(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023072132
(43)【公開日】2023-05-24
(54)【発明の名称】仕上げ材、仕上げ材の製造方法、および、壁面の仕上げ方法
(51)【国際特許分類】
E04F 13/08 20060101AFI20230517BHJP
【FI】
E04F13/08 J
E04F13/08 102N
E04F13/08 101K
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021184477
(22)【出願日】2021-11-12
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】堀居 令奈
(72)【発明者】
【氏名】水上 卓也
(72)【発明者】
【氏名】小林 利充
(72)【発明者】
【氏名】小川 晴果
(72)【発明者】
【氏名】福田 一夫
【テーマコード(参考)】
2E110
【Fターム(参考)】
2E110AA47
2E110AB04
2E110BA13
2E110BC02
2E110BC12
2E110BC17
2E110DA02
2E110DA03
2E110DA08
2E110DA12
2E110DC21
2E110DC36
2E110EA02
2E110GA34W
2E110GA42Z
2E110GB32Z
2E110GB43Z
2E110GB44Z
2E110GB47Z
(57)【要約】
【課題】タイルの剥落を抑えることのできる仕上げ材、仕上げ材の製造方法、および、壁面の仕上げ方法を提供する。
【解決手段】仕上げ材10は、タイル12と隣り合うタイル12を連結する第1連結部材13とを有するタイルユニット11と、タイルユニット11の端部からはみ出して、隣り合うタイルユニット11を連結する第2連結部材15と、を有する。仕上げ材10は、隣り合うタイル12の裏面を第1連結部材13で連結してタイルユニット11を製造する第1連結工程と、タイルユニット11に対して、タイルユニット11の端部からはみ出すように第2連結部材15を連結する第2連結工程と、を経て製造される。仕上げ材10は、接着材を介して壁面に順番に張り付けられる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイルと隣り合う前記タイルを連結する第1連結部材とを有するタイルユニットと、
前記タイルユニットの端部からはみ出して、隣り合う前記タイルユニットを連結する第2連結部材と、を有する
仕上げ材。
【請求項2】
前記各タイルの裏面において、前記第1連結部材と前記第2連結部材とによって被覆されない非被覆部分の面積の割合が60%以上である
請求項1に記載の仕上げ材。
【請求項3】
前記第1連結部材と前記第2連結部材との重なり部を有する
請求項1または2に記載の仕上げ材。
【請求項4】
前記第1連結部材および前記第2連結部材は、ネット部材であり、その空隙率が40%以上80%以下である
請求項1~3のいずれか一項に記載の仕上げ材。
【請求項5】
隣り合うタイルの裏面を第1連結部材で連結してタイルユニットを製造する第1連結工程と、
前記タイルユニットに対して、前記タイルユニットの端部からはみ出すように第2連結部材を連結する第2連結工程と、を有する
仕上げ材の製造方法。
【請求項6】
タイルと隣り合う前記タイルを連結する第1連結部材とを有するタイルユニットと、前記タイルユニットの端部からはみ出して、隣り合う前記タイルユニットを連結する第2連結部材と、を有する仕上げ材を壁面に対して接着材で接着する
壁面の仕上げ方法。
【請求項7】
前記隣り合うタイルの目地部分に固定具を打ち込む
請求項6に記載の壁面の仕上げ方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仕上げ材、仕上げ材の製造方法、および、壁面の仕上げ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、壁面の仕上げ方法として、壁面に塗布した接着材を介して複数のタイルを張り付ける工法が知られている。例えば特許文献1には、複数のタイルの裏面を連結部材で連結したタイルユニットを壁面に張り付ける工法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の工法では、タイルユニットを構成する各タイルは連結部材で連結されているものの、隣り合うタイルユニット間においてはタイルが接着材でのみ連結されているため、タイルの剥落を防止するうえで改善の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する仕上げ材は、タイルと隣り合う前記タイルを連結する第1連結部材とを有するタイルユニットと、前記タイルユニットの端部からはみ出して、隣り合う前記タイルユニットを連結する第2連結部材と、を有する。
【0006】
上記課題を解決する仕上げ材の製造方法は、隣り合うタイルの裏面を第1連結部材で連結してタイルユニットを製造する第1連結工程と、前記タイルユニットに対して、前記タイルユニットの端部からはみ出すように第2連結部材を連結する第2連結工程と、を有する。
【0007】
上記課題を解決する壁面の仕上げ方法は、タイルと隣り合う前記タイルを連結する第1連結部材とを有するタイルユニットと、前記タイルユニットの端部からはみ出して、隣り合う前記タイルユニットを連結する第2連結部材と、を有する仕上げ材を壁面に対して接着材で接着する。
【0008】
これにより、第1連結部材によってタイル同士が強固に連結されたタイルユニットが形成でき、第2連結部材によってタイルユニット同士を強固に連結できる仕上げ材を形成することができる。
【0009】
上記仕上げ材は、前記各タイルの裏面において、前記第1連結部材と前記第2連結部材とによって被覆されない非被覆部分の面積の割合が60%以上であることが好ましい。これにより、各タイルにおいて、接着材を介して直接的に壁面に接着される部分の面積を60%以上とすることができる。
【0010】
上記仕上げ材は、前記第1連結部材と前記第2連結部材との重なり部を有していてもよい。これにより、接着材で壁面に仕上げ材を張り付けたときに、重なり部において第1連結部材と第2連結部材とを接着材を介して連結することができる。
【0011】
上記仕上げ材において、前記第1連結部材および前記第2連結部材は、ネット部材であり、その空隙率が40%以上80%以下であることが好ましい。
これにより、第1連結部材および前記第2連結部材そのものの強度を確保しつつ、第1連結部材および前記第2連結部材で被覆される被覆部分において、接着材を介してタイルが壁面に直接的に接着される部分の割合を高めることができる。
【0012】
上述した壁面の仕上げ方法において、前記隣り合うタイルの目地部分に固定具を打ちんでもよい。これにより、タイルの剥落をより効果的に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】仕上げ材の一実施形態の概略構成を示す正面図。
【
図3】(a)試験体の製造過程を模式的に示す図、(b)試験方法を模式的に示す図。
【
図4】(a)第1試験用連結部材を模式的に示す図、(b)第2試験用連結部材を模式的に示す図。
【
図6】(a)、(b)第2連結部材の一例を示す図。
【
図7】(a)、(b)、(c)、(d)第2連結部材の一例を示す図。
【
図8】仕上げ材の製造方法の一実施形態における手順を示すフローチャート。
【
図9】壁面の仕上げ方法の一実施形態における手順を示すフローチャート。
【
図10】目地部分に固定部が打ち込まれた状態を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1~
図10を参照して、仕上げ材、仕上げ材の製造方法、および、壁面の仕上げ方法の一実施形態について説明する。仕上げ材は、接着材が塗布された壁面に対して順番に張り付けられることにより該壁面を覆うように設けられる部材である。
【0015】
(仕上げ材)
図1に示すように、仕上げ材10は、タイルユニット11を有する。タイルユニット11は、矩形状の複数のタイル12と第1連結部材13とを有する。タイル12は、一辺の長さが45mm以上300mm以下である。
【0016】
タイルユニット11は、複数のタイル12がマトリクス状に配列されていることで全体として矩形状に形成されている。本実施形態において、複数のタイル12は、6行3列のマトリクス状に配列されている。
図1において、最上行が1行目、最下行が6行目である。また、最左列が1列目、最右列が3列目である。
【0017】
第1連結部材13は、例えば有機系の接着剤などによって、タイル12の裏面に接着されている。第1連結部材13は、タイル12の裏面の一部を被覆している。第1連結部材13は、隣り合うタイル12を連結している。本実施形態では、第1連結部材13は、奇数行目のタイル12の下部と偶数行目のタイル12の上部とを連結している。また、第1連結部材13は、隣り合う列において各タイル12を連結している。第1連結部材13は、全てのタイル12を連結する1つの部材で構成されてもよいし、例えば一対のタイル12を連結する複数の部材で構成されてもよい。
【0018】
仕上げ材10は、第2連結部材15を有する。第2連結部材15は、例えば有機系の接着剤などによって、タイルユニット11の周縁を構成するタイル12の裏面に接着されている。第2連結部材15は、タイル12の裏面の一部を被覆している。第2連結部材15は、タイルユニット11の端部からはみ出している。第2連結部材15は、隣り合うタイルユニット11間においてタイル12を連結する。本実施形態のように全体として矩形状をなすタイルユニット11において、第2連結部材15は、1つの角部を挟む2辺からはみ出すように設けられている。具体的には、第2連結部材15は、1行目を構成するタイル12から上方にはみ出すように、また、第3列目を構成するタイル12から右方にはみ出すように設けられている。第2連結部材15は、L字状の1つの部材で構成されてもよいし、複数の部材で構成されていてもよい。
【0019】
第1連結部材13および第2連結部材15は、各タイル12における非被覆部分の面積(接着部分の面積)の割合(接着率)が裏面全体の面積の60%以上となるように設けられている。タイル張りの公的な合否の判定は、タイル裏面への接着材の接着率が60%以上、かつ、タイル全面に均等に接着していることを合格とすることである。「非被覆部分の面積の割合が60%以上」であれば、タイル張りは安全とされる。また、第1連結部材13および第2連結部材15は、運搬時や取扱時に一部が損傷したりしないように可撓性を有することが好ましい。また、仕上げ材10は、第1連結部材13と第2連結部材15とが重なる重なり部17を有していてもよい。
【0020】
第1連結部材13および第2連結部材15の一例は、ガラス繊維、ポリアミド系繊維、ポリプロピレン系繊維、ポリアクリル系繊維、ポリビニールアルコール系繊維、ポリエチレン系繊維、ビニロン系繊維、炭素繊維等によって形成されるネット部材である。また、第1連結部材13および第2連結部材15の他例は、樹脂シートである。
【0021】
第1連結部材13および第2連結部材15がネット部材である場合、その空隙率は40%以上80%以下であることが好ましく、60%以上80%以下であることがより好ましい。空隙率が40%以上あることによって、第1連結部材13および第2連結部材15による被覆部分において、接着材を介してタイル12が壁面に直接的に接着される部分の割合(被覆部分における接着率)が確保されやすくなる。空隙率が60%以上あることによって、被覆部分における接着率がさらに確保されやすくなる。また、空隙率が80%以下であることにより、第1連結部材13および第2連結部材15そのものに十分な強度を付与することができる。
【0022】
図2に示すように、第1連結部材13の一例は、網目部分が三角形状のネット部材である。こうしたネット部材を第1連結部材13に用いることにより、タイル12の並設方向に対する斜め方向に第1連結部材13の一部が延びる態様でタイル12を連結することができる。また、タイル12と第1連結部材13との連結接着長さLについては、下限値は20mm、上限値はタイルの長辺÷2の長さを目安とする。上限値の一例は50mmである。連結接着長さLは、タイル12の並設方向における長さであって、タイル12と第1連結部材13との接合部分においてタイル12の端から第1連結部材13の先端までの長さである。連結接着長さLが20mm以上であることにより、タイル12間に十分な連結力が付与されやすくなる。連結接着長さLが50mm以下であることにより、接着材を介してタイル12が壁面に直接的に接着される部分の面積が確保されやすくなる。
【0023】
なお、こうしたネット部材は、第2連結部材15に適用することも可能である。また、タイル12の端からの第2連結部材15のはみ出し長さは、タイルユニット11間の目地部分を考慮したうえで、隣のタイルユニット11におけるタイル12との連結接着長さLが20mm以上50mm以下となる長さに設定される。
【0024】
(連結接着長さについて)
上述した連結接着長さLは、本発明者らが行った実験の結果に基づいて導き出されたものである。
【0025】
図3(a)に示すように、本実験では、表面にフィルムを張ったアクリル板20に対して主成分を変成シリコーン樹脂とする接着材21を塗布したのち、その接着材21に対して試験用連結部材23で連結された一対のタイル12(45mm×90mm)を張り付けた。本実験の試験用連結部材23は、網目部分が三角形状のポリアミド系繊維からなるネット部材である。アクリル板20と各タイル12の裏面全体との間に厚さ2mm程度、また、目地部分26に厚さ3mm程度の接着層が形成されるようにした。
【0026】
そして、
図3(b)に示すように、接着材21が十分に乾燥・硬化してからフィルムごとアクリル板20を剥がしたものを試験体25として、タイル12を6mm/minで引き離して目地部分26が破断するまでの最大荷重を測定した。なお、接着材21のみでタイル12を連結したものを比較体とした。
【0027】
図4に本実験に用いた試験用連結部材23の形状を示す。
図4(a)に示すように、第1試験用連結部材31は、矩形状のネット部材である。この第1試験用連結部材31でタイル12が連結された試験体のうち、連結接着長さLが20mmであるものを第1-1試験体、連結接着長さLが50mmであるものを第1-2試験体とした。
【0028】
図4(b)に示すように、第2試験用連結部材32は、平行四辺形の四角枠状のネット部材である。この第2試験用連結部材32でタイル12が連結された試験体のうち、連結接着長さLが20mmであるものを第2-1試験体、連結接着長さLが50mmであるものを第2-2試験体とした。
【0029】
図5に実験結果を示す。
図5に示すように、比較体の最大荷重よりも各試験体の最大荷重が大きいことが示された。各試験体のうちで最大荷重が最も小さかった第2-1試験体であっても、その最大荷重が比較体の最大荷重の約3倍程度であった。
【0030】
第1試験用連結部材31に関しては、第1-1試験体および第1-2試験体の最大荷重は同程度の荷重であった。第2試験用連結部材32に関しては、第2-1試験体の最大荷重に対し、第2-2試験体の最大荷重が1.5倍以上であった。また、第2-2試験体の最大荷重は、第1-1試験体の最大荷重と同程度、あるいはそれ以上であった。
【0031】
こうしたことから、連結接着長さLは、一辺の長さが45mm以上300mm以下であるタイル12の大きさやタイル12と壁面との接着率などを考慮して、20mm以上50mm以下にすることでタイル12間に十分な連結力を得ることができる。
【0032】
(第2連結部材の形状の一例)
図6および
図7を参照して、本実施形態における第2連結部材15の一例について説明する。なお、
図6および
図7においては、タイル12について、第1連結部材13および第2連結部材15によって裏面が被覆される部分を省略して示している。また、第1連結部材13については一部のみを示している。
【0033】
図6(a)に示すように、第2連結部材15は、1行目を構成する各タイル12、および、3列目を構成する各タイル12の各々に対して、各別に接着される矩形状ネット部材15aで構成される。
【0034】
図6(b)に示すように、第2連結部材15は、1行目を構成する各タイル12、および、3列目を構成する各タイル12の各々に対して、各別に接着される四角枠状樹脂シート15bで構成される。
【0035】
図7(a)に示すように、第2連結部材15は、1行目を構成する各タイル12、および、3列目を構成するタイル12の各々に対して、各別に接着されるクロス状ネット部材15cで構成される。
【0036】
図7(b)に示すように、第2連結部材15は、1行目を構成する各タイル12、および、3列目を構成するタイル12の各々に対して、各別に接着される一対の線状樹脂シート15dで構成される。
【0037】
なお、矩形状ネット部材15a、四角枠状樹脂シート15b、クロス状ネット部材15c、および、線状樹脂シート15dは、大きさを調整したうえで第1連結部材13に適用することもできる。
【0038】
図7(c)に示すように、第2連結部材15は、1行目を構成する各タイル12に対して跨がるように接着される矩形状ネット部材15eと、3列目を構成する各タイル12に対して跨がるように接着される矩形状ネット部材15fと、で構成される。
【0039】
図7(d)に示すように、第2連結部材15は、1行目を構成する各タイル12に対して跨がるように接着される梯子状樹脂シート15gと、3列目を構成する各タイル12に対して跨がるように接着される梯子状樹脂シート15hと、で構成される。
【0040】
1行目の各タイル12に接着される梯子状樹脂シート15gは、矩形状の外枠と、中間に位置するタイル12、具体的には2列目のタイル12に接着される一対の中間枠と、で構成されている。
【0041】
3列目の各タイル12に接着される梯子状樹脂シート15hは、矩形状の外枠と、中間に位置するタイル12、具体的には2~5行目のタイル12に接着される中間枠と、で構成されている。
【0042】
(仕上げ材の製造方法)
図8に示すように、仕上げ材10の製造方法は、第1連結工程(ステップS101)と第2連結工程(ステップS102)とを備える。
【0043】
第1連結工程(ステップS101)では、タイル12を第1連結部材13で連結することによりタイルユニット11を形成する。具体的には、例えば、複数のタイル12を所定の配列に並べたのち、隣り合うタイル12が連結されるように、タイル12の裏面に接着剤で第1連結部材13を接着する。
【0044】
第2連結工程(ステップS102)では、タイルユニット11に第2連結部材15が接着される。具体的には、タイルユニット11の周縁を構成するタイル12から一部がはみ出るように、タイル12の裏面に接着剤で第2連結部材15を接着する。
【0045】
(壁面の仕上げ方法)
図9に示すように、仕上げ材10を用いた壁面の仕上げ方法は、下地調整工程(ステップS201)、タイル張り工程(ステップS202)、目地詰め工程(ステップS203)、伸縮調整工程(ステップS204)、養生工程(ステップS205)、および、洗浄工程(ステップS206)を備えている。
【0046】
下地調整工程(ステップS201)では、目違い部分や不陸部分に対して下地調整塗材により壁面を平坦化する。また、壁面から汚れを取り除くとともに壁面に浮き出ているレイタンス等を除去する。
【0047】
タイル張り工程(ステップS202)では、金ごてなどで壁面の表面に接着材を平坦に塗布したのち、くし目ごてなどで接着材にくし目を付ける。接着材には、例えば、主成分を変成シリコーン樹脂とする有機系接着材やモルタルなどのセメント系接着材を用いることができる。そして、タイルユニット11同士が第2連結部材15で連結されるように仕上げ材10を順番に張り付けたのち、たたき板などを用いて仕上げ材10を加振する。なお、仕上げ材10は、通常の目地部分のほか、所定箇所に通常の目地部分よりも幅広の伸縮調整目地部分が形成されるように順番に張り付けられる。
【0048】
目地詰め工程(ステップS203)では、接着材の硬化を確認したのち、通常の目地部分に対して目地モルタル詰めを行う。
伸縮調整目地のシーリング打設工程(ステップS204)では、伸縮調整目地部分を清掃してバックアップ材を配設したのち、伸縮調整目地部分に対して伸縮調整用プライマーを塗布し、シーリング材を打設する。
【0049】
養生工程(ステップS205)では、接着材や目地モルタル、伸縮調整目地のシーリング材が十分に硬化するように、仕上げ材10が張り付けられた壁面を養生する。例えば、強い直射日光、強風、降雨等により損傷を受けるおそれがある場合はシートを用いて養生する。また例えば、急激な乾燥や凍結のおそれがある場合は、防寒・保温設備などを用いて急激な乾燥や凍結などを抑制する。
【0050】
洗浄工程(ステップS206)では、タイル12の表面に付着した接着材や目地モルタルなどを除去することにより、タイル12の表面を洗浄する。こうした一連の工程を経て、壁面に対して仕上げ材10が張り付けられる。
【0051】
図10に示すように、壁面の仕上げ方法は、タイル張り工程(ステップS202)のあと、または、目地詰め工程(ステップS203)のあとに、固定具打ち込み工程を備えていてもよい。固定具打ち込み工程においては、タイル12や目地部分34に対してドリルなどを用いて壁面の内部まで延びる打ち込み孔を形成したのち、その打ち込み孔に対してアンカーピンなどの固定具35を打ち込む。固定具35は、意匠性を考慮して目地部分34に設けられることが好ましいが、タイルに打ち込んでもよい。なお、
図10においては、各タイルユニット11のタイル12に対して同じ種類のハッチングを入れている。また、下側の符号15は、左下に位置する仕上げ材10の第2連結部材15を示す。上側の符号15は、左上に位置する仕上げ材10の第2連結部材15を示す。
【0052】
本実施形態の効果について説明する。
(1)仕上げ材10においては、タイルユニット11を構成する各タイル12が第1連結部材13を介して他のタイル12に強固に連結されている。また、仕上げ材10を順番に壁面に張り付けることにより、各タイルユニット11が第2連結部材15を介して他のタイルユニット11に強固に連結される。
【0053】
これにより、壁面に張り付けられたタイル12の全体が第1連結部材13および第2連結部材15によって繋がることでタイル12を剥落しにくくすることができる。
(2)各タイル12の裏面において、第1連結部材13および第2連結部材15による非被覆部分の面積が60%以上である。これにより、各タイル12の裏面において接着材を介して直接的に壁面に接着される部分の面積を十分なものとすることができる。その結果、仕上げ材10を用いたタイル張りを安全なものとすることができる。
【0054】
(3)仕上げ材10は、第1連結部材13と第2連結部材15とが重なる重なり部17を有する。これにより、壁面に対して仕上げ材10を接着材で張り付けることにより、その接着材を利用して第1連結部材13と第2連結部材15とを強固に連結することができる。
【0055】
(4)第1連結部材13および前記第2連結部材15は、空隙率が40%以上80%以下のネット部材である。これにより、第1連結部材13および前記第2連結部材15に十分な強度を付与しつつ、第1連結部材13および前記第2連結部材15で被覆される被覆部分において、接着材を介してタイル12が壁面に直接的に接着される部分の割合が確保されやすくなる。こうした効果は、上述した実験などを通じて確認された。
【0056】
(5)仕上げ材10において、第2連結部材15は、矩形状をなすタイルユニット11の角部の1つを挟む2辺からはみ出すように設けられている。これにより、仕上げ材10を順番に張り付けることにより、第2連結部材15が重なることなく壁面全体に仕上げ材10を張り付けることができる。
【0057】
(6)固定具35が打ち込まれることでさらにタイル12が剥落しにくくなる。
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0058】
・仕上げ材10は、タイルユニット11に、容易に剥がすことが可能な仮止めシートが全てのタイル12のおもて面に跨がるように貼られていてもよい。こうした構成によれば、仕上げ材10の取扱性および運搬性が向上する。
【0059】
・仕上げ材10は、第1連結部材13と第2連結部材15との重なり部17が形成されていなくともよい。また、第1連結部材13と第2連結部材15とが一体化されていてもよい。
【符号の説明】
【0060】
L…連結接着長さ、10…仕上げ材、11…タイルユニット、12…タイル、13…第1連結部材、15…第2連結部材、15a…矩形状ネット部材、15b…四角枠状樹脂シート、15c…クロス状ネット部材、15d…線状樹脂シート、15e,15f…矩形状ネット部材、15g,15h…梯子状樹脂シート、17…重なり部、20…アクリル板、21…接着材、23…試験用連結部材、25…試験体、26…目地部分、31…第1試験用連結部材、32…第2試験用連結部材、34…目地部分、35…固定具。