(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023071711
(43)【公開日】2023-05-23
(54)【発明の名称】煙道ガスの浄化のための組成物
(51)【国際特許分類】
B01J 20/04 20060101AFI20230516BHJP
B01J 20/28 20060101ALI20230516BHJP
B01J 20/30 20060101ALI20230516BHJP
B01D 53/68 20060101ALI20230516BHJP
B01D 53/83 20060101ALI20230516BHJP
C01D 7/00 20060101ALI20230516BHJP
C01F 11/02 20060101ALI20230516BHJP
【FI】
B01J20/04 B ZAB
B01J20/28 Z
B01J20/30
B01D53/68 200
B01D53/83
C01D7/00 Z
C01F11/02 A
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023019729
(22)【出願日】2023-02-13
(62)【分割の表示】P 2020170953の分割
【原出願日】2016-12-27
(31)【優先権主張番号】15203139.9
(32)【優先日】2015-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】518234243
【氏名又は名称】ロイスト ルシェルシュ エ デヴロップマン エス.ア.
【氏名又は名称原語表記】Lhoist Recherche et Developpement S.A.
【住所又は居所原語表記】Rue Charles Dubois 28,1342 Ottignies-Louvain-la-Neuve,Royaume de Belgique
(74)【代理人】
【識別番号】100095614
【弁理士】
【氏名又は名称】越川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】マルティン シンドラム
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルター ディートヘルム
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー プスト
(72)【発明者】
【氏名】グザヴィエ プティオウ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】良好な流動性、良好な貯蔵性、ならびに/または、酸化硫黄および/もしくはハロゲン化水素などの汚染物質の良好な吸収率を有する組成物、該組成物の製造プロセス、および乾式煙道ガス浄化のための前記組成物の使用を提供する。
【解決手段】組成物の総重量に基づいて、1~99重量%のナトリウムの炭酸水素塩および/または炭酸塩の粉末と、1~99重量%の吸収性材料の粉末とを含有し、吸収性材料の粉末は0.1cm3/g以上の比細孔体積を有する、煙道ガス浄化のための組成物とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
煙道ガスの浄化のための組成物であって、前記組成物は、各場合に前記組成物の総重量に基づいて、
a.1~99重量%の炭酸のナトリウム塩の粉末と、
b.1~99重量%の吸収性材料の粉末と、
を含有し、
前記吸収性材料の前記粉末は、0.1cm3/g以上の比細孔体積を有する、組成物。
【請求項2】
前記組成物は、前記組成物の総重量に基づいて1~70重量%、特に1~50重量%、または1~30重量%、または5~30重量%、または10~30重量%、または13~30重量%、または13~20重量%、または13~18重量%、または5~99重量%、または10~99 重量%、または15~99重量%、または15~90重量%、または15~80重量%、または15~75重量%、または15~70重量%、または15~65重量%、または15~60重量%、または15~50重量%、または15~45重量%、または15~40重量%、または15~30重量%、または15~25重量%、または15~20重量%、または15~18重量%の炭酸の前記ナトリウム塩の前記粉末を含有し、かつ/または前記組成物は、前記組成物の総重量に基づいて30~99重量%、特に50~99重量%、または70~99重量%、または70~95重量%、または70~90重量%、または70~87重量%、または80~87重量%、または82~87重量%、または1~95重量%、または1~90重量%、または1~85重量%、または10~85重量%、または20~85 重量%、または25~85重量%、または30~85重量%、または35~85重量%、または40~85重量%、または50~85重量%、または55~85重量%、または60~85重量%、または70~85重量%、または75~85重量%、または80~85重量%、または82~85重量%の前記吸収性材料の前記粉末を含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
炭酸の前記ナトリウム塩の前記粉末は50μm未満、特に45μm未満、または40μm未満、または35μm未満、または30μm未満、または25μm未満、または20μm未満、または15μm未満、または12μm未満の粒度d50を有し、かつ/または炭酸の前記ナトリウム塩の前記粉末は180μm未満、特に170μm未満、または160μm未満、または150μm未満、または140μm未満、または125μm未満の粒度d97を有する、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
炭酸の前記ナトリウム塩は、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、セスキ炭酸ナトリウム、およびその混合物からなる群より選択される、請求項1~3の何れか一項に記載の組成物。
【請求項5】
炭酸の前記ナトリウム塩は、炭酸水素ナトリウムおよび/またはセスキ炭酸ナトリウムである、請求項1~4の何れか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記吸収性材料は、石灰石、生石灰、水和石灰、ドロマイト、ドロマイト生石灰、ドロマイト水和石灰、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、およびその混合物からなる群より選択される、請求項1~5の何れか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記吸収性材料は水和石灰である、請求項1~6の何れか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記吸収性材料、特に前記水和石灰は50μm未満、特に40μm未満、または30μm未満、または20μm未満、または10μm未満の粒度d50を有し、かつ/または前記吸収性材料、特に前記水和石灰は150μm未満、特に140μm未満、または130μm未満、または120μm未満、または110μm未満、または100μm未満、または90μm未満の粒度d97を有し、かつ/または前記吸収性材料、特に前記水和石灰は20m2/g以上、特に30m2/g以上、または40m2/g以上、または45m2/g以上の表面積を有し、かつ/または前記吸収性材料、特に前記水和石灰は0.11cm3/g以上、または0.12cm3/g以上、または0.13cm3/g以上、または0.14cm3/g以上、または0.15cm3/g以上、または0.16cm3/g以上、または0.17cm3/g以上、または0.18cm3/g以上、または0.19cm3/g以上、または0.2cm3/g以上の比細孔体積を有する、請求項1~7の何れか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物は、前記組成物の総重量に基づいて最大30重量%の量のクレーおよび/または活性炭および/またはゼオライトを含有する、請求項1~8の何れか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物の有する流動性の値、特にFFC値、特にRST-XSリング剪断テスタを用いて定められた値は0.2以上、特に0.3以上、または0.4以上、または0.5以上、または0.6以上、または0.7以上、または0.8以上、または0.9以上、または1.0以上、または1.1以上、または1.2以上、または1.3以上である、請求項1~9の何れか一項に記載の組成物。
【請求項11】
請求項1~10の何れか一項に記載の煙道ガスの浄化のための組成物の製造のためのプロセスであって、
a.各場合に前記組成物の総重量に基づいて、
- 1~99重量%の炭酸のナトリウム塩の粉末と、
- 1~99重量%の吸収性材料の粉末と、
を含有する組成物を提供するステップと、
b.前記組成物に機械的エネルギーおよび/または熱エネルギーを加えるステップと、
を含み、
前記吸収性材料の前記粉末は、0.1cm3/g以上の比細孔体積を有する、プロセス。
【請求項12】
ステップa.の前記組成物は、前記組成物の総重量に基づいて1~70重量%、特に1~50重量%、または1~30重量%、または5~30重量%、または10~30重量%、または13~30重量%、または13~20重量%、または13~18重量%、または5~99重量%、または10~99 重量%、または15~99重量%、または15~90重量%、または15~80重量%、または15~75重量%、または15~70重量%、または15~65重量%、または15~60重量%、または15~50重量%、または15~45重量%、または15~40重量%、または15~30重量%、または15~25重量%、または15~20重量%、または15~18重量%の炭酸の前記ナトリウム塩の前記粉末を含有し、かつ/またはステップa.の前記組成物は、前記組成物の総重量に基づいて30~99重量%、特に50~99重量%、または70~99重量%、または70~95重量%、または70~90重量%、または70~87重量%、または80~87重量%、または82~87重量%、または1~95重量%、または1~90重量%、または1~85重量%、または10~85重量%、または20~85重量%、または25~85重量%、または30~85重量%、または35~85重量%、または40~85重量%、または50~85重量%、または55~85重量%、または60~85重量%、または70~85重量%、または75~85重量%、または80~85重量%、または82~85重量%の前記吸収性材料の前記粉末を含有する、請求項11に記載のプロセス。
【請求項13】
炭酸の前記ナトリウム塩は請求項3~5の何れか一項において定義されるとおりであり、かつ/または前記吸収性材料の前記粉末は請求項6~8の何れか一項において定義されるとおりである、請求項11または12に記載のプロセス。
【請求項14】
炭酸のナトリウム塩の前記粉末および/または吸収性材料の前記粉末に対して、熱エネルギーおよび/または機械的エネルギーが加えられる、請求項11~13の何れか一項に記載のプロセス。
【請求項15】
ステップb.は混合および/または粉砕ステップを含み、任意には前記粉砕ステップにおいて、前記組成物は50μm以下、特に45μm未満、または40μm未満、または35μm未満、または30μm未満、または25μm未満、または20μm未満、または15μm未満、または12μm未満の粒度d50に粉砕され、かつ/または前記組成物は180μm未満、特に170μm未満、または160μm未満、または150μm未満、または140μm未満、または125μm未満の粒度d97に粉砕される、請求項11~14の何れか一項に記載のプロセス。
【請求項16】
請求項11~15の何れか一項に記載のプロセスによって得ることができる、煙道ガスの浄化のための組成物。
【請求項17】
煙道ガスの浄化のためのプロセスであって、前記煙道ガスは、請求項1~10または16の何れか一項に記載の組成物と接触する、プロセス。
【請求項18】
煙道ガス、特にHFを含有する煙道ガスの浄化のための、請求項1~10または16の何れか一項に記載の組成物の使用。
【請求項19】
50μm未満、特に45μm未満、または40μm未満の粒度d50を有する炭酸のナトリウム塩の粉末の、特にいくらかの貯蔵時間の後の流動性、および/または貯蔵性、および/またはHF吸収率を改善するための、0.1cm3/g以上の比細孔体積を有する吸収性材料の粉末の使用。
【請求項20】
前記吸収性材料の前記粉末は、前記組成物の総重量に基づいて1~99重量%、特に30~99重量%、または50~99重量%、または70~99重量%、または70~95重量%、または70~90重量%、または70~87重量%、または80~87重量%、または82~87重量%、または1~95重量%、または1~90重量%、または1~85重量%、または10~85重量%、または20~85重量%、または25~85重量%、または30~85重量%、または35~85重量%、または40~85重量%、または50~85重量%、または55~85重量%、または60~85重量%、または70~85重量%、または75~85重量%、または80~85重量%、または82~85重量%の量で用いられ、かつ/または前記吸収性材料の前記粉末は請求項6~8の何れか一項において定義されるとおりであり、かつ/または炭酸の前記ナトリウム塩は炭酸水素ナトリウムおよび/もしくはセスキ炭酸ナトリウムである、請求項19に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾式煙道ガス浄化のための組成物と、前記組成物のための製造プロセスと、乾式煙道ガス浄化のための前記組成物の使用とに関する。加えて本発明は、乾式煙道ガス浄化のためのプロセスと、炭酸のナトリウム塩の流動性および/または貯蔵性および/またはHF吸収率を改善するための吸収性材料の使用とに関する。
【背景技術】
【0002】
多くの工業プロセスにおいて、煙道ガスが生成される。たとえば、石炭動力の発電所などの発電所などにおける化石資源の燃焼において、大量の煙道ガスが生成される。廃棄物焼却においても、大量の煙道ガスが生成される。
【0003】
煙道ガスはしばしば、たとえば二酸化硫黄(SO2)もしくは三酸化硫黄(SO3)などの酸化硫黄、ならびに/またはたとえばフッ化水素(HF)および/もしくは塩化水素(HCl)などのハロゲン化水素などの、有害またはさらには有毒の汚染物質を含有する。
【0004】
空気中の汚染物質のレベルを減少させるための試みが行われている。特に、たとえば廃棄物焼却所および化石資源を燃料とする発電所などから排出される汚染物質の量を減らすために、煙道ガスの浄化のためのプロセスが考案されている。これらのプロセスは通常、吸着剤とも呼ばれる吸収剤と煙道ガスとを接触させることを含む。
【0005】
煙道ガス浄化のための異なるプロセスも考案されており、それは煙道ガス洗浄としても公知である。湿式洗浄においては、たとえば石灰石または石灰ベースの材料などのアルカリ吸収剤が、通常は水中のスラリーとして煙道ガスと接触する。湿式洗浄の不利益は、設備の腐食、使用した水の処理または再使用の必要を含む。
【0006】
乾式煙道ガス浄化または乾式吸着剤注入とも呼ばれる乾式洗浄においては、通常は吸収剤が乾燥状態で煙道ガスと接触する。吸収の後、乾燥反応産物は通常下流で、一般的に織物フィルターまたは静電フィルターを有する除塵ユニットに集められる。乾式煙道ガス浄化の大きな利点は、乾式煙道ガス浄化を実施するために必要とされる設備が簡単なことである。
【0007】
しばしば、たとえば水和石灰(Ca(OH)2)などの石灰ベースの材料、またはたとえば炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)もしくはたとえばトロナ(Na2CO3*NaHCO3*2H2O)などのセスキ炭酸ナトリウムなどの炭酸のアルカリ金属塩が、乾式煙道ガス浄化における吸収剤として使用される。
【0008】
煙道ガス浄化のために炭酸水素ナトリウムおよび水和石灰の両方を用いることが提案されてきた。特許文献1は、2つの分離した注入システムを介して、炭酸水素ナトリウムおよび水和石灰を煙道ガス流へ同時に注入することによる煙道ガス浄化のためのプロセスを記載している。しかし、これら2つの分離した注入システムは、煙道ガス浄化システムのコストを増加させる。
【0009】
加えて、改善した吸収剤、特に改善した水酸化カルシウム粒子が報告されている。
【0010】
たとえば特許文献2は、酸性ガスを捕捉するための少なくとも0.1cm3/gの合計細孔体積を有する水酸化カルシウム粒子を記載している。この水酸化カルシウム粒子は、生石灰(CaO)粒子を十分な水によって30℃/分より高い反応性で消和して、15~30重量%の残留水分を有する水酸化カルシウムを得た後に、乾燥および粉砕することによって調製される。この粒子は、標準的な水酸化カルシウム粒子よりも効果的に二酸化硫黄および塩化水素を捕捉することが報告されている。
【0011】
特許文献3は、最大3.5重量%のアルカリ金属を含み、かつ25m2/g以上のBET比表面積および0.1cm3/gのBJH合計細孔体積を有する粉末状水和石灰を記載している。この水和石灰は、生石灰を消和することによって調製される。有利には生石灰に対する消和水に加えられたアルカリ金属塩によって、アルカリ金属が水和石灰に導入される。この水和石灰は、他の水和石灰吸収剤よりも効果的に二酸化硫黄および塩化水素を捕捉することが報告されている。
【0012】
一般的に、吸収剤の吸収率を増加させるために、吸収剤は小さい粒度を有する微細な粉末に粉砕される。粒度が小さいほど、煙道ガス中の汚染物質と反応し得る粒子すなわち吸収剤の表面積が大きくなる。粉末の粒度に対する特徴的な値として、しばしばいわゆるd50値が提供される。粉末の粒子のd50値は通常、粉末の粒度分布から定められる。粒度分布から定められる、粉末の50重量%が通過する篩の理論上の開口のサイズを一般的にd50値と呼ぶ。典型的に、吸収剤に対しては40μm未満、またはさらに20μm未満のd50値が望ましい。
【0013】
特にトロナおよび炭酸水素ナトリウムに対して、炭酸のナトリウム塩の粉末の低いd50を維持することは困難である。
【0014】
40μm未満またはさらには20μm未満のd50を有する、炭酸のナトリウム塩、特に炭酸水素ナトリウムの粉末を粉砕によって調製することはできるが、得られる小さい粒度の微細粒子粉末を長期間貯蔵することはできない。通常、数日後またはさらにはすでに1日後に、炭酸のナトリウム塩、特に炭酸水素ナトリウムの粉末中の粒子は再凝集を開始することによって、より大きな凝集体を形成する。より大きな凝集体を含有する粉末は、表面積が低いため望ましくない。この理由により、炭酸のナトリウム塩、特に炭酸水素ナトリウムは通常、使用の直前に現場で粉砕される。このために炭酸のナトリウム塩のためのミルの存在が必要となり、加えてそれらの維持コストからも、煙道ガス浄化システムのコストが増加する。よって、炭酸のナトリウム塩、特にトロナまたは炭酸水素ナトリウムの低いd50を有する粉末の貯蔵は困難である。
【0015】
粒子はその表面積に加えて空隙率も含むことがあり、これは通常、材料の比細孔体積として特定される。空隙率を形成する細孔が粒子の外側からアクセス可能であるとき、これによって通常は粒子の表面積も増加する。したがって、調査中の材料が高い比細孔体積を有するとき、それは通常高い比表面積も有する。しかし、その反対は必ずしも当てはまらない。たとえば、発熱性シリカと呼ばれることもあるヒュームドシリカは、50~600m2/gの比表面積を有する粒子状材料であり、この粒子は非多孔性である。
【0016】
炭酸のナトリウム塩の粉末の別の問題点は、それらの流動性である。たとえばサイロなどに貯蔵されるとき、おそらくは重力の作用によって、炭酸のナトリウム塩の粉末はより稠密になる傾向がある。このプロセスにおいて、粉末は流動性を失うために、粉末をサイロから取り出すことが困難になる。粉末をアクセス可能にするためには、粉末の流動性を回復させるためにたとえば加圧空気などによって粉末を撹拌する必要がある。
【0017】
炭酸のナトリウム塩、特に炭酸水素ナトリウムを粉砕するときに観察されるさらに別の問題点は、たとえばミルの壁などの粉砕機器に対する粉砕材料のケーキングである。このケーキングの影響により、ミルの定期的なメンテナンスが必要になる。このケーキングの影響を克服するための試みは、特に炭酸水素ナトリウムに対して、粉砕中にステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、トリメチロールプロパン、またはグリコールを加えることを含む。これはケーキングの影響を低減する助けとなるが、この付加的な添加剤はプロセスのコストを増加させる。
【0018】
主に1つの吸収剤からなる組成物に加えて、吸収剤の混合物も公知である。
【0019】
特許文献4は、SO3を含有する煙道ガスに対する吸収剤組成物を記載しており、これは添加剤と、たとえば機械的に精製されたトロナまたは炭酸水素ナトリウムなどのナトリウム吸収剤とを含む。添加剤は炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、およびその混合物より選択され、混合物中にナトリウム吸収剤の重量比で好ましくは0.1%から5%、最も好ましくは0.5%から2%の量で存在する。
【0020】
特許文献5は、生石灰(CaO)に基づく煙道ガスの浄化のための組成物を記載している。この組成物は付加的に、水酸化カルシウムおよび炭酸水素ナトリウムを含有してもよい。主に生石灰を含有する組成物が好ましい。
【0021】
特許文献6は、水和酸化物、水酸化物、または酸化物に基づく乾燥吸収剤の混合物を用いて、煙道ガスから有害物質を除去するための方法を記載している。この乾燥吸収剤は、炭酸水素ナトリウムと、NH4HCO3、Al(OH)3、シリカゲル、水酸化カルシウム、および結晶水を有する塩、たとえばCaCl2またはAl2O3などの1つまたはそれ以上とを含んでもよい。この組成物によって、煙道ガスからの有害物質の除去が改善されることが報告されている。
【0022】
特許文献7は、ガスからの酸性成分の除去のための処理剤を記載している。この処理剤は、炭酸水素ナトリウムを好ましくは少なくとも70重量%の量で含有し、かつたとえば炭酸水素カリウム、消石灰、炭酸カルシウム、ゼオライト、活性炭、またはシリカもしくは珪藻土などの別の成分を含有してもよい。凝集を防ぐために、処理剤はシリカ粉末、ヒュームドシリカ、ホワイトカーボン、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、または珪藻土を含有してもよい。特許文献7の組成物は、煙道ガスから酸性成分を効果的に除去できる。
【0023】
上述の先行技術からの組成物の例は、吸収剤の空隙率および/またはその結果得られる有益な効果について述べていない。
【0024】
貯蔵性を維持することは進歩したが、粉末の粒度分布、特にd50値を維持することを助ける解決策が望ましい。さらに、酸化硫黄および/またはハロゲン化水素に対する良好な吸収率を有する吸収剤組成物が望ましい。さらに、特にいくらかの貯蔵時間の後に良好な流動性を有する組成物が望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0025】
【特許文献1】特開平11-165036(A)号
【特許文献2】欧州特許第0 861 209(B1)号
【特許文献3】国際公開第2007000433(A2)号
【特許文献4】国際公開第2007031552(A1)号
【特許文献5】独国実用新案第202 10 008(U1)号
【特許文献6】米国特許第4 859 438号
【特許文献7】欧州特許出願公開第1 004 345(A2)号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
したがって、本発明の目的は、良好な流動性、良好な貯蔵性、ならびに/または、たとえば酸化硫黄および/もしくはハロゲン化水素などの汚染物質の良好な吸収率を有する組成物を提供することであった。特に、本発明の目的は、特にいくらかの貯蔵時間の後にできる限り高い流動性を有すると同時に、良好な酸化硫黄吸収率を有する組成物を提供することであった。たとえば炭酸水素ナトリウムなどの酸化硫黄に対する良好な吸収率を有する化合物は、特にいくらかの貯蔵時間の後に限られた流動性を有することが公知であるため、良好な酸化硫黄吸収率とできる限り高い流動性との組み合わせは達成が特に困難である。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明を用いることによって、これらの目的のいくつかまたはすべてが達成され得る。特に、請求項1の組成物と、請求項10のプロセスと、請求項15の組成物と、請求項16のプロセスと、請求項17の使用と、請求項18の使用とによって、これらの目的のいくつかまたはすべてが達成され得る。
【0028】
さらなる実施形態が従属請求項に記載されており、以下に考察される。
【0029】
本発明は煙道ガスの浄化のための組成物を提供し、前記組成物は、各場合に組成物の総重量に基づいて、
a.1~99重量%の炭酸のナトリウム塩の粉末と、
b.1~99重量%の吸収性材料の粉末と、
を含有し、
前記吸収性材料の前記粉末は、0.1cm3/g以上の比細孔体積を有する。
【0030】
驚くべきことに、1~99重量%の炭酸のナトリウム塩の粉末と、1~99重量%の吸収性材料の粉末であって、前記吸収性材料の前記粉末が0.1cm3/g以上の比細孔体積を有する、吸収性材料の粉末との一意の組み合わせの結果として、良好に貯蔵でき、かつ/または良好な流動性ならびに/もしくはたとえば酸化硫黄および/もしくはハロゲン化水素などの汚染物質の良好な吸収率を有する、煙道ガス浄化のための組成物が得られることが見出された。特に、炭酸のナトリウム塩の粉末と、0.1cm3/g以上の比細孔体積を有する吸収性材料の粉末とを含有する組成物は、炭酸のアルカリ金属塩の純粋な粉末と比べて、有意に改善された流動性と、良好な酸化硫黄吸収率とを示すことが見出された。
【0031】
科学理論に結び付けられることは望まないが、吸収性材料の粉末の比空隙率が高いことで、おそらくは吸収性材料粒子の内側に水分および/または液体を閉じ込めることによって、組成物の貯蔵および/または良好な流動性の維持が助けられるようである。このやり方で、粒子の不変の表面が維持されてもよい。このことが凝集の防止を助けるかもしれない。加えて、これが流動性の維持も助けるかもしれない。
【0032】
驚くべきことに、煙道ガス浄化に上記組成物を用いるとき、フッ化水素のピーク濃度は組成物の非常に高い消費をもたらさないことも見出された。
【0033】
さらに、炭酸のナトリウム塩を用いることは、結果として得られる組成物の酸化硫黄吸収率の増加に特に有効であることが見出された。加えて、炭酸のナトリウム塩を含有する組成物は、炭酸の他のアルカリ金属塩を含有する組成物よりも対費用効果が高いことが明らかになった。
【0034】
吸収剤(または吸収剤組成物)の吸収率とは、汚染物質、特に酸化硫黄および/またはハロゲン化水素を保持する能力を特に説明するものである。吸収率は、たとえば絶対項で、すなわち吸収剤(または吸収剤組成物)によって吸収される汚染物質の絶対量で表すこともできるし、相対項で、すなわち基準の吸収剤(または吸収剤組成物)に対する吸収剤(または吸収剤組成物)によって吸収される汚染物質の量で表すこともできる。
【0035】
疎性材料、特に粉末の流動性は、その貯蔵容器からのアクセス可能性に関係する。良好な流動性は通常、重力の作用によってたとえばサイロなどの貯蔵容器から容易に流出する疎性材料、特に粉末によるものであり得る。特に、良好な流動性を有する疎性材料に対しては、材料に対するさらなる流動促進作用は必要とされない。たとえば粒子間に(たとえば液滴を介して)固まった「ブリッジ」を形成することなどによって、サイロからの流出を妨げる性質を有する疎性材料、特に粉末は、通常流動性が悪いといわれる。疎性材料、特に粉末の流動性は、たとえばFFC値などを用いて記載され得る。より高いFFC値は、より良好な流動性を示す。
【0036】
FFC値を定める方法は当業者に公知であり、たとえば学術誌「Chemie Ingenieur Technik」(出版:Wiley VCH社、1995年、第67巻、第1号、60頁~68頁)に掲載されたディトマール・シュルツェ(Dietmar Schulze)による論文「バルク固体の流動性―定義および測定方法(Zur Fliessfaehigkeit von Schuettguetern - Definition und Messverfahren)」、またはディトマール・シュルツェ著「粉末およびバルク固体-挙動、特徴付け、貯蔵、および流動(Powders and Bulk Solids - Behavior, Characterization, Storage and Flow)」(出版:Springer-Verlag社(所在地:ベルリン,ハイデルベルク)、2008年)などにも記載されている。たとえば、FFC値は単軸圧縮テストによって定められ得る。単軸圧縮テストにおいて、理想的には摩擦のない壁を有する通常は中空のシリンダに、調査すべき疎性材料、特に粉末が充填され、第1のステップにおいて応力S1、すなわち圧密応力が鉛直方向に加えられる。応力S1はシグマ1、σ1と呼ばれることもある。その後、試料の圧密応力S1は軽減されて、中空シリンダが除去される。次いで、圧密された円筒形の疎性材料試料、特に圧密された粉末試料に対して、円筒形の試料が破壊される(または破損する)応力Scまで、増加する鉛直圧縮応力が加えられる。応力Scは圧縮強度または非拘束降伏強度(unconfined yield strength)と呼ばれてもよく、しばしばシグマc、σcとも呼ばれる。応力Scを加えた際の圧密された円筒形試料の破損は、圧密された疎性材料、特に圧密された粉末の初期の流れを示す。次いで、比率FFC=S1/ScとしてFFC値を定めることができる。
【0037】
疎性材料、特に粉末の流動性は、ジェニク(Jenike shear tester)剪断テスタを用いても定められ得る。この場合、FFC値の決定のためのテスト方法は通常、いわゆる降伏限界プロットまたは破壊包絡線プロットの決定を必要とし、そこからS1およびSc、ひいてはFFC値が決定され得る。降伏プロットの決定は、上述のディトマール・シュルツェによる参考文献に記載されており、通常はサンプルの予備剪断処理(第1の圧密力が加えられているときに一定の剪断応力の点までサンプルを剪断すること)の後の測定ステップ(予備剪断処理よりも低い圧密力が加えられているときに、粒子が互いに対して動き始める最大剪断応力までサンプルを剪断すること)を必要とする。降伏限界プロットの各点に対して、同じ予備剪断処理を受ける必要がある新たなサンプルが必要とされる。結果として得られる降伏限界プロットから、S1およびSc、ひいてはFFC値を決定できる。
【0038】
加えて、たとえばRST-XSタイプのリング剪断テスタなどのリング剪断テスタを用いて、流動性を一般的に記載および/または決定することも可能である。リング剪断テスタにおいて、サンプル(疎性材料、特に粉末)は通常、テスタのリング形状の剪断セルに充填される。通常、サンプルの頂部に蓋が置かれて、クロス梁によって固定される。その後、通常は剪断セルの蓋を介して垂直応力Sがサンプルに加えられる。測定の間、剪断セルは通常ゆっくりと回転し、その間、対向側からクロス梁に接続される2つのタイロッドによって、蓋とクロス梁とが回転することが防がれる。剪断セルの底部および蓋の底側は、剪断セルの回転が、2つのタイロッドに作用する力を介して測定され得る剪断応力を誘導するように、通常粗くなっている。この測定ステップは前述のステップと同様であるが、単一のサンプルによって破壊包絡線プロット全体を決定することが可能である。結果として得られる降伏限界プロットからは、次にS1およびSc、ひいてはFFC値を決定できる。
【0039】
本発明の実施形態によると、組成物の有する流動性の値、特にFFC値、特にRST-XSリング剪断テスタを用いて定められた値は0.2以上、特に0.3以上、または0.4以上、または0.5以上、または0.6以上、または0.7以上、または0.8以上、または0.9以上、または1.0以上、または1.1以上、または1.2以上、または1.3以上である。
【0040】
本発明の実施形態によると、組成物は、組成物の総重量に基づいて1~70重量%、好ましくは1~50重量%、または1~30重量%、または5~30重量%、または10~30重量%、または13~30重量%、または13~20重量%、または13~18重量%、または5~99重量%、または10~99重量%、または15~99重量%、または15~90重量%、または15~80重量%、または15~75重量%、または15~70重量%、または15~65重量%、または15~60重量%、または15~50重量%、または15~45重量%、または15~40重量%、または15~30重量%、または15~25重量%、または15~20重量%、または15~18重量%の炭酸のナトリウム塩の粉末を含有する。これらの量の炭酸のナトリウム塩を有する組成物は、特にいくらかの貯蔵時間の後に特に良好な流動性を有することが見出されている。加えてこれらの範囲において、二酸化硫黄吸収率が改善することが見出された。さらに、組成物の総重量に基づいて約10~25重量%、特に15~25重量%の量の炭酸のナトリウム金属塩が存在するときに、特にバランスの取れた特性プロファイルを有する組成物が達成され得ることが見出された。
【0041】
本発明の別の実施形態によると、組成物は、組成物の総重量に基づいて30~99重量%、好ましくは50~99重量%、または70~99重量%、または70~95重量%、または70~90重量%、または70~87重量%、または80~87重量%、または82~87重量%、または1~95重量%、または1~90重量%、または1~85重量%、または10~85重量%、または20~85重量%、または25~85重量%、または30~85重量%、または35~85重量%、または40~85重量%、または50~85重量%、または55~85重量%、または60~85重量%、または70~85重量%、または75~85重量%、または80~85重量%、または82~85重量%の吸収性材料の粉末を含有する。これらの量の吸収性材料を有する組成物は、特に良好な流動性を有することが見出されている。組成物の総重量に基づいて約75~90重量%、特に75~85重量%の量の吸収性材料が存在するときに、特にバランスの取れた特性プロファイルを有する組成物が達成され得ることが見出された。
【0042】
炭酸のナトリウム塩の粉末の粒子は、さまざまなサイズを有してもよい。しかし、粒子が小さい場合有利である。よって、本発明の別の実施形態によると、炭酸のナトリウム塩の粉末は50μm未満、特に45μm未満、または40μm未満、または35μm未満、または30μm未満、または25μm未満、または20μm未満、または15μm未満、または12μm未満の粒度d50を有する。炭酸のナトリウム塩の粉末は20μm未満、より好ましくは15μm未満、または12μm未満の粒度d50を有することが特に好ましい。好ましくは、炭酸のナトリウム塩の粉末は180μm未満、特に170μm未満、または160μm未満、または150μm未満、または140μm未満、または125μm未満の粒度d97を有する。前述の粒度を有する炭酸のナトリウム塩の粉末は、より効率的に汚染物質を吸収することが見出された。
【0043】
煙道ガスの浄化のための効率的な組成物を得る目的のために、炭酸の異なるナトリウム塩が用いられ得る。好ましくは、炭酸のナトリウム塩は、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、セスキ炭酸ナトリウム、およびその混合物からなる群より選択される。さらにより好ましくは、炭酸のナトリウム塩は、炭酸水素ナトリウムおよび/またはセスキ炭酸ナトリウムである。炭酸の前述のナトリウム塩による吸収率、特に二酸化硫黄吸収率は非常に良好であることが見出されている。
【0044】
たとえばセスキ炭酸ナトリウムは、直接採掘され得るトロナの形で用いられ得る。それによって採掘されたトロナは、さらなる精製を伴うか、または伴わずに用いられ得る。たとえば炭酸水素ナトリウムは、採掘されたナーコライトの形で、および/または化学プロセスの生成物として用いられ得る。それによって採掘されたナーコライトは、さらなる精製を伴うか、または伴わずに用いられ得る。
【0045】
採掘されたトロナは、たとえばショータイト、ドロマイトシェール、石英、イライト、方解石、長石、および/またはフッ化ナトリウムなどの不純物を含有することがある。採掘されたトロナは、トロナの総重量に基づいて最大20重量%、好ましくは最大15重量%、より好ましくは最大10重量%、より好ましくは最大5重量%、より好ましくは最大3重量%の前述の不純物を含有し得る。
【0046】
本発明による組成物は、吸収性材料として異なる材料を含有してもよい。好ましくは、吸収性材料は酸化硫黄、特に二酸化硫黄に対する吸収剤、ならびに/またはハロゲン化水素、特に塩化水素および/もしくはフッ化水素に対する吸収性材料である。
【0047】
本発明による組成物に吸収性材料として含有される材料は、有利にはカルシウム含有材料、カルシウムおよびマグネシウムを含有する材料、ならびに/またはマグネシウム含有材料であり得る。カルシウム含有材料の例は、石灰石、生石灰、および水和石灰を含む。カルシウムおよびマグネシウムを含有する材料の例は、ドロマイト、ドロマイト生石灰、およびドロマイト水和石灰を含む。マグネシウム含有材料の例は、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、および水酸化マグネシウムを含む。
【0048】
好ましくは、本発明による組成物に粉末として含有される吸収性材料は、石灰石、生石灰、水和石灰、ドロマイト、ドロマイト生石灰、ドロマイト水和石灰、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、およびその混合物からなる群より選択される。より好ましくは、本発明による組成物に粉末として含有される吸収性材料は、生石灰、水和石灰、ドロマイト生石灰、ドロマイト水和石灰、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、およびその混合物からなる群より選択される。最も好ましくは、本発明による組成物に粉末として含有される吸収性材料は、水和石灰である。
【0049】
前述の材料を単独で、または組み合わせて用いることは、特に結果として得られる組成物の流動性、および/または組成物の吸収率、特にHF吸収率にとって有益であることが示された。これらの有益な効果は、吸収性材料としての水和石灰に対して特に明白であった。
【0050】
本発明に従って用いられる水和石灰は消石灰としても公知であり、主にCa(OH)2を含む。好ましくは、本発明の水和石灰は、組成物中の水和石灰の重量に基づいて90重量%より多く、より好ましくは93重量%より多く、より好ましくは95重量%より多く、より好ましくは97重量%より多く、より好ましくは99重量%より多くのCa(OH)2を含有する。Ca(OH)2に加えて、水和石灰は不純物を含有することがあり、特に、SiO2、Al2O、Al2O3、たとえばFe2O3などの酸化鉄、MgO、MnO、P2O5、K2O、CaSO4、および/またはSO3に由来する不純物を含有することがある。好ましくは、本発明による水和石灰は、組成物中の水和石灰の重量に基づいて10重量%未満、より好ましくは7重量%未満、より好ましくは5重量%未満、より好ましくは3重量%未満、より好ましくは1重量%未満の、上に挙げた不純物を含有する。
【0051】
同様に、カルシウム含有材料、特に石灰石および生石灰、カルシウムおよびマグネシウムを含有する材料、特にドロマイト、ドロマイト生石灰、およびドロマイト水和石灰、ならびにマグネシウム含有材料、特に炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、および水酸化マグネシウムは、上述の不純物を上述の量含有し得る。
【0052】
上述の水和石灰の不純物に加えて、本発明による水和石灰はカルシウム含有不純物、特にCaOおよび/またはCaCO3をも含有し得る。水和石灰中の酸化カルシウム不純物は、生石灰出発材料の不十分な水和から生じたものであり得る。水和石灰中の炭酸カルシウム不純物は、本発明による水和石灰が由来する最初の石灰石か、または水和石灰と空気との部分的炭酸化反応のいずれかから生じたものであり得る。本発明による水和石灰中の酸化カルシウムの含有量は、組成物中の水和石灰の重量に基づいて好ましくは5重量%未満、より好ましくは3重量%未満、より好ましくは2重量%未満、より好ましくは1重量%未満である。本発明による水和石灰中の炭酸カルシウムの含有量は、組成物中の水和石灰の重量に基づいて好ましくは15重量%未満、より好ましくは10重量%未満、より好ましくは6重量%未満、より好ましくは4重量%未満である。
【0053】
組成物の吸収性材料粒子のサイズ、特に吸収性材料のd50値は小さくなるべきである。好ましくは、吸収性材料は50μm未満、より好ましくは40μm未満、または30μm未満、または20μm未満、または10μm未満の粒度d50を有する。組成物中の吸収性材料として、50μm未満、好ましくは40μm未満、または30μm未満、または20μm未満、または10μm未満の粒度d50を有する水和石灰を用いたときに、最適な結果が得られている。組成物中の吸収性材料として、10μm未満のd50値を有する水和石灰が特に好ましい。有利には、吸収性材料、特に水和石灰は150μm未満、特に140μm未満、または130μm未満、または120μm未満、または110μm未満、または100μm未満、または90μm未満の粒度d97を有する。
【0054】
粉末の粒子のd50値は、たとえば粉末の粒度分布を定めることなどによって定められてもよい。粒度分布から定められる、粉末の50重量%が通過する篩の理論上の開口のサイズを一般的にd50値と呼ぶ。したがって、粒度分布から定められる、粉末の97重量%が通過する篩の理論上の開口のサイズを一般的にd97値と呼ぶ。粒度分布の決定のための異なる方法が、当業者に公知である。たとえば、粒度分布は篩実験によって定められてもよい。加えてたとえば、粒度分布は特にISO 13320:2009によるレーザー回折によって定められてもよい。レーザー回折による粉末の粒度分布の決定において、調査される粉末はたとえばエタノールなどの液体媒体に懸濁されてもよく、その懸濁物はたとえば120秒間などの超音波処理を受けてもよく、その後にたとえば120秒の休止があってもよい。加えて懸濁物は、たとえば70rpmなどにて撹拌されてもよい。次いで、その測定結果、特に測定された粒度に対する測定された粒度の質量パーセンテージの累積和をプロットすることによって、粒度分布が定められてもよい。次いで、その粒度分布からd50値および/またはd97値を定めることができる。レーザー回折による粉末の粒度分布および/またはd50値および/またはd97値の決定のために、たとえば付加的なスーセル(Sucell)分散機器を用いた、シンパテック社(Sympatec)より入手可能な粒度分析器Helosなどが使用されてもよい。
【0055】
加えて、吸収性材料が高い表面積を有すると有利であることが見出されている。20m2/g以上、好ましくは30m2/g以上、または40m2/g以上、または45m2/g以上の表面積を有する吸収性材料を含有する組成物は、煙道ガス浄化において特に効率的であることが見出された。特に煙道ガス浄化において、組成物中の吸収性材料として20m2/g以上、好ましくは30m2/g以上、または40m2/g以上、または45m2/g以上の表面積を有する水和石灰が用いられたときに、最適な結果が得られている。
【0056】
本明細書に記載される材料、特に吸収性材料の表面積とは特に比表面積を示し、より具体的にはBET(Brunauer, Emmet, Teller)比表面積を示す。材料の比表面積を定める方法は、当業者に公知である。たとえばBET多点法によると、77Kにおける好ましくは乾燥および排気されたサンプルの窒素吸着測定によって、比表面積が定められてもよい。この目的のために、たとえばマイクロメリティックス社(Micromeritics)のASAP 2010タイプのデバイスなどが用いられてもよい。特に、BET比表面積はDIN ISO 9277に従って、特にDIN ISO 9277:2014-01に従って、特に静的容積決定法および特に多点分析法を用いて定められてもよい。
【0057】
加えて、吸収性材料の比細孔体積は、高いことが好ましい。これは、良好な流動性を有する組成物を得るために特に有用である。加えてこれは、組成物の吸収率のために有益である。したがって、組成物は好ましくは0.11cm3/g以上、または0.12cm3/g以上、または0.13cm3/g以上、または0.14cm3/g以上、または0.15cm3/g以上、または0.16cm3/g以上、または0.17cm3/g以上、または0.18cm3/g以上、または0.19cm3/g以上、または0.2cm3/g以上の比細孔体積を有する吸収性材料を含有する。組成物中の吸収性材料として、0.11cm3/g以上、または0.12cm3/g以上、または0.13cm3/g以上、または0.14cm3/g以上、または0.15cm3/g以上、または0.16cm3/g以上、または0.17cm3/g以上、または0.18cm3/g以上、または0.19cm3/g以上、または0.2cm3/g以上の比細孔体積を有する水和石灰が用いられたときに、最適な結果が得られている。高い細孔体積、特に上述の細孔体積を有する吸収性材料を含有する組成物は、特に流動性の値に関する特性、より具体的にはFFC値に関する特性を改善することが見出された。
【0058】
本明細書に記載される比細孔体積とは特に、BJH(Barrett, Joyner, Halenda)によって定められる、好ましくは100nm未満の直径を有する細孔の合計比細孔体積を示し、すなわち円筒形の細孔ジオメトリを想定している。有利には、吸収性材料の比細孔体積、特にBJHに従って定められた比細孔体積は、合計細孔体積に基づいて50体積%より多く、好ましくは55体積%より多く、より好ましくは60体積%より多くの、BJHに従って定められた10~40nmの直径を有する細孔の部分細孔体積を含んでもよい。材料の比細孔体積を定める方法は、当業者に公知である。たとえば、77Kにおける好ましくは乾燥および排気されたサンプルの窒素吸着測定によって、比細孔体積が定められ得る。このやり方で得られたデータは、好ましくはBJH法に従って、すなわち円筒形の細孔ジオメトリを想定して分析され得る。この目的のために、たとえばマイクロメリティックス社のASAP 2010タイプのデバイスなどが用いられてもよい。特に、BJHに従って定められる比細孔体積はDIN 66134に従って、特にDIN 66134:1998-02に従って、特に容積決定法を用いて定められてもよい。
【0059】
本発明において使用され得る水和石灰の製造のためのプロセスは、当業者に公知である。たとえば国際公開第97/14650(A1)号は、本発明において使用され得る水和石灰の製造のためのプロセスを記載している。
【0060】
本発明の別の実施形態によると、組成物は、組成物の総重量に基づいて最大30重量%の量のクレーおよび/または活性炭および/またはゼオライトを含有する。このことは特に、煙道ガス浄化、特に重金属および/またはたとえばダイオキシンなどの有機汚染物質をも含有する煙道ガスに対する煙道ガス浄化に有効な組成物を得ることを助ける。
【0061】
組成物に加えて、本発明は煙道ガス浄化のための組成物の製造のためのプロセスも提供する。
【0062】
本発明による煙道ガス浄化のための組成物の製造のためのプロセスは、基本的に以下のステップ、
a.各場合に組成物の総重量に基づいて、
- 1~99重量%の炭酸のナトリウム塩の粉末と、
- 1~99重量%の吸収性材料の粉末と、
を含有する組成物を提供するステップと、
b.組成物に機械的エネルギーおよび/または熱エネルギーを加えるステップと、
を含み、
前記吸収性材料の前記粉末は、0.1cm3/g以上の比細孔体積を有する。
【0063】
これらのステップは、任意の所望の順序で行われ得る。好ましくは、これらのステップは上に示される順序で行われる。
【0064】
本発明の製造プロセスの実施形態によると、ステップa.の組成物は、組成物の総重量に基づいて1~70重量%、好ましくは1~50重量%、または1~30重量%、または5~30重量%、または10~30重量%、または13~30重量%、または13~20重量%、または13~18重量%、または5~99重量%、または10~99重量%、または15~99重量%、または15~90重量%、または15~80重量%、または15~75重量%、または15~70重量%、または15~65重量%、または15~60重量%、または15~50重量%、または15~45重量%、または15~40重量%、または15~30重量%、または15~25重量%、または15~20重量%、または15~18重量%の炭酸のナトリウム塩の粉末を含有する。
【0065】
本発明の製造プロセスの別の実施形態によると、ステップa.の組成物は、組成物の総重量に基づいて30~99重量%、好ましくは50~99重量%、または70~99重量%、または70~95重量%、または70~90重量%、または70~87重量%、または80~87重量%、または82~87重量%、または1~95重量%、または1~90重量%、または1~85重量%、または10~85重量%、または20~85重量%、または25~85重量%、または30~85重量%、または35~85重量%、または40~85重量%、または50~85重量%、または55~85重量%、または60~85重量%、または70~85重量%、または75~85重量%、または80~85重量%、または82~85重量%の吸収性材料の粉末を含有する。
【0066】
本発明による製造方法の炭酸のナトリウム塩および/または吸収性材料に対して、炭酸のナトリウム塩および/または吸収性材料に関する上記の規定がそれぞれ適用される。特に、上述の炭酸のナトリウム塩に用いられる材料の粒度および/もしくはタイプに関する規定、ならびに/または吸収性材料に用いられる材料のタイプ、吸収性材料の粒度、表面積、および/もしくは細孔体積に関する規定が適用される。さらに、上述の組成物の流動性の値、特にFFC値に関する規定が適用される。
【0067】
本発明による製造プロセスの実施形態によると、炭酸のナトリウム塩の粉末および/または吸収性材料の前記粉末に対して、熱エネルギーおよび/または機械的エネルギーが加えられる。これは、本発明による組成物の調製により多くの柔軟性を提供する。
【0068】
熱エネルギーは、たとえば、粉末および/または組成物を、たとえばオーブンにおけるたとえば加熱などによって、またはたとえば放射ヒーターなどの適当な照射源による照射などによって、加熱することなどによって、加えられ得る。
【0069】
粉末および/または組成物に、異なる形の機械的エネルギーが加えられ得る。たとえば、破砕、粉砕、および/またはミリングによって機械的エネルギーが加えられ得る。この目的のために、たとえばボールミル、ジェットミル、エッジミル、ピンミル、またはローラーミルなどの適切なデバイスが有利に用いられ得る。しかし、ミキサーを用いて粉末および/または組成物を混合することによっても、粉末および/または組成物に機械的エネルギーが加えられ得る。適切なミキサーは、プラウシェアミキサー、ローターミキサー、パドルミキサー、リボンブレンダー、ジェットミキサー、および/またはスクリューブレンダーを含んでもよい。加えて、機械的エネルギーの印加はいくつかのステップを含んでもよく、たとえば第1の破砕、粉砕、および/またはミリングステップと、第2の混合ステップとを含んでもよい。
【0070】
本発明による製造プロセスの別の実施形態によると、ステップb.は混合および/または粉砕ステップを含む。このやり方で、粉砕機器への炭酸のナトリウム塩のケーキングを最小化できる。さらに、非常に均質な組成物が得られてもよい。
【0071】
ステップb.が含む粉砕ステップにおいて、組成物が50μm以下、特に45μm未満、または40μm未満、または35μm未満、または30μm未満、または25μm未満、または20μm未満、または15μm未満、または12μm未満の粒度d50に粉砕されるときに、本発明による製造プロセスにおいて最適な結果が得られている。有利には、組成物は180μm未満、特に170μm未満、または160μm未満、または150μm未満、または140μm未満、または125μm未満の粒度d97に粉砕される。これによって、貯蔵することもできる使用可能な組成物を直接提供できる。加えて、これはミリング機器へのミル装填物のケーキングの低減にも役立ち得る。
【0072】
加えて本発明は、煙道ガスの浄化のためのプロセスも提供する。本発明による煙道ガスの浄化のためのプロセスにおいて、煙道ガスは本発明による組成物と接触する。
【0073】
本発明による組成物は、異なる目的のために用いられ得る。理想的には、本発明による組成物は煙道ガスの浄化のために用いられ、好ましくはHFを含有する煙道ガスの浄化のために用いられる。
【0074】
加えて本発明は、50μm未満、特に45μm未満、または40μm未満の粒度d50を有する炭酸のナトリウム塩の粉末の、特にいくらかの貯蔵時間の後の流動性、および/または貯蔵性、および/またはHF吸収率を改善するための、0.1cm3/g以上の比細孔体積を有する吸収性材料の粉末の使用を提供する。好ましくは、炭酸のナトリウム塩は炭酸水素ナトリウムおよび/またはセスキ炭酸ナトリウムである。
【0075】
本発明による吸収性材料の粉末の使用の実施形態によると、吸収性材料の粉末は、組成物の総重量に基づいて1~99重量%、特に30~99重量%、または50~99重量%、または70~99重量%、または70~95重量%、または70~90重量%、または70~87重量%、または80~87重量%、または82~87重量%、または1~95重量%、または1~90重量%、または1~85重量%、または10~85重量%、または20~85重量%、または25~85重量%、または30~85重量%、または35~85重量%、または40~85重量%、または50~85重量%、または55~85重量%、または60~85重量%、または70~85重量%、または75~85重量%、または80~85重量%、または82~85重量%の量で用いられる。
【0076】
本発明による吸収性材料の粉末の使用のための吸収性材料に対して、吸収性材料に関する上記の規定が適用される。特に、上述の吸収性材料に用いられる材料のタイプ、吸収性材料の粒度、表面積、および/または細孔体積に関する規定が適用される。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【
図1】異なる炭酸水素ナトリウムおよび水和石灰含有量を有する異なる吸収剤組成物に対する相対的SO
2吸収(SO
2削減と呼ばれる)%を、製粉された炭酸水素ナトリウムのフラクションに対して示す図である。
【
図2】それぞれ炭酸水素ナトリウムおよび水和石灰の異なるフラクションに対する、吸収剤組成物の新鮮なサンプルと、吸収剤組成物の18時間経過サンプルとのFFC値の依存性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0078】
以下において、単なる例示であって決して限定と解釈されるべきではない実施例によって、本発明をさらに説明する。
【0079】
使用した材料
【0080】
炭酸水素ナトリウム、NaHCO3、(Bicar、ソルベイ社(Solvay)製)および水和石灰、Ca(OH)2、(Sorbacal SP、ロイスト社(Lhoist)製)
Sorbacal SPは、約40m2/gのBET比表面積と、約0.2cm3/gのBJH比細孔体積と、約6μmの粒度d50とを有した。
【実施例0081】
煙道ガス浄化のための組成物の調製
【0082】
ピンミルを用いて炭酸水素ナトリウムを製粉して、シンパテック社のHelos粒度分析器を用いたエタノール懸濁物中のレーザー光散乱によって定められた28.9μmのd50値を有する粉末にした。この粒度分析器はスーセル機器を有し、サンプルは120秒間の超音波処理および120秒間の休止を受け、懸濁物は70rpmにて撹拌された。その後、製粉した炭酸水素ナトリウムを表1に示す比率で水和石灰と均質に混合して、煙道ガス浄化のための組成物を得た。粉末の混合は、ローターミキサーを用いて行った。
【0083】
テスト中に、注入機器の封鎖または異常な目詰まりは観察されなかった。つまり、注入デバイスは製粉した炭酸水素ナトリウムの存在に影響されなかった。これは、製粉した炭酸水素ナトリウムに対する水和石灰の有益な効果を示し得る。