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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023007213
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】氷取出スコップおよび製氷機
(51)【国際特許分類】
   F25C 5/20 20180101AFI20230111BHJP
【FI】
F25C5/20 305
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021110317
(22)【出願日】2021-07-01
(71)【出願人】
【識別番号】000194893
【氏名又は名称】ホシザキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141645
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100076048
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 喜幾
(72)【発明者】
【氏名】門脇 静馬
(57)【要約】
【課題】薬液供給用の専用の部材や装置を用いることなく、薬液を供給することができる氷取出スコップおよび製氷機を提供することを目的とする。
【解決手段】氷取出スコップ26は、氷を掬う受容部48と、受容部48に一端が接続された把持部50とを備える。把持部50は、受容部48内に連通する液通路60が貫通形成されている。受容部48を、開口部48aが上向きで内底面54aが把持部50の接続側に向けて下方傾斜する姿勢とした際に、把持部50の液通路60の内底面61が他端に向けて下方傾斜すると共に、液通路60の入口下端60cが、受容部48の内底面54aにおける傾斜下端以下の位置にあるよう構成される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一面側に開口して氷を掬う受容部(48)と、該受容部(48)に一端が接続された把持部(50)とを備える氷取出スコップにおいて、
前記把持部(50)は、前記受容部(48)内に連通する液通路(60)が形成されて、該受容部(48)に入れられた液状物を、液通路(60)を通して把持部(50)の他端から流出可能に構成され、
前記受容部(48)は、開口部(48a)が上向きとなる上向き姿勢で内底面(54a)が前記把持部(50)の接続側に向けて下方傾斜し、
前記液通路(60)の内底面(61)は、一端から他端に向かうにつれて前記開口部(48a)とは反対側に変位するように延在すると共に、該液通路(60)の内底面(61)における一端側の入口端(60c)は、前記受容部(48)の内底面(54a)における把持部(50)の接続側の底端(54b)と同一位置または該底端(54b)より液通路(60)の内底面(61)の変位側に位置するよう構成した
ことを特徴とする氷取出スコップ。
【請求項2】
前記把持部(50)は、該把持部(50)の延在方向に沿って延在して前記液通路(60)を画成する複数の部材(66,68)から構成され、
前記複数の部材(66,68)は、前記液通路(60)を画成する状態と、該液通路(60)を延在方向と交差する方向に開放する状態とになるよう構成した請求項1記載の氷取出スコップ。
【請求項3】
製氷水が貯留される水貯留部(32)と、冷凍機構によって冷却される製氷部(16)とを備え、水貯留部(32)と製氷部(16)との間で製氷水を循環して該製氷部(16)に氷を生成する製氷機において、
請求項1または2記載の氷取出スコップと、
前記氷取出スコップを支持する支持部(16,42)とを備え、
前記氷取出スコップを、前記受容部(48)が上向き姿勢となるように前記支持部(16,42)に支持した状態で、前記液通路(60)は、前記入口端(60c)が受容部(48)における下方傾斜する内底面(54a)の傾斜下端となる前記底端(54b)以下に位置して他端に向けて下方傾斜すると共に、前記把持部(50)の他端は、製氷水の循環経路に液状物を流出可能な位置に臨むよう構成した
ことを特徴とする製氷機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、氷を取出す氷取出スコップおよび製氷機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
喫茶店やレストラン等の厨房では、冷凍系に接続する製氷機構により氷を連続的に製造し、得られた氷を、製氷機構の下方に設けた貯氷室に堆積貯留するようにした自動製氷機(製氷機)が好適に使用されている。そして、貯氷室内に貯留された氷の取り出しには、自動製氷機に付属の氷取出スコップが用いられる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、自動製氷機としては、外部水道源から製氷水タンクに供給して貯留した製氷水を、冷凍機構により冷却される製氷部に循環ポンプで供給して該製氷部で氷を生成し、製氷部で氷結しなかった製氷水を製氷水タンクに回収して再循環するよう構成された水循環式の自動製氷機が知られている(例えば、特許文献2参照)。製氷水タンクと製氷部との間で製氷水を循環する自動製氷機では、製氷水として用いる水道水に含まれるカルキやミネラル分などの不純物が、製氷水の循環経路にスケールとして経時的に付着するため、薬液を用いた定期的な洗浄が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-87996公報
【特許文献2】特開2009-180475公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記自動製氷機での洗浄は、薬液を、製氷水の循環経路に専用の漏斗を用いて供給したり、または循環経路に接続するように設けた薬液供給装置により供給し、該薬液を循環経路で循環して行われる。しかし、専用の漏斗を用いる場合は、当該漏斗を使用しないときに保管しておくスペースを確保する必要があると共に、使用する際には探す手間がかかる難点がある。また、薬液供給装置を用いる場合は、構成が複雑になると共にコストも嵩む問題が指摘される。
【0006】
そこで、発明者は、従来技術に内在している前記課題について考察を行った結果、該課題を解決するために、自動製氷機に付属の氷取出スコップを、薬液を供給可能な構成とすれば、専用の漏斗や薬液供給装置を用いることなく薬液の供給を行うことができると考え、本発明に到達したものである。
【0007】
すなわち本発明は、前述した従来技術に内在する前記課題に鑑み、これを好適に解決するべく提案されたものであって、薬液供給用の専用の部材や装置を用いることなく、薬液を供給することができる氷取出スコップおよび製氷機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、請求項1の発明に係る氷取出スコップは、
一面側に開口して氷を掬う受容部と、該受容部に一端が接続された把持部とを備える氷取出スコップにおいて、
前記把持部は、前記受容部内に連通する液通路が形成されて、該受容部に入れられた液状物を、液通路を通して把持部の他端から流出可能に構成され、
前記受容部は、開口部が上向きとなる上向き姿勢で内底面が前記把持部の接続側に向けて下方傾斜し、
前記液通路の内底面は、一端から他端に向かうにつれて前記開口部とは反対側に変位するように延在すると共に、該液通路の内底面における一端側の入口端は、前記受容部の内底面における把持部の接続側の底端と同一位置または該底端より液通路の内底面の変位側に位置するよう構成したことを要旨とする。
請求項1の発明によれば、氷取出スコップを、把持部の他端が製氷水の循環経路等の対象部に臨むようにセットした状態で、受容部に薬液等の液状物を注ぎ入れれば、該液状物を把持部の液通路を通して対象部に供給することができる。すなわち、製氷機に付属の氷取出スコップを用いて液状物を循環経路に供給し得るので、専用の漏斗や薬液供給装置を必要とせず、保管スペースを確保したり構成が複雑となったり、コストが嵩むのを防ぐことができる。また、液通路における受容部側の入口端は、セット状態において受容部の内底面における液通路の変位側に位置するよう構成したので、受容部に注ぎ入れられた液状物が滞ることなく該液状物を対象部に供給できる。
【0009】
請求項2の発明では、
前記把持部は、該把持部の延在方向に沿って延在して前記液通路を画成する複数の部材から構成され、
前記複数の部材は、前記液通路を画成する状態と、該液通路を延在方向と交差する方向に開放する状態とになるよう構成したことを要旨とする。
請求項2の発明によれば、液通路を開放して簡単に洗浄することができ、衛生的である。
【0010】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、請求項3の発明に係る製氷機は、
製氷水が貯留される水貯留部と、冷凍機構によって冷却される製氷部とを備え、水貯留部と製氷部との間で製氷水を循環して該製氷部に氷を生成する製氷機において、
請求項1または2記載の氷取出スコップと、
前記氷取出スコップを支持する支持部とを備え、
前記氷取出スコップを、前記受容部が上向き姿勢となるように前記支持部に支持した状態で、前記液通路は、前記入口端が受容部における下方傾斜する内底面の傾斜下端となる前記底端以下に位置して他端に向けて下方傾斜すると共に、前記把持部の他端は、製氷水の循環経路に液状物を流出可能な位置に臨むよう構成したことを要旨とする。
請求項3の発明によれば、製氷水の循環経路の洗浄に際し、薬液等の液状物を氷取出スコップによって循環経路に供給することができ、専用の薬液供給装置等を設けることで装置構造が複雑化するのを抑制できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る氷取出スコップおよび製氷機によれば、液状物を供給するための専用の部材や装置を不要とすることができると共に、受容部に注ぎ入れられた液状物を滞ることなく供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例に係る氷取出スコップを示す概略側面図である。
図2】実施例に係る氷取出スコップの概略平面図である。
図3】実施例に係る氷取出スコップで薬液を供給する状態を示す説明図である。
図4】実施例に係る氷取出スコップを付属品として備える自動製氷機を示す概略斜視図である。
図5】第1の別実施例に係る氷取出スコップの概略断面図である。
図6】第2の別実施例に係る氷取出スコップの概略側面図である。
図7】第2の別実施例に係る氷取出スコップの把持部の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明に係る氷取出スコップおよび製氷機につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照しながら以下説明する。氷取出スコップの実施例を説明する前に、該氷取出スコップを付属品として備える実施例に係る自動製氷機(製氷機)の構成について説明する。
【実施例0014】
図4に示す如く、自動製氷機10は、外箱と内箱との間に断熱材を充填して構成された箱体12を本体としている。箱体12の内部には、上部に設けられた製氷機構14の製氷部16で製造される氷を貯留する貯氷室18と、この貯氷室18の下方に設けられ、冷凍機構を構成する圧縮機や凝縮器ファン等の各種機器が配設される機械室20とが画成されている。箱体12には、貯氷室18から氷を取り出すための取出口12aが前方に開放するように開設されると共に、この取出口12aを閉閉する扉22が配設されている。また、製氷機構14の下方には、該製氷機構14から排出された製氷水等を受け入れて機外へ排出するドレンパン24が配設されている。また、貯氷室18の内壁に、氷取出スコップ26を保持するための保持部28が設けられている。
【0015】
実施例の前記製氷機構14は、所謂クローズドセルタイプと云われるものであって、図4に示す如く、前記貯氷室18の内部上方に水平に配置されて下方に開口する多数の製氷小室を備えた製氷部としての製氷室16と、製氷小室を開閉自在に閉成し、製氷水を貯留する水貯留部としての製氷水タンク32を下方に一体的に備えた水皿34と、を備える。製氷室16の上面には、冷凍機構を構成する蒸発器36が密着的に蛇行配置され、製氷運転時には蒸発器36に冷媒を循環させて製氷小室を強制冷却すると共に、除氷運転時にはホットガス(高温高圧冷媒)が蒸発器36に供給されて製氷小室からの氷の離脱を促すようになっている。水皿34は、図4において左右方向の一端側(実施例では左端側)が支軸により傾動可能に枢支され、この水皿34は、製氷運転時には略水平に位置して製氷小室を閉成する閉成位置に保持される。また水皿34は、除氷運転が開始されると、水皿開閉機構38により支軸を中心として下方へ傾動して製氷小室を開放した開放位置まで姿勢変化し、水皿34と共に開放位置まで傾動した製氷水タンク32内の製氷水が、傾斜下端側(実施例では右端側)に設けた排出口(図示せず)から下方のドレンパン24に排出される。そして、水皿34は、除氷運転において製氷小室から氷が離脱したことを条件として、水皿開閉機構38により支軸を中心として上方へ傾動して製氷小室を閉成する前記閉成位置に復帰するよう構成される。
【0016】
図4に示す如く、前記閉成位置の前記水皿34の上方に、上水道等の給水源に接続された給水管40が接続される散水器42が配置されており、給水管40の途中に配設された給水弁44を開放することで、給水管40からの水道水が散水器42を介して水皿34の表面(上面)に供給される。水皿34に供給された水道水は、該水皿34に設けた戻り孔(図示せず)等を介して製氷水タンク32に貯留され、製氷水として使用される。製氷水タンク32に、該製氷水タンク32に貯留されている製氷水を水皿34に供給する循環ポンプ46が配設されており、該循環ポンプ46によって水皿34に供給された製氷水は、該水皿34に設けた噴射孔(図示せず)から製氷室16の各製氷小室に噴射供給される。そして、製氷室16で氷結しなかった製氷水は、戻り孔を介して製氷水タンク32に回収され、再度の循環に供される。実施例では、製氷水タンク32、製氷室16、水皿34および製氷水タンク32と水皿34とを循環ポンプ46を介して接続して製氷水が流通する管体(図示せず)が、製氷水タンク32と製氷室16との間で製氷水が循環する循環経路(薬液等の液状物を供給する対象部)となる。なお、図示しないが、前記箱体12には、前記製氷機構14の前側を覆う前面パネルが着脱可能に配設されており、該前面パネルを箱体12から取り外すことで製氷機構14が露出し、前記氷取出スコップ26を用いて循環経路に薬液(液状物)を供給するために、製氷機構14の所定位置に氷取出スコップ26をセットする作業を前側から行い得るよう構成されている。
【0017】
ここで、実施例の自動製氷機10では、前記製氷室16に氷を生成する製氷運転と、生成された氷を製氷室16から離脱する除氷運転とを交互に繰り返す製氷モードと、前記製氷機構14において製氷水が循環する循環経路を薬液で洗浄する洗浄モードとを選択し得るよう構成される。洗浄モードでは、循環経路に薬液を循環する洗浄運転の終了後に、循環経路を水(水道水)ですすぐすすぎ運転を行うようになっている。洗浄運転では、前記製氷水タンク32に貯留されている製氷水を全量排出した後に前記水皿34を閉成位置に保持し、製氷水の循環経路に薬液を供給した後、圧縮機および凝縮器ファンを停止したもとで、前記循環ポンプ46を洗浄時間に亘って運転することで、製氷水タンク32に貯留した薬液を循環経路に循環させる。そして、洗浄時間を経過すると循環ポンプ46を停止し、所定の水切り時間待機した後に、前記水皿開閉機構38によって水皿34を開放位置まで傾動し、製氷水タンク32の薬液を全量排出する。水皿34が開放位置となってから所定の排水時間待機した後に、水皿開閉機構38によって水皿34を閉成位置まで戻し、洗浄運転が終了する。
【0018】
すすぎ運転では、所定の給水時間に亘って前記給水弁44を開放して、前記製氷水タンク32にすすぎ水(水道水)を所定量供給する。そして、前記循環ポンプ46をすすぎ時間に亘って運転することで、製氷水タンク32に貯留したすすぎ水を循環経路に循環させて該循環経路をすすぐ。すすぎ時間を経過すると循環ポンプ46を停止し、前記水皿開閉機構38によって前記水皿34を開放位置まで傾動し、製氷水タンク32のすすぎ水を全量排出する。水皿34が開放位置となってから所定の排水時間待機した後に、水皿開閉機構38によって水皿34を閉成位置まで戻し、すすぎ運転を終了する。なお、すすぎ運転は、予め設定されたすすぎ回数だけ繰り返され、設定すすぎ回数に達すると、洗浄モードでの運転が終了される。
【0019】
図1図3に示すように、実施例に係る前記氷取出スコップ26は、一面側に開口して氷を掬うための前後方向に延在する受容部48と、この受容部48に一端が接続されて外方に延出する把持部50とを備え、前記貯氷室18から氷を取り出す際には、使用者は把持部50を握って氷の取出し作業を行い得るよう構成される。受容部48は、把持部50が設けられる後壁52と、該後壁52の下端縁から前方に延在する底壁54と、該底壁54における前後方向と交差する幅方向の左右両端縁から立上がると共に後壁52の左右両端縁に接続する一対の側壁56,56と、底壁54の前端縁から立上がると共に両側壁56,56の前端縁に接続する前壁58とから構成され、当該受容部48は、上方に開放する舟型状やバケット状に形成されている。また、受容部48は、後壁52、一対の側壁56,56および前壁58によって、一面側に開口する開口部48aが形成される。そして、受容部48は、開口部48aが上向きとなる上向き姿勢で氷取出スコップ26を製氷機構14に対してセットした状態(後述する)で、受容部48の内底面54a(底壁54の上面)が把持部50の接続側に向けて下方傾斜するよう構成される。なお、開口部48aが上向きとは、前後および左右の壁58,52,56,56の上端が水平面に揃って開口部48aが真上を向く姿勢に限らず、前後に対向する前壁58と後壁52との一方の上端が他方の下端(底壁54との接続端)より上方に位置するよう、開口部48aが前後方向の斜め上方を向く姿勢、あるいは左右に対向する側壁56,56の一方の上端が他方の下端(底壁54との接続端)より上方に位置するよう、開口部48aが左右方向の斜め上方を向く姿勢を含み、受容部48内に所定量の薬液が貯留可能な姿勢であればよい。
【0020】
図1図3に示す如く、前記把持部50は、前記後壁52の下端部から後方に延在するように設けられると共に、該把持部50は、延在方向に沿って液通路60が貫通形成された筒状に構成されて、液通路60が受容部内に連通している。液通路60は、一端において受容部内に開口する入口60aと、他端において把持部50の端面で開口する出口60bとを備え、該液通路60の内底面61における受容部側の内部底端である入口下端(入口端)60cは、受容部48の後壁側の内底面(底壁54の上面)54aに連続するように構成されている。また、把持部50の液通路60における内底面61は、受容部48における内底面54aの延長線L1に対して他端に向かうにつれて前記開口部48aとは反対側に変位するように延在すると共に、該液通路60における入口下端60cは、実施例では延長線上に位置するよう構成される。すなわち、液通路60の内底面61における入口下端60cは、受容部48の内底面54aにおける把持部50の接続側の底端54bと同一位置に位置している。実施例では、把持部50は角筒状に形成されており、該把持部50における受容部48との接続側とは反対の他端側を、前記製氷機構14における製氷室16と散水器42との間の隙間Sに前側から挿入することで、氷取出スコップ26は、把持部50が製氷室16と散水器42とで挟まれて、把持部50の他端(液通路60の出口60b)が水皿34の上方に臨むセット状態に支持可能に構成されている。実施例の自動製氷機10では、製氷室16と散水器42とで、氷取出スコップ26を、薬液供給時において支持する支持部(保管するための保持部28とは異なる部分)が構成される。また、氷取出スコップ26は、把持部50における上面の延長線L2上に、受容部48における前壁58の上端(先端)が位置するように、受容部48に対する把持部50の接続角度が設定されている。
【0021】
図3は、前記製氷機構14における製氷水の循環経路に洗浄のための薬液を供給する場合に、前記氷取出スコップ26を製氷機構14に対してセットした状態(把持部50を製氷室16と散水器42とで挟んで支持した状態)を示している。このセット状態において、前記受容部48は、開口部48aが上向きとなる上向き姿勢で前記底壁54の上面(受容部48の内底面54a)が後壁52(把持部50の接続側)に向けて下方傾斜すると共に、該受容部48における開口部48aに沿う開口面が略水平となる薬液供給姿勢とされる。この薬液供給姿勢において前記把持部50は、前記液通路60の内底面61が他端(出口60b)に向けて下方傾斜すると共に、該液通路60の入口下端60cが、前記底壁54の上面における傾斜下端(底端54b)以下の位置にあり、かつ把持部50の他端(出口60b)が、製氷機構14の循環経路を構成する前記水皿34の上方の位置、すなわち出口60bから循環経路に薬液を流出可能な位置に臨むよう構成される。実施例では、薬液供給姿勢において把持部50は、液通路60の内底面61を含む全体が他端に向けて下方傾斜し、該把持部50の他端の下端を通る水平面に対する液通路60の内底面61の傾斜角度Kは、約3~15度の範囲となるよう設定されている。すなわち、薬液供給姿勢における把持部50(内底面61)の傾斜角度Kが3度より小さいと、液通路60を薬液が流れ難くなって、所定量の薬液を循環経路に供給するのに時間が掛かるが、傾斜角度Kを3度以上とすれば、薬液がスムーズに流れて薬液の供給時間を短縮することができる。また、傾斜角度Kが15度より大きいと、セット状態での受容部48の位置が高くなるため、製氷機構14の前側上方に、該受容部48を収めるための空間を確保する必要を生じ、省スペース化できなくなる。また、薬液供給姿勢における把持部50の傾斜角度Kが15度より大きくなるように、受容部48に対して把持部50を設けた構成では、把持部50を握って氷を掬う作業に際し、受容部48で氷を効率良く掬うために受容部48を移動するベクトルと、把持部50を介して受容部48に力を加え易いベクトルとのずれが大きくなるため、氷が掬い難くなるが、薬液供給姿勢における把持部50の傾斜角度Kが15度より小さくなるように、受容部48に対して把持部50を設ければ、前記両ベクトルのずれが小さくなって氷が掬い易くなる。
【0022】
〔実施例の作用〕
次に、前述のように構成された実施例の氷取出スコップ26および自動製氷機10の作用について説明する。
前記自動製氷機10において、前記製氷機構14における製氷水の循環経路を洗浄する場合は、前記製氷モードから洗浄モードに切り替える。洗浄モードにおいて、前記保持部28に保持されている前記氷取出スコップ26を取り外し、該氷取出スコップ26の前記把持部50における他端側を、製氷機構14における前記製氷室16と散水器42との間の隙間Sに前側から差し込み、把持部50の他端を水皿34の上方に臨ませる。製氷機構14に対して氷取出スコップ26をセットした薬液供給姿勢では、図3に示す如く、前記受容部48は、製氷機構14の前方において開口面が略水平になると共に、把持部50は他端に向けて下方傾斜する。
【0023】
前記薬液供給姿勢でセットされた氷取出スコップ26の受容部48に、薬液を上方から注ぎ入れると、該薬液は受容部48から把持部50の液通路60に入口60aから流れ込み、該液通路60の出口60bから前記水皿34の表面に流出する。薬液は、水皿34の戻り孔を介して前記製氷水タンク32に流れ込んで貯留される。洗浄運転を開始すると、洗浄時間に亘って前記循環ポンプ46が運転され、製氷水タンク32に貯留されている薬液が、製氷水の循環経路を循環して、該循環経路が洗浄される。循環ポンプ46が停止して水切り時間が経過した後、前記水皿開閉機構38によって水皿34を開放位置まで傾動することで、製氷水タンク32に貯留されている薬液は、該タンク32から前記ドレンパン24に排出される。洗浄モードでは、水皿34を閉成位置に戻した後、前記すすぎ運転を複数回繰り返すことで洗浄モードでの運転が終了する。
【0024】
実施例の氷取出スコップ26によれば、前記把持部50の他端を、薬液を供給する前記水皿34の上方に臨ませるようにして氷取出スコップ26をセットした状態で、前記受容部48に薬液を注ぎ入れれば、該薬液を把持部50の液通路60を介して水皿34(循環経路)に供給することができる。すなわち、自動製氷機10に付属の氷取出スコップ26を用いて薬液を循環経路に供給し得るので、専用の漏斗や薬液供給装置を必要とせず、専用の漏斗を保管するためのスペースを確保したり、薬液供給装置を取り付けることで自動製氷機10の構成が複雑となったりコストが嵩んだりするのを防ぐことができる。また、受容部48に対して把持部50に形成した液通路60の入口下端60cは、前記薬液供給姿勢では、受容部48の底壁54の上面(内底面54a)における傾斜下端となる底端54b以下の位置にあるので、受容部48に注ぎ入れられた薬液が把持部50との接続部において滞ることなく液通路60を通して循環経路に薬液をスムーズに供給することができる。また、薬液を、氷取出スコップ26を介して循環経路に供給するので、当該氷取出スコップ26の受容部48の内部や把持部50の液通路60も薬液で洗浄することができ、衛生的である。なお、専用の漏斗を用いる場合には、該漏斗を自動製氷機10の設置場所とは違う場所に保管するため、漏斗を無くし易く、また探す手間が掛かる。これに対し、氷取出スコップ26を、薬液の供給部材として兼用し得るように構成することで、該氷取出スコップ26は自動製氷機10の付属品であるので無くし難く、また薬液の供給部材として使用する際に探す手間を省くことができる。
【0025】
また、実施例の氷取出スコップ26によれば、薬液供給姿勢における前記把持部50の傾斜角度Kを、約3~15度の範囲となるよう設定したので、当該氷取出スコップ26を薬液の供給に用いる場合は、薬液の供給時間を短縮することができると共に、セット状態での前記受容部48の位置を低くすることができ、前記製氷機構14の前側上方に必要となる空間の上下寸法を小さくして、自動製氷機10の省スペース化を図ることができる。また、当該氷取出スコップ26を氷の取出し作業に用いる場合は、把持部50を握って氷を掬う作業に際し、受容部48で氷を効率良く掬うために受容部48を移動するベクトルと、把持部50を介して受容部48に力を加え易いベクトルとのずれを小さくすることができ、氷が掬い易くなる。すなわち、薬液供給姿勢において、把持部50の傾斜角度Kが約3~15度の範囲となるように、受容部48に対して把持部50を設けておけば、氷の取出し作業が不便となることなく、薬液の供給作業を短時間で行うことができる。
【0026】
また、実施例の氷取出スコップ26は、前記把持部50における上面の延長線L2上に、受容部48の先端(前壁58の上端)が位置するように、受容部48に対する把持部50の接続角度が設定されている。従って、前記後壁52における下端部に把持部50を接続した構成においても、氷取出スコップ26で氷を取出す作業を行う場合に、把持部50を握って受容部48の先端を前記貯氷室18に貯留されている氷の山に差し込む際に、該受容部48の先端に力を効果的に伝えることができ、受容部48で氷を容易に掬うことができる。なお、受容部48の先端の位置は、把持部50を握って受容部48の先端を氷の山に差し込む際に、力が先端に効果的に伝えられる位置であれば、前記延長線L2上に一致していなくとも、該延長線L2に近接する位置であってもよい。
【0027】
〔別実施例について〕
図5図7は、別実施例に係る氷取出スコップ62,64を示すものであって、別実施例については、実施例の構成と異なる部分についてのみ説明する。また、実施例で説明した同一部材には、同じ符号を付すものとする。
【0028】
図5は、第1の別実施例の氷取出スコップ62を示すものであって、該氷取出スコップ62の把持部50は、受容部48と接続する一端部側の方が、他端部側より外径が大きくなるよう構成される。第1の別実施例の氷取出スコップ62によれば、把持部50と受容部48との接続部分の強度が高くなり、耐久性を向上することができる。
【0029】
図6図7は、第2の別実施例の氷取出スコップ64を示すものであって、該氷取出スコップ64の把持部50は、その延在方向と交差する方向に分割可能に構成されている。具体的に、把持部50は、受容部48の後壁52に一端が接続固定されて上方に開放するコ字状の下半体(部材)66と、該下半体66とは別体で構成されて下方に開放するコ字状の上半体(部材)68とで構成され、両半体66,68は、係止手段70によって延在方向に沿って延在する開放端同士を当接した連結状態に保持可能に構成される。すなわち、第2の別実施例の氷取出スコップ64は、把持部50が、該把持部50の延在方向に沿って延在して液通路60を画成する下半体66と上半体68とで構成され、下半体66および上半体68を係止手段70で連結することで、液通路60を画成する状態となり、下半体66と上半体68とを分離することで、液通路60を延在方向と交差する方向に開放する状態となるよう構成される。係止手段70は、下半体66の両開放端部に形成されたあり溝状の被係止部としての凹溝72と、上半体68の両開放端部に形成されて凹溝72に嵌合可能な係止部としての突条74とから構成される。
【0030】
第2の別実施例の把持部50は、前記下半体66の凹溝72,72に対して、把持部50の他端側から前記上半体68の突条74,74を嵌合した状態で、該上半体68を前記受容部48に向けてスライドすることで、上下の半体66,68の凹溝72と突条74とが、延在方向の全長亘って嵌合して上下の半体66,68が連結されて、内部に液通路60が形成される。また、把持部50は、上半体68を受容部48から離間するようにスライドすることで、下半体66との嵌合が解除されて、上半体68を下半体66から分離することができる。すなわち、第2の別実施例の氷取出スコップ64では、下半体66から上半体68を分離すれば、液通路60を形成する両半体66,68の内面を露出して簡単に洗浄することができ、衛生的に保つことができる。
【0031】
〔変更例〕
本願は、前述した実施例や別実施例の構成に限定されるものでなく、その他の構成を適宜に採用することができる。また、以下の変更例に限らず、実施例や別実施例に記載した構成については、本発明の主旨の範囲内において種々の実施形態を採用し得る。
1.実施例や別実施例では、薬液供給姿勢において受容部の開口面が略水平となるよう構成したが、開口面が前端(前壁側)に向けて下方傾斜する構成や、開口面が後端(後壁側)に向けて上方傾斜する構成を採用できる。受容部の開口面が前端に向けて下方傾斜する構成では、氷取出スコップを製氷機構にセットする位置が高い場合に、製氷機構の前方に位置する受容部の前端側が下がる姿勢となるので、該受容部に薬液を注ぎ入れ易くなる。また、受容部の開口面が後端に向けて上方傾斜する構成では、氷取出スコップを製氷機構にセットする位置が低い場合に、受容部に対して高い位置から薬液を注ぎ入れる際に、製氷機構側に位置する受容部の後端側が上がる姿勢となるので、薬液が注がれた勢いで受容部の後壁から溢れるのを抑制できる。
2.把持部の形状は、角筒形状に限らず、円筒形状等、筒形状であればよい。また、実施例では、把持部の液通路における内底面は、薬液を供給する際のセット状態において、その内底面が一端から他端に向けて一直線状に下方傾斜する構成としたが、途中で傾斜角度が変化したり、あるいは曲線状であってもよい。すなわち、液通路の内底面は、セット状態において、一端から他端に向かうにつれて高さ位置が漸次低くなる構成であればよい。
3.受容部の形状は、一面側が開口して氷を掬い得る形状であれば、半球状やその他各種の形状を採用することができる。すなわち、受容部の内底面は、セット状態において、前壁から後壁に向かうにつれて高さ位置が漸次低くなる構成であればよい。
4.実施例や別実施例では、薬液供給姿勢において、液通路の入口下端(入口端)が、受容部の内底面における傾斜下端(底端)と同一高さで(内底面の延長線上に)位置する場合で説明したが、受容部の内底面における傾斜下端(底端)から所定高さだけ低い位置(内底面の延長線上より液通路の変位側)に液通路の入口下端(入口端)が位置する構成であってもよい。
【0032】
5.第2の別実施例では、把持部を上下に分割するよう構成したが、左右に分割する構成を採用することができる。また、把持部を分割する数は、3つ以上であってもよく、例えば、下半体に対して複数の上半体を係止手段によって連結して液通路を画成したり開放する構成を採用することができる。すなわち、液通路を画成したり開放し得る構成であれば、把持部を構成する部材の分割数は2つ以上であればよい。
6.第2の別実施例において半体同士を着脱可能に連結する係止手段は、凹溝と突条との組み合わせに限定されず、一方の半体に設けた係止爪と、他方の半体に設けられて係止爪が係脱可能な係止凹部とからなる組み合わせ等、公知の各種形態を採用することができる。
7.第2の別実施例では、下半体と上半体とを分割するよう構成したが、下半体に対して上半体を、一側に設けたヒンジによって開閉可能に接続し、下半体に対して上半体を開放することで液通路を開放(液通路を画成する半体の内面を露出)する構成を採用することができる。また、上下の半体を開閉可能に接続した構成では、ヒンジとは反対側に設けた係止爪と係止凹部とからなる係止手段によって、上下の半体を、液通路を閉成した連結状態に保持するよう構成すればよい。下半体に対して上半体を開閉可能に接続する構成において、例えば、複数に分割された複数の上半体を夫々開閉することで、液通路を画成した状態や開放した状態とする構成を採用することができる。
8.氷取出スコップの保持部は、貯氷室の内壁に限らず、扉やドレンパン等、自動製氷機を構成する部材に設けられるものであってもよい。
9.自動製氷機は、クローズドセルタイプの製氷機構を備えた製氷機に限らず、オープンセルや流下式の製氷機構を備えた製氷機、あるいはオーガ式の製氷機構を備えた製氷機であってもよく、薬液を供給する対象部に把持部の他端(液通路の出口)を臨ませるように、氷取出スコップをセットし得る支持部が製氷機構に設けられているものであればよい。
10.氷取出スコップを薬液供給姿勢に支持する支持部は、製氷室と散水器とで構成したものに限らず、製氷機構を構成するその他の部材によって支持部を構成したり、または専用の支持部を製氷機構に設けるものであってもよい。
また、支持部は、製氷機構に限らず、その他の部材に設けることもできる。例えば、製氷機構の前側を覆う前面パネル等の製氷機本体を構成する外装パネルに形成されて内外方向に貫通し、氷取出スコップの把持部を挿通可能な挿通孔と、外装パネルの内側に設けられ、挿通孔に挿通された把持部の挿通方向を案内するガイド部材とから支持部を構成し、挿通孔に外側から把持部を挿通することで、上向き姿勢の受容部および液通路の内底面が下方傾斜すると共に、把持部の他端(液通路の出口)が薬液の供給対象部に臨むように、挿通孔とガイド部材とによって氷取出スコップを支持する構成を採用することができる。なお、外装パネルに挿通孔を設ける構成では、該外装パネルに挿通孔を開閉可能な蓋部材を設け、必要時にのみ挿通孔を開放するよう構成すれば、挿通孔から本体内の冷気が逃出するのを防ぐことができる。
【符号の説明】
【0033】
16 製氷室(製氷部、支持部),32 製氷水タンク(水貯留部)
42 散水器(支持部),48 受容部,48a 開口部,50 把持部,54a 内底面
54b 底端,60 液通路,60c 入口下端(入口端),66 下半体(部材)
68 上半体(部材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7