(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023007191
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】スキッドパイプ用断熱ブロック及びその施工方法
(51)【国際特許分類】
C21D 1/00 20060101AFI20230111BHJP
F16L 59/02 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
C21D1/00 114C
F16L59/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021110287
(22)【出願日】2021-07-01
(71)【出願人】
【識別番号】000170716
【氏名又は名称】黒崎播磨株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001601
【氏名又は名称】弁理士法人英和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩田 季志
(72)【発明者】
【氏名】川邊 勇介
(72)【発明者】
【氏名】池部 哲則
【テーマコード(参考)】
3H036
4K034
【Fターム(参考)】
3H036AA01
3H036AB15
3H036AB26
3H036AC02
4K034EB15
4K034EB19
(57)【要約】
【課題】スキッドパイプの周囲に設置する際に損傷しにくいスキッドパイプ用断熱ブロック及びその施工方法を提供する。
【解決手段】スキッドパイプの周囲に設置するスキッドパイプ用断熱ブロック3において、断熱ブロック本体31の外周面から内周面にかけて貫通する貫通孔35を有し、貫通孔35にリテイナー6が装着され、リテイナー6はスタッドを挿通する挿通孔を有し、前記挿通孔は貫通孔35と連続している。
【選択図】
図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スキッドパイプの周囲に設置するスキッドパイプ用断熱ブロックであって、
断熱ブロック本体の外周面から内周面にかけて貫通する貫通孔を有し、
前記貫通孔にリテイナーが装着され、
前記リテイナーはスタッドを挿通する挿通孔を有し、
前記挿通孔は前記貫通孔と連続している、スキッドパイプ用断熱ブロック。
【請求項2】
前記断熱ブロック本体の内周面側には、前記貫通孔の内孔面に係合部を有し、
前記リテイナーは、前記断熱ブロック本体の外周面側から前記係合部に係止する係止部を有する、請求項1に記載のスキッドパイプ用断熱ブロック。
【請求項3】
前記リテイナーは、前記断熱ブロック本体の外周面側にフランジ部を有する、請求項1又は2に記載のスキッドパイプ用断熱ブロック。
【請求項4】
前記貫通孔は、前記フランジ部から前記断熱ブロック本体の外周面にかけて漸次小さくなっている、請求項3に記載のスキッドパイプ用断熱ブロック。
【請求項5】
前記リテイナーは、前記断熱ブロック本体の内周面から突出する突出部を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載のスキッドパイプ用断熱ブロック。
【請求項6】
前記貫通孔は、前記断熱ブロック本体の周方向に間隔をおいて少なくとも2箇所に設けられている、請求項1から5のいずれか一項に記載のスキッドパイプ用断熱ブロック。
【請求項7】
スキッドパイプの周囲に断熱ブロックを設置するスキッドパイプ用断熱ブロックの施工方法であって、
前記断熱ブロックは、断熱ブロック本体の外周面から内周面にかけて貫通する貫通孔を有し、前記貫通孔にリテイナーが装着され、前記リテイナーはスタッドを挿通する挿通孔を有し、前記挿通孔は前記貫通孔と連続しており、
前記断熱ブロックをスキッドパイプの周囲に置く工程と、
前記貫通孔及び前記挿通孔を通して、前記スキッドパイプにスタッドを溶接する工程と、
前記貫通孔にシール材を充填する工程と、
前記スキッドパイプと前記断熱ブロックとの間に断熱キャスタブル材を流し込む工程と、を含むスキッドパイプ用断熱ブロックの施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱炉のウォーキングビームを構成するスキッドパイプの周囲に設置するスキッドパイプ用断熱ブロック及びその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図7に概念的に示しているように、加熱炉のウォーキングビームを構成するスキッドパイプ1は、鉛直方向に伸びる複数本のスキッドポスト11と水平方向に伸びる1本のスキッドビーム12とからなり、重量物を支持するための強度を保つ目的で、スキッドポスト11及びスキッドビーム12には水冷パイプが用いられている。そして、加熱炉から、スキッドパイプ1内を流れる冷却水への抜熱損失を低減するために、スキッドパイプ1の周囲には断熱材や断熱ブロックが設置される。断熱ブロックは、例えば特許文献1に開示されているように、予めスキッドパイプに取り付けられたスタッドで固定される場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スキッドパイプに取り付けられたスタッドへ断熱ブロックを取り付ける際には、断熱ブロックの貫通孔にスタッドを挿通させる作業が必要である。ところが、断熱ブロックの貫通孔にスタッドを挿通させる際に、スタッドが貫通孔の内孔面等の断熱ブロックに干渉することがある。スタッドが断熱ブロックに干渉すると、断熱ブロックは断熱性を確保するために多孔質材料で形成されているから簡単に損傷する。
【0005】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、スキッドパイプの周囲に設置する際に損傷しにくいスキッドパイプ用断熱ブロック及びその施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の要旨は次の通りである。
1.
スキッドパイプの周囲に設置するスキッドパイプ用断熱ブロックであって、
断熱ブロック本体の外周面から内周面にかけて貫通する貫通孔を有し、
前記貫通孔にリテイナーが装着され、
前記リテイナーはスタッドを挿通する挿通孔を有し、
前記挿通孔は前記貫通孔と連続している、スキッドパイプ用断熱ブロック。
2.
前記断熱ブロック本体の内周面側には、前記貫通孔の内孔面に係合部を有し、
前記リテイナーは、前記断熱ブロック本体の外周面側から前記係合部に係止する係止部を有する、前記1に記載のスキッドパイプ用断熱ブロック。
3.
前記リテイナーは、前記断熱ブロック本体の外周面側にフランジ部を有する、前記1又は2に記載のスキッドパイプ用断熱ブロック。
4.
前記貫通孔は、前記フランジ部から前記断熱ブロック本体の外周面にかけて漸次小さくなっている、前記3に記載のスキッドパイプ用断熱ブロック。
5.
前記リテイナーは、前記断熱ブロック本体の内周面から突出する突出部を有する、前記1から4のいずれか一項に記載のスキッドパイプ用断熱ブロック。
6.
前記貫通孔は、前記断熱ブロック本体の周方向に間隔をおいて少なくとも2箇所に設けられている、前記1から5のいずれか一項に記載のスキッドパイプ用断熱ブロック。
7.
スキッドパイプの周囲に断熱ブロックを設置するスキッドパイプ用断熱ブロックの施工方法であって、
前記断熱ブロックは、断熱ブロック本体の外周面から内周面にかけて貫通する貫通孔を有し、前記貫通孔にリテイナーが装着され、前記リテイナーはスタッドを挿通する挿通孔を有し、前記挿通孔は前記貫通孔と連続しており、
前記断熱ブロックをスキッドパイプの周囲に置く工程と、
前記貫通孔及び前記挿通孔を通して、前記スキッドパイプにスタッドを溶接する工程と、
前記貫通孔にシール材を充填する工程と、
前記スキッドパイプと前記断熱ブロックとの間に断熱キャスタブル材を流し込む工程と、を含むスキッドパイプ用断熱ブロックの施工方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、断熱ブロックをスキッドパイプの周囲に設置する際に、断熱ブロックが損傷しにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態であるスキッドパイプ用断熱ブロックを用いて構築したスキッドパイプ用断熱ブロック構造体の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1に、本発明の一実施形態であるスキッドパイプ用断熱ブロックを用いて構築したスキッドパイプ用断熱ブロック構造体を斜視図で示している。同図に示すスキッドパイプ用断熱ブロック構造体(以下、単に「断熱ブロック構造体」という。)2は、最下段断熱ブロック3、中段断熱ブロック4及び最上段断熱ブロック5の3種の断熱ブロックを組み合わせて、
図7に示したスキッドパイプ1のスキッドポスト11の周囲に積み上げてなる。これら3種の断熱ブロックは、いずれも本発明のスキッドパイプ用断熱ブロックの実施形態である。なお、
図1では2個の最上段断熱ブロック5のうち1個を省略するとともに残りの1個の一部を断面で示し、また2個の最下段断熱ブロック3のうち1個の内部構造を破線で示している。
【0010】
図2A、
図2B及び
図2Cに、それぞれ最下段断熱ブロック3、中段断熱ブロック4及び最上段断熱ブロック5を斜視図で示している。最下段断熱ブロック3、中段断熱ブロック4及び最上段断熱ブロック5は、いずれも予め型枠で成型して得られるプレキャストブロックであり、円筒体を周方向に2分割した半円筒形状を有している。また、最下段断熱ブロック3、中段断熱ブロック4及び最上段断熱ブロック5の各断熱ブロック本体31,41,51は、CaO・6Al
2O
3を鉱物組成とした多孔質な断熱性骨材が配合された材質(以下、この材質を「CA6材質」という。)からなる。なお、各断熱ブロック本体31,41,51の材質はCA6材質には限定されず、断熱性を確保できれば他の材質としてもよい。ただし、ブロックの強度及び断熱性の観点から、各断熱ブロック本体31,41,51の材質はCaO-Al
2O
3材質が好ましく、CA6材質が特に好ましい。
【0011】
図2Aに示すように最下段断熱ブロック3は、上面の中央部に凹部32、両端部に凸部33を有し、凹部32と凸部33とは傾斜面34で連続している。また、傾斜面34と凹部32及び傾斜面34と凸部33はそれぞれ曲面で連続している。
図2Bに示すように中段断熱ブロック4は、上面及び下面の中央部に凹部42、両端部に凸部43を有し、凹部42と凸部43とは傾斜面44で連続している。また、傾斜面44と凹部42及び傾斜面44と凸部43はそれぞれ曲面で連続している。
図2Cに示すように最下段断熱ブロック5は、下面の中央部に凹部52、両端部に凸部53を有し、凹部32と凸部33とは傾斜面54で連続している。また、傾斜面54と凹部52及び傾斜面54と凸部53はそれぞれ曲面で連続している。なお、本実施形態において最上段断熱ブロック5は、最下段断熱ブロック3を上下反転させた形状を有する。
【0012】
最下段断熱ブロック3、中段断熱ブロック4及び最上段断熱ブロック5は、その断熱ブロック本体31,41,51の外周面から内周面にかけて半径方向、すなわちスキッドポスト11の外周面に向かう水平方向に貫通する貫通孔35,45,55を有する。貫通孔35,45,55は、断熱ブロック本体31,41,51の周方向に間隔をおいて2箇所に設けられている。具体的に貫通孔35,45,55は、断熱ブロック本体31,41,51を周方向に均等に2分割する半径に対しそれぞれ中心角45°の位置の2箇所に設けられている。言い換えれば、貫通孔35,45,55は半円筒形状の断熱ブロック本体31,41,51を周方向に均等に4分割する2つの半径に沿って設けられている。そして、断熱ブロック本体31,41,51は貫通孔35,45,55の位置及び形状も含めて全体として、断熱ブロック本体31,41,51を周方向に均等に2分割する半径を通る鉛直面に関して面対称となる形状を有する。
【0013】
貫通孔35,45,55には、リテイナー6が装着されている。
図3に、リテイナー6を斜視図で示している。貫通孔35,45,55に装着されるリテイナー6は共通であり、貫通孔35,45,55への装着の態様も同じである。そこで以下では、
図1のA部の拡大断面図である
図4を
図3とともに参照してリテイナー6の構成及び貫通孔55への装着の態様を説明する。
【0014】
本実施形態においてリテイナー6は、断熱ブロック本体51の貫通孔55の内壁面に埋設される。本実施形態では特に貫通孔55のうち先端側、つまり断熱ブロック本体51の内周面側に埋設する態様で貫通孔55に装着されている。すなわち、
図4に示すリテイナー6は、プレキャストブロックである最上段断熱ブロック5を型枠で成型して製造する際に、その型枠内において貫通孔55の先端側となる部分にリテイナー6を配置することで貫通孔55の先端側に埋設される。なお、貫通孔55のうちリテイナー6よりも基端側(断熱ブロック本体51の外周面側)には、
図2Cに表れているように空間55aが形成されている。この空間55aは、対応する形状の中子を型枠内に配置することにより形成することができる。またこの空間55aには、
図4に示しているようにスタッド7をスキッドポスト11に溶接した後にアルミナやCA6材質で構成されるシール材102が充填されてもよい。なお、
図2A及び
図2Bに示すように、最下段断熱ブロック3及び中段断熱ブロック4の貫通孔35,45にも同様に空間35a,44aを設けている。
【0015】
このように、貫通孔35,45,55のうちリテイナー6よりも基端側(断熱ブロック本体51の外周面側)に空間35a,45a,55aを設ける理由は、後述するようにスタッド7をスキッドポスト11に溶接する際に、空間部分に溶接ガンを差し込んで溶接ガンの位置決めをすることができるようにするためである。また、リテイナー6の全長よりもスタッド7を長くしておき、溶接ガンで持つ部分を作るためでもある。さらに、溶接ガンを貫通孔の空間部分に差し込まずに溶接をする場合、スタッドの位置が中央に来ないためスタッドを差し込む際にスタッドとリテイナーが干渉したり、スタッドで貫通孔を削ってしまう等の問題が生じ得るからである。加えて、スタッドを断熱ブロック本体の外周面からなるべく離すために、空間内にスタッドが納まるようにするためでもある。これによって、スタッドを伝って外部に熱が出ることを抑制できる。
【0016】
リテイナー6は、アルミナ等のセラミック材料からなり略四角柱状の形状を有する。このリテイナー6の中央部分には、スタッド7を挿通する挿通孔61を有し、挿通孔61は貫通孔55と連続している。また、リテイナー6は、断熱ブロック本体51の外周面側に矩形状のフランジ部62を有する。一方、断熱ブロック本体51の内周面側には、貫通孔55の内孔面に係合部56を有する。そしてこの係合部56に、リテイナー6のフランジ部62が断熱ブロック本体51の外周面側から係止している。すなわち、リテイナー6のフランジ部62は、断熱ブロック本体51の外周面側から係合部56に係止する係止部としての機能を有する。このように、リテイナー6のフランジ部62が断熱ブロック本体51の外周面側から係合部56に係止することで、リテイナー6が貫通孔55から断熱ブロック本体51の内周面側に外れにくくなる。
【0017】
また、断熱ブロック本体51の外周面側には、貫通孔55の内孔面に係合部57を有する。そしてこの係合部57に、リテイナー6のフランジ部62が断熱ブロック本体51の内周面側から係止している。これにより、リテイナー6が貫通孔55から断熱ブロック本体51の外周面側に外れにくくなっている。さらに貫通孔55は、リテイナー6のフランジ部62から断熱ブロック本体51の外周面にかけて漸次小さくなっている。これによっても、リテイナー6が貫通孔55から断熱ブロック本体51の外周面側に外れにくくなっている。
【0018】
リテイナー6は、断熱ブロック本体51の内周面から突出する突出部63を有する。このように突出部63を有することで、スキッドポスト11の外周面と断熱ブロック本体51の内周面との間に隙間を確保しやすい。また突出部63を有することで、リテイナー6をより長くしてスタッド7を一定長さ以上リテイナー6と接触させることで支える力を担保するという効果も得られる。
【0019】
なお、リテイナー6の形状は、
図3に示した形状には限定されず、例えば
図5に示すように、円盤状のフランジ部62を有する略円柱状としてもよい。また、フランジ部を有しない単純な角柱状あるいは円柱状としてもよい。いずれにしてもリテイナー6はスタッドを挿通する挿通孔61を有していればよい。なお、挿通孔61の形状も限定されず、
図3に示す円形のほか、
図5に示すように矩形としてもよい。また、リテイナー6は、断熱ブロック本体51の貫通孔55の先端側に埋設すなわち固定する態様以外で貫通孔55に装着してもよい。例えば、リテイナー6が貫通孔55内で移動可能となるように、リテイナー6を貫通孔55に装着してもよい。特に断熱ブロック本体51の半径方向にリテイナー6が移動可能としておくことで、断熱ブロック本体51の内周面とスキッドポスト11の外周面との間の隙間の間隔を調節できる。
【0020】
次に、最下段断熱ブロック3、中段断熱ブロック4及び最上段断熱ブロック5の3種の断熱ブロックをスキッドポスト11の周囲に設置する施工方法について説明する。なお、上述の通り最上段断熱ブロック5は最下段断熱ブロック3を上下反転させたものであるが、施工の向きが異なるため、断熱ブロックの種類としては区別するものとする。
まず、
図6Aに示すように、スキッドポスト11の周囲に第1の最下段断熱ブロック3Aを置く。このとき、スキッポスト11の外周面と第1の最下段断熱ブロック3Aの内周面との間に、後工程で断熱キャスタブル材を流し込むためのスペースとして所定幅の隙間を確保するが、
図4に示したように、リテイナー6は断熱ブロック本体の内周面から突出する突出部63を有するから、上記所定幅の隙間を確保しやすい。
スキッドポスト11の周囲に第1の最下段断熱ブロック3Aを置いた後、溶接ガン8にセットしたスタッド7を、第1の最下段断熱ブロック3Aの貫通孔35の空間35a及び貫通孔35に装着されているリテイナー6の挿通孔61を通し、溶接ガン8によってスキッドポスト11の外周面にスタッド7の先端を溶接する。第1の最下段断熱ブロック3Aには2箇所に貫通孔35があるから、その2箇所においてスキッドポスト11の外周面にスタッド7の先端を溶接する。この溶接工程は、後述する第2の最下段断熱ブロック3Bを置いた後に実施してもよい。なお、
図6Aにおいて第1の最下段断熱ブロック3Aの下には、熱膨張を吸収するためにセラミックファイバーシート9が配置されている。
【0021】
次に、
図6Bに示すように、第1の最下段断熱ブロック3Aと隣接するよう第2の最下段断熱ブロック3Bを置く。具体的には、第1の最下段断熱ブロック3Aと第2の最下段断熱ブロック3Bのそれぞれの凸部33,33が隣接するように置く。そして、第2の最下段断熱ブロック3Bの2箇所の貫通孔35を通して、溶接ガン8によってスキッドポスト11の外周面にスタッド7の先端を溶接する。なお、第1の最下段断熱ブロック3Aと第2の最下段断熱ブロック3Bとの縦目地箇所にはセラミックファイバーシート9が配置されている。
【0022】
次に、
図6Cに示すように、隣接させて置いた第1の最下段断熱ブロック3A及び第2の最下段断熱ブロック3Bの上に、最下段の中段断熱ブロックとして2個の中段断熱ブロック4A,4Bを隣接させて置く。具体的には、隣接させた第1の最下段断熱ブロック3A及び第2の最下段断熱ブロック3Bの凸部33,33に中段断熱ブロック4A,4Bの下面の凹部42が嵌合するように、中段断熱ブロック4A,4Bを隣接させて置く。これに伴い、隣接させた中段断熱ブロック4A,4Bの凸部43,43が、第1の最下段断熱ブロック3A及び第2の最下段断熱ブロック3Bの上面の凹部32に嵌合する。中段断熱ブロック4A,4Bを置いた後、最下段断熱ブロック3A,3Bと同様に、貫通孔45を通して、スキッドポスト11の外周面にスタッド7の先端を溶接する。なお、最下段断熱ブロック3A,3Bと中段断熱ブロック4A,4Bとの横目地箇所、及び2個の中段断熱ブロック4A,4B間の縦目地箇所にはセラミックファイバーシート9が配置されている。
【0023】
次に、
図6Dに示すように、各断熱ブロック3A,3B,4A,4Bの内周面とスキッドポスト11の外周面との間の隙間に断熱キャスタブル材を流し込み、断熱キャスタブル材層101を設ける。なお、この断熱キャスタブル材層101は、後工程で設けることもできる。
【0024】
次に、
図6Eに示すように、隣接させて置いた最下段の中段断熱ブロック4A,4Bの上に、最上段の中段断熱ブロックとして2個の中段断熱ブロック4C,4Dを隣接させて置く。具体的には、隣接させた最下段の中段断熱ブロック4A,4Bの上面の凸部43,43に最上段の中段断熱ブロック4C,4Dの下面の凹部42が嵌合するように、中段断熱ブロック4C,4Dを隣接させて置く。これに伴い、隣接させた最上段の中段断熱ブロック4C,4Dの下面の凸部43,43が、最下段の中段断熱ブロック4A,4Bの上面の凹部42に嵌合する。
続いて、隣接させて置いた最上段の中段断熱ブロック4C,4Dの上に、第1の最上段断熱ブロック5A及び第2の最上段断熱ブロック5Bを隣接させて置く。具体的には、第1の最上段断熱ブロック5Aの凸部53と第2の最上段断熱ブロックの凸部53を隣接させ、その隣接させた凸部53,53が最上段の中段断熱ブロック4C,4Dの上面の凹部42,42に嵌合するように第1の最上段断熱ブロック5A及び第2の最上段断熱ブロック5Bを隣接させて置く。これに伴い、隣接させた最上段の中段断熱ブロック4C,4Dの上面の凸部43,43が、最上段断熱ブロック5A,5Bの凹部52に嵌合する。
【0025】
次に、
図6Fに示すように、各断熱ブロック4C,4D,5A,5Bの内周面とスキッドポスト11の外周面との間の隙間に断熱キャスタブル材を流し込み、断熱キャスタブル材層101を設ける。また、各断熱ブロック3A,3B,4A,4B,4C,4D,5A,5Bの各貫通孔35,45,55の各空間にシール材102を例えば鏝塗りにより充填する。なお、各貫通孔35,45,55の各空間にシール材102を充填する工程は、各断熱ブロックの内周面とスキッドポスト11の外周面との間の隙間に断熱キャスタブル材を流し込む工程の前に実施することもできる。
【0026】
以上の工程により、
図1に示したような断熱ブロック構造体2が得られる。この断熱ブロック構造体2では、
図6A~Fで説明したように、隣接した2個の最下段の断熱ブロック3A,3Bの凸部33,33が最下段の中段断熱ブロック4A,4Bの下面の凹部42,42に嵌合し、また、隣接した2個の最上段の中段断熱ブロック4A,4Bの上面の凸部43,43が最上段熱ブロック5A,5Bの凹部52,52に嵌合している。このように断熱ブロック構造体2では、上下に施工した断熱ブロックが複合的に凹凸嵌合しているので、施工した断熱ブロックの回転を抑制することができる。また、本実施形態では各断熱ブロックの凸部と凹部とは傾斜面で連続しているので、上下に施工した断熱ブロックが円滑に凹凸嵌合することができる。さらに本実施形態では、
図4に明確に表れているように、各断熱ブロックとスキッドパイプ1との間には隙間が設けられ、その隙間には断熱キャスタブル材層101が設けられているから、スキッドパイプ1の断熱性を高めることができる。
【0027】
また、本実施形態で用いている断熱ブロックは、断熱ブロック本体の外周面から内周面にかけて貫通する貫通孔にリテイナー6が装着されている。そして、リテイナー6はスタッド7を挿通する挿通孔61を有し、挿通孔61は前記貫通孔と連続している。このような構成により例えば
図4に示しているように、貫通孔55及び挿通孔61を通して、スキッドパイプ1にスタッド7を溶接することができる。すなわち、本実施形態によれば、従来技術のようにスタッド7を予めスキッドパイプ1に溶接するのではなく、スタッド7を後からスキッドパイプ1に溶接することができる。そのため、スキッドパイプ1の周囲に断熱ブロックを設置する施工が簡単になる。また、スタッド7は、例えば
図4に示しているように貫通孔55に装着されたリテイナー6の挿通孔61に挿通されるから、その貫通孔55の内孔面等の断熱ブロック本体に干渉しにくい。したがって、断熱ブロックをスキッドパイプの周囲に設置する際に、断熱ブロックが損傷しにくくなる。
【0028】
以上の本実施形態では、各断熱ブロックは円筒体を周方向に2分割した半円筒形状としたが、分割数は2分割には限定されず3分割又は4分割以上とすることもできる。ただし、分割数が多くなるとスキッドパイプの周囲に設置する施工が複雑になるので、現実的には2分割が妥当である。
【0029】
本実施形態の断熱ブロック構造体2では、最下段の中段断熱ブロック4A,4Bと最上段の中段断熱ブロック4C,4Dの2段の中段断熱ブロックを有するが、最下段の中段断熱ブロック4A,4Bと最上段の中段断熱ブロック4C,4Dとの間に、1段又は複数段の中段断熱ブロックを有することもできる。また、中段断熱ブロックは1段のみとすることもできる。この場合、最下段の中段断熱ブロックと最上段の中段断熱ブロックは同じ中段断熱ブロックとなる。言い換えれば、中段断熱ブロックが1段の場合、その中段断熱ブロックが最下段の中段断熱断熱ブロックと最上段の中段断熱断熱ブロックを兼ねるということである。なお、本実施形態の断熱ブロック構造体2では、中段断熱断熱ブロック4にも貫通孔45を設け、その貫通孔45にリテイナー6を装着したが、断熱ブロック構造体2において、中段断熱断熱ブロック4には貫通孔45を設けなくてもよく、リテイナー6を設けなくてもよい。最下段断熱ブロック3と最上段断熱ブロック5にスタッドが挿通していれば、一定の強度を確保できるからである。もちろん、断熱ブロック構造体2の強度を高める観点からは、本実施形態のように中段断熱断熱ブロック4にもスタッドを挿通させることが好ましい。
【0030】
本実施形態において最下段断熱ブロック3、中段断熱ブロック4及び最上段断熱ブロック5は、円筒体を周方向に2分割した半円筒形状を有しているが、スキッドパイプの形状によって種々の形状を取ることができる。例えば、スキッドパイプが四角柱状であれば、断熱ブロックは四角筒体を2分割した略コ字状としてもよい。この場合、断熱ブロックに設けられる貫通孔は断熱ブロックの長手方向に間隔をあけて配置される。
【0031】
また、本実施形態の断熱ブロックは上面及び下面の少なくとも一方に凹部及び凸部を有する形状としたが、上面及び下面に凹部及び凸部を有しない形状、すなわち断熱ブロックの上面及び下面は平面とすることもできる。この場合、上述した最下段断熱ブロック3、中段断熱ブロック4及び最下段断熱ブロック5は同じ形状の断熱ブロックとなり、本実施形態のようにスキッドポスト11の周囲に設置することができるほか、スキッドビーム12の周囲に設置することもできる。
【符号の説明】
【0032】
1 スキッドパイプ
11 スキッドポスト
12 スキッドビーム
2 断熱ブロック構造体
3,3A,3B 最下段断熱ブロック
31 断熱ブロック本体
32 凹部
33 凸部
34 傾斜面
35 貫通孔
35a 空間
4,4A,4B,4C,4D 中段断熱ブロック
41 断熱ブロック本体
42 凹部
43 凸部
44 傾斜面
45 貫通孔
45a 空間
5,5A,5B 最上段断熱ブロック
51 断熱ブロック本体
52 凹部
53 凸部
54 傾斜面
55 貫通孔
55a 空間
56,57 係合部
6 リテイナー
61 挿通孔
62 フランジ部(係止部)
63 突出部
7 スタッド
8 溶接ガン
9 セラミックファイバーシート
101 断熱キャスタブル材
102 シール材