(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023072017
(43)【公開日】2023-05-23
(54)【発明の名称】多孔性3D生体模倣足場、バイオメディカルインプラントおよびそれらの使用
(51)【国際特許分類】
A61L 27/40 20060101AFI20230516BHJP
A61L 27/54 20060101ALI20230516BHJP
A61L 27/56 20060101ALI20230516BHJP
A61L 27/22 20060101ALI20230516BHJP
A61L 27/36 20060101ALI20230516BHJP
【FI】
A61L27/40
A61L27/54
A61L27/56
A61L27/22
A61L27/36 100
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038285
(22)【出願日】2023-03-13
(62)【分割の表示】P 2019569953の分割
【原出願日】2018-06-14
(31)【優先権主張番号】2017902326
(32)【優先日】2017-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(71)【出願人】
【識別番号】511095676
【氏名又は名称】ディーキン ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100196117
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 利恵
(72)【発明者】
【氏名】リンペン ファン
(72)【発明者】
【氏名】ジンリアン リー
(72)【発明者】
【氏名】シャンハイ ワン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】生体模倣3次元(3D)環境および支持を提供し、細胞との相互作用ならびに複雑な多細胞相互作用を空間的および時間的に媒介することにより、細胞の挙動および機能を誘導する足場を提供する。
【解決手段】足場全体にわたって複数の相互接続されたマクロチャネルで規定されたナノファイバー壁を備え、相互接続されたマクロチャネルは、100μm~1000μmの直径を有し、ナノファイバー壁は、マクロチャネルの長軸に沿って一方向に整列した直径20nm~5000nmの1つ以上のポリマーのナノファイバーを含むマトリックスと、壁内において整列したナノファイバーによって採用された配向に整列した直径20nm~1500nmの細孔と、を備え、1つ以上のポリマーは、天然ポリマー、合成ポリマーまたはそれらの組み合わせから選択される多孔性3D生体模倣足場。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
足場全体にわたって複数の相互接続されたマクロチャネルで規定されたナノファイバー壁を備え、
前記相互接続されたマクロチャネルは、100μm~1000μmの直径を有し、
前記ナノファイバー壁は、
前記マクロチャネルの長軸に沿って一方向に整列した直径20nm~5000nmの1つ以上のポリマーのナノファイバーを含むマトリックスと、前記壁内において前記整列したナノファイバーによって採用された配向に整列した直径20nm~1500nmの細孔と、を備え、
前記1つ以上のポリマーは、天然ポリマー、合成ポリマーまたはそれらの組み合わせから選択される多孔性3D生体模倣足場。
【請求項2】
前記ナノファイバー壁の前記ナノファイバーに沿って分散したナノ粒子を含む請求項1に記載の多孔性3D生体模倣足場。
【請求項3】
前記チャネルの壁は、前記チャネルの前記方向に沿って整列したナノ粒子およびナノファイバーで構成されている請求項1または請求項2に記載の多孔性3D生体模倣足場。
【請求項4】
前記整列したナノファイバーは、少なくとも50nmの長さを有する請求項1から3のいずれか一項に記載の多孔性3D生体模倣足場。
【請求項5】
前記整列したナノファイバーは、放射状に整列した繊維、直線状に整列した繊維、または縦方向に整列した繊維である請求項1から4のいずれか一項に記載の多孔性3D生体模倣足場。
【請求項6】
前記整列したナノファイバーは、シルクフィブロイン、アルジネート、ウシ血清アルブミン、コラーゲン、キトサン、ゼラチン、セリシン、ヒアルロン酸、およびデンプンからなる群から選択される少なくとも1つの天然ポリマーで形成される請求項1に記載の多孔性3D生体模倣足場。
【請求項7】
前記ナノ粒子は、シルクフィブロイン、アルジネート、ウシ血清アルブミン、コラーゲン、キトサン、ゼラチン、セリシン、ヒアルロン酸、およびデンプンからなる群から選択される少なくとも1つの天然ポリマーで形成される請求項1から6のいずれか一項に記載の多孔性3D生体模倣足場。
【請求項8】
前記整列したナノファイバーは、ビニルポリマー、ポリ(エチレンオキシド)、ポリホルムアルデヒド、ポリアセトアルデヒド、ポリ(3-プロピオネート)、ポリ(10-デカノエート)、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリカプロラクタム、ポリ(11-ウンデカノアミド)、ポリ(ヘキサメチレンセバカミド)、ポリ(m-フェニレンテレフタレート)、ポリ(テトラメチレン-m-ベンゼンスルホンアミド)およびそれらのコポリマーからなる群から選択される少なくとも1つの合成ポリマーで形成される、請求項1から6のいずれか一項に記載の多孔性3D生体模倣足場。
【請求項9】
薬物、増殖因子、ポリマー、界面活性剤、化学物質、粒子、ポロゲンおよびそれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1つの添加剤をさらに含む請求項1から6のいずれか一項に記載の多孔性3D生体模倣足場。
【請求項10】
界面活性剤、保存剤、湿潤剤、乳化剤および分散剤などの少なくとも1つのアジュバントをさらに含む請求項1から9のいずれか一項に記載の多孔性3D生体模倣足場。
【請求項11】
前記整列したナノファイバーは、例えば架橋剤で架橋されている請求項1から10のいずれか一項に記載の多孔性3D生体模倣足場。
【請求項12】
薬物、増殖因子、ポリマー、界面活性剤、化学物質、粒子、ポロゲンおよびそれらの組合せからなる群から選択される添加剤をさらに含む請求項1から11のいずれか一項に記載の多孔性3D生体模倣足場。
【請求項13】
20~160kPaの圧縮弾性率を有する請求項1から12のいずれか一項に記載の多孔性3D生体模倣足場。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載の多孔性3D生体模倣足場を含むバイオメディカルインプラント。
【請求項15】
細胞増殖を促進するために細胞を捕捉および培養する請求項1から13のいずれか一項に記載の多孔性3D生体模倣足場の使用。
【請求項16】
細胞培養、組織修復および/または組織工学のための細胞担体のテンプレートとしての請求項1から13のいずれか一項に記載の多孔性3D生体模倣足場を含むバイオメディカルインプラントの使用。
【請求項17】
組織損傷の治療において、組織損傷を受け、組織の修復および/または再生を必要とする哺乳動物の治療に使用するための請求項1から13のいずれか一項に記載の多孔性3D生体模倣足場または請求項14に記載のバイオメディカルインプラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2017年6月19日に出願されたオーストラリア仮特許出願第2017902326号明細書の優先権を主張し、その内容は援用されるものと理解されるべきである。
【0002】
本発明は、細胞培養、組織再生および創傷修復などの組織工学用途に使用するための生体材料およびその製造方法に関する。組織工学に使用するための天然細胞外マトリックスを模倣する足場、ならびに好ましくは細胞増殖のために繊維および多孔度を有する上記足場を調製および使用する方法が、本発明によって提供される。特に、この方法は、巨大分子溶液中の氷の結晶化を操作することによって、共整列(co-aligned)したナノファイバーと場合によりマクロチャネルとを有する階層的3D構造を作成するための容易な戦略を使用する。本発明はまた、細胞増殖の促進における足場の使用、およびバイオメディカルインプラントとしての使用を提供する。
【背景技術】
【0003】
組織工学では、生体材料が大きな関心を集めている。理想的な生体材料は、生体模倣3次元(3D)環境および支持を提供するとともに、細胞との相互作用により、ならびに複雑な多細胞相互作用を空間的および時間的に媒介することにより、細胞の挙動および機能を誘導することができなければならない。細胞の運命および活性を最適に制御するために、天然細胞外マトリックス(ECM)の構造的特徴および機能を模倣する生体材料が継続的に開発されている。天然ECMは、直径が50~500nmの複雑なナノファイバーの3D多孔質構造として存在する。ECMの主成分はコラーゲンであり、コラーゲンは、様々な組織内でのコラーゲン繊維の配向など、様々な構造的配列を有する。特定の組織では、細胞はECMの特徴に完全に応答して、それらの独自の挙動および機能を維持する。
【0004】
異方性構造特性を有する多くの組織(硬膜、腱、靭帯、鼓膜および筋肉組織など)では、細胞とECM繊維とが高度に整列している。これらの独自の整列は、組織および器官の特異的な生理学的機能を補助する。例えば、硬膜および鼓膜組織の放射状に整列したナノファイバーマトリックスは、それぞれ血液を運び、音を伝導する。骨格筋、腱および靭帯組織では、縦方向に整列した繊維束が運動と機械的負荷とを支持する。2次元(2D)材料では、エレクトロスピニングおよびロータリージェットスピニングなどの様々な手法を使用して、整列したナノファイバーを有する構造が製造されている。しかし、これらの2D整列マトリックスは、天然の異方性組織の3D特性を模倣せず、3D空間で細胞および組織に支持を提供しない。さらに、2D整列材料の欠点は、作製プロセス中の機械的伸張により、非常に小さい孔径と低い多孔度とを有することである。
【0005】
整列した繊維ベースの3D足場、特に、相互接続されたマクロ孔を有する、整列した繊維ベースの3D足場を実現することは極めて困難である。さらに、現在利用可能な技術を用いて、繊維の望ましい整列を空間的に得ることは困難である(例えば、短軸方向に繊維が整列しているチューブ、または中心方向に繊維が整列している球体)。現在、整列した繊維ベース構造の主な形態は、チューブの長軸に沿って整列したナノファイバーからなる非常に薄い壁(2次元)を有する2次元の膜およびチューブである。さらに、ランダムな繊維配向を有する既存の3D足場は、相互接続性および孔径が十分ではない。
【0006】
異方性組織を再生するための理想的な材料は、細胞増殖を誘導し、栄養分/酸素/老廃物の輸送/交換および細胞間情報伝達を促進するために、整列したナノファイバーと相互接続されたマクロ孔とを有する3D生体模倣構造を有するべきである。ECMの天然の構造的特徴および機能を模倣することに関心が高まっているが、ナノファイバーおよび大きな細孔との高い整列を有する足場の調製は困難である。
【0007】
現在、創傷または損傷組織の標準的な治療は、自家移植片を使用することである。ただし、感染のリスクが高く、ドナー部位が不十分なため、自家移植片の使用は制限されることが多い。さらに、自家移植片は、ドナー部位に二次創傷をもたらし得、適用部位とドナー部位の両方に重度の瘢痕を引き起こす可能性がある。
【0008】
したがって、組織工学に使用するのに適した材料として整列した繊維ならびに十分な相互接続性および孔径を有する足場を開発するほか、バルク3D足場での細胞増殖および組織形成を促進するための上記足場の調製および使用方法を開発することが望ましい。
【0009】
文献、行為、材料、装置、物品などの説明は、本発明の背景を提供する目的のためだけに本明細書に含まれる。これらの事項のいずれかまたはすべてが、先行技術の基礎の一部を形成したり、本出願の各請求項の優先日以前に存在したという理由で本発明に関連する分野の共通の一般知識であったことを示唆したり意味したりするものではない。
【0010】
用語「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、「含まれた(comprised)」または「含んでいる(comprising)」が、(特許請求の範囲を含めて)本明細書で使用される場合、これらの用語は、提示された特徴、整数、工程または構成要素の存在を明示しているが、1つ以上の他の特徴、整数、工程もしくは構成要素またはこれらの群の存在を排除するものではないと解釈される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
組織工学のための足場の継続的な進化は、天然細胞外マトリックス(ECM)の構造的特徴および機能を再現したいという願望によって推進されてきた。しかし、異方性組織のECMを模倣するために、整列したナノファイバーと相互接続されたマクロ孔とを有する3D構造を作成することは、課題のままである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
したがって、本発明の一態様では、足場を調製する方法が提供され、上記方法は、繊維形成分子を含む溶液を提供する工程と、溶液を冷却媒体に曝して、冷却媒体と溶液との間の界面で温度差を確立する工程と、温度差の結果として溶液を冷却して、溶液中で溶媒結晶化と繊維の整列とを誘導して、足場を作成する工程とを含む。
【0013】
有利なことに、特定の実施形態では、整列した繊維を有する本発明の足場は、足場が天然細胞外マトリックスの構造を模倣するため、細胞の接着、増殖および分化のうちの少なくとも1つを促進することができる。
【0014】
したがって、さらなる実施形態では、本発明は、足場を溶液に曝し、続いて追加の冷却工程を行って足場内で溶媒結晶化およびチャネルを誘導することをさらに含む。特定の実施形態では、チャネルは、整列した繊維と実質的に共整列している。
【0015】
特定の実施形態では、足場に形成されたチャネルは、細胞の接着(捕捉)および増殖のうちの少なくとも1つを促進することができる。本発明の足場に形成されたチャネルは、組織再生のための3次元細胞増殖または細胞培養を促進することができる。
【0016】
したがって、別の態様では、本発明は、実質的に整列した繊維のマトリックスを含む多孔性生体模倣足場を提供する。また別の態様では、本発明は、実質的に整列した繊維の3次元マトリックスを含む多孔性生体模倣足場を提供する。さらに別の態様では、本発明は、繊維のマトリックスを含む多孔性生体模倣足場を提供する。いくつかの実施形態では、繊維は整列している。いくつかの実施形態では、繊維は、放射状に整列した繊維、直線状に整列した繊維、または縦方向に整列した繊維である。いくつかの実施形態では、繊維は一方向に整列している。
【0017】
本発明の足場は、細胞培養および組織工学用途に使用することができる。特定の実施形態では、本発明によって提供される足場は、組織損傷を受け、組織の修復および/または再生を必要とする哺乳動物を治療する方法を含み、この方法は、本発明の足場を損傷部位に適用することを含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、本発明者らは、足場が特定の状況では生物系において安定であり、したがって細胞培養、薬物送達、創傷治癒、または損傷組織の治療に使用することができることを発見した。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】(a)放射状に整列したナノファイバーおよびマクロチャネルを有する足場。チャネル壁は、チャネルの長軸に沿って整列したナノファイバー、ならびに細孔および粒子から構成されている。(b)垂直に整列したナノファイバーおよびマクロチャネルを有する足場。
【
図2】簡易な凍結乾燥技術による、放射状に共整列したナノファイバーおよびマクロチャネルを有する3Dシルクフィブロイン(SF)足場(A(F&C)足場)の作製。(上記の4.A(F&C)足場の)穴は、A(F&C)足場の中央チャネルの上面図である。AFb:整列したナノファイバー足場、AF:マクロチャネルを有しない耐水性の整列したナノファイバー足場、ならびにA(F&C):放射状に共整列したナノファイバーおよびマクロチャネルを有する耐水性足場。
【
図3】放射状に整列したナノファイバーおよびチャネルを有する3D足場(A(F&C))の階層的構造。(a)足場の放射状に整列したチャネル構造を示すマイクロCT画像。スケールバー:1000μm。(b)ナノ粒子と細孔とを有する整列したナノファイバー構造を明らかにする様々な倍率でのチャネル壁のSEM画像。(大きな矢印は、整列したナノファイバーの配向を示している。チャネル壁上の粒子、細孔および整列したナノファイバーは、それぞれ小さな矢印によって示されている。スケールバー:左から右にそれぞれ10、2および1μm。(c)関連する構造の概略寸法表示。
【
図4】本発明の局所的に整列したシルクフィブロイン(SF)ナノファイバーによって修飾されたポリプロピレン多孔性微小繊維材料(a、bおよびcのナノファイバーには、それぞれ0.0125%、0.025%および0.05%(w/v)のシルクフィブロイン溶液を使用した)。a’、b’およびc’はそれぞれa、bおよびcの拡大図である。スケールバー:a、bおよびcは200μm。a’およびb’は10μm。c’は30μm。
【
図5】0.025%(w/v)のアルジネート溶液を使用した、局所的に整列したアルジネートナノファイバー(a、b、c;a、bおよびcは倍率が異なる)と、0.025%(w/v)の本発明のゼラチン溶液を使用した、局所的に整列したゼラチンナノファイバー(d、e、f;d、eおよびfは倍率が異なる)とによって修飾されたポリプロピレン多孔性微小繊維材料。スケールバー:a、b、c、d、eおよびfは、それぞれ100、10、1、200、20および1μm。
【
図6】3D A(F&C)足場は、接着性ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)の捕捉と増殖とを増強し、整列したナノファイバーおよびチャネルにより細胞の移動および増殖を誘導する。(a)3D AF、W、W&FおよびA(F&C)足場によって捕捉されたHUVECの生存率(MTS吸光係数)。(b)異なる培養期間後の3D AF、W、W&FおよびA(F&C)足場でのHUVECの生存率(MTS吸光係数)。(c)dに示された画像の読み方を示すスキーム。(d)3日間の培養後の3D AF、W、W&FおよびA(F&C)足場でのHUVECの増殖。スケールバー:W、W&F、AFおよび挿入
図1は25μm。A(F&C)は75μm。
【
図7】3D A(F&C)足場内の整列したナノファイバーおよびチャネルは、21日間の培養後に接着性HUVECの増殖、移動および相互作用を誘導することによって、CD31陽性血管様構造の形成を促進する(
図6cは、
図7に示された画像の読み方を示す)。(a)3D A(F&C)、AF、W&FおよびW足場でのHUVECの増殖および相互作用。スケールバー:A(F&C)、W&FおよびWは50μm。AFは25μm。(b)(a)に示すA(F&C)内のチャネルの連続共焦点スライス。スケールバー:50μm。
【
図8】3D A(F&C)足場の整列したナノファイバーおよびチャネルは、非接着性胚性後根神経節ニューロン細胞(non-adherent Embryonic Dorsal Root Ganglion Neuron cells)(DRG)の捕捉を促進し、DRG神経突起の3D増殖を誘導する。(a)3D AF、W、W&FおよびA(F&C)足場によって捕捉されたDRGの生存率(MTS吸光係数)。(b)W、W&FおよびAF足場の構造が、DRGおよびDRG神経突起が足場の表面上で増殖するのを制限することを明らかにする共焦点蛍光顕微鏡画像。スケールバー:WおよびW&F足場は100μm。AF足場は50μm。(c)3D A(F&C)足場では、整列したナノファイバーおよびチャネルがDRG神経突起の3D増殖を誘導する。スケールバー:左から右にそれぞれ75、25および25μm。
【
図9】3D A(F&C)足場は、放射状に整列したチャネルおよびナノファイバーにより、接着性HUVECと非接着性DRGおよびDRG神経突起の両方の増殖、移動および相互作用を誘導する。接着性HUVECは整列したナノファイバーによって主に誘導され、非接着性DRGおよびDRG神経突起は整列したチャネルによって主に誘導される。(a)チャネル壁上の整列したナノファイバーに沿って増殖し、相互作用するHUVEC。(b)HUVECは、チャネル壁上の整列したナノファイバーに沿ってCD31陽性血管様構造に集合する。(c)、(d)および(e)A(F&C)足場でのDRGおよびDRG神経突起の3D増殖を示唆する、整列したチャネルに沿って増殖するDRGおよびDRG神経突起。スケールバーはいずれも25μmである。
【
図10】(a)AFb足場内の整列したナノファイバーおよびナノ粒子を示す代表的なSEM画像。挿入図の高速フーリエ変換(FFT)パターンは、これらのナノファイバーが放射方向によく整列したことを示唆している。スケールバー:左から右にそれぞれ2、1および10μm。(b)液体窒素中のシルクフィブロイン水溶液の方向性凍結により、様々な形状(円柱、チューブおよび粒子または球体を含む)、直径および厚さならびに様々なナノファイバー整列を有する3Dシルクフィブロインナノファイバー足場の作製が可能になる。
【
図11】3Dシルクフィブロイン足場の形態構造に対する凍結温度の影響。(a)SEM画像は、-80℃で凍結したシルクフィブロイン水溶液が、短チャネル/細孔/繊維を有するハイブリッド構造を有する3D足場(W&Fb)をもたらすことを明らかにしている。スケールバー:左から右にそれぞれ200、30および100μm。(b)SEM画像は、-20℃で凍結したシルクフィブロイン水溶液が、壁状多孔性構造を有する3D足場(Wb)を生成することを示している。スケールバー:左から右にそれぞれ200、20および100μm。
【
図12】SF/ゼラチン混合物(a)、アルギン酸ナトリウム(b)から得られたA(F&C)足場の代表的な画像。赤い矢印は、チャネル壁上に整列したナノファイバーを有する足場内のチャネルを示している。スケールバー:aは20μm、挿入
図1、bおよび挿入
図2は2μm。
【
図13】W&Fの(短チャネル/細孔/ナノファイバーを含有する)ハイブリッド構造、およびW 3D足場の壁状多孔質構造のマイクロCT画像。構造の詳細は、
図14に明瞭に示されている。スケールバーはいずれも1000μmである。
【
図14】(a)後処理後の耐水性W&F足場のSEM画像。スケールバー:左から右にそれぞれ100、20および100μm。(b)後処理後の耐水性W足場のSEM画像。スケールバー:左から右にそれぞれ100、20および100μm。
【
図15】3Dシルクフィブロイン足場のATR-FTIRスペクトル。(a)異なる凍結温度、すなわち、-20℃(Wb)、-80℃(W&Fb)および液体窒素(AFb)から得られたシルクフィブロイン足場のATR-FTIRスペクトル。(b)後処理されたシルクフィブロイン足場のATR-FTIRスペクトル。足場(A(F&C)、W&FおよびW)はいずれも、約1517、1622および1700cm
-1にピークを示し、後処理によりシルクフィブロインの構造がランダムコイルからβシートに移行したことを示唆している。
【
図16】(a)3D W、W&FおよびA(F&C)シルクフィブロイン足場の圧縮弾性率。(b)機械的試験後の足場の形態。注目すべきは、機械的試験で圧縮された後、A(F&C)足場は依然として放射状に整列した良好な形態および構造を維持しており、足場の表面には、おそらくいくつかのチャネルの損傷に起因するわずかな崩壊が見られる。
【
図17】21日間の培養後のWおよびW&F足場でのDRGの増殖。WおよびW&F足場でのDRG神経突起の拡大および伸長は、周囲の材料によって遮断され、足場は好適な3D環境をDRGに提供しないことを示唆している。スケールバー:WおよびW&Fはそれぞれ100および25μm。
【発明を実施するための形態】
【0020】
組織工学のための足場の継続的な進化は、天然細胞外マトリックス(ECM)の構造的特徴および機能を再現したいという願望によって推進されてきた。しかし、特に3D足場の開発では、整列したナノファイバーを有し、マクロ孔を相互接続する足場を作成して、異方性組織のECMを模倣することは課題のままである。
【0021】
(整列した繊維を有する足場)
したがって、本発明の一態様では、足場を調製する方法が提供され、上記方法は、繊維形成分子を含む溶液を提供する工程と、溶液を冷却媒体に曝して、冷却媒体と溶液との間の界面で温度差を確立する工程と、温度差の結果として溶液を冷却して、溶液中で溶媒結晶化と繊維の整列とを誘導して、足場を作成する工程とを含む。
【0022】
本発明者らは、繊維形成分子を含む溶液の制御された冷却が、繊維が整列して足場を作成することができる溶媒結晶化を誘導することを発見した。繊維の整列は、溶媒結晶化が形成される方向に整列した繊維を有する精巧な足場が生成され得るように、方向的に制御され得る。
【0023】
本発明の方法は、本明細書で使用される場合、好ましくは、細胞培養、組織修復、組織工学または関連用途のための細胞担体のテンプレートとして好適な繊維の3次元マトリックスを指す任意の「足場」を調製するために使用することができる。好ましくは、足場は、細胞培養と、細胞培養および生存に必要な足場内の生化学的および物理化学的因子の流れとを可能にし、促進するチャネルおよび細孔を含む3D足場である。
【0024】
足場は、繊維形成分子を含む溶液から形成される。本発明の方法に従って足場を調製するために使用される技術は、使用される溶液、繊維形成分子および冷却媒体に応じて決まる。また、使用される技術は、繊維が縦方向に整列しているか、放射状に整列しているかにかかわらず、繊維の整列の方向に影響を及ぼすことも理解されよう。溶液は、直接または間接的に冷却媒体に曝されて、溶液と冷却媒体との間の界面に温度差を確立し得る。特定の実施形態では、繊維形成分子を含む溶液は、事前に容器に収容され、冷却のための溶液に間接的に曝される。
【0025】
あるいは、いくつかの実施形態では、容器を冷却媒体に浸漬し、続いて繊維形成分子を含む溶液を容器に加えて、繊維の整列を誘導してもよい。本発明では、溶液と冷却媒体との間の界面に温度差が設定されるのであれば、任意の好適な容器材料を使用することができる。いくつかの実施形態では、容器材料は、限定するものではないが、ガラス、金属、プラスチック、セラミックまたはそれらの組合せから選択される。
【0026】
特定の実施形態では、繊維形成分子を含む溶液は、冷却媒体に直接曝され得る。例えば、繊維形成分子を含む溶液を冷却媒体に直接滴下、噴霧または注入して、冷却媒体と溶液との間の界面に温度差を確立して、足場内で溶媒結晶化と繊維の整列とを誘導することができる。
【0027】
いずれかの理論に拘束されることを望むものではないが、本発明者らは、溶液と冷却媒体との温度差が結晶の核形成を形成するのに十分な場合に生じる溶媒結晶化によって繊維の整列が制御されると考えている。例えば、溶媒が水である場合、温度差が凍結を引き起こすのに十分であれば氷核が形成され、そのように形成された氷結晶は、溶液と冷却媒体との間の界面から溶液に放射される。溶媒結晶とそれらが形成される方向とは、繊維の整列方向を制御するためのテンプレートとして機能すると考えられている。
【0028】
温度差は、溶媒結晶化の形成と繊維の整列とに必須である。温度差は、溶液と冷却媒体との温度差によって決まる。
【0029】
特定の実施形態では、温度差は、界面での溶媒結晶の核形成を促進するのに十分なものである。溶液と比較して温度差を測定することができる。例えば、溶液が20℃の温度を有し、冷却媒体が-40℃の温度を有した場合、温度差は溶液に対して-60℃になる。特定の実施形態では、温度差は溶液に対して少なくとも-120℃である。特定の実施形態では、温度差は溶液に対して少なくとも-196℃である。特定の実施形態では、温度差は、溶液に対して-20℃~-296℃の範囲にある。特定の実施形態では、温度差は、溶液に対して-80℃~-296℃、または溶液に対して-180℃~-296℃の範囲にある。特定の実施形態では、温度差は、溶液に対して-120℃~-296℃の範囲にある。特定の実施形態では、温度差は、溶液に対して-20℃~-196℃の範囲にあるか、溶液に対して-30℃、-40℃、-50℃、-60℃または-70℃である。特定の実施形態では、温度差は、溶液に対して-80℃~-196℃の範囲にあるか、溶液に対して-90℃または-100℃である。特定の実施形態では、温度差は、溶液に対して-100℃~-196℃の範囲にあるか、溶液に対して-110℃である。特定の実施形態では、温度差は、溶液に対して-120℃~-196℃の範囲にあるか、溶液に対して-130℃、-140℃、-150℃である。特定の実施形態では、温度差は、溶液に対して-150℃~-196℃の範囲にあるか、溶液に対して-160℃である。特定の実施形態では、温度差は、溶液に対して-170℃~-196℃の範囲にあるか、溶液に対して-180℃または-190℃である。
【0030】
繊維の整列の方向は、温度差の方向(すなわち、冷却方向)を調整することによって制御することができる。いくつかの実施形態では、冷却媒体と繊維形成分子を含む溶液との温度差の確立は、溶液と冷却媒体との間の界面から整列した繊維を誘導する。いくつかの実施形態では、冷却媒体と繊維形成分子を含む溶液との温度差の確立は、溶液と冷却媒体との間の界面から一方向に整列した繊維を誘導する。本明細書で使用される用語「一方向に整列した繊維」は、単一の方向に向けられている、足場内の繊維を指す。一方向に整列した繊維の非限定的な例には、互いにほぼ平行な繊維(直線状に整列した)または空間内のある点にほぼ向かって延びる繊維(放射状に整列した)が挙げられる。あらゆる繊維を単一の方向に向けなければならないわけではなく、方向の多少のずれが想定されることを理解されたい。
【0031】
特定の実施形態では、温度差は、溶液に対して周方向に確立されて、足場内で放射状に整列した繊維を誘導する。特定の実施形態では、温度差は、界面の平面に沿って確立されて、足場内で直線状または縦方向に整列した繊維を誘導する。したがって、平面は界面に対して平行または垂直であり得る。
【0032】
関連分野の当業者には理解されるように、温度差は、冷却媒体と繊維形成分子を含む溶液との間の温度範囲の相対的な尺度である。また、繊維の整列を誘導するのに十分な温度を絶対値で表すことも便利であり得る。例えば、繊維の整列のための溶媒結晶の核形成を誘導するための冷却媒体の温度を表すことができる。
【0033】
いくつかの実施形態では、冷却媒体は-196℃未満の温度である。いくつかの実施形態では、冷却媒体は、-80℃~-196℃の温度である。いくつかの実施形態では、冷却媒体は、-80℃または-90℃、-100℃未満の温度である。いくつかの実施形態では、冷却媒体は、-100℃~-196℃または-110℃~-196℃の温度である。いくつかの実施形態では、冷却媒体は、-120℃~-196℃または-130℃~-196℃の温度である。いくつかの実施形態では、冷却媒体は、-140℃~-196℃または-150℃~-196℃の温度である。いくつかの実施形態では、冷却媒体は、-160℃~-196℃、または-170℃~-196℃、または-180℃~-196℃の温度である。
【0034】
また、繊維形成分子を含む溶液の冷却速度が繊維の整列に影響を及ぼす可能性があることも、関連分野の当業者には理解されよう。いくつかの実施形態では、溶液は、0.2℃.s-1~260℃.s-1の速度で冷却される。いくつかの実施形態では、溶液は、5℃.s-1~260℃.s-1または10℃.s-1~260℃.s-1または15℃.s-1~260℃.s-1の速度で冷却される。いくつかの実施形態では、溶液は、20℃.s-1~260℃.s-1または25℃.s-1~260℃.s-1、30℃.s-1~260℃.s-1、35℃.s-1~260℃.s-1または40℃.s-1~260℃.s-1の速度で冷却される。いくつかの実施形態では、溶液は、50℃.s-1~260℃.s-1または60℃.s-1~260℃.s-1または70℃.s-1~260℃.s-1の速度で冷却される。いくつかの実施形態では、溶液は、80℃.s-1~260℃.s-1または90℃.s-1~260℃.s-1、100℃.s-1~260℃.s-1または110℃.s-1~260℃.s-1の速度で冷却される。いくつかの実施形態では、溶液は、120℃.s-1~260℃.s-1または130℃.s-1~260℃.s-1または140℃.s-1~260℃.s-1の速度で冷却される。いくつかの実施形態では、溶液は、150℃.s-1~260℃.s-1または160℃.s-1~260℃.s-1、170℃.s-1~260℃.s-1、180℃.s-1~260℃.s-1、190℃.s-1~260℃.s-1、200℃.s-1~260℃.s-1、210℃.s-1~260℃.s-1、220℃.s-1~260℃.s-1、230℃.s-1~260℃.s-1、240℃.s-1~260℃.s-1または250℃.s-1~260℃.s-1の速度で冷却される。
【0035】
特定の実施形態では、繊維形成分子を含む溶液の試料を冷却媒体に徐々に浸漬して、足場内で繊維の整列を誘導することができる。特定の実施形態では、溶液は、1~15mm.min-1の速度で冷却媒体に浸漬される。特定の実施形態では、溶液は、3~15mm.min-1の速度で冷却媒体に浸漬される。特定の実施形態では、溶液は、1~10mm.min-1の速度で冷却媒体に浸漬される。特定の実施形態では、溶液は、5~10mm.min-1の速度で冷却媒体に浸漬される。特定の実施形態では、溶液は、5~8mm.min-1の速度で冷却媒体に浸漬される。
【0036】
本発明の方法では、任意の好適な冷却媒体を使用して、足場内で繊維の整列を誘導することができる。理論的には、冷却媒体は、冷却媒体の正確な性質に応じて、固体、液体または気体とすることができる。例えば、冷却媒体は、液体窒素、ドライアイス、空気、液体エタン、液体CO2およびそれらの組合せとすることができる。特定の実施形態では、冷却媒体は冷凍庫である。特定の実施形態では、冷却媒体は、テトラクロロエチレン、四塩化炭素、1,3-ジクロロベンゼン、o-キシレン、m-トルイジン、アセトニトリル、ピリジン、m-キシレン、n-オクタン、イソプロピルエーテル、アセトン、酢酸ブチル、プロピルアミンのうちの少なくとも1つと組み合わせたドライアイスである。いくつかの実施形態では、冷却媒体は、酢酸エチル、n-ブタノール、ヘキサン、アセトン、トルエン、メタノール、エチルエーテル、シクロヘキサン、エタノール、エチルエーテル、n-ペンタン、イソペンタンのうちの少なくとも1つと組み合わせた液体窒素である。最も好ましくは、冷却媒体は液体窒素である。
【0037】
繊維の整列の方向のずれが想定される。冷却媒体と繊維形成分子を含む溶液との間の界面の表面法線に対する繊維の整列のずれを表すことは便利であり得る。一実施形態では、繊維は、界面の表面法線に対して0°~30°で整列している。一実施形態では、繊維は、界面の表面法線に対して0°~25°で整列している。一実施形態では、繊維は、界面の表面法線に対して0°~20°で整列している。一実施形態では、繊維は、界面の表面法線に対して0°~15°で整列している。一実施形態では、繊維は、界面の表面法線に対して0°~10°で整列している。一実施形態では、繊維は、界面の表面法線に対して0°~5°で整列している。
【0038】
溶媒結晶の形成は、足場内で繊維整列の制御を提供するテンプレートとして機能し得る。溶媒結晶の直径は、使用する溶媒、冷却速度、および使用する冷却媒体に応じて決まる。本発明の方法では、任意の好適な直径の溶媒結晶を使用して、繊維の整列を誘導することができる。一実施形態では、溶媒結晶化から形成された溶媒結晶は、20nm~5mm、20nm~4mm、20nm~3mm、20nm~2mmまたは20nm~1mmの直径を有する。一実施形態では、溶媒結晶化から形成された溶媒結晶は、1nm~500μm、10nm~400μmまたは10nm~300μmの直径を有する。一実施形態では、溶媒結晶化から形成された溶媒結晶は、10nm~200μmの直径を有する。一実施形態では、溶媒結晶化から形成された溶媒結晶は、10nm~100μmの直径を有する。一実施形態では、溶媒結晶化から形成された溶媒結晶は、10nmから90μm、80μm、70μm、60μm、50μm、40μm、30μm、20μmまたは10μmまでの直径を有する。一実施形態では、溶媒結晶化から形成された溶媒結晶は、10nm~5μmの直径を有する。一実施形態では、溶媒結晶化から形成された溶媒結晶は、100μm~2mmの直径を有する。一実施形態では、溶媒結晶化から形成された溶媒結晶は、10~3000nmの直径を有する。一実施形態では、溶媒結晶化から形成された溶媒結晶は、10~3000nmの直径を有する。一実施形態では、溶媒結晶化から形成された溶媒結晶は、20~2500nmの直径を有する。一実施形態では、溶媒結晶化から形成された溶媒結晶は、20~2000nmの直径を有する。一実施形態では、溶媒結晶化から形成された溶媒結晶は、50~2000nmの直径を有する。一実施形態では、溶媒結晶化から形成された溶媒結晶は、50~1500nmの直径を有する。一実施形態では、溶媒結晶化から形成された溶媒結晶は、50~1000nmの直径を有する。一実施形態では、溶媒結晶化から形成された溶媒結晶は、50~700nmの直径を有する。
【0039】
冷却工程の持続時間は、溶媒結晶の直径と、得られる繊維径とに影響を及ぼし得る。足場内で繊維の整列を誘導するのに十分であれば、任意の好適な持続時間を使用することができる。いくつかの実施形態では、繊維形成分子を含む溶液は10分未満冷却される。いくつかの実施形態では、繊維形成分子を含む溶液は20分未満冷却される。いくつかの実施形態では、繊維形成分子を含む溶液は30分未満冷却される。いくつかの実施形態では、繊維形成分子を含む溶液は1時間未満冷却される。いくつかの実施形態では、繊維形成分子を含む溶液は5分未満冷却される。いくつかの実施形態では、繊維形成分子を含む溶液は1分未満冷却される。
【0040】
関連分野の当業者には理解されるように、本発明の方法によって調製された足場は、溶媒結晶化により形成された溶媒結晶を保持することができる。溶媒結晶は、任意の好適な技術を使用して足場から除去することができる。例えば、本発明の方法により調製された足場は、溶媒結晶を除去するために凍結乾燥させることができる。あるいは、溶媒結晶を冷却後に溶液状態に解凍し、真空または真空乾燥オーブンなどの減圧下で溶媒を除去することができる。いくつかの実施形態では、デシケーターを使用して足場から溶媒結晶を除去することができる。
【0041】
使用される繊維形成分子に応じて、足場は水溶性であり得る。いくつかの実施形態では、足場を処理して耐水性を付与することができる。任意の好適な薬剤を使用して足場を処理して、耐水性を付与することができる。例えば、足場は、エタノール、メタノール、ゲニピン、グルタルアルデヒド、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、塩化カルシウム、水またはそれらの組合せからなる群に曝され得る。当業者であれば、エタノール、メタノール、ゲニピン、グルタルアルデヒド、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、塩化カルシウムまたは水が液相または気相(例えばエタノール溶液またはエタノール蒸気)であり得ることを理解するであろう。特定の実施形態では、足場は耐水性である。
【0042】
他の実施形態では、足場を処理して、整列した繊維間の架橋を誘導することができる。例えば、足場をグルタルアルデヒドまたは電磁放射線に曝して、足場内で架橋を誘導することができる。いくつかの実施形態では、メタノール、エタノール、ゲニピン、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、塩化カルシウム、水、プラズマ放射またはそれらの組合せのうちの少なくとも1つに足場を曝して、足場内で架橋を誘導することができる。当業者であれば、メタノール、エタノール、ゲニピン、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、塩化カルシウムまたは水が液相または気相(例えばエタノール溶液またはエタノール蒸気)であり得ることを理解するであろう。
【0043】
関連分野の当業者には、任意の好適な溶媒を使用して、繊維形成分子を溶解して溶液を形成することができることは明らかであろう。一実施形態では、溶媒は、水、有機溶媒、無機非水溶媒およびそれらの組合せである。一実施形態では、繊維形成分子を含む溶液は水溶液である。溶液が水溶液である場合、結晶化から形成される溶媒結晶は氷結晶であることが理解されよう。
【0044】
好適な有機溶媒は、ペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、1,4-ジオキサン、クロロホルム、ジエチルエーテル、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、アセトン、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ニトロメタン、炭酸プロピレン、n-ブタノール、イソプロパノール、n-プロパノール、エタノール、メタノール、ギ酸、酢酸、ヘキサフルオロイソプロパノール、トリフルオロ酢酸およびそれらの組合せからなる群から選択することができる。
【0045】
好適な無機溶媒は、液体アンモニア、液体二酸化硫黄、塩化スルフリル、塩化フッ化スルフリル、塩化ホスホリル、四酸化二窒素、三塩化アンチモン、五フッ化臭素、フッ化水素、ニート硫酸(neat sulfuric acid)、塩酸、硝酸、リン酸、ホウ酸、フッ化水素酸、臭化水素酸、過塩素酸、ヨウ化水素酸およびそれらの組合せからなる群から選択することができる。
【0046】
特定の実施形態では、繊維形成分子を含む溶液は、2つ以上の混和性溶媒の混合物、例えば、水と水溶性溶媒との混合物、2つ以上の有機溶媒の混合物、または有機物と水溶性溶媒との混合物を含むことができる。
【0047】
溶液に溶解する繊維形成分子の量は、任意の好適な量であり得、関連分野の当業者であれば、溶解量が、繊維形成分子および使用される溶媒の溶解度に依存し得ることを理解するであろう。特定の実施形態では、繊維形成分子を含む溶液は、0.001%~35%w/vの量である。特定の実施形態では、繊維形成分子を含む溶液は、1%~20%w/vの量である。特定の実施形態では、繊維形成分子を含む溶液は、1%~25%w/vの量である。特定の実施形態では、繊維形成分子を含む溶液は、1%~15%w/vの量である。特定の実施形態では、繊維形成分子を含む溶液は、1%~10%w/vの量である。特定の実施形態では、繊維形成分子を含む溶液は、1%~5%w/vの量である。
【0048】
本発明はまた、実質的に整列した繊維の3次元マトリックスを含む多孔性生体模倣足場に関する。いくつかの実施形態では、繊維は一方向に整列している。いくつかの実施形態では、繊維は放射状に整列している。いくつかの実施形態では、繊維は直線状または縦方向に整列している。
【0049】
本発明の足場内の繊維の直径は、使用される溶媒、冷却速度、繊維形成分子および冷却媒体に応じて決まる。特定の実施形態では、繊維の直径は、20~5000nm、20~4000nmまたは20~3000nmである。特定の実施形態では、繊維の直径は、20から2500nm、2000nmまたは1500nmまでである。特定の実施形態では、繊維の直径は20~1000nmである。特定の実施形態では、繊維の直径は50~600nmである。特定の実施形態では、繊維の直径は20から800nmである。特定の実施形態では、繊維の直径は100~500nmである。特定の実施形態では、繊維の直径は300~800nmである。特定の実施形態では、繊維の直径は300~600nmである。
【0050】
また、整列した繊維の長さの観点から繊維を記述することも便利であり得る。特定の実施形態では、整列した繊維は少なくとも50nmの長さを有する。特定の実施形態では、整列した繊維は、50nm~50mmの長さを有する。特定の実施形態では、整列した繊維は、50nm~4mmの長さを有する。特定の実施形態では、整列した繊維は、50nm~2mmの長さを有する。特定の実施形態では、整列した繊維は、50nm~500μmの長さを有する。特定の実施形態では、整列した繊維は、50nm~1000μmの長さを有する。特定の実施形態では、整列した繊維は、100nm~500μmの長さを有する。特定の実施形態では、整列した繊維は、50nm~5000nmの長さを有する。特定の実施形態では、整列した繊維は、50nm~1000nmの長さを有する。特定の実施形態では、整列した繊維は、100nm~500nmの長さを有する。特定の実施形態では、整列した繊維は、50nm~500nmの長さを有する。特定の実施形態では、整列した繊維は、50nm~5mmの長さを有する。特定の実施形態では、整列した繊維は、50nm~10mmの長さを有する。特定の実施形態では、整列した繊維は、50nm~20mmの長さを有する。特定の実施形態では、整列した繊維は、50nm~30mmの長さを有する。特定の実施形態では、整列した繊維は、50nm~40mmの長さを有する。
【0051】
前述のように、本発明の足場は、細胞培養、組織修復、組織工学または関連用途に適した繊維の3次元マトリックスである。足場は、細胞培養、組織修復、組織工学または関連用途に適した任意の直径の細孔を有することができる。特定の実施形態では、足場は、1nm~500μmまたは20nm~500μmの直径の細孔を有する。特定の実施形態では、足場は、20nm~400μmの直径の細孔を有する。特定の実施形態では、足場は、20nm~300μmの直径の細孔を有する。特定の実施形態では、足場は、20nm~200μmの直径の細孔を有する。特定の実施形態では、足場は、20nmから100μm、90μm、80μm、70μm、60μm、50μm、40μm、30μm、20μm、10μmまたは5μmまでの直径の細孔を有する。特定の実施形態では、足場は、20~1500nmの直径の細孔を有する。特定の実施形態では、足場は、50~1000nmの直径の細孔を有する。特定の実施形態では、足場は、20~800nmの直径の細孔を有する。特定の実施形態では、足場は、50~600nmの直径の細孔を有する。特定の実施形態では、足場は、100~600nmの直径の細孔を有する。特定の実施形態では、足場は、20~600nmの直径の細孔を有する。特定の実施形態では、足場は、20~500nmの直径の細孔を有する。
【0052】
本発明の足場はまた、多孔度の観点から便利に説明することができる。足場の多孔度は、使用される繊維形成分子および溶媒に依存し得る。足場の多孔度は、総試料体積に対する空隙体積の比として計算した。したがって、特定の実施形態では、足場は0.01%~95%の多孔度を有する。特定の実施形態では、足場は、20%~95%、30%~95%または40%~95%の多孔度を有する。特定の実施形態では、足場は、40%~90%、50%~90%、60%~90%、70%~90%、80%~90%または85%~90%の多孔度を有する。特定の実施形態では、足場は、40%~80%、40%~70%、40%~60%または40%~50%の多孔度を有する。特定の実施形態では、足場は、60%~80%または65%~75%の多孔度を有する。特定の実施形態では、足場は、30%~60%、30%~50%または30%~40%の多孔度を有する。
【0053】
足場内の整列した繊維の量は変化し得ることが理解されよう。足場内の整列した繊維の量のこの変動は、足場の総乾燥重量に基づいて説明することができる。したがって、いくつかの実施形態では、足場の総乾燥重量に基づいて、足場の少なくとも5%w/wが整列した繊維を含む。いくつかの実施形態では、足場の総乾燥重量に基づいて、足場の少なくとも10%w/w、20%w/w、30%w/w、40%w/w、50%w/wまたは60%w/wが整列した繊維を含む。いくつかの実施形態では、足場の総乾燥重量に基づいて、足場の少なくとも70%w/wが整列した繊維を含む。いくつかの実施形態では、足場の総乾燥重量に基づいて、足場の少なくとも80%w/wが整列した繊維を含む。いくつかの実施形態では、足場の総乾燥重量に基づいて、足場の少なくとも90%w/wが整列した繊維を含む。いくつかの実施形態では、足場の総乾燥重量に基づいて、足場は50%~90%w/wの整列した繊維から構成される。いくつかの実施形態では、足場の総乾燥重量に基づいて、足場は60%~90%w/wの整列した繊維から構成される。いくつかの実施形態では、足場の総乾燥重量に基づいて、足場は70%~90%w/wの整列した繊維から構成される。いくつかの実施形態では、足場の総乾燥重量に基づいて、足場は80%~90%w/wの整列した繊維から構成される。
【0054】
関連分野の当業者には理解されるように、足場は任意の好適な形状をとることができ、例えば、球体、立方体、角柱、繊維、棒、四面体、チューブまたは不規則形状粒子の形状であり得る。関連分野の当業者には理解されるように、上述の容器を使用することによって足場の形状を制御することができ、容器の形状は典型的には、最終的に生成される足場の形状を決定することができる。
【0055】
典型的には、円筒状の試料管に繊維形成分子の溶液を提供することによって、放射状に整列した繊維足場を調製することができる。(液体窒素などの)冷却媒体中に試料管を浸漬して、冷却媒体と溶液との間の界面に温度差を周方向に確立して、足場内で放射状に整列した繊維の形成を誘導することができる。
【0056】
あるいは、平坦な底部を有する円筒状の試料管に繊維形成分子の溶液を提供することによって、直線状または縦方向に整列した繊維足場を典型的に調製することができる。(液体窒素などの)冷却媒体中に平坦な底部端部から試料管をゆっくりと降下させて、底部に実質的に平行な平面に沿って冷却媒体と溶液との間の界面に温度差を確立して、足場内で直線状または縦方向に整列した繊維の形成を誘導することができる。
【0057】
足場は、最終的に生成される足場の所望のサイズ、または使用される場合は容器のサイズによって部分的に決定されるサイズを有する任意の好適なサイズとすることができる。特定の実施形態では、足場のサイズは、ブレードまたはレーザーを使用して足場を切断するなどの機械的処理によって制御することができる。他の実施形態では、足場が形成されると、所望の足場サイズに到達した後に冷却工程が終了するように、繊維形成分子を含む溶液の冷却を制御することによって足場が形成される。
【0058】
本発明の足場は、典型的には少なくとも1次元で10cm未満である。一実施形態では、足場は、少なくとも1次元で20nm~10cmのサイズを有する。一実施形態では、足場は、少なくとも1次元で1mm~10cmのサイズを有する。一実施形態では、足場は、少なくとも1次元で5mm~8cmのサイズを有する。一実施形態では、足場は、少なくとも1次元で5mm~5cmのサイズを有する。一実施形態では、足場は、少なくとも1次元で1mm~3cmのサイズを有する。一実施形態では、足場は、少なくとも1次元で1mm~2cmのサイズを有する。一実施形態では、足場は、少なくとも1次元で1mm~1cmのサイズを有する。
【0059】
特定の実施形態では、本発明の足場は、5~5000kPaの圧縮弾性率を有する。特定の実施形態では、本発明の足場は、5kPaから4500kPa、4000kPa、3500kPa、3000kPa、2500kPa、2000kPa、1500kPa、1000kPa、500kPa、400kPa、300kPaまたは200kPaまでの圧縮弾性率を有する。特定の実施形態では、本発明の足場は、20~160kPaの圧縮弾性率を有する。特定の実施形態では、足場は、20~140kPaの圧縮弾性率を有する。特定の実施形態では、足場は、20~120kPaの圧縮弾性率を有する。特定の実施形態では、足場は、40~100kPaの圧縮弾性率を有する。特定の実施形態では、足場は、60~100kPaの圧縮弾性率を有する。特定の実施形態では、足場は、70~100kPaの圧縮弾性率を有する。特定の実施形態では、足場は、80~100kPaの圧縮弾性率を有する。
【0060】
(整列した繊維およびチャネルを有する足場)
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、足場を溶液または溶媒に曝し、続いて追加の冷却工程を行って足場内で溶媒結晶化およびチャネルを誘導することをさらに含むことができる。いくつかの実施形態では、チャネルは、整列した繊維と実質的に共整列している。いくつかの実施形態では、チャネルはマイクロチャネルまたはマクロチャネルであり得る。
【0061】
追加の冷却工程は、足場内でチャネルを誘導するのに適した任意の温度であり得ることを理解されたい。一実施形態では、追加の冷却工程は、-5℃~-196℃の温度である。一実施形態では、追加の冷却工程は、-10℃~-196℃の温度である。一実施形態では、追加の冷却工程は、-5℃~-80℃の温度である。一実施形態では、追加の冷却工程は、-10℃~-80℃の温度である。一実施形態では、追加の冷却工程は、-10℃~-60℃の温度である。一実施形態では、追加の冷却工程は、-10℃~-40℃の温度である。一実施形態では、追加の冷却工程は、-10℃~-30℃の温度である。一実施形態では、追加の冷却工程は、-10℃~-25℃、-11℃~-25℃、-12℃~-25℃、-13℃~-25℃、-14℃~-25℃、-15℃~-25℃、-16℃~-25℃、-17℃~-25℃、-18℃~-24℃、-18℃~-23℃、-18℃~-22℃または-19℃~-21℃の温度である。
【0062】
本発明者らは、追加の冷却工程から形成された溶媒結晶の形成により、足場内でチャネル形成が誘導されると考えている。いずれかの理論に拘束されることを望むものではないが、本発明者らは、追加の冷却工程に高温を使用すると、大きな溶媒結晶が誘導されると考えている。一実施形態では、追加の冷却工程中に形成される溶媒結晶は、20nm~4mmの直径を有する。一実施形態では、追加の冷却工程中に形成される溶媒結晶は、100μm~2mmの直径を有する。一実施形態では、追加の冷却工程中に形成される溶媒結晶は、50nm~1000nmの直径を有する。一実施形態では、追加の冷却工程中に形成される溶媒結晶は、100μm~2mmの直径を有する。一実施形態では、追加の冷却工程中に形成される溶媒結晶は、100μm~1000μmの直径を有する。一実施形態では、追加の冷却工程中に形成される溶媒結晶は、500μm~1000μmの直径を有する。
【0063】
理解されるように、追加の冷却工程の持続時間は、溶媒結晶の直径と、得られるチャネルの直径とに影響を及ぼし得る。足場内でチャネル形成を誘導するのに十分であれば、任意の好適な持続時間を使用することができる。いくつかの実施形態では、追加の冷却工程は、5分~96時間実行される。いくつかの実施形態では、追加の冷却工程は、10分~60時間実行される。いくつかの実施形態では、追加の冷却工程は、1時間~96時間実行される。いくつかの実施形態では、追加の冷却工程は、1時間~60時間実行される。いくつかの実施形態では、追加の冷却工程は、12時間~50時間実行される。いくつかの実施形態では、追加の冷却工程は、24時間~48時間実行される。いくつかの実施形態では、追加の冷却工程は、36時間~50時間実行される。いくつかの実施形態では、追加の冷却工程は、48時間~60時間実行される。
【0064】
前述のように、特定の実施形態では、足場はチャネルをさらに含む。チャネルの直径は、繊維形成分子、溶媒、追加の冷却工程の持続時間、および溶媒結晶の直径に応じて異なり得る。一実施形態では、チャネルは、20nm~2cm、20nm~1cm、20nm~500μm、20nm~400μm、20nm~300μm、20nm~200μmまたは20nm~100μmの直径を有する。一実施形態では、チャネルは、10μm~4mm、10μm~3mm、10μm~2mmまたは10μm~1mmの直径を有する。いくつかの実施形態では、チャネルは、20nm~4mmの直径を有する。いくつかの実施形態では、チャネルは、10μm~2mmの直径を有する。いくつかの実施形態では、チャネルは、50μm~1mmの直径を有する。いくつかの実施形態では、チャネルは、100μm~1000μmの直径を有する。いくつかの実施形態では、チャネルは、100μm~800μmの直径を有する。いくつかの実施形態では、チャネルは、100μm~600μmの直径を有する。いくつかの実施形態では、チャネルは、100μm~400μmの直径を有する。いくつかの実施形態では、チャネルは、20nm~2mmの直径を有する。いくつかの実施形態では、チャネルは、20nm~1mmの直径を有する。いくつかの実施形態では、チャネルは、400μm~1000μmの直径を有する。いくつかの実施形態では、チャネルは、400μm~800μmの直径を有する。
【0065】
有利には、本発明者らは、足場が足場内に整列した繊維およびチャネルを含む実施形態では、本発明の足場が、整列した繊維を含むがチャネルを有しない足場よりも有意に高い細胞生存率を有したことを発見した。いくつかの実施形態では、整列した繊維およびチャネルを含む足場は、改善された細胞捕捉および増殖を示した。いくつかの実施形態では、整列した繊維および共整列したチャネルは、細胞の移動および組織の浸潤を誘導し、したがって、損傷組織の再生または機能再確立を促進することができる。本発明の足場は、創傷の修復に有用であり得(組織の放射状増殖は創傷閉鎖を支援し得る)、亀裂の入った骨の修復を支援し得る。
【0066】
(繊維形成分子)
本発明の足場およびその調製方法は、任意の好適な繊維形成分子を使用して調製することができる。いくつかの実施形態では、繊維形成分子は、天然ポリマー、合成ポリマーおよびそれらの組合せからなる群から選択される。
【0067】
天然ポリマーには、多糖類、ポリペプチド、糖タンパク質ならびにそれらの誘導体およびそれらのコポリマーが挙げられ得る。多糖類には、寒天、アルジネート、キトサン、ヒアルロナン、セルロース系ポリマー(例えば、セルロースおよびその誘導体、ならびにリグニンなどのセルロース生成副産物)およびデンプンポリマーが挙げられ得る。ポリペプチドには、シルクフィブロイン、リゾチーム、コラーゲン、ケラチン、カゼイン、ゼラチンおよびそれらの誘導体などの様々なタンパク質が挙げられ得る。多糖類およびポリペプチドなどの天然ポリマーの誘導体には、様々な塩、エステル、エーテルおよびグラフトコポリマーが挙げられ得る。例示的な塩は、ナトリウム、亜鉛、鉄およびカルシウム塩から選択され得る。
【0068】
特定の実施形態では、天然ポリマーは、シルクフィブロイン、アルジネート、ウシ血清アルブミン、コラーゲン、キトサン、ゼラチン、セリシン、ヒアルロン酸、デンプンおよびそれらの誘導体のうちの少なくとも1つからなる群から選択される。特定の実施形態では、天然ポリマーは、シルクフィブロイン、アルジネート、ゼラチン、シルクフィブロイン/アルジネート、シルクフィブロイン/ウシ血清アルブミン、シルクフィブロイン/コラーゲン、シルクフィブロイン/キトサン、シルクフィブロイン/ゼラチンおよびそれらの誘導体からなる群から選択される。
【0069】
合成ポリマーには、ビニルポリマー、例えば、限定するものではないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(塩化ビニル)、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ(α-メチルスチレン)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、ポリ(イソブチレン)、ポリ(アクリロニトリル)、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(アクリルアミド)、ポリ(メタクリルアミド)、ポリ(1-ペンテン)、ポリ(1,3-ブタジエン)、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(2-ビニルピリジン)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(スチレン)、ポリ(スチレンスルホネート)ポリ(ビニリデンヘキサフルオロプロピレン)、1,4-ポリイソプレンおよび3,4-ポリクロロプレンが挙げられ得る。好適な合成ポリマーにはまた、非ビニルポリマー、例えば、限定するものではないが、ポリ(エチレンオキシド)、ポリホルムアルデヒド、ポリアセトアルデヒド、ポリ(3-プロピオネート)、ポリ(10-デカノエート)、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリカプロラクタム、ポリ(11-ウンデカノアミド)、ポリ(ヘキサメチレンセバカミド)、ポリ(m-フェニレンテレフタレート)、ポリ(テトラメチレン-m-ベンゼンスルホンアミド)が挙げられ得る。前述のもののいずれかのコポリマーも使用され得る。
【0070】
本発明のプロセスに使用される合成ポリマーは、以下のポリマークラスのいずれか、すなわち、ポリオレフィン、ポリエーテル(あらゆるエポキシ樹脂、ポリアセタール、ポリ(オルトエステル)、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリ(アルキレンオキシド)およびポリ(アリーレンオキシド)を含む)、ポリアミド(ポリ尿素を含む)、ポリアミドイミド、ポリアクリレート、ポリベンゾイミダゾール、ポリエステル(例えば、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸-グリコール酸共重合体(PLGA))、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリイミド、ポリアミン、ポリヒドラジド、フェノール樹脂、ポリシラン、ポリシロキサン、ポリカルボジイミド、ポリイミン(例えば、ポリエチレンイミン)、アゾポリマー、ポリスルフィド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、オリゴマーシルセスキオキサンポリマー、ポリジメチルシロキサンポリマーおよびそれらのコポリマーに分類され得る。
【0071】
いくつかの実施形態では、官能化合成ポリマーを使用してもよい。そのような実施形態では、合成ポリマーは、1つ以上の官能基によって修飾されてもよい。官能基の例には、ボロン酸、アルキンまたはアジド官能基が挙げられる。そのような官能基は、一般に、ポリマーに共有結合する。官能基は、ポリマーがさらに反応を受けること、または繊維に追加の特性を付与することを可能にし得る。
【0072】
いくつかの実施形態では、繊維形成液は、水溶性もしくは水分散性ポリマーまたはその誘導体を含む。いくつかの実施形態では、繊維形成液は、水性溶媒に溶解した水溶性もしくは水分散性ポリマーまたはその誘導体を含むポリマー溶液である。ポリマー溶液などの繊維形成液中に存在し得る例示的な水溶性または水分散性ポリマーは、ポリペプチド、アルジネート、キトサン、デンプン、コラーゲン、ポリウレタン、ポリアクリル酸、ポリアクリレート、ポリアクリルアミド(ポリ(N-アルキルアクリルアミド)、例えば、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)を含む)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリアリルアミン、ポリエチレンイミン、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(乳酸)、ポリ(エチレン-co-アクリル酸)およびそれらのコポリマーならびにそれらの組合せからなる群から選択され得る。水溶性または水分散性ポリマーの誘導体には、その様々な塩が挙げられ得る。
【0073】
いくつかの実施形態では、繊維形成液は、有機溶媒可溶性ポリマーを含む。いくつかの実施形態では、繊維形成液は、有機溶媒に溶解した有機溶媒可溶性ポリマーを含むポリマー溶液である。ポリマー溶液などの繊維形成液中に存在し得る例示的な有機溶媒可溶性ポリマーには、ポリ(スチレン)およびポリエステル、例えば、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(カプロラクトン)およびそれらのコポリマー、例えば、ポリ乳酸-グリコール酸共重合体が挙げられる。
【0074】
いくつかの実施形態では、繊維形成液はハイブリッドポリマーを含む。ハイブリッドポリマーは、無機/有機ハイブリッドポリマーであってよい。例示的なハイブリッドポリマーには、ポリシロキサン、例えば、ポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)が挙げられる。
【0075】
いくつかの実施形態では、繊維形成液は、ポリペプチド、アルジネート、キトサン、デンプン、コラーゲン、シルクフィブロイン、ポリウレタン、ポリアクリル酸、ポリアクリレート、ポリアクリルアミド、ポリエステル、ポリオレフィン、ボロン酸官能化ポリマー、ポリビニルアルコール、ポリアリルアミン、ポリエチレンイミン、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(乳酸)、ポリエーテルスルホンおよび無機ポリマーからなる群から選択される少なくとも1つのポリマーを含む。
【0076】
いくつかの実施形態では、繊維形成液は、2つ以上のポリマーの混合物、例えば、熱応答性合成ポリマー(例えば、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド))と天然ポリマー(例えば、ポリペプチド)との混合物を含む。ポリマーブレンドの使用は、様々な物理的特性(例えば、熱応答性および生体適合性または生分解性の特性)を有するポリマー繊維を作製するための手段を提供するため有利であり得る。したがって、本発明のプロセスを使用して、ポリマーの適切なブレンドまたは混合物を選択することにより、調整可能なまたは調整された物理的特性を有する整列した繊維を形成することができる。
【0077】
本発明のプロセスに使用されるポリマーには、前述のポリマーのいずれかのホモポリマー、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー、交互コポリマー、ランダムトリポリマー、ブロックトリポリマー、交互トリポリマー、それらの誘導体(例えば、それらの塩、グラフトコポリマー、エステルまたはエーテル)などが挙げられ得る。ポリマーは、多官能性架橋剤の存在下で架橋することができてもよい。
【0078】
本プロセスに使用される繊維形成分子は、任意の好適な分子量のものであり得、本発明の方法が足場内で繊維を整列させることができるのであれば、分子量は制限要因と考えられない。数平均分子量は、数百ダルトン(例えば、250Da)から数千ダルトン超(例えば、10,000Da超)の範囲であり得るが、本発明から逸脱することなく任意の分子量を使用することができる。いくつかの実施形態では、数平均分子量は、約50から約1×107の範囲であってよい。いくつかの実施形態では、数平均分子量は、約1×104から約1×107の範囲であってよい。
【0079】
(添加剤)
本発明の足場、およびその調製方法は、添加剤を含むことができる。任意の好適な添加剤を加えて、所望の生物活性を有する、繊維形成分子の溶解度を改善する、または足場内で繊維および/またはチャネルの形成を促進するなどの機能を足場に付与することができる。いくつかの実施形態では、添加剤は、薬物、増殖因子、ポリマー、界面活性剤、化学物質、粒子、ポロゲンおよびそれらの組合せからなる群から選択される。
【0080】
添加剤は、当技術分野で知られている任意の方法で本発明の足場に加えることができる。一実施形態では、繊維形成分子を含む溶液に添加剤を溶解または分散させることによって、足場に添加剤を加えることができる。本発明の方法を使用して形成された足場は、冷却工程中に添加剤をカプセル化する。別の実施形態では、追加の冷却工程中に足場に添加剤を加えることができる。添加剤を含む溶液に足場を曝すことによって添加剤を加え、続いて追加の冷却工程を行って足場内で溶媒結晶化およびチャネルを誘導することができる。別の実施形態では、溶液中の一定量の添加剤が足場の細孔に吸着、吸収または分散されるように、溶液中の添加剤が足場と接触させられる。透析などの当技術分野で知られている任意の好適な技術によって、溶液中の添加剤の吸着または吸収を足場に加えることができる。特定の実施形態では、化学反応(所望の添加剤を導入するための足場での触媒作用など)によって、足場に添加剤を加えることができる。
【0081】
本明細書で使用される用語「薬物」は、診断、治療、予防医学または獣医学の目的のために生物に投与される分子、分子群、複合体、物質またはそれらの誘導体を指す。
【0082】
薬物は、いくつかある機能の中でも、感染または炎症を制御し、細胞増殖および組織再生を増強し、腫瘍増殖を制御し、鎮痛剤として作用し、抗細胞接着を促進し、骨増殖を増強するように作用することができる。他の好適な薬物には、抗ウイルス剤、ホルモン、抗体または治療用タンパク質が挙げられ得る。他の薬物にはプロドラッグが挙げられ、プロドラッグとは、投与時に生物学的に活性ではないが、対象への投与後に代謝または他の何らかの機構により薬物に変換される薬剤である。
【0083】
薬物にはまた、生物活性効果を生じる核酸および核酸を含む化合物、例えばデオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)、または例えばDNAナノプレックスを含むそれらの混合物もしくは組合せも具体的に挙げられ得る。薬物には、本明細書に開示されているカテゴリーおよび特定の例が挙げられる。カテゴリーが特定の例によって限定されることは意図されない。当業者であれば、カテゴリー内に含まれ、本発明に従って有用な多数の他の化合物も認識するであろう。
【0084】
薬物の例には、放射線増感剤、ステロイド、キサンチン、ベータ-2-アゴニスト気管支拡張剤、抗炎症剤、鎮痛剤、カルシウムアンタゴニスト、アンジオテンシン変換酵素阻害剤、ベータ遮断薬、中枢作用性アルファアゴニスト、アルファ-1-アンタゴニスト、抗コリン剤/鎮痙剤、バソプレッシン類似体、抗不整脈剤、抗パーキンソン病剤、抗狭心症剤/降圧剤、抗凝固剤、抗血小板剤、鎮静剤、抗不安剤、ペプチド性薬剤、生体高分子剤、抗腫瘍剤、緩下剤、止痢剤、抗微生物剤、抗真菌剤、ワクチン、タンパク質または核酸が挙げられる。他の実施形態では、薬物は、クマリン、アルブミン、ステロイド、例えば、ベタメタゾン、デキサメタゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、プレドニゾン、トリアムシノロン、ブデソニド、ヒドロコルチゾンおよび薬学的に許容されるヒドロコルチゾン誘導体;キサンチン、例えば、テオフィリンおよびドキソフィリン;ベータ-2-アゴニスト気管支拡張剤、例えば、サルブタモール、フェンテロール、クレンブテロール、バンブテロール、サルメテロール、フェノテロール;抗炎症剤、例えば、抗喘息抗炎症剤、抗関節炎抗炎症剤および非ステロイド性抗炎症剤(これらの例には、限定するものではないが、硫化物、メサラミン、ブデソニド、サラゾピリン、ジクロフェナク、薬学的に許容されるジクロフェナク塩、ニメスリド、ナプロキセン、アセトミノフェン、イブプロフェン、ケトプロフェンおよびピロキシカムが挙げられる);鎮痛剤、例えば、サリチレート;カルシウムチャネル遮断薬、例えば、ニフェジピン、アムロジピンおよびニカルジピン;アンジオテンシン変換酵素阻害剤、例えば、カプトプリル、ベナゼプリル塩酸塩、ホシノプリルナトリウム、トランドラプリル、ラミプリル、リシノプリル、エナラプリル、キナプリル塩酸塩およびモエキシプリル塩酸塩;ベータ遮断薬(すなわち、ベータアドレナリン遮断剤)、例えば、ソタロール塩酸塩、チモロールマレイン酸塩、エスモロール塩酸塩、カルテオロール、プロパノロール塩酸塩、ベタキソロール塩酸塩、ペンブトロール硫酸塩、メトプロロール酒石酸塩、メトプロロールコハク酸塩、アセブトロール塩酸塩、アテノロール、ピンドロールおよびビソプロロールフマル酸塩;中枢作用性アルファ-2-アゴニスト、例えば、クロニジン;アルファ-1-アンタゴニスト、例えば、ドキサゾシンおよびプラゾシン;抗コリン剤/鎮痙剤、例えば、ジサイクロミン塩酸塩、スコポラミン臭化水素酸塩、グリコピロレート、臭化クリジニウム、フラボキサートおよびオキシブチニン;バソプレッシン類似体、例えば、バソプレッシンおよびデスモプレシン;抗不整脈剤、例えば、キニジン、リドカイン、トカイニド塩酸塩、メキシレチン塩酸塩、ジゴキシン、ベラパミル塩酸塩、プロパフェノン塩酸塩、フレカイニド酢酸塩、プロカインアミド塩酸塩、モリシジン塩酸塩およびジソピラミドリン酸塩;抗パーキンソン病剤、例えば、ドーパミン、L-ドパ/カルビドパ、セレギリン、ジヒドロエルゴクリプチン、ペルゴリド、リスリド、アポモルフィンおよびブロモクリプチン;抗狭心症剤および降圧剤、例えば、一硝酸イソソルビド、二硝酸イソソルビド、プロプラノロール、アテノロールおよびベラパミル;抗凝固剤および抗血小板剤、例えば、クマジン、ワルファリン、アセチルサリチル酸およびチクロピジン;鎮静剤、例えば、ベンゾジアザピンおよびバルビツレート;抗不安剤、例えば、ロラゼパム、ブロマゼパムおよびジアゼパム;ペプチド性薬剤および生体高分子剤、例えば、カルシトニン、ロイプロリドおよび他のLHRHアゴニスト、ヒルジン、シクロスポリン、インスリン、ソマトスタチン、プロチレリン、インターフェロン、デスモプレシン、ソマトトロピン、チモペンチン、ピドチモド、エリスロポエチン、インターロイキン、メラトニン、顆粒球/マクロファージ-CSF、およびヘパリン;抗腫瘍剤、例えば、エトポシド、リン酸エトポシド、シクロホスファミド、メトトレキサート、5-フルオロウラシル、ビンクリスチン、ドキソルビシン、シスプラチン、ヒドロキシ尿素、ロイコボリンカルシウム、タモキシフェン、フルタミド、アスパラギナーゼ、アルトレタミン、ミトタンおよびプロカルバジン塩酸塩;緩下剤、例えば、センナ濃縮物、カサントラノール、ビサコジルおよびピコスルファートナトリウム;止痢剤、例えば、ジフェノキシン塩酸塩、ロペラミド塩酸塩、フラゾリドン、ジフェノキシレート塩酸塩および微生物;ワクチン、例えば、細菌ワクチンおよびウイルスワクチン;抗微生物剤、例えば、ペニシリン、セファロスポリンおよびマクロライド、抗真菌剤、例えば、イミダゾール系誘導体およびトリアゾール系誘導体;ならびに核酸、例えば、生体タンパク質をコードするDNA配列、およびアンチセンスオリゴヌクレオチドであり得る。
【0085】
本発明に適した添加剤としての増殖因子は、細胞の成長、増殖、治癒または分化を刺激することができる。増殖因子は、タンパク質またはステロイドホルモンであり得る。例えば、増殖因子は、骨細胞分化を刺激する骨形成タンパク質であり得る。さらに、線維芽細胞増殖因子および血管内皮増殖因子は、血管分化(血管新生)を刺激することができる。
【0086】
増殖因子は、アドレノメデュリン、アンジオポエチン、自己分泌型細胞運動刺激因子、骨形成タンパク質、毛様体神経栄養因子ファミリー(毛様体神経栄養因子、白血病抑制因子、インターロイキン-6など)、コロニー刺激因子(マクロファージコロニー刺激因子、顆粒球コロニー刺激因子および顆粒球マクロファージコロニー刺激因子など)、上皮増殖因子、エフリン(エフリンA1、エフリンA2、エフリンA3、エフリンA4、エフリンA5、エフリンB1、エフリンB2およびエフリンB3など)、エリスロポエチン、線維芽細胞増殖因子(線維芽細胞増殖因子1、線維芽細胞増殖因子2、線維芽細胞増殖因子3、線維芽細胞増殖因子4、線維芽細胞増殖因子5、線維芽細胞増殖因子6、線維芽細胞増殖因子7、線維芽細胞増殖因子8、線維芽細胞増殖因子9、線維芽細胞増殖因子10、線維芽細胞増殖因子11、線維芽細胞増殖因子12、線維芽細胞増殖因子13、線維芽細胞増殖因子14、線維芽細胞増殖因子15、線維芽細胞増殖因子16、線維芽細胞増殖因子17、線維芽細胞増殖因子18、線維芽細胞増殖因子19、線維芽細胞増殖因子20、線維芽細胞増殖因子21、線維芽細胞増殖因子22および線維芽細胞増殖因子23など)、ウシ胎仔ソマトトロピン(foetal bovine somatotrophin)、リガンドのGDNFファミリー(グリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF)、ニュールツリン、パーセフィンおよびアルテミンなど)、増殖分化因子-9、肝細胞増殖因子、肝癌細胞由来増殖因子、インスリン、インスリン様増殖因子(インスリン様増殖因子-1およびインスリン様増殖因子-2など)、インターロイキン(IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6およびIL-7など)、ケラチノサイト増殖因子、遊走刺激因子、マクロファージ刺激タンパク質、ミオスタチン、ニューレグリン(ニューレグリン1、ニューレグリン2、ニューレグリン3およびニューレグリン4など)、ニューロトロフィン(脳由来神経栄養因子、神経成長因子、ニューロトロフィン-3、ニューロトロフィン-4など)、胎盤増殖因子、血小板由来増殖因子、レナラーゼ、T細胞増殖因子、トロンボポエチン、形質転換増殖因子(形質転換増殖因子アルファおよび形質転換増殖因子ベータなど)、腫瘍壊死因子アルファ、血管内皮増殖因子およびそれらの組合せからなる群から選択され得る。
【0087】
足場はまた、保存剤、湿潤剤、乳化剤および分散剤などのアジュバントを含有することができる。微生物の作用の防止は、様々な抗細菌剤および抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸などを含めることによって確実にすることができる。糖、塩化ナトリウムなどの等張剤を含めることも望ましい場合がある。
【0088】
関連分野の当業者であれば、本発明の添加剤として好適なポリマーは、繊維形成分子に関連して既に上述したポリマーであり得ることを理解するであろう。
【0089】
本発明に適した添加剤としての界面活性剤は、繊維形成分子の溶解度を高めることができる。いずれかの理論に拘束されることを望むものではないが、本発明者らは、界面活性剤が繊維形成分子の自己凝集を低減して、繊維形成分子を含む溶液の溶解度を高めることができると考えている。一実施形態では、界面活性剤は、アニオン性、カチオン性、双性イオン性または非イオン性である。一実施形態では、界面活性剤は、スルフェート、スルホネート、ホスフェート、カルボキシレート、アミン、アンモニウム、アルコール、エーテルおよびそれらの組合せからなる群から選択される官能基を含む。一実施形態では、界面活性剤は、ステアリン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、臭化セトリモニウム、4-(5-ドデシル)ベンゼンスルホネート、3-[(3-コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-1-プロパンスルホネート、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルコリン、オクタエチレングリコールモノドデシルエーテル、ペンタエチレングリコールモノドデシルエーテル、デシルグルコシド、ラウリルグルコシド、オクチルグルコシド、トリトンX-100、ノノキシノール-9、ラウリン酸グリセリル、ポリソルベート、ドデシルジメチルアミンオキシド、ポリソルベート(Tween 20およびTween 80として市販されているポリソルベート20およびポリソルベート80など)、コカミドモノエタノールアミン、コカミドジエタノールアミン、ポロキサマー、ポリエトキシル化獣脂アミンおよびそれらの組合せからなる群から選択される。
【0090】
(整列した繊維および中央チャネルを有する足場)
特定の実施形態では、本発明の足場は、中央チャネルをさらに含むことができる。中央チャネルは、足場の縦軸などの足場の軸に沿って誘導することができる。中央チャネルは、当技術分野で知られている任意の好適な技術を使用して形成することができる。特定の実施形態では、中央チャネルは、ブレードまたはレーザーを使用して足場を切断してチャネルを形成するなどの機械的処理によって形成することができる。他の実施形態では、足場が形成されると、足場が完全に形成されて中央チャネルが生じる前に冷却工程が終了するように、繊維形成分子を含む溶液の冷却を制御することによって中央チャネルが形成される。あるいは、中央チャネルの形状を規定する内側チューブまたはシリンダーを有する容器として円筒チューブを使用して繊維形成溶液を冷却すると、中央チャネルが形成され得る。
【0091】
中央チャネルは、任意の好適な寸法とすることができる。特定の実施形態では、中央チャネルは、0.1mm、0.4mm、0.8mm、1cmまたは2cmよりも大きい直径を有する。特定の実施形態では、中央チャネルは、0.1mm~2cmの直径を有する。特定の実施形態では、中央チャネルは、0.1mm~1cmの直径を有する。特定の実施形態では、中央チャネルは、0.1~4mmの直径を有する。特定の実施形態では、中央チャネルは、0.2~4mmの直径を有する。特定の実施形態では、中央チャネルは、0.1~2mmの直径を有する。特定の実施形態では、中央チャネルは、0.4~2mmの直径を有する。特定の実施形態では、中央チャネルは、0.4~1mmの直径を有する。特定の実施形態では、中央チャネルは、0.4~0.8mmの直径を有する。
【0092】
(細胞培養、細胞増殖および組織修復)
本発明の足場は、バルク3D足場での細胞増殖、細胞培養および組織形成を促進するのに好適であり得る。したがって、本発明の足場に結合する細胞は、任意の望ましい細胞生存率を有し、所望の用途に基づいて決定される。当業者によって理解されるように、細胞は、当技術分野で知られている任意の好適な技術を使用して、本発明の足場上で培養され得る。典型的には、細胞は、足場の形成後に足場上で培養され得る。
【0093】
本発明の足場上での細胞培養には、任意の好適な細胞を使用することができることを理解されたい。使用される細胞の種類は、足場の用途に基づいて決定される。特定の実施形態では、本発明は、細胞増殖を促進する方法であって、本発明の足場内で細胞を捕捉および培養することを含む方法を提供することができる。特定の実施形態では、細胞は、神経細胞、皮膚細胞、線維芽細胞、血管細胞、内皮細胞、骨細胞、筋細胞、心細胞、角膜細胞、鼓膜細胞、癌細胞およびそれらの組合せから選択される。特定の実施形態では、細胞は、神経細胞、線維芽細胞、内皮細胞、幹細胞、前駆細胞およびそれらの組合せから選択される。
【0094】
いくつかの実施形態では、細胞増殖を促進する方法は、神経の修復または再生を促進することを含み、ここで細胞は神経細胞である。いくつかの実施形態では、細胞増殖を促進する方法は、血管の修復または形成を促進することを含み、ここで細胞は内皮細胞である。
【0095】
いくつかの実施形態では、本発明は、細胞増殖を促進するためのバイオメディカルインプラントの調製における本発明の足場の使用であって、細胞を捕捉および培養することを含む使用を提供することができる。いくつかの実施形態では、使用は神経の修復または再生を促進することを含み、ここで細胞は神経細胞である。いくつかの実施形態では、使用は血管の修復または形成を促進することを含み、ここで細胞は内皮細胞である。
【0096】
関連分野の当業者には明らかであるように、足場は、細胞培養、組織再生または組織修復のための任意の好適な用途に使用することができる。いくつかの実施形態では、足場はバイオメディカルインプラントとして使用することができる。いくつかの実施形態では、足場は人工血管として使用することができる。特定の実施形態では、足場は、創傷の治癒、骨損傷の修復、損傷組織の治療、薬物送達またはインビトロ細胞培養に使用することができる。足場は、細胞培養ディッシュ、プレートおよびフラスコ上に足場のコーティングまたは層を提供することによって、インビトロ細胞培養のための基質として使用することができる。有利には、繊維が放射状に整列している実施形態では、放射状繊維が創傷閉鎖を促進することができるため、組織または創傷修復に足場を使用することができる。
【0097】
一実施形態では、本発明は、組織損傷を受け、組織の修復および/または再生を必要とする哺乳動物を治療する方法を提供し、この方法は、本発明の足場を損傷部位に適用することを含む。
【0098】
一実施形態では、本発明は、組織損傷の治療、および組織の修復および/または再生のためのバイオメディカルインプラントの調製における本発明の足場の使用を提供する。
【0099】
一実施形態では、本発明は、組織損傷を受け、組織の修復および/または再生を必要とする哺乳動物を治療するための足場の使用を提供し、この使用は、本発明の足場を損傷部位に適用することを含む。
【0100】
足場またはバイオメディカルインプラントが組織工学または組織の修復および/または再生用途に使用される場合、この方法は、例えば、足場(すなわち、患者に移植された際に急性反応を引き起こさない多孔性の生体適合性足場)またはバイオメディカルインプラントを哺乳動物に移植し、次いで足場またはバイオメディカルインプラントを哺乳動物(ヒトなど)から除去することによって行うことができる。足場またはバイオメディカルインプラントは、標的組織の細胞が足場またはバイオメディカルインプラントと結合することを可能にするのに十分な時間の間、成熟または未成熟標的組織と直接接触して(すなわち、その外面の少なくとも一部に物理的に接触している)、または隣接して(すなわち、物理的に分離している)移植される。いくつかの実施形態では、足場またはバイオメディカルインプラントに、標的組織の細胞を事前に播種することができる。組織移植片は、除去された足場と、標的組織の関連細胞とを含む。
【0101】
「標的組織」とは、その置換のために移植片が生成される任意の種類の組織である。例えば、患者が靭帯を引き裂くか、その他の方法で損傷し、その靭帯が本明細書に記載の方法によって作成された移植片との置換の標的にされる場合、標的組織は靭帯である。患者が軟骨を損傷している場合、標的組織は軟骨であり、患者が腱を損傷している場合、標的組織は腱であり、以下同様である。標的組織が、完全に分化した組織に天然に見出される細胞および他の成分を含む場合、標的組織は「成熟」している(例えば、成体哺乳動物の認識可能な靭帯は成熟した標的組織である)。標的組織が、成熟細胞にまだ分化していないが成熟細胞に分化する細胞を含む場合、標的組織は「未成熟」である(例えば、未成熟標的組織は、間葉系幹細胞、骨髄間質細胞および前駆体細胞または前駆細胞を含有することができる)。標的組織はまた、未成熟細胞を成熟標的組織の細胞に分化させる細胞を含有する場合、または成熟細胞を維持する細胞を含有する場合(これらの事象は、例えば、細胞分化をもたらすか、成熟細胞を維持する増殖因子またはサイトカインを細胞が分泌する際に起こり得る)、「未成熟」である。したがって、本発明の足場またはバイオメディカルインプラントは、(例えば、本明細書に記載されるプロセスである分化によって、または増殖因子もしくはサイトカインの作用によって)標的組織、または標的組織を生成することができる細胞を含む組織と直接接触して、またはそれに隣接して、足場、または本発明の足場を含むバイオメディカルインプラントを移植することによって実現することができる。
【0102】
いくつかの実施形態では、組織欠損を有する哺乳動物と、組織移植片が得られる哺乳動物とは、同じ哺乳動物または同じ種類の哺乳動物であり得る(例えば、1人のヒト患者が、別のヒトを用いて生成された移植片により治療される組織欠損を有し得る)。あるいは、組織欠損を有する哺乳動物と、組織移植片が得られる哺乳動物とは、異なる種類の哺乳動物であり得る(例えば、ヒト患者は、別の霊長類、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタまたはヤギを用いて生成された移植片により治療される組織欠損を有し得る)。
【0103】
得られた後、足場またはバイオメディカルインプラントは、任意の外科的手法により、組織欠損の部位で哺乳動物に移植され得る。例えば、足場またはバイオメディカルインプラントは、組織欠損部位で哺乳動物に縫合、ピン留め、留め付け、またはステープル留めすることができる。一実施形態では、足場またはバイオメディカルインプラントが第1の支持構造を第2の支持構造に接続するように、組織欠損の部位で第1の支持構造に足場またはバイオメディカルインプラントの第1の部分を取り付け、組織欠損の部位で第2の支持構造に足場またはバイオメディカルインプラントの第2の部分を取り付けることによって、足場またはバイオメディカルインプラントが移植される。
【0104】
第1の支持構造が脛骨である場合、第2の支持構造は大腿骨であり得る。第1の支持構造が関節(例えば、肩、手首、肘、股関節、膝または足首の関節)の第1の関節面である場合、第2の支持構造は、同じ関節(すなわち、それぞれ肩、手首、肘、股関節、膝または足首の関節)の第2の関節面であり得る。
【0105】
本明細書で使用される用語「隣接する」は、足場またはバイオメディカルインプラントが、標的型の組織、もしくは標的型の組織を生成することができる細胞を含む組織、またはその両方が存在する場合その両方から、最大10mm、好ましくは5mm未満の距離だけ分離されることを意味する。
【0106】
足場またはバイオメディカルインプラントに結合した細胞の生存率は、当技術分野で知られている任意の好適な技術を使用して測定され得る。細胞生存率は、比色分析アッセイ、例えば、MTT(3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド)アッセイ、XTT(2,3-ビス-(2-メトキシ-4-ニトロ-5-スルホフェニル)-2H-テトラゾリウム-5-カルボキサニリド)アッセイ、MTS(3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-5-(3-カルボキシメトキシフェニル)-2-(4-スルホフェニル)-2H-テトラゾリウム)アッセイ、WST(水溶性テトラゾリウム塩)アッセイなどを用いて測定することができる。あるいは、生細胞と死細胞とを区別するための細胞染色を伴う顕微鏡技術を使用して、細胞の生存率を評価してもよい。
【0107】
(複合材料)
本発明はまた、生体模倣複合材料などの複合材料を製造するための、様々な種類および組成の、本明細書に記載の繊維を有する織物、包帯または他の既存の製品などの改質材料に関する。一実施形態では、本発明は、実質的に整列した繊維のマトリックスと少なくとも1つの基材とを含む複合材料を提供する。
【0108】
いくつかの実施形態では、複合材料は多孔性である。いくつかの実施形態では、複合材料は非多孔性である。複合材料は、細胞増殖および/または組織形成を促進するのに適していることを理解されたい。
【0109】
本発明の複合材料は、疾患治療、創傷治癒、組織再生、薬物送達などに使用することができる。基材として織物を含む複合材料については、感触、快適性、通気性、機械的特性、抗微生物(例えば、抗ウイルス、抗細菌および防藻)特性、疎水性および親水性を含む特性を調整することができる。いくつかの実施形態では、複合材料は、創傷治癒、組織再生、および糖尿病などの疾患の治療のための包帯または包帯剤として使用することができる。
【0110】
本発明の複合材料は、任意の好適な量の繊維を含むことができる。細胞の接着、増殖、成長、分化、抗微生物機能、および組織再生を含め、複合材料の機能的側面は、使用される整列した繊維および繊維形成液の量に応じて調整することができる。
【0111】
本発明の複合材料は、細胞の接着、増殖、成長、分化、組織再生または抗微生物特性に有益であり得る薬物または増殖因子などの添加剤を含むことができることを当業者であれば理解するであろう。いくつかの実施形態では、繊維形成分子の溶液に添加剤を加えて、複合材料に添加、吸着または吸収された添加剤を含む整列した繊維を提供することができる。
【0112】
典型的には、繊維形成分子の溶液に基材を浸漬し、次いでこれを、本発明を使用して冷却して、整列した繊維を有する複合材料を提供する。
【0113】
(基材)
基材は、本発明の整列した繊維を組み込むためのテンプレートとして好適な任意の好適な材料であり得る。基材の例には、包帯、包帯剤および織物が挙げられる。いくつかの実施形態では、基材は、本発明の方法により調製された足場であり得る。基材は、本発明の複合材料に整列した繊維を組み込むことができる多孔性または非多孔性の任意の好適な材料とすることができる。特定の実施形態では、基材は多孔性または非多孔性であり得る。基材が非多孔性である実施形態では、基材の表面に、整列した繊維を形成することができる。基材が多孔性である実施形態では、細孔内および/または基材の表面に、整列した繊維を形成することができる。基材の表面に、整列した繊維が形成される場合、十分な繊維形成分子があれば、整列した繊維は足場を形成することができる。
【0114】
本発明は、堆積、分散およびコーティング技術を含め、当業者に知られている技術よりも、基材上または基材内に、整列した繊維を均一かつ強固に提供することができる。有利なことに、本発明は、様々な基材を大規模に改質して、結果として生じる複合材料を提供するのに、容易で、効率的で、費用効果が高い。
【0115】
いくつかの実施形態では、基材は、天然ポリマー、合成ポリマーおよびそれらの組合せからなる群から選択される。
【0116】
天然ポリマーには、多糖類、ポリペプチド、糖タンパク質ならびにそれらの誘導体およびそれらのコポリマーが挙げられ得る。多糖類には、寒天、アルジネート、キトサン、ヒアルロナン、セルロース系ポリマー(例えば、セルロースおよびその誘導体、ならびにリグニンなどのセルロース生成副産物)およびデンプンポリマーが挙げられ得る。ポリペプチドには、シルクフィブロイン、シルクセリシン、リゾチーム、コラーゲン、ケラチン、カゼイン、ゼラチンおよびそれらの誘導体などの様々なタンパク質が挙げられ得る。多糖類およびポリペプチドなどの天然ポリマーの誘導体には、様々な塩、エステル、エーテルおよびグラフトコポリマーが挙げられ得る。例示的な塩は、ナトリウム、亜鉛、鉄およびカルシウム塩から選択され得る。
【0117】
特定の実施形態では、天然ポリマーは、シルクフィブロイン、アルジネート、ウシ血清アルブミン、コラーゲン、キトサン、ゼラチン、セリシン、ヒアルロン酸、デンプンおよびそれらの誘導体のうちの少なくとも1つからなる群から選択される。特定の実施形態では、天然ポリマーは、シルクフィブロイン、アルジネート、ゼラチン、シルクフィブロイン/アルジネート、シルクフィブロイン/ウシ血清アルブミン、シルクフィブロイン/コラーゲン、シルクフィブロイン/キトサン、シルクフィブロイン/ゼラチンおよびそれらの誘導体からなる群から選択される。
【0118】
合成ポリマーには、ビニルポリマー、例えば、限定するものではないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(塩化ビニル)、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ(α-メチルスチレン)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、ポリ(イソブチレン)、ポリ(アクリロニトリル)、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(アクリルアミド)、ポリ(メタクリルアミド)、ポリ(1-ペンテン)、ポリ(1,3-ブタジエン)、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(2-ビニルピリジン)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(スチレン)、ポリ(スチレンスルホネート)ポリ(ビニリデンヘキサフルオロプロピレン)、1,4-ポリイソプレンおよび3,4-ポリクロロプレンが挙げられ得る。好適な合成ポリマーにはまた、非ビニルポリマー、例えば、限定するものではないが、ポリ(エチレンオキシド)、ポリホルムアルデヒド、ポリアセトアルデヒド、ポリ(3-プロピオネート)、ポリ(10-デカノエート)、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリカプロラクタム、ポリ(11-ウンデカノアミド)、ポリ(ヘキサメチレンセバカミド)、ポリ(m-フェニレンテレフタレート)、ポリ(テトラメチレン-m-ベンゼンスルホンアミド)が挙げられ得る。前述のもののいずれかのコポリマーも使用され得る。
【0119】
本発明のプロセスに使用される合成ポリマーは、以下のポリマークラスのうちのいずれか、すなわち、ポリオレフィン、ポリエーテル(あらゆるエポキシ樹脂、ポリアセタール、ポリ(オルトエステル)、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリ(アルキレンオキシド)およびポリ(アリーレンオキシド)を含む)、ポリアミド(ポリ尿素を含む)、ポリアミドイミド、ポリアクリレート、ポリベンゾイミダゾール、ポリエステル(例えば、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸-グリコール酸共重合体(PLGA))、ポリ(ラクチド-co-ε-カプロラクトン)(PLCL)、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリイミド、ポリアミン、ポリヒドラジド、フェノール樹脂、ポリシラン、ポリシロキサン、ポリカルボジイミド、ポリイミン(例えば、ポリエチレンイミン)、アゾポリマー、ポリスルフィド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、オリゴマーシルセスキオキサンポリマー、ポリジメチルシロキサンポリマーおよびそれらのコポリマーに分類され得る。
【0120】
いくつかの実施形態では、官能化合成ポリマーを使用してもよい。そのような実施形態では、合成ポリマーは、1つ以上の官能基によって修飾されてもよい。官能基の例には、Arg-Gly-Asp(RGD)ペプチド、ボロン酸、アルキン、アミノ、カルボキシルまたはアジド官能基が挙げられる。そのような官能基は、一般に、ポリマーに共有結合する。官能基は、ポリマーがさらに反応を受けること、または繊維に追加の特性を付与することを可能にし得る。
【0121】
いくつかの実施形態では、基材は、水溶性もしくは水分散性ポリマーまたはその誘導体を含む。いくつかの実施形態では、基材は、水溶性もしくは水分散性ポリマーまたはその誘導体を含む。例示的な水溶性または水分散性ポリマーには、ポリペプチド、アルジネート、キトサン、デンプン、コラーゲン、ポリウレタン、ポリアクリル酸、ポリアクリレート、ポリアクリルアミド(ポリ(N-アルキルアクリルアミド)、(例えば、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)を含む)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリアリルアミン、ポリエチレンイミン、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(乳酸)、ポリ(エチレン-co-アクリル酸)、ポリエステル(例えば、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸-グリコール酸共重合体(PLGA))、ポリ(ラクチド-co-ε-カプロラクトン)(PLCL)、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリプロピレン)およびそれらのコポリマーならびにそれらの組合せが挙げられる。水溶性または水分散性ポリマーの誘導体には、その様々な塩が挙げられ得る。
【0122】
いくつかの実施形態では、基材は、ポリ(スチレン)およびポリエステル、例えば、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(カプロラクトン)およびそれらのコポリマー、例えば、ポリ乳酸-グリコール酸共重合体からなる群から選択される有機溶媒可溶性ポリマーを含む。
【0123】
いくつかの実施形態では、基材はハイブリッドポリマーを含む。ハイブリッドポリマーは、無機/有機ハイブリッドポリマーであってよい。例示的なハイブリッドポリマーには、ポリシロキサン、例えば、ポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)が挙げられる。
【0124】
いくつかの実施形態では、基材は、ポリペプチド、アルジネート、ゼラチン、キトサン、デンプン、コラーゲン、シルクフィブロイン、ポリウレタン、ポリアクリル酸、ポリアクリレート、ポリプロピレン、ポリアクリルアミド、ポリエステル、ポリオレフィン、ボロン酸官能化ポリマー、ポリビニルアルコール、ポリアリルアミン、ポリエチレンイミン、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(乳酸)、ポリエーテルスルホンおよび無機ポリマーからなる群から選択される少なくとも1つのポリマーを含む。
【0125】
いくつかの実施形態では、基材は、2つ以上のポリマーの混合物、例えば、熱応答性合成ポリマー(例えば、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド))と天然ポリマー(例えば、ポリペプチド)との混合物を含む。
【0126】
本発明の方法とともに使用するための材料および方法の実施例を次に提供する。これらの実施例を提供するにあたり、以下の説明の特定の性質は上記の説明の一般性を制約するものではないことを理解されたい。
【0127】
(実施例)
ここで、以下の実施例を参照して本発明を説明する。
【0128】
(シルクフィブロイン(SF)溶液の生成)
0.5%(w/v)Na2CO3水溶液中で絹繭を4回(20分/時間)煮沸して、セリシンタンパク質を除去した。脱ガムした絹繊維を超純水で完全にリンスして、残存するセリシンを除去した。乾燥後、それらをCaCl2、H2OおよびCH3CH2OHの混合物(モル比1:8:2)に65℃で溶解して、透明な溶液を得た。その後、得られた溶液を、セルロース透析チューブ(分子量カットオフ:14kDa;Sigma Aldrich、オーストラリア)を使用して、周囲温度で4日間、超純水(18.2mΩ・cm)に対して透析した。不純物を濾過し、5000rpmで20分間遠心分離することによって除去した。最後に、凍結乾燥機(FreeZone 2.5Lベンチトップ凍結乾燥機;米国ミズーリ州カンザスシティ、Labconco)を用いて、遠心分離した溶液を凍結乾燥させることによって、再生SFスポンジを得た。その後の使用のために、2gの再生SFスポンジを100mLの超純水に溶解することによって、SF溶液(2%)を得た。
【0129】
(3D SF足場の調製)
(a)整列したナノファイバーを有する足場(AFb)
ガラス管内のSF溶液を液体窒素に直接浸漬した。凍結乾燥機を使用して凍結試料を凍結乾燥させることにより、標的足場を生成した。作製スキームを
図2に示す。
【0130】
(b)耐水性の整列したナノファイバー足場(AF)
足場を水に不溶性にするために、上記の得られた足場(AFb)を周囲温度で12時間エタノールに浸漬することによって後処理した。エタノールを除去し、超純水で完全にリンスした後、AF足場が得られ、これを使用またはその後の処理のために超純水に再浸漬した。
【0131】
(c)共整列したナノファイバーおよびマクロチャネルを有する足場(A(F&C))
上記の超純水中のAF足場を-20℃で72時間かけて凍結させた。凍結乾燥後、A(F&C)足場が得られた。
【0132】
(d)WbおよびW&Fb足場(-20℃での凍結から得られたWbおよび-80℃での凍結から得られたW&Fb)
比較のために、液体窒素を用いて瞬間凍結させるのではなく、それぞれ-20℃および-80℃の冷凍庫内で足場を形成した。-20℃のWb足場では、ガラス管内のSF溶液を-20℃で53時間かけて凍結させた。-80℃のW&Fb足場では、ガラス管内のSF溶液を-80℃で53時間かけて凍結させた。凍結乾燥による氷結晶の除去後、WbおよびW&Fb足場がそれぞれ得られる。
【0133】
(e)WおよびW&F足場
A(F&C)足場を得るための同じ手順を用いて、上記のWbおよびW&Fb足場をさらに処理した。すなわち、周囲温度で12時間エタノールに浸漬することによって、足場を後処理した。エタノールを除去し、超純水で完全にリンスした後、超純水中の足場を-20℃で72時間かけて凍結させた。凍結乾燥後、それぞれWおよびW&F足場が得られた。
【0134】
(3D SF/ゼラチン複合A(F&C)足場)
その後の使用のために、2gの再生SF/ゼラチン混合物(重量比95:5)を100mLの超純水に溶解することによって、SF/ゼラチン(Sigma-Aldrich、オーストラリア)溶液(2%)を得た。次いで、上記のSF A(F&C)足場を生成するための同じプロトコルによって、SF/ゼラチン複合A(F&C)足場を作製した。
【0135】
(3Dアルギン酸ナトリウムA(F&C)足場)
0.3gのアルギン酸ナトリウムを100mLの超純水に50℃で撹拌しながら溶解することによって、アルギン酸ナトリウム(Sigma-Aldrich、オーストラリア)溶液(0.3%w/v)を作製した。エタノールの代わりにCaCl2水溶液を使用してAF足場を形成するためのAFb足場の後処理とは別に、SF A(F&C)足場を作製するための同じプロトコルによって、アルギン酸ナトリウムA(F&C)足場を調製した。
【0136】
(複合材料)
容器内の繊維形成分子の溶液および基材(例えば、ポリプロピレン多孔性微小繊維材料)、または繊維形成分子の溶液(例えば、シルクフィブロイン溶液、アルジネート溶液、ゼラチン溶液またはそれらの組合せ)を吸収させた基材を直接液体窒素中に直接浸漬するか、液体窒素中にゆっくりと降下させて温度差を生じさせた。凍結乾燥機を使用して凍結試料を凍結乾燥させることにより、複合材料を生成した。場合により、足場を水に不溶性にするために、好適な架橋剤(エタノール溶液など)、または架橋剤の蒸気環境(75%エタノール蒸気など)に浸漬することによって、得られた複合足場を後処理することができる。室温で乾燥させるか、超純水で完全にリンスし、次いで凍結乾燥させることにより、結果として生じる複合材料を得た。代表的な顕微鏡写真を
図4および
図5に示す。
【0137】
(特性評価)
走査型電子顕微鏡(SEM)(Zeiss Supra 55VP)を使用して材料の形態を観察し、画像処理ソフトウェア(Image-J 1.34)によって、代表的なSEM画像から繊維径を決定した。減衰全反射(ATR)モード(4cm-1解像度、64スキャン)でBruker VERTEX 70機器を使用して、600~4000cm-1の波数範囲でフーリエ変換赤外分光法(FTIR)スペクトルを記録した。100 Nローディングセルを備えたInstron 5967 コンピュータ化万能材料試験機(Instron Corp、米国)を使用して、シルク足場の圧縮機械的特性を得た。クロスヘッド速度5mm/分で、直径10mmおよび高さ4mmの円筒状の足場を測定した(各群について6つの試料を測定した)。圧縮応力と歪みとをグラフ化し、応力-歪み曲線の初期直線部分の勾配として圧縮弾性率を計算した。Xradia micro XCT200(Carl Zeiss X-ray Microscopy,Inc.、米国)によるマイクロX線コンピュータ断層撮影(マイクロCT)を使用して、シルク足場の構造を撮像した。電圧40kVおよびピーク出力10WのX線管を使用した。1回の完全な断層再構成のために、180度で361の等角投影図(露光時間:8秒/投影)を得た。明瞭な投影と最終的な3D可視化とを得るために、3D再構成アルゴリズムによる位相回復トモグラフィーを導入した。再構成された3D画像のサイズは、各辺に沿って4.3μmのボクセルサイズを有する512×512×512ボクセルであった。
【0138】
(3D SF足場でのヒト臍帯静脈内皮細胞の足場細胞捕捉、増殖およびインビトロ血管新生)
ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC;Life Technologies、オーストラリア)の培養および足場播種:低血清増殖サプリメントを含むMedium 200(LSGS;Life Technologies、オーストラリア)中でHUVECを培養した。75%エタノール蒸気の環境で滅菌した後、足場(直径約10mmおよび厚さ約3mm)を24ウェルプレート(Greiner Bio-One)に入れた。細胞培地に懸濁したHUVECを、対応する密度(インビトロでの細胞の接着、増殖および血管新生の試験では、それぞれ1×105/ウェル、1.5×105/ウェルおよび2×105/ウェル)で足場に均一に播種した。細胞を播種した足場は、標準的な培養条件下(37℃、5%CO2)、インビトロで維持し、2~3日ごとに培地を交換した。
【0139】
(a)足場での細胞の捕捉および増殖
播種後の一定の時点(細胞捕捉アッセイでは2、4および8時間、細胞増殖アッセイでは2、4および6日)で、製造者の指示に従ってMTSアッセイ(Promega、米国)を使用して、足場上の細胞の生存率を分析し、マイクロプレートリーダー(SH-1000Lab、Corona Electric Co.,Ltd、日本)を用いて490nmで吸光度を測定した。
【0140】
3日間の培養後、共焦点蛍光顕微鏡(Leica TCS SP5共焦点顕微鏡、Leica Microsystems、ウェッツラー)を使用して、足場上の細胞形態を観察した。細胞足場複合体をPBSでリンスし、周囲温度で30分かけて4%パラホルムアルデヒド(Sigma-Aldrich、オーストラリア)で固定した。PBSでリンスした後、0.1% Triton X-100(Sigma-Aldrich、オーストラリア)を用いて複合体を10分間透過処理し、続いてPBSでリンスした。次いで、Image-iT(登録商標)FX Signal Enhancer Ready Probes(商標)試薬(Life Technologies、オーストラリア)中で複合体を30分間インキュベートし、PBSでリンスした。その後、Alexa Fluor(登録商標)568ファロイジン(1:100;Life Technologies、オーストラリア)とともに複合体を1時間インキュベートした。PBSでリンスした後、複合体をDAPI(Life Technologies、オーストラリア)中、暗所で10分間インキュベートした。共焦点蛍光顕微鏡を使用して、処理したままの試料を評価した。
【0141】
(b)足場内のインビトロ血管新生
21日間の培養後、細胞足場複合体をPBSでリンスし、周囲温度で30分かけて4%パラホルムアルデヒド(Sigma-Aldrich、オーストラリア)で固定した。PBSでリンスした後、0.1% Triton X-100(Sigma-Aldrich、オーストラリア)を用いて複合体を10分間透過処理し、続いてPBSでリンスした。次いで、Image-iT(登録商標)FX Signal Enhancer Ready Probes(商標)試薬(Life Technologies、オーストラリア)中で複合体を30分間インキュベートした。PBSでリンスした後、10%正常ヤギ血清ブロッキング溶液(Life Technologies、オーストラリア)とともに複合体を10分間インキュベートして、非特異的結合をブロックし、次いでPBSでリンスした。その後、CD31モノクローナル抗体(1:50;Life Technologies、オーストラリア)とともに複合体を4℃で一晩インキュベートした。PBSでリンスした後、ヤギ抗マウスIgG(H+L)二次抗体、Alexa Fluor(登録商標)488コンジュゲート(1:200;Life Technologies、オーストラリア)とともに複合体を1時間インキュベートした。足場をPBSで再度リンスし、DAPI(Life Technologies、オーストラリア)中、暗所で10分間インキュベートした。共焦点蛍光顕微鏡を使用して、処理したままの試料を評価した。
【0142】
(3D SF足場内のラット胚性後根神経節ニューロンの足場細胞捕捉および神経突起伸長)
(a)ラット胚性後根神経節ニューロン(DRG;Lonza、米国)の培養および足場播種
PNGM(商標)SingleQuots(商標)(Lonza、米国)と、150ng/mlの神経成長因子(NGF;Sigma-Aldrich、オーストラリア)とを添加した初代ニューロン基本培地(PNBM;Lonza、米国)中でDRGを培養した。
【0143】
75%エタノール蒸気により滅菌した後、足場(直径約10mmおよび厚さ約3mm)を24ウェルプレート(Greiner Bio-One)に入れた。細胞培地に懸濁したDRGを、1.2×105/ウェルの密度で足場に均一に播種した。DRGを播種した足場は、標準的な培養条件下(37℃、5%CO2)、インビトロで維持し、3~5日ごとに培地を交換した。
【0144】
(b)足場の細胞捕捉
播種後の一定の時点(6、12および24時間)で、製造者の指示に従ってMTSアッセイ(Promega、米国)を使用して、足場に捕捉されたDRGの生存率を分析し、マイクロプレートリーダー(SH-1000Lab、Corona Electric Co.,Ltd、日本)を用いて490nmで吸光度を測定した。
【0145】
(c)DRGの神経突起伸長に対する免疫染色
21日間の培養後、足場をPBSでリンスし、周囲温度で30分かけて4%パラホルムアルデヒド(Sigma-Aldrich、オーストラリア)で固定した。PBSでリンスした後、0.1% Triton X-100(Sigma-Aldrich、オーストラリア)を用いて複合体を30分間透過処理し、次いで再度PBSでリンスした。続いて、10%正常ヤギ血清ブロッキング溶液(Life Technologies、オーストラリア)中で足場を10分間インキュベートして、非特異的結合をブロックした後、PBSでリンスした。次いで、ウサギ由来の抗ニューロフィラメント-200抗体(1:50;Sigma-Aldrich、オーストラリア)とともに足場を4℃で一晩インキュベートした。PBSでリンスした後、ヤギ抗ウサギIgG(H+L)二次抗体、Alexa Fluor(登録商標)488コンジュゲート(1:200;Life Technologies、オーストラリア)とともに足場を1時間インキュベートした。最後に、共焦点蛍光顕微鏡を使用して、処理した試料を分析した。
【0146】
(d)統計的方法
実験はいずれも3連で行い、平均±標準偏差(SD)としてデータを表した。Origin 9ソフトウェアパッケージ(OriginLab、米国)の統計ソフトウェアを使用して、一元配置分散分析により統計的有意差を分析した。p<0.05またはp<0.01の差を統計的に有意であると解釈した。
【0147】
(実施例1.シルクフィブロイン足場)
FDAに承認されたシルクフィブロイン(SF)は、その優れた生体適合性、調整可能な機械的特性、生分解性および低炎症反応のため、バイオメディカル材料として広く認識され、使用されている。本発明者らは、モデルとしてシルクフィブロインを用いて、容易な凍結乾燥手法によって、共整列したナノファイバーおよびマクロチャネルを有する3Dシルクフィブロイン(SF)足場を便利に作成することができることを実証した。この方法は、氷の結晶化の制御に基づく。ある体積の水が凍結すると、氷結晶のサイズおよびその配向は、温度勾配、凍結速度、およびその体積の温度勾配の方向によって制御される。温度が低く凍結が速いほど、すなわち、熱力学的駆動力および反応速度が高いほど、氷核形成が促進され、多くの微細な結晶がもたらされる。
【0148】
本発明者らは、この原理に基づいて、シルクフィブロイン、シルクフィブロイン/ゼラチンの混合物およびアルギン酸ナトリウムなどの様々な繊維形成分子を使用して、2段階凍結法を採用して所望のSF構造を作成した。概略図を
図2に示す。まず、SF水溶液を含むチューブを液体窒素にすばやく浸漬した。極端に低い温度(液体窒素中で約-196℃)とチューブの半径方向に沿った大きな温度差とにより、放射状に整列した微細な氷結晶が形成された。凍結乾燥によって氷結晶を除去した後、氷結晶成長方向に沿って放射状に整列したSFナノファイバーが得られた。
【0149】
ナノファイバーを水に不溶性にするために、エタノールを使用してタンパク質ナノファイバーの構造を固定した後、ナノファイバー足場を水に入れ、-20℃の比較的高い温度で再び凍結させた。この比較的高い温度により、繊維の方向に沿って成長するように、放射状に整列したナノファイバーによって誘導されたさらに大きな氷結晶が形成された。結晶の形成によりナノファイバーの自由空間が減少し、これにより、ナノファイバーが結晶の周囲に押し出され圧搾される。凍結乾燥によってこれらの結晶を除去した後、整列した3Dナノファイバー足場に、ナノファイバー壁を有するマクロチャネルが作成される。広く使用されている3Dシルク足場と比較して、共整列したナノファイバーおよびマクロチャネルを有する本発明の3D足場は、接着性および非接着性の細胞をさらに多く捕捉することができる。さらに興味深いことに、足場は、細胞増殖を顕著に促進するだけでなく、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)が血管様構造に集合するように誘導するほか、胚性後根神経節ニューロン(DRG)および神経突起の3D増殖を誘導する。
【0150】
実施例2.共整列したナノファイバーおよびマクロチャネルを有する3D構造の形成
液体窒素での最初の凍結中、微細な氷結晶の間に集合したシルクフィブロイン(SF)分子は放射状に配向していた(
図2a)。凍結乾燥によって凍結試料中の氷結晶を除去した後、3D SF足場、すなわち、放射状に整列したナノファイバーと均一に分布したナノ粒子とを有するAFb足場(
図2b)が得られた(
図10aを参照)。以下の試験では、エタノール中の後処理前のチャネルを有しない放射状に整列した3Dナノファイバー足場は、AFbとして示される(A、Fおよびbは、それぞれ、「整列した(aligned)」、「ナノファイバー(nanofibres)」および「エタノール中の後処理前(before post-treatment in ethanol)」を表す)。明らかに、調製されたままのSFナノファイバーは滑らかな形態を呈し、放射状によく整列していた(
図10aを参照)。この方法は容易であり、様々な形状(チューブおよび粒子も含む)、直径および厚さの試料を作製することを可能にする(
図10bを参照)。さらに、液体窒素中のSF溶液を方向的に凍結することによって、足場ナノファイバーの整列方向を制御することができる(
図10bを参照)。例えば、SF溶液を含むチューブを液体窒素中にゆっくりと降下させることによって、垂直に整列したナノファイバーを作製することができる。液体窒素にSF溶液を直接滴下することにより、放射状に整列したナノファイバーを有する粒子が得られた。さらに、繊維形成分子(シルクフィブロイン)を含む溶液を液体窒素に滴下または噴霧すると、
図10bのものと同様の放射状に整列したナノファイバーを有する粒子または球体が生成された。
【0151】
本発明者らは、急速凍結および高い温度差がナノファイバーおよび方向性構造の形成に有益であることを示した。瞬間凍結に液体窒素を使用する代わりに、それぞれ-80℃および-20℃の冷凍庫内で、同じガラス管に含まれたSF溶液を凍結させ、その後、凍結乾燥を使用して氷結晶を除去した。-80℃凍結から得られたSF足場は、ランダムな短チャネル様構造、細孔およびナノファイバーを有するハイブリッド構造を有するが、これらの構造は相互接続していない(
図11aを参照)(以下の試験では、エタノール中の後処理前の-80℃凍結から得られたハイブリッド3D SF足場は、W&Fbとして示される。ここで、Wはチャネルおよび細孔の壁(walls of the channels and pores)を表し、Fはナノファイバー(nanofibres)を表し、bはエタノール中の後処理前(before post-treatment in ethanol)を示す。エタノール中の後処理後、足場はW&Fとして示される。)。
【0152】
比較すると、-20℃凍結から得られたSF足場にはランダムな細孔のみが見られ、細孔はネットワークを形成するように十分に接続されていない(
図11bも参照)。凍結速度および温度差を減少させると、ランダムかつ大きな氷結晶が成長し、大きいが相互接続していない細孔の形成が促進され得るため、足場は壁状構造を有する。以下の試験では、エタノール中の後処理前の-20℃凍結から得られた多孔性壁状3D足場はWbとして示される。ここで、Wは細孔の壁(walls of pores)を表し、bはエタノール中の後処理前(before post-treatment in ethanol)を示す。エタノール中の後処理後、足場はWとして示される。
【0153】
比較的低温(-20℃)で2回目の凍結を行うと、繊維足場にマクロチャネルが作成された(
図2c、d)。3DマイクロCT画像(
図3a)では、各放射状に整列したチャネル(直径100~1000μm)は、足場の表面と中心とを接続していた。SEM(
図3b)によって示されるように、チャネル壁は、チャネルの方向(大きな黄色の矢印により示されている)に沿って整列したSFナノ粒子およびナノファイバー(直径50~600nm)から構成されている。代表的なチャネル壁を拡大すると、ナノファイバーの配向に整列しているように見える多くの細孔(直径50~1000nm)が見られた。
【0154】
以下の試験では、放射状に整列したナノファイバーおよびチャネルを有するこれらの種類の3D SF足場は、A(F&C)として示される(
図2d)。ここで、Aは「放射状に整列した(radially aligned)」を表し、Fはナノファイバー(nanofibres)を表し、Cはチャネル(channels)を表す。さらに興味深いことに、足場の上部から底部に中央チャネル(直径0.4~2mm)が作成された(
図2d、A(F&C)足場のデジタル写真)。階層的3D A(F&C)足場内のあらゆる関連サイズを
図3cに要約した。興味深いことに、SFだけでなく、SF/ゼラチンなどの他の混合物およびアルギン酸ナトリウムなどの他の生体高分子由来のA(F&C)足場も、本発明の方法を使用して調製することができる(
図12を参照)。比較すると、同じ後処理によりWbおよびW&Fb足場を処理した後、顕著な変化はなかった。両足場の細孔または短チャネル様構造は相互接続されていないように見えた(以下の試験では、上記の手順を用いてエタノール中で後処理した後の3D WbおよびW&Fb足場は、それぞれWおよびW&Fとして示される)(W&FおよびW足場については、
図13および
図14を参照されたい)。
【0155】
(実施例3.足場の二次構造および機械的特性)
シルクフィブロインの構造変化に対する調製方法の影響を理解するために、足場の二次構造を調査した。SFの立体構造変化は、ATR-FTIRスペクトルの特有の吸収ピーク(アミドIIは1600~1500cm
-1、アミドIは1700~1600cm
-1)のシフトによって示され得ることが知られている。エタノールによる後処理前の3つの足場はいずれも、ランダムコイルを示唆する約1644cm
-1に1つの主要な特有のピークを示した(
図15aを参照)。WbおよびW&Fb足場が1517cm
-1に別の主要な特有のピークを示したのに対して(主要なβシート構造を示す)、AFb足場は1533cm
-1に別の主要な特有のピークを示し(主要なランダムコイル構造を示す)、液体窒素による低温処理が、ランダムコイルの形成に有益であり得ることを示唆した(
図15a参照)。エタノール中で処理した後、3つの足場はいずれも約1700、1622および1517cm
-1に主要な特有のピークを示し、処理された足場が主にβシート構造からなることを示唆した(
図15bを参照)。
【0156】
足場の圧縮弾性率を
図16aに示した。3D A(F&C)ナノファイバー足場は約80kPaの圧縮弾性率を有し、これは、壁状WおよびW&F足場(それぞれ約100および約140kPa)よりも低い。これは、ナノファイバーを有するそれらの大きなチャネルベース構造に起因する可能性がある。注目すべきは、機械的試験で圧縮された後、A(F&C)足場は依然として放射状に整列した良好な形態および構造を維持しており、それらの表面には、おそらくいくつかのチャネルの損傷に起因するわずかな崩壊が見られた(
図16bを参照)。
【0157】
実施例4.共整列したチャネルおよびナノファイバーは、細胞の捕捉を促進し、3D SF足場内で接着性ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)の増殖、挙動および機能を誘導する。
整列したチャネルおよびナノファイバーが細胞に及ぼす影響を理解するために、古典的な接着性HUVECを使用して、細胞を捕捉し、それらの増殖を促進する足場の能力を調査した。いずれの時点でも、A(F&C)足場はWおよびW&F足場よりも有意に高い細胞捕捉および増殖能力を示し、A(F&C)の足場の整列したチャネルおよびナノファイバー構造が細胞の接着および増殖に有益であることを示した(
図6a、b)。W足場と比較して、W&F足場の方が8時間の時点での細胞接着と6日目の増殖生存率とが高いことが示されたが、これはおそらくW&F足場内のナノファイバーの存在によるものであった。
【0158】
チャネルの影響をさらに特定するために、エタノール中の後処理後のAFb足場(すなわち、
図6のAF足場)を細胞培養基質として使用した。2回目の凍結工程と凍結乾燥とを用いない場合、AF足場は
図2および
図10aに示すAFb足場と同じ放射状に整列したナノファイバー構造を有したが、A(F&C)足場に示されるようなチャネルは有しなかった。A(F&C)足場は、いずれの時点でもAF足場よりも有意に高い細胞生存率を示し、細胞の捕捉および増殖に対するチャネルの利点を示した。さらに、WおよびW&F足場も、AF足場よりも高い細胞生存率を示した。これはおそらく、W、W&FおよびA(F&C)足場が、それらの比較的大きな細孔またはチャネルのために、細胞の接着および増殖のためにさらに多くの空間を提供するという事実によるものである。
【0159】
整列したチャネルおよびナノファイバーの影響についてさらに多くの洞察を得るために、共焦点蛍光顕微鏡を使用して、3日間足場内で増殖させた細胞を撮像した(
図6d)。現在まで、小さな細孔、および足場の低い相互接続性、ならびに足場内の結合および誘導の手掛かりの欠如のために、細胞の広がり、移動、伸長および相互作用を含む細胞の挙動が妨げられることが多いという問題が残っている。これは、WおよびW&Fの両足場にも当てはまる。
図6dに示すように、細胞の広がりは、細胞が平坦な材料の表面上で培養されたかのように、細孔壁(W内の黄色の矢印により示す)によって顕著に制限されたか、平滑な縁部(W&F内の白い矢印により示す)を示した。細胞はAF足場(
図6d)でも観察されたが、足場の内側(内部)領域の細胞数が少ないため、共焦点顕微鏡下での走査中にそれらを見つけることは困難であった。AF足場内の細胞は、ナノファイバーの方向にうまく整列も伸長もしておらず、比較的平坦かつ多角形形態を示した。これはおそらく、緩く整列したナノファイバーが、様々な方向からの多くの周囲シグナルを細胞に提供するという事実によるものである。A(F&C)足場の壁上の細胞は、ナノファイバーに沿ってよく伸長し、整列していた。大きな3Dチャネルの存在は、ナノファイバーがチャネル壁上に圧縮されるように足場内の空間を減少させ、ナノファイバーの長軸(縦)方向の比較的多くのシグナルを細胞に提供する(チャネルおよびナノファイバーの方向をそれぞれ白い矢印により示した)。これにより、A(F&C)足場に観察される細胞の増殖および形態を説明することができる。
【0160】
血管発生および血管新生では、内皮細胞の増殖、移動および相互作用が管構造の形成に非常に重要である。HUVECは、血管新生を試験するための古典的な内皮細胞モデルである。上記のように、A(F&C)足場はHUVECの増殖を促進することができる。整列したチャネルおよびナノファイバーによって誘導される細胞の移動および伸長により、細胞間相互作用が強化されて、血管様構造の形成が促進されると考えられている。これを示すために、本発明者らは、最長21日間HUVECを培養して、足場内の細胞の血管新生挙動を観察した(
図7、
図6cは画像の読み方を示す)。細胞はいずれもCD31陽性であり(CD31は内皮細胞に発現する糖タンパク質である)、長期間の培養後も足場内でHUVECの特性を維持したことが示唆された。
【0161】
WおよびW&F足場では、多くの細胞が丸い形態を維持し、わずかな数の核が伸長した(
図7a)。細胞の広がり、移動および伸長は足場の壁によって制限され、一部の細胞の局所的な凝集と相互作用とをもたらした。AF足場では、一部の細胞核が伸長したが、ほとんどの細胞は顕著に整列も伸長もせず、多角形形態を呈した(
図7a)。興味深いことに、A(F&C)足場では、あらゆる細胞および細胞核がチャネル壁上に伸長および整列し、チャネル壁上で相互作用し、CD31陽性血管様構造に集合した(チャネル、チャネル壁、血管様構造ならびに整列および伸長した細胞核をそれぞれ白い矢印により示した)(
図7a)。
図7aのチャネルの14枚の連続した共焦点スライスを
図7bに示した。A(F&C)足場の内側には、チャネル壁上に整列した多くの血管様構造があった。これらの発見は、共整列したチャネルおよびナノファイバーが、血管様構造に集合するためのHUVECの広がり、移動、伸長および相互作用を強化したことを実証した。
【0162】
実施例5.共整列したチャネルおよびナノファイバーは、非接着性胚性後根神経節ニューロン(DRG)のための足場の捕捉を強化し、足場内の神経突起の3D増殖を誘導する。
非接着性DRGを使用して、共整列したチャネルおよびナノファイバーが細胞に及ぼす影響をさらに確認した。
図8aに示すように、A(F&C)足場はまた、優れたDRG捕捉能力を示した。AF足場は最も低いDRG捕捉を示し、W足場とW&F足場との間に有意差は観察されなかった。これらの観察は、足場の共整列したチャネルおよびナノファイバーが、接着性細胞だけでなく、非接着性細胞の捕捉にも役立ち得ることを示唆している。
図8bは、走査された足場の領域と対応する画像とを示している。豊富な神経突起は、AF足場の表面上のナノファイバーの方向に整列していたが、足場の内側部分では観察されなかった。マクロ孔WおよびW&F足場では、神経突起は表面のみに凝集していた。これらの結果から、チャネルが存在しない場合、21日間の培養中にDGRが足場の内側領域に増殖することが困難であり、DRGの神経突起伸長が抑制されたことが示された。
【0163】
図8cは、A(F&C)足場の走査領域と対応する画像とを示している。DRGは明瞭に見ることができ、かなりの量の長い神経突起がチャネルを通って増殖していた(チャネル、チャネル壁および神経突起はそれぞれ白い矢印により示した)。興味深いことに、チャネルを拡大すると、DRGと神経突起とがいずれもチャネルに沿って主に増殖したことが明らかになり、神経突起の3D増殖モードが示唆された。これは、AF足場の表面上の整列したナノファイバーに沿ったDRGおよび神経突起の2D増殖とはまったく異なっていた(
図8b)。
図8cの最後の画像から、束状の神経突起が明瞭に観察され、これは、神経組織の形成に非常に重要である。これらの観察は、整列したチャネルおよびナノファイバーが接着性細胞および非接着性細胞の両方の接着および増殖を促進し得るだけでなく、天然のECMと同様に3D空間で増殖、移動および相互作用するようにそれらを誘導し得ることを実証した。
【0164】
現時点では、主に壁状多孔性足場を有する3D足場がこれまでで最も研究されている。調整可能な孔径にもかかわらず、足場内の細孔の低い相互接続性は、細胞および組織の浸潤、移動および増殖ならびに酸素、栄養分および老廃物の輸送を制限する。
図17は、21日間の培養後の様々な多孔性足場内のDRG増殖に関する洞察を提供する。W足場では、凝集したDRGの神経突起浸潤が細孔壁に沿ってのみ発生した。W&F足場では、細孔壁がDRGの凝集を引き起こし、神経突起伸長を制限した。A(F&C)足場では、
図6d、
図7a、bおよび
図8cに示すように、足場の中心に向かって放射状に整列したチャネル(直径100~1000μm)が、細胞の移動および3D増殖に十分な空間を提供した。
【0165】
組織工学の一般的な問題には、酸素および栄養分の不十分な供給による3D足場内の細胞または組織の壊死がある。A(F&C)足場内の多孔性壁(孔径50~1000nm)を有するチャネルは、酸素、栄養分および老廃物の輸送に非常に重要である。足場の大きな中央チャネル(直径0.4~2mm)も栄養分交換および老廃物処理を促進するはずである。
【0166】
チャネル壁上の整列したナノファイバー(直径50~600nm)は、細胞の捕捉、増殖、ならびに整列方向に沿った移動および増殖に細胞を誘導するのに重要な役割を果たした(
図6a、b、d、
図7a、bおよび
図8a)。さらに、ナノファイバーおよびナノ粒子は、増殖因子または薬物の送達のための優れた担体である。
図7aおよび
図8cに示すように、21日間の細胞培養後もチャネルは良好な形態および構造を示し、足場の安定性を示した。
【0167】
A(F&C)足場は、ECM模倣3D構造の作成がインビトロでの細胞の挙動および機能に関する洞察に重要な役割を果たすという概念実証のモデルプラットフォームとして開発された。本発明者らは、このプラットフォームに基づいて、接着性HUVECが3D足場内の材料に沿って増殖することを好んだことを発見した。したがって、接着性HUVECは、A(F&C)足場の壁上に整列したナノファイバーによって主に誘導された(
図9a、b)。対照的に、非接着性DRGおよび神経突起は、3D空間に沿って増殖することを好んだ。
図9c、d、eに示すように、神経突起はチャネルに沿って主に増殖した。しかし、AF足場の2D表面では、神経突起は整列したナノファイバーの方向に高度に整列していた(
図8b)。容易な作製技術を考慮すると、この研究での発見は、組織工学に使用するための整列したナノファイバーおよびチャネルに基づく新たな種類の3D足場を開発するための道を開くであろう。例えば、生体適合性ポリマーを用いて放射状に整列チャネルを有するナノファイバーチューブ足場を作成することは、多層の細胞播種に有益であり得る。同様に、足場の長軸(縦)方向に整列したチャネルを含む柱足場を構築すると、薄い壁を有する中空管よりも神経再生のために優れた支持を提供することができた。
【0168】
したがって、本発明者らは、整列したナノファイバーおよびマクロチャネルを有する生体模倣3D足場を作成するための容易な凍結乾燥戦略を開発した。インビトロでの細胞培養および試験のためのモデルプラットフォームとして、3D足場は、接着性HUVECおよび非接着性DRGの両方に対して、広く使用される、チャネルを有しない壁状3D足場および3D整列ナノファイバー足場よりも、有意に高い細胞捕捉および増殖促進能力を示した。さらに重要なことに、整列したナノファイバーおよびチャネルは、HUVECの増殖、移動および相互作用を誘導してインビトロで足場内の血管様構造に集合させるだけでなく、3D空間でDRGの神経突起増殖を誘導する。
【0169】
当業者であれば、本明細書に記載された本発明が、具体的に記載されたもの以外の変形および修正を許容することができることを理解するであろう。本発明が、本発明の精神および範囲内にあるそのような変形および修正すべてを含むことを理解されたい。