスカル-ワリス検定:それぞれp=0.7591および
p=0053)(
図10B)。
【0268】
[実施例9]
リポソームワクチンが取り込まれたT細胞エピトープに特異的なT細胞応答を誘導した
3つの群のC57BL/6Jマウス(n=5匹/群)を、0、14、および28日目に
、(i)カプセル封入されたT細胞ペプチドT48(GSリンカーによって分離されたT
細胞エピトープPADRE、T2、T30、およびT17を含有)ならびにTLR4作用
剤をアジュバント(MPLA)として有する改善リポソームワクチン(リポソームM)、
(ii)カプセル封入されたT52(RKリンカーによって分離されたT細胞エピトープ
PADRE、T2、およびT30を含有)ならびにTLR4作用剤(MPLA)をアジュ
バント(リポソームN)として有する改善リポソームワクチン、または(iii)PBS
を用いて、皮下で免疫化した。IL-4およびIFN-γ ELISPOTによるT細胞
応答の分析のために、マウスから脾臓を最初の免疫化の42日後に収集した。単個細胞懸
濁液を、10ug/mLの培地、T48、またはT52ペプチドと共に48時間インキュ
ベートした。プレートを、ビオチン標識した抗マウスIL-4またはIFN-γモノクロ
ーナル抗体およびストレプトアビジンアルカリホスファターゼ(AP)と共にインキュベ
ートした。AP基質を加えることでスポットを発色させた。
図11は、リポソーム内にカ
プセル封入されているものと同じペプチドを用いたマウス脾細胞の再刺激では、IL-4
(
図11B)およびIFN-γスポット形成細胞(
図11A)が誘導された一方で、PB
Sを注射したマウスの脾細胞では誘導されなかったことを示す。これにより、ワクチンに
T細胞エピトープを加えることで、特定のT細胞の活性化が誘導され、タウ特異的B細胞
に対する抗体産生における支援をさらに提供することが可能になることが確認された。
【0269】
[実施例10]
カプセル封入されたT細胞エピトープおよび繋留されたT細胞エピトープを含有するリポ
ソームワクチン
アカゲザルマカクの群(n=6匹/群)を、1、29、85、および169日目に、(
i)カプセル封入されたT細胞エピトープT50およびTLR4リガンド(MPLA)を
アジュバントとして含有するリポソームワクチン(リポソームL)、(ii)繋留された
T細胞エピトープT46およびTLR4リガンド(MPLA)をアジュバントとして含有
するリポソームワクチン(リポソームO)、ならびに(iii)TLR4リガンド(MP
LA)をアジュバントとして含有し、T細胞エピトープを含有しない対照リポソームワク
チンを用いて、皮下で免疫化した。出血を、免疫化前(-14日目)ならびに8、22、
36、50、64、78、92、106、120、134、148、162、176、お
よび190日目に行い、抗体を単離した。特異的IgG抗体価を、配列番号2のリン酸化
タウペプチドをコーティング抗原として、および抗サルIgG二次抗体を使用して、EL
ISAによって決定した。生じる抗体レベルをエンドポイント力価(肯定応答を誘導する
最後の血清希釈率)として計算し、データを1群あたりの幾何平均として表した。
図12
に示すように、カプセル封入されたT細胞エピトープを含有するリポソームワクチン(リ
ポソームL)および繋留されたT細胞エピトープを含有するリポソームワクチン(リポソ
ームO)は、それぞれ、T細胞エピトープを有さない対照リポソームワクチンよりも高い
タウホスホペプチド特異的抗体価を誘導した。
【0270】
[実施例11]
コンジュゲートワクチンによって誘導されたマウスにおける抗体応答
雌BALB/cマウス(14匹のマウス匹/群)を、コンジュゲートBまたはコンジュ
ゲートC(KLHと共有結合した配列番号1または配列番号3を含有)を用いて、
図13
Aに示したスケジュールに従って、強力な多構成要素のアジュバント(Sigma Ad
juvant System(登録商標)、Sigma-Aldrich、以降Ribi
と呼ぶ)または単一構成要素のデポーアジュバント(Alhydrogel(登録商標)
アジュバント2%もしくは水酸化アルミニウムゲル、InvivoGen、以降ミョウバ
ンと呼ぶ)のどちらかでアジュバント化したワクチン候補を使用して、免疫化した。配列
番号1のアミノ酸配列は、マウスタンパク質のそれと比較して1個のアミノ酸の相違のみ
を含有する一方で、配列番号3の配列は、ヒトとマウスとの間で100%保存されている
。したがって、選択されたエピトープはマウスの「自己」タンパク質であると合理的にみ
なすことができ、マウスを、免疫寛容が免疫原性に課し得る制限を調査するための関連モ
デルとするべきである。
【0271】
ワクチン免疫原性の第1の手段として、フローサイトメトリーを、ワクチン注射部位を
排出させる頸部リンパ節におけるT濾胞性ヘルパー細胞(TfH)の誘導を測定するため
に使用した(4匹のマウス/群)。TfHは、他の分子の中でとりわけCXCR5、PD
-1、およびICOSの発現によって特徴づけられる、特殊なCD4
+T細胞集団である
。TfHは、ワクチンまたは他の免疫刺激に曝された後に拡大し、胚中心でのB細胞の親
和性成熟を支援する(Crotty, 2011, Annual Reviews of Immunology. Vol 29:p621-663
)。誘導されたTfHの数は、ヒト(Bentebibel et al., 2013, Sci Transl Med., 5(17
6):176ra32、Spensieri et al., 2013, Proc Natl Acad Sci U S A., 110(35):14330-5)
および小動物におけるワクチンの保護効率と正に相関する。
図13Bに示すように、両方
のワクチン、およびKLH+アジュバントの対照免疫化が、ワクチン接種したマウスにお
いて測定可能なTfHを誘導した。さらに、排出頸部リンパ節を最初の免疫化の7日後に
収集した場合に、活性ワクチン(コンジュゲートBおよびコンジュゲートCの群)または
活性プラセボ(KLH)+ミョウバンを受けているすべての動物が、不活性のプラセボ(
PBS群)を与えた動物よりも有意に多いTfHを有していた(KLH-TAUVAC-
p7.1ではP=0.0044、KLH-TAUVAC-p22.1ではP=0.048
2、KLHではP=0.0063、ANOVA検定を使用、次いで多重比較用にダネット
の調整)。
【0272】
0日目ならびに免疫化後の4つの追加の時点(14、28、56、および84日目、図
13C、D、G、およびHを参照)でのタウホスホペプチドおよびKLHと結合する抗体
の血清力価を決定するために、ELISAを実施した。
図13Cに示すように、コンジュ
ゲートBを用いた免疫化により、対応するワクチンペプチドに対して反応性のある結合腔
外が誘導された。コンジュゲートBおよびRibiアジュバントを用いて免疫化した動物
では、測定したすべての時点において、ワクチンペプチドに対する結合力価は、活性プラ
セボによって誘導された結合力価よりも有意に高かった(コンジュゲートB+Ribiと
KLH+Ribiとを比較)(P<0.001、ANOVA検定を使用、次いで多重比較
用にチューキーの調整)。ミョウバンアジュバント化群では、差異は56および84日目
でのみ有意であった(それぞれP=0.001および0.012)。
【0273】
コンジュゲートCに対するタウ特異的抗体応答(
図13D)は、コンジュゲートBに対
する応答よりも全体的に低い規模のものであったが、アッセイが違う(異なるコーティン
グペプチド)ことで、2つのワクチン間で直接の統計的比較を行うことは除外される。そ
れにもかかわらず、免疫化後の28および84日目(それぞれP=0.001および0.
008)でのコンジュゲートCに対する抗体価は、コンジュゲートC+Ribiをワクチ
ン接種したマウスにおいて活性プラセボKLH Ribiを受けているマウスよりも有意
に高かった。ミョウバンアジュバント化群の力価は、活性プラセボのものと有意な差異は
なかった。
【0274】
担体タンパク質はホスホペプチドをin vivoでの分解からある程度は保護するが
、in vivoでのペプチド抗原のホスファターゼ消化が一部の非リン酸化ペプチドを
免疫系に曝露させるであろう可能性が高かった。その曝露が、コンジュゲートBおよびコ
ンジュゲートC中の非リン酸化ペプチドと結合することができる抗体の精製をもたらした
かどうかを決定するために、非リン酸化ペプチドをコーティング抗原として使用したEL
ISAを行った。
図13E~Fに示すように、非リン酸化タウペプチドに対する応答は低
く、同じ非リン酸化ペプチドに対する活性プラセボの応答に匹敵していた。さらに、コン
ジュゲートBおよびRibiを用いて免疫化した動物では、測定したすべての時点におい
て、リン酸化ペプチドに対する結合力価は非リン酸化ペプチドに対する結合力価よりも有
意に高かった(14日目ではP=0.009、28、56、および84日目ではP<0.
0001、ANOVA検定を使用)。ミョウバンアジュバント化群では、差異は56およ
び84日目でのみ有意であった(それぞれP=0.0002および0.001)。コンジ
ュゲートCを用いて免疫化した動物、リン酸化ペプチドに対する応答は、Ribiアジュ
バントを使用した場合のみより高かった(28日目ではP<0.0001、56および8
4日目ではP=0.0001)。
【0275】
[実施例12]
コンジュゲートワクチンによって誘導された抗体は、変更されたタウの生理的に関連する
形態と結合する
ワクチン誘導性の抗体が変更されたタウの生理的に関連する形態と結合できるかどうか
をさらに決定するために、本発明者らは、ワクチン接種したマウスからの免疫後血清を使
用して、アルツハイマー病患者(5件のAD事例)、他のタウオパチーを患っている患者
(3件の事例のPART、FTD、PICK、およびPSP)、または年齢が一致した健
康な対照(5件の対照事例、対照)のいずれかから採取した死後ヒト脳切片を染色した。
予想どおり、対照動物(PBSおよび活性プラセボ群)からの血清は脳切片と結合しなか
った一方で、ネズミクローンから得たpTau[pSer202、pThr205]と結
合するモノクローナル抗体であるAT8は、対応する領域の隣接組織切片においてタウ病
理の強力な免疫反応性を示した(
図14)。活性ワクチン、コンジュゲートBおよびコン
ジュゲートCを用いて免疫化した動物からの血清は、AD切片だけでなく(データ示さず
)、他のタウオパチーからのものにおける病理学的タウ構造とも結合した(
図14)。コ
ンジュゲートBに誘導された抗体は、AD事例中の(プレ)もつれ、神経絨毛糸、および
神経突起老人斑と反応した。また、これらの免疫後血清は、PART脳組織中の神経原線
維のもつれおよび神経絨毛糸、FTD-タウ(MAPT P301S)組織中の神経封入
体および神経絨毛糸、ピック病事例の一部中の封入体および星細胞、ならびにPSPに典
型的な神経封入体、神経絨毛糸、および星細胞とも免疫反応することができた。また、コ
ンジュゲートCに誘導されたポリクローナル血清は、それぞれのタウオパチーに特長的な
病理学的タウ構造とも反応した。AD事例では、染色は主に神経原線維のもつれに集中し
ており、より低い程度で神経突起老人斑および神経絨毛糸に集中していた。対応する領域
のより低い拡大率で同様の結果が示された(データ示さず)。
【0276】
[実施例13]
ワクチン誘導性の抗体はマウスにおいて機能的である
コンジュゲートBワクチンの保護効率をタウオパチーの注射モデルにて試験した(Peer
aer et al., 2015, Neurobiol Dis., 73:83-95)。このモデルでは、遺伝子突然変異(P
301L)によってタウオパチーに罹患しやすくしたマウスが、
図15Aに示したタイム
ラインに従って、ヒトAD脳から単離した濃縮PHFの脳内注射を受ける。導入遺伝子誘
導性のタウオパチーの発症の前に行うこの注射は、これらの動物においてタウオパチーの
発生を加速させる。逆に、ePHF「種」を、AT8などのタウ播種活性を抑制すること
ができる抗体と事前に混合した場合、タウオパチーの誘導は低下する(非公開データ、示
さず)。
【0277】
図15Aのスキームに従って、本発明者らは、コンジュゲートB、Ribi、または活
性対照KLH Ribiを用いて免疫化した動物の血清から精製したIgGと事前に混合
した濃縮ヒトPHFの定位注射後の、タウオパチーの発生を評価した。注射の2カ月後、
これらのマウスの脳を収集し、標準の生化学分析を使用して全画分およびサルコシル不溶
性画分中の凝集タウの量を決定した。得られたデータにより、マウスに、コンジュゲート
Bをワクチン接種したマウスからのIgGと事前に混合したePHFを注射した場合、全
画分(
図15B)およびサルコシル不溶性(
図15C)画分の両方において、対照注射を
受けている動物よりも凝集ホスホタウが有意に低かったことが示された(p<0.000
1 KLH Ribi対KLH-TAUVAC-p7.1 Ribi、ANOVA検定を
使用、次いで多重比較用にホルム-ボンフェローニ調整)。サルコシル不溶性タウは良好
に受容されてタウオパチーの病理学的特長と相関しており、この結果は、KLH-TAU
VAC-p7.1を用いたワクチン接種によって誘導された抗体がin vivoで保護
的であることを実証している。
【0278】
[実施例14]
ワクチン誘導性の抗体は非ヒト霊長類において機能的である
アカゲザルマカクを、ミョウバンおよびCpGオリゴヌクレオチドでアジュバント化し
たコンジュゲートB(n=6)またはKLH(n=2)を用いて、1、29、85、およ
び169日目に免疫化した。血液を14日毎に採取し、コンジュゲートBを用いて免疫化
した動物からの血清を、ELISAを使用して免疫化ペプチドに対する反応性について(
図16A)、およびMSDを使用してヒトePHFについて(
図16B)試験した。コン
ジュゲートBを用いた免疫化は、ワクチンホスホペプチドに対して持続的かつ一貫した抗
体応答をもたらした。さらに、すべての動物は、ヒトePHFに対して測定可能な抗体レ
ベルを有しており、6匹の動物のうちの3匹がこの抗原に対して高い反応性を示していた
。一次免疫化の50日後に動物から採取した血清を健康な個体またはAD患者からのヒト
脳切片に適用した(
図16C)。コンジュゲートB群からの免疫後血清はAD脳組織中の
病理学的タウ構造、すなわち、神経原線維のもつれ、神経絨毛糸、および神経突起老人斑
を染色した一方で、KLHで免疫化したマウスからの血清はいかなる反応性も示さなかっ
た。対照組織では染色は観察されなかった。タウ免疫枯渇アッセイにて試験した場合に、
コンジュゲートBを受けている動物は、タウ種と結合して枯渇させることができる抗体を
有していた一方で(50日目ではp=0.03、ANOVA検定を使用、次いで多重比較
用にダネットの調整)、KLHを用いた免疫化はそのような抗体を始動させなかった(図
16D)。また、免疫化前および後の血清を中和アッセイで連続希釈した個々の試料とし
ても試験した(
図16E)。ベースラインからの変化(CFB)を、ワクチン接種前の-
14日目(ベースライン)とワクチン接種後50、106、および190日目のそれぞれ
との間の、読取り値のFRET計数の差異として計算した。その後、特定のワクチン接種
後の日での応答(日
i)を以下のように計算した:
【0279】
【0280】
動物を変量効果として用いた、前述の応答に対する一般的な線形混合モデルを、カテゴ
リー変数として扱ったワクチン群、日、および血清レベルの変数ならびにすべてのその相
互作用を用いて適用した。本研究の探索的性質を考慮すると、複数の試験調整は検討しな
かった。仮説の試験を5%の有意性レベルで行った。
【0281】
[実施例15]
ミョウバンおよびCpGオリゴヌクレオチドアジュバントと組み合わせたコンジュゲート
ワクチンを用いて免疫化したマウスは、ワクチンペプチドに対してより高い力価抗体応答
をもたらした
成体雌C57BL/6マウス(n=5~6匹/群)を、2ug(
図17A)または0.
2ug(
図17B)のどちらかのコンジュゲートAワクチンを用いて、筋肉内で免疫化し
た。コンジュゲートワクチンを、単独で(アジュバントなし)、ミョウバン水酸化物と共
に、CpGオリゴヌクレオチドと共に、またはミョウバンとCpGオリゴヌクレオチドの
組合せと共にのいずれかで投与した。すべてのマウスに、研究の0日目に一次免疫化を与
え、次いで28日目に単一のブースター免疫化を与えた。ミョウバンアジュバントの用量
は500ug/マウス/注射であり、CpGオリゴヌクレオチドアジュバントの用量は2
0ug/マウス/注射であった。
図17のグラフは、免疫化前(0日目)ならびにワクチ
ンペプチドT3.5をコーティング抗原として用いた免疫化の2つの時点(28および4
2日目)にマウスから採取した血清を使用した、結合ELISAの結果を示す。1群あた
りのT3.5特異的平均エンドポイント力価をプロットし、エラーバーは標準誤差を表す
。表は、ノンパラメトリックなクラスカル-ワリス検定を使用して抗体価を比較し、クラ
スカルワリス検定の事後としてウィルコクソン符号順位検定を使用して対での群の比較を
評価した結果の統計分析を示す。
【0282】
図17に示す結果は、どちらの用量でも、非アジュバント化ワクチンは強力な免疫応答
を誘導できなかったことを例示している。ミョウバンもしくはCpGオリゴヌクレオチド
または両方の組合せの使用は抗体応答の規模を改善した(p≦0.0152)。さらに、
2ugのワクチンを用いて免疫化した動物では、アジュバントの組合せは、28日目に単
一アジュバントよりも有意に高い抗体価を与えた(p=0.0028)。また、42日目
に0.2ugのワクチンを用いて免疫化した動物では、ミョウバン-CpGオリゴヌクレ
オチドの組合せは、CpGオリゴヌクレオチド単独よりも良好な性能であった(p=0.
0497)。これらのデータはミョウバンとCpGオリゴヌクレオチドアジュバントとの
組合せの使用を支持している。
【0283】
[実施例16]
様々なタウペプチド:T細胞エピトープの比を有するリポソームワクチンは、高いかつ持
続的なレベルのタウホスホペプチド特異的IgG抗体価を誘導する
成体のアカゲザルマカク(n=6匹/群)を、1、29、85、および169日目に、
3D-(6-アシル)PHAD(登録商標)および脂質付加CpG2006オリゴヌクレ
オチドアジュバントをどちらも含有し、i)400ug/mLの配列番号2のリン酸化タ
ウペプチドおよび100ug/mLのT50(リポソームZ)、ii)1200ug/m
Lの配列番号2のリン酸化タウペプチドおよび1200ug/mLのT50(リポソーム
Z
+)、iii)400ug/mLの配列番号2のリン酸化タウペプチドおよび400u
g/mLのT50(リポソームZ
++)、iv)1200ug/mLの配列番号2のリン
酸化タウペプチドおよび300ug/mLのT50(リポソームZ
+++)を有する、カ
プセル封入されたT50 T細胞エピトープを有する改善リポソームワクチン中に180
0μgの配列番号2の酢酸テトラパルミトイル化リン酸化タウペプチド/用量を用いて、
皮下で免疫化した。出血を、免疫化前ならびに8、22、36、50、64、78、92
、106、120、134、148、162、176、および190日目に行い、抗体を
単離した。血清中の特異的IgG抗体価を、配列番号2のリン酸化タウペプチドをコーテ
ィング抗原として、および抗サルIgG二次抗体を使用して、ELISAによって決定し
た。生じる抗体レベルを、それぞれの個々のサルの経時的なエンドポイント力価(肯定応
答を誘導する最後の血清希釈率)として計算した。1群あたりのエンドポイント力価の幾
何平均±95%の信頼区間を
図18に提示し、これは、試験した4つすべてのリポソーム
ワクチンが、タウホスホペプチドに対して高いかつ持続的な力価を誘導したことを示して
いる。
【0284】
配列番号1-ホスホタウペプチド(7.1)
GDRSGYS[pS]PG[pS]PG[pT]PGSRSRT
配列番号2-ホスホタウペプチド(T3.5)
VYK[pS]PVVSGDT[pS]PRHL
配列番号3-ホスホタウペプチド(22.1)
SSTGSIDMVD[pS]PQLA[pT]LA
配列番号4-タウペプチド
VYKSPVVSGDTSPRHL
配列番号5-ホスホタウペプチド
RENAKAKTDHGAEIVYK[pS]PVVSGDT[pS]PRHL
配列番号6-ホスホタウペプチド
RQEFEVMEDHAGT[pY]GL
配列番号7-ホスホタウペプチド
PGSRSR[pT]P[pS]LPTPPTR
配列番号8-ホスホタウペプチド
GYSSPG[pS]PG[pT]PGSRSR
配列番号9-ホスホタウペプチド
GDT[pS]PRHL[pS]NVSSTGSID
配列番号10-ホスホタウペプチド
PG[pS]PG[pT]PGSRSR[pT]P[pS]LP
配列番号11-ホスホタウペプチド
HL[pS]NVSSTGSID
配列番号12-ホスホタウペプチド
VSGDT[pS]PRHL
配列番号13-T50 T細胞エピトープ
AKFVAAWTLKAAAVVRQYIKANSKFIGITELVVRFNNFTV
SFWLRVPKVSASHLE-NH2
配列番号14-T46 T細胞エピトープ
AKFVAAWTLKAAAGSQYIKANSKFIGITELGSFNNFTVSF
WLRVPKVSASHLEK(Pal)K(Pal)-NH2
配列番号15-T48ヘルパーT細胞エピトープ
AKFVAAWTLKAAAGSQYIKANSKFIGITELGSFNNFTVSF
WLRVPKVSASHLEGSLINSTKIYSYFPSVISKVNQ-NH2
配列番号16-T51ヘルパーT細胞エピトープ
AKFVAAWTLKAAARRQYIKANSKFIGITELRRFNNFTVSF
WLRVPKVSASHLE-NH2
配列番号17-T52ヘルパーT細胞エピトープ
AKFVAAWTLKAAARKQYIKANSKFIGITELRKFNNFTVSF
WLRVPKVSASHLE-NH2
配列番号18-CpG2006(CpG7909としても知られる)
5’-tcgtcgttttgtcgttttgtcgtt-3’
ただし、小文字はホスホロチオエート(ps)ヌクレオチド間結合を意味する
配列番号19-CpG1018
5’-tgactgtgaacgttcgagatga-3’
ただし、小文字はホスホロチオエートヌクレオチド間結合を意味する
配列番号20-CpG2395
5’-tcgtcgttttcggcgcgcgccg-3’
ただし、小文字はホスホロチオエートヌクレオチド間結合を意味する
配列番号21-CpG2216
5’-ggGGGACGATCGTCgggggg-3’
ただし、小文字はホスホロチオエートヌクレオチド間結合を意味し、大文字はリン酸ジエ
ステル(po)結合を意味する
配列番号22-CpG2336
5’-gggGACGACGTCGTGgggggg -3’、
ただし、小文字はホスホロチオエートヌクレオチド間結合を意味し、大文字はリン酸ジエ
ステル結合を意味する
配列番号23-Pan DRエピトープ(PADRE)ペプチド
AKFVAAWTLKAAA
配列番号24-P2
QYIKANSKFIGITEL
配列番号25-P30
FNNFTVSFWLRVPKVSASHLE
配列番号26-TT586~605
LINSTKIYSYFPSVISKVNQ
配列番号27-パルミトイル化ホスホタウペプチド(パルミトイル化7.1)
K(pal)K(pal)GDRSGYS[pS]PG[pS]PG[pT]PGSRS
RTK(pal)K(pal)
配列番号28-パルミトイル化ホスホタウペプチド(T3、パルミトイル化T3.5)
K(pal)K(pal)VYK[pS]PVVSGDT[pS]PRHLK(pal)
K(pal)
配列番号29-パルミトイル化ホスホタウペプチド(パルミトイル化22.1)
K(pal)K(pal)SSTGSIDMVD[pS]PQLA[pT]LAK(pa
l)K(pal)
配列番号30-パルミトイル化タウペプチド
K(pal)K(pal)VYKSPVVSGDTSPRHLK(pal)K(pal)
配列番号31-パルミトイル化ホスホタウペプチド
K(pal)K(pal)RENAKAKTDHGAEIVYK[pS]PVVSGDT
[pS]PRHLK(pal)K(pal)
配列番号32-パルミトイル化ホスホタウペプチド
K(pal)K(pal)RQEFEVMEDHAGT[pY]GLK(pal)K(p
al)
配列番号33-パルミトイル化ホスホタウペプチド
K(pal)K(pal)PGSRSR[pT]P[pS]LPTPPTRK(pal)
K(pal)
配列番号34-パルミトイル化ホスホタウペプチド
K(pal)K(pal)GYSSPG[pS]PG[pT]PGSRSRK(pal)
K(pal)
配列番号35-パルミトイル化ホスホタウペプチド
K(pal)K(pal)GDT[pS]PRHL[pS]NVSSTGSIDK(pa
l)K(pal)
配列番号36-パルミトイル化ホスホタウペプチド
K(pal)K(pal)PG[pS]PG[pT]PGSRSR[pT]P[pS]L
PK(pal)K(pal)
配列番号37-パルミトイル化ホスホタウペプチド
K(pal)K(pal)HL[pS]NVSSTGSIDK(pal)K(pal)
配列番号38-パルミトイル化ホスホタウペプチド
K(pal)K(pal)VSGDT[pS]PRHLK(pal)K(pal)
配列番号39-C末端アミドなしのT50
AKFVAAWTLKAAAVVRQYIKANSKFIGITELVVRFNNFTV
SFWLRVPKVSASHLE
配列番号40-C末端の-Lys(Pal)-Lys(Pal)-NH2なしのT46
AKFVAAWTLKAAAGSQYIKANSKFIGITELGSFNNFTVSF
WLRVPKVSASHLE
配列番号41-C末端アミドなしのT48
AKFVAAWTLKAAAGSQYIKANSKFIGITELGSFNNFTVSF
WLRVPKVSASHLEGSLINSTKIYSYFPSVISKVNQ
配列番号42-C末端アミドなしのT51
AKFVAAWTLKAAARRQYIKANSKFIGITELRRFNNFTVSF
WLRVPKVSASHLE
配列番号43-C末端アミドなしのT52
AKFVAAWTLKAAARKQYIKANSKFIGITELRKFNNFTVSF
WLRVPKVSASHLE
配列番号44-T57
AKFVAAWTLKAAAVVRQYIKANSKFIGITELVVRFNNFTV
SFWLRVPKVSASHLE-K(Pal)K(Pal)-NH2
【0285】