(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023072223
(43)【公開日】2023-05-24
(54)【発明の名称】燃料集合体及び原子炉の炉心
(51)【国際特許分類】
G21C 3/328 20060101AFI20230517BHJP
G21C 15/12 20060101ALI20230517BHJP
G21C 5/00 20060101ALI20230517BHJP
【FI】
G21C3/328 200
G21C15/12 A
G21C5/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021184624
(22)【出願日】2021-11-12
(71)【出願人】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】藤村 幸治
(72)【発明者】
【氏名】三輪 順一
(57)【要約】
【課題】マイナーアクチニドの燃焼効率を向上させ、ボイド反応度の増大を抑制できる燃料集合体を提供する。
【解決手段】燃料集合体1は、燃料棒2及び3をラッパ管4内に配置する。燃料棒2は、内部にU-Pu-Zr合金の金属燃料を有する。燃料棒3は、内部にU-Pu-MA-Zr合金の金属燃料を有する。燃料棒3の外径は燃料棒2の外径よりも小さい。複数の燃料棒2はラッパ管4内で正三角形格子状に配置され、燃料棒3は隣接する3本の燃料棒2の相互間に配置される。燃料集合体1内の、Pu及びMAを含む燃料棒3の外径がPuを含みMAを含まない燃料棒2の外径よりも小さいので、燃料棒2内で発生した中性子が燃料棒3の中心まで到達するため、燃料棒3におけるMAの燃焼効率が向上する。また、燃料集合体1の横断面での冷却材通路の横断面積割合が小さいため、燃料集合体1における、MAの含有に伴うボイド反応度の増加を抑制できる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイナーアクチニドを含まない第1核燃料物質を有する複数の第1燃料棒が筒状体内に配置され、
前記マイナーアクチニドを含む第2核燃料物質を有する複数の第2燃料棒が前記筒状体内に配置され、
前記第2燃料棒の外径が、前記第1燃料棒の外径よりも小さくなっていることを特徴とする燃料集合体。
【請求項2】
前記第2燃料棒が、前記筒状体内で、前記第1燃料棒の相互間に配置されている請求項1に記載の燃料集合体。
【請求項3】
第2燃料棒が、正三角形格子状に配置された、隣接する3本の第1燃料棒の相互間に配置される請求項2に記載の燃料集合体。
【請求項4】
複数の前記第2燃料棒が配置された第2燃料棒領域が、前記筒状体内で、複数の前記第1燃料棒が配置された第1燃料棒領域の相互間に配置された請求項1に記載の燃料集合体。
【請求項5】
複数の前記第1燃料棒が前記第1燃料棒領域内で正三角形格子状に配置され、複数の前記第2燃料棒が前記第2燃料棒領域内で正三角形格子状に配置される請求項4に記載の燃料集合体。
【請求項6】
前記燃料集合体の横断面における中心から前記筒状体の内面に向かって伸びる前記第1燃料棒領域及び前記第2燃料棒領域のそれぞれが、前記横断面の中心の周りに交互に配置される請求項4または5に記載の燃料集合体。
【請求項7】
環状の前記第1燃料棒領域及び環状の前記第2燃料棒領域のそれぞれが、前記燃料集合体の横断面における中心を取り囲み、前記横断面における中心から前記筒状体の内面に向かって交互に配置される請求項4または5に記載の燃料集合体。
【請求項8】
横断面が正方形状の前記筒状体内で、前記第1燃料棒及び前記第2燃料棒を含む燃料棒が、正方格子状に配置されている請求項1に記載の燃料集合体。
【請求項9】
前記複数の第2燃料棒が、燃料棒配列の最外周領域に配置されていなく、前記燃料棒配列の、前記筒状体の内面から2列目に配置されている請求項8に記載の燃料集合体。
【請求項10】
前記第1核燃料物質及び前記第2核燃料物質のそれぞれが、金属燃料及び酸化物燃料のいずれかである請求項1ないし7のいずれか1項に記載の燃料集合体。
【請求項11】
前記第1核燃料物質及び前記第2核燃料物質のそれぞれが、酸化物燃料である請求項8または9に記載の燃料集合体。
【請求項12】
請求項1ないし請求項7及び請求項10のいずれか1項に記載の燃料集合体が装荷されていることを特徴とする原子炉の炉心。
【請求項13】
請求項8、請求項9及び請求項11のいずれか1項に記載の燃料集合体が装荷されており、内部に、冷却材として、冷却水が存在することを特徴とする原子炉の炉心。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料集合体及び原子炉の炉心に係り、特に、マイナーアクチニド(MA)を含む燃料集合体、及びこの燃料集合体が装荷される原子炉の炉心に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、高速増殖炉は、炉心が原子炉容器内に配置されており、冷却材である液体ナトリウムを原子炉容器内に充填している。その炉心に装荷される燃料集合体は、プルトニウムを富化した劣化ウラン(U-238)を封入した複数の燃料棒、束ねられた複数の燃料棒を取り囲むラッパ管、これらの燃料棒の下端部、及び燃料棒の下方に位置する中性子遮へい体を支持するエントランスノズル、及び燃料棒の上方に位置する冷却材流出部を有する。
【0003】
高速増殖炉の炉心としては、例えば、内側炉心領域及びこの内側炉心領域を取り囲む外側炉心領域を有する炉心燃料領域、炉心燃料領域を取り囲むブランケット燃料領域及びブランケット領域を取り囲む遮へい体領域を有する炉心が存在する。標準的な均質炉心の場合、外側炉心領域に装荷される燃料集合体のPu富化度は、内側炉心領域に装荷される燃料集合体のPu富化度よりも高くなっている。この結果、炉心の半径方向における出力分布が平坦化される。
【0004】
燃料集合体の各燃料棒に収納される核燃料物質の形態としては、金属燃料、窒化物燃料及び酸化物燃料がある。これらのうち、酸化物燃料が最も実績が豊富である。
【0005】
Pu及び劣化ウランのそれぞれの酸化物を混合した混合酸化物燃料、すなわち、MOX燃料のペレットが、燃料棒内で軸方向の中央部において80~100cm程度の高さに充填される。さらに、燃料棒内には、劣化ウランで作られた複数の二酸化ウランペレットを充填した軸方向ブランケット領域が、MOX燃料の充填領域の上方及び下方にそれぞれ配置されている。内側炉心領域に装荷される内側炉心燃料集合体及び外側炉心領域に装荷される外側炉心燃料集合体は、上記のように、MOX燃料の複数のペレットを充填した複数の燃料棒を有する。外側炉心燃料集合体のPu富化度は、内側炉心燃料集合体のそれよりも高くなっている。
【0006】
炉心燃料領域を取り囲むブランケット燃料領域には、劣化ウランで作られた複数の二酸化ウランペレットを充填した複数の燃料棒を有するブランケット燃料集合体が装荷される。炉心燃料領域に装荷された燃料集合体内で生じる核分裂反応で発生した中性子のうち、炉心燃料領域から漏れた中性子が、ブランケット燃料領域に装荷されたブランケット燃料集合体の各燃料棒内のU-238に吸収される。この結果、ブランケット燃料集合体の各燃料棒内で核分裂性核種であるPu-239が新たに生成される。
【0007】
また、高速増殖炉の起動時、停止時及び原子炉出力の調節時には、制御棒が用いられる。制御棒は、炭化ホウ素(B4C)ペレットをステンレス製の被覆管に封入した複数の中性子吸収棒を有し、これらの中性子吸収棒を、内側炉心燃料集合体及び外側炉心燃料集合体と同様に、横断面が正六角形をしたラッパ管に収納されて構成される。制御棒は、主炉停止系及び後備炉停止系の独立した2系統の構成となっており、主炉停止系及び後備炉停止系のいずれか一方のみで高速増殖炉の緊急停止が可能になる。
【0008】
原子炉で発生する使用済燃料集合体に含まれる使用済核燃料を再処理することにより、核燃料として再利用可能なプルトニウム(Pu)及びウラン(U)が回収される。プルトニウム及びウランの回収の際に発生する高レベル放射性廃棄物(HLRW)には、放射能の高い核分裂生成物(FP)及び寿命が長いマイナーアクチニド(MA)が含まれる。我が国におけるHLRWの処分方針では、ガラス固化したHLRWを深地層に処分することになっている。HLRWのガラス固化体は300メートル以上の深さの地下で安定に埋設されるため、長期間に渡って、一般公衆の安全性が確保される。しかしながら、主に上記したMAの存在によって、有害度が、低減して天然ウランレベルまで減衰するには1万年程度の期間を要する。このMAを先進的な再処理によって回収し、回収したMAを、原子炉で用いられる核燃料に含有させて燃焼することによって、HLRWの有害度が天然ウランレベルまで減衰する期間を数百年程度に短縮することによって、使用済核燃料の有害度を低減させる分離変換研究が、世界各国で行われてきた。
【0009】
特許第2668646号公報は、MAを高速炉で燃焼させる方法を記載している。特許第2668646号公報に記載された高速炉の炉心に、プルトニウムを含みMAを含まない核燃料物質を充填した複数の第1燃料棒を配置した通常の燃料集合体、及びプルトニウム及びMAを含む核燃料物質を充填し、第1燃料棒よりも外径が小さい第2燃料棒を配置したターゲット燃料集合体を分散させて装荷している。ターゲット燃料集合体内の、細径の全ての第2燃料棒が、プルトニウム及びMAを充填している。
【0010】
特開2016-8890号公報の
図1に記載された燃料集合体(高速炉の炉心に装荷)では、横断面が正六角形の筒状の隔壁が燃料集合体の横断面において中央部に配置されており、その横断面が隔壁によって中心領域及び中心領域を取り囲む環状領域に分割されている。隔壁の上端及び下端は解放されている。中心領域に配置された第1燃料棒は、核燃料物質として、劣化ウラン及びPuのそれぞれの酸化物を含む混合酸化物燃料を密封された被覆管内に充填している。環状領域に配置された第2燃料棒は、核燃料物質として、劣化ウラン及びMAを密封された被覆管内に充填している。第1燃料棒及び第2燃料棒のそれぞれの外径は、同じである。
図8に示された燃料集合体(高速炉の炉心に装荷)でも、
図1に示されたそれと同様に、劣化ウラン及びPuが充填された第1燃料棒が中心領域に配置され、劣化ウラン及びMAが充填された第2燃料棒が環状領域に配置されている。
図8に示された燃料集合体では、第2燃料棒の外径が第1燃料棒のそれよりも大きくなっている。
【0011】
また、特開2016-8890号公報の
図2には、高速炉の炉心に装荷される燃料集合体の構造が記載されている。この燃料集合体は、エントランスノズルをラッパ管の下端部に接続しており、上記した隔壁をラッパ管内に配置して隔壁の下端部をエントランスノズルに取り付けた支持部材に取り付けている。中心領域に配置された第1燃料棒及び環状領域に配置された第2燃料棒のそれぞれの下端部は、その支持部材によって支持される。
【0012】
他方、Puを含む核燃料物質を有する複数の燃料棒が配置された炉心燃料集合体内の全ての燃料棒内の各燃料物質にMAを含有させることが、K. FUJIMURA, et al., “Actinide-Burning Ultralong-Life FBR Concepts,” Proceedings of International Conference on Fast Reactors and Related Fuel Cycles, VOLUME IV, P5.16-1~10, October 28-November 1, 1991に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特許第2668646号公報
【特許文献2】特開2016-8890号公報
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】K. FUJIMURA, et al., “Actinide-Burning Ultralong-Life FBR Concepts,” Proceedings of International Conference on Fast Reactors and Related Fuel Cycles, VOLUME IV, P5.16-1~10, October 28-November 1, 1991.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
特許第2668646号公報において、ターゲット燃料集合体の第2燃料棒の外径を通常の燃料集合体の第1燃料棒のそれよりも小さくするのは、MAの融点がPuのそれよりも低いため、第2燃料棒の中心の燃料温度を低くして第2燃料棒におけるMAを含む核燃料物質の溶融を回避するためである。
【0016】
特許第2668646号公報に記載された高速炉の炉心には、劣化ウラン及びPuの混合酸化物燃料が充填された複数の燃料棒が配置された複数の通常の燃料集合体、及び劣化ウラン及びPuが充填された第1燃料棒が中心領域に配置され、劣化ウラン及びMAが充填された第2燃料棒が環状領域に配置された複数のターゲット燃料集合体が装荷される。このような高速炉の炉心では、通常の燃料集合体内のPuの核分裂で発生した中性子が、通常の燃料集合体に隣接して配置されたターゲット燃料集合体に入射され、この中性子によって、ターゲット燃料集合体内の第2燃料棒に含まれるMAの核分裂が生じる。このため、周囲の通常の燃料集合体内で発生した中性子がターゲット燃料集合体の中心に向かって移動するが、中性子束(個/cm2/s)は、ターゲット燃料集合体の中心に近くなる程、低下し、ターゲット燃料集合体におけるMAの核分裂が抑制されてそのMAの燃焼効率が低下する。
【0017】
K. FUJIMURA, et al., “Actinide-Burning Ultralong-Life FBR Concepts,” Proceedings of International Conference on Fast Reactors and Related Fuel Cycles, VOLUME IV, P5.16-1~10, October 28-November 1, 1991に記載されているように、高速炉の炉心に装荷される燃料集合体内に配置される燃料棒に含まれるMAは、その燃料棒内の核燃料物質の主要な成分である劣化ウラン(U-238が主成分)と比べて、中性子吸収断面積が数倍大きく、MAを含有する燃料棒の表面での中性子の吸収割合が大きくなる。このため、燃料棒の中心付近の中性子束が低下したり、MAを含む燃料棒が配置された燃料集合体の中心での中性子束が低下し、所謂、自己遮蔽効果が大きくなる。また、上記のK. FUJIMURA, et al.の文献に記載されているように、高速炉の炉心に装荷される燃料集合体内の核燃料物質へのMAの添加は、冷却材の流量喪失とスクラム失敗の重畳を想定した過渡事象であるULOF(Unticipated Loss of Flow)において、反応度が増加して原子炉出力が増大する要因となるボイド反応度の増加をもたらす。
【0018】
以上に述べたように、MAを燃焼させるために高速炉の炉心に装荷される燃料集合体内の核燃料物質にMAを含有させる場合には、燃料集合体内のMAの燃焼効率の低下、及びボイド反応度の増加と言った課題が発生する。
【0019】
本発明の目的は、マイナーアクチニドの燃焼効率を向上させ、ボイド反応度の増大を抑制することができる燃料集合体及び原子炉の炉心を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記した目的を達成する本発明の特徴は、マイナーアクチニドを含まない第1核燃料物質を有する複数の第1燃料棒を有し、そのマイナーアクチニドを含む第2核燃料物質を有する複数の第2燃料棒を有し、その第2燃料棒の外径がその第1燃料棒の外径よりも小さくなっていることにある。
【0021】
その第2燃料棒の外径がその第1燃料棒の外径よりも小さくなっているため、第1燃料棒内で発生した中性子が第2燃料棒の中心まで到達するため、第2燃料棒内のマイナーアクチニドが核分裂しやすくなる。このため、第2燃料棒におけるマイナーアクチニドの燃焼効率が向上する。さらに、燃料集合体内に第1燃料棒と共に外径が第1燃料棒よりも小さい第2燃料棒を配置しているので、燃料集合体の横断面での冷却材通路の横断面積割合が小さくなっている。このため、燃料集合体における、マイナーアクチニドの存在に伴うボイド反応度の増加を抑制することができる。
【0022】
好ましくは、第1核燃料物資及び第2核燃料物質は、金属燃料及び酸化物燃料のいずれかであることが望ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、マイナーアクチニドの燃焼効率を向上させ、ボイド反応度の増大を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の好適な一実施例である、高速炉で用いられる実施例1の燃料集合体の横断面図である。
【
図2】
図1に示される実施例1の燃料集合体の縦断面図である。
【
図3】実施例1の燃料集合体が装荷される、高速炉の炉心の縦断面図である。
【
図4】
図3に示される高速炉の炉心のIV-IV断面図である。
【
図5】
図4に示された炉心燃料領域に装荷された、実施例1における複数の燃料集合体の配置の拡大図である。
【
図6】
図3及び
図4のそれぞれに示される高速炉の炉心内の内部ブランケット領域に装荷される内部ブランケット燃料集合体の横断面図である。
【
図7】本発明の好適な他の実施例である、高速炉で用いられる実施例2の燃料集合体の横断面図である。
【
図8】
図7に示された実施例2の燃料集合体の縦断面図である。
【
図9】実施例2の燃料集合体が装荷される、高速炉の炉心の縦断面図である。
【
図10】
図9に示される高速炉の炉心のIX-IX断面図である。
【
図11】本発明の好適な他の実施例である、高速炉で用いられる実施例3の燃料集合体の横断面図である。
【
図12】本発明の好適な他の実施例である、高速炉で用いられる実施例4の燃料集合体の横断面図である。
【
図13】本発明の好適な他の実施例である、高速炉で用いられる実施例5の燃料集合体の横断面図である。
【
図14】本発明の好適な他の実施例である、高速炉で用いられる実施例6の燃料集合体の横断面図である。
【
図15】本発明の好適な他の実施例である、沸騰水型原子炉で用いられる実施例7の燃料集合体の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施例を以下に説明する。
【実施例0026】
本発明の好適な一実施例である、高速炉で用いられる実施例1の燃料集合体を、
図1及び
図2に基づいて説明する。さらに、実施例1の高速炉の炉心を、
図3~
図6に基づいて説明する。本実施例が適用される高速炉は、中性子スペクトルが硬く、マイナーアクチニド(MA)の核変換及び燃焼性能が高いナトリウム冷却高速炉(例えば、高速増殖炉)である。
【0027】
高速炉の炉心には、本実施例の、
図1及び
図2に示される燃料集合体1が装荷される。この燃料集合体1は、横断面が正六角形の筒であるステンレス鋼製のラッパ管(筒状体)4内に、複数の燃料棒2及び複数の燃料棒3を配置している。その燃料集合体1は、特開2016-8890号公報の
図2に記載されているように、複数の燃料棒、ラッパ管およびエントランスノズルを有している。本実施例の燃料集合体1は、特開2016-8890号公報のように、隔壁を有してはいない。ラッパ管4の下端部はエントランスノズル(図示せず)の上端部に取り付けられている。燃料集合体1では、複数の燃料棒2及び複数の燃料棒3がラッパ管4内に配置される。
【0028】
燃料棒2は、被覆管6の上端部が上部端栓10によって封鎖され、被覆管6の下端部が下部端栓11によって封鎖されている。このように密封された被覆管6内には、核燃料物質である、U-Pu-Zr合金の金属燃料が存在し、この金属燃料の上方にブランケット燃料である、U-Zr合金の金属燃料が存在し、U-Pu-Zr合金の金属燃料の下方にブランケット燃料である、U-Zr合金の金属燃料が存在する。燃料棒2の被覆管6内には、下部端栓11から上方に向かって、U-Zr合金の金属燃料が存在する下部ブランケット領域9、U-Pu-Zr合金の金属燃料が存在する炉心燃料領域7及びU-Zr合金の金属燃料が存在する上部ブランケット領域8が存在する。燃料棒2にはMAが含まれていない。燃焼度が0GWd/tの燃料集合体1の燃料棒2におけるU-Pu-Zr合金のPu富化度は、13.0wt%~25.0wt%(13.0wt%以上25.0wt%以下)の範囲内にあり、例えば、23.5wt%である。
【0029】
燃料棒3は、被覆管6Aの上端部が上部端栓10Aによって封鎖され、被覆管6Aの下端部が下部端栓11Aによって封鎖されている。このように密封された被覆管6A内には、核燃料物質である、U-Pu-MA-Zr合金の金属燃料が存在し、この金属燃料の上方にブランケット燃料である、U-Zr合金の金属燃料が存在し、U-Pu-MA-Zr合金の金属燃料の下方にブランケット燃料である、U-Zr合金の金属燃料が存在する。燃料棒3の被覆管6A内には、下部端栓11から上方に向かって、U-Zr合金の金属燃料が存在する下部ブランケット領域9A、U-Pu-MA-Zr合金の金属燃料が存在する炉心燃料領域14及びU-Zr合金の金属燃料が存在する上部ブランケット領域8Aが存在する。燃焼度が0GWd/tの燃料集合体1の燃料棒3におけるU-Pu-MA-Zr合金のPu富化度も、13.0wt%~25.0wt%(13.0wt%以上25.0wt%以下)の範囲内にあり、例えば、23.5wt%である。また、U-Pu-MA-Zr合金のMA富化度は、3.7wt%~12.5wt%(3.7wt%以上12.5wt%以下)の範囲内にあり、例えば、5.0wt%である。
【0030】
ここで、MAは、具体的には、Np、Am、Cm等の同位体であり、主要な核種は、Np-237、Am-241、Am-242m、Cm-243、Cm-244及びCm-245である。
【0031】
U-Pu-Zr合金、U-Pu-MA-Zr合金及びU-Zr合金のそれぞれの金属燃料の形状は、中実の円柱状となっている。
【0032】
燃料棒2の外径は7.36mmである。燃料集合体1の横断面において、燃料棒2は、ラッパ管4内で正三角形格子状に配置されている(
図1参照)。燃料棒3の外径は2.21mmである。燃料集合体1の横断面において、燃料棒3は、隣接する3本の燃料棒2の相互間に1本ずつ配置され、それらの燃料棒2の全てに隣接している。このため、6本の燃料棒3が、1本の燃料棒2の周囲にこの燃料棒2を取り囲むように配置され、その1本の燃料棒2に隣接している。1体の燃料集合体1において、燃料棒2の本数は271本であり、燃料棒3の本数は378本である。燃料棒2及び3の合計の本数は649本である。燃料棒2及び3のそれぞれの下端部は、エントランスノズルの上端部に設けられた支持部材(図示せず)によって支持される。この支持部材には、エントランスノズル内からラッパ管4内へ冷却材である液体ナトリウムを導く多数の孔部(貫通孔)が設けられている。
【0033】
ワイヤースペーサ(図示せず)が燃料棒3の外面に巻き付けられている。燃料棒3の外面に巻き付けられたワイヤースペーサは、燃料棒3に隣接している燃料棒2の外面にも接触される。隣接する燃料棒3と燃料棒2との相互の間隔は、ワイヤースペーサによって保持される。冷却材通路5(
図1及び
図2参照)が、隣接している燃料棒3と燃料棒2との間、及び隣接している燃料棒相互間に形成される。ワイヤースペーサは、燃料棒3の外面ではなく燃料棒2の外面に巻き付けてもよい。このように、ワイヤースペーサは燃料棒2及び3のそれぞれの外面のいずれかに巻き付けられる。
【0034】
【0035】
表1では、本実施例の燃料集合体1及び従来の燃料集合体の仕様を比較している。燃料集合体1及び従来の燃料集合体のそれぞれが、別々の炉心に装荷されているとき、燃料集合体1の炉心内でのピッチと従来の燃料集合体の炉心内でのピッチは、同じであり、161.42mmである。本実施例の燃料集合体1における燃料棒2の外径及び本数、及び燃料棒3の外径及び本数は、前述した通りである。従来の燃料集合体は、燃料棒3を有していなく、燃料棒3の外径よりも大きな外径を有する燃料棒2を備えている。従来の燃料集合体の燃料棒2の外径は7.44mmであり、その燃料棒2の本数は燃料集合体1と同じ271本である。
【0036】
被覆管内における、核燃料物質の横断面積割合は、従来の燃料集合体では37.3%であるが、燃料集合体1では41.5%であり従来の燃料集合体よりも大きくなっている(表1参照)。ここで、被覆管内における、核燃料物質の横断面積割合について説明する。燃料集合体1及び従来の燃料集合体が炉心に装荷されているとき、隣接している燃料集合体1の相互間及び隣接している従来の燃料集合体の相互間には、それぞれ、冷却材領域が存在する。燃料集合体1の場合を
図5に基づいて、具体的に説明する。
図5は、高速炉の炉心15内の、
図4に示された炉心燃料領域16の横断面の一部を拡大している。炉心燃料領域16では、装荷された複数の燃料集合体1が隣接して配置されており、隣接する燃料集合体1の相互間には冷却材領域32が形成されている。冷却材領域32には、燃料集合体1内に供給される冷却材、例えば、液体ナトリウムが存在する。燃料集合体1の相互間の冷却材領域32の幅をH(
図5参照)とする。冷却材領域32の幅Hの1/2(H/2)を、ラッパ管4の、正六角形に配置された各外面に加えることにより、一点鎖線で示される正六角形33が形成される。前述した被覆管内における、核燃料物質の横断面積割合は、正六角形33が占める面積に対する、被覆管内における核燃料物質の横断面積の割合である。
【0037】
従来の燃料集合体におけるその核燃料物質の横断面積割合を「1」としたとき、燃料集合体1におけるその核燃料物質の横断面積割合は「1.1」となる。すなわち、燃料集合体1における、核燃料物質の横断面積割合は、従来の燃料集合体のそれよりも10%多くなる。これは、燃料集合体1における核燃料物質の重量が従来の燃料集合体のそれよりも10%増えることを意味している。
【0038】
また、燃料集合体のラッパ管4の内面よりも内側における、燃料集合体の横断面での冷却材通路の横断面積割合は、従来の燃料集合体では36.6%であるが、燃料集合体1では33.1%であり従来の燃料集合体よりも小さくなっている。前述したラッパ管4の内面よりも内側における、燃料集合体の横断面での冷却材通路の横断面積割合は、正六角形33が占める面積に対する、ラッパ管4の内面よりも内側における、燃料集合体の横断面での冷却材通路の横断面積の割合である。従来の燃料集合体におけるその冷却材通路の横断面積割合を「1」としたとき、燃料集合体1におけるその冷却材通路の横断面積割合は「0.90」となる。すなわち、燃料集合体1における、冷却材通路の横断面積割合は、従来の燃料集合体のそれよりも10%小さくなり、燃料集合体1における冷却材の量が従来の燃料集合体のそれよりも減少するのである。
【0039】
中性子の照射に伴う金属燃料のスエリングを吸収するため、燃料棒2において、U-Pu-Zr合金である金属燃料の横断面積は、被覆管6内側の横断面積の75%である。金属燃料の理論密度は100%TDであるので、スミヤ密度は75%となる。燃料集合体1内の燃料棒2では、ボンドナトリウム12が、被覆管6の内面と被覆管6内に存在する金属燃料(U-Pu-Zr合金及びU-Zr合金)の外面との間に形成される間隙に充填される。このボンドナトリウム12の液面は、上部ブランケット領域8の上端よりも上方の位置に存在する。ボンドナトリウム12の充填によって、金属燃料であるU-Pu-Zr合金及びU-Zr合金のそれぞれと被覆管6との間のギャップコンダクタンスが小さく保持される。すなわち、U-Pu-Zr合金及びU-Zr合金のそれぞれと被覆管6との間の熱伝導が大きくなり、U-Pu-Zr合金及びU-Zr合金のそれぞれの冷却が促進される。被覆管6内において、ボンドナトリウム12の液面の上方には、核分裂生成ガスを溜めるガスプレナム13が形成される。
【0040】
燃料棒3でも、ボンドナトリウム12Aが、被覆管6A内において、被覆管6Aの内面と被覆管6A内に存在する金属燃料(U-Pu-Zr合金及びU-Zr合金)の外面との間に形成される間隙に充填される。このボンドナトリウム12Aの液面は、被覆管6A内において、上部ブランケット領域8Aの上端よりも上方の位置に形成される。ボンドナトリウム12Aの液面よりも上方において、被覆管6A内にガスプレナム13が形成される。燃料要素がU-Pu-MA-Zr合金である点が異なる。燃料のスミヤ密度は75%である。
【0041】
図4に示された炉心15は、燃料集合体1が装荷された炉心燃料領域16、炉心燃料領域16を取り囲み、ブランケット燃料集合体25が装荷された径方向ブランケット領域18、及び複数の遮へい体集合体26が配置された遮へい体領域19を有する。径方向ブランケット領域18に配置されたブランケット燃料集合体25に含まれるブランケット燃料棒(図示せず)は、金属燃料であるU-Zr合金を有している。
【0042】
炉心燃料領域16には、複数の内部ブランケット燃料集合体22が装荷された環状の内部ブランケット領域21が形成される。炉心15は、内部ブランケット燃料集合体22を環状に配置した内部ブランケット領域21を有する径方向非均質炉心である。
【0043】
内部ブランケット燃料集合体22の詳細構造を、
図6を用いて説明する。内部ブランケット燃料集合体22は、被覆管内にU-Zr合金の金属燃料24を配置した複数のブランケット燃料棒23を有する。U-Zr合金のUは劣化ウランである。複数のブランケット燃料棒23は、内部ブランケット燃料集合体22のラッパ管4内に配置される。複数のブランケット燃料棒23の各下端部は、燃料集合体1内の燃料棒2及び3のそれぞれの下端部と同様に、ラッパ管4の下端部に接続されるエントランスノズル(図示せず)の上端部に設けられた支持部材(図示せず)によって支持される。ブランケット燃料棒23の相互間には、冷却材通路5が形成される。
【0044】
本実施例における燃料集合体1内の燃料棒2及び3それぞれは、核燃料物質として金属燃料を用いているが、金属燃料の替りに、実施例2における内側炉心燃料集合体1A及び外側炉心燃料集合体1Bのそれぞれにおいて用いられる酸化物燃料、例えば、混合酸化物燃料を用いてもよい。
【0045】
炉心15は、
図3に示すように、径方向ブランケット領域18の内側に配置された、炉心燃料領域16の上方に形成された上部ブランケット領域27及び炉心燃料領域16の下方に形成された下部ブランケット領域28のそれぞれを有する。燃料集合体1内の各燃料棒2における上部ブランケット領域8及び各燃料棒3における上部ブランケット領域8Aが、上部ブランケット領域27を形成する。燃料集合体1内の各燃料棒2における下部ブランケット領域9及び各燃料棒3における下部ブランケット領域9Aが、下部ブランケット領域28を形成する。炉心燃料領域16には、原子炉出力を制御する複数の制御棒集合体34が配置される。
【0046】
或る運転サイクルでの高速炉の運転開始前において、燃焼度が0GWd/tである複数の燃料集合体1、既に1つの運転サイクルでの運転を経験した複数の燃料集合体、及び既に2つの運転サイクルでの運転を経験した複数の燃料集合体等が、高速炉の原子炉容器(図示せず)内の炉心15内に装荷されている。高速炉では、前の運転サイクルにおける高速炉の運転が終了した後で且つ上記の運転開始前の、高速炉の運転が停止している期間において、燃料交換作業が行われる。この燃料交換作業では、高速炉の炉心から複数の使用済燃料集合体が取り出され、新しい燃料集合体1、すなわち、燃焼度が0GWd/tである複数の燃料集合体1が炉心15に装荷される。燃料交換作業等の必要な作業が終了した後、前述した、高速炉の運転が開始される。
【0047】
その高速炉の電気出力は75万kWeで、連続運転期間は19ヶ月、燃料取替バッチ数は3で、炉心燃料領域16に装荷された燃料集合体1の取出し平均燃焼度は約100GWd/tである。
図3に示された炉心15が、高速炉の原子炉容器内に配置される。冷却材である液体ナトリウムが、その原子炉容器内に存在する。液体ナトリウムは、エントランスノズルの下端部に設けられた複数の孔部からエントランスノズル内に流入し、ラッパ管4内を上昇する。液体ナトリウムは、ラッパ管内では、冷却材通路5内を上昇し、燃料棒2及び3のそれぞれの被覆管の外面と接触し、燃料棒2及び3内で発生する熱を除去する。この熱の除去により加熱された液体ナトリウムは、ラッパ管4の上端から燃料集合体1の外部に流出する。
【0048】
本実施例によれば、燃料集合体1内に配置された、Pu及びMAを含む燃料棒3の外径がPuを含みMAを含まない燃料棒2の外径よりも小さいので、燃料棒2内で発生した中性子が燃料棒3の中心まで到達するため、燃料棒3内のMAは核分裂しやすくなる。このため、燃料棒3におけるMAの燃焼効率が向上する。
【0049】
本実施例では、燃料集合体1の横断面において、隣接する燃料棒2の相互間に、具体的には、隣接する3本の燃料棒2毎に、その3本の燃料棒2の相互間に、MAを含み外径が小さい1本の燃料棒3を配置しているため、燃料集合体1の横断面での冷却材通路の横断面積割合が、従来の燃料集合体におけるそれよりも10%小さくなっている。このため、燃料集合体1における、MAの存在に伴うボイド反応度の増加を抑制することができる。
【0050】
さらに、MAを含まない燃料棒2以外に燃料棒2よりも直径が小さくてMAを含む燃料棒3を配置している燃料集合体1の被覆管内における、核燃料物質の横断面積割合が、従来の燃料集合体のそれよりも10%多くなっている。このため、燃料集合体1の核燃料物質の重量が、従来の燃料集合体のそれよりも10%増加しているため、同じ取出平均燃焼度に対して、燃料集合体1を炉心に装荷した高速炉の連続運転期間を10%伸ばすことができ、高速炉の稼働率が向上する。
燃料棒2Aは、被覆管6の上端部が上部端栓10Bによって封鎖され、被覆管6の下端部が下部端栓11Bによって封鎖されている。このように密封された被覆管6内には、核燃料物質である、U及びPuの混合酸化物燃料(UO2及びPuO2を含む)の複数のペレットが存在し、これらのペレットの上方にブランケット燃料である劣化ウランの酸化物(UO2)の複数のペレットが存在し、前述の混合酸化物燃料の複数のペレットの下方にもブランケット燃料である劣化ウランの酸化物(UO2)の複数のペレットが存在する。燃料棒2Aの被覆管6内には、下部端栓11Bから上方に向かって、UO2の複数のペレットが存在する下部ブランケット領域9B、U及びPuの混合酸化物燃料の複数のペレットが存在する炉心燃料領域7A及びUO2の複数のペレットが存在する上部ブランケット領域8Bが存在する。燃料棒2AにはMAが含まれていない。燃焼度が0GWd/tの内側炉心燃料集合体1Aの燃料棒2Aにおける混合酸化物燃料のペレットのPu富化度は、13.0wt%~26.7wt%(13.0wt%以上26.7wt%以下)の範囲内にあり、例えば、23.5wt%である。
燃料棒3Aは、被覆管6Aの上端部が上部端栓10Cによって封鎖され、被覆管6Aの下端部が下部端栓11Aによって封鎖されている。このように密封された被覆管6A内には、核燃料物質である、U,Pu及びMAの混合酸化物燃料(UOX,PuOX及びMAOXを含む)の複数のペレットが存在し、この混合酸化物燃料の上方にブランケット燃料である、劣化ウランの酸化物(UO2)の複数のペレットが存在し、この混合酸化物燃料の下方にもブランケット燃料である、劣化ウランの酸化物(UO2)の複数のペレットが存在する。燃料棒3Aの被覆管6A内には、下部端栓11Cから上方に向かって、劣化ウランの酸化物(UO2)の複数のペレットが存在する下部ブランケット領域9C、U,Pu及びMAの混合酸化物燃料の複数のペレットが存在する炉心燃料領域14A及び劣化ウランの酸化物(UO2)の複数のペレットが存在する上部ブランケット領域8Aが存在する。燃焼度が0GWd/tの内側炉心燃料集合体1Aの燃料棒3AにおけるU,Pu及びMAの混合酸化物燃料のPu富化度も、13.0wt%~26.7wt%(13.0wt%以上26.7wt%以下)の範囲内にあり、例えば、23.5wt%である。また、U,Pu及びMAの混合酸化物燃料のMA富化度は、3.7wt%~12.5wt%(3.7wt%以上12.5wt%以下)の範囲内にあり、例えば、5.0wt%である。
保持部材32Aが、燃料棒2Aの被覆管6内で、下部ブランケット領域9Bの下方に配置されて被覆管6に取り付けられている。保持部材32Aは、下部ブランケット領域9B内で最下位の位置に配置されているペレットの下端を保持している。被覆管6内では、保持部材32Aの下方にガスプレナム13Aが形成される。保持部材32Aには貫通した孔部が形成されており、この孔部によって、保持部材32Aの上方における複数のペレットの外面と被覆管6の内面に形成されるギャップとガスプレナム13Aが連通される。保持部材32Bが、燃料棒3Aの被覆管6A内で、下部ブランケット領域9Cの下方に配置されて被覆管6Aに取り付けられている。保持部材32Bは、下部ブランケット領域9C内で最下位の位置に配置されているペレットの下端を保持している。被覆管6A内では、保持部材32Bの下方にガスプレナム13Bが形成される。保持部材32Bにも貫通した孔部が形成されており、この孔部によって、保持部材32Bの上方における複数のペレットの外面と被覆管6Aの内面に形成されるギャップとガスプレナム13Bが連通される。
内側炉心燃料集合体1Aの横断面において、燃料棒3Aは、隣接する3本の燃料棒2Aの相互間に1本ずつ配置され、それらの燃料棒2Aの全てに隣接している。このため、6本の燃料棒3Aが、1本の燃料棒2Aの周囲にこの燃料棒2Aを取り囲むように配置され、その1本の燃料棒2Aに隣接している。1体の内側炉心燃料集合体1Aにおいて、燃料棒2Aの本数は271本であり、燃料棒3Aの本数は378本である。燃料棒2A及び3Aの合計本数は649本である。燃料棒2A及び3Aのそれぞれの下端部は、エントランスノズルの上端部に設けられた支持部材(図示せず)によって支持される。この支持部材には、エントランスノズル内からラッパ管4内へ冷却材である液体ナトリウムを導く多数の孔部(貫通孔)が設けられている。
ワイヤースペーサ(図示せず)が燃料棒2A及び3Aのいずれかの外面に巻き付けられている。巻き付けられたそのワイヤースペーサによって、隣接する燃料棒3Aと燃料棒2Aとの相互の間隔が保持され、隣接する燃料棒3Aと燃料棒2Aとの相互に冷却材通路5が形成される。
燃料棒2Bの、上端部が上部端栓10Bで封鎖され、下端部が下部端栓11Bで封鎖された被覆管6内には、前述の燃料棒2Aと同様に、核燃料物質である、U及びPuの混合酸化物燃料(UO2及びPuO2を含む)の複数のペレットが存在し、その混合酸化物燃料の上方及び下方のそれぞれにブランケット燃料である劣化ウランの酸化物(UO2)の複数のペレットが存在する。燃料棒2Bの被覆管6内には、下部端栓11Bから上方に向かって、劣化ウランの酸化物(UO2)の複数のペレットが存在する下部ブランケット領域9B、U及びPuの混合酸化物燃料の複数のペレットが存在する炉心燃料領域7B及び劣化ウランの酸化物(UO2)の複数のペレットが存在する上部ブランケット領域8Bが存在する。燃料棒2BにはMAが含まれていない。燃焼度が0GWd/tの外側炉心燃料集合体1Bの燃料棒2Bにおける混合酸化物燃料のペレットのPu富化度は、15.6wt%~32.0wt%(15.6wt%以上32.0wt%以下)の範囲内にあり、例えば、28.2wt%である。
燃料棒3Bの、上端部が上部端栓10Bで封鎖され、下端部が下部端栓11Bで封鎖された被覆管6内には、前述の燃料棒3Aと同様に、核燃料物質である、U,Pu及びMAの混合酸化物燃料(UOX,PuOX及びMAOXを含む)の複数のペレットが存在し、その混合酸化物燃料の上方及び下方のそれぞれにブランケット燃料である劣化ウランの酸化物(UO2)の複数のペレットが存在する。燃料棒3Bの被覆管6A内には、下部端栓11Cから上方に向かって、劣化ウランの酸化物(UO2)の複数のペレットが存在する下部ブランケット領域9C、U,Pu及びMAの混合酸化物燃料の複数のペレットが存在する炉心燃料領域14B及び劣化ウランの酸化物(UO2)の複数のペレットが存在する上部ブランケット領域8Cが存在する。燃焼度が0GWd/tの外側炉心燃料集合体1Bの燃料棒3BにおけるU,Pu及びMAの混合酸化物燃料のPu富化度も、15.6wt%~32.0wt%(15.6wt%以上32.0wt%以下)の範囲内にあり、例えば、28.2wt%である。また、U,Pu及びMAの混合酸化物燃料のMA富化度は、3.7wt%~12.5wt%(3.7wt%以上12.5wt%以下)の範囲内にあり、例えば、5.0wt%である。
外側炉心燃料集合体1Bにおいても、燃料ペレットを保持する保持部材32Aが、燃料棒2Aと同様に、燃料棒2Bの被覆管6内で、下部ブランケット領域9Bの下方に配置されて被覆管6に取り付けられている。保持部材32Aに形成された貫通孔である孔部によって、保持部材32Aの上方における複数のペレットの外面と被覆管6の内面に形成されるギャップとガスプレナム13Aが連通される。燃料ペレットを保持する保持部材32Bが、燃料棒3Aと同様に、燃料棒3Bの被覆管6A内で、下部ブランケット領域9Cの下方に配置されて被覆管6Aに取り付けられている。保持部材32Bに形成された貫通孔である孔部によって、保持部材32Bの上方における複数のペレットの外面と被覆管6Aの内面に形成されるギャップとガスプレナム13Bが連通される。
本実施例における内側炉心燃料集合体1A及び外側炉心燃料集合体1Bのそれぞれは、核燃料物質として酸化物燃料、例えば、混合酸化物燃料を用いているが、この混合酸化物燃料の替りに、実施例1における燃料集合体1において用いられる金属燃料を用いてもよい。
内側炉心燃料集合体1A内の複数の燃料棒2Aのそれぞれの炉心燃料領域7A、及び複数の燃料棒3Aのそれぞれの炉心燃料領域14Aによって、内側炉心燃料領域16Aが形成される。複数の燃料棒2Aのそれぞれの上部ブランケット領域8B、及び複数の燃料棒3Aのそれぞれの上部ブランケット領域8Bによって、上部ブランケット領域27の一部が形成される。複数の燃料棒2Aのそれぞれの下部ブランケット領域9B、及び複数の燃料棒3Aのそれぞれの下部ブランケット領域9Bによって、下部ブランケット領域28の一部が形成される。
外側炉心燃料集合体1B内の複数の燃料棒2Bのそれぞれの炉心燃料領域7B、及び複数の燃料棒3Bのそれぞれの炉心燃料領域14Bによって、外側炉心燃料領域16Bが形成される。複数の燃料棒2Bのそれぞれの上部ブランケット領域8C、及び複数の燃料棒3Bのそれぞれの上部ブランケット領域8Cによって、上部ブランケット領域27の残りの部分が形成される。複数の燃料棒2Bのそれぞれの下部ブランケット領域9B、及び複数の燃料棒3Bのそれぞれの下部ブランケット領域9Cによって、下部ブランケット領域28の残りの部分が形成される。
本実施例における燃料集合体、すなわち、内側炉心燃料集合体1A及び外側炉心燃料集合体1Bが装荷される炉心15Aが原子炉容器内に配置される高速炉の電気出力は75万kWeであり、連続運転期間は18ヶ月で、燃料取替バッチ数は3である。炉心15Aに装荷された内側炉心燃料集合体1A及び外側炉心燃料集合体1Bのそれぞれの取出し平均燃焼度は約100GWd/tである。原子炉容器内の冷却材である液体ナトリウムは、内側炉心燃料集合体1A及び外側炉心燃料集合体1Bのそれぞれのラッパ管4内に形成される冷却材通路5内を上昇する。
本実施例は、実施例1で生じる各効果を得ることができる。また、本実施例では、燃料棒2A,3A,2B及び3Bのそれぞれに形成されるガスプレナムは、核燃料物質が充填された領域よりも下方に位置している(保持部材35Aまたは35Bよりも下方に位置する)ため、実施例1の燃料集合体1に比べて、ガスプレナムの軸方向の長さを短くすることができる。このため、炉心15Aの軸方向における長さを、炉心15(実施例1)の軸方向における長さよりも短くすることができる。
さらに、本実施例の燃料集合体で用いられる核燃料物質が、酸化物燃料であるため、湿式の再処理を適用することができる。このため、本実施例は、各燃料物質が金属燃料であって乾式の再処理を適用する実施例1の場合と比べると、使用済燃料を再処理してMAを回収する場合に、MAに随伴する希土類元素(RE:レア・アース)などの不純物FPの随伴割合を低減できる。したがって、炉心の経済性が向上し、新燃料集合体による被ばく量を低減できる。