(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023071868
(43)【公開日】2023-05-23
(54)【発明の名称】直下型点光源バックライトユニット、及び該直下型点光源バックライトユニットを搭載した液晶装置。
(51)【国際特許分類】
G02B 5/04 20060101AFI20230516BHJP
G02B 5/00 20060101ALI20230516BHJP
G02B 5/02 20060101ALI20230516BHJP
G02B 5/20 20060101ALI20230516BHJP
F21S 2/00 20160101ALI20230516BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20230516BHJP
【FI】
G02B5/04 B
G02B5/00 C
G02B5/02 B
G02B5/20
F21S2/00 415
F21S2/00 413
F21Y115:10
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032018
(22)【出願日】2023-03-02
(62)【分割の表示】P 2021183986の分割
【原出願日】2021-11-11
(71)【出願人】
【識別番号】591162273
【氏名又は名称】株式会社ツジデン
(74)【代理人】
【識別番号】100088214
【弁理士】
【氏名又は名称】生田 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 竜
(57)【要約】 (修正有)
【課題】色変換フィルム/シートを搭載する直下型点光源バックライトユニットの出射面において、光源からの離間距離を実質的にゼロにできることが期待できる直下型点光源バックライトユニットを提供する。
【解決手段】光源480と色変換シート440の間に光学フィルムを搭載した直下型点光源バックライトユニットであって、前記光学フィルム460、470は、光入射側の光導波導入層と、光出射側の光取り出し層と、該光導波導入層と該光取り出し層の間の光導波層とが一体構造化されており、前記光取り出し層は、前記点光源からの光が前記光学フィルムから出射する面側に第1露出面を有し、前記光導波導入層は、単一層の三角プリズム層を構成し、規則的なパターンの三角プリズム面から成る第2露出面を有し、指向性が高く光束の幅が狭い光を規則的に分岐させて2条の光に変える、直下型点光源バックライトユニット。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
LEDパッケージの封止材の中に蛍光材を有しない青色LEDパッケージで構成される点光源が複数所定のピッチで格子状に配列されて成る光源と色変換シートの間に光学フィルムを搭載した直下型点光源バックライトユニットであって、
前記光学フィルムは、光入射側の光導波導入層と、光出射側の光取り出し層と、該光導波導入層と該光取り出し層の間の光導波層とが一体構造化されており、
前記光取り出し層は、前記点光源からの光が前記光学フィルムから出射する面側に第1露出面を有し、該第1露出面はランダムパターンの凹凸面を構成し、
前記光導波層は、光拡散用微粒子を含み、前記光取り出し層と前記光導波導入層との間の層を構成し、
前記光導波導入層は、単一層の三角プリズム層を構成し、規則的なパターンの三角プリズム面から成る第2露出面を有し、該第2露出面は前記点光源からの光が前記光学フィルムに入射する面側に配置されている
ことを特徴とし、
前記光導波導入層は、指向性が高く光束の幅が狭い光(1条の光)を規則的に分岐させて2条の光に変える特徴を有する
ことを特徴とする直下型点光源バックライトユニット。
【請求項2】
前記三角プリズム層に含まれる断面形状三角形のプリズムの長手方向に直交する断面における三角形の形状が二等辺三角形であり、その頂角が65~100度である
ことを特徴とする請求項1に記載の直下型点光源バックライトユニット。
【請求項3】
前記断面形状が二等辺三角形のプリズムの配列ピッチが、20~100μmである
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の直下型点光源バックライトユニット。
【請求項4】
前記光学フィルムの搭載の態様が、前記光学フィルムを、少なくとも2枚重ねて、それぞれ、前記三角プリズム層が光源側に面し、前記三角プリズム層の断面二等辺三角形のプリズムの長手方向が相互に一致しないように配置されて搭載される
ことを特徴とする請求項1~3のうちいずれか1項に記載の直下型点光源バックライトユニット。
【請求項5】
前記配置の態様が、前記光学フィルムを少なくとも2枚重ねて、前記三角プリズム層の断面二等辺三角形のプリズムの長手方向が相互に直交するように配置される
ことを特徴とする請求項4に記載の直下型点光源バックライトユニット。
【請求項6】
請求項1~5のうちいずれか1項に記載の直下型点光源バックライトユニットを搭載した液晶表示装置。
【請求項7】
前記光学フィルムの搭載の態様が、前記光学フィルムを、少なくとも2枚重ねて、それぞれ、前記三角プリズム層が光源側に面し、前記三角プリズム層の断面二等辺三角形のプリズムの長手方向が相互に一致しないように配置されて搭載される
ことを特徴とする請求項6に記載の液晶表示装置。
【請求項8】
前記配置の態様が、前記光学フィルムを少なくとも2枚重ねて、前記三角プリズム層の断面二等辺三角形のプリズムの長手方向が相互に直交するように配置される
ことを特徴とする請求項7に記載の液晶表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直下型点光源バックライトユニット、及び該該直下型点光源バックライトユニットを搭載した液晶装置に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な情報機器には液晶装置が広く利用されているが、その基本構造により、光源が、液晶装置に搭載された液晶パネルの背面側に配置される直下型と、液晶パネルの側面の近傍に配置されるエッジライト型に大別される。
【0003】
ノートPC、タブレット、カーナビ、スマートフォンなどの液晶装置においては、近年において、薄型化及び低コスト化の要求が益々増大しており、また、液晶装置の画質向上と、HDR(High Dynamic Range:明るさの幅を広げる)対応が要求されるようになっている。HDR対応の方法として、直下型バックライトにおいてLEDの点灯、消灯、光量調整を個々のLED毎に行うこと(ローカルディミング)によって、液晶を用いたシャッター機能に加えて、バックライトの光量を調整することが検討されている。LED(Light Emitting Diode)等の点光源を使う直下型とする場合、発光面における光量を増大させると同時に、発光面内輝度の均一性を上げることが要請されていると共に、部品点数の増大を回避することでの低コスト化の要請もある。
【0004】
以上を要約すると、要するに、ノートPC、タブレット、カーナビ、スマートフォンなどに対する近年の低コスト化、軽量化、薄型化、高輝度化、見栄え(表示画面の明るさのムラ低減)という多面的な社会ニーズに対応するためには、LEDを使った直下型バックライトユニットの機能において、従来にも増して、
1)簡便な製造方法の採用による製造コストの削減
2)部品点数、部材の種類の低減化、共通部品・部材の活用による製造コストの低減
3)部品自体の薄型化もさることながら、1部品多機能化による全体の薄型化
4)光出射面における輝度の均一化・最適化(輝度ムラの低減)
5)光出射面における正面輝度の高輝度化
等々、多面的な観点からの改良開発努力が要請されていると言うことである。なお、上記ファクターは相互に複雑に影響しあっているものもあり、特に、輝度の均一化(光出射面における正面輝度のムラの解消)の要請と、正面輝度の高輝度化(光出射面からの出射光量の増大)の要請とは、相互に相反する傾向を示すので、一方だけの向上を企図するのではなく、相互の絶妙なバランスを図ることが重要である。
【0005】
従来技術における直下型点光源バックライトユニットの基本構成は概ね特許文献1に開示のとおりである。その構成は同文献の
図1に示されている。その機能面に注目すると、要するに、1)LEDからの出射光を、2)光拡散機能を呈する光拡散板又は光拡散シートでもって一旦全方位に拡散させ(光導波とも言われる)、次に、そこで拡散されて出射面から出て来た光を、別途配置されたプリズムシートの積層体でもって集光(collimation)すると言う機能構成となっている。
【0006】
直下型点光源バックライトユニットというキーワードでもって特許庁のオンラインデータベースで検索すると、このような基本的構成のバックライトユニットのうち直下型点光源バックライトユニットに対する上述の社会的・技術的要請に応えるべく、これまでに様々な提案が為されていることが判る。そのような提案の中でも、近年における改良は、主に、光出射面における輝度を維持又は向上させつつ、輝度のムラの低減に焦点を当てたものが注目されている。これらの提案は、大別すると、LED光源自体の改良(例えば、特許文献2)に注目したものと、LEDから出射した光の伝播方向を制御する(例えば、特許文献3)に注目したものとに分かれるが、後者の場合は、光拡散シート(光拡散フィルム)に入射する光量を削減することや光拡散シート(光拡散フィルム)の中に入射した光を出来るだけ拡散させるための拡散機能を増大させることに開発努力の焦点が当てられている。
【0007】
ところで、近年の市場においては、液晶表示装置画面での色表示が従来よりも鮮明なものが求められており、その要請に応えるべく、直下型点光源バックライトユニットには、その発色源にQDフィルム(量子ドットフィルム)等の色変換フィルム(色変換シート)を使用したものがあり、液晶表示装置画面での色表示が従来よりも鮮明になるということもあって、近年一般化しつつある。このような直下型点光源バックライトユニットでは、LED点光源から発せされた青色光がQDフィルム等の色変換フィルムの中に含有されている粒子を励起して、RGBの三原色のうち、赤・緑(RG)色を発色させ、青(B)色は、青色LEDの光それ自体を利用するという原理が採用されている。このような直下型点光源バックライトユニットに点光源として使用される微小なLEDパッケージは、青色発光LED素子を封止材で封止して形成したり、更にはその上をマイクロレンズでカバーしたりして構成されているが、そもそも青色光そのものをQDフィルム等の色変換フィルムに当てることが必要であり、その為に、この封止材の中には、一般的な白色点光源となるようなLEDパッケージのLED封止材に含有させる蛍光性微粒子が含まれていない。従って、出射される光は、比較的指向性が高く、その光束の幅も狭いものになっているという特徴がある。また、QDフィルム等の色変換フィルムを搭載したこのような直下型点光源バックライトユニットの一般的な構成は、点光源として白色LED点光源のように、LEDパッケージの封止材の中に蛍光材を混合させてそのパッケージの上側に光拡散機能部材(単一フィルムの場合もあれば、複数のフィルムから構成される場合もある)を配置するのではなく、封止材の中に蛍光材を有しないLEDパッケージで構成される点光源の光出射側の上に、本発明により改良する対象となる光拡散機能部材が配置され、更にその光出射面側の上にこのQDフィルム等の色変換フィルムが配置される構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2013-073875号公報
【特許文献2】特開2013-004408号公報
【特許文献3】国際公開第11/030594号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献2に開示の発明は、は上述のとおりLED光源の改良に焦点が当てられており、高角度側に光ピークを有する点光源を用いた直下型点光源バックライトに関する発明であり、点光源として、光ピーク角度が±50~80°の特殊なLEDを使用することが大前提となっており、製造コストの増大という負のファクターが問題とならざるを得ない。
【0010】
また、同文献に引用されている特許文献3に開示の発明においては、光拡散フィルムの上面(光出射面)を、逆ピラミッド状の凹部を有するワッフル形状にすることで、光拡散フィルムの光拡散性能の向上に焦点が当てられているが、特許文献2には、それだけでは不十分であり、光源自体の光指向性を制御したLED(光ピーク角度が±50~80°の特殊なLED)を使用せざるを得ないことが指摘されている。
【0011】
これまでの様々な提案の一部には、LEDの点光源と光拡散フィルム(又はシート)との間に、別途、LEDからの指向性光の指向性を変化させる別個の光拡散機能部材が間挿されるものも散見されるが、部品点数、部材の種類の低減化、共通部品・部材の活用による製造コストの低減の観点、あるいは、部品自体の薄型化もさることながら、1部品多機能化による全体の薄型化の観点からは、上述の社会的・技術的ニーズを充分満たしているとは言い難い側面がある。
【0012】
また、QDフィルム等の色変換フィルムを搭載した直下型点光源バックライトユニットはごく最近のものであり、従って、このような直下型点光源バックライトユニットに特有な上述の課題を十分認識した上で、産業の実務上の課題、即ち、簡便な製造方法の採用による製造コストの削減や、部品点数、部材の種類の低減化、共通部品・部材の活用による製造コストの低減、更には、部品自体の薄型化もさることながら、1部品多機能化による全体の薄型化も図れ、加えて、輝度の均一化(光出射面における正面輝度のムラの解消)の要請と、正面輝度の高輝度化(光出射面からの出射光量の増大)の要請との間の絶妙なバランスを図ることができるものは未だ見当たらないようである。
【0013】
さて、直下型点光源バックライトユニットにおいて、光出射面における輝度の均一化と同時に、光出射面からの光量の維持(光透過率の低下防止)又は出射光量の増加(光出射面における正面輝度の高輝度化)を図ろうとする場合、その一般的なアプローチは、光出射面における輝度の均一化の為に、光拡散フィルムの光拡散能を向上させるべくその内部に含有されている光拡散用微粒子の含有量を増大させることが容易に想到されるが、そうすると、直下型点光源バックライトユニットの光出射面からの出射光量が低下する結果となる。
【0014】
この逆に、直下型点光源バックライトユニットの光出射面からの出射光量を増大させようとすると、自ずと、光拡散フィルムの中に含有されている光拡散用微粒子の含有量を低下させる必要があるが、そうすると、点光源の直上に目玉状のランプイメージ(ホットスポット)が強く出現して正面輝度の著しい不均一化が起こる。この簡単な思考シミュレーションから明らかなとおり、光出射面における輝度の均一化と、光出射面からの光量の維持(光透過率の低下防止)又はとは、相互に相反する特性となっている。
【0015】
この解決策として、使用する点光源の数を増やして光源密度を増加させること、あるいは、点光源からの光のピーク角度の大きな特殊な点光源を使用することも考えられるが、そうすると、製造コストが飛躍的に増大するという不都合が生じる。また、光源とそれに相対する直下型点光源バックライトユニットの光入射面との間の距離を大きくすることもオプションの一つではあるが、これは、明らかに薄型化の要請と相矛盾する問題が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0016】
かかる課題を解決すべく、本発明者等は鋭意研究努力した結果、以下の構成により、上記課題、特に、
1)量産化に適した製法による製造コストの削減
2)部品点数、部材の種類の低減化、共通部品・部材の活用による製造コストの低減
3)部品自体の薄型化もさることながら、1部品多機能化による全体の薄型化
4)光出射面における輝度の均一化・最適化(輝度ムラの低減)の要請と光出射面からの光量の維持(光透過率の低下防止)又は光量の増加(光出射面における正面輝度の高輝度化)の要請との絶妙なバランスが得られることを見出し、本発明を成すに至った。
【0017】
即ち、第1の発明は、LEDパッケージの封止材の中に蛍光材を有しない青色LEDパッケージで構成される点光源が複数所定のピッチで格子状に配列されて成る光源と色変換シートの間に光学フィルムを搭載した直下型点光源バックライトユニットであって、
前記光学フィルムは、光入射側の光導波導入層と、光出射側の光取り出し層と、該光導波導入層と該光取り出し層の間の光導波層とが一体構造化されており、
前記光取り出し層は、前記点光源からの光が前記光学フィルムから出射する面側に第1露出面を有し、該第1露出面はランダムパターンの凹凸面を構成し、
前記光導波層は、光拡散用微粒子を含み、前記光取り出し層と前記光導波導入層との間の層を構成し、
前記光導波導入層は、単一層の三角プリズム層を構成し、規則的なパターンの三角プリズム面から成る第2露出面を有し、該第2露出面は前記点光源からの光が前記光学フィルムに入射する面側に配置されている
ことを特徴とし、
前記光導波導入層は、指向性が高く光束の幅が狭い光(1条の光)を規則的に分岐させて2条の光に変える特徴を有する
ことを特徴とする直下型点光源バックライトユニットである。
【0018】
第2の発明は、前記第1の発明において、前記三角プリズム層に含まれる断面形状三角形のプリズムの長手方向に直交する断面における三角形の形状が二等辺三角形であり、その頂角が65~100度であることを特徴とする。
【0019】
第3の発明は、前記第1又は第2の発明において、前記断面形状が二等辺三角形のプリズムの配列ピッチが、20~100μmであることを特徴とする。
【0020】
第4の発明は、前記第1~第3の発明のうちのいずれか1つの発明において、前記光学フィルムの搭載の態様が、前記光学フィルムを、少なくとも2枚重ねて、それぞれ、前記三角プリズム層が光源側に面し、前記三角プリズム層の断面二等辺三角形のプリズムの長手方向が相互に一致しないように配置されて搭載されることを特徴とする。
【0021】
第5の発明は、前記第4の発明において、前記配置の態様が、前記光学フィルムを少なくとも2枚重ねて、前記三角プリズム層の断面二等辺三角形のプリズムの長手方向が相互に直交するように配置されることを特徴とする。
【0022】
第6の発明は、前記第1~第5の発明のうちの1つの発明に係る直下型点光源バックライトユニットを搭載した液晶表示装置である。
【0023】
第7の発明は、第6の発明において、前記光学フィルムの搭載の態様が、前記光学フィルムを、少なくとも2枚重ねて、それぞれ、前記三角プリズム層が光源側に面し、前記三角プリズム層の断面二等辺三角形のプリズムの長手方向が相互に一致しないように配置されて搭載されることを特徴とする。
【0024】
第8の発明は、第7の発明において、前記配置の態様が、前記光学フィルムを少なくとも2枚重ねて、前記三角プリズム層の断面二等辺三角形のプリズムの長手方向が相互に直交するように配置される
ことを特徴とする液晶表示装置である。
【発明の効果】
【0025】
1)本発明に係る光学フィルムは、一旦Roll-to-Roll生産方式(ロールtoロール生産方式)でもって大面積の連続フィルムを一体成形した後、その連続フィルムから、適宜必要な寸法に裁断するだけという、簡便でありながら、量産に適した製法で得られるので、この観点からの製造コストの削減を図ることができる。
2)また、本発明に係る光学フィルムを搭載した直下型点光源バックライトユニットは、同じ材料、同じ構成の光学フィルムを、その三角プリズム層の三角プリズムの延在する方向が所定の角度になるように重ねるだけで、光出射面における輝度と見栄え(輝度の均一化あるいは輝度ムラの解消)との絶妙なバランスを取ることが可能となり、部品点数、部材の種類の低減化、共通部品・部材の活用による製造コストの低減に繋がる。
3)本発明に係る光学フィルムは一体構造化されており、LED光源から入射する光を偏角して1条の光を2条の光にする光導波導入層と、この光導波導入層からの光を拡散させる光導波層と、この光導波層からその中で拡散された光を取り出す層とが一体構造化されていることによる1部品多機能化による全体の薄型化が期待できる。
4)本発明に係る直下型点光源バックライトユニットは、点光源からの光を光拡散シート又はフィルムに直接入射させる従来型の直下型点光源バックライトユニット(例えば、
図1参照)に搭載の光拡散シート又はフィルムを本発明に係る積層型光学シート(2枚積層型あるいは多層型)で置き換えるだけで得られるので、設計も容易、構造も簡易になる。
5)本発明に係る直下型点光源バックライトユニットによれば、光出射面における輝度のバラつきと正面輝度との二つの相反する特性の最適なバランスを取ることが重要であるが、この最適なバランスが取れる。
6)前記1)から5)の効果は、単独又は複合して得られ、これらの効果は、本発明に係る直下型点光源バックライトユニットを搭載する液晶表示装置についても同様に言える。
【0026】
また、本発明に係る光学フィルムは、その特性評価の際に、以下説明するように、LEDの封止材に蛍光材を使用しない青色LEDを点光源として、色変換シートを搭載した直下型点光源バックライトユニットにおいて、光源と色変換シートとの間に配置すると、バックライトユニットからの光出射面において、Hazeが上がると正面輝度が上がる、即ち、光出射面における正面輝度とHaze値(ヘイズ値)とが、正の相関関係を示すというユニークな特性が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1は、QDフィルム等の色変換フィルムを搭載する従来技術による直下型点光源バックライトユニットの断面を模式的に示す概念図である。
【
図2】
図2は、本発明に係る積層型光学シートを構成する光学フィルム(1枚)の拡大断面(特に、厚み方向に拡大)を模式的に示す概念図である。
【
図3】
図3は、本発明に係る光学フィルムの光取り出し層の表面(露出面)のランダムパターンの凹凸面の一例を真上から見た写真である(倍率は図に記載のとおりである)。
【
図4】
図4は、本発明に係る積層型光学シートを搭載する直下型点光源バックライトユニットの断面構成を示す概念図である。
【
図5】
図5は、実施例、比較例における輝度の測定時の測定範囲を分割したときの1つのセルとLED点光源とのサイズ関係、位置関係を図式的に示す。
【
図6】
図6は、測定時における1個のセルでカバーされるLED点光源の数等を図式的に示す。
【
図7】
図7は、表2の測定データを、縦軸に輝度の標準偏差値、横軸に比較例1の平均輝度を100として正規化した平均輝度を取ってグラフで表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明に係る光学フィルムは、第1光学特性層としての光取り出し層(最上層、光出射層)と、第2光学特性層としての光導波層(中間層)と、第3光学特性層としての光導波導入層(最下層、光入射層)との三層構成となっており、これらの層は、それぞれ、以下の特徴・特性を有する。
【0029】
1. 光取り出し層(最上層)
(製法・使用材料)
本発明に係る光取り出し層の製法は、基本的には、同一出願人による特開平6-59108号公報又は再表2003-032074号公報に開示の方法に準じて製法が好適に採用できる。その概要は、光拡散用第1微粒子を透光性有機接着剤でもって、以下詳述する光導波層の一方の面に固定することであり、より具体的には、光拡散用第1微粒子と透光性有機接着剤との混錬物(混合物)を、以下詳述する光拡散用第2微粒子を含有する樹脂フィルムの一方の表面にほぼ均一に塗布して硬化させることで光拡散用第1微粒子を表面に固定して、その表面に固定された光拡散用第1微粒子(但し、各微粒子は透光性有機接着剤の硬化の被膜により覆われている)によるランダムパターンの凹凸面を形成することで形成される。ここで使用する透光性有機接着剤としては、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、シリコーンアクリル樹脂、フッ素樹脂若しくはフッ素-アクリル樹脂又はこれらの樹脂に硬化機能を有する架橋性樹脂を添加したものやポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂等の硬化性樹脂等のなかから選択される少なくとも1種以上の樹脂を好適に使用できる。この混錬物の硬化方法には、使用する透光性有機接着剤に最適な硬化方法が適宜採用できることは論を待たない。
【0030】
この場合の透光性有機接着剤に対する光拡散用第1微粒子の混合比率(重量比率又は容量比率)は、透光性有機接着剤が硬化した後に、光拡散用微粒子の少なくとも一部の量の光拡散用微粒子が透光性有機接着剤の硬化体(硬化した膜)とにより表面に凹凸を形成するような混合比率が好適に使用できる。具体的には、この表面の凹凸のプロフィール形状特性の一つの指標としてのSsk(スキューネス:偏り度)が、好ましくは3.0以下、より好ましくは、1.40~2.30となり、光取出層だけのHaze値が、好ましくは20%~70%の範囲内に入り、より好ましくは、40%~60%の範囲内に入るような混合比率である。但し、このような数値範囲は、直下型点光源バックライトユニットに搭載するLED光源の配列ピッチ、光源からの出射光のランバーシャン分布の特性等々の他の変動ファクターにも好適な数値範囲が左右されることがあるので、このような数値はあくまでも参考レベルであり、全体として、本件発明の作用効果が得られるような範囲であれば、どのような数値範囲でも使用できることは論を待たない。
【0031】
本発明に係る光取り出し層の形成方法として、上述するような簡便な方法を採用することで、工程の簡易化、しいては、製造コストの低減化を図ることができる。
【0032】
この表面のランダムパターンの凹凸面の形成方法としては、上述の塗布方法以外に、目標とする所定のSsk値を有する凹凸形状を反転させた金型(母型)を準備し、この金型と、後述する光導波層を構成する光拡散フィルムの一方の面との間に熱硬化樹脂又は紫外線硬化樹脂を流し込んだ後その樹脂を硬化させることで光導波層を構成する光拡散フィルムの一方の表面に母材形状を転写する方法、又は、光拡散フィルムの一方の表面に熱プレスで母型の形状を転写する方法若しくはサンドブラストなどの方法で光拡散フィルムの表面を直接荒らす方法も考えられる。
【0033】
本発明の技術的範囲を何ら制限するものではないが、光拡散用第1微粒子の存在は必須ではなく、ランダムな凹凸面を提供することで、本発明の一部を構成する光取出層の目的と機能が得られるのであれば、光散乱用第1微粒子が存在しない構成であっても好適に使用できる。一般的な光学的な観点からすると、屈折率の異なる2つの物質が境界面で接しているときに、一方の物質Aから他方の物質Bへ向かう光がその境界面に当たると、その光の一部は境界面で屈折して物質Bの中に伝搬し、残りの光の一部は境界面で反射して物質Aの方向に戻る現象が起こる。従って、この光取出層が存在せず、光導波層の光出射面が露出していると(大気と接していると)、その光出射面の裏側(光導波層の内側の面)面では、大気の屈折率(1.0)と光導波層に使用されている樹脂の屈折率(ポリカーボネートを使用した場合は1.58)との相違による反射(光導波層内への反射)現象が生じる(この差が大きければ大きいほど、光導波層内への反射による出射光量のロスが生じる)ということが一般的には言える。しかしながら、この光取出層の微細構造は、複雑な構造となっており、光拡散用第1微粒子の一部は、それを固定する樹脂バインダーの厚さよりも突出していてその突出部分は固定用樹脂バインダーの極薄の膜で覆われていたりするので、それらを透過する光の伝搬挙動は極めて複雑である。更には、固定用樹脂バインダーのみの部分もあり得ることも相まって、境界面における一般的な光の屈折・反射現象では予測が付かない現象が出現している。このことにより、以下詳述するが、光取出層のヘイズ値(Haze値)を上げると、かかる光取出層を有する本発明の光学フィルムを、色変換フィルムを搭載した直下型点光源バックライトユニットに、光源の直上に配置して、そのバックライトユニットの光出射面での正面輝度が上がり、結果的に、見栄えが悪くなる(正面輝度の平均値からの標準偏差値が大きく成る)というトレードオフがあることを鑑みると、場合によっては、光取出層の屈折率を光導波層の屈折率よりも高くする(境界面での反射光量を増やす)ことの方が、本発明が求める好ましい効果が得られる場合もあり得る。
【0034】
この光拡散用第1微粒子としては、例えばガラス,シリカ等の無機材料,およびウレタン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリメチルメタアクリレート,ポリアクリルニトリル,ポリエステル,シリコーン,ポリエチレン,エポキシ,メラミン・ホルムアルデヒド縮合物,ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド縮合物またはベンゾグアナミン・メラミン・ホルムアルデヒド縮合物よりなる有機材料のうちより選択される少なくとも1種以上の材料からなる微粒子が好適に使用可能であるが、好ましくは、ウレタン、ポリアミド、ポリカーボネートなどの微粒子、より好ましくはポリメチルメタアクリレートの微粒子が好適に使用できる。但し、その材質の選択においては、その屈折率と光取り出し層を構成する樹脂の屈折率との差による乱反射が、本発明に係る光学フィルムを使用する環境下において、多くならないように、その屈折率は樹脂の屈折率に近い値となるような材質であれば、どのような材質でも使用できることは論を待たない。
【0035】
また、その粒径は、好ましくは約1~20μm、より好ましくは約5~15μmであり、1μm未満では本発明における光取り出し層の光取り出し機能(以下詳述する光導波層内で拡散された光をその光出射面から取り出す機能という意味の取り出し機能)が十分でなく、また、使用する透光性有機接着剤の粘性や光拡散用第1微粒子の混合比率にも左右されるが、粒径が大きくなると、以下言及する透光性接着剤が硬化して光拡散用第1微粒子が固定された後の表面(露出表面、光出射面)のSskの制御が難しく、塗工難易度が高くなり、また、光学フィルム全体の層厚が厚く成り過ぎる点から、本発明の特性を発現させることのできる粒径の範囲は約20μmが上限と考えられるが、本発明に係る光学フィルムと同様な効果が得られるのであれば、どのような粒径も好適に採用できると考えられる。
【0036】
なお、一般的に、2つの屈折率の異なる光学物質の境界面において、一方の光学物質から他方の光学物質に光が入る際に、双方の屈折率の相違により、境界面で光が他方の光学物質内に伝播するさいにその光の全てが境界面で屈折して伝播する訳ではなく、入射角が大きく成ると、その光の一部が境界面で反射されてその一方の光学物質内に戻される現象が生じる。
【0037】
要するに、光取出層の機能は、光取出層と光導波層との境界面において光を屈折させて一方の物質内から境界面に向かって伝播して来た光を他方の物質内に伝播させることであるが、光取り出し層の中には光拡散用微粒子が含まれており、この微粒子の存在により、この層が単一の樹脂から構成されている場合と比べて遥かに複雑な光の伝搬が起こることからすると、光導波層からの光が境界面で反射して再度光導波層内に戻る光量を本発明の求める最適なものとするためには、使用する材料構成、屈折率の組み合わせを試行錯誤的に見出すことが必要となる場面もあり得る。
【0038】
透光性有機接着剤としては、ウレタン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂,アクリル樹脂,シリコーンアクリル樹脂,フッ素樹脂またはフッ素-アクリル樹脂、ウレタン-アクリル樹脂等もしくはこれらの樹脂をベースにして、紫外線硬化、電子線硬化、熱硬化、イソシアネート硬化、アミンエポキシ硬化の架橋可能な樹脂のうちから選択される少なくとも1種以上の樹脂又はそれらの混合物が好適に使用可能である。また、場合によっては、熱可塑性の樹脂も使用可能と考えられる。上述したとおり、光取り出し層と光導波層との境界面における光の伝播は複雑な挙動を示すことを鑑みると、その屈折率は、光導波層に使用される樹脂の屈折率との関係で適宜選択されるべきものであり、その伝搬挙動が本発明の目的と趣旨から外れなければいかなる値となっても好適に使用される。
【0039】
(特徴・特性)
透光性有機接着剤に対する光拡散用微粒子の混合比率は、透光性有機接着剤が硬化した後に、光拡散用微粒子の少なくとも一部の量の光拡散用微粒子が透光性有機接着剤の硬化体(硬化膜)と相まって表面に凹凸を形成するような混合比率である。この表面の凹凸のプロフィール形状特性の一つの指標としてのSsk(スキューネス:偏り度)が、好ましくは3.0以下、より好ましくは、1.40~2.30となるような混合比率である。但し、このような数値範囲は、直下型点光源バックライトユニットに搭載するLED光源の配列ピッチ、光源からの出射光のランバーシャン分布の特性等々の他の変動ファクターにも好適な数値範囲が左右されることがあるので、このような数値はあくまでも参考レベルであり、全体として、本件発明の作用効果が得られるような範囲であれば、どのような数値範囲でも使用できることは論を待たない。
【0040】
光取出層の特徴は上記表面凹凸形状特性だけではなく、接着剤が硬化して最終的に得られた光取り出し層の複合屈折率が、1.30~1.70の範囲内に入り、好ましくは、1.45~1.55の範囲内に入り、また、光取り出し層全体(樹脂と光拡散用微粒子との複合体)のHaze値が、20%~70%の範囲内に入り、好ましくは、40%~60%の範囲内に入るような光学特性を有するように透光性有機接着剤と光拡散用第1微粒子との組み合わせ、光拡散用第1微粒子の平均粒径、粒度分布、混合比率及び塗布厚を採用することが好ましい。光取り出し層内の光拡散用第1微粒子の主な機能は、上述のとおり光拡散・光散乱がメインとなっていることから鑑みると、本発明の権利範囲を何ら制限しないとの前提の下で、光取り出し層含まれる光拡散用第1微粒子が光導波層の光出射面の上に単層(微粒子が相互に重ならなない状態)が形成されるような混合量(
図3参照)が好適に選択される。
【0041】
本発明に含まれる光取出層の機能は、主に、光出射面における正面輝度を向上させる(高輝度化)ことをメインとしており、以下の3つの機能を有する。
(1)以下詳述する光導波層から光を取り出す、即ち、光導波層で全方向に拡散された光を正面に戻し正面輝度を向上させる。
(2)以下詳述する光導波層による光の導波(光の拡散)を促進させて、点光源の直上点以外の場所からの出射光の光量を増やす。
(3)光の吸収、損失を抑制することで、正面輝度が著しく低下することを防ぐという効果を呈する。
【0042】
2. 光導波層(中間層)
(製法・使用材料)
光導波層は、好適には乳白色半透明のプラスチックフィルムから構成され、一般的な光拡散用フィルムの製造方法と同じ製法で製造可能であり、具体的には、透明樹脂をフィルムまたはシート状に成形する前に、例えば乳白半透明となるように、酸化チタン,硫酸バリウム,炭酸カルシウム,水酸化アルミニウム,炭酸マグネシウムまたは酸化アルミニウムなどの無機微粒子、又はウレタン、ポリアミド、ポリカーボネート、シリコーンなどの有機微粒子(光拡散用第2微粒子)を透明樹脂に添加して得られたペレットを、フィルム押出成形法(Tダイ法)によりフィルム状に形成することで得られる。この光拡散用第2微粒子として、上述の光拡散用第1微粒子と同じ化学組成(種類)のもの(但し、粒径、粒度分布等の粉体特性は異なることがある)を使用することも可能であるが、シリコーン微粒子が好適に使用される。
【0043】
光導波層を構成する上述のプラスチックフィルムの樹脂は、光導波層の光の導波能力の観点からすると、ポリカーボネート、ポリメチルメタアクリレート、スチレン・メチルメタアクリレート共重合体などの透明樹脂で、その屈折率が本発明に適したものが好ましいが、信頼性の観点と入手し易さの観点からポリカーボネートがより好適に使用される。
【0044】
上記プラスチックフィルムの樹脂を選定する際には、バックライトユニットの構成要素の観点から考慮する必要があり、点光源として白色LEDを使用する場合は可視光だけの光透過率を考慮して選定すれば良いが、QDフィルムや蛍光体を用いた色変換フィルムを使用する構成の場合は、可視光の波長よりも短波長の光も可視光へ変換されるので、短波長の光の吸収の少ない樹脂を選定する必要がある。
【0045】
光導波層を構成するプラスチックフィルムの厚みについては、光導波の効果を向上させるという観点からするとできるだけ厚い方が好ましいとは言えるが、バックライトユニット全体の薄型化という観点からの制約もあり、また、本発明の光学フィルムの製法として好適に採用されるRoll-to-Roll生産方式(ロールtoロール生産方式)の観点から400μm程度が最大と考えられる。
【0046】
光導波層に含まれる微粒子の含有量は、本発明の効果が得られる範囲内であれば特に限定されるものではないが、光導波層だけのHaze値が、好ましくは、25%~85%の範囲内、より好ましくは、50%~70%の範囲内になるような含有量が好適に採用される。また、これらの数値範囲とは直接的な1対1の対応は取れないものの、重量%の観点からすると、経験的に、光導波層を構成するプラスチックの重量に対して5重量%以下が好ましく、より好ましくは、1重量%以下である。
【0047】
かかる微粒子の種類としては、光拡散機能を有する微粒子であって本発明の効果が得られるものであれば基本的には如何なる微粒子も使用可能ではあるが、バックライトユニットに、QDフィルムや蛍光体を用いた色変換フィルムを使用する場合は、可視光の波長よりも短波長の光も可視光へ変換されるので、短波長の光の吸収の少ない微粒子を使用する必要があり、この観点から、TiO2粒子は短波長側の吸収を持っていることから選定しない方が好ましい。
【0048】
(特徴・特性)
光導波層を構成するプラスチックの屈折率は、使用するプラスチックの種類が決まれば、自ずと屈折率の数値が決まるが、本発明においては、上述のとおり、ポリカーボネートが好適に使用でき、その場合の公称屈折率は1.58である。なお、本発明に係る光導波層は、このポリカーボネートの中に上述の光拡散用第2微粒子が分散されている。
【0049】
なお、本発明に係る光学フィルムにおいては、光導波層を構成するプラスチックの屈折率と、以下詳述する光導波導入層を構成するプラスチックの屈折率とは、相互に独立にコントロールできると言う特徴がある。
【0050】
本発明に含まれる光導波層の機能は、光拡散を提供するもので、以下の3つの機能を有する。
1)光を光導波層に沿って水平方向の全方面に導波することで、LED点光源の直上以外の場所の光量を増やす。
2)導波した光を散乱出光することで、LED点光源の直上以外の場所の正面光量を増やす。
3)光の吸収、損失を抑制することで、正面輝度が著しく低下することを防ぐ。
【0051】
3.光導波導入層(最下層)
(製法・使用材料)
本発明に含まれる光導波導入層は、透明な樹脂であればどのような樹脂からも形成することが可能であり、かかる樹脂が未硬化の状態で上記光導波層を構成するプラスチックフィルムの片面の上に塗布して、それを、表面に、一方向に沿って並置された微細なプリズム(断面略二等辺三角形のプリズム)模様を形成した成形用ローラに押し当ててローラ表面の凹凸形状を転写することで好適に形成される。使用する樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、ウレタン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂,アクリル樹脂,シリコーンアクリル樹脂,フッ素樹脂またはフッ素-アクリル樹脂、ウレタン-アクリル樹脂等、もしくはこれらの樹脂をベースにして、紫外線硬化、電子線硬化、熱硬化、イソシアネート硬化、アミンエポキシ硬化の架橋可能な樹脂のうちから選択される少なくとも1種以上の樹脂又はそれらの混合物が好適に使用できる。場合によっては、単なる熱可塑性の樹脂も使用可能と考えられる。また、製法の一変形タイプとして、適宜選択された樹脂をフィルム状に成形加工して上述の光導波層を構成するプラスチックフィルムの片面上に面接着させる時に、表面に、一方向に沿って並置された微細なプリズム(断面略二等辺三角形のプリズム)模様を形成した成形用ロールを用い、そこで面接着した成形加工フィルムの表面に上記断面略二等辺三角形のプリズム模様を転写させて製造する方法も好適に使用できる。
【0052】
なお、本発明に係る光学フィルムにおいては、この光導波導入層の屈折率(光導波導入層を構成する樹脂の屈折率)と、それに平面的に接している光導波層の屈折率(光導波層に使用されている樹脂の屈折率)とは相互に独立にコントロールできると言う特徴がある。
【0053】
この場合の断面略二等辺三角形のプリズムにおける三角形の頂角は、60°~100°が好ましく、70°~90°がより好ましく、最も好ましくは75°~85°であるが、その頂点は、必ずしも2つの直線が交差した点でなくても良く、本発明の効果が得られる範囲内であれば、多少の丸みを帯びていたり、微少なフラット面となっていても良い。また、その頂点部に小さな凹部(凹条)を設け、その中に、更に断面略二等辺三角形の小さな凸部(凸条)を形成したものであっても良い。
【0054】
この断面略二等辺三角形のプリズムの配列ピッチは、直下型点光源バックライトユニットに搭載されるLED点光源の配列ピッチとの関係で一律には決められないが、LED点光源の一般的な配列ピッチの場合は、好ましくは20~100μmであるが、LED点光源から三角形プリズム層(光導波導入層)に入射した1条の光が、三角形プリズム層でもって、分岐又は偏角されて、その三角プリズム層からの光出射面において、あたかも2つ以上の光源から光が出射しているように見える効果が得られれば、この範囲を越えるピッチでも良く、また、光の屈折現象の原理を鑑みれば、断面の大きさが異なる相似形の断面形状を有する三角プリズムがランダムに混じって形成された状態のものであっても、同様に、2つ以上の光源から光が出射しているように見える効果が得られるので、このような態様も好適に適用できる。
【0055】
(特性)
本発明に係る光学フィルムにおいては、光導波導入層の屈折率(光導波導入層を構成する樹脂の屈折率)と、それに平面的に接している光導波層の屈折率(光導波層に使用されている樹脂の屈折率)とは、相互に独立してコントロールできると言う特徴があるが、これらの間に屈折率の差を持たせても良く、また、同じとしても良い。
【0056】
本発明は、その技術的範囲を何ら制限することはないとの前提で言えば、QDフィルム等の色変換フィルムを搭載した直下型点光源バックライトユニットに使用される青色LED点光源からの光の光束の幅が狭く、また、その光の指向性が極めて高いという特殊な点光源との組み合わせのときにその顕著な作用効果が奏されると考えられ、推測されるそのメカニズムは、光導波導入層に採用されている三角プリズム層のように幾何学形状でもって光の伝播方向を複数に分割・分岐させて(偏角させて)、ここで分岐された光を、それぞれ異なる拡散機能を有する機能層の中を伝播させて最終的な正面輝度のムラを解消するというものである。従って、光導波導入層の光入射面側における表面凹凸の形状による光軸の分岐(偏角)現象は非常に重要な要素となる。同様の形状でも屈折率を上げることで偏角を変化させ光の導波をより促すことも可能である。また、かかる観点に立てば、光導波導入層は、光の伝播方向を複数に分割・分岐させて(偏角させて)、ここで分岐された光を拡散機能を有する機能層の中を伝播させることができるものであれば、その露出面がどのような形状でも、また、どのような材質でも好適に使用できるとも言える。
【0057】
本発明に含まれる光導波導入層は、LEDの点光源と上述の光導波層との間に敢えて介在させるものであって、QDフィルム等の色変換フィルムを搭載した直下型点光源バックライトユニットにおいて、青色LED光源からの指向性が高く光束の幅が狭い光(1条の光)を規則的に分岐させて2条の光に変えて(偏角させて)光導波層に向けて導入する機能を呈するものであり、以下の3つの機能を有する。
(1)LED点光源の直上の0°近傍の光量(正面光量)を少なくする。
(2)LED点光源からの高指向性光を任意の角度へ偏角することで、光導波導入層から出た光の光導波層への導波を促進する。
(3)LED点光源からの光の吸収、損失を抑制することで、正面輝度が著しく低下することを防ぐという効果を呈する。
【0058】
なお、上記の製法で調製され上記の特徴を有する各層の間の境界面は、必ずしも平坦であることは要請されておらず、本発明の目的、趣旨の範囲を越えない限り、微細な波を打っていても好適に採用できることは論を待たない。
【0059】
4.積層型光学シート(2枚積層型)
(製法)
上記詳述した光学フィルム(光取り出し層、光導波層、光導波導入層の三層から構成される光学フィルムであって同一の構成を有する光学フィルム)を、2枚(あるいはそれ以上の枚数)、それぞれ、光導波導入層を構成する前記断面略二等辺三角形のプリズム層が光源側に面するような態様で重ねることで積層型光学シートが得られる。この場合の重ね方として、三角プリズム層の断面略二等辺三角形のプリズムの長手方向が相互に略直交するようにして重ねることが好適に採用できる。なお、この重ねた光学フィルムの相対位置が変化しないように何らかの方法で固定することも好適に採用できる。
【0060】
5.本発明の直下型点光源バックライトユニット、及び液晶表示装置
(製法)
QDフィルム等の色変換フィルムを搭載した従来の直下型点光源バックライトユニットにおいて点光源からの光を直接受けるように(即ち、点光源との間が空気層となるように)搭載されている光拡散フィルム又はシートを、本発明の積層型光学シート(少なくとも2枚積層型)で置き換えるだけで、すなわち、部品点数を増大させることなく、本発明の顕著な作用効果を奏する直下型点光源バックライトユニット、及び液晶表示装置が得られる。
【実施例0061】
本発明に係る光学フィルムを重ねて積層型光学シートとして直下型点光源バックライトユニットに搭載した態様での実施例を以下に詳述する。
【0062】
1.本発明に係る直下型点光源バックライトユニットの構成(断面概念図):
実施例の評価に使用した直下型点光源バックライトユニットの断面構成は
図4に示した概念図のとおりである。同図の最下層に相当する部分に、青色LED点光源が、所定のピッチで(一般的に格子状に)配置され、その上に、本発明に係る光学フィルムを2枚重ねた態様の積層型光学シートが、LED点光源の全てを通る平面に平行になるように配置され、更にその上に、従来型の配置と同じ配置で色変換シートを含む一連のシート状体が配置され、最上層に、ディフューザーが配置されて本発明に係る直下型点光源バックライトユニットが構成される。
【0063】
2.LED点光源(470):
使用したLEDは、EPISTER社製(型番:ES-FFBCPE05C)であり、使用時の駆動電流は11.4mA、駆動電圧は30Vである。本発明に係る直下型点光源バックライトユニットの光源として、上記LED素子を使用した青色LED点光源(470)を、格子状に、ピッチ2.5mm×2.5mmで、20個×20個配置したものを使用した。このときの光量特性は、正面から測定したときに、以下となるように設定した。
最大輝度:16494.747 cd/cm2
最小輝度:204.847 cd/cm2
最小輝度/最大輝度:1.24 %
平均輝度:821.365 cd/cm2
標準偏差:1.7980
【0064】
3.積層型光学シート(光学フィルム450と光学フィルム450の積層型):
上記のように配列した青色LED点光源の上に、本発明に係る光学フィルム(450、460)を上述のようにその三角プリズム層の三角プリズムの延在方向が相互に直交するようにして2枚重ねて得られる積層型光学シートを配置した。この青色LED点光源の上端から、本発明に係る積層型光学シートを構成する下側光学フィルム(
図4の三角プリズム層の三角プリズムの頂点が構成する平面までの間隔は、該積層型光学シートを搭載した直下型点光源バックライトユニットの光出射面におけるホットスポットが一番表出し易いように(即ち、一番劣悪な条件での比較検討が出来るように)、意図的に、ほぼゼロとしたが、実際の使用時においては、直下型点光源バックライトユニットに求められる総合厚さを考慮して適宜設定できる。
【0065】
この三角プリズム層(
図2の参照番号230)の三角プリズムのピッチは、41μmである。三角プリズム層の三角プリズムの頂角は80°である。この三角プリズム層の一部を構成する樹脂(
図2の参照番号210)は、アクリル樹脂である。その硬化後の屈折率は1.58である。
【0066】
また、積層型光学シートを構成する2枚の本発明に係る光学フィルムの一部を構成する光導波層に使用された樹脂はポリカーボネート樹脂である。この光導波層の厚さは200μmである。
【0067】
光導波層内に分散されて含有されている光拡散用第2微粒子はシリコーン微粒子であり、屈折率が1.42で平均粒径が約4μmの散微粒子であり、概ね球形であり、その含有率は、光導波層単体のHaze値が58%となるような含有率である。
【0068】
また、光学フィルムの光取出層において微粒子を固定している樹脂(
図2の参照番号210)はアクリルウレタン樹脂であり、その硬化後の屈折率は1.52であり、その中に、屈折率1.49の光拡散用微粒子(
図2の参照番号200)を固定させた。このときの光取出層単体のHaze値は45%である。また、光取出層のランダムパターンの凹凸面の粗さ指標となるSa,Sskは、それぞれ、1.74と1.92である。
【0069】
4.色変換シート(
図4の参照番号440):
上記による積層型光学シートの上に、所定の間隔を開けて、所定の機能フィルム材と重ねられた色変換フィルム(440)が配置される。
図4の参照番号480で示される下側配置の光学フィルムの光出射面は、凹凸面となっており、その上に配置される参照番号470で示される上側の光学フィルムの下面は、三角プリズムが突起しているので、その突起が、下側配置の光学フィルムの凹凸面に食い込まないようにして配置してある。この色変換フィルム(440)の光出射面から上に配置される3M製BEF(420,430)の構成、相互の間隔は、それぞれ、従前の直下型点光源バックライトユニットにおけるものと同じである。
上記比較データから明らかなとおり、実施例は比較例に比較して、平均輝度が若干ではあるが大きく(比較例よりも0.24%大きく)、同時に、輝度の標準偏差値(即ち、バラつき(見栄えの評価ファクター))が202.318から178.901に低下している。即ち、実施例は、比較例に比べて、輝度が維持されつつ、見栄えが良くなっている、ということである。