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特開2023-71819ミクロフィブリル化セルロースの再分散
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  • 特開-ミクロフィブリル化セルロースの再分散 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023071819
(43)【公開日】2023-05-23
(54)【発明の名称】ミクロフィブリル化セルロースの再分散
(51)【国際特許分類】
   D21H 11/18 20060101AFI20230516BHJP
【FI】
D21H11/18
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030391
(22)【出願日】2023-02-28
(62)【分割の表示】P 2021183521の分割
【原出願日】2017-04-21
(31)【優先権主張番号】1607076.5
(32)【優先日】2016-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】516341914
【氏名又は名称】ファイバーリーン テクノロジーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ウィンドバンク,マーク
(72)【発明者】
【氏名】スクセ,デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】アダムス,マデリン
(72)【発明者】
【氏名】テリエ,ギヨーム
(57)【要約】      (修正有)
【課題】乾燥または少なくとも部分的に乾燥したミクロフィブリル化セルロースの再分散性を改善する方法を提供する。
【解決手段】乾燥または部分的に乾燥したミクロフィブリル化セルロースの再分散性を改善する方法であって、
・ミクロフィブリル化セルロースの水性組成物、および任意の1つまたは複数の無機粒子材料を提供すること:
・ミクロフィブリル化セルロース、および任意の1つまたは複数の無機粒子材料を機械的脱水および乾燥ステップの組み合わせで処理して、乾燥または部分的に乾燥したミクロフィブリル化セルロース、および任意の1つまたは複数の無機粒子材料を生成すること:
・乾燥または少なくとも部分的に乾燥したミクロフィブリル化セルロースを液体媒体中に再分散させること:
を含む方法である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
再分散された乾燥または部分的に乾燥したミクロフィブリル化セルロース、および任意の1つまたは複数の無機粒子材料の物理的/機械的特性を改善する方法であって、前記方法は:
・ミクロフィブリル化セルロースの水性組成物、および任意の1つまたは複数の無機粒子材料を提供し、ここで、前記ミクロフィブリル化セルロースが、化学パルプ、ケミサーモメカニカルパルプ、機械パルプ、再生パルプ、製紙ブローク、製紙廃棄物流、もしくは製紙工場からの廃棄物、またはそれらの組み合わせから得られるものである:
・ミクロフィブリル化セルロース、および任意の1つまたは複数の無機粒子材料を機械的脱水および乾燥ステップの組み合わせで処理して、乾燥または部分的に乾燥したミクロフィブリル化セルロース、および任意の1つまたは複数の無機粒子材料を生成すること:
・乾燥または少なくとも部分的に乾燥したミクロフィブリル化セルロースを液体媒体中に再分散させること:を含み、
前記ミクロフィブリル化セルロースの引張強度および/または粘度は、乾燥前のミクロフィブリル化セルロースの前記水性組成物の前記引張強度および/または粘度の少なくとも50%である、ここで、引張強度および/または粘度の比較は、乾燥前のミクロフィブリル化セルロースの前記水性組成物と分散後のミクロフィブリル化セルロースの前記液体媒体の濃度を等しくして行い、かつ乾燥前のミクロフィブリル化セルロースの繊維勾配が20~50であるミクロフィブリル化セルロースを用いて行う、方法。
【請求項2】
再分散されたミクロフィブリル化セルロースが、紙、板紙、ポリマー物品、および塗料を含む物品、製品、または組成物において使用され得る、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記乾燥または部分的に乾燥したミクロフィブリル化セルロースの前記再分散が、ミキサーを使用することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記無機粒子材料が、板状鉱物、カオリンおよび/またはタルクを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記無機粒子材料が、板状鉱物以外の無機粒子材料をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記無機粒子材料が炭酸カルシウムである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記乾燥または部分的に乾燥したミクロフィブリル化セルロースが、1つ以上の塩、1つ以上の糖、1つ以上のグリコール、尿素、カルボキシメチルセルロースおよびグアーガムからなる群から選択される1つ以上の添加剤の存在下で再分散される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記糖が、単糖類、二糖類、オリゴ糖類および多糖類の1つ以上から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記1つ以上の塩が、塩化ナトリウムを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記1つ以上のグリコールが、エチレングリコールを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記方法が、物品、製品または組成物において、またはその製造において、再分散したミクロフィブリル化セルロースを使用することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記脱水されたミクロフィブリル化セルロースの前記水性組成物が、乾燥または少なくとも部分的に乾燥される前に、最大50重量%の固形分を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記脱水されたミクロフィブリル化セルロースの前記水性組成物が、乾燥または少なくとも部分的に乾燥される前に、最大40重量%の固形分を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記脱水されたミクロフィブリル化セルロースの前記水性組成物が、乾燥または少なくとも部分的に乾燥される前に、最大30重量%の固形分を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記脱水されたミクロフィブリル化セルロースの前記水性組成物が、乾燥または少なくとも部分的に乾燥される前に、最大20重量%の固形分を有する、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、乾燥または少なくとも部分的に乾燥したミクロフィブリル化セルロースの再分散性を改善する方法、および乾燥または少なくとも部分的に乾燥したミクロフィブリル化セルロースを再分散する方法に関する。この方法は、例えば、水性組成物を脱水し、必要に応じて乾燥させることを含んでよい。ミクロフィブリル化セルロースの再分散は、例えば、乾燥または少なくとも部分的に乾燥したミクロフィブリル化セルロースを液体媒体中に、無機粒子材料以外の添加剤の存在下で、および/または無機粒子材料との組み合わせの存在下で再分散させること含んでよい。添加剤および/または無機粒子材料の組み合わせは、例えば、再分散したミクロフィブリル化セルロースの機械的および/または物理的特性を向上することができる。本発明はさらに、再分散したミクロフィブリル化セルロースを含む組成物、および物品、製品または組成物中への再分散したミクロフィブリル化セルロースの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ミクロフィブリル化セルロースおよびこれを含む組成物は、紙、板紙、ポリマー物品、塗料などの様々な製品の機械的、物理的および/または光学的特性の向上を含む、様々な有用な特性を有することが示されている。典型的には水性形態で調製され、通常は輸送のために、その重量および関連する輸送コストを低減するために乾燥される。その後、最終使用者は、典型的には最終用途に使用する前にミクロフィブリル化セルロースを再分散させる。しかし、乾燥および再分散の後はその有利な特性のいくつか、またはすべてが減少または消失してしまう。したがって、乾燥および再分散後のミクロフィブリル化セルロースの特性を改善することへの需要が継続して存在する。
【発明の概要】
【0003】
本発明の第1の態様によれば、乾燥または少なくとも部分的に乾燥したミクロフィブリル化セルロースの再分散性を改善する方法であって、
(i)
(a)ベルトプレス、例えば、高圧自動ベルトプレスによる脱水、
(b)遠心分離機による脱水、
(c)チューブプレスによる脱水、
(d)スクリュープレスによる脱水、および
(e)ロータリープレスによる脱水;
のうちの1つ以上によって水性組成物を脱水すること:続いて乾燥すること、
または
(ii)
(f)流動床乾燥機による乾燥、
(g)マイクロ波および/または高周波乾燥機による乾燥、
(h)熱空気掃引ミルまたは乾燥機、例えばセルミルまたはアトライタミルによる乾燥、および
(i)凍結乾燥による乾燥;
のうちの1つ以上によって、水性組成物を脱水した後に乾燥すること:
または
(iii)(i)による脱水および(ii)による乾燥のいずれかの組合せ、
または
(iv)水性組成物の脱水および乾燥の組み合わせを含む、ミクロフィブリル化セルロースの水性組成物を乾燥または少なくとも部分的に乾燥する工程を含み、液体媒体に乾燥または少なくとも部分的に乾燥したミクロフィブリル化セルロースを再分散すると、再分散されたミクロフィブリル化セルロースは、(i)、(ii)、(iii)または(iv)による乾燥がされない場合よりも、乾燥または少なくとも部分的に乾燥される前のミクロフィブリル化セルロースにより近い機械的および/または物理的特性を有し、任意に乾燥または少なくとも部分的に乾燥したミクロフィブリル化セルロースは、再分散したミクロフィブリル化セルロースの機械的および/または物理的特性を向上させる無機粒子材料および/または添加剤を含む。
【0004】
特定の実施形態では、本方法は、液体媒体中に乾燥または少なくとも部分的に乾燥したミクロフィブリル化セルロースを再分散させること、および任意に、物品、製品または組成物の製造において再分散したミクロフィブリル化セルロースを使用することをさらに含む。
【0005】
本発明の第2の態様によれば、ミクロフィブリル化セルロースを再分散させる方法が提供され、該方法は、乾燥または少なくとも部分的に乾燥したミクロフィブリル化セルロースを液体媒体中に再分散させることを含み、乾燥または少なくとも部分的に乾燥したミクロフィブリル化セルロースは、ミクロフィブリル化セルロースを含む水性組成物を脱水および乾燥することによって調製され、
再分散されたミクロフィブリル化セルロースは、前記脱水および乾燥がされない場合よりも、乾燥または少なくとも部分的に乾燥される前のミクロフィブリル化セルロースにより近い機械的および/または物理的特性を有し、
任意に乾燥または少なくとも部分的に乾燥したミクロフィブリル化セルロースは、(i)無機粒子材料、(ii)無機粒子材料の組み合わせおよび/または(iii)無機粒子材料以外の添加剤を含み、再分散中のこれらの存在は再分散されたミクロフィブリル化セルロースの機械的および/または物理的特性を向上させ、
前記脱水は
(a)ベルトプレス、例えば、高圧自動ベルトプレスによる脱水;
(b)遠心分離機による脱水;
(c)チューブプレスによる脱水;
(d)スクリュープレスによる脱水;および
(e)ロータリープレスによる脱水;
のうちの1つ以上から選択され:
および/または前記乾燥は
(f)流動床乾燥機による乾燥;
(g)マイクロ波および/または高周波乾燥機による乾燥;
(h)熱空気掃引ミルまたは乾燥機、例えばセルミルまたはアトライタミルによる乾燥;および
(i)凍結乾燥による乾燥;
からのうちの1つ以上から選択される。
【0006】
本発明の第3の態様によれば、再分散された乾燥または部分的に乾燥したミクロフィブリル化セルロースの物理的および/または機械的特性を改善する方法が提供され、該方法は、
a.ミクロフィブリル化セルロースの水性組成物;を提供すること:
b.脱水したミクロフィブリル化セルロース組成物を生成するために;(i)ベルトプレス、(ii)高圧自動ベルトプレス、(iii)遠心分離機、(iv)チューブプレス、(v)スクリュープレス、および(vi)ロータリープレス;による脱水の1つ以上によって水性組成物を脱水すること:
c.乾燥または部分的に乾燥したミクロフィブリル化セルロース組成物を生成するために;(i)流動床乾燥機、(ii)マイクロ波および/または高周波乾燥機、(iii)熱空気掃引ミルまたは乾燥機、セルミルまたはアトライタミル、および(iv)凍結乾燥;の1つ以上によって脱水したミクロフィブリル化セルロース組成物を乾燥させること:を含み、
液体溶媒中に乾燥または部分的に乾燥したミクロフィブリル化セルロース組成物を再分散すると、ミクロフィブリル化セルロースは、比較可能な濃度および20~50の繊維勾配において、乾燥前のミクロフィブリル化セルロースの水性組成物の引張強度および/または粘度の少なくとも50%の引張強度および/または粘度を有する。
【0007】
本発明の第4の態様によれば、ミクロフィブリル化セルロースを再分散させる方法が提供され、該方法は、乾燥または少なくとも部分的に乾燥したミクロフィブリル化セルロースを液体溶媒中に、再分散されたミクロフィブリル化セルロースの機械的および/または物理的特性を向上させる無機粒子材料以外の添加剤の存在下で再分散させることを含み、乾燥または少なくとも部分的に乾燥する前のミクロフィブリル化セルロースは20~50の繊維勾配を有する。
【0008】
本発明の第5の態様によれば、ミクロフィブリル化セルロースを再分散させる方法が提供され、該方法は、乾燥または少なくとも部分的に乾燥したミクロフィブリル化セルロースを液体溶媒中に、無機粒子材料の組み合わせの存在下で再分散させることを含み、無機粒子材料の組み合わせは、再分散されたミクロフィブリル化セルロースの機械的および/または物理的特性を向上させ、任意に該無機粒子材料の組み合わせは炭酸カルシウムおよび板状鉱物を含む。
【0009】
本発明の第六の態様によれば、液体媒体に再分散され、本発明のいずれかの態様または実施形態による方法によって得ることができる/得られた、比較可能な濃度において、乾燥前のミクロフィブリル化セルロース水性組成物の引張強度および/または粘度の少なくとも50%の引張強度および/または粘度を有するミクロフィブリル化セルロースを含む組成物が提供され、(i)水性組成物のミクロフィブリル化セルロースが20~50の繊維勾配を有する、および/または(ii)ミクロフィブリル化セルロースの水性組成物が無機粒子材料を含む、のどちらかである。
【0010】
本発明の第7の態様によれば、本発明の任意の態様または実施形態による再分散されたミクロフィブリル化セルロースの使用が提供される。特定の実施形態では、ミクロフィブリル化セルロースは、物品、製品または組成物において使用される。したがって、本発明のさらなる態様によれば、本発明の任意の態様または実施形態によるミクロフィブリル化セルロースを含む物品、製品または組成物が提供される。
【0011】
本発明の記載された態様のうちの特定の1つ以上のものに関して提供される詳細、例および選好は、本発明のすべての態様に等しく適用される。本明細書中に記載された実施形態、実施例および選好の任意の組合せについてのすべての可能な変更は、本明細書中で他に示されない限り、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、本発明に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、ミクロフィブリル化セルロースおよび炭酸カルシウム材料を含む乾燥した組成物に対するシングルディスクリファイナの使用の効果の概要を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
再分散されたミクロフィブリル化セルロースおよびそれを含む組成物の1つ以上の特性を改善することを目的に、驚くべきことに、再分散時にミクロフィブリル化セルロースの1つ以上の特性を向上または改善するために、任意に本明細書に記載の無機粒子および/または他の添加剤の存在下での、ミクロフィブリル化セルロースを含む(これまでに乾燥していない)水性組成物の脱水および乾燥、例えば機械的脱水および乾燥の組み合わせを実装できることが見出された。すなわち、再分散されたミクロフィブリル化セルロースの1つ以上の特性は、乾燥前のミクロフィブリル化セルロースと比較して、それ/それらが脱水および乾燥の組み合わせがされない場合よりも、乾燥前のミクロフィブリル化セルロースの1つ以上の特性により近い。同様に、驚くべきことに、本明細書に記載の無機粒子材料、または無機粒子材料の組合せおよび/または他の添加剤を組み込むことによって、初期乾燥後のミクロフィブリル化セルロースの再分散性を向上できることが見出された。
【0014】
したがって、特定の実施形態では、乾燥または少なくとも部分的に乾燥したミクロフィブリル化セルロースの再分散性を改善する方法であって、
(i)以下のうちの1つ以上によって水性組成物を脱水すること:
(a)ベルトプレス、例えば、高圧自動ベルトプレスによる脱水、(b)遠心分離機による脱水、(c)チューブプレスによる脱水、(d)スクリュープレスによる脱水、および(e)ロータリープレスによる脱水;続いて乾燥すること、
または
(ii)以下のうちの1つ以上によって、水性組成物を脱水した後に乾燥すること:
(f)流動床乾燥機による乾燥、(g)マイクロ波および/または高周波乾燥機による乾燥、(h)熱空気掃引ミルまたは乾燥機、例えばセルミルまたはアトライタミルによる乾燥、および(i)凍結乾燥による乾燥;
または
(iii)(i)による脱水および(ii)による乾燥のいずれかの組合せ、
または
(iv)水性組成物の脱水および乾燥の組み合わせ、を含む方法によって水性組成物を乾燥または少なくとも部分的に乾燥することを含む。
【0015】
特定の実施形態では、乾燥が凍結乾燥による場合、脱水は、(a)~(e)のうちの1つ以上を含む。
【0016】
乾燥または少なくとも部分的に乾燥したミクロフィブリル化セルロースは、例えば別の施設への輸送に続いてその後に液体媒体に再分散された場合、再分散されたミクロフィブリル化セルロースは、(i)、(ii)、(iii)または(iv)による乾燥がされない場合よりも、乾燥または少なくとも部分的に乾燥される前のミクロフィブリル化セルロースにより近い機械的および/または物理的特性を有する。
【0017】
したがって、別の態様によれば、ミクロフィブリル化セルロースを再分散させる方法が提供され、該方法は、乾燥または少なくとも部分的に乾燥したミクロフィブリル化セルロースを液体媒体中に再分散させることを含み、乾燥または少なくとも部分的に乾燥したミクロフィブリル化セルロースは、ミクロフィブリル化セルロースを含む水性組成物を脱水および乾燥することによって調製され、再分散されたミクロフィブリル化セルロースは、前記脱水および乾燥がされない場合よりも、乾燥または少なくとも部分的に乾燥される前のミクロフィブリル化セルロースにより近い機械的および/または物理的特性を有し、任意に乾燥または少なくとも部分的に乾燥したミクロフィブリル化セルロースは、(i)無機粒子材料、(ii)無機粒子材料の組み合わせおよび/または(iii)無機粒子材料以外の添加剤を含み:再分散中のこれらの存在は再分散されたミクロフィブリル化セルロースの機械的および/または物理的特性を向上させ;任意に前記脱水は
(a)ベルトプレス、例えば、高圧自動ベルトプレスによる脱水;
(b)遠心分離機による脱水;
(c)チューブプレスによる脱水;
(d)スクリュープレスによる脱水;および
(e)ロータリープレスによる脱水;
のうちの1つ以上から選択され:
および/または前記乾燥は
(f)流動床乾燥機による乾燥;
(g)マイクロ波および/または高周波乾燥機による乾燥;
(h)熱空気掃引ミルまたは乾燥機、例えばセルミルまたはアトライタミルによる乾燥;および
(i)凍結乾燥による乾燥;
のうちの1つ以上から選択される。
【0018】
特定の実施形態では、乾燥が凍結乾燥による場合、脱水は、(a)~(e)のうちの1つ以上を含む。
【0019】
したがって、別の態様によれば、再分散された乾燥または部分的に乾燥したミクロフィブリル化セルロースの物理的および/または機械的特性を改善する方法が提供され、該方法は、
a.ミクロフィブリル化セルロースの水性組成物;を提供すること:
b.脱水したミクロフィブリル化セルロース組成物を生成するために;(i)ベルトプレス、(ii)高圧自動ベルトプレス、(iii)遠心分離機、(iv)チューブプレス、(v)スクリュープレス、および(vi)ロータリープレス;による脱水の1つ以上によって水性組成物を脱水すること:
c.乾燥または部分的に乾燥したミクロフィブリル化セルロース組成物を生成するために;(i)流動床乾燥機、(ii)マイクロ波および/または高周波乾燥機、(iii)熱空気掃引ミルまたは乾燥機、セルミルまたはアトライタミル、および(iv)凍結乾燥;
の1つ以上によって脱水したミクロフィブリル化セルロース組成物を乾燥させること:
を含み、
液体溶媒中に乾燥または部分的に乾燥したミクロフィブリル化セルロース組成物を再分散すると、ミクロフィブリル化セルロースは、比較可能な濃度および20~50の繊維勾配において、乾燥前のミクロフィブリル化セルロースの水性組成物の引張強度および/または粘度の少なくとも50%の引張強度および/または粘度を有する。
【0020】
以下のセクションは、上記の態様のいずれかに関する。
【0021】
「乾燥した」または「乾燥する」という言及は、「少なくとも部分的に乾燥した」または「少なくとも部分的に乾燥する」ことを含む。
【0022】
特定の実施形態では、ミクロフィブリル化セルロースを含む水性組成物は、ベルトプレス、例えば高圧自動ベルトプレスによって脱水され、その後、例えば上記(f)~(i)の1つ以上を介して乾燥される。
【0023】
特定の実施形態では、ミクロフィブリル化セルロースを含む水性組成物は、遠心分離機によって脱水され、その後、例えば、上記(f)~(i)の1つ以上を介して乾燥される。
【0024】
特定の実施形態では、ミクロフィブリル化セルロースを含む水性組成物は、チューブプレスによって脱水され、その後、例えば、上記(f)~(i)の1つ以上を介して乾燥される。
【0025】
特定の実施形態では、ミクロフィブリル化セルロースを含む水性組成物は、スクリュープレスによって脱水され、その後、例えば、上記(f)~(i)の1つ以上を介して乾燥される。
【0026】
特定の実施形態では、ミクロフィブリル化セルロースを含む水性組成物は、ロータリープレスによって脱水され、その後、例えば、上記(f)~(i)の1つ以上を介して乾燥される。
【0027】
特定の実施形態では、水性組成物は、例えば、上記(a)~(e)の1つ以上を介して脱水され、次いで、流動床乾燥機で乾燥される。
【0028】
特定の実施形態では、水性組成物は、例えば、上記(a)~(e)の1つ以上を介して脱水され、次いで、マイクロ波または高周波乾燥機で乾燥される。
【0029】
特定の実施形態では、水性組成物は、例えば、上記(a)~(e)の1つ以上を介して脱水され、次いで、熱空気掃引ミルまたは乾燥機、例えばセルミルまたはアトライタミルで乾燥される。アトライタミルは、アトライタ乾燥粉砕機、アトライタセルミル、アトライタ拡張型分級機ミル、またはアトライタ空気掃引チューブラ(AST)乾燥機(Atritor Limited、英国、ウェスト・ミッドランズ州コヴェントリー、ブルーリボンパーク、ザ・スタンピングス12)であってよい。そのようなミルは、続いて乾燥され、次いで再分散されるミクロフィブリル化セルロースの水性組成物を調製するために使用される。
【0030】
特定の実施形態では、水性組成物は、例えば、上記(a)~(e)の1つ以上を介して脱水され、次いで、凍結乾燥で乾燥される。特定の実施形態では、脱水は上記の(a)~(e)の1つ以上による。
【0031】
脱水および乾燥は、任意の適切な時間、例えば約30分~約12時間、または約30分~約8時間、または約30分~約4時間、または約30分~約2時間で実施されてよい。この時間は、例えば、ミクロフィブリル化セルロースを含む水性組成物の固形分、ミクロフィブリル化セルロースを含む水性組成物のバルク量および乾燥温度などの因子に依存する。
【0032】
特定の実施形態では、乾燥は、約50℃~約120℃、例えば、約60℃~約100℃、または少なくとも約70℃、または少なくとも約75℃、または少なくとも約80℃の温度で実施される。
【0033】
特定の実施形態では、本方法は、乾燥または少なくとも部分的に乾燥したミクロフィブリル化セルロースを、水性または非水性液体であり得る液体媒体中に再分散させることをさらに含む。特定の実施形態では、液体媒体は水性液体、例えば水である。特定の実施形態では、水は、再分散されたミクロフィブリル化セルロースが物品、製品または組成物を製造するために使用されている製造プラントに由来する廃水またはリサイクル廃水である。例えば、紙/板紙製造プラントにおいて、水は製紙プロセスからのリサイクルされた白水であってもよく、またはそれを含んでいてもよい。特定の実施形態では、任意の無機粒子材料および/または無機粒子材料以外の添加剤の少なくとも一部がリサイクル白水中に存在する。
【0034】
特定の実施形態では、この方法は、紙および板紙、ポリマー物品、製品および組成物、およびコーティング、例えば塗料などのその他組成物を含むが、これに限定されない多くの様々な物品、製品または組成物の製造において再分散したミクロフィブリル化セルロースを使用することをさらに含む。
【0035】
特定の実施形態では、乾燥または少なくとも部分的に乾燥したミクロフィブリル化セルロースは、その存在が再分散したミクロフィブリル化セルロースの機械的および/または物理的特性を向上させる無機粒子材料および/または添加剤を含む。そのような無機粒子材料および添加剤は、本明細書において以下に記載される。
【0036】
ミクロフィブリル化セルロースを含む水性組成物は、脱水および乾燥の前にミクロフィブリル化セルロースを含む水性組成物の全重量を基準にして、含水量を低減させるために少なくとも10重量%、例えば少なくとも20重量%、または少なくとも30重量%、または少なくとも40重量%、または少なくとも約50重量%、または少なくとも60重量%、または少なくとも70重量%、または少なくとも80重量%、または少なくとも90重量%、または少なくとも約95重量%、または少なくとも約99重量%、または少なくとも約99.5重量%、または少なくとも99.9重量%を脱水または乾燥してもよい。
【0037】
「乾燥した」または「乾燥」とは、ミクロフィブリル化セルロースを含む水性組成物の含水量が少なくとも95重量%減少することを意味する。
【0038】
「部分的に乾燥した」または「部分的乾燥」とは、ミクロフィブリル化セルロースを含む水性組成物の含水量が95重量%未満の量で減少することを意味する。特定の実施形態では、「部分的に乾燥した」または「部分的乾燥」とは、ミクロフィブリル化セルロースを含む水性組成物の含水量が、少なくとも50重量%、例えば少なくとも75重量%、または少なくとも90重量%減少することを意味する。
【0039】
水性組成物はミクロフィブリル化セルロースを含む。「ミクロフィブリル化セルロース」とは、ミクロフィブリル化前のセルロースの繊維と比較して、セルロースのミクロフィブリルが個々の種として、またはより小さい凝集体として遊離または部分的に遊離するセルロース組成物を意味する。ミクロフィブリル化セルロースは、セルロースを本明細書に記載されるプロセスを含むがこれに限定されないミクロフィブリル化によって得ることができる。使用に適した典型的なセルロース繊維(すなわち、ミクロフィブリル化前のパルプ)は、数百または数千の個々のセルロースミクロフィブリルのより大きな集合体を含む。セルロースをミクロフィブリル化することによって、特定の特徴および特性(本明細書に記載の特徴および特性を含むがこれらに限定されない)がミクロフィブリル化セルロースおよびこのミクロフィブリル化セルロースを含む組成物に付与される。
【0040】
ミクロフィブリル化セルロースは、本明細書に記載されるような任意の適切な供給源に由来してもよい。
【0041】
特に明記しない限り、無機粒子材料に関して本明細書において言及される粒度特性は、Micromeritics Instruments Corporation(米国ジョージア州、ノルクロス)(電話番号:+1 770 662 3620;ウェブサイト:www.micromeritics.com)によって供給されるSedigraph 5100装置(本明細書においては、Micromeritics Sedigraph 5100 unitと称する)を使用して、水性媒体中で完全に分散した状態で粒子材料を沈降させる、既知の方法で測定される。このような装置は、当分野において「球相当径」(e.s.d)と呼ばれる、所定のe.s.d値よりも小さなサイズを持つ粒子の累積的重量百分率の測定値およびプロットを与える。平均粒径d50は、このようにして決定された該粒子のe.s.d値であり、そこにおいては、50重量%のd50値に満たない球相当径を持つ粒子が存在する。
【0042】
あるいは、言及されているところでは、無機粒子材料について本明細書で言及される粒度特性は、Malvern Instruments Ltdによって供給されるMalvern Mastersizer S装置を使用して、レーザー光散乱の分野で用いられる周知の従来の方法によって(または本質的に同じ結果をもたらす他の方法によって) 測定される。レーザー光散乱技術において、粉末、懸濁液およびエマルジョン中の粒子のサイズは、レーザービームの回折を利用して、ミーの理論の応用に基づき測定することができる。このような装置は、当分野において「球相当径」(e.s.d)と呼ばれる、所定のe.s.d値よりも小さなサイズを持つ粒子の累積的体積百分率の測定値およびプロットを与える。平均粒径d50は、このようにして決定された該粒子のe.s.d値であり、そこにおいては、50体積%のd50値に満たない球相当径を持つ粒子が存在する。
【0043】
特に明記しない限り、ミクロフィブリル化セルロース材料の粒度特性は、Malvern Instruments Ltdによって供給されるMalvern Mastersizer S装置を使用して、レーザー光散乱の分野で用いられる周知の従来の方法によって(または本質的に同じ結果をもたらす他の方法によって)測定される。
【0044】
特定の実施形態では、ミクロフィブリル化セルロースは、レーザー光散乱によって測定した場合に約5μm~約500μmの範囲のd50を有する。特定の実施形態では、ミクロフィブリル化セルロースは、約400μm以下、例えば約300μm以下、または約200μm以下、または約150μm以下、または約125μm以下、または約100μm以下、または約90μm以下、または約80μm以下、または約70μm以下、または約60μm以下、または約50μm以下、または約40μm以下、または約30μm以下、または約20μm以下、または約10μm以下のd50を有する。
【0045】
特定の実施形態では、ミクロフィブリル化セルロースは、約0.1~500μmの範囲のモダール繊維粒径を有する。特定の実施形態では、ミクロフィブリル化セルロースは、少なくとも約0.5μm、例えば少なくとも約10μm、または少なくとも約50μm、または少なくとも約100μm、または少なくとも約150μm、または少なくとも約200μm、または少なくとも約300μm、または少なくとも約400μmのモダール繊維粒径を有する。
【0046】
加えて、またはこれに代えて、ミクロフィブリル化セルロースは、Malvernによって測定されるように、約10以上の繊維勾配を有し得る。繊維勾配(すなわち、繊維の粒度分布の勾配)は、以下の式によって決定される。
勾配=100×(d30/d70
【0047】
ミクロフィブリル化セルロースは、約100以下の繊維勾配を有してよい。ミクロフィブリル化セルロースは、約75以下、または約50以下、または約40以下、または約30以下の繊維勾配を有してよい。ミクロフィブリル化セルロースは、約20~約50、または約25~約40、または約25~約35、または約30~約40の繊維勾配を有してよい。
【0048】
ミクロフィブリル化セルロースは、例えば、脱水および/または乾燥の前に処理してもよい。例えば、ミクロフィブリル化セルロースに、以下に特定される1種以上の添加剤(例えば、塩、糖、グリコール、尿素、グリコール、カルボキシメチルセルロース、グアーガム、または以下に特定されるそれらの組み合わせ)を添加してもよい。例えば、1つ以上の(例えば、上記で特定された添加剤を含むか、または含まない)オリゴマーをミクロフィブリル化セルロースに添加してもよい。例えば、分散性を改善させるために、1つ以上の無機粒子材料(例えば、ステアリン酸表面処理(例えばステアリン酸処理炭酸カルシウム)などの疎水性表面処理を有するタルクまたは鉱物)をミクロフィブリル化セルロースに添加してもよい。添加剤は、例えば、低誘電性溶媒中に懸濁させることができる。ミクロフィブリル化セルロースは、例えば、脱水および/または乾燥の前に、エマルジョン、例えば油/水エマルジョン中に存在してもよい。ミクロフィブリル化セルロースは、例えば、脱水および/または乾燥の前に、マスターバッチ組成物、例えばポリマーマスターバッチ組成物および/または高固形分マスターバッチ組成物中に存在してもよい。ミクロフィブリル化セルロースは、例えば、脱水および/または乾燥の前に、高固形分組成物(例えば、約60重量%以上、または約70重量%以上、または約80重量%以上、または約90重量%以上、または約95重量%以上、または約98重量%以上、または約99重量%以上の固形分)であってよい。1つ以上の処理の任意の組合せは、脱水および乾燥の後、しかし再分散の前または間に、ミクロフィブリル化セルロースに付加的または代替的に適用可能であってよい。
【0049】
再分散されたミクロフィブリル化セルロースは、上記(i)、(ii)、(iii)または(iv)による乾燥がされない場合よりも、乾燥または少なくとも部分的に乾燥される前のミクロフィブリル化セルロースにより近い機械的および/または物理的特性を有する。
【0050】
特定の実施形態では、再分散されたミクロフィブリル化セルロースは、(i)、(ii)、(iii)による乾燥がされない場合よりも、乾燥または少なくとも部分的に乾燥される前のミクロフィブリル化セルロースにより近い機械的および/または物理的特性を有する。
【0051】
機械的特性は、ミクロフィブリル化セルロースに関連する任意の決定可能な機械的特性であり得る。例えば、機械的特性は、強度特性、例えば、引張強度であってもよい。引張強度は、引張試験機を用いて測定することができる。乾燥前および再分散後のミクロフィブリル化セルロースの引張強度を比較するために制御される限り、任意の適切な方法および装置を使用することができる。例えば、比較は、等しい濃度のミクロフィブリル化セルロース、および存在し得る任意の他の添加剤または無機粒子材料で実施されるべきである。引張強度は、例えば、N.m/gまたはkN.m/kgなどの任意の適切な単位で表すことができる。
【0052】
物理的特性は、ミクロフィブリル化セルロースに関連する任意の決定可能な物理的特性であり得る。例えば、物理的特性は粘度であってもよい。粘度は、粘度計を用いて測定することができる。乾燥前および再分散後のミクロフィブリル化セルロースの粘度を比較するために制御されるかぎり、任意の適切な方法および装置を使用することができる。例えば、比較は、等しい濃度のミクロフィブリル化セルロース、および存在し得る任意の他の添加剤または無機粒子材料で実施されるべきである。特定の実施形態では、粘度はブルックフィールド粘度であり、単位はmPa・sである。
【0053】
特定の実施形態では、再分散したミクロフィブリル化セルロースの引張強度および/または粘度は、乾燥前のミクロフィブリル化セルロースの水性組成物の引張強度および/または粘度の少なくとも約25%、例えば、乾燥前のミクロフィブリル化セルロースの引張強度および/または粘度の少なくとも約30%、または少なくとも約35%、または少なくとも約40%、または少なくとも45%、または少なくとも約50%、または少なくとも約55%、または少なくとも約60%、または少なくとも約65%、または少なくとも約70%、または少なくとも約75%、または少なくとも約80%である。
【0054】
例えば、乾燥前のミクロフィブリル化セルロースの引張強度が8N・m/gである場合、この値の少なくとも50%の引張強度は4N・m/gで有り得る。
【0055】
特定の実施形態では、再分散したミクロフィブリル化セルロースの引張強度は、乾燥前のミクロフィブリル化セルロースの水性組成物の引張強度の少なくとも約25%、例えば、乾燥前のミクロフィブリル化セルロースの引張強度の少なくとも約30%、または少なくとも約35%、または少なくとも約40%、または少なくとも45%、または少なくとも約50%、または少なくとも約55%、または少なくとも約60%、または少なくとも約65%、または少なくとも約70%、または少なくとも約75%、または少なくとも約80%である。
【0056】
特定の実施形態では、再分散したミクロフィブリル化セルロースの粘度は、乾燥前のミクロフィブリル化セルロースの水性組成物の粘度の少なくとも約25%、例えば、乾燥前のミクロフィブリル化セルロースの粘度の少なくとも約30%、または少なくとも約35%、または少なくとも約40%、または少なくとも45%、または少なくとも約50%、または少なくとも約55%、または少なくとも約60%、または少なくとも約65%、または少なくとも約70%、または少なくとも約75%、または少なくとも約80%である。
【0057】
特定の実施形態では、無機粒子材料および/または無機粒子材料以外の添加剤が、脱水および乾燥中に存在する。無機粒子材料および/または添加剤は、脱水および乾燥の前の任意の段階で添加することができる。例えば、ミクロフィブリル化セルロースを含む水性組成物の製造中、ミクロフィブリル化セルロースを含む水性組成物の製造後、またはその両方で、無機粒子材料および/または添加剤を添加してもよい。特定の実施形態では、無機粒子材料は、ミクロフィブリル化セルロースの製造中に組み込まれ(例えば、本明細書に記載されるような共処理、例えば共粉砕によって)、無機粒子材料以外の添加剤は、ミクロフィブリル化セルロースを含む水性組成物の製造後に添加される。特定の実施形態では、追加の無機粒子材料(ミクロフィブリル化セルロースの製造中に添加される無機粒子と同じであっても異なっていてもよい)が、ミクロフィブリル化セルロースの製造後に、例えば無機粒子材料以外の添加剤の添加と同時に添加されてよい。特定の実施形態では、水性組成物のミクロフィブリル化セルロースは、20~50の繊維勾配を有する。無機粒子材料、添加剤およびそれらの量の詳細を以下に記載する。
【0058】
更なる態様では、ミクロフィブリル化セルロースを再分散させる方法は、液体媒体中で、かつ再分散されたミクロフィブリル化セルロースの機械的および/または物理的特性を向上する無機粒子材料以外の添加剤の存在下で、乾燥または少なくとも部分的に乾燥したミクロフィブリル化セルロースを再分散させることを含む。乾燥される前または少なくとも部分的に乾燥される前のミクロフィブリル化セルロースは、20~50の繊維勾配を有する。
【0059】
更なる別の態様では、ミクロフィブリル化セルロースを再分散させる方法は、液体媒体中で、無機粒子材料の組み合わせの存在下で、乾燥または少なくとも部分的に乾燥したミクロフィブリル化セルロースを再分散させることを含み、無機粒子材料の組み合わせは再分散されたミクロフィブリル化物の機械的および/または物理的特性を向上させる。特定の実施形態では、無機粒子材料の組み合わせは、炭酸カルシウムおよび板状鉱物、例えば板状カオリンまたはタルクを含む。
【0060】
特定の実施形態では、添加剤は、存在する場合、塩、糖、グリコール、尿素、グリコール、カルボキシメチルセルロース、グアーガム、またはそれらの組み合わせである。
【0061】
特定の実施形態では、添加剤は、存在する場合、塩、糖、グリコール、尿素、グリコール、グアーガム、またはそれらの組み合わせである。
【0062】
特定の実施形態では、糖は、単糖類(例えば、グルコース、フルクトース、ガラクトース)、二糖類(例えば、ラクトース、マルトース、スクロース)、オリゴ糖(一つ以上の単糖の50単位以下の鎖)、多糖類、およびそれらの組み合わせから選択される。
【0063】
特定の実施形態では、塩は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩化物、例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウムおよび/または塩化カルシウムである。特定の実施形態では、塩は塩化ナトリウムを含むか、または塩化ナトリウムである。
【0064】
特定の実施形態では、グリコールは、例えば、エチレン、プロピレンおよびブチレングリコール、およびそれらの組み合わせから選択されるアルキレングリコールである。特定の実施形態では、グリコールはエチレングリコールを含むか、またはエチレングリコールである。
【0065】
特定の実施形態では、添加剤は尿素を含むか、または尿素である。
【0066】
特定の実施形態では、添加剤はグアーガムを含むか、またはグアーガムである。
【0067】
特定の実施形態では、添加剤はカルボキシメチルセルロースを含むか、またはカルボキシメチルセルロースである。特定の実施形態では、添加剤はカルボキシメチルセルロースではない。
【0068】
特定の実施形態では、乾燥または少なくとも部分的に乾燥させる前のミクロフィブリル化セルロースはアセチル化されていない。特定の実施形態では、乾燥または少なくとも部分的に乾燥させる前のミクロフィブリル化セルロースには、アセチル化が実施されない。
【0069】
無機粒子材料は、以下の段階の1つ以上で添加することができる:(i)ミクロフィブリル化セルロースを含む水性組成物の製造前または製造中;(ii)ミクロフィブリル化セルロースを含む水性組成物の製造後;(iii)ミクロフィブリル化セルロースの水性組成物の脱水中;(iv)ミクロフィブリル化セルロースの水性組成物の乾燥中;および(v)乾燥または少なくとも部分的に乾燥したミクロフィブリル化セルロースの再分散の前または再分散中、に添加することができる。
【0070】
再分散されたミクロフィブリル化セルロースは、無機粒子および/または添加剤が存在していない場合よりも、乾燥および再分散前のミクロフィブリル化セルロースにより近い機械的および/または物理的特性を有する。言い換えれば、無機粒子材料および/または無機粒子材料以外の添加剤の存在は、再分散されたミクロフィブリル化物の機械的および/または物理的特性を向上させる。
【0071】
特定の実施形態では、再分散されたミクロフィブリル化セルロースは、無機粒子材料および/または添加剤が存在していない場合よりも、乾燥または部分的に乾燥される前のミクロフィブリル化セルロースにより近い機械的および/または物理的特性を有する。
【0072】
上記のように、機械的特性は、ミクロフィブリル化セルロースに関連する任意の決定可能な機械的特性であり得る。例えば、機械的特性は、強度特性、例えば、引張強度であってもよい。引張強度は、引張試験機を用いて測定することができる。乾燥前および再分散後のミクロフィブリル化セルロースの引張強さを比較するために制御される限り、任意の適切な方法および装置を使用することができる。例えば、比較は、等しい濃度のミクロフィブリル化セルロース、および存在し得る任意の他の添加剤または無機粒子材料で実施されるべきである。引張強度は、例えば、N.m/gまたはkN.m/kgなどの任意の適切な単位で表すことができる。
【0073】
物理的特性は、ミクロフィブリル化セルロースに関連する任意の決定可能な物理的特性であり得る。例えば、物理的特性は粘度であってもよい。粘度は、粘度計を用いて測定することができる。乾燥前および再分散後のミクロフィブリル化セルロースの粘度を比較するために制御される限り、任意の適切な方法および装置を使用することができる。例えば、比較は、等しい濃度のミクロフィブリル化セルロース、および存在し得る任意の他の添加剤または無機粒子材料で実施されるべきである。特定の実施形態では、粘度はブルックフィールド粘度であり、単位はmPa・sである。
【0074】
特定の実施形態では、再分散したミクロフィブリル化セルロースの引張強度および/または粘度は、乾燥前のミクロフィブリル化セルロースの水性組成物の引張強度および/または粘度の少なくとも約25%、例えば、乾燥前のミクロフィブリル化セルロースの引張強度および/または粘度の少なくとも約30%、または少なくとも約35%、または少なくとも約40%、または少なくとも45%、または少なくとも約50%、または少なくとも約55%、または少なくとも約60%、または少なくとも約65%、または少なくとも約70%、または少なくとも約75%、または少なくとも約80%である。
【0075】
例えば、乾燥前のミクロフィブリル化セルロースの引張強度が8N・m/gである場合、この値の少なくとも50%の引張強度は4N・m/gで有り得る。
【0076】
特定の実施形態では、再分散したミクロフィブリル化セルロースの引張強度は、乾燥前のミクロフィブリル化セルロースの水性組成物の引張強度の少なくとも約25%、例えば、乾燥前のミクロフィブリル化セルロースの引張強度の少なくとも約30%、または少なくとも約35%、または少なくとも約40%、または少なくとも45%、または少なくとも約50%、または少なくとも約55%、または少なくとも約60%、または少なくとも約65%、または少なくとも約70%、または少なくとも約75%、または少なくとも約80%である。
【0077】
特定の実施形態では、再分散したミクロフィブリル化セルロースの粘度は、乾燥前のミクロフィブリル化セルロースの水性組成物の粘度の少なくとも約25%、例えば、乾燥前のミクロフィブリル化セルロースの粘度の少なくとも約30%、または少なくとも約35%、または少なくとも約40%、または少なくとも45%、または少なくとも約50%、または少なくとも約55%、または少なくとも約60%、または少なくとも約65%、または少なくとも約70%、または少なくとも約75%、または少なくとも約80%である。
【0078】
存在する場合、無機粒子材料および/または添加剤は、ミクロフィブリル化セルロースの再分散性を向上させる、すなわち再分散したミクロフィブリル化物の機械的および/または物理的特性を向上させるために十分な量で存在する。
【0079】
乾燥前のミクロフィブリル化セルロース(存在する場合は無機粒子を含む)を含む水性組成物の総重量に基づいて、添加剤は、約0.1重量%~約200重量%、約0.1重量%~約100重量%、約0.1重量%~約80重量%、約0.1重量%~約60重量%、約0.1重量%~約40重量%、約0.1重量%~約20重量%、または約0.25重量%~約15重量%、または約0.5重量%~約10重量%、または約0.5重量%~約7.5重量%、または約0.5重量%~約5重量%、または約0.5重量%~約4重量%、または約9.5重量%~約4重量%、または約1重量%~約3重量%の量で添加してよい。
【0080】
ミクロフィブリル化セルロースおよび任意の無機粒子材料を含む水性組成物は、乾燥前に最大約50重量%の固形分を有していてもよく、例えば、最大約40重量%、または最大約30重量%、または最大約20重量%、または最大約15重量%、または最大約10重量%、または最大約5重量%、または最大約4重量%、または最大約3重量%、または最大約2重量%、または最大約2重量%であってよい。
【0081】
乾燥前の水性組成物ミクロフィブリル化セルロースの固形分に基づいて、無機粒子は総固形分の約最大99%、例えば総固形分の最大約90%、または最大約80重量%、または最大約70重量%、または最大約60重量%、または最大約50重量%、または最大約40重量%、または最大約30重量%、または最大約20重量%、または最大約10重量%、または最大約5重量%を構成してよい。
【0082】
特定の実施形態では、水性組成物中の無機粒子対ミクロフィブリル化セルロースの重量比は、約10:1~約1:2、例えば約8:1~約1:1、または約6:1~約3:2、または約5:1~約2:1、または約5:1~約3:1、または約4:1~約3:1、または約4:1である。
【0083】
特定の実施形態では、乾燥または少なくとも部分的に乾燥する前のミクロフィブリル化セルロースの水性組成物は、最大約20重量%の固形分を有し、任意に固体の最大約80%が無機粒子材料である。
【0084】
特定の実施形態では、水性組成物は、乾燥前に無機粒子材料を実質的に含まない。
【0085】
無機粒子材料は、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイト、石膏などのアルカリ土類金属炭酸塩または硫酸塩、カオリン、ハロイサイトまたはボールクレーなどの含水カンダイトクレー、メタカオリンなどの無水(か焼した)カンダイトクレー、または完全にか焼したカオリン、タルク、雲母、ハンタイト、ハイドロマグネサイト、すりガラス、パーライトまたは珪藻土、またはウォラストナイト、または二酸化チタン、または水酸化マグネシウム、またはアルミニウム三水和物、石灰、グラファイト、またはこれらの組み合わせであってよい。
【0086】
特定の実施形態では、無機粒子材料は、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイト、石膏、無水カンダイトクレー、パーライト、珪藻土、ウォラストナイト、水酸化マグネシウム、またはアルミニウム三水和物、二酸化チタン、またはこれらの組み合わせを含むか、またはそれであってよい。
【0087】
特定の実施形態では、無機粒子材料は、表面処理された無機粒子材料であってもよい。例えば、無機粒子材料は、脂肪酸またはその塩のような疎水化剤で処理することができる。例えば、無機粒子材料は、ステアリン酸処理炭酸カルシウムであってもよい。
【0088】
本発明で使用するための例示的な無機粒子材料は、炭酸カルシウムである。以後本発明は、炭酸カルシウムに関する観点から、および炭酸カルシウムが処理および/または処理される態様に関して説明する。本発明は、そのような実施形態に限定されると解釈されるべきではない。
【0089】
本発明で使用される粒子状炭酸カルシウムは、天然原料を粉砕することによって得られる。粉砕された炭酸カルシウム(GCC)は、典型的には、チョーク、大理石または石灰石などの鉱物原料を圧砕し、次に粉砕することによって得られ、続いて粒径分類工程を行うことによって望ましい微粉度を有する生成物を得てもよい。漂白、浮遊選鉱、および磁力選鉱などのその他の技法を利用して、望ましい微粉度および/または色を有する生成物を得ることもできる。粒子状固形材料は自生的に、すなわち固形材料自体の粒子間の磨耗によって、あるいは粉砕対象である炭酸カルシウムとは異なる材料の粒子を含む粒子状粉砕媒体の存在下で粉砕され得る。これらのプロセスは、分散剤および殺生物剤の存在の有無にかかわりなく実施することができ、分散剤および殺生物剤はプロセスのいずれの段階で添加してもよい。
【0090】
沈降炭酸カルシウム(PCC)は、本発明における粒状炭酸カルシウムの原料として使用することができ、当該技術分野で利用可能な既知の方法のいずれかによって生成することができる。TAPPI Monograph Series No30、「Paper Coating Pigments」、34-35頁は、製紙産業で使用する生成物の調製における使用に適した沈降炭酸カルシウムを調製するための3つの主な商業的方法を記載しているが、本発明の実施においても使用可能である。3つのプロセスの全てにおいて、石灰石などの炭酸カルシウム供給材料をまずか焼して生石灰を生成し、次いで生石灰を水中で消和して水酸化カルシウムまたは石灰乳を得る。第1のプロセスでは、石灰乳を二酸化炭素ガスで直接炭酸化する。このプロセスには副生成物が出ないという利点があり、また炭酸カルシウム生成物の特性および純度の制御が比較的容易である。第2のプロセスでは、石灰乳をソーダ灰と接触させて、複分解によって炭酸カルシウムの沈殿物および水酸化ナトリウムの溶液を生成する。水酸化ナトリウムは、このプロセスが商業的に使用される場合、炭酸カルシウムから実質的に完全に分離されてよい。第3の主な商業的プロセスでは、まず石灰乳を塩化アンモニウムと接触させて塩化カルシウム溶液およびアンモニアガスを得る。次いで、塩化カルシウム溶液をソーダ灰と接触させ、複分解によって沈降炭酸カルシウムおよび塩化ナトリウム溶液を生成する。結晶は、使用される特定の反応プロセスに依存して、様々な異なる形状およびサイズで生成することができる。PCC結晶の3つの主な形態は、アラゴナイト、菱面体晶系および偏三角面体(例えば、方解石)であり、それらの全てが、その混合物を含めて本発明における使用に適している。
【0091】
特定の実施形態では、PCCは、ミクロフィブリル化セルロースを生成するプロセス中に形成されてもよい。
【0092】
炭酸カルシウムの湿式粉砕は、炭酸カルシウムの水性懸濁液の調製を伴い、次に任意の適切な分散剤の存在下で粉砕を行う。炭酸カルシウムの湿式粉砕に関する更なる情報については、例えば欧州特許出願EP-A-614948号明細書(その内容は、参照により全て本明細書に組み込まれる)を参照することができる。
【0093】
本発明の無機粒子材料を天然原料から得る場合、若干の鉱物質不純物が粉砕された材料を汚染する場合がある。例えば、天然の炭酸カルシウムは、その他の鉱物を伴って存在する場合がある。したがって、いくつかの実施形態では、無機粒子材料は、ある量の不純物を含む。しかしながら、一般に、本発明で使用の無機粒子材料が含有するその他の鉱物質不純物は約5重量%未満、または約1重量%未満である。
【0094】
無機粒子材料は、粒子の少なくとも約10重量%が2μm未満のe.s.dを有する粒度分布、例えば粒子の少なくとも約20重量%、または少なくとも約30重量%、または少なくとも約40重量%、または少なくとも約50重量%、または少なくとも約60重量%、または少なくとも約70重量%、または少なくとも約80重量%、または少なくとも約90重量%、または少なくとも約95重量%または約100%が2μm未満のe.s.dを有する粒度分布を有する。
【0095】
別の実施形態では、無機粒子材料は、Malvern Mastersizer S装置で測定した場合に、粒子の少なくとも約10体積%が2μm未満のe.s.dを有する粒度分布、例えば粒子の少なくとも約20体積%、または少なくとも約30体積%、または少なくとも約40体積%、または少なくとも約50体積%、または少なくとも約60体積%、または少なくとも約70体積%、または少なくとも約80体積%、または少なくとも約90体積%、または少なくとも約95体積%または約100%が2μm未満のe.s.dを有する粒度分布を有する。
【0096】
Malvern Mastersizer S装置を使用して、無機粒子材料とミクロフィブリル化セルロースとの混合物の粒度分布を特徴付けるために使用した手順の詳細を以下に示す。
【0097】
特定の実施形態では、無機粒子材料は、カオリン粘土であるか、またはカオリン粘土を含む。以後本セクションは、カオリンに関する観点から、およびカオリンが処理および/または処理される態様に関連して説明する。本発明は、そのような実施形態に限定されると解釈されるべきではない。したがって、いくつかの実施形態では、カオリンは未処理形態で使用される。
【0098】
本発明で使用されるカオリン粘土は、天然原料、すなわち原料天然カオリン粘土鉱物に由来する加工材料であってよい。加工されたカオリン粘土は、典型的には、少なくとも約50重量%のカオリナイトを含有してもよい。例えば、ほとんどの商業的に加工されたカオリン粘土は、約75重量%超のカオリナイトを含み、約90重量超、場合によっては約95重量%超のカオリナイトを含有してよい。
【0099】
本発明で使用されるカオリン粘土は、当業者に周知の1つ以上の他の方法、例えば公知の精錬または選鉱工程によって原料天然カオリン粘土鉱物から調製することができる。
【0100】
例えば、粘土鉱物は、亜ジチオン酸ナトリウムなどの還元漂白剤で漂白することができる。亜ジチオン酸ナトリウムを使用する場合、亜ジチオン酸ナトリウムの漂白工程の後に、漂白された粘土鉱物を任意に脱水、および任意に洗浄、および任意に再び脱水してもよい。
【0101】
粘土鉱物は不純物を除去するために処理されてもよく、例えば当技術分野で周知の凝集、浮遊選鉱、または磁力選鉱技術によって除去することができる。あるいは、本発明の第1の態様において使用される粘土鉱物は、固体の形態で、または水性懸濁液として未処理であってもよい。
【0102】
粒状カオリン粘土を調製する方法はまた、1つ以上の粉砕工程、例えば、研削またはミリングを含んでもよい。粗カオリンの軽質粉砕を使用して、その適切な層間剥離が得られる。プラスチック(例えば、ナイロン)のビーズもしくは顆粒、砂またはセラミック研削もしくはミリング補助物を使用して行うことができる。周知の手順を用いて粗カオリンを精製して不純物を除去し、物理的特性を改善することができる。カオリン粘土は、所望のd50値または粒度分布を有する粒子を得るために、既知の粒子サイズ分類手順、例えばスクリーニングおよび遠心分離(またはその両方)によって処理することができる。
【0103】
特定の実施形態では、無機粒子材料は、任意に例えば炭酸カルシウムなどの別の無機粒子材料と組み合わせて、板状鉱物、例えばカオリンおよび/またはタルクであるかまたはそれを含む。
【0104】
「板状の」カオリンとは、高い形状係数を有するカオリン、カオリン生成物を意味する。板状カオリンは、約20~約60未満の形状係数を有する。超板状カオリンは、約60~100または100超の形状係数を有する。本明細書で使用される「形状係数」は、本明細書に参照により組み込まれる米国特許第5,576,617号に記載されている導電率法、装置および式を使用して測定された、様々なサイズおよび形状の粒子の集団に対する粒子径対粒子厚の比の尺度である。形状係数を決定する技術が’617特許にさらに記載されており、組成物が容器を通って流れるとき、試験下で配向粒子の水性懸濁液の組成物の導電率が測定される。導電率の測定は、容器の一方向に沿って、および第1の方向と交差する容器の別の方向に沿って行われる。2つの導電率測定の間の差を用いて、試験下で粒子材料の形状係数が決定される。
【0105】
特定の実施形態では、無機粒子材料は、任意に例えば炭酸カルシウムなどの別の無機粒子材料と組み合わせて、タルクであるかまたはそれを含む。
【0106】
特定の実施形態では、無機粒子材料は炭酸カルシウムであり、表面処理されていてもよく、水性組成物は、本明細書に記載の無機粒子材料以外の添加剤をさらに1つ以上含む。
【0107】
特定の実施形態では、無機粒子材料はカオリン、例えば板状または超板状カオリンであり、表面処理されていてもよく、水性組成物は、本明細書に記載の無機粒子材料以外の添加剤をさらに1つ以上含む。
【0108】
特定の実施形態では、無機粒子材料はタルクであり、表面処理されていてもよく、水性組成物は、本明細書に記載の無機粒子材料以外の添加剤をさらに1つ以上含む。
【0109】
特定の実施形態では、ミクロフィブリル化セルロースを含む水性組成物は無機粒子材料を含まず、水性組成物は、本明細書に記載の無機粒子材料以外の添加剤をさらに1つ以上含む。
【0110】
本明細書に記載の様々な方法は、有利な特性を有する再分散したミクロフィブリル化セルロースの製造を提供する。
【0111】
したがって、さらなる態様では、液体媒体に再分散され、本明細書に記載の方法態様のいずれか1つに記載の方法によって得ることができる、比較可能な濃度において、乾燥前のミクロフィブリル化セルロース水性組成物の引張強度および/または粘度の少なくとも50%の引張強度および/または粘度を有するミクロフィブリル化セルロースを含む組成物が提供され、(i)水性組成物のミクロフィブリル化セルロースが20~50の繊維勾配を有するおよび/または(ii)ミクロフィブリル化セルロースの水性組成物が無機粒子材料を含み、任意に無機粒子材料以外の添加剤をさらに含む、のどちらかである。
【0112】
再分散したミクロフィブリル化セルロースは、物品、製品、または組成物、例えば、紙、板紙、ポリマー物品、塗料などに使用することができる。
【0113】
ミクロフィブリル化セルロースおよび任意の無機粒子材料の製造方法
【0114】
特定の実施形態では、ミクロフィブリル化セルロースは、無機粒子材料の存在下または非存在下で調製することができる。
【0115】
ミクロフィブリル化セルロースは、セルロースを含む繊維質基材に由来する。セルロースを含む繊維質基材は、木材、草(例えば、サトウキビ、竹)、または布(例えば、紡織ウエイスト、綿、麻または亜麻)などの任意の適切な供給源から得ることができる。セルロースを含む繊維質基材は、任意の適切な化学的または機械的処理、またはそれらの組み合わせによって調製され得るパルプ(すなわち、セルロース繊維の水中懸濁液)の形態であり得る。例えば、パルプは、化学パルプ、またはケミサーモメカニカルパルプ、または機械パルプ、または再生パルプ、または製紙ブローク、または製紙廃棄物流、または製紙工場からの廃棄物、または溶解パルプ、ケナフパルプ、マーケットパルプ、部分カルボキシメチル化パルプ、アバカパルプ、アメリカツガパルプ、バーチパルプ、草パルプ、竹パルプ、パームパルプ、ピーナッツシェル、またはそれらの組み合わせであり得る。セルロースパルプは、当該分野においてカナダ標準ろ水度(CSF)としてcmで報告される既定のろ水度にまで(例えば、バレービーター内で)叩解および/または別の方法でリファイニングされ得る(例えば、コニカルまたはプレートリファイナにおける加工)。CSFは、パルプ懸濁液がはける速度によって測定されるパルプのろ水度または排水速度の値を意味する。例えば、セルロースパルプは、ミクロフィブリル化前に約10cm以上のカナダ標準ろ水度を有し得る。セルロースパルプは、約700cm以下、例えば約650cm以下、または約600cm以下、または約550cm以下、または約500cm以下、または約450cm以下、または約400cm以下、または約350cm以下、または約300cm以下、または約250cm以下、または約200cm以下、または約150cm以下、または約100cm以下または約50cm以下のCSFを有し得る。次いで、セルロースパルプは、当該技術分野において周知の方法によって脱水されてもよく、例えば、パルプをスクリーンで濾過することによって、少なくとも約10%の固形分、例えば少なくとも約15%の固形分、または少なくとも約20%の固形分、または少なくとも約30%の固形分、または少なくとも約40%の固形分を含むウェットシートが得られる。パルプを、リファイニングしていない状態で、すなわち叩解もしくは脱水、または別の方法でリファイニングをすることなく利用してもよい。
【0116】
特定の実施形態では、パルプは、炭酸カルシウムのような無機粒子材料の存在下で叩解されてもよい。
【0117】
ミクロフィブリル化セルロースの調製のために、セルロースを含む繊維質基材を、乾燥状態で粉砕槽またはホモジナイザに加えてもよい。例えば、乾燥した紙ブロークを直接、粉砕槽に加えてもよい。次いで、粉砕槽内の水性環境によって、パルプ形成が促進される。
【0118】
ミクロフィブリル化の工程は、リファイナを含むがこれに限定されない任意の適切な装置で実施することができる。一実施形態では、ミクロフィブリル化工程は、粉砕槽において湿式粉砕条件下で行われる。別の実施形態では、ミクロフィブリル化工程は、ホモジナイザにおいて行われる。これらの実施形態のそれぞれについては以下でより詳細に説明する。
【0119】
湿式粉砕
粉砕は、従来の方法で適切に行われる。粉砕は、粒子状粉砕媒体の存在下での磨砕プロセスであっても、または自生粉砕プロセス、すなわち、粉砕媒体の不在下でのプロセスであってもよい。粉砕媒体とは、特定の実施形態においてセルロースを含む繊維質基材と共粉砕される無機粒子材料以外の媒体を意味する。
【0120】
粒子状粉砕媒体は、存在する場合には、天然または合成材料であり得る。例えば、任意の硬質鉱物、セラミックまたは金属材料のボール、ビーズまたはペレットを含んでよい。このような材料には、例えばアルミナ、ジルコニア、ケイ酸ジルコニウム、ケイ酸アルミニウム、またはカオリン質粘土を約1300~約1800℃の範囲の温度でか焼することによって生成されるムライト高含有材料が含まれ得る。例えば、いくつかの実施形態では、Carbolite(登録商標)粉砕媒体が使用される。あるいは、適切な粒子サイズの天然の砂粒子を使用してもよい。
【0121】
他の実施形態では、硬材粉砕媒体(例えば、木粉)を使用することができる。
【0122】
一般に、本発明で使用するために選択される粉砕媒体のタイプおよび粒径は、粉砕対象である材料の供給懸濁液の特性(例えば、粒径)、および化学組成に左右され得る。いくつかの実施形態では、粒子状粉砕媒体は、約0.1~約6.0mmの範囲、例えば約0.2~約4.0mmの範囲の平均直径を有する粒子を含む。粉砕媒体(複数可)は、装入物の最大約70体積%の量で存在してよい。粉砕媒体は、装入物の少なくとも約10体積%、例えば装入物の少なくとも約20体積%、または装入物の少なくとも約30体積%、または装入物の少なくとも約40体積%、または装入物の少なくとも約50体積%、または装入物の少なくとも約60体積%の量で存在してよい。
【0123】
粉砕は1つ以上の段階で行うことができる。例えば、粗無機粒子材料を粉砕槽において既定の粒度分布にまで粉砕し、その後にセルロースを含む繊維質基材を添加し、所望のレベルのミクロフィブリル化が得られるまで粉砕を続けてもよい。
【0124】
無機粒子材料は、粉砕媒体の不在下または存在下で、湿式または乾式粉砕され得る。湿式粉砕段階の場合には、粗無機粒子材料を粉砕媒体の存在下で水性懸濁液中で粉砕する。
【0125】
一実施形態では、無機粒子材料の平均粒径(d50)は、共粉砕プロセス中に低下する。例えば、無機粒子材料のd50は、(Malvern Mastersizer S装置で測定した場合に)少なくとも約10%低下し、例えば、無機粒子材料のd50は、少なくとも約20%低下し、または少なくとも約30%低下し、または少なくとも約50%低下し、または少なくとも約50%低下し、または少なくとも約60%低下し、または少なくとも約70%低下し、または少なくとも約80%低下し、または少なくとも約90%低下し得る。例えば、共粉砕前に2.5μmのd50を有し、共粉砕後に1.5μmのd50を有する無機粒子材料は、40%の粒径の低下を経ている。特定の実施形態では、無機粒子材料の平均粒径は、共粉砕プロセス中に有意に低下しない。「有意に低下しない」とは、無機粒子材料のd50の低下が約10%未満であることを意味し、例えば無機粒子材料のd50の低下は約5%未満である。
【0126】
セルロースを含む繊維質基材は、レーザー光散乱法によって測定した場合に約5~約500μmのd50を有するミクロフィブリル化セルロースが得られるように、任意に無機粒子材料の存在下でミクロフィブリル化され得る。セルロースを含む繊維質基材は、約400μm以下、例えば約300μm以下、または約200μm以下、または約150μm以下、または約125μm以下、または約100μm以下、または約90μm以下、または約80μm以下、または約70μm以下、または約60μm以下、または約50μm以下、または約40μm以下、または約30μm以下、または約20μm以下、または約10μm以下のd50を有するミクロフィブリル化セルロースが得られるように、任意に無機粒子材料の存在下でミクロフィブリル化され得る。
【0127】
セルロースを含む繊維質基材は、モダール繊維粒径約0.1~500μmを有するミクロフィブリル化セルロース、およびモダール無機粒子材料粒径0.25~20μmが得られるように、任意に無機粒子材料の存在下でミクロフィブリル化され得る。セルロースを含む繊維質基材は、少なくとも約0.5μmのモダール繊維粒径、例えば少なくとも約10μm、または少なくとも約50μm、または少なくとも約100μm、または少なくとも約150μm、または少なくとも約200μm、または少なくとも約300μm、または少なくとも約400μmのモダール繊維粒径を有するミクロフィブリル化セルロースが得られるように、任意に無機粒子材料の存在下でミクロフィブリル化され得る。
【0128】
セルロースを含む繊維質基材は、任意に無機粒子材料の存在下で、ミクロフィブリル化され、上記のような繊維勾配を有するミクロフィブリル化セルロースを得ることができる。
【0129】
粉砕は、回転ミル(例えば、ロッドミル、ボールミル、および自生ミル)、攪拌ミル(例えば、SAMまたはIsaMill)、タワーミル、撹拌媒体デトライタ(SMD)、または回転する平行粉砕プレート(このプレートの間に粉砕対象である供給原料を供給する)を備えた粉砕槽において行われる。
【0130】
一実施形態では、粉砕槽はタワーミルである。タワーミルは、1つ以上の粉砕ゾーン上に静止ゾーンを備え得る。静止ゾーンは、タワーミルの内部の最上部に向かって位置する領域であり、ここでは粉砕が最小限にしかまたは全く行われず、またミクロフィブリル化セルロースおよび任意の無機粒子材料を含んでいる。静止ゾーンは、粉砕媒体の粒子がタワーミルの1つ以上の粉砕ゾーン内へと沈降する領域である。
【0131】
タワーミルは、1つ以上の粉砕ゾーン上に分級機を備え得る。一実施形態では、この分級機は最上部に取り付けられ、また静止ゾーンに隣接する。分級機は液体サイクロンであってよい。
【0132】
タワーミルは、1つ以上の粉砕ゾーンの上にスクリーンを含むことができる。一実施形態では、静止ゾーンおよび/または分級機に隣接してスクリーンが配置される。スクリーンは、ミクロフィブリル化セルロースおよび任意の無機粒子材料を含む生成物である水性懸濁液から粉砕媒体を分離し、粉砕媒体の沈降を向上させるようなサイズにすることができる。
【0133】
一実施形態では、粉砕はプラグフロー条件下で行われる。プラグフロー条件下では、タワーを通る流れは、タワー全体を通して粉砕材料の混合が制限されるようなものである。これはタワーミルの長さに沿った異なる地点において、ミクロフィブリル化セルロースの微粉度が上昇するにつれて水性環境の粘度が変化することを意味する。従って、事実上、タワーミル内の粉砕領域は、特徴的な粘度を有する1つ以上の粉砕ゾーンを含むと考えることができる。当業者は、隣接する粉砕ゾーン間において粘度にはっきりとした境界はないことを理解するであろう。
【0134】
一実施形態では、1つ以上の粉砕ゾーンの上の静止ゾーンまたは分級機またはスクリーンに近接したミルの最上部で水を加えることによって、ミル内のこれらのゾーンでのミクロフィブリル化セルロースおよび任意に無機粒子材料を含む水性懸濁液の粘度を低下させる。ミルにおけるこの地点で生成物であるミクロフィブリル化セルロースおよび任意に無機粒子材料を希釈することによって、静止ゾーンおよび/または分級機および/またはスクリーンへの粉砕媒体のキャリーオーバーの防止が改善されることが判明している。更に、タワーでの混合が制限されることから、タワー下での高固形分での加工が可能になり、また最上部での希釈を、希釈水がタワーを下って1つ以上の粉砕ゾーン内に逆流するのを抑えて行うことが可能になる。ミクロフィブリル化セルロースおよび任意に無機粒子材料を含む生成物である水性懸濁液の粘度を低下させるのに効果的な、任意の適切な量の水が添加されてよい。この水は、粉砕プロセス中に連続的に、または一定の間隔で、または不定期な間隔で添加されてよい。
【0135】
別の実施形態では、水は1つ以上の粉砕ゾーンに1つ以上の注水点を経由して添加されてよく、この注水点はタワーミルの長さに沿って位置されている。または、各注水点は1つ以上の粉砕ゾーンに対応した位置に配置されている。有利には、タワーに沿った様々な位置での注水能によって、ミルに沿ったいずれの、または全ての位置での粉砕条件の更なる調節が可能になる。
【0136】
タワーミルは、一連のインペラロータディスクを長さに沿って備えた垂直インペラシャフトを備えてよい。インペラロータディスクの作動によって、ミル全体にわたって一連の個別の粉砕ゾーンが形成される。
【0137】
別の実施形態では、粉砕は、撹拌媒体デトライタなどのスクリーン粉砕機で行われる。スクリーン粉砕機は、少なくとも約250μmの公称開口サイズを有する1つ以上のスクリーンを備えてよく、例えば、この1つ以上のスクリーンは、少なくとも約300μm、または少なくとも約350μm、または少なくとも約400μm、または少なくとも約450μm、または少なくとも約500μm、または少なくとも約550μm、または少なくとも約600μm、または少なくとも約650μm、または少なくとも約700μm、または少なくとも約750μm、または少なくとも約800μm、または少なくとも約850μm、または少なくとも約900μm、または少なくとも約1000μmの公称開口サイズを有し得る。
【0138】
直前に記載したスクリーンサイズは、上記のタワーミルの実施形態に適用可能である。
【0139】
上記のように、粉砕は粉砕媒体の存在下で行うことができる。一実施形態では、粉砕媒体は、約1~約6mm、例えば約2mm、または約3mm、または約4mm、または約5mmの範囲の平均直径を有する粒子を含む粗い媒体である。
【0140】
別の実施形態において、粉砕媒体は、少なくとも約2.5、例えば少なくとも約3、または少なくとも約3.5、または少なくとも約4.0、または少なくとも約4.5、または少なくとも約5.0、または少なくとも約5.5、または少なくとも約6.0の比重を有する。
【0141】
別の実施形態において、粉砕媒体は、約1~約6mmの範囲の平均直径を有する粒子を含み、また少なくとも約2.5の比重を有する。
【0142】
別の実施形態では、粉砕媒体は、約3mmの平均直径および約2.7の比重を有する粒子を含む。
【0143】
上述のように、粉砕媒体(複数可)は、装入物の最大約70体積%の量で存在してよい。粉砕媒体は、装入物の少なくとも約10体積%、例えば装入物の少なくとも約20体積%、または装入物の少なくとも約30体積%、または装入物の少なくとも約40体積%、または装入物の少なくとも約50体積%、または装入物の少なくとも約60体積%の量で存在し得る。
【0144】
一実施形態では、粉砕媒体は、装入物の約50体積%の量で存在する。
【0145】
「装入物(charge)」とは、粉砕槽に供給される供給原料である組成物を意味する。装入物には、水、粉砕媒体、セルロースを含む繊維質基材、任意に無機粒子材料、および本明細書に記載されるようなその他の任意の添加剤が含まれる。
【0146】
比較的粗いおよび/または高密度な媒体の使用には、改善された(すなわちより速い)沈降速度、静止ゾーンおよび/または分級機および/またはスクリーンを通しての媒体のキャリーオーバーの軽減という利点がある。
【0147】
比較的粗い粉砕媒体の使用における更なる利点は、粉砕プロセス中に無機粒子材料の平均粒径(d50)が大幅に低下しないことから、粉砕システムに投入されるエネルギーが主にセルロースを含む繊維質基材のミクロフィブリル化に費やされることである。
【0148】
比較的粗いスクリーンを使用する更なる利点は、ミクロフィブリル化工程で比較的粗いまたは高密度の粉砕媒体を使用可能なことである。加えて、比較的粗いスクリーン(すなわち、少なくとも約250μmの公称開口サイズを有する)の使用によって、比較的高固形分の生成物の加工および粉砕機からの取り出しが可能になり、これによって比較的高固形分の供給原料(セルロースを含む繊維質基材および無機粒子材料を含む)を採算の取れるプロセスで加工することが可能になる。後述するように、初期固形分が高い供給原料がエネルギー効率について望ましいことが見出されている。更に、低固形分で(所定のエネルギーで)生成された生成物はより粗い粒度分布を有することもまた見出されている。
【0149】
粉砕は粉砕槽のカスケードにおいて行われ、その1つ以上の粉砕槽が1つ以上の粉砕ゾーンを備え得る。例えば、セルロースを含む繊維質基材および無機粒子材料は、2つ以上の粉砕槽のカスケード、例えば3つ以上の粉砕槽のカスケード、または4つ以上の粉砕槽のカスケード、または5つ以上の粉砕槽のカスケード、または6つ以上の粉砕槽のカスケード、または7つ以上の粉砕槽のカスケード、または8つ以上の粉砕槽のカスケード、または9つ以上の直列の粉砕槽のカスケード、または最大10個の粉砕槽を含むカスケードにおいて粉砕され得る。粉砕槽のカスケードは、直列または並列または直列と並列との組み合わせで作動可能に連結されてよい。カスケードの粉砕槽の1つ以上からの産出物および/または粉砕槽の1つ以上への投入物は、1つ以上のスクリーニング工程および/または1つ以上の分級工程に供されてよい。
【0150】
回路は、1つ以上の粉砕槽とホモジナイザとの組み合わせを含むことができる。
【0151】
一実施形態では、粉砕は閉回路で行われる。別の実施形態では、粉砕は開回路で行われる。粉砕はバッチモードで行うことができる。粉砕は、再循環バッチモードで行うことができる。
【0152】
上述したように、粉砕回路は予備粉砕工程を含んでよく、この予備粉砕工程では、粗無機粒子は粉砕槽において既定の粒度分布にまで粉砕され、その後、セルロースを含む繊維質基材がこの予備粉砕された無機粒子材料に加えられ、粉砕は、所望するレベルのミクロフィブリル化が得られるまで同一または異なる粉砕槽において継続される。
【0153】
粉砕対象である材料の懸濁液の粘度は比較的高くなり得ることから、適切な分散剤を粉砕前に懸濁液に添加してよい。この分散剤は、例えば水溶性縮合リン酸塩、ポリケイ酸もしくはその塩、または高分子電解質、例えば80000以下の数平均分子量を有するポリ(アクリル酸)もしくはポリ(メタクリル酸)の水溶性塩であってよい。使用される分散剤の量は一般に、乾燥無機粒子固形材料の重量に対して0.1~2.0重量%の範囲内にある。懸濁液は、4~100℃の範囲の温度で適切に粉砕され得る。
【0154】
ミクロフィブリル化工程中に添加され得るその他の添加剤には、カルボキシメチルセルロース、両性カルボキシメチルセルロース、酸化剤、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル(TEMPO)、TEMPO誘導体、および木材分解酵素が含まれる。
【0155】
粉砕対象である材料の懸濁液のpHは約7以上(すなわち、アルカリ性)であってよく、例えば、懸濁液のpHは約8、または約9、または約10、または約11であってよい。粉砕対象である材料の懸濁液のpHは約7未満(すなわち、酸性)であってよく、例えば、懸濁液のpHは約6、または約5、または約4、または約3であってよい。粉砕対象である材料の懸濁液のpHは、適切な量の酸または塩基の添加によって調節されてよい。適切な塩基には、アルカリ金属水酸化物、例えばNaOHが含まれる。その他の適切な塩基は炭酸ナトリウムおよびアンモニアである。適切な酸には塩酸および硫酸などの無機酸または有機酸が含まれる。例示的な酸はオルトリン酸である。
【0156】
存在する場合、無機粒子材料および共粉砕対象である混合物中のセルロースパルプの量は、乾燥および再分散に適したスラリーを生成するために変更することができ、および/または例えば、乾燥または少なくとも部分的に乾燥、別の場所への任意の輸送、再分散および物品、製品または組成物の製造における使用に適したスラリーを生成するために、無機粒子材料および/または無機粒子材料以外の添加剤のさらなる追加によって、さらに改質することができる。
【0157】
均質化
セルロースを含む繊維質基材のミクロフィブリル化は、湿潤条件下で任意に無機粒子材料の存在下、セルロースパルプと任意に無機粒子材料との混合物に加圧し(例えば、圧力約500バールまで)、次により低い圧力のゾーンに送る方法によって行われ得る。混合物を低圧ゾーンに送る速度は十分に速く、また低圧ゾーンの圧力は、セルロース繊維のミクロフィブリル化を引き起こすのに十分な低さである。例えば、狭い入口オリフィスとそれよりもかなり広い出口オリフィスとを有する環状開口部に混合物を押し込むことによって圧力を低下させ得る。混合物が加速して広い容積内(すなわち、低圧ゾーン)に進入する際の急激な圧力低下によってキャビテーションが誘発され、これがミクロフィブリル化を引き起こす。一実施形態では、セルロースを含む繊維質基材のミクロフィブリル化は、ホモジナイザにおいて湿潤条件下、任意に無機粒子材料の存在下で行われてよい。ホモジナイザにおいて、セルロースパルプおよび任意に無機粒子材料は加圧され(例えば、圧力約500バールまで)、狭いノズルまたはオリフィスに押し込まれる。この混合物は、約100~約1000バールの圧力、例えば300バール以上、または約500バール以上、または約200バール以上、または約700バール以上の圧力で加圧されてよい。均質化によって繊維は高せん断力にさらされることから、加圧されたセルロースパルプがノズルまたはオリフィスから出る際に、キャビテーションがパルプ中のセルロース繊維のミクロフィブリル化を引き起こす。ホモジナイザ全体にわたっての懸濁液の流動性を改善するために、追加の水を加えてもよい。ミクロフィブリル化セルロースおよび任意に無機粒子材料を含む得られた水性懸濁液をホモジナイザの注入口に戻すことによって、ホモジナイザに複数回通過させてもよい。存在する場合、および無機粒子材料がカオリンなどの天然の板状鉱物である場合、均質化によってセルロースパルプのミクロフィブリル化が促進されるだけではなく、この板状粒子材料の層間剥離が促進される。
【0158】
例示的なホモジナイザはManton Gaulin(APV)ホモジナイザである。
【0159】
ミクロフィブリル化工程を行った後、ミクロフィブリル化セルロースおよび任意に無機粒子材料を含む水性懸濁液をスクリーニングすることによって、特定のサイズより大きい繊維および粉砕媒体を除去することができる。例えば、懸濁液を、選択された公称開口サイズを有する篩を使用したスクリーニングを実施することによって、この篩を通過しない繊維を除去することが可能である。公称開口サイズとは、正方形の開口部の対向する辺の公称中心距離または円形の開口部の公称直径を意味する。篩は、公称開口サイズ150μm、例えば公称開口サイズ125μm、または106μm、または90μm、または74μm、または63μm、または53μm、または45μm、または38μmを有するBSS篩(BS 1796に準拠)であってよい。一実施形態において、水性懸濁液は、125μmの公称開口を有するBSS篩を使用してスクリーニングされる。次いで水性懸濁液を任意に脱水してよい。
【0160】
従って、粉砕または均質化後の懸濁液を処理して選択されたサイズより大きい繊維を除去すると、粉砕または均質化後の水性懸濁液中のミクロフィブリル化セルロースの量(すなわち、重量%)がパルプ中の乾燥繊維の量より少なくなることが理解される。このため、粉砕機またはホモジナイザに供給されるパルプおよび任意の無機粒子材料の相対量は、選択されたサイズより大きい繊維を除去した後の水性懸濁液に必要とされるミクロフィブリル化セルロース量に応じて調節可能である。
【0161】
特定の実施形態では、ミクロフィブリル化セルロースは、セルロースを含む繊維質基材を水性環境下で、(本明細書に記載されるような)粉砕媒体の存在下で粉砕することでミクロフィブリル化する工程を含む方法によって調製されてよく、粉砕は無機粒子材料の不存在下で行われてよい。特定の実施形態では、粉砕後に無機粒子材料を添加して、最上層スラリーまたは層スラリーを生成することができる。
【0162】
特定の実施形態では、粉砕媒体は粉砕後に除去される。
【0163】
他の実施形態では、粉砕媒体は粉砕後も保持され、無機粒子材料または少なくともその一部として機能し得る。特定の実施形態では、粉砕後に追加の無機粒子材料および/または無機粒子材料以外の添加剤を添加してもよい。
【0164】
無機粒子材料(例えば、GCCまたはカオリン)とミクロフィブリル化セルロースパルプ繊維の混合物の粒度分布を特徴付けるために、以下の手順を使用することができる。
【0165】
-炭酸カルシウム
3gの乾燥材料を得るのに十分な共粉砕スラリーのサンプルをビーカーに計量し、脱イオン水で60gにまで希釈し、有効成分が1.5w/v%のポリアクリル酸ナトリウムの溶液5cmと混合する。更に、最終スラリー重量が80gになるまで脱イオン水を撹拌しながら添加する。
【0166】
-カオリン
5gの乾燥材料を得るのに十分な共粉砕スラリーのサンプルをビーカーに計量し、脱イオン水で60gにまで希釈し、1.0重量%の炭酸ナトリウムおよび0.5重量%のヘキサメタリン酸ナトリウムの溶液5cmと混合する。更に、最終スラリー重量が80gになるまで脱イオン水を撹拌しながら添加する。
【0167】
次にこのスラリーを、最適レベルの減衰率(通常、10~15%)になるまでMastersizer Sに取り付けられたサンプル調製ユニット内の水に1cmずつ添加する。次に、光散乱分析手順を行う。選択された計器領域は300RF:0.05~900であり、ビーム長は2.4mmに設定された。
【0168】
炭酸カルシウムおよび繊維を含有する共粉砕サンプルに関して、炭酸カルシウムの屈折率(1.596)を採用した。カオリンおよび繊維の共粉砕サンプルの場合、カオリンの屈折率(1.5295)を採用した。
【0169】
粒度分布はミー理論から計算され、体積差に基づいた分布として出力された。2つのはっきりとしたピークの存在は、鉱物(より微細なピーク)および繊維(より粗いピーク)から生じるものと解釈された。
【0170】
より微細な鉱物ピークを測定されたデータポイントにフィットさせ、分布から数学的に減じることによって繊維ピークだけにし、この繊維ピークを累積分布に変換した。同様に、繊維ピークを元の分布から数学的に減じて鉱物ピークだけにし、この鉱物ピークも累積分布に変換した。次に、これらの両方の累積曲線を使用して平均粒径(d50)および分布の勾配(d30/d70×100)を計算した。示差曲線を使用して、鉱物および繊維分の両方に関してのモード粒径を求めた。
【0171】
実施例
実施例1
ミクロフィブリル化セルロースおよび無機粒子材料を含む多数の水性組成物を、本明細書の他の箇所で詳細に記載するように、無機粒子材料の存在下でボスニアパルプを共粉砕することによって調製した。各組成物の特性を表1にまとめた。POPは「パルプの割合」を意味し、無機粒子材料よりむしろパルプまたはフィブリルであるサンプルの乾燥重量の割合である。
【表1】
【0172】
実施例2
各スラリーに添加剤を添加し、1分間混合した。混合物を60分間静置し、次いで濾過した。得られた濾過ケークを、乾燥(<1重量%水分量)するまで、80℃の実験用オーブンに入れた。
【0173】
次いで、乾燥した組成物を実験用シルバーソンミキサで再分散させた。(20POPに希釈、シルバーソンによる混合を1分間)
【0174】
組成物1~4のそれぞれに、様々な濃度の異なる添加剤(塩化ナトリウム、グリコール、尿素、カルボキシメチルセルロース、糖およびグアーガム)を添加し、引張強度を決定した。平均結果を表2にまとめる。
【表2】
【0175】
実施例3
これらの試験の目的は、パイロットプラント施設で入手可能なシングルディスクリファイナを使用して、50重量%POP(パルプの割合)の炭酸カルシウム/ボトニアパルプ高固形分ミクロフィブリル化セルロースおよび炭酸カルシウム組成物(すなわち、ミクロフィブリル化セルロース対炭酸カルシウムが1:1重量比)を再分散させることの有効性を評価することであった。本発明での使用に適したシングルディスクリファイナの一例は、Sprout Waldronによって製造された。リファイナは、12インチ(30cm)のシングルディスクリファイナであった。ディスク回転速度は1320rpmであった。ディスク周速は21.07m/sであった。リファイナディスクデザインバー幅1.5 mm;溝幅1.5mm;1回転当たりの切れ刃長1.111Km/rev bar CEL@1320rpm、24.44Km/sec。同等の仕様を有する他の適切なリファイナは、当業者に公知である。
【0176】
供給原料
ミクロフィブリル化セルロースおよび炭酸カルシウム(1:1の重量比)のベルトプレスケーク100kg、および試験で利用されたミクロフィブリル化セルロースおよび炭酸カルシウム組成物を処理および乾燥するために、材料を乾燥およびミリングするための熱風の流れを導入する能力を有する空気掃引ミルまたは乾燥機であるアトライタ乾燥粉砕機(Atritor Limited、英国、ウェスト・ミッドランズ州コヴェントリー、ブルーリボンパーク、ザ・スタンピングス12から入手可能)を利用して作られた4つの異なる供給原料100kgが、パイロットプラント施設に移送された。他の同等のミルは、当業者に公知である。試験に利用された炭酸カルシウム(IC60L)/ボトニア高固形分ミクロフィブリル化セルロース生成物の特性を表3に示す。所定の位置にリジェクタアームを備えたアトライタ乾燥機を用いて、20Hz(低速供給速度)で供給することでこれらのミクロフィブリル化セルロースおよび炭酸カルシウム組成物(1:1重量比)を生成した。
【表3】
【0177】
試行の概略
大量のパルパーで各材料を「濡らし」、製紙ミル手順での典型的な時間/動作を再現した。
【0178】
パルプ化されたサンプルは、総乾燥固形分の0-20-40-60-80-100kWh/tの範囲のリファイニングエネルギー投入量で採取されたサンプルを有するシングルディスクリファイナを通過した。
【0179】
結果
1. 50重量%POP炭酸カルシウム(IC60)/ボトニアパルプ(31重量%固形分)ベルトプレスケーク
【0180】
この30.5重量%ミクロフィブリル化セルロースおよび炭酸カルシウム(1:1重量比)を含む組成物の固体ベルトプレスケークを、パルパー中に固形分7重量%で15分間初期再分散させた。この稠度はポンプには粘度が高すぎるため、材料を水で1重量%~6重量%固形分に希釈した。次いで、この材料をリファイナに通し、様々な投入作業エネルギー量(work inputs)でサンプルを採取した。
【0181】
以下の表4は、ミクロフィブリル化セルロースおよび炭酸カルシウムを含むベルトプレスケークの特性に対するシングルディスクリファイナの効果を示す。未加工の(as received)材料として示した値は、シルバーソンミキサ(Silverson Machines,Inc.、01028マサチューセッツ州イースト・ロングメドー、55チェスナットストリート)(1000-2000kWh/t)で1分間混合した。
【表4】
【0182】
ベルトプレスケークは、6重量%で叩解することができ、20kWh/tの投入後、FLT指数が復元された。FLT指数は、ミクロフィブリル化セルロースおよび再分散したミクロフィブリル化セルロースの品質を評価するために開発された引張試験である。試験材料のPOPは、ミクロフィブリル化セルロース/無機材料複合体の生成に使用されるいかなる無機粒子の添加によって、20%に調整されている(無機粒子を含まないミクロフィブリル化セルロースの場合には2μm未満のGCC炭酸カルシウム60重量%を使用する)。この材料から、専用のブフナー濾過装置を用いて220gsm(g/m)のシートを形成した。得られたシートをコンディショニングし、その引張強さを業界標準の引張試験機を用いて測定した。最大100kWh/tのエネルギー投入量は、ミクロフィブリル化セルロースおよび炭酸カルシウム組成物のFLT指数および粘度の両方を改善することができる。1以下の「ニブカウント(nib count)」は許容可能であり、紙シートの良好な形成を示唆している。当業者に知られているように、ニブカウントはダートカウント試験(例えば、TAPPIダートカウント試験を参照)であり、ミクロフィブリル化セルロースが完全に再分散されたことを示す。この場合、FLT指数を測定するために形成されたシートは、破壊引張試験の前にライトボックスを用いてニブカウンティングを受ける。低ニブカウントは、任意の水性用途において良好な再分散を示す。
【0183】
表5は、ミクロフィブリル化セルロースおよび炭酸カルシウム組成物の粒径に対するシングルディスクリファイナの効果を示す。粒度分布(「PSD」)は、品質管理研究施設に設置されたMalvern Insitec(Malvern Instruments Ltd、WR141XZ英国ウースターシャー、マルバーン、グローブウッドロード、エニグマ・ビジネスパーク)で測定されている。
【表5】
【0184】
PSD値から、シングルディスクリファイナがミクロフィブリル化セルロースおよび炭酸カルシウム組成物の粗粒子を減らすのに非常に効率的であることが分かる。
【0185】
2. 50重量%POP炭酸カルシウム(IC60)/ボトニアパルプミクロフィブリル化セルロースおよび炭酸カルシウム(1:1重量比)をアトライタ乾燥機で乾燥した(51.4重量%固体)。
【0186】
アトライタ乾燥機を使用して乾燥した、この51.4重量%の1:1重量比ミクロフィブリル化セルロースおよび炭酸カルシウム生成物を、7重量%固形分でパルパー内に再分散させた。この材料の粘度の低さにより、ポンプで送ることが容易であった。次いで、この材料をリファイナに通し、様々な投入作業エネルギー量でサンプルを採取した。
【0187】
以下の表6は51.4重量%のミクロフィブリル化セルロースおよび炭酸カルシウム組成物の特性に対するシングルディスクリファイナの効果を示す。記録材料として示した値は、シルバーソンミキサ(1000-2000kWh/t相当)で1分間混合した。
【表6】
【0188】
アトライタ乾燥機で乾燥したこの51.4重量%乾燥組成物は、60kWh/tで完全に再分散することができ、エネルギー投入量を増やして特性をさらに改善することができる。この材料は、粘度およびFLT指数を回復するだけでなく、ベルトプレスケークに類似した比較的低いニブカウントを有する。
【0189】
表7は、ミクロフィブリル化セルロースおよび炭酸カルシウム(1:1重量%)を含む組成物の粒径に対するシングルディスクリファイナの効果を示す。
【表7】
【0190】
PSD値から、シングルディスクリファイナがミクロフィブリル化セルロースおよび炭酸カルシウム(1:1重量比)組成物の粗粒子を減らすのに非常に効率的であることが分かる。
【0191】
3. 50重量%POP炭酸カルシウム(IC60)/ボトニアパルプミクロフィブリル化セルロースおよび炭酸カルシウム(1:1重量比)組成物をアトライタ乾燥機で乾燥した(58.1重量%固形分)。
【0192】
この58.1重量%固形分ミクロフィブリル化セルロースおよび炭酸カルシウム(1:1重量比)を含む組成物を、7、8、および9重量%固形分で評価した。この理由は、ミクロフィブリル化セルロースおよび炭酸カルシウムを含む組成物が稠度においてあまりにも「薄く」なり、リファイナの金属ディスクがそれ自体で擦れていたために、より高いエネルギー投入量が達成できなかったためである。以下の表9は、3種の異なる固形分における全ての生成物の特性を示す。未加工の材料および0kWh/tとして示した値は、シルバーソンミキサ(1000~2000kWh/t相当)で1分間混合した。
【表8】
【0193】
58.1重量%のミクロフィブリル化セルロースおよび炭酸カルシウム(1:1重量比)を含む組成物は、7、8および9重量%固形分で完全に再分散することができる。各稠度では、対照FLT、加えて粘度およびニブカウントを超えた。9重量%固形分において最大の向上が達成された。
【0194】
表10は、3つ全ての固形分レベルにおけるミクロフィブリル化セルロースおよび炭酸カルシウム(1:1重量%)を含む組成物の粒径に対するシングルディスクリファイナの効果を示す。
【0195】
PSDデータは、3つのすべての稠度で粗パルプのサイズを変更する際のシングルディスクリファイナの効率を再度示す。
【表9】
【0196】
4. 50重量%POP炭酸カルシウム(IC60)/ボトニアパルプミクロフィブリル化セルロースおよび炭酸カルシウム組成物をアトライタ乾燥機で乾燥した(70.1重量%固形分)。
【0197】
各投入作業エネルギーにおける、この70.1重量%固形分ミクロフィブリル化セルロースおよび炭酸カルシウム(1:1重量%)組成物を表11に示す。未加工の材料および0kWh/tとして示した値は、シルバーソンミキサ(1000~2000kWh/t相当)で1分間混合した。
【表10】
【0198】
再び、シングルディスクリファイナが、シルバーソンミキサを使用するのと比較して、ミクロフィブリル化セルロースおよび炭酸カルシウム(1:1重量比)を含む乾燥組成物を再分散する際により効果的であることが分かる。100kWh/tのエネルギー投入量は、ミクロフィブリル化セルロースおよび炭酸カルシウム(1:1重量比)を含む組成物を、その特性がベルトプレスケークに類似する程度まで再分散させる。
【0199】
表12は、ミクロフィブリル化セルロースおよび炭酸カルシウム(1:1重量%)を含む組成物の粒径に対するシングルディスクリファイナの効果を示し、リファイナが非常に効果的であることが再び分かる。
【表11】
【0200】
5.ミクロフィブリル化セルロースおよび炭酸カルシウムを含む50重量%POP炭酸カルシウム(IC60)/ボトニアパルプ組成物をアトライタ乾燥機で乾燥した(86.2重量%固形分)。
【0201】
ミクロフィブリル化セルロースおよび炭酸カルシウム(1:1重量比)を含む86.2重量%固形分組成物は非常に乾燥していると考えられ、組成物は残りの材料と同じ条件(強度0.2J/m)で叩解されたが、強度は0.1J/mであった。0.1J/mはそれほど強くないために、所望の投入作業エネルギーを達成するには時間がかかる。表13を参照されたい。
【0202】
未加工の材料および0kWh/tとして示した値は、シルバーソンミキサ(1000~2000kWh/t相当)で1分間混合した。
【表12】
【0203】
これらの結果は、ミクロフィブリル化セルロースおよび炭酸カルシウム(1:1重量比)を含むこの非常に高い固形分組成物を、100kWh/tを使用するベルトプレスケークと同じ特性に再分散して戻すことができることを示している。強度が変更された場合、80kWh/tのより少ないエネルギーを使用して特性を復元することができる。
【0204】
表14は、両強度でのミクロフィブリル化セルロースおよび炭酸カルシウム(1:1重量%)を含む組成物の粒径に対するシングルディスクリファイナの効果を示す。
【表13】
【0205】
図1に上記の研究からのFLTデータをまとめた。このデータは、試験されたすべてのサンプルにおいて対照FLTが達成され、中間固体生成物において対照FLTを超えることができることを示している。
【0206】
6. 叩解物品のさらなる処理
パイロットプラント施設で生成された多数の生成物について、シルバーソンミキサを介してサンプルに更なるエネルギーを加えた。これらの実験は、ミクロフィブリル化セルロースおよび炭酸カルシウム(1:1重量比)を含む組成物の物理的特性が更なるエネルギーで向上されるかどうかを調べることであった。次の表に、結果を示す(表15)。
【0207】
結果が混在していることがわかる。いくつかの場合にはFLT指数の増加があり、他では増加していない。
【表14】
【0208】
結果
結果を以下に示す:
・パイロットプラント施設におけるシングルディスクリファイナは、ミクロフィブリル化セルロースおよび炭酸カルシウム(1:1重量比)を含む組成物を再分散する非常に効率的な方法である。
・最大86重量%固形分まで乾燥したミクロフィブリル化セルロースおよび炭酸カルシウム(1:1重量比)を含む組成物は、元の強度特性を達成するために再分散させることができる。
・強度の向上を達成することができる。・シングルディスクリファイナは、他の評価方法よりも低いエネルギー投入量を用いて再分散を達成する。
・固形分は、叩解の際に非常に重要であり、すべての試料について最適化されるべきである。
・リファイナの強度を下げると、結果が改善される。
・シングルディスクリファイナは、ミクロフィブリル化セルロースおよび炭酸カルシウム(1:1重量比)を含む組成物のPSDを変えるのに非常に効率的である。
【0209】
[1] 再分散された乾燥または部分的に乾燥したミクロフィブリル化セルロースの物理的/機械的特性を改善する方法であって、前記方法は:
a.ミクロフィブリル化セルロースの水性組成物;を提供すること:
b.脱水したミクロフィブリル化セルロース組成物を生成するために;
i.ベルトプレスによる脱水、
ii.高圧自動ベルトプレス、
iii.遠心分離、
iv.チューブプレス、
v.スクリュープレス、および
vi.ロータリープレス;の1つ以上によって前記水性組成物を脱水すること:
c.乾燥または部分的に乾燥したミクロフィブリル化セルロースを生成するために;
i.流動床乾燥機、
ii.マイクロ波および/または高周波乾燥機、
iii.熱空気掃引ミルまたは乾燥機、セルミルまたはマルチローターセルミル、および
iv.凍結乾燥;の1つ以上によって前記脱水したミクロフィブリル化セルロース組成物を乾燥すること:
を含み、
前記乾燥または部分的に乾燥したミクロフィブリル化セルロース組成物を液体媒体中で分散すると、比較可能な濃度および20~50の繊維勾配で、前記ミクロフィブリル化セルロースの引張強度および/または粘度は、乾燥前のミクロフィブリル化セルロースの前記水性組成物の前記引張強度および/または粘度の少なくとも50%である、方法。
[2] 前記乾燥または少なくとも部分的に乾燥したミクロフィブリル化セルロースを前記液体媒体中に再分散させることをさらに含む、前記[1]に記載の方法。
[3] 前記ミクロフィブリル化セルロースが無機粒子材料をさらに含む、前記[1]に記載の方法。
[4] 前記無機粒子材料が、板状鉱物、カオリンおよび/またはタルクを含む、前記[3]に記載の方法。
[5] 前記無機粒子材料が、板状鉱物以外の無機粒子材料をさらに含む、前記[4]に記載の方法。
[6] 前記無機粒子材料が炭酸カルシウムである、前記[3]に記載の方法。
[7] 前記乾燥または部分的に乾燥したミクロフィブリル化セルロースが、1つ以上の塩、1つ以上の糖、1つ以上のグリコール、尿素、カルボキシメチルセルロースおよびグアーガムからなる群から選択される1つ以上の添加剤の存在下で再分散される、前記[1]に記載の方法。
[8] 前記糖が、単糖類、二糖類、オリゴ糖類および多糖類の1つ以上から選択される、前記[5]に記載の方法。
[9] 前記1つ以上の塩が、塩化ナトリウムを含むかまたは塩化ナトリウムである、前記[5]に記載の方法。
[10] 前記1つ以上のグリコールが、エチレングリコールを含むかまたはエチレングリコールである、前記[5]に記載の方法。
[11] 前記無機粒子材料が、以下の段階:(i)ミクロフィブリル化セルロースを含む前記水性組成物の製造前、または製造中;(ii)ミクロフィブリル化セルロースを含む前記水性組成物の製造後;(iii)ミクロフィブリル化セルロースの前記水性組成物の脱水中;(iv)ミクロフィブリル化セルロースの前記水性組成物の乾燥中;(v)前記乾燥または部分的に乾燥したミクロフィブリル化セルロースの再分散前;および(vi)前記乾燥または部分的に乾燥したミクロフィブリル化セルロースの再分散中、の1つ以上で添加される、前記[3]に記載の方法。
[12] 前記方法が、物品、製品または組成物において、またはその製造において、再分散したミクロフィブリル化セルロースを使用することをさらに含む、前記[1]に記載の方法。
[13] 前記脱水されたミクロフィブリル化セルロースの前記水性組成物が、乾燥または少なくとも部分的に乾燥される前に、最大約50重量%、最大約30%、および最大約20%の固形分を有する、前記[1]に記載の方法。
[14] 前記脱水されたミクロフィブリル化セルロースの前記水性組成物が、乾燥または少なくとも部分的に乾燥される前に、最大約20重量%の固形分を有し、任意に前記固形分の最大約80%が無機粒子材料である、前記[3]に記載の方法。
[15] 前記液体媒体が、水性または非水性である、前記[2]に記載の方法。
[16] 前記液体媒体が水性、例えば水である、前記[15]に記載の方法。
[17] 前記乾燥または少なくとも部分的に乾燥したミクロフィブリル化セルロースの前記再分散が、リファイナを使用することを含む、前記[2]に記載の方法。
[18] 前記乾燥または部分的に乾燥したミクロフィブリル化セルロース組成物が、約20~約50の勾配を有する、前記[1]に記載の方法。
【0210】
[101]再分散された乾燥または部分的に乾燥したミクロフィブリル化セルロースの物理的/機械的特性を改善する方法であって、前記方法は:
a.ミクロフィブリル化セルロースの水性組成物を提供すること、ここで、前記ミクロフィブリル化セルロースが、再生パルプ、製紙ブローク、製紙廃棄物流、または製紙工場からの廃棄物から得られるものである:
b.脱水したミクロフィブリル化セルロース組成物を生成するために;
i.ベルトプレスによる脱水、
ii.高圧自動ベルトプレス、
iii.遠心分離、
iv.チューブプレス、
v.スクリュープレス、および
vi.ロータリープレス;の1つ以上によって前記水性組成物を脱水すること:
c.乾燥または部分的に乾燥したミクロフィブリル化セルロースを生成するために;
i.流動床乾燥機、
ii.マイクロ波および/または高周波乾燥機、
iii.熱空気掃引ミルまたは乾燥機、セルミルまたはマルチローターセルミル、および
iv.凍結乾燥;の1つ以上によって前記脱水したミクロフィブリル化セルロース組成物を乾燥すること:
d.前記乾燥または少なくとも部分的に乾燥したミクロフィブリル化セルロースを液体媒体中に再分散させること:
を含み、
前記ミクロフィブリル化セルロースの引張強度および/または粘度は、乾燥前のミクロフィブリル化セルロースの前記水性組成物の前記引張強度および/または粘度の少なくとも50%である、ここで、引張強度および/または粘度の比較は、乾燥前のミクロフィブリル化セルロースの前記水性組成物と分散後のミクロフィブリル化セルロースの前記液体媒体の濃度を等しくして行い、かつ乾燥前のミクロフィブリル化セルロースの繊維勾配が20~50であるミクロフィブリル化セルロースを用いて行う、方法。
[102]前記ミクロフィブリル化セルロースが無機粒子材料をさらに含む、[101]に記載の方法。
[103]前記無機粒子材料が、板状鉱物、カオリンおよび/またはタルクを含む、[102]に記載の方法。
[104]前記無機粒子材料が、板状鉱物以外の無機粒子材料をさらに含む、[102]に記載の方法。
[105]前記無機粒子材料が炭酸カルシウムである、[102]に記載の方法。
[106]前記乾燥または部分的に乾燥したミクロフィブリル化セルロースが、1つ以上の塩、1つ以上の糖、1つ以上のグリコール、尿素、カルボキシメチルセルロースおよびグアーガムからなる群から選択される1つ以上の添加剤の存在下で再分散される、[101]に記載の方法。
[107]前記糖が、単糖類、二糖類、オリゴ糖類および多糖類の1つ以上から選択される、[106]に記載の方法。
[108]前記1つ以上の塩が、塩化ナトリウムを含む、[106]に記載の方法。
[109]前記1つ以上のグリコールが、エチレングリコールを含む、[105]に記載の方法。
[110]前記無機粒子材料が、以下の段階:(i)ミクロフィブリル化セルロースを含む前記水性組成物の製造前、または製造中;(ii)ミクロフィブリル化セルロースを含む前記水性組成物の製造後;(iii)ミクロフィブリル化セルロースの前記水性組成物の脱水中;(iv)ミクロフィブリル化セルロースの前記水性組成物の乾燥中;(v)前記乾燥または部分的に乾燥したミクロフィブリル化セルロースの再分散前;および(vi)前記乾燥または部分的に乾燥したミクロフィブリル化セルロースの再分散中、の1つ以上で添加される、[102]に記載の方法。
[111]前記方法が、物品、製品または組成物において、またはその製造において、再分散したミクロフィブリル化セルロースを使用することをさらに含む、[101]に記載の方法。
[112]前記脱水されたミクロフィブリル化セルロースの前記水性組成物が、乾燥または少なくとも部分的に乾燥される前に、最大50重量%の固形分を有する、[101]に記載の方法。
[113]前記脱水されたミクロフィブリル化セルロースの前記水性組成物が、乾燥または少なくとも部分的に乾燥される前に、最大30重量%の固形分を有する、[101]に記載の方法。
[114]前記脱水されたミクロフィブリル化セルロースの前記水性組成物が、乾燥または少なくとも部分的に乾燥される前に、最大20重量%の固形分を有する、[114]に記載の方法。
[115]前記液体媒体が、水性または非水性である、[101]に記載の方法。
[116]前記液体媒体が水を含む、[115]に記載の方法。
[117]前記乾燥または少なくとも部分的に乾燥したミクロフィブリル化セルロースの前記再分散が、リファイナを使用することを含む、[101]に記載の方法。
[118]前記乾燥または部分的に乾燥したミクロフィブリル化セルロースの前記再分散が、熱空気掃引ミルまたは乾燥機を使用することを含む、[101]に記載の方法。
[119]前記乾燥または部分的に乾燥したミクロフィブリル化セルロースの前記再分散が、セルミルを使用することを含む、[101]に記載の方法。
[120]前記乾燥または部分的に乾燥したミクロフィブリル化セルロースの前記再分散が、マルチローターセルミルを使用することを含む、[119]に記載の方法。
図1