(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023071755
(43)【公開日】2023-05-23
(54)【発明の名称】安定化された抗体溶液
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20230516BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20230516BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20230516BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20230516BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20230516BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20230516BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20230516BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20230516BHJP
A61K 47/14 20170101ALI20230516BHJP
【FI】
A61K39/395 M
A61K39/395 U
A61K39/395 T
A61K39/395 P
A61K39/395 N
A61K9/08
A61K47/10
A61K47/18
A61K47/22
A61K47/12
A61K47/02
A61K47/26
A61K47/14
【審査請求】有
【請求項の数】24
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023022283
(22)【出願日】2023-02-16
(62)【分割の表示】P 2019546176の分割
【原出願日】2018-02-23
(31)【優先権主張番号】1703062.8
(32)【優先日】2017-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】519111280
【氏名又は名称】アレコル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】ジャン ジェゼク
(72)【発明者】
【氏名】デビッド ジェリング
(57)【要約】 (修正有)
【課題】治療用モノクローナル抗体タンパク質の水性溶液製剤に関し、前記製剤の貯蔵時における前記抗体タンパク質の構造的分解を抑制することができる、新規安定化製剤、及び安定化する方法を提供する。
【解決手段】モノクローナル抗体である抗体タンパク質であって、前記抗体タンパク質が10~200mg/mlの濃度で存在するIgG免疫グロブリンである、前記抗体タンパク質、及び(i)0.1~10mMの濃度で存在するEDTAであるキレート剤と(ii)100~500mMの濃度で存在する、グリセロール及び1,2-プロパンジオールから選択されるC3ポリオールと(iii)10~2000μg/mLの濃度で存在する非イオン性界面活性剤と(iv)緩衝剤との安定化混合物を含む、水性溶液とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗体タンパク質と、(i)多価陰イオンであるキレート剤;及び(ii)C3ポリオールの安定化
混合物とを含む、水性溶液。
【請求項2】
水性溶液中の抗体タンパク質を貯蔵に対して安定化する方法であって、該溶液に、(i)
多価陰イオンであるキレート剤;及び(ii)C3ポリオールの混合物を添加する工程を含む、
前記方法。
【請求項3】
水性溶液中の抗体タンパク質を貯蔵に対して安定化するための、(i)多価陰イオンであ
るキレート剤;及び(ii)C3ポリオールの混合物の使用。
【請求項4】
前記キレート剤が4つのイオン中心を有するキレートイオンである、請求項1記載の水性
溶液、請求項2記載の方法、又は請求項3記載の使用。
【請求項5】
前記多価陰イオンであるキレート剤がEDTAである、請求項1~4のいずれか一項記載の水
性溶液、方法、又は使用。
【請求項6】
前記多価陰イオンであるキレート剤が、約0.1mM~約50mM、例えば、約0.1mM~約20mM、
例えば、約0.1mM~約10mMの濃度で存在する、請求項1~5のいずれか一項記載の水性溶液
、方法、又は使用。
【請求項7】
前記C3ポリオールが1,2-プロパンジオールである、請求項1~6のいずれか一項記載の水
性溶液、方法、又は使用。
【請求項8】
前記C3ポリオールがグリセロールである、請求項1~6のいずれか一項記載の水性溶液、
方法、又は使用。
【請求項9】
前記C3ポリオールが1,2-プロパンジオールとグリセロールの混合物である、請求項1~6
のいずれか一項記載の水性溶液、方法、又は使用。
【請求項10】
前記C3ポリオールが、約100mM~約500mM、例えば、約150mM~約400mM、又は約150mM~
約300mMの濃度で存在する、請求項1~9のいずれか一項記載の水性溶液、方法、又は使用
。
【請求項11】
前記抗体タンパク質が治療的抗体タンパク質である、請求項1~10のいずれか一項記載
の水性溶液、方法、又は使用。
【請求項12】
前記抗体タンパク質が、抗体、抗体断片、活性部分にコンジュゲートされた抗体、1以
上の抗体断片を含む融合タンパク質、又は前述のもののいずれかの誘導体である、請求項
1~11のいずれか一項記載の水性溶液、方法、又は使用。
【請求項13】
前記抗体タンパク質がモノクローナル抗体である、請求項12記載の水性溶液、方法、又
は使用。
【請求項14】
前記モノクローナル抗体が、マウス抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、又はヒト抗体であ
る、請求項13記載の水性溶液、方法、又は使用。
【請求項15】
前記モノクローナル抗体が、トラスツズマブ、リツキシマブ、ベバシズマブ、セツキシ
マブ、及びイピリムマブから選択される、請求項13記載の水性溶液、方法、又は使用。
【請求項16】
前記モノクローナル抗体がベバシズマブである、請求項15記載の水性溶液、方法、又は
使用。
【請求項17】
前記抗体タンパク質が1以上の免疫グロブリンFc断片に融合された活性タンパク質ドメ
インを含む融合タンパク質である、請求項12記載の水性溶液、方法、又は使用。
【請求項18】
前記抗体タンパク質が、エタネルセプト、アバタセプト、又はベラタセプトである、請
求項12記載の水性溶液、方法、又は使用。
【請求項19】
前記誘導体が1以上の抗体又は抗体断片及び化学的に不活性なポリマーを含む、コンジ
ュゲートされた誘導体である、請求項12記載の水性溶液、方法、又は使用。
【請求項20】
前記コンジュゲートされた誘導体がセルトリズマブペゴールである、請求項19記載の水
性溶液、方法、又は使用。
【請求項21】
前記抗体タンパク質が、約1mg/mL~約300mg/mL、例えば、約10mg/mL~約300mg/mL、約1
mg/mL~約200mg/mL、又は約10mg/mL~約200mg/mLの濃度で存在する、請求項1~20のいず
れか一項記載の水性溶液、方法、又は使用。
【請求項22】
前記溶液のpHが、約pH 4.0~約pH 8.0、例えば、約pH 5.0~約pH 7.0又は約pH 5.0~約
pH 6.5である、請求項1~21のいずれか一項記載の水性溶液、方法、又は使用。
【請求項23】
緩衝剤をさらに含む、請求項1~22のいずれか一項記載の水性溶液、方法、又は使用。
【請求項24】
前記緩衝剤が、ヒスチジン、コハク酸塩、マレイン酸塩、酢酸塩、リン酸塩、及びTRIS
からなる群から選択される、請求項23記載の水性溶液、方法、又は使用。
【請求項25】
前記緩衝剤が、約0.5mM~約50mM、例えば、約1mM~約20mM、例えば、約2mM~約5mMの濃
度で存在する、請求項23又は請求項24記載の水性溶液、方法、又は使用。
【請求項26】
非イオン性界面活性剤をさらに含む、請求項1~25のいずれか一項記載の水性溶液、方
法、又は使用。
【請求項27】
前記非イオン性界面活性剤が、アルキルグリコシド、例えば、ドデシルマルトシドであ
る、請求項26記載の水性溶液、方法、又は使用。
【請求項28】
前記非イオン性界面活性剤が、ポリソルベート界面活性剤、例えば、ポリソルベート80
又はポリソルベート20である、請求項26記載の水性溶液、方法、又は使用。
【請求項29】
前記非イオン性界面活性剤がポリエチレングリコールのアルキルエーテルである、請求
項26記載の水性溶液、方法、又は使用。
【請求項30】
前記ポリエチレングリコールのアルキルエーテルが、ポリエチレングリコール(2)ドデ
シルエーテル、ポリエチレングリコール(2)オレイルエーテル、及びポリエチレングリコ
ール(2)ヘキサデシルエーテルから選択される、請求項29記載の水性溶液、方法、又は使
用。
【請求項31】
前記非イオン性界面活性剤が、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールの
ブロックコポリマー、例えば、ポロキサマー188、ポロキサマー407、ポロキサマー171、
又はポロキサマー185である、請求項26記載の水性溶液、方法、又は使用。
【請求項32】
前記非イオン性界面活性剤が、ポリエチレングリコールのアルキルフェニルエーテル、
例えば、4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェニル-ポリエチレングリコールである、請
求項26記載の水性溶液、方法、又は使用。
【請求項33】
前記非イオン性界面活性剤が、約10μg/mL~約2000μg/mL、例えば、約50μg/mL~約10
00μg/mL、例えば、約100μg/mL~約500μg/mLの濃度で存在する、請求項26~32のいずれ
か一項記載の水性溶液、方法、又は使用。
【請求項34】
非荷電性浸透圧調節剤、例えば、スクロース、トレハロース、マンニトール、ソルビト
ール、PEG300、又はPEG400をさらに含む、請求項1~33のいずれか一項記載の水性溶液、
方法、又は使用。
【請求項35】
前記非荷電性浸透圧調節剤が、50mM~約1000mM、例えば、約100mM~約500mM、例えば、
約300mMの濃度で存在する、請求項34記載の水性溶液、方法、又は使用。
【請求項36】
例えば、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、グリシ
ン、ヒスチジン、及びアルギニンからなる群から選択される、荷電性浸透圧調節剤をさら
に含む、請求項1~35のいずれか一項記載の水性溶液、方法、又は使用。
【請求項37】
前記荷電性浸透圧調節剤が、約25mM~約500mM、例えば、約50mM~約250mM、例えば、約
150mMの濃度で存在する、請求項36記載の水性溶液、方法、又は使用。
【請求項38】
前記水性溶液が等張である、請求項1~37のいずれか一項記載の水性溶液、方法、又は
使用。
【請求項39】
防腐剤をさらに含む、請求項1~38のいずれか一項記載の水性溶液、方法、又は使用。
【請求項40】
前記防腐剤が、フェノール、m-クレゾール、クロロクレゾール、ベンジルアルコール、
プロピルパラベン、メチルパラベン、塩化ベンザルコニウム、及び塩化ベンゼトニウムか
らなる群から選択される、請求項39記載の水性溶液、方法、又は使用。
【請求項41】
前記防腐剤が約0.01mM~約100mMの濃度で存在する、請求項39又は請求項40記載の水性
溶液、方法、又は使用。
【請求項42】
前記抗体タンパク質を安定化する方法が貯蔵時の該抗体タンパク質の高分子量種の形成
を阻害する方法である、請求項2又は請求項4~41のいずれか一項記載の方法。
【請求項43】
前記抗体タンパク質を安定化する方法が貯蔵時の該抗体タンパク質の関連種の形成を阻
害する方法である、請求項2又は請求項4~41のいずれか一項記載の方法。
【請求項44】
前記抗体タンパク質を安定化する方法が貯蔵時の該抗体タンパク質の脱アミド化を阻害
する方法である、請求項2又は請求項4~41のいずれか一項記載の方法。
【請求項45】
前記抗体タンパク質を安定化する方法が貯蔵時の前記水性溶液中の低分子量分解産物の
形成を阻害する方法である、請求項2又は請求項4~41のいずれか一項記載の方法。
【請求項46】
前記抗体タンパク質を安定化する方法が貯蔵時の該抗体タンパク質の組成物中での可視
粒子の形成を阻害する方法である、請求項2又は請求項4~41のいずれか一項記載の方法。
【請求項47】
貯蔵時の前記抗体タンパク質の高分子量種の形成を阻害するための、請求項3~41のい
ずれか一項記載の使用。
【請求項48】
貯蔵時の前記抗体タンパク質の関連種の形成を阻害するための、請求項3~41のいずれ
か一項記載の使用。
【請求項49】
貯蔵時の前記抗体タンパク質の脱アミド化を阻害するための、請求項3~41のいずれか
一項記載の使用。
【請求項50】
貯蔵時の前記抗体タンパク質の低分子量分解産物の形成を阻害するための、請求項3~4
1のいずれか一項記載の使用。
【請求項51】
貯蔵時の前記抗体タンパク質の組成物中での可視粒子の形成を阻害するための、請求項
3~41のいずれか一項記載の使用。
【請求項52】
前記溶液が、皮下もしくは筋肉内への注射によるか又は静脈内への注射もしくは注入に
よる投与のためのものである、請求項1又は請求項4~41のいずれか一項記載の水性溶液。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(発明の背景)
水性溶液として製剤化されたとき、抗体タンパク質は、貯蔵時に構造的分解を起こしや
すい。タンパク質分解に関与するプロセスは、物理的なもの(例えば、四次、三次、又は
二次構造の喪失、凝集、粒子形成)と化学的なもの(すなわち、共有結合的変化を伴うプロ
セス、例えば、脱アミド化、アスパラギン酸異性化、酸化、加水分解的クリッピングなど
)に分けることができる。分解物(例えば、可溶性凝集種、不溶性凝集種、及び化学修飾変
種)の各々は、抗体タンパク質の生物学的活性、毒性、又は免疫原性に影響を及ぼし得る
。
【0002】
それゆえ、全ての分解物のレベルは、各々の抗体タンパク質製品に対して設定される厳
しい仕様の範囲内で維持されなければならない。分解プロセスの速度は温度に依存し、抗
体タンパク質は、通常、低温でより安定である。結果として、市販の抗体製品は、一般に
、冷蔵で貯蔵しなければならない。しかしながら、患者が自己投与することができる皮下
製品の増加傾向に伴って、少なくとも一定期間、例えば、2週間、例えば、4週間、例えば
、12週間又はそれより長い間、コールドチェーンの外で使用することができる抗体タンパ
ク質製品の開発が強く必要とされている。該製品をコールドチェーンの外で貯蔵すること
ができることにより、多くの場合、使用期間中の患者の利便性がかなり改善される。コー
ルドチェーンの外への逸脱が許容されることにより、出荷物流も顕著に改善され得る。
【0003】
本発明は、抗体タンパク質の不安定性の問題、特に、抗体タンパク質の分解の問題に対
処する。
【0004】
WO2006/0096488A2号(Pharmacia & Upjohn Company LLC)では、化学的及び/又は物理的
安定性の改善を示すと言われる、キレート剤を含むヒトIgG抗体の組成物が記載されてい
る。
【0005】
WO2013/114122A2号(Arecor Limited)では、少なくとも約10mg/mLの濃度の抗体タンパク
質とエチレンイミンのオリゴマーとを含む水性溶液であって、該オリゴマー中のエチレン
イミンの反復単位の数(n)がn=2~12の範囲内にある、水性溶液が記載されている。
【0006】
WO2010/062896A1号(Abbott Laboratories)では、鉄が、ヒスチジンの存在下で、ヒンジ
領域での切断によるλ軽鎖を含有する組換え完全ヒトIgG分子の断片化を増加させるとい
う観察に基づいて、λ軽鎖を含む免疫グロブリンの断片化を阻害する組成物及び方法が記
載されている。
【発明の概要】
【0007】
(発明の概要)
本発明は、抗体タンパク質の不安定性の問題に対処する。一実施態様において、本発明
は、抗体タンパク質と、(i)多価陰イオンであるキレート剤;及び(ii)C3ポリオールの安定
化混合物とを含む水性溶液に関連する。一実施態様において、本発明は、水性溶液中の抗
体タンパク質を貯蔵に対して安定化する方法であって、該溶液に、(i)多価陰イオンであ
るキレート剤;及び(ii)C3ポリオールの混合物を添加する工程を含む、方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(発明の詳細な説明)
本発明は、抗体タンパク質の水性溶液を多価陰イオンであるキレート剤及びC3ポリオー
ルの混合物によって安定化することができるという発見に関する。
【0009】
本明細書で使用される「水性溶液」という用語は、水、好ましくは、蒸留水、脱イオン
水、注射用水、滅菌注射用水、又は静菌注射用水中の溶液を指す。本発明の水性溶液は、
溶解した抗体タンパク質、多価陰イオンであるキレート剤、及びC3ポリオール、並びに任
意に、1以上の添加剤及び/又は賦形剤を含む。該水性溶液は、一部溶解しているか又は溶
解していない1以上の成分、例えば、添加剤又は賦形剤を含むこともできる。そのような
成分(単数又は複数)の存在は、多相組成物、例えば、懸濁液又はエマルジョンを生じさせ
る。好ましくは、本発明の水性溶液は、目測で又は光散乱で決定したとき、均一な溶液で
ある。
【0010】
本明細書で使用される「抗体タンパク質」という用語は、抗体、抗体断片、活性部分に
コンジュゲートされた抗体、1以上の抗体断片を含む融合タンパク質、例えば、免疫グロ
ブリンFcドメイン、又は前述のもののいずれかの誘導体を指す。誘導体の例としては、コ
ンジュゲートされた誘導体、例えば、別の部分にコンジュゲートされた抗体又は抗体断片
が挙げられる。そのような部分としては、化学的に不活性なポリマー、例えば、PEGが挙
げられる。好ましい抗体としては、モノクローナル抗体及びポリクローナル抗体、好まし
くは、モノクローナル抗体が挙げられる。モノクローナル抗体は、例えば、哺乳動物(例
えば、マウス)もしくは鳥類、キメラ、例えば、ヒト/マウスもしくはヒト/霊長類キメラ
、ヒト化抗体、又は完全ヒト抗体であることができる。好適な抗体としては、免疫グロブ
リン、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、もしくはIgG4、IgM、IgA、例えば、IgA1もしくはIgA2
、IgD、IgE、又はIgYを含むIgGが挙げられる。好適な抗体には、単鎖抗体も含まれる。Fc
、Fab、Fab2、ScFv断片などを含む抗体断片も含まれる。ナノボディを含む単一ドメイン
抗体も包含される。
【0011】
ある実施態様において、抗体は、活性分子、例えば、毒素、又は放射性金属イオン、例
えば、99Tc、111Ir、131I、もしくは90Yに結合することができるキレート剤に融合又はコ
ンジュゲートされている。そのような実施態様において、抗体は、通常、例えば、該活性
分子を特定の細胞表面タンパク質を提示する細胞に向けるターゲッティング剤として機能
する。
【0012】
本明細書に記載されるように製剤化することができる特異的抗体としては、インフリキ
シマブ(キメラ抗体、抗TNFα)、バシリキシマブ(キメラ抗体、抗IL-2)、アブシキシマブ(
キメラ抗体、抗GpIIb/IIIa)、ダクリズマブ(ヒト化抗体、抗IL-2)、ゲムツズマブ(ヒト化
抗体、抗CD33)、アレムツズマブ(ヒト化抗体、抗CD52)、エドレコロマブ(マウスIg2a、抗
EpCAM)、リツキシマブ(キメラ抗体、抗CD20)、パリビズマブ(ヒト化抗体、抗呼吸器合胞
体ウイルス)、トラスツズマブ(ヒト化抗体、抗HER2/neu(erbB2)受容体)、ベバシズマブ(
ヒト化抗体、抗VEGF)、セツキシマブ(キメラ抗体、抗EGFR)、エクリズマブ(ヒト化抗体、
抗補体系タンパク質C5)、エファリズマブ(ヒト化抗体、抗CD1Ia)、イブリツモマブ(マウ
ス抗体、抗CD20)、ムロモナブ-CD3(マウス抗体、抗T細胞CD3受容体)、ナタリズマブ(ヒト
化抗体、抗α4インテグリン)、ニモツズマブ(ヒト化IgGl、抗EGF受容体)、オマリズマブ(
ヒト化抗体、抗IgE)、パニツムマブ(ヒト抗体、抗EGFR)、ラニビズマブ(ヒト化抗体、抗V
EGF)、1-131トシツモマブ(ヒト化抗体、抗CD20)、オファツムマブ(ヒト抗体、抗CD-20)、
セルトリズマブ(ヒト化抗体、抗TNF-α)、ゴリムマブ(ヒト抗体、抗TNFα)、及びデノス
マブ(ヒト抗体、抗RANKリガンド)が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい抗体
としては、トラスツズマブ、リツキシマブ、ベバシズマブ、セツキシマブ、及びイピリム
マブが挙げられる。一実施態様において、該抗体は、ベバシズマブである。一実施態様に
おいて、該抗体は、抗TNF-α抗体ではない。
【0013】
本明細書に記載されるように製剤化することができる他のキメラ抗体としては、バビツ
キシマブ(抗ホスファチジルセリン)、ブレンツキシマブ(抗CD30)、シルツキシマブ(抗IL-
6)、クレノリキシマブ(抗CD4)、ガリキシマブ(抗CD80)、ゴミリキシマブ(抗CD23)、ケリ
キシマブ(抗CD4)、ルミリキシマブ(抗CD23)、プリリキシマブ(抗CD4)、テネリキシマブ(
抗CD40)、バパリキシマブ(抗VAP1)、エクロメキシマブ(抗GD3)、及びパギバキシマブ(抗
ブドウ球菌リポタイコ酸)が挙げられる。
【0014】
本明細書に記載されるように製剤化することができる他のヒト化抗体としては、エプラ
ツズマブ(抗CD22)、アフツズマブ(抗CD20)、ビバツズマブメルタンシン(抗CD44)、カンツ
ズマブメルタンシン(抗ムチン)、シタツズマブボガトクス(抗TACSTD1)、ダセツズマブ(抗
CD40)、エロツズマブ(抗CD319)、エタラシズマブ(抗αvβ3-インテグリン)、ファルレツ
ズマブ(抗FRα)、イノツズマブオゾガマイシン(抗CD22)、ラベツズマブ(抗癌胎児性抗原)
、リンツズマブ(抗CD33)、ミラツズマブ(抗CD74)、ニモツズマブ(抗EGFR)、オポルツズマ
ブモナトクス(抗EpCAM)、ペルツズマブ(抗HER2)、シブロツズマブ(抗FAP)、テカツズマブ
テトラキセタン(抗α-フェトタンパク質)、チガツズマブ(抗TRAIL-2)、ツコツズマブセル
モロイキン(抗EpCAM)、ベルツズマブ(抗CD20)、アセリズマブ(抗CD62L)、アポリズマブ(
抗HLA-DRB)、ベンラリズマブ(抗CD125)、セデリズマブ(抗CD4)、エプラツズマブ(抗CD22)
、エルリズマブ(抗CD18)、フォントリズマブ(抗インターフェロン-γ)、メポリズマブ(抗
IL5)、オクレリズマブ(抗CD20)、パスコリズマブ(抗IL4)、ペキセリズマブ(抗補体成分5)
、PRO-140(抗CCR5)、レスリズマブ(抗IL5)、ロンタリズマブ(抗インターフェロン-α)、
ロベリズマブ(抗CD11、CD18)、シプリズマブ(抗CD2)、タリズマブ(抗IgE)、テプリズマブ
(抗CD3)、トシリズマブ(抗IL6R)、ベドリズマブ(抗α4β7-インテグリン)、ビシリズマブ
(抗CD3)、イバリズマブ(抗CD4)、テフィバズマブ(抗クランピング因子A)、タドシズマブ(
抗α11bβ3-インテグリン)、バピネオズマブ(抗アミロイド-β)、ソラネズマブ(抗アミロ
イド-β)、タネズマブ(抗NGF)、ウルトキサズマブ(抗大腸菌(E. coli)志賀様毒素II Bサ
ブユニット)、フェルビズマブ(抗呼吸器合胞体ウイルス)、モタビズマブ(抗呼吸器合胞体
ウイルス糖タンパク質F)、及びレブリキズマブ(抗IL13)が挙げられる。
【0015】
本明細書に記載されるように製剤化することができるさらなるヒト抗体としては、アト
ロリムマブ(抗Rh因子)、フレソリムマブ(抗TGFβ-1、-2、及び-3)、レルデリムマブ(抗TG
Fβ-2)、メテリムマブ(抗TGFβ-1)、モロリムマブ(抗Rh因子)、イピリムマブ(抗CTLA-4)
、トレメリムマブ(抗CTLA-4)、ベルチリムマブ(抗CCL11)、ザノリムマブ(抗CD4)、ブリア
キヌマブ(抗IL12、-23)、カナキヌマブ(抗IL1β)、ウステキヌマブ(抗IL12、-23)、アデ
カツムマブ(抗EpCAM)、ベリムマブ(抗B細胞活性化因子)、シクツムマブ抗IGF-1受容体)、
コナツムマブ(抗TRAIL-R2)、フィギツムマブ(抗IGF-1受容体)、イラツムマブ(抗CD30)、
レキサツムマブ(抗TRAIL-R2)、ルカツムマブ(抗CD40)、マパツムマブ(抗TRAIL-R4)、ネシ
ツムマブ(抗EGFR)、オララツマブ(抗PDGF-Rα)、プリツムマブ(抗ビメンチン)、ロバツム
マブ(抗IGF-1受容体)、ボツムマブ(抗腫瘍抗原CTAA16.88)、ザルツムマブ(抗EGFR)、スタ
ムルマブ(抗ミオスタチン)、エフングマブ(抗真菌HSP90)、エキシビビルマブ(抗B型肝炎
表面抗原)、フォラビルマブ(抗狂犬病糖タンパク質)、リビビルマブ(抗B型肝炎表面抗原)
、ラフィビルマブ(抗狂犬病糖タンパク質)、レガビルマブ(抗サイトメガロウイルス糖タ
ンパク質B)、セビルマブ(抗サイトメガロウイルス)、ツビルマブ(抗B型肝炎ウイルス)、
パノバクマブ(抗緑膿菌(pseudomonas aeruginosa)血清型IATS 011)、ラキシバクマブ(抗
炭疽毒素)、ラムシルマブ(抗VEGF-R2)、並びにガンテネルマブ(抗アミロイド-β)が挙げ
られる。
【0016】
免疫グロブリン分子の断片を含む融合タンパク質も、本発明に従って製剤化することが
できる。好適な融合タンパク質としては、1以上の免疫グロブリン断片、例えば、Fcドメ
インに融合された活性タンパク質ドメインを含むタンパク質が挙げられる。そのような融
合タンパク質としては、免疫グロブリンFcドメインに融合されている、活性タンパク質ド
メイン、例えば、可溶性受容体又は受容体細胞外リガンド結合ドメインを含むモノマー単
位を有する二量体タンパク質が挙げられる。2つのFcドメインは、ジスルフィド結合を介
して会合して、二量体タンパク質を形成することができる。そのような融合タンパク質と
しては、エタネルセプト、アバタセプト、及びベラタセプトが挙げられる。
【0017】
抗体(又は1以上の抗体断片)及び化学的に不活性なポリマー、例えば、PEGを含む、コン
ジュゲートされた誘導体も、本発明に従って製剤化することができる。そのような誘導体
としては、セルトリズマブペゴールが挙げられる。
【0018】
抗体タンパク質は、天然源から単離することができるか、又は組換えタンパク質である
ことができる。
【0019】
ある実施態様において、抗体タンパク質は、実質的に純粋である、すなわち、組成物は
、単一の抗体タンパク質を含み、実質量の任意のさらなるタンパク質を全く含まない。好
ましい実施態様において、抗体タンパク質は、組成物の全タンパク質含有量の少なくとも
99%、好ましくは、少なくとも99.5%、より好ましくは、少なくとも約99.9%を含む。好
ましい実施態様において、抗体タンパク質は、医薬組成物と同様に使用するのに十分に純
粋である。
【0020】
抗体タンパク質は、好ましくは、治療的抗体タンパク質である。そのような抗体タンパ
ク質は、望ましい治療的又は予防的活性を有し、かつ疾患又は医学的障害の治療、阻害、
又は予防に適応される。
【0021】
一実施態様において、抗体タンパク質は、モノクローナル抗体、例えば、トラスツズマ
ブ、リツキシマブ、ベバシズマブ、セツキシマブ、又はイピリムマブである。別の実施態
様において、抗体タンパク質は、1以上の免疫グロブリンFc断片に融合された活性タンパ
ク質ドメインを含む融合タンパク質、例えば、エタネルセプト、アバタセプト、又はベラ
タセプトである。さらなる実施態様において、抗体は、抗体タンパク質の誘導体であり、
かつ1以上の抗体又は抗体断片と化学的に不活性なポリマーとを含むコンジュゲートされ
た誘導体、例えば、セルトリズマブペゴールである。
【0022】
抗体タンパク質は、好適には、約1mg/mL~約300mg/mL、例えば、約10mg/mL~約300mg/m
L、約1mg/mL~約200mg/mL、又は約10mg/mL~約200mg/mLの濃度で存在する。
【0023】
本発明の水性溶液は、多価陰イオンであるキレート剤を安定剤として含む。多価陰イオ
ンとは、該溶液の特定のpHで、1分子当たり少なくとも2つの陰イオン中心を有する種を意
味する。キレート剤とは、金属イオン、例えば、カルシウム、マグネシウム、鉄、及び/
又は亜鉛イオンと錯体を形成することができる薬剤を意味する。好適には、キレート剤は
、亜鉛イオンと錯体を形成することができる。通常、多価陰イオンは、1分子当たり少な
くとも2つの陰イオン中心を有し、ここで、該溶液のpHは、約pH 4.0~約pH 8.0である。
一実施態様において、多価陰イオンであるキレート剤は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)
である。EDTA陰イオンは、好ましくは、エチレンジアミン四酢酸の塩、例えば、二ナトリ
ウム塩又は四ナトリウム塩の形態で水性溶液中に導入される。或いは、それを、エチレン
ジアミン四酢酸の形態で導入し、その後、pHを必要とされるレベルに調整することができ
る。多価陰イオンであるキレート剤のさらなる例としては、4つのイオン中心を有する他
のキレートイオン、例えば、エチレングリコール-ビス(β-アミノエチルエーテル)-N,N,N
',N'-テトラアセテート(EGTA)及び1,2-ビス(o-アミノフェノキシ)エタン-N,N,N',N'-テト
ラアセテート(BAPTA)、並びにシトレート、ピロホスフェート、及びアルギネートが挙げ
られる。多価陰イオンであるキレート剤を、好適な塩形態として(例えば、ナトリウム塩
として)、又は溶液中で多価陰イオンを形成する酸形態として利用してもよい。キレート
剤の混合物を使用してもよい。多価陰イオンであるキレート剤は、安定化効果を有し、通
常、約0.1mM~約50mM、例えば、約0.1mM~約20mM、例えば、約0.1mM~約10mMの濃度で存
在する。好適には、キレート剤は、シトレートではない。
【0024】
一実施態様において、多価陰イオンであるキレート剤は、陽イオン中心を含まない。一
実施態様において、多価陰イオンであるキレート剤は、陰イオン中心のみを含有する。
【0025】
一実施態様において、多価陰イオンであるキレート剤は、1分子当たり4つの陰イオン中
心を含む。一実施態様において、多価陰イオンであるキレート剤は、四配座型である。
【0026】
一実施態様において、多価陰イオンであるキレート剤は、亜鉛イオン結合に関するlogK
金属結合安定度定数が25℃で>5.5であり、例えば、亜鉛結合に関するlogKが25℃で>6、
>6.5、>7、>7.5、>8、>8.5、>9、>9.5、>10、>10.5、>11、>11.5、>12、>1
2.5、>13、>13.5、>14、又は>14.5である。一実施態様において、多価陰イオンであ
るキレート剤は、亜鉛イオン結合に関するlogKが25℃で>5.5~15であり、例えば、亜鉛
結合に関するlogKが25℃で>6~15、>6.5~15、>7~15、>7.5~15、>8~15、>8.5~
15、>9~15、>9.5~15、>10~15、>10.5~15、>11~15、>11.5~15、>12~15、>
12.5~15、>13~15、>13.5~15、>14~15、又は>14.5~15である。アメリカ国立標準
技術研究所(National Institute of Standards and Technology)の参照データベース46(
金属錯体の厳しく選択された安定度定数)に掲載されている金属結合安定度定数を使用す
ることができる。このデータベースは、通常、25℃で決定されたlogK定数、例えば、クエ
ン酸塩(logK=4.93)、EDTA(logK=14.6)、EGTA(logK=12.6)、BAPTA(logK=10.26)、ピロ
リン酸塩(logK=8.71)、及びアルギン酸塩(logK=6.91)を掲載している。好適には、多価
陰イオンであるキレート剤は、亜鉛イオン結合に関するlogKが25℃で>5.5~15である。
【0027】
本発明の水性溶液は、1,2-プロパンジオール(プロパン-1,2-ジオール又はプロピレング
リコールとしても知られる)及びグリセロール(1,2,3-プロパントリオール、グリセリン、
又はグリセリンとしても知られる)から好適に選択される安定剤としてのC3ポリオールも
含む。一実施態様において、該C3ポリオールは、1,2-プロパンジオールである。別の実施
態様において、該C3ポリオールは、グリセロールである。さらなる実施態様において、該
C3ポリオールは、1,2-プロパンジオールとグリセロールの混合物である。該C3ポリオール
は、好適には、約100mM~約500mM、例えば、約150mM~約400mM、又は約150mM~約300mMの
濃度で存在する。複数のC3ポリオールが該水性溶液中に存在する場合、濃度は、C3ポリオ
ールの総濃度を指す。
【0028】
通常、本発明の水性溶液のpHは、約pH 4.0~約pH 8.0、例えば、約pH 5.0~約pH 7.0又
は約pH 5.0~約pH 6.5である。
【0029】
一実施態様において、本発明の水性溶液は、製剤のpHを安定化するために、緩衝剤をさ
らに含み、これは、抗体タンパク質安定性を強化するように選択することもできる。好適
には、緩衝剤は、ヒスチジン、コハク酸塩、マレイン酸塩、酢酸塩、リン酸塩、及びTRIS
からなる群から選択される。ある実施態様において、緩衝剤は、リン酸緩衝剤である。
【0030】
一実施態様において、緩衝剤は、組成物のpHに近いpKaを有するように選択され;例えば
、ヒスチジンは、好適には、組成物のpHが5.0~7.0の範囲にあるときに緩衝剤として利用
される。別の例として、リン酸塩は、好適には、組成物のpHが6.1~8.1の範囲にあるとき
に緩衝剤として利用される。或いは、別の実施態様において、本発明の溶液は、タンパク
質及び1以上の添加剤を含む製剤であって、系が従来の緩衝剤、すなわち、組成物の意図
される貯蔵温度範囲、例えば、25℃で、製剤のpHの1単位以内のpKaを有するイオン化可能
な基を有する化合物を実質的に含まないことを特徴とする製剤を記載しているWO2008/084
237A2号に開示されているようにさらに安定化にされる。この実施態様において、製剤のp
Hは、該製剤がpHに関して最大の測定可能な安定性を有する値に設定され; 1以上の添加剤
(置換緩衝剤)は、プロトンをインスリン化合物と交換することができ、製剤の意図される
貯蔵温度範囲で製剤のpHよりも少なくとも1単位大きい又は小さいpKa値を有する。添加剤
は、組成物の意図される貯蔵温度範囲(例えば、25℃)で、水性製剤のpHの1~5 pH単位、
好ましくは、1~3 pH単位、最も好ましくは、1.5~2.5 pH単位のpKaを有するイオン化可
能な基を有することができる。そのような添加剤は、通常、0.5~10mM、例えば、2~5mM
の濃度で利用することができる。
【0031】
通常、緩衝剤は、約0.5mM~約50mM、例えば、約1mM~約20mM、例えば、約2mM~約5mMの
濃度で存在する。
【0032】
本発明の水性溶液は、界面活性剤を任意に含むことができる。一実施態様において、界
面活性剤は、非イオン性界面活性剤、例えば、アルキルグリコシド、例えば、ドデシルマ
ルトシド;ポリソルベート界面活性剤、例えば、ポリソルベート80又はポリソルベート20;
例えば、ポリエチレングリコール(2)ドデシルエーテル、ポリエチレングリコール(2)オレ
イルエーテル、及びポリエチレングリコール(2)ヘキサデシルエーテルから選択されるポ
リエチレングリコールのアルキルエーテル;ポリエチレングリコールとポリプロピレング
リコールのブロックコポリマー、例えば、ポロキサマー188、ポロキサマー407、ポロキサ
マー171、もしくはポロキサマー185;又はポリエチレングリコールのアルキルフェニルエ
ーテル、例えば、4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェニル-ポリエチレングリコールで
ある。好適には、非イオン性界面活性剤は、約10μg/mL~約2000μg/mL、例えば、約50μ
g/mL~約1000μg/mL、例えば、約100μg/mL~約500μg/mLの濃度で存在する。
【0033】
本発明の水性溶液は、低張、等張、及び高張水性溶液を含む、広範囲のオスモル濃度に
及ぶことができる。好適には、本発明の水性溶液は実質的に等張である。一実施態様にお
いて、本発明の水性溶液は等張である。好適には、該水性溶液のオスモル濃度は、投与経
路による、例えば、注射時の痛みを最小限に抑えるように選択される。好ましい水性溶液
は、約200mOsm/L~約500mOsm/Lの範囲のオスモル濃度を有する。好ましくは、オスモル濃
度は、約250~約350mOsm/Lの範囲である。より好ましくは、オスモル濃度は、約300mOsm/
Lである。
【0034】
水性溶液の浸透圧は、浸透圧調節剤で調整することができる。浸透圧調節剤は、荷電性
であっても非荷電性であってもよい。
【0035】
荷電性浸透圧調節剤の例としては、塩、例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウム
、又はカルシウムイオンと、塩化物、硫酸、炭酸、亜硫酸、硝酸、乳酸、コハク酸、酢酸
、又はマレイン酸イオンとの組合せ(特に、塩化ナトリウム又は硫酸ナトリウム、特に、
塩化ナトリウム)が挙げられる。アミノ酸、例えば、グリシン、ヒスチジン、又はアルギ
ニンを、この目的で使用することもできる。一実施態様において、荷電性浸透圧調節剤は
、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、グリシン、ヒス
チジン、及びアルギニンからなる群から選択される。そのような荷電性浸透圧調節剤は、
通常、約25mM~約500mM、例えば、約50mM~約250mM、例えば、約150mMの濃度で存在する
。
【0036】
非荷電性浸透圧調節剤の例としては、糖、糖アルコール及び他のポリオール、例えば、
スクロース、トレハロース、マンニトール、ラフィノース、ラクトース、デキストロース
、ソルビトール、もしくはラクチトール、又はポリエチレングリコール、例えば、PEG300
もしくはPEG400が挙げられる。一実施態様において、非荷電性浸透圧調節剤は、スクロー
ス、トレハロース、マンニトール、ソルビトール、PEG300、又はPEG400である。本発明の
水性溶液の必要成分であるC3ポリオールは、非荷電性浸透圧調節剤として機能することが
できる。しかしながら、非荷電性浸透圧調節剤を「さらに」含む本発明の水性溶液に対す
る言及は、該溶液に添加されることになる追加のさらなる成分を指すことが意図される。
したがって、該水性溶液は、C3ポリオール以外であり、特に、1,2-プロパンジオール及び
グリセロール以外である、非荷電性浸透圧調節剤をさらに含むことができる。そのような
非荷電性浸透圧調節剤は、通常、約50mM~約1000mM、例えば、約100mM~約500mM、例えば
、約300mMの濃度で存在する。
【0037】
本発明の水性溶液は、フェノール、m-クレゾール、クロロクレゾール、ベンジルアルコ
ール、プロピルパラベン、メチルパラベン、塩化ベンザルコニウム、及び塩化ベンゼトニ
ウムから好適に選択される防腐剤を任意に含むことができる。存在する場合、防腐剤は、
約0.01mM~約100mMの濃度のものである。フェノール、m-クレゾール、クロロクレゾール
、ベンジルアルコール、プロピルパラベン、メチルパラベンから選択される防腐剤は、例
えば、約10mM~約100mM、例えば、約20mM~約80mM、例えば、約25mM~約50mMの濃度で存
在することができる。塩化ベンザルコニウム及び塩化ベンゼトニウムから選択される防腐
剤は、例えば、約0.01mM~約1mM、例えば、約0.05mM~約0.5mM、例えば、約0.05mM~約0.
2mMの濃度で存在することができる。
【0038】
本発明者らは、水性溶液中の抗体タンパク質の安定性が、(i)多価陰イオンであるキレ
ート剤;及び(ii)C3ポリオールの混合物の添加によって改善されることを発見した。多価
陰イオンであるキレート剤、例えば、EDTAの添加は、水性溶液中の抗体タンパク質の安定
性を強化することが観察された。驚くことに、EDTAの安定化効果は、C3ポリオールの添加
によってさらに増加する。理論に束縛されることを望むものではないが、多価陰イオンで
あるキレート剤の安定化効果は、(i)タンパク質の表面での正荷電性パッチとの電荷相互
作用と(ii)分解プロセスを触媒し得る微量金属の除去の組合せによるものであると考えら
れる。理論に束縛されることを望むものではないが、C3ポリオールのさらなる安定化効果
は、タンパク質分子間の立体構造をより緊密にして、その界面張力を改変し、その後、反
応部位の露出をより少なくして、不可逆的凝集事象の可能性をより小さくする、小さいポ
リオールのタンパク質表面での最適な疎水性及び水素結合相互作用によるものであると考
えられる。
【0039】
一実施態様において、多価陰イオンであるキレート剤とC3ポリオールの比(mM/mM)は、
約1:5~約1:500、例えば、約1:20~約1:200である。
【0040】
一実施態様において、抗体タンパク質と多価陰イオンであるキレート剤の比(wt/wt)は
、約1:1~約500:1、例えば、約10:1~約200:1である。別の実施態様において、抗体タン
パク質と多価陰イオンであるキレート剤の比(wt/wt)は、約10:1~約1000:1、例えば、約5
0:1~約200:1である。
【0041】
一実施態様において、抗体タンパク質とC3ポリオールの比(wt/wt)は、約1:5~約200:1
、例えば、約1:1~約50:1である。別の実施態様において、抗体タンパク質とC3ポリオー
ルの比(wt/wt)は、約1:2~約200:1、例えば、約2:1~約50:1である。
【0042】
抗体タンパク質の水性溶液への多価陰イオンであるキレート剤及びC3ポリオールの混合
物の添加は、例えば、実施例1に示されているように、抗体タンパク質の安定性を強化す
ると考えられる。したがって、多価陰イオンであるキレート剤及びC3ポリオールの混合物
は、安定化混合物と呼ばれる。
【0043】
抗体タンパク質の「安定性」又は「安定化混合物」は、通常、貯蔵時の抗体タンパク質
分解の低下を指す。一実施態様において、「安定性」/「安定化」は、物理的安定性、例
えば、四次、三次、もしくは二次構造の喪失、凝集、又は粒子形成を指す。別の実施態様
において、「安定性」/「安定化」は、化学的安定性、例えば、共有結合的変化を伴うプ
ロセス、例えば、脱アミド化、アスパラギン酸異性化、酸化、又は加水分解的クリッピン
グを指す。
【0044】
抗体タンパク質を含む水性溶液への多価陰イオンであるキレート剤及びC3ポリオールの
混合物の添加は、同じ条件の下で同じ長さの時間貯蔵した後、多価陰イオンであるキレー
ト剤とC3ポリオールとを欠く同じ溶液と比較して、抗体タンパク質の安定性を強化し、特
に、抗体タンパク質凝集の速度を低下させることができると考えられる。
【0045】
したがって、本発明は、水性溶液中の抗体タンパク質を貯蔵に対して安定化する方法で
あって、該溶液に、(i)多価陰イオンであるキレート剤;及び(ii)C3ポリオールの混合物を
添加する工程を含む、方法を提供する。また提供されるのは、水性溶液中の抗体タンパク
質を貯蔵に対して安定化するための、(i)多価陰イオンであるキレート剤;及び(ii)C3ポリ
オールの混合物の使用である。本発明の水性溶液との関連において本明細書で上に記載さ
れている実施態様は全て、本発明の方法及び使用に等しく適用される。
【0046】
本発明の方法は、「該溶液に、(i)多価陰イオンであるキレート剤;及び(ii)C3ポリオー
ルの混合物を添加する工程」を指す。多価陰イオンであるキレート剤及びC3ポリオールは
、該溶液に、同時に、又は順次かつ任意の順序で添加することができる(すなわち、「工
程」は、実際には、複数の工程を含み得る)ことが理解されるべきである。
【0047】
また提供されるのは、貯蔵時の水性溶液中での抗体タンパク質の高分子量種の形成を阻
害する方法であって、該溶液に、多価陰イオンであるキレート剤及びC3ポリオールの混合
物を添加する工程を含む、方法である。
【0048】
また提供されるのは、貯蔵時の抗体タンパク質の水性溶液中での可視粒子の形成を阻害
する方法であって、該溶液に、多価陰イオンであるキレート剤及びC3ポリオールの混合物
を添加する工程を含む、方法である。
【0049】
また提供されるのは、貯蔵時の水性溶液中での抗体タンパク質の関連種の形成を阻害す
る方法であって、該溶液に、多価陰イオンであるキレート剤及びC3ポリオールの混合物を
添加する工程を含む、方法である。
【0050】
また提供されるのは、貯蔵時の水性溶液中での抗体タンパク質の脱アミド化を阻害する
方法であって、該溶液に、多価陰イオンであるキレート剤及びC3ポリオールの混合物を添
加する工程を含む、方法である。
【0051】
また提供されるのは、貯蔵時の抗体タンパク質の水性溶液中での低分子量分解産物の形
成を阻害する方法であって、該溶液に、多価陰イオンであるキレート剤及びC3ポリオール
の混合物を添加する工程を含む、方法である。
【0052】
また提供されるのは、貯蔵時の水性溶液中での抗体タンパク質の高分子量種の形成を阻
害するための、多価陰イオンであるキレート剤及びC3ポリオールの混合物の使用である。
【0053】
また提供されるのは、貯蔵時の抗体タンパク質の水性溶液中での可視粒子の形成を阻害
するための、多価陰イオンであるキレート剤及びC3ポリオールの混合物の使用である。
【0054】
また提供されるのは、貯蔵時の水性溶液中での抗体タンパク質の関連種の形成を阻害す
るための、多価陰イオンであるキレート剤及びC3ポリオールの混合物の使用である。
【0055】
また提供されるのは、貯蔵時の水性溶液中での抗体タンパク質の脱アミド化を阻害する
ための、多価陰イオンであるキレート剤及びC3ポリオールの混合物の使用である。
【0056】
また提供されるのは、貯蔵時の抗体タンパク質の水性溶液中での低分子量分解産物の形
成を阻害するための、多価陰イオンであるキレート剤及びC3ポリオールの混合物の使用で
ある。
【0057】
本明細書で使用される「高分子量種」という用語は、親活性抗体タンパク質の分子量の
少なくとも約2倍の見掛けの分子量を有する抗体タンパク質内容物の任意の成分を指す。
すなわち、高分子量種は、親抗体タンパク質の多量体凝集物である。該多量体凝集物は、
かなり変化した立体構造を有する親抗体タンパク質分子を含み得るか、又はそれらは、ネ
イティブなもしくはネイティブに近い立体構造の親タンパク質ユニットの集合体であり得
る。高分子量種の決定は、サイズ排除クロマトグラフィー、電気泳動、分析的超遠心分離
/沈降速度、光散乱、動的光散乱、静的光散乱、及びフィールドフローフラクショネーシ
ョンを含む、当技術分野で公知の方法を用いて行うことができる。
【0058】
本明細書で使用される「低分子量分解産物」という用語は、親活性抗体タンパク質の分
子量未満の見掛けの分子量を有する抗体タンパク質内容物の任意の成分を指す。すなわち
、低分子量分解産物は、親抗体タンパク質の断片である。高分子量種の決定は、サイズ排
除クロマトグラフィー、電気泳動、分析的超遠心分離/沈降速度、光散乱、動的光散乱、
静的光散乱、及びフィールドフローフラクショネーションを含む、当技術分野で公知の方
法を用いて行うことができる。
【0059】
本明細書で使用される「関連種」という用語は、親抗体タンパク質の化学的修飾によっ
て形成される抗体タンパク質内容物の任意の成分、例えば、脱アミド化種又は酸化種を指
す。関連種は、好適には、陽イオン交換クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、
又はキャピラリー電気泳動によって検出される。
【0060】
好適には、本発明の水性溶液は、それが、30℃で少なくとも、1、2、又は3カ月間貯蔵
した後に、可視粒子を実質的に含まない状態であり続ける程度に十分に安定である。可視
粒子は、好適には、2.9.20.欧州薬局方各条(European Pharmacopoeia Monograph)(微粒子
汚染:可視粒子(Particulate Contamination: Visible Particles))を用いて検出される。
【0061】
好適には、本発明の水性溶液は、長期貯蔵したときに関連種の濃度が低い状態であり続
ける程度に十分に安定である。
【0062】
一実施態様において、本発明の水性溶液は、30℃で1、2、又は3カ月間貯蔵した後、(全
抗体タンパク質の重量で)少なくとも95%、例えば、少なくとも96%、例えば、少なくと
も97%、例えば、少なくとも98%、例えば、少なくとも99%の親抗体タンパク質を保持す
る。(全抗体タンパク質の重量による)抗体タンパク質のパーセンテージは、サイズ排除ク
ロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、又はキ
ャピラリー電気泳動によって決定することができる。
【0063】
一実施態様において、多価陰イオンであるキレート剤及びC3ポリオールの混合物の存在
は、40℃で1カ月間貯蔵した後、高分子量抗体タンパク質種の増加を(全抗体タンパク質の
重量で)5%以下に、好適には、3%以下に、より好適には、2%以下に制限する。一実施態
様において、多価陰イオンであるキレート剤及びC3ポリオールの混合物の存在は、2~8℃
で最大2年間貯蔵した後、高分子量抗体タンパク質種の増加を(全抗体タンパク質の重量で
)5%以下に、好適には、3%以下に、より好適には、2%以下に制限する。高分子量種の定
量は、水性溶液中の全抗体タンパク質の重量パーセントとしてのものである。
【0064】
一実施態様において、多価陰イオンであるキレート剤及びC3ポリオールの混合物の存在
は、同じ条件及び時間の長さの下で貯蔵した後、多価陰イオンであるキレート剤とC3ポリ
オールとを欠くが、その他の点では同一である水性溶液と比較して、高分子量抗体タンパ
ク質種の増加を、少なくとも10%、好ましくは、少なくとも25%、より好ましくは、少な
くとも50%制限する。
【0065】
一実施態様において、多価陰イオンであるキレート剤及びC3ポリオールの混合物の存在
は、抗体タンパク質の水性溶液を可視凝集物を含まない状態に維持し、一方、同じ条件下
でかつ同じ長さの時間貯蔵した後、多価陰イオンであるキレート剤及びC3ポリオールの混
合物を欠くが、その他の点では同一である水性溶液中では、可視凝集物の形成が観察され
る。可視凝集物の定量は、濁度又は他のタイプの光散乱の測定によって行うことができる
。
【0066】
好適には、本発明の水性溶液は、40℃で少なくとも1、2、又は3カ月間貯蔵した後、(全
タンパク質の重量で)5%以下の高分子量種を含む。一実施態様において、高分子量種の量
は、40℃で少なくとも1、2、又は3カ月間貯蔵した後、(全抗体タンパク質の重量で)5%以
下、好ましくは、3%以下増加する。高分子量種の定量は、水性溶液中の全抗体タンパク
質の重量パーセントとしてのものである。
【0067】
好適には、本発明の水性溶液は、同じ条件及び時間の長さの下で貯蔵した後、多価陰イ
オンであるキレート剤及びC3ポリオールの混合物を欠くが、その他の点では同一である水
性溶液よりも少なくとも10%低い、好ましくは、少なくとも25%低い、より好ましくは、
少なくとも50%低い貯蔵時の高分子量種の増加を示すべきである。
【0068】
一実施態様において、本発明の水性溶液は、それを必要としている対象への治療的抗体
タンパク質の投与に好適な医薬組成物である。そのような組成物は、治療的タンパク質を
該対象に投与する方法において使用することができる。
【0069】
別の実施態様において、本発明は、治療的抗体タンパク質を、それを必要としている対
象に投与する方法を提供する。本方法は、抗体タンパク質、多価陰イオンであるキレート
剤、及びC3ポリオールを含む水性溶液を投与する工程を含む。好ましくは、該組成物は、
静脈内、皮下、又は筋肉内への注射又は注入によって投与される。より好ましくは、該組
成物は、皮下注射によって投与される。
【0070】
別の実施態様において、本発明は、それを必要としている対象への投与に好適な包装さ
れた医薬組成物を提供する。該医薬組成物は、抗体タンパク質、多価陰イオンであるキレ
ート剤、及びC3ポリオールを含む水性溶液を含む。該医薬組成物は、好ましくは、該溶液
を取り出すための針の導入に好適なバイアルに包装される。一実施態様において、該医薬
組成物は、ゴム栓を備えたガラスバイアルに包装される。包装された医薬組成物は、使用
説明書及び任意に、筋肉内又は皮下投与に好適なシリンジをさらに含むキットとして提供
することができる。或いは、包装された医薬組成物は、筋肉内又は皮下投与に好適な使い
捨てのプレフィルドシリンジの形態で提供することができる。プレフィルドオートインジ
ェクター装置も筋肉内又は皮下投与に好適であろう。
【0071】
本明細書で使用される「医薬として許容し得る」という用語は、過度の悪影響、例えば
、毒性、刺激、及びアレルギー応答を伴わず、かつ妥当なリスク/ベネフィット比を伴う
、ヒト又は動物、例えば、哺乳動物の体に対する意図された使用及び投与様式に好適であ
る医薬組成物の成分を指す。
(略語)
【表1】
【実施例0072】
(実施例)
(材料)
EDTA二ナトリウム塩(Mw 372Da)、1,2-プロパンジオール(Mw 76Da)、グリセロール(Mw 9
2Da)、マンニトール(Mw 182Da)、NaCl(Mw 58Da)、トレハロース(Mw 342Da)をSigma Aldri
chから入手した。
【0073】
(抗体タンパク質の安定性を評価する方法)
(a)視覚的評価
可視粒子を、好適には、2.9.20.欧州薬局方各条(微粒子汚染:可視粒子(Particulate Co
ntamination: Visible Particles))を用いて検出する。必要とされる装置は、以下のもの
を含むビューイングステーションからなる:
・垂直位置に保持された適当なサイズの艶消し黒色パネル
・黒色パネルの隣に垂直位置に保持された適当なサイズの反射防止白色パネル
・好適な笠付白色光源及び好適な散光器が装着された調整可能なランプホルダー(各々
長さ525mmの2本の13W蛍光管を含むビューイングイルミネーターが好適である)。ビューイ
ングポイントにおける照明の強度は、2000ルクス~3750ルクスに維持される。
【0074】
いかなる接着ラベルも容器から除去し、外側を洗浄し、乾燥させる。気泡が確実に入ら
ないようにしながら、容器を穏やかに旋回又は反転させて、白色パネルの前で約5秒間観
察する。この手順を黒色パネルの前で繰り返す。いかなる粒子の存在も記録する。
【0075】
視覚的スコアを次のように順位付ける:
視覚的スコア1:粒子をほとんど含まない透明な溶液
視覚的スコア2:~5個の非常に小さい粒子
視覚的スコア3:~10から20個の非常に小さい粒子
視覚的スコア4:巨大粒子を含む20~50個の粒子
視覚的スコア5:巨大粒子を含む>50個の粒子
【0076】
視覚的スコア4及び5を有する試料中の粒子は、普通光下での随時の視覚的評価で明らか
に検出可能であるが、視覚的スコア1~3を有する試料は、通常、同じ評価で透明な溶液に
見える。視覚的スコア1~3を有する試料は「合格」とみなされ;視覚的スコア4~5を有す
る試料は「不合格」とみなされる。
【0077】
(b)サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)
高分子量種の量は、ガードカラムを備えた300×7.8mmのS3000(又は同等の)サイズ排除
カラムを用いて測定される。移動相は、リン酸カリウムpH 6.5であり、流速は0.4ml/分で
あり、注入量は1μlであり、210nm及び280nmで検出される。結果は、%高分子種(HMWS)、
すなわち、クロマトグラム上の全てのタンパク質関連ピークの和に対する凝集タンパク質
に対応する全てのピーク面積の和として表される。%HMWSの絶対値に関しては、例えば、
サイズ排除カラムの反復使用が原因で、時点間のわずかなばらつきが観察されることがあ
る。しかしながら、所与の時点内で、試料は、同じ条件下のカラムを用いて試験されるの
で、その時点内で得られた値は、試験された水性溶液中のタンパク質の相対的安定性の非
常に良い指標となる。
【0078】
(b)陽イオン交換クロマトグラフィークロマトグラフィー(CEX)
関連種の量は、Protein-Pak Hi Res SPカラムを用いて測定される。移動相Aは、20mMリ
ン酸ナトリウム(pH 6.5)であり;移動相Bは、20mMリン酸ナトリウム+0.5M NaCl(pH 6.0)
である。以下の勾配溶出が使用される: 0分-100%A、4分-80%A、10分-55%A、12分-0%A
。1.0ml/分の流速;注入量は3μlであり、UV検出は214nmで行われる。結果は、%主ピーク
(すなわち、ネイティブタンパク質)、%酸性種、及び%塩基性種として表される。%関連
種=%酸性種+%塩基性種。
【0079】
(実施例1)
アバタセプト(125mg/ml)の安定性に対するEDTA及びC3ポリオールの効果を調べた。この
効果を、リン酸ナトリウム(5mM)及びポリソルベート80(0.5mg/ml)を含有するバックグラ
ウンド溶液中で試験した。試験される全ての製剤をpH 6.5に調整した。試験された製剤中
のさらなる賦形剤を表1に示す。
表1:試験されたアバタセプトの製剤中のさらなる成分。製剤は全て、アバタセプト(125mg
/ml)、リン酸ナトリウム(5mM)、及びポリソルベート80(0.5mg/ml)を含有し、pH 6.5に調
整された。
【表2】
【0080】
製剤1~12(表1)の安定性を25℃及び40℃で視覚的評価及びサイズ排除クロマトグラフィ
ー(SEC)によって試験した。結果を表2及び3に示す。EDTAの非存在下において、アバタセ
プトの安定性は、荷電性浸透圧調節剤(NaCl)の存在下でよりも非荷電性浸透圧調節剤(ト
レハロース又は1,2-プロパンジオール)の存在下でわずかに良好であることが示された。E
DTAの添加は、視覚的評価に関しても、HMWSの形成に関しても、アバタセプトの安定性を
改善するように思われた。改善の程度は、非荷電性種を含む組成物でより大きかった。驚
くことに、改善の程度は、より大きいポリオール(トレハロース)を含む組成物よりもC3ポ
リオール(1,2-プロパンジオール)を含む組成物で大きかった。これは、EDTAと1,2-プロパ
ンジオールの間の相乗効果を示している。試験された最も高いレベルのEDTA(50mM)が高分
子量種に関して最も良好な安定性をもたらしたが、わずかにより悪い視覚的スコアをもた
らすようにも思われた。これは、より可溶性が高い凝集物(すなわち、HMWS)が高濃度のED
TAの存在下で不溶性凝集物に変換されるという事実によるものであり得る。
表2: 25℃及び40℃で貯蔵した後のアバタセプト製剤1~12の視覚的スコア。視覚的スコア
1:粒子をほとんど含まない透明な溶液;視覚的スコア2:~5個の非常に小さい粒子;視覚的
スコア3:~10から20個の非常に小さい粒子;視覚的スコア4:巨大粒子を含む20~50個の粒
子;視覚的スコア5:巨大粒子を含む>50個の粒子
【表3】
表3: SECによって評価された製剤1~12中のアバタセプト(125mg/ml)の安定性。25℃及び4
0℃で貯蔵した後、HMWSの形成を評価した。
【表4】
【0081】
(実施例2)
ベバシズマブ(25mg/ml)の安定性に対するEDTA及びポリオールの効果を40℃で調べた。
この効果を、リン酸ナトリウム(5mM)及びポリソルベート20(0.4mg/ml)を含有するバック
グラウンド溶液中で試験した。試験される全ての製剤をpH 6.2に調整した。試験された製
剤中のさらなる賦形剤を表4に示す。安定性を現在市販されているベバシズマブ製品(Avas
tin(登録商標))の組成物とも比較した。
表4:試験されたアバタセプトの製剤中のさらなる成分。製剤は全て、ベバシズマブ(25mg/
ml)及びポリソルベート20(0.5mg/ml)を含有し、pH 6.2に調整された。
【表5】
【0082】
製剤1~9(表4)の安定性を40℃で視覚的評価によって試験した。結果を表5に示す。製剤
1(すなわち、Avastin(登録商標)の組成物)は、40℃で10週間貯蔵した後、視覚的スコア5
をもたらした。同様に、視覚的スコア5は、5mM リン酸ナトリウム及び荷電性浸透圧調節
剤(NaCl)又は非荷電性浸透圧調節剤(マンニトール、トレハロース、もしくはグリセロー
ル)のいずれかを含有する組成物で達成された。より良好な視覚的スコアは、EDTA(10又は
50mM)の存在下で観察された。しかしながら、NaClの存在下でのEDTAの使用はやはり、C3
ポリオール(グリセロール)の存在下でのEDTAの使用よりも悪い視覚的スコアをもたらし、
EDTAとC3ポリオールの間の相乗効果を示した。
表5: 40℃で貯蔵した後のベバシズマブ製剤1~9の視覚的スコア。視覚的スコア1:粒子を
ほとんど含まない透明な溶液;視覚的スコア2:~5個の非常に小さい粒子;視覚的スコア3:
~10から20個の非常に小さい粒子;視覚的スコア4:巨大粒子を含む20~50個の粒子;視覚的
スコア5:巨大粒子を含む>50個の粒子。
【表6】
【0083】
本明細書及び以下に続く特許請求の範囲の全体を通して、文脈上、別段の解釈を要する
場合を除き、「含む(comprise)」並びに「含む(comprises)」及び「含む(comprising)」
などのその変化形は、記載された整数、工程、整数の群、又は工程の群の包含を意味する
が、任意の他の整数、工程、整数の群、又は工程の群の除外を意味するものではないと理
解されるであろう。
【0084】
本発明は、特に、その好ましい実施態様に関して示され、記載されているが、形態及び
詳細の様々な変更が、添付の特許請求の範囲によって包含される本発明の範囲を逸脱する
ことなく、その中で行われ得ることが当業者によって理解されるであろう。本明細書に記
載される実施態様が相互排他的でないこと及び様々な実施態様由来の特徴を本発明に従っ
て全体的に又は部分的に組み合わせ得ることも理解されるべきである。
【0085】
引用された刊行物、特許、特許出願、インターネットサイト、及びアクセッション番号
/データベース配列(ポリヌクレオチド配列とポリペプチド配列の両方を含む)は全て、あ
たかも各々の個々の刊行物、特許、特許出願、インターネットサイト、及びアクセッショ
ン番号/データベース配列が引用によりそのように組み込まれることが具体的かつ個別的
に示されるのと同じ程度まで、あらゆる目的のために、引用により完全に本明細書中に組
み込まれる。
モノクローナル抗体である抗体タンパク質であって、前記抗体タンパク質が10~200mg/mlの濃度で存在するIgG免疫グロブリンである、前記抗体タンパク質、及び(i)0.1~10mMの濃度で存在するEDTAであるキレート剤と(ii)100~500mMの濃度で存在する、グリセロール及び1,2-プロパンジオールから選択されるC3ポリオールと(iii)10~2000μg/mLの濃度で存在する非イオン性界面活性剤と(iv)緩衝剤との安定化混合物を含む、水性溶液。
水性溶液中のモノクローナル抗体である抗体タンパク質であって、前記抗体タンパク質が10~200mg/mlの濃度で存在するIgG免疫グロブリンである、前記抗体タンパク質を貯蔵に対して安定化する方法であって、前記溶液に、(i)0.1~10mMの濃度で存在するEDTAであるキレート剤と(ii)100~500mMの濃度で存在する、グリセロール及び1,2-プロパンジオールから選択されるC3ポリオールと(iii)10~2000μg/mLの濃度で存在する非イオン性界面活性剤と(iv)緩衝剤との混合物を添加する工程を含む、前記方法。
水性溶液中のモノクローナル抗体である抗体タンパク質であって、前記抗体タンパク質が10~200mg/mlの濃度で存在するIgG免疫グロブリンである、前記抗体タンパク質を貯蔵に対して安定化するための、(i)0.1~10mMの濃度で存在するEDTAであるキレート剤と(ii)100~500mMの濃度で存在する、グリセロール及び1,2-プロパンジオールから選択されるC3ポリオールと(iii)10~2000μg/mLの濃度で存在する非イオン性界面活性剤と(iv)緩衝剤との混合物の使用。
前記モノクローナル抗体が、トラスツズマブ、リツキシマブ、ベバシズマブ、セツキシマブ、及びイピリムマブから選択される、請求項7記載の水性溶液、方法又は使用。
前記緩衝剤が、ヒスチジン、コハク酸塩、マレイン酸塩、酢酸塩、リン酸塩、及びTRISからなる群から選択される、請求項1~10のいずれか一項記載の水性溶液、方法又は使用。
非荷電性浸透圧調節剤、例えば、スクロース、トレハロース、マンニトール、ソルビトール、PEG300、又はPEG400をさらに含む、請求項1~14のいずれか一項記載の水性溶液、方法又は使用。
例えば、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、グリシン、ヒスチジン、及びアルギニンからなる群から選択される、荷電性浸透圧調節剤をさらに含む、請求項1~16のいずれか一項記載の水性溶液、方法又は使用。
好適にはフェノール、m-クレゾール、クロロクレゾール、ベンジルアルコール、プロピルパラベン、メチルパラベン、塩化ベンザルコニウム、及び塩化ベンゼトニウムからなる群から選択される、防腐剤をさらに含む、請求項1~19のいずれか一項記載の水性溶液、方法又は使用。
前記溶液が、皮下もしくは筋肉内への注射によるか又は静脈内への注射もしくは注入による投与のためのものである、請求項1~23のいずれか一項記載の水性溶液、方法又は使用。