(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023072130
(43)【公開日】2023-05-24
(54)【発明の名称】無線通信装置、無線通信システム、及びローミング方法
(51)【国際特許分類】
H04W 36/32 20090101AFI20230517BHJP
H04W 36/30 20090101ALI20230517BHJP
H04W 36/08 20090101ALI20230517BHJP
H04W 64/00 20090101ALI20230517BHJP
H04W 92/08 20090101ALI20230517BHJP
【FI】
H04W36/32
H04W36/30
H04W36/08
H04W64/00 171
H04W92/08 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021184474
(22)【出願日】2021-11-12
(71)【出願人】
【識別番号】500112146
【氏名又は名称】サイレックス・テクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【弁理士】
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】桑原 哲也
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA15
5K067AA21
5K067DD43
5K067EE02
5K067EE10
5K067EE16
5K067JJ37
5K067JJ39
5K067JJ52
(57)【要約】
【課題】短時間で安定したローミングを実行可能な無線通信装置を提供する。
【解決手段】無線通信装置は、移動体の位置を示す位置情報、位置情報が示す位置に移動体が進入する方向を示す方向情報、及び、ローミングによる接続を許可する電波強度の下限の閾値を示す電波強度閾値と、を対応付けたローミング開始条件を読み出す又は外部から取得する。無線通信装置は、移動体の位置情報の検出値と、移動体の方向情報の検出値と、ローミング開始条件と、に基づいて、電波強度閾値を設定し、当該電波強度閾値以上の新たなアクセスポイント装置が存在するか否かを判定する。無線通信装置は、電波強度閾値以上の新たなアクセスポイント装置が存在すると判定した場合に、接続中のアクセスポイント装置と無線通信モジュールの接続を切断し、電波強度閾値以上の新たなアクセスポイント装置に無線通信モジュールを接続する。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に配置される移動体制御装置に無線通信機能を提供する無線通信装置において、
前記移動体制御装置と有線通信を行う有線通信モジュールと、
アクセスポイント装置に無線で接続して無線通信を行う無線通信モジュールと、
接続中のアクセスポイント装置と前記無線通信モジュールの接続を切断して、新たなアクセスポイント装置に前記無線通信モジュールを接続させるローミングを実行する演算装置と、
を備え、
前記演算装置は、前記移動体の位置を示す位置情報、前記位置情報が示す位置に前記移動体が進入する方向を示す方向情報、及び、ローミングによる接続を許可する電波強度の下限の閾値を示す電波強度閾値と、を対応付けたローミング開始条件を読み出す又は外部から取得し、
前記演算装置は、前記移動体の前記位置情報の検出値と、前記移動体の前記方向情報の検出値と、前記ローミング開始条件と、に基づいて、前記電波強度閾値を設定し、当該電波強度閾値以上の前記新たなアクセスポイント装置が存在するか否かを判定し、
前記演算装置は、前記電波強度閾値以上の前記新たなアクセスポイント装置が存在すると判定した場合に、前記接続中のアクセスポイント装置と前記無線通信モジュールの接続を切断し、前記電波強度閾値以上の前記新たなアクセスポイント装置に前記無線通信モジュールを接続することを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
請求項1に記載の無線通信装置であって、
前記ローミング開始条件の前記電波強度閾値は、前記無線通信モジュールが過去にローミングを実行して前記アクセスポイント装置に接続した際の当該アクセスポイント装置の電波強度に基づいて定められることを特徴とする無線通信装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の無線通信装置であって、
前記演算装置は、前記電波強度閾値以上の前記新たなアクセスポイント装置が存在しない場合、前記電波強度閾値よりも電波強度が小さい第2電波強度閾値を設定し、前記第2電波強度閾値以上の前記新たなアクセスポイント装置が存在するか否かを判定し、
前記演算装置は、前記第2電波強度閾値以上の前記新たなアクセスポイント装置が存在すると判定した場合に、前記接続中のアクセスポイント装置と前記無線通信モジュールの接続を切断し、前記第2電波強度閾値以上の前記新たなアクセスポイント装置に前記無線通信モジュールを接続することを特徴とする無線通信装置。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載の無線通信装置であって、
前記電波強度閾値は、電波強度の大きさに応じて複数段階に区分されていることを特徴とする無線通信装置。
【請求項5】
請求項1から4までの何れか一項に記載の無線通信装置であって、
前記演算装置は、前記位置情報及び前記方向情報に対応付けて、ローミングの実行回数を前記アクセスポイント装置毎に記憶する処理を行い、
前記演算装置は、前記移動体の前記位置情報の検出値と、前記移動体の前記方向情報の検出値と、に対応付けられたローミングの実行回数が閾値以上である場合、前記接続中のアクセスポイント装置と前記無線通信モジュールの接続を切断し、ローミングの実行回数が閾値以上の前記新たなアクセスポイント装置に前記無線通信モジュールを接続することを特徴とする無線通信装置。
【請求項6】
請求項1から5までの何れか一項に記載の無線通信装置を複数備えることを特徴とする無線通信システム。
【請求項7】
請求項6に記載の無線通信システムであって、
複数の前記無線通信装置で共通して使用される前記ローミング開始条件を記憶する記憶装置を備えることを特徴とする無線通信システム。
【請求項8】
移動体に配置される移動体制御装置に無線通信機能を提供する無線通信装置にローミングを実行させるローミング方法において、
前記移動体の位置を示す位置情報、前記位置情報が示す位置に前記移動体が進入する方向を示す方向情報、及び、ローミングによる接続を許可する電波強度の下限の閾値を示す電波強度閾値と、を対応付けたローミング開始条件を取得し、
前記移動体の前記位置情報の検出値と、前記移動体の前記方向情報の検出値と、前記ローミング開始条件と、に基づいて、前記電波強度閾値を設定し、当該電波強度閾値以上の新たなアクセスポイント装置が存在するか否かを判定し、
前記電波強度閾値以上の前記新たなアクセスポイント装置が存在すると判定した場合に、接続中のアクセスポイント装置と前記無線通信装置の接続を切断し、前記電波強度閾値以上の前記新たなアクセスポイント装置に前記無線通信装置を接続することを特徴とするローミング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、ローミングを行う無線通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、通信端末が移動する場合において、通信端末の接続先のアクセスポイントを適切に切り替える方法を開示する。通信端末は、アクセスポイントの電波の受信レベルが閾値より小さい又は送信パケット誤り率が閾値よりも大きい場合には、アクセスポイントを切り替える処理を開始する。また、特許文献1には、受信レベルの変動率と送信パケット誤り率に基づいて、閾値の大きさを2段階に切り替えることも記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の方法では、現在位置における通信環境を判定した後に、適用する閾値を設定する。そのため、閾値を設定するために時間が掛かり、結果としてローミングが遅延する可能性がある。従って、特許文献1の方法は、閾値の設定の仕方において改善の余地があった。特に、移動体に無線通信機能を提供する無線通信装置においては、無線通信装置の取付位置及び移動体の形状等が電波の受信に影響することがあり、適切な閾値を設定することが一層困難であった。また、特許文献1の方法では、当該無線通信装置を備える移動体の位置や移動体の移動方向によって刻々と変化する通信環境に対し、適切な閾値を用いたローミングが行えないこともあり得る。
【0005】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、短時間で安定したローミングを実行可能な無線通信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0007】
本発明の第1の観点によれば、以下の構成の無線通信装置が提供される。即ち、無線通信装置は、有線通信モジュールと、無線通信モジュールと、演算装置と、を備える。前記有線通信モジュールは、前記移動体制御装置と有線通信を行う。前記無線通信モジュールは、アクセスポイント装置に無線で接続して無線通信を行う。前記演算装置は、接続中のアクセスポイント装置と前記無線通信モジュールの接続を切断して、新たなアクセスポイント装置に前記無線通信モジュールを接続させるローミングを実行する。前記演算装置は、前記移動体の位置を示す位置情報、前記位置情報が示す位置に前記移動体が進入する方向を示す方向情報、及び、ローミングによる接続を許可する電波強度の下限の閾値を示す電波強度閾値と、を対応付けたローミング開始条件を読み出す又は外部から取得する。前記演算装置は、前記移動体の前記位置情報の検出値と、前記移動体の前記方向情報の検出値と、前記ローミング開始条件と、に基づいて、前記電波強度閾値を設定し、当該電波強度閾値以上の前記新たなアクセスポイント装置が存在するか否かを判定する。前記演算装置は、前記電波強度閾値以上の前記新たなアクセスポイント装置が存在すると判定した場合に、前記接続中のアクセスポイント装置と前記無線通信モジュールの接続を切断し、前記電波強度閾値以上の前記新たなアクセスポイント装置に前記無線通信モジュールを接続する。
【0008】
これにより、位置情報及び方向情報に基づいて電波強度閾値を設定できるため、位置及び移動体の進入向きに応じた適切な電波強度閾値を用いてローミングを実行できる。特に、方向情報を用いることにより、向きに応じて電波受信状況が異なる場合にも対応することができる。その結果、電波強度が低い条件においても、短時間で適切なローミングを実行できる。
【0009】
前記の無線通信装置においては、前記ローミング開始条件の前記電波強度閾値は、前記無線通信モジュールが過去にローミングを実行して前記アクセスポイント装置に接続した際の当該アクセスポイント装置の電波強度に基づいて定められることが好ましい。
【0010】
これにより、過去の実績に基づいた信頼性の高い電波強度閾値を設定できる。
【0011】
前記の無線通信装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記演算装置は、前記電波強度閾値以上の前記新たなアクセスポイント装置が存在しない場合、前記電波強度閾値よりも電波強度が小さい第2電波強度閾値を設定し、前記第2電波強度閾値以上の前記新たなアクセスポイント装置が存在するか否かを判定する。前記演算装置は、前記第2電波強度閾値以上の前記新たなアクセスポイント装置が存在すると判定した場合に、前記接続中のアクセスポイント装置と前記無線通信モジュールの接続を切断し、前記第2電波強度閾値以上の前記新たなアクセスポイント装置に前記無線通信モジュールを接続する。
【0012】
これにより、電波強度閾値を満たす新たなアクセスポイント装置が存在しない場合でも、電波強度が比較的大きい新たなアクセスポイント装置に無線通信モジュールを接続できる。
【0013】
前記の無線通信装置においては、前記電波強度閾値は、電波強度の大きさに応じて複数段階に区分されていることが好ましい。
【0014】
これにより、電波強度閾値を簡単に管理できる。
【0015】
前記の無線通信装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記演算装置は、前記位置情報及び前記方向情報に対応付けて、ローミングの実行回数を前記アクセスポイント装置毎に記憶する処理を行う。前記演算装置は、前記移動体の前記位置情報の検出値と、前記移動体の前記方向情報の検出値と、に対応付けられたローミングの実行回数が閾値以上である場合、前記接続中のアクセスポイント装置と前記無線通信モジュールの接続を切断し、ローミングの実行回数が閾値以上の前記新たなアクセスポイント装置に前記無線通信モジュールを接続する。
【0016】
これにより、過去のローミングの実績に基づいて、新たなアクセスポイント装置に接続できる。特に、電波強度の判定を省略することにより、より短時間で適切なローミングを実行できる。
【0017】
本発明の第2の観点によれば、無線通信装置を複数備える無線通信システムが提供される。
【0018】
これにより、移動体が複数存在するシステムにも本発明を適用できる。
【0019】
前記の無線通信システムにおいては、複数の前記無線通信装置で共通して使用される前記ローミング開始条件を記憶する記憶装置を備えることが好ましい。
【0020】
これにより、ローミング開始条件に変更が生じた際に、共通のローミング開始条件を更新するだけで対応できる。
【0021】
本発明の第3の観点によれば、以下のローミング方法が提供される。即ち、ローミング方法では、移動体に配置される移動体制御装置に無線通信機能を提供する無線通信装置にローミングを実行させる。ローミング方法では、前記移動体の位置を示す位置情報、前記位置情報が示す位置に前記移動体が進入する方向を示す方向情報、及び、ローミングによる接続を許可する電波強度の下限の閾値を示す電波強度閾値と、を対応付けたローミング開始条件を取得する。ローミング方法では、前記移動体の前記位置情報の検出値と、前記移動体の前記方向情報の検出値と、前記ローミング開始条件と、に基づいて、前記電波強度閾値を設定し、当該電波強度閾値以上の新たなアクセスポイント装置が存在するか否かを判定する。ローミング方法では、前記電波強度閾値以上の前記アクセスポイント装置が存在すると判定した場合に、接続中のアクセスポイント装置と前記無線通信装置の接続を切断し、前記電波強度閾値以上の前記新たなアクセスポイント装置に前記無線通信装置を接続する。
【0022】
これにより、位置情報及び方向情報に基づいて電波強度閾値を設定できるため、位置及び移動体の進入向きに応じた適切な電波強度閾値を用いてローミングを実行できる。特に、方向情報を用いることにより、向きに応じて電波受信状況が異なる場合にも対応することができる。その結果、電波強度が低い条件においても、短時間で適切なローミングを実行できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図4】無線通信装置によるローミングを示す前半のフローチャート。
【
図5】無線通信装置によるローミングを示す後半のフローチャート。
【
図8】搬送車の走行エリアとアクセスポイント装置のレイアウトを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。初めに、
図1を参照して、無線通信システム1の概要について説明する。
【0025】
本実施形態の無線通信システム1は、工場又は倉庫等の作業場で用いられる。
図1に示すように、作業場には、走行路2と、複数の搬送車(移動体)3と、が設けられている。
【0026】
走行路2は、例えば床面に貼り付けられた磁気テープ等の誘導用テープ又はバーコード等の識別タグ等である。搬送車3は、誘導用テープ又は識別タグ等を検出することにより、走行路2に沿って走行する。
【0027】
搬送車3は、例えばAGV(Automated Guided Vehicle)であり、走行路2に沿って無人で走行可能である。搬送車3は、物品を受け取って保持し、目的地まで走行して物品を受け渡す。また、走行路2がレール部材であり、搬送車3がレールに沿って走行する構成であってもよい。
【0028】
搬送車3は、後述するように無線通信装置16を備え、これを用いて無線通信を行うことができる。また、作業場には複数のアクセスポイント装置4が設けられている。アクセスポイント装置4は、自機の周囲の搬送車3と無線通信が可能である。アクセスポイント装置4は、更に、作業場の有線LANネットワークに接続されている。有線LANネットワークには、管理装置5が設けられている。つまり、搬送車3は、アクセスポイント装置4を介して、管理装置5と通信可能である。
【0029】
管理装置5は、例えばPC又はサーバであり、物品の搬送に関する管理及び指示を行う。管理装置5は、物品を搬送する作業が発生したときに、特定の搬送車3に対して物品を搬送する指示を行う。具体的には、管理装置5は、搬送車3に対して、物品の受取位置、物品の受渡位置を送信する。なお、搬送車3が受取位置から受渡位置まで走行する経路は、管理装置5が探索及び作成してもよいし、搬送車3が探索及び作成してもよい。
【0030】
次に、
図2を参照して、搬送車3の構成について詳細に説明する。
【0031】
図2に示すように、搬送車3は、搬送車制御装置(移動体制御装置)10と、車輪駆動装置11と、車輪12と、リフタ駆動装置13と、リフタ14と、検出器15と、無線通信装置16と、を備える。
【0032】
搬送車制御装置10は、CPU、ROM、RAM、ストレージ等を有する。ROMに記憶されたプログラムをCPUが実行することにより、搬送車3に関する制御を実行する。車輪駆動装置11は、車輪12を駆動するモータである。リフタ駆動装置13は、リフタ14を駆動するアクチュエータである。リフタ14は、物品の受取り、物品の保持、物品の受渡しを行う装置である。車輪駆動装置11及びリフタ駆動装置13は、搬送車制御装置10によって制御される。
【0033】
検出器15は、走行路2を検出する読取装置である。検出器15は、走行路2の検出結果に基づいて、搬送車3の位置及び移動方向を検出する。検出器15が検出した搬送車3の位置及び移動方向は、搬送車制御装置10を介して、無線通信装置16に出力される。また、検出器15は、本実施形態とは異なる方法で搬送車3の位置及び移動方向を検出してもよい。例えば、BLEビーコンを用いて搬送車3の位置を検出し、搬送車3の位置の変化に基づいて移動方向を検出してもよい。また、無線通信システム1が屋内に設置される場合は、一定の方向に赤外線、または、レーザーを照射し、物体に当たった赤外線の変化、もしくは、反射タイミングを測定し、搬送車3の位置を検出し、搬送車3の位置の変化に基づいて移動方向を検出してもよい。あるいは、無線通信システム1が屋外に設置される場合、検出器15としてGNSSセンサを用いて、搬送車3の位置及び移動方向を検出してもよい。
【0034】
無線通信装置16は、搬送車制御装置10に無線通信機能を提供する。以下、
図3を参照して、無線通信装置16について詳細に説明する。
図3に示すように、無線通信装置16は、演算装置20と、ROM21と、RAM22と、ストレージ23と、無線通信モジュール24と、有線通信モジュール25と、を備える。
【0035】
演算装置20は、SoC(System-on-a-chip)であり、CPU及び通信モデム等を含む。演算装置20は、ROM21に記憶されたプログラムをRAM22に読み出して実行することにより、無線通信装置16に対する様々な制御を実行する。また、ストレージ23は、例えばeMMC等のフラッシュメモリである。ストレージ23には、制御に必要な情報(詳細は後述)が記憶されている。
【0036】
無線通信モジュール24は、上述のアクセスポイント装置4と無線通信を行うためのものである。無線通信モジュール24は、無線アンテナ24a及び図略の増幅器等を含む。有線通信モジュール25は、搬送車制御装置10と有線通信を行うためのものである。有線通信モジュール25は、コネクタ及び信号を伝達する回路等を含む。
【0037】
次に、無線通信装置16によるローミングについて説明する。以下の説明では、「演算装置20が指示して無線通信モジュール24をアクセスポイント装置4に接続すること」を、単に「無線通信装置16がアクセスポイント装置4に接続する」等のように簡単に記載する。
【0038】
本実施形態の作業場では、1台のアクセスポイント装置4で全ての走行路2をカバーできない。そのため、複数のアクセスポイント装置4が設けられている。無線通信装置16は、搬送車3の走行中において、接続中のアクセスポイント装置4の電波強度(言い換えると、搬送車3におけるアクセスポイント装置4からの受信信号強度)が小さくなった場合にローミングを実行する。ローミングとは、無線通信装置16が接続するアクセスポイント装置4を切り替えることである。
【0039】
一般的なローミングでは電波強度の閾値を設定し、電波強度が閾値以上のアクセスポイント装置4を探索して、当該アクセスポイント装置4に接続する。しかし、電波環境は無線通信装置16の位置等に応じて変化するため、適切な閾値を設定することは容易ではない。
【0040】
電波環境に影響する要因について説明する。例えば、アクセスポイント装置4までの距離が遠いほど、無線通信装置16が受信するアクセスポイント装置4の電波強度が小さくなる。また、作業場に配置された、装置、柱、又は壁等の影響により電波が遮蔽されたりマルチパスが生じることにより、電波環境が悪化することがある。このように、無線通信装置16の位置に応じて電波環境が変化する。
【0041】
更に、無線通信装置16の位置が同じであったとしても、この位置に進入する方向(例えば第1方向に走行して該当位置に進入するか、第2方向に走行して該当位置に進入するか)に応じて電波環境が異なることがある。なぜなら、無線アンテナ24aが搬送車3の中心からズレた位置に取り付けられることがあるので、位置に進入する方向に応じて、アクセスポイント装置4と、無線アンテナ24aと、の位置関係が異なるからである。あるいは、ある特定の方向で位置に進入する場合のみ、アクセスポイント装置4と無線アンテナ24aの間に搬送車3の金属製の部品が位置して電波環境が悪くなることもあり得る。
【0042】
特に、位置及び位置に進入する方向によっては、電波強度が周囲よりも大幅に小さい、いわゆるデッドスポットが発生する可能性がある。仮に、デッドスポットにおいて搬送車3が停止又は低速走行した場合、無線通信装置16がローミングを試みた結果、電波強度条件を満たすアクセスポイント装置4が存在せずに通信不能となる場合がある。その結果、無線通信装置16が管理装置5と通信できなくなる事態が生じ得る。
【0043】
以上を考慮し、本実施形態では、位置だけでなくその位置に進入する方向に応じた電波強度閾値を設定する。以下、
図4及び
図5のフローチャートに沿って、具体的な処理を説明する。
【0044】
初めに、無線通信装置16は、電波強度閾値IndexをN=1に初期化する(S101)。電波強度閾値Indexとは、
図6に示すように、段階的に区分した電波強度閾値を特定する情報である。本実施形態では、電波強度閾値をN=1~4の4段階に区分し、電波強度が最も大きい電波強度閾値のIndex値が1(N=1)であり、電波強度が最も小さい電波強度閾値のIndex値が4(N=4)である。なお、4段階は例示であり、電波強度閾値を2段階、3段階、又は、5段階以上に区分してもよい。なお、本実施形態では、
図6に示すように電波強度閾値を受信電力(dBm)で表しているが、S/N比(dB)で表してもよい。
【0045】
次に、無線通信装置16は、Ch.情報IndexをM=1に初期化する(S102)。Ch.情報Indexとは、
図7に示すように、アクセスポイント装置4が無線通信に用いるチャンネル(周波数帯)を特定する情報である。アクセスポイント装置4が用いるチャンネルは予め定められている。本実施形態では、
図8に示すように、4つのアクセスポイント装置4が設けられているため、それぞれのアクセスポイント装置4が用いるチャンネルがCh.情報Indexを用いて登録されている。
【0046】
本実施形態では、
図6に示す電波強度閾値登録情報と、
図7に示すCh.登録情報と、は予めそれぞれの搬送車3の無線通信装置16に記憶されている。なお、電波強度閾値登録情報及びCh.登録情報を管理装置5又は特定の1つの無線通信装置16(以下、マスタ機)に記憶し、無線通信装置16がマスタ機にアクセスしてこれらの情報を取得する構成であってもよい。
【0047】
次に、無線通信装置16は、電波強度確認インターバルが経過したか否かを判定する(S103)。電波強度確認インターバルとは、無線通信装置16がローミングの実行の有無を判定するために、接続中のアクセスポイント装置4の電波強度を確認する時間間隔である。
【0048】
無線通信装置16は、電波強度確認インターバルが経過したと判定した場合、接続中のアクセスポイント装置の電波強度とCh.情報を記憶する(S104)。更に、無線通信装置16は、搬送車3の位置情報及び方向情報を記憶する(S105)。本実施形態では、
図8に示すように、走行路2を例えば、46のブロックに区分して、ブロック毎にID(1~46)を付して搬送車3の位置を特定している。つまり、位置情報とは、
図8に示すブロックのIDである。
【0049】
方向情報とは、位置情報が示す位置に進入する方向である。例えば、搬送車3がブロック1に位置している場合、右から(ブロック2から)ブロック1に進入したか、下から(ブロック36から)ブロック1に進入したかを特定する情報である。
【0050】
また、位置情報及び方向情報の検出は、上述したように検出器15によって行われる。また、
図9には、ステップS105,S106で登録した位置情報、方向情報、接続AP、使用Ch.、含むローミング関連情報を示す表が示されている。なお、
図9の表に示すデータのうち、位置情報、方向情報、及び後述のローミング実行Index値を対応付けたデータがローミング開始条件に相当する。
【0051】
図9に示すローミング関連情報は、それぞれの搬送車3の無線通信装置16が独立して作成及び更新する。これに代えて、複数の無線通信装置16で共通のローミング関連情報を用いてもよい。例えば、上述のマスタ機がローミング関連情報を記憶し、その他の無線通信装置16は、マスタ機にアクセスしてローミング関連情報を更新したり取得したりする。即ち、マスタ機が本願の「記憶装置」に相当する。なお、
図9に示すローミング関連情報の更新については、既に記憶されている情報と異なる場合は追加更新される。具体的には、
図9に示す行が追加され、すべての項目について記憶される。一方、記憶されている情報と同じ場合には、すべての項目について記憶を上書き又は記録せず、少なくともローミング実行回数の値をインクリメントし更新される。
【0052】
次に、無線通信装置16は、接続中のアクセスポイント装置4の電波強度が、電波強度閾値Index N=1が示す電波強度以上か否かを判定する(S106)。無線通信装置16は、この条件を満たすと判定した場合、ステップS103の処理に戻る。無線通信装置16は、この条件を満たさない判定した場合、即ち、現在接続中のアクセスポイント装置4の電波強度が電波強度閾値の最大値未満である場合は、ステップS107以降に進んでローミングを実行する。なお、ステップS106の処理において、異なる条件(電波強度閾値Index N=2などの閾値)を設定してもよい。また、位置情報及び方向情報に応じて、この閾値を変更してもよい。
【0053】
無線通信装置16は、ステップS106の条件を満たさないと判定した場合(S106のNo)、位置情報及び方向情報に対応するローミング実行Index値が0か否かを判定する(S107)。ローミング実行Index値とは、過去にローミングを実行した際の電波強度閾値Index値である。そして、過去にローミングを実行していない場合は、初期値として0が入力されている。つまり、ステップS107では、現在と同じ位置情報及び方向情報において、過去にローミングが実行されたか否かを判定している。
【0054】
無線通信装置16は、ローミング実行Index値が0でない場合、位置情報及び方向情報に対応するローミング実行Index値を、
図9に示すローミング関連情報のテーブルから参照し、電波強度閾値Index値を更新する(S108)。つまり、現在と同じ位置及び方向情報において、過去にローミングが実行された場合、過去にローミングが実行された際に判定した電波強度閾値Index値を設定する。無線通信装置16は、ローミング実行Index値が0である場合、電波強度閾値Index値を更新せずに(即ち、N=1を維持して)次のステップに進む。
【0055】
また、本実施形態では無線通信装置16がローミング関連情報(ローミング開始条件を含む)を記憶するため、無線通信装置16はストレージ23からローミング関連情報を読み出す。なお、ローミング関連情報が無線通信装置16以外の上述のマスタ機に記憶されている場合、無線通信装置16はマスタ機にアクセスしてローミング関連情報を取得する。
【0056】
次に、無線通信装置16は、Ch.情報Index Mに該当するCh.を用いて電波強度を取得する(S109)。次に、無線通信装置16は、取得したアクセスポイント装置4の電波強度が、電波強度閾値Index N以上か否かを判定する(S110)。つまり、過去にローミングを実行したと判定した状況(位置情報及び方向情報が同じ状況)において、過去のローミング時と同等以上の電波強度(ローミング実行Index値が示す電波強度)が取得できたか否かを判定する。
【0057】
無線通信装置16は、取得したアクセスポイント装置4の電波強度が、電波強度閾値Index N未満である場合、電波強度閾値Index N以上のアクセスポイント装置4が見つかるまで、Ch.を切り替えつつアクセスポイント装置4を探索する。具体的には、Ch.情報Index Mが上限でないと判定した場合(S111)、Ch.情報Index値を加算して(S112)、再びステップS109及びS110の処理を行う。
【0058】
無線通信装置16は、電波強度閾値Index N以上のアクセスポイント装置4が見つかった場合(S110でYesの場合)、現在の、位置情報、方向情報、AP情報(アクセスポイント装置4の名称又はID)、Ch.情報Index値、ローミング実行Index値、ローミング実行回数を記憶して、ローミング関連情報を更新する(S113)。なお、ローミング実行回数の記憶を省略してもよい。
【0059】
その後、無線通信装置16は、接続中のアクセスポイント装置4と切断した後に(S114)、探索で見つかった新たなアクセスポイント装置4、即ちCh.情報Index Mのアクセスポイント装置4と接続する(S115)。
【0060】
また、無線通信装置16は、全てのCh.情報Index値を用いても電波強度閾値Index N以上のアクセスポイント装置4が見つからなかった場合(S111でYesの場合)、Ch.情報Index M=1に初期化する(S116)。
【0061】
次に、無線通信装置16は、電波強度閾値Index Nが上限か否かを判定する(S117)。電波強度閾値Index Nが上限とは、電波強度が最も小さい電波強度閾値が設定されていることである。無線通信装置16は、電波強度閾値Index Nが上限でないと判定した場合、電波強度閾値Index値を加算して電波強度閾値を下げる(S118)。その後、無線通信装置16は、S109からS117の処理を行う。言い換えれば、無線通信装置16は、電波強度閾値を満たすアクセスポイント装置4が見つかるまで、電波強度閾値を段階的に小さくする。
【0062】
なお、ステップS117において、電波強度閾値Index Nが上限と判定した場合、ローミングの条件に合致するアクセスポイント装置4が存在しないこととなる。従って、無線通信装置16は、所定時間が経過した後に(S119)、接続中のアクセスポイント装置4と切断する処理を行う(S120)。その後、
図5に図示しないが、接続中のアクセスポイント装置4との切断処理(S120)を行った無線通信装置16は、無線通信装置16に予め登録されている起動時にアクセスポイント装置4と接続するためのCh.情報に該当する全てのアクセスポイント装置4から送信されるビーコンの電波強度を確認し、最も電波強度が大きいアクセスポイント装置4との間で接続を行う。
【0063】
以上に説明したように、本実施形態では、過去にローミングを実行したときの状況に応じた大きさの電波強度閾値を設定するため、適切な電波強度閾値を設定できる。その結果、電波強度が低い条件(例えばデッドスポット)においても、短時間で適切なローミングを実行できる。
【0064】
また、現在と同じ状況で過去にローミングを実行していない場合は、電波強度が最も大きい電波強度閾値から順番にアクセスポイント装置4を探索するため、最適な電波強度閾値を決定して登録することができる。
【0065】
次に、
図10を参照して、強制ローミングについて説明する。
【0066】
強制ローミングとは、過去のローミングの実績が高い場合に、アクセスポイント装置4の存在確認及び電波強度の確認を省略して、該当のアクセスポイント装置4に接続する処理である。例えば、強制ローミングの条件を満たす場合は強制ローミングを行い、強制ローミングの条件を満たさない場合は、上述したローミング(以下、通常のローミング)を行う。以下、具体的に説明する。
【0067】
図10のステップS201~S206の処理は、
図4のステップS101~S106の処理と同じであるため、説明を省略する。無線通信装置16は、ステップS206においてNoの場合、現在の位置情報及び方向情報に対応するローミング実行回数が閾値以上か否かを判定する(S207)。
【0068】
無線通信装置16は、ローミング実行回数が閾値以上と判定した場合、ステップS113と同じ情報を記憶した後に(S208)、接続中のアクセスポイント装置4と切断する(S209)。そして、無線通信装置16は、ローミング関連情報において、位置情報及び方向情報に対応するアクセスポイント装置4と接続する(S210)。
【0069】
また、無線通信装置16は、ローミング実行回数が閾値以上でないと判定した場合、通常のローミングを実行する(S211)。具体的には、無線通信装置16は、ステップS109以降の処理を行う。なお、通常のローミングの説明において、ステップS113のローミング実行回数は省略できるとしたが、強制ローミングを行う場合は、ローミング実行回数の記憶が必要である。
【0070】
強制ローミングは、実行の有無を切替可能である。例えば、アクセスポイント装置4が増設されたり、電波の送受信に影響する装置等が導入された場合、電波環境が変化することが考えられる。この場合は、強制ローミングを一時的に無効にして、ローミング関連情報を更新する。その後、十分なローミング関連情報が収集できたことを管理者又は管理装置5が判定した後に、強制ローミングを有効にすれば、電波環境の変化に対応できる。
【0071】
以上に説明したように、本実施形態の無線通信装置16は、有線通信モジュール25と、無線通信モジュール24と、演算装置20と、を備える。有線通信モジュール25は、搬送車制御装置10と有線通信を行う。無線通信モジュール24は、アクセスポイント装置4に無線で接続して無線通信を行う。演算装置20は、接続中のアクセスポイント装置4と無線通信モジュール24の接続を切断して、新たなアクセスポイント装置4に無線通信モジュール24を接続させるローミングを実行する。演算装置20は、搬送車3の位置を示す位置情報、位置情報が示す位置に搬送車3が進入する方向を示す方向情報、及び、ローミングによる接続を許可する電波強度の下限の閾値を示す電波強度閾値と、を対応付けたローミング開始条件を読み出す又は外部から取得する。演算装置20は、搬送車3の位置情報の検出値と、搬送車3の方向情報の検出値と、ローミング開始条件と、に基づいて、電波強度閾値を設定し、電波強度閾値以上の新たなアクセスポイント装置4が存在するか否かを判定する。演算装置20は、電波強度閾値以上の新たなアクセスポイント装置4が存在すると判定した場合に、接続中のアクセスポイント装置4と無線通信モジュール24の接続を切断し、電波強度閾値以上の新たなアクセスポイント装置4に無線通信モジュール24を接続する。
【0072】
これにより、位置情報及び方向情報に基づいて電波強度閾値を設定できるため、位置及び移動体の進入向きに応じた適切な電波強度閾値を用いてローミングを実行できる。特に、方向情報を用いることにより、向きに応じて電波受信状況が異なる場合にも対応することができる。その結果、電波強度が低い条件においても、短時間で適切なローミングを実行できる。
【0073】
本実施形態の無線通信装置16において、ローミング開始条件の電波強度閾値は、無線通信モジュール24が過去にローミングを実行してアクセスポイント装置4に接続した際のアクセスポイント装置4の電波強度に基づいて定められる。
【0074】
これにより、過去の実績に基づいた信頼性の高い電波強度閾値を設定できる。
【0075】
本実施形態の無線通信装置16において、演算装置20は、電波強度閾値(例えば電波強度閾値Index N=1)以上の新たなアクセスポイント装置4が存在しない場合、電波強度閾値よりも電波強度が小さい第2電波強度閾値(例えば電波強度閾値Index N=2)を特定し、第2電波強度閾値以上の新たなアクセスポイント装置4が存在するか否かを判定する。演算装置20は、第2電波強度閾値以上の新たなアクセスポイント装置4が存在すると判定した場合に、接続中のアクセスポイント装置4と無線通信モジュール24の接続を切断し、第2電波強度閾値以上の新たなアクセスポイント装置4に無線通信モジュール24を接続する。
【0076】
これにより、電波強度閾値を満たす新たなアクセスポイント装置4が存在しない場合でも、電波強度が比較的大きい新たなアクセスポイント装置4に無線通信モジュール24を接続できる。
【0077】
本実施形態の無線通信装置16において、電波強度閾値は、電波強度の大きさに応じて複数段階に区分されている。
【0078】
これにより、電波強度閾値を簡単に管理できる。
【0079】
本実施形態の無線通信装置16において、演算装置20は、位置情報及び方向情報に対応付けて、ローミングの実行回数をアクセスポイント装置4毎に記憶する処理を行う。演算装置20は、搬送車3の位置情報の検出値と、搬送車3の方向情報の検出値と、に対応付けられたローミングの実行回数が閾値以上である場合、接続中のアクセスポイント装置4と無線通信モジュール24の接続を切断し、ローミングの実行回数が閾値以上の新たなアクセスポイント装置4に無線通信モジュール24を接続する。
【0080】
これにより、過去のローミングの実績に基づいて、新たなアクセスポイント装置4に接続できる。特に、電波強度の判定を省略することにより、より短時間で適切なローミングを実行できる。
【0081】
本実施形態の無線通信システム1は、無線通信装置16を複数備える。
【0082】
これにより、移動体が複数存在するシステムにも本発明を適用できる。
【0083】
本実施形態の無線通信システム1は、複数の無線通信装置16で共通して使用されるローミング開始条件を記憶する記憶装置(マスタ機)を備える。
【0084】
これにより、ローミング開始条件に変更が生じた際に、共通のローミング開始条件を更新するだけで対応できる。
【0085】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0086】
上記実施形態で示したフローチャートは一例であり、一部の処理を省略したり、一部の処理の内容を変更したり、新たな処理を追加したりしてもよい。
【0087】
上記実施形態では、ローミング実行Index値等の情報を更新するが、更新は必須ではない。例えば、作業場の稼動前に試験走行又はシミュレーション等を行うことにより、全ての位置情報及び方向情報に対応するローミング実行Index値を決定してもよい。
【0088】
上記実施形態では、電波強度閾値の各段階をIndex値を用いて管理するが、Index値を用いることなく(即ち電波強度閾値を直接用いて)各処理を行ってもよい。
【0089】
上記実施形態では、電波強度閾値を段階的に区分しているが、この区分を省略してもよい。例えば、ローミングを実行したときの具体的な電波強度(例えば-63.2 dBm)を登録して、当該登録した値(-63.2 dBm)をそのまま電波強度閾値として用いてもよい。
【0090】
強制ローミングは必須の処理ではなく省略することもできる。
【0091】
上記実施形態では、本発明を工場又は倉庫等の作業場に適用する例を説明したが、それ以外の場所、例えば、病院、学校、又はオフィス等の施設にも本発明を適用できる。また、搬送車3に代えて、物品を搬送する機能を有していない移動体を用いることもできる。更に、搬送車3に代えて、車輪を有さない移動体(例えば飛行体)を用いることもできる。
【符号の説明】
【0092】
1 無線通信システム
2 走行路
3 搬送車(移動体)
4 アクセスポイント装置
5 管理装置
16 無線通信装置
20 演算装置
24 無線通信モジュール
25 有線通信モジュール