(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023071720
(43)【公開日】2023-05-23
(54)【発明の名称】新規のグルタミニルシクラーゼ阻害剤及び様々な疾患の治療におけるそれらの使用
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4164 20060101AFI20230516BHJP
C07D 233/64 20060101ALI20230516BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230516BHJP
A61P 25/04 20060101ALI20230516BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20230516BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20230516BHJP
A61P 11/02 20060101ALI20230516BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20230516BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20230516BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20230516BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20230516BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20230516BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20230516BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20230516BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230516BHJP
【FI】
A61K31/4164
C07D233/64 105
A61K45/00
A61P25/04
A61P11/00
A61P11/06
A61P11/02
A61P29/00
A61P37/08
A61P17/00
A61P3/04
A61P1/16
A61P17/06
A61P1/04
A61P43/00 121
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023020084
(22)【出願日】2023-02-13
(62)【分割の表示】P 2019533155の分割
【原出願日】2018-05-24
(31)【優先権主張番号】2017118350
(32)【優先日】2017-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】RU
(31)【優先権主張番号】2017137615
(32)【優先日】2017-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】RU
(71)【出願人】
【識別番号】511281202
【氏名又は名称】リミテッド・”ヴァレンタ-インテレクト”
(71)【出願人】
【識別番号】522421336
【氏名又は名称】ネボルシン・ウラジミール・エヴゲニーヴィチ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ウラジミール・エフゲニーヴィチ・ネボルシン
(72)【発明者】
【氏名】アナスタシア・ウラジミロヴナ・リードロフスカヤ
(72)【発明者】
【氏名】タチアナ・アレクサンドロヴナ・クロモヴァ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】グルタミニルシクラーゼの活性及び/又は免疫系の細胞の異常活性と関係する疾患、具体的には、疼痛症候群、非感染性肺炎、間質性肺炎、気管支喘息、急性若しくは慢性の気管支炎、咽頭炎、肺気腫、鼻炎、副鼻腔炎、慢性の閉塞性の肺疾患、急性の肺損傷、熱、アトピー性皮膚炎、肥満、非アルコール性脂肪肝、腹膜炎、乾癬、クローン病及び潰瘍性大腸炎から選択される疾患の予防及び/又は治療のための、医薬組成物を提供する。
【解決手段】一般式(A)の化合物又は薬学的に許容可能なそれらの塩、水和物、若しくは溶媒和物を含む、医薬組成物である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(A)の化合物又は薬学的に許容可能なそれらの塩、水和物、若しくは溶媒和物の使用であって:
【化1】
(式中、R
1は-C(O)-R
2-C(O)-基又は-R
2-C(O)-基であり、
R
2は1又は2個のC
1からC
6アルキル、又はフェニルで任意選択で置換されていてもよい-(CH
2)
n-基であり、
nは0から4の整数である);
前記化合物が、下記式
【化2】
からなる群から選択される、グルタミニルシクラーゼ阻害剤としての使用。
【請求項2】
グルタミニルシクラーゼ活性と関係する疾患の予防及び/又は治療のための、請求項1に記載の化合物の使用。
【請求項3】
免疫系の細胞の異常活性と関係する疾患の予防及び/又は治療のための、請求項1に記載の化合物の使用。
【請求項4】
免疫系の細胞の異常走化性と関係する疾患の予防及び/又は治療のための、請求項3に記載の化合物の使用。
【請求項5】
グルタミニルシクラーゼの活性及び/又は免疫系の細胞の異常活性と関係する疾患の予防及び/又は治療のための、
請求項1に記載の化合物の治療有効量、及び少なくとも1つの薬学的に許容可能な担体及び/又は賦形剤を含む、
医薬組成物。
【請求項6】
グルタミニルシクラーゼの活性及び/又は免疫系の細胞の異常活性と関係する前記疾患が肺、呼吸器及び、腹部の疾患、放射線障害、並びに/又は疼痛症候群から選択される疾患であることを特徴とする、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
グルタミニルシクラーゼの活性及び/又は免疫系の細胞の異常活性と関係する前記疾患が、気管支喘息、急性若しくは慢性の気管支炎、咽頭炎、肺気腫、鼻炎、副鼻腔炎、慢性の閉塞性の肺疾患又は急性の肺損傷であることを特徴とする、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項8】
グルタミニルシクラーゼの活性及び/又は免疫系の細胞の異常活性と関係する前記疾患が、熱であることを特徴とする、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項9】
グルタミニルシクラーゼの活性及び/又は免疫系の細胞の異常活性と関係する前記疾患が、アトピー性皮膚炎であることを特徴とする、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項10】
グルタミニルシクラーゼの活性及び/又は免疫系の細胞の異常活性と関係する前記疾患が、自己免疫疾患、特に乾癬、クローン病及び潰瘍性大腸炎であることを特徴とする、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項11】
グルタミニルシクラーゼの活性及び/又は免疫系の細胞の異常活性と関係する前記疾患が、代謝疾患、特に肥満、メタボリックシンドローム及び非アルコール性脂肪肝、腎症(特に、糖尿病性腎症)であることを特徴とする、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項12】
グルタミニルシクラーゼの活性及び/又は免疫系の細胞の異常活性と関係する前記疾患が、腹膜炎であることを特徴とする、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項13】
他の活性剤を更に含む、請求項5から11のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記他の活性剤が抗細菌剤、細胞分裂阻害剤及び細胞障害性薬剤、活性剤の症状又は副作用を阻害する薬剤、並びにそれらの組み合わせを含む群から選択される、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項15】
グルタミニルシクラーゼ活性により媒介される疾患の治療方法であって、
式(A)の化合物
【化3】
(式中、R
1は-C(O)-R
2-C(O)-基又は-R
2-C(O)-基であり、
R
2は1又は2個のC
1からC
6アルキル、又はフェニルで任意選択で置換されていてもよい-(CH
2)
n-基であり、
nは0から4の整数であり;
前記化合物が、下記式
【化4】
からなる群から選択される)
又は薬学的に許容可能なそれらの塩、水和物、若しくは溶媒和物の治療有効量の、治療を必要とする対象への投与を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機化合物、薬理及び医薬に関係し、免疫系の細胞の異常活性と関係する疾患の治療、特に、肺、呼吸器及び、腹部の疾患の治療に関する。本発明は、特に、ケモカインの翻訳後修飾及び免疫系の細胞の走化性に関与する、グルタミニルシクラーゼ酵素を阻害する効果のある化合物を用いて、放射線障害及び疼痛症候群、並びに他の疾患の治療にも関する。
【背景技術】
【0002】
内在及び外来のいくつかの物質(走化性因子)の濃度勾配の後の、免疫系細胞の走化性又は直接の運動が、免疫系の細胞が機能する主な構成の一つである。免疫系の細胞の過度の流入は、免疫系の細胞の過度な活性、及び周辺臓器及び組織の損傷を通常引き起こす。走化性プロセスと関係する関与物及びプロセスの分子レベルでの理解は、免疫系の細胞の異常活性に関する、多くの疾患の治療及び予防において、新しい効果的な手法をもたらし得る。
【0003】
CCLファミリー(CCL2、CCL7、CCL8、CCL13)のケモカインは、CCR2レセプターのリガンドであり、哺乳類において、単球及びマクロファージの走化性の最も有力な因子である(Biochem J. 2012 Mar 1;442(2):403-12)。CCLファミリーのケモカインは、好中球及び単球の活性化を必要とする、サイトカインの重量な分類であり、炎症性の部位にこれらの細胞の関与を引き付ける。しかしながら、高濃度のケモカインは一般に、免疫系の細胞の過度の流入を引き起こす。免疫系の細胞の異常活性は、周辺の臓器及び組織の重大な損傷をもたらす可能性がある。例えば、いくつかの場合において、脂質酸化生成物は血管内皮細胞(内膜)を活性化し、CCL2の単離、次に炎症のマーカーを分泌するマクロファージの関与をもたらし、動脈壁の損傷及び粥状動脈硬化の進行を引き起こす可能性がある(Mol Cell. 1998 Aug;2(2):275-81; Nature. 1998 Aug 27;394(6696):894-7)。類似の発病させる状況が、気道組織の放射線誘発損傷の場合においても、観察される可能性がある:肺及び気道の上皮細胞の損傷及び活性化は、CCL2の単離をもたらし、次に免疫細胞の血管外漏洩、及び肺及び気道への腫瘍細胞循環を引き起こす(Antioxid Redox Signal. 2018 Apr 2. doi: 10.1089/ars.2017.7458)。
【0004】
病態生理学上における、CCR2+、CD14+、及びCD16lo単球の異常活性(関節リウマチ、多発性硬化症)により媒介される、多くの自己免疫及びアレルギー状態のCCLファミリーのケモカインの役割が知られている。さらに、CCLファミリー(特にCCL2)のケモカインは肥満、メタボリックシンドローム、慢性疼痛、線維症、非アルコール性脂肪肝疾患及びいくつかのがんの形態の病態形成に関与する。
【0005】
CCL媒介の走化性を阻害することによる免疫系の細胞の異常活性の抑制は、急性肺損傷、気管支喘息、気管支炎、慢性閉塞性肺疾患、クローン病、糖尿病性腎症などのような範囲の疾患の治療のために、大きな需要があり得る。例えば、糖尿病性腎症の場合、高濃度でのグルコースの影響は、腎臓の尿細管細胞によるCCL2分泌の増加をもたらし、次に、単球の遊走を引き起こす(Kidney Int. 2006 Jan; 69(1):73-80)。腎臓組織中の単球の濃度の上昇、及びマクロファージへのその成熟は、ケモカイン及び周辺の腎臓の細胞を損傷する活性酸素の形成の多量の単離と関係する、異常反応の進行を引き起こす(Mediators Inflamm. 2012;2012:146154)。腎臓組織の損傷は、免疫系の細胞の異常活性の進行及び維持、並びに更なる腎臓組織の破壊をもたらし、低分子拮抗薬による、CCL2/CCR2の相互作用の遮断は、病状の強度を減少させる(Nephrol Dial Transplant. 2013 Jul;28(7):1700-10)。類似のプロセスが非アルコール性脂肪肝疾患の病態形成に特徴的である:肝臓細胞中の脂肪酸の蓄積が、IL-6およびCCL2などの抗炎症性のサイトカインの遊離を引き起こす、NF-κBシグナル経路の活性化及び炎症反応の進行をもたらす。抗炎症サイトカインの遊離は、炎症部位への単球の遊走並びに、ケモカイン及び周辺細胞を損傷させる活性酸素形成の多量の単離と関係する、異常反応の進行をもたらす(Int J Exp Pathol. 2013 Jun; 94(3): 217-225)。
【0006】
CCLファミリー(CCL2、CCL7、CCL8、CCL13)の要素、フラクタルカイン、並びに他のホルモン及び分泌されるタンパク質の範囲はピログルタミン酸残基(pE)を含み、それらの役割はアミノペプチダーゼによる分解に対する保護である(Chem Immunol. 1999;72:42-56; Biochemistry. 1999 Oct 5;38(40):13013-25)。N-末端残基のピログルタミル化(pyroglutamation)はグルタミニルシクラーゼ酵素によって触媒される(QPCT又はQC)(J Biol Chem. 2003 Dec 12;278(50):49773-9; J Mol Biol. 2008 Jun 20;379(5):966-80)。グルタミニルシクラーゼは、ペプチド分子の範囲の翻訳後修飾において、広い基質特異性及び関与物を有する。グルタミニルシクラーゼの基質特異性の研究において、その酵素が、ポリペプチド鎖の長さに関わらず、様々な基質のピログルタミル化を触媒する可能性のあることが示された(FEBS Lett. 2004 Apr 9;563(1-3):191-6, J Biol Chem. 2011 Apr 8;286(14):12439-49)。
【0007】
実験的研究において、グルタミニルシクラーゼの阻害は、CCL2、CCL7、CCL8及びCCL13のケモカイン(Biochem. J. (2012) 442, 403-412)並びにフラクタルカイン(Biosci Rep. 2017 Aug 23;37(4))の、非ピログルタミル化形態の、走化性因子活性の劇的な減少をもたらすことが示された。それ故、グルタミニルシクラーゼ阻害剤は広い範囲の疾患、気管支喘息、急性及び慢性気管支炎、咽頭炎、肺気腫、鼻炎、副鼻腔炎及び慢性閉塞性肺疾患などの、特に肺及び気道の疾患の治療のために、使用される可能性があることが明らかである。疾患の病態形成は、過度なサイトカイン生産、特に単球走化性因子タンパク質CCL2及びCCL7(Am J Respir Cell Mol Biol. 2014 Jan;50(1):144-57)及びフラクタルカイン(Expert Opin Ther Targets. 2010 Feb;14(2):207-19)と関係し、それらはグルタミニルシクラーゼの基質である(Biosci Rep. 2017 Aug 23;37(4). pii: BSR20170712; EMBO Mol Med. 2011 Sep;3(9):545-58)。抗体の使用でのCCL2及びCCL7の中和は、実験動物の気道に白血球、単球、及び好中球の流入を相当減少させることが示された(Am J Respir Cell Mol Biol. 2014 Jan;50(1):144-57)。細菌性のリポ多糖、リポテイコ酸、又は他の刺激物質の、気道臓器系の粘膜への影響は、気管支の平滑筋細胞による、CCL2の分泌の増加(Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol. 2012 Apr 15;302(8):L785-92)及び気管支肺胞洗浄におけるCCL2濃度の増加をもたらす(Mol Immunol. 2011 Jul;48(12-13):1468-76)。CCL2濃度の増加は次に、好酸球、単球及び好塩基球の遊走、並びにケモカイン(TNFα、IL-1、IL-6、IL-4)及び気管支及び呼吸臓器の周辺細胞を損傷する活性酸素形成多量の単離に関する異常反応の進行を引き起こす(Immunobiology. 2016 Feb;221(2):182-7; Int J Biol Sci. 2012;8(9):1281-90; Mol Immunol. 2013 Nov;56(1-2):57-63)。気管支の損傷は、免疫系の細胞の異常活性の進行及び維持、並びに更なる呼吸臓器細胞の破壊をもたらす。アレルギー性喘息のin-vivoモデルによると、低分子の拮抗薬によるCCL2/CCR2相互作用の遮断が、重要な有効性を示した(Int Arch Allergy Immunol. 2015;166(1):52-62)。
【0008】
CCL2媒介の、好中球炎症の進行、及び発熱サイトカイン(IL-1、TNFα、IL-6)の放出に関する異常反応の進行が、温度の上昇及び発熱をもたらすことに留意することは重要なことである(J Infect Dis. 1999 Mar;179 Suppl 2:S294-304; Front Biosci. 2004 May 1;9:1433-49)。
【0009】
熱及び温度の上昇に加えて、疼痛症候群は様々な疾患の極めて一般的な症状でもある。周辺組織を損傷させる酸素の活性形態の増加した数の放出に関する異常反応の強度の減少は、それ自体、疼痛症候群の強度において減少をもたらすことは明らかである。しかしながら、最近の研究において、慢性疼痛の病態形成において、フラクタルカインの重要な役割が示された(J Neurochem. 2017 May;141(4):520-531)。
【0010】
グルタミニルシクラーゼ阻害剤は様々な自己免疫疾患、特に関節リウマチ及び乾癬の治療のために使用され得る。フラクタルカインは自己免疫疾患の進行に関する、重要な炎症誘発性のメディエーターのうちの一つである。フラクタルカインとその独自のレセプター(CX3CR1)間の相互作用は、細胞接着、走化性、及び細胞生存を誘導する(Mol Interv. 2010 Oct;10(5):263-70)。フラクタルカインの濃度は関節リウマチ(PA)(Mod Rheumatol. 2017 May;27(3):392-397)及び乾癬(Ann Clin Lab Sci. 2015 Fall;45(5):556-61)の患者において増加しており、疾患の活性と相互関係をもつ。フラクタルカインは、関節リウマチの患者の滑膜組織中の、線維芽細胞様の滑膜細胞、及び内皮細胞に発現する。乾癬の場合は、高い濃度のフラクタルカイン生産が皮膚乳頭、及び抗原提示細胞において、観察される(Br J Dermatol. 2001 Jun;144(6):1105-13)。フラクタルカインの発現は、腫瘍-α壊死因子及びインターフェロン-γを高め、関節リウマチの場合においては、単球、T-細胞及び破骨細胞前駆物質の滑膜組織への遊走を促進する(Mod Rheumatol. 2017 May;27(3):392-397)。皮膚乳頭におけるフラクタルカインの発現の増加は、乾癬の場合においては、これらの場所にT-細胞の遊走及び蓄積を説明するようである(Br J Dermatol. 2001 Jun;144(6):1105-13)。フラクタルカインは、マクロファージ、T-細胞及び線維芽細胞様の滑膜細胞により炎症メディエーターの形成も誘導する。更に、フラクタルカインは血管形成及び破骨細胞形成を促進する。コラーゲン誘導関節炎のモデルにおいて、抗フラクタル抗体の使用が、病態プロセスを相当軽減させることを可能にする(Mod Rheumatol. 2017 May;27(3):392-397)。
【0011】
最近の研究結果に基づいて、CCL-媒介の走化性の阻害は、放射線疾患の治療への新しい視点の治療方法であると主張可能である(Antioxid Redox Signal. 2018 Apr 2. doi: 10.1089/ars.2017.7458, Int J Radiat Biol. 2015 Jun;91(6):510-8)。動物モデルにおいて、血管の放射線-誘導の機能障害の強度は、CCL-媒介シグナル経路の阻害によって効果的に減少する可能性があることが示された。CCL2レセプター遺伝子によって機能停止された動物の使用、及び前記レセプターの拮抗薬の使用の場合、形態における放射線-誘導変化、及び内皮細胞の破壊を妨げ、放射線照射直後の、気道炎症の進行を妨げる(Antioxid Redox Signal. 2018 Apr 2. doi: 10.1089/ars.2017.7458)。更に、CCL-媒介シグナル経路の抑制は、放射線の主要な「延期の」副作用の一つである、放射線-誘導肺線維症の強度を有意に減少させることを可能にする。
【0012】
従って、文献データに基づき、グルタミニルシクラーゼの阻害を対象にする戦略は、自己免疫疾患、肥満、肺、気道及び腹腔の疾患、放射線疾患並びに疼痛症候群の治療への可能な取り組みと結論付けられる。
【0013】
現在、スルホリピド(WO 2017/046256)、フラボノイド誘導体(Bioorg Med Chem. 2016 May 15;24(10):2280-6)、ピリジン誘導体(US 2015/0291632)及び最近の試験において開示された、いくつかの小分子(J Med Chem. 2017 Mar 23;60(6):2573-2590; WO 2014/193974, US 2015/0291557)を含むグルタミニルシクラーゼ阻害剤が、知られている。本発明の対象である化合物の最も近い類似体は、Probiodrug Aktiengesellschaftの出版物に示されている(J Biol Chem. 2003 Dec 12;278(50):49773-9)。本出版物はイミダゾール誘導体に基づくグルタミニルシクラーゼ阻害剤を開示している。しかしながら、Probiodrug Aktiengesellschaft社によって公開された化合物の構造において、イミダゾールはイミダゾール環の窒素原子の一つによる脂肪族の置換基を含む。脂肪族の置換基の導入は、化合物の代謝安定性を減少させる。更に、脂肪族の置換基の導入は、化合物の疎水性を増加させ、血液脳関門を通り抜けて、化合物の浸透を促進させ、それは、免疫系の細胞の異常活性を抑制するためには明らかに不必要であり、潜在的に副作用を引き起こし得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】WO 2017/046256
【特許文献2】US 2015/0291632
【特許文献3】WO 2014/193974
【特許文献4】US 2015/0291557
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Biochem J. 2012 Mar 1;442(2):403-12
【非特許文献2】Mol Cell. 1998 Aug;2(2):275-81; Nature. 1998 Aug 27;394(6696):894-7
【非特許文献3】Antioxid Redox Signal. 2018 Apr 2. doi: 10.1089/ars.2017.7458
【非特許文献4】Kidney Int. 2006 Jan; 69(1):73-80
【非特許文献5】Mediators Inflamm. 2012;2012:146154
【非特許文献6】Nephrol Dial Transplant. 2013 Jul;28(7):1700-10
【非特許文献7】Int J Exp Pathol. 2013 Jun; 94(3): 217-225
【非特許文献8】Chem Immunol. 1999;72:42-56; Biochemistry. 1999 Oct 5;38(40):13013-25
【非特許文献9】J Biol Chem. 2003 Dec 12;278(50):49773-9; J Mol Biol. 2008 Jun 20;379(5):966-80
【非特許文献10】FEBS Lett. 2004 Apr 9;563(1-3):191-6, J Biol Chem. 2011 Apr 8;286(14):12439-49
【非特許文献11】Biochem. J. (2012) 442, 403-412
【非特許文献12】Biosci Rep. 2017 Aug 23;37(4)
【非特許文献13】Am J Respir Cell Mol Biol. 2014 Jan;50(1):144-57
【非特許文献14】Expert Opin Ther Targets. 2010 Feb;14(2):207-19
【非特許文献15】Biosci Rep. 2017 Aug 23;37(4). pii: BSR20170712;
【非特許文献16】EMBO Mol Med. 2011 Sep;3(9):545-58
【非特許文献17】Am J Respir Cell Mol Biol. 2014 Jan;50(1):144-57
【非特許文献18】Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol. 2012 Apr 15;302(8):L785-92
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【非特許文献21】Int J Biol Sci. 2012;8(9):1281-90
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【非特許文献30】Br J Dermatol. 2001 Jun;144(6):1105-13
【非特許文献31】Mod Rheumatol. 2017 May;27(3):392-397
【非特許文献32】Br J Dermatol. 2001 Jun;144(6):1105-13
【非特許文献33】Mod Rheumatol. 2017 May;27(3):392-397
【非特許文献34】Antioxid Redox Signal. 2018 Apr 2. doi: 10.1089/ars.2017.7458
【非特許文献35】Int J Radiat Biol. 2015 Jun;91(6):510-8
【非特許文献36】Antioxid Redox Signal. 2018 Apr 2. doi: 10.1089/ars.2017.7458
【非特許文献37】Bioorg Med Chem. 2016 May 15;24(10):2280-6
【非特許文献38】J Med Chem. 2017 Mar 23;60(6):2573-2590
【非特許文献39】J Biol Chem. 2003 Dec 12;278(50):49773-9
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
これまで、免疫系の細胞の異常活性に関する疾患の治療に使用されるグルタミニルシクラーゼ阻害剤として作用する薬が存在せず、それ故グルタミニルシクラーゼ阻害剤に基づく新しい効果的な薬の開発及び実用的応用に対する需要がある。
【0017】
本発明は気道及び腹腔の疾患、放射線疾患並びに様々な種類の疼痛症候群、並びに免疫系の細胞の異常活性と関係する他の疾患の治療において、グルタミニルシクラーゼ抑制に効果的な化合物の使用に関する。
【0018】
本発明の目的は、グルタミニルシクラーゼ阻害剤であり、特に肺、気道及び腹腔疾患、放射線疾患並びに疼痛症候群、並びに免疫系の細胞の異常活性と関連する他の疾患などの、免疫系の細胞の異常活性と関連する疾患の治療に対して効果的である、新規な薬物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の技術的な結果は、高い阻害活性により特徴づけられる、効果的なグルタミニルシクラーゼ阻害剤の開発及び獲得であり、免疫系の細胞の異常活性に関する疾患、特に気管支喘息、急性及び慢性気管支炎、咽頭炎、鼻炎(特に、アレルギー性鼻炎)、副鼻腔炎、慢性閉塞性肺疾患、及びその症状(特に肺気腫、気管支閉塞)などの肺並びに気道の疾患;クローン病、潰瘍性大腸炎、腹膜炎、及び腎症(特に糖尿病性腎症)などの腹部臓器の疾患;放射線疾患並びに疼痛症候群、並びに免疫系の細胞の異常活性、特に免疫細胞の異常走化性と関係する他の疾患の治療のためにこれらの阻害剤の使用を可能にする。
【0020】
開示された技術的な結果が式(A)
【化1】
(式中、R
1は-C(O)-R
2-C(O)-又は-R
2-C(O)-基であり、R
2は-(CH
2)
n-基であり、1個以上のC
1からC
6のアルキル、又はフェニルで任意選択で置換されていてもよく、nは0から4の整数である)
の化合物又はそれらの薬学的に許容可能な塩、水和物、溶媒和物の適用によって達成され、
ここで開示された式(A)の化合物は、グルタミニルシクラーゼ阻害剤として、任意の化合物IからX、
【化2】
及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0021】
開示された技術的な結果は、グルタミニルシクラーゼ活性と関係する疾患の抑制及び/又は治療のための医薬組成物生産のため、化合物IからXのいずれかから選択される式(A)の化合物、又は薬学的に許容可能なそれらの塩、水和物、溶媒和物の使用によっても達成される。
【0022】
開示された技術的な結果は、任意の化合物IからX、又はそれらの塩、水和物、溶媒和物のいずれか一つを使用して、免疫系の細胞の異常活性、特に免疫系の細胞の異常走化性と関係する疾患の抑制及び/又は治療のための、医薬組成物を製造するための使用によっても達成される。
【0023】
さらに、本発明は、グルタミニルシクラーゼの活性及び/又は免疫系の細胞の異常活性、特に免疫系の細胞の異常走化性と関係する疾患の抑制及び/又は治療のための医薬組成物を提供し、組成物中に有効量の本発明による化合物、及び少なくとも一つの薬学的に許容可能なアジュバントを含むことを特徴としている。本発明のいくつかの実施形態において、アジュバントは薬学的に許容可能な担体及び/又は賦形剤である。
【0024】
本発明はまた、体内のグルタミニルシクラーゼ活性と関係する疾患の抑制及び/又は治療のための方法を含み、前記体内へ、本発明による医薬組成物の投与を含む。グルタミニルシクラーゼ活性と関係するそのような疾患は、免疫系の細胞の異常活性、特に免疫系の細胞の異常走化性と関係する疾患、特に肺及び気道の疾患である。特定の制限のない本発明の実施形態において、肺及び気道の疾患は、気管支喘息、急性及び慢性気管支炎、咽頭炎、肺気腫、鼻炎、副鼻腔炎、又は慢性閉塞性の肺疾患である。本発明の実施形態の特定の場合において、体はヒト又は動物である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】モルモットの急性喘息モデルにおける化合物1の特定薬理活性の試験において、気管支肺胞空隙における炎症細胞の流入(M±m, n=10)。
【発明を実施するための形態】
【0026】
化合物IからX及び多くの他の化合物の調製は、発明RU 2013/116822の出願に開示されている。開示された特許出願は、金属イオンと複合化又はキレート化する能力を有する、ジカルボン酸ビスアミド誘導体、並びにウイルス肝炎、HIV感染、がん、神経変性の、心血管の炎症疾患;糖尿病、老年医学の疾患、微生物の毒により引き起こされる疾患、及びアルコール依存症、アルコール性肝硬変、貧血、晩発性ポルフィリン症、遷移金属塩による中毒の、抑制及び/又は治療のための薬剤としてのそれらの使用を開示する。
【0027】
式(A)の化合物の特定の薬理活性の研究の過程で、本発明の著者らは驚くことに、式(A)の化合物は、免疫系の細胞の走化性に影響することが示されることを発見した。免疫系の細胞の流入における減少は、免疫系細胞の細胞の異常活性と関連する、多くの疾患、特に気管支喘息、急性及び慢性気管支炎、咽頭炎、鼻炎(特にアレルギー性鼻炎)、副鼻腔炎、慢性閉塞性の肺疾患、及びその症状(特に、肺気腫、気管支閉塞)などの肺及び気道の疾患;並びにクローン病、潰瘍性大腸炎、腹膜炎、及び腎症(特に糖尿病性腎症)などの腹部臓器の疾患;並びに放射線疾患の治療において、使用されてもよい。
【0028】
走化性における影響は、化合物が金属イオンと複合体化又はキレート化する能力によって、予測又は説明することができないので、試験は潜在的な治療標的を探索させた。試験の源において、本発明の著者らは、式(A)の化合物の観察された治療効果は、グルタミニルシクラーゼの活性を阻害するこれらの化合物の能力と関連することを発見した。下記試験の源で、グルタミニルシクラーゼの活性を阻害する能力が化合物III、IV、V、VI、VII、VIII、IX及びXに対しても示された。
【0029】
それ故、化合物IからXは、免疫系の細胞の走化性に影響し、免疫系細胞の細胞の異常活性と関連する疾患、特に気管支喘息、急性及び慢性気管支炎、咽頭炎、鼻炎(特にアレルギー性鼻炎)、副鼻腔炎、慢性閉塞性の肺疾患、及びその症状(特に、肺気腫、気管支閉塞)などの肺及び気道の疾患;並びにクローン病、潰瘍性大腸炎、腹膜炎、及び腎症(特に糖尿病性腎症)などの腹部臓器の疾患;並びに放射線疾患並びに疼痛症候群の治療のために使用されてもよい、新規のグルタミニルシクラーゼ阻害剤である。
【0030】
用語と定義
用語「化合物I」は下記構造式に対応するN,N’-ビス[2-(1H-イミダゾール-4-イル)エチル]オキサルアミドに関する。
【化3】
【0031】
用語「化合物II」は下記構造式に対応するN,N’-ビス[2-(1H-イミダゾール-4-イル)エチル]イソフタルアミドに関する。
【化4】
【0032】
用語「化合物III」は構造式によっても表されるN,N’-ビス[2-(1H-イミダゾール-4-イル)エチル]カルバミドに関する。
【化5】
【0033】
用語「化合物IV」は構造式によっても表されるN,N’-ビス[2-(1H-イミダゾール-4-イル)エチル]マロンアミドに関する。
【化6】
【0034】
用語「化合物V」は構造式によっても表されるN,N’-ビス[2-(1H-イミダゾール-4-イル)エチル]スクシンアミドに関する。
【化7】
【0035】
用語「化合物VI」は下記構造式に対応するN,N’-ビス[2-(1H-イミダゾール-4-イル)エチル]グルタルアミドに関する。
【化8】
【0036】
用語「化合物VII」は下記構造式に対応するN,N’-ビス[2-(1H-イミダゾール-4-イル)エチル]アジパミドに関する。
【化9】
【0037】
用語「化合物VIII」は構造式に対応するN,N’-ビス[2-(1H-イミダゾール-4-イル)エチル]-3-メチルペンタンジアミドに関する。
【化10】
【0038】
用語「化合物IX」は構造式に対応するN,N’-ビス[2-(1H-イミダゾール-4-イル)エチル]-3,3-ジメチルペンタンジアミドに関する。
【化11】
【0039】
用語「化合物X」は下記構造式に対応するN,N’-ビス[2-(1H-イミダゾール-4-イル)エチル]テレフタルアミドに関する。
【化12】
【0040】
温度に参照して使用される用語「C」は摂氏温度等級又はセルシアス温度基準を意味する。
【0041】
用語「IC50」は酵素の半最大阻害が達成される試験化合物の濃度を意味する。
【0042】
用語「薬学的に許容可能な塩」又は「塩」は比較的非毒性の酸と調製される、活性化合物の塩を含む。薬学的に許容可能な非毒性の塩の例としては、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸及び過塩素酸などの無機酸、又は酢酸、シュウ酸、マレイン酸、酒石酸、コハク酸、クエン酸、マロン酸などの有機酸、又は当分野で使用される他の方法、例えば、イオン交換などで得られるものによって形成される塩を含む。他の薬学的に許容可能な塩は、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、樟脳酸塩(camphorate)、樟脳スルホン酸塩(camphorsulfonate)、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロホスフェート、グルコン酸塩、ヘミスルホン酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシ-エタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリル酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩(メシル酸塩)、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバール酸塩、プロピオン酸塩、ヘミフマル酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩(トシル酸塩)、ウンデカン酸塩、吉草酸塩などを含む。
【0043】
用語「溶媒和物」は、本発明による化合物、及び1以上の薬学的に許容可能な溶媒、例えばエタノールの1つ以上の分子を含む分子複合体の記載に使用される。用語「水和物」は前記溶媒が水である場合に使用される。
【0044】
本明細書において、免疫系の細胞の用語「異常活性」は、症状のない場合の体内での免疫系の細胞の基本的な活性濃度とは著しく異なる活性を意味する。異常活性は、臓器又は組織に免疫系の細胞の過剰な流入、免疫系の細胞の活動をもたらすプロセスの異常状態、免疫系の細胞の死と関連するプロセスの規制排除、及び他の要因によって引き起こされる。
【0045】
用語「アジュバント」は、薬剤に必要な物理及び化学特性を与えるため、薬物の一部である、若しくは薬剤の生産工程、製造において用いられる、無機又は有機起源の任意の薬学的に許容可能な物質を意味する。
【0046】
用語「RPMI培地」(Roswell Park Memorial Institute培地)は細胞及び組織の培養のための培地を意味する。RPMIは、ヒトリンパ球細胞の培養に従来から用いられる。培地は十分な量のホスフェートを含み、5%の二酸化炭素を含む大気中での培養のための処方を有する。
【0047】
用語「グルタミニルシクラーゼ」は異なるペプチド基質において、N-末端グルタミンのピログルタミンへの変換に関与する酵素-アミノアシルトランスフェラーゼを意味する。N-末端ピログルタミン酸塩の形成は、生物学的に活性ペプチド、ホルモン及びケモカイン(例えば、チレオトロピン-放出ホルモン、βケモカインリガンド-2)を、エキソペプチダーゼによる分解から保護し、いくつかの場合において、レセプターに対するリガンドの親和性を増加させる可能性がある。
【0048】
用語「走化性」は化学刺激に反応する細胞の直接の動きを意味する。走化性の中心に、走化性の媒介物の濃度勾配に反応する細胞の能力がある。走化性は、免疫系の細胞が血流を離れ、損傷組織に遊走することによるプロセスである。走化性基質(走化性因子)は、走化性において指導的役割を果たす。単球及びマクロファージのための、最も有力な走化性因子の一つは、ケモカインCCL2である。
【0049】
用語「治療」は、哺乳類好ましくはヒトにおける病理学の状態の治療を包含し、a)低減、b)疾患の阻止(遅延)、c)疾患の重症度の緩和、すなわち疾患退縮の導入、d)適用する疾患若しくは状態、又は病気若しくは状態の1以上の症状の逆転を含む。
【0050】
用語「予防」、「抑制」は、哺乳類好ましくはヒトにおいて、危険因子の制限、及び疾患の無症状段階の予防的な治療を包含し、疾患の臨床段階の開始の可能性の減少を対象としている。患者は要因に基づく予防的な治療のために選択され、既知のデータに基づき、一般母集団と比較して疾患の臨床段階の開始の増えた危険を必然的に伴う。予防治療はa)初期の予防及びb)二次的な予防であってもよい。初期の予防は、疾患の臨床段階が、まだ起きていない患者の予防治療として定義される。二次的な予防は疾患の同じ又は同様の臨床段階の再発の予防である。
【0051】
化合物IからXは、免疫系の細胞の異常活性に関する疾患、特に免疫系の細胞の走化性に関する疾患、具体的には、気管支喘息、急性及び慢性気管支炎、咽頭炎、鼻炎(特にアレルギー性鼻炎)、副鼻腔炎、慢性閉塞性肺疾患及びその症状(特に肺気腫、気管支閉塞)などの肺並びに気道の疾患;並びにクローン病、潰瘍性大腸炎、腹膜炎、及び腎症(特に糖尿病性腎症)などの腹部臓器の疾患;放射線疾患並びに全身性及び局所特性両方を有し、初期の病態変化によってもたらされ、又は異なる疾患又はいくつかの薬物の長期の摂取と関係することを含む、疼痛症候群の治療のための見込みである。いくつかの特定の実施態様において、本発明による化合物は、免疫系の細胞の異常活性と関連する他の疾患の治療に使用されてもよい。
【0052】
化合物の治療的使用の方法
本発明の対象の事柄は、適切な治療を必要とする対象への、本発明による1以上の化合物の治療有効量の投与もまた含む。治療有効量は、患者に投与され又は送達される1以上の化合物の量を意味し、患者は治療(予防)に望ましい反応をほとんど明らかにしそうである。必要とされる正確な量は対象ごとに様々であり、患者の年齢、体重、全体の状態、疾患の重症度、投与方法、他の薬物との組み合わせ治療などに依存する可能性がある。
【0053】
本発明による化合物、又は1以上の化合物を含む医薬組成物は、任意の量(好ましくは、1日当たり患者に対する有効成分の1日投薬が0.5gまで、最も好ましくは、一日投薬が5から50mg/日である)、任意の投与方法で(好ましくは、経口投与)、疾患の治療又は予防に効果的に、患者に投与されてもよい。
【0054】
望ましい投薬で、薬物と特定の適切な薬学的に許容可能な担体の混合の後、本発明の本質を表す組成物は、ヒト又は他の動物に、経口的に、非経口的に、局所的などで投与されてもよい。
【0055】
投与は一日あたり、一週間当たり(任意の他の時間間隔で)、1回及び複数回の両方、又は時々行われる。更に、1以上の化合物は、特定の日数期間を超えて毎日、患者に投与し(例えば、2から10日)、続いて物質の受け取りのない期間(例えば1から30日)があってもよい。
【0056】
本発明による化合物が、組み合わせ治療の投薬計画の一部として使用される場合において、組み合わせ治療のそれぞれの成分の投薬は、必要とされる治療期間投与される。組み合わせ治療を構成する化合物は、すべての成分を含む一度での投薬形態、及び成分のそれぞれの投薬形態の両方で患者に投与されてもよい。
【0057】
医薬組成物
本発明はまた、式(A)の化合物、特に化合物IからX(又はプロドラッグ形態又は他の薬学的に許容可能な誘導体)、並びに本発明の本質を表す化合物と一緒に患者に投与され、化合物の薬理学的な活性に影響せず、非毒性であり、投与された時に、投薬中に化合物の治療的な量を十分に送達する、1以上の薬学的に許容可能な担体、アジュバント、希釈剤及び又は賦形剤を含む、医薬組成物に関する。
【0058】
本発明による特許請求の範囲の医薬組成物は、式(A)の1以上の化合物と共に薬学的に許容可能な担体を含み、特に投与形態に適切な、任意の溶媒、希釈剤、分散剤又は懸濁剤、界面活性剤、等浸透圧剤、増粘剤及び乳化剤、防腐剤、結合剤、潤滑剤などを含んでも良い。薬学的に許容可能な担体として作用する物質には、制限されないが、単糖及びオリゴ糖及びそれらの誘導体;ゼラチン;タルク;ココアバター及び座薬ワックスなどの賦形剤;ピーナッツオイル、コットンシードオイル、ベニバナ油、ごま油、オリーブオイル、コーンオイル及び大豆油などの油;プロピレングリコールなどのグリコール;エチルオレエート及びエチルラウレートなどのエステル;寒天;水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウムなどの緩衝剤;アルギン酸;パイロジェンフリー水;等浸透圧溶液;リンゲル液;エタノール;及びホスフェート緩衝溶液が含まれる。組成物はラウリル硫酸ナトリウム及びステアリン酸マグネシウム、並びに染料、塗膜形成剤、甘味料、風味剤及び香料、防腐剤及び抗酸化剤などの、他の非毒性の相溶性潤滑剤を含んでもよい。
【0059】
本発明の目的はまた、投与形態-医薬組成物の分類、処方でもあり、治療有効投与量で、推奨された投与量で、体内へ、例えば経口、局所投与などの投与、又は、例えば噴霧吸入の形態での吸入による、若しくは血管内方式、鼻腔内、皮下、筋肉内、及び注射法による投与などの特定の方法に最適化される。
【0060】
本発明の投薬の形態は、リポソームの使用、マイクロカプセル化技術の方法、薬剤のナノ形態の調製方法、又は調剤において知られる他の方法によって得られる処方を含んでもよい。
【0061】
組成物の調製で、例えば錠剤の形態において、活性成分は、ゼラチン、デンプン、ラクトース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、シリカ、アラビアゴム、マンニトール、微結晶セルロース、ヒプロメロースなどの1以上の薬学的な賦形剤と混合される。
【0062】
錠剤はスクロース、セルロース誘導体、又は塗布に適用される適切な他の物質で、コーティングされてもよい。錠剤は、直接圧縮、乾燥若しくはウェット造粒、又は加熱状態での加熱融着などの様々な方法で調製されてもよい。
【0063】
ゼラチンカプセルの形態での医薬組成物は、活性成分と他の物質を混合し、得られた混合物を柔らかい又は固体のカプセルに詰めることによって調製されてもよい。
【0064】
非経口の投与には、注射のための水性懸濁液、等浸透圧の生理食塩水溶液又は無菌溶液が使用され、それらは、例えばポリプロピレングリコール又はブチレングリコールなどの薬理学的な相溶化剤を含む。
【0065】
医薬組成物の例
本発明に記載された式(A)の化合物は、下記組成物の形態でヒトの疾患又は動物の疾患の予防及び/又は治療に使用されてもよい(式(A)の化合物は下記「物質」を意味する)。
【0066】
【0067】
これらの組成物は標準的な薬剤技術により調製されもよい。錠剤I、IIは、例えばセルロースアセテートフタレートを使用した、腸溶性の殻によって被覆されてもよい。
【0068】
組み合わせ治療における化合物IからXの使用
化合物IからXはそれぞれの活性薬剤として投与されもよいという事実にも関わらず、それは1以上の他の薬剤と組み合わせて使用されてもよく、特に他の薬剤は、抗菌、NSAID、又は他の抗炎症剤、降圧剤、糖質コルチコステロイド、モノクローナル抗体などであってもよい。組み合わせ摂取の場合、治療薬は様々な時間で同時又は連続で投与される、様々な投薬形態を表してもよく、あるいは治療薬は、一つの投薬形態に組み合わせられてもよい。
【0069】
他の薬剤と組み合わせた本発明の化合物に関して、用語「組み合わせ治療」は、なんらかにより薬物の組み合わせの有益な効果を提供する、すべての薬剤の連続又は同時の摂取である。組み合わせられた投与は、特に、例えば一つの錠剤、カプセル、注射、又は活性物質の固定された比を有する他の形態での組み合わせられた送達、及びそれぞれの化合物のいくつかの別々の投薬形態での同時送達を意味する。
【0070】
それ故、本発明の化合物IからXの投与は、抗細菌剤、細胞増殖抑制剤及び細胞毒性剤、薬剤の一つの症状又は副作用を阻害するための薬物を含む、対応する疾患の予防及び治療の分野で、当業者に知られる追加治療と共に行われてもよい。
【0071】
薬剤が固定された投薬である場合、そのような組み合わせは、適切な投薬範囲で本発明の化合物を使用する。本発明による化合物IからXは、薬剤の組み合わせが不可能である場合、他の薬剤と経時的に患者に投与されてもよい。本発明は連続投与に限定されない;本発明の化合物は、別の薬物の投与と一緒に、前に又は後に、患者に投与されてもよい。
【実施例0072】
本発明による化合物の獲得
化合物IからXを生産する方法は、発明RU 2013/116822の出願に開示されている。金属イオンとの複合体化、又はキレート化する同様の化合物の能力は同出願に開示されている。
【0073】
本発明による化合物の生物活性の特徴
化合物IからXの生物活性を様々なin vivo及びin vitro実験で試験した。特に、様々なin vivo及びin vitroモデルの化合物I及びIIの活性の試験は、単球、マクロファージ、及び他の免疫系細胞の走化性において、化合物I及びIIの阻害効果を示した。化合物I及びIIの生物学的作用は、金属イオンのキレート化の化合物I及びIIの能力についての、前知識に基づいて、予測又は説明することができない。
【0074】
化合物IIIからXのin vitroの生物活性の試験は、化合物IIIからXが酵素-グルタミニルシクラーゼの阻害剤であり、またそれ故、免疫系の細胞の走化性における化合物IIIからXの効果はグルタミニルシクラーゼの活性の阻害によって媒介される可能性があることを明らかにした。
【0075】
ヒトのグルタミニルシクラーゼの酵素活性における、化合物IからXの効果のin vitro試験
本発明の対象である化合物IからXの効果の試験の間、in vitroのグルタミニルシクラーゼの酵素活性において、組み換え型の細胞間ヒトグルタミニルシクラーゼでの、化合物IからXの直接阻害効果をはじめて発見した。
【0076】
化合物IからXの様々な濃度での、グルタミニルシクラーゼ活性を、25℃で蛍光物質L-グルタミニル2-ナフチルアミド(Gln-bNA)を使用して、試験した(Anal Biochem. 2002 Apr 1;303(1):49-56)。100μLの体積を有する反応混合物には、50μMの蛍光物質;約0.2単位のヒトピログルタミニルアミノペプチダーゼ(1単位は1分当たり1μモルのpGlu-bNAを加水分解する量として定義される)、及びpHが8.0である、50mMのトリスアミノメタン-HCL及び5%のグリセロール中に一定分量の組み換え型細胞間ヒトグルタミニルシクラーゼ(gQC)を含んていた。反応を、反応混合物に化合物IからXで5分間培養された一定量のグルタミニルシクラーゼを添加することによって開始した。
【0077】
【0078】
反応の更なる進行を分光光度的(励起及び発光の波長は320nm及び410nmであった)に観察した。酵素の活性を、放出された2-ナフチルアミド(bNA)の量によって決定され、較正曲線から計算した。IC50値を「阻害剤濃度」-「酵素活性」曲線の非直線の回帰を用いて計算した。参照物質として、グルタミニルシクラーゼの既知の阻害剤-化合物PBD150-を使用した(J Med Chem. 2006 Jan 26;49(2):664-77)。
【0079】
試験の結果として、化合物IからXは0.8から20μMの範囲のグルタミニルシクラーゼの活性を阻害することを立証した(表1参照)。
【0080】
単球の遊走における化合物I及びIIの効果のin vitro試験
In vitroの単球の遊走における化合物I及びIIの効果を、10%の温度非活性化牛胎児血清が添加された、RPMI1640培地に、(2~3)×106細胞/mLの濃度で植えられた細胞株U937を使用して試験した(Biochem J. 2012 Mar 1;442(2):403-12)。約1×107のU937細胞を、化合物I及びIIの異なる濃度(それぞれの化合物で7種の濃度)、37℃で2時間培養し、その後リポ多糖E.Coli(O111:B4)で処理した。上澄み(調整済み培地)を単球の遊走の試験に使用した。
【0081】
U937細胞の新鮮なバッチを、蛍光染料Calcein AMによって7℃で1時間着色した。次に、一定量の着色細胞を、平板BD Falcon(商標) HTS FluoroBlok、光学的に不透明な半透膜によって分離されたセル、の穴の上部に置いた。阻害剤及びリポ多糖での細胞培養の後に得られた、調整された培地を、平板の穴の底部に置いた。平板を2時間37℃で培養し、穴の底部に遊走される細胞の量(阻害剤なしでの試験に対する%)を蛍光分析で決定した。参照物質として、グルタミニルシクラーゼの既知の阻害剤-化合物PBD150-を使用した(J Med Chem. 2006 Jan 26;49(2):664-77)。
【0082】
マイクロモル濃度の範囲で、化合物I及び化合物IIがin vitroの単球の遊走における阻害効果を有するという実験結果を立証した。化合物Iは、1μMから300μMの広い範囲の濃度で、60%近くの効率で、単球の遊走を阻害する。同じ濃度範囲において化合物IIは、50から70%の効率で単球の遊走を阻害する。
【0083】
モルモットの気管支喘息モデルにおけるin vivoの白血球の走化性に対する化合物Iの効果の試験
モルモットにおける気管支ぜんそくの誘発を、標準の手順によって行った(Current Drug Targets. 2008 Jun; 9(6):452-65)。動物を100μg/mlの卵白アルブミン(Sigma)及び100mg/mlの水酸化アルミニウムを含む0.5ml溶液の一回の腹腔注射によって免疫化した。無処理の動物に体積0.5mlの生理食塩水溶液で腹腔注射した。
【0084】
実験の29、30及び31日で、気道の反応性亢進の誘発を、0.1、0.3及び0.5mg/ml(それぞれ29、30及び31日)で濃度を増加させて、卵白アルブミンンの吸入投与によって、行った。吸入を、5分間、又は窒息の明らかな兆候の様子が現れるまで行った(横向きの発生)。32日目に、気管支攣縮の反応を推定して、動物に5分間1mg/mlの卵白アルブミンの挑戦投薬で投与した。
【0085】
試験化合物を、動物に1日1回10日間、胃内に投与し、抗原の挑戦投薬の投与の24時間前に終了した。
【0086】
卵白アルブミンの挑戦投薬の投与の24時間後、気管支肺胞洗浄液(BAL)を動物から採取した。BAL採取を、局所麻酔下で、あらかじめ37℃に温められた5mlの生理食塩水溶液で、シリンジディスペンサーを用い、気管経由で肺を洗浄することによって、行った。
【0087】
気管支肺胞洗浄液において、1μlの洗浄液中の細胞要素の絶対数を、Goryaevカメラを用いて計算した。その後、気管支肺胞洗浄液を10分間200gで遠心分離した。スメアを細胞堆積物から準備し、スメアを更にメタノール中に固定し、肺内の細胞所見を数えるため、Romanowsky-Giemsaによって染色した。
【0088】
気管支肺胞洗浄(BAL)の細胞学の分析により、感度を上げたモルモットのBAL中の細胞要素の多数の増加が明らかになった(
図1)。それ故、モデルは実験動物の気道の炎症反応によって特徴づけられる。それぞれの細胞のタイプの分析により、細胞のほとんどの顕著な流入は、好酸球であることが示された。得られた結果は、文献データを裏付け、模擬炎症がアレルギーであると結論付けることを可能にする。
【0089】
化合物Iの10日間の日々の胃への投与により、気管支肺胞内の空隙に炎症細胞の流入を減少した。化合物Iは試験内(0.14から14mg/kg)の投薬の範囲で治療効果を有し、白血球の総量、及びそれぞれの細胞タイプ:好酸球、好中球、マクロファージの量の両方を減少させた(
図1)。
【0090】
それ故、
図1では、シンボル※は無処理群と比較して、統計的に有意な差(p<0.05);及びシンボル&は対照群と比較して、統計的に有意な差(p<0.05)を指定する。
【0091】
得られた結果は化合物Iが気管支喘息において治療効果を表すと示唆する。
【0092】
非感染性の肺炎症のラットモデルにおける、マクロファージ、好中球、及び好酸球の走化性の化合物Iの効果のin vivo試験
Sephadex-誘発肺気管支炎のラットモデルを標準の手順によって実現した(Int Arch Allergy Immunol. 2011; 154(4):286-94)。ウィスター雄ラットにSephadex G-200(Pharmacia, スウェーデン)の5mg/kgの投薬で、吸入により一回投与した。試験化合物を動物に4回胃内に投与した:Sephadexの投与の24時間前、及び1時間前、及び24時間後及び45時間後。参照薬剤のブデソニドを0.5mg/kgの投薬で吸入により同様の方法で投与した。Sephadexでの吸入の48時間後、気管支肺胞洗浄液の摂取を行った。洗浄液において、白血球の総数を評価し、白血球処方を決定した。
【0093】
気管支肺胞内洗浄液の分析により、ラットへのsephadex G-200の一回の吸引投与が、肺内に白血球の著しい流入を引き起こすことを示した。すべての細胞タイプの量が無処理群と比較して対照群において増加した(表2)。
【0094】
【0095】
ラットへの化合物Iの胃内の投与により、BAL中の好中球及び好酸球の含有量が、無処理動物の濃度まで減少した。得られた結果は、化合物Iは低い気道の炎症、特に気管支炎において、治療効果を有することを示唆する。
【0096】
たばこの煙抽出により誘発された非感染性の肺炎のモデルにおける化合物Iの活性試験
マウスにおいて非感染性の肺炎の誘発を、標準の手順によって行った(Exp Lung Res. 2013 Feb;39(1):18-31)。雄のBalb/cマウスにたばこの煙抽出物(CSE,0.45ml/20mg)を0日目、11日目、15日目、17日目、19日目及び22日目に、腹腔内に投与した。CSEを下記により調製した:5本のたばこを燃焼し、真空ポンプを用い、煙を粒子を取り除くためにろ過し、ホスフェート生理食塩水緩衝液を含む容器に収集した。化合物Iを、7日目から27日目まで毎日、1日1回胃内に投与した。安楽死が28日目に行われた。右肺葉を10%の中性ホルマリン溶液中で固定し、キシレン濃度を高めたアルコールを通過させ、標準手順によってパラフィン中に組み込んだ。脱パラフィンの5μmのせん断層を、ヘマトキシリン-エオシンで染色し、組織分析を行った。
【0097】
それぞれの病変を5点の尺度により評価した:1点-炎症浸潤が、試験での組織標本の面積の0から20%を占める、2点-炎症浸潤が、試験での組織標本の面積の21から40%を占める、3点-炎症浸潤が、試験での組織標本の面積の41から60%を占める、4点-炎症浸潤が、試験での組織標本の面積の61から80%を占める、5点-炎症浸潤が、試験での組織標本の面積の81から100%を占める。肺胞の総数に対する損傷した肺胞の割合として、肺胞破壊指数(DI)も計算した。
【0098】
試験結果は、マウスへのたばこの煙抽出物の多数の腹腔内の投与が、血管周囲炎、気管支周囲炎、肺胞炎及び間質性肺炎の形成を誘発することを示した(表3)。
【0099】
化合物Iの胃内への投与は、血管周囲炎、気管支周囲炎、肺胞炎及び間質性肺炎の進行を有意に減少させた(表3)。得られた結果は、化合物Iが血管周囲炎及び肺胞炎の場合、治療効果を有すると結論づけることを可能にする。
【0100】
【0101】
肺気腫のマウスのモデルにおける化合物Iの活性のin vivo試験
炎症及び肺気腫をブタの膵エラスターゼの一回の気管内注射によって引き起こした。エラスターゼを、0.9%NaCl30μl中、0.6U/マウスの投薬で気管内に一度投与した。ペントバルビタールを30mg/kgの投薬で、手術中麻酔のために腹腔内に使用した。手術部位を70%のエタノール溶液で処理し、体毛の被覆から解放した。
【0102】
首の正中線に従って、皮膚、皮下組織、及び首の特有の筋膜を切断した。筋肉を、気管の前面側に、平滑末端化した切断組織法によって動かした。
【0103】
ブタの膵エラスターゼの注射を、吸入の間、風の流れに沿って、ハミルトン注射器を用い、行った。創傷縫合の後、手術部位を殺菌処理した。エラスターゼの投与を、実験の0日目として扱った。
【0104】
化合物Iを、実験の8日目から21日目の、1日1回毎日0.3mg/kgの投薬で、投与した。21日目に、動物をCO2容器内で安楽死させ、肺を分離した。左肺の肺組織中、肺気腫の動態及び重症度を評価するため、組織の標本を作った。これを行うため、肺を10%の中性ホルマリン溶液中に固定し、その後、標準手順により、パラフィン中に組み込んだ。5μmの厚みを有する肺突、中肺野、下肺野の標本が、脱パラフィンせん断から得られ、標準手順によって、ヘマトキシリン及びエオシンで染色した。次に肺突、中肺野及び下肺野の写真を作成した。コンピューターのグラフィックプロセスツールを用い、拡張気腫の肺組織(標準組織の%)の局在化及び面積を調査し、血管及び気管支を計算から排除した(Int J Biomed Imaging. 2012;2012:734734; Front Physiol. 2015 May 12;6:14)。
【0105】
マウスの肺すべての領域にエラスターゼを投与した後、21日目での組織試験では、微小循環チャンネルの血管及び槽間中隔の毛細血管の適度に目立った充血が明らかになった。更に、エラスターゼは、リンパマクロファージの浸潤、及び間質組織の炎症浸潤により、肺胞壁の肥厚をもたらす。それぞれの肺胞の内腔はマクロファージとリンパ球で満たされてもいる。肺実質中の細気管支、肺胞管および肺胞の、弾性繊維状の損傷剤の効果の結果として、肺胞の膨満及び肺胞中核の破壊が観察され、拡散した肺気腫が進行した。標本の分析は、実験の21日目において、左肺組織のかなりの部分が、槽間中隔の破壊での拡張気腫性肺胞でふさがっていた。肺気腫はすべての肺野で局在化していた。多くの目立った病変は下肺野で観察された(表4)。
【0106】
【0107】
化合物Iの投与により、肺実質の炎症浸潤の強度、及び微小循環チャンネルの血管及び槽間中隔の毛細血管の適度に目立った充血が減少し、病態対照群と比較して、拡張気腫性肺胞の相対面積が減少した(表4)。得られたデータは、化合物IIが、肺気腫の場合において、治療効果を有すると結論付ける見地を提供する。
【0108】
モルモットのCOPDモデルにおける化合物Iの治療活性の試験
試験を雄のモルモットで行った。慢性閉塞性の肺疾患を、E. coli細胞壁リポ多糖(LPS)及びたばこの煙の抽出物(TSE)の気管内投与によって引き起こした(Biol Pharm Bull. 2009 Sep;32(9):1559-64)。TSEをHi-Liteたばこ(日本)(たばこ1本あたりの処方:タール17mg/本、ニコチン1.4mg/本)から調製した。抽出調製の前に、たばこのフィルターを取り除き、フィルター付きのたばこの長さが80mmであり、フィルターが除かれ-55mmである。抽出を、火のついたたばこの煙を通常の速度で、真空ポンプを用い、PBSを通じて吸引することにより行った(40ml/40本)。1本のたばこの燃焼時間は180秒であった。粒子を取り除くため、得られた抽出物を細孔サイズ45nmの細菌ろ過機でろ過した。TSEをモルモットに1日1回、1~4、6~9、11~14、16~19時間で毎日吸引させた(0.3ml/分、40分)。LPSをモルモットに1日1回、5日目、10日目及び15日目に吸引させた(25μg/ml、0.3ml/分、1時間)。TSEの最後の吸引の前、最後のTSE吸引の直後、及び最後のTSE吸引の1.5時間後、呼吸器の機能を評価した(15分間)。呼吸器の機能の評価の直後に、気管支肺胞洗浄液(BAL)を収集した。BAL捕集を、麻酔下で、シリンジディスペンサーを用い、37℃に温めた5mlの生理食塩水で、気管経由で、肺を洗浄することによって行った。
【0109】
気管支肺胞洗浄液中において、1μlの洗浄液中の細胞要素の絶対数(サイトーシス)をGoryaevカメラを用いて計算した。その後、BALを10分間200gで遠心分離した。スメアを細胞堆積物から準備し、スメアを更にメタノール中に固定し、肺内の細胞所見を数えるため、Romanowsky-Giemsaによって染色した。
【0110】
化合物Iを動物に1日1回、試験の10から19日目に毎日胃内に投与した(最後の投与-最後のTSE吸引の1時間前)。仮病態群はTSE及びLPSに替えて生理食塩水によって吸引させた。試験物質の代わりに対照動物に相当する体積の溶媒を投与した。
【0111】
行った試験は、COPDモデルにおいて、化合物Iは、モルモットの気管支肺胞の空隙に炎症細胞の流入を減らすことを示した。化合物Iは、好中球、マクロファージ及び好酸球の流入を減少させることに最も顕著である(表5)。
【0112】
【0113】
得られた結果をまとめると、化合物IIは、COPDの場合において、著しい治療効果を有すると結論づけることが可能である。
【0114】
アレルギー性鼻炎のモルモットモデルにおける化合物Iの活性のin vivo試験
アレルギー性鼻炎のモデルを、標準方法によって実現した(Int Immunopharmacol. 2013 Sep;17(1):18-25)。モルモット(250から300グラム)を4回(0日目、7日目、14日目及び21日目)で生理食塩水に希釈及び懸濁された卵白アルブミン(100μg/匹)と水酸化アルミニウム(5mg/匹)の混合物の腹腔内注射によって免疫化した。試験の28日目に、卵白アルブミン溶液(60mg/ml)を、動物にそれぞれの鼻腔に20μlを鼻腔内投与した。35日目に、背中の皮膚部分を予備的に剃ってきれいにした後に、動物に卵白アルブミン溶液(200μg/ml、25μl)を皮下注射した。感作の存在の確認は、注射部位での浮腫及び赤味形成であった。試験の42日目に、卵白アルブミン溶液の鼻腔内投与(60mg/ml、20μl/鼻腔)を行った。特にアレルギー炎症の形成を照合するため、仮免疫化動物群を形成した:0日目、7日目及び21日目に、モルモットに水酸化アルミニウム溶液(5mg/匹);28日目と35日目-生理食塩水、42日目-卵白アルブミン(60mg/ml、20μl/鼻腔)を投与した。
【0115】
化合物I、III、IV(0.14、1.4mg/kg)を動物に一度、卵白アルブミンの最後の鼻腔内の投与の3時間前に胃内に投与した。卵白アルブミンの最後の投与の後2時間、鼻炎の臨床症状を評価した:くしゃみと鼻のひっかきの数が数えられた。
【0116】
調査結果を表6から8に記載した。
【0117】
動物への卵白アルブミンの最後の鼻腔内投与の後の2時間、アレルギー性鼻炎の臨床症状の報告は実験動物において、くしゃみ及び鼻のひっかきの数において顕著な上昇がみられ、アレルギー性鼻炎の実行モデルの正確さを示唆した。
【0118】
【0119】
【0120】
【0121】
モルモットへの化合物I、III、IVの胃内投与により、鼻炎の臨床症状の数が顕著に減少した。得られた結果は、化合物I、III、IVがアレルギー性鼻炎の場合において、顕著な治療効果を有すること結論づける見地を提供する。
【0122】
ホルマリン-誘発の急性副鼻腔炎のラットモデルにおける化合物Iの活性のin vivo試験
急性副鼻腔炎の誘発を、雄のウィスターラットにおいて、各々の鼻腔に7.5%のホルマリンの20μlの鼻腔投与によって行った。化合物Iを1日1回1.8mg/kg及び18mg/kgの投薬で毎日投与し、ホルマリンの投与24時後に開始し、最後の投与は7日目であった。デキサメタゾン(0.6mg/kg)を同じ方法で投与した。8日目に、鼻腔洗浄液を収集した。鼻腔洗浄液中、白血球の総量を評価し、白血球処方を決定した。
【0123】
鼻腔洗浄液の分析は、急性副鼻腔炎が鼻腔内に白血球の顕著な流入によって付随して起こることを示した。最大増加はマクロファージの量に関して顕著であった(表9)。
【0124】
ラットへの試験化合物の胃内投与により、鼻腔洗浄液のマクロファージ及び好中球の含有量が無処理動物の濃度まで減少した。効果の強度に関しては、化合物Iはデキサメタゾンと同等であった。(表9)
【0125】
【0126】
それ故、得られた結果は化合物Iが副鼻腔炎の場合において、顕著な治療効果を有すると示した。
【0127】
非感染性の咽頭炎のラットモデルにおける化合物Iの活性のin vivo試験
非感染性の咽頭炎モデルを雄のウィスターラットで実行した。ラットを、チオペントンナトリウムで麻酔し(50mg/kg、腹腔内)、RenaSil(商標)シリコーンゴムチューブ(SIL 037, Braintree Scientific, Inc., Braintree, MA)がついたカニューレを、ヘパリン処理された生理食塩水溶液(40U/ml)を用い、外頸静脈中に挿入した。
【0128】
Evans Blue染料(Evans Blue, EB)(30mg/kg)を、カテーテルですべての動物の静脈内に投与した;EB染料を投与した10分後に、30%ホルマリン溶液を、下記の様に咽頭粘膜の表面に塗布した:舌をわずかに引っ張りだし、平滑化したピンセットで優しく口内の咽頭部位を深く広げ、無菌のコットンパッドを用い、生成溶液(50μl)を、塗布される各々の時間5秒ごとに塗布した。無処理群においては、病理生態学的溶液を使用した。
【0129】
30%のホルマリン溶液の塗布の60分後に、動物を失血によって安楽死させた。それぞれのラットの頭部を、血管内のEB染料を取り除くため、ヘパリン処理された生理食塩水溶液(40U/ml)で灌流した。
【0130】
炎症の程度を、Evans blue (EB)染料の滲出試験によって評価した。筋肉組織からのEB染料を、55℃で24時間ホルムアミドへ抽出し、吸光度を620nmで分光光度的に決定した。織物中の染料の量をEvans blue染料の検量線を用いて計算し、湿った織物の質量グラムに対する染料のマイクログラムで表した(μg/g)。
【0131】
化合物Iを6及び18mg/kgの投薬でホルムアルデヒドを塗布する24時間及び1時間前に胃内に投与した。30%の濃度のホルムアルデヒド溶液を、対照群に投与した。デキサミタゾン及びジクロフェナクを比較薬剤として使用した。デキサメタゾン(0.6mg/kg)及びジクロフェナク(8mg/kg)をホルムアルデヒド塗布の24時間及び1時間前に胃内に投与した。試験結果を表10に記載した。
【0132】
表9から、ホルムアルデヒドの投与(対照)は、組織内で染料濃度の著しい上昇をもたらすことが明らかであり、それはラット中の咽頭の炎症-咽頭炎を示唆することが明らかである。試験化合物は、ホルムアルデヒドにより引き起こされる咽頭炎に対して、著しい保護を示した。化合物Iは試験投薬(6及び18mg/kg)における効果を有し、-組織内の染料濃度が、対照試験と比較してそれぞれ2.8及び6.4倍減少した。デキサメタゾン(0.6mg/kg)の投与も、炎症における減少をもたらした:染料の濃度は2.1倍減少した。ジクロフェナクは効果がなかった。
【0133】
それ故、得られた結果は、化合物Iが、咽頭炎の場合に、顕著な抗炎症作用を有することを示した。
【0134】
【0135】
ブレオマイシン誘発の肺損傷のモデルにおける化合物IIの活性試験
ブレオマイシン誘発の肺損傷のモデルを標準方法で実行した(Am J Respir Cell Mol Biol. 2009 V. 41(1). P. 50-58)。ブレオマイシン溶液を雄のBalb/cに一回気管内に投与した(50μlの体積中4単位/kg)。化合物IIをC57BL/6マウスに胃内に2回投与した:ブレオマイシンの投与の1時間前及びブレオマイシン投与の12時間後。気管支肺胞洗浄液をブレオマイシンの投与の24時間後に収集した。洗浄液中に、白血球の総量を評価し、及び白血球処方を決定した。
【0136】
試験の結果は、化合物IIの胃内投与が、気管支肺胞の空隙中に炎症細胞の流入を減少させることを示した(式11)。これは化合物IIが肺損傷における抗炎症効果を有することを結論付ける見地を提供する。
【0137】
【0138】
リポ多糖誘発の急性肺損傷のラットモデルにおける化合物IVの活性試験
リポ多糖誘発の急性肺損傷のモデルを標準方法を用いて実行した(Lin Tong, Jing Bi, Xiaodan Zhu, Guifang Wang, Jie Liu, Linyi Rong, Qin Wang, Nuo Xu, Ming Zhong, Duming Zhu, Yuanlin Song, Chunxue Bai. Keratinocyte growth factor-2 is protective inlipopolysaccharide-induced acute lung injury in rats // Respiratory Physiology & Neurobiology. 2014. V. 201. P. 7-14)。生理食塩水溶液で調製しリポ多糖(LPS)を雌のウィスターラットに、気管内に投与した。仮病態群の動物に、同じ体積で生理食塩水溶液を注射した。気管支肺胞内洗浄液(BAL)をLPDの投与の48時間後に動物から収集した。BAL捕集を、麻酔下で、37℃に温めた5mlの生理食塩水溶液で、気管経由で、シリンジディスペンサーを用い、肺を洗浄することによって行った。
【0139】
気管支肺胞内洗浄液中における、洗浄液の1μl中の細胞要素の絶対数を、Goryaevカメラを用いて計算した。その後、気管支肺胞内洗浄液を10分間200gで遠心分離した。スメアを細胞堆積物から準備し、スメアを更にメタノール中に固定し、肺内の細胞所見を数えるため、Romanowsky-Giemsaによって染色した。
【0140】
化合物IVをラットに、LPS投与の1時間前、及びLPS投与の24時間後の2回、胃内に投与した。
【0141】
試験結果は、化合物IVの胃内の投与は、肺胞内空隙への炎症細胞の流入を減少させることを示した(表12)。これは化合物IVが肺損傷の場合において抗炎症効果を有すると結論付ける見地を提供する。
【0142】
【0143】
発熱反応のラットモデルにおける化合物II,化合物IV、化合物VI、化合物Iの活性試験
発熱反応のモデルを標準方法を用いて実行した(J Neurosci Methods. 2005. V. 147. P. 29-35)。ウィスターラットに、パン用イーストの20%懸濁液を皮下に注射した(12ml/kg)。化合物I、II、IV、VI、VIIIを、イーストの投与の14時間後に、一度胃内に投与した。直腸温度を発熱物質の投与の前、及び発熱反応進行した最も高い点、投与の19時間後に、電気体温計で測定した。2から7の実験で、化合物の抗発熱効果を試験した。
【0144】
試験の結果は、調査化合物の胃内の投与が、ラットの体の直腸温度の増加を減少させるを示した(表13-17)。得られたデータは化合物I、II、IV、VI、VIIIが抗発熱効果を有すると結論付けることを可能にした。
【0145】
【0146】
【0147】
【0148】
【0149】
【0150】
腹膜の化学刺激の方法による特定の疼痛反応のモデルにおける化合物I及び化合物IVの活性試験(「腹部収縮」試験)
腹膜の化学刺激の方法による、特定の疼痛反応モデル(「腹部収縮」試験)を標準方法により行った。「腹部収縮」試験を行うため、Balb/cマウスに動物の体重1キログラム当たりに1%の酢酸10mlで腹腔内に投与した。化合物I、IV、VII、IX、Xを、酢酸の投与の1時間前に、一度胃内に投与した。収縮量(後四半身を伸ばしてアーチ状になるのに伴って起こる、腹筋の痙攣性の単収縮)を酢酸投与の15分後に評価した。
【0151】
試験結果は、化合物I、IV、VII、IX、Xの胃内の投与が、マウスにおいて、酢酸の腹腔内投与によって引き起こされる、収縮の量を著しく減少させることを示した(表18、19)得られた結果は、化合物I、IV、VII、IX、Xが、疼痛症候群の場合において、著しい治療効果を有すると結論付けることを可能にした。
【0152】
【0153】
【0154】
熱疼痛刺激「ホットプレート」のモデルにおける化合物Iの活性試験
熱疼痛刺激「ホットプレート」のモデルを標準手順により行った(Barrot M. Tests and models of nociception and pain in rodents. Neuroscience. 2012 Jun 1;211:39-50.)。化合物I及び化合物IIをBalb/cマウスに、一度胃内に投与した。調剤の投与の1時間後に、「ホットプレート」試験を行った。「ホットプレート」試験を行うため、マウスを、温度(+55±1℃)が保たれた、ホットプレートに置いた。
【0155】
マウスにおいて、疼痛反応の初めの症状(足舐め、ジャンプ)の時間を記録し、各グループで、疼痛感度の閾値(TPS,秒)の平均潜時を計算した。
【0156】
試験の結果は、試験中の化合物の胃内の投与は、「ホットプレート」テストにおいて、マウスの疼痛感度の閾値を1.5倍増加させることを示した。化合物Iの薬理効果は少なくとも24時間持続した(表12)。得られたデータは、化合物I及び化合物IIが、疼痛症候群の場合において、著しい鎮痛効果を有することを結論付けることを可能にする。
【0157】
【0158】
db/dbマウスの自然の肥満のモデルにおいて化合物IIの活性の試験
自然の肥満モデルに、レプチンレセプター-Leprdb- (db)劣性遺伝子を保有する(第8連鎖群、第4染色体)db/dbマウスを使用した(Cardiovasc. Diabetol. 2012. V.11. P. 139-147; Biochem. Biophys. Res. Commun. 2016. V. 472. P. 603-609)。
【0159】
化合物IIを、動物の生育7週目から開始して、胃内に投与した。毎週、生育6から12週に、動物の体重を測定した。
【0160】
試験の結果は肥満モデルにおいて、マウスへの7.5mg/kgの投薬での、化合物IIの胃内投与は、db/dbマウスの体重増加を減少させる(表21)ことを示した。
【0161】
得られた結果は、肥満の場合において、化合物IIの治療効果を示唆する。治療効果は、早ければ、化合物IIの使用4週間で始まる。
【0162】
メタボリックシンドロームのモデルにおける化合物IIの活性の試験
メタボリックシンドロームモデルを、標準方法に従って、雄のウィスターラットに16週間、高脂肪食(「カフェテリア食」)を続けることによって実行した(Rothwell N.J., Stock M.J., Warwick B.P. Energy balance and brown fat activity in rats fed cafeteria diets or high-fat, semisynthetic diets at several levels of intake // Metabolism. 1985. Vol. 34(5). P. 474-480)。
【0163】
食事の10週目から16週目に、化合物IIを、実験群の動物に、1日1回胃内に投与した。試験化合物の活性の評価を、毎週の体重測定を用いて行った。
【0164】
試験の結果は、化合物IIの胃内への投与は、動物の体重増加を減少させることを示した。薬理効果は治療の5週間後から現れ始める(表22)。
【0165】
それ故、メタボリックシンドロームモデルにおいて、化合物IIは動物の肥満を減少させる。
【0166】
【0167】
【0168】
乾癬のマウスモデルにおける化合物I及び化合物IIの活性の試験
マウスにおいて乾癬の誘発を標準方法により行った(European Journal of Pharmacology. 2015. V. 756. P. 43-51)。アルダラクリーム(5%イミキモド)を雌のBalb/cマウスの右耳の内側に、1日1回7日間(0日目から6日目)、30mg/匹の量で、塗布した。ワセリンを無処理動物に塗布した。化合物I、化合物II及び比較薬(シクロスポリン)を動物に、1日1回6日間(0日目から5日目)胃内に投与した。安楽死をアルダラクリームの最後の塗布の24時間後(6日目)に行った。0、2、3、4、5日目の朝に毎日、次のアルダラクリームの塗布の前、及び安楽死の前に右耳の厚さを測定した。
【0169】
乾癬の重症度の評価を、時間と共に、発症した耳の厚さの増加の測定によって、行った。
【0170】
試験の結果を表23に記載した。
【0171】
【0172】
試験の結果は、乾癬のマウスモデルにおける、化合物I及び化合物IIの胃内投与により、動物の発症した耳の厚さの増加が減少することを示した。これは乾癬の場合において、化合物I及びIIの治療効果を示す。
【0173】
それ故、乾癬のマウスモデルにおいて、化合物I及びIIは著しい治療効果を有する。
【0174】
アトピー性皮膚炎のマウスモデルにおける化合物I及び化合物IIの活性の試験
アトピー性皮膚炎のモデルを標準方法により実行した(J Ginseng Res. 2011. Vol.4. - P. 479-86)。アトピー性皮膚炎は、雄のbalb/cマウスでモデルを作った。1-クロロ-2,4-ジニトロベンゼン(DNHB)を接触性皮膚炎の誘発剤として使用した。実験の0及び12日目に、DNHBの2%溶液100μlを、体を敏感にさせるため、動物の前剃毛した背中部分に塗布した。17日目に、DNHBの2%アルコール溶液の20μlを1時間の間隔をあけて2回、右の「実験」耳に塗布した。DNHB溶液に替えて、エタノールを、無処理動物に塗布した。仮免疫付与群における動物を、エタノールで感度を上げた。化合物I及び化合物IIを、1日1回8日目から17日目まで胃内に投与した。18日目に、動物を解体した。安楽死の後、浮腫の程度を評価するため、「実験」及び「対照」の耳の質量を決定した。「実験」及び「対照」の耳の間の質量の違いの割合を表す反応指数(RI)を計算した。
【0175】
試験の結果を表24に記載した。
【0176】
【0177】
試験結果は、アトピー性皮膚炎のマウスモデルにおける、化合物I及び化合物IIの胃内投与は、病態プロセスの反応指数を減少させることを示した。これは、アトピー性皮膚炎において、化合物I及びIIの治療効果を示す。
【0178】
それ故、アトピー性皮膚炎モデルのマウスモデルにおいて、化合物I及びIIは著しい治療効果を有する。
【0179】
カラゲナン空気嚢でのマクロファージの走化性における化合物IIの効果のin vivo試験
研究の前臨床の段階で、免疫系の細胞の活性において、薬の効能を評価するため、通例、急性炎症プロセスの様々なモデルが使用される。今日、多くの高い頻度で使用されたモデルは、病理プロセスが限られた空洞中で進行するものである。これらのモデルは、免疫系の細胞の異常活性が、特定の空洞で局在化する、病気(腹膜炎、胆管炎、関節炎)をかなり近くシミュレートすることを可能にする(J Pharmacol Toxicol Methods. 1994 Nov;32(3):139-47)。カラゲナン空気嚢のモデルは、単離された空洞に局在化した、免疫系の細胞の異常活性と関連する、病理プロセスを試験するため、しばしば研究の前臨床段階で使用される。このモデルにおいて、単離された嚢は、マウス又はラットの背中の嚢内の領域に、空気の皮下注射により形成される。背中部分への空気の皮下注射は、数日間で嚢の細胞株において、形態変化をもたらす。嚢は主にマクロファージ及び線維芽細胞からなり、十分に血管形成されている。空気嚢の形成の時点から6日目に、λ-カラゲナン溶液が空気嚢の空洞に投与される。カラゲナンは、嚢内領域のマクロファージ株の表面の、TLR4レセプターと相互作用し、それらの活性並びに、その後のケモカイン及び他のメディエーターの合成(IL-1;IL-6;TNFα,IL-8,プロスタラグンジン,及びロイコトリエン,NO)並びに嚢内に免疫系の細胞の遊走も引き起こす。
【0180】
化合物IIの活性の試験を、標準方法により、雄のBalb/cマウスで行った(Curr Protoc Pharmacol. 2012 Mar;Chapter 5:Unit5.6)。化合物IIを、実験群に3mg/kgの投薬で、カラゲナンの投薬の直前及び、その後10から12時間ごとに、胃内に投与した。最後の投与は解体の12時間前であった。
【0181】
CO2の吸入による安楽死を、λ-カラゲナンの注射の48時間後に、動物のそれぞれの群に関して行った。安楽死の直後に、室温の5.4mMのEDTAを含む1mlの生理食塩水溶液を、滅菌シリンジ25Gを用いて、嚢内に導入した。空気嚢の領域の優しいマッサージの後、矢状切開を嚢を横切って行い、浸出液を15mlの滅菌バイアルにディスペンサーで収集した。浸出液中の、洗浄液1μl当たりの細胞要素(サイトーシス)の絶対数をGoryaev容器を用いて決定した。その後、浸出液を10分間200gで遠心分離した。スメアを細胞沈渣から準備し、スメアを、その後、メタノール中に固定し(5分)、Romanowsky-Giemsaによって染色した(40分20から22℃)。顕微鏡Olympus bx51(100倍)を使用して、規定通りにスメアの、マクロファージの数を数えた。細胞計算は100断片までであった。
【0182】
行われた試験は、化合物IIの使用が、白血球及びマクロファージの流入を10倍(無処理対照の濃度まで)減少させることを示した(表25)。それ故、化合物IIは、クローン病、潰瘍性大腸炎、腹膜炎、及び関節炎などの、幅広い疾患の治療する潜在力を有する可能性がある。
【0183】
【0184】
チオグリコレート腹膜炎のモデルのマクロファージ走化性における化合物IIの効果のin vivo試験
試験を、標準方法を用いて、雄のbalb/cマウスで行った(J Leukoc Biol. 2009 Aug;86(2):361-70)。対照群のマウスに、1か月間貯蔵された3%チオグリコリック媒体の2mlを腹腔内に投与した。無処理の動物に、2mlの生理食塩水溶液を腹腔内に注入した。化合物IIを、実験群の動物に1mg/kgの投薬で、チオグリコレートの投薬の1時間前、24及び48時間後に胃内に投与した。72時間後、動物を、CO2容器で安楽死させ、腹膜部分を70%のアルコールで湿らせ、皮膚を慎重に腹腔上に切り、0.1%のEDTAを含む、冷たいホスフェート-生理食塩水緩衝液5mlをシリンジで腹腔内に注射した。腹腔を優しくマッサージした後、浸出液をテストチューブにシリンジで収集し、収集した浸出液の体積を決定した。
【0185】
浸出液中、洗浄液の1μl当たりの細胞要素の絶対数(サイトーシス)をGoryaev容器を用いて決定した。浸出液を10分間200gで遠心分離した。スメアを細胞沈渣から準備し、スメアを、その後、メタノール中に固定し(5分)、Romanowsky-Giemsaによって染色した(40分20から22℃)。顕微鏡Olympus bx51(100倍)を使用して、規定通りにスメアの、単球/マクロファージの数を数えた。細胞計算は100断片までであった。
【0186】
行われた試験は、化合物IIの使用が、3%のチオグリコリック媒体によって誘発された、ラットの腹腔へのマクロファージの流入を減少させ、及びチオグリコリック媒体の投与によって誘発された病態の重症度を減少させる(表26)。それ故、化合物IIは、腹膜炎、クローン病及び潰瘍性大腸炎を治療する潜在力を有する可能性がある。
【0187】
【0188】
完全フロイントアジュバントの投与により誘発されるアジュバント関節炎のモデルにおける化合物II及び化合物Iの活性の調査
アジュバント関節炎のモデルを、標準方法により、非近交系の雄のラットで実行した(Chem Pharm Bull (Tokyo). 2018. V.66(4). P.410-415)。0日目から5日目に、完全フロイントアジュバント(Freund's Adjuvant, Complete (Pierce))を、動物に、動物1匹当たり100μlで、右後肢の足底下(subplantarly)に投与した。右後肢(発症)及び左後肢(反対側)の体積を、プレチスモメーター(Ugo Basel)を用いて、0日目、14日目、16日目、18日目、21日目、25日目、28日目及び30日目に測定した。我々は、発症肢の体積変化によって、初期(炎症)反応を推定し、反対肢の体積変化によって、二次的な(免疫)反応を推定した。化合物IIを、1日1回、試験の14番目から30番目に、毎日胃内に投与した。
【0189】
試験の結果を表27及び28に記載する。
【0190】
行われた試験は、投与された化合物IIの使用が、発症肢及び反対肢の両方の体積増加を減少させることを示した。これは化合物IIが、抗炎症効果及び免疫向性の効果、両方を有すると結論づけることを可能にする。それ故、化合物IIは、リウマチ関節炎、及び他の種類の関節炎、及び関節症を治療する、高い治療潜在力を有する。
【0191】
【0192】
【0193】
カラゲナン浮腫のモデルにおける化合物IIの活性の試験
免疫系の機能状態における化合物IIの効果を評価するため、カラゲナン誘発のラットの肢の浮腫のモデルを使用した。実験を、250から270gの重量の、雄の白い非線形のラットで行った。ラットでの肢の急性炎症を、右肢に、1.5%のカラゲナン溶液0.1mlの足底内の投与(皮下)によって引き起こした。試験の化合物を、カラゲナン投与の1時間前に、胃内に投与した。化合物IIの効果及び対照基質(ジクロフェナク)を、無処理の左肢と比較して、肢の浮腫の減少程度によって評価した。肢の体積を、化合物IIの投与前、及びカラゲナンの投与の2時間後に、評価した。
【0194】
試験の結果を表29に記載する。
【0195】
【0196】
本結果から、化合物IIは肢の浮腫の成長を直接阻害し、免疫系の細胞の活性と関連する、幅広い疾患の治療に、使用され得ることが明らかである。
【0197】
糖尿病性腎症のラットモデルにおける化合物IIの活性の試験
糖尿病性腎症のラットモデルを、動物を高脂肪食事の摂取の状態を長く行うこと、及び30mg/kgの投薬で、ストレプトゾトシンの1倍量又は2倍量の腹腔内投与によって誘発した(Int J Clin Exp Med. 2015 Apr 15;8(4):6388-96)。
【0198】
動物が、16週間高脂肪食に保たれ、9週目にストレプトゾトシンが30mg/の投薬で腹腔内に2回(2日連続)投与された。ストレプトゾトシンの投与の7日後に、化合物IIの投与が始まった。物質を1日1回、50mg/kgの投薬で胃内に毎日投与した。
【0199】
試験の10週目から始めた、化合物IIの胃内投与は、実験動物の尿中の1日のタンパク質含有量を、無処理対照の水準まで減少させた(表30)。その結果は、化合物IIが、糖尿病性腎症の場合における、治療効果を有すると結論付けることを可能にする。
【0200】
【0201】
本発明は、開示された実施態様に関して記載したが、詳細に記載された特定の実験が、本発明を説明するのみのために開示され、任意の方法で本発明の範囲を、制限するとみなされないことが当業者に明らかである。本発明の本質から逸脱することなく、様々な変化を実行することが可能であることは明らかである。