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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023071847
(43)【公開日】2023-05-23
(54)【発明の名称】電解コンデンサおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01G 9/048 20060101AFI20230516BHJP
   H01G 9/15 20060101ALI20230516BHJP
   H01G 9/00 20060101ALI20230516BHJP
【FI】
H01G9/048 F
H01G9/15
H01G9/00 290D
H01G9/00 290Z
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031178
(22)【出願日】2023-03-01
(62)【分割の表示】P 2019550939の分割
【原出願日】2018-10-05
(31)【優先権主張番号】P 2017211225
(32)【優先日】2017-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002745
【氏名又は名称】弁理士法人河崎特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 慎也
(72)【発明者】
【氏名】梶村 将弘
(57)【要約】      (修正有)
【課題】陽極箔の陽極引出部の第1端部が外装体から露出する電解コンデンサの信頼性を高める電解コンデンサおよびその製造方法を提供する.
【解決手段】電解コンデンサ11は、コンデンサ素子10と、コンデンサ素子10を封止する外装体14と、外部電極15とを備える。コンデンサ素子10は、第1端部1aを含む陽極引出部1と、第2端部2aを含む陰極形成部2とを有する陽極箔3と、陰極形成部2の表面上に形成された誘電体層と、誘電体層の少なくとも一部を覆う陰極部6と、を有する。陽極引出部1の第1端部1aが外装体14の一端面14aから突出しており、第1端部1aの少なくとも一部が外部電極15と接触している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1端部を含む陽極引出部と、第2端部を含む陰極形成部と、を有する陽極箔と、
前記陰極形成部の表面上に形成された誘電体層と、
前記誘電体層の少なくとも一部を覆う陰極部と、
を有するコンデンサ素子と、
前記コンデンサ素子を封止する外装体と、
外部電極と、を備え、
前記陽極引出部および前記陰極形成部は、それぞれ、芯部と、前記芯部の表面に形成された多孔質部とを有し、
前記陽極引出部の前記第1端部が前記外装体の端面から突出して突出部を形成しており、
前記突出部の端面の少なくとも一部が、前記多孔質部を有さずに前記芯部が露出する第1露出部であり、前記第1露出部が、前記外部電極と接触しており、
前記第1露出部に交差して続く前記芯部の縁部分の少なくとも一部が、前記多孔質部を有さずに前記芯部が露出する第2露出部であり、前記第2露出部が、前記外部電極と接触している、電解コンデンサ。
【請求項2】
第1端部を含む陽極引出部と、第2端部を含む陰極形成部と、を有する陽極箔と、
前記陰極形成部の表面上に形成された誘電体層と、
前記誘電体層の少なくとも一部を覆う陰極部と、
を有するコンデンサ素子と、
前記コンデンサ素子を封止する外装体と、
外部電極と、を備え、
前記陽極引出部および前記陰極形成部は、それぞれ、芯部と、前記芯部の表面に形成された多孔質部とを有し、
前記陽極引出部の前記第1端部が前記外装体の端面から突出して突出部を形成しており、
前記外部電極は、前記第1端部の少なくとも一部および前記外装体の少なくとも一部を覆う第1電極層と、前記第1電極層の表面に形成された第2電極層と、を有し、
前記突出部の端面の少なくとも一部が、前記多孔質部を有さずに前記芯部が露出する第1露出部であり、前記第1露出部が、前記第1電極層と接触しており、
前記第1露出部に交差して続く前記突出部の縁部分の少なくとも一部が、前記第1電極層と接触している、電解コンデンサ。
【請求項3】
前記外部電極は、前記第1端部の少なくとも一部および前記外装体の少なくとも一部を覆う第1電極層と、前記第1電極層の表面に形成された第2電極層と、を有し、
前記第1電極層が、前記第1露出部と前記第2露出部に接触している、請求項1に記載の電解コンデンサ。
【請求項4】
前記第1電極層は、金属材料を主成分として含み、
前記第2電極層は、金属材料または導電性カーボン材料と、樹脂材料と、を主成分として含む、請求項2または3に記載の電解コンデンサ。
【請求項5】
前記外装体の端面から突出した前記突出部の突出長さは、前記第1電極層の厚さよりも長い、請求項2~4のいずれか1項に記載の電解コンデンサ。
【請求項6】
前記外装体の端面から突出した前記突出部の突出長さは0.2mm以上である、請求項1~5のいずれか1項に記載の電解コンデンサ。
【請求項7】
前記突出部は、前記外部電極の外表面から突出していない、請求項1~6のいずれか1項に記載の電解コンデンサ。
【請求項8】
陽極引出部と陰極形成部とを有する陽極箔、前記陰極形成部の表面上に形成された誘電体層、および、前記誘電体層の少なくとも一部を覆う陰極部を有するコンデンサ素子を形成する第1工程と、
前記コンデンサ素子を外装体で覆う第2工程と、
前記外装体を前記陽極引出部とともに切断し、前記陽極引出部に前記外装体の切断面から露出する端面を有する第1端部を形成する第3工程と、
前記外装体の切断面において露出する外装体の一部を除去し、前記外装体の端面から前記第1端部を突出させて、前記第1端部に、前記外装体の前記端面から突出した突出部を形成する第4工程と、
前記突出部を外部電極と接合させる第5工程と、を有し、
前記陽極引出部および前記陰極形成部は、それぞれ、芯部と、前記芯部の表面に形成された多孔質部とを有し、
前記突出部の前記端面の少なくとも一部は、前記多孔質部を有さずに前記芯部が露出する第1露出部であり、
前記第4工程において、前記第1露出部に続く前記芯部の表面に形成されていた前記多孔質部の少なくとも一部を除去して、前記第1露出部に交差して続く前記芯部の縁部分の少なくとも一部に、前記多孔質部を有さずに前記芯部が露出する第2露出部を形成し、
前記第5工程において、前記外部電極を、前記第1露出部および前記第2露出部に接触させる、電解コンデンサの製造方法。
【請求項9】
陽極引出部と陰極形成部とを有する陽極箔、前記陰極形成部の表面上に形成された誘電体層、および、前記誘電体層の少なくとも一部を覆う陰極部を有するコンデンサ素子を形成する第1工程と、
前記コンデンサ素子を外装体で覆う第2工程と、
前記外装体を前記陽極引出部とともに切断し、前記陽極引出部に前記外装体の切断面から露出する端面を有する第1端部を形成する第3工程と、
前記外装体の切断面において露出する外装体の一部を除去し、前記外装体の端面から前記第1端部を突出させて、前記第1端部に、前記外装体の前記端面から突出した突出部を形成する第4工程と、
前記突出部を外部電極と接合させる第5工程と、を有し、
前記陽極引出部および前記陰極形成部は、それぞれ、芯部と、前記芯部の表面に形成された多孔質部とを有し、
前記突出部の前記端面の少なくとも一部は、前記多孔質部を有さずに前記芯部が露出する第1露出部であり、
前記外部電極は、前記第1端部の少なくとも一部および前記外装体の少なくとも一部を覆う第1電極層と、前記第1電極層の表面に形成された第2電極層と、を有し、
前記第5工程において、前記第1電極層を、前記第1露出部および前記第1露出部に交差して続く前記突出部の縁部分に接触させる、電解コンデンサの製造方法。
【請求項10】
前記第4工程において、ブラスト処理により前記外装体および前記陽極引出部それぞれの一部を除去する、請求項8または9に記載の電解コンデンサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解コンデンサおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電解コンデンサは、コンデンサ素子と、コンデンサ素子を封止する外装体と、コンデンサ素子の陽極側と電気的に接続された外部電極とを備える。コンデンサ素子は、第1端部を含む陽極引出部と、第2端部を含む陰極形成部と、を有する陽極箔と、陰極形成部の表面上に形成された誘電体層と、誘電体層の少なくとも一部を覆う陰極部とを備える。陽極引出部と外部電極とを電気的に接続する方法として、外装体から露出する第1端部を外部電極と電気的に接続する方法がある。
【0003】
特許文献1には、陽極および/またはリードの表面を凹凸形状に加工することで陽極端子と接続する表面積を拡大し、接続抵抗を低減させた電解コンデンサが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-86459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、陽極箔(陽極引出部および陰極形成部)の表面はエッチングにより粗面化されており、陽極引出部および陰極形成部は、それぞれ、芯部と、芯部の表面に形成された多孔体(多孔質部)とを有する。陽極引出部を外部電極と接続する場合、陽極引出部の芯部および多孔質部のそれぞれが外部電極と接合される。
【0006】
しかしながら、多孔質部と外部電極との接合強度は、芯部と外部電極との接合強度よりも低いため、陽極引出部と外部電極との接合強度を高めるのが困難である。また、多孔質部と外部電極との密着性が低いことから、多孔質部と外部電極との界面を通じて電解コンデンサ内部に空気(酸素および水分)が侵入し得る。この結果、例えば、電解コンデンサ内部に侵入した空気が陰極部と接触し、陰極部に含まれる固体電解質層が劣化し、ESRが増大することがある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一局面は、第1端部を含む陽極引出部と、第2端部を含む陰極形成部と、を有する陽極箔と、前記陰極形成部の表面上に形成された誘電体層と、前記誘電体層の少なくとも一部を覆う陰極部と、有するコンデンサ素子と、
前記コンデンサ素子を封止する外装体と、外部電極と、を備え、
前記陽極引出部の前記第1端部が前記外装体の端面から突出しており、前記第1端部の少なくとも一部が前記外部電極と接触している、電解コンデンサに関する。
【0008】
本発明の他の局面は、陽極引出部と陰極形成部とを有する陽極箔、前記陰極形成部の上に形成された誘電体層、および、前記誘電体層の少なくとも一部を覆う陰極部を有するコンデンサ素子を形成する第1工程と、
前記コンデンサ素子を外装体で覆う第2工程と、
前記外装体を前記陽極引出部とともに切断し、前記陽極引出部に前記外装体の切断面から露出する端面を有する第1端部を形成する第3工程と、
前記外装体の切断面において露出する外装体の一部を除去し、前記外装体の端面から前記第1端部を突出させる第4工程と、
突出した前記第1端部を外部電極と接合させる第5工程と、を有する、電解コンデンサの製造方法に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、陽極箔の陽極引出部の第1端部が外装体から露出する電解コンデンサの信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る電解コンデンサを模式的に示す断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る電解コンデンサについて、陽極引出部の第1端部周辺を拡大して模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態に係る電解コンデンサは、コンデンサ素子と、コンデンサ素子を封止する外装体と、外部電極と、を備える。コンデンサ素子は、第1端部を含む陽極引出部と、第2端部を含む陰極形成部と、を有する陽極箔と、陰極形成部の表面上に形成された誘電体層と、誘電体層の少なくとも一部を覆う陰極部と、を有する。そして、陽極引出部の第1端部が外装体の端面から突出しており、第1端部の少なくとも一部が外部電極と接触している。
【0012】
陽極引出部が外装体の端面から突出していることによって、電解コンデンサは、陽極引出部と外部電極との接合性が向上している。陽極引出部と外部電極との密着性が高いことから、外部電極と陽極引出部の接続の信頼性を高められる。また、外部電極が外装体から剥がれるのが抑制される。
【0013】
好ましくは、陽極引出部の第1端部において、粗面化された部分の少なくとも一部が欠落しているとよい。コンデンサ素子の陽極引出部および陰極形成部の表面がそれぞれ粗面化され、陽極引出部の表面の第1端部周辺にも多孔体(多孔質部)が形成されていることがある。この場合であっても、陽極引出部と外部電極の接合部分には多孔質部が介在しないため、接合性を向上できる。なお、当該粗面化された部分を欠落させるには、例えば、コンデンサ素子を外装体で覆い、外装体を切断して陽極引出部の第1端部を外装体から露出させた後、後述するブラスト処理により露出した粗面化部分を除去することで行うことができる。
【0014】
外装体の端面から突出した第1端部の突出長さは、陽極引出部と外部電極との間に強固な接合を得る観点から、0.2mm以上であることが好ましい。一方で、第1端部の突出長さを長くするほど、外部電極の外表面を平坦に形成するのが困難になる。第1端部の突出長さは、第1端部が外部電極の外表面から突出しない程度の長さであること、換言すると、外部電極の総厚(後述する図2のHに相当)よりも短いことが好ましい。
【0015】
(陽極箔)
陽極箔は、弁作用金属、弁作用金属を含む合金、および弁作用金属を含む金属間化合物などを含むことができる。これらの材料は一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて使用できる。弁作用金属としては、アルミニウム、タンタル、ニオブ、チタンなどを用いることができる。
【0016】
少なくとも陰極形成部を含む陽極箔の表面を例えばエッチングにより粗面化し、陰極形成部の表面に多孔質部が形成される。陽極引出部の表面に所定のマスキング部材を配置した後、エッチング処理を行うことも可能である。一方で、陽極箔の表面の全面をエッチングする処理することも可能である。後者の場合、陽極引出部の表面にも多孔質部が形成される。エッチング処理としては、公知の手法を用いればよく、例えば、電解エッチングが挙げられる。マスキング部材は、特に限定されず、樹脂などの絶縁体であってもよく、導電性材料を含む導電体であってもよい。
【0017】
(誘電体層)
誘電体層は、例えば、陰極形成部の表面の弁作用金属を、化成処理などにより陽極酸化することで形成される。誘電体層は弁作用金属の酸化物を含む。例えば、弁作用金属としてアルミニウムを用いた場合の誘電体層は酸化アルミニウムを含む。誘電体層は、エッチングされている陰極形成部の表面(多孔質部の孔の内壁面を含む)に沿って形成される。なお、誘電体層の形成方法はこれに限定されず、陰極形成部の表面に、誘電体として機能する絶縁性の層を形成できればよい。誘電体層は、陽極引出部の表面の多孔質部上に形成されてもよい。
【0018】
陰極部は、誘電体層の少なくとも一部を覆う固体電解質層と、固体電解質層の少なくとも一部を覆う陰極引出層とを備える。以下、固体電解質層および陰極引出層について説明する。
【0019】
(固体電解質層)
固体電解質層は、例えば、導電性高分子を含む。導電性高分子としては、例えば、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリンおよびこれらの誘導体などを用いることができる。固体電解質層は、例えば、原料モノマーを誘電体層上で化学重合および/または電解重合することにより、形成することができる。あるいは、導電性高分子が溶解した溶液、または、導電性高分子が分散した分散液を、誘電体層に塗布することにより、形成することができる。固体電解質層は、マンガン化合物を含んでもよい。
【0020】
(陰極引出層)
陰極引出層は、カーボン層および銀ペースト層を備える。カーボン層は、導電性を有していればよく、例えば、黒鉛などの導電性炭素材料を用いて構成することができる。カーボン層は、例えば、カーボンペーストを固体電解質層の表面の少なくとも一部に塗布して形成される。銀ペースト層には、例えば、銀粉末とバインダ樹脂(エポキシ樹脂など)を含む組成物を用いることができる。銀ペースト層は、例えば、銀ペーストをカーボン層の表面に塗布して形成される。なお、陰極引出層の構成は、これに限られず、集電機能を有する構成であればよい。
【0021】
(外装体)
外装体は、硬化性樹脂組成物の硬化物を含むことが好ましく、熱可塑性樹脂もしくはそれを含む組成物を含んでもよい。
【0022】
外装体は、射出成形、インサート成形、圧縮成形などの成形技術を用いて形成することができる。外装体は、例えば、所定の金型を用いて、硬化性樹脂組成物または熱可塑性樹脂(組成物)を、コンデンサ素子を覆うように所定の箇所に充填して形成することができる。
【0023】
硬化性樹脂組成物は、硬化性樹脂に加え、フィラー、硬化剤、重合開始剤、および/または触媒などを含んでもよい。硬化性樹脂としては、光硬化性樹脂や熱硬化性樹脂が例示される。硬化剤、重合開始剤、触媒などは、硬化性樹脂の種類に応じて適宜選択される。
【0024】
陽極引出部の第1端部を外装体から露出させる方法としては、例えば、コンデンサ素子を外装体で覆った後、外装体から第1端部が露出するように、外装体の表面を研磨したり、外装体の一部を切り離したりする方法が挙げられる。外装体の切断方法としては、ダイシングが好ましい。これにより、切断面には陽極引出部の第1端部の露出端面が現れる。その後さらに、露出する外装体の一部をブラスト処理等により除去して、陽極引出部の第1端部を外装体から突出させることができる。
【0025】
(外部電極)
外部電極は、第1端部の少なくとも一部および外装体の少なくとも一部を覆う第1電極層と、第1電極層の表面に形成された第2電極層と、を備えることが好ましい。
外装体から露出する第1端部の表面とともに外装体の表面の一部を第1電極層で覆うことにより、第1端部の自然酸化皮膜の形成が抑制される。第1端部の自然酸化皮膜の形成抑制の観点から、外装体は、第1端部の外装体からの露出面の周りを囲むように第1電極層で覆われていることが好ましい。
【0026】
第1電極層は、金属層であることが好ましい。金属層は、例えば、めっき層である。金属層は、例えば、ニッケル、銅、亜鉛、錫、銀および金よりなる群より選択される少なくとも1種を含む。第1電極層の形成には、例えば、電解めっき法、無電解めっき法、スパッタリング法、真空蒸着法、化学蒸着(CVD)法、コールドスプレー法、溶射などの成膜技術を用いてもよい。上記方法により第1端部および外装体の一部に密着する第1電極層を容易に形成することができる。
【0027】
第1電極層は第2電極層で覆われている。これにより、第1電極層の酸化劣化が抑制される。第2電極層は、第1電極層で例示した材料および形成方法を用いることができる。第1電極層との密着性の観点から、第2電極層は、導電性樹脂層であることが好ましい。導電性樹脂層は、例えば、樹脂および樹脂中に分散している導電材を含む。樹脂は、例えば、硬化性樹脂組成物の硬化物または熱可塑性樹脂(組成物)を含む。導電材は、例えば、銀、銅、およびカーボンよりなる群から選択される少なくとも1種を含む。
【0028】
外装体の端面から突出した第1端部の突出長さH1は、第1電極層の厚さH2よりも長いことが好ましい(図2参照)。第2電極層に覆われる第1電極層の外表面が凹凸を有しているため、第1電極層と第2電極層の密着性を向上させることができる。
【0029】
以下、本発明に係る電解コンデンサの一例を、図1を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る電解コンデンサの構造を模式的に示す断面図である。なお、本発明に係る電解コンデンサは、これに限定されない。
【0030】
図1に示すように、電解コンデンサ11は、複数のコンデンサ素子10を備える。コンデンサ素子10は、第1端部1aを含む陽極引出部1、および、第2端部2aを含む陰極形成部2を有した陽極箔3を備える。陰極形成部2は、芯部4と、エッチングにより芯部4の表面に形成された多孔質部5とを有する。
【0031】
コンデンサ素子10は、陽極箔3の陰極形成部2の表面に形成された誘電体層(図示しない)を備える。誘電体層は、多孔質部5の表面に沿って形成されている。誘電体層の少なくとも一部は、多孔質部5の孔の内壁面を覆い、その内壁面に沿って形成されている。
なお、図1では、陽極箔3の陽極引出部1の表面もエッチングにより多孔質部5が形成され、多孔質部5の表面に沿って誘電体層が形成されている。
【0032】
コンデンサ素子10は、誘電体層の少なくとも一部を覆う陰極部6を備える。陰極部6は、誘電体層の少なくとも一部を覆う固体電解質層7と、固体電解質層7の少なくとも一部を覆う陰極引出層とを備える。陰極引出層は、固体電解質層7の少なくとも一部を覆うカーボン層8と、カーボン層8を覆う銀ペースト層9とを備える。誘電体層の表面は、多孔質部5の表面の形状に応じた凹凸形状が形成されている。固体電解質層7は、誘電体層の凹凸を埋めるように形成されていることが好ましい。図1において、陽極箔3上に誘電体層を介して陰極部6が形成されている陽極箔3の部分が陰極形成部2であり、陰極部6が形成されていない陽極箔3の部分が陽極引出部1である。
【0033】
陽極箔3の陰極部6と対向しない領域のうち、陰極部6に隣接する部分には、陽極箔3の表面を覆うように絶縁性の分離層12が形成され、陰極部6と陽極引出部1との接触が規制されている。分離層12は、例えば、絶縁性の樹脂層である。
【0034】
複数のコンデンサ素子10は、複数の陽極箔3が互いに同じ向きで重なり合うように積層されている。陽極引出部1が積層された陽極積層部および陰極部6が積層された陰極積層部が形成されている。複数のコンデンサ素子10において、積層方向で互いに隣り合う陰極部6は、導電性を有する接着層13を介して電気的に接続されている。接着層13の形成には、例えば、導電性接着剤が用いられる。接着層13は、例えば、銀を含む。
【0035】
電解コンデンサ11は、複数のコンデンサ素子10を封止するとともに複数の第1端部1aを露出させた外装体14を備える。外装体14は、ほぼ直方体の外形を有し、電解コンデンサ11もほぼ直方体の外形を有する。外装体14は、一端面である第1側面14aおよび第1側面14aと反対側の端面である第2側面14bを有する。複数の第1端部1aは、それぞれ、外装体14の第1側面14aより露出している。
【0036】
電解コンデンサ11は、外装体14から露出する複数の第1端部1aと電気的に接続された陽極側の外部電極15を備える。外装体14から露出する複数の第1端部1aを、それぞれ陽極側の外部電極15と電気的に接続するため、複数の陽極引出部1を束ねる必要がなく、複数の陽極引出部1に関して、それらを束ねるための長さを確保する必要がない。よって、複数の陽極引出部1を束ねる場合と比べて、陽極箔に占める陽極引出部1の割合を小さくして高容量化することができる。
【0037】
陽極側の外部電極15は、外装体14から露出する複数の第1端部1aの端面とともに外装体14の第1側面14aを覆う陽極側の第1電極層15aと、陽極側の第1電極層15aの表面に形成された陽極側の第2電極層15bとを有する。陽極側の外部電極15としては、上記で外部電極として例示したものを用いることができる。
【0038】
外装体14の第1側面14aは、外装体14の一部が除去された結果、凹面状に形成されている。この結果、陽極引出部1の第1端部1aは、外装体から突出している。また、第1端部1a近傍では、多孔質部5が除去され、端部1a近傍の陽極引出部1の上面1cにおいて芯部が露出している(図2参照)。当該露出した芯部、および、第1端部1aが、陽極側の外部電極15(第1電極層15a)と直接接触している。第1側面14aおよび第1端部1aの端面の凹凸に起因して、陽極側の第1電極層15aも表面に凹凸を有して形成されているが、陽極側の第1電極層15aを覆う陽極側の第2電極層15bは、外表面が平坦となるように形成されている。
【0039】
図2は、図1の第1端部1aの周辺を拡大したものである。第1端部1aは、第2電極層15bの外表面に垂直な方向に、第2電極層15bの外表面に向かって突出している。逆に、第1側面14aは、窪みを有する凹形状に形成されている。
平面状に形成された第2電極層15bの外表面を基準面とする。隣接する陽極引出部1の間の第1側面14aにおいて、基準面からの距離が最も遠くなる位置(即ち、窪みの最も深い位置)をXとする。第1端部1aの端面のうち基準面からの距離が最も近い位置をYとする。位置Xにおける基準面からの距離をH、位置Yにおける基準面からの距離をHとする。ある陽極引出部1の第1端部1aに着目したとき、外装体14の第1側面14aから突出する第1端部1aの突出長さH1を、
H1=min{H}-H
で定義する。陽極引出部1が複数ある場合、第1側面14aの凹部が複数存在し、位置Xも複数存在し得るが、基準面からの距離が最も近いものを採用する。
【0040】
突出長さH1は、好ましくは、0.2mm以上であるとよい。陽極引出部と外部電極との間に強固な接合を得ることができる。
【0041】
また、突出長さH1は、第1電極層15aの厚さよりも長いことが好ましい。なお、第1電極層15aの厚さとは、第1側面14aの窪みの位置Xにおける第1電極層15aの厚さH2とする。したがって、突出長さH1が第1電極層15aの厚さH2よりも長い(H1>H2)とは、第1電極層15aの形成後においても、第1電極層15aの外表面(即ち、第2電極層15bに覆われる面)が凹凸を有していることを意味する。第1電極層15aが凹凸状に形成されていることで、第2電極層15bとの密着性を向上できる。
【0042】
電解コンデンサ11は、陰極部6と電気的に接続された陰極側の外部電極16を備える。より具体的には、外装体14は、複数の陰極部6の第2端部2a側の端部6aおよび複数の接着層13の第2端部2a側の端部13aをそれぞれ露出させている。陰極側の外部電極16は、外装体14から露出する複数の陰極部6の端部6aおよび複数の接着層13の端部13aと電気的に接続されている。複数の端部6aおよび端部13aは、それぞれ、外装体14の第2側面14bより露出するとともに、第2側面14bと面一の端面を有する。
【0043】
陰極側の外部電極16は、外装体14から露出する複数の端部6aおよび端部13aの端面とともに外装体14の第2側面14bを覆う陰極側の第1電極層16aと、陰極側の第1電極層16aの表面に形成された陰極側の第2電極層16bとを有する。陰極側の外部電極としては、陽極側の外部電極として使用可能なものを用いることができる。
【0044】
外装体14から露出する複数の陰極部6の端部6aをそれぞれ外部電極16と接続することで、陰極側の外部電極と陰極部との間で抵抗が小さくかつ信頼性の高い接続状態が得られる。
【0045】
なお、本実施形態では、接着層13の第2端部2a側の端部13aを外装体14から露出させているが、接着層13の第2端部側の端部13aは外装体14で覆われていてもよい。
【0046】
また、陰極側の外部電極16と陰極部6との電気的接続の別の態様として、複数のコンデンサ素子の積層方向のいずれか一方の端に位置する陰極部の主面(積層方向と垂直な面)と、陰極側の外部電極とを、導電性の接着層を介して電気的に接続してもよい。この場合、端部13aおよび6aを外装体から露出させずに、当該陰極部の主面を、外装体の第1側面以外の側面から露出させればよい。
【0047】
[電解コンデンサの製造方法]
以下、本発明の実施形態に係る電解コンデンサの製造方法の各工程について説明する。
(第1工程)
第1工程では、陽極引出部と陰極形成部とを有する陽極箔、陰極形成部の上に形成された誘電体層、および、前記誘電体層の少なくとも一部を覆う陰極部を有するコンデンサ素子を形成する。第1工程は、例えば、陽極箔の表面を粗面化する工程a1と、陽極箔の粗面化された表面に誘電体層を形成する工程a2と、を含む。工程a1およびa2により、表面に誘電体層が形成された陽極箔が形成される。陽極箔の一端部を含む一部領域を、陽極引出部とし、当該端部と反対側の陽極箔の端部(第2端部)を含む領域を陰極形成部とする。工程a1では、陽極箔の少なくとも陰極形成部の表面を粗面化すればよい。また、工程a2では、陽極箔の少なくとも陰極形成部の表面に誘電体層を形成すればよい。外部電極は陽極引出部の端面と接合されるため、陽極引出部を含む陽極箔の表面全面を粗面化し、誘電体層を形成してもよい。
【0048】
陽極箔の表面の粗面化は、陽極箔の表面に凹凸を形成できればよく、例えば、陽極箔の表面をエッチング(例えば、電解エッチング)することにより行ってもよい。
【0049】
誘電体層は、陽極箔を陽極酸化することにより形成される。陽極酸化は、公知の方法、例えば、化成処理などにより行うことができる。化成処理は、例えば、陽極箔を化成液中に浸漬することにより、陽極箔の表面に化成液を含浸させ、陽極箔をアノードとして、化成液中に浸漬したカソードとの間に電圧を印加することにより行うことができる。化成液としては、例えば、リン酸水溶液などを用いることが好ましい。
【0050】
陽極箔の表面が粗面化されている場合、誘電体層は、陽極箔の粗面化された表面の凹凸形状に沿って形成される。すなわち、誘電体層の表面は、陽極箔の粗面化された表面の形状に応じた凹凸形状を有する。
【0051】
次に、陽極箔上の一部に絶縁部材(図1の分離層12に相当)を配置する。より具体的には、陽極箔の陽極引出部の上に直接または誘電体層を介して絶縁部材を配置する。絶縁部材は、陽極引出部と後工程で形成される陰極部とを隔離するように配置される。
【0052】
絶縁部材は、シート状の絶縁部材(樹脂テープなど)を、陽極引出部とともに押圧しながら、陽極引出部に貼り付けてもよい。上記以外に、原料溶液として樹脂溶液を陽極引出部に塗布または含侵させて絶縁部材を形成してもよい。樹脂溶液を塗布または含侵させた後、加熱乾燥などにより溶媒を除去すればよい。
【0053】
続いて、絶縁部材が配置されていない陽極箔上に陰極部を形成し、コンデンサ素子を得る。より具体的には、陽極箔の陰極形成部の表面に形成された誘電体層の少なくとも一部を陰極部で覆う。
【0054】
陰極部を形成する工程は、例えば、誘電体の少なくとも一部を覆う固体電解質を形成する工程と、固体電解質層の少なくとも一部を覆う陰極引出層を形成する工程と、を含む。
【0055】
固体電解質層は、例えば、原料モノマーを誘電体層上で化学重合および/または電解重合することにより、形成することができる。また、固体電解質層は、導電性高分子を含む処理液を付着させた後、乾燥させて形成してもよい。処理液は、さらにドーパントなどの他の成分を含んでもよい。導電性高分子には、例えば、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)が用いられる。ドーパントには、例えば、ポリスチレンスルホン酸(PSS)が用いられる。処理液は、導電性高分子の分散液または溶液である。分散媒(溶媒)としては、例えば、水、有機溶媒、またはこれらの混合物が挙げられる。
【0056】
陰極引出層は、例えば、固体電解質層上に、カーボン層と銀ペースト層とを順次積層することにより、形成することができる。
【0057】
(第2工程)
第2工程では、コンデンサ素子を外装体で覆う。外装体は、射出成形などの成形技術を用いて形成することができる。外装体は、例えば、所定の金型を用いて、硬化性樹脂組成物または熱可塑性樹脂(組成物)を、コンデンサ素子を覆うように所定の箇所に充填して形成することができる。
【0058】
硬化性樹脂組成物は、硬化性樹脂に加え、フィラー、硬化剤、重合開始剤、および/または触媒などを含んでもよい。硬化性樹脂としては、光硬化性樹脂や熱硬化性樹脂が例示される。硬化剤、重合開始剤、触媒などは、硬化性樹脂の種類に応じて適宜選択される。
【0059】
(第3工程)
第3工程では、第2工程の後、外装体を陽極引出部とともに切断し、陽極引出部に外装体の切断面から露出する端面を有する第1端部を形成する。これにより、外装体の一側面と面一の陽極箔の端面を、それぞれ、外装体から容易に露出させることができる。
【0060】
第3工程により、陽極箔(第1端部)の端面を、外装体から容易に露出させることができ、陽極箔(陽極引出部)と外部電極との間において抵抗が小さく信頼性の高い接続状態が得られる。
【0061】
(第4工程)
第4工程では、外装体の切断面において露出する外装体の一部を除去し、外装体の端面から第1端部を突出させる。外装体の一部を除去する方法としては、ブラスト処理を用いるものが好ましい。外装体は、陽極箔の芯部よりも柔らかい素材であるため、ブラスト処理によって外装体の露出部分が選択的に除去される。結果、陽極引出部の第1端部が外装体の端面から突出する。ブラスト処理としては、樹脂、セラミックス、金属粉末を外装体の切断面へ吹き付ける方法を用いることができる。
【0062】
第1工程において、陽極引出部および陰極形成部の表面がそれぞれ粗面化され、陽極引出部の表面に誘電体層が形成されていることも考えられる。その場合、多孔質部(誘電体層)の露出部分も選択的に除去され、陽極引出部の第1端部が外装体の端面から突出する。第1端部の近傍には、陽極引出部上に多孔質部が形成されていない、陽極引出部の芯部が露出した領域が存在し得る。
【0063】
(第5工程)
第5工程では、突出した第1端部を外部電極と接合させる。陽極側の外部電極は、陽極側の第1電極層および第2電極層を備えることが好ましい。陽極側の外部電極を形成する工程は、外装体から露出し突出する第1端部の少なくとも一部とともに外装体の端面の少なくとも一部を陽極側の第1電極層で覆う工程と、陽極側の第1電極層の表面に陽極側の第2電極層を形成する工程と、を含むことが好ましい。陽極側の第1電極層および第2電極層には、上記で例示したものを用いることができる。
【0064】
(第6工程)
さらに、陰極部を陰極側の外部電極と接合する第6工程を行ってもよい。陰極側の外部電極には、陽極側の外部電極で例示するものを用いることができる。
図1に示す構造の電解コンデンサを作製する場合、外装体から露出する複数の陰極部の第2端部側の端部および複数の接着層の第2端部側の端部を、陰極側の外部電極と接合すればよい。この場合、第2工程で、複数の陰極部の第2端部側の端部および接着層の第2端部側の端部が露出するように、外装体を形成すればよい。
【0065】
上記以外に、第1工程の後、かつ、第2工程の前に、複数のコンデンサ素子の積層方向のいずれか一方の端に位置する陰極部の主面(積層方向と垂直な面)を、陰極側の外部電極と接合してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明に係る電解コンデンサは、高湿雰囲気に曝された場合でも、優れた封止性が求められる様々な用途に利用できる。
【符号の説明】
【0067】
1:陽極引出部、1a:第1端部、2:陰極形成部、2a:第2端部、3:陽極箔、4:芯部、5:多孔質部、6:陰極部、6a:陰極部の第2端部側の端部、7:固体電解質層、8:カーボン層、9:銀ペースト層、10:コンデンサ素子、11:電解コンデンサ、12:分離層、13:接着層、13a:接着層の第2端部側の端部、14:外装体、14a:外装体の第1側面、14b:外装体の第2側面、15:陽極側の外部電極、15a:陽極側の第1電極層、15b:陽極側の第2電極層、16:陰極側の外部電極、16a:陰極側の第1電極層、16b:陰極側の第2電極層
図1
図2