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特開2023-72008距離測定および物体測位システムならびにその使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023072008
(43)【公開日】2023-05-23
(54)【発明の名称】距離測定および物体測位システムならびにその使用方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 11/16 20060101AFI20230516BHJP
   G01S 5/30 20060101ALI20230516BHJP
【FI】
G01S11/16
G01S5/30
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037641
(22)【出願日】2023-03-10
(62)【分割の表示】P 2018538715の分割
【原出願日】2017-01-20
(31)【優先権主張番号】62/280,958
(32)【優先日】2016-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】518256739
【氏名又は名称】ゼロキー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ロー,マシュー ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】デグハニアン,ヴァヒド
(57)【要約】      (修正有)
【課題】参照物体と対象物体との間の距離を求める混合モード距離測定および物体測位システムおよび方法等を提供する。
【解決手段】距離測定および/または物体測位システム100は、1つ以上の対象装置104と;前記1つ以上の対象装置と、1つ以上の無線信号セット108を介して通信する1つ以上の参照装置102とを含み、各無線信号セットは、少なくとも第1の伝送速度を有する第1の速度の信号124と、第2の伝送速度を有する第2の速度の信号126とを含み、第1の伝送速度は第2の伝送速度よりも高く、;また前記参照装置102と対象装置104との間で通信された無線信号セットの第1の速度の信号の受信時間と第2の速度の信号の受信時間との間の時間差に基づいて、1つの対象装置104と1つの参照装置102との間の少なくとも1つの距離128を決定するための動作を実行する少なくとも1つの処理装置を含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置であって、
少なくとも1つの参照装置に送受信された少なくとも1つの無線周波数(RF)信号をそれぞれ送受信するための少なくとも1つのRF信号送受信機と、
前記少なくとも1つの参照装置に対して少なくとも1つの音響信号をそれぞれ送受信するための少なくとも1つの音響信号送受信機と、
温度センサーと、
前記温度センサーによって得られた温度測定を使用して、第1温度調節音速を計算し、
前記少なくとも1つの参照装置における、前記第1温度調節音速および少なくとも1つの第2温度調節音速を平均することにより、前記音響信号の較正された速度を計算し、且つ、
前記RF信号の受信時間と、前記音響信号の前記受信時間との間の時間差に基づいて、前記装置と、前記少なくとも1つの参照装置の各々との間の距離を決定するために、
前記少なくとも1つのRF信号送受信機、前記少なくとも1つの音響信号送受信機および前記温度センサーに結合された少なくとも1つの処理装置と
を含み、
前記少なくとも1つの処理装置が、前記装置と、前記少なくとも1つの参照装置の各々との間の前記距離を、次のように計算して、
【数1】
【数2】
決定することを含み、
式中、dは、前記装置と前記参照装置との間の前記距離であり、Δtは、前記RF信号の前記受信時間と前記音響信号の前記受信時間との間の前記時間差であり、cは、前記RF信号の速度、cは、較正された前記音響信号の速度で、c>cであり、tSAは前記音響信号のサンプリングが開始した時間であり、Fは、受信された前記音響信号をサンプリングするサンプリングレートであり、tRFは、前記RF信号の到着時間であり、nは前記音響信号の前記到着時間とtSAとの間の推定されるオフセットである、装置。
【請求項2】
が、最尤推定量を使用して推定される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記RF信号および前記音響信号が、同時に伝送される、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記RF信号および前記音響信号の少なくとも1つが符号化される、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記少なくとも1つのRF信号送受信機及び前記少なくとも1つの音響信号送受信機が、少なくとも3つの参照装置から伝送された少なくとも3つのRF信号及び音響信号のセットを受信するように構成され、かつ、前記少なくとも1つの処理装置が、前記装置と、前記少なくとも3つの参照装置の各々との間の前記距離を決定した後、前記少なくとも3つの参照装置に関する3次元(3D)空間内での前記装置の前記位置を、2つの考えられる位置のいずれか1つであると決定し、前記2つの考えられる位置は、前記装置と前記少なくとも3つの参照装置との間の前記距離に基づき、三辺測量を使用して計算されるようにさらに構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記少なくとも1つの処理装置が、2つの考えられる位置の各々に対する前記装置のアクセス可能性に基づいて、前記2つの考えられる位置から前記装置の前記位置をさらに決定するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記少なくとも1つのRF信号送受信機及び前記少なくとも1つの音響信号送受信機が、少なくとも4つの参照装置から複数のRF信号及び複数の音響信号を受信するように構成され、かつ、前記少なくとも1つの処理装置が、前記装置と、前記少なくとも4つの参照装置の各々との間の前記距離を決定した後、3D空間内での前記装置の前記位置を、前記装置と前記少なくとも4つの参照装置との間の決定された距離、および前記3D空間内の前記少なくとも4つの参照装置の各々の座標に基づき、最小二乗法を使用して決定するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
測位システムであって、
関連付けられた座標系を有する複数の参照装置を有し、前記座標系において、複数の参照装置のうちの少なくとも1つが、未知の位置に配置され、前記複数の参照装置のうちの少なくとも2つの他の参照装置が、既知の位置に配置されており、
1つ以上の対象装置と、
前記座標系の前記未知の位置において、1つ以上の無線信号セットを介して、前記複数の参照装置と通信する、前記1つ以上の対象装置であって、各無線信号セットは、少なくとも第1の伝送速度を有する第1の速度の信号と、第2の伝送速度を有する第2の速度の信号とを含み、かつ前記第1の伝送速度が前記第2の伝送速度よりも高い、前記1つ以上の対象装置と、
複数の参照装置間の距離に基づいて、前記座標系における位置が未知である参照装置の位置を計算し、且つ、各対象装置について、
前記参照装置と対象装置との間で通信された前記無線信号セットの前記第1の速度の信号の受信時間と、前記第2の速度の信号の前記受信時間との間の時間差に基づいて、前記対象装置と複数の参照装置のそれぞれとの間の前記距離を決定するための動作を実行し、
決定された前記距離に基づいて前記座標系における前記対象装置の位置を決定するように構成される少なくとも1つの処理装置と
を含む、測位システム。
【請求項9】
前記第1の速度の信号が無線周波数(RF)信号であり、かつ前記第2の速度の信号が音響信号であり、
少なくとも1つの対象装置及び前記少なくとも1つの参照装置のそれぞれが、温度センサーを有し、
前記少なくとも1つの処理装置は、さらに、
前記少なくとも1つの対象装置の前記温度センサーによって得られた温度測定を使用して、前記少なくとも1つの対象装置における第1温度調節音速を計算し、
前記少なくとも1つの参照装置の前記温度センサーによって得られた温度測定を使用して、前記少なくとも1つの参照装置における1つ以上の第2温度調節音速を計算し、
第1温度調節音速および第2温度調節音速を平均することにより、前記音響信号の較正された速度を計算するように構成される
請求項8に記載の測位システム。
【請求項10】
前記少なくとも1つの処理装置は、さらに、前記複数の参照装置間の前記距離を測定するように構成される
請求項8に記載の測位システム。
【請求項11】
前記1つ以上の無線信号セットは、
前記無線信号セットの前記第1の速度の信号の前記受信時間と、前記第2の速度の信号の前記受信時間との間の前記時間差に基づいて、前記対象装置と複数の参照装置のそれぞれとの間の前記距離を決定するために、1つ以上の前記対象装置の1つから送信され、前記複数の参照装置によって受信される無線信号セットである
請求項8に記載の測位システム。
【請求項12】
前記対象装置と複数の参照装置のそれぞれとの間の前記距離が、次の計算式
【数3】
【数4】
にて決定され、
式中、dは、前記対象装置と前記参照装置との間の前記距離であり、Δtは、前記第1の速度の信号の受信時間と前記第2の速度の信号の受信時間との間の前記時間差であり、cは、前記第1の速度、cは、前記第2の速度で、c>cであり、tSAは前記第2の速度の信号のサンプリングが開始した時間であり、Fは、受信された前記第2の速度の信号をサンプリングするサンプリングレートであり、tRFは、前記第1の速度の信号の到着時間であり、nは前記第2の速度の信号の前記到着時間とtSAとの間の推定されるオフセットである、
請求項8に記載の測位システム。
【請求項13】
1つ以上の対象装置と複数の参照装置との間の1つ以上の無線信号セットと、座標系を定義する前記複数の参照装置と、前記1つ以上の対象装置と、前記座標系の未知の位置に配置される前記複数の参照装置のうちの少なくとも1つと、を通信することであって、各無線信号セットは、少なくとも第1の伝送速度を有する第1の速度の信号と、第2の伝送速度を有する第2の速度の信号とを含み、かつ前記第1の伝送速度は前記第2の伝送速度よりも高くなるように、通信することと、
複数の参照装置間の距離に基づいて、前記座標系における位置が未知である参照装置の前記位置を計算し、且つ、各対象装置について、
前記対象装置と、前記複数の参照装置との間の前記距離を、前記対象装置と前記参照装置との間で通信された前記無線信号セットの前記第1の速度の信号の受信時間と、前記第2の速度の信号の受信時間との間の時間差に基づいて、決定することと、
決定された前記距離に基づいて、前記座標系における前記対象装置の前記位置を決定すること
を含む、測位方法。
【請求項14】
前記1つ以上の対象装置と複数の参照装置との間で1つ以上の無線信号セットを通信することにおいては、
前記1つ以上の対象装置から複数の無線信号セットのうち1つを送信することと、
前記複数の参照装置で前記無線信号セットを受信することと
を含む、請求項13に記載の測位方法。
【請求項15】
前記第1の速度の信号が無線周波数(RF)信号であり、かつ前記第2の速度の信号が音響信号であり、前記測位方法はさらに、
前記少なくとも1つの対象装置の温度測定を使用して、前記少なくとも1つの対象装置における第1温度調節音速を計算することと、
前記少なくとも1つの参照装置によって得られた前記温度測定を使用して、前記少なくとも1つの参照装置における1つ以上の第2温度調節音速を計算することと、
前記第1温度調節音速および前記1つ以上の第2温度調節音速を平均することにより、前記音響信号の較正された速度を計算すること
を含む、請求項13に記載の測位方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年1月20日に出願された、米国仮特許出願第62/280,958号の利益を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
開示の分野
本発明は、一般に、距離測定および物体測位方法およびシステムに関し、より詳細には、参照物体と対象物体との間の距離を求める混合モード距離測定および物体測位システムおよび方法、ならびにそれを使用した物体の位置を決定する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
多くのタイプの距離計が知られており、例えば、1つのタイプの距離計は、一般に、赤外発光ダイオード(LED)およびフォトダイオードを含む。距離計は、赤外パルスを放出し、それは、近くの物体によって反射される。距離計は、その反射された赤外線信号を受信する。強度、飛行時間、周波数および/または位相などの、反射された赤外線信号の特性が、次いで分析されて、その物体の距離を導出する。
【0004】
別のタイプの既知の距離計は、一般的なレーダーシステムである。エミッター、例えば、パラボラアンテナなどの狭ビーム幅アンテナが、高周波パルス(信号ビームと表されることもある)を放出する。信号ビーム内の物体の電波反射性材料が信号をエミッターに反射して返す。反射された信号の飛行時間およびドップラーシフトの測定値が次いで、物体の距離、およびいくつかのシステムでは、速度を計算するために使用される。
【0005】
距離測定システムおよび方法、すなわち、2つの物体間の距離を決定するためのシステムおよび方法は、多くの場合、物体測位システムおよび方法に関連する。例えば、物体測位システムは、通常、距離測定方法を使用して、まず、対象物体と1つ以上の参照物体の各々との間の距離を決定し、次いで、対象物体の位置を決定する。既知の物体測位システムの例は、米国の全地球測位システム(GPS)、ロシアの全地球的航法衛星システム(GLONASS)、欧州連合のGalileo測位システム、および中国の北斗衛星導航系統を含む。
【0006】
これらのシステムの難点は、実質的に光の速さである、放出された無線周波数(RF)信号の伝搬速度が、非常に速いので、飛行時間測定における小さい誤差でさえ、距離計算における大きな誤差になることであり、それは、結果として、より厳しくて費用のかかるシステム要件、例えば、正確な時刻同期、広い信号帯域幅、および同様のもの、となる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様によれば、測距装置が提供される。測距装置は、少なくとも1つの位置から伝送された少なくとも1セットの信号を受信するための少なくとも1つの信号受信機であって、少なくとも1セットの信号の各々が、少なくとも第1の伝送速度を有する第1の速度の信号と、第2の伝送速度を有する第2の速度の信号とを含み、第1の伝送速度は第2の伝送速度よりも高い、少なくとも1つの信号受信機;および装置と、少なくとも1つの位置の各々との間の距離を、前記位置から伝送された第1の速度の信号の受信時間と、前記位置から伝送された第2の速度の信号の受信時間との間の時間差に基づいて、決定するための少なくとも1つの処理装置を含む。
【0008】
いくつかの実施形態では、装置と少なくとも1つの位置の各々との間の距離は、
【数1】
として決定され、式中、dは、装置と前記位置との間の距離であり、Δtは、前記位置から伝送された第1の速度の信号の受信時間と前記位置から伝送された第2の速度の信号の受信時間との間の時間差であり、cは、第1の速度、cは、第2の速度で、c>cである。
【0009】
いくつかの実施形態では、第1の速度の信号は無線周波数(RF)信号であり、第2の速度の信号は音響信号である。音響信号は、可聴であれ不可聴であれ、気体(例えば、空気)、液体または固体などの、媒体内を、振動、音声信号、音、超音波(すなわち、超音波信号)および/または超低周波音として伝搬する、力学的な波である。以下、用語「音響(acoustic)」および「音声(audio)」は、簡潔にするためにほとんど同意味で使用され得る。
【0010】
いくつかの実施形態では、測距装置は、伝送された音響信号の速度を較正するために音速を決定する温度センサーをさらに含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、測距装置は、伝送された音響信号の速度を較正するために音速を決定する温度センサーおよび湿度センサーをさらに含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの信号受信機は、少なくとも第1の速度の信号を受信するための第1の信号受信機、および第2の速度の信号を受信するための第2の信号受信機を含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、各信号セットの第1の速度の信号および第2の速度の信号は、第1の位置から実質的に同時に伝送される。
【0014】
本開示の一態様によれば、測位システムが提供される。測位システムは、1つ以上の対象装置;前記1つ以上の対象装置と、1つ以上の無線信号セットを介して、通信する複数の参照装置であって、各無線信号セットは、少なくとも第1の伝送速度を有する第1の速度の信号と、第2の伝送速度を有する第2の速度の信号とを含み、第1の伝送速度は第2の伝送速度よりも高い、複数の参照装置;ならびに前記参照装置と対象装置との間で通信された無線信号セットの第1の速度の信号の受信時間と、第2の速度の信号の受信時間との間の時間差に基づいて、1つの対象装置と、1つの参照装置との間の少なくとも1つの距離を決定するための動作を実行する少なくとも1つの処理装置;を含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの処理装置は、マルチラテレーションを使用して、1つ以上の対象装置の位置を決定する。
【0016】
いくつかの実施形態では、第1の速度の信号は無線周波数(RF)信号であり、第2の速度の信号は音響信号である。
【0017】
いくつかの実施形態では、測位装置は、伝送された音響信号の速度を較正するために音速を決定する温度センサーをさらに含む。
【0018】
本開示の一態様によれば、側距/測位方法が提供される。本方法は:1つ以上の対象装置と1つ以上の参照装置との間で、1つ以上の無線信号セットを通信することであって、各無線信号セットは、少なくとも第1の伝送速度を有する第1の速度の信号と、第2の伝送速度を有する第2の速度の信号とを含み、第1の伝送速度は第2の伝送速度よりも高い、1つ以上の無線信号セットを通信すること;および前記参照装置と対象装置との間で通信された無線信号セットの第1の速度の信号の受信時間と、第2の速度の信号の受信時間との間の時間差に基づいて、1つの対象装置と、1つの参照装置との間の少なくとも1つの距離を決定すること;を含む。
【0019】
本開示の一態様によれば、バーチャルリアリティおよび/または拡張現実側距/測位システムが提供される。本システムは、1つ以上の対象装置と1つ以上の参照装置との間で、1つ以上の無線信号セットを通信することであって、各無線信号セットは、少なくとも第1の伝送速度を有する第1の速度の信号と、第2の伝送速度を有する第2の速度の信号とを含み、第1の伝送速度は第2の伝送速度よりも高い、1つ以上の無線信号セットを通信すること;および前記参照装置と対象装置との間で通信された無線信号セットの第1の速度の信号の受信時間と、第2の速度の信号の受信時間との間の時間差に基づいて、1つの対象装置と、1つの参照装置との間の少なくとも1つの距離を決定すること;を含む。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本開示の一実施形態に従った、サイト内に1つ以上の参照装置および1つ以上の対象装置を有する測距システムを示す概略図である。
図2図1のシステムの参照装置と対象装置との間の距離を決定することを示す概略図である。
図3A】参照装置と対象装置との間の距離を測定するステップを例示する流れ図を示す。
図3B】参照装置と対象装置との間の距離を測定するステップを例示する流れ図を示す。
図4】参照装置と対象装置との間の距離、および対象装置の考えられる位置を決定する例を示す。
図5】2つの参照装置から、および三角測量を使用することによって、対象装置の位置を決定する例を示す。
図6】3つの参照装置から、および三角測量を使用することによって、対象装置の位置を決定する例を示す。
図7A】既知の3次元(3D)位置における3つの参照装置と対象装置を示す、図1のサイトの一部の上面図である。
図7B図7Aのサイト部分の側面図である。
図7C図7Aのサイト部分の斜視図である。
図8】代替実施形態に従った、図1のシステムの参照装置と対象装置との間の距離を決定することを示す概略図である。
図9】代替実施形態に従った、3D入力システムの形での図1の測距システムを例示する。
図10A図9の3D入力システムの位置検知グローブの下面図である。
図10B図10Aの位置検知グローブの上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1を参照すると、測距システムが示されており、一般に参照番号100によって識別される。図のように、システム100は、サイト106内に配備された1つ以上の参照装置102および1つ以上の対象装置104を含む。参照装置102は、この実施形態では、無線信号セット108を伝送し、対象装置104が、その無線信号セット108を受信する。このように、参照装置102は、対象装置104の距離を決定するために、無線信号セット108を介して対象装置104と通信する。本明細書では、物体の距離は、少なくとも物体と、基準点、例えば、参照装置との間の距離を指す。
【0022】
この実施形態では、1つ以上の参照装置102は、サイト106の既知の位置、例えば、本明細書で説明する目的のために特別に設計された装置、WiFi(登録商標)アクセスポイント、Bluetooth(登録商標)アクセスポイント、および/または同様のものに配備される。以下でさらに詳細に説明するように、各参照装置102はスピーカーも含む。
【0023】
対象装置104は、サイト106内で動いている、人間、ショッピングカート、ロボット、ユーザーの手、および同様のものなど、それぞれの可動物体と関連付けられる。対象装置104は、以下で説明するような機能を有し、可動物体との関連付けに適した任意の装置、例えば、本明細書で説明する目的のために特別に設計された信号受信装置、Apple(登録商標)iPhone(登録商標)、Android(商標)フォン、Windows(登録商標)フォンおよび他のスマートフォンなどのスマートフォン、Apple(登録商標)iPad(登録商標)、Android(商標)タブレット、Microsoft(登録商標)タブレットおよび他のタブレットなどのタブレット、ラップトップ、携帯情報端末(PDA)、ビデオゲームコントローラ、ヒューマンマシンインタフェース装置、バーチャルリアリティアプリケーション用の3次元(3D)インタフェース装置、および同様のものであり得る。
【0024】
参照装置102と対象装置104との間で送信される無線信号セット108は、少なくとも、RF信号、例えば、WiFi(登録商標)信号、Bluetooth(登録商標)信号、Enhanced ShockBurst(商標)信号または同様のものなどの、第1のタイプの高速無線信号、および音響信号などの、第2のタイプの低速無線信号を含む。
【0025】
当業者であれば分かるように、様々な実施形態では、参照装置102は、1つ以上の対象装置104と同時に通信し得、対象装置104は、1つ以上の参照装置102と同時に通信し得る。言うまでもなく、少なくとも一部の時間帯では、いずれの対象装置104とも通信しない1つ以上の参照装置102が存在し得、少なくとも一部の時間帯では、いずれの参照装置102とも通信しない1つ以上の対象装置104も存在し得る。
【0026】
周波数分割多重化、時分割多重化、符号分割多重化および同様のものなどの、適切な信号多重化技術が、1つ以上の参照装置102と、1つ以上の対象装置104との間の通信のために使用され得る。これらの信号多重化技術の多くが当技術分野で既知であり、新しい信号多重化技術が同様に、本明細書で開示する測距システムに適用可能であるので、以下の説明は、本発明を説明するための例として、1つの対象装置104と通信する1つの参照装置102だけを使用する。
【0027】
図2に示すように、参照装置102は、バスまたは個々の回路(図示せず)を介して、メモリ構成要素114A、ならびにRF送受信機116Aおよび音響送信機120Aを含む信号送信機のセットに結合されて、制御する、処理装置112Aを含む。RF送受信機116Aは、RF信号124などの高速無線信号を介した対象装置104との通信のために、アンテナ118Aに結合される。当技術分野で周知のように、RF送受信機は、RF信号の送信および受信が可能である。
【0028】
音響送信機120Aは、音響信号126などの低速無線信号の送信のためにスピーカー122Aに結合される。この実施形態では、音響送信機120Aは、デジタル/アナログ変換器(DAC)であり、スピーカー122Aを駆動して、低速無線信号126を生成するためにアナログ信号を生成する。
【0029】
様々な実施形態では、参照装置102は、実施態様に応じて、他の適切な構成要素および回路をさらに含み得る。例えば、いくつかの実施形態では、参照装置102は、送信のためにRFおよび/または音響信号を処理するための適切な信号処理構成要素および回路を含み得る。別の例では、参照装置102は、DAC120Aの出力をフィルタ処理するための適切な信号処理構成要素および回路を含み得る。
【0030】
機能性の観点から、処理装置112Aは、送信機論理層とも表される。RF送受信機116A、アンテナ118A、音響送信機120Aおよびスピーカー122Aは、ひとまとめにして、送信機物理層と表される。
【0031】
それに応じて、対象装置104は、バスまたは個々の回路(図示せず)を介して、メモリ構成要素114B、ならびにRF送受信機116Bおよび音響受信機120Bを含む信号受信機のセットに結合されて、制御する、処理装置112Bを含む。RF送受信機116Bは、RF(無線)接続124(すなわち、RF信号124;以下、用語「RF信号」および「RF接続」は簡略化のためにほとんど同じ意味でも使用され得る)を介した参照装置102との通信のために、アンテナ118Bにも結合される。音響受信機120Bは、参照装置102から伝送された音響信号を受信するためにマイクロホン122Bにも結合される。この実施形態では、音響受信機120Bは、アナログ/デジタル変換器(ADC)であり、マイクロホン122Bの出力をさらなる処理のためにデジタル信号に変換する。いくつかの実施形態では、対象装置104は、温度センサー132をさらに含む。
【0032】
機能性の観点から、処理装置112Bは、受信機論理層とも表される。RF送受信機116B、アンテナ118B、音響受信機120Bおよびマイクロホン122Bは、ひとまとめにして、受信機物理層と表される。
【0033】
ここで、処理装置112Aおよび112Bの各々は、例えば、プログラム化フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、特定用途向け集積回路(ASIC)、および/または同様のものを使用する、特別に設計されたコントローラチップであり得る。あるうは、処理装置112Aおよび112Bの各々は、1つ以上のシングルコアまたはマルチコアコンピューティングプロセッサであり得、例えば、米国カリフォルニア州サンタクララ所在のIntel Corporationによって提供されるIntel(登録商標)マイクロプロセッサ、米国カリフォルニア州サニーベール所在のAdvanced Micro Devicesによって提供されるAMD(登録商標)マイクロプロセッサ、英国ケンブリッジ所在のARM Ltd.によって開発されたARM(登録商標)アーキテクチャ下で様々な製造業者によって製造されるARM(登録商標)マイクロプロセッサ、米国カリフォルニア州サンノゼ所在のAtmel(登録商標)corporationによって提供されるAVR(登録商標)マイクロコントローラ、および/または同様のものである。メモリ構成要素114Aおよび114Bの各々は、RAM、ROM、EEPROM、ソリッドステートメモリ、ハードディスク、CD、DVD、フラッシュメモリ、および/または同様のものであり得る。
【0034】
参照装置102および対象装置104は、それらの間の距離128の測定のためにRF信号124および音響信号126を使用する。この実施形態では、参照装置102および対象装置104は、コマンドおよびデータを相互に送信/相互から受信するなど、他の通信目的のためにも、RF接続124を使用する。しかし、当業者は、いくつかの代替実施形態では、図2に示すRF接続124は距離測定のためにだけ使用され、参照装置102および対象装置104は他の目的のために相互に通信しないことが分かる。いくつかの他の実施形態では、図2に示すRF接続124は、距離測定のためにだけ使用され、参照装置102および対象装置104は、コマンドおよびデータを相互に送信/相互から受信するなど、他の目的のために相互に通信するために、異なる無線手段、例えば、異なる無線チャネル、異なる無線通信技術を使用する。一例として、一実施形態では、参照装置102および対象装置104は、距離測定のためにEnhanced ShockBurst(商標)信号をRF信号124として使用し、コマンドおよびデータを相互に送信/相互から受信するために、Bluetooth(登録商標)接続を使用する。
【0035】
図3Aは、参照装置102と対象装置104との間の距離を測定するステップを示す流れ図である。図のように、距離測定は、参照装置側から(ステップ202)、または対象装置側から(ステップ204)、イニシエータによって開始され得る。イニシエータは、例えば、参照装置102上または対象装置104上のボタンを押すことによって、手動で距離測定を開始するユーザーであり得る。
【0036】
あるいは、イニシエータは、コンピュータプログラムまたはサービスであり得、それは、必要に応じて、または所定の時間間隔で定期的に、距離測定を自動的に開始する。コンピュータプログラムまたはサービスは、参照装置102もしくは対象装置104内で実行しているプログラムもしくはサービスであり得るか、または参照装置102もしくは対象装置104と通信する外部装置内で実行しているプログラムもしくはサービスであり得る。例えば、対象装置104上で実行している、ユーザーが開始したマップまたはナビゲーションプログラムは、対象装置104の位置を更新するために、自動的かつ定期的に距離測定を要求し得る。別の例として、外部サーバー上で実行しているショッピングカート追跡サービスなどの、外部サービスは、サイト106内のショッピングカートを連続して追跡するために、1つ以上の参照装置102と通信して、ショッピングカート上にインストールされた対象装置104の距離測定を要求する。
【0037】
さらに、コンピュータプログラムまたはサービスは、ハードドライブ、ソリッドステートメモリ、および/または同様のものなどの、内容消去可能なメモリ内に格納されたソフトウェアコードを含み得る。あるいは、コンピュータプログラムまたはサービスは、ROM、EPROM(その内容が、特別なプログラミング方法を使用して消去可能であり得る)、および/または同様のもの内に格納されたファームウェアコードを含み得る。
【0038】
距離測定要求が参照装置側から開始される場合、参照装置102はステップ210で距離測定プロセスを開始する。
【0039】
他方、距離測定要求が対象装置側から開始される場合、対象装置104は、要求を参照装置102に送信して、参照装置102が距離測定プロセスを開始するのを要求する(ステップ208)。参照装置側で、距離測定要求に応答して、参照装置102は、距離測定プロセスを開始する(ステップ210)。
【0040】
距離測定を開始した後、参照装置102は、RF信号124および音響信号126を、それぞれ、RF送受信機116Aからアンテナ118Aを経由して、また音響送信機120Aからスピーカー122Aを経由して、対象装置104に伝送する(それぞれ、ステップ212および214)。
【0041】
この実施形態では、送信機側における低速音響信号126は、PAC[n]によって表される、長さLのバイナリ符号語で符号化され、次いで、伝送のために超音波周波数に変調される。以下でさらに詳細に説明するように、受信機側で、受信された音響信号が復調されて、さらなる処理のために復号される。当業者は、様々な実施形態では、RFおよび音響信号124および126のいずれか、両方が、適切な符号化方式を使用して符号化され得るか、またはいずれも符号化されないことが分かる。当業者は、様々なバイナリ/M-ary符号化方式、例えば、擬似ランダム雑音符号、ゴールド符号、バーカー符号、または同様のものを使用するものが、RF信号124および/または音響信号126を符号化するために使用され得ることが分かる。符号化は、一般に、改善された到着時間推定、誤り検出、誤り訂正、干渉抵抗および/または同様のもののために測位で使用される。符号語変調(包含)は、様々な変調方法、例えば、オンオフキーイング(OOK)、可聴周波数シフトキーイング(AFSK)、バイナリ周波数シフトキーイング(BFSK)、振幅シフトキーイング(ASK)、連続位相周波数シフトキーイング(CPFSK)、または同様のもの、を使用して行われ得る。
【0042】
好ましくは、高速な、RF信号124および低速な、音響信号126は、実質的に同時に伝送される。RFおよび音響信号124および126は、それらそれぞれの媒体を通って伝搬する。空中でのRF信号124の速度は、ほぼ光の速さであり、それは、自由空間内で、約2.99×10メートル/秒(m/s)である。他方、音響信号126の速度は、音の速さであり、それは、20℃の空気中でほぼ343.4m/sである。
【0043】
対象装置において、対象装置104は、アンテナ118BおよびRF送受信機116Bを介して、RF信号124を受信し、受信したRF信号および受信したRF信号124の到着時間tRFをメモリ構成要素11B内に格納する(ステップ218)。
【0044】
音響信号126の速度は、環境要因、主に温度によって影響されるので、RF信号124を受信すると、対象装置104は、温度センサー132(図2を参照)を使用して周囲温度Tを測定し(ステップ220)、局所的音響信号速度vAC
【数2】
として計算し、式中Tは摂氏である。言うまでもなく、様々な実施形態では、局所的音響信号速度vACは、複数の測定値で長期間にわたって計算されて、フィルタ処理され、かつ/またはニュートン‐ラプラスの式などの、他の既知の方法を使用することによって計算され得る。
【0045】
次いで、対象装置104は、マイクロホン122Bから音響信号126の受信を開始して、サンプルおよびサンプリング開始時間をメモリ114B内に格納する(ステップ224)。
【0046】
この実施形態では、音響信号126を受信することは、マイクロホン122Bの出力を、アナログ/デジタル変換器120Bを介してサンプリングすることによって実施される。サンプリング後、ステップ222で、離散時間領域内で表されて、本明細書でS[n]として表される音響信号126、および音響信号のサンプリングが開始した時間、すなわち、ステップ222の開始時間tSAがメモリ構成要素114Bに格納される(ステップ224)。
【0047】
事前に定義された最大観測可能距離dmaxに対して予期される最大飛行時間tmaxに対応する期間の後、音響信号サンプリングが終了して、プロセスはステップ226に入る。この例では、音響信号126、従って、離散時間音響信号S[n]は、符号語PAC[n]を含む。
【0048】
maxとdmaxとの間の関係の簡略化近似値は、tmax=(dmax/vAC)+δであるが、(6)から導出されるもっと正確な式も使用され得る。変数「δ」は事前に定義された設計パラメータである。例えば、いくつかの実施形態では、長さL(ビット)のバイナリ符号語PAC[n]が使用される場合、任意の値δ<Lであり、式中、Tは、秒単位での符号語PAC[n]の1ビットの長さであり、音響信号126の切捨てとなって、信号対雑音比(SNR)に影響を及ぼし、従って、距離推定の精度に影響を及ぼす。操作の簡潔さのため、および本明細書で開示する実施形態における一般性を失うことなく、δ=0が事前に定義される。
【0049】
いくつかの実施形態では、高速信号tRFの飛行時間に対して、音響信号のサンプリングが開始する時間は、固定または決定された値τSA=tSA-tRFだけ遅延し得、音響信号がサンプリングされる期間は固定または決定された窓期間tWIN、すなわち、
max=vAC(τSA+tWIN
である。
【0050】
これは、
min=τSAAC
として与えられる最小観測可能距離dminということになる。
【0051】
いくつかの実施形態では、τSAおよびtWINは、以前の決定された距離から決定され得る。
【0052】
ステップ226で、対象装置104は、次いで、到着時間tRFとtACとの間の時間差Δt、すなわちΔt=tAC-tRFを計算するために、受信したRFおよび音響信号124および126を処理する。ここで、tACは、受信した音響信号126の到着時間である。このステップで、各信号124、126の到着時間が、実施態様に応じて適切な信号処理方法を使用して決定される。例えば、図3Bは、離散時間領域における時間差Δtを計算するための詳細なステップの一例を示す。
【0053】
図3Bに示すように、ステップ252で、帯域通過フィルタ(BPF)が、雑音低減のために、受信した音響信号S[n]に適用されて、フィルタ処理された音響信号S[n]を生成する。受信した音響信号S[n]は、一般に、雑音を含んでいて、変形され得、例えば、伝送された音響信号からの周波数シフトを示し得ることに留意されたい。BPF帯域幅は、対象装置104と参照装置102との間の発振器オフセット、相対運動に起因したドップラーシフト、および同様のものなどの、周波数シフト源を吸収するために音響信号帯域幅よりも広くなるように設定される。
【0054】
この実施形態では、音響信号は最初にサンプリングされ、次いでサンプリングされた音響信号が帯域通過フィルタ処理されるが、いくつかの代替実施形態では、音響信号は最初に帯域通過フィルタ処理され、フィルタ処理された音響信号がサンプリングされてフィルタ処理された音響信号S[n]が取得される。いくつかの他の実施形態では、帯域通過フィルタ処理は省略され得る。
【0055】
引き続き図3Bを参照すると、この実施形態では、音響信号S[n]は、ステップ254で復調される。当業者は、復調プロセスが、実施態様に応じて変わり、周波数推定(例えば、FFTまたは他の周波数推定法の使用)、ダウンコンバージョン、フィルタ処理(例えば、低域通過フィルタ処理)、および同様のものを含み得ることが分かる。ステップ253における信号復調の結果は、復調された信号S[n]であり、それは、この実施形態では、符号語PAC[n]を含む。
【0056】
ステップ256で、局所レプリカ信号S[n]が対象装置104で生成されて、変調前の送信機側における音響信号126と同じ符号語PAC[n]を有する。
【0057】
いくつかの実施形態では、局所レプリカ信号S[n]は、参照装置102と対象装置104との間の推定された発振器オフセット、および/または他の周波数シフト源、例えば、ドップラーシフト、ならびに同様のものも、局所信号が生成されるサンプルレートをスケーリングすることにより、吸収するように生成される。
【0058】
ステップ258で、局所レプリカ信号S[n]は、次のように、復調された信号S[n]と相互相関され:
【数3】
式中、Nは、信号S[n]内の総サンプル数である。次いで、ステップ260で、局所レプリカ信号S[n]と復調された音響信号S[n]との間のオフセットnが、適切な到着時間推定法を使用して推定される。例えば、この実施形態では、オフセットnを推定するために最尤推定器が次のように使用される:
【数4】
【0059】
この実施形態では、相関器が使用されるので、nは、従って、S[n]とS[n]との間のサンプルにおけるオフセットを表す。従って、ステップ262で、連続時間領域における到着時間tRFとtACとの間の時間差Δtは:
【数5】
式中、Fは、アナログ/デジタル変換器120Bのサンプリングレート(サンプル/秒単位)であり、従って、受信した音響信号126のサンプリングレートである。プロセスは次いで、図3Aのステップ228に進む。
【0060】
いくつかの代替実施形態では、tACの推定精度を改善するために補間法が使用され得る。標準的な放物線補間法が以下で与えられるが、Early/Late方式などの、他の方法が知られていて、使用され得る。
【数6】
【0061】
再度図3Aを参照すると、ステップ228で、対象装置104は、参照装置102と対象装置104との間の距離または間隔dを次のように計算する:
【数7】
式中、vRF=2.99×10m/sは、RF信号速度であり、vACは、式(1)を使用して計算された局所的音響信号速度であり、Δtは、式(5)を使用して計算される。
【0062】
計算された距離dがさらに処理される(ステップ230)。例えば、対象装置104が測定のイニシエータでない場合、計算された距離dがイニシエータに報告され得る。別の例として、対象装置104が測定のイニシエータでない代替実施形態では、それは、測定された/計算された/推定されたパラメータ、例えば、Δt、tAC、計算された距離d、および/または他の関連パラメータの1つ以上が、イニシエータに報告され得る。
【0063】
いくつかの実施形態では、対象装置104の一部は、他の補助センサー、例えば、加速度計、ジャイロスコープ、赤外線センサー、および/または同様のものを備える。かかる補助センサー(複数可)を含めることは、他の環境パラメータおよび/または装置の状態、例えば、その配向、に関する追加情報を提供し、それは、例えば、バーチャルリアリティなど、いくつかの用途に対して有用であると考えられ得る。
【0064】
いくつかの実施形態では、参照装置102および対象装置104は、実質的に同じ高さである。その結果、図4に示すように、dの計算後、対象装置104は、参照装置102を中心として、約dの半径を有する円282上の地点にあると決定される。参照装置102はサイト106内の既知の位置にあるので、対象装置104の位置は、その結果、円周282に沿ったどこかである。対象装置104の正確な位置が要求されないいくつかの実施形態では、対象装置104の位置を計算された円の外周に沿ったどこかであると決定することは十分であり得る。
【0065】
図5Aに示すように、いくつかの実施形態では、対象装置104と、2つの参照装置102Aおよび102Bの各々との間の距離を決定するために、図3Aおよび図3Bに示す距離測定が実施され、参照装置102Aと102Bとの間の距離Dが分かっている。図3Aおよび図3Bの対象装置のプロセス200に続いて、参照装置102Aと対象装置104との間の距離がdであり、参照装置102Bと対象装置104との間の距離がdであることが推定される。この例では、参照装置102Aおよび102Bならびに対象装置104は実質的に同じ高さであるとさらに仮定する。その結果、対象装置104の位置は、2つの位置104-1および104-2のいずれか1つで周知の三角測量を使用して決定され得る。対象装置104の正確な位置が要求されない、いくつかの実施形態では、対象装置104の位置を2つの考えられる位置の1つであると決定することは十分であり得る。
【0066】
図5Bに示すように、対象装置104が2つの参照装置102と同一線上にあるいくつかの実施形態では、対象装置104と2つの参照装置102の各々との間の距離を決定した後、対象装置104の位置が、対象装置104と2つの参照装置102との間の決定された距離に基づいて、2つの参照装置102の線に沿った1次元(1D)位置として決定され得る。
【0067】
いくつかの他の実施形態では、システムは、対象装置の位置をさらに正確にするために、他の適切な情報を使用し得る。例えば、対象装置104が、参照装置102Aおよび102Bを結ぶ線の一方の側にだけあり得る、例えば、他の側は、対象装置104がアクセスできない領域または部屋であることをシステムが知っている場合、システムは、対象装置104の位置を、それがアクセス可能な位置104-1および104-2の1つであるようにさらに正確にすることができる。
【0068】
図6に示すような別の実施形態では、3つの参照装置102A、102Bおよび102Cを使用して、対象装置104と、参照装置102A、102Bおよび102C、それぞれとの間の距離、d、d、およびdを計算した後、対象装置104の位置が領域104-3内であると決定し得る。この実施形態では、システムは、対象装置104ならびに3つの参照装置102A、102Bおよび102Cが同じ高さにあると仮定する。
【0069】
代替実施形態では、システムは、対象装置104および参照装置102が同じ高さにあると考えない。例えば、図7A図7Cは、同じ高さ302にある3つの参照装置102A、102Bおよび102C、ならびに参照装置102A~102Cとは必ずしも同じ高さにない対象装置104を示している。参照装置102Aと102Bとの間の距離r、参照装置102Aと102Cとの間の距離r、および参照装置102Aと102Bとの間の距離rは分かっている。
【0070】
この例では、局所右手座標系が、参照装置102Aを中心(すなわち、x=0,y=0,z=0)として定義される(図7Cに示す通り)。さらに、参照装置102Bが正のx軸上にあり(すなわち、x=r>0,y=0)、参照装置102Cが、x軸上を除いて(すなわち、y>0)座標系のx-y平面上の第1または第2の象限上にあると仮定する。これらの仮定の下、参照装置102Cの位置(x,y,z)が、この座標系に対して、次の周知の三辺測量式から計算され得る:
【数8】
【0071】
図3Aおよび図3Bのプロセス200に続いて、対象装置104と、それぞれ、参照装置102A、102Bおよび102Cとの間の距離u、u、およびuが決定される。次いで、周知の三辺測量式を使用して、対象装置104の位置が、前に対象装置を定義した座標系に対して次のように計算され得る:
【数9】
従って、対象装置104の位置は、(x,y
【数10】
または(x,y
【数11】
にあり得る。対象装置104の正確な位置が要求されない、いくつかの実施形態では、対象装置104の位置を2つの考えられる位置のいずれか1つにあると決定することは、以後の相対測位に対して十分であり得る。
【0072】
いくつかの実施形態では、システムは、対象装置104の位置をさらに正確にするために、他の適切な情報をさらに使用し得る。例えば、位置(x,y
【数12】
に対象装置がアクセスできない場合、または、参照装置が部屋のフロア上にあり、かつ対象装置104がフロア302上もしくはその上側にあることをシステムが知っている場合、システムは、対象装置の位置が(x,y
【数13】
にあると決定する。代替として、システムは、対象装置104の位置をさらに正確に決定するために、4つ以上の同一平面上にない参照装置102を使用し得る。
【0073】
参照装置102が同一平面上にある限界事例に対して、三辺測量、またはより一般的には、マルチラテレーションを使用して計算された対象装置の位置が曖昧であり得、システムは他の適切な情報、例えば、対象装置104の領域へのアクセス可能性またはアクセス不可能性をさらに使用して、可能性が低い位置を除外して曖昧さを解決し得る。
【0074】
他の適切な位置推定法が代替として使用できる。例えば、一実施形態では、3D空間内の対象装置104の3D座標(x,y,z)を、4つ以上の参照装置102の、任意であるが他の方法で既知の座標系に対する、既知の位置(x,y,z)、(x,y,z)、...、(x,y,z)を使用して計算するために、最小二乗法が使用され得る。この例では、参照装置102の少なくとも1つが他の参照装置102に対して同一平面上にないとさらに仮定する。図3Aおよび図3Bのプロセス200に続いて、対象装置104と、N個の参照装置102との間の距離R、R、...、およびRが:
Rn=(x-x+(y-y+(z-z (13)
として、n=1,2、...、Nに対して決定される。
【0075】
【数14】
および
【数15】
を定義する。
【0076】
次いで、参照装置に対する対象装置104の位置が、定義された座標系に関して次のように表現でき:
【数16】
式中、(・)は行列転置を表し、(・)-1は逆行列を表し、
【数17】
および
【数18】
【0077】
いくつかの実施形態では、参照装置102の全部またはサブセットの位置が、較正中に調査され得る。
【0078】
当業者は、参照装置および対象装置102および104における遅延が、距離決定において誤差を生じ得ることが分かる。本明細書では、遅延は、音声遅延、すなわち、音声信号126の遅延、およびRF信号遅延、すなわち、RF信号124の遅延を含む。
【0079】
参照装置102における音声遅延は、処理装置112Aが、音声信号126を伝送するために、デジタル/アナログ変換器120Aに信号通知する時間から、音声信号126がスピーカー122Aから実際に伝送された時間までの遅延または時間差を指す。参照装置102におけるRF信号遅延は、処理装置112Aが、RF信号126を伝送するために、RF送受信機116Aに信号通知する時間から、RF信号124のアンテナ118Aからの伝送の開始までの遅延を指す。
【0080】
同様に、対象装置104における音声遅延は、音声信号126がマイクロホン122Bによって受信される時間、および受信された音声信号126が処理のために処理装置112Bによって受信された時間からの遅延を指す。対象装置104におけるRF信号遅延は、RF信号124がアンテナ118Bで受信される時間、および受信されたRF信号124が送受信機によって時間タグ付けされた時間からの遅延を指す。
【0081】
いくつかの実施形態では、全体的な遅延は小さいと考えられ、従って、無視される。しかし、これらの実施形態では、計算された距離の精度、およびその結果として、計算された対象装置位置の精度が低下し得る。
【0082】
いくつかの実施形態では、システムは、距離測定および/または物体測位精度を向上させるために、較正プロセスを使用して全体的な遅延を推定する。
【0083】
代替実施形態では、任意であるが、既知の遅延
【数19】
が、例えば、プライバシー/セキュリティ目的のために、音響信号124の伝送に導入される。従って、正しい距離の計算では、追加の項
【数20】
の特定の知識を必要とする。実施態様に応じて、
【数21】
が、HMACベースのワンタイムパスワード(HOTP)アルゴリズム、時間ベースのワンタイムパスワード(TOTP)アルゴリズムもしくは同様のものなどを用いて、事前共有鍵から生成され得るか、または中央サーバーによって事前に生成され得るか、またはRSAもしくは同様のものなど、公開鍵暗号方式を使用して、ランダムに生成されて、受信機に通信され得る。
【0084】
代替実施形態では、いくつかの参照装置102は各々、RF送受信機ではなく、RF信号送信機を含み得る。これらの参照装置102は、従って、信号送信機としてのみ機能できる。
【0085】
代替実施形態では、いくつかの対象装置104は各々、RF送受信機ではなく、RF信号受信機を含み得る。これらの対象装置104は、従って、RF信号を受信できるだけである。
【0086】
図8に示すような代替実施形態では、いくつかの参照装置102は各々、温度センサー132Aを含み得る。この実施形態では、音速も参照装置102で計算され、精度を向上させるために、平均音速が、参照装置102および対象装置104の両方で計算された音速を平均することによって計算される。
【0087】
代替実施形態では、高速無線信号124は、光信号である。この実施形態における本システムの欠点は、障害物が光信号経路を遮断し得、従って、距離推定を妨げることである。
【0088】
前述の実施形態では、温度センサーは、音速を較正するために使用される。いくつかの代替実施形態では、局所音速または周囲温度を測定するために他の既知の方法が使用され得る。
【0089】
いくつかの代替実施形態では、対象装置104および参照装置102のいずれも温度センサーを含まない。この実施形態では、概算の事前に定義された値が使用され得る。当業者は、測距誤差がかかる概算に起因し得ることが分かる。
【0090】
いくつかの実施形態では、高速なRF信号124および低速な音響信号126が、実質的に同時に、または可能な限り小さい時間間隔内に伝送される。代替実施形態では、RF信号124および音響信号126の一方が、その他方の伝送後、開始装置に既知の事前に定義された時間遅延で、異なる時刻に伝送される。
【0091】
いくつかの実施形態では、参照装置102が、無線信号セット108を伝送し、対象装置が、無線信号セット108を受信する。いくつかの代替実施形態では、対象装置102が、無線信号セット108を伝送し得、参照装置が、無線信号セット108を受信し得る。
【0092】
例えば、図9に示すように、いくつかの代替実施形態では、測位システム100は、バーチャルリアリティ(VR)システムおよび/または拡張現実(AR)システムの一部であり得る。
【0093】
図9の例では、バーチャルリアリティ(VR)システムは、3次元(3D)入力システムである。3D入力システム100は、タブレット、スマートフォン、ラップトップコンピュータ、デスクトップコンピュータ、または同様のものなどの、コンピューティング装置(図示せず)、各々が対象装置104と結合されたグローブ500(図10Aおよび図10Bを参照)などの1つ以上のウェアラブルデバイス、および既知の位置における複数の参照装置104を含む。コンピューティング装置は、適切な無線接続、例えば、ANT(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、または同様のものを使用して、グローブ500および参照装置102と通信して、様々なユーザー入力、例えば、様々なジェスチャまたはコマンド、を可能にする。他の無線または有線通信方法、例えば、WiFi(登録商標)、ZigBee(登録商標)、イーサネット(登録商標)、USB、光接続、シリアルケーブル、パラレルケーブル、または同様のものが、コンピューティング装置、グローブ500および参照装置104を機能的に接続するために代替として使用され得る。
【0094】
図10Aおよび図10Bは、それぞれ、右手の位置検知グローブ500の下面(掌)および上面(手の甲)図を示す。左手の位置検知グローブは、図15Aおよび図15Bのそれと同様であるが、おおまかに鏡映構成である。
【0095】
グローブ500は、ユーザーの器用さの妨げを最小限にするために、軽量の繊維およびメッシュで作られている。図のように、グローブ500は、ユーザーの手の5本の指および手首に対応して、5本の指部分504~512および手首部分514を含む。複数の角度符号器520が、それぞれの関節の角度を検出するために、人間の指の関節に対応する位置(すなわち、指先から、手に接合している指の指関節までの指全体の関節上)でグローブ500の上面上に取り付けられる。角度符号器522も、手首の角度を検出するために手首位置514でグローブ500上に取り付けられる。対象装置104は、1つ以上の参照装置104に対するグローブ500の測距情報を提供するためにグローブ500に取り付けられる。測距情報は次いで、3D空間内での手のジェスチャまたはコマンドなどの、様々なユーザー入力を解釈するために、グローブ500上の角度符号器によって検出された測定された角度と融合され得る。3D入力システム100および位置検知グローブ500は、2016年5月12日に公開されて、本主題出願の出願者に譲渡された、米国特許公開第2016/0132111 A1号に記載されているものに類似しており、その内容が全体として参照により本明細書に組み込まれる。
【0096】
グローブ500の3D位置を決定した後、3D空間内での各指の位置が決定され得る。ジェスチャおよび/またはコマンドが次いで、取得された位置に基づいて決定できる。
【0097】
他のVR機器も、3D空間内でのその距離/位置を決定するために、1つ以上の対象装置104を含み得る。例えば、いくつかの実施形態では、ヘッドマウント式ディスプレイは、仮想環境内での距離推定または相対位置推定のために、それに取り付けられた対象装置104を含み得る。
【0098】
当業者は、必ずしも、全ての参照装置が無線信号セットを伝送するための送信装置である必要はなく、全ての対象装置が無線信号セットを受信するための受信装置である必要はなく、また、全ての対象装置が送信装置である必要はなく、全ての対象装置が受信装置である必要もないことが分かる。実際のところ、いくつかの実施形態では、いくつかの参照装置が、送信装置であり得、他の参照装置は受信装置であり得る。それに応じて、いくつかの対象装置が受信装置であり得、他の対象装置は送信装置であり得る。
【0099】
実施形態は、添付の図面を参照して上で説明してきたが、当業者は、変形および修正が、添付のクレームによって定義される、その範囲から逸脱することなく、行われ得ることを理解するであろう。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8
図9
図10A
図10B