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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023072131
(43)【公開日】2023-05-24
(54)【発明の名称】2-シアノアクリレート及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 253/34 20060101AFI20230517BHJP
   C09J 4/04 20060101ALI20230517BHJP
   C07C 255/23 20060101ALI20230517BHJP
【FI】
C07C253/34 CSP
C09J4/04
C07C255/23
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021184475
(22)【出願日】2021-11-12
(71)【出願人】
【識別番号】000216243
【氏名又は名称】田岡化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 文哉
(72)【発明者】
【氏名】堺谷 征矢
【テーマコード(参考)】
4H006
4J040
【Fターム(参考)】
4H006AA01
4H006AA02
4H006AA03
4H006AB99
4H006AD17
4H006QN30
4J040FA121
4J040JA01
4J040JB04
4J040MA11
4J040NA05
4J040NA16
4J040NA19
(57)【要約】
【課題】
難接着材料、特にオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)及び架橋型オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPV)等の熱可塑性エラストマー(TPE)に対する接着性が改善された2-シアノアクリレートの提供。
【解決手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、(A)2-シアノアクリレートと中性から酸性を示す多孔質粘土類とを接触させる工程、及び(B)蒸留により2-シアノアクリレートと多孔質粘土類とを分離する工程、を含む製造方法によれば、上記課題が解決可能であることを見出した。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)2-シアノアクリレートと中性から酸性を示す多孔質粘土類とを接触させる工程
及び
(B)蒸留により中性から酸性を示す多孔質粘土類と2-シアノアクリレートとを分離する工程
を含む2-シアノアクリレートの製造方法(ただし、工程(B)は、工程(A)と同時、または工程(A)より後に実施する)。
【請求項2】
多孔質粘土類が、活性白土及び酸性白土からなる群から選ばれる少なくとも一種である、請求項1に記載の2-シアノアクリレートの製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の製造方法によって得られた2-シアノアクリレート。
【請求項4】
請求項3に記載の2-シアノアクリレートを含む接着剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難接着材料への接着性に優れた2-シアノアクリレート及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2-シアノアクリレート(特に2-シアノアクリレートを主成分とする2-シアノアクリレート接着剤組成物)は、その高いアニオン重合性により、被着体表面や空気中の水分等のアニオン種によって短時間で重合硬化し各種材料を接着させるため、瞬間接着剤として電子、電気、自動車などの各種産業界、レジャー分野及び一般家庭で広く用いられている。
【0003】
しかしながら、2-シアノアクリレートは、被着体の材質によっては接着性が極めて劣る場合がある。例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタレート等の結晶性のエンジニアリングプラスチックや、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体(EPDM)等のエチレン・プロピレンゴム(EPM)等は極性が小さいため、表面の水分量や相互作用が小さく、接着強度が十分に発現しない。
【0004】
そのため、前記した2-シアノアクリレートに対して難接着性を示す被着体を2-シアノアクリレートを用いて接着する方法が種々検討されており、例えば、事前に表面処理剤(所謂プライマー)を塗布して被着体表面を改質し、接着性を向上させる方法(例えば特許文献1、2)が知られている。
【0005】
また、近年、プラスチックと同様に射出成形でき且つゴムのような弾性を有する熱可塑性エラストマー(TPE)が、ゴムの代替品として使用されはじめている。中でも、ポリプロピレンとEPM(EPDM)からなるオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)や、ポリプロピレンと架橋したEPM(EPDM)等の架橋ゴムからなる架橋型オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPV)が軽量性や耐候性、材料コストの点で優れており、広く使用されている。
【0006】
そして、TPOやTPVは、前記した難接着性を示す材質から構成される為、2-シアノアクリレートを用いた接着に際し、同様の難接着性を示すことが想定されるが、本願発明者らがこれら被着体に対し接着試験を実施したところ、特に難接着性を示すとされるEPDMに比べても、更に接着性が低下することが判明した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2015-129215号公報
【特許文献2】特開2015-224277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、難接着材料、特にオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)及び架橋型オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPV)等の熱可塑性エラストマー(TPE)に対する接着性が改善された2-シアノアクリレートの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、(A)2-シアノアクリレートと中性から酸性を示す多孔質粘土類とを接触させる工程、及び(B)蒸留により2-シアノアクリレートと多孔質粘土類とを分離する工程、を含む製造方法により上記課題が解決可能であることを見出した。具体的には、本発明は以下の発明を含む。
【0010】
〔1〕
(A)2-シアノアクリレートと中性から酸性を示す多孔質粘土類とを接触させる工程
及び
(B)蒸留により中性から酸性を示す多孔質粘土類と2-シアノアクリレートとを分離する工程
を含む2-シアノアクリレートの製造方法(ただし、工程(B)は、工程(A)と同時、または工程(A)より後に実施する)。
【0011】
〔2〕
多孔質粘土類が、活性白土及び酸性白土からなる群から選ばれる少なくとも一種である、〔1〕に記載の2-シアノアクリレートの製造方法。
【0012】
〔3〕
〔1〕又は〔2〕に記載の製造方法によって得られた2-シアノアクリレート。
【0013】
〔4〕
〔3〕に記載の2-シアノアクリレートを含む接着剤組成物。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、難接着材料、特にTPO及びTPVに対する接着性に優れた2-シアノアクリレートを提供することができる。そのため、特にこれら難接着材料が使用される分野(例えば自動車用部品)で用いられる2-シアノアクリレート接着剤組成物の原料として好適に用いることができる。
【0015】
また、本発明の製造方法によれば、上記工程(A)を実施することにより、上記工程(B)を一般的な蒸留条件に比しより低い温度で実施することも可能となるため、熱暴露による異常重合が回避され、2-シアノアクリレートの品質をより一層向上させることもできる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の2-シアノアクリレートは、(A)2-シアノアクリレートと中性から酸性を示す多孔質粘土類とを接触させる工程、及び(B)蒸留により2-シアノアクリレートと多孔質粘土類とを分離する工程、を含む製造方法(本発明の製造方法)により製造することができる。なお、工程(B)は、工程(A)と同時、または工程(A)より後に実施する。
【0017】
本発明における2-シアノアクリレートとしては、2-シアノアクリレート接着剤組成物の原料として一般的に使用される2―シアノアクリレートを用いることができる。具体的には、例えば、2-シアノアクリル酸のメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、オクチル、ネオペンチル、シクロヘキシル、エチルヘキシル、アリル、メトキシエチル、エトキシエチル、メトキシプロピル等のエステル類が挙げられ、メチル、エチル、n-ブチル、メトキシエチル及びエトキシエチルのエステルが好ましい。また、これらの2-シアノアクリレートは1種または必要に応じ2種以上を併用してもよい。
【0018】
上記工程(A)に供される2-シアノアクリレートは、市販品を用いてもよく、公知の製造方法により製造したものを用いてもよい。公知の製造方法としては、例えば、シアノ酢酸エステルおよびホルムアルデヒドを塩基性触媒の存在下に有機溶媒中で縮合させ、得られた縮合体を重合抑制剤および解重合触媒の存在下に酸性ガス気流中、高温減圧条件で解重合し、2-シアノアクリレートを得る方法等が知られている。
【0019】
上記工程(A)において、2-シアノアクリレートと接触させる中性から酸性を示す多孔質粘土類としては、例えば、モンモリロナイト、ゼオライト、シリカゲル、セライト、珪藻土、はくとう土等が挙げられる。モンモリロナイトしては、例えば、酸性白土、活性白土等が挙げられる。なお、酸性白土はモンモリロナイトを主成分とする中性から酸性の粘土鉱物であり、活性白土は酸性白土や、同じくモンモリロナイトを主成分とするベントナイトを無機酸等の酸で処理したものである。これら中性から酸性を示す多孔質粘土類の中でも、酸性白土、活性白土が好ましく、活性白土がより好ましい。また、これらの多孔質粘土類は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。一方、多孔質粘土類には塩基性を示すものも存在するが、塩基性を示す多孔質粘土類を2-シアノアクリレートと接触させた場合、多孔質粘土類の凝集固化(2-シアノアクリレートへの分散不良)、2-シアノアクリレートの重合および貯蔵安定性の悪化等を引き起こす虞があるため好ましくない。
【0020】
多孔質粘土類の液性(酸性、中性又は塩基性であるか)は、例えば、後述する実施例の項にて記載する方法により多孔質粘土類のpHを測定することによって決定することができる。
【0021】
多孔質粘土類の形状は特に制限されず、粉末状、粒状、ビーズ状、ペレット状等の様々な形状をとることができるが、2ーシアノアクリレートとの接触面積を大きくする観点から、粒状または粉末状であることが好ましい。
【0022】
活性白土としては、例えば、ガレオンアースV2R(水澤化学社製)、ガレオンアースNV(水澤化学社製)、ガレオナイト#251(水澤化学社製)、ガレオナイト#336(水澤化学社製)、SA35(日本活性白土製)、SA1(日本活性白土製)、R-15(日本活性白土製)、ニッカナイトG-36(日本活性白土製)、ニッカナイトG-153(日本活性白土製)、ニッカナイトG-168(日本活性白土製)等が市販品として入手可能である。
【0023】
また、酸性白土としては、例えば、ミズカエース#20(水澤化学社製)、ミズカエース#400(水澤化学社製)、ガレオナイト#036(水澤化学社製)、ガレオナイト#0612(水澤化学社製)、ニッカナイトS-200(日本活性白土製)、ニッカナイトA-36(日本活性白土製)、ニッカナイトA-168等が市販品として入手可能である。
【0024】
工程(A)において、2-シアノアクリレートと多孔質粘土類との具体的な接触方法としては、例えば、2-シアノアクリレートに多孔質粘土類を添加する方法(浸漬法)や、多孔質粘土類を充填したカラムに2-シアノアクリレートを通す方法等がある。前記浸漬法において、2-シアノアクリレートと多孔質粘土類との接触効率を高めるため、多孔質粘土類の添加後、撹拌操作または振盪操作を実施してもよい。また、工程(A)と工程(B)を同時に実施する場合は、例えば、蒸留に使用する反応器に2-シアノアクリレートと多孔質粘土類とを添加し、後述する工程(B)を実施することにより両工程を同時に実施することができる。
【0025】
2-シアノアクリレートと接触させる多孔質粘土類の量は、例えば、2-シアノアクリレート100重量部に対し0.01~10重量部、好ましくは0.1~6重量部である。その際の温度は、例えば、0~100℃、好ましくは10~80℃、より好ましくは20~60℃である。
【0026】
また、2-シアノアクリレートは空気中の湿気で重合反応が進行するため、上記工程(A)は、通常、窒素などの不活性ガス存在下で実施する。また、脱気や低沸成分の分離のために、浸漬法を減圧下に実施することもでき、通常、2-シアノアクリレートの沸点以下となるように0~50℃で温度調節しながら、好ましくは16kPa以下、より好ましくは8kPa以下、更に好ましくは1.3kPa以下、特に好ましくは0.67kPa以下の減圧下、攪拌しながら実施する。
【0027】
工程(A)の後、工程(B)の実施前に、必要に応じて、多孔質粘土類を濾過やデカンテーション等により分離してもよい。具体的には、例えば、2-シアノアクリレートと多孔質粘土類との懸濁液を静置し、多孔質粘土類を沈降させて分離する方法(デカンテーション)や、フィルターやメッシュ等のろ過材を使用して濾過する方法等が挙げられる。しかしながら、本発明者らの検討の結果、原因は定かではないが、後述する実施例の項に示す通り、濾過やデカンテーション等による分離だけでは、本発明の製造方法を適用する前の2-シアノアクリレートに比べて接着性は向上せず、また、貯蔵安定性が悪化し、特に70℃以上の高温下促進試験における増粘が顕著となる為、工程(B)が必須であるとの結論に至った。
【0028】
工程(B)において、蒸留時における圧力および温度は2-シアノアクリレートの沸点に応じて適宜選択すればよいが、圧力については、減圧下であることが好ましく、0.1~2kPaであることがより好ましい。また、温度については、30~150℃であることが好ましく、30~120℃であることがより好ましい。
【0029】
工程(B)において、通常、初留および後留はカットし、主留のみを回収する。なお、ここでいう「初留」とは、留出が開始してから所定の重量比(初留カット率)に達するまでの低沸分を多く含む留分を指し、「主留」とは、初留をカットしてから蒸留器内の内容物が所定の重量比(後留カット率)に達するまでの留分を指し、「後留」とは、主留回収後の高沸分を多く含む留分および釜残分のことを指す。前記初留カット率は、例えば、工程(A)で使用した2-シアノアクリレートに対して0.1~8重量%である。また、後留カット率は、例えば、工程(A)で使用した2-シアノアクリレートに対して0.1~20重量%である。なお、工程(A)と工程(B)を同時に実施、もしくは工程(A)の後、工程(B)の前に多孔質粘土類を濾過やデカンテーション等により分離していない場合、前記「後留」の重量から工程(A)で使用した多孔質粘土類の重量を減算した値を、前記後留カット率の基準値とする。
【0030】
工程(B)において、必要に応じ、通常の2-シアノアクリレートの蒸留時に用いられているハイドロキノンやピロガロール等のラジカル重合禁止剤や、五酸化リン、二酸化イオウ、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、三弗化ホウ素ジエチルエーテル、ホウフッ化水素酸、トリアルキルボレート等のアニオン重合禁止剤等を用いてもよい。
【0031】
このようにして得られた本発明の2-シアノアクリレートは、公知の2-シアノアクリレートに比べて難接着材料、特にTPO及びTPVに対する接着性に優れ、かつ貯蔵安定性(特に70℃以上の高温下促進試験による貯蔵安定性)に優れる。
【0032】
また、本発明の2-シアノアクリレートは、公知の2-シアノアクリレートに対し、2-シアノアクリレートに通常含まれる極微量の不純物の除去、多孔質粘土類由来の極微量の物質の添加、或いは2-シアノアクリレートの一部構造の変化等の何らかの差異により上述した効果を発揮していると考えられるが、要因として想定される微量成分の数はあまりにも膨大であり、かつ、検出限界未満の微量成分については分析することが不可能である。事実、本願発明者らが出願時点で公知の分析方法(例えば、イオンクロマトグラフィー、マスクロマトグラフィー等)を用いて、本発明の2-シアノアクリレートと公知の2-シアノアクリレートにおける差異を見出そうと試みたものの、その差異を見出すことができなかった。従って、上述の効果が発現し得る本発明の2-シアノアクリレートを「その構造又は特性により直接特定すること」は、凡そ非実際的であると言わざるを得ない。
【0033】
また、本発明の2-シアノアクリレートは、添加剤を配合し、2-シアノアクリレート接着剤組成物としてもよい。添加剤としては、例えば、安定剤(例えば、二酸化イオウ、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、三弗化ホウ素ジエチルエーテル、ホウフッ化水素酸、トリアルキルボレート等のアニオン重合禁止剤や、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル等のラジカル重合禁止剤等)、可塑剤(フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸2-エチルヘキシル、フタル酸ジイソデシル等)、着色剤、香料、溶剤、硬化促進剤、強度向上剤、脂肪族多価カルボン酸等、2-シアノアクリレート接着剤組成物の添加剤として公知のものを、本発明の2-シアノアクリレートの接着性等を損なわない範囲で適宜配合することができる。
【実施例0034】
以下、実施例等を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。なお、実施例、比較例における各種試験および評価は下記の通り行った。また、実施例等において、初留カット率、主留収率および後留カット率は、それぞれ原料の2-シアノアクリレートの重量(初期重量)に対する初留、主留および後留の重量割合である。
【0035】
<試験および評価方法>
(1)外観
各接着剤組成物を用い、JIS K 6861-4に準拠した方法によりサンプルを調製し、目視により外観を評価した。
<評価基準>
〇:透明(濁り等なし)、かつ着色なし(無色)
×:半透明(濁り等あり)、及び/又は着色あり
【0036】
(2)貯蔵安定性
各接着剤組成物の「初期粘度」と、各接着組成物20gをポリエチレン製ボトルに充填して密栓し、70℃の雰囲気中で7日間静置後の粘度(「70℃7日後粘度」)から増粘倍率を求め、下記の評価基準に基づいて貯蔵安定性を評価した。なお、粘度の測定は、東機産業社製TVE-25H型粘度計を用いて、温度:20℃、コーンローター:1°34’×R24、回転速度:100rpmの条件で行った。また、増粘倍率は、「70℃7日後粘度」と「初期粘度」との比(「70℃7日後粘度」/「初期粘度」)である。
<評価基準>
〇:増粘倍率≦3.0倍
×:増粘倍率>3.0倍
【0037】
(3)接着性
各接着剤組成物および各被着材を用いて22℃、60%RH環境下で貼り合わせ、圧着したまま22℃、60%RH環境下で24時間静置して養生することで試験片を作製した。試験片の圧着時には各被着材の変形を防止するために、2×25×50mmのPTFE板2枚で挟みこんだ状態とし、所定の養生時間後にPTFE板を取り除き、試験片とした。作製した試験片について、島津製作所社製オートグラフを用いて引張せん断接着試験を行い、下記の評価基準に基づいて接着性の評価を行った。なお、被着材としては、スタンダードテストピース社製のEPDM試験片(2×25×50mm)、ユーコウ商会社製の熱可塑性エラストマー試験片〈1〉(サントプレーン101-73BK、2×25×50mm)及びユーコウ商会社製の熱可塑性エラストマー試験片〈2〉(トレックスプレーンQT60MB、2×25×50mm)の3種を用い、
被着体形状:短冊状 2×25×50mm、
接着面積(重ね合わせ面積):25×12.5mm、
オートグラフ(精密万能試験機)の初期の治具間隔:40mm(試験片の初期形状、中心部(20mm)に接着部の中心をセット)、
変形速度:100mm/min、
の条件で引張せん断接着試験を行った。また、接着性の評価に使用した「伸び率」とは、接着破壊時の試験片の歪みのことをいい、「伸び率(%)」={接着破壊時のオートグラフの治具間隔(mm)-初期の治具間隔(mm)}÷初期の治具間隔(mm)×100で求められる値である。
<評価基準>
〇:3種の被着材全てにおいて、「伸び率」が35%以上
×:3種の被着材のうち少なくとも1つにおいて、「伸び率」が35%より小さい
【0038】
(実施例1)
窒素置換した1Lポリエチレン製ボトルに、エチル2-シアノアクリレート(タオカ ケミカル インド プライベート リミテッド社製)100重量部、及び多孔質粘土類としてニッカナイトG-36(粒状活性白土、pH3.6、日本活性白土社製)5.0重量部を充填し、エチル2-シアノアクリレートと活性白土とを、振盪機を用いて40℃、145rpmで1時間接触させた。次いで、内容物をポリエチレン製150メッシュフィルター、及びポリプロピレン製熱溶着フェルトフィルター(ろ過精度1μm、3M熱溶着フェルトフィルターバッグNBシリーズ、スリーエムジャパン社製)を用いて濾過した後、三ふっ化ほう素ジエチルエーテル錯体を0.002重量部(20ppm)添加し、1L三口梨型フラスコに移し、温度計、平栓と温度計を接続したクライゼン形連結管、リービッヒ冷却器、挿入管付アダプター、三又アダプター、及び受器(30mLナス型フラスコ、500mLナス型フラスコ、50mLナス型フラスコ)を接続し、0.6kPaの減圧下で蒸留を実施した。内温30℃から50℃に掛けての留分1.8重量部(初留カット率:1.8重量%)を初留としてカットした後、内温50℃から90℃に掛けての留分を主留として回収し、本発明の2-シアノアクリレート82.8重量部(主留収率:82.8重量%)を得た。また、釜残を含む後留は9.6重量部(後留カット率:9.6重量%)であった。得られた本発明の2-シアノアクリレートに対し、アニオン重合禁止剤としてHBFを3ppm、ラジカル重合禁止剤としてハイドロキノン(HQ)を750ppm添加し、10~30℃の温度で1時間撹拌して接着剤組成物を調製した。調製後、得られた2-シアノアクリレート接着剤組成物について、上述した各試験を実施した。結果を表1に示す。
【0039】
(実施例2~7、比較例1~5)
原料とする2-シアノアクリレート、多孔質粘土類、及び製造条件等について表1及び2に示す通り変更した以外は実施例1と同様の操作にて接着剤組成物を調製し、上述した各試験を実施した。結果を表1及び2に示す。
【0040】
下記表1及び2中、各添加剤の略称は下記の化合物等を意味する。また、多孔質粘土類のpHは、以下の方法により測定した。
<多孔質粘土類のpH測定方法>
JIS K 5101-17-2:2004に準拠した方法により、5重量%水性サスペンジョンを調製し、堀場製作所社製pHメータを用いて25±1℃で測定した。
【0041】
A-1:エチル2-シアノアクリレート(シアノ酢酸エチルとホルムアルデヒドとの縮合体を減圧下に熱解重合して得られた留分、タオカ ケミカル インド プライベート リミテッド社製)
A-2:比較例1で得られたエチル2-シアノアクリレート
B-1:ニッカナイトG-36(粒状活性白土、pH3.6、日本活性白土社製)
B-2:ガレオナイト#336(粒状活性白土、pH2.7、水澤化学工業社製)
B-3:ガレオンアースNV(粉末状活性白土、pH3.7、水澤化学工業社製)
B-4:活性白土(粉末状、pH3.7、富士フイルムワコーケミカル社製)
B-5:ニッカナイトG-168(粒状活性白土、pH4.1、日本活性白土社製)
B-6:ニッカナイトA-36(粒状状酸性白土、pH5.6、日本活性白土社製)
【0042】
【表1】
【0043】
【表2】