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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023071966
(43)【公開日】2023-05-23
(54)【発明の名称】RNAを検出する方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6869 20180101AFI20230516BHJP
   C12Q 1/6851 20180101ALI20230516BHJP
   C12Q 1/6855 20180101ALI20230516BHJP
   C12N 15/11 20060101ALN20230516BHJP
【FI】
C12Q1/6869 Z ZNA
C12Q1/6851 Z
C12Q1/6855 Z
C12N15/11 Z
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036378
(22)【出願日】2023-03-09
(62)【分割の表示】P 2021091104の分割
【原出願日】2021-05-31
(31)【優先権主張番号】10-2020-0066932
(32)【優先日】2020-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】521190152
【氏名又は名称】ゼノヘリックス カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】チョ,ソク クン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】RNAを検出する方法を提供する。
【解決手段】RNAを検出する方法であって、a)検出される標的RNAの相補的配列を含むセンサーDNAを標的RNAとハイブリダイズすること;b)テンプレートとしての該標的RNA、およびプライマーとしての該センサーDNAを使用して、ポリメラーゼによって重合すること;c)ステップb)で重合した鎖に対応するプライマーを使用して増幅することによりアンプリコンを生成すること;ならびに、d)前記アンプリコンの配列を分析すること、を含み、該ステップc)において複数のアンプリコンが生成される場合、d’)生成された該アンプリコンをライゲーションすること、及び該ステップd’)が、アンプリコンのライゲーション後に、当該ライゲーションされたアンプリコンの両端にシーケンシングのためのアダプターを結合させることをさらに含む、方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
RNAを検出する方法であって、
a)検出される標的RNAの相補的配列を含むセンサーDNAを標的RNAとハイブリダイズすること;
b)テンプレートとしての前記標的RNA、およびプライマーとしての前記センサーDNAを使用して、ポリメラーゼによって重合すること;
c)ステップb)で重合した鎖に対応するプライマーを使用して増幅することによりアンプリコンを生成すること;ならびに、
d)前記アンプリコンの配列を分析すること、
を含み、
前記ステップc)において複数のアンプリコンが生成される場合、d’)生成された前記アンプリコンをライゲーションすること、及び
前記ステップd’)が、アンプリコンのライゲーション後に、当該ライゲーションされたアンプリコンの両端にシーケンシングのためのアダプターを結合させることをさらに含む、
方法。
【請求項2】
ステップc)における前記プライマーが、5’末端に結合したリン酸を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
e)ステップd’)の後に、前記ライゲーションされたアンプリコンの配列を分析することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ステップe)において、前記シーケンシングがナノポアシーケンシングである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
ステップa)の前に、前記標的RNAに固有のバーコード領域を指定することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記標的RNAのバーコード領域に相補的な配列を含むように、前記アンプリコンが増
幅される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
アンプリコンの数を測定することによって、前記検出が標的RNAの数の定量的な検出を可能とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記アンプリコンに含まれるバーコード領域に相補的な配列の数を測定することによって、前記アンプリコンの数を確認する、請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年6月3日に出願された韓国特許出願第2020-0066932号の優先権および利益を主張し、その開示は参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0002】
技術分野
本発明は、RNAを分析および検出する方法に関する。特に、本発明は、短い塩基配列でRNAを分析し、高感度かつ高精度でRNAを定量的に検出し得るため、感染症および癌などの様々な疾患の診断に広く利用され得る。
【背景技術】
【0003】
背景技術
生活の質が向上するにつれて、疾患の早期診断への関心が高まっている。分子診断技術は、疾患の原因となる病原体の遺伝情報(DNA/RNA)を直接検出するため、疾患の間接的な要因を検出する免疫診断技術の欠点を解決し得る技術として注目されている。
【0004】
また、近年のコロナウイルス病-19(COVID-19)の発生により、世界中で多くの死者が発生し、WHOはCOVID-19のパンデミックを宣言している。RNAウイルスによる疾患の場合、突然変異の発生率が高いことでさらなる被害が発生し、感染症の早期診断がさらに求められる。
【0005】
韓国公開特許第10-2010-0075524号は、DNAプライマーを使用してRNAから二本鎖DNAを合成し、二本鎖DNAを検出する技術を開示している。しかしながら、本発明は、蛍光強度によって二本鎖DNAの存在を検出するのみであり、非常に低い濃度で特定の値で検出するための技術を開示していない。
【0006】
RNAの発現パターンは感染症または癌の初期段階に敏感であるため、早期の予測および検出に大きな利点を示す。また、採血するのみで様々な癌の検査ができるため、患者の体への負担を軽減し得る。また、上記の感染症および癌に加え、アルツハイマー病およびパーキンソン病などの難病を診断する際に、RNAを高感度で迅速に検出することで早期診断を可能にする技術の開発が求められている。
【発明の概要】
【0007】
実施形態の説明
技術的課題
本発明によって解決されるべき技術的問題は、RNAを検出する方法を提供することである。
【0008】
また、本発明によって解決されるべき技術的問題は、RNAを検出するためのセンサーDNAを提供することである。
【0009】
技術的解決策
本発明の一態様によれば、RNAを検出する方法に関し、その方法は:a)検出される標的RNAの相補的配列を含むセンサーDNAを標的RNAとハイブリダイズすること;b)テンプレートとしての前記標的RNA、およびプライマーとしての前記センサーDNAを使用して、ポリメラーゼによって重合すること;c)ステップb)で重合した鎖に対
応するプライマーを使用して増幅することによりアンプリコンを生成すること;ならびに、d)前記アンプリコンの配列を分析すること、を含む。
【0010】
一実施形態では、ステップc)のプライマーは、その5’末端に結合したリン酸を有し得る。ステップc)のプライマーは、増幅反応によってアンプリコンを生成するために使用され、プライマーの塩基配列が、5’末端に結合したリン酸を介して増幅される鎖に塩基配列が結合し得る限り、制限なく適用され得る。
【0011】
すなわち、検出される標的低分子RNAまたはセンサーDNAのモジュール領域に応じて、塩基配列は変化し得る。
【0012】
一実施形態では、ステップc)で複数のアンプリコンが生成される場合、この方法は、d’)生成された前記アンプリコンをライゲーションすること、をさらに含み得る。
【0013】
ライゲーションにより、短い塩基配列を分析できない関連技術のオックスフォードナノポアシーケンシングシステム(オックスフォードナノ)を用いてさえも、低分子RNAの塩基配列を分析することができる。
【0014】
一実施形態では、アンプリコンのライゲーションの後、方法はさらに、dATPおよびDNAポリメラーゼをそれに加えることによって3’末端にアデニン(A)を結合することを含み得て、DNAポリメラーゼとして、Taqポリメラーゼを使用し得るが、本発明はそれに限定されない。
【0015】
一実施形態では、ステップd’)は、アンプリコンのライゲーションの後、シーケンシングのためのアダプターを前記ライゲーションされたアンプリコンの両端に結合することをさらに含み得る。アダプターは、シーケンシングデバイスによって認識可能であり、オックスフォードナノポアシーケンシングデバイスや次世代シーケンシング(NGS)デバイスなどの、適用するシーケンシングデバイスに応じてアダプターを変更することで結合し得る。
【0016】
一実施形態では、前記方法は、e)ステップd’)の後に、前記ライゲーションされたアンプリコンの配列を分析すること(シーケンシングすること)をさらに含み得る。ステップe)において、前記シーケンシングは、ナノポアシーケンシングであり得る。
【0017】
ナノポアシーケンシングは、典型的な「ナノポアシーケンシング」を意味し得る。「ナノポアシーケンシング」とは、DNA鎖を生物学的ポアに通しながら電気伝導率の差を測定することにより、様々な塩基を識別する技術を指す。ナノポアシーケンシングは、その配列をポアに通しながら塩基配列を分析するため、ナノポアシーケンシングは、短い塩基配列を分析できないという欠点があり、したがって、短い塩基配列RNAの検出および分析に適用することができない。
【0018】
本発明は、その長さに関係なくRNAが検出および分析され得るように、アンプリコンをライゲーションすることによるナノポアシーケンシングを通してさえ分析され得る長さを提供する。本発明は、配列分析技術に限定されることなく適用され得る。
【0019】
一実施形態では、前記方法は、ステップa)の前に、前記標的RNA内の固有のバーコード領域を指定することをさらに含み得る。バーコード領域は、標的RNAの種類に応じて適切に指定され得て、バーコード領域の相補的配列は、その標的RNAをテンプレートとして使用するDNA重合プロセスを通じて、重合したDNA鎖に含まれ得る。その後、バーコードの相補的配列領域の有無および検出されるバーコードの相補的配列領域の数を確認して、その標的RNAの存在および数に対応させ得る。
【0020】
一実施形態では、前記アンプリコンは、前記標的RNAのバーコード領域に相補的な配列を含むように増幅され得る。各標的RNAが固有のバーコード領域を有する場合、増幅によってアンプリコンを生成するプロセス中に生成される各アンプリコンは、各アンプリコン内の標的RNAのバーコードに相補的な配列領域を含み得る。
【0021】
一実施形態では、前記「検出」は、アンプリコンの数を測定することによって、最大数の標的RNAの定量的な検出を可能にし得る。
【0022】
一実施形態では、アンプリコンの数は、アンプリコンに含まれる標的RNAのバーコード領域に相補的な配列の数を測定することによって確認され得る。
【0023】
本発明の例示的な実施形態では、COVID-19に感染していないヒト血液およびCOVID-19に感染したヒト血液をそれぞれサンプルとして使用して検出されたRNAが分析される。数種類のセンサーそれぞれ1fmolをCOVID-19に感染していないヒト血液から抽出した全RNAと混合した場合、COVID-19のORF7が検出されないのに対して、人体に一般的に存在する多くのRNAが検出されることが確認されている(図4)。また、COVID-19に感染したヒト血液から抽出した全RNAに、数種類のセンサーをそれぞれ500amol混合した場合、COVID-19 ORF7、COVID-19 N遺伝子、およびCOVID-19 RdRpが定量的なレベルを示すことが確認された(図5)。特に、コロナウイルスの遺伝子領域によって定量的に検出される量が異なることが確認されており、遺伝子領域の発現量を特定することで感染レベルの診断に応用され得る。RNAウイルスの遺伝子部位の発現レベルを測定することによって感染レベルを決定する技術はこれまで報告されていない。
【0024】
さらに、本発明におけるRNAを検出する方法および検出に用いられるセンサーDNAの特徴は、フェムトモル(fmol)およびアトモル(amol)のレベルで非常に低い検出限界を示し、したがって、その感度および精度は、RNAを検出するための従来の技術よりも著しく優れている。
【0025】
一実施形態では、前記センサーは、RNA検出のためのDNA重合プロセスにおけるプライマーとして使用され得る。
【0026】
一実施形態では、前記センサーは、ナノポアセンサーであり得る。「ナノポアセンサー」は、ナノポアに基づくセンサーであり、ナノポアシーケンシングを適用し得ることを意味する。
【0027】
発明の有利な効果
本発明におけるRNAを検出する方法および検出に用いられるセンサーRNAは、フェムトモル(fmol)およびアトモル(amol)のレベルで非常に低い検出限界を示し
、したがって、その感度および精度は、RNAの検出のための従来の技術よりも著しく優れている。
【0028】
したがって、本発明は、ヒトなどの個体における疾患の診断、疾患の進行、潜伏期間におけるウイルス感染の診断などの既存の技術の検出限界を、微細なレベルでの分子診断を可能にすることによって克服し、したがって、疾患の非常に初期の段階または潜伏期間での診断にも有用に使用され得る。
【0029】
本発明の効果は、前述の効果に限定されるものではなく、本発明の詳細な説明または特許請求の範囲に記載された本発明の構成から推定されるすべての可能な効果を含むと理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図面の簡単な説明
図1図1は、本発明の一実施形態による、RNAを検出する方法の概略図を示している。
図2図2は、本発明のRNA(COVID-19に感染していないヒトからの血液サンプル)を検出する過程で生成されたアンプリコンの存在を確認した結果を示している。
図3図3は、本発明のRNAを検出する過程で生成されたアンプリコンがライゲーションされていることを確認した結果を示している(COVID-19に感染していないヒトからの血液サンプル)。
図4図4は、COVID-19に感染していないヒトの血液サンプル中の本発明のRNAを定量的に検出する技術の精度および感度を確認した結果を示している。
図5図5は、本発明のRNAを検出する過程で生成されたアンプリコンの存在を確認した結果を示している(COVID-19に感染したヒトからの血液サンプル)。
図6図6は、本発明のRNAを検出する過程で生成されたアンプリコンがライゲーションされていることを確認した結果を示している(COVID19に感染したヒトからの血液サンプル)。
図7図7は、COVID-19に感染したヒトの血液サンプル中の本発明のRNAを定量的に検出する技術の精度および感度を確認した結果を示している。
【発明を実施するための形態】
【0031】
例示的な実施の詳細な説明
以下、本発明について、実施例を通じて詳細に説明する。しかしながら、以下の実施例は、本発明を例示するためのものであり、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0032】
例1.センサーDNAを使用した重合、増幅、およびシーケンシング
標的RNAおよびセンサーDNAを混合した後、センサーDNAは標的RNAを感知し、標的RNAに結合し、その結果、標的RNAおよびセンサーDNAがハイブリダイズした。
【0033】
センサーDNAは、標的RNAの相補的配列を含む感知領域を含む。感知領域は、標的RNAを感知し、標的RNAとハイブリダイズするため、本発明では「センサーDNA」と呼ばれる。
【0034】
標的RNAをセンサーDNAとハイブリダイズさせた後、それを、テンプレートとしての標的RNA、およびプライマーとしてのセンサーDNAを使用して、95℃で30秒間、63℃で10分間、DNAポリメラーゼ(XenoT-PoL)で重合させた。次に、エンドヌクレアーゼを使用してセンサーおよびRNAを分解した。
【0035】
標的RNAの特定の配列は、バーコードで指定かつ命名され得て、したがって、プライマーとしてのセンサーDNAを使用して重合された鎖は、バーコードに相補的な領域を含み得る。その後、検出において、重合鎖中の標的RNAバーコードに相補的な領域の数をカウントすることにより、標的RNAの数を定量的に測定し得る。
【0036】
その後、重合した鎖を増幅するために、リン酸が5’末端に結合したプライマーを使用したPCRによってアンプリコンを生成した。PCRは、典型的なPCRと同様の方法で実施され得て、PCRの温度条件、サイクル数などは、重合鎖および重合鎖に結合したプライマーの配列に応じて適切に修飾および適用され得る。
【0037】
その後、生成されたアンプリコンをDNAリガーゼを使用してライゲーションした後、ライゲーションされたアンプリコンをシーケンシングに供した。
【0038】
配列解析の一例として、センサーDNAはナノポアベースのセンサーであり、ナノポアを用いたシーケンシング(ナノポアシーケンシング)を当該シーケンシングに適用し得る。具体的には、ナノポアアダプターがライゲーションされたアンプリコンに結合された後、ナノポアシーケンシングが実行され得て、ナノポアシーケンシングは、既知の製品を使用する既知の製品のマニュアルに従って実行され得る。例えば、サンプルがナノポアシーケンシングデバイスであるミニオンチップにロードされた後、シーケンシングを実行し得る。
【0039】
本発明の検出方法の精度および感度は、以下の実験例によって確認され、Hs_RNaseP、Hs-U6、COVID-19 ORF7、COVID-19 N遺伝子、およびCOVID-19 RdRpを、検出される標的RNAとして使用して実験が例示的に実行された。上記の例示的な標的RNAを検出するための標的RNAの相補的配列を含むセンサーDNAの配列は、以下の表1に要約されている通りである。センサーDNAの配列は、必要に応じて修飾することができ、本例に限定されない。
【0040】
【表1】

【0041】
例示的な標的RNAの定量的検出のために、標的RNAはバーコード領域で指定され、テンプレートとしての標的RNAを使用する重合されたDNA鎖に含まれるバーコード領域の相補的配列は、以下の表2に要約される。重合したDNA鎖に含まれるバーコード領
域の相補的配列の数をカウントすることにより、標的RNAを定量的に検出し得る。特に、バーコード領域の相補的配列は定量的検出でカウントされる部分であり、アンプリコンをライゲーションする際に逆方向にライゲーションされた鎖が存在する可能性を考慮して、順方向および逆方向の2つの場合の相補的配列がカウントされた。上記のように方向性を考慮することにより、逆方向にライゲーションされた配列を省略せずに相補的な配列を検出し、定量的検出の精度をさらに維持することが確実となった。
【0042】
バーコード領域の配列は、必要に応じて変更され得て、それに応じて検出された標的RNAバーコードの相補的配列も、バーコード領域の配列に従って変更され得て、本例に限定されない。
【0043】
【表2】

【0044】
さらに、例示的に、テンプレートとしての標的RNAを使用し、プライマーとしてのセンサーDNAを使用して重合鎖を増幅するために使用される5’末端にリン酸が結合するプライマー配列を以下の表3に要約する。プライマーは、リン酸が5’末端に結合していることを特徴とし、プライマーの配列は必要に応じて変更し得て、本例に限定されない。
【0045】
【表3】

【0046】
実験例1.ヒト血液中の本発明のRNA検出技術の精度の確認
RNAは、FavorPrep(商標) Blood/Cultural Cell Total RNA Mini Kitを使用して、COVID-19に感染していないヒトの血液から抽出された。実施例1の方法を用いて、標的RNAが正確に検出されるかどうかを確認した。
【0047】
上記のように抽出したトータルRNA 1μgと、Hs-RNaseP、Hs-U6、およびCOVID-19 ORF7の3種類のセンサーDNAそれぞれ1fmolとを混合し、2μlの反応バッファー(200mM Tris-HCl、100mM (NHSO、100mM KCl、20mM MgSO、1% Triton X-100(25℃、pH8.8))、1μlの10mM dNTPおよび2ユニットのXenoT-POLを添加して混合した。混合物を95℃で30秒間加熱し、次に63℃で10分間インキュベートして重合鎖を生成した。
【0048】
次に、MEGAquick-spin(商標) Plus Total Fragment DNA Purification Kitを使用して混合物をクリーンアップし、60μlの蒸留水で溶出した。1本のチューブで3本の重合したDNA鎖の増幅を観察するために、マルチプレックスPCRを実施した。具体的には、リン酸化された各遺伝子を増幅し得る5’末端を有するプライマーを使用した。PCRは、98℃で2分間の1サイクル、98℃で10秒間および62℃で10秒間の35サイクルの条件下で行った。PCR生成物を10%ポリアクリルアミドゲル(19:1)で電気泳動した後、Gel Docを使用してPCR生成物であるアンプリコンの存在を確認した(図2)。
【0049】
その後、MEGAquick-spin(商標) Plus Total Fragment DNA PurificationKitを使用してPCR生成物をクリーンアップした。次に、クリーンアップされたアンプリコンをDNAリガーゼを使用してライゲーションした。30μlの500ngアンプリコン、35μlのライゲーション反応バッファー(66mM Tris-HCl、pH7.6、10mM MgCl、1mM ATP、1mM DTT、7.5% ポリエチレングリコール(PEG 6000))、および1μlのDNAリガーゼ100ユニットを混合し、25℃で20分間反応させた。ライゲーションした生成物を10%ポリアクリルアミドゲル(29:1)で電気泳動した後、Gel Docを使用してライゲーションしたアンプリコンを確認した(図3)。
【0050】
上記のようにライゲーションしたアンプリコンストランドをクリーンアップし、60μlの蒸留水で溶出した。
【0051】
40μlの溶出アンプリコンDNA鎖、1μlの1mM dATP、1μlのtaq DNAポリメラーゼ(5ユニット)、5μlの反応バッファー(200mM Tris-HCl/pH8.8、500mM KCl、25mM MgCl、100mM β-メルカプトエタノール)および蒸留水を混合して50μlで混合し、72℃で20分間インキュベートし、dATPを3’末端でテールした。次に、ナノポアシーケンシング、AMPure XPビーズを使用したクリーンアップ、フローセルのプライミング、およびフローセルプロセスのロードのためのアダプターライゲーション(SQK-LSK109)を、ナノポアシーケンシングプロトコルに従って実行した。その後得られたナノポアシーケンシングファイルでは、Hs-RNaseP、Hs-U6、およびCOVID-19 ORF7の各標的RNAに基づいて生成されたアンプリコン領域の標的RNAバーコードの相補的配列である10塩基のヌクレオチド配列をカウントすることで検出結果を確認した。
【0052】
その結果、図4に示すように、カウントされたHs_U6およびHs_RNasePの数は10,292および58,811であり、ネガティブコントロール(NTC)として使用されるCOVID-19のORF7は検出されなかった。
【0053】
上記の結果は、センサーの濃度が非常に低い(1fmol)にもかかわらず、RNAのタイプを分類して検出し得ることを示している。したがって、本発明のセンサーDNAを用いたRNA検出技術の検出限界は非常に低く、高感度であることが確認された。
【0054】
実験例2.ウイルスに感染したヒト血液における本発明のRNA検出技術の精度の確認
COVID-19に感染したヒト細胞株から抽出されたRNA(NCCP no.43326)は、この実験を行うために国立病原体バンクから配布された。実施例1の方法を用いて、標的RNAが正確に検出されるかどうかを確認した。
【0055】
500ngの全RNAと、Hs-RNaseP、COVID-19 ORF7、COVID-19 N遺伝子、およびCOVID-19 RdRp遺伝子の4種類のセンサーそれぞれ500amolとを混合し、2μlの反応バッファー(200mM Tris-HCl、100mM(NHSO、100mM KCl、20mM MgSO、1% Triton X-100、(25℃、pH8.8))、1μlの10mM dNTP、および2ユニットのXenoT-POLを追加して混合した。混合物を95℃で30秒間加熱し、次に63℃で10分間インキュベートして、重合鎖を生成した。
【0056】
次に、MEGAquick-spin(商標) Plus Total Fragment DNA Purification Kitを使用して混合物をクリーンアップし
、60μlの蒸留水で溶出した。1本のチューブで4本の重合したDNA鎖の増幅を観察するために、マルチプレックスPCRを実施した。具体的には、リン酸化された各遺伝子を増幅し得る5’末端を有するプライマーを使用した。PCRは、98℃で2分間の1サイクル、98℃で10秒間および62℃で10秒間の35サイクルの条件下で行った。PCR生成物を10%ポリアクリルアミドゲル(19:1)で電気泳動した後、Gel Docを使用してPCR生成物であるアンプリコンの存在を確認した(図5)。
【0057】
その後、MEGAquick-spin(商標) Plus Total Fragment DNA PurificationKitを使用してPCR生成物をクリーンアップした。次に、クリーンアップされたアンプリコンをDNAリガーゼを使用してライゲーションした。19μlの300ngアンプリコン、35μlのライゲーション反応バッファー(66mM Tris-HCl、pH7.6、10mM MgCl、1mM ATP、1mM DTT、7.5% ポリエチレングリコール(PEG 6000))、および1μlのDNAリガーゼ100ユニットを混合し、25℃で20分間反応させた。ライゲーションした生成物を10%ポリアクリルアミドゲル(29:1)で電気泳動した後、Gel Docを使用してライゲーションしたアンプリコンを確認した(図6)。
【0058】
上記のようにライゲーションしたアンプリコンストランドをクリーンアップし、60μlの蒸留水で溶出した。
【0059】
40μlの溶出アンプリコンDNA鎖、1μlの1mM dATP、1μlのtaq DNAポリメラーゼ(5ユニット)、5μlの反応バッファー(200mM Tris-HCl/pH8.8、500mM KCl、25mM MgCl、100mM β-メルカプトエタノール)および蒸留水を混合して50μlで混合し、72℃で20分間インキュベートし、dATPを3’末端でテールした。MEGAquick-spin(商標) Plus Total Fragment DNA Purification Kitを使用して、dATPテールDNA生成物をクリーンアップした。
【0060】
次に、ナノポアシーケンシング、AMPure XPビーズを使用したクリーンアップ、フローセルのプライミング、およびフローセルプロセスのロードのためのアダプターライゲーション(SQK-LSK109)を、ナノポアシーケンシングプロトコルに従って実行した。その後に得られたナノポアシーケンシングファイルでは、Hs-RNaseP、COVID-19 ORF7、COVID-19 N遺伝子およびCOVID-19 RdRpの各標的RNAに基づいて生成されたアンプリコン領域の標的RNAバーコードの相補的配列である10塩基のヌクレオチド配列をカウントすることで検出結果を確認した。
【0061】
その結果、図7に示すように、2,253のN遺伝子(COVID-19)、42,613のRdRps(COVID-19)、220のORF7(COVID-19)、および10,092のHs_RNasePがカウントされた。
【0062】
上記の結果は、センサーの濃度が非常に低い(500amol)にもかかわらず、RNAの種類を分類して検出し得るだけでなく、ウイルス感染も診断し得ることを示している。以上のことから、本発明のセンサーDNAを用いたRNA検出技術は、患者が非常に低い検出限界および高感度でRNAウイルスに感染しているかどうかを診断し得ることが確認された。特に、本発明のRNA検出技術は、単にRNAの有無を特定するだけでなく、ウイルスの遺伝子領域によって定量的に検出される量が変化することを確認して、遺伝子部位の発現レベルの特定に応用して、感染レベルを診断し得る。
【0063】
以上の結果は、本発明の技術が、感染症、ウイルスによる癌、バクテリアなどの指標で
あるRNAの存在を、単にRNAを検出するのではなく、定量的なレベルにおいて測定することにより、正常、発病期間、潜伏期間、発生期間等を分子レベルで迅速に診断し得ることを示している。
【0064】
特に、本発明で検出に使用されるRNAおよびセンサーDNAを検出する方法の特徴は、フェムトモル(fmol)およびアトモル(amol)のレベルで非常に低い検出限界を示し、したがって、感度および精度は、RNAを検出するための従来の技術より、著しく優れている。
【0065】
したがって、本発明は、微小レベルでの分子診断を可能にすることにより、ヒトなどの個体の疾患の診断、疾患の進行、潜伏期のウイルス感染の診断などの既存技術の検出限界を克服し、したがって、疾患の非常に初期の段階または潜伏期間での診断にも有用に使用できる可能性がある。
【0066】
本発明の上記の説明は、例示の目的で提供され、本発明が関係する当業者は、本発明の技術的思想または本質的な特徴を変更することなく、本発明を他の特定の形態に容易に変更し得ることを理解するであろう。
【0067】
したがって、上記の実施形態は、すべての態様において単なる例示であり、限定的ではないことを理解されたい。例えば、単数形として記述されている各構成要素は、分散形式で実装され得て、同様に、分散されているとして記述されている構成要素は、組み合わされた形で実装され得る。
【0068】
本発明の範囲は、以下に説明する特許請求の範囲によって表され、請求項の意味および範囲、ならびにそれらの同等の概念から派生したすべての変更または修正された形式は、本発明の範囲内にあると解釈されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【配列表】
2023071966000001.xml
【手続補正書】
【提出日】2023-04-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
RNAを検出する方法であって、
a)検出される標的RNAの相補的配列を含むセンサーDNAを標的RNAとハイブリダイズすること;
b)テンプレートとしての前記標的RNA、およびプライマーとしての前記センサーDNAを使用して、ポリメラーゼによって重合すること;
c)ステップb)で重合した鎖に相補的なプライマーを使用して増幅することによりアンプリコンを生成すること;ならびに、
d)前記アンプリコンの配列を分析すること、
を含み、
前記ステップc)において複数のアンプリコンが生成される場合、
d’)生成された前記アンプリコン同士をライゲーションすること及び
e)ステップd’)の後に、前記ライゲーションされたアンプリコンの配列を分析すること、をさらに含み、
増幅される前記アンプリコンが前記標的RNAのバーコード領域に相補的な配列を含む、方法。
【請求項2】
ステップc)における前記プライマーが、5’末端に結合したリン酸を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ステップd’)が、アンプリコンのライゲーション後に、当該ライゲーションされたアンプリコンの両端にシーケンシングのためのアダプターを結合させることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ステップe)がナノポアシーケンシングを含む、請求項に記載の方法。
【請求項5】
ステップa)の前に、前記標的RNAに固有のバーコード領域を指定することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
アンプリコンの数を測定することによって、前記検出が標的RNAの数の定量的な検出を可能とする、請求項に記載の方法。