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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023071901
(43)【公開日】2023-05-23
(54)【発明の名称】キメラ分子およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20230516BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20230516BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20230516BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20230516BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230516BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20230516BHJP
   C07K 14/005 20060101ALI20230516BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20230516BHJP
   C07K 16/08 20060101ALI20230516BHJP
   C12N 15/33 20060101ALI20230516BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20230516BHJP
   A61P 31/16 20060101ALI20230516BHJP
   A61P 31/18 20060101ALI20230516BHJP
   A61K 39/39 20060101ALI20230516BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20230516BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20230516BHJP
   A61K 39/145 20060101ALI20230516BHJP
   A61K 39/155 20060101ALI20230516BHJP
   A61K 39/21 20060101ALI20230516BHJP
   A61K 39/215 20060101ALI20230516BHJP
   A61K 39/12 20060101ALI20230516BHJP
【FI】
C12N15/62 Z ZNA
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/02 C
C07K14/005
C07K19/00
C07K16/08
C12N15/33
A61P31/14
A61P31/16
A61P31/18
A61K39/39
A61K39/00 H
A61P37/04
A61K39/145
A61K39/155
A61K39/21
A61K39/215
A61K39/12
【審査請求】有
【請求項の数】65
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023034197
(22)【出願日】2023-03-07
(62)【分割の表示】P 2019553883の分割
【原出願日】2018-03-29
(31)【優先権主張番号】2017901152
(32)【優先日】2017-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(71)【出願人】
【識別番号】505167565
【氏名又は名称】ザ ユニバーシティー オブ クイーンズランド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(72)【発明者】
【氏名】チャペル,キース・ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】ワターソン,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ヤング,ポール・ロバート
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ウイルス膜融合タンパク質をベースとするキメラポリペプチドおよびその使用を提供する。
【解決手段】本発明は、ビリオン表面に露出した部分のウイルス融合タンパク質およびヘテロロガスな構造安定化部分を含むキメラポリペプチド、ならびにこれらのキメラポリペプチドの複合体を開示する。本発明は、組成物中におけるこれらの複合体の使用、ならびにエンベロープウイルスの融合タンパク質もしくはその融合タンパク質の複合体に対する免疫応答を惹起するための方法、および/またはエンベロープウイルス感染症を治療もしくは予防するための方法をも開示する。本発明はさらに、目的とするヘテロロガス分子をオリゴマー化するための、ヘテロロガス構造安定化部分の使用を開示する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それらの会合に適した条件下で(たとえば水溶液中で)相互に会合して逆平行、2-ヘリックスバンドルを形成する相補的な第1ヘプタッドリピート(HR1)および第2ヘプタッドリピート(HR2)領域を含むヘテロロガスな構造安定化部分に、作動可能な状態で下流において結合したエンベロープウイルス融合エクトドメインポリペプチドを含む、キメラポリペプチド。
【請求項2】
HR1およびHR2領域がエクトドメインポリペプチドに対する相補性を欠如し、したがってそれらはエクトドメインポリペプチドの構造要素とではなく優先的に相互に逆平行、2-ヘリックスバンドルを形成する、請求項1に記載のキメラポリペプチド。
【請求項3】
HR1およびHR2領域はそれぞれ独立して、(a-b-c-d-e-f-g-)または(d-e-f-g-a-b-c-)として表記されるn回反復7残基パターンのアミノ酸タイプを特徴とし、その際、パターン要素‘a’~‘g’はアミノ酸タイプが位置する一般的なヘプタッド位置を表わし、nは2に等しいかまたはそれより大きい数値であり、一般的なヘプタッド位置‘a’および‘d’の少なくとも50%(または少なくとも51%~少なくとも99%、およびその間のすべての整数パーセント)が疎水性アミノ酸タイプにより占有され、一般的なヘプタッド位置‘b’、‘c’、‘e’、‘f’および‘g’の少なくとも50%(または少なくとも51%~少なくとも99%、およびその間のすべての整数パーセント)が親水性アミノ酸タイプにより占有され、その結果生じる疎水性アミノ酸タイプと親水性アミノ酸タイプの分布によりヘプタッドリピート領域の同定が可能になる、請求項1または請求項2に記載のキメラポリペプチド。
【請求項4】
HR1およびHR2領域の一方または両方が、内在性クラスIエンベロープウイルス融合タンパク質ヘプタッドリピート領域アミノ酸配列を含み、それからなり、または本質的にそれからなる、請求項1~3のいずれか1項に記載のキメラポリペプチド。
【請求項5】
HR1およびHR2領域が、それぞれ1以上のクラスIエンベロープウイルス融合タンパク質の相補的な内在性ヘプタッドリピートA(HRA)およびヘプタッドリピートB(HRB)領域を含み、それからなり、または本質的にそれからなる、請求項4に記載のキメラポリペプチド。
【請求項6】
HRA領域アミノ酸配列とHRB領域アミノ酸配列が同一のクラスIエンベロープウイルス融合タンパク質に由来する、請求項5に記載のキメラポリペプチド。
【請求項7】
HRA領域アミノ酸配列とHRB領域アミノ酸配列が異なるクラスIエンベロープウイルス融合タンパク質に由来する、請求項5に記載のキメラポリペプチド。
【請求項8】
HR1およびHR2領域が独立して、オルソミキソウイルス、パラミキソウイルス、レトロウイルス、コロナウイルス、フィロウイルスおよびアレナウイルスにより発現される融合タンパク質のHRAおよびHRB領域から選択される、請求項1~7のいずれか1項に記載のキメラポリペプチド。
【請求項9】
構造安定化部分(たとえば、HR1およびHR2領域の一方または両方を含む)が、構造安定化部分に対する免疫応答の惹起を阻害する免疫サイレンシング部分を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載のキメラポリペプチド。
【請求項10】
免疫サイレンシング部分が、グリコシル化酵素(たとえば、グリコシルトランスフェラーゼ)により認識されてグリコシル化されるグリコシル化部位である、請求項9に記載の
キメラポリペプチド。
【請求項11】
構造安定化部分(たとえば、HR1およびHR2領域の一方または両方を含む)が、1以上の非天然アミノ酸を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載のキメラポリペプチド。
【請求項12】
1以上の非天然アミノ酸がポリエチレングリコールのカップリングを可能にする、請求項11に記載のキメラポリペプチド。
【請求項13】
1以上の非天然アミノ酸が免疫刺激部分のカップリングを可能にする、請求項11に記載のキメラポリペプチド。
【請求項14】
1以上の非天然アミノ酸が、脂質のカップリングを可能にする(たとえば、特に宿主免疫応答を刺激するために、キメラポリペプチドのエクトドメインをディスプレイする脂質ベシクルまたはウイルス様粒子の形成を容易にする)、請求項11に記載のキメラポリペプチド。
【請求項15】
エクトドメインポリペプチドがクラスIエンベロープウイルス融合タンパク質エクトドメインに対応する、請求項1~14のいずれか1項に記載のキメラポリペプチド。
【請求項16】
エクトドメインポリペプチドが内在性HRA領域および内在性HRB領域のうち一方または両方を含む、請求項15に記載のキメラポリペプチド。
【請求項17】
クラスI融合タンパク質が、オルソミキソウイルス、パラミキソウイルス、レトロウイルス、コロナウイルス、フィロウイルスおよびアレナウイルスから選択されるクラスIエンベロープ融合タンパク質ウイルスからのものである、請求項15または請求項16に記載のキメラポリペプチド。
【請求項18】
エクトドメインポリペプチドがクラスIIIエンベロープウイルス融合タンパク質エクトドメインに対応する、請求項1~14のいずれか1項に記載のキメラポリペプチド。
【請求項19】
クラスIII融合タンパク質が、ラブドウイルスおよびヘルペスウイルスから選択されるクラスIIIエンベロープ融合タンパク質ウイルスからのものである、請求項18に記載のキメラポリペプチド。
【請求項20】
エクトドメインポリペプチド(たとえば、クラスIまたはクラスIII)が前駆体エクトドメインポリペプチド全体またはその一部を含むか、あるいはそれからなる、請求項1~19のいずれか1項に記載のキメラポリペプチド。
【請求項21】
エクトドメインポリペプチドまたはその一部が、内在性シグナルペプチド、プロテアーゼ開裂部位、エクトドメインの内在性ヘッド部分、エクトドメインの内在性ステム部分、内在性ムチン様ドメイン、内在性膜近傍外部領域および内在性融合ペプチドのうちいずれか1以上を欠如する、請求項20に記載のキメラポリペプチド。
【請求項22】
エクトドメインポリペプチドをプロテアーゼによるタンパク質分解開裂に対してより低い感受性にするために、野生型または基準の融合タンパク質の1以上の内在性タンパク質分解開裂部位(たとえば、1以上のフーリン開裂部位)が変化または欠失している、請求項20または請求項21に記載のキメラポリペプチド。
【請求項23】
エクトドメインポリペプチドは、そのエクトドメインポリペプチドが対応する融合後形
態のエンベロープウイルス融合タンパク質には存在しない少なくとも1つの融合前エピトープを含む、請求項1~22のいずれか1項に記載のキメラポリペプチド。
【請求項24】
構造安定化部分のHR1領域とHR2領域がリンカーにより結合している、請求項1~23のいずれか1項に記載のキメラポリペプチド。
【請求項25】
リンカーが約1~約100のアミノ酸残基(およびそれらの間のすべての整数のアミノ酸残基)からなる、請求項24に記載のキメラポリペプチド。
【請求項26】
リンカーが約1~約50のアミノ酸残基(およびそれらの間のすべての整数のアミノ酸残基)からなる、請求項24に記載のキメラポリペプチド。
【請求項27】
リンカーが約50~約100のアミノ酸残基(およびそれらの間のすべての整数のアミノ酸残基)からなる、請求項24に記載のキメラポリペプチド。
【請求項28】
リンカーが、キメラポリペプチドの精製を容易にする精製部分、キメラポリペプチドに対する免疫応答を調節する免疫調節部分、細胞特異的部分、および構造柔軟性を付与する部分から選択される少なくとも1つの部分を含む、請求項24~27のいずれか1項に記載のキメラポリペプチド。
【請求項29】
それらの会合に適した条件下で(たとえば水溶液中で)相互に会合して逆平行、2-ヘリックスバンドルを形成する相補的な第1ヘプタッドリピート(HR1)および第2ヘプタッドリピート(HR2)領域を含むヘテロロガスな構造安定化部分に、作動可能な状態で下流において結合したタンパク性分子を含む、キメラポリペプチド。
【請求項30】
タンパク性分子が療法用ポリペプチドである、請求項29に記載のキメラポリペプチド。
【請求項31】
宿主細胞において作動可能である調節要素に作動可能な状態で連結した、請求項1~30のいずれか1項に記載のキメラポリペプチドに対するコーディング配列を含む、核酸構築体。
【請求項32】
請求項31に記載の核酸構築体を含む宿主細胞。
【請求項33】
宿主細胞が原核宿主細胞である、請求項32に記載の宿主細胞。
【請求項34】
宿主細胞が真核宿主細胞である、請求項33に記載の宿主細胞。
【請求項35】
キメラポリペプチド複合体を製造する方法であって、請求項1~30のいずれか1項に記載のキメラポリペプチドを、キメラポリペプチド複合体の形成に適した条件下で(たとえば水溶液中で)結合させ、それにより、3つのキメラポリペプチドサブユニットを含む、キメラポリペプチドのそれぞれの構造形成部分の2-ヘリックスバンドルのオリゴマー化により形成された6ヘリックスバンドルを特徴とするキメラポリペプチド複合体を製造する方法。
【請求項36】
請求項1~30のいずれか1項に記載のキメラポリペプチドサブユニットを3つ含み、キメラポリペプチドのそれぞれの構造形成部分の2-ヘリックスバンドルのオリゴマー化により形成された6ヘリックスバンドルを特徴とする、キメラポリペプチド複合体。
【請求項37】
キメラポリペプチドサブユニットがそれぞれエンベロープウイルス融合エクトドメイン
ポリペプチドを含み、複合体が融合後形態のエンベロープウイルス融合タンパク質またはその複合体には存在しない目的とするエンベロープウイルス融合タンパク質(たとえば、野生型エンベロープウイルス融合タンパク質)またはその複合体の少なくとも1つの融合前エピトープを含む、請求項36に記載の複合体。
【請求項38】
請求項1~30のいずれか1項に記載のキメラポリペプチド、または請求項36もしくは請求項37に記載のキメラポリペプチド複合体、および医薬的に許容できるキャリヤー、希釈剤またはアジュバントを含む、組成物。
【請求項39】
エンベロープウイルスの融合タンパク質またはその融合タンパク質の複合体と結合する薬剤(たとえば、小分子または高分子)を同定する方法であって、前記および本明細書の他のいずれかの箇所に概説的に記載したエクトドメインポリペプチドを含むキメラポリペプチドまたはキメラポリペプチド複合体と候補薬剤を接触させ、その際、エクトドメインポリペプチドはエンベロープウイルスの融合タンパク質に対応する;そしてキメラポリペプチドまたはキメラポリペプチド複合体への候補薬剤の結合を検出することを含む方法。
【請求項40】
さらに、候補薬剤を融合タンパク質またはその融合タンパク質の複合体と接触させ、そして融合タンパク質またはその複合体への候補薬剤の結合を検出することを含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
候補薬剤が化合物ライブラリー(たとえば、小分子または高分子のライブラリー)の一部である、請求項39または請求項40に記載の方法。
【請求項42】
さらに、候補薬剤をライブラリーから単離することを含む、請求項39~41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
候補薬剤がキメラポリペプチドまたはキメラポリペプチド複合体に特異的に結合する、請求項39~42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
候補薬剤が融合タンパク質またはその融合タンパク質の複合体に特異的に結合する、請求項39~42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
エンベロープウイルスの融合タンパク質またはその融合タンパク質の複合体と免疫相互作用性である抗原結合分子(たとえば、中和抗体などの抗体)を製造する方法であって、(1)動物を、請求項1~28のいずれか1項に記載のエクトドメインポリペプチドを含むキメラポリペプチド、または請求項36もしくは請求項37に記載のエクトドメインポリペプチドを含むキメラポリペプチド複合体、または請求項38に記載のそれの組成物で免疫化し、その際、エクトドメインポリペプチドはエンベロープウイルスの融合タンパク質に対応する;(2)融合タンパク質またはその複合体と免疫相互作用性であるB細胞をその動物から同定および/または単離する;そして(3)そのB細胞が発現した抗原結合分子を製造することを含む方法。
【請求項46】
請求項45に記載の方法により製造された抗原結合分子、またはその抗原結合分子と同じエピトープ結合特異性を備えた誘導体型の抗原結合分子。
【請求項47】
抗体フラグメント(たとえば、Fab、Fab’、F(ab’)、Fv)、一本鎖抗体(scFv)およびドメイン抗体(たとえば、サメおよびラクダ科動物の抗体を含む)、ならびに抗体を含む融合タンパク質、ならびに免疫グロブリン分子の抗原結合/認識部位を含む他のいずれかの修飾構造体から選択される、請求項46に記載の誘導体型の抗原結合分子。
【請求項48】
請求項46または請求項47に記載の抗原結合分子、および医薬的に許容できるキャリヤー、希釈剤またはアジュバントを含む、組成物。
【請求項49】
対象においてエンベロープウイルスの融合タンパク質またはその融合タンパク質の複合体に対する免疫応答を惹起する方法であって、前記請求項のいずれか1項に記載のエンベロープウイルス融合エクトドメイン含有キメラポリペプチド複合体または組成物を対象に投与し、その際、キメラポリペプチド複合体のエクトドメインポリペプチドサブユニットがエンベロープウイルスの融合タンパク質に対応することを含む方法。
【請求項50】
対象においてエンベロープウイルスの融合タンパク質またはその融合タンパク質の複合体に対する免疫応答を惹起する方法であって、前記請求項のいずれか1項に記載のエンベロープウイルス融合エクトドメイン含有キメラポリペプチド複合体または組成物を発現できるDNAワクチンまたはウイルスベクター/レプリコンを対象に投与し、その際、キメラポリペプチド複合体のエクトドメインポリペプチドサブユニットがエンベロープウイルスの融合タンパク質に対応することを含む方法。
【請求項51】
対象においてエンベロープウイルス感染症を治療または予防するための方法であって、有効量の前記請求項のいずれか1項に記載のエンベロープウイルス融合エクトドメイン含有キメラポリペプチド複合体、および/または請求項46もしくは請求項47に記載の抗原結合分子、および/または請求項48に記載の組成物を対象に投与することを含む方法。
【請求項52】
それらの会合に適した条件下で(たとえば水溶液中で)相互に会合して逆平行、2-ヘリックスバンドルを形成する相補的な第1ヘプタッドリピート(HR1)および第2ヘプタッドリピート(HR2)領域を含むヘテロロガスな構造安定化部分に、作動可能な状態で下流において結合したタンパク性分子を含む、キメラポリペプチド。
【請求項53】
キメラポリペプチド複合体を製造する方法であって、請求項52に記載のキメラポリペプチドを、キメラポリペプチド複合体の形成に適した条件下で(たとえば水溶液中で)結合させ、それにより、3つのキメラポリペプチドサブユニットを含み、キメラポリペプチドのそれぞれの構造形成部分の2-ヘリックスバンドルのオリゴマー化により形成された6ヘリックスバンドルを特徴とするキメラポリペプチド複合体を製造する方法。
【請求項54】
請求項52に記載のキメラポリペプチドサブユニットを3つ含み、キメラポリペプチドのそれぞれの構造形成部分の2-ヘリックスバンドルのオリゴマー化により形成された6ヘリックスバンドルを特徴とする、キメラポリペプチド複合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001] 本出願は、Australian Provisional Application No. 2017901152, タイトル
“キメラ分子およびその使用”, 2017年3月30日出願に基づく優先権を主張し、その内容
を全体として本明細書に援用する。
【0002】
[0002] 本発明は、一般にウイルス膜融合タンパク質に基づくキメラポリペプチドに関する。より具体的には、本発明はウイルス融合タンパク質のビリオン表面露出部分およびヘテロロガスな構造安定化部分を含むキメラポリペプチド、ならびにそれらのキメラポリペプチドの複合体に関する。本発明はまた、組成物中におけるこれらの複合体の使用、およびエンベロープウイルス融合タンパク質もしくはその融合タンパク質の複合体に対する免疫応答を惹起するための方法、および/またはエンベロープウイルス感染症を治療もしくは予防するための方法に関する。本発明はさらに、目的とするヘテロロガス分子をオリゴマー化するためのヘテロロガスな構造安定化部分の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003] エンベロープウイルス、たとえばヒト免疫不全ウイルス(HIV)、インフルエンザウイルスおよび呼吸器合包体ウイルス(呼吸系発疹ウイルス)(respiratory cyncytial virus)(RSV)は、宿主細胞に侵入して感染するためにはウイルス膜が宿主細胞膜と融合することを必要とする。ウイルス融合タンパク質は、準安定‘融合前’コンホメーションから高度安定‘融合後’コンホメーションへのエネルギー的に好ましい構造再構成を行なうことによってこのプロセスを容易にする。この構造変化がウイルス膜と宿主細胞膜の融合を駆動し、その結果、ウイルスゲノムが細胞内へ放出される。
【0004】
[0004] ウイルス融合タンパク質は現在、それらの個々の構造構築および融合プロセスを駆動する分子特徴に基づいて3クラスに分類されている。クラスIおよびクラスIIIの融合タンパク質は両方ともそれらの融合前および融合後の両方のコンホメーションにおいてトリマーであり、一方、クラスII融合タンパク質はそれらの融合前コンホメーションにおいてはダイマーであり、それが次いで再構成されてトリマーの融合後形態になる。ただし、これらの現在決定されているクラスと共通するある鍵となる特徴を共有する新たなクラスのウイルス融合タンパク質が将来同定される可能性はある。クラスIとクラスIIIの融合タンパク質は、N末端シグナル配列ならびにC末端膜貫通および細胞質ドメインを含めた実質的な構造特徴を共有する。それらは類似の融合メカニズムも共有し、最初の融合前トリマーが部分解離して、融合後トリマーを形成するために必要である重要な構造再構成を可能にする。
【0005】
[0005] ウイルス融合タンパク質は多くの医学的に重要なエンベロープウイルスに対する防御中和抗体応答の主要ターゲットであるので、それらは卓越したサブユニットワクチン候補である。しかし、自然感染に際して惹起された広域交差反応性である有効な中和抗体は融合後形態ではなく融合前形態と主に反応することを最近の証拠が示しているので、融合タンパク質固有の準安定性は有効なサブユニットワクチン設計に対する大きな障害である。さらに、ウイルスエンベロープ融合タンパク質の融合前形態は融合後形態には存在しないエピトープを含む(たとえば、Magro et al., 2012. Proc. Natl. Acad. Sci. USA109(8):3089-3094)。よって、ワクチンについては安定化した融合前形態が抗原としてより望ましいと一般に考えられる。しかし、これらのタンパク質を組換え発現させるための従来のアプローチは一般に、早期始動およびより構造的に安定な融合後形態へのコンホメーションシフトを生じる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Magro et al., 2012. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 109(8):3089-3094
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
[0006] したがって、エンベロープウイルスに対してより効果的な免疫応答を刺激するために実質的にそれらの融合前形態を維持する安定化した組換え融合タンパク質を製造する新規方法に対する緊急のニーズがある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[0007] 本発明は、融合タンパク質ビリオン表面露出ドメイン(本明細書中で“融合エクトドメインポリペプチド(fusion ectodomain polypeptide)”または“エクトドメイン
”とも呼ぶ)の下流に、相互に会合して逆平行、2-ヘリックスバンドルを形成する一対の相補的なヘプタッドリピート(heptad repeat)領域を含むヘテロロガス部分を作動可能
な状態で結合させることによって、ウイルス融合タンパク質の融合前コンホメーションを模倣できるという判断から得られたものである。この部分は、融合エクトドメインポリペプチドを安定化してそれが融合後コンホメーションに再構成するのを阻止する一種の‘分子クランプ(molecular clamp)’として作用する。本発明の分子クランプアプローチは、
それぞれインフルエンザ、RSV、HIV、麻疹ウイルスおよびエボラウイルスの融合前コンホメーションを模倣したキメラポリペプチドを製造するために用いられ、よってそれ自体が融合前コンホメーションのウイルスエンベロープ融合タンパク質のミメチックを製造するためのプラットフォームとなる。こうして製造したキメラポリペプチドは自己組織化して、キメラポリペプチドのオリゴマーを含む、したがって天然エンベロープウイルス融合タンパク質複合体の融合前コンホメーションを模倣した、人工エンベロープウイルス融合タンパク質複合体を形成することができる。この自己組織化により、特に組換え発現系における人工複合体の容易な製造が可能になる。本発明のキメラポリペプチドを用いて製造した人工複合体は、以下に記載するように、天然エンベロープウイルス融合タンパク質複合体に対する中和抗体の開発を含めて、免疫応答を刺激するための方法および組成物において有用である。
【0009】
[0008] したがって、本発明は、一側面において、それらの会合に適した条件下で(たとえば水溶液中で)相互に会合して逆平行、2-ヘリックスバンドルを形成する相補的な第1ヘプタッドリピート(HR1)および第2ヘプタッドリピート(HR2)領域を含むヘテロロガスな構造安定化部分に、作動可能な状態で下流において結合したエンベロープウイルス融合エクトドメインポリペプチドを含む、キメラポリペプチドを提供する。HR1およびHR2領域は一般にエクトドメインポリペプチドに対する相補性を欠如し、したがってそれらはエクトドメインポリペプチドの構造要素とではなく優先的に相互に逆平行、2-ヘリックスバンドルを形成する。ある態様において、HR1およびHR2領域はそれぞれ独立して、(a-b-c-d-e-f-g-)または(d-e-f-g-a-b-c-)として表記されるn回反復7残基パターンのアミノ酸タイプを特徴とし、その際、パターン要素‘a’~‘g’はアミノ酸タイプが位置する一般的なヘプタッド位置を表わし、nは2に等しいかまたはそれより大きい数値であり、一般的なヘプタッド位置‘a’および‘d’の少なくとも50%(または少なくとも51%~少なくとも99%、およびその間のすべての整数パーセント)が疎水性アミノ酸タイプにより占有され、一般的なヘプタッド位置‘b’、‘c’、‘e’、‘f’および‘g’の少なくとも50%(または少なくとも51%~少なくとも99%、およびその間のすべての整数パーセント)が親水性アミノ酸タイプにより占有され、その結果生じる疎水性アミノ酸タイプと親水性アミノ酸タイプの分布によりヘプタッドリピート領域の同定が可能になる。ある態様において、HR1およびHR2領域の一方または両方が、内在性クラスIエンベロープウイルス融合タンパク質ヘプタッドリピート領域アミノ酸配列を含み、それからなり、または本質的にそれからなる。このタイプの代表例において、HR1およびHR2領域は、それぞれ1以上のクラスIエンベロープウイルス融合タンパク質の相補的な内在性ヘプタッドリピートA(HRA)およびヘプタッドリピートB(HRB)領域を含み、それからなり、または本質的にそれからなる。ある態様において、HRA領域アミノ酸配列とHRB領域アミノ酸配列は同一のクラスIエンベロープウイルス融合タンパク質に由来する。他の態様において、HRA領域アミノ酸配列とHRB領域アミノ酸配列は異なるクラスIエンベロープウイルス融合タンパク質に由来する。代表例において、HR1およびHR2領域は独立して、オルソミキソウイルス、パラミキソウイルス、レトロウイルス、コロナウイルス、フィロウイルスおよびアレナウイルスにより発現される融合タンパク質のHRAおよびHRB領域から選択される。
【0010】
[0009] ある態様において、エクトドメインポリペプチドはクラスIエンベロープウイルス融合タンパク質エクトドメインに対応する。このタイプの代表例において、エクトドメインポリペプチドは内在性HRA領域および内在性HRB領域のうち一方または両方を含む。クラスI融合タンパク質を含む限定ではないエンベロープウイルスには、オルソミキソウイルス、パラミキソウイルス、レトロウイルス、コロナウイルス、フィロウイルスおよびアレナウイルスが含まれる。
【0011】
[0010] 他の態様において、エクトドメインポリペプチドはクラスIIIエンベロープウイルス融合タンパク質エクトドメインに対応する。クラスIII融合タンパク質を含む代表的なエンベロープウイルスには、ラブドウイルスおよびヘルペスウイルスが含まれる。
【0012】
[0011] エクトドメインポリペプチド(たとえば、クラスIまたはクラスIII)は前駆体エクトドメインポリペプチド全体またはその一部を含むか、あるいはそれからなることができる。ある態様において、エクトドメインポリペプチドは、内在性シグナルペプチド、エクトドメインの内在性ヘッド部分、エクトドメインの内在性ステム部分、内在性ムチン様ドメイン、内在性膜近傍外部領域(membrane proximal external region)および内
在性融合ペプチドのうちいずれか1以上を欠如する。エクトドメインポリペプチドは、適切には、そのエクトドメインポリペプチドが対応する融合後形態のエンベロープウイルス融合タンパク質には存在しない少なくとも1つの融合前エピトープを含む。
【0013】
[0012] ある態様において、構造安定化部分のHR1領域とHR2領域はリンカーにより結合し、それは一般に約1~約100のアミノ酸残基(およびそれらの間のすべての整数のアミノ酸残基)、一般に約1~約100のアミノ酸残基(およびそれらの間のすべての整数のアミノ酸残基)からなる。リンカーは、キメラポリペプチドの精製を容易にする精製部分、キメラポリペプチドに対する免疫応答を調節する免疫調節部分、キメラポリペプチドを特定の細胞タイプへ指向させるための細胞ターゲティング部分、および構造柔軟性を付与する部分から選択される少なくとも1つの部分を含むことができる。
【0014】
[0013] キメラポリペプチドは合成または組換え手段により製造することができる。キメラポリペプチドが組換えにより製造される態様において、本発明は、他の側面において、宿主細胞において作動可能である調節要素に作動可能な状態で連結した前記および本明細書の他のいずれかの箇所に概説的に記載したキメラポリペプチドに対するコーディング配列を含む、核酸構築体を提供する。
【0015】
[0014] 関連する側面において、本発明は、前記および本明細書の他のいずれかの箇所に広く記載した核酸構築体を含む宿主細胞を提供する。宿主細胞は原核宿主細胞または真
核宿主細胞であってよい。
【0016】
[0015] ヘテロロガスな構造安定化部分は、エクトドメインポリペプチドを融合後コンホメーションへの再構成に対抗して安定化する際におけるそれの有用性のほかに、目的とするいずれかのヘテロロガス分子をオリゴマー(特にトリマー)にオリゴマー化するのに有用である。したがって、他の側面において、本発明は、前記および本明細書の他のいずれかの箇所に概説的に記載したように、それらの会合に適した条件下で(たとえば水溶液中で)相互に会合して逆平行、2-ヘリックスバンドルを形成する相補的な第1ヘプタッドリピート(HR1)および第2ヘプタッドリピート(HR2)領域を含むヘテロロガスな構造安定化部分に、作動可能な状態で下流において結合したタンパク性分子を含む、キメラポリペプチドを提供する。
【0017】
[0016] 本発明のキメラポリペプチドは適切な条件下で(たとえば水溶液中で)自己組織化してキメラポリペプチド複合体を形成することができる。したがって、他の側面において、本発明はキメラポリペプチド複合体を製造する方法であって、下記を含む方法を提供する:前記および本明細書の他のいずれかの箇所に概説的に記載したキメラポリペプチドを、キメラポリペプチド複合体の形成に適した条件下で(たとえば水溶液中で)結合させ、それにより、3つのキメラポリペプチドサブユニットを含み、キメラポリペプチドのそれぞれの構造形成部分の2-ヘリックスバンドルのオリゴマー化により形成された6ヘリックスバンドルを特徴とする、キメラポリペプチド複合体を製造する。
【0018】
[0017] 関連する側面において、本発明は、前記および本明細書の他のいずれかの箇所に概説的に記載したキメラポリペプチドサブユニットを3つ含み、キメラポリペプチドのそれぞれの構造形成部分の2-ヘリックスバンドルのオリゴマー化により形成された6ヘリックスバンドルを特徴とする、キメラポリペプチド複合体を提供する。キメラポリペプチドがエンベロープウイルス融合エクトドメインポリペプチドを含むある態様において、キメラポリペプチドの自己組織化により形成されたキメラポリペプチド複合体は、融合後形態のエンベロープウイルス融合タンパク質またはその複合体には存在しない、目的とするエンベロープウイルス融合タンパク質(たとえば、野生型エンベロープウイルス融合タンパク質)またはその複合体の少なくとも1つの融合前エピトープを含む。
【0019】
[0018] 本発明は、他の関連する側面において、前記および本明細書の他のいずれかの箇所に概説的に記載したキメラポリペプチドまたはキメラポリペプチド複合体、および医薬的に許容できるキャリヤー、希釈剤またはアジュバントを含む、組成物を提供する。ある態様において、組成物は免疫調節組成物である。
【0020】
[0019] キメラポリペプチドがエンベロープウイルス融合エクトドメインを含むある態様において、本発明のキメラポリペプチド複合体は対象または産生動物においてエンベロープウイルスの融合タンパク質またはその融合タンパク質の複合体に対する免疫応答を惹起するために有用である。したがって、本発明の他の側面は、対象においてエンベロープウイルスの融合タンパク質またはその融合タンパク質の複合体に対する免疫応答を惹起する方法であって、前記および本明細書の他のいずれかの箇所に概説的に記載したキメラポリペプチド複合体または組成物を対象に投与し、その際、キメラポリペプチド複合体のエクトドメインポリペプチドサブユニットがエンベロープウイルスの融合タンパク質に対応することを含む方法を提供する。
【0021】
[0020] 関連する側面において、本発明は、エンベロープウイルスの融合タンパク質またはその融合タンパク質の複合体と結合する薬剤(たとえば、小分子または高分子)を同定する方法であって、下記を含む方法を提供する:前記および本明細書の他のいずれかの箇所に概説的に記載したエクトドメインポリペプチドを含むキメラポリペプチドまたはキ
メラポリペプチド複合体と候補薬剤を接触させ、その際、エクトドメインポリペプチドはエンベロープウイルスの融合タンパク質に対応する;そしてキメラポリペプチドまたはキメラポリペプチド複合体への候補薬剤の結合を検出する。特定の態様において、本発明はさらに、候補薬剤を融合タンパク質またはその融合タンパク質の複合体と接触させ、そして融合タンパク質またはその複合体への候補薬剤の結合を検出することを含む。特定の態様において、候補薬剤は化合物ライブラリー(たとえば、小分子または高分子のライブラリー)の一部である。これらの態様のうちあるものにおいて、その方法はさらに、候補薬剤をライブラリーから単離することを含む。適切には、候補薬剤はキメラポリペプチドまたはキメラポリペプチド複合体に、好ましくは融合タンパク質またはその融合タンパク質の複合体に、特異的に結合する。
【0022】
[0021] 他の関連する側面において、本発明は、エンベロープウイルスの融合タンパク質またはその融合タンパク質の複合体と免疫相互作用性である抗原結合分子(たとえば、中和抗体などの抗体)を製造する方法であって、下記を含む方法を提供する:(1)動物を、前記および本明細書の他のいずれかの箇所に概説的に記載したエクトドメインポリペプチドを含むキメラポリペプチド、またはキメラポリペプチド複合体、または組成物で免疫化し、その際、エクトドメインポリペプチドはエンベロープウイルスの融合タンパク質に対応する;(2)融合タンパク質またはその複合体と免疫相互作用性であるB細胞をその動物から同定および/または単離する;そして(3)そのB細胞が発現した抗原結合分子を製造する。
【0023】
[0022] 本発明のさらなる側面として、前記および本明細書の他のいずれかの箇所に概説的に記載した免疫化方法により製造された抗原結合分子、またはその抗原結合分子と同じエピトープ結合特異性を備えた誘導体型の抗原結合分子をも提供する。誘導体型の抗原結合分子は、抗体フラグメント(たとえば、Fab、Fab’、F(ab’)、Fv)、一本鎖抗体(scFv)およびドメイン抗体(たとえば、サメおよびラクダ科動物の抗体を含む)、ならびに抗体を含む融合タンパク質、ならびに抗原結合/認識部位を含む免疫グロブリン分子の他のいずれかの修飾構造体から選択できる。
【0024】
[0023] 関連する側面において、本発明は、前記および本明細書の他のいずれかの箇所に概説的に記載した抗原結合分子、および医薬的に許容できるキャリヤー、希釈剤またはアジュバントを含む、組成物を提供する。
【0025】
[0024] 前記および本明細書の他のいずれかの箇所に概説的に記載した本発明のエンベロープウイルス融合エクトドメイン含有キメラポリペプチドまたはその複合体、ならびに組成物および抗原結合分子は、エンベロープウイルス感染症を治療または予防するためにも有用である。したがって、さらに他の側面において、本発明は、対象においてエンベロープウイルス感染症を治療または予防するための方法であって、有効量の前記および本明細書の他のいずれかの箇所に概説的に記載したエンベロープウイルス融合エクトドメイン含有キメラポリペプチドもしくはその複合体、組成物または抗原結合分子を対象に投与することを含む方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】[0025] 図1は、コンホメーション特異的モノクローナル抗体とのELISA RSV F反応性を示すグラフである。A.融合前特異的モノクローナル抗体D25(Zhao et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 2000. 97(26): 14172-7)は、キメラクランプ安定化したRSV Fに23.4±12.5nMの親和性で結合するが、対応する非安定化FエクトドメインであるF solには結合しない。B.融合前特異的モノクローナル抗体D25は、キメラクランプ安定化したRSV F DS cav変異体および対照のキメラfoldon安定化したRSV Fに同等の親和性(それぞれ、1.2±0.2nMおよび1.3±0.2nM)で結合するが、対応する非安定化FエクトドメインであるF solには結合しない。C.広域交差中和性の融合前特異的モノクローナル抗体MPE8(Corti et al., Nature 2013. 501(7467): 439-43)はキメラクランプ安定化したRSV F DS cav変異体および対照のキメラfoldon安定化したRSV Fに同等の親和性(それぞれ、7.6±1.5nMおよび10.8±2.4nM)で結合するが、対応する非安定化FエクトドメインであるF solには結合しない。
図2】[0026] 図2は、コンホメーション特異的モノクローナル抗体とのELISAインフルエンザH3反応性を示すグラフである。A.ヘッド(head)特異的抗体C05(Ekiert et al., Nature 2012. 489(7417): 526-32)は、H3sol、H3クランプおよびQIVに同様に結合する;しかし、融合前ステム(stem)特異的モノクローナル抗体CR8043(Friesen, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 2014. 111(1): 445-50)はキメラクランプ安定化インフルエンザHAに3.3±0.8nMの親和性で結合するが、対応するHAエクトドメインまたは市販のQIVには結合しない。
図3】[0027] 図3は、オリゴマー状態のタンパク質のサイズ排除クロマトグラフィー分離を示すグラフである。キメラクランプ安定化したインフルエンザHAは、それがSuperdex 200 Increase 10/300 GLカラムからおおよそ11mLで溶出することにより分かるように、可溶性トリマーとして存在する。比較すると、単離に際して発現した対応するHAエクトドメインは、凝集体として存在するタンパク質の部分およびモノマーとしての他の部分に一致するおおよそ8mLおよび12mLでカラムから溶出する。インフルエンザHAの融合後形態は融合ペプチドの曝露により解離してモノマー形または凝集体になる可能性があることが以前に示されている(Weldon et al., PLoS One 2010. 5(9))。市販のQIVは、高分子量凝集体であることを示す8mLで溶出した。
図4】[0028] 図4は、ワクチン接種に際して生じる中和免疫応答を示すグラフである。市販(QIV)ワクチンを接種したマウスからの血清は、インフルエンザA/Hebei Baoding Anguo/51/2010(H3N2)に対しておおまかなIC50値180で中和を示した。これと比較して、キメラクランプ安定化したインフルエンザHAはIC50値1:14,000(95%CI 11,000~17,000)で大幅に増大したレベルのウイルス中和活性を示し、一方、対応するHAエクトドメインを接種したマウスからの血清は、最高の試験用量1:20ですら中和活性を示さなかった。H3sol、QIVとのプレインキュベーションはH3N2中和に影響を及ぼさなかったが、H3クランプとのプレインキュベーションはH3N2中和を移動させた。
図5】[0029] 図5は、誘導免疫応答のサブドメイン特異性を示すグラフである。H3sol、H3クランプまたは市販ワクチン(QIV)を接種したマウスからの血清は、H3のヘッドおよびステムサブドメインとの示差反応性を示した。キメラクランプ安定化したインフルエンザHAを接種したマウスからの血清はステムドメインに対して最大の反応性を示し(総H3特異的応答の約25%)、一方、H3solおよびQIVで免疫化したマウスからの血清はこのパーセントがはるかに低かった(それぞれ、1%および4%)。
図6】[0030] 図6は、H5交差反応性を示すグラフである。ELISAを用いてH5との反応性を測定した。バックグラウンド+3標準偏差より大きい反応性を生じる最大希釈度としてエンドポイント力価を計算した。H3sol、H3クランプ、市販ワクチン(QIV)、H1クランプおよびH5クランプを接種したマウスからの血清は、H5との示差反応性を示した。H3クランプまたはH1クランプを接種したマウスからの血清は、QIVよりはるかに大きいH5との交差反応性を示した(それぞれ、27倍の増大および81倍の増大)。
図7】[0031] 図7は、H5交差反応性に関与するサブドメインを示すグラフである。ELISAを用いてH5との反応性を測定した。バックグラウンド+3標準偏差より大きい反応性を生じる最大希釈度としてエンドポイント力価を計算した。マウス血清についての総H5反応性を示す(灰色の棒)。ELISA前にステム特異的抗体を前吸収するためにH3ステムと血清のプレインキュベーションを採用し(白色の棒)、あるいはステム特異的抗体に打ち勝つためにモノクローナル抗体FI6v3を添加した(黒色の棒)。
図8】[0032] 図8は、可溶性トリマークランプ安定化したMERSスパイクタンパク質の精製を示すグラフである。A.発現後にCHO上清から精製したクランプ安定化MERSスパイクのSDS-PAGE。おおよそ200kDAにおけるタンパク質バンドは、会合グリカンを含む生成モノマーMERSタンパク質に適正なおおよそのサイズであり、CHO上清からの対照精製には見られない。B.Superdex 6 10/300 GLカラムにおけるクランプ安定化MERSスパイクタンパク質のサイズ排除クロマトグラフィー。12.5mlにおける主要タンパク質の溶出は、グリカン会合を含む凝集していないトリマーMERSタンパク質について適正なサイズであるおおよそ600kDAの指標となる。
図9】[0033] 図9は、CHO上清からの、クランプ安定化したムチン様ドメインを欠如するエボラGPタンパク質の精製を示すグラフである。DTTなしのSDS-PAGE分析はおおよそ100kDAにタンパク質バンドを示し、それは会合グリカンを含む生成エボラGPタンパク質(天然ジスルフィド橋により連結したGP1およびGP2)に適正なサイズにある。DTTを用いるSDS-PAGE分析はおおよそ60kDAおよび30kDaに2つのタンパク質バンドを示し、それらは会合グリカンを含むフーリン(furin)開裂したエボラGPタンパク質に適正なサイズである。
図10】[0034] 図10は、高度中和モノクローナル抗体とのELISAエボラGPクランプ(ムチン様ドメインを欠如)反応性を示すグラフである。モノクローナル抗体Kz52、1H3、2G4、4G7および13C6(Murin et al., PNAS. 2014 11(48): 17182-7)はすべて高度の親和性でエボラGPクランプ(ムチン様ドメインを欠如)と結合する。
図11】[0035] 図11は、エボラGPクランプ(ムチン様ドメインを欠如)の熱安定性を示すグラフである。精製したエボラGPクランプ(ムチン様ドメインを欠如)をELISAプレートに結合させ、30%スクロースの存在下で乾燥させた。高度中和モノクローナル抗体Kz52、4G7および13C6(Murin et al., PNAS. 2014 11(48): 17182-7)との反応性を、直ちに、または37℃で14日間のインキュベーション後に測定した。反応性に有意の変化は見られず、それはクランプ安定化したタンパク質が高温で長期間安定であることを示す。
図12】[0036] 図12は、BALB/Cマウスの免疫化後のエボラGPクランプ(ムチン様ドメインを欠如)に対する免疫応答を示すグラフである。5匹3グループのマウスを1μgのエボラGPクランプ(ムチン様ドメインを欠如)、1μgのエボラGPクランプ(ムチン様ドメインを欠如)+3ugのサポニンアジュバントQuil A、または陰性対照としてのPBSのいずれかで皮内免疫化した。マウスを0、28および56日目に3回免疫化し、27日目(採血(bleed)1)、55日目(採血2)および84日目(採血3)に血液を採集した。A.血清中のエボラGPクランプ(ムチン様ドメインを欠如)に対して特異的な抗体をELISAにより定量した。B.バックグラウンド+3標準偏差を超える読みを生じることができる最終希釈度を計算することにより、エンドポイント力価を計算した。
図13】[0037] 図13は、生エボラウイルス ザイール株を中和するためにBALB/Cマウスを免疫化した後の、エボラGPクランプ(ムチン様ドメインを欠如)に対する免疫応答能を表わすグラフである。1μgのエボラGPクランプ(ムチン様ドメインを欠如)+3μgのサポニンアジュバントQuil Aで免疫化したマウスからの血清は、生エボラウイルスを中和することができた。プラーク形成単位の50%低下を生じる幾何平均力価は52.8(95%CI 24.5~114.0)と計算された。
図14】[0038] 図14は、N-連結したグリコシル化部位の挿入によるクランプドメインの免疫サイレンシングを示すグラフである。エボラGPクランプ(ムチン様ドメインを欠如)において、HIV GP160ベースのSSMに基づくクランプ配列のHRB内に4つの別個の変異を作製した。キメラクランプ安定化したインフルエンザHAで免疫化したマウスからの血清の反応性を、これと同一のクランプ配列または4つの潜在部位のうちの1つにグリコシル化を組み込んだクランプ配列のいずれかで安定化したエボラGPクランプ(ムチン様ドメインを欠如)に対比して試験した。それぞれの個々の部位におけるグリコシル化によって反応性が有意に低下し、これはこの方法をクランプドメインに対する反応性の低下のために使用できるという仮説を支持する。変異クランプ配列を組み込んだエボラGP(ムチン様ドメインを欠如)の適性なフォールディングは、Kz52親和性を測定することにより確認された。
図15】[0039] 図15は、クランプ安定化した8種類のウイルスに由来する精製抗原のSDS-PAGEを示す写真である。橙色の矢印により表示したバンドは非開裂生成物を示し、黄色の矢印は開裂生成物を示す。抗原の予想分子量は以下のとおりである:インフルエンザHAクランプ=約85kDa、RSV Fクランプ=約65kDa、エボラGPクランプ=約72kDa、ニパ(Nipah)Fクランプ 約64、MERS Sクランプ 約200kDA、ラッサ(Lassa)GPCクランプ=約75kDA、麻疹(Measles)=約65kDaおよびHSV2-Gbクランプ=約100kDa。
図16】[0040] 図16は、インフルエンザウイルスH1N1pdmで攻撃した後のマウス防御試験の結果を示すグラフである:(A/B)マウス(n=5)に株Cal/09(H1N1pdm)由来のH1sol、H1foldonまたはH1クランプのいずれかを接種し、次いで適合するインフルエンザ株で攻撃した。(C/D)マウスにスイス株/13(H3N2)由来のH3sol、H3foldonまたはH3クランプのいずれかを接種し、次いで派生株(divergent strain)Cal/09(H1N1pdm)で攻撃した。
図17】[0041] 図17は、43℃で72時間におけるクランプ安定化抗原の熱安定性を示すグラフである。クランプ安定化したワクチン候補および対照タンパク質を43℃で72時間インキュベートし、各抗原についての十分に特性解明された3種類のmAbとの反応性を熱安定性の尺度として用いた。A.融合前特異的mAbであるD25、AM22およびMPE8を用いて、RSV Fクランプと、foldonトリマー化ドメインおよび構造ベースの安定化変異を用いる別法(McLellan et al., Science, 2013. 342(6158): p. 592-8)とを比較した。B.HAステム特異的mAbであるFI6V3およびCR6261、ならびにHAヘッド特異的mAbである5J8を用いて、インフルエンザH1クランプとfoldonトリマー化ドメインを用いる別法とを比較した。
図18】[0042] 図18は、クランプ安定化したサブユニットワクチンに対する免疫応答を示すグラフである。RSV Fクランプ、FsolまたはFdscav foldon(McLellan et al., Science, 2013. 342(6158):592-598)で免疫化したマウスからの血清を、それがRSVを中和する能力について試験した。
図19】[0043] 図19は、分子クランプの組込みがトリマー状融合前コンホメーションの安定化を容易にすることを示すグラフおよび写真である。クランプ安定化ニパウイルス融合糖タンパク質を、サイズ排除クロマトグラフィーにより分析した。superdex 200カラムにおける溶出体積は、可溶性トリマータンパク質の予想分子量と相関する。ネガティブ染色した電子顕微鏡検査(挿入写真)により、均一な融合前タンパク質コンホメーションの存在が確認される。
図20】[0044] 図20は、クランプ安定化したサブユニットワクチンに対する免疫応答を示すグラフである。ニパFクランプで免疫化したマウスからの血清を、それらがニパウイルスを中和する能力について試験した。すべてのパネルにおいて、示した数値は個々のマウスの幾何平均であり、誤差バーは幾何学的標準偏差を示す。
図21】[0045] 図21は、分子クランプの組込みがクラス3ウイルス融合タンパク質のトリマー構造の安定化を容易にすることを示すグラフおよび写真である。クランプ安定化したHSV2融合-糖タンパク質B(gB)を、サイズ排除クロマトグラフィーにより分析した。superose 6カラムにおける溶出体積は、可溶性トリマータンパク質の予想分子量と相関する。ネガティブ染色した電子顕微鏡検査(挿入写真)により、公開された構造(Heldwein et al., Science, 2006. 313(5784): 217-20)に類似する均一なトリマーコンホメーションの存在が確認される。このコンホメーションは大部分の中和抗体に結合することが示されている(Cairns et al., JVi, 2014. 88(5): 2677-2689)。
【発明を実施するための形態】
【0027】
1.定義
[0046] 別に定義しない限り、本明細書中で用いるすべての技術用語および科学用語は本発明が属する技術分野の当業者が一般的に理解しているものと同じ意味をもつ。本明細書に記載のものと類似するかまたは均等であるいかなる方法および材料も本発明の実施または試験に使用できるが、好ましい方法および材料を記載する。本発明の目的のために、以下の用語を下記のとおり定義する。
【0028】
[0047] 冠詞“a”および“an”は、本明細書中で1または1より多い(すなわち、少
なくとも1)の目的語を表わすために用いられる。たとえば、“an element(要素)”は1つの要素または1より多い要素を意味する。
【0029】
[0048] 本明細書中で用いる“および/または”は、1以上の付随する列記した項目のありとあらゆる可能な組合わせ、ならびに選択語(または)において解釈した場合は組合わせの欠如を表わし、かつ包含する。
【0030】
[0049] さらに、本明細書中で用いる用語“約(about)”および“おおよそ(approximate)”は、計数可能な数値、たとえば量、用量、時間、温度、活性、レベル、数、頻度、パーセント、寸法、サイズ、量、重量、位置、長さなどを表わす場合、その特定した量、用量、時間、温度、活性、レベル、数、頻度、パーセント、寸法、サイズ、量、重量、位置、長さの±15%,±10%,±5%,±1%,±0.5%、またはさらには±0.1%の変動を包含するものとする。用語“約”および“おおよそ”を基準ポリペプチド内における領域の位置または配置との関連で用いる場合、これらの用語は±最大20のアミノ酸残基、±最大15のアミノ酸残基、±最大10のアミノ酸残基、±最大5のアミノ酸残基、±最大4のアミノ酸残基、±最大3のアミノ酸残基、±最大2のアミノ酸残基、またはさらには±1のアミノ酸残基の変動を包含する。
【0031】
[0050] 本明細書中で用いる用語“アジュバント”は、組成物中で特定の免疫原(たとえば、本発明のキメラポリペプチドまたは複合体)と組み合わせて用いる場合、抗体および細胞性免疫応答のうちのいずれかまたは両方の特異性を強化または広域化することを含めて、生じる免疫応答を補助する化合物を表わす。
【0032】
[0051] 用語“剤(agent)”は、化合物または物質、たとえば(ただし、それらに限定
されない)小分子、核酸、ポリペプチド、ペプチド、薬物、イオンなどを表わすために本明細書中で“化合物”と互換性をもって用いられる。“剤”はいずれかの化学物質、物質または部分であってもよく、それには限定ではなく合成および天然のタンパク性および非タンパク性の物質が含まれる。ある態様において、剤は核酸、核酸アナログ、タンパク質、抗体、ペプチド、アプタマー、核酸のオリゴマー、アミノ酸、または炭水化物であり、それには限定ではなくタンパク質、オリゴヌクレオチド、リボザイム、DNAzyme、糖タンパク質、siRNA、リポタンパク質、アプタマー、ならびにその修飾体および組合わせなどが含まれる。ある態様において、核酸はDNAまたはRNA、および核酸アナログであり、たとえばPNA、pcPNAおよびLNAであってもよい。核酸は一本鎖または二本鎖であってよく、目的とするタンパク質をコードする核酸、オリゴヌクレオチド、PNAなどを含む群から選択できる。そのような核酸配列にはたとえば下記のものが含まれるが、それらに限定されない:転写リプレッサーとして作用するタンパク質をコードする核酸配列、アンチセンス分子、リボザイム、小型の阻害性核酸配列、たとえば(ただし、それらに限定されない)RNAi、shRNAi、siRNA、マイクロRNAi(mRNAi)、アンチセンスオリゴヌクレオチドなど。タンパク質および/またはペプチド剤、あるいはそのフラグメントは、目的とするいかなるタンパク質であってもよい;たとえば(ただし、それらに限定されない)変異タンパク質;療法用タンパク質;トランケート型タンパク質(そのタンパク質は普通は細胞中に存在しないかあるいはより低いレベルで発現する)。目的とするタンパク質は下記のものを含む群から選択できる:変異タンパク質、遺伝子工学的に操作したタンパク質、ペプチド、合成ペプチド、組換えタンパク質、キメラタンパク質、抗体、ヒト化タンパク質、ヒト化抗体、キメラ抗体、修飾タンパク質、およびそのフラグメント。
【0033】
[0052] 本明細書中で用いる用語“抗原(antigen)”およびそれの文法上の同等表現(
たとえば、“抗原性(antigenic)”)は、特異的な体液性または細胞性免疫の生成物、た
とえば抗体分子またはT細胞受容体が、特異的に結合できる化合物、組成物、または物質を表わす。抗原は、たとえばハプテン、単純な中間代謝産物、糖類(たとえば、オリゴ糖)、脂質、およびホルモン、ならびに高分子、たとえば複雑な炭水化物(たとえば、多糖)、リン脂質、およびタンパク質を含めたいかなるタイプの分子であってもよい。抗原の一般的カテゴリーには下記のものが含まれるが、それらに限定されない:ウイルス性抗原、細菌性抗原、真菌性抗原、原虫その他の寄生虫性抗原、腫瘍抗原、自己免疫疾患、アレルギーおよび移植片拒絶に関連する抗原、トキシン、ならびに他の種々の抗原。
【0034】
[0053] “抗原結合分子”は、ターゲット抗原に対する結合親和性をもつ分子を意味する。この用語が免疫グロブリン、免疫グロブリンフラグメント、および抗原結合活性を示す非-免疫グロブリン由来のタンパク質フレームワークにまで及ぶことは理解されるであろう。本発明の実施に有用である代表的な抗原結合分子には、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体ならびにそれらのフラグメント(たとえば、Fab、Fab’、F(ab’)、Fv)、一本鎖(scFv)抗体およびドメイン抗体(たとえば、サメおよびラクダ科動物の抗体を含む)、ならびに抗体を含む融合タンパク質、ならびに免疫グロブリン分子の抗原結合/認識部位を含む他のいずれかの修飾構造体が含まれる。抗体には、すべてのクラス、たとえばIgG、IgA、またはIgM(またはそのサブクラス)の抗体が含まれ、抗体はいずれか特定のクラスのものである必要はない。抗体の重鎖の定常領域の抗体アミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンを異なるクラスに配属させることができる。5つの主要クラスの免疫グロブリン:IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMがあり、これらのうち幾つかをさらにサブクラス(アイソタイプ)、たとえばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2に分類できる。異なるクラスの免疫グロブリンに対応する重鎖定常領域は、それぞれα、δ、ε、γ、およびμと呼ばれる。異なるクラスの免疫グロブリンのサブユニット構造および三次元配置は周知である。抗原結合分子には、ダイマー抗体、および多価形態の抗体も包含される。ある態様において、抗原結合分子は、目的とする生物活性を示す限り、キメラ抗体、すなわち重鎖および/または軽鎖の一部が特定の種に由来する抗体における対応する配列と同一または相同であるかあるいは特定の抗体クラスまたはサブクラスに属し、一方、鎖(単数または複数)の残部は他の種に由来する抗体中の対応する配列と同一または相同であるかあるいは特定の抗体クラスまたはサブクラスに属するもの、ならびにそのような抗体のフラグメントである(参照:たとえば、US Pat. No. 4,816,567; および Morrison et al., 1984, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:6851-6855)。同様にヒト化抗体も考慮され、それらは一般に非ヒト(たとえば、げっ歯類、好ましくはマウス)免疫グロブリンの重鎖および軽鎖可変部に由来する相補性決定領域(CDR)をヒト可変ドメインに移入することにより作製される。こうして、フレームワーク領域内においてヒト抗体の典型的な残基が非ヒトカウンターパートで置き換えられる。ヒト化抗体に由来する抗体構成要素の使用は、非ヒト定常領域の免疫原性に関連する潜在的な問題を排除する。非ヒト、特にネズミの免疫グロブリン可変ドメインをクローニングするための一般的手法は、たとえばOrlandi et al. (1989, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86: 3833)により記載されている。ヒト化モノクローナル抗体を作製するための手法は、たとえばJones et al. (1986, Nature 321:522)、Carter et al. (1992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89: 4285)、Sandhu (1992, Crit. Rev. Biotech. 12: 437)、Singer et al. (1993, J. Immun. 150: 2844)、Sudhir (ed., Antibody Engineering Protocols, Humana Press, Inc. 1995)、Kelley (“Engineering Therapeutic Antibodies,” in Protein Engineering: Principles and Practice Cleland et al. (eds.), pages 399-434 (John Wiley & Sons, Inc. 1996)、およびQueen et al., U.S. Pat. No. 5,693,762 (1997)により記載されている。ヒト化抗体には“霊長類化(primatized)”抗体が含まれ、それらにおいては抗体の抗原結合領域がマカク属サルを目的抗原で免疫化することにより産生された抗体に由来する。ヒト化抗体も抗原結合分子として考慮される。
【0035】
[0054] 本明細書中で用いる用語“逆平行”は、ポリマーの領域またはセグメントが平行な向きであるけれども逆の方向性をもつタンパク性ポリマーを表わす。
[0055] 本明細書中で用いる用語“特異的に結合する”は、タンパク質などの高分子および他の生体物質を含めたヘテロロガスな分子集団の存在下における本発明のキメラポリペプチドまたは複合体の存在の確定となる結合反応を表わす。特定の態様において、用語“特異的に結合する”は、抗原結合分子について述べる場合、用語“特異的に免疫相互作用する”などと互換性をもって、タンパク質および他の生体物質のヘテロロガスな集団の存在下における本発明のキメラポリペプチドまたは複合体の存在の確定となる結合反応を表わすために用いられる。指示したアッセイ条件下で、ある分子は特異的に本発明のキメラポリペプチドまたは複合体に結合し、試料中に存在する他の分子(たとえば、タンパク質または抗原)に有意量で結合することはない。抗原結合分子の態様においては、多様なイムノアッセイフォーマットを用いて本発明のキメラポリペプチドまたは複合体と特異的に免疫反応性である抗原結合分子を選択することができる。たとえば、固相ELISAイムノアッセイはタンパク質と特異的に免疫反応するモノクローナル抗体を選択するためにルーティンに用いられる。特異的免疫反応性を判定するために使用できるイムノアッセイフォーマットおよび条件の記載については、Harlow and Lane (1988) Antibodies, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Publications, New Yorkを参照されたい。
【0036】
[0056] 用語“キメラの(chimeric)”は、分子に関して用いる場合、その分子が2以上の異なる起源または供給源から誘導され、入手もしくは単離され、またはそれらをベースとする部分を含むことを意味する。よって、あるポリペプチドは、それが異なる起源の2以上のアミノ酸配列を含み、(1)自然界では一緒に見られることのないポリペプチド配列を含む(すなわち、アミノ酸配列のうちの少なくとも1つがそれの他のアミノ酸配列のうちの少なくとも1つに対してヘテロロガスである)か、あるいは(2)自然界では隣接(adjoin)することのないアミノ酸配列を含む場合、キメラである。
【0037】
[0057] “コード配列”は、遺伝子のポリペプチド生成物または遺伝子の最終mRNA生成物(たとえば、遺伝子のスプライシング後のmRNA生成物)のコードに関与するいずれかの核酸配列を意味する。これに対し、用語“非コード配列”は、遺伝子のポリペプチド生成物または遺伝子の最終mRNA生成物のコードに関与しないいずれかの核酸配列を表わす。
【0038】
[0058] 用語“コイルドコイル”または“コイルドコイル構造”は、本明細書中で2以上のα-ヘリックス(2~7つのα-ヘリックスが最も頻度が高い)がロープの鎖のように互いに巻きついたタンパク質の構造モチーフ(ダイマーおよびトリマーが最も一般的なタイプである)を表わすために互換性をもって用いられる。多くのコイルドコイル型タンパク質が重要な生物学的機能、たとえば遺伝子発現の調節に関与している:たとえば転写因子。常にではないが、コイルドコイルはしばしば疎水性(h)および極性(p)アミノ酸残基の反復パターンhpphpppまたはhppphppを含み、ヘプタッドリピート
と呼ばれる(後記を参照)。この反復パターンをもつ配列がフォールドしてα-ヘリックス状二次構造になると、疎水性残基が左巻きにヘリックスの周りに緩く巻きついた‘ストライプ’として提示されて、両親媒性構造を形成する。2つのそのようなヘリックスが水を満たした環境で自己配列するための最も好ましい方法は、疎水鎖が親水性アミノ酸の間に挟まれた状態で互いに巻きつくことである。こうして疎水性表面が埋没し、それによりα-ヘリックスのオリゴマー化のための熱力学的推進力が生じる。コイルドコイル境界面でのパッキングはきわめて密である。α-ヘリックスは平行または逆平行の可能性があり、通常は左巻きスーパーコイルの形をとる。不都合ではないが、わずかな右巻きコイルドコイルも天然および人工タンパク質で観察されている。用語“コイルドコイル”または“コイルドコイル構造”は、共通の一般的知識に基づいて当業者に明らかであろう。これに関してコイルドコイル構造に関連する概説報文が特に参照される;たとえば、Cohen and Parry (1990. Proteins 7:1-15); Kohn and Hodges (1998. Trends Biotechnol 16:379-389); Schneider et al. (1998. Fold Des 3:R29-R40); Harbury et al. (1998. Science 282:1462-1467); Mason and Arndt (2004. Chem-BioChem 5:170-176); Lupas and Gruber (2005. Adv Protein Chem 70:37-78); Woolfson (2005. Adv Protein Chem 70:79-112); Parry et al. 2008. J Struct Biol 163:258-269); およびMcfarlane et al. (2009. Eur J Pharmacol 625:101-107)。
【0039】
[0059] 本明細書中で用いる用語“相補的”およびそれの文法上の同等表現は、2以上の構造要素(たとえば、ペプチド、ポリペプチド、核酸、小分子、またはその部分など)の、ハイブリダイズ、オリゴマー化(たとえば、ダイマー化)、相互作用または他の形で互いに複合体を形成できる特徴を表わす。たとえば、“ポリペプチドの相補的領域”は、互いに一緒になって複合体を形成することができ、それは特定の態様において逆平行、2-ヘリックスバンドルを特徴とする。
【0040】
[0060] 本明細書中で用いる用語“複合体”は、直接および/または間接的に互いに接触した分子(たとえば、ペプチド、ポリペプチドなど)の集合体または凝集体を表わす。特定の態様において、“接触”、またはより具体的には“直接的な接触”は、引力をもつ非共有結合相互作用、たとえばファン-デル-ワールス力、水素結合、イオン性および疎水性の相互作用などが分子の相互作用を支配するのに十分なほど、2以上の分子が近接することを意味する。そのような態様において、分子(たとえば、ペプチドおよびポリペプチド)の複合体は、その複合体が熱力学的に好ましい(たとえば、凝集していない、または複合体形成していない状態のそれの成分分子と比較して)条件下で形成される。本明細書中で用いる用語“複合体”は、別に記載しない限り、2以上の分子(たとえば、ペプチド、ポリペプチド、またはその組合わせ)の集合体を表わす。特定の態様において、用語“複合体”は3つのポリペプチドの集合体を表わす。
【0041】
[0061] 本明細書中で用いる用語“化合物ライブラリー”は、異なる構造をもつ複数の分子を含むいずれかの化合物コレクションを表わす。化合物ライブラリーは、コンビナトリアルケミカルライブラリーまたは天然物ライブラリーを含む可能性がある。たとえば水素結合、イオン結合、ファン-デル-ワールス引力、または疎水性相互作用による非共有結合相互作用を含む相互作用によって本発明のキメラポリペプチドまたは複合体と相互作用し、結合することができ、あるいはそれらに対する親和性をもついかなるタイプの分子も、化合物ライブラリー中に存在することができる。たとえば、本発明に包含される化合物ライブラリーは、天然分子、たとえば炭水化物、単糖、オリゴ糖、多糖、アミノ酸、ペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチド、タンパク質、受容体、核酸、ヌクレオシド、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド(DNAおよびDNAフラグメント、RNAおよびRNAフラグメントなどを含む)、脂質、レチノイド、ステロイド、グリコペプチド、糖タンパク質、プロテオグリカンなど;または天然分子のアナログもしくは誘導体、たとえばペプチドミメティックなど;およびたとえばコンビナトリアルケミストリー手法を用いて作製された非天然分子、たとえば“小分子”有機化合物;ならびにその混合物を含むことができる。
【0042】
[0062] 本明細書全体を通して、内容からそうではないことが要求されない限り、“含む(comprise)、(comprises)および(comprising)”という語は、記載した工程もしくは要
素または一群の工程もしくは要素の包含を示し、ただし他のいずれかの工程もしくは要素または一群の工程もしくは要素の除外を示すものではないことは理解されるであろう。よつて、“含む(comprising)”などの用語の使用は、列記した要素が必要または必須であるけれども他の要素は任意選択的であって存在してもしなくてもよいということを示す。“からなる(consisting of)”は、“からなる”という句に続くあらゆるものを含み、かつそれらに限定されることを意味する。よって、“からなる”という句は、列記した要素が必要または必須であり、他の要素は存在しない可能性があることを示す。“本質的に・・・からなる”は、その句の後に列記したすべての要素、およびそれらの列記した要素について本開示に特定した活性または作用を妨害しないかまたはそれに関与しない他の要素に限定された要素を含むことを意味する。よって、“本質的に・・・からなる”は、列記した要素が必要または必須であるけれども他の要素は任意選択的であって列記した要素の活性または作用にそれらが影響を及ぼすか否かに応じて存在してもしなくてもよいということを示す。
【0043】
[0063] 化学的コンジュゲーションまたは組換え手段(たとえば、遺伝子融合)を含めたいずれかの手段によって2以上の要素または成分またはドメインを互いに結合させることに関して、本明細書中で用いる用語“コンジュゲートした(conjugated)”、“連結した(linked)”、“融合した(fused)”または“融合(fusion)”、およびそれの文法上の同等
語は、互換性をもって用いられる。化学的コンジュゲーションの方法(たとえば、ヘテロ二官能性架橋剤を使用)は当技術分野で知られている。より具体的には、本明細書中で用いる“エンベロープウイルス融合タンパク質エクトドメイン”-“構造安定化部分”の融合またはコンジュゲーションは、適切には準安定、融合前コンホメーション状態にあるエンベロープウイルス融合タンパク質エクトドメインを構造安定化部分に遺伝学的または化学的にコンジュゲートさせることを表わす。特定の態様において、構造安定化部分をエンベロープウイルス融合タンパク質エクトドメインに間接的に、リンカー、たとえばグリシン-セリン(gly-ser)リンカーを介して融合させる。他の態様において、構造安定化部分をエンベロープウイルス融合タンパク質エクトドメインに直接融合させる。
【0044】
[0064] “保存的アミノ酸置換”は、アミノ酸残基を類似の側鎖をもつアミノ酸残基で置き換えるものである。類似の側鎖をもつアミノ酸残基のファミリーは当技術分野で規定されており、それらは一般に下記のように下位分類することができる:
【0045】
【表1】
【0046】
[0065] 保存的アミノ酸置換には、側鎖に基づくグループ分けも含まれる。たとえば、脂肪族側鎖をもつアミノ酸のグループはグリシン、アラニン、バリン、ロイシン、およびイソロイシンであり;脂肪族ヒドロキシル側鎖をもつアミノ酸のグループはセリンおよびトレオニンであり;アミドを含む側鎖をもつアミノ酸のグループはアスパラギンおよびグルタミンであり;芳香族側鎖をもつアミノ酸のグループはフェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファンであり;塩基性側鎖をもつアミノ酸のグループはリジン、アルギニン、およびヒスチジンであり;硫黄を含む側鎖をもつアミノ酸のグループはシステインおよびメチオニンである。たとえば、ロイシンをイソロイシンまたはバリンで、アスパルテートをグルタメートで、トレオニンをセリンで置換すること、あるいは構造関連アミノ酸による同様なアミノ酸置換は、得られるバリアントポリペプチドの特性に大きな影響を及ぼさないであろうと予想するのは妥当である。あるアミノ酸変化が機能性ポリペプチドを生じるかどうかは、それの活性をアッセイすることによって容易に判定できる。保存的置換を代表的な好ましい置換と題する表2に示す。本発明の範囲に含まれるアミノ酸置換は、一般に、下記を維持することに対するそれらの影響において有意差がない置換を選択することにより達成される:(a)置換領域におけるペプチド主鎖の構造、(b)ターゲット部位におけるその分子の電荷または疎水性、または(c)側鎖の嵩。置換を導入した後、バリアントを生物活性についてスクリーニングする。
【0047】
【表2】
【0048】
[0066] 用語“構築体”は、異なる供給源から単離された1以上の核酸配列を含む組換え遺伝分子を表わす。よって、構築体は起源の異なる2以上の核酸配列を単一核酸分子に組み立てたキメラ分子であり、下記のものを含むいずれかの構築体が含まれる:(1)自然界では一緒に見られることのない核酸配列(調節配列およびコード配列を含む)(すなわち、ヌクレオチド配列のうちの少なくとも1つがそれの他のヌクレオチド配列のうちの少なくとも1つに対してヘテロロガスである)、あるいは(2)自然界では隣接することのない機能性RNA分子またはタンパク質の部分をコードする配列、あるいは(3)自然界では隣接することのないプロモーターの部分。代表的な構築体には、いずれかの組換え核酸分子、たとえばプラスミド、コスミド、ウイルス、自律複製するポリヌクレオチド分子、ファージ、または線状もしくは環状の一本鎖もしくは二本鎖DNAもしくはRNA核酸分子であって、いずれかの供給源に由来し、ゲノム組込みまたは自律複製が可能であり、1以上の核酸分子が作動可能な状態で連結した核酸分子を含むもの。本発明の構築体は一般に、同様に構築体に含まれる目的とする核酸配列、たとえはターゲット核酸配列またはモジュレーター核酸配列の発現を指令するために必要なエレメントを含むであろう。そのようなエレメントには、制御エレメント、たとえば目的とする核酸配列に作動可能な状態で(その転写を指令するように)連結したプロモーターを含めることができ、しばしばポリアデニル化配列も含まれる。本発明の特定の態様において、構築体はベクター内に収容されてもよい。ベクターは、構築体の構成要素のほかに、たとえば1以上の選択マーカー、1以上の複製起点、たとえば原核細胞および真核細胞起源のもの、少なくとも1つの多重クローニング部位、および/または構築体が宿主細胞のゲノム中へ安定に組み込まれるのを容易にするためのエレメントを含むことができる。2以上の構築体を、単一核酸分子、たとえば単一ベクター内に収容することができ、あるいは2以上の別個の核酸分子、たとえば2以上の別個のベクター内に収容することができる。“発現構築体”は、一般に少なくとも、目的とするヌクレオチド配列に作動可能な状態で連結した制御配列を含む。こうして、たとえば、発現すべきヌクレオチド配列と作動可能な状態で連結したプロモーターが、生物またはその一部(宿主細胞を含む)において発現させるための発現構築体中に備えられる。本発明の実施について、構築体および宿主細胞を調製および使用するための一般的な組成物および方法は当業者に周知である;たとえば、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3rd edition Volumes 1, 2, and 3. J. F. Sambrook, D. W. Russell, and N. Irwin, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2000を参照。
【0049】
[0067] “に対応する(corresponds toまたはcorresponding to)”は、基準アミノ酸配列に対して実質的な配列類似性または同一性を示すアミノ酸配列を意味する。一般に、アミノ酸配列は、少なくとも基準アミノ酸配列の一部に対して少なくとも約70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、97、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99%、またはさらには100%に及ぶ配列類似性または同一性を示すであろう。
【0050】
[0068] 本明細書中で用いる用語“ドメイン(domain)”は、分子または構造体の、共通の物理化学的特色をもつ部分、たとえば(それらに限定されない)疎水性、極性、球状およびヘリックス状のドメイン、またはリガンド結合性、膜融合性、シグナル伝達性、細胞透過性などの特性をもつ部分を表わす。しばしば、ドメインはフォールドしたタンパク質構造をもち、それはタンパク質の残部とは独立してそれの三次構造を保持する能力をもつ。一般に、ドメインはタンパク質の別個の特性に関与し、多くの場合、タンパク質および/またはドメインの残部の機能を損なうことなく付加し、排除し、または他のタンパク質へ伝達することができる。ドメインは領域(region)またはその一部と同じ範囲にあってもよい(co-extensive);ドメインは別個の不連続的な分子領域を含むこともができる。タンパク質ドメインの例には下記のものが含まれるが、それらに限定されない:細胞または細胞外に局在するドメイン(たとえば、シグナルペプチド(signal peptide);SP)、免疫グロブリン(Ig)ドメイン、膜融合(たとえば、融合ペプチド(fusion peptide);FP)ドメイン、エクトドメイン、膜近傍外部領域(membrane proximal external region)(MPER)ドメイン、膜貫通(transmembrain)(TM)ドメイン、および細胞質(cytoplasmic)(C)ドメイン。
【0051】
[0069] エンベロープウイルスの融合タンパク質もしくは融合タンパク質の複合体に対する免疫応答の誘導、または疾患もしくは状態の治療もしくは予防に関して、“有効量”は、その必要がある個体に単回量で、またはシリーズの一部として投与する薬剤の量であって、その誘導、治療または予防に有効である量を意味する。有効量は、処置される個体の健康状態および身体状態、処置される個体の分類グループ、組成物の配合、医学的状況の査定、ならびに他の関連要因に応じて異なるであろう。その量は比較的広い範囲に及ぶと予想され、それはルーティン試験により決定できる。
【0052】
[0070] 用語“内在性”は、宿主生物またはその細胞に存在し、および/または自然に発現する、ポリペプチドまたはその一部を表わす。たとえば、“内在性”エクトドメインポリペプチドまたはその一部は、エンベロープウイルスにおいて自然発現するエンベロープ融合タンパク質のエクトドメインポリペプチドまたはそのエクトドメインの一部を表わす。
【0053】
[0071] 本明細書中で用いる用語“内在性HRA領域”は、クラスIエクトドメインポリペプチド中に、融合タンパク質前駆体形態の天然融合タンパク質のアミノ酸配列中のHRA領域と実質的に同じ位置に存在するHRA領域を表わす。クラスI融合タンパク質の限定ではない例の内在性HRA領域のおおよそのアミノ酸位置を表3に挙げる。
【0054】
【表3】
【0055】
[0072] 本明細書中で用いる用語“内在性HRB領域”は、クラスIエクトドメインポリペプチド中に、融合タンパク質前駆体形態の天然融合タンパク質のアミノ酸配列中のHRB領域と実質的に同じ位置に存在するHRB領域を表わす。クラスI融合タンパク質の限定ではない例の内在性HRB領域のおおよそのアミノ酸位置を表4に挙げる。
【0056】
【表4】
【0057】
[0073] 用語“内在性産生”は、生物における核酸の発現および付随する産生、および/または生物における核酸の発現生成物の分泌を表わす。特定の態様において、生物は多細胞性(たとえば、脊椎動物、好ましくは哺乳類、より好ましくは霊長類、たとえばヒト)であり、核酸はその多細胞生物の細胞内または組織内で発現する。
【0058】
[0074] 本明細書中で用いる“エンベロープウイルス融合エクトドメインポリペプチド”は、成熟したエンベロープウイルス融合タンパク質のビリオン表面露出部分を含むポリペプチドであって、天然エンベロープウイルス融合タンパク質のシグナルペプチドを含むかまたは含まず、ただし膜貫通ドメインおよび細胞質テイルを欠如するものを表わす。
【0059】
[0075] 用語“エピトープ”と“抗原決定基”は、抗体に特異的に結合できる抗原(一般にタンパク質)決定基(そのようなエピトープはしばしば“B細胞エピトープ”と呼ばれる)、または主要組織適合性複合体(MHC)タンパク質(たとえば、クラスIまたはクラスII)によりT細胞受容体に提示できるもの(そのようなエピトープはしばしば“T細胞エピトープ”と呼ばれる)を表わすために本明細書中で互換性をもって用いられる。B細胞エピトープがペプチドまたはポリペプチドである場合、それは一般的に3個以上のアミノ酸、一般に少なくとも5個、より通常は少なくとも8~10個のアミノ酸を含む。それらのアミノ酸はポリペプチドの一次構造において隣接するアミノ酸残基であってもよく(しばしば、連続ペプチド配列と呼ばれる)、あるいはフォールドしたタンパク質において空間的に並置した状態になってもよい(しばしば、不連続ペプチド配列と呼ばれる)。T細胞エピトープはMHCクラスIまたはMHCクラスII分子に結合できる。一般に、MHCクラスI結合性T細胞エピトープは8~11アミノ酸の長さである。クラスII分子は10~30残基の長さ(最適長さは12~16残基)またはそれより長いペプチドを結合する。推定T細胞エピトープがMHC分子に結合する能力は、実験的に推定および確認できる(Dimitrov et al., 2010. Bioinformatics 26(16):2066-8)。
【0060】
[0076] 用語“ヘリックスバンドル”は、ヘリックスが互いに実質的に平行または逆平行であるようにフォールドした複数のペプチドヘリックスを表わす。2-ヘリックスバンドルは、互いに実質的に平行または逆平行であるようにフォールドした2つのヘリックスをもつ。同様に、6ヘリックスバンドルは、互いに実質的に平行または逆平行であるようにフォールドした6つのヘリックスをもつ。“実質的に平行または逆平行”は、ヘリックスの側鎖が互いに相互作用できるようにヘリックスがフォールドしていることを意味する。たとえば、ヘリックスの疎水性側鎖は互いに相互作用して疎水性コアを形成することができる。
【0061】
[0077] 本明細書中で用いる用語“ヘテロロガス”は、この配列とエクトドメインポリペプチドとの融合生成物が前駆体または成熟形態の野生型のエンベロープウイルス融合タンパク質とは異なる配列をもつようにその配列が選択された、いずれかのタンパク性部分を表わす。
【0062】
[0078] 用語“宿主”は、真核細胞または原核細胞のいずれであっても、それに本発明の構築体を導入できるいずれかの生物またはその細胞、特にRNAサイレンシングが起きる宿主を表わす。具体的な態様において、用語“宿主”は真核生物を表わし、それには酵母および真菌などの単細胞性真核生物、ならびに多細胞性真核生物、たとえば動物が含まれ、それの限定ではない例には無脊椎動物(たとえば、昆虫、刺胞動物(cnidarian)、棘
皮動物(echinoderm)、線虫など);真核細胞性寄生生物(たとえば、マラリア寄生虫、たとえば熱帯マラリア原虫(Plasmodium falciparum)、蠕虫(helminth)など);脊椎動物(たとえば、魚類、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類);ならびに哺乳動物(たとえば、げっ歯類、霊長類、たとえばヒトおよび非ヒト霊長類)が含まれる。よって、用語“宿主細胞”は、適切にはそのような真核生物の細胞およびそのような真核生物に由来する細胞系が包含される。
【0063】
[0079] 本明細書中における“免疫反応性”への言及には、分子間のいずれかの相互作用、反応、または他の形の関連性、特にそれらの分子のうちの1つが免疫系の構成要素であるか、あるいはそれを模倣しているものについての言及が含まれる。
【0064】
[0080] 本明細書中で用いる用語“免疫原組成物”または“免疫原配合物”は、脊椎動物、特に哺乳類などの動物に投与した際に免疫応答を誘導する調製物を表わす。
[0081] “リンカー”は、2つの分子を結合させ、しばしば2つの分子を望ましい立体配置に置く作用をする、分子または一群の分子(たとえば、モノマーまたはポリマー)を意味する。
【0065】
[0082] 本明細書中でタンパク質(たとえば、エンベロープウイルスエクトドメインポリペプチド)に関して用いる用語“準安定(meta-stable)”は、条件の変化に際してより
安定なコンホメーション状態に急速に変換する不安定なコンホメーション状態を表わす。たとえば、融合前形態のエンベロープウイルス融合タンパク質は不安定な準安定コンホメーションにあり、たとえば宿主細胞に融合すると、より安定な融合後コンホメーションに変換する。
【0066】
[0083] 本明細書中で用いる用語“部分(moiety)”は、分子の一部を表わし、それは分子の特徴的な化学的、生物学的、および/または医学的特性に関与する官能基、一組の官能基、および/または 分子内の特定の原子グループである可能性がある。
【0067】
[0084] 用語“中和性の抗原結合分子”は、ターゲット分子またはリガンドと結合または相互作用して、ターゲット抗原が結合パートナー、たとえば受容体または基質に結合ま
たは会合するのを阻止し、それにより、さもなければそれらの分子の相互作用から生じるであろう生物学的応答を妨げる抗原結合分子を表わす。本発明の場合、中和性の抗原結合分子は準安定または融合前形態のエンベロープウイルス融合タンパク質と適切に会合し、好ましくはその融合タンパク質が細胞膜に結合および/または融合するのを妨害または低減する。
【0068】
[0085] 用語“オリゴマー”は、少なくとも原則としては無限数のモノマーからなるポリマーとは対照的に、1より多いけれども限定された数のモノマー単位からなる分子を表わす。オリゴマーにはダイマー、トリマー、テトラマー、ペンタマー、ヘキサマー、ヘプタマー、オクタマー、ノナマー、デカマーなどが含まれるが、これらに限定されない。オリゴマーは、タンパク質のような高分子の非共有結合により形成された高分子複合体である可能性がある。この意味で、ホモ-オリゴマーは同一分子により形成され、これに対しヘテロ-オリゴマーは少なくとも2つの異なる分子で作られるであろう。特定の態様において、本発明のオリゴマーは3つのポリペプチドサブユニットからなるトリマーポリペプチド複合体である。これらの態様において、トリマーポリペプチドは、3つの同一ポリペプチドサブユニットからなる“ホモトリマーポリペプチド複合体”、または3つのポリペプチドサブユニットからなり、それらのうち少なくとも1つのサブユニットポリペプチドが非同一である“ヘテロトリマーポリペプチド複合体”の可能性がある。“ポリペプチドサブユニット”は、2つの他のポリペプチドサブユニットとの組合わせでトリマーポリペプチド複合体を形成する、単一のアミノ酸鎖またはモノマーである。
【0069】
[0086] 本明細書中で用いる用語“作動可能な状態で結合した(operably connected)”または“作動可能な状態で連結した(operably linked)”は、そのように記載した構成要
素がそれらの意図する様式で機能できる関係にある近位(juxtaposition)を表わす。たと
えば、目的とするヌクレオチド配列(たとえば、コード配列および/または非コード配列)に“作動可能な状態で連結した”調節配列(たとえば、プロモーター)は、制御配列と適合する条件下でその配列の発現を可能にする、目的とするヌクレオチド配列に対する制御配列の配置および/または配向を表わす。目的とするヌクレオチド配列の発現を制御配列が指令する機能をもつ限り、制御配列は目的とするヌクレオチド配列と連続的である必要はない。よって、たとえば介在する非コード配列(たとえば、翻訳されなかった、まだ転写されていない配列)がプロモーターとコード配列の間に存在することができ、そのプロモーター配列はそれでもなおコード配列に“作動可能な状態で連結した”とみなすことができる。同様に、エンベロープウイルス融合エクトドメインポリペプチドをヘテロロガスな構造安定化部分に“作動可能な状態で結合させる”は、相補的なHR1およびHR2領域がそれらの会合に適した条件下で(たとえば水溶液中で)互いに会合して逆平行2-ヘリックスバンドルを形成できるような構造安定化部分の配置および/または配向を包含する。
【0070】
[0087] 本明細書中で互換性をもって用いられる用語“患者”、“対象”、“ホスト”または“個体”は、それらに対する治療または予防が望まれるいずれかの対象、特に脊椎動物対象、よりさらに特別には哺乳動物対象を表わす。本発明の範囲に含まれる適切な脊椎動物には下記を含む脊索動物亜門(Chordata)のいずれかのメンバーが含まれるが、それらに限定されない:霊長類(たとえば、ヒト、猿および類人猿;サルの種、たとえばマカク属(Macaca)の猿に属する種を含む(たとえば、蟹食猿(cynomologus monkey)、たとえばカニクイザル(Macaca fascicularis)、および/または赤毛猿(rhesus monkey)(アカゲザ
ル(Macaca mulatta)))、およびヒヒ(baboon)(チャクマヒヒ(Papio ursinus))、ならびに
マーモセット(マーモセット属(Callithrix)に属する種)、リスザル(リスザル属(Saimiri)に属する種)およびタマリン(タマリン属(Saguinus)に属する種)、ならびに類人猿の種、たとえばチンパンジー(Pan troglodytes))、げっ歯類(たとえば、マウス、ラット、モルモット)、ウサギ目(lagomorph)(たとえば、兎(rabbit)、野兎(hare))、ウシ属(bovine)(たとえば牛)、ヒツジ属(ovine)(たとえば羊)、ヤギ科(caprine)(たとえば、山羊)、ブタ科(porcin)(たとえば豚)、ウマ科(equine)(たとえば、馬)、イヌ科(canine)(たとえば、犬)、ネコ科(feline)(たとえば、猫)、鳥類(avian)(たとえば、鶏、七面鳥、アヒル、ガチョウ、愛玩鳥類、たとえばカナリヤ、セキセイインコなど)、海洋哺乳類(たとえば、イルカ、クジラ)、爬虫類(ヘビ、カエル、トカゲなど)、ならびに魚類。好ましい対象は、エンベロープウイルスの融合タンパク質またはその融合タンパク質の複合体に対する免疫応答を誘導する必要があるヒトである。ただし、前記用語は症状が存在することを暗示するものではないことは理解されるであろう。
【0071】
[0088] “医薬的に許容できるキャリヤー”は、動物、好ましくはヒトを含めた哺乳動物への局所または全身投与に際して安全に使用できる固体状もしくは液体状の増量剤、希釈剤または封入用物質を意味する。代表的な医薬的に許容できるキャリヤーには、当業者に知られているように、ありとあらゆる溶剤、分散媒、コーティング剤、界面活性剤、抗酸化剤、保存剤(たとえば、抗細菌剤、抗真菌剤)、等張化剤、吸収遅延剤、塩類、保存剤、薬剤、薬物安定化剤、ゲル剤、結合剤、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、甘味剤、矯味矯臭剤、色素などの材料、およびその組合わせが含まれる(参照:たとえば、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 18th Ed. Mack Printing Company, 1990, pp. 1289-1329, 本
明細書に援用する)。一般的なキャリヤーが有効成分(単数または複数)と不適合でない限り、医薬組成物中におけるそれの使用が考慮される。
【0072】
[0089] 本明細書中で用いる用語“ポリヌクレオチド”または“核酸”は、mRNA、RNA、cRNA、cDNAまたはDNAを示す。この用語は、一般に少なくとも10塩基長さの高分子形態のヌクレオチド、すなわちリボヌクレオチドもしくはデオキシヌクレオチドのいずれか、またはいずれかのタイプのヌクレオチドの修飾形態を表わす。この用語には、一本鎖および二本鎖の形態のDNAが含まれる。
【0073】
[0090] “ポリペプチド”、“ペプチド”、“タンパク質”および“タンパク性分子”は、本明細書中でアミノ酸残基のポリマーならびにそのバリアントおよび合成アナログを表わすために互換性をもって用いられる。よって、これらの用語は、1以上のアミノ酸残基が合成による非天然アミノ酸、たとえば対応する天然アミノ酸の化学的アナログであるアミノ酸ポリマー、ならびに天然アミノ酸ポリマーに適用される。
【0074】
[0091] 本明細書中で用いる用語、エンベロープウイルスの融合タンパク質の“融合後コンホメーション”は、エンベロープウイルス融合タンパク質の最終コンホメーション(すなわち、融合プロセスの終了時に形成されるもの)でありかつエネルギー的に最も好ましい状態である構造を表わす。融合後コンホメーションにおいては、融合タンパク質の融合ペプチドまたはループが融合タンパク質の膜貫通ドメインと近接する。このヘアピン構造の形成を容易にする具体的な構造要素はエンベロープ融合タンパク質のクラスに従って異なる。たとえば、クラスI融合タンパク質の融合後コンホメーションは、個々のクラスI融合タンパク質の内在性HRA領域と内在性HRB領域が相互作用して、3つの内在性HRBおよび3つの内在性HRA領域を含む6ヘリックスバンドルを特徴とするヘアピン構造を形成することを特徴とする。あるいは、クラスIII融合タンパク質の融合後コンホメーションは内部融合ループとC末端膜貫通領域の相互作用を特徴とし、それがヘアピン構造の形成を容易にする。個々のウイルス融合タンパク質の融合後コンホメーションは電子顕微鏡検査および/またはX線結晶学的分析により決定されており、そのような構造はネガティブ染色した電子顕微鏡写真を観察した際、および/または融合前エピトープが無いことによって、容易に同定できる。
【0075】
[0092] 本明細書中で用いる用語、エンベロープウイルスの融合タンパク質の“融合前コンホメーション”は、準安定(meta-stable)コンホメーション(すなわち、エネルギー
的に最も好ましい最終コンホメーションではない半安定(semi-stable)コンホメーション
)にあって適切なトリガリングに際してコンホメーション再配列を行なって最終的な融合後コンホメーションになる可能性がある構造のエンベロープウイルス融合タンパク質を表わす。一般に、ウイルス融合タンパク質の融合前コンホメーションは、融合ペプチドまたは融合ループと呼ばれる疎水性配列を含み、それは融合前コンホメーションの内部に位置し、ウイルス膜または宿主細胞膜のいずれとも相互作用できない。トリガリングに際してこの疎水性配列は宿主細胞膜内へ挿入され、融合タンパク質は崩壊して融合後ヘアピン様コンホメーションになる。ウイルス融合タンパク質の融合前コンホメーションはエンベロープ融合タンパク質のクラスに従って異なる。各クラスは非相互作用性の構造要素を特徴とし、それらがその後、エネルギー的に好ましい融合後コンホメーションにおいて会合する。たとえば、クラスI融合タンパク質の融合前コンホメーションはトリマーの個々の融合タンパク質の内在性HRB領域と相互作用しない内在性HRA領域に依存し、そのため6ヘリックスバンドルを特徴とするヘアピン構造の形成は行なわれない。あるいは、クラスIII融合タンパク質の融合前コンホメーションは、トリマーの個々の融合タンパク質のC末端領域にある融合ループ(単数または複数)とは相互しない中心のα-ヘリックス状コイルドコイルに依存し、したがってヘアピン構造の形成は行なわれない。個々のウイルス融合タンパク質の融合前コンホメーションは電子顕微鏡検査および/またはX線結晶学的分析により決定されており、そのような構造はネガティブ染色した電子顕微鏡写真を観察した際、および/または融合後コンホメーションには存在しない融合前エピトープによって容易に同定できる。
【0076】
[0093] “調節エレメント”、“調節配列”、“制御エレメント”、“制御配列”などは、本明細書中で、コード配列の上流(5’側-非コード配列)、内部、または下流(3’側-非コード配列)に位置し、転写、RNAのプロセシングもしくは安定性、または関連コード配列の翻訳に直接または間接的に影響を及ぼすヌクレオチド配列を表わすために互換性をもって用いられる。調節配列にはエンハンサー、プロモーター、翻訳リーダー配列、イントロン、Rep認識エレメント、遺伝子間領域およびポリアデニル化シグナル配列が含まれる。それらには、天然配列および合成配列、ならびに合成配列と天然配列の組合わせであってもよい配列が含まれる。
【0077】
[0094] 用語“レプリコン”は、細胞内でポリヌクレオチド複製の自律ユニットとして挙動する、すなわちそれ自身の制御下で複製できる、いずれかの遺伝子エレメント、たとえばプラスミド、染色体、ウイルス、コスミドなどを表わす。
【0078】
[0095] “自己組織化(self-assembly)”は、高次構造体(たとえば、分子)相互の構
成要素の自然引力に依存する、高次構造体の自然組織化のプロセスを表わす。それは一般に、サイズ、形状、組成または化学的特性に基づく分子のランダムな動きおよび結合の形成により起きる。
【0079】
[0096] 本明細書中で用いる用語“配列同一性”は、配列がヌクレオチド-対-ヌクレオチド基準またはアミノ酸-対-アミノ酸基準で比較ウインドウにわたって同一である程度を表わす。よって、“配列同一性パーセント”は、最適状態にアラインした2つの配列を比較し、同一核酸塩基(たとえば、A、T、C、G、I)または同一アミノ酸残基(たとえば、Ala、Pro、Ser、Thr、Gly、Val、Leu、Ile、Phe、Tyr、Trp、Lys、Arg、His、Asp、Glu、Asn、Gln、CysおよびMet)が両配列中に現れる位置の数を決定して一致した位置の数を求め、その一致した位置の数を比較ウインドウ中の位置の総数(すなわち、ウインドウサイズ)で割り、その結果に100を掛けて配列同一性パーセントを求めることにより計算される。本発明は、本発明の方法およびシステムにおける、全長IL-22ポリペプチドおよびそれらの生物活性フラグメントの使用を考慮する。一般に、全長IL-22ポリペプチドの生物活
性フラグメントは相互作用、たとえば分子内または分子間相互作用に関与することができる。
【0080】
[0097] “類似性”は、同一であるかあるいは前掲の表1および2に定めた保存的置換を構成するアミノ酸のパーセント数を表わす。類似性は、配列比較プログラム、たとえばGAP(Deveraux et al. 1984, Nucleic Acids Research 12: 387-395)を用いて決定できる。この方法で、本明細書に引用したものと類似するかあるいは実質的に異なる長さの配列を、そのアラインメントにギャップを挿入し、そのようなギャップをたとえばGAPに用いる比較アルゴリズムにより判定することによって比較できる。
【0081】
[0098] 2以上のポリヌクレオチドまたはポリペプチド間の関係を述べるために用いる用語には、“基準配列”、“比較ウインドウ”、“配列同一性”、“配列同一性パーセント”および“実質的な同一性”が含まれる。“基準配列”は、ヌクレオチドおよびアミノ酸残基を含めて、少なくとも12、ただし多くの場合15~18、しばしば少なくとも25のモノマー単位の長さである。2つのポリヌクレオチドはそれぞれ(1)2つのポリヌクレオチド間で類似する配列(すなわち、完全なポリヌクレオチド配列の一部のみ)、および(2)2つのポリヌクレオチド間で異なる配列を含む可能性があるので、2つの(またはそれより多い)ポリヌクレオチド間の配列比較は、一般に2つのポリヌクレオチドの配列を“比較ウインドウ”にわたって比較して、局所領域の配列類似性を同定および比較することにより実施される。“比較ウインドウ”は、少なくとも6、通常は約50~約100、より通常は約100~約150の連続位置の概念上のセグメントを表わし、2つの配列を最適状態でアラインさせた後、そのセグメントにおいて同数の連続位置の基準配列に対して配列を比較する。2つの配列の最適アラインメントのために、比較ウインドウは基準配列(付加または欠失を含まない)と比較して約20%以下の付加または欠失(すなわち、ギャップ)を含むことができる。比較ウインドウをアラインさせるための最適な配列アラインメントは、アルゴリズムのコンピューター化実装により(GAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA,Wisconsin Genetics Software Package Release 7.0, Genetics Computer Group, 575 Science Drive Madison, WI, USA)、あるいは選択した各種方法のいずれかによって得た検査および最適アラインメント(すなわち、比較ウインドウにわたって最高パーセントの相同性を生じるもの)により実施できる。たとえばAltschul et al., 1997, Nucl. Acids Res. 25:3389により開示されたBLASTファミリーのプログラムも参照できる。配列分析の詳細な考察は、 Ausubel et al., “Current Protocols in Molecular Biology”, John Wiley & Sons Inc, 1994-1998, Chapter 15のUnit 19.3にみられる。
【0082】
[0099] 本明細書中で用いる用語“一本鎖”は、ペプチド結合によって直線状に連結したアミノ酸モノマーを含む分子を表わす。
[0100] 本明細書中で用いる“小分子”は、3キロダルトン(kDa)未満、一般に1.5キロダルトン未満、より好ましくは約1キロダルトン未満の分子量をもつ組成物を表わす。小分子は核酸、ペプチド、ポリペプチド、ペプチドミメティック、炭水化物、脂質、または他の有機分子(炭素含有)もしくは無機分子であってもよい。当業者に自明のとおり、本記載に基づいて、本発明のいずれかのアッセイ法で化学的および/または生物学的混合物(しばしば、真菌、細菌または藻類の抽出物)の広範なライブラリーをスクリーニングして、生物活性を調節する化合物を同定することができる。“小有機分子”は、3キロダルトン未満、1.5キロダルトン未満、またはさらには約1kDa未満の分子量をもつ有機化合物(または、無機化合物(たとえば金属)と錯体形成した有機化合物)である。
【0083】
[0101] 本明細書中で用いる用語“処置”、“処置すること”などは、希望する薬理学的および/または生理学的効果を得ることを表わす。その効果は、疾患またはその症状を
完全または部分的に阻止するという点で予防的であってもよく、ならびに/あるいは疾患および/またはその疾患に帰因する有害作用に対する部分的または完全な治癒という点で治療的であってもよい。本明細書中で用いる“処置”は、哺乳動物、特にヒトの疾患のいずれかの処置を包含し、下記を含む:(a)疾患に対する素因をもつ可能性があるけれどもまだそれを伴なうと診断されていない対象においてその疾患が起きるのを阻止する;(b)疾患を阻害する、すなわちそれの発症を制止する;および(c)疾患を軽減する、すなわちその疾患を退行させる。
【0084】
[0102] 用語“野生型(wild-type)”、“自然(native)”および“天然(naturally occurring)”は、天然源から単離した際の遺伝子または遺伝子生成物の特徴をもつ遺伝子または遺伝子生成物を表わすために本明細書中で互換性をもって用いられる。野生型、自然または天然の遺伝子または遺伝子生成物(たとえば、ポリペプチド)は、ある集団において最も頻繁に見られるものであり、したがって恣意的に“正常”または“野生型”の遺伝子または遺伝子生成物と呼ばれる。
【0085】
[0103] 本明細書に記載する各態様は、そうではないと特別に述べない限り、必要な変更を加えてそれぞれの態様に適用されるものとする。
2.キメラポリペプチド
[0104] 本発明は、一部は、融合前コンホメーションのエンベロープウイルス融合タンパク質エクトドメインポリペプチドを人工的に安定化または‘クランピング(clamping)’するための新規戦略に基づく。この‘分子クランピング’戦略は、構造安定化部分をエクトドメインポリペプチドに融合または連結させてキメラポリペプチドを形成することを採用する。構造安定化部分は一般に、エクトドメインポリペプチドに対する相補性を欠如し、したがってエクトドメインポリペプチドの構造要素とではなくむしろ優先的に相互に会合する相補的ヘプタッドリピートを含む、一本鎖ポリペプチドである。それらの会合に適した条件下で(たとえば水溶液中で)の相補的ヘプタッドリピート相互の会合の結果、エクトドメインポリペプチドの融合後コンホメーションへの再配列を阻害する逆平行、2-ヘリックスバンドルが形成される。構造安定化部分の2-ヘリックスバンドルはトリマー化して高度に安定な6ヘリックスバンドルを形成することができ、よってキメラポリペプチドが自己組織化して人工的なエンベロープウイルス融合タンパク質複合体を形成することが可能になる。こうして組織化した複合体は、天然エンベロープウイルス融合タンパク質複合体の融合前コンホメーションを模倣することができ、キメラポリペプチドのそれぞれの構造安定化部分のコイルドコイル構造により形成された6ヘリックスバンドルを特徴とする3つのキメラポリペプチドを含む。
【0086】
2.1 構造安定化部分
[0105] 本発明者らは、フォールドして逆平行立体配置になり、作動可能な状態で結合したエンベロープウイルスエクトドメインポリペプチドを融合前コンホメーションで安定化する、逆平行、2-ヘリックスバンドルを形成する相補的ヘプタッドリピートを含む一本鎖ポリペプチド部分を構築した。その2-ヘリックスバンドルは、適切にはコイルドコイル構造を形成する。コイルドコイルフォールドは、モータータンパク質、DNA結合タンパク質、細胞外タンパク質およびウイルス融合タンパク質を含めた広範なタンパク質において起きる(参照:たとえば、Burkhard et al., 2001. Trends Cell Biol 11:82-88)
。コイルドコイルは機能的にはフォールディング(アセンブリー、オリゴマー化)モチーフとして特徴づけられてきた;すなわち、コイルドコイル構造の形成は多くの場合、異なるタンパク質鎖の非共有結合会合を推進する。コイルドコイルは構造的には平行、逆平行または混合トポロジーに配置したα-ヘリックスの2-、3-、4-または5本鎖のアセンブリーとして特徴づけられてきた(参照:たとえば、Lupas, 1996. Trends Biochem Sci
21:375-382)。通常、ヘリックスは左巻きまたは右巻きに互いに軽く巻きつき(wrapped) (coiled, wound)、スーパーコイリング(超らせん形成)(supercoiling)と呼ばれる。本
発明の2-ヘリックスバンドルが一般に、高度に安定な6ヘリックス状コイルドコイルバンドルを形成するためにトリマー化する強い傾向をもつコイルドコイル構造を形成することは理解されるであろう。
【0087】
2.1.1 ヘプタッドリピート
[0106] α-ヘリックス状コイルドコイルは、各ヘリックスが一連のヘプタッドリピートで構成されるという点でそれらのアミノ酸配列のレベルで特徴づけられてきた。ヘプタッドリピート(ヘプタッドユニット、ヘプタッド)はhpphpppとしてエンコードできる7残基配列モチーフであり、その際、各‘h’は疎水性残基を表わし、各‘p’は極性残基である。場合により、p-残基がh-位置にみられ、その逆もある。ヘプタッドリピートはしばしばパターンa-b-c-d-e-f-g(abcdefg)またはd-e-f-g-a-b-c(defgabc)によってもコードされ、その場合はインデックス‘a’~‘g’は典型的なアミノ酸タイプがみられる一般的なヘプタッド位置を表わす。一般的に、インデックス‘a’および‘d’はコイルドコイルにおけるコア残基(中心の埋没した残基)の位置を示す。コアa-位置およびd-位置にみられる典型的なアミノ酸タイプは疎水性アミノ酸残基タイプである;他のすべての位置(非コア位置)には、主に極性(親水性)残基タイプがみられる。よって、一般的なヘプタッドパターン‘hpphppp’はパターン表記‘abcdefg’と一致する(‘hppphpp’パターンは‘パターン位置defgabc’と一致し、この表記はコイルドコイルについて用いられるd-位置の疎水性残基で開始する)。本発明のヘプタッドリピート領域は、個々のコイルドコイル構造中に少なくとも2、適切には3以上の連続(中断されていない)ヘプタッドリピートを含む。ヘリックス中の各シリーズの連続ヘプタッドリピートは‘ヘプタッドリピート配列(heptad repeat sequence)’(HRS)と表記される。ヘプタッドリピート配列の始めと終わりは、好ましくは実験的に決定された3次元(3-D)構造が得られればそれに基づいて決定される。3-D構造が得られなければ、ヘプタッドリピート配列の始めと終わりは、好ましくは(hpphppp)または(hppphpp)パターンと実際のアミノ酸配列との最適オーバーレイに基づいて決定され、その際、‘h’および‘p’はそれぞれ疎水性残基および極性残基を表わし、‘n’は2以上の数である。各ヘプタッドリピート配列の始めと終わりは、それぞれa-またはd-位置における最初と最後の疎水性残基であると解釈される。一般的なH-残基は、好ましくはバリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、ヒスチジン、グルタミン、トレオニン、セリンおよびアラニンからなる群から、より好ましくはバリン、イソロイシン、ロイシンおよびメチオニン、最も好ましくはイソロイシンから選択される。一般的なp-残基は、好ましくはグリシン、アラニン、システイン、セリン、トレオニン、ヒスチジン、アスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン、グルタミン酸、リジンおよびアルギニンからなる群から選択される。この方法がアミノ酸残基をヘプタッドリピート配列に明確に割り当てることができない場合、より特殊な分析方法を適用できる;たとえば、COILS法:Lupas et al. (1991. Science 252:1162-1164; http://www.russell.embl-heidelberg.de/cgi -bin/coils-svr.pl)。
【0088】
[0107] 具体的な態様において、各ヘプタッドリピート領域(HR1、HR2)は独立して、たとえばWO 2010/066740(その内容を全体として本明細書に援用する)に記載されるように(a-b-c-d-e-f-g-)または(d-e-f-g-a-b-c-)として表わされるn回反復7残基パターンのアミノ酸タイプを特徴とし、その際、パターン要素‘a’~‘g’はそれらのアミノ酸タイプが存在するヘプタッド位置を表わし、nは2以上の数であり、一般的なヘプタッド位置‘a’および‘d’の少なくとも50%(または少なくとも51%~少なくとも99%、およびその間のすべての整数パーセント)が疎水性アミノ酸タイプにより占有され、一般的なヘプタッド位置‘b’、‘c’、‘e’、‘f’および‘g’の少なくとも50%(または少なくとも51%~少なくとも99%、およびその間のすべての整数パーセント)が親水性アミノ酸タイプにより占有され、生じる疎水性アミノ酸タイプと親水性アミノ酸タイプの分布によりヘプタッドリピート領域を同定することができる。特定の態様において、一般的なヘプタッド位置‘a’および‘d’の少なくとも50%、70%、90%、または100%がバリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、またはその非天然誘導体からなる群から選択されるアミノ酸により占有される。それゆえ、後者のアミノ酸類はより標準的な(より頻繁にみられる)コイルドコイルコア残基に相当する。他の態様において、一般的ヘプタッド位置‘a’および‘d’の少なくとも50%、70%、90%、または100%がイソロイシンにより占有される。ある態様において、一般的ヘプタッド位置‘b’、‘c’、‘e’、‘f’および‘g’の少なくとも50%、70%、90%、または100%が、グリシン、アラニン、システイン、セリン、トレオニン、ヒスチジン、アスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン、グルタミン酸、リジン、アルギニン、またはその非天然誘導体からなる群から選択されるアミノ酸により占有される。このタイプの具体例において、HR1およびHR2領域は配列:IEEIQKQIAAIQKQIAAIQKQIYRM [SEQ ID NO:1]を含み、それからなり、または本質的にそれからなる。
【0089】
[0108] 具体的な態様において、構造安定化部分(structure stabilizing moiety)(本明細書中で“SSM”とも呼ばれる)のHR1およびHR2領域は少なくとも1つの内在性ヘプタッドリピートまたはクラスIエンベロープウイルス融合タンパク質を含む。適切には、HR1およびHR2領域は多くの場合、それぞれ、1以上のクラスIエンベロープウイルス融合タンパク質の相補的HRAおよびHRB領域により形成される。HRA領域アミノ酸配列およびHRB領域アミノ酸配列は同じクラスIエンベロープウイルス融合タンパク質に由来してもよい。あるいは、それらは異なるクラスIエンベロープウイルス融合タンパク質に由来してもよい。代表例において、HR1およびHR2領域は独立して下記のHRAおよびHRB領域から選択される:オルトミクソウイルス(たとえば、インフルエンザA(Inf A)、インフルエンザB(Inf B)、インフルエンザC(Inf C))、パラミクソウイルス(たとえば、麻疹(Measles)(MeV)、牛疫ウイルス(Rinderpest virus)(RPV)、イヌジステンパーウイルス(Canine distemper virus)(
CDV)、RSV、ヒトメタニューモウイルス(Human Metapneumovirus)(HMPV)、
パラインフルエンザウイルス(Parainfluenza virus)(PIV)、流行性耳下腺炎ウイル
ス(Mumps virus)(MuV)、ヘンドラウイルス(Hendra virus)(HeV)、ニパウイル
ス(Nipha virus)(NiV)、ニューカッスル病ウイルス(Newcastle disease virus)(NDV))、レトロウイルス(たとえば、ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)、HTLV-2、HTLV-3、HIV-1、HIV-2)、フィロウイルス(たとえば、エボラウイルス(Ebola virus)(EBOV):ザイール(Zaire)(ZEBOV):レストン(Reston)(REBOV)およびスーダン(Sudan)(SEBOV)株を含む;マールブルグウイルス(Marburg)(MARV))、アレナウイルス(たとえば、ラッサ(Lassa)ウイルス(LASV)、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(Lymphocytic choriomeningitis virus)(LCMV)、フニンウイルス(Junin virus))(JUNV))、およびコロナウイルス(たとえば、ヒトコロナウイルス(Human Corona virus)(HCoV):HCoV 229E、HCoV OC43、HCoV HKU1、HCoV EMCを含む;ヒトトロウイルス(Human Toro virus)(HToV)、中東呼吸器症候群ウイルス(Middle East Respiratory Syndrome virus)(MERS-CoV)、重症急性呼吸器症候群ウイルス(Severe Acute Respiratory Syndrome virus)(SARS-CoV))。
【0090】
[0109] 代表的なHRA領域アミノ酸配列には表5中のものが含まれるが、それらに限定されない。
【0091】
【表5】
【0092】
[0110] 代表的なHRB領域アミノ酸配列には表6中のものが含まれるが、それらに限定されない。
【0093】
【表6】
【0094】
[0111] HR1領域とHR2領域は一緒になって、オリゴマー、一般に3つのHR1領域および3つのHR2領域から構成されるヘキサマーを形成することができ、それは熱力学的に安定であってクラスIウイルス融合タンパク質の融合後コンホメーションの典型となる。オリゴマー化する傾向が強いHR1およびHR2領域を、本明細書中で“相補的”ヘプタッドリピート領域と呼ぶ。そのようなヘプタッドリピート領域の限定ではない例を表7に挙げる。
【0095】
[0112] 具体的な態様において、ヘプタッドリピート領域のうち一方または両方を含む構造安定化部分には、構造安定化部分(特に、フォールドして逆平行、2-ヘリックスバンドルになった場合)に対する免疫応答の誘導または産生を阻害する免疫サイレンシング部分または免疫抑制部分を含む。これらの態様は、エクトドメインポリペプチドまたはその複合体に対してより強いまたは増強された免疫応答を発生できるので、有利である。免疫サイレンシング部分はグリコシル化酵素、特にグリコシルトランスフェラーゼによって特異的に認識されてグリコシル化されるグリコシル化部位であってもよい。グリコシル化はN-結合またはO-結合であってもよい。N-結合は、アスパラギン残基の側鎖への炭水化物部分の結合を表わす。トリペプチド配列N-X-SおよびN-X-T(XはP以外のいずれかのアミノ酸である)は、アスパラギン側鎖への炭水化物部分の酵素結合のための認識配列であり、これらの配列は一般に‘グリコシル化部位’と呼ばれる。O-結合グリコシル化は、ヒドロキシアミノ酸(最も一般的にはセリンまたはトレオニンであるが、5-ヒドロキシプロリンまたは5-ヒドロキシリジンも使用できる)への、糖類N-アセチルグルコサミン、ガラクトースまたはキシロースのうちの1つの結合を表わす。ヘプタッドリピート領域の一方または両方を含めて、構造安定化部分に免疫サイレンシング部分を挿入することができる。
【0096】
[0113] 他の態様において、拡張した遺伝子コードを用いて非自然または非天然アミノ酸をヘプタッドリピート領域の一方または両方に取り込ませることができる。チロシル-tRNA/アミノアシル-tRNAシンセターゼ直交対(orthogonal pair)およびナンセ
ンスコドンを用いて生合成により非天然アミノ酸を希望する位置に取り込ませることができる。外部供給源からキメラポリペプチドを発現できる構築体を発現している細胞へ非天然または非自然アミノ酸を供給し、この戦略によって広範な物理的属性を備えた側鎖を取り込ませることができる;それには、化学架橋基(たとえば、アジドまたはハロアルカン)、トラッキング可能なマーカー(たとえば、蛍光性または放射性)、および時間制御修飾を可能にするための感光性基が含まれるが、これらに限定されない。構造安定化部分への化学的付加により、これらの非自然アミノ酸に種々の部分を共有結合させて有利な特性を付与することができる。
【0097】
【表7】
【0098】
[0114] さらなる態様は、前記例のいずれか可能な組合わせ、または構造安定化部分に共有結合した追加の非自然-化学的付加を含むことができる。
[0115] 場合により、1以上の追加のシステイン残基をHR1および/またはHR2領域に挿入してジスルフィド結合を形成し、構造安定化部分の逆平行α-ヘリックス状コイルドコイル構造をさらに安定化することができる。
【0099】
2.1.2 リンカー
[0116] 本発明の構造安定化部分は、適切にはヘプタッドリピート領域(本明細書中でHR1およびHR2とも呼ばれる)を一定の距離に置くリンカーを含む。リンカーは一般に、明らかにヘプタッドリピート配列に配属される可能性のないいずれかのアミノ酸残基を含む。リンカーは、タンパク質工学操作の領域で異なる機能ユニットを連結するために、たとえば抗体可変軽鎖(VL)と可変重鎖(VH)に由来する一本鎖可変フラグメント(scFv)構築体の作製において、しばしば用いられる。それらは一般に溶液中ではコンホメーション的にフレキシブルであり、適切には主に極性アミノ酸残基タイプから構成される。フレキシブルリンカーにおける典型的な(頻繁に用いられる)アミノ酸はセリンおよびグリシンである。より低い程度に好ましくは、フレキシブルリンカーはアラニン、トレオニンおよびプロリンを含むこともできる。よって、構造安定化部分の介在リンカーは、適切にα-ヘリックス状コイルドコイル構造をとる2-ヘリックスバンドルとしてのHR1とHR2の弛緩状態(立体障害が無い)の会合を確実にするために、好ましくはコンホメーションにおいてフレキシブルである。本発明において想定するポリペプチドに使用するのに適したリンカーは当業者に明らかであり、それらが構造安定化部分の特徴的な2-ヘリックスバンドル構造の組織化を許容する(かつ適切には、妨げない)という意味でそのリンカーが構造的にフレキシブルである限り、一般にアミノ酸配列を連結するために当技術分野で用いられるいかなるリンカーであってもよい。
【0100】
[0117] 当業者は、場合によっては限られた数のルーティン実験を実施した後に、最適リンカーを決定できるであろう。介在リンカーは適切には一般に少なくとも1つのアミノ酸残基からなり、通常は少なくとも2つのアミノ酸残基からなるアミノ酸配列であり、簡便性の理由で選択される決定的ではない上限は約100アミノ酸残基である。具体的な態様において、リンカーは約1~約50アミノ酸残基、または約50~約100アミノ酸残基、通常は約1~約40アミノ酸残基、一般に約1~約30アミノ酸残基からなる。限定ではない例において、リンカーはクラスIエンベロープウイルス融合タンパク質の相補的HRA領域とHRB領域を連結しているアミノ酸の数とほぼ同じ数のアミノ酸をもつ。特定の限定ではない例において、リンカー配列の少なくとも50%のアミノ酸残基がプロリン、グリシン、およびセリンの群から選択される。さらなる限定ではない態様において、リンカー配列のアミノ酸残基の少なくとも60%、たとえば少なくとも70%、たとえば80%、より特別には90%が、プロリン、グリシン、およびセリンの群から選択される。他の特定の態様において、リンカー配列は本質的に極性アミノ酸残基からなる;そのような特定の態様において、リンカー配列のアミノ酸残基の少なくとも50%、たとえば少なくとも60%、たとえば70%または80%、より特別には90%または最大100%が、グリシン、セリン、トレオニン、アラニン、プロリン、ヒスチジン、アスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン、グルタミン酸、リジンおよびアルギニンからなる群から選択される。特定の態様において、リンカー配列は[GGSG]GG、[GGGGS]、[GGGGG]、[GGGKGGGG]、[GGGNGGGG]、[GGGCGGGG]を含むことができ、それらにおいてnは1から10まで、適切には1から5まで、より適切には1から3までの整数である。
【0101】
[0118] ヘプタッドリピート領域がクラスIエンベロープウイルス融合タンパク質のそれぞれ相補的HRAおよびHRB領域を含み、それからなり、または本質的にそれからなる特定の態様において、リンカーはHRA領域とHRB領域を連結する介在-天然アミノ
酸配列を含み、それからなり、または本質的にそれからなる。介在配列は全長またはほぼ全長であってもよく、あるいは全長の介在-天然アミノ酸配列の1以上の部分を含み、それからなり、または本質的にそれからなることができる。他の態様において、リンカーは野生型クラスIエンベロープウイルス融合タンパク質のHRA領域とHRB領域の間にある天然アミノ酸配列を欠如する。前記態様のいずれにおいても、リンカーは1以上の非天然アミノ酸配列を含むことができる。
【0102】
[0119] 構造安定化部分のヘプタッドリピート領域に間隔を置き、好ましくはそれらの領域の逆平行会合を容易にするための構造フレキシビリティーを導入することに加えて、リンカーは1以上の付随的な機能を含むことができる。たとえば、リンカーはキメラポリペプチドの精製を容易にする精製部分および/またはキメラポリペプチドに対する免疫応答を調節する少なくとも1つの免疫調節部分を含むことができる。
【0103】
[0120] 精製部分は一般に、親和性結合によりキメラポリペプチドの回収を可能にするある長さのアミノ酸を含む。多数の精製部分または‘タグ’が当技術分野で知られており、その具体例にはビオチンカルボキシルキャリヤータンパク質タグ(biotin carboxyl carrier protein-tag)(BCCP-タグ)、Myc-タグ(c-myc-タグ)、カルモジュリン-タグ、FLAG-タグ、HA-タグ、His-タグ(ヘキサヒスチジン-タグ、His6、6H)、マルトース結合タンパク質タグ(Maltose binding protein-tag)(MBP-タグ)、Nus-タグ、キチン結合タンパク質タグ(Chitin-binding protein-tag)(CBP-タグ)、グルタチオン-S-トランスフェラーゼタグ(Glutathione-S-transferase-tag)(GST-タグ)、緑色蛍光タンパク質タグ(Green fluorescent protein-tag)(GFP-タグ)、ポリグルタメート-タグ、アミロイドベータ-タグ、チオレドキシン-タグ、S-タグ、Softag 1、Softag 3、Strep-タグ、ストレプトアビジン結合ペプチドタグ(Streptavidin-binding peptide-tag)(SBP-タグ)、ビオチン-タグ、ストレプトアビジン-タグおよびV5-タグが含まれる。
【0104】
[0121] キメラポリペプチドまたはその複合体により誘導される免疫応答を調節するために、免疫調節部分をリンカーに導入することができる。そのような部分の限定ではない例には、たとえば前記の免疫サイレンシングまたは抑制部分;病原性生物に由来する抗原性部分、または他の疾患関連抗原性部分、たとえば癌もしくは腫瘍関連抗原を含む、抗原性部分が含まれる。代表的な病原性生物には、ウイルス、細菌、真菌性寄生生物、藻類ならびに原虫およびアメーバが含まれるが、これらに限定されない。特定の態様において、抗原性部分は病原性ウイルスの抗原に由来する。疾患に関与する具体的なウイルスにはたとえば下記のものが含まれるが、それらに限定されない:麻疹、流行性耳下腺炎、風疹、急性灰白髄炎、A型、B型肝炎(たとえば、GenBank Accession No.E02707)、およびC型肝炎(たとえば、GenBank Accession No.E06890)、ならびに他の肝炎ウイルス、インフルエンザ、アデノウイルス(たとえば、4および7型)、狂犬病(たとえば、GenBank Accession No.M34678)、黄熱病、エプスタイン-バーウイルス、ならびに他のヘルペスウイルス、たとえばパピローマウイルス、エボラウイルス、インフルエンザウイルス、日本脳炎ウイルス(たとえば、GenBank Accession No.E07883)、デング熱ウイルス(たとえば、GenBank Accession No.M24444)、ハンタウイルス、センダイウイルス、呼吸器合包体ウイルス、オルトミクソウイルス、水疱性口内炎ウイルス、ビスナウイルス、サイトメガロウイルスおよびヒト免疫不全ウイルス(HIV)(たとえば、GenBank Accession No.U18552)。そのようなウイルスに由来するいずれか適切な抗原が本発明の実施に有用である。たとえば、具体的なHIV由来のレトロウイルス抗原にはgag、pol、およびenv遺伝子の遺伝子生成物などの抗原、Nefタンパク質、逆転写酵素、および他のHIV構成成分が含まれるが、これらに限定されない。肝炎ウイルス抗原の具体例には、B型肝炎ウイルスのS、MおよびLタンパク質などの抗原、B型肝炎および他の肝炎、たとえばA、B、およびC型肝炎ウイルスのpre-S抗原が含まれるが、これらに限定されない。インフルエンザウイルス抗原の具体例には、ヘマグルチニンおよびノイラミニダーゼなどの抗原、ならびに他のインフルエンザウイルス構成成分が含まれるが、これらに限定されない。麻疹ウイルス抗原の具体例には、麻疹ウイルス融合タンパク質などの抗原、ならびに他の麻疹ウイルス構成成分が含まれるが、これらに限定されない。風疹ウイルス抗原の具体例には、タンパク質E1およびE2などの抗原、ならびに他の風疹ウイルス構成成分;ロタウイルス抗原、たとえばVP7scおよび他のロタウイルス構成成分が含まれるが、これらに限定されない。サイトメガロウイルス抗原の具体例には、エンベロープ糖タンパク質Bなどの抗原、ならびに他のサイトメガロウイルス抗原構成成分が含まれるが、これらに限定されない。呼吸器合包体ウイルス抗原の限定ではない例には、RSV融合タンパク質、M2タンパク質などの抗原、ならびに他の呼吸器合包体ウイルス抗原構成成分が含まれるが、これらに限定されない。単純ヘルペスウイルス抗原の具体例には、最初期タンパク質、糖タンパク質Dなどの抗原、ならびに他の単純ヘルペスウイルス抗原構成成分が含まれるが、これらに限定されない。水痘-帯状疱疹ウイルス抗原の限定ではない例には、9PI、gpIIなどの抗原、ならびに他の水痘-帯状疱疹ウイルス抗原構成成分が含まれるが、これらに限定されない。日本脳炎ウイルス抗原の限定ではない例には、タンパク質E、M-E、M-E-NS 1、NS 1、NS 1-NS2A、80% Eなどの抗原、ならびに他の日本脳炎ウイルス抗原構成成分が含まれるが、これらに限定されない。狂犬病ウイルス抗原の代表例には、狂犬病糖タンパク質、狂犬病核タンパク質などの抗原、ならびに他の狂犬病ウイルス抗原構成成分が含まれるが、これらに限定されない。パピローマウイルス抗原の具体例には、L1およびL2カプシドタンパク質、ならびに子宮頚癌関連のE6/E7抗原が含まれるが、これらに限定されない。ウイルス抗原の他の例については、Fundamental Virology, Second Edition, eds. Fields, B. N. and Knipe, D. M., 1991, Raven Press, New Yorkを参照されたい。具体的な態様において、ウイルス抗原はエクトドメインポリペプチドが対応するエンベロープウイルスの抗原である。他の態様において、ウイルス抗原はエクトドメインポリペプチドが対応するものとは異なるエンベロープウイルスの抗原である。
【0105】
[0122] ある態様において、1以上の癌-または腫瘍-関連抗原をリンカーに挿入する。そのような抗原には下記のものが含まれるが、それらに限定されない:MAGE-2、MAGE-3、MUC-1、MUC-2、HER-2、高分子量メラノーマ-関連抗原MAA、GD2、癌胎児性抗原(CEA)、TAG-72、卵巣-関連抗原OV-TL3およびMOV 18、TUAN、アルファ-フェトプロテイン(AFP)、OFP、CA-125、CA-50、CA-19-9、腎腫瘍-関連抗原G250、EGP-40(EpCAMとしても知られる)、S100(悪性メラノーマ-関連抗原)、p53、前立腺腫瘍-関連抗原(たとえば、PSAおよびPSMA)、p21ras、Her2/neu、EGFR、EpCAM、VEGFR、FGFR、MUC-I、CA 125、CEA、MAGE、CD20、CD19、CD40、CD33、A3、A33抗体に対して特異的な抗原、BrE3抗原、CD1、CD1a、CD5、CD8、CD14、CD15、CD16、CD21、CD22、CD23、CD30、CD33、CD37、CD38、CD40、CD45、CD46、CD52、CD54、CD74、CD79a、CD126、CD138、CD154、B7、Ia、Ii、HMl.24、HLA-DR(たとえば、HLA-DR10)、NCA95、NCA90、HCGおよびサブユニット、CEA(CEACAM5)、CEACAM-6、CSAp、EGP-I、EGP-2、Ba 733、KC4抗原、KS-I抗原、KS1-4、Le-Y、MUC2、MUC3、MUC4、PlGF、ED-Bフィブロネクチン、NCA 66a-d、PAM-4抗原、PSA、PSMA、RS5、SlOO、TAG-72、TlOl、TAG TRAIL-Rl、TRAIL-R2、p53、テネイシン(tenascin)、インスリン様成長因子-1(IGF-I)、Tn抗原など。
【0106】
[0123] リンカーに含まれる抗原性部分(単数または複数)は、全長抗原または部分抗原に相当する可能性がある。部分抗原を用いる場合、その部分抗原は目的とする抗原の1以上のエピトープを含むことができ、それにはB細胞エピトープおよび/またはT細胞エピトープ(たとえば、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)エピトープおよび/またはTヘルパー(Th)エピトープ)が含まれる。多数の抗原のエピトープが文献中に知られており、あるいは当業者に既知のルーティン手法を用いて決定できる。他の態様において、リンカーは免疫化個体内の特定の細胞への送達を提供できる他の細胞ターゲティング部分を含むことができる。目的とする細胞集団にはB細胞、マイクロフォールド細胞(M細胞)(Microfold cell)および抗原提示細胞(antigen-presenting cell)(APC)が含まれるが、これらに限定されない。後者の例において、ターゲティング部分は樹状細胞またはマクロファージなどのAPCに対するキメラポリペプチドまたはその複合体の認識増強を促進する。そのようなターゲティング配列は関連エクトドメインポリペプチドのエピトープのAPC提示を増強することができ、それは次いでエクトドメインポリペプチドに対する抗体および細胞性免疫応答の一方または両方の特異性の強化または拡大を含めて、生じる免疫応答を増大させることができる。APC-ターゲティング部分の限定ではない例には、APC表面受容体、たとえば(それらに限定されない)マンノース特異的レクチン(マンノース受容体)、IgG Fc受容体、DC-SIGN、BDCA3(CD141)、33D1、SIGLEC-H、DCIR、CD11c、熱ショックタンパク質受容体およびスカベンジャー受容体に結合する、リガンドが含まれる。具体的な態様において、APC-ターゲティング部分は樹状細胞ターゲティング部分であり、それは配列FYPSYHSTPQRP(Uriel, et al., J. Immunol. 2004 172: 7425-7431)またはNWYLPWLGTNDW(Sioud, et al., FASEB J 2013 27(8): 3272-83)を含み、それからなり、または本質的にそれからなる。
【0107】
2.2 エンベロープウイルス融合タンパク質およびエクトドメインポリペプチド
[0124] 本発明の分子クランピング戦略は、クラスIおよびクラスIII融合タンパク質を含めて、その野生型カウンターパートがそれらの融合前形態で組織化してトリマーになる広範なエクトドメインポリペプチドを安定化するために有用である。クラスI融合タンパク質の限定ではない例には、下記のウイルスの融合タンパク質が含まれる:オルトミクソウイルス(たとえば、Inf A、Inf BおよびInf CのHAタンパク質)、パラミクソウイルス(たとえば、MeV、RPV、CDV、RSV、HMPV、PIV、MuV、HeV、NiVおよびNDVのFタンパク質)、レトロウイルス(たとえば、HTLV-1、HTLV-2、HTLV-3、HIV-1、HIV-2のエンベロープ糖タンパク質)、フィロウイルス(たとえば、EBOV、ZEBOV、REBOV、SEBOVおよびMARVの糖タンパク質)、アレナウイルス(たとえば、LASV、LCMVおよびJUNVの糖タンパク質および安定シグナルペプチド(stable signal peptide)(SSP))、およびコロナウイルス(たとえば、HCoV、HToV、SARS-CoVおよびMERS-CoVのSタンパク質)。代表的なクラスIII融合タンパク質には、下記のウイルスの融合タンパク質が含まれる:ラブドウイルス(たとえば、狂犬病ウイルス(Rabies virus)(RABV)、オーストラリアコウモリリッサウイルス(Australian Bat Lyssa virus)(ABLV)、ウシ流行熱ウイルス(Bovine ephemeral fever virus)(BEFV)、および水疱性口内炎ウイルス(Vesicular stomatitis virus)(VSV)の糖タンパク質(G))、およびヘルペスウイルス(たとえば、ヒトヘルペスウイルス1型(HHV-1(単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)としても知られる)、HHV-2(HSV-2としても知られる)、HHV-3(水痘-帯状疱疹ウイルス(Varicella zoster virus)(VZV)としても知られる)、HHV-4(エプスタイン-バーウイルス(Epstein Barr virus)(EBV)としても知られる)およびHHV-5(サイトメガロウイルス(CMV)としても知られる)の糖タンパク質(gB、gD、gH/L))。
【0108】
[0125] エクトドメインポリペプチドは全長前駆体エクトドメインポリペプチドまたはその一部を含むか、あるいはそれからなることができる。ある態様において、エクトドメインポリペプチドは内在性シグナルペプチド、エクトドメインの内在性ヘッド部分、エクトドメインの内在性ステム部分、内在性ムチン様ドメイン、内在性の膜近傍外部領域(MPER)、および内在性融合ペプチドのうちいずれか1以上を欠如する。あるいは、またはさらに、エクトドメインポリペプチドをプロテアーゼ(たとえば、フーリンなどの細胞性プロテアーゼ)によるタンパク質分解開裂に対してより低い感受性にするために、野生型または基準の融合タンパク質の1以上の内在性タンパク質分解開裂部位(たとえば、1以上のフーリン開裂部位)が変異または欠失していてもよい。
【0109】
[0126] 本発明のエクトドメインポリペプチドは、全長エンベロープウイルス前駆体融合タンパク質中に存在する種々の構造部分および機能部分またはドメインの位置の知識を用いて構築することができる。そのような前駆体タンパク質およびそれらの関連ドメインの限定ではない例を、具体的なエクトドメインポリペプチド態様の構築を参照して以下に述べる。
【0110】
2.2.1 Inf A HA
[0127] 代表的なInf A HA前駆体は、下記のアミノ酸配列をもつ:
【0111】
【化1】
【0112】
この配列は下記のドメイン/部分を含む:
[0128] SP=1-16
[0129] エクトドメイン=17-529
[0130] フーリン開裂部位=345-346
[0131] FP=346-355
[0132] HRA領域=356-390
[0133] HRB領域=421-470
[0134] MPER=470-529
[0135] TM=530-553
[0136] C=534-556
[0137] ヘッド領域=51-328,403-444,
[0138] ステム領域=17-58,327-401,442-509.
[0139] Inf A HAエクトドメインポリペプチドの限定ではない例には下記のものが含まれる:
エクトドメイン1-529:
[0140]
【0113】
【化2】
【0114】
エクトドメイン マイナス SP 18-529:
[0141]
【0115】
【化3】
【0116】
エクトドメイン マイナス SP マイナス MPER18-469:
[0142]
【0117】
【化4】
【0118】
エクトドメイン18-341,346-529 プラス 変異フーリン開裂部位:
[0143]
【0119】
【化5】
【0120】
ステムドメイン1-58,327-401,442-509 プラス リンカー領域:
[0144]
【0121】
【化6】
【0122】
ヘッドドメイン1-18,51-328,403-444 プラス リンカー領域:
[0145]
【0123】
【化7】
【0124】
2.2.2 Inf B HA
[0146] 代表的なInf B HA前駆体は、下記のアミノ酸配列をもつ:
【0125】
【化8】
【0126】
[0147] この配列は下記のドメイン/部分を含む:
[0148] SP=1-16
[0149] エクトドメイン=17-547
[0150] フーリン開裂部位=361-362
[0151] FP=362-382
[0152] HRA領域=383-416
[0153] HRB領域=436-487
[0154] MPER=488-547
[0155] TM=548-573
[0156] C=574-584
[0157] ヘッド領域=48-344,418-456
[0158] ステム領域=17-47,345-417,457-547
[0159] Inf B HAエクトドメインポリペプチドの限定ではない例には下記のものが含まれる:
エクトドメイン1-547:
[0160]
【0127】
【化9】
【0128】
エクトドメイン マイナス SP 17-547:
[0161]
【0129】
【化10】
【0130】
エクトドメイン マイナス SP マイナス MPER 17-487:
[0162]
【0131】
【化11】
【0132】
エクトドメイン マイナス SP プラス 変異フーリン開裂部位17-355,362-547:
[0163]
【0133】
【化12】
【0134】
ステムドメイン1-47,345-417,457-547 プラス リンカー領域:
[0164]
【0135】
【化13】
【0136】
ヘッドドメイン1-17,48-344,418-456 プラス リンカー領域:
[0165]
【0137】
【化14】
【0138】
2.2.3 RSV F
[0166] 限定ではないRSF F前駆体は、下記のアミノ酸配列をもつ:
【0139】
【化15】
【0140】
[0167] この配列は下記のドメイン/部分を含む:
[0168] SP=1-23
[0169] エクトドメイン=24-524
[0170] フーリン開裂部位=109-110,136-137
[0171] FP=137-163
[0172] HRA領域=164-196
[0173] HRB領域=488-524
[0174] TM=525-548
[0175] C=549-574
[0176] D25相互作用ドメイン=61-97,193-240
[0177] RSV Fエクトドメインポリペプチドの限定ではない例には下記のものが含まれる:
[0178] エクトドメイン1-524:
[0179]
【0141】
【化16】
【0142】
RSV Fエクトドメイン(1-520):
[0180]
【0143】
【化17】
【0144】
エクトドメイン マイナス SP 24-524:
[0181]
【0145】
【化18】
【0146】
エクトドメイン マイナス SP プラス 変異フーリン開裂部位24-524:
[0182]
【0147】
【化19】
【0148】
D25相互作用ドメイン 61-97,193-240 プラス リンカー領域:
[0183]
【0149】
【化20】
【0150】
2.2.4 hMPV F
[0184] 具体的なhMPV F前駆体は、下記のアミノ酸配列をもつ:
【0151】
【化21】
【0152】
[0185] この配列は下記のドメイン/部分を含む:
[0186] SP=1-19
[0187] エクトドメイン=1-490
[0188] フーリン開裂部位=102-103
[0189] FP=103-125
[0190] HRA領域=126-169
[0191] HRB領域=456-490
[0192] TM=491-514
[0193] C=515-539
[0194] hMPV Fエクトドメインポリペプチドの限定ではない例には下記のものが含まれる:
エクトドメイン1-490:
[0195]
【0153】
【化22】
【0154】
エクトドメイン マイナス SP 20-490:
[0196]
【0155】
【化23】
【0156】
エクトドメイン マイナス SP プラス 変異フーリン開裂部位20-490:
[0197]
【0157】
【化24】
【0158】
2.2.5 PIV F
[0198] 代表的なPIV F前駆体は、下記のアミノ酸配列をもつ:
【0159】
【化25】
【0160】
[0199] この配列は下記のドメイン/部分を含む:
[0200] SP=1-19
[0201] エクトドメイン=1-493
[0202] フーリン開裂部位=109-110
[0203] FP=110-135
[0204] HRA領域=136-168
[0205] HRB領域=458-493
[0206] TM=494-516
[0207] C=517-536
[0208] PIV Fエクトドメインポリペプチドの限定ではない例には下記のものが含まれる:
エクトドメイン1-493:
[0209]
【0161】
【化26】
【0162】
エクトドメイン マイナス SP 20-493:
[0210]
【0163】
【化27】
【0164】
エクトドメイン マイナス SP プラス 変異フーリン開裂部位20-493:
[0211]
【0165】
【化28】
【0166】
2.2.6 MeV F
[0212] 代表的なMeV F前駆体は、下記のアミノ酸配列をもつ:
【0167】
【化29】
【0168】
[0213] この配列は下記のドメイン/部分を含む:
[0214] SP=1-24
[0215] エクトドメイン=1-493
[0216] フーリン開裂部位=112-113
[0217] FP=113-137
[0218] HRA領域=138-171
[0219] HRB領域=454-493
[0220] TM=494-517
[0221] C=518-550
[0222] MeV Fエクトドメインポリペプチドの限定ではない例には下記のものが含まれる:
エクトドメイン1-493:
[0223]
【0169】
【化30】
【0170】
エクトドメイン マイナス SP 25-493:
[0224]
【0171】
【化31】
【0172】
エクトドメイン マイナス SP プラス 変異フーリン開裂部位:
[0225]
【0173】
【化32】
【0174】
2.2.7 HeV F
[0226] 限定ではないHeV F前駆体は、下記のアミノ酸配列をもつ:
【0175】
【化33】
【0176】
[0227] この配列は下記のドメイン/部分を含む:
[0228] SP=1-20
[0229] エクトドメイン=1-487
[0230] フーリン開裂部位=109-110
[0231] FP=110-135
[0232] HRA領域=136-169
[0233] HRB領域=456-587
[0234] TM=488-518
[0235] C=519-546
[0236] HeV Fエクトドメインポリペプチドの限定ではない例には下記のものが含
まれる:
エクトドメイン1-487:
[0237]
【0177】
【化34】
【0178】
エクトドメイン マイナス SP 21-487:
[0238]
【0179】
【化35】
【0180】
エクトドメイン マイナス SP プラス 変異フーリン開裂部位21-487:
[0239]
【0181】
【化36】
【0182】
2.2.8 NiV F
[0240] 代表的なNiV F前駆体は、下記のアミノ酸配列をもつ:
【0183】
【化37】
【0184】
[0241] この配列は下記のドメイン/部分を含む:
[0242] SP=1-20
[0243] エクトドメイン=1-487
[0244] フーリン開裂部位=109-110
[0245] FP=110-135
[0246] HRA領域=136-169
[0247] HRB領域=456-487
[0248] TM=488-518
[0249] C=519-546
[0250] NiV Fエクトドメインポリペプチドの限定ではない例には下記のものが含まれる:
エクトドメイン1-487:
[0251]
【0185】
【化38】
【0186】
エクトドメイン マイナス SP:
[0252]
【0187】
【化39】
【0188】
エクトドメイン マイナス SP プラス 変異フーリン開裂部位:
[0253]
【0189】
【化40】
【0190】
2.2.9 HIV GP160
[0254] 具体的なHIV GP160前駆体は、下記のアミノ酸配列をもつ:
【0191】
【化41】
【0192】
[0255] この配列は下記のドメイン/部分を含む:
[0256] SP=1-28
[0257] エクトドメイン=1-688
[0258] フーリン開裂部位=508-509
[0259] FP=509-538
[0260] HRA領域=539-587
[0261] HRB領域=631-667
[0262] MPER=668-688
[0263] TM=689-711
[0264] C=712-861
[0265] GP41=509-861
[0266] GP120=1-508
[0267] HIV GP160エクトドメインポリペプチドの限定ではない例には下記のものが含まれる:
エクトドメイン1-688:
[0268]
【0193】
【化42】
【0194】
エクトドメイン マイナス SP:
[0269]
【0195】
【化43】
【0196】
エクトドメイン マイナス SP マイナス MPER:
[0270]
【0197】
【化44】
【0198】
エクトドメイン マイナス SP プラス 変異フーリン開裂部位:
[0271]
【0199】
【化45】
【0200】
GP41エクトドメイン 509-688:
[0272]
【0201】
【化46】
【0202】
2.2.10 EBOV GP
[0273] 代表的なEBOV GP前駆体は、下記のアミノ酸配列をもつ:
【0203】
【化47】
【0204】
[0274] この配列は下記のドメイン/部分を含む:
[0275] SP=1-27
[0276] エクトドメイン=1-650
[0277] フーリン開裂部位=501-502
[0278] カテプシン開裂部位=191-192,201-202
[0279] FP=511-556
[0280] HRA領域=557-593
[0281] HRB領域=600-635
[0282] MPER=636-650
[0283] TM=651-669
[0284] C=670-676
[0285] ムチン様ドメイン=312-461
[0286] EBOV GPエクトドメインポリペプチドの限定ではない例には下記のものが含まれる:
エクトドメイン1-650:
[0287]
【0205】
【化48】
【0206】
エクトドメイン マイナス SP:
[0288]
【0207】
【化49】
【0208】
エクトドメイン マイナス SP マイナス MPER:
[0289]
【0209】
【化50】
【0210】
エクトドメイン マイナス SP プラス 変異フーリン開裂部位:
[0290]
【0211】
【化51】
【0212】
エクトドメイン マイナス SP マイナス ムチン様ドメイン:
[0291]
【0213】
【化52】
【0214】
エクトドメイン マイナス ムチン様ドメイン:
[0292]
【0215】
【化53】
【0216】
2.2.11 MARV GP
[0293] 限定ではないMARV GP前駆体は、下記のアミノ酸配列をもつ:
【0217】
【化54】
【0218】
[0294] この配列は下記のドメイン/部分を含む:
[0295] SP=1-19
[0296] エクトドメイン=1-650
[0297] フーリン開裂部位=434-435
[0298] FP=526-549
[0299] HRA領域=582-598
[0300] HRB領域=611-627
[0301] MPER=628-650
[0302] TM=651-669
[0303] C=670-681
[0304] ムチン様ドメイン=244-425
[0305] MARV GPエクトドメインポリペプチドの限定ではない例には下記のものが含まれる:
エクトドメイン1-650:
[0306]
【0219】
【化55】
【0220】
エクトドメイン マイナス SP 20-650:
[0307]
【0221】
【化56】
【0222】
エクトドメイン マイナス SP マイナス MPER 20-627:
[0308]
【0223】
【化57】
【0224】
エクトドメイン マイナス SP プラス 変異フーリン開裂部位:
[0309]
【0225】
【化58】
【0226】
エクトドメイン マイナス SP マイナス ムチン様ドメイン:
[0310]
【0227】
【化59】
【0228】
2.2.12 SARS-CoV S
[0311] 具体的なSARS-CoV S前駆体は、下記のアミノ酸配列をもつ:
【0229】
【化60】
【0230】
[0312] この配列は下記のドメイン/部分を含む:
[0313] SP=1-13
[0314] エクトドメイン=1-1199?
[0315] ヒト気道トリプシン様プロテアーゼ開裂部位=667-668
[0316] FP=770-788
[0317] HRA領域=892-1013
[0318] HRB領域=1145-1187
[0319] MPER=1188-1199
[0320] TM=1200-1216
[0321] C=1217-1255
[0322] SARS-CoV Sエクトドメインポリペプチドの限定ではない例には下記のものが含まれる:
エクトドメイン1-1199:
[0323]
【0231】
【化61】
【0232】
エクトドメイン マイナス SP:
[0324]
【0233】
【化62】
【0234】
エクトドメイン マイナス SP マイナス MPER:
[0325]
【0235】
【化63】
【0236】
2.2.13 MERS-CoV S
[0326] 代表的なMERS-CoV S前駆体は、下記のアミノ酸配列をもつ:
【0237】
【化64】
【0238】
[0327] この配列は下記のドメイン/部分を含む:
[0328] SP=1-21
[0329] エクトドメイン=1-1301
[0330] フーリン開裂部位=751-752,887-888
[0331] FP=888-891,951-980
[0332] HRA領域=984-1105
[0333] HRB領域=1248-1291
[0334] MPER=1292-1301
[0335] TM=1302-1318
[0336] C=1319-1353
[0337] MERS-CoV Sエクトドメインポリペプチドの限定ではない例には下記のものが含まれる:
エクトドメイン1-1301:
[0338]
【0239】
【化65】
【0240】
エクトドメイン マイナス SP 22-1301
[0339]
【0241】
【化66】
【0242】
エクトドメイン マイナス SP マイナス MPER 22-1291:
[0340]
【0243】
【化67】
【0244】
エクトドメイン マイナス SP プラス 変異フーリン開裂部位:
[0341]
【0245】
【化68】
【0246】
2.2.14 VSV G
[0342] 代表的なVSV G前駆体は、下記のアミノ酸配列をもつ:
【0247】
【化69】
【0248】
[0343] この配列は下記のドメイン/部分を含む:
[0344] SP=1-17
[0345] エクトドメイン=1-462
[0346] MPER=421-462
[0347] TM=462-483
[0348] C=484-510
[0349] VSV Gエクトドメインポリペプチドの限定ではない例には下記のものが含まれる:
エクトドメイン1-462:
[0350]
【0249】
【化70】
【0250】
エクトドメイン マイナス SP:
[0351]
【0251】
【化71】
【0252】
エクトドメイン マイナス SP マイナス MPER:
[0352]
【0253】
【化72】
【0254】
2.2.15 RABV GP
[0353] 代表的なRABV GP前駆体は、下記のアミノ酸配列をもつ:
【0255】
【化73】
【0256】
[0354] この配列は下記のドメイン/部分を含む:
[0355] SP=1-20
[0356] エクトドメイン=1-458
[0357] TM=459-478
[0358] C=479-524
[0359] RABV GPエクトドメインポリペプチドの限定ではない例には下記のものが含まれる:
エクトドメイン1-458:
[0360]
【0257】
【化74】
【0258】
エクトドメイン マイナス SP:
[0361]
【0259】
【化75】
【0260】
2.2.16 HSV1 Gb
[0362] 代表的なHSV1 Gb前駆体は、下記のアミノ酸配列をもつ:
【0261】
【化76】
【0262】
[0363] この配列は下記のドメイン/部分を含む:
[0364] SP=1-24
[0365] エクトドメイン=1-774
[0366] TM=775-795
[0367] C=796-904
[0368] HSV1 Gbエクトドメインポリペプチドの限定ではない例には下記のものが含まれる:
エクトドメイン1-774:
[0369]
【0263】
【化77】
【0264】
エクトドメイン マイナス SP 25-775:
[0370]
【0265】
【化78】
【0266】
[0371] 本発明のキメラポリペプチドを作製するために用いたエクトドメインポリペプチド配列は、自然界でエンベロープウイルス融合タンパク質内に見出すことができ、および/またはそれは天然の融合タンパク質配列に比較して1以上の(たとえば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30)一アミノ酸変異(挿入、欠失または置換)をもつことができる。たとえば、Fタンパク質を変異させてそれらのフーリン開裂配列を除去し、それにより細胞内プロセシングを阻止することが知られている。具体的な態様において、エクトドメインポリペプチドはSP、TMおよびCドメインのうちいずれか1以上を欠如し、場合により天然の融合タンパク質配列に比較して1以上の(たとえば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30)一アミノ酸変異(挿入、欠失または置換)を含む。
【0267】
[0372] 本発明は、いずれか希望するエンベロープウイルス融合タンパク質アミノ酸配列、たとえばSEQ ID NO:2~127のアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:2~127に対して同一性もしくは類似性をもつ配列を使用できる。一般に、それはSEQ ID NO:2~127に対して少なくとも75%の同一性または類似性、たとえば少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の同一性または類似性をもつであろう。
【0268】
2.3 代表的なキメラポリペプチド構築体
[0373] 本発明のキメラポリペプチドの限定ではない例を以下に述べる:
2.3.1 Inf A HAエクトドメイン-HIV GP160-ベースのSSM
[0374]
【0269】
【化79】
【0270】
2.3.2 Inf A HAステムドメイン-HIV GP160-ベースのSSM
[0375]
【0271】
【化80】
【0272】
2.3.3 Inf A H5エクトドメイン-HIV GP160-ベースのSSM
[0376]
【0273】
【化81】
【0274】
2.3.4 Inf B HAエクトドメイン-HIV GP160-ベースのSSM
[0377]
【0275】
【化82】
【0276】
2.3.5 RSV Fエクトドメイン-HIV GP160-ベースのSSM
[0378]
【0277】
【化83】
【0278】
2.3.6 RSV F(1-520)-HIV GP160-ベースのSSM:
[0379]
【0279】
【化84】
【0280】
2.3.7 RSV F(1-520)-DScav変異-HIV GP160-ベースのSSM:
[0380]
【0281】
【化85】
【0282】
2.3.8 hMPV Fエクトドメイン-HIV GP160-ベースのSSM
[0381]
【0283】
【化86】
【0284】
2.3.9 PIV Fエクトドメイン-HIV GP160-ベースのSSM
[0382]
【0285】
【化87】
【0286】
2.3.10 MeV Fエクトドメイン-HIV GP160-ベースのSSM
[0383]
【0287】
【化88】
【0288】
2.3.11 HeV Fエクトドメイン-HIV GP160-ベースのSSM
[0384]
【0289】
【化89】
【0290】
2.3.12 NiV Fエクトドメイン-HIV GP160-ベースのSSM
[0385]
【0291】
【化90】
【0292】
2.3.13 HIV GP160エクトドメイン-RSV F-ベースのSSM
[0386]
【0293】
【化91】
【0294】
2.3.14 EBOV GPエクトドメイン マイナス ムチン様ドメイン(1-311,462-650)- HIV GP160-ベースのSSM
[0387]
【0295】
【化92】
【0296】
2.3.15 MARV GPエクトドメイン マイナス ムチン様ドメイン-HIV
GP160-ベースのSSM
[0388]
【0297】
【化93】
【0298】
2.3.16 SARS-CoV Sエクトドメイン-HIV GP160-ベースの
SSM
[0389]
【0299】
【化94】
【0300】
2.3.17 MERS-CoV Sエクトドメイン-HIV GP160-ベースのSSM
[0390]
【0301】
【化95】
【0302】
2.3.18 VSV Gエクトドメイン-HIV GP160-ベースのSSM
[0391]
【0303】
【化96】
【0304】
2.3.19 RABV GPエクトドメイン-HIV GP160-ベースのSSM
[0392]
【0305】
【化97】
【0306】
2.3.20 HSV1 Gbエクトドメイン-HIV GP160-ベースのSSM
[0393]
【0307】
【化98】
【0308】
2.4 万能オリゴマー化ドメインとしての構造安定化部分の使用
[0394] 構造安定化部分は、本発明のエクトドメインポリペプチドを融合後コンホメーションへの再配列に対して安定化することにおけるそれの有用性に加えて、目的とするいずれかのヘテロロガス分子をオリゴマー化してオリゴマー、特にトリマーにする、万能オリゴマー化ドメイン(universal oligomerization domain)(UOD)として有用である。特定の態様において、UODをヘテロロガスタンパク性分子の上流または下流に融合させて、キメラポリペプチドを形成する。一般に、UODをヘテロロガスタンパク性分子の下流に融合させる。本明細書に記載するエクトドメイン態様と同様に、UODの会合に適した条件下での(たとえば水溶液中での)相補的ヘプタッドリピート相互の会合の結果、逆平行、2-ヘリックスバンドルの形成が起き、それがトリマー化して高度に安定な6ヘリックスバンドルを形成し、こうしてキメラポリペプチドがトリマー化してトリマーポリペプチド複合体を形成することが可能になる。
【0309】
[0395] ヘテロロガスタンパク性分子は天然または非天然ポリペプチドであってよい。ある態様において、ヘテロロガスポリペプチドは療法用ポリペプチドであるか、あるいはそれを含む。リガンドおよび受容体の両方を含めて、多様な疾患を処置するためにきわめて多様な療法用ポリペプチドが有用であることが当技術分野で知られている。療法用ポリペプチドについての既知のターゲットおよび適応症の種々の例を表8に示す。
【0310】
【表8-1】
【0311】
【表8-2】
【0312】
[0396] 本発明のUODを用いて、トリマー化した可溶性受容体、たとえば下記を含むものを作製することができる;TNF受容体スーパーファミリーメンバー、Igスーパーファミリーメンバー、サイトカイン受容体スーパーファミリーメンバー、ケモカイン受容体スーパーファミリーメンバー、インテグリンファミリーメンバー,成長因子受容体ファミリー、ホルモン受容体、オピオイド受容体、他の神経ペプチド受容体、特に下記を含むイオンチャンネル:CD1a-e、CD2(LFA-2)、CD2R、CD3γ、CD3
δ、CD3ε、CD4-7、CD8a、CD8b、CD9、CD10 CD11a、CD11b、CD11c、CDwl2、CD13、CD14、CD15、CD15s、CD15u、CD16a(FcγRIIIA)、CD16b(FcγRIIIB)、CDw17、CD18(インテグリンβ2)、CD19-28、CD29(インテグリンβ1)、CD30、CD31(PE-CAM-1)、CD32(FcγRII)、CD33(Siglec-3)、CD34-41、CD42a-d、CD43、CD44、CD44R、CD45、CD45RA、CD45RB、CD45RO、DC47、CD47R、CD48、CD49a-f(VLA-1-6)、CD50(ICAM-3)、CD51、CD52、CD53、CD54(ICAM-1)、CD55、CD56(N-CAM)、CD57、CD58(LFA-3)、CD59、CD60a-c、CD61、CD62E、CD62L、CD62P、CD63、CD64、CD65、CD65s、CD66a-f、CD68、CD69、CD70、CD71、CD72、CD73、CD74、CD75、CD75s、CD77、CD79a、CD79b、CD80、CD81、CD82、DC83、CDw84、CD85、CD86-CD91、CDw92、CD93、CD94-CD99、CD99R、CD100-CD106、CD107a、CD107b、CD108-CD112、CDw113、CD114(G-CSFR)、CD115(M-CSFR)、CD116、CD117、CD118、CDw119、CD120a、CD120b、CD121a(IL-1R、I型)、CDw121b(IL-1R、II型)、CD122(IL-2Rβ)、CDw123(IL-3R)、CD124(IL-4R)、CDw125(IL-5R)、CD126(IL-6R)、CD127(IL-7R)、CDw128、CDw128b(IL-8Rβ、CD129(IL-9R)、CD130(IL-6Rβ)、CDw131、CD132、CD133、CD134(Ox-40)、CD135-CD139、CD140a(PDGFRα)、CD140b(PDGFRβ)、CD141-CD144、CDw145、CD146、CD147、CD148、CD15、CD151、CD152(CTLA-4)、CD153(CD30L)、CD154(CD40L)、CD155、CD156a-c、CD157、CD158a、CD158b、CD159a、CD159c、CD160、CD161、CD162、CD162R、CD163、CD164、CD165、CD166、CD167a、CD168、CD169、CD170、CD171、CD172a、CD172b、CD172g、CD173、CD174、CD175、CD175s、CD176、CD178(FasL)、CD179a、CD179b、CD180、CD181(CXCR1)、CD182(CXCR2)、CD183(CXCR3)、CD184(CXCR4)、CD185(CXCR5)、CDw186(CXCR6)、CD191(CCR-1)、CD192(CCR2)、CD193(CCR3)、CD194(CCR4)、CD195(CCR5)、CD196(CCR6)、CD197(CCR7)、CDw198(CCR8)、CDwl99(CCR9)、CD200(Ox-2)、CD201、CD202b、CD203c、CD204(マクロファージスカベンジャーR)、CD207(ランゲリン(Langerin))、CD208(DC-LAMP)、CD209(DC-SIGN)、CDw210(IL-10R)、CD212(IL-12-Rβ1)、CD213a1(IL-13-Rα1)、CD213a2(IL-13-Rα2)、CDw217(IL-17-R)、CDw218a(IL-18Rα)、CDw218b(IL-18Rβ)、CD220(インスリン-R)、CD221(IGF-1R)、CD222(IGF-II R)、CD223-234、CD235a(グリコフォリン(glycophorin)A)、CD235ab(グリコフォリンA/B)、CD235b(グリコフォリンB)、CD236(グリコフォリンC/D)、CD236R(グリコフォリンC)、CD238、CD239、CD240CE、CD240D、CD241-CD249、CD252(Ox40L)、CD254(RANKL)、CD256(APRIL)、CD257(BAFF)、CD258(LIGHT)、CD261(TRAIL-R1)、CD262(TRAIL-R2)、CD263(DcR1)、CD264(DcR2)、CD256(RANK)、CD266(TWEAK-R)、CD267(TACI)、CD268(BAFFR)、CD269(BCMA)、CD271(NGFR)、CD272(BTLA)、CD273(PD-L2)、CD274(PD-L1)、CD275(B7-H2)、CD276(B7-H3)、CD277、CD278(ICOS)、CD279(PD1)、CD280、CD281(TLR1)、CD282(TLR2)、CD283(TLR3)、CD284(TLR4)、CD289(TLR9)、CD292、CDw293、CD294、CD295(レプチンR)、CD296、CD297、CD298(Na+/K+-ATPase β3サブユニット)、CD299(L-SIGN)、CD300a、CD300c、CD300e、CD301-CD307、CD309(VEGF-R2)、CD312、CD314-322、CD324、CDw325、CD326、CDw327、CDw328、CDw329、CD331-CD337、CDw338、CD339、B7-H4、Xedar、CCR10、CCR11、CX3CR1、ケモカイン様受容体-1(ChemR23)、補体受容体、DARC、IL-11R、IL-12R、IL-13R、IL-15R、IL-20R、IL-21R、IL-22R、IL-23R、IL-27R、IL-28R、IL-31R、XCR1、CX3CR1、ケモカイン-結合タンパク質2(D6)、インターフェロン受容体、白血球関連Ig様受容体ファミリー、LILRC1およびLILRC2を含む免疫グロブリン様受容体ファミリー、ロイコトリエン受容体、LAMP、ネクチン様タンパク質1-4、IgSF8、免疫グロブリン様トランスクリプト(transcript)ファミリー LT1-6、EDAR、ストローマ由来因子(stromal derived factor)(SDF)、胸腺間質性リンパ球新生因子(thymic stromal lymphopoietin)受容体、エリスロポエチン受容体、トロンボポエチン受容体、上皮成長因子受容体、線維芽細胞成長因子受容体FGF1-4、肝細胞成長因子受容体(HGF-R)、epaCAM、インスリン様成長因子受容体IGF1-RおよびIGF2-R,フィブロネクチン、フィブロネクチン ロイシンリッチ膜貫通タンパク質FLRT1-3、Her2、3および4、CRELD1および2、8D6A、リポタンパク質受容体(LDL-R)、C型レクチン様ファミリーメンバー、たとえばCLEC-1、CLEC-2、CLEC4D、4Fおよびデクチン(Dectin)1および2、ライリン(layilin)、成長ホルモン受容体、プロラクチン(prolactin)放出ホルモン受容体(PRRP)、コルチコトロピン放出ホルモン受容体(CRHR)、卵胞刺激ホルモン受容体(FSHR)、性腺刺激ホルモン放出ホルモン受容体(GNRHR)、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン受容体(TRHR)、ソマトスタチン受容体SSTR1-SSTR5、バソプレシン受容体1A、1B、2、オキシトシン受容体、黄体形成ホルモン/コリオゴナドトロピン(choriogonadotropin)受容体(LHCGR)、甲状腺刺激ホルモン受容体、心房性ナトリウム利尿因子受容体NPR1-3、アセチルコリン受容体(AChR)、カルシトニン受容体(CT)、コレシストキニン(cholecystokinin)受容体CCKARおよびCCKBR、血管作用性腸管ペプチド受容体VPAC1および2、δ-オピオイド受容体、κ-オピオイド受容体、μ-オピオイド受容体、σ受容体σ1およびσ、カンナビノイド受容体R1および2、アンギオテンシン受容体AT1-4、ブラジキニン受容体V1および2、タキキニン受容体1(TACR1)、カルシトニン受容体様受容体(CRLR),ガラニン受容体R1-3、GPCR 神経ペプチド受容体神経ペプチドB/W R1および2、神経ペプチドFF受容体R1およびR2、神経ペプチドS受容体R1、神経ペプチドY受容体Y1-5、ニューロテンシン受容体、IおよびII型アクチビン受容体、アクチビン受容体様キナーゼ(Alk-1およびAlk-7)、ベータグリカン、BMPおよびアクチビン膜結合インヒビター(BAMBI)、クリプト(cripto)、Trk受容体TrkA、TrkB、TrkC、AXL受容体ファミリー、LTK受容体ファミリー、TIE-1、TIE-2、Ryk、ニューロピリン1、Eph受容体EPHA1、EPHA2、EPHA3、EPHA4、EPHA5、EPHA6、EPHA7、EPHA8、EPHA9、EPHA10、EPHB1、EPHB2、EPHB3、EPHB4、EPHB5、EPHB6、メラノコルチン受容体MC-3およびMC-4、AMICA、CXADR、副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン-結合タンパク質、クラス-I限定T細胞関連分子(Class-I resricted T-cell-associated molecule)、MHCI、MHCII,アンポテリン誘導遺伝子およびORF(ampoterin-induced gene and ORF)(AMIGO)、APJ、アシアロ糖タンパク質受容体1および2(ASGPR)、脳特異的血管形成インヒビター3(BAI-3)、基底細胞接着分子/ルテラン(Lutheran)血液型糖タンパク質(BCAM/Lu)、カドヘリン、CDCP1、嚢胞性線維症膜貫通型伝導度レギュレーターMRP-7、軟骨レクチン(chondro lectin)、肺サーフェクチン、クローディン(claudin)、ANTHXR2、コラーゲン、補体受容体、コンタクチン(contactin)1-6、キューブリン(cubulin)、エンドグリカン、EpCAM(epithelial cellular adhesion molecule,上皮細胞接着分子)、内皮プロテインC受容体(Endothelial Protein C receptor)(EPCR)、Eph受容体、グルカゴン様ペプチド受容体GLP-1Rおよび2R、グルタメート受容体、グルコーストランスポーター、グリシン受容体、グリピカン(glypican)、G-タンパク質共役型胆汁酸受容体、G-タンパク質共役型受容体15、KLOTHOファミリーメンバー、レプチン受容体、LIMPII、LINGO、NOGO、リンパ管内皮ヒアルロナン受容体(lymphatic bessel endothelial hyaluronan receptor)(LYVE-1)、骨髄阻害性C型レクチン様受容体(myeloid inhibitory C-type lectin-like receptor)CLEC12A、ネオゲニン(neogenin)、ネフリン(nephrin)、NETO-1、NETO-2、NMDA受容体、オピオイド結合性細胞接着分子、破骨細胞阻害性レクチン関連タンパク質、オンコスタチン(oncostatin)受容体、破骨細胞関連受容体、骨アクチビン、トロンビン受容体、ポドプラニン(podoplanin)、ポリミン(porimin)、カリウムチャンネル、Pref-1、幹細胞因子受容体、セマフォリン(semaphorin)、SPARC、スカベンジャー受容体A1、スタビリン(stabilin)、シンデカン(syndecan)、T細胞受容体、TCAM-1、T細胞サイトカイン受容体TCCR、トロンボスポンジン、TIM1-6、toll様受容体、骨髄細胞上に発現したトリガリング受容体(triggering receptor expressed on myeloid cell)(TREM)およびTREM様タンパク質、TROP-2、またはそのいずれかのミメティックもしくはアナログ。
【0313】
[0397] さらに、本発明のUODを用いて前記受容体のいずれかのリガンド、たとえば下記のものをトリマー化することができる:たとえばTNFスーパーファミリーメンバー、サイトカインスーパーファミリーメンバー、成長因子、ケモカインスーパーファミリーメンバー、血管形成促進因子(pro-angiogenic factor)、アポトーシス促進因子(pro-apoptotic factor)、インテグリン、ホルモン、および、特に下記を含む他の可溶性因子:RANK-L、リンホトキシン(Lymphotoxin)(LT)-α、LT-β、LT-α1β2、zLIGHT、BTLA、TL1A、FasL、TWEAK、CD30L、4-1BB-L(CD137L)、CD27L、Ox40L(CD134L)、GITRL、CD40L(CD154)、APRIL(CD256)、BAFF、EDA1、IL-1α、IL-1β、IL-1RA、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-13、IL-14、IL-15、IL-16、IL-17A、IL-17F、IL-17A/F、IL-18、IL-1g、IL-20、IL-21、IL-22、IL-23、IL-24、IL-25、IL-26、IL-27、IL-28、IL-29、IL-30、IL-31、IL-32、IL-33、IL-34、IL-35、IFN-ガンマ、IFN-アルファ、IFN-ベータ、TNF-α、TNF-β、G-CMF、GM-CSF、TGF-β1、2および3、TGF-α、カルジオトロフィン-1、白血病阻止因子(leukemia inhibitory factor)(LIF)、ベータセルリン(betacellulin)、アンフィレグリン(amphiregulin)、胸腺間質リンホポエチン(thymic stromal lymphopoietin)(TSLP)、flt-3、CXCL1-16、CCL1-3、CCL3L1、CCL4-CCL8、CCL9/10、CCL11-28、XCL1、XCL2、CX3CL1、HMG-B1、熱ショックタンパク質、ケメリン(chemerin)、デフェンシン(defensin)、マクロファージ遊走阻止因子(macrophage migration inhibitory factor)(MIF)、オンコスタチンM(oncostatin M)、リミチン(limitin)、血管内皮成長因子VEGF A-DおよびPIGF、水晶体上皮由来成長因子、エリスロポエチン、トロンボポエチン、血小板由来成長因子、上皮成長因子、線維芽細胞成長因子FGF1-14および16-23、肝細胞癌由来成長因子、ヘパソシン(hepassocin)、肝細胞成長因子、血小板由来内皮成長因子(platelet-derived endothelial growth factor)(PD-ECGF)、インスリン様成長因子IGF1およびIGF2、IGF結合タンパク質(IGFBP 1-6)、GASPS(growth and differentiation-factor-associated serum protein,成長および分化因子関連血清タンパク質)、結合組織成長因子、エピジェン(epigen)、エピレグリン(epiregulin)、発生動脈および神経堤上皮成長因子(developmental arteries and neural crest epidermal growth factor)(DANCE)、グリア成熟因子-β、インスリン、成長ホルモン、アンギオゲニン、アンギオポエチン1-4、アンギオポエチン様タンパク質1-4、インテグリンαVβ3、αVβ5およびα5β1、エリスロポエチン、トロンボポエチン、プロラクチン放出ホルモン、コルチコトロピン放出ホルモン(CRH)、性腺刺激ホルモン放出ホルモン、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン、ソマトスタチン、バソプレシン、オキシトシン、デモキシトシン(demoxytocin)、カルベトシン(carbetocin)、黄体形成ホルモン(LH)および絨毛性性腺刺激ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、ANP、BNP、CNP、カルシトニン、CCK a、CCK B、血管作用性腸管ペプチド1および2、エンセファリン、ダイノルフィン、β-エンドルフィン、モルヒネ、4-PPBP、[1]SA 4503、ジトリルグアニジン(Ditolylguanidine)、シラメシン(siramesine) アンギオテンシン、カリジン(kallidin)、ブラジキニン、タキキニン、サブスタンスP(substance P)、カルシトニン、ガラニン、ニューロテンシン、神経ペプチドY1-5、神経ペプチドS、神経ペプチドFF、神経ペプチドB/W、脳由来神経栄養因子(brain-derived neurotrophic factor)BDNF、NT-3、NT-4/5、アクチビンA、AB、BおよびC、インヒビン、ミュラー管抑制ホルモン(Mullerian inhibiting hormone)(MIH)、骨形成タンパク質BMP2、BMP3、BMP4、BMP5、BMP6、BMP7、BMP8a、BMP8b、BMP10、BMP15、成長分化因子GDF1、GDF2、GDF3、GDF5、GDF6、GDF7、ミオスタチン(Myostatin)/GDF8、GDF9、GDF10、GDF11、GDF15、神経成長因子(NGF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィン-3(NT-3)、およびニューロトロフィン-4(NT-4)、アルテミン(artemin)、ペルセフィン(persephin)、ニュールツリン(neurturin)、GDNF、アグリン(agrin)、エフリン(ephrin)リガンドEFNA1、EFNA2、EFNA3、EFNA4、EFNA5 EFNB1、EFNB2、EFNB3、アディポネクチン、α2-マクログロブリン、アグリカン(agrecan)、アグーチ関連タンパク質(agouti-related protein)(AgRP)、α-メラノサイト刺激ホルモン、アルブミン、アメロブラスチン(ameloblastin)、プラスミノーゲン、アンギオスタチン、アポリポタンパク質A1、AII、B、B100、E、アミロイド、オートファジン(autophagin)、TGF-ベータ誘導タンパク質Ig H3)、ビグリカン(biglycan)、白血球由来ケモタキシンLECT2、C-反応性タンパク質、補体成分、コルディン(chordin)、コルディン様タンパク質、コlレクチン(collectin)、クラステリン様プロテイン1、コルチゾール、ファン・ヴィレブランド因子(van willebrandt factor)、サイトスタチン、エンドスタチン、エンドレペリン(endoreppellin)、エフリン(ephrin)リガンド、フェチュイン(fetuin)、フ
ィコリン(ficolin)、グルカゴン、グラニュライシン(granulysin)、グレムリン(gremlin)、HGFアクチベーターインヒビターHAI-1および2、カリクレイン(kallilcrein)、ラミニン、レプチン、リポカリン、マンナン結合レクチン(mannan binding lectin)(MBL)、メテオリン(meteorin)、MFG-E8、マクロファージガラクトース N-アセチルガラクトサミン特異的レクチン(MGL)、ミッドカイン(midkine)、ミオシリン(myocilin)、ネスチン(nestin)、骨芽細胞特異的因子2、オステオポンチン、オステオクリン(osteocrin)、オステオアドヘリン(osteoadherin)、ペントラキシン(pentraxin)、ペルセフィン(persephin)、胎盤成長因子、リラキシン(relaxin)、レジスチン(resistin)およびレジスチン様分子、幹細胞因子、スタンニオカルシン(stanniocalcin)、VE-スタチン、サブスタンスP、テネイシン、ビトロネクチン、組織因子(tissue factor)、組織因子経路インヒビター、ならびに分泌タンパク質データベースに挙げられたヒト セクレトーム(secretome)中に同定された他のいずれかの>7000のタンパク質(Chen Y et al., 2005. Nucleic Acids Res 33 Database Issue:D169-173)、またはそのいずれかのミメティックもしくはアナログ。
【0314】
[0398] さらに、本発明のUODを用いて、酵素、たとえばアンギオテンシン変換酵素(ACE)、マトリックスメタロプロテアーゼ、トロンボスポンジンI型モチーフをもつADAMメタロプロテアーゼ(ADAMTS1、4、5、13)、アミノペプチダーゼ、ベータ部位APP開裂酵素(beta-site APP-cleaving enzyme)(BACE-1および-2
)、キマーゼ(chymase)、カリクレイン、リーリン(reelin)、セルピン(serpin)、または
そのいずれかのミメティックもしくはアナログをトリマー化することができる。
【0315】
[0399] 同様に、本発明のUODを用いて、化学療法薬、およびトキシン、たとえば細菌、真菌、植物もしくは動物に由来する小分子トキシンもしくは酵素活性トキシンまたはそのフラグメントをトリマー化して、療法目的のためのターゲティッド化合物、たとえばカリケアマイシン、シュードルナスエキソトキシン、ジフテリアトキシン、リシン(ricin)、サポリン(saporin)、アポトーシス誘導ペプチド、またはそのいずれかのアナログの力価を高めることができる。
【0316】
[0400] 他の態様において、同様に、本発明のUODは、癌ワクチン用の抗原、たとえば特に結腸直腸癌抗原A33、α-フェトプロテイン、ムチン1(MUC1)、CDCP1、癌胎児性抗原細胞接着分子、Her-2、3および4、メソテリン(mesothelin)、CDCP1、NETO-1、NETO-2、シンデカン(syndecan)、ルイスY(LewisY)、CA-125、メラノーマ関連抗原(MAGE)、チロシナーゼ、上皮腫瘍抗原(epithelial tumor antigen)(ETA)を融合するために、また感染性疾患の処置のためのウイルスエンベロープ抗原もしくは真菌抗原を融合するために、使用できる。
【0317】
2.5 キメラポリペプチド構築体の製造方法
[0401] 本発明のキメラポリペプチドは、化学合成または組換え手段で製造できる。通常は、これらのキメラポリペプチドはキメラポリペプチドをコードする組換え構築体を適切な宿主細胞において発現させることにより製造されるが、適切ないかなる方法も使用できる。適切な宿主細胞にはたとえば下記のものが含まれる:昆虫細胞(たとえば、ネッタイシマカ(Aedes aegypti)、オートグラファ・カリフォルニアカ(Autographa californica)、カイコ(Bombyx mori)、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)、ツマジロクサヨトウ(Spodoptera frugiperda)、およびイラクサギンウワバ(Trichoplusia ni))、哺乳動物細胞(たとえば、ヒト、非ヒト霊長類、ウマ、ウシ、ヒツジ、イヌ、ネコおよびげっ歯類(たとえば、ハムスター))、鳥類細胞(たとえば、ニワトリ、アヒルおよびガチョウ)、細菌(たとえば、大腸菌(Escherichia coli))、枯草菌(Bacillus subtilis)、および連鎖球菌の種(Streptococcus spp.))、酵母細胞(たとえば、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、カンジダ・マルトーサ(Candida maltosa)、ハンゼヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorphs)、クルイベロマイセス・フラギリス(Kluyveromyces fragilis)、クルイベロマイセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)、ピキア・ギリエルモンディ(Pichia guillerimondii)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、分裂酵母(Schizosaccharomyces pombe)およびヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica))、テトラヒメナ(Tetrahymena)細胞(たとえば、テトラヒメナ・サーモフィラ(Tetrahymena thermophile))、またはその組合わせ。多数の適切な昆虫細胞および哺乳動物細胞が当技術分野で周知である。適切な昆虫細胞には、たとえばSf9細胞、Sf21細胞、Tn5細胞、シュナイダー(Schneider)S2細胞、およびHigh Five細胞(親イラクサギンウワバ(Trichoplusia ni)BTI-TN-5B1-4細胞系に由来する分離クローン(Invitrogen))が含まれる。適切な哺乳動物細胞には、たとえばチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ヒト胎児腎細胞(HEK293細胞;一般に、断片化したアデノウイルス5型DNAにより形質転換したもの)、NIH-3T3細胞、293-T細胞、Vero細胞、HeLa細胞、PERC.6細胞(ECACC寄託番号96022940)、Hep G2細胞、MRC-5(ATCC CCL-171)、WI-38(ATCC CCL-75)、アカゲザル胎仔肺細胞(ATCC CL-160)、メイディン・ダービー(Madin-Darby)ウシ腎(Madin-Darby bovine kidney)(“MDBK”)細胞、メイディン・ダービーイヌ腎(“MDCK”)細胞(たとえば、MDCK(NBL2)、ATCC CCL34;またはMDCK 33016、DSM ACC 2219)、ベビーハムスター腎(BHK)細胞、たとえばBHK21-F、HKCC細胞などが含まれる。適切な鳥類細胞には、たとえばニワトリ胚性幹細胞(たとえば、EBx(登録商標)細胞)、ニワトリ胚線維芽細胞、ニワトリ胚生殖細胞、アヒル細胞(たとえば、AGE1.CRおよびAGE1.CR.pIX細胞系(ProBioGen);たとえばVaccine 27:4975-4982 (2009)およびWO2005/042728に記載)、EB66細胞などが含まれる。
【0318】
[0402] 適切な昆虫細胞発現系、たとえばバキュロウイルス系は、当業者に知られており、たとえばSummers and Smith, Texas Agricultural Experiment Station Bulletin No. 1555 (1987)に記載されている。バキュロウイルス/昆虫細胞発現系のための材料および方法はキットの形で、特にInvitrogen(カリフォルニア州サンディエゴ)から市販されている。鳥類細胞発現系も当業者に知られており、たとえばU.S. Pat. No. 5,340,740; 5,656,479; 5,830,510; 6,114,168; および 6,500,668; European Patent No. EP 0787180B; European Patent Application No. EP03291813.8; WO 03/043415; および WO 03/076601に記載されている。同様に、細菌および哺乳動物細胞発現系も当業者に知られており、たとえばYeast Genetic Engineering (Barr et al., eds., 1989) Butterworths, Londonに記載されている。
【0319】
[0403] 本発明のキメラポリペプチドをコードする組換え構築体は、適切なベクターにおいて一般的方法を用いて製造することができる。昆虫または哺乳動物細胞における組換えタンパク質の発現のための多数の適切なベクターが当技術分野で周知かつ一般的である。適切なベクターは多数の構成要素を含むことができ、それには1以上の下記のものが含まれるが、それらに限定されない:複製起点;選択マーカー遺伝子;1以上の発現制御エレメント、たとえば転写制御エレメント(たとえば、プロモーター、エンハンサー、ターミネーター)、および/または1以上の翻訳シグナル;ならびに選択した宿主細胞における分泌経路をターゲティングするためのシグナル配列またはリーダー配列(たとえば、哺乳動物起源のもの、またはヘテロロガス哺乳動物もしくは非-哺乳動物の種に由来するもの)。たとえば、昆虫細胞における発現に適したバキュロウイルス発現ベクター、たとえばpFastBac(Invitrogen)を用いて組換えバキュロウイルス粒子を作製することができる。バキュロウイルス粒子を増幅させ、昆虫細胞の感染に使用して組換えタンパク質を発現させる。哺乳動物細胞における発現のために、希望する哺乳動物宿主細胞(たとえば、チャイニーズハムスター卵巣細胞)における発現を推進するベクターを使用する。
【0320】
[0404] キメラポリペプチドはいずれか適切な方法を用いて精製できる。沈殿法、ならびにたとえば疎水性相互作用、イオン交換、アフィニティー、キレーティングおよびサイズ排除を含めた種々のタイプのクロマトグラフィーが当技術分野で周知である。適切な精製スキームは、これらまたは他の適切な方法のうち2以上を用いて実施できる。所望により、キメラポリペプチドは、セクション2.1.2に記載したように、精製を容易にする精製部分または“タグ”を含むことができる。そのようなタグ付きポリペプチドを、たとえば調整培地からキレーティングクロマトグラフィーまたはアフィニティークロマトグラ
フィーによって簡便に精製できる。
【0321】
[0405] キメラポリペプチドは追加配列を含むことができる。たとえば、発現の目的で、対象とするヘテロロガスポリペプチドの天然リーダー配列(たとえば、エンベロープウイルス融合タンパク質の天然リーダーペプチド)を異なるものに置き換えてもよい。
【0322】
3.キメラポリペプチドの内在性産生のための核酸構築体
[0406] 本発明は、宿主生物、適切には脊椎動物、好ましくは哺乳動物、たとえばヒト)においてキメラポリペプチドを内在性産生するための核酸構築体をも考慮に入れる。核酸構築体は、自己複製する染色体外ベクター/レプリコン(たとえば、プラスミド)、または宿主ゲノム内へ組み込まれるベクターであってもよい。特定の態様において、核酸構築体はウイルスベクターである。代表的なウイルスベクターには、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、ポックスウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノウイルス随伴ウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、フラビウイルスベクター、およびアルファウイルスベクターが含まれる。ウイルスベクターは、生きているもの、弱毒化したもの、複製条件付き(replication conditional)または複製欠損性(replication deficient)であってもよく、一般に非病原性(欠如(defective))、複製コンピテントウイルスベクターである。
【0323】
[0407] たとえば、ウイルスベクターがワクシニアウイルスベクターである場合、本発明のキメラポリペプチドをコードするポリヌクレオチドをワクシニアウイルスベクターゲノムの非必須部位に挿入することができる。そのような非必須部位は、たとえばPerkus et al. (1986. Virology 152:285); Hruby et al. (1983. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80:3411); Weir et al. (1983. J. Virol. 46:530)に記載されている。ワクシニアウイル
スに使用するのに適切なプロモーターにはP7.5(参照:たとえば、Cochran et al. 1985. J. Virol. 54:30);P11(参照:たとえば、Bertholet, et al., 1985. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:2096);およびCAE-1(参照:たとえば、Patel et al., 1988. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:9431)が含まれるが、これらに限定されない。高度に弱毒化したワクシニアの株の方がヒトに使用するものとして許容でき、それにはLister、NYVAC(特異的ゲノム欠失を含む)(参照:たとえば、Guerra et al., 2006. J. Virol. 80:985-998); Tartaglia et al., 1992. AIDS Research and Human Retroviruses 8:1445-1447)、またはMVA(参照:たとえば、Gheradi et al., 2005. J. Gen. Virol. 86:2925-2936); Mayr et al., 1975. Infection 3:6-14)が含まれる。Hu et al. (2001. J. Virol. 75:10300-10308), 癌療法のためのベクターとしてのヤバ様病(Yaba-Like disease)ウイルスの使用を記載); U.S. Pat. No. 5,698,530および6,998,252も参照されたい。たとえば、U.S. Pat. No. 5,443,964も参照されたい。U.S. Pat. No. 7,247,615および7,368,116も参照されたい。
【0324】
[0408] ある態様において、目的とするキメラポリペプチドを発現させるためにアデノウイルスベクターを使用できる。ウイルストランスファーベクターのベースとなりうるアデノウイルスは、いかなる起源、いかなるサブグループ、いかなるサブタイプ、サブタイプの混合物、またはいかなる血清型のものであってもよい。たとえば、アデノウイルスはサブグループA(たとえば、血清型12、18、および31)、サブグループB(たとえば、血清型3、7、11、14、16、21、34、35、および50)、サブグループC(たとえば、血清型1、2、5、および6)、サブグループD(たとえば、血清型8、9、10、13、15、17、19、20、22~30、32、33、36~39、および42~48)、サブグループE(たとえば、血清型4)、サブグループF(たとえば、血清型40および41)、未分類血清グループ(たとえば、血清型49および51)、または他のいずれかのアデノウイルス血清型のものであってもよい。アデノウイルス血清型1~51はAmerican Type Culture Collection(AT
CC,バージニア州マナッサス)から入手できる。非-グループC アデノウイルス、および非ヒトアデノウイルスすら、複製欠損性アデノウイルスベクターを作製するために使用できる。非-グループC アデノウイルスベクター、非-グループC アデノウイルスベクターを作製する方法、および非-グループC アデノウイルスベクターを使用する方法は、たとえばU.S. Pat. No. 5,801,030、5,837,511および5,849,561、ならびにInternational Patent Application WO 97/12986およびWO 98/53087に開示されている。いかなるアデノウイルスも、キメラアデノウイルスですら、アデノウイルスベクターのためのウイルスゲノムの供給源として使用できる。たとえば、ヒトアデノウイルスを複製欠損性アデノウイルスベクターのためのウイルスゲノムの供給源として使用できる。アデノウイルスベクターのさらなる例を、Molin et al. (1998. J. Virol. 72:8358-8361), Narumi et al. (1998. Am J. Respir. Cell Mol. Biol. 19:936-941), Mercier et al. (2004. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 101:6188-6193), U.S.Publication No. 20150093831, 20140248305, 20120283318, 20100008889, 20090175897および20090088398、ならびにU.S. Pat. No. 6,143,290; 6,596,535; 6,855,317; 6,936,257; 7,125,717; 7,378,087; 7,550,296に見出すことができる。
【0325】
[0409] ウイルスベクターはアデノ随伴ウイルス(AAV)をベースとすることもできる。AAV-ベースのベクターの記載については、たとえばU.S. Pat. No. 8,679,837, 8,637,255, 8,409,842, 7,803,622, および7,790,449, ならびにU.S. Publication No. 20150065562, 20140155469, 20140037585, 20130096182, 20120100606, および20070036757を参照されたい。AAVベクターは自己相補的(self-complementary)(sc)AAVベクターであってもよく、それらはたとえばU.S. Patent Publication 2007/01110724および2004/0029106, ならびにU.S. Pat. No. 7,465,583および7,186,699に記載されている。
【0326】
[0410] 単純ヘルペスウイルス(HSV)-ベースのウイルスベクターも本発明のキメラポリペプチドの内在性産生に適している。多くの複製欠損性HSVベクターが、複製を阻止するために1以上の中初期(intermediate-early)遺伝子を排除する欠失を含む。ヘルペスベクターの利点は、それが長期DNA発現をもたらすことができる潜伏期に入る能力、および最大25kbの外因性DNAを収容できるそれの大型ウイルスDNAゲノムである。HSV-ベースのベクターの記載については、たとえばU.S. Pat. No. 5,837,532, 5,846,782, 5,849,572, および5,804,413, ならびにInternational Patent Application WO 91/02788, WO 96/04394, WO 98/15637, およびWO 99/06583を参照されたい。
【0327】
[0411] レトロウイルスベクターには、ネズミ白血病ウイルス(MuLV)、テナガザル(gibbon ape)白血病ウイルス(GaLV)、エコトロピック(環境栄養性)(ecotropic)レトロウイルス、類人猿免疫不全(simian immunodeficiency virus)(SW)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、およびその組合わせをベースとするものを含めることができる(参照:たとえば、Buchscher et al., 1992. J. Virol. 66:2731-2739; Johann et al., 1992. J. Virol. 66:1635-1640; Sommerfelt et al., 1990. Virology 176:58-59; Wilson et al., 1989. J. Virol. 63:2374-2378; Miller et al., 1991. J. Virol. 65:2220-2224; Miller et al., 1990. Mol. Cell Biol. 10:4239; Kolberg, 1992. NIH Res. 4:43; Cornetta et al.,1991. Hum. Gene Ther. 2:215)。
【0328】
[0412] 特定の態様において、レトロウイルスベクターはレンチウイルスベクターである。当業者に理解されるように、ウイルスベクター、たとえばレンチウイルスベクターは、一般にウイルスベクターゲノムを含むウイルスベクター粒子を表わす。たとえば、レンチウイルスベクター粒子はレンチウイルスベクターゲノムを含むことができる。レンチウイルスベクターに関して、そのベクターゲノムは多数の適切な入手可能なレンチウイルスゲノムをベースとするベクターに由来するものであってよく、それにはヒト遺伝子療法適用のために同定されたものが含まれる(参照:たとえば、Pfeifer et al., 2001. Annu. Rev. Genomics Hum. Genet. 2:177-211)。適切なレンチウイルスベクターゲノムには、ヒト免疫不全ウイルス(HIV-1)、HIV-2、ネコ免疫不全(FIV)、ウマ伝染性貧血症ウイルス、類人猿免疫不全ウイルス(SIV)、およびマエディ/ビスナ(maedi/visna)ウイルスをベースとするものが含まれる。レンチウイルスの望ましい特性はそれらが分裂細胞および非分裂細胞の両方に感染できることであるが、ターゲット細胞は分裂中の細胞であるかまたは分裂するように刺激されている必要はない。一般に、ゲノムとエンベロープ糖タンパク質は異なるウイルスをベースとし、したがって得られるウイルスベクター粒子はシュードタイプ化されている(pseudotyped)。ウイルスベクターの安全機能を取り込むのが望ましい。安全機能には、本明細書中にさらに詳細に記載するように自己不活化(self-inactivating)LTRおよび組込み欠損が含まれる。ある態様において、組込み欠損はベクターゲノムのエレメントにより付与できるが、パッケージング系のエレメントから誘導することもできる(たとえば、ベクターゲノムの一部ではなくトランスで供給してもよい非機能性インテグラーゼタンパク質)。代表的なベクターは、パッケージングシグナル(packaging signal)(psi)、Rev応答エレメント(Rev-responsive element)(RRE)、スプライスドナー、スプライスアクセプター、場合によりセントラルポリプリントラクト(central poly-purine tract)(cPPT)、およびWPREエレメントを収容している。ある代表的な態様において、ウイルスベクターゲノムはレンチウイルスゲノム、たとえばHIV-1ゲノムまたはSIVゲノムからの配列を含む。ウイルスゲノム構築体は、レンチウイルスの5’および3’LTRからの配列を含むことができ、特にレンチウイルスの5’LTRからのRおよびU5配列ならびにレンチウイルスからの不活化したまたは自己不活化3’LTRを含むことができる。LTR配列は、いずれのレンチウイルスのいずれの種に由来するLTR配列であってもよい。たとえば、それらはHIV、SIV、FIVまたはBIVからのLTR配列であってもよい。一般に、LTR配列はHIV LTR配列である。
【0329】
[0413] ベクターゲノムは、不活化したまたは自己不活化3’LTRを含むことができる(参照:たとえば、Zufferey et al., 1998. J. Virol. 72: 9873; Miyoshi et al., 1998. J. Virol. 72:8150)。自己不活化ベクターは、一般に3’側の長い末端反復配列(long terminal repeat)(LTR)からエンハンサーおよびプロモーター配列を欠失し、それはベクター組込みに際して5’LTR中へコピーされる。一例において、3’LTRのU3エレメントはそれのエンハンサー配列、TATAボックス、SplおよびNF-カッパBの部位の欠失を含む。3’LTRの自己不活化の結果として、侵入および逆転写の後に生成するプロウイルスは不活化した5’LTRを含むであろう。その理論的根拠は、ベクターゲノムの移動のリスクおよび近辺の細胞プロモーターに対するLTRの影響を低減することによって安全性を改善することである。自己不活化3’LTRは当技術分野で知られているいずれかの方法により構築できる。
【0330】
[0414] 場合により、レンチウイルス5’LTRからのU3配列をウイルス構築体においてプロモーター配列、たとえばヘテロロガスプロモーター配列で置き換えることができる。これにより、パッケージング細胞系から回収されるウイルスの力価を増大させることができる。エンハンサー配列も収容することができる。パッケージング細胞系におけるウイルスRNAゲノムの発現を増大させるエンハンサー/プロモーター組合わせをいずれも使用できる。一例において、CMVエンハンサー/プロモーター配列を使用する(参照:たとえば、U.S. Pat. No. 5,385,839および5,168,062)。
【0331】
[0415] ある態様において、レンチウイルスベクターを組込み欠損性であるように構築することにより、挿入変異形成のリスクを最小限に抑える。非組込み型ベクターゲノムを作製するために多様なアプローチを遂行できる。これらのアプローチは、pol遺伝子のインテグラーゼ酵素構成要素中へ、それが不活性インテグラーゼをもつタンパク質をコードするように変異(単数または複数)を工学的に作製することを伴なう。たとえば、一方
または両方の付着部位を変異または欠失させることにより、あるいは3’LTR-近位ポリプリン区画(proximal polypurine tract)(PPT)を欠失または修飾によって非機能
性にすることにより、ベクターゲノム自体を修飾して組込みを阻止することができる。さらに、非遺伝学的アプローチを利用できる;これらには、インテグラーゼの1以上の機能を阻害する薬理作用物質が含まれる。これらのアプローチは相互排他的ではなく、すなわちそれらのうち1より多くを同時に使用できる。たとえば、インテグラーゼと付着部位の両方が非機能性であってもよく、あるいはインテグラーゼとPPT部位が非機能性であってもよく、あるいは付着部位とPPT部位が非機能性であってもよく、あるいはそれらのすべてが非機能性であってもよい。
【0332】
[0416] 代表的なレンチウイルスベクターは、たとえばU.S. Publication No. 20150224209, 20150203870, 20140335607, 20140248306, 20090148936, および20080254008に記載されている。
【0333】
[0417] ウイルスベクターはアルファウイルス属(Alpha virus)をベースとしてもよい
。アルファウイルスには下記のものが含まれる:シンドビス(Sindbis)ウイルス(および
ベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEEV))、アウラ(Aura)ウイルス、ババンキ(Babanki)ウイルス、バルマ森林(Barmah Forest)ウイルス、ババル(Bebaru)ウイルス、キャバッソウ(Cabassou)ウイルス、チクングニア(Chikungunya)ウイルス、東部ウマ脳炎ウイルス、エバーグレーズ(Everglades)ウイルス、フォートモルガン(Fort Morgan)ウイルス、ゲタ(Getah)ウイルス、ハイランドJ(Highlands J)ウイルス、クイズールアガッシュ(Kyzylagach)ウイルス、マヤロ(Mayaro)ウイルス、メトリ(Me Tri)ウイルス、ミッデルブルグ(Middelburg)ウイルス、モッソダスペドラス(Mosso das Pedras)ウイルス、ムカンボ(Mucambo)ウイルス、ヌドゥム(Ndumu)ウイルス、オニョンニョン(O'nyong-nyong)ウイルス、ピクスナ(Pixuna)ウイルス、リオネグロ(Rio Negro)ウイルス、ロスリバー(Ross River)ウイルス、サケ膵臓病ウイルス、セムリキ森林(Semliki Forest)ウイルス(SFV)、南ゾウアザラシウイルス、トナテ(Tonate)ウイルス、トロカラ(Trocara)ウイルス、ウナ(Una)ウイルス、ベネズエラウマ脳炎ウイルス、西部ウマ脳炎ウイルス、およびワタロア(Whataroa)ウイルス。一般に、そのようなウイルスのゲノムは、宿主細胞の細胞質において翻訳できる非構造タンパク質(たとえば、レプリコン)および構造タンパク質(たとえば、カプシドおよびエンベロープ)をコードする。ロスリバーウイルス、シンドビスウイルス、SFV、およびVEEVはすべて、導入遺伝子送達のためのウイルストランスファーベクターを開発するために用いられている。シュードタイプ化ウイルスは、アルファウイルスエンベロープ糖タンパク質とレトロウイルスカプシドを組み合わせることにより形成できる。アルファウイルスベクターの例は、U.S. Publication No. 20150050243, 20090305344, および20060177819中に見出すことができる。
【0334】
[0418] あるいは、ウイルスベクターは、フラビウイルス(flavivirus)をベースとすることができる。フラビウイルスには下記のものが含まれる:日本脳炎ウイルス、デング熱ウイルス(たとえば、Dengue-1、Dengue-2、Dengue-3、Dengue-4)、黄熱病ウイルス、マレーバレー脳炎(Murray Valley encephalitis)ウイルス、セントルイス脳炎ウイルス、西ナイル熱ウイルス、クンジン(Kunjin)ウイルス、ロシオ脳炎(Rocio encephalitis)ウイルス、イレウス(Ilheus)ウイルス、ダニ媒介性脳炎(Tick-borne encephalitis)ウイルス、中央ヨーロッパ脳炎ウイルス、シベリア脳炎(Siberian encephalitis)ウイルス、ロシア春夏脳炎(Russian Spring-Summer encephalitis)ウイルス、キャサヌール森林病(Kyasanur Forest Disease)ウイルス、オムスク出血熱(Omsk Hemorrhagic fever)ウイルス、跳躍病(Louping ill)ウイルス、ポワッサン(Powassan)ウイルス、根岸(Negishi)ウイルス、アブセタロフ(Absettarov)ウイルス、ハンサロバ(Hansalova)ウイルス、アポイ(Apoi)ウイルス、およびヒプル(Hypr)ウイルス。フラビウイルスベクターの例は、U.S. Publication No. 20150231226, 20150024003, 20140271708, 20140044684, 20130243812, 20120294889, 20120128713, 20110135686, 20110014229, 20110003884, 20100297167, 20100184832, 20060159704, 20060088937, 20030194801および20030044773中に見出すことができる。
【0335】
4.キメラポリペプチド複合体
[0419] 本発明のキメラポリペプチドは適切な条件下で自己組織化してキメラポリペプチド複合体を形成することができる。したがって、本発明はさらにキメラポリペプチド複合体を製造する方法であって、下記を含む方法を包含する:キメラポリペプチドを、キメラポリペプチド複合体の形成に適した条件下で(たとえば水溶液中で)結合させ、それにより、3つのキメラポリペプチドを含み、キメラポリペプチドのそれぞれの構造形成部分のコイルドコイル構造により形成された6ヘリックスバンドルを特徴とするキメラポリペプチド複合体を製造する。結合するキメラポリペプチドは同一または非同一であってよく、それによりそれぞれホモトリマーおよびヘテロトリマーが形成される。
【0336】
[0420] 一般に、キメラポリペプチドは緩衝化水溶液(たとえば、pH約5~約9)中で自己組織化する。必要であれば、再フォールディングおよび自己組織化を促進するために緩和な変性条件を採用して、たとえば尿素、少量の有機溶媒の含有、または熱によって、キメラポリペプチドを緩和に変性させることができる。
【0337】
[0421] 適切なキメラポリペプチド調製物をいずれもこの方法に使用できる。たとえば、希望するキメラポリペプチドを含有する調整した細胞培養培地をこの方法に使用できる。しかし、精製したキメラポリペプチドをこの方法に使用することが好ましい。
【0338】
[0422] エクトドメインポリペプチドをオリゴマー化するために構造安定化部分/ユニバーサルオリゴマー化ドメインを用いてキメラポリペプチド複合体を形成する特定の態様において、複合体のエクトドメインポリペプチドサブユニットは融合前コンホメーションにある。いずれか特定の理論により拘束されることは望まないが、ヘテロロガスな構造安定化部分が複合体形成を誘発し、エクトドメインポリペプチドの内部部分またはドメイン(たとえば、クラスIエクトドメインポリペプチドのHRAおよびHRB領域、またはクラスIIIエクトドメインの中心のα-ヘリックス状コイルドコイルおよびC末端領域における融合ループ(単数または複数))が相互作用するのを阻止するので、本明細書に記載する複合体において融合前形態のエクトドメインポリペプチドトリマーが安定化すると考えられる。そのような内部部分またはドメインの相互作用は融合後形態への再フォールディングをもたらす。
【0339】
5.スクリーニング方法
[0423] 本発明は、好ましくは特異的にエンベロープウイルスの融合タンパク質および/または融合タンパク質の複合体と結合する薬剤をスクリーニングする方法をも包含する。特定の態様において、エンベロープウイルス融合エクトドメインポリペプチドを含むキメラポリペプチドまたはその複合体への結合について化合物ライブラリーをスクリーニングする。
【0340】
[0424] 候補薬剤には、小分子、たとえば小型の有機化合物、ならびに高分子、たとえばペプチド、ポリペプチドおよび多糖を含めた、多数の化合物クラスが含まれる。候補薬剤は、タンパク質との構造相互作用、特に水素結合に必要な官能基を含み、一般に少なくともアミン、カルボニル、ヒドロキシルまたはカルボキシル基、望ましくはこれらの官能基のうち少なくとも2つを含む。候補化合物は、前記官能基のうち1以上で置換された炭素環式もしくは複素環式構造体または芳香族もしくは多環式芳香族構造体を含むことができる。候補薬剤は生体分子中にもみられ、それには下記のものが含まれるが、それらに限定されない:ペプチド、糖類、脂肪酸、ステロイド、プリン、ピリミジン、誘導体、構造
アナログ、またはその組合わせ。化合物ライブラリーは細菌、真菌、植物および動物の抽出物の形の天然化合物を含むことができる。あるいは、またはさらに、化合物ライブラリーは天然化合物または合成により製造された化合物を含むことができる。
【0341】
[0425] 薬剤がターゲットタンパク質に結合するかどうか、および/またはターゲットタンパク質に対する薬剤の親和性を判定するための方法は当技術分野で知られている。たとえば、ターゲットタンパク質への薬剤の結合は、多様な手法、たとえば(それらに限定されない)バイオレイヤー干渉法(BioLayer Interferometry)(BLI)、ウェスタンブ
ロット、ドットブロット、表面プラズモン共鳴法(SPR)、酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELISA)、AlphaScreen(登録商標)もしくはAlphaLISA(登録商標)アッセイ、または質量分析ベースの方法を用いて検出および/または定量することができる。
【0342】
[0426] ある態様において、薬剤と本発明のエクトドメインポリペプチド含有キメラポリペプチドまたは複合体との相互作用の動力学的パラメーターを解明するための当技術分野で知られているいずれかの表面プラズモン共鳴(SPR)ベースのアッセイを用いて薬剤をアッセイすることができる。下記のものを含めて(それらに限定されない)市販されているいずれかのSPR機器を本明細書に記載する方法に使用できる:BIAcore機器(Biacore AB;スウェーデン、ウプサラ);1Asys機器(Affinity Sensors;マサチュセッツ州フランクリン);IBISシステム(Windsor Scientific Limited;英国バークシャー州);SPR-CELLIAシステム(日本レーザー電子株式会社;日本、北海道)、およびSPR Detector Spreeta(Texas Instruments;テキサス州ダラス)。たとえば、Mullett et al. (2000) Methods 22: 77-91; Dong et al. (2002) Reviews in Mol Biotech 82: 303-323; Fivash et al. (1998) Curr Opin Biotechnol 9: 97-101; および Rich et al. (2000) Curr Opin Biotechnol 11: 54-61を参照されたい。
【0343】
[0427] ある態様において、薬剤と本発明のエクトドメインポリペプチド含有キメラポリペプチドまたは複合体との生体分子相互作用は、Octet(ForteBio Inc.)でBLIを用いてアッセイすることができる。BLIは、バイオセンサーチップ上に固定化したリガンド(たとえば、本発明のエクトドメインポリペプチド含有キメラポリペプチドまたは複合体)と被分析体(たとえば、被験化合物)との結合を、溶液中で、バイオセンサーチップ上のタンパク質層の厚さの変化をリアルタイムで測定することにより感知する無標識光学分析法である。
【0344】
[0428] ある態様において、AlphaScreen(PerkinElmer)アッセイを用いて本発明のエクトドメインポリペプチド含有キメラポリペプチドまたは複合体への被験薬剤の結合を解明することができる。頭字語ALPHAは、増幅型発光近接ホモジニアスアッセイ(Amplified Luminescent Proximity Homogeneous Assay)を表わす。A
lphaScreenは、ドナービーズとアクセプタービーズ間のエネルギー伝達により生じる信号を測定することにより、ドナービーズとアクセプタービーズに付着した分子間(たとえば、本発明のキメラポリペプチドまたは複合体と被験化合物)の結合を感知するビーズ-ベースの近接アッセイである(参照:たとえば、Eglen et al. (2008) Curr Chem Genomics 1:2-10)。
【0345】
[0429] ある態様において、AlphaLISA(登録商標)(PerkinElmer)アッセイを用いて本発明のキメラポリペプチドまたは複合体への被験薬剤の結合を解明することができる。AlphaLISAは、ユーロピウム含有アクセプタービーズを含むように前記のAlphaScreenアッセイから改変され、従来のELISAアッセイの別法として機能する(参照:たとえば、Eglen et al. (2008) Curr Chem Genomics 1
:2-10.)。
【0346】
[0430] 競合および非競合イムノアッセイを含めた多様なイムノアッセイ法を使用できる。用語“イムノアッセイ”は、限定ではなく下記のものを包含する:フローサイトメトリー、FACS、エンザイムイムノアッセイ(EIA)、たとえば酵素増幅イムノアッセイ法(enzyme multiplied immunoassay technique)(EMIT)、酵素結合イムノソルベ
ントアッセイ(ELISA)、IgM抗体捕獲ELISA(IgM antibody capture ELISA)(MAC ELISA)および微粒子エンザイムイムノアッセイ(microparticle enzyme immunoassay)(MEIA)、さらに、キャピラリー電気泳動イムノアッセイ(CEIA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、イムノラジオメトリックアッセイ(immunoradiometric assay)(IRMA)、蛍光偏光イムノアッセイ(fluorescence polarization immunoassay)(FPIA)および化学発光アッセイ(CL)。所望により、そのようなイムノアッセイを自動化することができる。イムノアッセイをレーザー誘導蛍光と併用することもできる。リポソームイムノアッセイ、たとえばフローインジェクションリポソームイムノアッセイおよびリポソームイムノセンサーも本発明に使用するのに適している。さらに、たとえばタンパク質/抗体複合体の形成の結果として光散乱が増大し、それがマーカー濃度の関数としてのピーク速度信号に変換されるネフェロメトリー(nephelometry)アッセイが本発明方法に使用するのに適している。
【0347】
[0431] ある態様において、本発明のキメラポリペプチドまたは複合体への被験薬剤の結合は、示差走査蛍光光度測定(differential scanning fluorimetry)(DSF)および
示差静的光散乱(differential static light scattering)(DSLS)を伴なう熱変性法を用いてアッセイすることができる。
【0348】
[0432] ある態様において、本発明のキメラポリペプチドまたは複合体への被験薬剤の結合は、質量分析ベースの方法、たとえば(それに限定されない)質量分析にカップリングした親和性セレクション(affinity selection coupled to mass spectrometry)(AS
-MS)プラットフォームを用いてアッセイすることができる。これは無標識方法であり、そのタンパク質と被験化合物をインキュベートし、結合しなかった分子を洗浄除去し、タンパク質-リガンド複合体を脱複合体化工程後にリガンド同定のためにMSにより分析する。
【0349】
[0433] ある態様において、本発明のキメラポリペプチドまたは複合体への被験薬剤の結合は、たとえば検出可能な状態に標識されたタンパク質、たとえば放射性標識(たとえば、32P、35S、14CまたはH)、蛍光標識(たとえば、FITC)、または酵素標識されたキメラポリペプチドもしくは複合体または被験化合物を用いて、イムノアッセイにより、またはクロマトグラフィー検出により、定量できる。
【0350】
[0434] ある態様において、本発明はキメラポリペプチドまたは複合体と被験化合物の相互作用の程度を直接または間接的に測定する際の、蛍光偏光アッセイおよび蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)アッセイの使用を考慮する。
【0351】
[0435] 前記の態様はすべてハイスループットプラットフォームへの発展に適している。
[0436] 化合物をさらに動物モデルにおいて試験して、最も有効なインビボ効果をもつ化合物、たとえばエンベロープウイルスの融合タンパク質または融合タンパク質の複合体に特異的に結合して、好ましくは療法に有用な効果、たとえばウイルス負荷の低減、感染症またはそれに伴なう症状の軽減を刺激または増強するものを同定することができる。たとえばそれらの化合物に、妥当な薬物設計に用いられる連続修飾、分子モデリング、および他のルーティン操作を施すことにより、これらの分子をさらなる医薬開発のための“リ
ード化合物”として使用できる。
【0352】
5.抗原結合分子
[0437] 本発明のエクトドメイン含有キメラポリペプチドおよび複合体は、抗原結合分子、好ましくはエンベロープウイルス融合タンパク質と免疫相互作用性であるタンパク質(すなわち、“抗原結合タンパク質”)を製造するのに有用である。特定の態様において、エクトドメイン含有キメラポリペプチドおよび複合体はエンベロープウイルス融合タンパク質の融合後形態には存在しない少なくとも1つの融合前エピトープを含み、したがってエンベロープウイルス融合タンパク質の準安定または融合前形態と免疫相互作用性である抗原結合分子の製造に有用である。
【0353】
[0438] 当業者は抗原結合タンパク質に基づく十分に発展した知識、たとえば下記に述べられたものを認識しているであろう:Abbas et al., Cellular and Molecular Immunology, 6th ed., W.B. Saunders Company (2010) または Murphey et al., Janeway's Immunobiology, 8th ed., Garland Science (2011);それらのそれぞれを全体として本明細書に援用する。
【0354】
[0439] ある態様において、本発明のキメラポリペプチドおよび複合体と免疫反応性である抗原結合タンパク質は抗体である。抗体には、定義のセクションに記載したように、無傷抗体およびその抗原結合フラグメントが含まれる。抗体は完全抗体分子(全長の重鎖および/または軽鎖をもつポリクローナル、モノクローナル、キメラ、ヒト化、またはヒト形を含む)を含むことができ、あるいはその抗原結合フラグメントを含むことができる。抗体フラグメントには、F(ab’)、Fab、Fab’、Fv、Fc、およびFdフラグメントが含まれ、それらを単一ドメイン抗体、一本鎖抗体、マキシボディー、ミニボディー、イントラボディー、ディアボディー、トリアボディー、テトラボディー、v-NARおよびビス-scFv中へ組み込むことができる(参照:たとえば、Hollinger and Hudson, 2005, Nature Biotechnology, 23, 9, 1126-1136)。フィブロネクチンポリペプチドモノボディーを含めた抗体ポリペプチド、たとえばU.S. Pat. No. 6,703,199に開示されたものも含まれる。一本鎖ポリペプチドである他の抗体ポリペプチドが、U.S. Patent Publication 2005/0238646に開示されている。
【0355】
[0440] 目的とする抗原に対する抗体を製造する多数の方法が当技術分野で知られている。たとえば、本発明のキメラポリペプチドおよび複合体に対するモノクローナル抗体は、しばしばKohler, G. et al. (1975, “Continuous Cultures Of Fused Cells Secreting Antibody Of Predefined Specificity”, Nature 256:495-497)の有望な方法またはそ
の改変法を基礎とする一般的なハイブリドーマ法を用いて作製できる。一般に、モノクローナル抗体は非ヒト種、たとえばマウスにおいて開発される。一般に、マウスまたはラットを免疫化に用いるが、他の動物も使用できる。抗体は、マウスを免疫原量の免疫原、この場合は本発明のキメラポリペプチドまたは複合体で免疫化することにより製造できる。免疫原を周期的間隔で多数回、たとえば隔週または毎週、投与することができ、あるいは動物の生存性を維持するような方法で投与することができる。
【0356】
[0441] 抗体応答をモニターするために、少量の生体試料(たとえば、血液)を動物から入手し、免疫原に対する抗体力価を試験することができる。脾臓および/または幾つかの大型リンパ節を摘出し、解離させて単一細胞にすることができる。所望により、抗原でコーティングしたプレートまたはウェルに細胞懸濁液を適用することによって脾臓細胞をスクリーニングすることができる(非特異的に付着する細胞を除去した後に)。その抗原に対して特異的な膜結合免疫グロブリンを発現するB-細胞はプレートに結合し、残りの懸濁液と共にすすぎ去られることはない。得られたB-細胞またはすべての解離した脾臓細胞を、次いで骨髄腫細胞(たとえば、X63-Ag8.653、およびSalk In
stitute、Cell Distribution Center(カリフォルニア州サンディエゴ)からのもの)と融合させることができる。脾臓またはリンパ球を骨髄腫細胞と融合させてハイブリドーマを形成するためにポリエチレングリコール(PEG)を使用できる。ハイブリドーマを次いで選択培地(たとえば、ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン培地、あるいは“HAT培地”として知られる)中で培養する。得られるハイブリドーマを次いで限界希釈によりプレーティングし、たとえばFACS(蛍光活性化セルソーティング)または免疫組織化学(IHC)スクリーニングを用いて、免疫原に特異的に結合する抗体の産生についてアッセイする。選択されたモノクローナル抗体分泌ハイブリドーマを次いでインビトロ(たとえば、組織培養ボトルまたは中空繊維反応器内)、またはインビボ(たとえば、マウスにおいて腹水として)のいずれかで培養する。
【0357】
[0442] 細胞融合法の他の別法として、エプスタイン-バーウイルス(EBV)-不死化B細胞を用いて、本発明のキメラポリペプチドまたは複合体と免疫相互作用するモノクローナル抗体を製造することができる。ハイブリドーマを所望により増殖させてサブクローニングし、上清を一般的アッセイ法(たとえば、FACS、IHC、ラジオイムノアッセイ、エンザイムイムノアッセイ、蛍光イムノアッセイなど)により抗免疫原活性についてアッセイする。
【0358】
[0443] よって、本発明はさらに、エンベロープウイルスの融合タンパク質またはその融合タンパク質の複合体と免疫相互作用性である抗原結合分子を製造する方法であって、下記を含む方法を考慮する:(1)動物を、前記および他の箇所に概括的に記載したキメラポリペプチド複合体または組成物で免疫化し、その際、キメラポリペプチド複合体のエクトドメインポリペプチドはエンベロープウイルスの融合タンパク質に対応する;(2)融合タンパク質またはその複合体と免疫相互作用性であるB細胞をその動物から同定および/または単離する;そして(3)そのB細胞が発現した抗原結合分子を製造する。本発明は、そのような方法により製造された抗原結合分子およびその誘導体をも包含する。本発明の抗原結合分子を産生できるハイブリドーマを含む細胞、および抗原結合分子をそれらの細胞から製造する方法をも包含する。特定の態様において、本発明の方法および細胞により製造された抗原結合分子は、好ましくは中和性の抗原結合分子である。
【0359】
[0444] キメラ抗体およびヒト化抗体も考慮する。ある態様において、ヒト化モノクローナル抗体はネズミ抗体の可変ドメイン(またはその抗原結合部位の全部もしくは一部)およびヒト抗体に由来する定常ドメインを含む。あるいは、ヒト化抗体フラグメントはネズミモノクローナル抗体の抗原結合部位およびヒト抗体に由来する可変ドメインフラグメント(抗原結合部位を欠如)を含むことができる。工学操作したモノクローナル抗体の作製のための方法には、Riechmann et al., 1988, Nature 332:323, Liu et al., 1987, Proc. Nat. Acad. Sci. USA 84:3439, Larrick et al., 1989, Bio/Technology 7:934, および Winter et al., 1993, TIPS 14:139に記載されたものが含まれる。一態様において、キメラ抗体はCDRグラフト抗体である。抗体をヒト化するための手法は、たとえばU.S. Pat. No. 5,869,619; 5,225,539; 5,821,337; 5,859,205; 6,881,557, Padlan et al., 1995, FASEB J. 9:133-39, Tamura et al., 2000, J. Immunol. 164:1432-41, Zhang, W., et al., Molecular Immunology 42(12):1445-1451, 2005; Hwang W. et al., Methods 36(1):35-42, 2005; Dall'Acqua W F, et al., Methods 36(1):43-60, 2005; および Clark, M., Immunology Today 21(8):397-402, 2000において考察されている。
【0360】
[0445] 本発明の抗体は、完全ヒト-モノクローナル抗体であってもよい。完全ヒト-モノクローナル抗体は、当業者に自明である多数の手法により作製できる。そのような方法には下記のものが含まれるが、それらに限定されない:ヒト末梢血細胞(たとえば、Bリンパ球を含む)のエプスタイン-バーウイルス(EBV)形質転換、ヒトB細胞のインビトロ免疫化、挿入ヒト免疫グロブリン遺伝子を保有する免疫化トランスジェニックマウ
スからの脾臓細胞の融合、ヒト免疫グロブリンV領域ファージライブラリーからの単離、または当技術分野で知られている他の方法であって本明細書の開示に基づくもの。
【0361】
[0446] ヒトモノクローナル抗体を非ヒト動物において生成させる方法が開発された。たとえば、1以上の内在性免疫グロブリン遺伝子を種々の手段で不活化したマウスが作製された。ヒト免疫グロブリン遺伝子をそのマウスに導入して、不活化されたマウス遺伝子と置き換えた。この手法で、ヒト重鎖および軽鎖遺伝子座のエレメントを、内在性重鎖および軽鎖遺伝子座のターゲティッド破壊を含む胚性幹細胞系に由来するマウスの系統に導入する(Bruggemann et al., Curr. Opin. Biotechnol. 8:455-58 (1997)をも参照された
い)。たとえば、ヒト免疫グロブリン導入遺伝子は、ミニ遺伝子構築体、または酵母人工
染色体上のトランス遺伝子座であってもよく、それらはマウスリンパ様組織においてB細胞特異的なDNA再配列および超変異を行なう。
【0362】
[0447] その動物において産生された抗体は、その動物に導入されたヒト遺伝子材料によりコードされるヒト免疫グロブリンポリペプチド鎖を含む。一態様において、非ヒト動物、たとえばトランスジェニックマウスを、本発明のキメラポリペプチドまたは複合体である免疫原で免疫化する。
【0363】
[0448] トランスジェニック動物をヒト抗体または部分的ヒト抗体の産生のために作製および使用する手法の例は、下記に記載されている:U.S. Pat. No. 5,814,318, 5,569,825, および5,545,806, Davis et al., Production of human antibodies from transgenic mice in Lo, ed. Antibody Engineering: Methods and Protocols, Humana Press, NJ:191-200 (2003), Kellermann et al., 2002, Curr Opin Biotechnol. 13:593-97, Russel et al., 2000, Infect Immun. 68:1820-26, Gallo et al., 2000, Eur J. Immun. 30:534-40, Davis et al., 1999, Cancer Metastasis Rev. 18:421-25, Green, 1999, J Immunol Methods 231:11-23, Jakobovits, 1998, Advanced Drug Delivery Reviews 31:33-42, Green et al., 1998, J Exp Med. 188:483-95, Jakobovits A, 1998, Exp. Opin. Invest. Drugs 7:607-14, Tsuda et al., 1997, Genomics 42:413-21, Mendez et al., 1997, Nat. Genet. 15:146-56, Jakobovits, 1994, Curr Biol. 4:761-63, Arbones et al., 1994, Immunity 1:247-60, Green et al., 1994, Nat. Genet. 7:13-21, Jakobovits et al., 1993, Nature 362:255-58, Jakobovits et al., 1993, Proc Natl Acad Sci USA 90:2551-55. Chen, J., M. et al. Int. Immunol. 5 (1993): 647-656, Choi et al., 1993, Nature Genetics 4: 117-23, Fishwild et al., 1996, Nature Biotech. 14: 845-51, Harding et al., 1995, Annals of the New York Academy of Sciences, Lonberg et al., 1994, Nature 368: 856-59, Lonberg, 1994, Transgenic Approaches to Human Monoclonal Antibodies in Handbook of Experimental Pharmacology 113: 49-101, Lonberg et al., 1995, Int. Rev. Immunol. 13: 65-93, Neuberger, 1996, Nature Biotech. 14: 826, Taylor et al., 1992, Nucleic Acids Research 20: 6287-95, Taylor et al., 1994, Int. Immunol. 6: 579-91, Tomizuka et al., 1997, Nature Genetics 16: 133-43, Tomizuka et al., 2000, Proc Natl Acad Sci USA 97: 722-27, Tuaillon et al., 1993, Proc Natl Acad Sci USA 90: 3720-24, および Tuaillon et al., 1994, J. Immunol. 152: 2912-20.; Lonberg et al., Nature 368:856, 1994; Taylor et al., Int. Immunol. 6:579, 1994; U.S.Pat. No. 5,877,397; Bruggemann et al., 1997 Curr. Opin. Biotechnol. 8:455-58; Jakobovits et al., 1995. Ann. N.Y. Acad. Sci. 764:525-35。さらに、XenoMouse(登録商標)(Abgenix,現在はAmgen,Inc.)を伴なうプロトコルが、たとえばU.S. 05/0118643およびWO 05/694879, WO 98/24838, WO 00/76310, およびU.S. Pat. No. 7,064,244に記載されている。
【0364】
[0449] 本発明はさらに、本発明の抗-キメラポリペプチド/複合体抗体-フラグメントを包含する。そのようなフラグメントは全体が抗体由来の配列からなることができ、あ
るいは追加配列を含むことができる。抗原結合フラグメントの例には、Fab、F(ab’)、一本鎖抗体、ディアボディー、トリアボディー、テトラボディー、およびドメイン抗体が含まれる。他の例は、Lunde et al., 2002, Biochem. Soc. Trans. 30:500-06に提示されている。
【0365】
[0450] 一本鎖抗体は、アミノ酸橋(短いペプチドリンカー)を介して重鎖および軽鎖の可変ドメイン(Fv領域)フラグメントを連結させて単一のポリペプチド鎖にすることにより形成できる。そのような一本鎖Fv(scFv)は、2つの可変ドメインポリペプチド(VおよびV)をコードするDNAの間に、ペプチドリンカーをコードするDNAを融合させることにより製造された。得られるポリペプチドは、2つの可変ドメイン間のフレキシブルリンカーの長さに応じて、自然にフォールドバックして抗原結合モノマーを形成することができるか、あるいはそれらはマルチマー(たとえば、ダイマー、トリマー、またはテトラマー)を形成することができる(Kortt et al., 1997, Prot. Eng. 10:423; Kortt et al., 2001, Biomol. Eng.18:95-108)。異なるVとVを含むポリペプチドを結合させることにより、異なるエピトープに結合するマルチマー型scFvを形成することができる(Kriangkum et al., 2001, Biomol. Eng. 18:31-40)。一本鎖抗体の製造のために開発された手法には、U.S. Pat. No. 4,946,778; Bird, 1988, Science 242:423; Huston et al., 1988, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879; Ward et al., 1989, Nature 334:544, de Graaf et al., 2002, Methods Mol. Biol. 178:379-87に記載されたものが含まれる。
【0366】
[0451] 抗体に由来する抗原結合フラグメントは、たとえば抗体のタンパク質分解性加水分解により、たとえば全抗体を一般的方法に従ってペプシンまたはパパイン消化することにより得ることもできる。たとえば、抗体フラグメントは、抗体をペプシンで酵素開裂してF(ab’)と呼ばれる5Sフラグメントを得ることにより製造できる。チオール還元剤を用いてこのフラグメントをさらに開裂して、3.5S Fab’一価フラグメントを製造することができる。場合により、開裂反応はジスルフィド結合の開裂から生じるスルフヒドリル基のブロッキング基を用いて実施することができる。別法として、パパインを用いる酵素開裂は、2つの一価FabフラグメントおよびFcフラグメントを直接生成する。これらの方法は、たとえばGoldenberg, U.S. Pat. No. 4,331,647, Nisonoff et
al., Arch. Biochem. Biophys. 89:230, 1960; Porter, Biochem. J. 73:119, 1959; Edelman et al., in Methods in Enzymology 1:422 (Academic Press 1967); および Andrews, S. M. and Titus, J. A. in Current Protocols in Immunology (Coligan J. E., et al., eds), John Wiley & Sons, New York (2003), pages 2.8.1-2.8.10 および 2.10A.1-2.10A.5に記載されている。抗体を開裂するための他の方法、たとえば重鎖を分離して一価軽鎖-重鎖フラグメント(Fd)を形成し、フラグメントをさらに開裂するもの、あるいは他の酵素的、化学的または遺伝学的手法も、それらのフラグメントが無傷抗体により認識される抗原に結合する限り使用できる。
【0367】
[0452] 他の形態の抗体フラグメントは、抗体の1以上の相補性決定領域(CDR)を含むペプチドである。CDRは、目的とするCDRをコードするポリヌクレオチドを構築することにより得ることができる。そのようなポリヌクレオチドは、たとえば抗体産生細胞のmRNAを鋳型として用いて可変領域を合成するポリメラーゼ連鎖反応を用いることにより製造できる。(参照:たとえば、Larrick et al., Methods: A Companion to Methods in Enzymology 2:106, 1991; Courtenay-Luck, “Genetic Manipulation of Monoclonal Antibodies”, in Monoclonal Antibodies: Production, Engineering and Clinical Application, Ritter et al. (eds.), page 166 (Cambridge University Press 1995); および Ward et al., “Genetic Manipulation and Expression of Antibodies”, in Monoclonal Antibodies: Principles and Applications, Birch et al., (eds.), page 137 (Wiley-Liss, Inc. 1995))。抗体フラグメントはさらに、本明細書に記載する抗体の少なくとも1つの可変領域ドメインを含むことができる。よって、たとえばV領域ドメインはモノマー状であって、独立して少なくとも10-7Mに等しいかまたはそれ未満の親和性で本発明のエクトドメインポリペプチドまたは複合体に結合することができるVおよびVドメインであってもよい。
【0368】
[0453] 可変領域ドメインは天然可変ドメインまたはその工学操作バージョンのいずれであってもよい。工学操作バージョンは、組換えDNA工学手法を用いて作製された可変領域ドメインを意味する。そのような工学操作バージョンには、たとえば特異的抗体の可変領域からその特異的抗体のアミノ酸配列における、または配列への、挿入、欠失または変化により作製されたものが含まれる。具体例には、第1抗体に由来する少なくとも1つのCDRおよび場合により1以上のフレームワークアミノ酸、ならびに第2抗体に由来する可変領域ドメインの残部を含む、工学操作された可変領域ドメインが含まれる。
【0369】
[0454] 可変領域ドメインは、C末端アミノ酸において少なくとも1つの他の抗体ドメインまたはそのフラグメントに共有結合していてもよい。よって、たとえば可変領域ドメインに存在するVドメインは、免疫グロブリンCH1ドメインまたはそのフラグメントに連結していてもよい。同様に、VドメインはCドメインまたはそのフラグメントに連結していてもよい。こうして、たとえば抗体は、抗原結合ドメインがそれらのC末端においてそれぞれCH1およびCドメインに共有結合している会合VおよびVドメインを含むFabフラグメントであってもよい。CH1ドメインは、Fab’フラグメント中にみられるヒンジ領域またはヒンジ領域ドメインの一部を付与するために、あるいはさらなるドメイン、たとえばCH2およびCH3ドメインを付与するために、さらなるアミノ酸で延長されてもよい。
【0370】
7.組成物
[0455] 本発明はさらに、前記および他のいずれかの箇所に概括的に記載したキメラポリペプチドもしくは複合体、またはそのキメラポリペプチドもしくは複合体を発現させることができる核酸構築体を含む、医薬組成物を含めた組成物を提供する。代表的な組成物は、キメラポリペプチドまたは複合体の目的用途に従って選択される緩衝剤を含むことができ、意図する用途に適した他の物質をも含むことができる。意図する用途が免疫応答を誘導することである場合、組成物は“免疫原”または“免疫調節”組成物と呼ばれる。そのような組成物には、予防用組成物(すなわち、感染症などの状態を予防する目的で投与する組成物)および治療用組成物(すなわち、感染症などの状態を治療する目的で投与する組成物)が含まれる。したがって、本発明の免疫調節組成物は予防、改善、対症処置または治療のためにレシピエントに投与できる。
【0371】
[0456] 当業者は適切な緩衝剤を容易に選択でき、意図する用途に適した多種多様な緩衝剤が当技術分野で知られている。ある例において、組成物は医薬的に許容できる賦形剤を含むことができ、その多様なものが当技術分野で知られており、ここで詳細に考察する必要はない。医薬的に許容できる賦形剤は、たとえば下記のものを含めた多様な刊行物に詳細に記載されている:A. Gennaro (2000) “Remington: The Science and Practice of
Pharmacy”, 20th edition, Lippincott, Williams, & Wilkins; Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems (1999) H. C. Ansel et al., eds 7.sup.th ed., Lippincott, Williams, & Wilkins; および Handbook of Pharmaceutical Excipients (2000) A. H. Kibbe et al., eds., 3.sup.rd ed. Amer. Pharmaceutical Assoc.。
【0372】
[0457] ある態様において、組成物は1より多い(すなわち、異なる)本発明のキメラポリペプチドまたは複合体(たとえば、その各エクトドメインポリペプチドが異なるエンベロープウイルス融合タンパク質に対応するキメラポリペプチド)、あるいはそれからキメラポリペプチド(単数または複数)または複合体(単数または複数)を発現できる1以
上の核酸構築体を含む。
【0373】
[0458] 本発明の医薬組成物は、注射による投与に適した形態、経口摂取に適した配合物(たとえば、カプセル剤、錠剤、カプレット、エリキシル剤)、局所適用に適した軟膏
剤、クリーム剤またはローション剤の形態、点眼剤としての送達に適した形態、吸入、たとえば鼻内吸入もしくは口腔吸入による投与に適したエアゾール剤、または非経口投与、すなわち皮下、筋肉内もしくは静脈無内注射に適した形態であってもよい。
【0374】
[0459] 補助的な有効成分、たとえばアジュバントまたは生物学的応答改変剤も本発明の医薬組成物に含有させることができる。アジュバント(単数または複数)を本発明の医薬組成物に含有させることができるが、それらは必ずしもアジュバントを含む必要はない。そのような場合、アジュバントの使用から生じる反応源性の問題を避けることができる。
【0375】
[0460] 一般に、本発明の医薬組成物に関連するアジュバント活性には組成物中の免疫原成分(たとえば、本発明のキメラポリペプチドまたは複合体)により誘導される免疫応答を増強する能力(量的または質的に)が含まれるが、これに限定されない。これによって、免疫応答を生じるために必要な免疫原成分の用量またはレベルを低減することができ、および/または希望する免疫応答を生じるために必要な免疫化の回数もしくは頻度を低減することができる。
【0376】
[0461] いずれか適切なアジュバントを本発明の医薬組成物に含有させることができる。たとえば、アルミニウムベースのアジュバントを使用できる。適切なアルミニウムベースのアジュバントには水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウムおよびその組合わせが含まれるが、これらに限定されない。使用できるアルミニウムベースのアジュバントの他の適切な例は、たとえばEuropean Patent No. 1216053およびUnited States Patent No. 6,372,223に記載されている。他の適切なアジュバントには、下記のものが含まれる:フロイントの不完全アジュバントおよび完全アジュバント(Difco Laboratories,ミシガン州デトロイト);Merck Adjuvant 65(Merck and Company,Inc.,ニュージャージー州ローウェイ);AS-2(SmithKline Beecham,ペンシルベニア州フィラデルフィア);アルミニウム塩、たとえば水酸化アルミニウムゲル(みょうばん)またはリン酸アルミニウム;カルシウム、鉄もしくは亜鉛の塩;アシル化チロシンの不溶性懸濁液;アシル化糖;カチオン性もしくはアニオン性に誘導体化した多糖;ポリホスファゼン;生分解性マイクロスフェア;モノホスホリルリピドAおよびquil A;European Patent No. 0399843, United States Patent No. 7,029,678およびPCT Publication No. WO 2007/006939に記載のものを含めた水中油型エマルジョン;および/またはさらに他のサイトカイン、たとえばGM-CSFまたはインターロイキン-2、-7もしくは-12、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、腫瘍壊死因子(TNF)、モノホスホリルリピドA(MPL)、コレラトキシン(CT)もしくはそれの構成成分サブユニット、熱不安定エンテロトキシン(heat labile enterotoxin)(LT)もしくはそれの構成成分サブユニット、toll様受容体リガンドアジュバント、たとえばリポ多糖(LPS)およびその誘導体(たとえば、モノホスホリルリピドAおよび3-脱アシル化モノホスホリルリピドA)、フラビウイルスNS1およびムラミルジペフチド(muramyl dipeptide)(MDP)。
【0377】
[0462] 本発明の医薬組成物をキット中において提供することができる。キットは本発明方法の実施を補助するための追加構成要素、たとえば投与デバイス(単数または複数)、緩衝液(単数または複数)、および/または希釈剤(単数または複数)を含むことができる。キットは、種々の構成要素を収容するための容器、およびキットの構成要素を本発明方法に使用するための指示を含むことができる。
【0378】
8.投与量および投与経路
[0463] 組成物は、“有効量”、すなわち対象において意図する目的を達成するために有効な量で投与される。患者に投与される有効化合物(単数または複数)の量は、有益な応答、たとえば感染症に関連する少なくとも1つの症状の軽減を対象において長時間にわたって達成するために十分でなければならない。医薬有効化合物(単数または複数)の投与量または投与頻度は、年齢、性別、体重および全般的な健康状態を含めて、処置される対象に依存する可能性がある。これに関して、有効化合物(単数または複数)の厳密な投与量は専門家の判断に依存するであろう。当業者は、希望する療法転帰を得るために本発明の医薬組成物に含有させるべき本明細書に記載するキメラポリペプチドまたは複合体の有効な無毒性の量をルーティン実験により決定できるであろう。
【0379】
[0464] 一般に、本発明の医薬組成物は、投与経路およびレシピエントの身体特徴(健康状態を含む)と適合する様式で、かつ希望する効果(単数または複数)(すなわち、療法有効な免疫原効果および/または防御効果)をそれが誘導する方法で投与することができる。たとえば、本発明の医薬組成物の適切な投与量は、下記のものを含めた(それらに限定されない)多様な要因に依存する可能性がある:その化合物を単剤として使用するかまたはアジュバント療法として使用するかにかかわらず対象の身体特徴(たとえば、年齢、体重、性別)、患者のMHC制限のタイプ、ウイルス感染症の進行(すなわち、病的状態)、および当業者が認識できる他の要因。本発明の医薬組成物の適切な投与量を決定する際に考慮される可能性がある多様な全般的考慮事項は、たとえばGennaro (2000) “Remington: The Science and Practice of Pharmacy”, 20th edition, Lippincott, Williams, & Wilkins; およびGilman et al., (Eds), (1990), “Goodman And Gilman's: The Pharmacological Bases of Therapeutics”, Pergamon Pressに記載されている。
【0380】
[0465] ある態様において、本発明のキメラポリペプチドもしくは複合体、またはキメラポリペプチドもしくは複合体をそれから発現させることができる核酸構築体の“有効量”は、希望する予防効果または治療効果を達成するために、たとえばその個体においてその感染症に関連する症状を軽減するために、および/または感染性物質の数を低減するために十分な量である。これらの態様において、有効量は、キメラポリペプチドまたは複合体で処置しなかった個体における症状または感染性物質の数と比較した場合、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、もしくは少なくとも約90%、またはそれ以上、その個体においてその感染症に関連する症状を軽減し、および/または感染性物質の数を低減する。病原性生物による感染症の症状、およびそのような症状を測定するための方法は、当技術分野で知られている。個体における病原性生物の数を測定するための方法は、当技術分野における標準法である。
【0381】
[0466] ある態様において、本発明のキメラポリペプチドもしくは複合体、またはキメラポリペプチドもしくは複合体をそれから発現させることができる核酸構築体の“有効量”は、選択した投与経路においてエンベロープウイルス融合タンパク質に対する免疫応答を誘導するために有効な量である。
【0382】
[0467] ある態様において、たとえばキメラポリペプチドがヘテロロガス抗原を含む場合、“有効量”はその抗原に対する免疫応答の誘導を容易にするために有効な量である。たとえば、ヘテロロガス抗原がエクトドメインポリペプチドの由来するものとは異なる病原性生物に由来する抗原である場合、本発明のキメラポリペプチドもしくは複合体、またはキメラポリペプチドもしくは複合体をそれから発現させることができる核酸構築体の“有効量”は、その抗原に対する免疫応答の誘導、好ましくはその病原性生物による感染症または感染症に関連する症状に対するホストの保護を容易にするために有効な量である。これらの態様において、有効量は、キメラポリペプチドまたは複合体で処置しなかった個体における症状または感染性物質の数と比較した場合、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、もしくは少なくとも約90%、またはそれ以上、その個体においてその感染症に関連する症状を軽減し、および/または感染性物質の数を低減する。病原性生物による感染症の症状、およびそのような症状を測定するための方法は、当技術分野で知られている。
【0383】
[0468] あるいは、ヘテロロガス抗原が癌-または腫瘍-関連抗原である場合、本発明のキメラポリペプチドもしくは複合体、またはキメラポリペプチドもしくは複合体をそれから発現させることができる核酸構築体の“有効量”は、ある投与経路において癌または腫瘍細胞の増殖を低減または阻害し、癌もしくは腫瘍細胞の質量または癌もしくは腫瘍細胞の数を低減し、あるいは癌または腫瘍が形成される可能性を低減するのに有効な免疫応答を誘導するために有効な量である。これらの態様において、有効量は、キメラポリペプチドまたは複合体で処置しなかった個体における腫瘍の増殖および/または腫瘍細胞の数と比較した場合、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、もしくは少なくとも約90%、またはそれ以上、その個体において腫瘍の増殖および/または腫瘍細胞の数を低減する。腫瘍の増殖および腫瘍細胞の数を測定するための方法は、当技術分野で知られている。
【0384】
[0469] それぞれの投与におけるキメラポリペプチドまたは複合体の量は、一般的なワクチンに一般に付随する有意の有害な副作用なしに、コードされるエクトドメインポリペプチドに対する免疫応答を誘導し、および/または免疫防御もしくは他の免疫療法応答を誘導する量として選択される。そのような量は、どの具体的エクトドメインポリペプチドを使用するか、そのワクチン配合物がアジュバントを含むか否か、および多様なホスト依存要因に応じて変動するであろう。
【0385】
[0470] 本発明の医薬組成物は標準経路によりレシピエントに投与することができ、それには非経口(たとえば、静脈内)が含まれるが、それに限定されない。
[0471] 本発明の医薬組成物は単独で、または追加の療法薬(単数または複数)と組み合わせてレシピエントに投与することができる。医薬組成物を療法薬(単数または複数)と共に投与する態様において、投与は同時または逐次(すなわち、医薬組成物の投与に続いて薬剤(単数または複数)を投与するか、あるいはその逆)であってよい。
【0386】
[0472] 一般に、治療適用において、治療は疾患状態または症状の持続期間であってもよい。さらに、個々の投与の最適な量および間隔は、治療される疾患状態または症状の性質および程度、投与の形態、経路および部位、ならびに治療される特定の個体の性質によって決まることは当業者に自明であろう。最適条件は一般的手法を用いて決定できる。
【0387】
[0473] 多くの場合(たとえば、予防適用)、本発明の医薬組成物を数回または多数回投与することが望ましい可能性がある。たとえば、医薬組成物を1、2、3、4、5、6、7、8、9、10回、またはより多数回、投与することができる。投与は約1週間から約12週間までの間隔、特定の態様においては約1週間から約4週間までの間隔であってもよい。本発明の医薬組成物がターゲティングする特定の病原体または他の疾患関連成分に反復曝露される場合には、周期的な再投与が望ましい可能性がある。
【0388】
[0474] 最適投与コースは一般的な処置コース決定試験を用いて確認できることも当業者に自明であろう。
[0475] 2以上のものを“組み合わせて”または“同時に”対象に投与する場合、それ
らを単一組成物中において同時に、または別個の組成物中において同時に、または別個の組成物中において別個の時点で投与することができる。
【0389】
[0476] 本発明の特定の態様は、多数の別個の投与における医薬組成物の投与を伴なう。したがって、本明細書に記載する感染症の予防(すなわち、ワクチン接種)および治療のための方法は、多数回の別個の用量を一定期間にわたって対象に投与することを包含する。したがって、本明細書に開示する感染症の予防(すなわち、ワクチン接種)および治療のための方法は、初回抗原刺激量の本発明の医薬組成物を投与することを含む。初回抗原刺激量に続いてブースター量を投与することができる。ブースターは再ワクチン接種の目的のためである可能性がある。種々の態様において、医薬組成物またはワクチンを少なくとも1回、2回、3回、またはそれより多く投与する。
【0390】
[0477] 免疫応答を測定するための方法は当業者に知られている。代表的な方法には下記のものが含まれる:固相不均一アッセイ(たとえば、酵素結合イムノソルベントアッセイ)、溶液相アッセイ(たとえば、電気化学発光アッセイ)、増幅型発光近接ホモジニアスアッセイ、フローサイトメトリー、細胞内サイトカイン染色、機能性T細胞アッセイ、機能性B細胞アッセイ、機能性単球-マクロファージアッセイ、樹状細胞および細網内皮細胞アッセイ、NK細胞応答の測定、免疫細胞によるIFN-γ産生、組織または体液におけるウイルスRNA/DNAの定量(たとえば、血清もしくは他の体液または組織/臓器におけるウイルスRNAまたはDNAの定量)、酸化的バーストアッセイ、細胞傷害性-特異性細胞溶解アッセイ、ペンタマー結合アッセイ、ならびに食作用およびアポトーシスの評価。
【0391】
[0478] 具体的態様に示す本発明に対して、広く記載した本発明の精神または範囲から逸脱することなく多数の変更および/または改変をなしうることは当業者に自明であろう。したがってそれらの態様はあらゆる点で例示であり、限定ではないと考えるべきである。
【0392】
[0479] 本発明を容易に理解して実施できるように、特に好ましい態様を限定ではない以下の例により記載する。
【実施例0393】
実施例1
RSV F
[0480] 本発明が融合前コンホメーションに拘束されたウイルス融合タンパク質のエクトドメインを含むキメラポリペプチドを製造できることを示すものとして、呼吸合胞体ウイルス融合タンパク質について代表的な証拠を提示する。
【0394】
材料および方法
キメラポリペプチド設計:
[0481] RSV Fのエクトドメイン、および McLellan et al., (Science, 2013, 342(6158): 592-8)による4つの部位に変異を含む(S155C、S290C、S190FおよびV207L)RSV-Fエクトドメイン変異体(RSV F ds cav)を、それぞれ、下流のHIV-1 GP160に由来する一対の相補的ヘプタッドリピート領域を含むヘテロロガス構造安定化部分(SSM)に作動可能な状態で結合させた。このSSMを欠如する対照エクトドメイン構築体、およびfoldon SSMに作動可能な状態で結合したRSV F ds cavを含む陽性対照構築体(RSV F ds cav foldon)を同様に製造した。関連タンパク質のアミノ酸配列を以下に提示する。
【0395】
RSV Fのエクトドメイン(1-520):
[0482]
【0396】
【化99】
【0397】
RSV Fのエクトドメイン(1-520)-HIV GP160-ベースのSSM:
[0483]
【0398】
【化100】
【0399】
RSV Fのエクトドメイン(1-520)-DScav変異-HIV GP160-ベースのSSM:
[0484]
【0400】
【化101】
【0401】
RSV Fのエクトドメイン(1-513)-DScav変異-Foldon SSM(McLellan et al., (Science, 2013. 342(6158):592-8)による対照):
[0485]
【0402】
【化102】
【0403】
タンパク質の発現および精製:
[0486] キメラ融合タンパク質RSV F クランプ、RSV F ds cav クランプ、RSV F ds cav foldon、ならびにHIV-1 HRAおよびHRB配列を欠如する対照RSV Fエクトドメインをコードするコドン最適化DNA配列を、それぞれpIRES-2真核細胞発現ベクターのCMVプロモーターの下流に組み込んだ。得られたプラスミドを、化学的に規定したCHO(chemically defined CHO)(CD-CHO)培地(Gibco)中で増殖させたチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞にトランスフェクションした;600μgのプラスミドおよび2.4mgの線状ポリエチレンンイミンを300mLのCHO細胞中に1×10細胞/mLの密度で含有。トランスフェクション試薬と共に4時間インキュベートした後、細胞をペレット化し、8mM Glutamax(Gibco)、100単位/mLのペニシリン(Gibco)、100μg/mLのストレプトマイシン(Gibco)、7.5%のCHO CD Efficient Feed A(Gibco)、および7.5%のCHO CD Efficient Feed B(Gibco)を含有する300mLのCD-CHOに再懸濁した。細胞を次いで37℃、5% COで7日間、約120rpmで振とうしながらインキュベートした。7日後に6,000×gで10分間の遠心により細胞を分離し、上清を濾過した。
【0404】
[0487] 組換えタンパク質を、HiTrap NHS-活性化HPカラム(GE)に共有結合した特異的モノクローナル抗体を用いるアフィニティークロマトグラフィーによって精製した。HIV-1 HRAおよびHRBにより形成された6-ヘリックスバンドルに結合するmAb 1281(Frey, et al., Nat Struct Mol Biol. 2010. 17(12):1486-91)によって、キメラクランプ安定化RSV Fを精製した。RSV F ds cav
クランプ、RSV F ds cav foldonキメラタンパク質、および対照RSV Fを、mAb 101F(McLellan、et al. J Virol. 2010. 84(23):12236-44)を用
いて精製した。希望するタンパク質の精製をSDS-PAGEによって確認した。
【0405】
結果
タンパク質コンホメーション:
[0488] タンパク質コンホメーションを、コンホメーション特異的モノクローナル抗体を用いて査定した。エクトドメインの下流におけるHIV-1 GP160 HR1およびHR2配列をベースとするSSMの組込みは、融合エクトドメインポリペプチドが融合後コンホメーションに再配列するのを阻止する一種の‘分子クランプ’として作用する。そのようなキメラ融合タンパク質は融合前コンホメーションで安定化され、一方、対応する裸のエクトドメイン(すなわち、単独で発現したもの)は融合後形態を形成するという証拠を図1A~Cに示す。
【0406】
実施例2
INFA HA
[0489] 本発明が融合前コンホメーションに拘束されたウイルス融合タンパク質のエクトドメインを含むキメラポリペプチドを製造できることを示す他の例として、インフルエンザA(INFA)ヘマグルチニン(HA)タンパク質について代表的証拠を提示する。さらに、INFA HAタンパク質について、前記方法により融合前コンホメーションに拘束されたキメラタンパク質がマウスに投与した際に改善された中和免疫応答を誘導できることについて代表的証拠を提示する。
【0407】
材料および方法
キメラポリペプチド設計:
[0490] INFA HAのエクトドメインを、下流のHIV-1 GP160に由来する一対の相補的ヘプタッドリピート領域を含むヘテロロガス構造安定化部分に作動可能な状態で結合させた。得られたキメラタンパク質およびそれの対照のアミノ酸配列を以下に提示する。
【0408】
INFA HAのエクトドメイン(1-529):
[0491]
【0409】
【化103】
【0410】
INFA HAのエクトドメイン(1-529)-HIV GP160-ベースのSSM:
[0492]
【0411】
【化104】
【0412】
タンパク質の発現および精製:
[0493] キメラ融合タンパク質インフルエンザH3クランプ、またはHIV-1 HRAおよびHRB配列を欠如する対照エクトドメインをコードするコドン最適化DNA配列を、pIRES-2真核細胞発現ベクターのCMVプロモーターの後に組み込んだ。得られたプラスミドを実施例1に従ってCHO細胞にトランスフェクションし、トランスフェクションした細胞を増殖させ、採集した。
【0413】
[0494] 組換えタンパク質を、HiTrap NHS-活性化HPカラム(GE)に共有結合した特異的モノクローナル抗体を用いるアフィニティークロマトグラフィーによって精製した。キメラクランプ安定化したインフルエンザHAを、、HIV-1 HRAおよびHRBにより形成された6-ヘリックスバンドルに結合するmAb 1281(Frey,
et al., Nat Struct Mol Biol. 2010. 17(12):1486-91)によって精製した。インフルエ
ンザHAのエクトドメインを、mAb C05(Ekiert, et al., Nature, 2012. 489(7417): 526-32)で精製した。希望するタンパク質の精製をSDS-PAGEによって確認した。2015シーズンのための市販の四価インフルエンザワクチン(QIV)をSanofi Pasteurから購入した(Fluquadri(商標))。
【0414】
結果
タンパク質の精製:
[0495] タンパク質コンホメーションを、コンホメーション特異的モノクローナル抗体およびサイズ排除クロマトグラフィーで査定した。エクトドメイン下流におけるHIV-1 GP160 HR1およびHR2配列をベースとするSSMの組込みは、融合エクトドメインポリペプチドが融合後コンホメーションに再配列するのを阻止する一種の‘分子クランプ’として作用する。そのようなキメラ融合タンパク質は融合前コンホメーションで安定化され、一方、裸のエクトドメイン(すなわち、単独で発現したもの)は融合後形態を形成するという証拠を図2および3に示す。
【0415】
動物の免疫化
[0496] 6-ヘリックスバンドル形成部分の組込みによりそれらの融合前形態で安定化されたウイルス融合タンパク質の免疫原としての有用性を試験するために、BALB/cマウスをキメラクランプ安定化インフルエンザHA、対応する非安定化エクトドメイン、または市販のQIVで免疫化した。グループ当たり5匹のBALB/cマウスを、3μgのサポニンアジュバントQuil-Aを含む5μgの精製タンパク質(またはPBS)で免疫化した。免疫化は皮内送達によるものであり、3週間置いて2回、マウスを免疫化した。2回目の免疫化の3週間後にマウスをと殺し、血清を採集した。各グループからプールした血清の中和効果を、プラーク減少中和試験(plaque reduction neutralization test)(PRNT)でインフルエンザA/Hebei Baoding Anguo/51/2010(H3N2)に対比して査定した。キメラクランプ安定化インフルエンザHAを接種したマウスからの血清は1:14,000のIC50値(95%CI 11,000~17,000)をもつ強い中和性活性を示し、一方、対応するHAエクトドメインを接種したマウスからの血清は試験した最高用量1:20ですら中和性活性を示さず、市販のQIVを接種したマウスからの血清は約1:180のIC50値をもつ中和を示す。したがって、HIV-1 HR1およびHR2から構成される構造安定化部分の組込みによるインフルエンザHAの融合前形態の安定化は強い中和免疫応答にとって重要であり、現在市販されている不活化ワクチンと比較して中和免疫応答をおおよそ80倍増大させることができる。
【0416】
[0497] クランプ安定化HAが融合後HA solまたは市販のQIV H3クランプと相互作用しない新たな抗体集団を誘導したことを確認するために、ワクチン接種したマウスの血清をH3solまたはQIVと共にプレインキュベートしてこれらの形態と結合できる抗体をいずれも除去した(図4,白色棒)。H3solまたはQIVとのインキュ
ベーションはいずれもウイルス中和の低減を生じなかったが、H3クランプとのプレインキュベーションはウイルス中和活性の完全な除去を生じた。誘導された免疫応答がHAのヘッドまたはステムサブドメインのいずれに特異的であるかを試験するために、ELISA反応性を全H3クランプおよびH3ステムのみのドメインと対比した(前記にセクション2.3.2で概説したとおり)。ELISAの前にマウス血清をEBOV GPクランプと共にプレインキュベートして(前記にセクション2.3.12で概説したとおり)、クランプドメイン自体に対して特異的な抗体を再吸着させた。血清を次いでH3クランプまたはH3ステムでコートしたELISAプレートに添加し、体液性抗体反応性をELISAにより測定した。ステムドメインに対して特異的な免疫のパーセントを推定するために、最大半量吸光度を生じる希釈計数を比較した。ヘッドドメインに対する免疫は、ステムドメイン特異的免疫を合計から差し引くことにより推定された(参照:図5)。H3クランプ免疫化により、ステムドメインと反応性である体液性免疫おおよそ25%およびヘッドドメインと反応性であるもの75%が生じた。これと対照的に、QIV免疫化はステムドメインと反応性である体液性免疫わずか4%およびヘッドと反応性であるもの96%を生じ、H3sol免疫化はステムドメインと反応性である体液性免疫わずか1%およびヘッドと反応性であるもの99%を生じた。
【0417】
[0498] H5クランプ構築体を用いて鳥インフルエンザH5N1に由来するH5との免疫応答の反応性を比較した(前記にセクション2.3.3で概説したとおり)。H5クランプまたはH1クランプを接種したマウスからの血清も分析に含めた。ELISA前にマウス血清をEBOV GPクランプと共にプレインキュベートして(前記にセクション2.3.12で概説したとおり)、クランプドメイン自体に対して特異的な抗体を再吸収させた。H5クランプでコートしたELISAプレートに次いで血清を添加し、体液性抗体反応性をELISAにより測定した。エンドポイント力価を計算し、図6に提示する。H3クランプおよびH1クランプは両方ともH5との実質的な交差反応性を示し、それはQIVのものより有意に大きかった(それぞれ、27倍の増大および81倍の増大)。
【0418】
[0499] 本発明者らは、次いでH5交差反応性に関与するサブドメインを決定する設定を行なった。ELISA反応性をH5 ELISAで測定する前に、マウス血清をEBOV GPクランプと共に(前記にセクション2.3.12で概説したとおり)、および/またはH3ステム H3ステム単独ドメインと共にプレインキュベートして(前記にセクション2.3.2で概説したとおり)クランプドメイン自体および/またはH3ステムドメインに対して特異的な抗体を予め吸収し、あるいはヒトモノクローナル抗体FI6v3(Corti et al., PNAS 2011)を添加してステム特異的抗体を排除(outcompete)した。H5
クランプでコートしたELISAプレートに次いで血清を添加し、エンドポイント力価をELISAにより計算した(図7)。QIV免疫化したマウスはH5と低い反応性を示し、それはステム吸収/Fi6V3競合によってわずかに影響されたにすぎない。H5クランプで免疫化したマウスからの血清は高い反応性を示し、それはステム吸収/Fi6V3競合によって影響されず、これは強いヘッド特異的免疫応答の指標となる。しかし、H1クランプまたはH3クランプで免疫化したマウスからの血清はH5との強い反応性を示し、これはステム吸収/Fi6V3競合によって有意に低下し、これはステム特異的応答がH5交差反応性に関与することの指標となる。
【0419】
実施例3
MERSスパイク
[0500] 本発明が融合前コンホメーションに拘束されたウイルス融合タンパク質のエクトドメインを含むキメラポリペプチドを製造できることを示すさらに他の例として、中東呼吸器症候群(Middle East Respiratory Syndrome)(MERS)ウイルススパイクタンパク質について代表的証拠を提示する。
【0420】
材料および方法
キメラポリペプチド設計:
[0501] MERSスパイクタンパク質のエクトドメインを、下流のHIV-1 GP16に由来する一対の相補的ヘプタッドリピート領域を含むヘテロロガス構造安定化部分に、作動可能な状態で結合させた。得られたキメラタンパク質のアミノ酸配列を以下に提示する。
【0421】
MERSスパイクのエクトドメイン(1-1296)-HIV GP160-ベースのSSM:
[0502]
【0422】
【化105】
【0423】
タンパク質の発現および精製:
[0503] キメラ融合タンパク質MERS Sクランプをコードするコドン最適化DNA配列をpIRES-2真核細胞発現ベクターのCMVプロモーターの後に組み込んだ。得られたプラスミドを実施例1に従ってCHO細胞にトランスフェクションし、トランスフェクションした細胞を増殖させ、採集した。この組換えタンパク質を、実施例1の記載に従ってmAb 1281(Frey, et al., Nat Struct Mol Biol. 2010. 17(12):1486-91)を用いるアフィニティークロマトグラフィーによって精製した。
【0424】
結果
タンパク質コンホメーション:
[0504] タンパク質コンホメーションを、SDS-PAGEおよびサイズ排除クロマトグラフィーを用いて査定した。図8に提示する結果は、MERS Sクランプキメラ融合タンパク質が融合前コンホメーションで安定化されていることを示す。
【0425】
実施例4
EBOV GP
[0505] 本発明が融合前コンホメーションに拘束されたウイルス融合タンパク質のエクトドメインを含むキメラポリペプチドを製造できることを示すさらに他の例として、EBOV 糖タンパク質(GP)について代表的証拠を提示する。このキメラポリペプチドが高温で長期間にわたって安定性を示すものとして、さらに他の証拠を提示する。さらに、EBOV GPについて前記方法により融合前コンホメーションに拘束されたこのキメラタンパク質がマウスに投与された際に中和免疫応答を誘導できることについて代表的証拠を提示する。
【0426】
材料および方法
キメラポリペプチド設計:
[0506] ムチン様ドメインを欠如するEBOV GPを、下流のHIV-1 GP16に由来する一対の相補的ヘプタッドリピート領域を含むヘテロロガス構造安定化部分に、作動可能な状態で結合させた。得られたキメラタンパク質のアミノ酸配列を以下に提示する。
【0427】
EBOV GPエクトドメイン マイナス ムチン様ドメイン(1-311,462-650)- HIV GP160-ベースのSSM
[0507]
【0428】
【化106】
【0429】
タンパク質の発現および精製:
[0508] EBOV GPデルタムチンクランプをコードするコドン最適化DNA配列をpIRES-2真核細胞発現ベクターのCMVプロモーターの下流に組み込んだ。得られたプラスミドを実施例1に従ってCHO細胞にトランスフェクションし、トランスフェクションした細胞を増殖させ、採集した。この組換えタンパク質を、実施例1の記載に従ってmAb Kz52(Murin et al., PNAS. 2014 11(48):17182-7)を用いるアフィニティ
ークロマトグラフィーによって精製した。
【0430】
結果
タンパク質コンホメーション:
[0509] タンパク質コンホメーションを、還元条件の存在下および非存在下で、コンホメーション特異的モノクローナル抗体を用いるSDS-PAGEにより査定した。図9~11に提示した結果は、EBOV GPデルタムチンクランプキメラ融合タンパク質が融合前コンホメーションで安定化されていること、およびこのコンホメーションは比較的高い温度ですら長期間にわたって安定であることを示す(参照:図11)。
【0431】
動物の免疫化:
[0510] 6-ヘリックスバンドル形成部分の組込みによりそれらの融合前形態で安定化されたウイルス融合タンパク質の免疫原としての有用性をさらに試験するために、BALB/cマウスをキメラクランプ安定化EBOV GPデルタムチン構築体で免疫化した。グループ当たり5匹のBALB/cマウスを、3μgのサポニンアジュバントQuil-Aを含む、または含まない、1μgの精製タンパク質(またはPBS)で免疫化した。免疫化は皮内送達によるものであり、3週間置いて3回、マウスを免疫化した。3回目の免疫化の3週間後にマウスをと殺し、血清を採集した。それぞれの免疫化の後、EBOV GP特異的応答を査定した(図12)。各マウスからの血清の中和効果を、生ZEBOVに対してPC4条件下で、Australian Animal Health Laboratory(オーストラリア動物健康研究所)(AAHL)においてプラーク減少中和試験(PRNT)で査定した(図13)。キメラクランプ安定化したEBOV GPデルタムチン構築体を接種したマウスからの血清は強い中和活性を示し、プラーク形成単位の50%低減を生じる幾何平均は52.8(95%CI 24.5~114.0)と計算された。
【0432】
実施例5
クランプの免疫サイレンシング
[0511] この例は、クランプ配列の溶媒曝露領域がN-結合グリコシル化を受け入れるように修飾されたキメラポリペプチドを本発明が製造できることを示す。EBOV GPについて代表的な証拠を提示し、これらの修飾が適応免疫系による認識からのクランプドメインの遮閉を助長することを示す。
【0433】
材料および方法
キメラポリペプチド設計:
[0512] ムチン様ドメインを欠如するEBOV GPを下記の4つの異なる下流ヘテロロガスSSMに作動可能な状態で結合させた:それぞれ、HIV-1 GP160に由来する一対の相補的HRAおよびHRB領域を含み、個々のHRB領域はN-結合グリコシル化の受入れを容易にする異なる変異を保有していた。これらのキメラタンパク質のアミノ酸配列を以下に示す。
【0434】
EBOV GPエクトドメイン マイナス ムチン様ドメイン(1-311,462-650) - HIV GP160-ベースのSSM+G1:
[0513]
【0435】
【化107】
【0436】
EBOV GPエクトドメイン マイナス ムチン様ドメイン(1-311,462-650) - HIV GP160-ベースのSSM+G2:
[0514]
【0437】
【化108】
【0438】
EBOV GPエクトドメイン マイナス ムチン様ドメイン(1-311,462-650) - HIV GP160-ベースのSSM+G3:
[0515]
【0439】
【化109】
【0440】
EBOV GPエクトドメイン マイナス ムチン様ドメイン(1-311,462-650) - HIV GP160-ベースのSSM+G4:
[0516]
【0441】
【化110】
【0442】
タンパク質の発現および精製:
[0517] 前記の構築体をコードするコドン最適化DNA配列をそれぞれpIRES-2
真核細胞発現ベクターのCMVプロモーターの後に組み込んだ。得られたプラスミドを実施例1に従ってCHO細胞にトランスフェクションし、トランスフェクションした細胞を増殖させ、採集した。組換えタンパク質を、実施例1の記載に従ってmAb Kz52(Murin et al., PNAS. 2014 11(48):17182-7)を用いるアフィニティークロマトグラフィーによって精製した。
【0443】
結果
[0518] 適応免疫系によるクランプの認識を低減する効力(免疫サイレンシング)を試験するために、HIV GP160-ベースのSSMに基づくクランプ配列のHRB内に、N-結合グリコシル化の受入れを容易にする可能性のある4つの別個の変異を導入した。
【0444】
[0519] 修飾したGP160-ベースのSSMを組み込んだキメラEBOV GP(ムチン様ドメインを欠如)を精製し、精製タンパク質の適性なコンホメーションを確認するために、Kz52との反応性を査定した。キメラクランプで安定化したインフルエンザHAで免疫系したマウスからの血清の反応性を、修飾したクランプ配列を組み込んだキメラEBOVタンパク質に対比して試験した(図14)。それぞれ個々の部位におけるグリコシル化によって反応性が有意に低減し、それによりこの方法をクランプドメインに対する反応性を低減するために使用できるという仮説が支持された。
【0445】
実施例6
8種類のウイルスに由来するクランプ安定化した抗原の精製
[0520] この例は、本発明が広範なエンベロープウイルスに由来するウイルス融合タンパク質のエクトドメインを含むキメラポリペプチドを製造できること、およびこれらのポリペプチドがクランプドメインに対して特異的なモノクローナル抗体によって精製されることを立証する。
【0446】
材料および方法
キメラポリペプチド設計:
[0521] INFA HA、RSV F、ニパFおよびHSV2 gBのエクトドメインを作動可能な状態で下流において、HIV-1 GP160に由来する一対の相補的ヘプタッドリピート領域を含むヘテロロガス構造安定化部分に結合させる。得られたキメラタンパク質およびそれらのそれぞれの対照のアミノ酸配列を以下に提示する。インフルエンザについては、SSMを欠如する可溶性エクトドメインを作製し、foldon SSMを組み込んだ対照も製造した。RSV-Fについては、エクトドメインの非必須領域(aa106-144)をその設計から除去した。SSMを欠如する可溶性エクトドメインを作製し、McLellan et al. (Science, 2013. 342(6158): 592-598)により記載された4つ
の部位(S155C、S290C、S190FおよびV207L)に変異を含む陽性対照、およびfoldon SSMを含む陽性対照も作製した。ニパおよびHSVの非安定化対照は製造しなかった。
【0447】
インフルエンザHA(A スイス 2013,H3N2)のエクトドメイン(1-533):
[0522]
【0448】
【化111】
【0449】
インフルエンザHA(A スイス 2013,H3N2)のエクトドメイン(1-533)-Foldon SSM:
[0523]
【0450】
【化112】
【0451】
インフルエンザHA(A スイス 2013 H3N2)のエクトドメイン(1-533) - HIV GP160-ベースのSSM:
[0524]
【0452】
【化113】
【0453】
インフルエンザHA(A カリフォルニア 2009,H1N1pdm)のエクトドメイン(1-526):
[0525]
【0454】
【化114】
【0455】
インフルエンザHA(A カリフォルニア 2009,H1N1pdm)のエクトドメイン(1-526)-Foldon SSM:
[0526]
【0456】
【化115】
【0457】
インフルエンザHA(A カリフォルニア 2009,H1N1pdm)のエクトドメイン(1-526) - HIV GP160-ベースのSSM:
[0527]
【0458】
【化116】
【0459】
RSV Fのエクトドメイン(1-516)-Hisタグ:
[0528]
【0460】
【化117】
【0461】
RSV Fのエクトドメイン(1-513)-DScav変異-Foldon SSM:
[0529]
【0462】
【化118】
【0463】
RSV Fのエクトドメイン(1-105,145-511)-HIV GP160-ベースのSSM:
[0530]
【0464】
【化119】
【0465】
ニパFのエクトドメイン(1-483)-HIV GP160-ベースのSSM:
[0531]
【0466】
【化120】
【0467】
HSV1 gBのエクトドメイン(28-741)-IgKシグナルペプチド-HIV
GP160-ベースのSSM:
[0532]
【0468】
【化121】
【0469】
麻疹Fのエクトドメイン(1-488)-HIV GP160-ベースのSSM:
[0533]
【0470】
【化122】
【0471】
ラッサウイルスGPCのエクトドメイン(1-423)-HIV GP160-ベースのSSM:
[0534]
【0472】
【化123】
【0473】
タンパク質の発現および精製
[0535] 下記のキメラ融合タンパク質をコードするコドン最適化DNA配列を、pIRES-2またはpNBF真核細胞発現ベクターのCMVプロモーターの後に組み込んだ:インフルエンザH1 foldon、インフルエンザH1クランプ、インフルエンザH3
foldon、インフルエンザH3クランプ、RSV Fクランプ、RSV F ds
cav Foldon、MERS SクランプおよびエボラGPクランプ デルタムチン、ニパウイルスFクランプ、麻疹ウイルスFクランプ、ラッサウイルスGPCクランプ、単純ヘルペス2ウイルスgBクランプ(ならびに、HIV-1 HRAおよびHRB配列を欠如する対応するエクトドメインRSV FおよびインフルエンザH3)。得られたプラスミドを、化学的に規定されたCHO(CD-CHO)培地(Gibco)またはExpiCHO発現培地(Gibco)中で増殖させたチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞にトランスフェクションした。600μgのプラスミドおよび2.4mgの線状ポリエチレンンイミンを300mLのCHO細胞中で1×10細胞/mLの密度において混和するか、あるいは16μgのプラスミドを640μlのOPTI-pro無血清培地(SFM)および51.2μlのエクスピフェクタミン(expifectamine)(Gibco)と混和することにより、CHO細胞をトランスフェクションした。4時間のインキュベーション後に、線状ポリエチレンンイミンでトランスフェクションしたCHO細胞をペレット化し、トランスフェクション試薬を含有する培地を除去し、8mMのGlutamax(Gibco)、100単位/mLのペニシリン(Gibco)、100μg/mLのストレプトマイシン(Gibco)、7.5%のCHO CD Efficient Feed A(Gibco)、および7.5%のCHO CD Efficient Feed B(Gibco)を含有する300mLのCD-CHOに細胞を再懸濁した。エクスピフェクタミンでトランスフェクションした細胞については、24時間のインキュベーションの後、96μlのExpiCHOエンハンサーおよび3.84mlのExpiCHO供給材料を添加した。両セットの細胞を次いで37℃、7.5% COで7日間、約120rpmで振とうしながらインキュベートした。7日後、6,000×gで10分間の遠心により細胞を分離し、上清を濾過した。
【0474】
[0536] 組換えタンパク質を、HiTrap NHS活性化HPカラム(GE)に共有結合した特異的モノクローナル抗体を用いるアフィニティークロマトグラフィーにより精製した。キメラクランプ安定化したインフルエンザHA、RSV F、MERS S、エボラGP、ラッサGPC、ニパF、麻疹FおよびHSV2 gBを、HIV-1 HRAおよびHRBにより形成された6-ヘリックスバンドルに結合するmAb 1281(Frey, et al., Nat Struct Mol Biol. 2010. 17(12):1486-91)により精製した。キメラクランプ安定化した、およびfoldon安定化したインフルエンザH1、ならびにH1について対応するエクトドメインを、mAb 5J8(Hong, et al., J Virol, 2013. 87(22): p. 12471-80)により精製した。キメラクランプ安定化した、およびfoldon安定化したインフルエンザH3、ならびにH3について対応するエクトドメインを、mAb C05(Ekiert, et al., Nature, 2012. 489(7417): 526-32)により精製した。キメラクランプ安定化した、およびds cav変異を含むfoldon安定化したRSV F、ならびに対応するRSV Fエクトドメインを、mAb 101F(McLellan, et al. J Virol. 2010. 84(23):12236-44)により精製した。希望するタンパク質の精製をSDS-PAGEにより確認した。
【0475】
結果
タンパク質の発現および精製のための一般法としての分子クランプ:
[0537] キメラクランプ安定化した8種類のウイルスに由来するウイルス融合タンパク質の発現および精製をSDS-PAGEにより確認した(図15)。HIV-1 GP160 HR1およびHR2配列をベースとするSSMをエクトドメインの下流に組み込むことにより、HIV-1 HRAおよびHRBにより形成された6-ヘリックスバンドルに結合するmAb 1281(Frey, et al., Nat Struct Mol Biol. 2010. 17(12):1486-91)を用いて多様なキメラタンパク質を回収することができる。
【0476】
インフルエンザウイルスH1N1pdmによる攻撃後のマウス防御試験:
[0538] インフルエンザHAエクトドメインへの6-ヘリックスバンドル形成部分の組込みが広域交差反応性の免疫応答を誘導できることを示す結果を拡張するために、インフルエンザ攻撃実験をC57bマウスにおいて実施した。この試験を、多様なインフルエンザサブタイプからの広域スペクトル交差防御の誘導に関して、6-ヘリックスバンドル形成部分の分子クランプをfoldon SSMと直接比較するためにも設定した。C57bマウスにPBS、H1sol、H3sol、H1foldon、H3foldon、H1クランプまたはH3クランプのいずれかを接種した。ワクチンを用量調和させてそれぞれが5μgのHAおよび3μgのQuilAを含有し、マウスに2週間置いて3回のワクチンを投与した。次いでマウスを初回投与の6週間後にインフルエンザCal/09(H1N1pdm)で攻撃した(グループ当たりn=5匹のマウス)。この試験は、同一株に対する防御ときわめて多様なサブタイプに対する防御の両方を査定するために設計された。マウスを鼻内経路により、1×10プラーク形成単位(PFU)の‘低用量’および5.5×10 PFUの‘高用量’インフルエンザAウイルスH1N1pdmで攻撃した。14日間にわたって毎日、体重減少を測定し、マウスがそれらの元の体重の>20%を失えばそのマウスを排除した。
【0477】
[0539] この試験により、H1クランプはH1solおよびH1foldonと同様に一致した株のインフルエンザに対して完全防御をもたらすことが確認された(図16AおよびB)。特に興味深いことに、H3クランプによる免疫化もインフルエンザH1N1pdmに対して部分的防御を示した。H3クランプについて、低い量のインフルエンザH1N1pdmで攻撃した際に3/5のマウスが生存し、高用量のインフルエンザH1N1pdmで攻撃した際に2/5のマウスが生存した(図16CおよびD)。これと比較して、H3solまたはH3 foldonで免疫化したマウスは低用量または高用量のいずれのインフルエンザH1N1pdmで攻撃した際にも生存せず、PBSで模擬免疫化したマウスは低用量のインフルエンザH1N1pdmで攻撃した際に1/5が生存したにすぎない。H3クランプ接種後にH1N1pdmで生存したマウス(5/10)と模擬接種またはH3solもしくはH3 foldonの接種の後に生存したマウス(1/30)の比較は、H3クランプにより仲介される広域インフルエンザ防御の統計学的有意性を立証する(p=0.0003;カイ二乗検定計算式)。H3とH1のサブタイプはインフルエンザ系統樹内で別個のグループに属するので、この結果は広域レベルの防御の指標となり、同程度またはより分岐度の少ないすべてのインフルエンザ株およびサブタイプの広域スペクトルを当然予想できる。
【0478】
クランプSSMを組み込んだ際の熱安定性の増大:
[0540] クランプSSMおよびfoldon SSMによってもたらされる安定性を直接比較するために、精製した抗原インフルエンザH1 foldon、インフルエンザH1クランプ、RSV F ds cav foldon、およびRSV Fクランプを43℃で72時間インキュベートし、mAbとの反応性を熱安定性の尺度として用いた。RSV F比較のために、3種類の融合前特異的mAbを用いた:D25(McLellan et al., Science, 2013. 340(6136): p. 1113-7)、MPE8(Corti et al., Nature, 2013. 501(7467): p. 439-43)およびAM22(McLellan et al., Science, 2013. 340(6136): p. 1113-7)。インフルエンザHAの比較のために、2種類のステム特異的mAb:CR6261(Ekiert et al., Science, 2009. 324(5924): p. 246-51)およびFi6V3(Corti et al., Science, 2011. 333(6044): p. 850-6)、ならびに1種類のヘッド特異的mAb:5J8(Hong, et al. J Virol. 2013. 87(22): p. 12471-80)を用いた。直接比較により、RSV Fクランプは高い温度でのインキュベーション後にRSV F ds cav foldonより有意に高い融合前特異的mAbとの反応性を保持していることが明らかになった(図17A)。同様に、直接比較により、インフルエンザH1クランプはインフルエンザH1 foldonより有意に高いHAステム特異的mAbとの反応性を保持していることが明らかになった(図17B)。ヘッド特異的mAbとの反応性の保持は、インフルエンザH1クランプとインフルエンザH1 foldonとの間で同等であった。これらの結果を合わせると、foldon SSMと比較してクランプSSMの卓越した安定性が立証される。
【0479】
RSV Fクランプにより誘導された中和免疫応答:
[0541] 6-ヘリックスバンドル形成部分の組込みにより融合前形態で安定化されたウイルス融合タンパク質の、免疫原としての有用性を試験するために、BALB/cマウスをRSV Fクランプ、RSV F ds cav foldon、対応するRSVエクトドメイン(RSV F sol)で免疫化し、あるいはPBSで模擬免疫化した。グループ当たり5匹のBALB/cマウスを、3μgのサポニンアジュバントQuil-Aを含む5μgの精製タンパク質(またはPBS)で免疫化した。免疫化は皮内送達によるものであり、それぞれ3週間置いて3回、マウスを免疫化した。3回目の免疫化の3週間後にマウスをと殺し、血清を採集した。個々のマウスからの血清の中和効果を、RSV株A2に対してプラーク減少中和試験(PRNT)で査定した(図18)。キメラクランプ安定化したRSV Fクランプを接種したマウスからの血清は幾何平均IC50値8,124(95%CI=1,968~33,543)をもつ強い中和活性を示し、一方、RSV F ds cav foldonを接種したマウスからの血清は幾何平均IC50値2,859(95%CI=794~10,290)をもつ中和活性を示し、RSV F solを接種したマウスからの血清は幾何平均IC50値562(95%CI=242~1,410)をもつ中和活性を示した。したがって、HIV-1 HR1およびHR2から構成される構造安定化部分の組込みによるRSV Fの融合前形態の安定化は強い中和免疫応答にとって重要であり、それは別の安定化アプローチ‘ds cav foldon’(McLellan et al., Science, 2013. 342(6158): p. 592-8)により誘導されるものよりおおよそ3倍高い。
【0480】
ニパウイルスFの融合前コンホメーションの安定化:
[0542] ウイルス融合タンパク質の融合前コンホメーションを安定化するためのクランプSSMの有用性をさらに確証するために、クランプSSMをニパウイルスFのエクトドメインに組み込み、CHO細胞において発現させた。イムノアフィニティークロマトグラフィーにより精製したタンパク質を、次いでsuperdex 200カラムを用いるサイズ排除クロマトグラフィーにより分析した。ニパウイルスFクランプの主要部分はおおよそ11.5mLで溶出し、それはトリマータンパク質の予想サイズ約180kDaにほぼ等しい(図19)。パラミクソウイルスFについて十分に立証されているように(Conno
lly et al., PNAS, 2006. 103(47): P. 17903-8)、ニパウイルスFの融合後コンホメーションへの転移によって疎水性融合ペプチドの露出が生じ、それによりタンパク質凝集が推進されると予想される。したがって、可溶性トリマータンパク質の存在は融合前コンホメーションの存在を支持する証拠である。精製ニパウイルスFクランプをネガティブ染色透過型電子顕微鏡検査(TEM)によっても分析した(図19,挿入図)。提示したTEMイメージ内に、ニパウイルスFクランプの粒子は予想した融合前コンホメーションと一致する均一なサイズおよびトポロジーをもつことが明瞭に見える。提示したデータは、クランプSSMがウイルス融合タンパク質の融合前コンホメーションを安定化する能力をさらに支持する。
【0481】
ニパウイルスFクランプにより誘導された中和免疫応答:
[0543] 6-ヘリックスバンドル形成部分の組込みによりそれらの融合前形態で安定化されたウイルス融合タンパク質の免疫原としての有用性をさらに試験するために、BALB/cマウスをニパウイルスFクランプで免疫化し、あるいはPBSで模擬免疫化した。グループ当たり4匹のBALB/cマウスを、3μgのサポニンアジュバントQuil-Aを含む5μgの精製タンパク質(またはPBS)で免疫化した。免疫化は皮内送達によるものであり、それぞれ3週間置いて2回、マウスを免疫化した。2回目の免疫化の3週間後にマウスをと殺し、血清を採集した。個々のマウスからの血清の中和効果を、生ニパウイルス(マレーシア株)に対してプラーク減少中和試験(PRNT)でBSL4含有下に査定した(図20)。キメラクランプ安定化ニパウイルスFクランプを接種したマウスからの血清はすべて、幾何平均IC50値48(95%CI=6~384)をもつ強い中和活性を示し、一方、PBSを模擬接種したマウスからの血清は試験した最高血清濃度で中和活性を示さなかった。したがって、この結果はクランプSSMを組み込んだキメラウイルス融合タンパク質が接種に際して中和免疫応答を誘導できるというさらなる証拠を提供する。
【0482】
クラスIIIウイルス融合タンパク質へのクランプSSMの組込み:
[0544] ウイルス融合タンパク質の安定化に対するクランプSSMの有用性をさらに確証するために、クランプSSMをHSV2 gBのエクトドメインに組み込み、CHO細胞において発現させた。イムノアフィニティークロマトグラフィーにより精製したタンパク質を次いでsuperose 6カラム上でのサイズ排除クロマトグラフィーにより分析した。HSV2 gBクランプの主要部分はおおよそ15mLで溶出し、それはトリマータンパク質の予想サイズ約300kDaにほぼ等しい(図21)。精製HSV2 gBクランプをネガティブ染色透過型電子顕微鏡検査(TEM)によっても分析した(図21,挿入図)。提示したTEMイメージ内に、HSV2 gBクランプの粒子はX線結晶学によって以前に解像された構造(Heldwein et al., Science, 2006. 313(5784): 217-20)と一致する均一なサイズおよびトポロジーをもつことが明瞭に見える。このコンホメーションはHSV2 gB融合後コンホメーションであるという仮説が立てられる。明らかに、HSV2 gBクランプはHSV2に対する大部分の中和抗体を結合することもでき、サブユニットワクチン候補(Cairns et al., JVi, 2014. 88(5): P. 2677-89)として有用な可能性がある。提示したデータは、クランプSSMがウイルスクラスI融合タンパク質のほかにウイルスクラスIII融合タンパク質を安定化および精製できることを支持する。
【0483】
[0545] ここに提示した結果は、融合前コンホメーションに拘束されたウイルス融合タンパク質のエクトドメインを含むキメラポリペプチドは
・ より広域の交差防御免疫応答を誘導できる;
・ 高い温度で安定である:
・ 卓越した中和免疫応答を誘導できる;および
・ クラスIまたはクラスIIIエクトドメインを用いて形成できる
ことを立証する。
【0484】
[0546] 本明細書に引用したあらゆる特許、特許出願、および刊行物の開示内容の全体を本明細書に援用する。
[0547] 本明細書中の参考文献の引用を、そのような参考文献が本出願に対する“先行技術”として利用されることを認めるものと解釈すべきではない。
【0485】
[0548] 本明細書全体を通して、その目的は、本発明をいずれか1つの態様または特定集合の特徴に限定することなく本発明の好ましい態様を記載することである。したがって、本開示を考慮に入れて、例示した特定の態様において本発明の範囲を逸脱することなく種々の改変および変更をなしうることは、当業者には認識されるであろう。そのような改変および変更はすべて特許請求の範囲に含まれるものとする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
【配列表】
2023071901000001.app
【手続補正書】
【提出日】2023-04-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それらの会合に適した条件下で(たとえば水溶液中で)相互に会合して逆平行、2-ヘリックスバンドルを形成する相補的な第1ヘプタッドリピート(HR1)および第2ヘプタッドリピート(HR2)領域を含むヘテロロガスな構造安定化部分に、作動可能な状態で下流において結合したエンベロープウイルス融合エクトドメインポリペプチドを含む、キメラポリペプチド。
【請求項2】
HR1およびHR2領域がエクトドメインポリペプチドに対する相補性を欠如し、したがってそれらはエクトドメインポリペプチドの構造要素とではなく優先的に相互に逆平行、2-ヘリックスバンドルを形成する、請求項1に記載のキメラポリペプチド。
【請求項3】
HR1およびHR2領域はそれぞれ独立して、(a-b-c-d-e-f-g-)または(d-e-f-g-a-b-c-)として表記されるn回反復7残基パターンのアミノ酸タイプを特徴とし、その際、パターン要素‘a’~‘g’はアミノ酸タイプが位置する一般的なヘプタッド位置を表わし、nは2に等しいかまたはそれより大きい数値であり、一般的なヘプタッド位置‘a’および‘d’の少なくとも50%(または少なくとも51%~少なくとも99%、およびその間のすべての整数パーセント)が疎水性アミノ酸タイプにより占有され、一般的なヘプタッド位置‘b’、‘c’、‘e’、‘f’および‘g’の少なくとも50%(または少なくとも51%~少なくとも99%、およびその間のすべての整数パーセント)が親水性アミノ酸タイプにより占有され、その結果生じる疎水性アミノ酸タイプと親水性アミノ酸タイプの分布によりヘプタッドリピート領域の同定が可能になる、請求項1または請求項2に記載のキメラポリペプチド。
【請求項4】
HR1およびHR2領域の一方または両方が、内在性クラスIエンベロープウイルス融合タンパク質ヘプタッドリピート領域アミノ酸配列を含み、それからなり、または本質的にそれからなる、請求項1~3のいずれか1項に記載のキメラポリペプチド。
【請求項5】
HR1およびHR2領域が、それぞれ1以上のクラスIエンベロープウイルス融合タンパク質の相補的な内在性ヘプタッドリピートA(HRA)およびヘプタッドリピートB(HRB)領域を含み、それからなり、または本質的にそれからなる、請求項4に記載のキメラポリペプチド。
【請求項6】
HRA領域アミノ酸配列とHRB領域アミノ酸配列が同一のクラスIエンベロープウイルス融合タンパク質に由来する、請求項5に記載のキメラポリペプチド。
【請求項7】
HRA領域アミノ酸配列とHRB領域アミノ酸配列が異なるクラスIエンベロープウイルス融合タンパク質に由来する、請求項5に記載のキメラポリペプチド。
【請求項8】
HR1およびHR2領域が独立して、オルソミキソウイルス、パラミキソウイルス、レトロウイルス、コロナウイルス、フィロウイルスおよびアレナウイルスにより発現される融合タンパク質のHRAおよびHRB領域から選択される、請求項1~7のいずれか1項に記載のキメラポリペプチド。
【請求項9】
構造安定化部分(たとえば、HR1およびHR2領域の一方または両方を含む)が、構造安定化部分に対する免疫応答の惹起を阻害する免疫サイレンシング部分を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載のキメラポリペプチド。
【請求項10】
免疫サイレンシング部分が、グリコシル化酵素(たとえば、グリコシルトランスフェラーゼ)により認識されてグリコシル化されるグリコシル化部位である、請求項9に記載のキメラポリペプチド。
【請求項11】
構造安定化部分(たとえば、HR1およびHR2領域の一方または両方を含む)が、1以上の非天然アミノ酸を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載のキメラポリペプチド。
【請求項12】
1以上の非天然アミノ酸がポリエチレングリコールのカップリングを可能にする、請求項11に記載のキメラポリペプチド。
【請求項13】
1以上の非天然アミノ酸が免疫刺激部分のカップリングを可能にする、請求項11に記載のキメラポリペプチド。
【請求項14】
1以上の非天然アミノ酸が、脂質のカップリングを可能にする(たとえば、特に宿主免疫応答を刺激するために、キメラポリペプチドのエクトドメインをディスプレイする脂質ベシクルまたはウイルス様粒子の形成を容易にする)、請求項11に記載のキメラポリペプチド。
【請求項15】
エクトドメインポリペプチドがクラスIエンベロープウイルス融合タンパク質エクトドメインに対応する、請求項1~14のいずれか1項に記載のキメラポリペプチド。
【請求項16】
エクトドメインポリペプチドが内在性HRA領域および内在性HRB領域のうち一方または両方を含む、請求項15に記載のキメラポリペプチド。
【請求項17】
クラスI融合タンパク質が、オルソミキソウイルス、パラミキソウイルス、レトロウイルス、コロナウイルス、フィロウイルスおよびアレナウイルスから選択されるクラスIエンベロープ融合タンパク質ウイルスからのものである、請求項15または請求項16に記載のキメラポリペプチド。
【請求項18】
エクトドメインポリペプチドがクラスIIIエンベロープウイルス融合タンパク質エクトドメインに対応する、請求項1~14のいずれか1項に記載のキメラポリペプチド。
【請求項19】
クラスIII融合タンパク質が、ラブドウイルスおよびヘルペスウイルスから選択されるクラスIIIエンベロープ融合タンパク質ウイルスからのものである、請求項18に記載のキメラポリペプチド。
【請求項20】
エクトドメインポリペプチド(たとえば、クラスIまたはクラスIII)が前駆体エクトドメインポリペプチド全体またはその一部を含むか、あるいはそれからなる、請求項1~19のいずれか1項に記載のキメラポリペプチド。
【請求項21】
エクトドメインポリペプチドまたはその一部が、内在性シグナルペプチド、プロテアーゼ開裂部位、エクトドメインの内在性ヘッド部分、エクトドメインの内在性ステム部分、内在性ムチン様ドメイン、内在性膜近傍外部領域および内在性融合ペプチドのうちいずれか1以上を欠如する、請求項20に記載のキメラポリペプチド。
【請求項22】
エクトドメインポリペプチドをプロテアーゼによるタンパク質分解開裂に対してより低い感受性にするために、野生型または基準の融合タンパク質の1以上の内在性タンパク質分解開裂部位(たとえば、1以上のフーリン開裂部位)が変化または欠失している、請求項20または請求項21に記載のキメラポリペプチド。
【請求項23】
エクトドメインポリペプチドは、そのエクトドメインポリペプチドが対応する融合後形態のエンベロープウイルス融合タンパク質には存在しない少なくとも1つの融合前エピトープを含む、請求項1~22のいずれか1項に記載のキメラポリペプチド。
【請求項24】
構造安定化部分のHR1領域とHR2領域がリンカーにより結合している、請求項1~23のいずれか1項に記載のキメラポリペプチド。
【請求項25】
リンカーが約1~約100のアミノ酸残基(およびそれらの間のすべての整数のアミノ酸残基)からなる、請求項24に記載のキメラポリペプチド。
【請求項26】
リンカーが約1~約50のアミノ酸残基(およびそれらの間のすべての整数のアミノ酸残基)からなる、請求項24に記載のキメラポリペプチド。
【請求項27】
リンカーが約50~約100のアミノ酸残基(およびそれらの間のすべての整数のアミノ酸残基)からなる、請求項24に記載のキメラポリペプチド。
【請求項28】
リンカーが、キメラポリペプチドの精製を容易にする精製部分、キメラポリペプチドに対する免疫応答を調節する免疫調節部分、細胞特異的部分、および構造柔軟性を付与する部分から選択される少なくとも1つの部分を含む、請求項24~27のいずれか1項に記載のキメラポリペプチド。
【請求項29】
それらの会合に適した条件下で(たとえば水溶液中で)相互に会合して逆平行、2-ヘリックスバンドルを形成する相補的な第1ヘプタッドリピート(HR1)および第2ヘプタッドリピート(HR2)領域を含むヘテロロガスな構造安定化部分に、作動可能な状態で下流において結合したタンパク性分子を含む、キメラポリペプチド。
【請求項30】
タンパク性分子が療法用ポリペプチドである、請求項29に記載のキメラポリペプチド。
【請求項31】
宿主生物において請求項1~28のいずれか一項記載のキメラポリペプチドの内因性産生のための核酸構築体。
【請求項32】
請求項31に記載の核酸構築体であって、宿主生物が哺乳動物である、前記核酸構築体。
【請求項33】
請求項31に記載の核酸構築体であって、宿主生物がヒトである、前記核酸構築体。
【請求項34】
前記核酸構築体がmRNAを含む、請求項31~33のいずれかに記載の核酸構築体。
【請求項35】
請求項1~28のいずれか一項記載のキメラポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
【請求項36】
前記ポリヌクレオチドがmRNAを含む、請求項35記載のポリヌクレオチド。
【請求項37】
エンベロープウイルス融合タンパクに対する免疫応答を惹起するための医薬組成物であって、前記組成物は請求項31~34のいずれか一項記載の核酸構築体、または請求項35または36記載のポリヌクレオチドを含む、前記医薬組成物。
【請求項38】
請求項31~34のいずれか一項記載の一つ又はそれ以上の核酸構築体、または請求項35もしくは36記載のポリヌクレオチドを含む、組成物。
【請求項39】
前記組成物が免疫調節組成物である、請求項38記載の組成物。
【請求項40】
宿主細胞において作動可能である調節要素に作動可能な状態で連結した、請求項1~30のいずれか1項に記載のキメラポリペプチドに対するコーディング配列を含む、核酸構築体。
【請求項41】
請求項31~34、および40のいずれか一項記載の核酸構築体を含む宿主細胞。
【請求項42】
宿主細胞が原核宿主細胞である、請求項41に記載の宿主細胞。
【請求項43】
宿主細胞が真核宿主細胞である、請求項42に記載の宿主細胞。
【請求項44】
キメラポリペプチド複合体を製造する方法であって、請求項1~30のいずれか1項に記載のキメラポリペプチドを、キメラポリペプチド複合体の形成に適した条件下で(たとえば水溶液中で)結合させ、それにより、3つのキメラポリペプチドサブユニットを含む、キメラポリペプチドのそれぞれの構造形成部分の2-ヘリックスバンドルのオリゴマー化により形成された6ヘリックスバンドルを特徴とするキメラポリペプチド複合体を製造する方法。
【請求項45】
請求項1~30のいずれか1項に記載のキメラポリペプチドサブユニットを3つ含み、キメラポリペプチドのそれぞれの構造形成部分の2-ヘリックスバンドルのオリゴマー化により形成された6ヘリックスバンドルを特徴とする、キメラポリペプチド複合体。
【請求項46】
キメラポリペプチドサブユニットがそれぞれエンベロープウイルス融合エクトドメインポリペプチドを含み、複合体が融合後形態のエンベロープウイルス融合タンパク質またはその複合体には存在しない目的とするエンベロープウイルス融合タンパク質(たとえば、野生型エンベロープウイルス融合タンパク質)またはその複合体の少なくとも1つの融合前エピトープを含む、請求項45に記載の複合体。
【請求項47】
請求項1~30のいずれか1項に記載のキメラポリペプチド、または請求項45もしくは請求項46に記載のキメラポリペプチド複合体、および医薬的に許容できるキャリヤー、希釈剤またはアジュバントを含む、組成物。
【請求項48】
エンベロープウイルスの融合タンパク質またはその融合タンパク質の複合体と結合する薬剤(たとえば、小分子または高分子)を同定する方法であって、前記および本明細書の他のいずれかの箇所に概説的に記載したエクトドメインポリペプチドを含むキメラポリペプチドまたはキメラポリペプチド複合体と候補薬剤を接触させ、その際、エクトドメインポリペプチドはエンベロープウイルスの融合タンパク質に対応する;そしてキメラポリペプチドまたはキメラポリペプチド複合体への候補薬剤の結合を検出することを含む方法。
【請求項49】
さらに、候補薬剤を融合タンパク質またはその融合タンパク質の複合体と接触させ、そして融合タンパク質またはその複合体への候補薬剤の結合を検出することを含む、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
候補薬剤が化合物ライブラリー(たとえば、小分子または高分子のライブラリー)の一部である、請求項48または請求項49に記載の方法。
【請求項51】
さらに、候補薬剤をライブラリーから単離することを含む、請求項48~50のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
候補薬剤がキメラポリペプチドまたはキメラポリペプチド複合体に特異的に結合する、請求項48~51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
候補薬剤が融合タンパク質またはその融合タンパク質の複合体に特異的に結合する、請求項48~52のいずれか1項に記載の方法。
【請求項54】
エンベロープウイルスの融合タンパク質またはその融合タンパク質の複合体と免疫相互作用性である抗原結合分子(たとえば、中和抗体などの抗体)を製造する方法であって、(1)動物を、請求項1~28のいずれか1項に記載のエクトドメインポリペプチドを含むキメラポリペプチド、または請求項45もしくは請求項46に記載のエクトドメインポリペプチドを含むキメラポリペプチド複合体、または請求項47に記載のそれの組成物で免疫化し、その際、エクトドメインポリペプチドはエンベロープウイルスの融合タンパク質に対応する;(2)融合タンパク質またはその複合体と免疫相互作用性であるB細胞をその動物から同定および/または単離する;そして(3)そのB細胞が発現した抗原結合分子を製造することを含む方法。
【請求項55】
請求項54に記載の方法により製造された抗原結合分子、またはその抗原結合分子と同じエピトープ結合特異性を備えた誘導体型の抗原結合分子。
【請求項56】
抗体フラグメント(たとえば、Fab、Fab’、F(ab’)、Fv)、一本鎖抗体(scFv)およびドメイン抗体(たとえば、サメおよびラクダ科動物の抗体を含む)、ならびに抗体を含む融合タンパク質、ならびに免疫グロブリン分子の抗原結合/認識部位を含む他のいずれかの修飾構造体から選択される、請求項55に記載の誘導体型の抗原結合分子。
【請求項57】
請求項55または請求項56に記載の抗原結合分子、および医薬的に許容できるキャリヤー、希釈剤またはアジュバントを含む、組成物。
【請求項58】
対象においてエンベロープウイルスの融合タンパク質またはその融合タンパク質の複合体に対する免疫応答を惹起するための医薬組成物であって、前記組成物は請求項45または46記載のエンベロープウイルス融合エクトドメイン含有キメラポリペプチド複合体を含み、キメラポリペプチド複合体のエクトドメインポリペプチドサブユニットがエンベロープウイルスの融合タンパク質に対応する、前記医薬組成物。
【請求項59】
対象においてエンベロープウイルスの融合タンパク質またはその融合タンパク質の複合体に対する免疫応答を惹起するための医薬組成物であって、前記組成物は請求項1~28のいずれか一項記載のエクトドメインポリペプチド含有キメラポリペプチド、または請求項45もしくは46記載のエクトドメインポリペプチド含有キメラポリペプチド複合体を発現できるDNAワクチンまたはウイルスベクター/レプリコンを含み、キメラポリペプチド複合体のエクトドメインポリペプチドサブユニットがエンベロープウイルスの融合タンパク質に対応する、前記組成物。
【請求項60】
対象においてエンベロープウイルス感染症を治療または予防するための医薬組成物であって、前記組成物は請求項45または46記載のエンベロープウイルス融合エクトドメイン含有キメラポリペプチド複合体を含み、キメラポリペプチド複合体のエクトドメインポリペプチドサブユニットがエンベロープウイルスの融合タンパク質に対応する、前記組成物。
【請求項61】
対象においてエンベロープウイルス感染症を治療または予防するための医薬組成物であって、前記組成物は請求項1~28のいずれか一項記載のエクトドメインポリペプチド含有キメラポリペプチド、または請求項45もしくは46記載のエクトドメインポリペプチド含有キメラポリペプチド複合体を発現できるDNAワクチンまたはウイルスベクター/レプリコンを含み、キメラポリペプチド複合体のエクトドメインポリペプチドサブユニットがエンベロープウイルスの融合タンパク質に対応する、前記組成物。
【請求項62】
対象においてエンベロープウイルス感染症を治療または予防するための医薬組成物であって、前記組成物は請求項55または56記載の抗原結合分子を含む、前記組成物。
【請求項63】
それらの会合に適した条件下で(たとえば水溶液中で)相互に会合して逆平行、2-ヘリックスバンドルを形成する相補的な第1ヘプタッドリピート(HR1)および第2ヘプタッドリピート(HR2)領域を含むヘテロロガスな構造安定化部分に、作動可能な状態で下流において結合したタンパク性分子を含む、キメラポリペプチド。
【請求項64】
キメラポリペプチド複合体を製造する方法であって、請求項63に記載のキメラポリペプチドを、キメラポリペプチド複合体の形成に適した条件下で(たとえば水溶液中で)結合させ、それにより、3つのキメラポリペプチドサブユニットを含み、キメラポリペプチドのそれぞれの構造形成部分の2-ヘリックスバンドルのオリゴマー化により形成された6ヘリックスバンドルを特徴とするキメラポリペプチド複合体を製造する方法。
【請求項65】
請求項63に記載のキメラポリペプチドサブユニットを3つ含み、キメラポリペプチドのそれぞれの構造形成部分の2-ヘリックスバンドルのオリゴマー化により形成された6ヘリックスバンドルを特徴とする、キメラポリペプチド複合体。
【外国語明細書】