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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023071808
(43)【公開日】2023-05-23
(54)【発明の名称】積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03C 27/06 20060101AFI20230516BHJP
   B32B 17/10 20060101ALI20230516BHJP
   B32B 3/26 20060101ALI20230516BHJP
   C03C 27/12 20060101ALI20230516BHJP
【FI】
C03C27/06 101Z
B32B17/10
B32B3/26 Z
C03C27/12 D
C03C27/12 Z
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028809
(22)【出願日】2023-02-27
(62)【分割の表示】P 2021511867の分割
【原出願日】2020-03-25
(31)【優先権主張番号】P 2019069217
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 賢治
(72)【発明者】
【氏名】瓜生 英一
(72)【発明者】
【氏名】石橋 将
(72)【発明者】
【氏名】阿部 裕之
(57)【要約】
【課題】本開示の目的は、強度及び断熱性に優れた積層体が得られる積層体の製造方法を提供する。
【解決手段】第一ガラスパネル1と第二ガラスパネル2と第一ガラスパネル1と第二ガラスパネル2との間に位置する減圧空間3とを備え、第一ガラスパネル1と第二ガラスパネル2との間に複数のスペーサ4が設けられているガラスパネルユニット10の、第一ガラスパネル1の外面11と第一透明板21とを第一中間膜31を介して貼り合わせる工程、及び第二ガラスパネル2の外面12と第二透明板22とを第二中間膜32を介して貼り合わせる工程の両方において、貼り合わせる際の圧力は、ガラスパネルユニット10が備えるスペーサ4の圧縮強度よりも小さい。第一中間膜31と第二中間膜32とは、同じ材料製である。ガラスパネルユニット10と第一透明板21とを貼り合わせと、ガラスパネルユニット10と第二透明板22とを貼り合わせとを、同時に行う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一ガラスパネルと第二ガラスパネルと前記第一ガラスパネルと前記第二ガラスパネルとの間に位置する減圧空間とを備え、前記減圧空間において前記第一ガラスパネルと前記第二ガラスパネルとの間に複数のスペーサが設けられているガラスパネルユニットの、前記第一ガラスパネルの外面と第一透明板とを第一中間膜を介して貼り合わせる工程、及び前記第二ガラスパネルの外面と第二透明板とを第二中間膜を介して貼り合わせる工程の両方において、
前記ガラスパネルユニットと前記第一透明板及び前記第二透明板とを貼り合わせる際の圧力は、前記ガラスパネルユニットが備える前記複数のスペーサの圧縮強度よりも小さく、
前記第一中間膜と前記第二中間膜とは、同じ材料製であり、
前記ガラスパネルユニットと前記第一透明板との貼り合わせと、前記ガラスパネルユニットと前記第二透明板との貼り合わせとを、同時に行う、
積層体の製造方法。
【請求項2】
前記ガラスパネルユニットと前記第一透明板との貼り合わせと、前記ガラスパネルユニットと前記第二透明板との貼り合わせとは、袋体内で同時に行う、
請求項1に記載の積層体の製造方法。
【請求項3】
前記第一中間膜と第二中間膜がいずれもポリビニルブチラール樹脂製である、
請求項1又は2に記載の積層体の製造方法。
【請求項4】
前記第一中間膜と第二中間膜がいずれも含水率が0.1重量%以上0.5重量%以下の状態で前記ガラスパネルユニットに貼り合わせられる、
請求項3に記載の積層体の製造方法。
【請求項5】
前記第一中間膜と前記第二中間膜がいずれもエチレン酢酸ビニル共重合樹脂製である、
請求項1又は2に記載の積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般には、積層体の製造方法に関する。本開示は、詳細には、ガラスパネルユニットと、透明板と、中間膜とを備える積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、対向するガラスパネルの間に減圧空間を設けることで断熱性を向上させたガラスパネルユニットがある。例えば特許文献1には、二枚のガラス基板の間に空間が設けられた真空断熱ガラス窓ユニットが開示されている。
【0003】
特許文献1に記載のガラスパネルユニットよりも、断熱性及び強度を向上させることが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2015-529623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示の目的は、優れた断熱性及び強度を有する積層体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る積層体の製造方法は、第一ガラスパネルと第二ガラスパネルと前記第一ガラスパネルと前記第二ガラスパネルとの間に位置する減圧空間とを備える。前記減圧空間において前記第一ガラスパネルと前記第二ガラスパネルとの間に複数のスペーサが設けられているガラスパネルユニットの、前記第一ガラスパネルの外面と第一透明板とを第一中間膜を介して貼り合わせる工程、及び前記第二ガラスパネルの外面と第二透明板とを第二中間膜を介して貼り合わせる工程の両方において、前記ガラスパネルユニットと前記第一透明板及び前記第二透明板とを貼り合わせる際の圧力は、前記ガラスパネルユニットが備える前記複数のスペーサの圧縮強度よりも小さい。前記第一中間膜と前記第二中間膜とは、同じ材料製である。前記ガラスパネルユニットと前記第一透明板との貼り合わせと、前記ガラスパネルユニットと前記第二透明板との貼り合わせとを、同時に行う。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1Aは、第一実施形態に係る積層体の一例を示す概略の断面図である。図1Bは、図1Aに示す積層体が備えるガラスパネルユニットを示す概略の斜視図である。
図2図2A及び図2Bは、第一実施形態に係る積層体の製造方法の一例を示す概略の断面図である。
図3図3は、同上の積層体の製造方法に用いられる炉の水平断面図である。
図4図4は、同上の積層体の製造方法において、対象物を平置きした状態で乾燥する様子を示した斜視図である。
図5図5は、同上の積層体の製造方法において、対象物を図4とは別の態様で加熱する様子を示した斜視図である。
図6図6は、同上の積層体の製造方法において、対象物を直立させた状態で乾燥する様子を示した斜視図である。
図7図7は、第二実施形態に係る積層体の一例を示す概略の断面図である。
図8図8A及び図8Bは、第二実施形態に係る積層体の製造方法の一例を示す概略の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
1.第一実施形態
1-1.第一実施形態の概要
本開示の第一実施形態に係る積層体100の製造方法では、図1A及び図2Aに示すように、ガラスパネルユニット10の第一ガラスパネル1の外面11と第二ガラスパネル2の外面12とのうち少なくとも一方と、透明板20とを、中間膜30を介して貼り合わせる。
【0009】
ガラスパネルユニット10は、第一ガラスパネル1と、第二ガラスパネル2と、第一ガラスパネル1と第二ガラスパネル2との間に位置する減圧空間3とを備える。
【0010】
本開示における第一ガラスパネル1の外面11とは、第一ガラスパネル1における第二ガラスパネル2とは反対側に臨む面であり、ガラスパネルユニット10の第一ガラスパネル1側の面である。本開示における第二ガラスパネル2の外面12とは、第二ガラスパネル2における第一ガラスパネル1とは反対側に臨む面であり、ガラスパネルユニット10の第二ガラスパネル2側の面である。
【0011】
減圧空間3において第一ガラスパネル1と第二ガラスパネル2との間に複数のスペーサ4が設けられている。ガラスパネルユニット10と透明板20とを貼り合わせる際の圧力は、複数のスペーサ4の圧縮強度よりも小さい。本開示における「圧縮強度」とは、圧力(圧縮力)を受けて破壊するまでの最大強さを単位面積当たりの力で表した値である。
【0012】
本実施形態の製造方法によって得られる積層体100では、第一ガラスパネル1と第二ガラスパネル2との間に減圧空間3が設けられたガラスパネルユニット10(図1B参照)に、中間膜30を介して透明板20が貼り付けられている(図1A参照)。そのため、積層体100は、ガラスパネルユニット10と比べて、優れた断熱性及び強度を有する。
【0013】
また本実施形態では、ガラスパネルユニット10と透明板20とを貼り合わせる際の圧力がスペーサ4の圧縮強度よりも小さいため、ガラスパネルユニット10と透明板20とを貼り合わせる際に、スペーサ4が押し潰されることを抑制することができる。スペーサ4が押し潰されると、減圧空間3が圧縮されて積層体100の断熱性が低下してしまう。またスペーサ4が押し潰されると、積層体100の強度が低下してしまう。そのため、スペーサ4が押し潰されることを抑制することにより、積層体100の断熱性及び強度が低下することを抑制することができる。
【0014】
スペーサ4の材料は限定されないが、スペーサ4は樹脂製であることが好ましい。例えば、スペーサ4がステンレス材料などの金属製であって、スペーサ4の圧縮強度がガラス(第一ガラスパネル1又は第二ガラスパネル2)の圧縮強度以上である場合を想定する。この場合、ガラスパネルユニット10と透明板20とを貼り合わる際の圧力が必要以上に上がった際には、金属製のスペーサ4が第一ガラスパネル1又は第二ガラスパネル2を破壊してしまう恐れがある。しかし、本実施形態のスペーサ4は樹脂製であり、スペーサ4の圧縮強度が、ガラスの圧縮強度よりも小さい。このため、仮にガラスパネルユニット10と透明板20とを張り合わせる際の圧力が必要以上に上がってしまったとしても、第一ガラスパネル1又は第二ガラスパネル2が破壊することが抑制される。
【0015】
そのため、本実施形態の製造方法によって得られる積層体100は、優れた強度及び断熱性を有することができる。なお、スペーサ4は樹脂製に限られず、例えば、セラミック製又は金属製等であってもよい。
【0016】
1-2.第一実施形態の詳細
以下、第一実施形態に係る積層体100と、その製造方法について詳細に説明する。
【0017】
1-2-1.積層体について
本実施形態に係る積層体100は、図1Aに示すように、ガラスパネルユニット10と、透明板20と、中間膜30とを備える。これらの構成について以下に説明する。
【0018】
(1)ガラスパネルユニット
ガラスパネルユニット10は、図1Bに示すように、第一ガラスパネル1と、第二ガラスパネル2と、を含み、第一ガラスパネル1と第二ガラスパネル2とが対向している。そのため、第一ガラスパネル1と第二ガラスパネル2とが重なっている。
【0019】
ガラスパネルユニット10では、第一ガラスパネル1と第二ガラスパネル2との間に、シール材5が設けられている。本実施形態のシール材5は枠状であり、このシール材5によって、第一ガラスパネル1と第二ガラスパネル2とが気密に接合されている。そのため、ガラスパネルユニット10では、第一ガラスパネル1、シール材5、及び第二ガラスパネル2が、この順に積み重なっている。
【0020】
またガラスパネルユニット10は、減圧空間3を含む。この減圧空間3は、第一ガラスパネル1と第二ガラスパネル2とシール材5によって囲まれた空間である。
【0021】
またガラスパネルユニット10は、減圧空間3において、第一ガラスパネル1と第二ガラスパネル2との間に、複数のスペーサ(ピラー)4が設けられている。このスペーサ4によって、第一ガラスパネル1と第二ガラスパネル2との間隔(隙間)が維持されている。
【0022】
またガラスパネルユニット10では、減圧空間3内にガス吸着体6が設けられている。このガス吸着体6によって、減圧空間3内の気体(ガス)を吸着することができる。
【0023】
以下、ガラスパネルユニット10に含まれる第一ガラスパネル1、第二ガラスパネル2、シール材5、減圧空間3、スペーサ4、ガス吸着体6についてより詳しく説明する。
【0024】
(i)第一ガラスパネル
第一ガラスパネル1はガラス製の板材である。第一ガラスパネル1の平面視の形状は、矩形状である。第一ガラスパネル1の平面視の形状は、矩形状に限定されず、三角形以上の多角形状であってもよく、円形状でもよく、楕円形状であってもよい。第一ガラスパネル1は、平坦な板状であってもよく、曲がった板状であってもよい。すなわち、第一ガラスパネル1の外面11は、平坦であってもよく、曲がっていてもよい。
【0025】
第一ガラスパネル1の材料の例には、ソーダライムガラス、高歪点ガラス、化学強化ガラス、無アルカリガラス、石英ガラス、ネオセラム、及び物理強化ガラスが含まれる。第一ガラスパネル1の厚みは、特に限定されないが、例えば、1mm以上10mm以下である。
【0026】
第一ガラスパネル1は、ガラスパネルユニット10の外部空間に露出する面である外面11と、第二ガラスパネル2と対向する面110とを含む(図1B参照)。
【0027】
面110上には、低放射膜が設けられていてもよい。その場合、低放射膜が減圧空間3内に位置する。低放射膜は、低放射性を有する金属を含む膜である。低放射膜は放射による伝熱を抑制する機能を有する。このため、外面11に放射された光による熱が、減圧空間3に伝わることを抑制することができる。低放射性を有する金属の例には、銀が含まれる。
【0028】
(ii)第二ガラスパネル
第二ガラスパネル2は、ガラス製の板材である。第二ガラスパネル2の平面視の形状は、第一ガラスパネル1の平面視の形状と同じである(図1B参照)。第二ガラスパネル2は、平坦な板状であってもよく、曲がった板状であってもよい。すなわち、ガラスパネルユニット10の第二ガラスパネル2の外面12は、平坦であってもよく、曲がっていてもよい。すなわちガラスパネルユニット10は、平坦な板状であってもよく、曲がった板状であってもよい。
【0029】
第二ガラスパネル2の材料の例には、ソーダライムガラス、高歪点ガラス、化学強化ガラス、無アルカリガラス、石英ガラス、ネオセラム、及び物理強化ガラスが含まれる。第二ガラスパネル2の材料は、第一ガラスパネル1の材料と同じであってもよく、異なっていてもよい。第二ガラスパネル2の厚みは、特に限定されないが、例えば、1mm以上10mm以下である。第二ガラスパネル2の厚みは、第一ガラスパネル1の厚みと同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0030】
第二ガラスパネル2は、ガラスパネルユニット10の外部空間に露出する面である外面12と、第一ガラスパネル1と対向する面120とを含む(図1B参照)。
【0031】
(iii)シール材
シール材5は枠状の部材である(図1B参照)。本実施形態では、第一ガラスパネル1及び第二ガラスパネル2が平面視矩形状であるため、シール材5は矩形の枠状の部材である。シール材5は、第一ガラスパネル1と第二ガラスパネル2との間に位置し、第一ガラスパネル1と第二ガラスパネル2とを気密に接合している。
【0032】
シール材5は、熱接着剤で形成される。熱接着剤としては、例えば、低融点ガラスフリット等のガラスフリットが挙げられる。低融点ガラスフリットの例には、ビスマス系ガラスフリット、鉛系ガラスフリット、及びバナジウム系ガラスフリットが含まれる。シール材5は、これらの低融点ガラスフリットのうち一種以上を含有することができる。
【0033】
(iv)減圧空間
減圧空間3は、第一ガラスパネル1と、第二ガラスパネル2と、シール材5とで囲まれた空間である(図1B参照)。詳細には、減圧空間3は、第一ガラスパネル1の面110と、第二ガラスパネル2の面120と、シール材5とで囲まれた空間である。
【0034】
減圧空間3は、例えば、真空空間であることが好ましい。具体的には、減圧空間3は、真空度が0.1Pa以下に至るまで減圧された空間であることが好ましい。この場合、ガラスパネルユニット10の断熱性を向上させることができる。
【0035】
(v)スペーサ
スペーサ4は、図1Bに示すように、減圧空間3において、複数設けられている。すなわち複数のスペーサ4が、第一ガラスパネル1と第二ガラスパネル2との間に配置されている。複数のスペーサ4によって、第一ガラスパネル1と第二ガラスパネル2との間隔を維持することができる。このため、第一ガラスパネル1と第二ガラスパネル2との間隔を確実に確保することができ、減圧空間3の厚みを確保することができる。
【0036】
スペーサ4は円柱状の部材である。スペーサ4の高さ(厚み方向の長さ)は、第一ガラスパネル1及び第二ガラスパネル2間の間隔に応じて適宜設定される。すなわち、第一ガラスパネル1と第二ガラスパネル2間の間隔(減圧空間3の厚み)は、スペーサ4の高さによって規定される。スペーサ4の高さは、例えば、10μm以上1000μm以下である。スペーサ4の直径は、例えば、0.1mm以上10mm以下である。スペーサ4の一例として、直径が0.5mmであり、高さが100μmのスペーサ4が挙げられる。スペーサ4の形状は、円柱状に限定されず、角柱状であってもよく、球状であってもよい。
【0037】
スペーサ4は透明であることが好ましい。この場合、積層体100において、スペーサ4が目立つことを抑制することができ、積層体100の外観を向上させることができる。
【0038】
本実施形態のスペーサ4は、樹脂製であり、例えばポリイミド樹脂製であることが好ましい。この場合、スペーサ4の熱伝導率を抑えることができ、スペーサ4と接触している第一ガラスパネル1及び第二ガラスパネル2間で熱が伝わりにくくすることができる。
【0039】
(vi)ガス吸着体
ガス吸着体6は、気体分子を吸着する機能を有する。ガス吸着体6は、減圧空間3内に配置されている。そのため、ガス吸着体6によって、減圧空間3内のガスを吸着することができ、減圧空間3の真空度を向上させ、ガラスパネルユニット10の断熱性を向上させることができる。
【0040】
ガス吸着体6は、例えば金属ゲッタ材又は非金属ゲッタ材を含むことができる。
【0041】
金属ゲッタ材は、気体分子を化学的に吸着できる金属表面を有する金属製のゲッタ材である。金属ゲッタ材の例には、ジルコニウム系(Zr-Al、Zr-V-Fe等)のゲッタ材、チタン系のゲッタ材等が含まれる。これらの金属ゲッタ材は、例えば、HO、N、O、H、CO等の気体分子を吸着することができる。またこれらの金属ゲッタ材を加熱して活性化させることにより、金属ゲッタ材の金属表面に吸着(化学吸着)していた気体分子を、金属ゲッタ材の内部に拡散させることができる。このため、ガス吸着体6が金属ゲッタ材を含むことにより、減圧空間3内のHO、N、O、H、CO等の気体分子を吸着することができる。
【0042】
非金属ゲッタ材は、気体分子を吸着することのできる多孔質構造を有する非金属製のゲッタ材である。非金属ゲッタ材の例には、ゼオライト系、活性炭素、酸化マグネシウム等が含まれる。ゼオライト系のゲッタ材は、イオン交換されたゼオライトを含み得る。この場合のイオン交換物質の例には、K、NH、Ba、Sr、Na、Ca、Fe、Al、Mg、Li、H、Cu等が含まれる。これらの非金属ゲッタ材は、例えば、炭化水素系ガス(CH4、C等)、アンモニアガス(NH)等の金属ゲッタ材が吸着できない気体分子を吸着することができる。またこれらの非金属ゲッタ材を加熱して活性化させることにより、非金属ゲッタ材の多孔質構造に吸着していた気体分子を、脱離させることができる。
【0043】
(vii)ガラスパネルユニットの製造方法
ガラスパネルユニット10は、例えば、以下の方法で製造することができる。
【0044】
まず、第二ガラスパネル2の面120上に熱接着剤を枠状に配置する。次に、枠状の熱接着剤を挟むように、第一ガラスパネル1と第二ガラスパネル2とを重ねる。次に、第一ガラスパネル1と第二ガラスパネル2と枠状の熱接着剤で囲まれた空間を加熱する。この加熱は、例えば、第一ガラスパネル1と第二ガラスパネル2とが熱接着剤を介して配置された積層物を加熱炉によって加熱することで行われる。これにより、枠状の熱接着剤からシール材5が形成される。さらに第一ガラスパネル1、第二ガラスパネル2及び熱接着剤で囲まれた空間から気体を排出する。これにより、減圧空間3が形成され、ガラスパネルユニット10を製造することができる。
【0045】
(2)透明板
透明板20は、透光性を有する透明の板材である。透明板20によって積層体100の強度、断熱性、遮音性等を向上できると共に、透明板20の形状、機能等に応じて、積層体100に種々の機能を付与することができる。透明板20は、上述の通り、ガラスパネルユニット10の第一ガラスパネル1の外面11及び第二ガラスパネル2の外面12のうち少なくとも一方に設けられている。本実施形態の積層体100では、図1Aに示すように、ガラスパネルユニット10の外面11に透明板20が設けられている。そのため、透明板20とガラスパネルユニット10とは対向しており、また透明板20と第一ガラスパネル1とは対向している。
【0046】
透明板20の平面視の形状は、例えばガラスパネルユニット10の平面視の形状と同じである。本実施形態の積層体100においては、透明板20の平面視の形状は、第一ガラスパネル1と同じである。上述の通り、ガラスパネルユニット10は、平坦であってもよく、曲がっていてもよいことから、透明板20も、平坦であってもよく、曲がっていてもよい。
【0047】
透明板20の厚みは、特に限定されないが、例えば0.5mm以上12mm以下であることが好ましく、1mm以上6mm以下であることがより好ましい。この場合、積層体100の強度を確保しながら、積層体100を軽量化することができる。
【0048】
透明板20の材質は、透光性を有する材料製であれば特に限定されない。
【0049】
透明板20は、例えば、ポリカーボネート製であることが好ましい。すなわち透明板20がポリカーボネート板であることが好ましい。この場合、透明板20を軽量化することができ、それにより積層体100を軽量化することができる。
【0050】
透明板20は、例えば、ガラス製であることが好ましい。すなわち透明板20がガラス板であることが好ましい。この場合、透明板20の強度を向上させることができ、それにより、積層体100の強度を向上させることができる。透明板20がガラス製である場合、透明板20の例には、アニールガラス、化学強化ガラス、及び物理強化ガラス等が含まれる。
【0051】
(3)中間膜
中間膜30は、上述の通り、ガラスパネルユニット10と透明板20との間に介在している。そのため本実施形態の積層体100では、中間膜30は、第一ガラスパネル1と透明板20との間に介在している。
【0052】
積層体100においては、この中間膜30によってガラスパネルユニット10と透明板20とが接着されている。本実施形態の積層体100では、第一ガラスパネル1と透明板20とが中間膜30によって接着されている。そのため、中間膜30は、ガラスパネルユニット10(第一ガラスパネル1)の全面に設けられていることが好ましく、また透明板20の全面に設けられていることが好ましい。また中間膜30の平面視の形状は、ガラスパネルユニット10(第一ガラスパネル1)と同じであることが好ましく、透明板20と同じであることも好ましい。
【0053】
中間膜30の厚みは、ガラスパネルユニット10(第一ガラスパネル1)と透明板20とを接着することができれば特に限定されないが、例えば0.3mm以上4mm以下であることが好ましく、0.3mm以上2mm以下であることがより好ましい。この場合、ガラスパネルユニット10で透明板20を保持しやすく、また積層体100の透光性を維持しやすい。
【0054】
中間膜30の材質は、ガラスパネルユニット10(第一ガラスパネル1)と透明板20とを接着することができ、透光性を有していれば、特に限定されないが、例えば、透光性を有し、かつ、シート状の樹脂であることが好ましく、熱可塑性樹脂製のシートであることが好ましい。中間膜30は、単一のシート状の樹脂で構成されていてもよく、複数のシート状の樹脂の積層体で構成されていてもよい。中間膜30が複数のシート状の樹脂の積層体で構成されている場合、意匠性・デザイン性の向上のために、複数のシート状の樹脂の間に介在物が挟まれていてもよい。この介在物の例には、PETフィルム、金属箔、植物等が含まれる。
【0055】
中間膜30は、例えば、ポリビニルブチラール(PVB)樹脂製であることが好ましい。PVB樹脂は、ガラスパネルユニット10と透明板20との接着性に優れると共に、透明性に優れることから好ましい。また積層体100の強度を向上させることができる。また積層体100の貫通防止性を向上させることができる。そのため、積層体100に高い強度が要求される場合には、中間膜30がポリビニルブチラール(PVB)樹脂製であることが好ましい。
【0056】
中間膜30は、例えば、エチレン酢酸ビニル共重合(EVA)樹脂製であることが好ましい。EVA樹脂は、透明性及び柔軟性に優れることから好ましい。また積層体100の飛散防止性を向上させることができる。またガラスパネルユニット10と透明板20とを中間膜30によって比較的低温で、接着することができる。また積層体100の搬送性を向上させることができる。
【0057】
中間膜30は、例えば、シクロオレフィン系樹脂製であることが好ましい。シクロオレフィン系樹脂は、透明性及び柔軟性に優れることから好ましい。また積層体100の飛散防止性を向上させることができる。またガラスパネルユニット10と透明板20とを中間膜30によって比較的低温で、接着することができる。また積層体100の搬送性を向上させることができる。
【0058】
中間膜30は、例えば、アイオノマー樹脂製であることが好ましい。アイオノマー樹脂は、透明性及び柔軟性に優れ、強度も強いことから好ましい。また積層体100の飛散防止性を向上させることができる。またガラスパネルユニット10と透明板20とを中間膜30によって比較的低温で、接着することができる。また積層体100の搬送性を向上させることができる。本開示における「アイオノマー樹脂」とは、エチレン-メタクリル酸共重合体やエチレン-アクリル酸共重合体の分子間を、ナトリウムや亜鉛などの金属のイオンで分子間結合した特殊な構造を有する樹脂のことをいう。
【0059】
中間膜30は、例えば、ポリオリフィン系樹脂製であることが好ましい。ポリオリフィン系樹脂は、透明性及び柔軟性に優れる。また積層体100の飛散防止性を向上させることができる。またガラスパネルユニット10と透明板20とを中間膜30によって、貼り合わせ温度が80℃以上110℃以下と比較的低温で接着することができる。また積層体100の搬送性を向上させることができる。
【0060】
そのため本実施形態では、中間膜30が、ポリビニルブチラール樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂、シクロオレフィン系樹脂、アイオノマー樹脂及びポリオリフィン系樹脂のうち少なくとも一つを含むことが好ましい。
【0061】
中間膜30は、例えば、液状の硬化性樹脂製であることも好ましい。液状の硬化性樹脂は、熱硬化性樹脂又は紫外線硬化性樹脂であることが好ましい。中間膜30が熱硬化性樹脂製である場合には、熱硬化性樹脂に加えて、硬化剤を含むことが好ましい。中間膜30が紫外線硬化性樹脂製である場合には、紫外線硬化性樹脂に加えて、光重合開始剤を含むことが好ましい。このような硬化性樹脂の例として、アクリル樹脂があげられる。すなわち、中間膜30はアクリル樹脂製であることも好ましい。
【0062】
1-2-2.積層体の製造方法について
本実施形態の積層体100は、例えば、以下の工程によって製造することができる。なお、積層体100を製造する方法は、以下の方法に限定されない。
【0063】
まず、上述のガラスパネルユニット10と、透明板20、中間膜30を用意する。
【0064】
次に、ガラスパネルユニット10と透明板20とを中間膜30を介して貼り合わせる(図2A参照)。詳細には、ガラスパネルユニット10の第一ガラスパネル1の外面11と第二ガラスパネル2の外面12とのうち少なくとも一方と、透明板20とを、中間膜30を介して貼り合わせる。本実施形態では、図2Aに示すように、第一ガラスパネル1の外面11と、透明板20とを、シート状樹脂である中間膜30を介して貼り合わせる。それにより、図1Aに示す積層体100が得られる。
【0065】
ガラスパネルユニット10と透明板20とを貼り合わせる際には、例えば、ガラスパネルユニット10及び透明板20の間にシート状樹脂である中間膜30を挟んで重ねた積層物を、この積層物より大きな真空バッグの中にいれて、真空バッグに接続された真空ポンプで負圧にし、所定温度に加熱して貼り合わせる。所定温度は、例えば140℃である。なお、所定温度は、使用する中間膜30の軟化温度に起因するため、使用する中間膜30の特性に合わせた温度設定が必要になるが、通常は135℃以上140℃以下であることが好ましい。なお、所定温度は限定されない。例えば、中間膜30として、低温で軟化する材料を用いる場合、所定温度は80℃以上110℃以下にすることもできる。
【0066】
ガラスパネルユニット10と透明板20とを貼り合わせる際の圧力が大きすぎると、ガラスパネルユニット10が備える複数の樹脂製のスペーサ4が押し潰されてしまい、ガラスパネルユニット10が破損したり、ガラスパネルユニット10の断熱性、強度等が低下したりすることがある。この点、本実施形態の製造方法では、ガラスパネルユニット10と透明板20とを貼り合わせる際の圧力が、真空バッグを真空ポンプで引く程度、例えば0.1MPa以下であり、複数のスペーサ4の圧縮強度よりも小さい。そのため、複数のスペーサ4が押し潰されることを抑制することができる。本開示における「ガラスパネルユニット10と透明板20とを貼り合わせる圧力」とは、ガラスパネルユニット10と透明板20とを貼り合わせる際に、ガラスパネルユニット10及び透明板20に加えられる圧力である。
【0067】
本実施形態では、ガラスパネルユニット10と透明板20とを貼り合わせる際の圧力が3気圧(≒0.3Mpa)以下であることが好ましく、1気圧(≒0.1Mpa)以下であることがより好ましい。よって真空バッグをプレス機などでさらに加圧することはせずに真空バッグを真空ポンプで引く程度の圧力で貼り合わせる。貼り合わせの際の圧力の下限値は貼り合わせることができる限り特に限定しないが、例えば0.2気圧(≒0.02Mpa)以上であることが好ましい。更に好ましくは0.3気圧(≒0.03Mpa)以上である。この場合、複数の樹脂製のスペーサ4が押し潰されることをより抑制することができ、特にスペーサ4がポリイミド樹脂製である場合に、スペーサ4が押し潰されることを抑制することができる。すなわち、貼り合わせの際の圧力は、0.2気圧以上3気圧以下が好ましく、0.2気圧以上1気圧以下が更に好ましい。
【0068】
一般的に、PVB樹脂製の中間膜30を用いて接着するためには、オートクレーブ装置を用いて加熱及び加圧が必要となる。例えば圧力は通常13気圧(≒1.3MPa)である。しかしながら、加熱及び加圧の条件によっては、ガラスパネルユニット10が備えるスペーサ4に変形が生じたり、第一ガラスパネル1、第二ガラスパネル2等に破損、変形等が生じたりする可能性がある。これに対して、PVB樹脂は、含水率を低減させることにより、オートクレーブ装置無し、加熱のみで接着することができる。そのため、PVB樹脂製の中間膜30を乾燥させてから、この中間膜30を介してガラスパネルユニット10と透明板20とを接着させることにより、加熱のみでガラスパネルユニット10と透明板20とを接着させることができる。中間膜30を乾燥させる方法としては、例えば、真空ポンプを接続し、内部にシリカゲルなどの乾燥材を入れた大型チャンバーの中に、中間膜30のみをロール状、またはフラットにした状態で設置し、大型チャンバー内を真空ポンプで排気して所定の真空度を保持する方法がある。この方法により、中間膜30を乾燥させることができ、中間膜30の含水率を低下させることができる。乾燥したPVB樹脂製の中間膜30は、ガラスパネルユニット10及び透明板20で挟まれた状態で加熱されることにより、ガラスパネルユニット10と透明板20とが、中間膜30によって接着される。
【0069】
ガラスパネルユニット10と透明板20とを接着する他の方法としては、例えば、低湿環境(例えば、シリカゲルなどの乾燥材を入れ、真空ポンプを接続した大型チャンバー内)に、PVB樹脂製の中間膜30をガラスパネルユニット10及び透明板20で挟んだ状態で配置した後に、低湿環境を真空ポンプで排気して所定の真空度を保持する方法がある。この方法により、中間膜30を乾燥させることができ、中間膜30の含水率を低下させることができる。
【0070】
上記中間膜30単体及びガラスパネルユニット10と透明板20で挟んだ状態における中間膜30の各々の乾燥条件は、中間膜30の大きさや厚み等に応じて適宜設定されるが、例えば大型チャンバーの圧力が0.1気圧(≒0.01MPa)以下になった状態で、12時間以上、好ましくは48時間以上乾燥させることが好ましい。
【0071】
ガラスパネルユニット10及び透明板20に挟まれた中間膜30の乾燥を促進するためには、透明板20(又はガラスパネルユニット10)と、この透明板20が載せられる載置台との間に空間を設けることが好ましい。この場合、例えば、透明板20(又はガラスパネルユニット10)の四隅に板状のスペーサを設けることが好ましい。また、このスペーサの厚みは、例えば中間膜30の厚み以上であることが好ましい。すなわち、透明板20(又はガラスパネルユニット10)と載置台との間の空間は、中間膜30の厚み以上であることが好ましい。
【0072】
本実施形態では、ガラスパネルユニット10と透明板20とを貼り合わせる前に、中間膜30の含水率を、0.1重量%以上0.5重量%以下、好ましくは0.15重量%以上0.3重量%以下に乾燥させる。上述の通り、中間膜30を乾燥させて含水率を低下させることにより、オートクレーブ装置無しの加熱のみで接着可能である。このため、中間膜30の含水率を0.1重量%以上0.5重量%以下にすることで、スペーサ4の変形や、第一ガラスパネル1及び第二ガラスパネル2の破損、変形を抑制しながら、ガラスパネルユニット10と透明板20とをPVB樹脂製の中間膜30で貼り合わせることができる。
【0073】
また中間膜30がPVB樹脂製である場合、中間膜30の含水率が0.1重量%より小さいと接着力が高くなり膜の貫通防止性が悪くなり、中間膜30の含水率が0.5重量%より大きいと、貼り合わせ後の中間膜30に濁りや気泡が生じることがある。またPVB樹脂シート製の中間膜30の含水率を0.1重量%以上0.5重量%以下、好ましくは0.15重量%以上0.3重量%以下にすることで、中間膜30の貫通防止性を悪くすることや、濁りや気泡が生じることを抑制することができる。
【0074】
またPVB樹脂製の中間膜30を用いてガラスパネルユニット10と透明板20とを貼り合わせる際、中間膜30に不均一な圧力が掛かることも中間膜30に濁りや気泡が生じる原因となりうる。そのため、ガラスパネルユニット10と透明板20とを貼り合わせる際には、中間膜30に均一に圧力が掛かるようにプレスすることが好ましい。例えば本実施形態では、図2Bに示す真空バッグとしての袋体40内に、ガラスパネルユニット10、中間膜30、及び透明板20を配置し、この袋体40を排気しながら、ガラスパネルユニット10と透明板20とを中間膜30を介して貼り合わせることが好ましい。すなわち、ガラスパネルユニット10と透明板20とを真空バッグ方式で接着することが好ましい。この場合、袋体40の排気により、ガラスパネルユニット10と透明板20とをプレスすることができる。このため、中間膜30に均一に圧力をかけやすく、かつ、袋体40内の湿度を低下させることができる。それにより中間膜30に濁りや気泡が生じることを抑制することができる。なお、中間膜30を袋体40内に入れる前に中間膜30を乾燥させることが好ましいが、中間膜30を袋体40内に入れてから中間膜30を乾燥させてもよい。
【0075】
内部にガラスパネルユニット10、中間膜30及び透明板20が入れられた袋体40は、例えば、図3に示す炉7によって加熱することができる。以下、内部にガラスパネルユニット10、中間膜30及び透明板20が入れられた袋体40を対象物400という。
【0076】
炉7は、熱風乾燥炉であって、加熱室70、扉71、熱風循環装置72及び台73を備える。加熱室70の前面には、開口部700が形成されている。炉7内となる、加熱室70の内側には、加熱空間701が形成されている。加熱空間701は、開口部700を介して前方に開放される。対象物400は、例えば、台73に載せられた状態で、台73と共に開口部700から加熱空間701に出し入れされる。扉71は、開口部700を開閉する。
【0077】
熱風循環装置72は、送風機720と加熱器721とを備える。送風機720は、加熱空間701の気体を循環させる。加熱器721は、送風機720によって循環する気体を加熱する。加熱器721は、例えば、熱交換器である。熱風循環装置72は、例えば、図3に示すように、加熱空間701において、熱風が左右方向と略平行な一方向に流れるように、熱風を循環させる。図3に示す矢印は、熱風が流れる向きを示している。
【0078】
炉7内(加熱空間701)には、台73が設置される。台73は、対象物400が載せられる平坦な上面を有している。
【0079】
図4は、加熱空間701(炉7内)に配置された台73の上に、対象物400を平置きした状態で、ガラスパネルユニット10の加熱を行う例を示している。ガラスパネルユニット10は優れた断熱性を有する。このため、例えば、袋体40の内部において、ガラスパネルユニット10の上に中間膜30を介して透明板20(図1参照)が配置された状態にある対象物400が、台73の上面に載せられた場合には、台73から中間膜30に熱が伝わりにくい。また、袋体40の内部において、透明板20の上に中間膜30を介してガラスパネルユニット10が配置された状態にある対象物400が、台73の上面に載せられた場合には、対象物400の上方を通過する熱風から中間膜30に熱が伝わりにくい。中間膜30に均一に熱が伝わらないと、ガラスパネルユニット10と透明板20とを均一に接着できない場合や、ガラスパネルユニット10の第一ガラスパネル1と第二ガラスパネル2との間に温度差がつき、ガラスパネルユニット10の反りが大きくなって、第一ガラスパネル1又は第二ガラスパネル2が割れる恐れがある。そのため、中間膜30に対して均一に熱を伝えることが好ましい。
【0080】
したがって、上記のように台73の上に平置きした対象物400を炉7内で加熱する場合、例えば、対象物400と、この対象物400が置かれる台73との間に、空間を設けることが好ましい。この空間は、例えば、対象物400を複数のスペーサを介して台73に置くことで形成される。この場合、対象物400を、袋体40の上方からだけでなく、下方からも加熱することができ、袋体40の両面を加熱しやすいため、中間膜30を均一に加熱しやすい。
【0081】
また図5に示すように、台73に、気体が通過可能な通気空間730を形成することが好ましい。図5に示す例では、台73の下面に、台73の左右方向の全長にわたる溝が形成されており、この溝の内側の空間が通気空間730になっている。このような通気空間730を熱風(炉7内の気体)が通過することで台73の温度が上がり台73に平置きされている袋体40を加熱できるため、ガラスパネルユニット10における第一ガラスパネル1と第二ガラスパネル2の温度差をなくすか、なるべく小さくすることができ、中間膜30は均一に加熱されやすくなる。なお、図5に示す通気空間730は、台73と台73が設置される設置面75との間に位置しているが、台73の内部に形成されてもよい。
【0082】
図5に示すように、台73に通気空間730を形成する場合、台73の材料は、例えば、アルミニウムなどの袋体40よりも熱伝導性が良い材料であることが好ましい。また、この場合、台73(アルミニウム)の厚みは、5mm以上であることが好ましい。またこの台73(熱伝導が良い材料)において熱風と接触する部分にヒートシンクのような熱を集める形状の凸部を形成してもよい。なお、熱伝導性が良い材料としては、アルミニウムの他、例えば、胴、真鍮等の金属、アルミナ等の熱伝導性セラミック又はグラファイト、あるいはこれらの複合積層体であってもよい。
【0083】
また、例えば、図6に示すように、対象物400を、直立させた状態で、加熱することが好ましい。この場合、対象物400は、例えば、ガラスパネルユニット10、中間膜30及び透明板20が前後方向においてこの順序で並び、かつ、ガラスパネルユニット10、中間膜30及び透明板20の各々の厚み方向が、前後方向と略平行になった状態で、台73に置かれる。この場合も、対象物400の両面(袋体40の両面)が加熱されやすいため、中間膜30が均一に加熱されやすい。
【0084】
なお、対象物400を直立させた状態で加熱する場合、対象物400は、例えば、図6に示すような支持具74によって支持されてもよい。支持具74は、対象物400の左右方向の両端部だけを支持する複数の支持部材740を備えている。このような支持具74を用いることで、袋体40内に位置する、ガラスパネルユニット10及び透明板20に力が加わりにくくした状態で、対象物400を起立した状態に維持することができる。
【0085】
一般的に、EVA樹脂製の中間膜30を用いる場合、PVB樹脂と比べて低い加熱温度であっても接着することができる。そのため、EVA樹脂製の中間膜30によってガラスパネルユニット10と透明板20とを接着することにより、ガラスパネルユニット10が備えるスペーサ4の変形や、第一ガラスパネル1及び第二ガラスパネル2の変形、破損等を抑制することができる。またEVA樹脂製の中間膜30を用いる場合にも、袋体40内に、ガラスパネルユニット10、中間膜30、及び透明板20を配置し、袋体40を排気しながら、ガラスパネルユニット10と透明板20とを中間膜30を介して貼り合わせることが好ましい。すなわちガラスパネルユニット10と透明板20とを真空バッグ方式で接着することが好ましい。この場合、中間膜30に均一に圧力をかけやすいことから、厚みが均一な積層体100を得やすい。
【0086】
なお、本実施形態の積層体100の製造方法において、ガラスパネルユニット10と透明板20との接着は、真空バッグ方式に限られず、公知の接着方法を適用することができる。
【0087】
例えば、中間膜30として熱硬化性樹脂を使用する場合には、ガラスパネルユニット10と透明板20との間に熱硬化性樹脂製の中間膜30を配置した状態で、これらを加熱してもよい。
【0088】
また例えば、中間膜30として紫外線硬化性樹脂を使用する場合には、ガラスパネルユニット10と透明板20との間に紫外線硬化性樹脂製の中間膜30を配置した状態で、中間膜30に対して紫外線を照射してもよい。
【0089】
またガラスパネルユニット10と透明板20とを貼り合わせた後に、低温でオートクレーブ養生を行ってもよい。
【0090】
1-2-3.積層体の用途
第一実施形態の積層体100の用途は、特に限定されないが、強度及び断熱性が要求される分野に適用することができる。例えば、自動車、鉄道車両、船舶、宇宙船、宇宙ステーション等の移動体に適用することができる。例えば積層体100を自動車に適用する場合には、フロントウインドウ、サイドウインドウ、リアウインドウ等に適用することができる。
【0091】
2.第二実施形態
2-1.第二実施形態の概要
本開示の第二実施形態に係る積層体100は、ガラスパネルユニット10と、第一透明板21と、第一中間膜31と、第二透明板22と、第二中間膜32と、含む(図7参照)。ガラスパネルユニット10は、第一ガラスパネル1と、第二ガラスパネル2と、第一ガラスパネル1と第二ガラスパネル2との間に位置する減圧空間3とを備える。減圧空間3において第一ガラスパネル1と第二ガラスパネル2との間に樹脂製の複数のスペーサ4が設けられている。第一透明板21は、ガラスパネルユニット10の第一ガラスパネル1の外面11に設けられている。第一中間膜31は、第一ガラスパネル1と第一透明板21との間に介在している。すなわち、第一透明板21は、第一ガラスパネル1の外面11に沿って設けられ、第一中間膜31は、第一ガラスパネル1と第一透明板21との間に介在している。
【0092】
第二透明板22は、ガラスパネルユニット10の第二ガラスパネル2の外面12に設けられている。第二中間膜32は、第二ガラスパネル2と第二透明板22との間に介在している。すなわち、第二透明板22は、第二ガラスパネル2の外面12に沿って設けられ、第二中間膜32は、第二ガラスパネル2と第二透明板22との間に介在している。
【0093】
本実施形態の積層体100では、ガラスパネルユニット10の第一ガラスパネル1の外面11と、第二ガラスパネル2の外面12との両方に、それぞれ第一透明板21及び第二透明板22が設けられている。そのため、ガラスパネルユニット10単体よりも、強度、断熱性及び遮音性を向上させることができる。また第一ガラスパネル1の外面11又は第二ガラスパネル2の外面12のどちらか一方のみに透明板20を設けている積層体100よりも、強度、断熱性及び遮音性を向上させることができる。
【0094】
本実施形態の積層体100を製造する場合には、ガラスパネルユニット10の第一ガラスパネル1の外面11と第一透明板21とを、第一中間膜31を介して貼り合わせる(図8A参照)。またそれと共に、ガラスパネルユニット10の第二ガラスパネル2の外面12と第二透明板22とを、第二中間膜32を介して貼り合わせる(図8A参照)。それにより、強度、断熱性及び遮音性に優れた積層体100が得られる。
【0095】
2-2.第二実施形態の詳細
以下、第二実施形態に係る積層体100と、その製造方法とについて詳細に説明する。
【0096】
2-2-1.積層体について
本実施形態に係る積層体100も、ガラスパネルユニット10と、透明板20と、中間膜30とを備える。本実施形態の積層体100では、透明板20が上述の第一透明板21及び第二透明板22を含み、また中間膜30が上述の第一中間膜31及び第二中間膜32を含む。これらの構成について詳しく説明する。なお、第二実施形態の積層体100における第一実施形態に係る積層体100と同一の構成については、同一の符号を付すことにより、説明を省略することがある。
【0097】
(1)ガラスパネルユニット
本実施形態のガラスパネルユニット10は、第一実施形態に係るガラスパネルユニット10と同一の構成を備える。そのためガラスパネルユニット10は、第一ガラスパネル1と、第二ガラスパネル2と、第一ガラスパネル1と第二ガラスパネル2との間に位置する減圧空間3とを備える。また減圧空間3では、第一ガラスパネル1と第二ガラスパネル2との間に複数の樹脂製のスペーサ4が設けられている。
【0098】
(2)透明板
本実施形態の透明板20は、上述の通り、第一透明板21及び第二透明板22を含む。
【0099】
(i)第一透明板
第一透明板21は、第一実施形態に係る透明板20と同様の透光性を有する板材であり、第一透明板21の材質も、第一実施形態に係る透明板20と同じであってよい。
【0100】
本実施形態の積層体100では、第一透明板21は、ガラスパネルユニット10の第一ガラスパネル1の外面11に設けられている。そのため第一透明板21も、ガラスパネルユニット10と対向しており、また第一ガラスパネル1と対向している。
【0101】
(ii)第二透明板
第二透明板22は、第一実施形態に係る透明板20と同様の透光性を有する板材であり、第二透明板22の材質も、第一実施形態に係る透明板20と同じであってもよい。なお、本実施形態では、第一透明板21の材質と、第二透明板22の材質とが、同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0102】
例えば、第一透明板21及び第二透明板22の両方がポリカーボネート製であってもよい。例えば、第一透明板21及び第二透明板22の両方がガラス製であってもよい。例えば、第一透明板21及び第二透明板22のうち、一方がポリカーボネート製で、かつ、他方がガラス製であってもよい。
【0103】
すなわち、第一透明板21及び第二透明板22の少なくとも一方が、ガラス板を含むことが好ましい。また第一透明板21及び第二透明板22の少なくとも一方が、ポリカーボネート板を含むことが好ましい。
【0104】
本実施形態の積層体100では、第二透明板22は、ガラスパネルユニット10の第二ガラスパネル2の外面12に設けられている。そのため第二透明板22も、ガラスパネルユニット10と対向しており、また第二ガラスパネル2と対向している。
【0105】
(3)中間膜
本実施形態の中間膜30は、上述の通り、第一中間膜31及び第二中間膜32を含む。
【0106】
(i)第一中間膜
第一中間膜31は、第一実施形態に係る中間膜30と同様の構成を有し得る。本実施形態の積層体100では、第一中間膜31は、ガラスパネルユニット10の第一ガラスパネル1の外面11と、第一透明板21との間に介在している。そのため、第一中間膜31によって、ガラスパネルユニット10と第一透明板21とを接着することができ、詳細には、第一ガラスパネル1と第一透明板21とを接着することができる。
【0107】
(ii)第二中間膜
第二中間膜32は、第一実施形態に係る中間膜30と同様の構成を有し得る。本実施形態の積層体100では、第二中間膜32は、ガラスパネルユニット10の第二ガラスパネル2の外面12と、第二透明板22との間に介在している。そのため、第二中間膜32によって、ガラスパネルユニット10と第二透明板22とを接着することができ、詳細には、第二ガラスパネル2と第二透明板22とを接着することができる。
【0108】
(iii)第一中間膜及び第二中間膜の材質について
上述の通り、第一中間膜31は、第一実施形態に係る中間膜30と同様の構成を有し得ることから、第一中間膜31の材質も第一実施形態に係る中間膜30と同じであってよい。
【0109】
また第二中間膜32は、第一実施形態に係る中間膜30と同様の構成を有し得ることから、第二中間膜32の材質も第一実施形態に係る中間膜30と同じであってよい。
【0110】
本実施形態の積層体100では、第一中間膜31と第二中間膜32とが異なる材料製であることが好ましい。この場合、積層体100の性能及び製造しやすさを両立させやすい。
【0111】
例えば、第一中間膜31及び第二中間膜32のうち少なくとも一方がポリビニルブチラール(PVB)樹脂製であることが好ましい。この場合、少なくとも積層体100の強度を確保することができる。また、PVB樹脂に遮音性や遮熱性、UVカット特性を備えたグレードを使用することで、積層体100の強度を確保するとともに機能性を向上させることができる。また積層体100の貫通防止性を向上させることができる。
【0112】
また例えば、第一中間膜31及び第二中間膜32のうち少なくとも一方がエチレン酢酸ビニル共重合(EVA)樹脂製であることが好ましい。この場合、積層体100の飛散防止性を向上させることができる。またEVA樹脂製は、比較的低温で接着が可能であるため、積層体100の製造を容易とすることができる。また積層体100のハンドリング性を向上させることができる。
【0113】
また例えば、第一中間膜31及び第二中間膜32のうち少なくとも一方がアイオノマー樹脂製であることが好ましい。この場合、積層体100の飛散防止性と貫通防止性と強度を向上させることができる。またアイオノマー樹脂は、PVB樹脂と同じ温度で接着が可能であるため、積層体100の製造を容易とすることができる。また積層体100全体の強度を向上させることができる。
【0114】
また例えば、第一中間膜31及び第二中間膜32のうち少なくとも一方がシクロオレフィン系樹脂製であることが好ましい。この場合、積層体100の高透明性、高防水性、高接着性を向上させることができる。またシクロオレフィン系樹脂は、PVBと同じ温度で接着が可能であるため、積層体100の製造を容易とすることができる。
【0115】
また本実施形態では、第一中間膜31と第二中間膜32とが異なる材料製であることが好ましい。この場合、第一中間膜31及び第二中間膜32の各々は、例えば、ポリビニルブチラール樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂、アイオノマー樹脂、シクロオレフィン系樹脂及びポリオリフィン系樹脂のうちから選択された樹脂から形成される。このように、第一中間膜31と第二中間膜32とが異なる材料製であることで、第一中間膜31の材質による効果と、第二中間膜32の材質による効果との両方を積層体100に付与することができる。
【0116】
例えば、第一中間膜31がPVB樹脂製であると共に、第二中間膜32がEVA樹脂製であることが好ましい。また第一中間膜31がEVA製であると共に、第二中間膜32がPVB樹脂製であることも好ましい。これらの場合、積層体100の強度を確保しながら積層体100の製造を容易にすることができる。すなわち、積層体100の強度と製造しやすさとを両立させることができる。またこれらの積層体100によれば、貫通防止性と飛散防止性とを両立させることができる。例えば、第一中間膜31と第二中間膜32のうち、貫通防止性が要求される側をPVB樹脂製とし、飛散防止性を要求される側をEVA樹脂製とすることが好ましい。また、PVB樹脂に遮音性を備えた遮音PVB樹脂を使うことにより、積層体100の貫通防止性、飛散防止性に合わせて、遮音性を向上させることができる。遮音PVB樹脂は、騒音が気になるビルの窓や鉄道車両、自動車等モビリティの窓用として適している。
【0117】
また本実施形態では、第一中間膜31と第二中間膜32とが同じ材料製であってもよい。この場合、第一中間膜31及び第二中間膜32の材質による効果を特に発揮させることができる。
【0118】
例えば、第一中間膜31及び第二中間膜32の両方がPVB樹脂製であることが好ましい。この場合、積層体100の強度を特に向上させることができる。また積層体100の貫通防止性を特に向上させることができる。また例えば、第一中間膜31及び第二中間膜32の両方がEVA樹脂製であることが好ましい。この場合、積層体100の製造が特に容易とすることができる。また積層体100の飛散防止性を特に向上させることができる。
【0119】
2-2-2.積層体の製造方法
本実施形態の積層体100は、例えば、以下の工程によって製造することができる。なお、積層体100を製造する方法は、以下の方法に限定されない。
【0120】
まず、上述のガラスパネルユニット10と、透明板20、中間膜30を用意する。本実施形態の積層体100では、透明板20が第一透明板21及び第二透明板22を含み、中間膜30が第一中間膜31及び第二中間膜32を含む。そのため、透明板20として、第一透明板21及び第二透明板22を用意し、また中間膜30として、第一中間膜31及び第二中間膜32を用意する。
【0121】
次に、ガラスパネルユニット10と透明板20とを中間膜30を介して貼り合わせる(図8A参照)。本実施形態では、ガラスパネルユニット10の第一ガラスパネル1の外面11と、第一透明板21とを、第一中間膜31を介して貼り合わせる。更に、ガラスパネルユニット10の第二ガラスパネル2の外面12と、第二透明板22とを、第二中間膜32を介して貼り合わせる。ガラスパネルユニット10と第一透明板21とを貼り合わせる工程、及びガラスパネルユニット10と第二透明板22とを貼り合わせる工程の両方において、貼り合わせる際の圧力はガラスパネルユニット10が備える複数の樹脂製のスペーサ4の圧縮強度よりも小さい。この場合、ガラスパネルユニット10に含まれる複数の樹脂製のスペーサ4が押し潰されることを抑制することができる。
【0122】
ガラスパネルユニット10と第一透明板21との貼り合わせと、ガラスパネルユニット10と第二透明板22との貼り合わせとは、一方ずつ行ってもよく、同時に行ってもよい。
【0123】
例えば、第一中間膜31と第二中間膜32とが同じ材料製である場合には、ガラスパネルユニット10と第一透明板21との貼り合わせと、ガラスパネルユニット10と第二透明板22との貼り合わせとを、同時に行うことが好ましい。この場合、積層体100を効率良く製造することができる。例えば、第一中間膜31及び第二中間膜32が、いずれもポリビニルブチラール(PVB)樹脂製であることが好ましい。その場合、相対湿度10%以下の状態で、ガラスパネルユニット10と第一透明板21と第二透明板22とを貼り合わせることが好ましい。それにより、加熱のみでガラスパネルユニット10と第一透明板21とを接着することができ、かつ、ガラスパネルユニット10と第二透明板22とを接着することができる。さらに、PVB樹脂製の第一中間膜31及び第二中間膜32に濁りや気泡が生じることを抑制することができる。また例えば、第一中間膜31及び第二中間膜32が、いずれもエチレン酢酸ビニル共重合(EVA)樹脂製であることが好ましい。また例えば、第一中間膜31及び第二中間膜32が、いずれも熱硬化性樹脂製であってもよく、いずれも紫外線硬化性樹脂製であってもよい。
【0124】
特に第一中間膜31及び第二中間膜32が、いずれもPVB樹脂製である場合には、ガラスパネルユニット10と透明板20の間にシート状樹脂である中間膜30を挟んで重ねた状態で、これらの積層体を真空チャンバー内に配置する。この真空チャンバーに接続された真空ポンプで負圧にして乾燥させることにより、中間膜30の含水率を低減させることができ、具体的には含水率を0.5重量%以下にすることが好ましい。第一中間膜31及び第二中間膜32の含水率を低減させることで、加熱のみで第一中間膜31及び第二中間膜32を用いた接着が可能となる。そのため、ガラスパネルユニット10が備えるスペーサ4の変形や、第一ガラスパネル1及び第二ガラスパネル2の破損、変形を抑制しながら、中間膜30に濁りや気泡が生じることを抑制することができる。
【0125】
本実施形態では、第一実施形態に係る積層体100の製造方法と同様に、袋体40内に、ガラスパネルユニット10、中間膜30、及び透明板20を配置し、この袋体40を排気しながら、ガラスパネルユニット10と透明板20とを中間膜30を介して貼り合わせることが好ましい。具体的には、図8Bに示すように、袋体40内に、ガラスパネルユニット10、第一中間膜31、第一透明板21、第二中間膜32、及び第二透明板22を配置する。そして、この袋体40を排気しながら、ガラスパネルユニット10と第一透明板21とを第一中間膜31を介して貼り合わせると同時に、ガラスパネルユニット10と第二透明板22とを第二中間膜32を介して貼り合わせることが好ましい。すなわち、ガラスパネルユニット10と、第一透明板21と、第二透明板22とを、真空バッグ方式で接着することが好ましい。この場合、第一中間膜31及び第二中間膜32に均一に圧力をかけやすく、かつ、袋体40内の湿度を低下させることができる。それにより、第一中間膜31及び第二中間膜32に濁りや気泡が生じることを抑制することができる。なお、第一中間膜31及び第二中間膜32を袋体40内に入れる前にこれを乾燥させてもよく、第一中間膜31及び第二中間膜32を袋体40内に入れてからこれらを乾燥させてもよい。
【0126】
本実施形態においても、第一実施形態と同様に、袋体40を炉7で加熱することができる。特に第二実施形態では、袋体40を炉7内で平置きすると、台73とガラスパネルユニット10との間に第一中間膜31又は第二中間膜32が介在される。ガラスパネルユニット10は優れた断熱性を有することから、第一中間膜31及び第二中間膜32のうち台側に位置する方には熱が伝わりにくい。そのため本実施形態では、第一中間膜31及び第二中間膜32の両方に均一に熱を伝えることが好ましい。
【0127】
例えば、ガラスパネルユニット10、第一中間膜31、第一透明板21、第二中間膜32及び第二透明板22が入れられた袋体40と、この袋体40を置く台との間に、空間を設けることが好ましい。この場合、袋体40の上方からだけでなく、下方からも加熱することができ、袋体40の両面を加熱しやすいため、第一中間膜31及び第二中間膜32を均一に加熱しやすい。例えば、図5に示す例と同様に、台73を袋体40よりも熱伝導性の良い材料から形成し、この台73に通気空間730を形成する、又は台73(熱伝導が良い材料)において熱風と接触する部分にヒートシンクのような熱を集める形状の凸部を形成することが好ましい。この場合も、袋体40の両面を加熱しやすいため、第一中間膜31及び第二中間膜32を均一に加熱しやすい。また、例えば、ガラスパネルユニット10、第一中間膜31、第一透明板21、第二中間膜32及び第二透明板22が入れられた袋体40を、直立させた状態で、加熱することが好ましい。この場合も、袋体40の両面を加熱しやすいため、第一中間膜31及び第二中間膜32を均一に加熱しやすい。
【0128】
もちろん、第一中間膜31及び第二中間膜32が、いずれもEVA樹脂製、アイオノマー樹脂製、シクロオレフィン系樹脂製又はポリオリフィン系樹脂である場合にも、ガラスパネルユニット10と、第一透明板21と、第二透明板22とを、真空バッグ方式で接着してもよい。
【0129】
例えば、第一中間膜31と第二中間膜32とが異なる材料製である場合には、ガラスパネルユニット10と第一透明板21との貼り合わせと、ガラスパネルユニット10と第二透明板22との貼り合わせとを、片方ずつ行うことが好ましい。第一中間膜31と第二中間膜32とが異なる材料製であると、第一中間膜31を用いた接着に必要な加熱温度と、第二中間膜32を用いた接着に必要な加熱温度とに差が生じることがある。そのため、第一中間膜31と第二中間膜32とが異なる材料製である場合に、第一中間膜31と第二中間膜32とを同時に加熱すると、接着が不十分となったり、中間膜30に変形等が生じたりすることがある。その点、ガラスパネルユニット10と第一透明板21との貼り合わせと、ガラスパネルユニット10と第二透明板22との貼り合わせとを、片方ずつ行うことにより、接着が不十分となったり、中間膜30に変形等が生じたりすることを抑制することができる。
【0130】
具体的には、第一中間膜31及び第二中間膜32のち、接着に必要な加熱温度が高い方から接着することが好ましい。例えば、第一中間膜31の加熱温度の方が、第二中間膜32の加熱温度よりも高い場合、ガラスパネルユニット10と第一透明板21とを第一中間膜31を介して貼り合わせた後に、ガラスパネルユニット10と第二透明板22とを第二中間膜32を介して貼り合わせることが好ましい。また例えば、第二中間膜32の加熱温度の方が、第一中間膜31の加熱温度よりも高い場合、ガラスパネルユニット10と第二透明板22とを第二中間膜32を介して貼り合わせた後に、ガラスパネルユニット10と第一透明板21とを第一中間膜31を介して貼り合わせることが好ましい。
【0131】
例えば第一中間膜31がPVB樹脂製であり、第二中間膜32がEVA樹脂製である場合、PVB樹脂製の第一中間膜31を用いた接着に必要な加熱温度の方が、EVA樹脂製の第二中間膜32を用いた接着に必要な加熱温度よりも高い場合がある。その時は、ガラスパネルユニット10と第一透明板21とをPVB樹脂製の第一中間膜31を介して貼り合わせた後に、ガラスパネルユニット10と第二透明板22とをEVA樹脂製の第二中間膜32を介して貼り合わせることが好ましい。その場合、PVB樹脂製の第一中間膜31を用いたガラスパネルユニット10と第一透明板21との貼り合わせは、真空バッグ方式で行うことが好ましい。またEVA樹脂製の第二中間膜32を用いたガラスパネルユニット10と第二透明板22との貼り合わせは、真空バッグ方式で行ってもよく、真空バッグ方式で行わなくてもよい。
【0132】
2-2-3.積層体の用途
第二実施形態の積層体100の用途は、特に限定されないが、強度及び断熱性が要求される分野に適用することができる。例えば、自動車、鉄道車両、船舶、宇宙船、宇宙ステーション等の移動体に適用することができる。例えば積層体100を自動車に適用する場合には、フロントウインドウ、サイドウインドウ、リアウインドウ等に適用することができる。
【0133】
3.まとめ
第一の態様に係る積層体(100)の製造方法では、ガラスパネルユニット(10)の第一ガラスパネル(1)の外面(11)と第二ガラスパネル(2)の外面(12)とのうち少なくとも一方と、透明板(20)とを、中間膜(30)を介して貼り合わせる。ガラスパネルユニット(10)は、第一ガラスパネル(1)と、第二ガラスパネル(2)と、第一ガラスパネル(1)と第二ガラスパネル(2)との間に位置する減圧空間(3)とを備える。減圧空間(3)において第一ガラスパネル(1)と第二ガラスパネル(2)との間に複数のスペーサ(4)が設けられている。ガラスパネルユニット(10)と透明板(20)とを貼り合わせる際の圧力は、複数のスペーサ(4)の圧縮強度よりも小さい。
【0134】
この場合、強度及び断熱性に優れた積層体(100)が得られる。特にガラスパネルユニット(10)と透明板(20)とを貼り合わせる際に、ガラスパネルユニット(10)が備えるスペーサ(4)が押し潰されることを抑制することができる。
【0135】
第二の態様に係る積層体(100)の製造方法は、第一の態様において、スペーサ(4)は、樹脂製である。
【0136】
この場合、スペーサ(4)の圧縮強度を、第一ガラスパネル(1)の圧縮強度及び第二ガラスパネル(2)の圧縮強度よりも小さくすることができる。このため、仮にガラスパネルユニット(10)と透明板(20)とを張り合わせる際の圧力が必要以上に上がってしまったとしても、第一ガラスパネル(1)又は第二ガラスパネル2が破壊することが抑制される。
【0137】
第三の態様に係る積層体(100)の製造方法は、第一又は第二の態様において、透明板(20)は、第一透明板(21)及び第二透明板(22)を含む。中間膜(30)は、第一中間膜(31)及び第二中間膜(32)を含む。第一ガラスパネル(1)の外面(11)と第一透明板(21)とを、第一中間膜(31)を介して貼り合わせる。それと共に、第二ガラスパネル(2)の外面(12)と第二透明板(22)とを、第二中間膜(32)を介して貼り合わせる。
【0138】
この場合、強度及び断熱性が特に優れた積層体(100)が得られる。
【0139】
第四の態様に係る積層体(100)の製造方法は、第一~第三のいずれか一の態様において、ガラスパネルユニット(10)と透明板(20)とを貼り合わせる際の圧力が0.2気圧(≒0.2MPa)以上3気圧(≒0.3MPa)以下である。
【0140】
この場合、ガラスパネルユニット(10)が備えるスペーサ(4)が押し潰されることを特に抑制することができる。
【0141】
第五の態様に係る積層体(100)の製造方法は、第一~第四のいずれか一つの態様において、袋体(40)内に、ガラスパネルユニット(10)、中間膜(30)、及び透明板(20)を配置する。この袋体(40)を排気しながら、ガラスパネルユニット(10)と透明板(20)とを中間膜(30)を介して貼り合わせる。
【0142】
この場合、中間膜(30)に均一に圧力を掛けることができる。そのため、中間膜(30)に濁りや気泡が生じることを抑制することができる。
【0143】
第六の態様に係る積層体(100)の製造方法は、第五の態様において、ガラスパネルユニット(10)、中間膜(30)、及び透明板(20)が入れられた袋体(40)を、通気空間(730)が形成された台(73)の上に平置きした状態で炉(7)内で加熱する。
【0144】
この場合、炉(7)内の熱風が通気空間(730)を通過して、台(73)が加熱されやすい。このため、ガラスパネルユニット(10)、中間膜(30)、及び透明板(20)が入れられた袋体(40)を、上方からだけでなく、下方からも加熱することができ、袋体(40)の両面を加熱しやすい。したがって、中間膜(30)を均一に加熱しやすい。
【0145】
第七の態様に係る積層体(100)の製造方法は、第六の態様において、台(73)は、袋体(40)よりも熱伝導性の良い材料から形成される。
【0146】
この場合、通気空間(730)を通過する熱風の熱が、台(73)を通って袋体(40)に伝わりやすくなる。このため、中間膜(30)は、一層均一に加熱されやすい。
【0147】
第八の態様に係る積層体(100)の製造方法は、第五の態様において、ガラスパネルユニット(10)、中間膜(30)、及び透明板(20)が入れられた袋体(40)を、直立させた状態で、炉(7)内で加熱する。
【0148】
この場合、袋体(40)の両面を加熱しやすいため、中間膜(30)を均一に加熱しやすい。
【0149】
第九の態様に係る積層体(100)の製造方法は、第一~第八のいずれか一の態様において、中間膜(30)が、ポリビニルブチラール(PVB)樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合(EVA)樹脂、アイオノマー樹脂、シクロオレフィン系樹脂及びポリオリフィン系樹脂のうち少なくとも一つを含む。
【0150】
この場合、中間膜(30)がPVB樹脂製である場合には、積層体(100)の強度及び貫通防止性を向上させることができる。また中間膜(30)がEVA樹脂製である場合には、積層体(100)のハンドリング性及び飛散防止性を向上させることができる。また、中間膜(30)がアイオノマー樹脂である場合には、積層体(100)の製造を容易とすることができ、積層体(100)全体の強度を向上させることができる。また、中間膜(30)がシクロオレフィン系樹脂である場合には、積層体(100)の製造を容易とすることができる。また、中間膜(30)がポリオリフィン系樹脂である場合には、積層体(100)の飛散防止性を向上させることができる。またガラスパネルユニット(10)と透明板(20)とを中間膜(30)によって、比較的低温で接着することができる。また積層体(100)の搬送性を向上させることができる。
【0151】
第十の態様に係る積層体(100)の製造方法は、第九の態様において、中間膜(30)がポリビニルブチラール樹脂を含み、ガラスパネルユニット(10)と透明板(20)を貼り合わせる前に、中間膜(30)の含水率を0.1重量%以上0.5重量%以下に乾燥させる。
【0152】
この場合、加熱のみで、ガラスパネルユニット(10)と透明板(20)とを中間膜(30)で接着することができ、ガラスパネルユニット(10)が備えるスペーサ(4)の変形等を抑制することができる。また中間膜(30)に濁りや気泡が生じることを抑制することができる。
【0153】
第十一の態様に係る積層体(100)は、ガラスパネルユニット(10)と、第一透明板(21)と、第一中間膜(31)と、第二透明板(22)と、第二中間膜(32)とを含む。ガラスパネルユニット(10)は、第一ガラスパネル(1)と、第二ガラスパネル(2)と、第一ガラスパネル(1)と第二ガラスパネル(2)との間に位置する減圧空間(3)とを備える。減圧空間(3)において第一ガラスパネル(1)と第二ガラスパネル(2)との間に複数のスペーサ(4)が設けられている。第一透明板(21)は、第一ガラスパネル(1)の外面(11)に設けられている。第一中間膜(31)は、第一ガラスパネル(1)と第一透明板(21)との間に介在している。第二透明板(22)は、第二ガラスパネル(2)の外面(12)に設けられている。第二中間膜(32)は、第二ガラスパネル(2)と第二透明板(22)との間に介在している。
【0154】
この場合、積層体(100)の強度、断熱性、遮音性等を向上させることができる。
【0155】
第十ニの態様に係る積層体(100)は、第十一の態様において、複数のスペーサ(4)は、樹脂製である。
【0156】
この場合、スペーサ(4)の圧縮強度を、第一ガラスパネル(1)の圧縮強度及び第二ガラスパネル(2)の圧縮強度よりも小さくすることができる。このため、仮にガラスパネルユニット(10)と透明板(20)とを張り合わせる際の圧力が必要以上に上がってしまったとしても、第一ガラスパネル(1)又は第二ガラスパネル2が破壊することが抑制される。
【0157】
第十三の態様に係る積層体(100)は、第十一又は十二の態様において、第一中間膜(31)と第二中間膜(32)とが異なる材料製である。
【0158】
この場合、積層体(100)の性能及び製造しやすさを両立させやすい。
【0159】
第十四の態様に係る積層体(100)は、第十一又は第十三の態様において、第一中間膜(31)及び第二中間膜(32)のうち少なくとも一方がポリビニルブチラール樹脂製である。
【0160】
この場合、積層体(100)の強度及び貫通防止性を向上させることができる。
【0161】
第十五の態様に係る積層体(100)は、第十一~第十四のいずれか一の態様において、第一中間膜(31)及び第二中間膜(32)のうち少なくとも一方がエチレン酢酸ビニル共重合樹脂製である。
【0162】
この場合、積層体(100)のハンドリング性及び飛散防止性を向上させることができる。
【0163】
第十六の態様に係る積層体(100)は、第十一~第十四のいずれか一の態様において、第一中間膜(31)及び第二中間膜(32)のうち少なくとも一方がアイオノマー樹脂製である。
【0164】
この場合、積層体(100)の貫通防止性及び強度を向上させることができる。
【0165】
第十七の態様に係る積層体(100)は、第十一~第十四のいずれか一の態様において、第一中間膜(31)及び第二中間膜(32)のうち少なくとも一方がシクロオレフィン系樹脂製である。
【0166】
この場合、積層体(100)の高透明性及び高防水性を向上させることができる。
【0167】
第十八の態様に係る積層体(100)は、第十一~第十四のいずれか一の態様において、第一中間膜(31)及び第二中間膜(32)のうち少なくとも一方がポリオリフィン系樹脂製である。
【0168】
この場合、積層体(100)の貼合わせ温度をより低温で実施することができる。
【0169】
第十九の態様に係る積層体(100)は、第十一~第十八のいずれか一の態様において、第一透明板(21)及び第二透明板(22)のうち少なくとも一方が、ガラス板を含む。
【0170】
この場合、強度及び断熱性に優れた積層体(100)が得られる。
【0171】
第二十の態様に係る積層体(100)は、第十一~第十九のいずれか一の態様において、第一透明板(21)及び第二透明板(22)のうち少なくとも一方が、ポリカーボネート板を含む。
【0172】
この場合、強度及び断熱性に優れた積層体(100)が得られる。
【0173】
なお、第二~第十の態様に係る構成については、積層体(100)の製造方向に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。また、第十二~第二十の態様に係る構成については、積層体(100)に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。
【符号の説明】
【0174】
1 第一ガラスパネル
2 第二ガラスパネル
3 減圧空間
4 スペーサ
7 炉
10 ガラスパネルユニット
11 外面
12 外面
20 透明板
21 第一透明板
22 第二透明板
30 中間膜
31 第一中間膜
32 第二中間膜
40 袋体
73 台
100 積層体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8