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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023071876
(43)【公開日】2023-05-23
(54)【発明の名称】抗BCMA重鎖のみ抗体
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20230516BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20230516BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20230516BHJP
   C07K 14/705 20060101ALI20230516BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20230516BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20230516BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20230516BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20230516BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20230516BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230516BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20230516BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230516BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20230516BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230516BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20230516BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20230516BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/28 ZNA
C07K19/00
C07K14/705
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
A61K39/395 G
A61K39/395 N
A61P37/06
A61P43/00
A61P37/02
A61P35/02
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032495
(22)【出願日】2023-03-03
(62)【分割の表示】P 2019571347の分割
【原出願日】2018-06-20
(31)【優先権主張番号】62/522,295
(32)【優先日】2017-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519451898
【氏名又は名称】テネオワン, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ネイサン・トリンクライン
(72)【発明者】
【氏名】シェリー・フォース・オルドレッド
(72)【発明者】
【氏名】スターリン・クラーク
(72)【発明者】
【氏名】ウィム・ヴァン・ショーテン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ヒトB細胞成熟抗原(BCMA)に結合する重鎖のみ抗体(UniAb)及びBCMAの発現を特徴とするB細胞障害を治療する方法を提供する。
【解決手段】ヒトB細胞成熟抗原(BCMA)に結合する重鎖のみ抗体であって、(a)7種の特定の配列からなるアミノ酸配列のうちのいずれかの中に2つ以下の置換を有するCDR1、及び/または(b)4種の特定の配列からなるアミノ酸配列のうちのいずれかの中に2つ以下の置換を有するCDR2、及び/または(c)4種の特定の配列からなるアミノ酸配列のうちのいずれかの中に2つ以下の置換を有するCDR3を含む、重鎖可変領域を含む、前記重鎖のみ抗体である。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトB細胞成熟抗原(BCMA)に結合する重鎖のみ抗体であって、
(a)配列番号1~7のアミノ酸配列のうちのいずれかの中に2つ以下の置換を有するCDR1、及び/または
(b)配列番号8~11のアミノ酸配列のうちのいずれかの中に2つ以下の置換を有するCDR2、及び/または
(c)配列番号12~15のアミノ酸配列のうちのいずれかの中に2つ以下の置換を有するCDR3
を含む、重鎖可変領域を含む、前記重鎖のみ抗体。
【請求項2】
前記CDR1、CDR2及びCDR3配列がヒトフレームワーク中に存在する、請求項1に記載の重鎖のみ抗体。
【請求項3】
CH1配列の非存在下で重鎖定常領域配列をさらに含む、請求項1に記載の重鎖のみ抗体。
【請求項4】
(a)配列番号1~7からなる群から選択されるCDR1配列、及び/または
(b)配列番号8~11からなる群から選択されるCDR2配列、及び/または
(c)配列番号12~15からなる群から選択されるCDR3配列
を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の重鎖のみ抗体。
【請求項5】
(a)配列番号1~7からなる群から選択されるCDR1配列と、
(b)配列番号8~11からなる群から選択されるCDR2配列と、
(c)配列番号12~15からなる群から選択されるCDR3配列と
を含む、請求項4に記載の重鎖のみ抗体。
【請求項6】
(i)配列番号1のCDR1配列、配列番号8のCDR2配列、及び配列番号12のCDR3配列;または
(ii)配列番号1のCDR1配列、配列番号8のCDR2配列、及び配列番号14のCDR3配列;または
(iii)配列番号2のCDR1配列、配列番号9のCDR2配列、及び配列番号13のCDR3配列;または
(iv)配列番号1のCDR1配列、配列番号8のCDR2配列、及び配列番号15のCDR3配列
を含む、請求項5に記載の重鎖のみ抗体。
【請求項7】
配列番号16~50の配列のうちのいずれかとの少なくとも95%の配列同一性を有する重鎖可変領域を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の重鎖のみ抗体。
【請求項8】
配列番号16~50からなる群から選択される重鎖可変領域配列を含む、請求項7に記載の重鎖のみ抗体。
【請求項9】
配列番号16、17、18、30、34及び38からなる群から選択される重鎖可変領域配列を含む、請求項8に記載の重鎖のみ抗体。
【請求項10】
(a)次式のCDR1配列
G F T X1 X2 X3 X4 X5
(式中、
X1が、V、IまたはFであり、
X2が、SまたはTであり、
X3が、SまたはNであり、
X4が、YまたはSであり、
X5が、GまたはAである)、
(b)次式のCDR2配列
I X6 G X7 X8 X9 X10 T
(式中、
X6が、RまたはSであり、
X7が、SまたはDであり、
X8が、D、GまたはSであり、
X9が、GまたはDであり、
X10が、S、TまたはNである)、及び
(c)次式のCDR3配列
A K Q G X11 N D G P F D X12
(式中、
X9が、GまたはEであり、
X10が、YまたはHである)
を含む、重鎖可変部を含む、重鎖可変領域を含む、ヒトB細胞成熟抗原(BCMA)に結合する重鎖のみ抗体。
【請求項11】
ヒトVHフレームワーク中にCDR1、CDR2及びCDR3配列を含む重鎖可変領域を含む、ヒトB細胞成熟抗原(BCMA)に結合する重鎖のみ抗体であって、前記CDR配列が、配列番号1~15からなる群から選択されるCDR配列に2つ以下の置換を有する配列である、前記重鎖のみ抗体。
【請求項12】
ヒトVHフレームワーク中にCDR1、CDR2及びCDR3配列を含む重鎖可変領域を含み、前記CDR配列が、配列番号1~15からなる群から選択される、請求項11に記載の重鎖のみ抗体。
【請求項13】
ヒトB細胞成熟抗原(BCMA)に結合する重鎖のみ抗体であって、
(i)配列番号1のCDR1配列、配列番号8のCDR2配列、及び配列番号12のCDR3配列、または
(ii)配列番号1のCDR1配列、配列番号8のCDR2配列、及び配列番号14のCDR3配列、または
(iii)配列番号2のCDR1配列、配列番号9のCDR2配列、及び配列番号13のCDR3配列、または
(iv)配列番号1のCDR1配列、配列番号8のCDR2配列、及び配列番号15のCDR3配列
をヒトVHフレームワーク中に含む重鎖可変領域を含む、前記重鎖のみ抗体。
【請求項14】
多重特異性である、請求項1~13のいずれか1項に記載の重鎖のみ抗体。
【請求項15】
二重特異性である、請求項14に記載の重鎖のみ抗体。
【請求項16】
2つの異なるBCMAタンパク質に対する結合親和性を有する、請求項15に記載の重鎖のみ抗体。
【請求項17】
同じBCMAタンパク質上の2つの異なるエピトープに対する結合親和性を有する、請求項15に記載の重鎖のみ抗体。
【請求項18】
エフェクター細胞に対する結合親和性を有する、請求項14に記載の重鎖のみ抗体。
【請求項19】
T細胞抗原に対する結合親和性を有する、請求項14に記載の重鎖のみ抗体。
【請求項20】
CD3に対する結合親和性を有する、請求項19に記載の重鎖のみ抗体。
【請求項21】
CAR-T形式である、請求項1~20のいずれか1項に記載の重鎖のみ抗体。
【請求項22】
請求項1~21のいずれか1項に記載の重鎖のみ抗体を含む、薬学的組成物。
【請求項23】
BCMAの発現を特徴とするB細胞障害の治療のための方法であって、前記障害を有する対象に
請求項1~21のいずれか1項に記載の抗体または請求項22に記載の薬学的組成物
を投与することを含む、前記方法。
【請求項24】
前記B細胞障害が多発性骨髄腫である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記B細胞障害が全身性エリテマトーデスである、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
請求項1~21のいずれかに記載の抗体をコードする、ポリヌクレオチド。
【請求項27】
請求項26に記載のポリヌクレオチドを含む、ベクター。
【請求項28】
請求項27に記載のベクターを含む、細胞。
【請求項29】
請求項1~21のいずれかに記載の抗体を生産する方法であって、
前記タンパク質の発現を許容する条件下で、請求項28に記載の細胞を増殖させることと、
前記細胞から前記抗体を単離することと
を含む、前記方法。
【請求項30】
請求項1~21のいずれか1項に記載の抗体を作製する方法であって、
UniRat動物をBCMAで免疫することと、
BCMA結合重鎖配列を同定することと
を含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年6月20日出願の米国仮特許出願第62/522,295号の出願日の優先権を主張し、この出願の開示は、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表
本願は、ASCII形式で電子提出された配列表を含み、これをもって参照によりその全体を援用する。上記ASCIIコピーは2018年8月24日に作成されたものであり、名前がTNO-0003-WO_SL.txtでありサイズが47,761バイトである。
発明の分野
本発明は抗BCMA重鎖のみ抗体(UniAb)に関する。本発明はさらに、そのような抗体を作製する方法、そのような抗体を含む薬学的組成物を含む組成物、及びBCMAの発現を特徴とするB細胞障害を治療するためのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
B細胞成熟抗原(BCMA)
腫瘍壊死因子スーパーファミリーメンバー17(TNFRSF17)(UniProt
Q02223)としても知られるBCMAは、形質細胞及び形質芽細胞上に排他的に発現される細胞表面受容体である。BCMAは腫瘍壊死因子(TNF)スーパーファミリーの2つのリガンド、APRIL(増殖誘導リガンド、TNFSF13、TALL-2、及びTRDL-1としても知られる、BCMAに対する高親和性リガンド)及びB細胞活性化因子(BAFF)(BLyS、TALL-1、THANK、zTNF4、TNFSF20、及びD8Ertd387eとしても知られる、BCMAに対する低親和性リガンド)に対する受容体である。APRIL及びBAFFは、BCMAに結合して形質細胞の生存を促進する増殖因子である。BCMAはまた、ヒト多発性骨髄腫(MM)の悪性形質細胞上で高度に発現される。BCMAに結合する抗体は、例えば、Gras et al.,1995,Int.Immunol.7:1093-1106、WO200124811及びWO200124812に記載されている。TACIと交差反応する抗BCMA抗体は、WO2002/066516に記載されている。BCMA及びCD3に対する二重特異性抗体は、例えば、US2013/0156769 A1及びUS2015/0376287 A1に記載されている。抗BCMA抗体-MMAEまたは-MMAFコンジュゲートは、多発性骨髄腫細胞の殺傷を選択的に誘導することが報告されている(Tai et al.,Blood 2014,123(20):3128-38)。Ali et
al.,Blood 2016,128(13):1688-700は、臨床試験(#NCT02215967)で、BCMAを標的とするキメラ抗原受容体(CAR)T細胞がヒト患者において多発性骨髄腫の寛解をもたらしたことを報告している。
【0004】
重鎖のみ抗体
従来のIgG抗体では、重鎖と軽鎖との会合は、軽鎖定常領域と重鎖のCH1定常ドメインとの間の疎水性相互作用に一部起因している。重鎖と軽鎖との間のその疎水性相互作用にも寄与する、重鎖フレームワーク2(FR2)及びフレームワーク4(FR4)領域に追加の残基がある。
【0005】
しかしながら、ラクダ科の血清(ラクダ、ヒトコブラクダ、及びラマを含むラクダ亜目)は、対をなすH鎖のみからなる主要な種類の抗体(重鎖のみ抗体またはUniAbs)を含むことが知られている。ラクダ科(ヒトコブラクダ、フタコブラクダ、ラマ、グアナコ、アルパカ、及びヴィクーニャ)のUniAbsは、単一可変ドメイン(VHH)、ヒンジ領域、及び2つの定常ドメイン(CH2及びCH3)からなる独特の構造を有し、それらは古典的抗体のCH2及びCH3ドメインと非常に相同性が高い。これらのUniAbsは、ゲノムに存在する定常領域の最初のドメイン(CH1)を欠くが、mRNAプロセシングの間にスプライスアウトされる。CH1ドメインの欠損は、このドメインが軽鎖
の定常ドメインの固定場所であるので、UniAbs中に軽鎖が存在しないことを説明する。そのようなUniAbsは、従来の抗体またはその断片からの3つのCDRによって抗原結合特異性及び高親和性を付与するように自然に進化した(Muyldermans,2001;J Biotechnol 74:277-302、Revets et al.,2005;Expert Opin Biol Ther 5:111-124)。サメなどの軟骨魚は、軽鎖ポリペプチド鎖を欠き、完全に重鎖で構成されている、IgNARと呼ばれる独自のタイプの免疫グロブリンも進化させてきた。IgNAR分子は、分子工学により操作され単一重鎖ポリペプチドの可変ドメイン(vNAR)を生成することができる(Nuttall et al.Eur.J.Biochem.270,3543-3554(2003)、Nuttall et al.Function and Bioinformatics 55,187-197(2004)、Dooley
et al.,Molecular Immunology 40,25-33(2003))。
【0006】
軽鎖を欠く重鎖のみ抗体が抗原に結合する能力は、1960年代に確立された(Jaton et al.(1968)Biochemistry,7,4185-4195)。軽鎖から物理的に分離された重鎖免疫グロブリンは、四量体抗体に対して80%の抗原結合活性を保持していた。Sitia et al.(1990)Cell,60,781-790で、再配列されたマウスμ遺伝子からCH1ドメインを除去すると、哺乳動物細胞培養において、軽鎖を欠く重鎖のみ抗体が産生されることが実証された。産生された抗体は、VH結合特異性及びエフェクター機能を保持していた。
高い特異性及び親和性を有する重鎖抗体は、免疫感作を通して種々の抗原に対して生成させることができ(van der Linden,R.H.,et al.Biochim.Biophys.Acta.1431,37-46(1999))、VHH部分は容易にクローン化され、酵母中で発現させることができる(Frenken,L.G.J.,et al.J.Biotechnol.78,11-21(2000))。それらの発現レベル、溶解性、及び安定性は、古典的なF(ab)またはFv断片のレベルよりも有意に高い(Ghahroudi,M.A.et al.FEBS Lett.414,521-526(1997))。
λ(ラムダ)軽(L)鎖遺伝子座、及び/または、λもしくはκ(カッパ(kappa))L鎖遺伝子座が機能的にサイレンシングされているマウス、ならびにそのようなマウスによって産生される抗体は、米国特許第7,541,513号及び第8,367,888号に記載されている。マウス及びラットにおける重鎖のみ抗体の組換え産生は、例えば、WO2006008548、米国特許出願公開第20100122358号、Nguyen et al.,2003,Immunology;109(1),93-101、Bruggemann et al.,Crit.Rev.Immunol.;2006,26(5):377-90、及びZou et al.,2007,J Exp Med;204(13):3271-3283に報告されている。ジンクフィンガーヌクレアーゼの胚マイクロインジェクションによるノックアウトラットの生成は、Geurts et al.,2009,Science,325(5939):433に記載されている。可溶性重鎖のみ抗体及びそのような抗体を産生する異種重鎖遺伝子座を含むトランスジェニックげっ歯類は、米国特許第8,883,150号及び第9,365,655号に記載されている。結合(標的化)ドメインとして単一ドメイン抗体を含むCAR-T構造は、例えば、Iri-Sofla et al.,2011,Experimental
Cell Research 317:2630-2641及びJamnani et
al.,2014,Biochim Biophys Acta,1840:378-386に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2001/024811号
【特許文献2】国際公開第2001/024812号
【特許文献3】国際公開第2002/066516号
【特許文献4】米国特許出願公開第2013/0156769号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2015/0376287号明細書
【特許文献6】米国特許第7541513号明細書
【特許文献7】米国特許第8367888号明細書
【特許文献8】国際公開第2006/008548号
【特許文献9】米国特許出願公開第2010/0122358号明細書
【特許文献10】米国特許第8883150号明細書
【特許文献11】米国特許第9365655号明細書
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Gras et al.,1995,Int.Immunol.7:1093-1106
【非特許文献2】Tai et al.,Blood 2014,123(20):3128-38
【非特許文献3】Ali et al.,Blood 2016,128(13):1688-700
【非特許文献4】Muyldermans,2001;J Biotechnol 74:277-302
【非特許文献5】Revets et al.,2005;Expert Opin Biol Ther 5:111-124
【非特許文献6】Nuttall et al.Eur.J.Biochem.270,3543-3554(2003)
【非特許文献7】Nuttall et al.Function and Bioinformatics 55,187-197(2004)
【非特許文献8】Dooley et al.,Molecular Immunology 40,25-33(2003)
【非特許文献9】Jaton et al.(1968)Biochemistry,7,4185-4195
【非特許文献10】Sitia et al.(1990)Cell,60,781-790
【非特許文献11】van der Linden,R.H.,et al.Biochim.Biophys.Acta.1431,37-46(1999)
【非特許文献12】Frenken,L.G.J.,et al.J.Biotechnol.78,11-21(2000)
【非特許文献13】Ghahroudi,M.A.et al.FEBS Lett.414,521-526(1997)
【非特許文献14】Nguyen et al.,2003,Immunology;109(1),93-101
【非特許文献15】Bruggemann et al.,Crit.Rev.Immunol.;2006,26(5):377-90
【非特許文献16】Zou et al.,2007,J Exp Med;204(13):3271-3283
【非特許文献17】Geurts et al.,2009,Science,325(5939):433
【非特許文献18】Iri-Sofla et al.,2011,Experimental Cell Research 317:2630-2641
【非特許文献19】Jamnani et al.,2014,Biochim Biophys Acta,1840:378-386
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ヒトB細胞成熟抗原(BCMA)に結合する重鎖のみ抗体に関する。
【0010】
一態様では、本発明は、重鎖のみ抗体である抗BCMA抗体であって、
【0011】
(a)配列番号1~7のアミノ酸配列のうちのいずれかの中に2つ以下の置換を有するCDR1、及び/または
【0012】
(b)配列番号8~11のアミノ酸配列のうちのいずれかの中に2つ以下の置換を有するCDR2、及び/または
【0013】
(c)配列番号12~15のアミノ酸配列のうちのいずれかの中に2つ以下の置換を有するCDR3を含む、重鎖可変領域を含む、重鎖のみ抗体である抗BCMA抗体に関する。
【0014】
一実施形態では、CDR1、CDR2及びCDR3配列はヒトフレームワーク中に存在する。
【0015】
別の実施形態では、重鎖のみ抗体は、CH1配列の非存在下で重鎖定常領域配列をさらに含む。
【0016】
さらに別の実施形態では、重鎖のみ抗体は、
【0017】
(a)配列番号1~7からなる群から選択されるCDR1配列、及び/または
【0018】
(b)配列番号8~11からなる群から選択されるCDR2配列、及び/または
【0019】
(c)配列番号12~15からなる群から選択されるCDR3配列を含む。
【0020】
さらなる実施形態では、重鎖のみ抗体は、
【0021】
(a)配列番号1~7からなる群から選択されるCDR1配列と、
【0022】
(b)配列番号8~11からなる群から選択されるCDR2配列と、
【0023】
(c)配列番号12~15からなる群から選択されるCDR3配列と、を含む。
【0024】
なおさらなる実施形態において、重鎖のみ抗体は、
【0025】
(i)配列番号1のCDR1配列、配列番号8のCDR2配列、及び配列番号12のCDR3配列;または
【0026】
(ii)配列番号1のCDR1配列、配列番号8のCDR2配列、及び配列番号14のCDR3配列;または
【0027】
(iii)配列番号2のCDR1配列、配列番号9のCDR2配列、及び配列番号13のCDR3配列;または
【0028】
(iv)配列番号1のCDR1配列、配列番号8のCDR2配列、及び配列番号15のCDR3配列を含む。
【0029】
異なる実施形態では、重鎖のみ抗体は、配列番号16~50の配列のうちのいずれかとの少なくとも95%の配列同一性を有する重鎖可変領域を含む。
【0030】
別の実施形態では、重鎖のみ抗体は、配列番号16~50からなる群から選択される重鎖可変領域配列を含む。
【0031】
さらなる実施形態では、重鎖のみ抗体は、配列番号16、17、18、30、34及び38からなる群から選択される重鎖可変領域配列を含む。
【0032】
本発明はさらに、ヒトB細胞成熟抗原(BCMA)に結合する重鎖のみ抗体であって、
【0033】
(a)次式のCDR1配列
【0034】
G F T X1 X2 X3 X4 X5
【0035】
(式中、
【0036】
X1が、V、IまたはFであり、
【0037】
X2が、SまたはTであり、
【0038】
X3が、SまたはNであり、
【0039】
X4が、YまたはSであり、
【0040】
X5が、GまたはAである)、
【0041】
(b)次式のCDR2配列
【0042】
I X6 G X7 X8 X9 X10 T
【0043】
(式中、
【0044】
X6が、RまたはSであり、
【0045】
X7が、SまたはDであり、
【0046】
X8が、D、GまたはSであり、
【0047】
X9が、GまたはDであり、
【0048】
X10が、S、TまたはNである)、及び
【0049】
(c)次式のCDR3配列
【0050】
A K Q G X11 N D G P F D X12
【0051】
(式中、
【0052】
X11が、GまたはEであり、
【0053】
X12が、YまたはHである)
を含む、重鎖可変部を含む、重鎖可変領域を含む、重鎖のみ抗体に関する。
【0054】
本発明はさらに、ヒトVHフレームワーク中にCDR1、CDR2及びCDR3配列を含む重鎖可変領域を含む重鎖のみ抗BCMA抗体であって、CDR配列が、配列番号1~15からなる群から選択されるCDR配列に2つ以下の置換を含む、重鎖のみ抗BCMA抗体に関する。
【0055】
一実施形態では、重鎖のみ抗体は、ヒトVHフレームワーク中にCDR1、CDR2及びCDR3配列を含む重鎖可変領域を含み、CDR配列は、配列番号1~15からなる群から選択される。
【0056】
別の実施形態では、ヒトB細胞成熟抗原(BCMA)に結合する重鎖のみ抗体は、
【0057】
(i)配列番号1のCDR1配列、配列番号8のCDR2配列、及び配列番号12のCDR3配列、または
【0058】
(ii)配列番号1のCDR1配列、配列番号8のCDR2配列、及び配列番号14のCDR3配列、または
【0059】
(iii)配列番号2のCDR1配列、配列番号9のCDR2配列、及び配列番号13のCDR3配列、または
【0060】
(iv)配列番号1のCDR1配列、配列番号8のCDR2配列、及び配列番号15のCDR3配列を、
【0061】
ヒトVHフレームワーク中に含む、重鎖可変領域を含む。
【0062】
全ての実施形態において、重鎖のみ抗体は、二重特異性などの多重特異性であってもよい。
【0063】
特定の実施形態では、二重特異性重鎖のみ抗BCMA抗体は、2つの異なるBCMAタンパク質に対する、または同じBCMAタンパク質上の2つの異なるエピトープに対する結合親和性を有する。
【0064】
他の実施形態では、二重特異性重鎖のみ抗BCMA抗体は、T細胞抗原などのエフェクター細胞に対する結合親和性を有する。
【0065】
さらなる実施形態では、二重特異性重鎖のみ抗BCMA抗体は、CD3に対する結合親和性を有する。
【0066】
様々な実施形態において、多重または二重特異性抗BCMA抗体は、CAR-T形式であり得る。
【0067】
別の態様では、本発明は、本明細書中で上に記載される重鎖のみ抗体を含む薬学的組成
物に関する。
【0068】
さらに別の態様では、本発明は、BCMAの発現を特徴とするB細胞障害の治療のための方法に関し、この方法は、そのような障害を有する対象に本明細書中で上に記載される抗体または薬学的組成物を投与することを含む。
【0069】
いくつかの実施形態では、B細胞障害は、例えば、多発性骨髄腫または全身性エリテマトーデスであり得る。
【0070】
さらなる態様では、本発明は、本明細書に記載の抗BCMA抗体をコードするポリヌクレオチドに関する。
【0071】
なおさらなる態様では、本発明は、本明細書に記載の抗BCMA抗体をコードするポリヌクレオチドを含むベクターに関する。
【0072】
本発明はさらに、本明細書に記載の抗BCMA抗体をコードするポリヌクレオチドを含むベクターを含む細胞に関する。
【0073】
本発明はさらに、本明細書に記載の抗体を生産する方法であって、タンパク質の発現を許容する条件下で、本明細書に記載の抗BCMA抗体をコードするポリヌクレオチドを含んでいる細胞(例えば宿主細胞)を増殖させることと、細胞及び/または細胞培養培地から抗体を単離することとを含む、方法に関する。一実施形態では、方法は、UniRat動物をBCMAで免疫することと、BCMA結合重鎖抗体配列を同定することとを含む。
【0074】
これら及びさらなる態様は、実施例を含め、本開示の残りの部分でさらに説明される。
本発明は、例えば以下の項目を提供する。
(項目1)
ヒトB細胞成熟抗原(BCMA)に結合する重鎖のみ抗体であって、
(a)配列番号1~7のアミノ酸配列のうちのいずれかの中に2つ以下の置換を有するCDR1、及び/または
(b)配列番号8~11のアミノ酸配列のうちのいずれかの中に2つ以下の置換を有するCDR2、及び/または
(c)配列番号12~15のアミノ酸配列のうちのいずれかの中に2つ以下の置換を有するCDR3
を含む、重鎖可変領域を含む、前記重鎖のみ抗体。
(項目2)
前記CDR1、CDR2及びCDR3配列がヒトフレームワーク中に存在する、項目1に記載の重鎖のみ抗体。
(項目3)
CH1配列の非存在下で重鎖定常領域配列をさらに含む、項目1に記載の重鎖のみ抗体。
(項目4)
(a)配列番号1~7からなる群から選択されるCDR1配列、及び/または
(b)配列番号8~11からなる群から選択されるCDR2配列、及び/または
(c)配列番号12~15からなる群から選択されるCDR3配列
を含む、項目1~3のいずれか1項に記載の重鎖のみ抗体。
(項目5)
(a)配列番号1~7からなる群から選択されるCDR1配列と、
(b)配列番号8~11からなる群から選択されるCDR2配列と、
(c)配列番号12~15からなる群から選択されるCDR3配列と
を含む、項目4に記載の重鎖のみ抗体。
(項目6)
(i)配列番号1のCDR1配列、配列番号8のCDR2配列、及び配列番号12のCDR3配列;または
(ii)配列番号1のCDR1配列、配列番号8のCDR2配列、及び配列番号14のCDR3配列;または
(iii)配列番号2のCDR1配列、配列番号9のCDR2配列、及び配列番号13のCDR3配列;または
(iv)配列番号1のCDR1配列、配列番号8のCDR2配列、及び配列番号15のCDR3配列
を含む、項目5に記載の重鎖のみ抗体。
(項目7)
配列番号16~50の配列のうちのいずれかとの少なくとも95%の配列同一性を有する重鎖可変領域を含む、項目1~3のいずれか1項に記載の重鎖のみ抗体。
(項目8)
配列番号16~50からなる群から選択される重鎖可変領域配列を含む、項目7に記載の重鎖のみ抗体。
(項目9)
配列番号16、17、18、30、34及び38からなる群から選択される重鎖可変領域配列を含む、項目8に記載の重鎖のみ抗体。
(項目10)
(a)次式のCDR1配列
G F T X1 X2 X3 X4 X5
(式中、
X1が、V、IまたはFであり、
X2が、SまたはTであり、
X3が、SまたはNであり、
X4が、YまたはSであり、
X5が、GまたはAである)、
(b)次式のCDR2配列
I X6 G X7 X8 X9 X10 T
(式中、
X6が、RまたはSであり、
X7が、SまたはDであり、
X8が、D、GまたはSであり、
X9が、GまたはDであり、
X10が、S、TまたはNである)、及び
(c)次式のCDR3配列
A K Q G X11 N D G P F D X12
(式中、
X9が、GまたはEであり、
X10が、YまたはHである)
を含む、重鎖可変部を含む、重鎖可変領域を含む、ヒトB細胞成熟抗原(BCMA)に結合する重鎖のみ抗体。
(項目11)
ヒトVHフレームワーク中にCDR1、CDR2及びCDR3配列を含む重鎖可変領域を含む、ヒトB細胞成熟抗原(BCMA)に結合する重鎖のみ抗体であって、前記CDR配列が、配列番号1~15からなる群から選択されるCDR配列に2つ以下の置換を有する配列である、前記重鎖のみ抗体。
(項目12)
ヒトVHフレームワーク中にCDR1、CDR2及びCDR3配列を含む重鎖可変領域を含み、前記CDR配列が、配列番号1~15からなる群から選択される、項目11に記載の重鎖のみ抗体。
(項目13)
ヒトB細胞成熟抗原(BCMA)に結合する重鎖のみ抗体であって、
(i)配列番号1のCDR1配列、配列番号8のCDR2配列、及び配列番号12のCDR3配列、または
(ii)配列番号1のCDR1配列、配列番号8のCDR2配列、及び配列番号14のCDR3配列、または
(iii)配列番号2のCDR1配列、配列番号9のCDR2配列、及び配列番号13のCDR3配列、または
(iv)配列番号1のCDR1配列、配列番号8のCDR2配列、及び配列番号15のCDR3配列
をヒトVHフレームワーク中に含む重鎖可変領域を含む、前記重鎖のみ抗体。
(項目14)
多重特異性である、項目1~13のいずれか1項に記載の重鎖のみ抗体。
(項目15)
二重特異性である、項目14に記載の重鎖のみ抗体。
(項目16)
2つの異なるBCMAタンパク質に対する結合親和性を有する、項目15に記載の重鎖のみ抗体。
(項目17)
同じBCMAタンパク質上の2つの異なるエピトープに対する結合親和性を有する、項目15に記載の重鎖のみ抗体。
(項目18)
エフェクター細胞に対する結合親和性を有する、項目14に記載の重鎖のみ抗体。
(項目19)
T細胞抗原に対する結合親和性を有する、項目14に記載の重鎖のみ抗体。
(項目20)
CD3に対する結合親和性を有する、項目19に記載の重鎖のみ抗体。
(項目21)
CAR-T形式である、項目1~20のいずれか1項に記載の重鎖のみ抗体。
(項目22)
項目1~21のいずれか1項に記載の重鎖のみ抗体を含む、薬学的組成物。
(項目23)
BCMAの発現を特徴とするB細胞障害の治療のための方法であって、前記障害を有する対象に
項目1~21のいずれか1項に記載の抗体または項目22に記載の薬学的組成物
を投与することを含む、前記方法。
(項目24)
前記B細胞障害が多発性骨髄腫である、項目23に記載の方法。
(項目25)
前記B細胞障害が全身性エリテマトーデスである、項目23に記載の方法。
(項目26)
項目1~21のいずれかに記載の抗体をコードする、ポリヌクレオチド。
(項目27)
項目26に記載のポリヌクレオチドを含む、ベクター。
(項目28)
項目27に記載のベクターを含む、細胞。
(項目29)
項目1~21のいずれかに記載の抗体を生産する方法であって、
前記タンパク質の発現を許容する条件下で、項目28に記載の細胞を増殖させることと、
前記細胞から前記抗体を単離することと
を含む、前記方法。
(項目30)
項目1~21のいずれか1項に記載の抗体を作製する方法であって、
UniRat動物をBCMAで免疫することと、
BCMA結合重鎖配列を同定することと
を含む、前記方法。
【図面の簡単な説明】
【0075】
図1-1】35個の本発明の重鎖のみ抗BCMA抗体のCDR1、CDR2及びCDR3アミノ酸配列を示す。
図1-2】35個の本発明の重鎖のみ抗BCMA抗体のCDR1、CDR2及びCDR3アミノ酸配列を示す。
図2-1】35個の本発明の重鎖のみ抗BCMA抗体の重鎖可変領域配列を示す。
図2-2】35個の本発明の重鎖のみ抗BCMA抗体の重鎖可変領域配列を示す。
図3】BCMAタンパク質及びBCMA発現細胞株の結合を示す。第1列は、試験した重鎖のみ抗体(UniAb)のクローンIDを示す。第2列は、上清中の発現したUniAbの濃度を示す。第3列は、バックグラウンドに対する倍率で表したヒトBCMAタンパク質結合のELISAシグナルを示す。第4列は、バックグラウンドに対する倍率で表したヒトIgG1κタンパク質結合のELISAシグナルを示す。第5列は、バックグラウンドに対する倍率で表したヒトラムダタンパク質結合のELISAシグナルを示す。第6列は、バックグラウンドに対する倍率で表したヒト血清アルブミンタンパク質結合のELISAシグナルを示す。第7列は、バックグラウンドに対する倍率で表したバキュロウイルスタンパク質結合のELISAシグナルを示す。第8列は、BCMAタンパク質に対するAprilリガンドタンパク質のブロッキングパーセントを示す。第9列は、細胞表面にBCMAが発現しているRPMI-8226細胞との細胞結合の平均蛍光強度を示す。第10列は、細胞表面にBCMAが発現しているNCI-H929細胞との細胞結合の平均蛍光強度を示す。第11列は、細胞表面にBCMAが発現しないHDLM2細胞との細胞結合の平均蛍光強度を示す。
図4】Octet QK384装置(Fortebio Inc.,Menlo Park,CA)を動態モードで使用してバイオレイヤー干渉法で測定した、1価及び2価形態の抗BCMA重鎖のみ抗体308902の結合親和性を示す。1価形態の結合親和性(Kd)は779pMであり、2価形態のKdは53pMであった。
図5】scFv CAR-T構築物、単一特異性ヒトVH CAR-T構築物、及び二重特異性ヒトVH CAR-T構築物のグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0076】
本発明の実施は、他に示さない限り、当技術分野の範囲内である分子生物学(組換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学、及び免疫学の従来の技術を使用する。そのような技術は、“Molecular Cloning:A Laboratory Manual”,second edition(Sambrook et al.,1989)、“Oligonucleotide Synthesis”(M.J.Gait,ed.,1984)、“Animal Cell Culture”(R.I.Freshney,ed.,1987)、“Methods in Enzymology”(Academic Press,Inc.)、“Current Protocols in Molecular Biology”(F.M.Ausubel et al.,eds.,1987,and periodic updates)、“PCR:The Polymerase Chain Reaction”,(Mullis et al.,ed.,1994)、“A Practical Guide to Molecular Cloning”(Perbal Bernard V.,1988)、“Phage Display:A Laboratory Manual”(Barbas et al.,2001)、Harlow,Lane and Harlow,Using Antibodies:A Laboratory Manual:Portable Protocol No.I,Cold Spring Harbor Laboratory(1998)、及びHarlow and Lane,Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory;(1988)のような文献に十分に説明されている。
【0077】
値の範囲が提供される場合、文脈が別途明確に指示しない限り、下限値の単位の10分の1までの、その範囲の上限値から下限値の間の各介在値、及びその表示範囲の任意の他の表示値または介在値が、本発明に包含されることが理解される。それらのより小さい範囲の上限値及び下限値は、より小さい範囲内に独立して含まれ得、また、表示範囲内の任意の具体的な除外限度に従って、本明細書にも包含される。記載範囲がそれらの上限値及び下限値のうちの一方または両方を含む場合、それらの包含される上限値及び下限値のいずれか一方または両方を除外する範囲も本発明に包含される。
【0078】
特記しない限り、本明細書中の抗体残基は、Kabat番号付けシステムに従って番号付けされる(例えば、Kabat et al.,Sequences of Immunological Interest.5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991))。
【0079】
以下の説明では、本発明の完全な理解を提供するために、多くの具体的な詳細が述べられている。しかしながら、本発明がこれらの具体的な詳細のうちの1つ以上なしに実施され得ることは、当業者には明らかであろう。他の例では、本発明を曖昧にすることを避けるために、当業者に即知である特徴及び手順は説明されていない。
【0080】
特許出願及び刊行物を含む、本明細書に引用される全ての参考文献は、参照によりそれらの全体が組み込まれる。
【0081】
I.定義
「含む」とは、列挙された要素が組成物/方法/キットに必要とされることを意味する
が、請求項の範囲内で組成物/方法/キットなどを形成するために他の要素が含まれ得る。
【0082】
「~から本質的になる」とは、記載された組成物または方法の範囲を、本発明の基本的及び新規な特徴(複数可)に実質的に影響を与えない特定の材料または工程に限定することを意味する。
【0083】
「~からなる」とは、任意の要素の組成、方法、またはキット、請求項で指定されていない工程、または成分の除外を意味する。
【0084】
「モノクローナル抗体」という用語は、本明細書で使用されるとき、実質的に同種の抗体の集団から得られる抗体を指し、すなわち、その集団に含まれる個別の抗体は、微量で存在し得る可能性のある自然発生の突然変異を除いて同一である。モノクローナル抗体は、高度に特異的であり、単一の抗原部位を対象としている。さらに、典型的には異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を含む従来の(ポリクローナル)抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対するものである。
【0085】
「重鎖のみ抗体」、「重鎖抗体」及び「UniAb」という用語は互換的に使用され、最も広義では、従来の抗体の軽鎖を欠く抗体を指す。ホモ二量体UniAbは軽鎖を欠き、したがってVLドメインを欠くので、抗原は1個の単一ドメイン、すなわち重鎖抗体の重鎖の可変ドメイン(VH)によって認識される。この用語は具体的には、限定されないが、CH1ドメインの非存在下でのVH抗原結合ドメイン及びCH2及びCH3定常ドメイン、そのような抗体の機能的(抗原結合)変異体、可溶性VH変異体、1個の可変ドメイン(V-NAR)及び5つのC様定常ドメイン(C-NAR)のホモ二量体を含むIg-NAR、ならびにそれらの機能断片、ならびに可溶性単一ドメイン抗体(sUniDab)を含むホモ二量体抗体である。一実施形態では、重鎖のみ抗体は、フレームワーク1、CDR1、フレームワーク2、CDR2、フレームワーク3、CDR3、及びフレームワーク4からなる可変領域抗原結合ドメインから構成される。一実施形態では、重鎖のみ抗体は、抗原結合ドメイン、少なくともヒンジ領域のうちの一部、ならびにCH2及びCH3ドメインから構成される。別の実施形態では、重鎖のみ抗体は、抗原結合ドメイン、少なくともヒンジ領域のうちの一部、及びCH2ドメインから構成される。さらなる実施形態では、重鎖のみ抗体は、抗原結合ドメイン、少なくともヒンジ領域のうちの一部、及びCH3ドメインから構成される。CH2及び/またはCH3ドメインが切断されている重鎖のみ抗体もまた本明細書に含まれる。さらなる実施形態では、重鎖は、抗原結合ドメイン、及び少なくとも1つのCH(CH1、CH2、CH3、またはCH4)ドメインから構成されるが、ヒンジ領域は含まない。重鎖のみ抗体は、2つの重鎖が他の方法では共有結合または非共有結合で互いにジスルフィド結合している二量体の形態であり得る。重鎖のみ抗体はIgGサブクラスに属し得るが、IgM、IgA、IgD、及びIgEサブクラスなどの他のサブクラスに属する抗体もまた本明細書に含まれる。特定の実施形態では、重鎖抗体は、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4サブタイプ、特にIgG1サブタイプである。一実施形態では、本明細書の重鎖のみ抗体は、キメラ抗原受容体(CAR)の結合(標的化)ドメインとして使用される。
【0086】
本明細書中で使用する「BCMA」という用語は、分化した形質細胞に優先的に発現する腫瘍壊死受容体スーパーファミリーのメンバーでありBCMA、CD269及びTNFRSF17(UniProtQ02223)としても知られるヒトB細胞成熟抗原に関する。ヒトBCMAの細胞外ドメインは、UniProtによるアミノ酸1~54(または5~51)からなる。
【0087】
「抗BCMA重鎖のみ抗体」及び「BCMA重鎖のみ抗体」という用語は、BCMAに
免疫特異的に結合する本明細書中で上に定義される重鎖のみ抗体を指すために、本明細書中で使用される。
【0088】
抗体に関連して使用される「可変」という用語は、抗体可変ドメインの特定の部分の配列が抗体間で広範に異なるという事実を指し、その特定の抗原に対する各特定の抗体の結合及び特異性において使用される。しかしながら、可変性は、抗体の可変ドメイン全体にわたって均等には分布していない。これは、軽鎖及び重鎖の両方の可変ドメイン中の超可変領域と呼ばれる3つのセグメントに集中している。可変ドメインのより高度に保存された部分は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる。本来の重鎖及び軽鎖の可変ドメインは各々、主にβシート構成を採用する4つのFRを含み、それらは、3つの超可変領域により連結され、それら超可変領域はβシート構造を連結し、ある場合にはその一部を形成するループを形成する。各鎖内の超可変領域は、FRによって近接近し一緒に保持されており、他方の鎖の超可変領域と共に、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabat
et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD.(1991)参照)。定常ドメインは、抗体の抗原への結合に直接関与しないが、抗体の抗体依存性細胞毒性(ADCC)への関与などの様々なエフェクター機能を呈する。
【0089】
「超可変領域」という用語は、本明細書に使用されるとき、抗原結合を担う抗体のアミノ酸残基を指す。超可変領域は、一般に、「相補性決定領域」または「CDR」由来のアミノ酸残基(例えば、重鎖可変ドメイン中の残基31~35(H1)、50~65(H2)、及び95~102(H3)、Kabat et al.,Sequences of
Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD.(1991))及び/または、「超可変ループ」由来のそれらの残基、重鎖可変ドメイン中の残基26~32(H1)、53~55(H2)、及び96~101(H3)、Chothia and LeskJ.Mol.Biol.196:901-917(1987))を含む。「フレームワーク領域」または「FR」残基は、本明細書で定義される超可変領域残基以外のそれらの可変ドメイン残基である。
【0090】
例示的なCDR名称が本明細書に示されるが、当業者は、Kabat定義を含むCDRの多数の定義が一般に使用されていることが理解され(“Zhao et al.A germline knowledge based computational approach for determining antibody complementarity determining regions.”Mol Immunol.2010;47:694-700参照)、これは配列の多様性に基づいており、最も一般的に使用されている。Chothia定義は構造ループ領域の位置に基づく(Chothia et al.“Conformations of immunoglobulin hypervariable regions.”Nature.1989;342:877-883)。重要な代替のCDR定義には、限定されないが、Honegger,“Yet another numbering scheme for immunoglobulin variable domains:an automatic
modeling and analysis tool.”J Mol Biol.2001;309:657-670、Ofran et al.“Automated identification of complementarity determining regions(CDRs)reveals peculiar characteristics of CDRs and B cell epitopes.
”J Immunol.2008;181:6230-6235、Almagro“Identification of differences in the specificity-determining residues of antibodies that recognize antigens of different size:implications for the rational design
of antibody repertoires.”J Mol Recognit.2004;17:132-143、及びPadlanet al.“Identification of specificity-determining residues in antibodies.”FasebJ.1995;9:133-139によって開示されたものが含まれ、それらのそれぞれは、参照により本明細書に具体的に組み込まれる。
【0091】
アミノ酸配列中の「2つ以下の置換」という用語は、基準アミノ酸配列中の2個、1個または0個の置換を意味して本明細書中で使用される。
【0092】
基準ポリペプチド配列に関して「アミノ酸配列同一性パーセント(%)」は、いかなる保存的置換も配列同一性の一部として考慮に入れず最大の配列同一性パーセントを得るべく配列のアラインメント及び必要に応じたギャップの導入を行った後に基準ポリペプチド配列中のアミノ酸残基と同一である、候補配列中のアミノ酸残基の百分率として定義される。アミノ酸配列同一性パーセントを決定することを目的とするアラインメントは、当技術分野における技量の範囲内に含まれる様々な方法で、例えば、公的に入手できるコンピュータソフトウェア、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGNまたはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアを使用して、成し遂げることができる。当業者であれば、比較される配列の完全長にわたって最大限のアラインメントを得るために必要とされる任意のアルゴリズムを含めて、配列のアラインメントを行うための適切なパラメータを決定することができる。しかしながら、本明細書における目的のためには配列比較コンピュータプログラムALIGN-2を使用してアミノ酸配列同一性%値を生成する。
【0093】
「単離」抗体とは、その自然環境の成分から、特定及び分離、及び/または回収されたものである。その自然環境の混入成分は、抗体の診断上または治療上の使用を妨げる材料であり、これらには、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質性または非タンパク質性溶質が含まれ得る。好ましい実施形態では、抗体は、次の程度まで精製される(1)ローリー法により判定した場合に抗体の95重量%を上回り、最も好ましくは99重量%を上回る、(2)スピニングカップシーケネータ(spinning cup sequenator)を使用してN末端もしくは内部アミノ酸配列の少なくとも15個の残基を得るのに十分な程度、または(3)クーマシーブルー、もしくは好ましくは銀染色を用いて還元もしくは非還元条件下でSDS-PAGEによって、均質になるまで。単離抗体には、抗体の自然環境の少なくとも1つの成分が存在しないため、組換え細胞内でインサイツの抗体が含まれる。しかしながら、通常、単離抗体は、少なくとも1つの精製ステップにより調製されるであろう。
【0094】
本発明の抗体は多重特異性抗体を含む。多重特異性抗体は2つ以上の結合特異性を有する。「多重特異性」という用語は、具体的には、「二重特異性」及び「三重特異性」と、高次ポリエピトープ特異性などの高次独立の特異的結合親和性と、四価抗体及び抗体断片とを含む。「多重特異性」抗体は、具体的には、異なる結合実体の組み合わせを含む抗体と、同じ結合実体を複数含む抗体とを含む。「多重特異性抗体」、「多重特異性単鎖のみ抗体」、及び「多重特異性UniAb」という用語は、本明細書では最も広義で使用され、1つより多い結合特異性を有する全ての抗体を包含する。
【0095】
「価」という用語は、本明細書で使用されるとき、抗体分子中の特定数の結合部位をい
う。
【0096】
「多価」抗体は2つ以上の結合部位を有する。したがって、「二価」、「三価」、及び「四価」という用語は、それぞれ2つの結合部位、3つの結合部位、及び4つの結合部位の存在を指す。したがって、本発明による二重特異性抗体は、少なくとも二価であり、及び三価、四価、またはそうでなければ多価であり得る。
【0097】
多種多様な方法及びタンパク質の構造が知られており、二重特異性モノクローナル抗体(BsMAB)、三重特異性抗体などの調製に使用される。
【0098】
「二重特異性三本鎖抗体様分子」または「TCA」という用語は、本明細書では、3つのポリペプチドサブユニットを含む、本質的になる、またはそれらからなる抗体様分子を指すために使用され、そのうちの2つは、抗原結合領域及び少なくとも1つのCHドメインを含む、モノクローナル抗体の1つの重鎖及び1つの軽鎖、もしくはそのような抗体鎖の機能的抗原結合断片を含む、本質的になる、またはそれらからなる。この重鎖/軽鎖対は第1の抗原に対する結合特異性を有する。第3のポリペプチドサブユニットは、CH1ドメインの非存在下で、CH2及び/またはCH3及び/またはCH4ドメインを含むFc部分を含む重鎖のみ抗体、ならびに第2の抗原のエピトープまたは第1の抗原の異なるエピトープに結合する抗原結合ドメインを含む、本質的になる、またはそれらからなり、結合ドメインは抗体重鎖または軽鎖の可変領域に由来するか、またはそれと配列同一性を有する。そのような可変領域の一部は、VH及び/またはVL遺伝子セグメント、D及びJH遺伝子セグメント、またはJL遺伝子セグメントによってコードされ得る。可変領域は、再構成されたVHDJH、VLDJH、VHJL、またはVLJL遺伝子セグメントによってコードされ得る。TCAタンパク質は、上に定義したような重鎖のみ抗体を利用する。
【0099】
「キメラ抗原受容体」または「CAR」という用語は、膜貫通ドメイン及び細胞内シグナル伝達ドメインに対する所望の結合特異性(例えば、モノクローナル抗体または他のリガンドの抗原結合領域)を融合する人工受容体を指すために本明細書では最も広義で使用される。典型的には、受容体は、キメラ抗原受容体(CAR)を作製するためにモノクローナル抗体の特異性をT細胞上に融合するために使用される。(J Natl Cancer Inst,2015;108(7):dvj439、及びJackson et al.,Nature Reviews Clinical Oncology,2016;13:370-383.)ヒトVH細胞外結合ドメインを含む代表的な単一特異性及び二重特異性CAR-T構築物をscFv CAR-T構築物と比較して図5に示す。
【0100】
「ヒトイデオタイプ」とは、免疫グロブリン重鎖及び/または軽鎖可変領域においてヒト抗体上に存在するポリペプチド配列エピトープを意味する。「ヒトイデオタイプ」という用語は、本明細書で使用されるとき、ヒト抗体の自然発生配列、ならびに自然発生ヒト抗体に見られるポリペプチドと実質的に同一の合成配列の両方を含む。「実質的に」とは、アミノ酸配列同一性の程度が少なくとも約85%~95%であることを意味する。好ましくは、アミノ酸配列同一性の程度は90%超、より好ましくは95%超である。
【0101】
「キメラ抗体」または「キメラ免疫グロブリン」とは、少なくとも2つの異なるIg遺伝子座からのアミノ酸配列を含む免疫グロブリン分子、例えばヒトIg遺伝子座によってコードされる部分とラットIg遺伝子座によってコードされる部分とを含むトランスジェニック抗体を意味する。キメラ抗体は、非ヒトFc領域または人工Fc領域を有するトランスジェニック抗体、及びヒトイデオタイプを含む。そのような免疫グロブリンは、そのようなキメラ抗体を産生するように操作された本発明の動物から単離することができる。
【0102】
抗体の「エフェクター機能」は、抗体のFc領域(天然配列のFc領域またはアミノ酸配列変異体Fc領域)に帰属する生物学的活性を指す。抗体エフェクター機能の例としては、C1q結合、補体依存性細胞毒性、Fc受容体結合、抗体依存性細胞媒介性細胞毒性(ADCC)、食作用、細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体;BCR)などの下方制御が含まれる。
【0103】
「抗体依存性細胞媒介性細胞毒性」及び「ADCC」とは、Fc受容体(FcR)を発現する非特異的細胞毒性細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、及びマクロファージ)が、標的細胞上に結合した抗体を認識し、続いて標的細胞の溶解を引き起こす、細胞媒介性反応を指す。ADCCを媒介するための初代細胞であるNK細胞がFcγRIIIのみを発現する一方で、単球は、FcγRI、FcγRII、及びFcγRIIIを発現する。造血細胞上でのFcR発現は、Ravetch and Kinet,Annu.Rev.Immunol 9:457-92(1991)の464頁の表3に要約されている。対象となる分子のADCC活性を評価するために、米国特許第5,500,362号または同第5,821,337号に記載されるようなインビトロADCCアッセイを実施することができる。かかるアッセイに有用なエフェクター細胞には、末梢血単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞が含まれる。あるいは、または加えて、目的とする分子のADCC活性は、インビボで、例えば、Clynes et al.PNAS(USA)95:652-656(1998)に開示されるもの等の動物モデルで評価され得る。
【0104】
「ヒトエフェクター細胞」は、1つ以上のFcRを発現し、及びエフェクター機能を実行する白血球である。好ましくは、この細胞は、少なくともFcγRIIIを発現し、ADCCエフェクター機能を果たす。ADCCを介するヒト白血球の例としては、末梢血単核細胞(PBMC)、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球、細胞毒性T細胞、及び好中球が含まれ、PBMC及びNK細胞が好ましい。エフェクター細胞は、本明細書に記載されるように、その天然源から、例えば、血液またはPBMCから単離され得る。
【0105】
「補体依存性細胞毒性」または「CDC」とは、補体の存在下で標的を溶解させる分子の能力を指す。補体活性化経路は、補体系(C1q)の第1の成分の、同種抗原と複合した分子(例えば、ポリペプチド(例えば、抗体))への結合によって開始される。補体活性化を評価するために、例えばGazzano-Santoro et al.,J.Immunol.Methods 202:163(1996)に記載されるCDCアッセイが実施され得る。
【0106】
「結合親和性」とは、分子(例えば、抗体)の単一結合部位とその結合パートナー(例えば、抗原)との間の非共有結合相互作用の合計の強度を指す。別途指示されない限り、本明細書で使用される場合、「結合親和性」とは、結合対のメンバー(例えば、抗体及び抗原)間の1:1の相互作用を反映する固有の結合親和性を指す。分子XのそのパートナーYに対する親和性は、一般に、解離定数(Kd)で表され得る。親和性は、当技術分野において公知の一般的な方法によって測定することができる。低親和性抗体は、一般に、抗原に結合するのが遅く、容易に解離する傾向があり、一方、高親和性抗体は、一般に、抗原に結合するのがより速く、結合したままである傾向がある。
【0107】
本明細書中で使用されるとき、「Kd」または「Kd値」とは、速度論様式で、Octet QK384機器(Fortebio Inc.,Menlo Park,CA)を使用して、BioLayer干渉法によって決定される解離定数を指す。例えば、抗マウスFcセンサーにマウス-Fc融合抗原を負荷し、次いで抗体含有ウェルに浸して濃度依存的会合速度(kon)を測定する。抗体解離速度(koff)は最終工程で測定され、センサーは緩衝液のみを含有するウェルに浸される。Kdは、koff/konの比であ
る。(さらなる詳細については、Concepcion,J,et al.,Comb Chem High Throughput Screen,12(8),791-800,2009を参照)。
【0108】
「エピトープ」は、単一の抗体分子が結合する抗原分子の表面上の部位である。一般的には、抗原はいくつかのまたは多くの異なるエピトープを有し、そして多くの異なる抗体と反応する。この用語は、具体的には、線状エピトープ及び立体配座エピトープを含む。
【0109】
「エピトープマッピング」は、それらの標的抗原上の抗体の結合部位またはエピトープを同定する工程である。抗体エピトープは線状エピトープまたは立体配座エピトープであり得る。線状エピトープは、タンパク質中のアミノ酸の連続配列によって形成される。立体配座エピトープは、タンパク質配列において不連続であるが、タンパク質のその三次元構造への折り畳みの際に結合するアミノ酸から形成される。
【0110】
「ポリエピトープ特異性」とは、同じまたは異なる標的(複数可)上の2つ以上の異なるエピトープに特異的に結合する能力を指す。
【0111】
2つの抗体が同一または立体的に重複するエピトープを認識する場合、抗体は参照抗体と「本質的に同じエピトープ」に結合する。2つのエピトープが同一または立体的に重複するエピトープに結合するかを決定するために、最も広く使用されている迅速な方法は競合アッセイであり、それは標識抗原または標識抗体を使用してあらゆる形式で構成できる。通常、抗原は96ウェルプレートに固定化され、未標識抗体が標識抗体の結合を妨げる能力は放射性または酵素標識を用いて測定される。
【0112】
「治療」、「治療すること」などの用語は、本明細書では一般に、所望の薬理学的及び/または生理学的効果を得ることを意味するために使用される。その効果は、その疾患もしくは症状を、完全にもしくは部分的に予防するという観点において予防的であり得、及び/または疾患及び/またはその疾患に起因する副作用の部分的もしくは完全な治癒という観点において治療的であり得る。「治療」は、本明細書で使用されるとき、哺乳動物における疾患の任意の治療を包含し、(a)その疾患にかかりやすいが、まだそれを有すると診断されていない対象における発病を予防すること、(b)その疾患を阻害すること、すなわち、その発現を阻止すること、または(c)その疾患を軽減すること、すなわち、その疾患の退行を引き起こすことを含む。治療薬は、疾患または傷害の発症前、発症中または発症後に投与することができる。進行中の病気の治療、治療が患者の望ましくない臨床症状を安定化または軽減する場合、特に興味深い。そのような治療は、罹患組織における機能の完全な喪失の前に行われることが望ましい。本療法は、疾患の兆候段階の間、いくつかの場合には疾患の兆候段階の後に投与することができ得る。
【0113】
「治療有効量」は、対象に治療上の利益を与えるのに必要な活性剤の量を意味する。例えば、「治療有効量」は、病理学的症状を改善する、またはそうでなければ改善を引き起こす、疾患の進行、または疾患に関連する生理学的状態、もしくは抵抗性を改善することを誘発する量である。
【0114】
「対象」、「個体」、及び「患者」という用語は、本明細書では互換的に使用され、治療のために評価されている及び/または治療されている哺乳動物を指す。一実施形態では、哺乳動物はヒトである。「対象」、「個体」、及び「患者」という用語は、がんを有する個体、自己免疫疾患を有する個体、病原体感染を有する個体などを含むがこれらに限定されない。対象はヒトであり得るが、他の哺乳動物、特にヒトの疾患の実験室モデルとして有用なそれらの哺乳動物、例えばマウス、ラットなども含み得る。
【0115】
「CD3」という用語は、ヒトCD3タンパク質多重サブユニット複合体を指す。CD3タンパク質多重サブユニット複合体は、6つの別個のポリペプチド鎖からなる。これらは、CD3γ鎖(SwissProt P09693)、CD3δ鎖(SwissProt P04234)、2本のCD3ε鎖(SwissProt P07766)及び1本のCD3ζ鎖ホモ二量体(SwissProt 20963)を含むが、これは、T細胞受容体α及びβ鎖と会合している。特に記さない限り、「CD3」という用語には、任意のCD3変異体、アイソフォーム及び、細胞(T細胞を含む)によって天然に発現する、またはそれらのポリペプチドをコードする遺伝子もしくはcDNAをトランスフェクトした細胞の上に発現し得るその相同種が含まれる。
【0116】
「BCMA×CD3抗体」は多重特異性重鎖のみ抗体、例えば二重特異性重鎖のみ抗体であり、これは2つの異なる抗原結合領域を含んでおり、そのうちの1つが抗原BCMAに特異的に結合し、そのうちの1つがCD3に特異的に結合する。
【0117】
「医薬製剤」という用語は、活性成分の生物学的活性が有効となるのを可能にするような形態であり、かつ、製剤が投与されることになる対象に対して許容し難いほど毒性である成分をさらに含有していない、調製物を指す。そのような製剤は無菌である。「薬学的に許容される」賦形剤(ビヒクル、添加剤)とは、採用した活性成分の有効用量を提供するために対象哺乳動物に合理的に投与されることができるもののことである。
【0118】
「無菌」製剤は、滅菌されているかまたは、あらゆる生きている微生物及びそれらの胞子を含まないかもしくは本質的に含まない。「凍結」製剤は温度が0℃未満のものである。
【0119】
「安定な」製剤とは、貯蔵したときにその中のタンパク質がその物理的安定性及び/または化学的安定性及び/または生物学的活性を本質的に保持しているもののことである。好ましくは、製剤は、貯蔵したときにその物理的及び化学的安定性ならびにその生物学的活性を本質的に保持している。貯蔵期間は一般的に、製剤の意図した貯蔵寿命に基づいて選択される。当技術分野ではタンパク質安定性を測定するための様々な分析技術が利用可能であり、例えば、Peptide and Protein Drug Delivery,247-301.Vincent Lee Ed.,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,Pubs.(1991)、及びJones.A.Adv.Drug Delivery Rev.10:29-90)(1993)に総説されている。安定性は、選択された温度で、選択された期間にわたって測定され得る。安定性は、凝集物形成の評価(例えば、サイズ排除クロマトグラフィーを用いる、濁度を測定することによる、及び/または目視検査による);カチオン交換クロマトグラフィー、画像化キャピラリー等電点電気泳動(icIEF)またはキャピラリーゾーン電気泳動を用いて電荷不均一性を評価することによるもの;アミノ末端またはカルボキシ末端配列分析;質量分析;還元された抗体と完全な抗体とを比較するSDS-PAGE分析;ペプチドマップ(例えばトリプシンまたはLYS-Cによる)分析;抗体の生物学的活性または抗原結合機能を評価すること;などを含めた種々様々な方法で定性的及び/または定量的に評価され得る。不安定性には、凝集、脱アミド化(例えば、Asn脱アミド化)、酸化(例えば、Met酸化)、異性化(例えば、Asp異性化)、切取り/加水分解/断片化(例えば、ヒンジ領域断片化)、スクシンイミド形成、不対合システイン(複数可)、N末端伸張、C末端プロセシング、グリコシル化差異などのうちのいずれか1つ以上が伴い得る。
【0120】
II.詳細な説明
抗BCMA抗体
本発明は、ヒトBCMAに結合する密接に関連した重鎖のみ抗体のファミリーを提供す
る。このファミリーの抗体は、本明細書に定義され、図1に示される一組のCDR配列を含み、また、図2に示される配列番号16~50に提供される重鎖可変領域(VH)配列によって例示される。抗体のファミリーは、臨床的治療薬(複数可)としての有用性に寄与する多くの利点を提供する。抗体は、所望の結合親和性を有する特定の配列の選択を可能にする、ある範囲の結合親和性を有するメンバーを含む。
【0121】
適切な抗体は、開発及び治療的または他の使用のために本明細書に提供されるものから選択され得、二重特異性抗体もしくは三重特異性抗体、または例えば図5に示されるようなCAR-T構造の一部としての使用を含むがこれらに限定されない。
【0122】
候補タンパク質に対する親和性の決定は、Biacore測定などの当技術分野において公知の方法を使用して実施することができる。抗体ファミリーのメンバーは、約10-6~約10-11までのKdで、BCMAに対する親和性を有し得、限定されることなく、約10-6~約10-10まで、約10-6~約10-9まで、約10-6~約10-8まで、約10-8~約10-11まで、約10-8~約10-10まで、約10-8~約10-9まで、約10-9~約10-11まで、約10-9~約10-10まで、またはそれらの範囲内の任意の値を含む。親和性の選択は、調節のための生物学的評価、例えば、阻害、インビトロアッセイ、前臨床モデル、及び臨床試験を含むBCMA生物学的活性、ならびに潜在的な毒性の評価によって確認することができ得る。
【0123】
本明細書における抗体ファミリーのメンバーは、カニクイザルのBCMAタンパク質と交差反応性ではないが、所望ならばカニクイザルのBCMAタンパク質または他の任意の動物種のBCMAとの交差反応性を提供するように操作することができる。
【0124】
本明細書中のBCMA特異性抗体のファミリーは、ヒトVHフレームワーク中にCDR1、CDR2及びCDR3配列を含むVHドメインを含む。CDR配列は、一例として、配列番号16~50に記載の提供された例示的可変領域配列のCDR1、CDR2及びCDR3のそれぞれについて、アミノ酸残基26~35、53~59、及び98~117の前後の領域内に位置し得る。一般に配列の順序は同じままであるが、異なるフレームワーク配列が選択される場合、CDR配列は異なる位置であり得ることが当業者には理解されるであろう。
【0125】
本発明の抗BCMA抗体のCDR1、CDR2及びCDR3配列は、以下の構造式によって包含され得、ここでXは可変アミノ酸を示し、それは以下に示されるような特定のアミノ酸であり得る。
【0126】
CDR1
【0127】
G F T X1 X2 X3 X4 X5
【0128】
(式中、
【0129】
X1が、V、IまたはFであり、
【0130】
X2が、SまたはTであり、
【0131】
X3が、SまたはNであり、
【0132】
X4が、YまたはSであり、
【0133】
X5が、GまたはAである)。
【0134】
一実施形態では、X1はVまたはIであり、X2はSであり、X3はSであり、X4はYであり、X5はGである。別の実施形態では、CDR1は配列番号1~6の配列から選択される。さらに別の実施形態では、CDR1は配列番号1または配列番号2の配列を含む。さらなる実施形態では、CDR1は配列GFTVSSYG(配列番号1)を含む。
【0135】
CDR2
【0136】
I X6 G X7 X8 X9 X10 T
【0137】
(式中、
【0138】
X6が、RまたはSであり、
【0139】
X7が、SまたはDであり、
【0140】
X8が、D、GまたはSであり、
【0141】
X9が、GまたはDであり、
【0142】
X10が、S、TまたはNである)。
【0143】
一実施形態では、X6はDであり、X7はGである。別の実施形態では、X8はSである。さらに別の実施形態では、X9はGであり、X10はTである。さらなる実施形態では、X9はGであり、X10はSである。なおさらなる実施形態では、X9はGであり、X10はTである。別の実施形態では、CDR2は配列番号8~11の配列から選択される。さらに別の実施形態では、CDR2は配列番号8または配列番号9の配列を含む。特定の実施形態では、CDR2は配列IRGSDGST(配列番号8)を含む。
【0144】
CDR3
【0145】
A K Q G X11 N D G P F D X12
【0146】
(式中、
【0147】
X11が、GまたはEであり、
【0148】
X12が、YまたはHである)。
【0149】
一実施形態では、X11はGであり、X12はYである。別の実施形態では、X11はGであり、X12はHである。別の実施形態では、X11はEであり、X12はHである。さらなる実施形態では、X11はEであり、X12はYである。なおさらなる実施形態では、CDR3は配列番号12~15の配列から選択される。別の実施形態では、CDR3は配列番号12、14または15の配列を含む。さらに別の実施形態では、CDR3は配列AKQGENDGPFDH(配列番号14)を含む。
【0150】
代表的なCDR1、CDR2及びCDR3配列を図1に示す。
【0151】
一実施形態では、本発明の抗BCMA重鎖のみ抗体は、配列番号1のCDR1配列、配
列番号8のCDR2配列、及び配列番号12または配列番号14のCDR3配列を含む。
【0152】
別の実施形態では、本発明の抗BCMA重鎖のみ抗体は、配列番号2のCDR1配列、配列番号8または配列番号9のCDR2配列、及び配列番号12、13、14または15のCDR3配列を含む。
【0153】
さらなる実施形態では、本発明の抗BCMA重鎖のみ抗体は、配列番号1のCDR1配列、配列番号8のCDR2配列、及び配列番号14のCDR3配列を含む。
【0154】
さらなる実施形態では、本発明の抗BCMA抗体は、配列番号16~50(図2)の重鎖可変領域アミノ酸配列のいずれかを含む。
【0155】
なおさらなる実施形態では、本発明の抗BCMA重鎖のみ抗体は、配列番号34の重鎖可変領域配列を含む(抗体308902)。
【0156】
いくつかの実施形態では、本発明の抗BMA抗体のCDR配列は、配列番号1~15(図1)のうちのいずれか1つにおいてCDR1、CDR2及び/またはCDR3配列または組としてのCDR1、CDR2及びCDR3配列と比較して1つまたは2つのアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、上記アミノ酸置換(複数可)は、上に示した式と比較して、CDR1のアミノ酸位置4~6のうちの1つもしくは2つ、及び/またはCDR2のアミノ酸位置2、4~7のうちの1つもしくは2つ、及び/またはCDR3のアミノ酸位置5及び12のうちの1つもしくは2つである。いくつかの実施形態では、本明細書中の一本鎖のみの抗BCMA抗体は、図2に示す重鎖可変領域配列のいずれかとの少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、少なくとも95%の同一性、少なくとも98%の同一性または少なくとも99%の同一性を有する重鎖可変領域配列を含むことになる。
【0157】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗体または多重特異性抗体が提供され、それらは、三鎖二重特異性抗体を含むが、これらに限定されず、本明細書で論じられる構成のいずれかを有し得る。二重特異性抗体は、BCMA以外のタンパク質に特異的な抗体の少なくとも重鎖可変領域を含む。
【0158】
本発明のタンパク質が二重特異性抗体である場合、一方の結合部分はヒトBCMAに特異的であり、他方のアームは標的細胞、腫瘍関連抗原、標的抗原、例えばインテグリンなど、病原体抗原、チェックポイントタンパク質などに特異的であり得る。標的細胞は具体的には、以下に述べるような血液腫瘍、例えばB細胞腫瘍などのがん細胞を含む。
【0159】
一本鎖ポリペプチド、二本鎖ポリペプチド、三本鎖ポリペプチド、四本鎖ポリペプチド、及びそれら多数を含むがこれらに限定されず、様々な形式の二重特異性抗体が本発明の範囲内である。本明細書における二重特異性抗体は具体的には、形質細胞(PC)上及び多発性骨髄腫(MM)上に選択的に発現されるBCMAと、CD3とに結合する、T細胞二重特異性抗体(抗BCMA×抗CD3抗体)を含む。そのような抗体は、BCMAを運搬する細胞の強力なT細胞媒介殺傷を誘導し、以下に述べるように腫瘍、特に血液学的腫瘍、例えばB細胞腫瘍を治療するために使用され得る。
【0160】
CD3及びBCMAに対する二重特異性抗体は、例えば、WO2007117600、WO2009132058、WO2012066058、WO2012143498、WO2013072406、WO2013072415、及びWO2014122144、ならびにUS20170051068に記載されている。
【0161】
薬学的組成物
本発明の別の態様は、適切な薬学的に許容される担体と混合した本発明の1つ以上の抗体を含む薬学的組成物を提供することである。本明細書で使用される薬学的に許容される担体は、限定されないが、アジュバント、固体担体、水、緩衝剤、または治療成分を保持するために当技術分野で使用される他の担体、またはそれらの組み合わせを例示する。
【0162】
本発明に従って使用される抗体の薬学的組成物は、所望の純度を有するタンパク質を、凍結乾燥製剤または水溶液の形態などの、任意の薬学的に許容される担体、賦形剤または安定剤と混合することにより貯蔵用に調製される(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980)を参照)。許容される担体、賦形剤、または安定剤は、レシピエントに対し、用いられる投与量及び濃度で無毒であり、緩衝液(リン酸、クエン酸、及び他の有機酸など)、アスコルビン酸、及びメチオニンを含む酸化防止剤、保存剤(オクタデシルジメチルベンジル塩化アンモニウム、塩化ヘキサメトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、フェノール、ブチル、もしくはベンジルアルコール、アルキルパラベン(メチルもしくはプロピルパラベンなど)、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、3-ペンタノール、及びm-クレゾールなど)、低分子量(約10残基未満)ポリペプチド、タンパク質(血清アルブミン、ゼラチン、もしくは免疫グロブリンなど)、親水性ポリマー(ポリビニルピロリドンなど)、アミノ酸(グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、もしくはリジンなど)、単糖類、二糖類、及び他の炭水化物(グルコース、マンノース、もしくはデキストリンを含む)、キレート剤(EDTAなど)、糖類(スクロース、マンニトール、トレハロース、もしくはソルビトールなど)、塩形成対イオン(ナトリウムなど)、金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体)、及び/または非イオン性界面活性剤(TWEEN(商標)、PLURONICS(商標)、もしくはポリエチレングリコール(PEG)など)を含む。
【0163】
非経口投与のための薬学的組成物は好ましくは無菌であり、実質的に等張性であり、適正製造基準(GMP)条件下で製造される。薬学的組成物は、単位剤形(すなわち、単回投与のための投薬量)として提供され得る。製剤化は、選択される投与経路によって決まる。本発明の抗体は、静脈内注射もしくは輸注によって、または皮下に投与され得る。注射投与のためには、本発明の抗体を、好ましくは注射部位における不快感を軽減するために生理適合性緩衝液中に、水溶液として製剤化することができる。溶液は、上に述べたとおり担体、賦形剤または安定化剤を含有することができる。あるいは、抗体を、使用前に好適なビヒクル、例えば無菌の発熱原不含水で再調製するための凍結乾燥形態とすることができる。
【0164】
抗BCMA抗体製剤は、例えば、米国特許第9,034,324号に開示されている。同様の製剤を本発明のタンパク質に使用することができる。皮下用抗体製剤は例えばUS20160355591及びUS20160166689に記載されている。
【0165】
使用方法
本明細書の薬学的組成物は、BCMAの発現または過剰発現を特徴とするB細胞及び形質細胞悪性腫瘍ならびに自己免疫障害を含めたB細胞関連障害を治療するために使用することができる。
【0166】
そのようなB細胞関連障害には、B細胞、及び形質細胞の悪性腫瘍、ならびに自己免疫障害が含まれ、形質細胞腫、ホジキンリンパ腫、濾胞性リンパ腫、非切断型小細胞リンパ腫、風土性バーキットリンパ腫、散発性バーキットリンパ腫、辺縁帯リンパ腫、結節外粘膜関連リンパ組織リンパ腫、結節性単球様B細胞リンパ腫、脾リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、大細胞型リンパ腫、びまん性混合細胞型リンパ腫、免疫芽球性リンパ腫、原発性
縦隔B細胞リンパ腫、肺B細胞血管中心性リンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、不確定な悪性度のB細胞増殖、リンパ腫様肉芽腫症、移植後リンパ増殖性疾患、免疫調節障害、関節リウマチ、重症筋無力症、特発性血小板減少症紫斑病、抗リン脂質抗体症候群、シャーガス病、グレーブス病、ウェゲナー肉芽腫症、結節性多発動脈炎、シェーグレン症候群、尋常性天疱瘡、強皮症、多発性硬化症、抗リン脂質抗体症候群、ANCA関連血管炎、グッドパスチャー病、川崎病、自己免疫性溶血性貧血、及び急速に進行性の糸球体腎炎、重鎖病、原発性もしくは免疫細胞関連アミロイドーシス、またはモノクローナルガンマ症を含むが、限定されない。
【0167】
BCMAの発現を特徴とする形質細胞障害には多発性骨髄腫(MM)が含まれる。MMは、骨髄区画における異常な形質細胞のモノクローナル増殖及び蓄積を特徴とするB細胞悪性腫瘍である。MMに対する現在の治療は、しばしば寛解をもたらすが、ほぼ全ての患者は最終的に再発し死亡する。同種造血幹細胞移植の背景における骨髄腫細胞の免疫介在性除去の実質的な証拠があるが、しかしながら、このアプローチの毒性は高く、そして治癒する患者はほとんどいない。いくつかのモノクローナル抗体は、前臨床試験及び初期の臨床試験においてMMを治療するための見込みを示しているが、MMに対する任意のモノクローナル抗体療法の一貫した臨床効果は決定的には証明されていない。そのため、MMの免疫療法を含む新しい療法が非常に必要とされている(例えば、Carpenter et al.,Clin Cancer Res 2013,19(8):2048-2060を参照)。
【0168】
BCMAの増殖誘導リガンドAPRILによるその過剰発現または活性化は生体内でヒト多発性骨髄腫(MM)進行を促進することが知られている。BCMAは、マウスにおいてp53突然変異を内包する異種移植MM細胞の増殖を生体内で促進することも示されている。APRIL/BCMA経路の活性は、MM発病、及び腫瘍細胞とそれを支持する骨髄微小環境との間の双方向相互作用による薬物耐性において中心的役割を果たすため、BCMAは、MMの治療のための標的として識別されている。さらなる詳細については例えばYu-Tsu Tai et al.,Blood 2016;127(25):3225-3236を参照されたい。
【0169】
形質細胞が関与する、つまりBCMAが発現している別のB細胞障害は、狼瘡としても知られる全身性エリテマトーデス(SLE)である。SLEは全身性の自己免疫疾患であり、身体のあらゆる部分に影響を及ぼし、免疫系が身体自身の細胞及び組織を攻撃し、慢性的な炎症及び組織の損傷を引き起こす。それは、抗体-免疫複合体が、凝結してさらなる免疫応答を引き起こす、タイプIII過敏反応である(Inaki &Lee, Nat Rev Rheumatol 2010;6:326-337)。
【0170】
本発明の抗BCMA重鎖のみ抗体(UniAb)は、MM、SLE、及びBCMAの発現を特徴とする他のB細胞障害もしくは形質細胞障害、例えば上記に列挙したものを治療するための治療薬を開発するために使用することができる。特に、本発明の抗BCMA重鎖のみ抗体(UniAb)は、単独で、または他のMM治療剤との併用において、MMの治療剤の候補となる。
【0171】
一実施形態では、本明細書の抗体は、重鎖のみ抗BCMA抗体-CAR構造、すなわち、重鎖のみ抗BCMA抗体-CAR形質導入T細胞構造の形態であり得る。
【0172】
疾患の治療のための本発明の組成物の有効量は、投与手段、標的部位、患者の生理的状態、患者がヒトであるか動物であるか、投与される他の薬剤、及び処置が予防的なものであるか治療的なものであるかを含む多くの異なる要因によって変化する。通常、患者はヒトであるが、ヒト以外の哺乳動物、例えばイヌ、ネコ、ウマなどのコンパニオン動物、ウ
サギ、マウス、ラットなどの実験動物なども治療することができる。治療投与量は、安全性及び有効性を最適化するために滴定されることが可能である。
【0173】
投与量レベルは、当業者によって容易に決定されることが可能であり、必要に応じて、例えば、治療への対象の応答を変更するために必要とされる場合、変更されることが可能である。単一剤形を生成するために担体材料と組み合わせることが可能である活性成分の量は、治療する宿主及び特定の投与様式に応じて異なる。一般的に単位剤形は、約1mg~約500mgの間の活性成分を含む。
【0174】
いくつかの実施形態では、薬剤の治療投与量は、宿主の体重の、約0.0001~100mg/kg、及びより通常では0.01~5mg/kgの範囲であり得る。例えば、投与量は、1mg/kg体重もしくは10mg/kg体重、または1~10mg/kgの範囲内であり得る。例示的な治療計画は、2週間に1回または1ヶ月に1回または3~6ヶ月に1回の投与を伴う。本発明の治療実体は、通常、複数の機会に投与される。単回投与の際の間隔は、毎週、毎月または毎年であり得る。また間隔は、患者の治療実体の血中レベルを測定することによって指定される場合、不定期でもあり得る。あるいは、本発明の治療実体は、徐放性製剤として投与されることが可能であり、その場合、あまり頻繁な投与を必要としない。投与量及び頻度は、患者におけるポリペプチドの半減期によって変化する。
【0175】
典型的に、組成物は、液体溶液または懸濁液のいずれかの注射剤として調製され、また、注射前に液体ビヒクル中に溶解または懸濁するのに好適な固体形態も調製することができる。本明細書の薬学的組成物は、そのままで、または固形(例えば凍結乾燥)組成物を戻した後に、静脈内または皮下への投与に適する。調製物はまた、上記のように、増強されたアジュバント効果のために、リポソームもしくはポリラクチド、ポリグリコリド、またはコポリマーなどのマイクロ粒子中に乳化またはカプセル化され得る。Langer,Science 249:1527,1990及びHanes,Advanced Drug Delivery Reviews 28:97-119,1997。本発明の薬剤は、活性成分の持続放出またはパルス放出を可能にするような方法で処方することができる蓄積注射またはインプラント調製物の形態で投与することができ得る。薬学的組成物は、一般に、無菌であり、実質的に等張性であり、及び米国食品医薬品局の全ての適正製造基準(GMP)規制に完全に準拠して処方される。
【0176】
本明細書中に記載される抗体及び抗体構造の毒性は、細胞培養物または実験動物における標準的な薬学的手順によって、例えば、LD50(集団の50%に致命的な用量)またはLD100(集団の100%に致命的な用量)を決定することによって、決定され得る。毒性と治療効果との間の用量比が治療指数である。それらの細胞培養アッセイ及び動物実験から得られたデータは、ヒトに使用するのに毒性のない投与量範囲を処方するのに使用することができる。本明細書に記載の抗体の投与量は、好ましくは、毒性がほとんどまたは全くない有効用量を含む循環濃度の範囲内にある。投与量は、採用される剤形及び利用される投与経路に応じて、この範囲内で変動し得る。正確な処方、投与経路、及び投与量は、患者の状態を考慮して個々の医師によって選択され得る。
【0177】
投与用組成物は、一般に、薬学的に許容される担体、好ましくは水性担体に溶解した抗体または他の削摩剤を含むであろう。様々な水性担体、例えば緩衝食塩水などを使用することができる。それらの溶液は無菌であり、及び一般的に望ましくない物質を含まない。それらの組成物は、従来の周知の滅菌技術によって滅菌することができ得る。本発明の組成物は、生理的条件に近づけるために必要とされるような製薬学的に許容可能な補助物質(pH調整剤、緩衝剤及び毒性調整剤、例えば、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム及び乳酸ナトリウムなど)を含むことができ得る。これらの製
剤中の活性剤の濃度は広く変動し得、選択される特定の投与様式及び患者の必要性に従って主に体液量、粘度、体重などに基づいて選択されるであろう(例えば、Remington’s Pharmaceutical Science(15th ed.,1980)及びGoodman&Gillman,The Pharmacological Basis of Therapeutics(Hardman et al.,eds.,1996))。
【0178】
本発明の活性剤及びその製剤と、使用説明書とを含むキットも本発明の範囲内である。キットはさらに少なくとも1つの追加の試薬、例えば化学療法薬などを含むことができる。キットは、典型的に、キットの内容物の意図される使用を示すラベルを含む。ラベルという用語には、キット上にもしくはキットと共に供給される、または他の方法でキットに付随する、あらゆる書面または記録物が含まれる。
【0179】
ここで十分に説明されている本発明は、本発明の趣旨または範囲から逸脱することなく、様々な変更及び修正を行うことができることが当業者に明らかとなるであろう。
【実施例0180】
実施例1
重鎖のみ抗体を発現する遺伝子操作ラット
「ヒト-ラット」のIgH遺伝子座は、いくつかの部分に分けて構築され、組み立てられた。これには、ヒトJHの下流のラットC領域遺伝子の改変及び結合、ヒトVH6-D断片領域の上流付加が含まれた。その後、ヒトVH遺伝子の別々の集団を有する2つのBAC[BAC6及びBAC3]は、ヒトVH6、全てのD、全てのJH、及び修飾されたラットCγ2a/1/2b(ΔCH1)を含む、組み立てられ修飾された領域をコードするGeorgと呼ばれるBACと同時注入された。
【0181】
再配置されていない立体配置の人工重鎖免疫グロブリン遺伝子座を有するトランスジェニックラットを作製した。IgG2a(ΔC1)、IgG1(ΔC1)、IgG2b(ΔC1)遺伝子はC1断片を欠いていた。定常領域遺伝子IgE、IgA、及び3’エンハンサーが、Georg BACに含まれた。トランスジェニックラットのRT-PCR及び血清分析(ELISA)は、トランスジェニック免疫グロブリン遺伝子座の生産的な再配列及び血清中の様々なアイソタイプの重鎖のみ抗体の発現を明らかにした。トランスジェニックラットを、米国特許公開第2009/0098134 A1号に以前に記載された変異内因性重鎖及び軽鎖遺伝子座を有するラットと交雑させた。そのような動物の分析は、ラット免疫グロブリン重鎖及び軽鎖発現の不活性化、ならびにヒトV、D、及びJ遺伝子によってコードされる可変領域を有する重鎖抗体の高レベル発現を示した。トランスジェニックラットの免疫化は、抗原特異的重鎖抗体の高力価血清応答の生成をもたらした。ヒトVDJ領域を有する重鎖抗体を発現するそれらのトランスジェニックラットは、UniRatと呼ばれた。
【0182】
実施例2
免疫
BCMAの組換え細胞外ドメインによる免疫。
12匹のUniRat動物(6匹のHC27、6匹のHC28)を組換えヒトBCMAタンパク質で免疫した。Titermax/Alhydrogelアジュバントを用いて標準的なプロトコルに従って動物を免疫した。BCMAの組換え細胞外ドメインは、R&D Systemsから購入し、滅菌生理食塩水で希釈し、そしてアジュバントと組み合わせた。免疫原をTitermax及びAlhydrogelアジュバントと組み合わせた。Titermax中の免疫原による初回免疫(プライミング)を左右の脚に投与した。その後の追加免疫をAlhydrogelの存在下で行い、採取3日前に追加免疫をP
BS中の免疫原で行った。血清は、血清力価を決定するために最終採血時にラットから採取した。
【0183】
血清力価結果
単一の1:500血清力価希釈に対する結合活性は、真核細胞で産生されたhuBCMA+Fcタンパク質及びcynoBCMA+Fcタンパク質、ならびにそれぞれの大腸菌及び小麦胚芽由来の2つのヒトBCMAタンパク質に対してELISAにより試験される。さらに、血清試料を、2つの標的外タンパク質、HSA及びヒトIgG1に対して試験する。さらに、全ての動物からの血清をNCI-H929細胞(BCMA+、ラムダ-)への結合についてアッセイする。
【0184】
通常はNCI-H929細胞(BCMA+、ラムダ-)に対する血清反応性レベルに結果の有意な広がりが観察されるので、それらの結果の関連性は、動物のサブセットについて作成されたELISA結合データによって確認される。cynoBCMA+Fcタンパク質への結合についての陽性シグナルは、ヒト免疫原にも含まれる分子のECDまたはFc部分のいずれかへの結合を反映し得る。両方のアッセイ種類では、免疫化前にそれらの動物から採取した血清の分析は、免疫原または標的外タンパク質に対する反応性を示さなかった。
【0185】
実施例3
遺伝子構築、発現及び結合アッセイ
リンパ節細胞において高度に発現される重鎖のみ抗体をコードするcDNAを遺伝子構築のために選択し、発現ベクターにクローニングした。続いて、それらの重鎖配列を、UniAb重鎖のみ抗体(CH1欠失、軽鎖なし)としてHEK細胞に発現させた。
【0186】
本発明の抗BCMA重鎖のみ抗体の結合を試験するアッセイの結果を図3に示す。
【0187】
6つの抗体の上清を、標準的なELISAアッセイにおいてヒトBCMAへの結合について試験した。組換えBCMAタンパク質への結合は、Abcam(ab50089)から入手したヒトBCMA ECDを用いてELISAにより測定した。BCMA ECDタンパク質を2μg/mLの濃度で使用し、50ng/mLのUniAbを捕捉した。UniAbの結合は、ヤギ抗ヒトIgG HRP複合抗体(ThermoFisher 31413)を用いて検出した。全ての抗体を、0.05%Tween-20及び1%粉乳を含む1×TBSで希釈した。
【0188】
バキュロウイルスタンパク質抽出物(BVP)に対する標的外結合を、希釈剤のために1XのPBS及び1%の乾燥粉乳を使用する改変を加えて上記のようなELISAによって行った。BVP抽出物は、INSERM(Nantes,France)から得られた。バキュロウイルス粒子に対する結合(本発明者らによるアッセイではバックグラウンドの5倍超)は、ヒト及びサルにおける抗体の半減期の減少と相関しているヒト組織との低親和性相互作用を示唆していると考えられる(Hotzel et al.,mAbs 4:6,p753-760,2012)。
【0189】
ヒトIgG1の標的外結合を、ヒトIgG1kappaを捕捉するためのUniAbを用いたELISA、続いてヤギ抗ヒトkappaHRP複合抗体によるkappa鎖の検出によって評価した(Southern Biotech 2060-05)。
【0190】
6つの試験抗BCMA抗体の上清もまた、RPMI-8226細胞(BCMA+、ラムダ+)への結合についてフローサイトメトリーによって試験し、35個全ての抗BCMA抗体の上清もまた、H929細胞(BCMA+、ラムダ-)への結合について試験した。
図3中の最後の列はT細胞由来のホジキンリンパ腫(HDLM2)細胞に対する結合を示しているが、これは細胞表面にBCMAが発現しない。
【0191】
試料をEMD Millipore製のGuava easyCyte 8HT装置を用いてフローサイトメトリーにより測定し、guavaSoftを用いて分析した。結合抗体を、PEと複合したヤギ抗ヒトIgG F(ab’)2で検出した(Southern Biotech 2042-09)。全ての抗体を、1%BSAを含むPBSで希釈した。陽性染色は、ヒトIgG1アイソタイプ対照による染色と比較することによって決定した。NCI-H929及びRPMI-8226細胞株は、ヒトBCMAが発現しているヒト多発性骨髄腫株であるが、これは、アメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)から入手され、ATCCの推奨に従って培養されたものである。
【0192】
6つのUniAbをさらに、組換えタンパク質ELISA式アッセイにおいてAPRIL(リガンド)/BCMA(受容体)結合をブロッキングする能力について評価した。BCMAとAPRILとの受容体/リガンド相互作用のブロッキングを評価するために、組換えヒトBCMA(Sino Biological 10620-H03H)を直接プレートに塗布し、その後、各UniAbの一連の希釈物と共にインキュベートした。次に、HAタグ付き組換えAPRILタンパク質(RnD Systems 5860-AP-010)をBCMA/抗体複合体と共にインキュベートし、BCMAに対するAPRILの結合を、HRPと複合したニワトリ抗HA抗体(Abcam ab1190)を使用して検出した。RnD systemsの抗BCMA抗体(AF193)をBCMA/APRILブロッキングの陽性対照として使用した。
【0193】
図3中、第8列は、BCMAタンパク質に対するAprilリガンドタンパク質のブロッキングパーセントを示す。第9列は、細胞表面にBCMAが発現しているRPMI-8226細胞に対する細胞結合の平均蛍光強度を示す。第10列は、細胞表面にBCMAが発現しているNCI-H929細胞に対する細胞結合の平均蛍光強度を示す。第11列は、細胞表面にBCMAが発現しないHDLM2細胞に対する細胞結合の平均蛍光強度を示す。
【0194】
さらなる標的外結合アッセイを未処理バキュロウイルス粒子(BVP)に対して行ったが、試験したUniAbはどれも陽性結合を示さなかった。
【0195】
図4は、本質的にConcepcion,J,et al.,Comb Chem High Throughput Screen,12(8),791-800,2009に記載されているように、Octet QK384装置(Fortebio Inc.,Menlo Park,CA)を動態モードで使用してバイオレイヤー干渉法で測定した、1価及び2価形態の抗BCMA重鎖のみ抗体308902の結合親和性を示す。1価形態の結合親和性(Kd)は779pMであり、2価形態のKdは53pMであった。
【0196】
本発明の好ましい実施形態が、本明細書に示され、説明されたが、そのような実施形態が例としてのみ提供されることは、当業者には明らかであろう。ここで、当業者であれば、本発明から逸脱することなく多数の変化形、変更、及び置換に想到するであろう。本明細書に記載される本発明の実施形態に対する種々の代替手段が、本発明の実施において採用され得ることを理解されたい。以下の特許請求の範囲が本発明の範囲を定義し、特許請求の範囲内の方法及び構造ならびにそれらの等価物を包含することが意図される。
図1-1】
図1-2】
図2-1】
図2-2】
図3
図4
図5
【配列表】
2023071876000001.xml
【手続補正書】
【提出日】2023-03-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトB細胞成熟抗原(BCMA)に結合する重鎖のみ抗体であって、配列番号1CDR1配列、配列番号8のCDR2配列、及び配列番号14のCDR3配列を含む、重鎖可変領域を含む、前記重鎖のみ抗体。
【請求項2】
前記CDR1、CDR2及びCDR3配列がヒトフレームワーク中に存在する、請求項1に記載の重鎖のみ抗体。
【請求項3】
CH1配列の非存在下で重鎖定常領域配列をさらに含む、請求項1に記載の重鎖のみ抗体。
【請求項4】
配列番号34に少なくとも95%の配列同一性を有する重鎖可変領域を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の重鎖のみ抗体。
【請求項5】
配列番号34を含む重鎖可変領域配列を含む、請求項に記載の重鎖のみ抗体。
【請求項6】
ヒトB細胞成熟抗原(BCMA)に結合する重鎖のみ抗体であって、配列番号1のCDR1配列、配列番号8のCDR2配列、及び配列番号14のCDR3配列をヒトVHフレームワーク中に含む重鎖可変領域を含む、前記重鎖のみ抗体。
【請求項7】
CH1配列の非存在下で重鎖定常領域配列をさらに含む、請求項6に記載の重鎖のみ抗体。
【請求項8】
多重特異性である、請求項に記載の重鎖のみ抗体。
【請求項9】
二重特異性である、請求項に記載の重鎖のみ抗体。
【請求項10】
エフェクター細胞に対する結合親和性を有する、請求項に記載の重鎖のみ抗体。
【請求項11】
T細胞抗原に対する結合親和性を有する、請求項に記載の重鎖のみ抗体。
【請求項12】
CD3に対する結合親和性を有する、請求項11に記載の重鎖のみ抗体。
【請求項13】
請求項に記載の重鎖のみ抗体を含む、薬学的組成物。
【請求項14】
BCMAの発現を特徴とするB細胞障害を有する対象における当該障害の治療のための、 請求項に記載の抗体を含む組成物。
【請求項15】
前記B細胞障害が多発性骨髄腫である、請求項14に記載の組成物
【請求項16】
前記B細胞障害が全身性エリテマトーデスである、請求項14に記載の組成物