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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023071927
(43)【公開日】2023-05-23
(54)【発明の名称】複合建具
(51)【国際特許分類】
   E06B 3/26 20060101AFI20230516BHJP
   E06B 7/22 20060101ALI20230516BHJP
   E06B 3/56 20060101ALI20230516BHJP
【FI】
E06B3/26
E06B7/22 Z
E06B3/56
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034886
(22)【出願日】2023-03-07
(62)【分割の表示】P 2021120910の分割
【原出願日】2015-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(72)【発明者】
【氏名】山下 富広
(72)【発明者】
【氏名】木平 浩司
(57)【要約】
【課題】金属部材と樹脂部材を連結した複合建具において、樹脂部材が熱収縮したとしてもガラスパネルと複合部材との間の気密性と断熱性を向上させる。
【解決手段】引き違い窓1は枠体5内に、複層ガラス9を備えた内障子7と外障子8を納めた。下框11は屋外側の金属下框11aの屋内側に樹脂下框11bを連結した。複層ガラス9の側端部を略コの字状のグレージングチャンネル22で覆い、金属下框11aに設けたパネル受け部26の両側部26bで保持する。パネル受け部26の各側部26bの先端側に押圧部26cを設けてグレージングチャンネル22の立ち上がり部22bと先端ヒレ部25の突部25aを押圧した。屋内側では金属下框11aを樹脂下框11bで覆うと共に、パネル受け部26の押圧部26cと突部25aとの間に樹脂下框11bの先側突部28を挟んで先端ヒレ部の突部25aを押圧した。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属部材と樹脂部材をそれぞれ連結した複合部材を組み合わせた枠状部材内にガラスパネルを納めた複合建具であって、
前記ガラスパネルの周縁部の屋外側及び屋内側の表面に設けられたシーリング材と、
屋外側と屋内側の前記シーリング材に当接して気密に保持する前記金属部材のパネル受け部と、
前記金属部材の屋内側のパネル受け部を覆うと共に前記シーリング材に直接または間接的に当接している前記樹脂部材と、
前記金属部材のパネル受け部と前記樹脂部材とで形成されていて、前記ガラスパネルに当接する前記シーリング材の屋内側に設けられた中空部と、
を備えたことを特徴とする複合建具。
【請求項2】
屋内側に設置した前記金属部材のパネル受け部は前記シーリング材と前記樹脂部材とによって覆われて外部に露出していない請求項1に記載された複合建具。
【請求項3】
前記金属部材のパネル受け部は屋内側に設けた当接部によって前記シーリング材に当接していると共に、
前記樹脂部材は屋内側から延びる先側突部によって前記シーリング材に当接している請求項1または2に記載された複合建具。
【請求項4】
前記当接部から枝分かれした第一係止部と、前記先側突部から枝分かれした第二係止部と、が互いに係合している請求項1から3のいずれか1項に記載された複合建具。
【請求項5】
前記金属部材は金属框であり、前記樹脂部材は樹脂框であり、前記ガラスパネルを納めた枠状部材は障子である請求項1から4のいずれか1項に記載された複合建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属枠及び樹脂枠を有する枠体内に障子やガラスパネルを納めた引き違い窓やFIX窓等の各種の複合建具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アルミ等の金属と樹脂とを連結した枠体と障子を備えた複合建具として、例えば特許文献1に記載された引き違い窓等が提案されている。この引き違い窓は外障子と内障子を枠体内に納めており、各障子の複層ガラスの各辺の側端部がグレージングチャンネルで覆われ、その外側に設けた上框、下框、左右の縦框からなる框体で押圧保持されている。複層ガラスの側端部を覆うグレージングチャンネルの外側には金属框のガラス溝が取り付けられて、グレージングチャンネルを保持している。
【0003】
金属框のガラス溝は、その屋外側の側部が延びてグレージングチャンネルの立ち上がり部の先端ヒレ部近傍を押圧し、屋内側の側部はグレージングチャンネルの立ち上がり部の下部に当接している。しかも、屋内側には断熱性と意匠性を確保するために金属框を被覆する樹脂框が連結され、樹脂框の側部が延びてグレージングチャンネルの立ち上がり部の先端ヒレ部近傍を押圧している。
そのため、各障子において、複層ガラスの四辺の側端部を覆うグレージングチャンネルは両側の立ち上がり部が金属框と樹脂框によって押圧されて保持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-67979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような引き違い窓において、樹脂框は外気温の変化等によって熱収縮するため、複層ガラスに対する屋内側の樹脂框によるグレージングチャンネルの立ち上がり部の押圧位置がずれて隙間を生じてしまい気密性が低下してしまう。すると、屋外側の冷気や音等がグレージングチャンネルとの間の隙間を経由して屋内側の複層ガラスのグレージングチャンネルと樹脂框との隙間から流入するおそれがあった。
また、熱収縮によって樹脂縦框と樹脂下框の接合部に隙間が生じると、屋外側のグレージングチャンネルとガラスパネルとの隙間から接合部の隙間を通って外気や音が流入し、上述した屋内側のグレージングチャンネルと樹脂框との隙間から屋内に外気や音が流入することがあるという欠点があった。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであって、金属部材と樹脂部材を連結して形成した複合建具において、樹脂部材が熱収縮したとしてもガラスパネルと複合部材との間の気密性と断熱性を向上させるようにした複合建具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による複合建具は、金属部材と樹脂部材をそれぞれ連結した複合部材を組み立てた枠状部材内にガラスパネルを納めた複合建具であって、少なくともガラスパネルの表面の周縁部に設けられた封止材と、屋外側と屋内側の封止材を押圧して気密に保持する金属部材のパネル受け部と、金属部材の屋内側部分を覆う樹脂部材と、を備えたことを特徴とする。
本発明による複合建具によれば、ガラスパネルを収納する複合建具の複合部材において、ガラスパネルの表面の周縁部に設けた封止材を金属部材のパネル受け部で押圧することで、外気温の変化等で樹脂部材が熱収縮したとしても金属部材は熱収縮しないため、ガラスパネルと封止材を挟む金属部材のパネル受け部との間で屋内外の外気や音の流通を阻止して気密性を確保できる。
【0008】
また、金属部材のパネル受け部は、封止材を押圧する押圧部を有しており、該押圧部はガラスパネルの全周の側縁部に亘って連続して形成されていることが好ましい。
これによってガラスパネルの側縁部の全周に亘って気密性を確保できる。
【0009】
また、ガラスパネルを押圧する封止材は屋内側に突出する突部を有しており、樹脂部材は封止材を押圧する先側突部を有しており、封止材を押圧するパネル受け部の押圧部は封止材の突部との間で樹脂部材の先側突部を挟んで係合していることが好ましい。
この場合には、樹脂部材が熱収縮したとしても、樹脂部材の先側突部をパネル受け部の押圧部と封止材の突部とで挟持しているため、樹脂部材の熱収縮を抑制して金属部材が屋内側に露出することを抑制することができる。
【0010】
また、金属部材のパネル受け部の押圧部近傍には第一係止部を備え、樹脂部材の先側突部の近傍には第一係止部と係合する第二係止部を設けていてもよい。
複合建具の屋内側では、封止材の突部とパネル受け部の押圧部で樹脂部材の先側突部を押圧して保持すると共に、金属部材のパネル受け部と樹脂部材とでは更に第一係止部と第二係止部を係合させて保持できるため、樹脂部材が熱収縮しようとしても二重の係合構造で阻止して金属部材が屋内側に露出することを一層確実に抑制できる。
【0011】
本発明による複合建具は、金属部材が金属框であり、樹脂部材が樹脂框であり、ガラスパネルを納めた枠状部材は障子であるため、障子のガラスパネルの封止材と金属框とで屋内側の気密性を確実に実現できる。
【0012】
本発明による複合建具は、金属部材が金属枠であり、樹脂部材が樹脂枠であり、ガラスパネルを納めた枠状部材はFIX窓であるため、FIX窓のガラスパネルの封止材と金属框とで屋内側の気密性を確実に実現できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明による複合建具によれば、金属部材と樹脂部材を連結した複合部材からなる枠状部材内にガラスパネルを納め、ガラスパネルの表面の周縁部に設けた封止材を金属部材のパネル受け部で押圧して気密に保持したため、複合建具のガラスパネルを挟む屋外と屋内との間で気密性を確保することができる。
しかも、金属部材の屋内側部分を樹脂部材で覆っているために断熱を確保できると共に外観の意匠性が高いという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第一実施形態による引き違い窓の要部縦断面図である。
図2図1に示す引き違い窓の要部水平断面図である。
図3図1に示す引き違い窓の障子の下框と下枠部分の拡大断面図である。
図4図2に示す引き違い障子の召し合わせ部分の縦框を示す拡大断面図である。
図5】第一実施形態による引き違い窓の戸先部分の下框と縦框の結合部の一部破断斜視図である。
図6】本発明の第二実施形態による引き違い窓のシーリング材を設けた下框と下枠部分の拡大断面図である。
図7】本発明の第三実施形態によるFIX窓の要部縦断面図である。
図8図7に示すFIX窓の下枠部分の拡大断面図である。
図9】本発明の第四実施形態によるFIX窓の要部縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の各実施形態による複合建具を添付図面により説明する。
第一実施形態による複合建具の一例としての引き違い窓1を図1から図5に基づいて説明する。
図1及び図2に示す第一実施形態による引き違い窓1は、上枠2と下枠3と左右の縦枠4とで四角形枠状に形成された枠体5内に内障子7と外障子8が見込み方向に納められている。内障子7と外障子8はそれぞれ上框10と下框11と左右の縦框12、13とで四角形枠状に形成され、その内部に例えばペアガラス等の複層ガラス9が納められている。
【0016】
図1において、上枠2は屋外側に設けた金属上枠2aの屋内側に樹脂上枠2bが連結され、下枠3は屋外側に設けた金属下枠3aの屋内側に樹脂下枠3bが連結されている。図2に示す左右の縦枠4においても同様に屋外側に設けた金属縦枠4aの屋内側に樹脂縦枠4bが連結されている。金属上枠2a、金属下枠3a、金属縦枠4aはアルミ合金等の金属からなっている。
図1に示す下枠3において、金属下枠3aの屋外側には外障子8の下部に設けた戸車14を走行させる外側レール15が設置されている。金属下枠3aの屋内側には外側レール15より1段高い位置に内側レール16が設置され、内障子7の下部に設けた戸車17を走行可能に支持している。
【0017】
また、内障子7において、上框10は屋外側に設けた金属上框10aの屋内側に樹脂上框10bが連結され、下框11は屋外側に設けた金属下框11aの屋内側に樹脂下框11bが連結されている。図2に示す左右の縦框12、13においても同様に屋外側に設けた金属縦框12a、13aの屋内側に樹脂縦框12b、13bが連結されている。これら金属上框10a、金属下框11a、金属縦框12a、13aはアルミ合金等からなる。
更に外障子8においても上框10、下框11、左右の縦框12、13に同一の構成を備えており、同一の符号を用いて説明を省略する。なお、縦框12は戸先側の框であり、縦框13は召し合わせ部の框である。
そして内障子7の金属下框11aの下部には内側レール16に載置させる戸車17が設置され、外障子8の金属下框11aの下部にも外側レール15に載置させる戸車14が設置されている。
【0018】
次に実施形態による引き違い窓1の複層ガラス9と框部の屋内外の気密構造、気密ラインを図3に示す下框11の構造で代表して説明する。
図1及び図3に示す内障子7において、内障子7で支持する複層ガラス9は2枚のガラスパネル20の間の四辺の端部にスペーサ21がそれぞれ介在している。複層ガラス9の四辺の側端部は断面略U字状のグレージングチャンネル22で全周に亘って連続して囲われている。
このグレージングチャンネル22は複層ガラス9の端面に当接する基部22aと両側縁部(周縁部)にそれぞれ当接する立ち上がり部22bとで形成され、両立ち上がり部22bは基部22a側のヒレ部23と平面部24と先端部の先端ヒレ部25とを形成しており、先端ヒレ部25の他端部は平面部24の反対側に突出する突部25aを形成している。これらヒレ部23と先端ヒレ部25とで屋内外における複層ガラス9の両側部とグレージングチャンネル22とを気密に封止している。
【0019】
そして、下框11の金属下框11aは、グレージングチャンネル22を囲うように断面略コの字状のパネル受け部26を有しており、パネル受け部26の下側に戸車17を保持する戸車保持部27を連結している。
金属下框11aのパネル受け部26において、グレージングチャンネル22の基部22aに対向する受け部26aの屋外側と屋内側の側部26bはそれぞれ上方に延びており、グレージングチャンネル22の立ち上がり部22bに形成した平面部24と先端ヒレ部25の突部25aとに当接する肉厚の押圧部26cが形成されている。しかも屋内側では、押圧部26cと突部25aとの間に樹脂下框11bの先側突部28を嵌合しているが、先側突部28を挟んでいなくてもよい。これによって屋内側の立ち上がり部22bはパネル受け部26の押圧部26cと先側突部28とでガラスパネル20に押圧されている。
そのため、複層ガラス9の一端部を覆うグレージングチャンネル22の両立ち上がり部22bを、金属下框11aのパネル受け部26で押圧支持する。しかもグレージングチャンネル22の基部22aとパネル受け部26の受け部26aとの間に空間が形成されている。
【0020】
また、金属下框11aの屋内側に設けた樹脂下框11bは金属下框11aの屋内側部分を覆うように設置されて金属下框11aに連結されている。樹脂下框11bの先側突部28は、グレージングチャンネル22の屋内側に設置した立ち上がり部22bにおいて先端ヒレ部25の突部25aと金属下框11aのパネル受け部26に形成した押圧部26cとの間に挟持されている。
そのため、パネル受け部26の屋内側の押圧部26cは樹脂下框11bの先側突部28を介してグレージングチャンネル22の突部25aを押圧している。また、パネル受け部26の屋内側の側部26bは押圧部26cの近傍で枝分かれして略フック状に屈曲した係止受け部29を形成している。樹脂下框11bの先側突部28から枝分かれした略L字状の係止部28aは係止受け部29に係合している。
このような複層ガラス9の端部と側縁部を覆うグレージングチャンネル22と金属下框11aと樹脂下框11bによる結合構造を樹脂熱収縮阻止構造31Aという。
【0021】
樹脂熱収縮阻止構造31において、屋内側の樹脂下框11bは、金属下框11aのパネル受け部26の押圧部26cとグレージングチャンネル22の突部25aとで先側突部28が押圧挟持され、しかもパネル受け部26の側部26bに設けた係止受け部29と先側突部28の係止部28aとが係合することで固定されている。
そのため、樹脂下框11bに熱による伸縮作用が生じても先側突部28と係止部28aが金属下框11aから外れたりずれたりしないので、樹脂下框11bの伸縮変位を抑制できる。なお、樹脂下框11bの先側突部28は2カ所でパネル受け部26の側部26bに係止されているが、1カ所でもよい。
なお、上框10においても同一の結合構造を備えた樹脂熱収縮阻止構造31Aを有している。
【0022】
また、図2及び図4は内障子7と外障子8における左右の縦框12、13と複層ガラス9との連結構造を示す要部水平断面図である。内障子7の左右の縦框12、13における樹脂熱収縮阻止構造31Bは基本的に下框11に設けた樹脂熱収縮阻止構造31Aと同一構造を有している。
相違点として、図2に示す内障子7における戸先側の縦框12では、屋外側の金属縦框12aのパネル受け部26に設けた屋内側の側部26bはグレージングチャンネル22の立ち上がり部22bを押圧するように略コの字状で先端が更に屈曲した押圧部33を形成している。樹脂縦框12bにおける先側突部28は、押圧部33とグレージングチャンネル22の先端ヒレ部25の突部25aとの間に挟持されて係合し、立ち上がり部22bを押圧している。また、先側突部28から枝分かれした係止部28aが押圧部33の内部に係合する構成を有している。
外障子8における各縦框12,13の金属縦框12a、13aと樹脂縦框12b、13bにおいても同一構成の樹脂熱収縮阻止構造31Bを有している。
【0023】
また、図2及び図4に示す内障子7における召し合わせ側の縦框13では、樹脂熱収縮阻止構造31Cとして、屋外側の金属縦框13aのパネル受け部26に設けた屋内側の側部26bはグレージングチャンネル22の立ち上がり部22bに設けた押圧部材35が略二股に分かれ、一方の押圧部35aはグレージングチャンネル22の立ち上がり部22bを押圧し、他方の係止受け部35bは先端が更に屈曲している。樹脂縦框13bにおける先側突部28は先端が押圧部材35の押圧部35aの先端と先端ヒレ部25の突部25aとの間に挟持されてグレージングチャンネル22の立ち上がり部22bを押圧している。先側突部28から枝分かれした係止部28aは押圧部材35の係止受け部35bに係合する構成を有している。
【0024】
なお、上述の実施形態の内障子7と外障子8において、樹脂熱収縮阻止構造31A、31B,31Cとして、パネル受け部26の側部26bに設けた屈曲部の形状が異なるものを3種設けたが、いずれか1種のものを採用してもよい。
また、ゴム等の弾性材からなるグレージングチャンネル22とアルミ合金製のパネル受け部26は複層ガラス9の四辺の端部に連続して形成されており、樹脂熱収縮阻止構造31A、31B,31Cによって屋内外の気密性を確保している。
【0025】
図5は内障子7において戸先側の縦框12と下框11の連結構造を示す部分斜視図である。金属下框11aの端部に図示しないラップ代を設けて金属縦框12aに嵌合させた。金属縦框12aの屋内側で金属下框11aの図示しないラップ代を樹脂下框11bに嵌合させ、更に樹脂下框11bの屋内側で金属縦框12aに樹脂縦框12bのラップ代を嵌合させた。
このような嵌合構造であるため、樹脂下框11bや樹脂縦框12bが熱収縮したとしても、上述した樹脂熱収縮阻止構造31、31A,31Bによって熱収縮を押えられるため、樹脂下框11bと樹脂縦框12bとの間に隙間が生じて、内側の金属下框11aや金属縦框12aが露出することを防止できる。下框11と召し合わせ側の縦框13との嵌合構造も同様である。また、外障子8においても同一の構成を採用している。
【0026】
なお、図1及び図3に示すように、外障子8の下框11では、外側レール15が内側レール16より一段下がった階段状の位置に形成されているため、戸車14の戸車保持部27は、金属下框11aのパネル受け部26の下方に形成した受け板37の下部に形成されている。また、下枠3の金属下枠3aの屋外側端部には、外障子8の戸車保持部27近傍の金属下框11aに当接可能なヒレ部32が設けられている。
また、内障子7及び外障子8における各框を形成する金属上框10a、金属下框11a、左右の金属縦框12a、13aは金属框を構成し、樹脂上框10b、樹脂下框11b、左右の樹脂縦框12b、13bは樹脂框を構成する。
【0027】
本実施形態による引き違い窓1は上述した構成を備えており、次に作用を説明する。
例えば図1及び図3に示す内障子7や外障子8の各下框11において、複層ガラス9の屋内外側の両側縁部をグレージングチャンネル22で被覆し、その両立ち上がり部22bを各金属下框11aのパネル受け部26に形成した各側部26bの押圧部26cで押圧している。しかも、屋内側のグレージングチャンネル22の立ち上がり部22bでは、先端ヒレ部25の反対側の突部25aを、パネル受け部26に形成した両側部26bの押圧部26cで樹脂下框11bの先側突部28を介して押圧し、先側突部28でも立ち上がり部22bを押圧している。
【0028】
そのため、外気の温度変化等に応じて樹脂下框11bに熱収縮が生じる場合でも、アルミ等からなる金属下框11aは熱収縮しない。屋内側ではグレージングチャンネル22の立ち上がり部22bをパネル受け部26の押圧部26cと先側突部28とで複層ガラス9に気密に押圧しているため、樹脂下框11bの熱収縮が抑制され、隙間を生じない。そのため、外気や音等が複層ガラス9と屋内側のグレージングチャンネル22の立ち上がり部22bと樹脂下框11bとの間から屋内側に漏洩して流入することはない。
また、内障子7や外障子8における樹脂熱収縮阻止構造31Aだけでなく、樹脂熱収縮阻止構造31B,31Cにおいても、複層ガラス9の両側縁部を被覆するグレージングチャンネル22と樹脂上框10b、左右の樹脂縦框12b、13bとの間に隙間が生じないので気密性を保つことができる。
【0029】
しかも、樹脂下框11bや樹脂上框10b、左右の樹脂縦框12b、13bの屋内側の先側突部28は、金属下框11a、金属上框10a、左右の金属縦框13aにおける押圧部26cと先端ヒレ部25の突部25aによって挟まれて押圧され、しかも側部26bの係止受け部29と先側突部28の係止部28aとが係合しているため、樹脂下框11bや樹脂上框10b、左右の樹脂縦框12b、13bの熱収縮を抑制することができる。
そのため、樹脂下框11bや樹脂上框10b、左右の樹脂縦框12b、13bの短手方向だけでなく、長手方向の熱収縮も抑えられる。仮に、樹脂下框11bや樹脂上框10b、左右の樹脂縦框12b、13bが長手方向にわずかに熱収縮して上述の各樹脂框間に隙間が生じて金属框が露出したとしても、気密性に影響を与えない。
【0030】
上述したように、本実施形態による引き違い窓1は次の作用効果を奏する。
(1)複層ガラス9の四辺の側縁部を覆うグレージングチャンネル22の立ち上がり部22bを金属框のパネル受け部26の側部26bに設けた押圧部26cで押圧して気密に保持するため、金属框を覆う樹脂框が熱収縮したとしても複層ガラス9とパネル受け部26の側部26bとの間の気密性を確保できる。
(2)また、パネル受け部26の屋内側における側部26bの押圧部26cは、樹脂框の先側突部28を挟んでグレージングチャンネル22の突部25aを押圧して気密性を確保すると共に、樹脂框で金属框を覆うことで意匠性を良好にできる。
【0031】
(3)しかも、パネル受け部26の屋内側における押圧部26cは、樹脂框の先側突部28を先端ヒレ部25の突部25aとの間で挟持し、パネル受け部26の立ち上がり部22bの係止受け部29と樹脂框の先側突部28の係止部28aとが係合状態に保持されているため、樹脂框が熱収縮することを抑制されて屋内側に金属框が露出することを防止できる。
そのため、熱収縮により樹脂下框11bや樹脂上框10b等が長手方向に収縮して左右の樹脂縦框12b、13bとの接合部であるコーナー部に隙間が生じたとしても屋内外の気密性を損なうことはない。
【0032】
なお、本発明による複合建具は、上述した第一実施形態による引き違い窓1に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜の変更や置換等が可能である。
以下に、本発明の他の実施形態や変形例について説明するが、上述した実施形態で説明した部品や部材等と同一または同様なものについては同一の符号を用いて説明する。
【0033】
例えば、図6は本発明の第二実施形態による引き違い窓1Aを示すものであり、図6では下框11の縦断面図を提示して説明する。
本第二実施形態による引き違い窓1Aでは、複層ガラス9の側縁部にグレージングチャンネル22は設置されておらず、シーリング材40を用いている。即ち、内障子7における下框11の金属下框11aには複層ガラス9の側縁部を覆うように断面略U字状のパネル受け部26が形成されている。
【0034】
複層ガラス9の内外側面とパネル受け部26の両側部26bとの間にスポンジ等の弾性材41が設置され、複層ガラス9の内外の側縁部とパネル受け部26の両側部26bとの間の空間にシーリング材40が充填されて固化されている。シーリング材40は不定形または定形形状であり、例えばシリコーン、変成シリコーン、ウレタン、ブチル等を採用できる。
【0035】
しかも、金属下框11aの屋内側に設けられた側部26bの押圧部26c(当接部)の上面には、樹脂下框11bの上端部に形成した先側突部28がシーリング材40側に延びて押圧部26cの上部に先端が当接している。これによって、パネル受け部26の屋内側の押圧部26cと先側突部28とでシーリング材40を気密に押圧している。
また、パネル受け部26の屋内側において、先側突部28から枝分かれした係止部28aはパネル受け部26の側部26bに形成した係止受け部29に係合して固定されている。
一方、パネル受け部26の屋外側の側部26bは上端部が押圧部26cと略面一になるようにシーリング材40が充填されている。
【0036】
このシーリング材40はパネル受け部26の側部26bの押圧部26cと複層ガラス9の側縁部との間を気密に封止しており、屋内側に設置されたパネル受け部26の側部26bはシーリング材40と樹脂下框11bとで覆われていて外部に露出しないので、意匠性が良好である。しかも、シーリング材40はアルミ製のパネル受け部26よりも断熱性が高いため、屋内外の気密性だけでなく断熱性をも向上できる。
このようなシーリング材40で気密に封止した構造は下框11だけでなく、図示は省略したが上框10、左右の縦框12,13にも形成されている。また、内障子7だけでなく外障子8にも同一な構成が形成されている。
【0037】
次に本発明の第三実施形態による複合建具として、FIX窓44について図7及び図8により説明する。図7はFIX窓の縦断面図を示すものであり、躯体開口に設置された枠体5は上枠2と下枠3と図示しない左右の縦枠4とで四角形枠状に形成されている。図7において、上枠2は屋外側に設けた金属上枠2aと屋内側に設けた樹脂上枠2bとが連結されて構成され、下枠3は屋外側に設けた金属下枠3aと屋内側に設けた樹脂下枠3bとが連結されて構成されている。左右の縦枠4も同様な構成を備えている。
そして、例えば図8に示す金属下枠3aにおいて、複層ガラス9の端部を囲うように断面略コの字状のパネル受け部45が形成されており、パネル受け部45の両側部45bは複層ガラス9の両面の側縁部まで延びている。
【0038】
そして、パネル受け部45の屋外側で立ち上がる一方の側部45bは先端に形成した例えば略L字状に屈曲した押圧部45cとその基端側に形成した係止片45dとが設けられている。押圧部45cと係止片45dの間に一端が嵌合されたグレージングチャンネル46は他端が複層ガラス9の屋外側の面に押圧されている。
一方、パネル受け部45の屋内側で立ち上がる他方の側部45bは先端に形成した例えば断面略コの字状に屈曲した押圧部45cとその基端側で反対側に形成した係止受け部49とが設けられている。しかも、アルミ合金の押圧部45cの上部には樹脂下枠3bから延びる先側突部48当接している。
【0039】
押圧部45c及び先側突部48はグレージングチャンネル46に設けた凹部46aに嵌合されて保持され、このグレージングチャンネル46は押圧部45c及び先側突部48によって複層ガラス9の側縁部に気密に押圧されている。
また、樹脂製の先側突部48から分岐した係止部28aは金属下枠3aの側部45bから分岐して突出する係止受け部49に嵌合することで樹脂下枠3bをパネル受け部45の屋内側の側部45bに係合している。
【0040】
これによって、複層ガラス9と金属下枠3aのパネル受け部45の押圧部45cとの間をグレージングチャンネル46によって気密に封止している。しかも、アルミ製のパネル受け部45の側部45bの押圧部45cは熱収縮しない。また、押圧部45cとグレージングチャンネル46の凹部46aによって先側突部48が挟持されていると共に、係止受け部49と先側突部48の係止部28aとが係合しているため、外気温等の変化によって屋内側の樹脂下枠3bが熱収縮しようとしても熱収縮を阻止できる。また、樹脂下枠3bと樹脂縦框との接合部のコーナー部において、熱収縮によって樹脂下枠3bや樹脂縦框が熱収縮しようとしても熱収縮を抑制でき、仮に熱収縮によって隙間が生じても上述した封止構造によって気密性に影響を与えない。
このような封止構造は、下枠3だけでなく複層ガラス9を気密に保持する上枠2、左右の縦枠4においても同様に形成されている。
【0041】
次に本発明の第四実施形態によるFIX窓50について図9により説明する。
図9に示すFIX窓はその基本構成を図7及び図8に示す第三実施形態と同様にしている。本第四実施形態では、グレージングチャンネル46に代えて、複層ガラス9の両側面と金属下枠3aに形成したパネル受け部45の両側部45bの押圧部45cとの間にシーリング材40を充填している。
これによって、アルミ製のパネル受け部45の側部45bにおける押圧部45c及び樹脂下枠3bの先側突部48と複層ガラス9との間でシーリング材40によって気密性を確保できる。また、樹脂下枠3bの先側突部48は押圧部45cと共にシーリング材40に固定されることで、熱収縮を抑制できる。
このような樹脂熱収縮阻止構造は、上框10及び左右の縦框12,13と複層ガラス9との間にも採用されている。
【0042】
なお、上述した実施形態による引き違い窓1、1AやFIX窓44、50において、複層ガラス9は1枚または複数枚のガラスパネル20を備えたガラスパネルを構成する。
また、金属製のパネル受け部26に設けた係止受け部29と樹脂製の先側突部28に設けた係止部28aの一方は第一係止部であり、他方は第二係止部である。
また、グレージングチャンネル22、46、シーリング材40は封止材に含まれる。
【0043】
なお、上述した第一及び第二実施形態において、内障子7及び外障子8における各金属框を形成する金属上框10a、金属下框11a、左右の金属縦框12a、13aは金属部材を構成し、樹脂框を形成する樹脂上框10b、樹脂下框11b、左右の樹脂縦框12b、13bは樹脂部材を構成する。また、同様に、上述した第三及び第四実施形態において、枠体5における各金属枠を形成する金属上枠2a、金属下枠3a、左右の金属縦枠4aは金属部材を構成し、樹脂枠を形成する樹脂上枠2b、樹脂下枠3b、左右の樹脂縦枠4bは樹脂部材を構成する。
また、上述した金属框及び樹脂框を備えた引き違い窓1や金属枠及び樹脂枠を備えたFIX窓44、50は複合建具を構成するが、本発明による複合建具は、引き違い窓1やFIX窓44、50に限定されるものではなく、例えば縦辷り出し窓やテラスドアや横辷り出し窓等にも採用できることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0044】
1、1A 引き違い窓
2 上枠
2a 金属上枠
2b 樹脂上枠
3 下枠
3a 金属下枠
3b 樹脂下枠
4 縦枠
4a 金属縦枠
4b 樹脂縦枠
5 枠体
7 内障子
8 外障子
9 複層ガラス
10 上框
10a 金属上框
10b 樹脂上框
11 下框
11a 金属下框
11b 樹脂下框
12、13 縦框
12a、13a 金属縦框
12b、13b 樹脂縦框
22、46 グレージングチャンネル
22b 立ち上がり部
25 先端ヒレ部
25a 突部
26、45 パネル受け部
26b、45b 側部
26c、33、35a、45c 押圧部
28、48 先側突部
28a 係止部
29、35b 係止受け部
40 シーリング材
44、50 FIX窓
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9