(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023072228
(43)【公開日】2023-05-24
(54)【発明の名称】作業機
(51)【国際特許分類】
B25F 5/00 20060101AFI20230517BHJP
B25B 21/00 20060101ALI20230517BHJP
B25B 21/02 20060101ALI20230517BHJP
B25B 23/14 20060101ALI20230517BHJP
【FI】
B25F5/00 C
B25B21/00 B
B25B21/00 530Z
B25B21/02 F
B25B21/00 510C
B25B21/00 520A
B25B23/14 630G
B25B23/14 640Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021184631
(22)【出願日】2021-11-12
(71)【出願人】
【識別番号】000005094
【氏名又は名称】工機ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079290
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100136375
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 弘実
(72)【発明者】
【氏名】新戸 俊哉
(72)【発明者】
【氏名】益子 弘識
(72)【発明者】
【氏名】三邊 拓実
【テーマコード(参考)】
3C038
3C064
【Fターム(参考)】
3C038AA01
3C038BC04
3C064AA02
3C064AB02
3C064AC02
3C064AC03
3C064BA13
3C064BB52
3C064CA03
3C064CA06
3C064CA25
3C064CA27
3C064CA29
3C064CA53
3C064CA76
3C064CA78
3C064CA79
3C064CA80
3C064CA82
3C064CB07
3C064CB17
3C064CB19
3C064CB24
3C064CB26
3C064CB62
3C064CB73
3C064CB74
3C064CB78
3C064DA02
3C064DA23
3C064DA25
3C064DA37
3C064DA39
3C064DA43
3C064DA56
3C064DA57
3C064DA59
3C064DA78
(57)【要約】
【課題】使い勝手の良い作業機を提供する。
【解決手段】演算部42は、モータ3の駆動モードとして、通常モードと、通常モード以外のモードと、を有する。演算部42は、通常モード以外の場合、トリガスイッチ6に対する1回のオン操作の間に、当該オン操作により駆動開始したモータ3を、一時的に停止又は減速させた後、再駆動又は再加速させる。演算部42は、通常モードの場合、トリガスイッチ6に対する1回のオン操作の間に、当該オン操作により駆動開始したモータ3を、一時的に停止及び減速させずに駆動する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
前記モータの駆動力により駆動される先端工具を装着可能な先端工具装着部と、
前記モータを駆動させるオン操作と、前記モータの駆動を停止させるオフ操作が可能な操作部と、
前記モータの駆動を第1の駆動モード又は前記第1の駆動モードとは異なる第2の駆動モードで制御する制御部と、
前記第1の駆動モード又は前記第2の駆動モードを選択可能なモード選択部と、
を有し、
前記制御部は、前記第1の駆動モードが選択されている場合には、前記オン操作が行われると、前記第1の駆動モードが選択されていることを報知する報知制御により前記モータを駆動し、その後、前記先端工具により第1の作業を行う第1の作業制御により前記モータを駆動し、前記第2の駆動モードが選択されている場合には、前記オン操作が行われると、前記先端工具により第2の作業を行う第2の作業制御により前記モータを駆動するよう構成された、作業機。
【請求項2】
前記報知制御は、前記操作部に対する1回のオン操作の間に、駆動開始した前記モータを、一時的に停止又は減速させた後、再駆動又は再加速させる制御である、請求項1に記載の作業機。
【請求項3】
前記制御部は、前記先端工具が相手材と非接触な状態において、前記報知制御を実行可能に構成された、請求項2に記載の作業機。
【請求項4】
前記制御部は、前記第2の駆動モードが選択されている状態において、前記操作部に対する1回のオン操作の間に、前記モータ駆動操作により駆動開始した前記モータを、一時的に停止及び減速させずに駆動する通常制御を実行可能に構成された、請求項2又は3に記載の作業機。
【請求項5】
前記制御部は、前記先端工具が相手材と接触した状態で前記操作部にモータ駆動操作が行われた場合に前記通常制御を実行可能に構成された、請求項4に記載の作業機。
【請求項6】
前記モータにかかる負荷を検出可能な負荷検出部を有し、
前記制御部は、前記負荷検出部により検出された負荷に基づき、前記報知制御と前記通常制御のどちらかを実行可能に構成された、請求項4又は5に記載の作業機。
【請求項7】
前記先端工具装着部に装着された先端工具を検出可能な先端工具検出部を有し、
前記制御部は、前記先端工具検出部により第1先端工具が装着されていることが検出されると前記報知制御を実行可能であり、前記先端工具検出部により第2先端工具が装着されていることが検出されると前記通常制御を実行可能に構成された、請求項4から6の何れか一項に記載の作業機。
【請求項8】
前記操作部は、無段変速スイッチであり、
前記制御部は、前記報知制御では、前記操作部に対する1回のモータ駆動操作の間における、前記モータを一時的に停止又は減速させる前と後のいずれにおいても、前記無段変速スイッチの操作量に応じた制御を行うように構成された、請求項2から7の何れか一項に記載の作業機。
【請求項9】
前記操作部は、無段変速スイッチであり、
前記制御部は、前記無段変速スイッチの操作量が所定操作量以上であることを、前記報知制御の実行に必要な条件とする、請求項2から8の何れか一項に記載の作業機。
【請求項10】
前記操作部は、無段変速スイッチであり、
前記制御部は、前記無段変速スイッチの操作量によらず前記報知制御を実行可能に構成された、請求項2から8の何れか一項に記載の作業機。
【請求項11】
前記制御部は、前記報知制御では、前記操作部に対する1回のモータ駆動操作の間において、前記モータを一時的に停止又は減速させる前は、前記モータを一時的に停止又は減速させる後と比較して、前記モータの回転数を緩やかに上昇させる、請求項2から10の何れか一項に記載の作業機。
【請求項12】
前記モータの駆動力を先端工具に伝達する回転打撃機構を有し、
前記報知制御は、前記回転打撃機構による打撃が行われない状態で実行され、
前記第1の駆動モードは、前記回転打撃機構による打撃開始から設定時間が経過し又は打撃回数が所定回数に達すると前記モータを停止させるモードである、請求項2から11のいずれか一項に記載の作業機。
【請求項13】
前記制御部は、直前の前記報知制御における前記モータの一時的な停止又は減速から所定時間が経過していることを、前記報知制御の実行に必要な条件とする、請求項2から12の何れか一項に記載の作業機。
【請求項14】
前記制御部は、前記操作部に対するオン操作の直後にのみ前記報知制御を行う、請求項2から13のいずれか一項に記載の作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インパクトレンチ等の作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1は、インパクト工具において、緩め動作時に回転打撃動作の終了を検出する回転打撃動作終了検出手段を設けると共に、回転打撃動作終了検出手段からの出力によりモータを停止させることを開示する。こうした技術は、正ねじを用いる作業におけるナット等の落下防止に有効である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術は、逆ねじを用いる作業については考慮されておらず、作業性の観点で改善の余地があった。第1の課題は、作業性の良い作業機を提供することである。
【0005】
特許文献1のように回転打撃動作終了検出手段からの出力によりモータを停止させるモードと、通常モードとが存在する場合、作業機は複数のモードを有することになる。複数のモードが存在する場合に、例えばモード表示LEDの点灯状態を確認しなければ現在のモードが分からない構成では、モード確認の作業が煩雑で、使い勝手が悪いと感じることがあった。第2の課題は、使い勝手の良い作業機を提供することである。
【0006】
本発明の目的は、少なくとも第2の課題を解決した作業機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様は、作業機である。この作業機は、
モータと、
前記モータの駆動力により駆動される先端工具を装着可能な先端工具装着部と、
前記モータを駆動させるオン操作と、前記モータの駆動を停止させるオフ操作が可能な操作部と、
前記モータの駆動を第1の駆動モード又は前記第1の駆動モードとは異なる第2の駆動モードで制御する制御部と、
前記第1の駆動モード又は前記第2の駆動モードを選択可能なモード選択部と、
を有し、
前記制御部は、前記第1の駆動モードが選択されている場合には、前記オン操作が行われると、前記第1の駆動モードが選択されていることを報知する報知制御により前記モータを駆動し、その後、前記先端工具により第1の作業を行う第1の作業制御により前記モータを駆動し、前記第2の駆動モードが選択されている場合には、前記オン操作が行われると、前記先端工具により第2の作業を行う第2の作業制御により前記モータを駆動するよう構成されている。
【0008】
本発明は「電動作業機」や「電動工具」、「電気機器」等と表現されてもよく、そのように表現されたものも本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、少なくとも第2の課題を解決した作業機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施の形態に係る作業機1の側断面図。
【
図2】
図1のA矢視拡大図であり、作業機1の操作パネル20の外観を示す図。
【
図4】作業機1のモード選択の第1制御例における各モードに対応したモード表示LED22、23の点灯状態説明図。
【
図5】第1制御例における各モード、正逆切替レバー13の回転指示方向、及びアンビル10の回転方向、並びにそれらに対応した締め過ぎ防止機能とナット脱落防止機能の有効、無効の対応関係をまとめた表。
【
図6】作業機1のモード選択の第2制御例における各モードに対応したモード表示LED22、23の点灯状態説明図。
【
図7】第2制御例における各モード、正逆切替レバー13の回転指示方向、及びアンビル10の回転方向、並びにそれらに対応した締め過ぎ防止機能とナット脱落防止機能の有効、無効の対応関係をまとめた表。
【
図8】作業機1のモード選択の第3制御例における各モードに対応したモード表示LED22、23の点灯状態説明図。
【
図9】第3制御例における全体的なモード遷移を示す状態遷移図。
【
図10】第3制御例における正転設定時のモード遷移を示す状態遷移図。
【
図11】第3制御例における逆転設定時のモード遷移を示す状態遷移図。
【
図12】第3制御例における正逆切替レバー13の回転指示方向、モード切替ボタン21の操作によって選択されたモード、及びそれらに応じて設定される(有効となる)機能の対応関係まとめた表。
【
図14】作業機1における、モータ3の起動態様によるユーザへの駆動モードの報知動作のパターン1を示すタイムチャート。
【
図15】報知動作のパターン2を示すタイムチャート。
【
図16】報知動作のパターン3を示すタイムチャート。
【
図17】報知動作のパターン4を示すタイムチャート。
【
図18】作業機1の、駆動モード決定後の動作のフローチャート。
【
図19】(A)は、
図18において無負荷状態または軽負荷状態の場合に限定して報知動作を行う場合の部分的なフローチャート。(B)は、
図18において一度報知動作を行ってから所定時間は報知動作を行わない場合の部分的なフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下において、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材等には同一の符号を付し、適宜重複した説明は省略する。実施の形態は、発明を限定するものではなく例示である。実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0012】
図1は、本発明の実施の形態に係る作業機1の側断面図である。
図1により、作業機1における互いに直交する前後、上下方向を定義する。前後方向は、作業機1のモータ軸3aと平行な方向である。作業機1は、電動工具であり、具体的にはインパクトレンチである。作業機1は、ハウジング2を有する。
【0013】
ハウジング2は、胴体部2a、ハンドル部2b、及びバッテリ着脱部2cを含む。胴体部2aは、中心軸が前後方向と略平行な筒状部である。ハウジング2は、胴体部2aの前部に接続される例えば金属製のハンマケース11を備える。ハンマケース11の前部表面は、エラストマ等の保護部材であるフロントキャップ12に被覆される。
【0014】
ハンドル部2bは、上端が胴体部2aの前後方向の中間部に接続されて前記中間部から下方に延びる。作業機1は、ハンドル部2bの上端部に、トリガスイッチ6及び正逆切替レバー13(正逆切替ボタン)を有する。トリガスイッチ6は、ユーザがモータ3の駆動、停止(モータ3の駆動状態)を切替え可能な操作部である。トリガスイッチ6は、無段変速スイッチである。正逆切替レバー13は、ユーザがモータ3の正転と逆転、すなわち後述のアンビル10の正転と逆転を切替え可能な回転方向切替部である。
【0015】
バッテリ着脱部2cは、ハンドル部2bの下端に設けられ、電池パック7を着脱可能に装着できる。作業機1は、電池パック7の電力で動作する。作業機1は、バッテリ着脱部2cの前部上面に操作パネル20(スイッチパネル)を有する。作業機1は、バッテリ着脱部2cの内部に制御基板30を有する。
【0016】
作業機1は、胴体部2a及びハンマケース11内に、モータ3、減速機構4、スピンドル5、ハンマ8、スプリング9、及び先端工具装着部としてのアンビル10を有する。減速機構4、スピンドル5、ハンマ8、及びスプリング9は、モータ3の駆動力(回転力)を回転打撃力に変換してアンビル10に作用させる回転打撃機構を構成する。
【0017】
モータ3は、インナーロータ型のブラシレスモータである。減速機構4は、モータ3の回転を減速してスピンドル5に伝達する。スピンドル5はハンマ8を回転駆動する。スプリング9は、ハンマ8を前方に付勢する。ハンマ8は、アンビル10を回転ないし回転打撃する。すなわち、アンビル10は、モータ3の駆動力で駆動される。アンビル10は、ハンマケース11に回転可能に支持される。
【0018】
作業機1は、胴体部2a内の後部に、センサ・インバータ基板15を有する。センサ・インバータ基板15は、
図3に示す温度センサ14やホールIC43、インバータ回路45を搭載する。センサ・インバータ基板15は、モータ3の本体部(モータ3のうちモータ軸3aを除く部分)の後方においてモータ軸3aと略垂直な姿勢で支持される。
【0019】
図2は、
図1のA矢視拡大図であり、操作パネル20の外観を示す図である。操作パネル20は、モード切替スイッチ21、モード表示LED22、23、強弱切替スイッチ25、及び強弱表示LED26を有する。
【0020】
モード切替スイッチ21は、ユーザが後述の複数の駆動モードの選択を切替可能なモード選択部である。モード表示LED22、23は、選択されている駆動モードを表示するモード表示部である。
【0021】
強弱切替スイッチ25は、ユーザがモータ3の無負荷時における最高回転数(以下「設定回転数」)を4段階で切替え可能な回転数選択部である。強弱表示LED26は、4つのLEDを含み、選択されている設定回転数を4段階で表示する強度表示部である。無負荷時における最高回転数の設定可能な段階数は、4段階に限定されず、任意でよい。
【0022】
図3は、作業機1の回路ブロック図である。表示部22、23、26は、
図2のモード表示LED22、23及び強弱表示LED26をまとめたブロックである。コンデンサCは、雑音防止用であり、電池パック7の出力端子間に設けられる。抵抗Rは、電流検出用ないし負荷検出用であって、モータ3に流れる電流(以下「モータ電流」)の経路に設けられる。ホールIC43(磁気センサ)は、モータ3の回転位置検出用の位置センサである。
【0023】
インバータ回路45は、電池パック7の出力する直流電力をブラシレスモータ6の駆動電力に変換し、ブラシレスモータ6に供給する。インバータ回路45は、三相ブリッジ接続されたスイッチング素子Q1~Q6を含む。温度センサ14は、インバータ回路45の温度検出用であり、スイッチング素子Q1~Q6の近傍に設けられる。
【0024】
作業機1は、制御基板30に、電流検出回路31、電圧検出回路32、スイッチ操作検出回路33、回転方向設定回路34、温度検出回路35、制御電源回路36、制御信号出力回路37、回転位置検出回路38、回転数検出回路39、モード設定検出回路40、強弱設定検出回路41、及び演算部42を有する。
【0025】
電流検出回路31は、抵抗Rの両端子間の電圧によりモータ電流を検出し、演算部42に送信する。演算部42は、モータ電流により、モータ3にかかる負荷を検出できる。電圧検出回路32は、電池パック7の出力電圧を検出し、演算部42に送信する。スイッチ操作検出回路33は、トリガスイッチ6のオンオフ及び操作量(引き量)を検出し、演算部42に送信する。回転方向設定回路34は、正逆切替レバー13の指示する回転方向を検出し、演算部42に送信する。温度検出回路35は、温度センサ14の出力信号によりインバータ回路45の温度を検出し、演算部42に送信する。制御電源回路36は、電池パック7の出力電圧を演算部42等の電源電圧に変換し、演算部42等に供給する。
【0026】
制御信号出力回路37は、演算部42の制御に従いスイッチング素子Q1~Q6の各制御端子(各ゲート)に信号、例えばPWM(Pulse Width Modulation)信号を印加する。回転位置検出回路38は、ホールIC43の出力信号によりモータ3の回転位置(以下「モータ回転位置」)を検出し、演算部42に送信する。回転数検出回路39は、回転位置検出回路38の出力信号によりモータ3の回転数(以下「モータ回転数」)を検出し、演算部42に送信する。モード設定検出回路40は、モード切替スイッチ21の操作(押下)を検出し、演算部42に送信する。強弱設定検出回路41は、強弱切替スイッチ25の操作(押下)を検出し、演算部42に送信する。
【0027】
演算部42は、モータ3の駆動や表示部22、23、26による表示等、作業機1の全体の動作を制御する制御部を構成する。制御部は、演算部42だけでなく、
図3において制御基板30を示す破線の内部にある構成全体を含んでもよい。また制御部は、ホールIC43やインバータ回路45を含んでもよい。
【0028】
演算部42は、トリガスイッチ6の操作、正逆切替レバー13で指示(選択)された回転方向(以下「回転指示方向」)、モード切替スイッチ21による駆動モードの選択、及び強弱切替スイッチ25により選択された設定回転数に応じて、モータ3の駆動を制御する。演算部42は、モータ電流、モータ回転位置、及びモータ回転数のフィードバックを受けて、モータ3の駆動を制御する。演算部42は、モード切替スイッチ21による選択に応じた駆動モードを実行可能に構成される。
【0029】
演算部42は、モータ3の駆動モードとして、複数の駆動モードを有する。複数の駆動モードは、以下の駆動モードを含む。
【0030】
・正転締め過ぎ防止モード…アンビル10の正転(以下「正転」)による締め付け作業用の正転締め付けモードであり、正転による締め付け作業(正ねじの締め付け作業)におけるナット等の締め過ぎを防止する駆動モード。
【0031】
・正転ナット脱落防止モード…正転による緩め作業用の正転緩めモードであり、正転による緩め作業(逆ねじの緩め作業)におけるナット等の脱落を防止する駆動モード。
【0032】
・正転通常モード…正転による作業用の駆動モードであり、正転締め過ぎ防止モード及び正転ナット脱落防止モードと異なり、異常発生時を除きトリガスイッチ6の操作に応じたモータ3の駆動(正転)を継続する駆動モード。
【0033】
・逆転締め過ぎ防止モード…アンビル10の逆転(以下「逆転」)による締め付け作業用の逆転締め付けモードであり、逆転による締め付け作業(逆ねじの締め付け作業)におけるナット等の締め過ぎを防止する駆動モード。
【0034】
・逆転ナット脱落防止モード…逆転による緩め作業用の逆転緩めモードであり、逆転による緩め作業(正ねじの緩め作業)におけるナット等の脱落を防止する駆動モード。
【0035】
・逆転通常モード…逆転による作業用の駆動モードであり、逆転締め過ぎ防止モード及び逆転ナット脱落防止モードと異なり、異常発生時を除きトリガスイッチ6の操作に応じたモータ3の駆動(逆転)を継続する駆動モード。
【0036】
正転締め過ぎ防止モード及び逆転締め過ぎ防止モードにおける締め過ぎ防止の方法としては、予め設定された打撃動作を実行することにより締め付け作業を行ったことを検知すると、モータ3を停止させる。具体的には、ハンマ8によるアンビル10の打撃(以下「打撃」)開始から設定時間が経過するとトリガスイッチ6がオン状態でもモータ3を停止させたり、打撃回数が所定回数に達するとトリガスイッチ6がオン状態でもモータ3を停止させたり、トリガスイッチ6の操作量が一定でも打撃直前にモータ3への印加電圧の実効値を低下させたりする等、様々な公知技術を利用できる。
【0037】
正転ナット脱落防止モード及び逆転ナット脱落防止モードにおけるナット等の脱落を防止する方法としては、予め設定された打撃動作により緩め作業を行ったことを検知すると、モータ3を停止させる。具体的には、打撃が行われなくなると(打撃が終了すると)トリガスイッチ6の操作量が一定でもモータ3の出力を低下させる等、様々な公知技術を利用できる。打撃終了からモータ3の出力低下までの間に、待ち時間を設けてもよい。
【0038】
演算部42は、モータ電流に基づいて打撃の有無、打撃の開始や終了を検出する。演算部42は、例えばモータ電流が打撃判定閾値以上か否かにより打撃の有無を検出する。正転締め過ぎ防止モード及び逆転締め過ぎ防止モードにおける打撃判定閾値は、互いに共通の第1閾値である。正転ナット脱落防止モード及び逆転ナット脱落防止モードにおける打撃判定閾値は、互いに共通の第2閾値である。第2閾値は、第1閾値と異なってもよく、例えば第1閾値より小さくてもよい。演算部42は、後述の報知動作の有無を除き、いずれの駆動モードにおいても、無負荷状態ではモータ3を同様に駆動する。
【0039】
演算部42が実行する駆動モードは、回転指示方向と、モード切替スイッチ21による駆動モードの選択と、によって決定される。以下、作業機1における駆動モードの選択(決定)とモード表示LED22、23の点灯に関する制御例を説明する。
【0040】
(第1制御例)
図4は、作業機1のモード選択の第1制御例における各モードに対応したモード表示LED22、23の点灯状態説明図である。
図5は、第1制御例における各モード、正逆切替レバー13の回転指示方向、及びアンビル10の回転方向、並びにそれらに対応した締め過ぎ防止機能とナット脱落防止機能の有効、無効の対応関係をまとめた表である。
【0041】
第1制御例では、モード切替スイッチ21により、以下のモードを択一的に選択する。
【0042】
・通常モード…回転指示方向が正転のときは正転通常モードとなり、回転指示方向が逆転のときは逆転通常モードとなるモードであり、締め過ぎ防止機能とナット等の脱落防止機能が共に無効なモード。
【0043】
・オートストップモード…正転で締め付け作業を行い、かつ逆転で緩め作業を行う正ねじモードであって、回転指示方向が正転のときは正転締め過ぎ防止モードとなって締め過ぎ防止機能が有効となり、回転指示方向が逆転のときは逆転ナット脱落防止モードとなってナット等の脱落防止機能が有効となるモード。
【0044】
・オートストップ逆ねじモード…正転で緩め作業を行い、かつ逆転で締め付け作業を行う逆ねじモードであって、回転指示方向が逆転のときは逆転締め過ぎ防止モードとなって締め過ぎ防止機能が有効となり、回転指示方向が正転のときは正転ナット脱落防止モードとなってナット等の脱落防止機能が有効となるモード。
【0045】
演算部42は、通常モードではモード表示LED22、23をいずれも消灯する。演算部42は、オートストップモードでは、モード表示LED22を点灯し、モード表示LED23を消灯する。演算部42は、オートストップ逆ねじモードでは、モード表示LED22、23をいずれも点灯する。演算部42は、モード表示LED22の点灯(連続点灯)と点滅(断続点灯)によりオートストップモードとオートストップ逆ねじモードとを区別して報知してもよい。また、モード表示LED22は、異なる2色で点灯可能であってもよく、この場合、演算部42は、モード表示LED22の点灯色によりオートストップモードとオートストップ逆ねじモードとを区別して報知してもよい。
【0046】
第1制御例では、ボルトやナット等の相手材(締め付け対象)が正ねじの場合はモード切替スイッチ21によりオートストップモードを選択し、相手材が逆ねじの場合はモード切替スイッチ21によりオートストップ逆ねじモードを選択すればよい。これにより、正ねじの場合でも逆ねじの場合でも、締め過ぎ防止機能とナット脱落防止機能によるメリットを享受でき、作業性が良い。
【0047】
(第2制御例)
図6は、作業機1のモード選択の第2制御例における各モードに対応したモード表示LED22、23の点灯状態説明図である。
図7は、第2制御例における各モード、正逆切替レバー13の回転指示方向、及びアンビル10の回転方向、並びにそれらに対応した締め過ぎ防止機能とナット脱落防止機能の有効、無効の対応関係をまとめた表である。
【0048】
第2制御例では、モード切替スイッチ21により、以下のモードを択一的に選択する。
【0049】
・通常モード…第1制御例の通常モードと同様のモード。
【0050】
・締め過ぎ防止モード…正転及び逆転の双方で締め付け作業を行う締め付けモードであって、回転指示方向が正転のときは正転締め過ぎ防止モードとなり、回転指示方向が逆転のときは逆転締め過ぎ防止モードとなるモード(回転指示方向が正転でも逆転でも締め過ぎ防止機能が有効となるモード)。
【0051】
・ナット脱落防止モード…正転及び逆転の双方で緩め作業を行う緩めモードであって、回転指示方向が正転のときは正転ナット脱落防止モードとなり、回転指示方向が逆転のときは逆転ナット脱落防止モードとなるモード(回転指示方向が正転でも逆転でもナット等の脱落防止機能が有効となるモード)。
【0052】
演算部42は、通常モードではモード表示LED22、23をいずれも消灯する。演算部42は、締め過ぎ防止モードでは、モード表示LED22を点灯し、モード表示LED23を消灯する。演算部42は、ナット脱落防止モードでは、モード表示LED22を消灯し、モード表示LED23を点灯する。演算部42は、モード表示LED22の点灯(連続点灯)と点滅(断続点灯)により締め過ぎ防止モードとナット脱落防止モードとを区別して報知してもよい。また、モード表示LED22は、異なる2色で点灯可能であってもよく、この場合、演算部42は、モード表示LED22の点灯色により締め過ぎ防止モードとナット脱落防止モードとを区別して報知してもよい。
【0053】
第2制御例では、相手材が正ねじか逆ねじかを問わず締め付け作業を行う場合は締め過ぎ防止モードを選択し、相手材が正ねじか逆ねじかを問わず緩め作業を行う場合はナット脱落防止モードを選択すればよい。これにより、相手材が正ねじ及び逆ねじの一方から他方に替わっても締め過ぎ防止機能とナット脱落防止機能のうち選択した一方のメリットを享受でき、作業性が良い。
【0054】
(第3制御例)
図8~
図13は、作業機1のモード選択の第3制御例に関する。第3制御例は、第2制御例と異なり、回転指示方向が正転及び逆転の一方であるときのモード切替スイッチ21による選択(モード切替スイッチ21の操作)が、回転指示方向が正転及び逆転の他方であるときの駆動モードに影響しない点である。
【0055】
すなわち、第2制御例では、現在の回転指示方向に関わらず、回転指示方向が正転の場合と逆転の場合の双方について、通常モード、締め過ぎ防止モード、ナット脱落防止モードのいずれかをモード切替スイッチ21により一括的に選択した。これに対し第3制御例では、現在の回転指示方向のみについて、通常モード、締め過ぎ防止モード、ナット脱落防止モードのいずれかをモード切替スイッチ21により個別に選択する。
【0056】
図8に示すように、演算部42は、通常モードではモード表示LED22、23をいずれも消灯する。演算部42は、締め過ぎ防止モードでは、モード表示LED22を点灯し、モード表示LED23を消灯する。演算部42は、ナット脱落防止モードでは、モード表示LED22を点滅し、モード表示LED23を消灯する。演算部42は、モード表示LED23を、外部機器のアプリケーションによりカスタムされた動作モード(アプリモード)の場合に点灯してもよい。なお、演算部42は、第3制御例においても、
図6の第2制御例と同様にモード表示LED22、23を制御してもよい。
【0057】
図9に示すように、正逆切替レバー13の操作により、正転と逆転のどちらについてのモード設定を行うかが切り替えられる。そして正逆切替レバー13の操作により選択された正転と逆転の一方について、モード切替スイッチ21により駆動モードが選択される。
【0058】
図10に示すように、正逆切替レバー13により逆転から正転に切り替えられると、演算部42は、逆転については最後に選択されていた駆動モード(図示の例では締め過ぎ防止モード)を、回転指示方向が逆転に戻ったときの最初の駆動モードとするために保持する。そして演算部42は、モード切替スイッチ21が操作される度に、正転について、締め過ぎ防止モード、ナット脱落防止モード、通常モード、締め過ぎ防止モード、・・・と順に駆動モードを切り替える。なお、正逆切替レバー13により逆転から正転に切り替えられた場合において演算部42は、逆転について、最後に選択されていた駆動モードを保持することに替えて、ナット脱落防止モード、締め過ぎ防止モード、通常モードのうち予め設定された初期モードにリセットしてもよい。
【0059】
図11に示すように、正逆切替レバー13により正転から逆転に切り替えられると、演算部42は、正転については最後に選択されていた駆動モード(図示の例では締め過ぎ防止モード)を、回転指示方向が正転に戻ったときの最初の駆動モードとするために保持する。そして演算部42は、モード切替スイッチ21が操作される度に、逆転について、ナット脱落防止モード、締め過ぎ防止モード、通常モード、ナット脱落防止モード、・・・と順に駆動モードを切り替える。なお、正逆切替レバー13により正転から逆転に切り替えられた場合において演算部42は、正転について、最後に選択されていた駆動モードを保持することに替えて、締め過ぎ防止モード、ナット脱落防止モード、通常モードのうち予め設定された初期モードにリセットしてもよい。
【0060】
図12に示すように、回転指示方向が正転の場合、締め過ぎ防止モードでは正ねじに対する締め付け防止機能が有効となり、ナット脱落防止モードでは逆ねじに対するナット等の脱落防止機能が有効となり、通常モードではいずれの防止機能も無効となる。回転指示方向が逆転の場合、ナット脱落防止モードでは正ねじに対するナット等の脱落防止機能が有効となり、締め過ぎ防止モードでは逆ねじに対する締め付け防止機能が有効となり、通常モードではいずれの防止機能も無効となる。
【0061】
図13は、第3制御例のフローチャートである。演算部42は、回転指示方向が正転の場合(S1のYES)、現在の正転設定を呼び出す(S2)。演算部42は、モード切替スイッチ21が押されると(S3のYES)、正転の駆動モードを切り替え(S4)、正転の設定を更新し(S5)、S1に戻る。演算部42は、モード切替スイッチ21が押されない場合(S3のNO)、S1に戻る。
【0062】
演算部42は、回転指示方向が正転でない場合(S1のNO)、現在の逆転設定を呼び出す(S6)。演算部42は、モード切替スイッチ21が押されると(S7のYES)、逆転の駆動モードを切り替え(S8)、逆転の設定を更新し(S9)、S1に戻る。演算部42は、モード切替スイッチ21が押されない場合(S7のNO)、S1に戻る。
【0063】
第3制御例では、正転の場合の駆動モードと逆転の場合の駆動モードとは、互いに独立しており個別に選択できるため、正転と逆転とで駆動モードを切り分けたい場合に便利である。
【0064】
第3制御例において、演算部42は、正逆切替レバー13での回転方向の選択が変更された場合、モード切替スイッチ21による駆動モードの選択が行われるまでは、トリガスイッチ6がオンされても(トリガスイッチ6にモータ駆動操作が行われても)モータ3を駆動しない構成としてもよい。これによれば、意図しない駆動モードでの作業となることを抑制できる。
【0065】
(モータ起動態様によるモード報知)
図14~
図19は、モータ3の起動態様によるユーザへの駆動モードの報知に関する。前述のとおりユーザは、モード表示LED22、23により現在の駆動モードを確認できる。しかし、モード表示LED22、23を見なければ駆動モードを確認できない構成では、モード確認の作業が煩雑で、使い勝手が悪いと感じることがあった。また、機能が複雑化すると様々な表示が混在することも想定され、表示が分かりにくくなることも想定される。
【0066】
演算部42は、通常モード以外の場合にモータ3の起動の際に報知動作を行うことで、ユーザへの駆動モードの報知を行う。具体的には演算部42は、通常モード以外の場合、トリガスイッチ6に対する1回のオン操作(モータ駆動操作)の間に、当該オン操作により駆動開始したモータ3を、一時的に停止又は減速させた後、再駆動又は再加速させ、作業者が作業に応じて設定した作業制御へ移行する。トリガスイッチ6に対する1回のオン操作の間に報知動作を行う制御は報知制御であり、報知動作を行わない制御は通常制御である。なお、報知動作を実行している最中は、ハンマ8によるアンビル10の打撃は行われない。
【0067】
演算部42は、通常モードの場合、モータ3の起動の際に報知動作を行わない。具体的には演算部42は、通常モードの場合、トリガスイッチ6に対する1回のオン操作の間に、当該オン操作により駆動開始したモータ3を、一時的に停止及び減速させずに駆動する。すなわち、演算部42は、モード切替スイッチ21で通常モード以外の駆動モードが選択されていることを、報知動作の実行に必要な条件とする。以下、報知動作の4つのパターンを説明する。
【0068】
図14~
図17に示すいずれのパターンにおいても、報知動作は、トリガスイッチ6がオンとなる時刻t1から時刻t5までの報知動作期間内に行われる。報知動作期間の長さは、特に限定されないが、例えば0.2秒であり、作業効率の観点から0.5秒以下とすることが好ましい。報知動作期間の後は、演算部42は、モータ3を通常駆動する。通常駆動は、トリガスイッチ6の操作量に応じたモータ3の駆動制御である。
【0069】
図14に示すパターン1は、報知動作期間の間におけるモータ3の起動→停止による報知動作が1回の例である。
図15に示すパターン2は、報知動作期間の間におけるモータ3の起動→停止による報知動作が2回の例である。
図16に示すパターン3は、パターン2における2回目の報知動作でのモータ3の起動方向を逆転とした例である。
図17に示すパターン4は、パターン1において、報知動作期間中(時刻t5以前)は、報知動作期間後(時刻t5以降)と比較して、モータ3の回転数を緩やかに上昇させるようにした例である。
【0070】
パターン1~4のいずれにおいても、演算部42は、モータ3をトリガスイッチ6の操作量に応じて制御する。すなわち、トリガスイッチ6の操作量が大きいほど、報知動作におけるモータ回転数が高くなり、また報知動作の後のモータ回転数も高くなる。演算部42は、報知動作におけるモータ3の停止時は、ブレーキ制御により、モータ3を迅速に停止させる。演算部42は、ブレーキ制御では、例えば、スイッチング素子Q1~Q3をオフとし、スイッチング素子Q4~Q6の少なくとも1つをオンとし、モータ3に電気的なブレーキ力(制動力)をかける。
【0071】
パターン1~4のいずれにおいても、報知動作は、モータの起動→停止に限定されず、例えばモータの起動→減速(不停止)であってもよい。報知動作の回数は、1~2回に限定されず、3回以上であってもよい。パターン1~4は、回転指示方向が正転の場合に対応するものである。回転指示方向が逆転の場合は、パターン1~4において正転と逆転の関係を反転させればよい。
【0072】
演算部42は、駆動モードに応じて、報知動作のパターンを変更してもよい。例えば、オートストップモード(正転締め過ぎ防止モード又は逆転ナット脱落防止モード)のときはパターン1、2の一方とし、オートストップ逆ねじモード(逆転締め過ぎ防止モード又は正転ナット脱落防止モード)のときはパターン1、2の他方としてもよい。あるいは、締め過ぎ防止モード(正転締め過ぎ防止モード又は逆転締め過ぎ防止モード)のときはパターン1、2の一方とし、ナット脱落防止モード(正転ナット脱落防止モード又は逆転ナット脱落防止モード)のときはパターン1、2の他方としてもよい。
【0073】
図18は、作業機1の、駆動モード決定後の動作のフローチャートである。演算部42は、トリガスイッチ6がオンの場合(S11のYes)、駆動モードの確認(S12)に進む。演算部42は、駆動モードが通常モードでない場合(S12のNo)において、モータ3が起動していない場合(S13のNo)、報知動作を実行し(S16)、その後モータ3を通常駆動する(S17)。演算部42は、S13においてモータ3が起動している場合(S13のYes)、通常駆動を行う(S17)。演算部42は、S12で駆動モードが通常モードの場合(S12のYes)、報知動作を行わずに通常駆動を行う(S17)。演算部42は、トリガスイッチ6がオフの場合(S11のNo)、モータ3を停止する(S18)。
【0074】
図19(A)は、
図18において無負荷状態または軽負荷状態の場合に限定して報知動作を行う場合のフローチャートの一部を示す。演算部42は、S13のNoに進んだ後、モータ3にかかる負荷を確認する(S14)。演算部42は、無負荷状態又は軽負荷状態であれば(S14のYes)、報知動作を実行し(S16)、その後モータ3を通常駆動する(S17)。演算部42は、無負荷状態又は軽負荷状態でなければ(S14のNo)、報知動作を行わずに通常駆動を行う(S17)。無負荷状態又は軽負荷状態であることを報知動作の実行に必要な条件とすることで、追い締め(増し締め)等の際に報知動作が行われなくなり、作業性が良い。
【0075】
演算部42は、モータ3にかかる負荷により、アンビル10に装着された先端工具がボルトやナット等の相手材と接触しているか否かを検出し、先端工具が相手材と非接触であることを報知動作の実行に必要な条件としてもよい。演算部42は、アンビル10に装着された先端工具を検出し、先端工具が第1先端工具としてのソケットであることを報知動作の実行に必要な条件としてもよい。演算部42は、先端工具が第2先端工具としてのビットである場合は報知動作を行わなくてもよい。先端工具の判別は、無負荷状態でのモータ電流に基づいてもよい。あるいは、先端工具に設けた識別用の磁石の発生する磁界を検出する磁気センサを設け、演算部42は、この磁気センサの出力信号を基に先端工具を判別してもよい。
【0076】
図19(B)は、
図18において一度報知動作を行ってから所定時間は報知動作を行わない場合のフローチャートの一部を示す。演算部42は、S13のNoに進んだ後、過去2分間で報知動作(S16)を行っていないか、すなわち前回の報知動作からの経過時間が2分間を超えているかを確認する(S15)。演算部42は、過去2分間で報知動作(S16)を行っていない場合、すなわち前回の報知動作からの経過時間が2分間を超えている場合(S15のYes)、報知動作を実行し(S16)、その後モータ3を通常駆動する(S17)。演算部42は、過去2分間で報知動作(S16)を行っている場合、すなわち前回の報知動作からの経過時間が2分間を超えていない場合(S15のNo)、報知動作を行わずに通常駆動を行う(S17)。
【0077】
前回の報知動作から所定時間が経過していることを報知動作の実行に必要な条件とすることで、トリガスイッチ6のオンオフを繰り返す場合に初回より後は所定時間報知動作が行われなくなり、作業性が良い。所定時間は、2分間に限定されず、任意でよい。回転指示方向の変更や駆動モードの変更があった場合で変更後に報知動作が行われていない場合は、前回の報知動作からの経過時間に関わらず報知動作を行うようにしてもよい。演算部42は、前回の報知動作の後、トリガスイッチ6のオン操作が無い期間が所定時間継続していることを、報知動作の実行に必要な条件としてもよい。この場合、所定時間以内のインターバルでトリガスイッチ6のオンオフを繰り返す場合に、初回より後は報知動作が行われなくなり、作業性が良い。
【0078】
図19(A),(B)における報知動作実行の条件は、互いに組み合わせてもよい。すなわち、演算部42は、無負荷状態又は軽負荷状態であること及び前回の報知動作から所定時間が経過していることを、報知動作の実行に必要な条件としてもよい。
【0079】
演算部42は、トリガスイッチ6の操作量が所定操作量以上であることを、報知動作の実行に必要な条件としてもよい。この場合、ユーザがトリガスイッチ6を少しだけ引いて自分の操作加減で締付トルクを調整しようとしている場合に報知動作が行われなくなり、作業性がよい。これとは逆に、演算部42は、トリガスイッチ6の操作量によらずに報知動作の実行可能に構成されてもよい。この場合、例えばユーザが駆動モード確認のために先端工具を相手材に接触させずにトリガスイッチ6を僅かに引いた場合にも報知動作が可能となり、作業性が良い。
【0080】
本実施の形態によれば、下記の効果を奏することができる。
【0081】
(1) 逆ねじを用いる作業においても締め過ぎ防止機能とナット等の脱落防止機能があるため、作業性が良い。
【0082】
(2) 演算部42は、駆動モードが通常モード以外の場合、トリガスイッチ6のオン操作の後にモータ3の起動→停止又は減速、という報知動作を実行してからモータ3を通常駆動する。このため、ユーザは、モード表示LED22、23の点灯状態を確認しなくても駆動モードが通常モードか否かを知ることができ、使い勝手が良い。通常モード以外の駆動モードが本発明における第1の駆動モードに該当し、通常モードが本発明における第2の駆動モードに該当する。また、第1の駆動モードで行う作業が本発明における第1の作業に該当し、第1の作業時に行う制御が第1の作業制御に該当する。また、第2の駆動モードで行う作業が本発明における第2の作業に該当し、第2の作業時に行う制御が第2の作業制御に該当する。
【0083】
以上、実施の形態を例に本発明を説明したが、実施の形態の各構成要素や各処理プロセスには請求項に記載の範囲で種々の変形が可能であることは当業者に理解されるところである。例えば、本発明の作業機は、電池パックの電力で動作するコードレスタイプに限定されず、外部交流電源からの電力で動作するコード付きタイプであってもよい。
【符号の説明】
【0084】
1…作業機、2…ハウジング、2a…胴体部、2b…ハンドル部、2c…バッテリ着脱部、3…モータ、3a…モータ軸、4…減速機構、5…スピンドル、6…トリガスイッチ(操作部)、7…電池パック、8…ハンマ、9…スプリング、10…アンビル(先端工具装着部)、11…ハンマケース、12…フロントキャップ(保護部材)、13…正逆切替レバー(回転方向切替部)、14…温度センサ、15…センサ・インバータ基板、20…操作パネル(スイッチパネル)、21…モード切替スイッチ(モード選択部)、22、23…モード表示LED、25…強弱切替スイッチ、26…強弱表示LED、30…制御基板、31…電流検出回路、32…電圧検出回路、33…スイッチ操作検出回路、34…回転方向設定回路、35…温度検出回路、36…制御電源回路、37…制御信号出力回路、38…回転位置検出回路、39…回転数検出回路、40…モード設定検出回路、41…強弱設定検出回路、42…演算部(制御部)、43…ホールIC(磁気センサ)、45…インバータ回路。