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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023072243
(43)【公開日】2023-05-24
(54)【発明の名称】ヒータコントローラおよび制御方法
(51)【国際特許分類】
   F24D 13/02 20060101AFI20230517BHJP
【FI】
F24D13/02 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021184660
(22)【出願日】2021-11-12
(71)【出願人】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 慎太郎
【テーマコード(参考)】
3L072
【Fターム(参考)】
3L072AA01
3L072AB03
3L072AC02
3L072AE10
3L072AG02
(57)【要約】
【課題】設置される地域や床下地の断熱条件の相違に対応した能力の発熱源の各種取り揃えや選定が不要となり、通電率の上下限値を任意の値に初期設定するだけで、設置環境や使用者の嗜好に応じた柔軟な温度調節が可能なヒータコントローラおよび制御方法を提供する。
【解決手段】暖房器具の温度調節を行うヒータコントローラ1であって、暖房器具のヒータ10に対する通電率を制御する制御部210と、ヒータ10に電源を供給する電源基板22と、制御部210を操作する操作部3と、その操作内容を表示する表示部4と、を備え、制御部210は、ヒータ10に対して通電する単位時間Tを初期値として任意に設定し、単位時間T当たりの通電率の下限値R1を初期値として任意に設定し、単位時間当たりの通電率の上限値R5を初期値として任意に設定可能である。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも暖房器具の温度調節を行うヒータコントローラであって、
前記暖房器具の発熱源に対する通電率を制御する通電率制御部と、
前記通電率制御部による制御に応じて前記発熱源に電源を供給する電源制御部と、
前記通電率制御部を操作する操作部と、
少なくとも前記操作部による前記通電率制御部の操作内容を表示する表示部と、を備え、
前記通電率制御部は、
前記発熱源に対して通電する単位時間を初期値として任意に設定し、
前記設定された前記単位時間当たりの前記通電率の下限値を初期値として任意に設定し、
前記設定された前記単位時間当たりの前記通電率の上限値を初期値として任意に設定可能であることを特徴とするヒータコントローラ。
【請求項2】
前記暖房器具の設置後における実稼働時の温度調節において、
前記通電率制御部は、
前記初期値として設定された前記通電率の上限値および下限値の間で前記発熱源の能力を均等分割し、前記通電率を段階的に調整可能とする、請求項1に記載のヒータコントローラ。
【請求項3】
前記通電率制御部は、
前記初期値として設定された前記単位時間に基づいて、前記発熱源に対する通電をON-OFF制御する、請求項1または2に記載のヒータコントローラ。
【請求項4】
前記単位時間が3分~15分の範囲である、請求項1~3のいずれか一項に記載のヒータコントローラ。
【請求項5】
前記通電率の下限値が5.0%~40.0%の範囲である、請求項1~4のいずれか一項に記載のヒータコントローラ。
【請求項6】
前記通電率の上限値が50.0%~100.0%の範囲である、請求項1~5のいずれか一項に記載のヒータコントローラ。
【請求項7】
暖房器具の発熱源に対する通電率を制御する通電率制御部と、前記通電率制御部による制御に応じて前記発熱源に電源を供給する電源制御部と、前記通電率制御部を操作する操作部と、を備えるヒータコントローラにより、前記暖房器具の温度調節を制御する制御方法であって、
前記通電率制御部は、
前記操作部を介して入力される任意の値で、前記発熱源に対して通電する単位時間と、当該単位時間当たりの前記通電率の下限値と、前記単位時間当たりの前記通電率の上限値と、をそれぞれ初期設定し、
前記初期設定された前記通電率の上限値および下限値の間で前記発熱源の能力を均等分割し、
前記初期値として設定された前記単位時間と、前記均等分割された通電率と、に基づいて、前記発熱源に対する通電を制御することを特徴とする制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒータコントローラおよび制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
室内用パネルヒータや床暖房等の暖房器具では、当該暖房器具の発熱源(線ヒータなど)に対する通電率をヒータコントローラによって制御して温度調節を行っている。このようなヒータコントローラを備えた暖房器具では、線ヒータが同じ暖房(ヒータ)能力であっても暖房器具の設置環境によって、温まり方と非通電時の冷め方に相違が生じる。そのため、電気式床暖房システムとして、加熱エリアの特定、給電の開始と停止、床暖房レベルの選択とそれに対応した電力の線ヒータへの供給、異常の検知等の機能を有する他、多段階(高・中・低)の暖房レベルに対応する通電率を記憶した通電率テーブルを複数備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
かかる特許文献1に記載の電気式床暖房システムでは、設置する床下地条件(床下地の断熱条件)にあった通電率テーブルを選択することで、設置環境によって床下地の断熱条件が異なっている場合でも線ヒータを変えることなく、コントローラ側の設定を変えるだけで、ほぼ同じような床(室内)暖房状態を得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4526439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載の電気式床暖房システムでは、設置される床下地の断熱条件に応じた通電率テーブルを初期設定時に選択し、通常運転時においては初期設定時に選択した通電率テーブルに記憶されている最大・最小レベルに応じた通電率で運転する。
【0006】
しかしながら、かかる電気式床暖房システムでは、複数の通電率テーブルが暖房レベルとして予め定められた多段階に応じた数のみ用意されるため、対応可能な暖房レベルに限りがあった。そのため、同じ暖房(ヒータ)能力であっても設置される使用環境(地域・床下地の断熱条件(新築、リフォーム、または床面の材質等))、使用者(老若男女)の嗜好の相違等により生じる温まり方・感じ方の相違に、柔軟に対応することが困難であった。
【0007】
そこで、本発明は、発熱源に対する通電率の上下限値を任意の値に初期設定するだけで、ヒータ出力を微調整でき、設置環境や使用者の嗜好に応じた柔軟な温度調節が可能なヒータコントローラおよび制御方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のヒータコントローラは、少なくとも暖房器具の温度調節を行うヒータコントローラであって、前記暖房器具の発熱源に対する通電率を制御する通電率制御部と、前記通電率制御部による制御に応じて前記発熱源に電源を供給する電源制御部と、前記通電率制御部を操作する操作部と、少なくとも前記操作部による前記通電率制御部の操作内容を表示する表示部と、を備え、前記通電率制御部は、前記発熱源に対して通電する単位時間を初期値として任意に設定し、前記設定された前記単位時間当たりの前記通電率の下限値を初期値として任意に設定し、前記設定された前記単位時間当たりの前記通電率の上限値を初期値として任意に設定可能であることを特徴とする。
【0009】
このように、本発明によれば、施工(設置)時の初期設定において、発熱源に対する基本通電時間としての単位時間および単位時間当りの通電率の上下限値を任意の値で初期値として設定可能なので、様々な使用環境に応じてヒータ出力を微調整でき、暖房器具が設置される地域や床下地の断熱条件の相違に対応した能力の発熱源の各種取り揃えや選定が不要となり、コントローラによる初期設定のみで様々な使用環境に柔軟に対応できる。
【0010】
この際、前記暖房器具の設置後における実稼働時の温度調節において、前記通電率制御部は、初期値として設定された前記通電率の上限値および下限値の間で前記発熱源の能力を均等分割し、前記通電率を段階的に調整可能とすることが好ましい。
【0011】
この構成によれば、暖房器具の設置後における実稼働時の温度調節において、初期値として設定された通電率の上限値および下限値の間で、発熱源の能力を均等分割することで、通電率を段階的に調整可能とするため、ヒータ出力を様々な使用環境や使用者の嗜好に応じて微調整でき、段階的な温度調節が可能となる。
【0012】
また、前記通電率制御部は、初期値として設定された前記単位時間に基づいて、前記発熱源に対する通電をON-OFF制御することが好ましい。なお、前記単位時間が3分~15分の範囲であり、前記通電率の下限値が5.0%~40.0%の範囲であり、前記通電率の上限値が50.0%~100.0%の範囲であることが好ましい。これらの構成によれば、前述した効果に加えて、暖房器具における設置環境や使用者の嗜好に応じた柔軟な温度調節を容易に実施できる。
【0013】
また、本発明の制御方法は、暖房器具の発熱源に対する通電率を制御する通電率制御部と、前記通電率制御部による制御に応じて前記発熱源に電源を供給する電源制御部と、前記通電率制御部を操作する操作部と、を備えるヒータコントローラにより、前記暖房器具の温度調節を制御する制御方法であって、前記通電率制御部は、前記操作部を介して入力される任意の値で、前記発熱源に対して通電する単位時間と、当該単位時間当たりの前記通電率の下限値と、前記単位時間当たりの前記通電率の上限値と、をそれぞれ初期設定し、前記初期設定された前記通電率の上限値および下限値の間で前記発熱源の能力を均等分割し、前記初期値として設定された前記単位時間と、前記均等分割された通電率と、に基づいて、前記発熱源に対する通電を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明のヒータコントローラおよび制御方法によれば、通電率の上下限値を任意の値に初期設定するだけで、様々な使用環境に応じてヒータ出力を微調整でき、段階的な温度調節が可能となる。よって、設置される地域や床下地の断熱条件の相違に対応した能力の発熱源の各種取り揃えや選定が不要となり、設置環境や使用者の嗜好に応じた柔軟な温度調節が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態に係るヒータコントローラの外観図である。
図2図1のヒータコントローラにおける表示部の拡大図である。
図3】実施形態に係るヒータコントローラの構成を示すブロック図である。
図4】実施形態に係る通電率の上下限値の説明に供する表である。
図5】実施形態に係るヒータコントローラの1サイクル当たりの通電率制御の説明図である。
図6】他の実施形態に係る通電率の上下限値の説明に供する表である。
図7】他の実施形態に係るヒータコントローラの1サイクル当たりの通電率制御の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態に係るヒータコントローラについて図1図5を参照しながら説明する。図1は実施形態に係るヒータコントローラ1の外観図であり、図2図1のヒータコントローラ1における表示部10の拡大図であり、図3は実施形態に係るヒータコントローラ1の構成を示すブロック図である。また、図4は実施形態に係る通電率の上下限値の説明に供する表であり、図5は実施形態に係るヒータコントローラ1の1サイクル当たりの通電率制御の説明図である。
【0017】
図1および図2に示すように、本実施形態のヒータコントローラ1は、暖房器具としての例えば電気式床暖房システム(不図示)に用いられる。なお、本実施の形態において、暖房器具としての電気式床暖房システムは、加熱エリアとして例えば、キッチンとリビング等との2カ所の床面(2面)の暖房を行う場合について述べるが、床暖房する加熱エリアは1面であってもよいし、3面以上の複数面であってもよい。また、以下では、ヒータコントローラ1がリビングに設置されるものとし、リビングの加熱エリアをA面、キッチンの加熱エリアをB面として説明するが、本発明はこの限りではない。
【0018】
ヒータコントローラ1は、本体部2と、本体部2に設けられる操作部3と、操作部3による操作に応じた内容などを表示する表示部4と、を備えている。なお、表示部4または表示部4の近傍には、図1に示すように、電気式床暖房システムの運転/停止の状態を表示する運転ランプ5が設けられていることが好ましい。この運転ランプ5は、点灯していると電気式床暖房システムの運転状態を示し、消灯していると電気式床暖房システムの停止状態を示す。
【0019】
また、本体部2には、当該本体部2が設置された加熱エリアA面の温度を計測する温度センサ6が設けられていてもよい。この温度センサ6は、ヒータコントローラ1が設置された加熱エリアA面の温度計測用であり、本体部2の前面に搭載される。なお、温度センサ6は、加熱エリアA面の温度をセンシングして表示部4に表示することで、ユーザーが目安として現在温度を確認するために使用するもので、暖房制御には使用しないものとする。また、本実施の形態の場合、温度センサ6として後述するサーミスタが用いられている。この場合、本体部2には、温度センサ6の温度検出用に空気の対流を促すためのスリット状の通気孔7を備えている。
【0020】
本実施の形態の場合、操作部3は、電気式床暖房システムの運転/停止を操作する起動ボタン31と、設定温度や時間設定等の調節を操作する調節ボタン32と、各種タイマをセットするタイマボタン33と、各種設定を行う設定ボタン34と、を有している。
【0021】
表示部4は、図2に拡大して示すように、現在温度、設定温度および暖房の強弱や、現在時刻、運転/停止の設定時刻、ヒータの稼働状態(ヒータON)、曜日、入タイマ、切タイマ、週間タイマ、加熱エリア(A面、B面)、各種運転条件の設定を登録した際の登録番号、および保守点検の実行の有無等の状態を表示する。また、表示部4は、液晶などの表示装置によって構成され、電気式床暖房システムの運転状態や、操作部3の各種ボタンの操作に応じた後述する各種設定および設定変更などの様々な項目を表示する。
【0022】
ここで、ヒータコントローラ1は、図3に示すように、本体部2に前述した操作部3、表示部4、および、温度センサ6を備えている。また、本体部2は、暖房器具の運転を司る通電率制御部であるCPU(Central Processing Unit)としての制御部210を実装するCPU基板21と、電源基板22と、を内蔵している。
【0023】
制御部210は、マイコンなどで構成され、各種情報によりヒータコントローラ1の動作を制御する。この制御部210は、各種設定値およびログ(例えば、リレーON/OFF回数)などの運転条件を記憶する記憶部211と、入タイマ、切タイマや週間タイマに使用するクロック212と、を備えてなる。本実施の形態の場合、記憶部211は、フラッシュメモリなどの不揮発性メモリで構成されている。
【0024】
また、CPU基板21は、マイコン供給電源保持用の電池213を備えている。これは、クロック212がマイコン内蔵クロックであり、マイコンが停止した場合、クロックがリセットすることから、停電などのマイコン停止時においてもクロックを保持するため、電池213を備えている。なお、電池213は、充電式のものが好ましく、満充電でおおよそ24時間の供給電源保持が可能なものが望ましい。
【0025】
電源基板22は、電気式床暖房システムの発熱源であるヒータ10に対する電源供給を制御するものであり、リレー221と、温度センサ用コネクタ222と、スイッチング電源223と、を備えている。
【0026】
本実施の形態の場合、電源基板22は、加熱エリアA面、B面の2カ所にそれぞれ設置されるヒータ10に対応して2回路分のリレー221を備えている。リレー221は、ヒータ10に対する電力の供給をON/OFFを制御する。なお、ヒータ10およびリレー221は、加熱エリアの数に応じて設けられる。
【0027】
温度センサ用コネクタ222には、本体部2から離れた加熱エリアB面の温度計測用のサーミスタ11が接続される。サーミスタ11は、温度変化に対して電気抵抗の変化が大きい抵抗体であり、この現象を利用して加熱エリアB面の温度を測定するセンサとして利用される。なお、サーミスタ11は、一般的に、-50℃~150℃程度までの測定に用いられる。また、サーミスタ11は温度センサ6と同じく、加熱エリアB面の温度をセンシングして表示部4に表示することで、ユーザーが目安として現在温度を確認するために使用するもので、暖房制御には使用しないものとする。
【0028】
スイッチング電源223は、一般的なもので、高効率で電力を変換するスイッチングレギュレータを組み込んだ電源装置である。スイッチング電源223は、入力電力から電力変換装置(不図示)を用いて出力電力を得る過程で、スイッチング素子(不図示)が電力の変換や調整を行うものであり、本実施の形態の場合、AC85V~264Vに対応する。
【0029】
以上の構成の本体部2を備えたヒータコントローラ1では、電気式床暖房システムを設置する施工時の初期段階において、以下のような制御方法(すなわち、操作部3の操作による制御部210の制御)により、基本通電時間(単位時間)および単位時間当たりの通電率の上下限値を初期値として任意の値に設定できるようになっている。
【0030】
すなわち、本実施の形態では、本体部2における操作部3の各種ボタンを、以下のように操作することで、通電率の上下限値を任意の値に初期設定することが可能となっている。まず、設定ボタン34と調節ボタン32の上昇側とを同時に3秒間長押しすることで通電率設定画面に移行する。次に、調節ボタン32の上昇側と下降側とを操作することで単位時間Tを変更し、任意の値に設定する。次いで、設定ボタン34を操作することで次項目「通電率R1」へ移行する。次に、調節ボタン32の上昇側と下降側とを操作することで通電率R1を変更し、任意の値に設定する。次に、設定ボタン34を操作することで次項目「通電率R5」へ移行する。次に、調節ボタン32の上昇側と下降側とを操作することで通電率R5を変更し、任意の値に設定する。そして、設定ボタン34を操作することで先頭の「基本通電時間T」へ移行する。この場合、単位時間T、通電率R1、および、通電率R5の3項目いずれの設定画面でも、設定ボタン34を3秒間長押しすることで操作(設定)が確定し、その設定内容が記憶部211に記憶される。
【0031】
なお、本実施の形態では、ユーザーの要望に応じて設定変更可能な単位時間Tが、初期値として5分で設定されているが、3分~15分程度の範囲で任意に設定可能となっている。また、通電率の最小設定としての通電率設定1の通電率R1は、初期値として10.0%で設定されているが、ユーザーの要望に応じて5~40%程度の範囲で任意に設定変更が可能となっている。さらに、通電率の最大設定としての通電率設定5の通電率R5は、初期値として70.0%で設定されているが、ユーザーの要望に応じて50.0%~100.0%程度の範囲で任意に設定変更が可能となっている。そして、これら、単位時間T、通電率R1、通電率R5の可変設定値および図4の表における通電率計算式から通電率R1~R5が設定される。
【0032】
図4に示すように、初期設定として、単位時間Tが5分、加熱温度の最も低い通電率設定1における通電率R1が10.0%、加熱温度の最も強い通電率設定5における通電率R5が70.0%で設定されている。
【0033】
このとき、通電率R4は、次式(1)
R4=R1+(R5-R1)/4×3・・・(1)
によって55.0%であると導き出せる。
【0034】
また、通電率R3は、次式(2)
R3=R1+(R5-R1)/4×2・・・(2)
によって40.0%であると導き出せる。
【0035】
そして、通電率R2は、次式(3)
R2=R1+(R5-R1)/4×1・・・(3)
によって25.0%であると導き出せる。
【0036】
また、これら通電率R1~R5に対応する通電時間t1~t5は、それぞれ次式(4)~(8)
t1=T×R1・・・(4)
t2=T×R2・・・(5)
t3=T×R3・・・(6)
t4=T×R4・・・(7)
t5=T×R5・・・(8)
によって、t1は0.5分、t2は1.25分、t3は2分、t4は2.75分、t5は3.5分であると導き出せる。
【0037】
よって、各通電率設定1~5における通電の休止時間(すなわち、電源OFFの時間)は、図5にも示すように、単位時間Tとして設定された5分から前述のように導き出した通電時間t1~t5を差し引くことで導き出せる。すなわち、加熱温度の最も強い通電率設定5における通電の休止時間は、1.5分、通電率設定4における通電の休止時間は、2.25分、通電率設定3における通電の休止時間は、3分、通電率設定2における通電の休止時間は、3.75分、通電率設定1における通電の休止時間は、4.5分、となることが導き出せる。
【0038】
つまり、n:通電率レベル(通電率設定)、m:分割数(分解能)、R1:通電率下限値、Rmax:通電率上限値、T:基本通電時間、とした場合、通電率Rnは次式(9)から、通電時間tnは次式(10)から導き出せる。ただし、以下のn、mは整数である。
Rn=R1+(Rmax-R1)/(m-1)×n・・・(9)
tn=T×Rn・・・(10)
【0039】
以上、説明したように、本実施の形態に係るヒータコントローラ1およびその制御方法によれば、電気式床暖房システムを設置する施工時の初期段階において、ヒータ10に対する基本通電時間としての単位時間Tおよび単位時間当りの通電率R1~R5の上限値R5、下限値R1を任意の値で初期値として設定可能なので、電気式床暖房システムが設置される地域・断熱条件の相違に応じたヒータ10の能力の各種取り揃えや選定が不要となり、コントローラ1における設定のみで様々な使用環境に柔軟に対応できる。
【0040】
この際、電気式床暖房システムの設置後における実稼働時の温度調節において、制御部210は、初期値として設定された通電率R1~R5の上限値R5、および、下限値R1の間でヒータ10の能力を均等分割し、通電率R1~R5を段階的に調整可能とすることが好ましい。この構成によれば、電気式床暖房システムの設置後における実稼働時の温度調節において、初期値として設定された通電率R1~R5の上限値R5、および、下限値R1の間で、ヒータ10の能力を均等分割することで、通電率R1~R5を段階的に調整可能とするため、ヒータ10の出力を設置環境や使用者の嗜好に応じて微調整でき、段階的な温度調節が可能となる。すなわち、通電率上下限範囲が広ければ1段階当たりの通電率変化量(つまり発熱量)を大きく、通電率上下限範囲が狭ければ1段階当たりの通電率変化量を小さくするといったように、通電率の上下限範囲の広い、狭いに応じて、1段階当たりの通電率変化量、所謂、分解能(発熱量)を変えることができる。
【0041】
また、制御部210は、初期値として設定された単位時間Tに基づいて、ヒータ10に対する通電をスイッチング電源223によってON-OFF制御することが好ましい。なお、単位時間が3分~15分の範囲であり、通電率の下限値が5.0%~40.0%の範囲であり、通電率の上限値が50.0%~100.0%の範囲であることが好ましい。これらの構成によれば、前述した効果に加えて、電気式床暖房システムにおける設置環境や使用者の嗜好に応じた柔軟な温度調節を容易に実施できる。
【0042】
なお、以上に説明した実施形態や変形例は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。かかる変形によってもなお本発明のヒータコントローラの構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。
【0043】
例えば、前述した実施の形態では、初期設定として、単位時間Tが5分、加熱温度の最も低い通電率設定1における通電率R1が10.0%、加熱温度の最も強い通電率設定5における通電率R5が70.0%で設定されている場合について述べたが、他の値を用いて初期設定してもよい。
【0044】
以下、他の実施の形態について、図6および図7を用いて説明する。図6は、他の実施形態に係る通電率の上下限値の説明に供する表であり、図7は、他の実施形態に係るヒータコントローラの1サイクル当たりの通電率制御の説明図である。
【0045】
図6に示すように、初期設定として、単位時間Tが10分、加熱温度の最も低い通電率設定1における通電率R1が50.0%、加熱温度の最も強い通電率設定5における通電率R5が90.0%で設定したとする。
【0046】
この場合、通電率R4は、前述した次式(1)
R4=R1+(R5-R1)/4×3・・・(1)
によって80.0%であると導き出せる。
【0047】
また、通電率R3は、次式(2)
R3=R1+(R5-R1)/4×2・・・(2)
によって70.0%であると導き出せる。
【0048】
そして、通電率R2は、次式(3)
R2=R1+(R5-R1)/4×1・・・(3)
によって60.0%であると導き出せる。
【0049】
また、これら通電率R1~R5に対応する通電時間t1~t5は、それぞれ次式(4)~(8)
t1=T×R1・・・(4)
t2=T×R2・・・(5)
t3=T×R3・・・(6)
t4=T×R4・・・(7)
t5=T×R5・・・(8)
によって、t1は5分、t2は6分、t3は7分、t4は8分、t5は9分であると導き出せる。
【0050】
よって、各通電率設定1~5における通電の休止時間(すなわち、電源OFFの時間)は、図7にも示すように、単位時間Tとして設定された10分から前述のように導き出した通電時間t1~t5を差し引くことで導き出せる。すなわち、加熱温度の最も強い通電率設定5における通電の休止時間は、1分、通電率設定4における通電の休止時間は、2分、通電率設定3における通電の休止時間は、3分、通電率設定2における通電の休止時間は、4分、通電率設定1における通電の休止時間は、5分、となることが導き出せる。
【0051】
また、前述した実施の形態では、通電率を5段階に調整可能である場合について述べたが、調整可能な段階数(分割数)は5段階に限ることなく、3段階であっても、10段階であってもよい。段階数(分割数)は、コントローラ、制御方法の検討の時点で予め組み込まれていてもよいし、また通電時間、通電率設定の時点で設定可能であってもよい。
【0052】
このように、ヒータコントローラ1によれば、電気式床暖房システムを設置する施工時の初期段階において、ヒータ10に対する基本通電時間としての単位時間Tおよび単位時間当りの通電率R1~R5の上限値R5、下限値R1を任意の値で初期値として設定可能なので、電気式床暖房システムが設置される地域・断熱条件の相違に応じたヒータ10の能力の各種取り揃えや選定が不要となり、コントローラ1における設定のみで様々な使用環境や使用者の嗜好に応じた柔軟な温度調整が対応できる。
【符号の説明】
【0053】
1 ヒータコントローラ
2 本体部
21 CPU基板
210 制御部(通電率制御部)
211 記憶部
212 クロック
213 電池
22 電源基板
221 リレー
222 温度センサ用コネクタ
223 スイッチング電源
3 操作部
31 起動ボタン
32 調節ボタン
33 タイマボタン
34 設定ボタン
4 表示部
5 運転ランプ
6 温度センサ
7 通気孔
10 ヒータ
11 サーミスタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7