(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023072134
(43)【公開日】2023-05-24
(54)【発明の名称】凍土厚の制御方法、凍土厚の制御システムおよび測温管
(51)【国際特許分類】
E21D 9/04 20060101AFI20230517BHJP
E02D 3/115 20060101ALI20230517BHJP
E02D 19/14 20060101ALI20230517BHJP
【FI】
E21D9/04 C
E02D3/115
E02D19/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021184481
(22)【出願日】2021-11-12
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】508067736
【氏名又は名称】マイクロ波化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】川野 健一
(72)【発明者】
【氏名】永谷 英基
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 一成
(72)【発明者】
【氏名】吉田 輝
(72)【発明者】
【氏名】石塚 章斤
(72)【発明者】
【氏名】木谷 径治
(72)【発明者】
【氏名】金城 隆平
【テーマコード(参考)】
2D043
2D054
【Fターム(参考)】
2D043CA14
2D054AA03
2D054AA04
2D054AA05
2D054AA10
2D054FA04
2D054GA10
2D054GA49
2D054GA75
2D054GA84
2D054GA97
(57)【要約】
【課題】凍土の所定の範囲において過剰凍結を抑制できる凍土厚の制御方法、凍土厚の制御システムおよび測温管を提供する。
【解決手段】地盤1に設置される凍結管3と、凍結管3に凍結冷媒を循環させる凍結装置4と、電磁波発生装置5と、電磁波発生装置5から発生した電磁波を凍結管3から所定距離離間した地盤1に照射する複数のアンテナ6と、を具備する凍土厚制御システム2を地盤1に形成する。また、凍土8の厚さを測定するとともに電磁波を照射可能な測温管7を地盤1に設置する。測温管7は、管体10の内部に、測温用の温度センサ11と、電磁波を照射するためのアンテナ6が配置される。そして、電磁波発生装置5で発生させた電磁波を地盤1に照射して凍土8の目標形成面15の近傍を加熱し、凍土8が目標形成面15を超えて成長することを抑制する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤に形成される凍土厚の制御方法であって、
凍土の目標形成面の近傍を加熱装置で加熱し、前記凍土が前記凍土の目標形成面を超えて成長することを抑制することを特徴とする凍土厚の制御方法。
【請求項2】
前記加熱装置が電磁波発生装置であり、前記凍土の目標形成面の近傍に電磁波を照射して前記凍土の目標形成面の所定の範囲を覆うように電磁波照射領域を形成し、前記電磁波照射領域の地盤の温度を上昇させることで、前記所定の範囲における前記凍土の成長を抑制することを特徴とする請求項1記載の凍土厚の制御方法。
【請求項3】
前記電磁波発生装置に接続された複数のアンテナを所定の間隔で地盤に挿入し、前記アンテナから、少なくとも前記凍土の目標形成面に略平行な方向に向けて、前記電磁波を照射することを特徴とする請求項2記載の凍土厚の制御方法。
【請求項4】
前記アンテナは、グランドプレーン式アンテナか、又は導波管方式アンテナであることを特徴とする請求項3記載の凍土厚の制御方法。
【請求項5】
前記凍土の厚さを測定する測温管を、前記凍土の目標形成面を貫通するような方向に配置し、前記アンテナを前記測温管の内部に配置して、前記測温管の途中で前記電磁波を前記測温管から照射することを特徴とする請求項3又は請求項4記載の凍土厚の制御方法。
【請求項6】
前記凍土は、地中トンネルの外周に形成され、
前記地中トンネルの内部から、前記測温管を地盤に対して配置することを特徴とする請求項5記載の凍土厚の制御方法。
【請求項7】
前記凍土は、地中に形成される凍土壁であり、
地上から、前記アンテナを地盤に対して配置することを特徴とする請求項3又は請求項4記載の凍土厚の制御方法。
【請求項8】
前記電磁波は、前記測温管で得られる温度情報に基づいて制御され、
前記温度情報により、前記凍土が、前記凍土の目標形成面を超えて成長していると判断されると、前記電磁波を所定の時間照射して、
所定の時間経過後、又は、前記温度情報により、前記凍土の目標形成面を超えた前記凍土が消失したと判断されると、前記電磁波を停止することを特徴とする請求項5又は請求項6記載の凍土厚の制御方法。
【請求項9】
前記電磁波を、前記凍土の目標形成面近傍に連続して照射し続けることで、前記凍土が、前記凍土の目標形成面を超えて成長することを抑制することを特徴とする請求項5又は請求項6記載の凍土厚の制御方法。
【請求項10】
地盤に形成される凍土厚の制御システムであって、
地盤に設置される凍結管と、
前記凍結管に凍結冷媒を循環させる凍結装置と、
電磁波発生装置と、
前記電磁波発生装置から発生した電磁波を、前記凍結管から所定距離離間した地盤に照射する複数のアンテナと、
を具備することを特徴とする凍土厚の制御システム。
【請求項11】
凍土厚を測定するとともに、電磁波を照射可能な測温管であって、
管体の内部に、測温用の温度センサと、電磁波を照射するためのアンテナが配置され、
前記管体の、前記アンテナの先端部近傍には、電磁波が照射される窓部が形成され、
前記窓部の先端側には、電磁波の反射部が配置され、
前記アンテナから照射される電磁波が、前記反射部に反射して、前記窓部から、前記管体の外部に照射されることを特徴とする測温管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凍土厚の制御方法、凍土厚の制御システムおよび測温管に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、地盤の強度や止水性を保つために凍結工法により造成された凍土が用いられている。凍結工法では、地盤中に間隔をおいて配置した凍結管内に冷却液や液化炭酸ガスなどの凍結冷媒を循環させ、凍結管の周囲の地盤を凍結させることによって凍土が造成される。
【0003】
凍土の造成時や運用時には、凍結管周辺に埋設した測温管で地中温度を計測して凍土の形成状況が管理されている。例えば、地盤中に過剰凍結が生じると、過剰凍結による地盤隆起や、融解時の地盤沈下の恐れがある。このため、地盤の過剰凍結を抑制するために、測温管で計測した温度に基づいて凍結冷媒の流量や温度を切り替えたり、凍結管の間引き運転や間欠運転を行ったりする方法がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した方法は、いずれも単独の使用では過剰凍結の抑制効果が不十分であった。また、例えば間引き運転と温度切り替えとを組み合わせて使用する方法もあるが、凍土の所定の範囲において精度よく過剰凍結を抑制することは困難であった。
【0006】
本発明は、前述した問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とすることは、凍土の所定の範囲において過剰凍結を抑制できる凍土厚の制御方法、凍土厚の制御システムおよび測温管を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するために第1の発明は、地盤に形成される凍土厚の制御方法であって、凍土の目標形成面の近傍を加熱装置で加熱し、前記凍土が前記凍土の目標形成面を超えて成長することを抑制することを特徴とする凍土厚の制御方法である。
【0008】
第1の発明では、凍土の目標形成面の近傍を加熱装置で加熱することにより、凍土が目標形成面を超えて成長する過剰凍結を抑制できる。
【0009】
前記加熱装置が電磁波発生装置であり、前記凍土の目標形成面の近傍に電磁波を照射して前記凍土の目標形成面の所定の範囲を覆うように電磁波照射領域を形成し、前記電磁波照射領域の地盤の温度を上昇させることで、前記所定の範囲における前記凍土の成長を抑制することが望ましい。
凍土の目標形成面の所定の範囲に電磁波を照射して地盤の温度を上昇させることにより、電磁波照射領域における地盤の過剰凍結を防止できる。
【0010】
前記電磁波発生装置に接続された複数のアンテナを所定の間隔で地盤に挿入し、前記アンテナから、少なくとも前記凍土の目標形成面に略平行な方向に向けて、前記電磁波を照射することが望ましい。
アンテナを用いれば、電磁波のエネルギー減衰を最小限に抑えつつ地盤内に電磁波を伝播させて電磁波照射領域を形成することができる。
【0011】
前記アンテナは、例えばグランドプレーン式アンテナか、又は導波管方式アンテナである。
これらのアンテナを用いれば、電磁波の照射方向を高度に制御できる。
【0012】
前記凍土の厚さを測定する測温管を、前記凍土の目標形成面を貫通するような方向に配置し、前記アンテナを前記測温管の内部に配置して、前記測温管の途中で前記電磁波を前記測温管から照射してもよい。
測温管を用いることにより、アンテナの配置が容易になる。また凍土の厚さを測定しつつ電磁波を所望の方向に照射できる。
【0013】
前記凍土は、例えば、地中トンネルの外周に形成され、前記地中トンネルの内部から、前記測温管を地盤に対して配置する。前記凍土は、地中に形成される凍土壁であり、地上から、前記アンテナを地盤に対して配置してもよい。
これにより、地中トンネルの周囲の凍土や地中に形成される凍土壁の厚さを制御できる。
【0014】
前記電磁波は、前記測温管で得られる温度情報に基づいて制御され、前記温度情報により、前記凍土が、前記凍土の目標形成面を超えて成長していると判断されると、前記電磁波を所定の時間照射して、所定の時間経過後、又は、前記温度情報により、前記凍土の目標形成面を超えた前記凍土が消失したと判断されると、前記電磁波を停止することが望ましい。
これにより、地盤の過剰凍結を効率よく抑制することができる。
【0015】
前記電磁波を、前記凍土の目標形成面近傍に連続して照射し続けることで、前記凍土が、前記凍土の目標形成面を超えて成長することを抑制してもよい。
これにより、地盤の過剰凍結を容易に抑制することができる。
【0016】
第2の発明は、地盤に形成される凍土厚の制御システムであって、地盤に設置される凍結管と、前記凍結管に凍結冷媒を循環させる凍結装置と、電磁波発生装置と、前記電磁波発生装置から発生した電磁波を、前記凍結管から所定距離離間した地盤に照射する複数のアンテナと、を具備することを特徴とする凍土厚の制御システムである。
【0017】
第2の発明では、凍結管から所定距離離間した地盤にアンテナを用いて電磁波を照射することにより、地盤の過剰凍結を防止して凍土厚を制御できる。
【0018】
第3の発明は、凍土厚を測定するとともに、電磁波を照射可能な測温管であって、管体の内部に、測温用の温度センサと、電磁波を照射するためのアンテナが配置され、前記管体の、前記アンテナの先端部近傍には、電磁波が照射される窓部が形成され、前記窓部の先端側には、電磁波の反射部が配置され、前記アンテナから照射される電磁波が、前記反射部に反射して、前記窓部から、前記管体の外部に照射されることを特徴とする測温管である。
【0019】
第3の発明の測温管を用いれば、管体の内部に温度センサとアンテナが配置されるので、凍土厚を測定しつつ電磁波を所望の方向に照射することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、凍土の所定の範囲において過剰凍結を抑制できる凍土厚の制御方法、凍土厚の制御システムおよび測温管を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図6】凍土8の目標形成面15に沿った断面を示す図。
【
図7】凍土8の成長が抑制されていない状態を示す図。
【
図8】凍土壁8aに凍土厚制御システム2aを適用した例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面に基づいて本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0023】
[第1の実施形態]
図1はトンネル9の拡幅部17近傍を示す図、
図2は拡幅部17を構築する前のトンネル9および凍土8の断面を示す図である。
図3は凍土厚制御システム2の概要を示す図であり、
図2に示す範囲Aの拡大図である。
【0024】
図1に示すトンネル9の分岐部を構築するには、地盤1内にトンネル9を構築し、トンネル9の周囲の地盤1に凍土8を形成する。そして、凍土8によってトンネル9の周囲の地盤1を補強した状態でトンネル9内から凍土8を掘削して拡幅部17を構築し、拡幅部17から分岐トンネル18を構築する。第1の実施形態では、拡幅部17や分岐トンネル18を構築する際にトンネル9の外周に形成される凍土8の厚さを制御するシステムおよび方法について説明する。
【0025】
図2、
図3に示すように、凍土厚制御システム2は、凍結管3、凍結装置4、電磁波発生装置5、アンテナ6、測温管7等で構成される。凍結管3は地盤1に構築されたトンネル9の覆工体にトンネル9の周方向に間隔をおいて設置され、凍結装置4は凍結管3に連結される。トンネル9の周囲の凍土8は、凍結装置4を用いて凍結管3に凍結冷媒を循環させることによって形成される。測温管7は、トンネル9の内部から凍土8の目標形成面15を貫通するような方向に複数本設置される。測温管7は、少なくとも凍土8の厚さの制御対象となるトンネル9の上半部側の所定の範囲16の地盤1に向けて設置され、凍土8の厚さを測定する。
【0026】
アンテナ6は、測温管7内に配置され、電磁波発生装置5から発生した電磁波を凍結管3から所定距離離間した地盤1に照射する。電磁波発生装置5が発生させる電磁波は、例えば周波数が300MHz~300GHzのマイクロ波である。マイクロ波は物質の分子を直接励起することで熱エネルギーを発生し、温度を上昇させることができる。地盤1に照射するマイクロ波の周波数は、水によるエネルギー吸収が大きい帯域のものが選択的に使用され、0.9~6GHzが特に望ましい。このような周波数のマイクロ波を、水を含む地盤1に照射することにより、地盤1が効率的に加熱される。すなわち、電磁波発生装置5は、地盤を加熱する加熱装置として機能する。
【0027】
図4、
図5は測温管7の先端付近の断面を示す図であり、
図4は
図3に示す範囲Bの拡大図、
図5は
図3に示す矢印C-Cによる断面図である。
図6は凍土8の目標形成面15に沿った断面を示す図である。
【0028】
図4、
図5に示すように、測温管7は二重管であり、鋼製の管体10の内部に導波管方式のアンテナ6が配置され、管体10とアンテナ6との間の空間に測温用の温度センサ11が配置される。温度センサ11は、管体10の延伸方向に間隔をおいて複数個所に配置され、各箇所の温度情報を取得する。測温管7は、各温度センサ11で取得した温度情報から地盤1の温度が0度となる位置(凍土8と未凍結の地盤1との境界位置)を把握することによって凍土8の厚さを測定する。なお、温度センサ11として光ファイバセンサを用いて、管体10の延伸方向の温度分布を取得してもよい。
【0029】
アンテナ6は電磁波を照射するためのものである。管体10の、アンテナ6の先端部21の近傍には窓部12が形成される。窓部12は、フッ素樹脂等の電磁波が減衰せずに透過する材質である。窓部12の先端22側には、電磁波の反射部13が配置される。反射部13は例えば円錐形状であり、アンテナ6から照射された電磁波は、
図4の矢印に示すように反射部13に反射して窓部12から管体10の外部に照射される。
【0030】
図4に示すように、測温管7は、地盤1内に、窓部12が凍土8の目標形成面15に位置するように配置される。反射部13の反射面の角度は、アンテナ6からの電磁波が凍土8の目標形成面15に略平行な方向に向けて照射されるように設定される。
図5に示すように、窓部12は管体10の周方向に間隔をおいて形成される。複数の窓部12から照射された電磁波は、測温管7を略中心とする電磁波照射領域14を形成する。
図6に示すように、複数の測温管7は、例えば凍土8の目標形成面15を貫通する位置が千鳥状となるように配置される。これにより、電磁波照射領域14を目標形成面15に沿って隙間なく形成することができる。
【0031】
図2等に示す凍土厚制御システム2は、凍土8の形成時や運用中に、凍土8の厚さの制御対象となる所定の範囲16において、測温管7内の温度センサ11で取得した温度情報から凍土8の厚さを測定する。また、測温管7内のアンテナ6から窓部12を介して凍土8の目標形成面15に略平行な方向に向けて電磁波を連続して照射し続けて、凍土8の目標形成面15の所定の範囲16を覆うように電磁波照射領域14を形成する。電磁波照射領域14では、地盤1の温度が上昇し、凍土8が目標形成面15を超えて成長することが抑制される。
【0032】
このように、第1の実施形態によれば、凍土8の目標形成面15の所定の範囲16を覆うように電磁波照射領域14を形成して地盤1の温度を上昇させることにより、地盤1の過剰凍結を防止できる。また、アンテナ6を用いることにより、電磁波の照射方向を高度に制御し、エネルギー減衰を最小限に抑えつつ電磁波を地盤1内に伝播させて電磁波照射領域14を形成することができるので、地盤1の任意の範囲で0度の境界領域(凍土8と未凍結の地盤1との境界領域)を維持して凍土8の厚さを精緻に制御できる。この際、間欠運転、間引き運転、温度切り替え等による制御と異なり、凍土形成のため凍結能力を低下させることなく、凍土形成能力は十分に維持することができる。
【0033】
第1の実施形態では、アンテナ6を測温管7の内部に配置することにより、アンテナ6を地盤1に容易に設置することができる。また、凍土8の厚さを測温管7で計測しつつ測温管7から地盤1に電磁波を照射できる。第1の実施形態では、凍土8の形成時や運用中に電磁波を連続して照射し続けることにより、地盤1の過剰凍結を容易に且つ確実に抑制することができる。
【0034】
なお、アンテナ6は導波管方式でなくてもよく、同軸ケーブルやグランドプレーン式等の他の方式のアンテナを測温管7の管体10内に配置してもよい。また、一重管の管体10を導波管として測温管兼アンテナとして用いてもよい。
【0035】
第1の実施形態では、凍土8の厚さを制御する範囲16をトンネル9の上半部側のみとしたが、範囲はこれに限らず、現場の周辺環境や地盤1の性質などの各種条件に応じて設定される。
【0036】
以下、本発明の別の例について、第2~第5の実施形態として説明する。各実施形態はそれまでに説明した実施形態と異なる点について説明し、同様の構成については図等で同じ符号を付すなどして説明を省略する。また、第1の実施形態も含め、各実施形態で説明する構成は必要に応じて組み合わせることができる。
【0037】
[第2の実施形態]
第2の実施形態は、第1の実施形態と同様の凍土厚制御システム2を用いるが、電磁波の制御方法が異なる。
図7は
図3の範囲Bにおいて凍土8の成長が抑制されていない状態を示す図である。
【0038】
第2の実施形態では、アンテナ6から電磁波を照射せずに凍土8を形成しつつ、測温管7内の温度センサ11で取得した温度情報から凍土8の厚さを測定する。そして、温度情報により、
図7に示すように凍土8が目標形成面15を超えて成長していると判断されると、測温管7内のアンテナ6から電磁波を照射し、凍土8の目標形成面15の所定の範囲を覆うように電磁波照射領域14(
図4)を形成して電磁波照射領域14の地盤1の温度を上昇させる。その後、温度センサ11で取得した温度情報により、
図4に示すように目標形成面15を超えた凍土8が消失したと判断されると、アンテナ6からの電磁波の照射を停止する。凍土8の運用時にも同様の方法で目標形成面15を超える凍土8の成長を抑制する。
【0039】
このように、第2の実施形態では、測温管7で得られる温度情報に基づいてアンテナ6からの電磁波の照射を開始したり停止したりすることにより、地盤1の過剰凍結を効率よく抑制することができる。
【0040】
なお、第2の実施形態では温度センサ11で取得した温度情報に基づいてアンテナ6からの電磁波の照射を停止したが、電磁波の照射を開始してからの経過時間に基づいて電磁波の照射を停止してもよい。
【0041】
[第3の実施形態]
図8は、凍土壁8aに凍土厚制御システム2aを適用した例を示す図である。
図8(a)は凍土壁8aの鉛直断面の斜視図を、
図8(b)は凍土厚制御システム2aの概要を示す図である。第3の実施形態は、凍土壁8aの凍土厚を制御する点で第1の実施形態と主に異なる。
【0042】
図8に示すように、凍土厚制御システム2aは、凍結管3a、凍結装置4、電磁波発生装置5、アンテナ6a等で構成される。凍結管3aは、水平方向に間隔をおいて地盤1内に略鉛直方向に設置される。凍土壁8aは、凍結管3aに凍結装置4を用いて凍結冷媒を循環させることによって地盤1内に壁状に形成される。アンテナ6aは例えば同軸ケーブルであり、地表から地盤1に対して複数本が配置される。アンテナ6aは、凍土壁8aの厚さの制御対象となる片面の所定の範囲16aの地盤1に向けて設置され、アンテナ6aを略中心とする電磁波照射領域を形成する。
【0043】
凍土厚制御システム2aは、凍土壁8aの形成時や運用中に、凍土壁8aの厚さの制御対象となる目標形成面15の所定の範囲16aにおいて、アンテナ6aから凍土壁8aの目標形成面15に略平行な方向に向けて電磁波を照射して、所定の範囲16aを覆うように電磁波照射領域14を形成する。電磁波照射領域14では、地盤1の温度が上昇し、凍土壁8aが目標形成面15を超えて成長することが抑制される。電磁波は、第1の実施形態と同様に連続して照射し続けてもよいし、図示しない測温管を設置して第2の実施形態と同様に温度情報に基づいて制御してもよい。
【0044】
このように、第3の実施形態においても、凍土壁8aの目標形成面15の所定の範囲16aを覆うように電磁波照射領域14を形成して地盤1の温度を上昇させることにより、地盤1の過剰凍結を防止できる。また、アンテナ6aを用いることにより、電磁波の照射方向を高度に制御し、エネルギー減衰を最小限に抑えつつ電磁波を地盤1内に伝播させて電磁波照射領域14を形成することができる。
【0045】
なお、
図8では複数のアンテナ6aを地盤1中に曲げて配置したが、複数のアンテナを凍土壁8aの目標形成面15に沿って略垂直に配置してもよい。この場合、アンテナから凍土壁8aの目標形成面15に略平行な2方向(紙面の手前方向および奥方向)に向けて電磁波を照射し、凍土壁8aの目標形成面15の所定の範囲16aを覆うように電磁波照射領域14を形成する。
【0046】
[第4の実施形態]
図9は、凍土厚制御システム2bの概要を示す図である。
図9は、第1の実施形態における
図3に示す断面に対応する。第4の実施形態は、アンテナを地盤1に設置しない凍土厚制御システム2bを用いて凍土厚を制御する点で第1の実施形態と主に異なる。
【0047】
図9に示すように、凍土厚制御システム2bは、凍結管3、凍結装置4、電磁波発生装置5、窓部12a等で構成される。窓部12aは、フッ素樹脂等の電磁波が減衰せずに透過する材質であり、トンネル9の覆工体に形成される。窓部12aは、電磁波発生装置5から発生させた電磁波を地盤1に照射する。
【0048】
凍土厚制御システム2bでは、凍土8の形成時や運用中に、電磁波発生装置5から発生させた電磁波を窓部12aから地盤1の凍土8の目標形成面15に向けて照射する。このとき、少なくとも2つの窓部12aから照射された電磁波が干渉により強め合う位置が凍土8の目標形成面15の近傍となるように電磁波の位相を制御することにより、電磁波が強め合う電磁波照射領域14aを凍土8の目標形成面15の所定の範囲を覆うように形成する。電磁波照射領域14aでは、地盤1の温度が上昇し、凍土8が目標形成面15を超えて成長することが抑制される。電磁波は、第1の実施形態と同様に連続して照射し続けてもよいし、図示しない測温管を設置して第2の実施形態と同様に温度情報に基づいて制御してもよい。
【0049】
このように、第4の実施形態では、凍土8の目標形成面15の所定の範囲を覆うように電磁波照射領域14aを形成して地盤1の温度を上昇させることにより、地盤1の過剰凍結を防止できる。
【0050】
[第5の実施形態]
図10は、凍土厚制御システム2cの概要を示す図である。
図10は、第1の実施形態における
図2に示す断面に対応する。第5の実施形態は、電磁波発生装置を有さない凍土厚制御システム2cを用いて凍土厚を制御する点で第1の実施形態と主に異なる。
【0051】
図10に示すように、凍土厚制御システム2cは、凍結管3、凍結装置4、管体19、加熱装置20等で構成される。管体19は凍土8の目標形成面15を貫通するような方向に配置され、測温管を兼ねてもよい。加熱装置20は例えばヒータであり、管体19の先端付近に配置される。
【0052】
凍土厚制御システム2cでは、凍土8の形成時や運用中に、加熱装置20で管体19の凍土8の目標形成面15近傍に位置する部分を加熱して、目標形成面15近傍の地盤1の温度を上昇させることで凍土8の成長を抑制する。
【0053】
このように、第5の実施形態では、凍土8の目標形成面15近傍を加熱装置20で加熱することにより、地盤1の過剰凍結を防止できる。
【0054】
以上、添付図面を参照しながら、本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0055】
1………地盤
2、2a、2b、2c………凍土厚制御システム
3、3a………凍結管
4………凍結装置
5………電磁波発生装置
6、6a………アンテナ
7………測温管
8………凍土
8a………凍土壁
9………トンネル
10………管体
11………温度センサ
12、12a………窓部
13………反射部
14、14a………電磁波照射領域
15………目標形成面
16、16a………範囲
17………拡幅部
18………分岐トンネル
19………管体
20………加熱装置
21………先端部
22………先端