(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023072129
(43)【公開日】2023-05-24
(54)【発明の名称】防湿紙
(51)【国際特許分類】
D21H 17/37 20060101AFI20230517BHJP
D21H 21/18 20060101ALI20230517BHJP
D21H 19/22 20060101ALI20230517BHJP
D21H 19/18 20060101ALI20230517BHJP
B32B 27/10 20060101ALI20230517BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20230517BHJP
【FI】
D21H17/37
D21H21/18
D21H19/22
D21H19/18
B32B27/10
B32B27/30 B
B32B27/30 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021184471
(22)【出願日】2021-11-12
(71)【出願人】
【識別番号】000005980
【氏名又は名称】三菱製紙株式会社
(72)【発明者】
【氏名】名越 応昇
(72)【発明者】
【氏名】松本 真一郎
【テーマコード(参考)】
4F100
4L055
【Fターム(参考)】
4F100AA09A
4F100AA21A
4F100AH01B
4F100AJ11B
4F100AK01A
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4L055AA02
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4L055FA12
4L055FA13
4L055FA15
4L055GA21
4L055GA47
(57)【要約】
【課題】課題は、層間強度に優れる、建材用合板との接着性を有する、グラビア印刷適性を有する及び黄変色を抑制するという特性を有する防湿紙を提供することである。
【解決手段】課題は、紙基材と、前記紙基材の片面に対して防湿層を有し、前記紙基材が熱可塑性樹脂含浸紙であり、前記防湿層がスチレンブタジエン系共重合樹脂及びパラフィンワックスを含有する防湿紙によって解決できる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙基材と、前記紙基材の片面に対して防湿層を有し、前記紙基材が熱可塑性樹脂含浸紙であり、前記防湿層がスチレンブタジエン系共重合樹脂及びパラフィンワックスを含有する防湿紙。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂含浸紙が、原紙にアクリル系樹脂を含浸して成る請求項1に記載の防湿紙。
【請求項3】
前記アクリル系樹脂のガラス転移温度が、-30℃以上10℃未満である請求項2に記載の防湿紙。
【請求項4】
前記パラフィンワックスの融点が、50℃以上である請求項1に記載の防湿紙。
【請求項5】
前記スチレンブタジエン系共重合樹脂が、共重合樹脂を構成する単量体としてメチルメタクリレート、スチレン及び1,3-ブタジエンを含み、共重合樹脂中においてスチレンが50質量%超である請求項1~4のいずれかに記載の防湿紙。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙を基材としながら樹脂ラミネート層を有しない防湿紙に関し、特に建材用合板に貼り付けて使用する防湿紙に関する。
【背景技術】
【0002】
古紙として再利用が可能かつ優れた防湿性を有する包装用防湿紙として、支持体の片面に合成樹脂ラテックスとワックスとを含有する乳化物を塗布した防湿層を設けてなる防湿紙において、該支持体の裏面側から有機溶媒を含浸させて防湿層と接触させた後、乾燥したことを特徴とする防湿紙が公知である(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載の防湿紙は、本質的に合成樹脂ラテックスの成膜欠損部を消失あるいは少なくする方法を研究し、防湿層を有機溶媒又はその混合溶媒と接触させて防湿層中に含まれる合成樹脂ラテックスの一部を溶解あるいは膨潤させ、成膜欠損部を無くすあるいは小さくするようにすればより高い防湿性能が得られるという技術思想にある。
特許文献1では、前記支持体として上質紙、中質紙、片艶クラフト紙、両更クラフト紙、クラフト伸長紙等を支持体として例示し、特許文献1の目的である古紙として再利用のための再離解性を要求しない用途であれば不織布、樹脂含浸紙、ベラム紙等の強靱な張力を有する支持体を例示する。特許文献1に記載の実施例では、未晒両更クラフト紙を使用し及び古紙として再利用できない参考例としてポリエチレンラミネート紙を使用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1は、使用後に古紙として再利用を目的とすることから、支持体に樹脂含浸紙を選択できない。また、特許文献1は、有機溶媒の作用効果からも支持体に樹脂含浸紙を選択できない。
包装用用途である特許文献1の防湿紙に比べて、建材用合板に貼り合わせて使用する防湿紙は、より強度が必要であり、特に、支持体が紙基材である場合に紙基材の紙層間強度及び防湿層と紙基材との層間強度が必要である(以下これらを「層間強度」と記する)。
【0005】
建材用合板に貼り合わせて使用する防湿紙では、通常、防湿層の外側面(紙基材側の反対側)に合板との接着性及び紙基材の外側面(防湿層側の反対側)に意匠性のためのグラビア印刷適性が必要である。さらに、建材用合板に貼り合わせて使用する防湿紙では、意匠性を維持するために防湿紙の黄変色を抑制する必要がある。
【0006】
以上から、本発明の目的は、以下の特性を有する防湿紙を提供することである。
(1)層間強度に優れること。
(2)建材用合板との接着性を有すること。
(3)グラビア印刷適性を有すること。
(4)黄変色を抑制すること。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、本発明の目的は、以下によって達成される。
【0008】
[1]紙基材と、前記紙基材の片面に防湿層を有し、前記紙基材が熱可塑性樹脂含浸紙であり、前記防湿層がスチレンブタジエン系共重合樹脂及びパラフィンワックスを含有する防湿紙。
【0009】
[2]上記熱可塑性樹脂含浸紙が、原紙にアクリル系樹脂を含浸して成る上記[1]に記載の防湿紙。
【0010】
[3]上記アクリル系樹脂のガラス転移温度が、-30℃以上10℃未満である上記[2]に記載の防湿紙。
【0011】
[4]上記パラフィンワックスの融点が、50℃以上である上記[1]に記載の防湿紙。
【0012】
[5]上記スチレンブタジエン系共重合樹脂が、共重合樹脂を構成する単量体としてメチルメタクリレート、スチレン及び1,3-ブタジエンを含み、共重合樹脂中においてスチレンが50質量%超である上記[1]~[4]のいずれかに記載の防湿紙。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、層間強度に優れる、建材用合板との接着性を有する、グラビア印刷適性を有する及び黄変色を抑制するという特性を有する防湿紙を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明を詳細に説明する。
防湿紙は、紙基材と、前記紙基材に対して防湿層を有する。前記防湿層は、スチレンブタジエン系共重合樹脂及びパラフィンワックスを含有する。防湿層は、1層又は2層以上である。いくつかの実施態様において、防湿層は、1層である。この理由は、製造コスト的に有利になるからである。
また、防湿紙は、紙基材において防湿層を有する側の反対面に対してグラビア印刷適性を高めるための塗工層を有することができる。グラビア印刷のための塗工層は、従来公知のものである。いくつかの実施態様において、防湿紙は、グラビア印刷のための塗工層を有しない。この理由は、製造コスト的に有利であるからである。
【0015】
スチレンブタジエン系共重合樹脂は、樹脂分野で従来公知の樹脂である。スチレンブタジエン系共重合樹脂は、例えば、スチレン系単量体とブタジエン系単量体との共重合樹脂であって、共重合樹脂においてスチレン系単量体及びブタジエン系単量体の合計単量体が50mol%超を占める共重合樹脂である。スチレン系単量体は、例えば、スチレン及びα-メチルスチレン等のビニル基に置換基を有するスチレン誘導体、並びにビニルトルエン及びp-クロルスチレン等のベンゼン環に置換基を有するスチレン誘導体を挙げることができる。ブタジエン系単量体は、例えば、1,3-ブタジエン、並びに2-メチル-1,3-ブタジエン及び2-クロロ-1,3-ジブタジエン等の置換基を有する誘導体を挙げることができる。さらに、スチレンブタジエン系共重合樹脂は、スチレン系単量体及びブタジエン系単量体以外に、スチレン系単量体及びブタジエン系単量体と共重合可能な他単量体を有することができる。他単量体の例としては、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸塩、(メタ)アクリレート、マレイン酸、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン及びエチレン等を挙げることができる。スチレンブタジエン系共重合樹脂は、共重合樹脂を構成する各単量体を添加して、各単量体の濃度を調整しながら乳化重合法により得ることができる。また、スチレンブタジエン系共重合樹脂は、スチレンブタジエン系共重合オリゴマーと、スチレン系単量体、ブタジエン系単量体、他単量体、スチレンブタジエン系共重合オリゴマー、スチレン他単量体系共重合オリゴマー等とのラジカル重合により得ることができる。
防湿層は、結晶性に優れるスチレン単量体と粘弾性に優れるブタジエン系単量体とを有するスチレンブタジエン系共重合樹脂を含有することで防湿性及び建材用合板との接着性を得ることができる。
【0016】
いくつかの実施態様において、スチレンブタジエン系共重合樹脂は、共重合樹脂を構成する単量体としてメチルメタクリレート、スチレン及び1,3-ブタジエンを含む。少なくとも一つの実施態様において、スチレンブタジエン系共重合樹脂は、共重合樹脂を構成する単量体としてメチルメタクリレート、スチレン及び1,3-ブタジエンを含み、共重合樹脂中においてスチレンが50質量%超である。これらの理由は、防湿性、層間強度及び/又は建材用合板との接着性が良化するからである。本発明者らは、メチルメタクリレートが有する粘着性及び被膜性がスチレンブタジエン系共重合樹脂に付与される、並びにメチルメタクリレートによって極性を有する紙基材に対して接着し易くなるため、と考える。スチレンブタジエン系共重合樹脂を構成する単量体は、共重合樹脂のFT-IR(フーリエ変換赤外分光光度)分析チャート、MS(質量分析)スペクトル及びNMR(核磁気共鳴)分析スペクトルから解析することができる。
【0017】
パラフィンワックスは、従来公知のワックスである。パラフィンワックスは、いわゆる石油ワックスに属し、石油精製において減圧蒸留留出油から分離及び精製して製造されるワックスである。石油ワックスは、JIS K2235:1991によって、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタムの3種に大別される。同様に分離及び精製されるマイクロクリスタリンワックスが分子量500~800で炭素数30~60程度、大きい主鎖に側鎖を持つ分岐炭化水素(イソパラフィン)又は環状炭化水素(シクロパラフィン)が主成分であるのに対し、パラフィンワックスは、分子量が300~550と狭く、直鎖状炭化水素が主成分で炭素数が大体20~40の範囲である。パラフィンワックスは、例えば、中京油脂社、日本精蝋社及びビックケミー・ジャパン社等から市販される。
防湿層は、スチレンブタジエン系共重合樹脂と併用してパラフィンワックスを含有することによって防湿性を良化することができる。いくつかの実施態様において、防湿層中のパラフィンワックスの含有量は、該防湿層のスチレンブタジエン系共重合樹脂100質量部に対して0.7質量部以上7質量部以下である。この理由は、層間強度及び建材用合板との接着性を有しながら防湿性を良化することができるからである。
【0018】
いくつかの実施態様において、パラフィンワックスは融点が50℃以上である。また、いくつかの実施態様において、パラフィンワックスは融点が80℃以下である。少なくとも一つの実施態様において、パラフィンワックスは融点が50℃以上80℃以下である。これらの理由は、層間強度及び建材用合板との接着性を有しながら防湿性を良化することができるから及び融点が80℃超のパラフィンワックスは入手困難であるからである。
【0019】
防湿層は、スチレンブタジエン系共重合樹脂及びパラフィンワックス以外に従来公知の各種添加剤を必要に応じて含有することができる。添加剤は、例えば、無機顔料、有機顔料、スチレンブタジエン系共重合樹脂以外の各種樹脂、澱粉類及びセルロース類等の多糖類、界面活性剤、分散剤、増粘剤、消泡剤、バリア剤、撥水剤、耐水化剤、着色剤及び紫外線吸収剤等を挙げることができる。
【0020】
いくつかの実施態様において、防湿層は、無機顔料及び有機顔料である顔料を実質的に含有しない。この理由は、層間強度が良化するからである。ここで、「実質的に含有しない」とは、防湿層の強度を低下しない程度の含有量以下であって、例えば、防湿層の乾燥固形分に対して顔料の含有量が2質量%以下の範囲を指す。顔料は、製紙分野で従来公知のものである。
【0021】
防湿層は、紙基材の片面に対して防湿層塗工液を塗工及び乾燥することで得ることができる。スチレンブタジエン系共重合樹脂及びパラフィンワックスを含有する防湿層は、例えば、スチレンブタジエン系共重合樹脂及びパラフィンワックスを配合した防湿層塗工液を塗工及び乾燥することによって得ることができる。
塗工及び乾燥する方法は、例えば、塗工紙分野で従来公知の塗工装置及び乾燥装置を用いて防湿層塗工液を塗工及び乾燥する方法を挙げることができる。塗工装置の例としては、フィルムプレスコーター、エアナイフコーター、ロッドブレードコーター、バーコーター、ブレードコーター、グラビアコーター、カーテンコーター、Eバーコーター、及びフィルムトランスファーコーター等を挙げることができる。乾燥装置の例としては、直線トンネル乾燥機、アーチドライヤー、エアループドライヤー、サインカーブエアフロートドライヤー等の熱風乾燥機、赤外線加熱ドライヤー、及びマイクロ波を利用した乾燥機等の各種乾燥装置を挙げることができる。
【0022】
いくつかの実施態様において、防湿紙は、紙基材と、前記紙基材の片面に防湿層を有し、前記紙基材が熱可塑性樹脂含浸紙であり、前記防湿層がスチレンブタジエン系共重合樹脂及びパラフィンワックスを含有し、前記スチレンブタジエン系共重合樹脂が共重合樹脂を構成する単量体としてメチルメタクリレート、スチレン及び1,3-ブタジエンを含む。
少なくとも一つの実施態様において、防湿紙は、紙基材と、前記紙基材の片面に防湿層を有し、前記紙基材が熱可塑性樹脂含浸紙であり、前記防湿層がスチレンブタジエン系共重合樹脂及びパラフィンワックスを含有し、前記スチレンブタジエン系共重合樹脂が共重合樹脂を構成する単量体としてメチルメタクリレート、スチレン及び1,3-ブタジエンを含み、共重合樹脂中においてスチレンが50質量%超である。
【0023】
いくつかの実施態様において、防湿層の塗工量は、紙基材の片面に対して乾燥固形分として9g/m2以上23g/m2以下である。この理由は、層間強度及び建材用合板との接着性が良化するからである。防湿層が2層以上の場合、防湿層の塗工量はこれらの合計である。
また、いくつかの実施態様において、防湿紙は、防湿層中のパラフィンワックスの含有量が該防湿層のスチレンブタジエン系共重合樹脂100質量部に対して0.7質量部以上7質量部以下であり、かつ該防湿層の塗工量が紙基材の片面に対して乾燥固形分として9g/m2以上23g/m2以下である。防湿層が2層以上の場合、防湿層の塗工量はこれらの合計である。
少なくとも一つの実施態様において、防湿紙は、防湿層中のパラフィンワックスの含有量が該防湿層のスチレンブタジエン系共重合樹脂100質量部に対して0.7質量部以上7質量部以下であり、かつ該防湿層の塗工量が紙基材の片面に対して乾燥固形分として9g/m2以上23g/m2以下であり、前記スチレンブタジエン系共重合樹脂が共重合樹脂を構成する単量体としてメチルメタクリレート、スチレン及び1,3-ブタジエンを含み、共重合樹脂中においてスチレンが50質量%超である。防湿層が2層以上の場合、防湿層の塗工量はこれらの合計である。
【0024】
紙基材は、紙である原紙に熱可塑性樹脂を含浸して成る熱可塑性樹脂含浸紙である。
前記原紙は、例えば、木材パルプ及び/又は非木材パルプから成るスラリーに対して、填料、内添サイズ剤、定着剤、歩留り向上剤、乾燥紙力剤、湿潤紙力剤、バインダー、濾水性向上剤、pH調整剤、カチオン性樹脂及び多価陽イオン塩等のカチオン化剤、顔料分散剤、増粘剤、流動性改良剤、界面活性剤、消泡剤、抑泡剤、離型剤、発泡剤、浸透剤、着色剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、防バイ剤、並びに耐水化剤等の製紙分野で従来公知の各種添加剤を必要に応じて添加した紙料を、酸性、中性又はアルカリ性の条件で、従来公知の抄紙方法によって抄造した抄造紙、前記抄造紙に対してカレンダー処理を施した抄造紙、前記抄造紙に対して表面サイズ剤を含むサイズプレス液でサイズプレスした普通紙、及び前記普通紙に対してカレンダー処理を施した普通紙等を挙げることができる。さらに、熱可塑性樹脂を含浸する前の前記原紙の例としては、片艶クラフト紙等の片艶紙、両艶クラフト紙等の両艶紙、未晒クラフト紙、晒クラフト紙、クラフト伸長紙、グラシン紙、再生紙及び塗工紙等を挙げることができる。
【0025】
抄造は、例えば、従来公知の抄紙機を用いる方法を挙げることができる。抄紙機の例としては、長網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機、コンビネーション抄紙機、円網抄紙機、ヤンキー抄紙機等を挙げることができる。
【0026】
カレンダー処理とは、ロール間に紙を通すことによって平滑性及び厚みを平均化する処理である。カレンダー処理は、例えば、従来公知のカレンダー装置を用いる方法を挙げることができる。カレンダー装置の例としては、マシンカレンダー、ソフトニップカレンダー、スーパーカレンダー、多段カレンダー、マルチニップカレンダー等を挙げることができる。
【0027】
サイズプレスは、製紙分野で従来公知の方法である。サイズプレスは、例えば、インクラインドサイズプレス、ホリゾンタルサイズプレス、フィルムトランスファー方式としてロッドメタリングサイズプレス、ロールメタリングサイズプレス及びブレードメタリングサイズプレスを、ロッドメタリングサイズプレスではシムサイザー、オプティサイザー、スピードサイザー及びフィルムプレスを、ロールメタリングサイズプレスではゲートロールコーターを挙げることができる。その他に、ビルブレードコーター、ツインブレードコーター、ベルバパコーター、タブサイズプレス及びカレンダーサイズプレスなどを挙げることができる。
サイズプレスに用いる表面サイズ剤は、製紙分野で従来公知のものである。表面サイズ剤は、例えば、澱粉系サイズ剤、セルロース系サイズ剤、ポリビニルアルコール系サイズ剤、スチレンアクリル系サイズ剤、オレフィン系サイズ剤、スチレンマレイン酸系サイズ剤、及びアクリルアミド系サイズ剤等を挙げることができる。
【0028】
木材パルプは、製紙分野で従来公知のものである。木材パルプの例としては、LBKP(Leaf Bleached Kraft Pulp)、NBKP(Needle Bleached Kraft Pulp)などの化学パルプ、GP(Groundwood Pulp)、PGW(Pressure GroundWood pulp)、RMP(Refiner Mechanical Pulp)、TMP(ThermoMechanical Pulp)、CTMP(ChemiThermoMechanical Pulp)、BCTMP(Bleached ChemiThermoMechanical Pulp)、CMP(ChemiMechanical Pulp)、CGP(ChemiGroundwood Pulp)などの機械パルプ、及びDIP(DeInked Pulp)などの古紙パルプを挙げることができる。木材としては、例えば、針葉樹及び広葉樹を挙げることができる。
非木材パルプは、製紙分野で従来公知の非木材繊維を原料とするパルプである。非木材繊維の原料は、例えば、コウゾ、ミツマタ及びガンピ等の木本靭皮、亜麻、大麻及びケナフ等の草本靭皮、マニラ麻、アバカ及びサイザル麻等の葉繊維、イネわら、ムギわら、サトウキビバカス、タケ及びエスパルト等の禾本科植物、並びにワタ及びリンター等の種毛を挙げることができる。
木材パルプ及び/又は非木材パルプは、前記木材パルプ及び前記非木材パルプから成る群から選ばれる一種又は二種以上である。
【0029】
いくつかの実施態様において、紙基材は、熱可塑性樹脂を含浸する前の原紙として片艶紙である。紙基材は、熱可塑性樹脂を含浸する前の原紙が片艶紙である場合、グラビア印刷する側を艶面及び防湿層を有する側を非艶面として用いる。この理由は、艶面がグラビア印刷適性を良化かつ非艶面が層間強度を良化するからである。片艶紙は、従来公知のものである。片艶紙は、例えば、特開平10-25690号公報及び特開2011-12357号公報に記載されるが如く、抄紙した湿紙を鏡面仕上げしたヤンキードライヤーに密着及び乾燥して得ることができる。また、片艶紙は、特開平3-199485号公報、特開2009-79326号公報及び特開2009-138294号公報等に開示された製造方法によって得ることができる。
【0030】
熱可塑性樹脂含浸紙を得るための熱可塑性樹脂は、従来公知の樹脂である。
熱可塑性樹脂は、例えば、主な単量体として(メタ)アクリル酸若しくはその塩又は(メタ)アクリレートを有するアクリル系樹脂、主な単量体として酢酸ビニルを有する酢酸ビニル系樹脂、並びにアクリロニトリルブタジエンゴム及びスチレンブタジエン等の合成ゴム系樹脂等を挙げることができる。熱可塑性樹脂含浸紙を得るための樹脂は、上記樹脂から成る群から選ばれる一種又は二種以上である。いくつかの実施態様において、熱可塑性樹脂含浸紙を得るための熱可塑性樹脂はアクリル系樹脂である。この理由は、アクリル系樹脂が有する耐水性によって防湿紙の防湿性が良化、アクリル系樹脂が有する接着性によって防湿層に対する層間強度が良化、及び黄変色がより抑制できるからである。
樹脂含浸紙を得るための樹脂として熱硬化性樹脂が従来よりよく採用される。熱硬化性樹脂は、例えば、エポキシ樹脂、メラミン樹脂及びフェノール樹脂等を挙げることができる。熱可塑性樹脂に比べて熱硬化性樹脂は、紙基材の紙層間強度に優れるものの、紙基材と防湿層との層間強度及び黄変色の抑制の点で劣る傾向を示す。
【0031】
いくつかの実施態様において、防湿紙は、紙基材と、前記紙基材の片面に防湿層を有し、前記紙基材が熱可塑性樹脂含浸紙であり、前記防湿層がスチレンブタジエン系共重合樹脂及びパラフィンワックスを含有し、前記スチレンブタジエン系共重合樹脂が、共重合樹脂を構成する単量体としてメチルメタクリレート、スチレン及び1,3-ブタジエンを含み、並びに前記熱可塑性樹脂含浸紙の熱可塑性樹脂がアクリル系樹脂である。
少なくとも一つの実施態様において、防湿紙は、紙基材と、前記紙基材の片面に防湿層を有し、前記紙基材が熱可塑性樹脂含浸紙であり、前記防湿層がスチレンブタジエン系共重合樹脂及びパラフィンワックスを含有し、前記スチレンブタジエン系共重合樹脂が、共重合樹脂を構成する単量体としてメチルメタクリレート、スチレン及び1,3-ブタジエンを含み、共重合樹脂中においてスチレンが50質量%超であり、並びに前記熱可塑性樹脂含浸紙の熱可塑性樹脂がアクリル系樹脂である。
【0032】
いくつかの実施態様において、熱可塑性樹脂含浸紙を得るためのアクリル系樹脂は、ガラス転移温度が-30℃以上10℃未満である。この理由は、層間強度が良化するからである。また、この理由は、グラビア印刷適性を得るための塗工層が防湿層を有する側に対して紙基材の反対面に存在しない場合、紙基材のグラビア印刷適性が良化するからである。
【0033】
ガラス転移温度は、下記のFox式に従い、共重合樹脂の各単量体の質量比率から算出される値である。
1/Tg=(W1/Tg1)+(W2/Tg2)+・・・+(Wm/Tgm)
W1+W2+・・・Wm=1
式中、Tgは共重合樹脂のガラス転移温度を表わし、Tg1、Tg2・・・、Tgmは各単量体から成る重合樹脂のガラス転移温度を表わす。温度の単位はKである。また、W1、W2・・・、Wmは各重合単量体の質量比率を表わす。
前記Fox式における各単量体のガラス転移温度は、例えば、Polymer Handbook Third Edition(Wiley-Interscience 1989)記載の値を用いればよい。
【0034】
原紙等へ樹脂を含浸させる方法は、例えば、抄紙機にオンラインで設置されているサイズプレス装置により含浸する方法、抄造乾燥後にオフラインでサイズプレス装置により含浸又はディップコート若しくは浸漬により含浸する方法等を挙げることができる。
【0035】
いくつかの実施態様において、紙基材において含浸して含む熱可塑性樹脂の含有量は、得られた熱可塑性樹脂含浸紙に対して8質量%以上35質量%以下の範囲である。この理由は、防湿性、建材用合板との接着性及びグラビア印刷適性が良化するからである。
【0036】
いくつかの実施態様において、防湿紙は、紙基材と、前記紙基材の片面に対して防湿層を有し、前記紙基材が片艶紙に熱可塑性樹脂を含浸した熱可塑性樹脂含浸紙であり、前記防湿層がスチレンブタジエン系共重合樹脂及びパラフィンワックスを含有する。少なくとも一つの実施態様において、防湿紙は、紙基材と、前記紙基材の片面に対して防湿層を有し、前記紙基材が片艶紙にアクリル系樹脂を含浸した熱可塑性樹脂含浸紙であり、前記防湿層がスチレンブタジエン系共重合樹脂及びパラフィンワックスを含有する。
いくつかの実施態様において、防湿紙は、紙基材と、前記紙基材の片面に対して防湿層を有し、前記紙基材が片艶紙に熱可塑性樹脂を含浸した熱可塑性樹脂含浸紙であり、前記防湿層がスチレンブタジエン系共重合樹脂及びパラフィンワックスを含有し、防湿層中のパラフィンワックスの含有量が前記防湿層のスチレンブタジエン系共重合樹脂100質量部に対して0.7質量部以上7質量部以下でありかつ前記防湿層の塗工量が紙基材の片面に対して乾燥固形分として9g/m2以上23g/m2以下であり、並びに前記紙基材が、紙基材において含浸して含む熱可塑性樹脂の含有量が得られた熱可塑性樹脂含浸紙に対して8質量%以上35質量%以下の範囲である。少なくとも一つの実施態様において、防湿紙は、紙基材と、前記紙基材の片面に対して防湿層を有し、前記紙基材が片艶紙にアクリル系樹脂を含浸した熱可塑性樹脂含浸紙であり、前記防湿層がスチレンブタジエン系共重合樹脂及びパラフィンワックスを含有し、防湿層中のパラフィンワックスの含有量が前記防湿層のスチレンブタジエン系共重合樹脂100質量部に対して0.7質量部以上7質量部以下でありかつ前記防湿層の塗工量が紙基材の片面に対して乾燥固形分として9g/m2以上23g/m2以下であり、並びに前記紙基材が、紙基材において含浸して含む熱可塑性樹脂の含有量が得られた熱可塑性樹脂含浸紙に対して8質量%以上35質量%以下の範囲である。
【0037】
いくつかの実施態様において、防湿紙は、紙基材と、前記紙基材の片面に対して防湿層を有し、前記紙基材が片艶紙に熱可塑性樹脂を含浸した熱可塑性樹脂含浸紙であり、前記防湿層がスチレンブタジエン系共重合樹脂及びパラフィンワックスを含有し、前記パラフィンワックスが融点50℃以上80℃以下である。また、いくつかの実施態様において、防湿紙は、紙基材と、前記紙基材の片面に対して防湿層を有し、前記紙基材が片艶紙にアクリル系樹脂を含浸した熱可塑性樹脂含浸紙であり、前記防湿層がスチレンブタジエン系共重合樹脂及びパラフィンワックスを含有し、前記パラフィンワックスが融点50℃以上80℃以下である。少なくとも一つの実施態様において、防湿紙は、紙基材と、前記紙基材の片面に対して防湿層を有し、前記紙基材が片艶紙にアクリル系樹脂を含浸した熱可塑性樹脂含浸紙であり、前記防湿層がスチレンブタジエン系共重合樹脂及びパラフィンワックスを含有し、前記パラフィンワックスが融点50℃以上80℃以下であり、前記アクリル系樹脂のガラス転移温度が-30℃以上10℃未満である。
【0038】
いくつかの実施態様において、防湿紙は、紙基材と、前記紙基材の片面に対して防湿層を有し、前記紙基材が片艶紙に熱可塑性樹脂を含浸した熱可塑性樹脂含浸紙であり、前記防湿層がスチレンブタジエン系共重合樹脂及びパラフィンワックスを含有し、前記スチレンブタジエン系共重合樹脂が共重合樹脂を構成する単量体としてメチルメタクリレート、スチレン及び1,3-ブタジエンを含む。また、いくつかの実施態様において、防湿紙は、紙基材と、前記紙基材の片面に対して防湿層を有し、前記紙基材が片艶紙に熱可塑性樹脂を含浸した熱可塑性樹脂含浸紙であり、前記防湿層がスチレンブタジエン系共重合樹脂及びパラフィンワックスを含有し、前記スチレンブタジエン系共重合樹脂が共重合樹脂を構成する単量体としてメチルメタクリレート、スチレン及び1,3-ブタジエンを含み、共重合樹脂中においてスチレンが50質量%超である。
少なくとも一つの実施態様において、防湿紙は、紙基材と、前記紙基材の片面に対して防湿層を有し、前記紙基材が片艶紙にアクリル系樹脂を含浸した熱可塑性樹脂含浸紙であり、前記防湿層がスチレンブタジエン系共重合樹脂及びパラフィンワックスを含有し、前記スチレンブタジエン系共重合樹脂が共重合樹脂を構成する単量体としてメチルメタクリレート、スチレン及び1,3-ブタジエンを含む。また、少なくとも一つの実施態様において、防湿紙は、紙基材と、前記紙基材の片面に対して防湿層を有し、前記紙基材が片艶紙にアクリル系樹脂を含浸した熱可塑性樹脂含浸紙であり、前記防湿層がスチレンブタジエン系共重合樹脂及びパラフィンワックスを含有し、前記スチレンブタジエン系共重合樹脂が共重合樹脂を構成する単量体としてメチルメタクリレート、スチレン及び1,3-ブタジエンを含み、共重合樹脂中においてスチレンが50質量%超である。
さらに、いくつかの実施態様において、防湿紙は、紙基材と、前記紙基材の片面に対して防湿層を有し、前記紙基材が片艶紙に熱可塑性樹脂を含浸した熱可塑性樹脂含浸紙であり、前記防湿層がスチレンブタジエン系共重合樹脂及びパラフィンワックスを含有し、前記スチレンブタジエン系共重合樹脂が共重合樹脂を構成する単量体としてメチルメタクリレート、スチレン及び1,3-ブタジエンを含み、共重合樹脂中においてスチレンが50質量%超であり、前記パラフィンワックスが融点50℃以上80℃以下である。少なくとも一つの実施態様において、防湿紙は、紙基材と、前記紙基材の片面に対して防湿層を有し、前記紙基材が片艶紙にアクリル系樹脂を含浸した熱可塑性樹脂含浸紙であり、前記防湿層がスチレンブタジエン系共重合樹脂及びパラフィンワックスを含有し、前記スチレンブタジエン系共重合樹脂が共重合樹脂を構成する単量体としてメチルメタクリレート、スチレン及び1,3-ブタジエンを含み、共重合樹脂中においてスチレンが50質量%超であり、前記パラフィンワックスが融点50℃以上80℃以下である。
【0039】
いくつかの実施態様において、防湿紙は、紙基材と、前記紙基材の片面に防湿層及び残る片面にグラビア印刷適性のための塗工層を有し、前記紙基材が熱可塑性樹脂含浸紙であり、前記防湿層がスチレンブタジエン系共重合樹脂及びパラフィンワックスを含有する。また、いくつかの実施態様において、防湿紙は、紙基材と、前記紙基材の片面に防湿層及び残る片面にグラビア印刷適性のための塗工層を有し、前記紙基材が熱可塑性樹脂含浸紙であり、前記防湿層がスチレンブタジエン系共重合樹脂及びパラフィンワックスを含有し、前記熱可塑性樹脂がアクリル系樹脂である。
いくつかの実施態様において、防湿紙は、紙基材と、前記紙基材の片面に防湿層及び残る片面にグラビア印刷適性のための塗工層を有し、前記紙基材が熱可塑性樹脂含浸紙であり、前記防湿層がスチレンブタジエン系共重合樹脂及びパラフィンワックスを含有し、前記スチレンブタジエン系共重合樹脂が共重合樹脂を構成する単量体としてメチルメタクリレート、スチレン及び1,3-ブタジエンを含む。また、いくつかの実施態様において、防湿紙は、紙基材と、前記紙基材の片面に防湿層及び残る片面にグラビア印刷適性のための塗工層を有し、前記紙基材が熱可塑性樹脂含浸紙であり、前記防湿層がスチレンブタジエン系共重合樹脂及びパラフィンワックスを含有し、前記スチレンブタジエン系共重合樹脂が共重合樹脂を構成する単量体としてメチルメタクリレート、スチレン及び1,3-ブタジエンを含み、前記熱可塑性樹脂がアクリル系樹脂である。少なくとも一つの実施態様において、防湿紙は、紙基材と、前記紙基材の片面に防湿層及び残る片面にグラビア印刷適性のための塗工層を有し、前記紙基材が熱可塑性樹脂含浸紙であり、前記防湿層がスチレンブタジエン系共重合樹脂及びパラフィンワックスを含有し、前記スチレンブタジエン系共重合樹脂が共重合樹脂を構成する単量体としてメチルメタクリレート、スチレン及び1,3-ブタジエンを含み、前記熱可塑性樹脂がアクリル系樹脂であり、前記パラフィンワックスが融点50℃以上80℃以下である。
【0040】
グラビア印刷適性のための塗工層は、グラビア印刷適性を有していれば特に限定されない。いくつかの実施態様において、塗工層は、顔料及びバインダーを含有する。少なくとも一つの実施態様において、グラビア印刷適性のための塗工層は、無機顔料及びバインダーを含有する。
【0041】
いくつかの実施態様において、上記原紙は、界面活性剤を含有する。少なくとも一つの実施態様において、原紙が、例えば、抄造紙、普通紙、片艶紙、両艶紙、未晒クラフト紙及び晒クラフト紙等のような非塗工紙の場合は該原紙が界面活性剤を含有し、原紙が塗工紙の場合は該原紙の最表面に位置する塗工層が界面活性剤を含有する。これらの理由は、層間強度が良化するからである。
【0042】
界面活性剤は、従来公知のものである。界面活性剤は、例えば、アルカリ金属塩タイプのアニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤及び両イオン性界面活性剤である。いくつかの実施態様において、界面活性剤は、アルカリ金属塩タイプのアニオン性界面活性剤又はHLBが15以上のノニオン性界面活性剤である。この理由は、熱可塑性樹脂含浸紙を得るための樹脂がアクリル系樹脂である場合に前記樹脂を凝集させないからであり、熱可塑性樹脂含浸紙を得るための樹脂が凝集すると、特に防湿性が悪化する場合があるからである。さらに、カチオン性界面活性剤は、黄変色の抑制を悪化する場合があるからである。アルカリ金属塩タイプのアニオン性界面活性剤は、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム、アルキル硫酸ナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム等を挙げることができる。HLBが15以上のノニオン性界面活性剤は、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンオレート等を挙げることができる。
【実施例0043】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明は、これらの実施例に限定されない。ここで「質量部」及び「質量%」は、乾燥固形分量あるいは実質成分量の各々「質量部」及び「質量%」を表わす。付与量は乾燥固形分量を示す。
【0044】
実施例及び比較例に使用する紙基材を以下の手順により作製した。
【0045】
(紙基材1)
LBKP/NBKP=80/20質量部からなるパルプスラリーに、二酸化チタン填料10質量部、ポリアクリルアミド系乾燥紙力剤1.5質量部、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン系湿潤紙力剤1質量部、硫酸アルミニウム定着剤2質量部、アルミン酸ナトリウムpH調整剤0.5質量部を添加して調成した紙料を長網抄紙機にて坪量60g/m2となるように抄造し、次にスチーム加熱多筒シリンダ乾燥機で乾燥して抄造紙を得た。
得た抄造紙に含浸する樹脂としてアクリル系樹脂エマルション(DIC社、ボンコート(登録商標)AN-678A-E、ガラス転移温度-25℃)100質量部及びアニオン性界面活性剤としてアルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム(花王社、ペレックス(登録商標)NB-L)3質量部からなる含浸液をサイズプレス方式にて抄造紙に含浸した。樹脂の含有量は得られた樹脂含浸紙において5質量%となるよう、含浸した。含浸後に乾燥して紙基材1を得た。
【0046】
(紙基材2)
紙基材1において、含浸した樹脂の含有量が得られた樹脂含浸紙において8質量%となるよう含浸した以外は同様に行い、紙基材2を得た。
【0047】
(紙基材3)
紙基材1において、含浸した樹脂の含有量が得られた樹脂含浸紙において22質量%となるよう含浸した以外は同様に行い、紙基材3を得た。
【0048】
(紙基材4)
紙基材1において、含浸した樹脂の含有量が得られた樹脂含浸紙において35質量%となるよう含浸した以外は同様に行い、紙基材4を得た。
【0049】
(紙基材5)
紙基材1において、含浸した樹脂の含有量が得られた樹脂含浸紙において42質量%となるよう含浸した以外は同様に行い、紙基材5を得た。
【0050】
(紙基材6)
紙基材2において、抄造後に鏡面を有するヤンキードライヤーに密着して乾燥する以外は同様に行い、片艶紙の紙基材6を得た。
【0051】
(紙基材7)
紙基材2において、アニオン性界面活性剤としてアルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム3質量部を0質量部にする以外は同様に行い、紙基材7を得た。
【0052】
(紙基材8)
紙基材2において、アニオン性界面活性剤としてアルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム3質量部を非イオン性界面活性剤としてポリオキシエチレンラウリルエーテル(花王社、エマルゲン(登録商標)120、HLB15.3)3質量部にする以外は同様に行い、紙基材8を得た。
【0053】
(紙基材9)
紙基材2において、アニオン性界面活性剤としてアルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム3質量部をカチオン性界面活性剤としてラウリルトリメチルアンモニウムクロライド(花王社、コータミン(登録商標)24P)3質量部にする以外は同様に行い、紙基材9を得た。
【0054】
(紙基材10)
紙基材7において、アクリル系樹脂エマルション(DIC社、ボンコート(登録商標)AN-678A-E、ガラス転移温度-25℃)100質量部をアクリル系樹脂エマルション(日信化学工業社、ビニブラン(登録商標)2682、ガラス転移温度-30℃)100質量部にする以外は同様に行い、紙基材10を得た。
【0055】
(紙基材11)
紙基材7において、アクリル系樹脂エマルション(DIC社、ボンコート(登録商標)AN-678A-E、ガラス転移温度-25℃)100質量部をアクリル系樹脂エマルション(DIC社、ボンコート(登録商標)AB-886、ガラス転移温度-38℃)100質量部にする以外は同様に行い、紙基材11を得た。
【0056】
(紙基材12)
紙基材7において、アクリル系樹脂エマルション(DIC社、ボンコート(登録商標)AN-678A-E、ガラス転移温度-25℃)100質量部をアクリル系樹脂エマルション(DIC社、ボンコート(登録商標)AC-501、ガラス転移温度7℃)100質量部にする以外は同様に行い、紙基材12を得た。
【0057】
(紙基材13)
紙基材7において、アクリル系樹脂エマルション(DIC社、ボンコート(登録商標)AN-678A-E、ガラス転移温度-25℃)100質量部をアクリル系樹脂エマルション(三井化学社、ボンロン(登録商標)S-483TBF、ガラス転移温度11℃)100質量部にする以外は同様に行い、紙基材13を得た。
【0058】
(紙基材14)
得た紙基材2において、片面に対してグラビア印刷のための塗工層を設け、紙基材14を得た。
グラビア印刷のための塗工層を形成する塗工層塗工液は以下の配合とした。
市販1級カオリン 40質量部
市販微粒カオリン 40質量部
軽質炭酸カルシウム 15質量部
有機顔料 5質量部
市販ポリアクリル系分散剤 0.1質量部
市販リン酸エステル化澱粉 0.5質量部
スチレンブタジエン系共重合樹脂 9.0質量部
市販ステアリン酸カルシウム 1.5質量部
水酸化ナトリウム pH9.6に調整
最終的に塗工層塗工液の固形分濃度は50質量%とした。
得た塗工層塗工液を紙基材の片面に対してブレードコーターを用いて塗工量が9.5g/m2になるように塗工及び乾燥した。次に、線圧300kg/cm、速度700m/minの条件でスーパーカレンダー処理を行い、塗工層を設けた。
【0059】
(紙基材15)
紙基材7において、アクリル系樹脂エマルション(DIC社、ボンコート(登録商標)AN-678A-E、ガラス転移温度-25℃)100質量部をアクリロニトリルブタジエンゴムラテックス(ZEON社、Nipol(登録商標)1562、ガラス転移温度-21℃)に変更した以外は同様に行い、紙基材15を得た。
【0060】
(紙基材16)
紙基材2において、アクリル系樹脂エマルション(DIC社、ボンコート(登録商標)AN-678A-E、ガラス転移温度-25℃)100質量部をメラミン樹脂(ヘキスト社、マドリッド(登録商標)MW559)に変更した以外は同様に行い、紙基材16を得た。
【0061】
(紙基材17)
紙基材1において、樹脂を含浸する前の抄造紙を紙基材17とした。
【0062】
(防湿層塗工液)
防湿層を形成するための防湿層塗工液は、以下の配合とした。
樹脂 種類は表1に記載/100質量部
パラフィンワックス 融点は表1に記載/1.5質量部
最終的に防湿層塗工液の固形分濃度は30質量%とした。
得た防湿層塗工液を紙基材の片面に対してエアナイフコーターを用いて塗工量が15g/m2になるように塗工及び乾燥して、防湿紙を得た。なお、紙基材6に対しては、非艶面に防湿層を設けた。また、紙基材14に対しては、グラビア印刷のための塗工層を有しない側に防湿層を設けた。
【0063】
スチレンブタジエン系共重合樹脂1には、樹脂を構成する単量体がスチレン及び1,3-ブタジエンであるスチレンブタジエン系共重合樹脂を用いた。スチレンブタジエン系共重合樹脂2には、樹脂を構成する単量体がスチレン、1,3-ブタジエン及びメチルメタクリレートであって共重合樹脂中においてスチレンが約70質量%であるスチレンブタジエン系共重合樹脂を用いた。
【0064】
上記紙基材と防湿層との組み合わせは、表1に記載する。
【0065】
【0066】
各実施例及び各比較例について下記の事項を評価した。
【0067】
<層間強度>
得た防湿紙を紙基材のMD方向に沿って15mm幅で断裁し試験片を作製した。JIS P8139:1994に準じて剥離試験機を用いる方法で剥離強度を層間強度として測定した。測定値を基に下記の基準で評価した。本発明において、防湿紙は、評価AA、A、B又はCであれば層間強度に優れるものとする。
AA:230g/15mm以上。
A :210g/15mm以上230g/15mm未満。
B :190g/15mm以上210g/15mm未満。
C :130g/15mm以上190g/15mm未満。
D :130g/15mm未満。
【0068】
<建材用合板との接着性>
得た防湿紙を、5.5mm厚の2類普通合板に載置し、150℃、8kgf/cm2の条件で5分間熱圧処理して、防湿層と合板を貼着した。得た防湿紙と合板との接着性を目視で観察し、防湿紙と合板との間の浮き上がり具合を指標として下記の基準で評価した。本発明において、防湿紙は、評価AA、A、B又はCであれば建材合板との接着性を有するものとする。
AA:浮き上がり乃至浮きが認められず、極めて良好。
A :浮き上がりと認められない微かな浮きを極僅かに感じる程度で、良好。
B :1mm以上の浮き上がりが認められず、
かつ1mm未満の浮き上がりが極僅かに認められる程度で概ね良好。
C :1mm以上の浮き上がりが認められず、
かつ1mm未満の浮き上がりが僅かに認められる程度で概して良好
D :1mm以上の浮き上がりが僅かに認められ、やや不良。
E :1mm以上の浮き上がりが認められ、不良。
【0069】
<グラビア印刷適性>
得た防湿紙に対して、紙基材において防湿層を有する側の反対面に、グラビア印刷適性試験機(熊谷理機工業社)を用いてグラビア印刷を実施した。グラビア印刷には、網点グラビア版を使用した。得た印刷画像を観察し、印刷されたハーフトーンのミスドット(網点の欠落)の発生度合を指標として下記の基準で評価した。本発明において、防湿紙は、評価A、B又はCであればグラビア印刷適性を有するものとする。
A:網点の欠落が認められず、極めて良好。
B:ハイライト部等で部分的に極僅かに網点の欠落が認められる程度で良好。
C:上記Bより劣り、
ハイライト部等で部分的に僅かに網点の欠落が認められる程度で概ね良好。
D:上記Cより劣り、
ハイライト部等で部分的に網点の欠落が認められ、やや不良。
E:上記Dより劣り、
ハイライト部等で網点の欠落が認められ、不良。
【0070】
<黄変色>
得た防湿紙を、温度85±1℃及び湿度85±5%RHの条件の環境に72時間放置した。放置前における防湿紙の防湿層を有する側の反対面の色濃度b*値に対する放置後における防湿紙の防湿層を有する側の反対面の色濃度b*値を測定して、放置前後の色濃度b*値差(Δb*値)を求め、数値から下記の基準で評価した。色濃度b*値の測定は、日本電色工業社製の分光白色度・色差計PF-10を用いて、UVインの条件で行った。本発明において、防湿紙は、評価A、B又はCであれば黄変色を抑制できるものとする。
A:Δb*値が0.5未満。
B:Δb*値が0.5以上1.0未満。
C:Δb*値が1.0以上1.5未満。
D:Δb*値が1.5以上3.0未満。
E:Δb*値が3.0以上。
【0071】
<防湿性>
得た防湿紙について、温度40±0.5℃及び湿度90±2%RHの条件の環境下でJIS K7129:2008「プラスチック-フィルム及びシート-水蒸気透過度の求め方(機器測定法)」に準拠して透湿度測定器(Dr.Lyssy社、L80-4000)を用いて透湿度を測定した。測定値から下記の基準で評価した。本発明において、防湿紙は、評価A、B又はCであれば防湿性を有するものとする。
A:20g/m2・day以下。
B:20g/m2・day超25g/m2・day以下。
C:25g/m2・day超30g/m2・day以下。
D:30g/m2・day超40g/m2・day以下。
E:40g/m2・day超。
【0072】
評価結果を表1に示す。
【0073】
表1から、本発明の構成を満足する実施例1~20の防湿紙は、防湿性を有しながら、層間強度に優れ、建材用合板に対する接着性を有し、グラビア印刷適性を有し、及び黄変色を抑制する特性を有すると分かる。一方、本発明の構成を満足しない比較例1~5の防湿紙は、これら特性の少なくとも一種を満足することができないと分かる。
【0074】
主に実施例10と実施例18との対比から、熱可塑性樹脂としてアクリル系樹脂を含浸して成る紙基材に防湿層を設けた防湿紙は、層間強度、黄変色の抑制及び防湿性が良化すると分かる。
【0075】
主に実施例10、13、14、15及び16の間の対比から、熱可塑性樹脂含浸紙の樹脂がアクリル系樹脂であり、前記ガラス転移温度が-30℃以上10℃未満であると、層間強度及びグラビア印刷適性が良化すると分かる。
【0076】
主に実施例1、2、3、及び4の間の対比から、防湿層におけるパラフィンワックスの融点が50℃以上であると、層間強度、建材用合板に対する接着性及び防湿性が良化すると分かる。
【0077】
主に実施例3と実施例19との対比及び実施例18と実施例20との対比から、防湿層のスチレンブタジエン系共重合樹脂が、当該樹脂を構成する単量体としてメタクリレート、スチレン及び1,3-ブタジエンを含むと、防湿紙は、防湿性、層間強度及び/又は建材用合板との接着性が良化すると分かる。