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  • 特開-マイクロカテーテルの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023071850
(43)【公開日】2023-05-23
(54)【発明の名称】マイクロカテーテルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/00 20060101AFI20230516BHJP
【FI】
A61M25/00 552
A61M25/00 620
A61M25/00 610
A61M25/00 504
A61M25/00 612
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031388
(22)【出願日】2023-03-01
(62)【分割の表示】P 2020505474の分割
【原出願日】2018-08-08
(31)【優先権主張番号】62/542,960
(32)【優先日】2017-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】517241628
【氏名又は名称】アキュレイト メディカル セラピューティクス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110003926
【氏名又は名称】弁理士法人イノベンティア
(72)【発明者】
【氏名】タル, ガブリエル マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ミラー, エラン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】血管アクセスに適したマイクロカテーテルを提供する。
【解決手段】内層、ストライク層及び外層並びに内層と外層との間に位置する編組骨格を含むマイクロカテーテルであって、内層は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)から作製され、且つ0.0015インチ以下の厚さを有し、ストライク層は、ポリエーテルブロックアミドを含み、且つ0.001インチ以下の厚さを有し、前記外層の遠位部分は、90A以下のショアを有するポリカーボネートベースの熱可塑性ポリウレタンから作製される、マイクロカテーテル。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内層、ストライク層及び外層並びに前記内層と前記外層との間に位置する編組骨格を含むマイクロカテーテルであって、前記内層は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)から作製され、且つ0.0015インチ以下の厚さを有し、前記ストライク層は、ポリエーテルブロックアミドを含み、且つ0.001インチ以下の厚さを有し、前記外層の遠位部分は、90A以下のショアを有するポリカーボネートベースの熱可塑性ポリウレタンから作製される、マイクロカテーテル。
【請求項2】
前記ストライク層の前記ポリエーテルブロックアミドは、約55Dのショアを有する、請求項1に記載のマイクロカテーテル。
【請求項3】
前記編組骨格は、タングステンから作製される、請求項1又は2に記載のマイクロカテーテル。
【請求項4】
前記編組骨格は、1インチ当たり130ピック(PPI)のワイヤ配列を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のマイクロカテーテル。
【請求項5】
前記遠位部分は、200mm以下の長さを有する、請求項1~4のいずれか一項に記載のマイクロカテーテル。
【請求項6】
前記遠位部分は、第1の遠位セクション及び第2の遠位セクションを含み、前記第1の遠位セクションは、前記第2の遠位セクションに対して遠位にあり、前記第1の遠位セクションは、前記第2の遠位セクションよりも低いショアを有する、請求項1~5のいずれか一項に記載のマイクロカテーテル。
【請求項7】
前記第1の遠位セクションは、80A以下のショアを有し、及び前記第2の遠位セクションは、90A以下のショアを有する、請求項6に記載のマイクロカテーテル。
【請求項8】
前記外層の中間部分は、少なくとも第1及び第2の中間セクションを含み、前記第1の中間セクションは、前記第2の中間セクションに対して遠位にあり、前記第1の中間セクションは、前記第2の中間セクションよりも低いショアを有する、請求項1~7のいずれか一項に記載のマイクロカテーテル。
【請求項9】
前記中間部分は、第3の中間セクションをさらに含み、前記第3の中間セクションは、前記第2の中間セクションに対して近位にあり、前記第3の中間セクションは、前記第2及び第1の中間セクションよりも高いショアを有する、請求項8に記載のマイクロカテーテル。
【請求項10】
前記第1の中間セクションは、約40Dのショアを有するポリエーテルブロックアミドから作製される、請求項8又は9に記載のマイクロカテーテル。
【請求項11】
前記第2の中間セクションは、約55Dのショアを有するポリエーテルブロックアミドから作製される、請求項8~10のいずれか一項に記載のマイクロカテーテル。
【請求項12】
前記第3の中間セクションは、約60Dのショアを有するポリエーテルブロックアミドから作製される、請求項9~11のいずれか一項に記載のマイクロカテーテル。
【請求項13】
前記中間部分は、400mm以下の長さを有する、請求項8~12のいずれか一項に記載のマイクロカテーテル。
【請求項14】
前記外層の近位部分は、65Dを超えるショアを有するポリエーテルブロックアミドから作製される、請求項1~13のいずれか一項に記載のマイクロカテーテル。
【請求項15】
前記マイクロカテーテルの遠位端開口部からおよそ1mmで前記外層の前記第1の遠位セクションに位置付けられた第1の放射線不透過性マーカーバンドをさらに含む、請求項1~14のいずれか一項に記載のマイクロカテーテル。
【請求項16】
前記第1の放射線不透過性マーカーバンドは、前記第1の遠位セクションの外層に沈められた放射線不透過性合金から作製される、請求項15に記載のマイクロカテーテル。
【請求項17】
前記第1の放射線不透過性マーカーバンドに対して近位に前記外層の前記第1の遠位セクションに位置付けられた第2の放射線不透過性マーカーバンドをさらに含む、請求項15又は16に記載のマイクロカテーテル。
【請求項18】
前記第2のマーカーバンドは、前記第1のマーカーバンドに対しておよそ5~15mm近位に位置付けられて位置する、請求項17に記載のマイクロカテーテル。
【請求項19】
前記第2のマーカーバンドは、前記第1の遠位セクションの前記外層に埋め込まれた放射線不透過性粉末を含む、請求項17又は18に記載のマイクロカテーテル。
【請求項20】
前記マイクロカテーテルの近位端に取り付けられたルアーロックハブをさらに含む、請求項1~19のいずれか一項に記載のマイクロカテーテル。
【請求項21】
前記外層を覆う親水性コーティングをさらに含む、請求項1~19のいずれか一項に記載のマイクロカテーテル。
【請求項22】
前記近位部分は、約0.003~0.01lbs-in2の曲げ剛性を有する、請求項1~21のいずれか一項に記載のマイクロカテーテル。
【請求項23】
前記遠位部分は、約0.0001~約0.002lbs-in2の曲げ剛性を有する、請求項1~22のいずれか一項に記載のマイクロカテーテル。
【請求項24】
前記遠位部分は、テーパ状の内面を有する、請求項1~23のいずれか一項に記載のマイクロカテーテル。
【請求項25】
0.50~0.7mmの内径と、その遠位端で0.8~0.9mm及びその近位端で0.8~1.0mmの外径とを有する、請求項1~24のいずれか一項に記載のマイクロカテーテル。
【請求項26】
105~175cmの範囲の有効長を有する、請求項1~25のいずれか一項に記載のマイクロカテーテル。
【請求項27】
前記遠位セクションの外層は、9000~10000psiの最大引張強さ及び350~450%の最大伸びを有する、請求項1~26のいずれか一項に記載のマイクロカテーテル。
【請求項28】
前記遠位セクションの外層は、約9600psiの最大引張強さ及びおよそ400%の最大伸びを有する、請求項27に記載のマイクロカテーテル。
【請求項29】
内層、ストライク層及び外層並びに前記内層と前記ストライク層との間に位置する編組骨格を含むマイクロカテーテルを製造する方法であって、
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)及びストライク層で被覆されたマンドレルを提供すること、
前記マンドレルに編組又はコイルを適用すること、
前記PTFE及びストライク層にポリカーボネートベースの熱可塑性ポリウレタンスリーブを適用すること、
前記ポリカーボネートベースの熱可塑性ポリウレタンスリーブに熱収縮スリーブを適用すること、
前記熱収縮層に熱及び/又は圧力を適用し、それにより少なくとも前記外層を前記編組上及び/又はその中に介在させること、
前記熱収縮スリーブを剥がすこと、
前記マンドレルを取り除くこと
を含む方法。
【請求項30】
前記マイクロカテーテルに親水性コーティングを適用することをさらに含む、請求項29に記載のマイクロカテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、マイクロカテーテルの分野に関し、より詳細には、血管アクセスに適したマイクロカテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロカテーテルは、診断又は治療薬を人体の遠隔部位に送達するために一層使用されている。
【0003】
多くの場合、アクセスすることを望む標的部位に到達するのは、困難であり、マイクロカテーテルは、選択された部位に到達するまで狭く曲がりくねった血管を通過しなければならない。したがって、マイクロカテーテルは、体内を進行する際にマイクロカテーテルを押したり操作したりできるように近位端で十分に剛性である必要があるが、カテーテル先端が曲がりくねった徐々に小さくなる血管を通過できるように、且つ同時に血管にも周囲の組織にも大きい外傷を与えないように遠位端で十分に柔軟でなければならない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)から作製され、且つ0.0015インチ以下の厚さを有する内層と、ポリエーテルブロックアミドを含み、且つ0.001インチ以下の厚さを有するストライク層と、外層とを有するマイクロカテーテルであって、外層の異なる部分は、異なるデュロメーターによって特徴付けられ、外層の最遠位部分は、90A以下のショアを有するポリカーボネートベースの熱可塑性ポリウレタンから作製される、マイクロカテーテルに関する。
【0005】
本明細書に開示されるマイクロカテーテルは、1インチ当たりのピック数(PPI)を有する金属編組と組み合わせてユニークな特性を有するポリマーを利用し、低デュロメーターのポリマーと組み合わせて柔軟な遠位端が得られ、より高いデュロメーターを有するポリマーと組み合わせて比較的剛性の近位端が提供されることを保証する。その結果、並外れた強度、耐キンク性及びキンクからの回復を備えたマイクロカテーテルが回旋した血管を通る改善されたナビゲーションが有利に得られることを保証する。本明細書に開示されるマイクロカテーテルは、遠隔部位送達、サンプリング等に特に適している。これらのマイクロカテーテルは、限定しないが、造影剤及び/又は治療薬などの流体の遠隔部位送達に対して優れた性能を有する。1インチ当たりのピック数(PPI)は、織物の1インチ当たりのよこ糸の数である。1インチ当たりのピック数が多いほど、材料が緻密になる。
【0006】
いくつかの実施形態によれば、マイクロカテーテルの遠位部分は、最適な柔軟性を提供するポリカーボネートベースの熱可塑性ポリウレタンから作製された外層を有し得、これにより回旋した血管を通ることが可能になる一方、マイクロカテーテルの近位部分は、マイクロカテーテルを効果的に押して操作するために必要な剛性を提供するポリエーテルブロックアミド(例えば、Pebax(登録商標))から作製される。
【0007】
いくつかの実施形態によれば、内層、ストライク層、外層及び内層と外層との間に位置する編組骨格を含むマイクロカテーテルであって、内層は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)から作製され、且つ0.0015インチ以下の厚さを有し、ストライク層は、ポリエーテルブロックアミドを含み、且つ0.001インチ以下の厚さを有する、マイクロカテーテルが提供される。
【0008】
いくつかの実施形態によれば、外層の遠位部分は、約90A以下のショアを有するポリカーボネートベースの熱可塑性ポリウレタンから作製される。
【0009】
いくつかの実施形態によれば、ストライク層のポリエーテルブロックアミドは、約55Dのショアを有し得る。
【0010】
いくつかの実施形態によれば、編組骨格は、タングステンから作製され得る。
【0011】
いくつかの実施形態によれば、編組骨格は、1インチ当たり130ピック(PPI)のワイヤ配列を有し得る。
【0012】
いくつかの実施形態によれば、マイクロカテーテルの遠位部分は、約200mm以下の長さを有し得る。
【0013】
いくつかの実施形態によれば、マイクロカテーテルの遠位部分は、2つの遠位セクション、すなわち第1の遠位セクション及び第2の遠位セクションを含み得、第1の遠位セクションは、第2の遠位セクションに対して遠位にあり、第1の遠位セクションは、第2の遠位セクションよりも低いショアを有する。
【0014】
いくつかの実施形態によれば、第1の遠位セクションは、約80A以下のショアを有し得、及び第2の遠位セクションは、約90A以下のショアを有する。
【0015】
いくつかの実施形態によれば、マイクロカテーテルは、その外層の中間部分を含み得、中間部分は、少なくとも第1及び第2の中間セクションを含み、第1の中間セクションは、第2の中間セクションに対して遠位にあり、第1の中間セクションは、第2の中間セクションよりも低いショアを有する。
【0016】
いくつかの実施形態によれば、中間部分は、第3の中間セクションをさらに含み得、第3の中間セクションは、第2の中間セクションに対して近位にあり、第3の中間セクションは、第2及び第1の中間セクションよりも高いショアを有する。
【0017】
いくつかの実施形態によれば、第1の中間セクションは、約40Dのショアを有するポリエーテルブロックアミドから作製され得る。
【0018】
いくつかの実施形態によれば、第2の中間セクションは、約55Dのショアを有するポリエーテルブロックアミドから作製され得る。
【0019】
いくつかの実施形態によれば、第3の中間セクションは、約60Dのショアを有するポリエーテルブロックアミドから作製され得る。
【0020】
いくつかの実施形態によれば、中間部分は、約400mm以下の長さを有し得る。
【0021】
いくつかの実施形態によれば、外層の近位部分は、約65D以上のショアを有するポリエーテルブロックアミドから作製され得る。
【0022】
いくつかの実施形態によれば、マイクロカテーテルは、マイクロカテーテルの遠位端開口部からおよそ1mmで外層の第1の遠位セクションに位置付けられた第1の放射線不透過性マーカーバンドをさらに含み得る。いくつかの実施形態によれば、第1の放射線不透過性マーカーバンドは、第1の遠位セクションの外層に沈められた放射線不透過性合金か
ら作製され得る。
【0023】
いくつかの実施形態によれば、マイクロカテーテルは、第1の放射線不透過性マーカーバンドに対して近位に外層の第1の遠位セクションに位置付けられた第2の放射線不透過性マーカーバンドをさらに含み得る。いくつかの実施形態によれば、第2のマーカーバンドは、第1のマーカーバンドに対しておよそ5~15mm近位に位置付けられて位置し得る。いくつかの実施形態によれば、第2のマーカーバンドは、第1の遠位セクションの外層に埋め込まれた放射線不透過性粉末を含み得るか又はそれであり得る。
【0024】
いくつかの実施形態によれば、マイクロカテーテルは、マイクロカテーテルの近位端に取り付けられたルアーロックハブをさらに含み得る。
【0025】
いくつかの実施形態によれば、マイクロカテーテルは、外層を覆う親水性コーティングをさらに含み得る。
【0026】
いくつかの実施形態によれば、近位部分は、約0.003~0.01lbs-in2の曲げ剛性を有し得る。
【0027】
いくつかの実施形態によれば、遠位部分は、約0.0001~約0.002lbs-in2の曲げ剛性を有し得る。
【0028】
いくつかの実施形態によれば、遠位部分は、テーパ状の内面を有し得る。
【0029】
いくつかの実施形態によれば、マイクロカテーテルは、0.50~0.7mmの内径と、その遠位端で0.8~0.9mm及びその近位端で0.8~1.0mmの外径とを有し得る。
【0030】
いくつかの実施形態によれば、マイクロカテーテルは、105~175cmの範囲の有効長を有し得る。
【0031】
いくつかの実施形態によれば、遠位セクションの外層は、9000~10000psiの最大引張強さ及び350~450%の最大伸びを有し得る。
【0032】
いくつかの実施形態によれば、遠位セクションの外層は、約9600psiの最大引張強さ及びおよそ400%の最大伸びを有し得る。
【0033】
いくつかの実施形態によれば、内層、ストライク層及び外層並びに内層とストライク層との間に位置する編組骨格を有するマイクロカテーテルを製造する方法であって、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)及びストライク層で被覆されたマンドレルを提供すること、マンドレルに編組又はコイルを適用すること、PTFE及びストライク層にポリカーボネートベースの熱可塑性ポリウレタンスリーブを適用すること、ポリカーボネートベースの熱可塑性ポリウレタンスリーブに熱収縮スリーブを適用すること、熱収縮層に熱及び/又は圧力を適用し、それにより少なくとも外層を編組上及び/又はその中に介在させること、熱収縮スリーブを剥がすこと、及びマンドレルを取り除くことを含む方法が提供される。
【0034】
いくつかの実施形態によれば、この方法は、マイクロカテーテルに親水性コーティングを適用することをさらに含み得る。
【0035】
本開示の特定の態様は、上記の特徴のいくつか、すべてを含むか又はまったく含まない
場合がある。本明細書に含まれる図、記載及び特許請求の範囲から1つ又は複数の技術的利点が当業者に容易に明らかになる可能性がある。さらに、特定の特徴を上に列挙したが、本開示の様々な態様は、列挙された特徴のすべて、いくつかを含むか又はまったく含まない場合がある。
【0036】
本開示の他の態様、特徴及び利点は、図面、詳細な記載及び特許請求の範囲においてさらに拡大される。
【0037】
本開示の特徴及び利点は、図面に示される例と併せて考慮されるとき、以下に記載される詳細な記載からより明らかになるであろう。図面では、同様の参照文字が全体を通して対応して識別する。通常、複数の図に現れる同一の構造、要素又は部品は、それらが現れるすべての図で同じ番号がラベル付けされる。代わりに、複数の図に現れる要素又は部品は、それらが現れる異なる図で異なる番号でラベル付けされることもある。図の構成要素及び特徴の寸法は、表示の利便性及び明確性のために選択されたものであり、必ずしも原寸に比例して示されているわけではない。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1図1Aは、いくつかの実施形態による、複数のセクションを含む外層を含むマイクロカテーテルを概略的に示し、複数のセクションは、異なるポリマー材料から作製される。図1Bは、図1Aのマイクロカテーテルの遠位端の斜視破断図を概略的に示し、外層、ストライク層、内層、内層と外層との間に位置する編組骨格を示す。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下に示す詳細な記載は、様々な構成を記載することを意図しており、記載された概念を実施できる唯一の構成を表すことを意図したものではない。説明の目的のため、特定の構成及び詳細が本開示の異なる態様の詳細な理解を提供するために示されている。しかしながら、本明細書に提示されている特定の詳細なしに本開示を実施できることも当業者に明らかであろう。さらに、本開示を不明瞭にしないために、周知の特徴は、省略又は簡略化される場合がある。
【0040】
本開示のいくつかの実施形態によれば、内層、ストライク層及び外層を含むマイクロカテーテルが提供される。編組骨格が内層と外層との間に位置し得る。一態様では、マイクロカテーテルの内層は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)から作製され、且つおよそ0.0015インチ以下の厚さを有する。ストライク層は、ポリエーテルブロックアミド(例えば、PEBAX)から構成され得、且つ0.001インチ以下の厚さを有し得る。ストライク層は、内層と外層との間の接続層である。内層は、加熱によって材料に接着することができないため、ストライク層は、フィルムキャストプロセスを介して内層に取り付けることができる。
【0041】
外層の全体厚さは、およそ0.082mm~0.095mmである。さらに、外層は、2つのセクション:第1セクション及び第2セクションを含むことができる。外層の第1のセクション(すなわち遠位部分)は、90A以下のショアを有するポリカーボネートベースの熱可塑性ポリウレタンから作製され得る。
【0042】
本明細書で使用される際、「マイクロカテーテル」という用語は、0.5mm~1mmの範囲内の外径を有するカテーテルを指し得る。より具体的には、マイクロカテーテルの外径は、2mm未満、1mm未満、0.75mm未満、0.60mm未満又は0.5mm未満であり得る。いくつかの実施形態によれば、マイクロカテーテルの内径は、その近位端からその遠位端に向かって0.3~0.75mm、0.4~0.7mm又は0.45~0.65mmだけテーパ状であり得る。いくつかの実施形態によれば、テーパは、連続的
であり得る。いくつかの実施形態によれば、マイクロカテーテルは、その遠位端で0.5~0.85、0.55~0.8又は0.6~0.75mmの外径を有し得る。いくつかの実施形態によれば、マイクロカテーテルは、その近位端(すなわちハブに最も近い端部)で0.75~1.5、0.8~1.0mmの外径を有し得る。いくつかの実施形態によれば、マイクロカテーテルは、75~250cm、100~200cm又は105~175cmの範囲の有効長を有し得る。それぞれの可能性は、別々の実施形態である。
【0043】
いくつかの実施形態によれば、マイクロカテーテルは、1.9、2.4フレンチ、2.7フレンチ又は2.8フレンチのマイクロカテーテルであり得る。それぞれの可能性は、別々の実施形態である。
【0044】
本明細書で使用される際、「遠位部分」という用語は、マイクロカテーテルの最後の200mm、180mm、175mm、170mm、150mm、100mm、50mm又は30mmを指し得る。それぞれの可能性は、別々の実施形態である。
【0045】
本明細書で使用される際、「編組」及び「編組骨格」という用語は、複数の織り交ぜられたワイヤから形成された管状要素などの構造要素を指し得る。いくつかの実施形態によれば、編組は、チューブを形成する少なくとも3本の織り交ぜられたワイヤから形成され得る。いくつかの実施形態によれば、編組は、8~48本のワイヤ又は12~32本のワイヤを含み得る。非限定的な例として、編組は、16本のワイヤを含み得る。それぞれの可能性は、別々の要素である。いくつかの実施形態によれば、編組を形成するワイヤは、15~40ミクロン又は20~30ミクロンなどの10~60ミクロンの範囲の直径又は10~60ミクロンの範囲内の任意の他の適切な直径を有し得る。それぞれの可能性は、別々の実施形態である。非限定的な例として、編組を形成するワイヤは、25ミクロンの直径を有し得る。いくつかの実施形態によれば、骨格は、カテーテルの本質的に全長に沿って延在し得る。いくつかの実施形態によれば、編組は、タングステン、ステンレス鋼、ニッケルチタン(ニチノールとも呼ばれる)、ニチノール、コバルトクロム、白金イリジウム、ナイロン又はそれらの任意の組み合わせから作製され得る。それぞれの可能性は、別々の実施形態である。
【0046】
いくつかの実施形態によれば、編組骨格を形成するワイヤの少なくともいくつかは、同じ方向又は反対方向に、すなわち左撚り/右撚りで編組され得る。有利には、この編組構造は、良好なトルク能力(コイル状骨格よりも優れている)、低い曲げ剛性(すなわち優れた柔軟性)、良好な押し込み能力(コイル状骨格よりも優れている)及び優れた耐キンク性を可能にする。
【0047】
いくつかの実施形態によれば、編組骨格を形成するワイヤの少なくともいくつかは、非円形/円形であり得る。
【0048】
いくつかの実施形態によれば、編組骨格は、1インチ当たり75~250ピック(PPI)、100~200PPI又は100~150PPIのワイヤ配列を有し得る。それぞれの可能性は、別々の実施形態である。非限定的な例として、編組骨格は、約130PPIのワイヤ配列を有し得る。いくつかの実施形態によれば、編組のPPIは、マイクロカテーテルの中間部分及び近位部分のPPIと比較して遠位部分でより高いことができる。
【0049】
いくつかの実施形態によれば、異なるポリマー層及び/又はセクションは、層/セクション、したがってマイクロカテーテルの異なる特性に寄与し得る。例えば、異なるポリマー層は、層、したがってマイクロカテーテルの弾性、柔軟性、伸縮性、強度、硬度、剛性、最大引張強さ、伸び又は任意の他の特性に寄与し得る。それぞれの可能性は、別々の実施形態である。
【0050】
いくつかの実施形態によれば、内層は、約0.0010インチの厚さを有し得る。いくつかの実施形態によれば、ストライク層は、約0.0005インチの厚さを有し得る。いくつかの実施形態によれば、ストライク層のポリエーテルブロックアミドは、55Dショアポリエーテルブロックアミドである。ストライク層は、内層と外層との間の接合を高める。例えば、ストライク層は、フィルムキャストプロセス中に内層に接続される。これは、内層が、加熱によって材料に接着できないPTFEを含むためである。
【0051】
いくつかの実施形態によれば、外層の遠位部分は、少なくとも2つのセクション、すなわち第1の最遠位セクション及び第2のセクションを含み得る。第1の最遠位セクションは、ポリカーボネートベースの熱可塑性ポリウレタン(Lubrizol Corporation(米国オハイオ州)によるPellethane(商標)TPUなど)から作製され、約80Aのショアを有する(ショアは、硬度の測定値である)。最遠位セクションに隣接する第2のセクションは、約90Aのショアを有するポリカーボネートベースの熱可塑性ポリウレタンから作製される。いくつかの実施形態によれば、熱可塑性ポリウレタンは、Carbothane(登録商標)TPU(Lubrizol)であり得るか又はそれを含み得る。代わりに、両方のセクションは、同じ又は異なるショアを有するCarbothane(登録商標)から作製され得る。
【0052】
いくつかの実施形態によれば、遠位部分は、少なくとも約0.0009[lbs-in2]の曲げ剛性を有し得る。例えば、0.0005~0.0.002[lbs-in2]又は0.0007~0.001[lbs-in2]など、約0.0001~0.002[lbs-in2]又はその間の任意の曲げ剛性、例えば0.0009[lbs-in2]である。
【0053】
いくつかの実施形態によれば、遠位部分の外層は、9000~10000psiの最大引張強さ及び350~450%の最大伸びを有し得る。いくつかの実施形態によれば、遠位部分の外層は、約9600psiの最大引張強さ及びおよそ400%の最大伸びを有し得る。
【0054】
本明細書で使用される際、「最大引張強さ」及び「引張強さ」という用語は、交換可能に使用され得、材料が破断する前に引き伸ばされたり引っ張られたりしながら耐えることができる最大応力を指す。いくつかの実施形態によれば、マイクロカテーテルは、少なくとも4N、少なくとも5N、少なくとも7N又は少なくとも10Nの引張力を有する。
【0055】
いくつかの実施形態によれば、遠位部分の外層は、3,000~10,000psi、4000~10,000、7,500~10,000、9,000~10,000psiの範囲又は2000~10000psiの範囲内の他のいずれかの範囲の最大張力(限定しないが、およそ9,600psiの最大張力など)を有し得る。それぞれの可能性は、別々の実施形態である。追加的又は代替的に、遠位部分の外層は、限定しないが、およそ400%の最大伸びなど、350~450%の最大伸びを有し得る。本明細書で使用される際、最大張力及び最大伸びに関連するおよそという用語は、+/-10%、又は+/-5%、又は+-/2%を指し得る。それぞれの可能性は、別々の実施形態である。
【0056】
いくつかの実施形態によれば、マイクロカテーテルの少なくとも遠位部分は、キンクのない曲げのために構成され得る。本明細書で使用される際、「キンクのない曲げ」という用語は、そこを通る流れを妨げない遠位部分の曲げを指し得る。いくつかの実施形態によれば、遠位部分は、約180度の角度でキンクのない曲げのために構成され得る。いくつかの実施形態によれば、遠位部分は、約0.5から1.5mm、例えば0.5~1.2、0.5~1mmの範囲又はその間のいずれかの半径の最小曲げ半径でキンクのない曲げの
ために構成され得る。
【0057】
本明細書で使用される際、「およそ」という用語は、+/-10%、又は+/-5%、又は+-/2%を指し得る。それぞれの可能性は、別々の実施形態である。
【0058】
いくつかの実施形態によれば、遠位部分は、長さが50~400mm、100~300mm又は150~200mmであり得る。それぞれの可能性は、別々の実施形態である。いくつかの実施形態によれば、遠位部分の第1のセクションは、長さが約20~100mm又は30~75又は40~60mmであり得る。それぞれの可能性は、別々の実施形態である。いくつかの実施形態によれば、遠位部分の第2のセクションは、長さが約75~250mm又は100~200若しくは120~150mmであり得る。それぞれの可能性は、別々の実施形態である。
【0059】
いくつかの実施形態によれば、遠位部分は、テーパ状の内面を有し得る。
【0060】
いくつかの実施形態によれば、マイクロカテーテルの遠位部分に対して近位のマイクロカテーテルの部分は、限定しないが、Pebax(登録商標)(Arkema Group(Colombes、フランス)による熱可塑性エラストマー(TPE))などのポリエーテルブロックアミドから作製され得る。本出願の発明者らによって有利に発見されたのは、遠位部分をポリカーボネートベースの熱可塑性ポリウレタンから作製し、マイクロカテーテルの残りの部分をポリエーテルブロックアミドから作製することにより、マイクロカテーテルの柔軟性と押し込み性との最適なバランスが達成されることである。
【0061】
いくつかの実施形態によれば、マイクロカテーテルは、中間部分を含むことができ、その外層は、少なくとも第1及び第2の中間セクションを含み、第1の中間セクションは、第2の中間セクションの遠位にある。中間セクションは、マイクロカテーテルが近位端に向かってより硬くなり、良好な押し込み性を確保し、トルクの伝達を可能にし、軸方向の剛性を提供することを保証する。いくつかの実施形態によれば、第1の中間セクションは、第2の中間セクションのそれより低いショアを有し得る。いくつかの実施形態によれば、第1の中間セクションは、約40Dのショアを有するポリエーテルブロックアミドから作製され得る。いくつかの実施形態によれば、第2の中間セクションは、約55Dのショアを有するポリエーテルブロックアミドから作製され得る。
【0062】
いくつかの実施形態によれば、中間部分の外層は、第2の中間セクションの近位に第3の中間セクションをさらに含むことができる。いくつかの実施形態によれば、第3の中間セクションは、第2及び第1の中間セクションよりも高いショアを有し得る。いくつかの実施形態によれば、第3の中間セクションは、約60Dのショアを有するポリエーテルブロックアミドから作製され得る。
【0063】
いくつかの実施形態によれば、中間部分は、400mm以下、300mm以下、200mm又は150mm以下の長さを有し得る。それぞれの可能性は、別々の実施形態である。
【0064】
いくつかの実施形態によれば、マイクロカテーテルは、近位部分を含み得る。いくつかの実施形態によれば、近位部分の外層は、65Dを超えるショアを有するポリエーテルブロックアミドから作製され得、したがってマイクロカテーテルの最も剛性の高い部分を提供する。いくつかの実施形態によれば、近位部分は、少なくとも約0.003の曲げ剛性(屈曲剛性)を有し得る。例えば、0.003~0.006[lbs-in2]又は0.004~0.005[lbs-in2]など、約0.003~約0.01[lbs-in2]又はその間のいずれかの曲げ剛性である。例示的な実施形態によれば、送達/ナビゲーションセクションは、約0.0045[lbs-in2]の曲げ剛性を有し得る。
【0065】
いくつかの実施形態によれば、マイクロカテーテルは、少なくとも1つの放射線不透過性マーカー、例えば1つ、2つ、3つ、4つ又はそれを超える放射線不透過性マーカーを含むことができる。それぞれの可能性は、別々の実施形態である。
【0066】
いくつかの実施形態によれば、マイクロカテーテルは、マイクロカテーテルの遠位端開口部からおよそ1mmなど、マイクロカテーテルの遠位縁部に位置付けられた第1の放射線不透過性マーカーを含み得る。いくつかの実施形態によれば、第1の放射線不透過性マーカーは、編組の終端を形成し得る。有利には、マイクロカテーテルの遠位縁部に第1の放射線不透過性マーカーを位置付けることは、マイクロカテーテルの編組骨格のほぐれを防ぐのに役立ち得る。
【0067】
本明細書で使用される際、「遠位端開口部」という用語は、マイクロカテーテルの管腔に通じるマイクロカテーテルの端部開口部を指す。いくつかの実施形態によれば、遠位端開口部は、マイクロカテーテルの遠位端でマイクロカテーテルの終端を定める。いくつかの実施形態によれば、遠位端開口部は、マイクロカテーテル管腔の内径に本質的に等しい内径を有し得る。いくつかの実施形態によれば、遠位端開口部は、マイクロカテーテル管腔の内径よりも小さい内径を有し、その端部に向かって管腔を狭めることができる。
【0068】
いくつかの実施形態によれば、第1の放射線不透過性マーカーは、放射線不透過性合金から作製され得る。いくつかの実施形態によれば、第1の放射線不透過性マーカーは、マイクロカテーテルの遠位部分を構築するポリカーボネートベースの熱可塑性ポリウレタン(TPU)層に沈められ得る。いくつかの実施形態によれば、第1の放射線不透過性マーカーは、マイクロカテーテルの遠位部分を構築するポリカーボネートベースの熱可塑性ポリウレタン(TPU)層を覆う/カバーすることができる。いくつかの実施形態によれば、第1の放射線不透過性マーカーは、白金イリジウム又は同様の放射線不透過性材料から作製され得る。
【0069】
いくつかの実施形態によれば、マイクロカテーテルは、第1の放射線不透過性マーカーに対して近位に位置付けられた第2の放射線不透過性マーカーを含み得る。いくつかの実施形態によれば、第2のマーカーバンドは、第1のマーカーバンドに対しておよそ5~15mm、7~15mm、10~12mm近位に位置付けられ得る。いくつかの実施形態によれば、第2の放射線不透過性マーカーは、第1の遠位セクションの外層に埋め込まれた放射線不透過性粉末を含み得る。理論に束縛されることなく、マイクロカテーテルの遠位端に対して近位の位置でポリマーマーカーを使用することは、放射線不透過性を提供しながら、シャフトの柔軟性を維持するのに役立ち得る。
【0070】
いくつかの実施形態によれば、マイクロカテーテルは、マイクロカテーテルの近位端に接着されるか、又は別の方法で取り付けられる/接続されるルアーロックハブを含む。いくつかの実施形態によれば、ルアーロックハブは、キンク及び窮屈な半径の失敗に対する支持のために2層のストレインリリーフを有し得る。
【0071】
いくつかの実施形態によれば、マイクロカテーテルは、外層を覆う親水性コーティングをさらに含み得る。いくつかの実施形態によれば、親水性コーティングは、血管内のマイクロカテーテルの摩擦係数を下げるように構成され得る。いくつかの実施形態によれば、コーティングは、マイクロカテーテルの摩擦係数(COF)を約0.03に低減するように構成され得る。いくつかの実施形態によれば、コーティングは、ComfortCoat(登録商標)親水性潤滑コーティングであり得る。いくつかの実施形態によれば、コーティングは、優れた潤滑性、低い摩擦及び静止摩擦、優れた耐久性及び耐摩耗性、低微粒
子放出、延長した潤滑性の維持(ドライアウト時間)、生体適合性(ISO 10993試験)及び/又は血液適合性(ISO 10993試験を超えて拡大される)を提供し得る。
【0072】
いくつかの実施形態によれば、内層、ストライク層及び外層並びに内層とストライク層との間に位置する編組骨格とを含む、本明細書に開示されるマイクロカテーテルを製造する方法が提供される。一態様では、この方法は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)及びストライク層で被覆されたマンドレルを提供することを含む。編組又はコイルがマンドレルに適用される。さらに、ポリカーボネートベースの熱可塑性ポリウレタンスリーブがPTFE及びストライク層に適用される。熱がポリカーボネートベースの熱可塑性ポリウレタンスリーブ上の収縮スリーブに加えられる。同様に、熱及び/又は圧力が熱収縮層に加えられ、それにより少なくとも外層が編組上及び/又はその中に介在される。次に、熱収縮スリーブを取り外すか又は剥がす。次いで、マンドレルを除去する。
【0073】
いくつかの実施形態によれば、この方法は、マイクロカテーテルに親水性コーティングを適用することも含む。
【0074】
いくつかの実施形態によれば、マイクロカテーテルの内層は、0.0015インチ以下の厚さを有し得る。いくつかの実施形態によれば、ストライク層は、0.001インチ以下の厚さを有し得る。いくつかの実施形態によれば、外層の遠位部分は、90A以下のショアを有するポリカーボネートベースの熱可塑性ポリウレタンから作製され得る。
【0075】
いくつかの実施形態によれば、製造されるマイクロカテーテルは、0.50~0.7mmの内径と、その遠位端で0.8~0.9mm及びその近位端で0.8~1.0mmの外径とを有し得る。いくつかの実施形態によれば、マイクロカテーテルは、75~250cm、100~200cm又は105~175cmの範囲の有効長を有し得る。それぞれの可能性は、別々の実施形態である。
【0076】
いくつかの実施形態によれば、製造されるマイクロカテーテルは、1.9、2.4フレンチ、2.7フレンチ又は2.8フレンチのマイクロカテーテルであり得る。それぞれの可能性は、別々の実施形態である。
【0077】
0.65mm~0.45mm(近位から遠位)の連続的にテーパ状の内径を有する1.9フレンチカテーテルの適切な構造及び割合の非限定的な例を以下の表1に提供する。
【0078】
【表1】
【0079】
本明細書で使用される際、「編組」及び「編組骨格」という用語は、複数の織り交ぜられたワイヤから形成された管状要素などの構造要素を指し得る。いくつかの実施形態によれば、編組は、チューブを形成する少なくとも3本の織り交ぜられたワイヤから形成され得る。いくつかの実施形態によれば、編組は、8~48本のワイヤ又は12~32本のワイヤを含み得る。非限定的な例として、編組は、16本のワイヤを含み得る。それぞれの可能性は、別々の要素である。いくつかの実施形態によれば、編組を形成するワイヤは、15~40ミクロン又は20~30ミクロンなどの10~60ミクロンの範囲の直径又は10~60ミクロンの範囲内の任意の他の適切な直径を有し得る。それぞれの可能性は、別々の実施形態である。非限定的な例として、編組を形成するワイヤは、25ミクロンの直径を有し得る。いくつかの実施形態によれば、骨格は、カテーテルの本質的に全長に沿って延在し得る。いくつかの実施形態によれば、編組は、タングステン、ステンレス鋼、ニッケルチタン(ニチノールとも呼ばれる)、ニチノール、コバルトクロム、白金イリジウム、ナイロン又はそれらの任意の組み合わせから作製され得る。それぞれの可能性は、別々の実施形態である。
【0080】
いくつかの実施形態によれば、編組骨格を形成するワイヤの少なくともいくつかは、同じ方向又は反対方向に編組され得る。
【0081】
いくつかの実施形態によれば、編組骨格を形成するワイヤの少なくともいくつかは、非円形/円形であり得る。
【0082】
いくつかの実施形態によれば、編組骨格は、1インチ当たり75~250ピック(PPI)、100~200PPI又は100~150PPIのワイヤ配列を有し得る。それぞれの可能性は、別々の実施形態である。非限定的な例として、編組骨格は、約130PPIのワイヤ配列を有し得る。いくつかの実施形態によれば、編組のPPIは、マイクロカテーテルの中間部分及び近位部分のPPIと比較して遠位部分でより高いことができる。
【0083】
いくつかの実施形態によれば、異なるポリマー層及び/又はセクションは、層/セクション、したがってマイクロカテーテルの異なる特性に寄与し得る。例えば、異なるポリマー層は、層、したがってマイクロカテーテルの弾性、柔軟性、伸縮性、強度、硬度、剛性、最大引張強さ、伸び又は他の特性に寄与し得る。それぞれの可能性は、別々の実施形態である。
【0084】
いくつかの実施形態によれば、内層は、本質的に本明細書に記載されるように、約0.0010インチの厚さを有し得る。いくつかの実施形態によれば、ストライク層は、本質的に本明細書に記載されるように、約0.0005インチの厚さを有し得る。いくつかの実施形態によれば、ストライク層のポリエーテルブロックアミドは、本質的に本明細書に記載されるように、55Dショアポリエーテルブロックアミドである。
【0085】
いくつかの実施形態によれば、外層の遠位部分は、本質的に本明細書に記載されるように、少なくとも2つのセクション、すなわち約80Aのショアを有するポリカーボネートベースの熱可塑性ポリウレタンから作製された第1の最遠位セクションと、約90Aのショアを有するポリカーボネートベースの熱可塑性ポリウレタンから作製された、最遠位セクションに隣接する第2のセクションとを含み得る。いくつかの実施形態によれば、熱可塑性ポリウレタンは、Carbothane(登録商標)TPU(Lubrizol)であり得るか又はそれを含み得る。
【0086】
いくつかの実施形態によれば、遠位部分は、本質的に本明細書に記載されるように、少
なくとも約lbs-in2の曲げ剛性を有し得る。
【0087】
いくつかの実施形態によれば、遠位部分の外層は、本質的に本明細書に記載されるように、9000~10000psiの最大引張強さ及び350~450%の最大伸びを有し得る。いくつかの実施形態によれば、遠位部分の外層は、本質的に本明細書に記載されるように、約9600psiの最大引張強さ及びおよそ400%の最大伸びを有し得る。
【0088】
いくつかの実施形態によれば、遠位部分の外層は、3,000~10,000psi、4000~10,000、7,500~10,000、9,000~10,000psiの範囲又は2000~10000psiの範囲内の他のいずれかの範囲の最大引張強さ(限定しないが、およそ9,600psiの最大引張強さなど)を有し得る。それぞれの可能性は、別々の実施形態である。追加的又は代替的に、遠位部分の外層は、限定しないが、およそ400%の最大伸びなど、350~450%の最大伸びを有し得る。本明細書で使用される際、最大張力及び最大伸びに関連するおよそという用語は、+/-10%、又は+/-5%、又は+-/2%を指し得る。それぞれの可能性は、別々の実施形態である。
【0089】
いくつかの実施形態によれば、遠位部分は、本質的に本明細書に記載されるように、長さが50~400mm、100~300mm又は150~200mmであり得る。それぞれの可能性は、別々の実施形態である。いくつかの実施形態によれば、遠位部分の第1のセクションは、本質的に本明細書に記載されるように、長さが約20~100mm又は30~75若しくは40~60mmであり得る。それぞれの可能性は、別々の実施形態である。いくつかの実施形態によれば、遠位部分の第2のセクションは、本質的に本明細書に記載されるように、長さが約75~250mm又は100~200若しくは120~150mmであり得る。それぞれの可能性は、別々の実施形態である。
【0090】
ここで、図1Aを参照する。図1Aは、いくつかの実施形態による、異なるポリマー材料から作製された複数のセクションを含む外層を有するマイクロカテーテル100を概略的に示す。マイクロカテーテル100の近位端130は、マイクロカテーテル100のカテーテルシャフト120上に成形されるか、又は別の方法で取り付けられるハブ110を含む。いくつかの実施形態によれば、近位端130は、100~200cmの長さを有し得る。
【0091】
ハブ110は、流体又は薬物の注入又はガイドワイヤの導入など、様々な機能のためにカテーテルシャフト120の管腔へのアクセスを可能にするように構成される。ハブ110は、好ましくは、ハブ110に機械的に結合されたストレインリリーフ112を含む。ストレインリリーフ112は、ポリマー材料から作製され得、図示のように、その遠位端でテーパ状であり得、カテーテルシャフト120に構造的支持を提供し、それによりカテーテルシャフトのキンクを回避することを促進するように構成され得る。ストレインリリーフ112に取り付けられたカテーテルシャフト120の近位端130は、限定しないが、Pebax(登録商標)7233など、約70Dのショア及び/又は約74,000psiの曲げ弾性率を有するポリエーテルブロックアミドから作製された外層132を含む。いくつかの実施形態によれば、近位端132は、800~1200mm(例えば、約1000mm)の長さを有し得る。任意選択的に、外層132の一部は、ストレインリリーフ112とカテーテルシャフト120との間のジョイント部を覆う熱収縮材料134を含むことができる。
【0092】
カテーテルシャフト120の中間部140で近位端130に隣接して、限定しないが、Pebax(登録商標)6333など、約60Dのショア及び/又は約41,000psiの曲げ弾性率を有するポリエーテルブロックアミドから作製された外層143を有する
別のセクション142があり、これに続くのは、限定しないが、Pebax(登録商標)5533など、約55Dのショア及び/又は約25,000psiの曲げ弾性率を有するポリエーテルブロックアミドから作製された外層145を有するセクション144、及び限定しないが、Pebax(登録商標)4033など、約40Dのショア及び/又は約11,000psiの曲げ弾性率を有するポリエーテルブロックアミドから作製された外層147を有するセクション146である。いくつかの実施形態によれば、セクション142は、20~60mm(例えば、約40mm)の長さを有し得る。いくつかの実施形態によれば、セクション144は、20~60mm(例えば、約40mm)の長さを有し得る。いくつかの実施形態によれば、中間部140は、100~140mmの長さを有し得る。いくつかの実施形態によれば、セクション146は、30~70mm(例えば、約50mm)の長さを有し得る。
【0093】
カテーテルシャフト120の遠位端150は、限定しないが、Carbothane PC-3585-Aなど、約80Aのショア及び/又は約1500psiの曲げ弾性率を有するポリカーボネートベースの熱可塑性ポリウレタンから作製された外層153を有するセクション152と、近位マーカー160(図1Bに見られる)と、限定しないが、Carbothane PC-3595-Aなど、約90Aのショア及び/又は約6400の曲げ弾性率を有するポリカーボネートベースの熱可塑性ポリウレタンから作製された外層155を有するセクション154と、遠位マーカー162(同じく図1Bに見られる)とを含む。いくつかの実施形態によれば、遠位端150は、175~200mmの長さを有し得る。いくつかの実施形態によれば、セクション152は、100~200mm(例えば、約130mm)の長さを有し得る。いくつかの実施形態によれば、セクション154は、40~80mm(例えば、約60mm)の長さを有し得る。いくつかの実施形態によれば、本質的に本明細書に記載されているように、近位マーカー160は、外層153又は155の一部に埋め込まれた放射線不透過性粉末であり得る。いくつかの実施形態によれば、近位マーカー160は、遠位端開口部180からおよそ5~15mmに位置付けられ得る。いくつかの実施形態によれば、遠位マーカー162は、外層155に沈められた放射線不透過性合金であり得る。いくつかの実施形態によれば、遠位マーカー162は、遠位端開口部180から近位方向におよそ1mmに位置付けられ得る。いくつかの実施形態によれば、外層132、143、145、147、153及び/又は155は、およそ0.08mm~0.1mmの全体厚さを有し得る。
【0094】
ここで、図1Bを参照する。図1Bは、近位マーカー160から先端170まで延在する図1Aに示されるマイクロカテーテル100の遠位端150の遠位部分及びカテーテルシャフト120の包囲セクション154の斜視破断図を概略的に示す。上述のように、セクション154は、約90Aのショア及び/又は約6400の曲げ弾性率を有するポリカーボネートベースの熱可塑性ポリウレタンから作製された外層155を含む。分解図からわかるように、外層155の下には編組190がある。いくつかの実施形態によれば、編組190は、シャフト120の全長に沿って延在する。代わりに、編組190は、セクション154に沿ってのみ、セクション152及び154に沿ってのみ、セクション152、154及び146に沿ってのみ、セクション152、154、146及び144に沿ってのみ、セクション152、154、146、144及び142に沿ってのみ又はセクション152、154、146、144、142及び132に沿ってのみなど、シャフト120の一部のみに沿って延在する。それぞれの可能性は、別々の実施形態である。好ましくは、編組190は、低デュロメーターのポリマーとの組み合わせにおいて柔軟な遠位端が得られ、より高いデュロメーターを有するポリマーとの組み合わせにおいて相対的に剛性の近位端が提供されることを保証する1インチ当たりのピック数(PPI)を有する(例えば、130PPI)。編組190の下には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)から作製され得る内層192(「ライナ」又は「内側ライナ」とも呼ばれる)がある。いくつかの実施形態によれば、内層192は、0.0015インチ以下の厚さを有し得る。
【実施例0095】
実施例1 - マイクロカテーテルの柔軟性
この研究の目的は、主要な市販のマイクロカテーテルと比較して、本明細書に開示されているマイクロカテーテルの柔軟性を特徴付けることであった。研究は、受入れ検査、製品製造、親水性コーティング、QA検査、包装及び滅菌を含む完全な製造プロセスによってNordson Medical(Sunnyvale、以前はVention Medical)で製造された(Drakon(商標)とも呼ばれる)本明細書に開示されるような2.8Fr-150cmで行った。
【0096】
カテーテルの遠位領域の柔軟性は、その特性がカテーテルのナビゲーション能力を決定するために興味深い。具体的には、カテーテルの遠位20~30mmは、最も遠位の蛇行した解剖学的構造に到達する可能性が最も高い領域である。カテーテルの遠位領域(遠位24mm)を分析スケールに対して垂直に固定した。次に、遠位先端を変位ジグに置き、5.25mmの変位を生じさせた。次に、分析スケールを使用して変位力(柔軟性)を測定した。
【0097】
本明細書に開示された2.8フレンチマイクロカテーテル(Drakon(商標))の5つについて得られた結果及び別の市販のマイクロカテーテル(対照)の5つの2.8フレンチの結果を以下の表2にまとめた(p値0.0007)。
【0098】
【表2】
【0099】
表からわかるように、本明細書に開示されているマイクロカテーテル(Drakon(商標))は、市販のマイクロカテーテル(対照)よりも大幅に優れた柔軟性をすなわち66%パーセントの差で示した。
【0100】
本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を記載することのみを目的としており、限定することを意図していない。本明細書で使用される際、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その」は、文脈がそうでないことを明確に示さない限り、複数形も含むことを意図している。本明細書で使用される場合、「含む」又は「含んでいる」という用語は、記載した特徴、整数、ステップ、操作、要素又は構成要素の存在を特定するが、1つ又は複数の他の特徴、整数、ステップ、操作、要素、構成要素又はそれらのグループの存在及び追加を排除することも除外することもないことがさらに理解されるであろう。いくつかの実施形態によれば、「含む」という用語は、「から本質的になる」又は「からなる」という用語で置き換えることができる。
【0101】
「約」という用語は、記載した量と実質的に同程度に1つ又は複数の機能的効果を達成する能力を保持する記載した量からの合理的な変動を指す。この用語は、本明細書では、記載した値のプラス若しくはマイナス10%、又はプラス若しくはマイナス5%、又はプラス若しくはマイナス1%、又はプラス若しくはマイナス0.5%、又はプラス若しくはマイナス0.1%或いはその間のいずれかのパーセンテージの値を指す場合もある。
【0102】
いくつかの例示的な態様及び実施形態を上で考察してきたが、当業者は、それらの特定の修正形態、追加形態及び下位組み合わせを想定するであろう。したがって、以下の添付の特許請求の範囲及び以降に導入される特許請求の範囲は、その真の趣旨及び範囲内にあるすべてのそのような修正形態、追加形態及び下位組み合わせを含むように解釈されることが意図されている。
図1
【手続補正書】
【提出日】2023-03-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内層、ストライク層、外層、および、前記内層と前記ストライク層との間に位置する編組骨格とを含むマイクロカテーテルの製造方法であって、
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)で被覆されたマンドレルを提供することで内層を提供すると共にストライク層を提供する工程と、
前記マンドレルへ編組骨格またはコイルを適用する工程と、
前記PTFEおよびストライク層にポリカーボネート系熱可塑性ポリウレタンスリーブを適用することにより、外層を形成する工程であって、前記ポリカーボネート系熱可塑性ポリウレタンスリーブが、第1の遠位セクションおよび第2の遠位セクションを含む遠位部分を含み、前記第1の遠位セクションが前記第2の遠位セクションよりも近位にあり、前記第1の遠位セクションが80A+/-10%のショアを有し、前記第2の遠位セクションは90A+/-10%のショアを有する、工程と、
前記ポリカーボネート系熱可塑性ポリウレタンスリーブに熱収縮スリーブを適用する工程と、
前記熱収縮スリーブに熱および/または圧力を加えることにより、少なくとも前記外層を前記編組骨格上および/または前記編組骨格内に介在させる工程と、
前記熱収縮スリーブを剥離する工程と、
前記マンドレルを取り除く工程とを含む、方法。
【請求項2】
前記内層が0.0015インチ以下の厚さを有し、前記ストライク層がポリエーテルブロックアミドを含み、かつ0.001インチ以下の厚さを有し、前記ポリカーボネート系熱可塑性ポリウレタンスリーブの少なくとも一部が、90A以下のショア硬度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ストライク層の前記ポリエーテルブロックアミドが、約55Dのショア硬度を有する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記編組骨格が、1インチ当たりのピック数(PPI)が130のワイヤ配列を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の遠位セクションが前記第2の遠位セクションよりも低いショア硬度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の遠位セクションは80A以下のショア硬度を有し、前記第2の遠位セクションは、90A以下のショア硬度を有する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ポリカーボネート系熱可塑性ポリウレタンスリーブが、少なくとも第1の中間セクション及び第2の中間セクションを含む中間部分を含み、前記第1の中間セクションが前記第2の中間セクションに対して遠位にあり、前記第1の中間セクションが前記第2の中間セクションのショア硬度よりも低いショア硬度を有する、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記中間部分は第3の中間セクションをさらに備え、前記第3の中間セクションは前記第2の中間セクションに対して近位にあり、前記第3の中間セクションは前記第2の中間セクションおよび前記第1の中間セクションよりも高いショア硬度を有する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の中間セクションが、約40Dのショア硬度を有するポリエーテルブロックアミドから作製される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第2の中間セクションが、約55Dのショア硬度を有するポリエーテルブロックアミドから作製される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第3の中間セクションが、約60Dのショア硬度を有するポリエーテルブロックアミドから作製される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記中間部分が、400mm以下の長さを有する、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
前記外層が近位部分をさらに含み、前記近位部分が、65Dを超えるショア硬度を有するポリエーテルブロックアミドから作製される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記マイクロカテーテルが、0.50~0.7mmの内径と、その遠位端で0.8~0.9mmの外径と、その近位端で0.8~1.0mmの外径と、105~175cmの範囲の有効長とを有する、請求項1に記載の方法。