(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023072184
(43)【公開日】2023-05-24
(54)【発明の名称】バネ棒ピン固定構造、それを備えた時計バンド及び腕時計並びにバネ棒ピン用固定部材
(51)【国際特許分類】
A44C 5/10 20060101AFI20230517BHJP
A44C 5/14 20060101ALI20230517BHJP
【FI】
A44C5/10 511B
A44C5/14 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021184564
(22)【出願日】2021-11-12
(71)【出願人】
【識別番号】000135759
【氏名又は名称】株式会社バンビ
(74)【代理人】
【識別番号】100113804
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 敏
(72)【発明者】
【氏名】久場 暁史
(57)【要約】
【課題】 バネ棒ピンの脱落を防止する新規な固定構造を提供することにある。
【解決手段】 シリコンゴム製のバネ棒ピン用固定部材10で被覆されたバネ棒ピン10をピン孔50で収容したものであり、ピン孔50とバネ棒ピン40との間にバネ棒ピン用固定部材10が介在するようになっている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
時計バンドの連結又は構成に用いられるバネ棒ピンの固定構造であって、
バネ棒ピンの収容されるピン孔とバネ棒ピンとの間に非金属製で弾力性のある固定部材を介在させることを特徴としたバネ棒ピン固定構造。
【請求項2】
予め固定部材で被覆されたバネ棒ピンをピン孔に収容してなることを特徴とした請求項1記載のバネ棒ピン固定構造。
【請求項3】
時計ケースと連結する時計バンドのエンドピースに用いられることを特徴とした請求項1又は2記載のバネ棒ピン固定構造。
【請求項4】
固定部材がシリコンゴム又はウレタンゴムであることを特徴とした請求項1から3のいずれかに記載のバネ棒ピン固定構造。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載のバネ棒ピン固定構造を備えることを特徴とした時計バンド。
【請求項6】
請求項5記載の時計バンドを備えることを特徴とした腕時計。
【請求項7】
時計バンドの連結又は構成に用いられるバネ棒ピンの固定部材であって、
バネ棒ピンを被覆する非金属製で弾性力のあるチューブ形状からなり、バネ棒ピンの収容されるピン孔とバネ棒ピンとの間に介在することを特徴としたバネ棒ピン用固定部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、時計バンドの連結又は構成に用いられるバネ棒ピンの脱落を防止する固定技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
時計バンドは、腕時計本体のある時計ケースに取り付けるため「バネ棒ピン」を用いることがある(特許文献1等)。
バネ棒ピンの特徴であるピン両端部の出没自在な構造により、時計バンドの着脱が容易に行えるという利点がある。特に、ピン両端部の出没を操作できるレバー付きのバネ棒ピンであれば、専用の工具がなくても時計バンドの着脱が行えるので、非常に便利である。
【0003】
時計バンドの着脱が容易に行える反面、時計バンドの着脱作業を行っている際に、このバネ棒ピンがバネ棒ピンを収容しているピン孔から脱落してしまうという危険性がある。
これを防ぐために、バネ棒ピンとピン孔との間にC字形のリング(Cリング)を介在させて、バネ棒ピンの脱落を防止する技術が開示されている(特許文献2及び3等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-187978号公報
【特許文献2】特開平11-146804号公報
【特許文献3】特開2010-243166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、Cリングは、金属製であるために、同じ金属製であるバネ棒ピンとでは、寸法精度が要求される。時計バンドで用いられるバネ棒ピン及びCリングは極小な部材であるために、なおさら、求められる寸法精度は極めて精緻なものとなる。そのため、自ずと、歩留まりも悪くなりやすい。
【0006】
そこで、本願発明者は、バネ棒ピンの脱落を防止する新規な固定構造の提供を目的として種々研究・開発し、本願発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、第1の発明は、時計バンドの連結又は構成に用いられるバネ棒ピンの固定構造であって、バネ棒ピンの収容されるピン孔とバネ棒ピンとの間に非金属製で弾力性のある固定部材を介在させることを特徴としたバネ棒ピン固定構造である。
第2の発明は、予め固定部材で被覆されたバネ棒ピンをピン孔に収容してなることを特徴とした同バネ棒ピン固定構造である。
第3の発明は、時計ケースと連結する時計バンドのエンドピースに用いられることを特徴とした同バネ棒ピン固定構造である。
第4の発明は、固定部材がシリコンゴム又はウレタンゴムであることを特徴とした同バネ棒ピン固定構造である。
第5の発明は、上記第1の発明から第4の発明に係るバネ棒ピン固定構造を備えることを特徴とした時計バンドである。
第6の発明は、上記第5の発明に係る時計バンドを備えることを特徴とした腕時計である。
第7の発明は、時計バンドの連結又は構成に用いられるバネ棒ピンの固定部材であって、バネ棒ピンを被覆する非金属製で弾性力のあるチューブ形状からなり、バネ棒ピンの収容されるピン孔とバネ棒ピンとの間に介在することを特徴としたバネ棒ピン用固定部材である。
【発明の効果】
【0008】
本願発明によれば、以下のような効果を有する。
(1)バネ棒ピンの収容されるピン孔とバネ棒ピンとの間に非金属製で弾力性のある固定部材を介在させることで、金属製のCリングに要求されるような寸法精度が必要なく、専用の工具も必要なく、生産性が著しく向上する。
(2)その結果、製品の歩留まりも向上する。
(3)バネ棒ピンとピン孔との間に隙間が無くなり、水や埃・塵の入り込む余地がなく、錆や汚れを防止できる。
(4)固定部材として、シリコンチューブなどの汎用性のある部材を利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本願発明に係るバネ棒ピン用固定部材を示す斜視図。
【
図2】本願発明に係るバネ棒ピン固定構造を説明する説明図(1)。
【
図3】本願発明に係るバネ棒ピン固定構造を説明する説明図(2)。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本願発明に係るバネ棒ピン用固定部材を示す斜視図である。
バネ棒ピン用固定部材10は、シリコンゴムからなるチューブ状(筒状)の部材である。シリコンゴム製であるので、弾力性があり、伸縮性もある。なお、バネ棒ピン用固定部材10は、シリコンゴム以外にも、ウレタンゴムなどでもよく、ゴム製や樹脂製といった非金属製であって弾性を持つものであればよい。
そして、このバネ棒ピン用固定部材10をバネ棒ピン(図示省略)に被覆して使用する。
【0011】
図2及び
図3は、本願発明に係るバネ棒ピン固定構造を説明する説明図である。
図2では、時計バンドに形成されたピン孔50に直接バネ棒ピン40を収容した状態を図示している。ピン孔50も金属で形成され、バネ棒ピン40も金属製であるので、極めて精緻な寸法精度が要求される。すなわち、「バネ棒ピン40の外径>ピン孔50の内径」だと、バネ棒ピン40はピン孔50に収容できない。このため、「バネ棒ピン40の外径=ピン孔50の内径」又は「バネ棒ピン40の外径<ピン孔50の内径」でなければならない。
なお、符合41は、バネ棒ピン40の出没自在なピン両端部であり、符合42は、そのピン両端部41,41の出没を操作するレバーである。
【0012】
しかし、「バネ棒ピン40の外径<ピン孔50の内径」であると、当然にピン孔50からバネ棒ピン40の脱落という問題が生じ得る。そのために、これまではCリング(図示省略)を使用してCリングのバネ性(弾性)によってバネ棒ピン40の脱落防止を図ってきた。
ところが、Cリングは金属製のものであり、バネ性はあるが硬質なものであるために、必然的に寸法精度が求められる。
【0013】
これに対して、
図3に図示するバネ棒ピン固定構造1は、バネ棒ピン用固定部材10で被覆されたバネ棒ピン10をピン孔50で収容したものであり、ピン孔50とバネ棒ピン40との間にバネ棒ピン用固定部材10が介在するようになっている。
バネ棒ピン用固定部材10は、弾性のあるシリコンゴム製なので、その弾性によりピン孔50とバネ棒ピン40との間に形成される間隙に合わせて伸縮し、ピン孔50とバネ棒ピン40とを隙間無く一体化させることができる。それによって、ピン孔50からのバネ棒ピン40の脱落を確実に防止できる。
【0014】
また、バネ棒ピン用固定部材10は、硬質な金属製Cリングと異なり、軟性なゴム製であるので、ピン孔50とバネ棒ピン40に厳密な寸法精度を要求することなく、その誤差を吸収することができる。それにより、時計バンドの生産性向上、歩留まりの向上を実現できる。また、専用の工具がなくとも、バネ棒ピン用固定部材10で被覆されたバネ棒ピン40をピン孔50に押し込むだけで、脱落しないようにバネ棒ピン40をピン孔50内へ容易に収容できる。
【産業上の利用可能性】
【0015】
本願発明に係るバネ棒ピン固定構造は、バネ棒ピンを用いた時計バンドの連結、例えば、エンドピースと時計ケースとの連結や、時計バンドを構成するバンド駒どうしの連結などの他に、バネ棒ピンを用いた時計バンドの構成、例えば、時計バンドの留具部分や美錠部分の構成などに広く利用することができる。
【符号の説明】
【0016】
1 バネ棒ピン固定構造
10 バネ棒ピン用固定部材
40 バネ棒ピン
41 ピン両端部
42 レバー
50 ピン孔