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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023072259
(43)【公開日】2023-05-24
(54)【発明の名称】マルチ田植機
(51)【国際特許分類】
   A01B 69/00 20060101AFI20230517BHJP
   A01C 11/02 20060101ALI20230517BHJP
   A01G 13/00 20060101ALI20230517BHJP
【FI】
A01B69/00 301
A01C11/02 302D
A01G13/00 303
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021184688
(22)【出願日】2021-11-12
(71)【出願人】
【識別番号】000001878
【氏名又は名称】三菱マヒンドラ農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宇田川 健太
【テーマコード(参考)】
2B024
2B043
2B060
【Fターム(参考)】
2B024CA02
2B024CB04
2B043BA02
2B043BB04
2B043DA17
2B043DC03
2B043EA32
2B043EB05
2B043EB22
2B043EC12
2B043EC13
2B043EE01
2B043EE02
2B043EE05
2B043EE06
2B060AE03
2B060BA04
2B060BB02
2B060DA02
2B060DA10
(57)【要約】
【課題】容易かつ正確にシート切れを予測可能なマルチ田植機を提供する。
【解決手段】マルチ田植機(P)は、GPS受信機(28)を用いて、植付作業機(6)が下降して圃場に接地した第1位置(C)と、シート切断機構(15)によってシート(S)を切断した第2位置(D)と、から植付処理における旋回終わりから次の旋回開始までに対応する1工程の前記シート(S)の使用量である第1の値(W1)を求め、かつ前記シート切断機構(15)によって前記シート(S)を切断した際に、前記植付処理での前記シート(S)の積算使用量である第2の値(W2)を求める制御部(U)と、前記第1の値(W1)と、前記第2の値(W2)と、を同時に表示する表示部(87)と、を備える。
【選択図】図16
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行装置に支持される走行機体と、該走行機体に昇降自在に支持される植付作業機と、該植付作業機に設けられ、圃場面を被覆するロール状のシートを収納し得るシート収納部と、を備え、前記走行機体が直進走行中に、連続的に繰出された前記シートの上から前記植付作業機が圃場へ苗を植付ける植付処理を行うマルチ田植機において、
前記走行機体の位置情報を検出するGPS受信機と、
前記シートを切断するシート切断機構と、
前記GPS受信機を用いて、前記植付作業機が下降して圃場に接地した第1位置と、前記シート切断機構によって前記シートを切断した第2位置と、から前記植付処理における旋回終わりから次の旋回開始までに対応する1工程の前記シートの使用量である第1の値を求め、かつ前記シート切断機構によって前記シートを切断した際に、前記植付処理での前記シートの積算使用量である第2の値を求める制御部と、
前記第1の値と、前記第2の値と、を同時に表示する表示部と、を備える、
ことを特徴とするマルチ田植機。
【請求項2】
前記表示部は、前記シート収納部にセットした際の前記シートの長さである第3の値を、前記第1の値及び前記第2の値と同時に表示可能である、
ことを特徴とする請求項1に記載のマルチ田植機。
【請求項3】
報知可能な報知部を更に備え、
前記制御部は、前工程の前記第1位置及び前記第2位置から前記第1の値を求め、現工程の前記第1位置並びに前記前工程で求められた前記第1の値に基づいて、前記現工程のシート切断位置を設定し、前記現工程の植付処理中に、前記シート切断位置から所定距離以内になると前記シートの切断を促す予告報知を前記報知部によって行う、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のマルチ田植機。
【請求項4】
報知可能な報知部を更に備え、
前記制御部は、前工程の前記第1位置に基づいて現工程のシート切断位置を設定し、前記現工程の植付処理中に、前記シート切断位置から所定距離以内になると前記シートの切断を促す予告報知を前記報知部によって行う、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のマルチ田植機。
【請求項5】
前記シート切断機構を駆動するモータを更に備え、
前記制御部は、前記シート切断位置において、前記シートを前記シート切断機構によって切断するように、前記モータを駆動する、
ことを特徴とする請求項3又は4に記載のマルチ田植機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートの上から圃場へ苗を植付けるマルチ田植機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、田植機による圃場への植付作業は、矩形の圃場の植付作業を行う際、往復走行しながら畦際から所定の幅に設定される枕地を除いた範囲の植付作業を行い、最後に枕地を周回して圃場の植付作業を終える。シートの上から圃場へ苗を移植するマルチ田植機においては、圃場の未被覆部や重複被覆部が発生しないように、シートによる圃場の被覆開始位置を管理する必要がある。
【0003】
従来、車輪の回転量に基づき走行距離を測定する走行距離測定機構を備え、シートが繰り出されている状態での総走行距離と、入力されたシートの長さと、を表示装置に表示するマルチ田植機が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-014913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のマルチ田植機では、圃場での直進走行の片道分に相当する1工程の距離が分からないため、表示装置に表示された総走行距離とシートの長さとを比較しても、事前にシート切れを予測するのが困難であった。また、走行距離測定機構は、車輪の回転量に基づいて走行距離を測定するので、車輪がスリップすると正確に走行距離を測ることができず、シート切れの予測が不正確であった。
【0006】
そこで、本発明は、容易かつ正確にシート切れを予測可能なマルチ田植機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、走行装置(1,2)に支持される走行機体(3)と、該走行機体(3)に昇降自在に支持される植付作業機(6)と、該植付作業機(6)に設けられ、圃場面を被覆するロール状のシート(S)を収納し得るシート収納部(10)と、を備え、前記走行機体(3)が直進走行中に、連続的に繰出された前記シート(S)の上から前記植付作業機(6)が圃場へ苗を植付ける植付処理を行うマルチ田植機(P)において、
前記走行機体(3)の位置情報を検出するGPS受信機(28)と、
前記シート(S)を切断するシート切断機構(15)と、
前記GPS受信機(28)を用いて、前記植付作業機(6)が下降して圃場に接地した第1位置(C)と、前記シート切断機構(15)によって前記シート(S)を切断した第2位置(D)と、から前記植付処理における旋回終わりから次の旋回開始までに対応する1工程の前記シート(S)の使用量である第1の値(W1)を求め、かつ前記シート切断機構(15)によって前記シート(S)を切断した際に、前記植付処理での前記シート(S)の積算使用量である第2の値(W2)を求める制御部(U)と、
前記第1の値(W1)と、前記第2の値(W2)と、を同時に表示する表示部(87)と、を備える、
ことを特徴とするマルチ田植機(P)にある。
【0008】
なお、上記カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、これにより特許請求の範囲の記載に何等影響を及ぼすものではない。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、表示部にシートの使用量である第1の値と、シートの積算使用量である第2の値と、が同時に表示されるので、容易かつ正確にシート切れを予測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態に係るマルチ田植機を示す側面図。
図2】マルチ田植機を示す斜視図。
図3】植付作業機を昇降する油圧コントロール装置を示す側面図。
図4】(a)は紙ホルダが開放状態の際のシート収納部を示す側面図、(b)は紙ホルダが閉鎖状態の際のシート収納部を示す側面図。
図5】シート検出スイッチを示す側面図。
図6】シート切断機構を示す動作図。
図7】(a)は運転部を示す斜視図、(b)はモニタを示す拡大図。
図8】(a)はスイッチパネルを示す拡大図、(b)は自動直進操作パネルを示す拡大図。
図9】制御部を示すブロック図。
図10】植付作業機の作業機制御を示すフロー図。
図11】作業機操作制御を示すフロー図。
図12】自動直進制御を示すフロー図。
図13】自動直進制御を説明するための図。
図14】シート切断制御を示すフロー図。
図15】シート切断制御を説明するための図。
図16】使用量表示制御を示すフロー図。
図17】使用量表示制御を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面に沿って、本発明の実施の形態について説明する。図1に示すように、本実施の形態に係る乗用型のマルチ田植機Pは、車輪1,2によって支持される走行機体3と、走行機体3の後部に昇降リンク機構5を介して昇降自在に支持される植付作業機6と、を有している。昇降リンク機構5は、走行機体3と植付作業機6との間に介設されたリフトシリンダ7を有し、後述する油圧コントロール装置48(図3参照)によるリフトシリンダ7の伸縮動作に応じて植付作業機6が昇降される。なお、走行装置としての車輪1,2は、クローラ等の他の走行装置を用いてもよい。
【0012】
植付作業機6は、昇降リンク機構5によって支持される作業機フレーム8、マット苗が載置される苗載台9、芯に巻きつけられるロール状のシートを横架収納するシート収納部10、苗を圃場に移植する植付機構11、圃場面を滑走する円筒状のローラフロート12並びに紙押さえロール13及びシート切断機構15等を備えている。植付機構11は、走行機体3の走行に伴い連続的に繰出されて圃場面を被覆するために繰出されたシートSの上からマット苗より掻取った苗を圃場に移植する。繰出されたシートSはシート切断機構15によりシート収納部10に収納されたロール状のシートから適宜分断される。ローラフロート12は、左右に延びる円筒状に形成されて前後に並列して設けられ、紙押さえロール13は、左右に延びる円筒状に形成されてローラフロート12より後方に配置される。ローラフロート12及び紙押さえロール13は、繰出されたシートSを圃場面に押圧しながら圃場面を滑走し、紙押さえロール13は、ローラフロート12より小さな接地面積となるように構成されている。
【0013】
上記走行機体3は、その中央部にステアリングハンドル21及び運転座席22等を有する運転部24が配置され、その前方にエンジンをカバーするボンネット23、その左右に予備苗台25が配置されている。また、走行機体3には、ボンネット23を囲うように設けられた取付けブラケット27を介して、GPS(位置情報計測システム)受信機28が配置されている。GPS受信機28は、走行機体3の位置情報を検出することができる。該走行機体3には、上記エンジンからの動力を車輪1,2及び植付作業機6に伝達するトランスミッションが備えられており、該トランスミッションには植付作業機への動力を断接する植付クラッチ(図示せず)等が介在している。
【0014】
更に、図2に示すように、走行機体3の左右両側には、紙ロールケース50に収納されているシートを使い切った際に使用するためのロール状の予備のシートWを支持可能な補助ロール台75が配置されている。補助ロール台75は予備のシートWの中心軸が略前後方向となるように予備のシートWを支持し、補助ロール台75に支持された予備のシートWの後端付近に設けられた上下方向の軸を中心に回動可能に構成されている。植付作業機6が上端位置にある場合において、補助ロール台75を回動すると、補助ロール台75に支持された予備のシートWの回動軸側の端部と紙ロールケース50の端部とが近接するように設けられている。この状態で、予備のシートWを紙ロールケース50に向けて押し込むことで、新たに予備のシートWが紙ロールケース50に格納される。
【0015】
植付作業機6を昇降制御する油圧コントロール装置48は、図3に示すように、作業機操作レバー35(図7参照)の操作により駆動する作業機操作カムモータ42と、作業機操作カムモータ42の駆動に基づいて回動する作業機操作カム45と、作業機操作カム45の回動に伴って揺動し植付クラッチを断接するクラッチアーム46と、作業機操作カム45の回動に伴い開閉する油圧コントロールバルブ43と、作業機操作カム45の回転軸と同軸上に固定されて作業機操作カム45の回動位置を検出する作業機操作カムポテンショ76と、を備える。
【0016】
作業機操作カム45は、作業機操作カムモータ42の駆動に基づいて、「上昇」、「固定」、「下降(自動)」、「植付」の各ポジションに操作され、これら各ポジションは、作業機操作カムポテンショ76により検出される。作業機操作カム45の各ポジションに従い油圧コントロールバルブ43が開閉されると、トランスミッションに設けられた油圧ポンプ(図示せず)の油圧を開放又は遮断することによりリフトシリンダ7が伸縮して、植付作業機6が昇降する。作業機操作カム45が「上昇」ポジションでは、植付作業機6を上昇させ(植付クラッチは切り)、「固定」ポジションでは、植付作業機6を任意の高さで固定し(植付クラッチは切り)、「下降(自動)」ポジションでは、植付作業機6をローラフロート12が接地するまで下降させ(植付クラッチは切り)、「植付」ポジションでは、クラッチアーム46を介して植付クラッチを入りにさせる。なお、「下降(自動)」及び「植付」ポジションでは、ローラフロート12による対地高さ検出にもとづいた機械的な自動昇降制御が実行される。
【0017】
シート収納部10は、図4(a)(b)に示すように、紙ロールケース50と、紙ロールケース50の近傍に設けられた基端部から延設されて揺動可能に支持される紙ホルダ51と、揺動可能に支持されて紙ホルダ51を開閉操作する紙ホルダ操作レバー52と、シート収納部10の左右両端に回転可能に支持される紙繰出ノブ53と、を備える。紙ロールケース50にはロール状のシートが収納され、紙ホルダ51は、植付作業機6が上昇しているときには紙ロールケース50から繰出されたシートSを下方から受け止めて保持する。紙繰出ノブ53は、オペレータによって手動で回転させられることにより紙ロールケース50に収納されているシートを回転して、シートをシート収納部10の外部へ繰出す。
【0018】
紙ホルダ51は、基端部から略後方へ延出して植付作業を行うための閉鎖状態(図4(b))と、基端部から下後方へ延出して紙ロールケース50に収納されているシートを手動で繰出し易い開放状態(図4(a))と、を有する。紙ホルダ51は、閉鎖状態において、紙ホルダ操作レバー52の先端が左側面視で時計回りに操作されると、紙ホルダ51の後端が下降して開放状態(図4(a))となる。また、紙ホルダ51は、開放状態において、紙ホルダ操作レバー52の先端が左側面視で反時計回りに操作されると、紙ホルダ51の後端が上昇して植付作業を行うための閉鎖状態(図4(b))となる。
【0019】
図4(b)に示す閉鎖状態では、植付作業機6が下降した植付位置にあり、紙ロールケース50のシートSは、ローラフロート12(及び紙押えロール13)により田面上に押付けられ、マルチ田植機Pの走行に伴って田面上に敷かれ、植付機構11により掴まれた苗株が、上記敷かれたシートSを打破って植付けられる。このようにして、マルチ田植作業が進行して、紙ロールケース50のシートSは消耗する。
【0020】
シート収納部10には、図5に示すように、ブラケット55を介して取り付けられるシート検出スイッチ56及び作動レバー58が配置されている。シート検出スイッチ56は、作動レバー58が回動することによって、ON又はOFFする。作動レバー58は、図5において時計回りに付勢されており、紙ロールケース50にシートが有る場合、該シートに押圧される。これにより、シート検出スイッチ56は、ONとなる。一方、紙ロールケース50にシートが無い場合、作動レバー58は、シートによって回動規制されることなく、時計回りに付勢されて回動する。これにより、シート検出スイッチ56は、OFFとなり、紙ロールケース50のシートが無くなったことを検出する。
【0021】
図1及び図6に示すように、シート切断機構15は、走行機体3に設けられてオペレータが切断操作を行う切断操作部77と、植付作業機6に設けられてオペレータによる切断操作部77の操作によりシートを切断する切断部78と、切断操作部77と切断部78とを接続する操作ワイヤ80と、を有しており、操作ワイヤ80は、カッターモータ81によって牽引可能である。切断操作部77は、運転座席22の後方に設けられており、先端にオペレータが把持するグリップ77bを有して、オペレータの操作により左右に伸びるレバー軸77cを中心として揺動可能に支持されるカッターレバー77aと、レバー軸77cと平行な軸を中心としてカッターレバー77aに回動可能に支持されるレバー固定フック77dと、レバー固定フック77dが係合してカッターレバー77aの揺動を規制するフック受け77eと、を有する。レバー軸77cの近傍には、シート切断操作検出スイッチ82が設けられている。
【0022】
カッターレバー77aは、レバー軸77cを中心に、略垂直に起立する非作動位置と、非作動位置から前方へ向けて略水平になるまで傾倒した作動位置と、の間で揺動可能に構成されている。カッターレバー77aが非作動位置に位置する際には、レバー固定フック77dがフック受け77eに係合することでカッターレバー77aの前方への傾動が規制される。オペレータが、レバー固定フック77dとフック受け77eとの係合を解除してカッターレバー77aを作動位置へ傾動させると、シート切断操作検出スイッチ82がカッターレバー77aに押圧されてONとなる。そして、シート切断操作検出スイッチ82がONとなると、カッターモータ81が駆動され、カッターモータ81によって操作ワイヤ80が牽引される。
【0023】
切断部78は、後端にシートカッター78cを有し、左右に延びるカッター軸78dを中心として上下に揺動するカッターアーム78bと、カッター軸78dよりカッターアーム78bの前方に設けられて、カッター軸78dと平行な軸を中心として操作ワイヤ80の終端を回動可能に支持する終端支持部78aと、弾性力によりシートカッター78cを上方に付勢するカッターばね78eと、を有する。
【0024】
上述したように、カッターモータ81によって操作ワイヤ80が牽引されると、カッターアーム78bの後端が下方へ傾動し、シートカッター78cが圃場面下まで降下することで、シート収納部10に収納されているロール状のシートと繰出されたシートSが分断される。オペレータがカッターレバー77aの操作をやめると、カッターばね78eがシートカッター78cを上方へ持ち上げる方向へカッターアーム78bを傾動させ、操作ワイヤ80がカッターアーム78bの傾動により牽引され、操作ワイヤ80がカッターレバー77aを牽引して、カッターレバー77aが作動位置から非作動位置へ復帰する。
【0025】
上記運転部24の前部には、図7(a)に示すように、モニタ30、スイッチパネル31及び自動直進操作パネル84が配置されている。また、ステアリングハンドル21の左側には、主変速レバー32が配置され、ステアリングハンドル21の右側には、副変速レバー33(図2参照)及び作業機操作レバー35が配置されている。オペレータが、該主変速レバー32を中立位置からの前方向に操作すると前進段が変速され、主変速レバー32を中立位置から後方向に操作すると後進段が変速されると共にその状態がバックスイッチ(図示せず)で検出される。
【0026】
作業機操作レバー35は、上昇位置と下降位置との間で上下方向に揺動可能に設けられると共に、作業機操作レバー35に設けられたレバーばね(図示せず)により上昇位置と下降位置の中間に設けられた中立位置に付勢されている。また、作業機操作レバー35の上昇位置は、作業機操作スイッチ(上側)35a(図9参照)によって検知され、作業機操作レバー35の下降位置は、作業機操作スイッチ(下側)35b(図9参照)によって検知される。オペレータが作業機操作レバー35を上方に操作(上昇操作)すると作業機操作レバー35が上昇位置へ切り替えられ、オペレータが作業機操作レバー35を下方に操作(下降操作)すると作業機操作レバー35が下降位置に切り替えられて、オペレータが作業機操作レバー35の操作をやめると、作業機操作レバー35はレバーばねにより中立位置へ復帰する。なお、作業機操作スイッチ(上側)35a及び作業機操作スイッチ(下側)35bは、主変速レバー32の把持部に設けられてもよく、オペレータは、主変速レバー32を操作する左手だけで、走行機体3の操向操作と、植付作業機6の昇降とを行えるように構成してもよい。
【0027】
モニタ30には、図7(b)に示すように、表示パネル83、シートの補給時期を報知する紙補給報知ランプ36、警報ランプ85及びシート情報表示部87等が設けられている。表示パネル83には、マルチ田植機Pの作業状態等を表示可能である。警報ランプ85は、点灯又は点滅することで、オペレータにシートSを切断するタイミングを報知する。表示部としてのシート情報表示部87は、後述する1工程距離W1、積算距離W2及びシート長W0を表示可能であり、これら1工程距離W1、積算距離W2及びシート長W0は、それぞれ第1表示部87a、第2表示部87b及び第3表示部87cに表示される。第1表示部87a、第2表示部87b及び第3表示部87cは、互いに隣接して配置され、オペレータが一目で全ての情報を視認することができるようになっている。
【0028】
スイッチパネル31には、図8(a)に示すように、後述する予備警報距離α(図14及び図15参照)を調節可能なタイミング調整ダイヤル88、シート収納部10にセットした際のシートの長さ、すなわち使用前のシートの長さである第3の値としてのシート長W0を入力するシート長設定ダイヤル89、植付作業機6の駆動を規制し得る作業準備スイッチ90、報知モード、切断・報知モード、非報知モードの切り替えを行う切断自動モード切替スイッチ91、警報停止スイッチ92及びリセットスイッチ93等が設けられている。更に、自動直進操作パネル84には、図8(b)に示すように、直進自動モード切替スイッチ94、直進制御スイッチ95、A点設定スイッチ96及びB点設定スイッチ97等が設けられている。なお、シート長設定ダイヤル89は、回転可能なダイヤルであると共に、プッシュ式のスイッチとなっており、押し操作することで、使用量表示制御S4における使用量表示モードのON又はOFFを切り替えることができる。
【0029】
図9は、マルチ田植機Pの制御部Uの制御ブロック図である。制御部Uは、CPU101と、ROM102と、RAM103と、I/F104と、を有する。CPU101は、ROM102に格納された各種のプログラムを実行する。RAM103は、CPU101の作業領域として使用されると共に、各種のデータを記憶可能である。I/F104は、各種センサやモータとの入出力に使用される。
【0030】
制御部Uの入力側には、作業機操作スイッチ(上側)35a、作業機操作スイッチ(下側)35b、GPS受信機28、ジャイロセンサ29、シート検出スイッチ56、作業機操作カムポテンショ76、シート切断操作検出スイッチ82、タイミング調整ダイヤル88、シート長設定ダイヤル89、作業準備スイッチ90、切断自動モード切替スイッチ91、警報停止スイッチ92、リセットスイッチ93、直進自動モード切替スイッチ94、直進制御スイッチ95、A点設定スイッチ96及びB点設定スイッチ97等が接続されている。
【0031】
ジャイロセンサ29は、走行機体3の傾斜角度を検知することができ、警報停止スイッチ92は、警報ランプ85及び警報ブザー98による報知を停止することができる。なお、本実施の形態では、報知部としての警報ランプ85及び警報ブザー98によって報知を行うが、警報ランプ85及び警報ブザー98のいずれか一方のみを設け、それを報知部としてもよい。
【0032】
リセットスイッチ93は、押し操作されることで、RAM103に記憶された後述するシート長W0、1工程距離W1及び積算距離W2をリセットする。直進自動モード切替スイッチ94は、後述する自動直進制御S2を実行するか否かを切り替えることができる。直進制御スイッチ95は、走行機体3がターゲットラインL1,L2,L3,…のいずれかに沿って直進走行をアシストするか否かを切り替えることができる。A点設定スイッチ96及びB点設定スイッチ97は、それぞれ後述するA点座標及びB点座標を設定することができる。
【0033】
制御部Uの出力側には、紙補給報知ランプ36、作業機操作カムモータ42、ステアリングモータ70、カッターモータ81、表示パネル83、警報ランプ85、シート情報表示部87、及び警報ブザー98等が接続されている。ステアリングモータ70は、ステアリングハンドル21に連結される操向装置を駆動する。これにより、走行機体3は、操向操作される。紙補給報知ランプ36は、シート検出スイッチ56がOFFとなることで、点灯し、オペレータに紙ロールケース50のシートが無くなったことを報知する。警報ブザー98は、鳴動することで、オペレータにシートSを切断するタイミングを報知する。
【0034】
図10は、制御部Uのメインルーチンである作業機制御を示し、各サブルーチンが作業機操作制御S1、自動直進制御S2、シート切断制御S3、使用量表示制御S4の順番で順次繰り返される。作業機操作制御S1は、作業機操作レバー35の操作に基づいて植付作業機6の昇降を制御する。自動直進制御S2は、走行機体3の直進走行をアシストするように、ステアリングモータ70を制御する。シート切断制御S3は、所定の位置でシートSを切断するように、カッターモータ81を制御する。使用量表示制御S4は、マルチ田植機Pの圃場走行に伴って、シートSについての情報をシート情報表示部87に表示する。
【0035】
まず、作業機操作制御S1について、図11に沿って説明する。制御部Uは、作業機操作スイッチ(下側)35bがONとなるように作業機操作レバー35の操作(主変速レバー32の把持部におけるスイッチ操作も含む)が行われたか否かを判断する(ステップS11)。そして、作業機操作スイッチ(下側)35bがONとなる操作が行われたと判断された場合(ステップS11:あり)、制御部Uは、作業準備スイッチ90の状態を検出する(ステップS12)。作業準備スイッチ90がONの場合(ステップS12:ON)、制御部Uは、作業機操作カムポテンショ76の検知結果に基づいて、作業機状態、すなわち作業機操作カム45のポジションを検出する(ステップS13)。
【0036】
作業機状態が上昇以外の場合(ステップS13:上昇以外)、制御部Uは、作業機状態が下降(自動)かそれ以外かを判断する(ステップS14)。作業機状態が下降(自動)以外の場合(ステップS14:自動以外)、制御部Uは、作業機状態が植付か固定かを判断する(ステップS15)。作業機状態が固定の場合(ステップS15:固定)、制御部Uは、植付作業機6を下降させ、ローラフロート12が接地するように油圧コントロールバルブ43を制御する(ステップS16)。すなわち、作業機状態が固定であって、植付作業機6が停止している際に、作業機操作スイッチ(下側)35bがON(ステップS11:あり)となると、植付作業機6は圃場に接地するまで下降する。
【0037】
ステップS12において、作業準備スイッチ90がOFFの場合(ステップS12:OFF)でも同様に、作業機状態が固定であれば(ステップS17:上昇以外,S18:固定)、作業機操作スイッチ(下側)35bがON(ステップS11:あり)となると、植付作業機6は圃場に接地するまで下降する(ステップS19)。また、ステップS17において作業機状態が上昇の場合(ステップS17:上昇)、作業機操作スイッチ(下側)35bがON(ステップS11:あり)となることで、作業機状態が固定、すなわち植付作業機6の上昇動作が停止する(ステップS23)。作業機準備スイッチがOFFの場合(ステップS12:OFF)であって、作業機状態が上昇でも固定でもない場合、すなわち作用期状態が下降(自動)の場合(ステップS18:固定以外)、処理をリターンする。
【0038】
また、ステップS14において作業機状態が下降(自動)の場合(ステップS14:下降(自動))、制御部Uは、作業機操作スイッチ(下側)35bがON操作される操作時間Tが所定時間T0よりもよりも短いか否かを判断する(ステップS37)。操作時間Tが所定時間T0以上の場合(ステップS37:NO)、処理をリターンする。操作時間Tが所定時間T0よりも短い場合(ステップS37:YES)、制御部Uは、ステップS16,S18における植付作業機6の下降動作が終了して停止しているか否かを判断する(ステップS20)。植付作業機6の下降動作が終了していない場合(ステップS20:NO)、制御部Uは、植付クラッチ入待ち状態となって処理をリターンする(ステップS21)。植付作業機6の下降動作が終了している場合(ステップS20:YES)、制御部Uは、作業機操作カム45が植付ポジションとなるように作業機操作カムモータ42を駆動する(ステップS22)。
【0039】
作業機操作カム45が植付ポジションとなった場合には、植付クラッチが入り(ON)となり、かつ植付作業機6がローラフロート12による対地高さ検出に基づいて自動で昇降する。なお、本実施の形態では、作業機操作カム45が植付ポジションに位置する状態でマルチ田植機Pが直進走行することで、連続的に繰り出されたシートSの上から植付作業機6が圃場へ苗を植付ける植付処理が行われる。
【0040】
ステップS11において作業機操作スイッチ(下側)35bがONとならない場合(ステップS11:なし)、制御部Uは、作業機操作スイッチ(上側)35aがON操作されたか否かを判断する(ステップS24)。作業機操作スイッチ(上側)35aがON操作されない場合(ステップS24:なし)、制御部Uは、植付クラッチ入待ち状態か否かを判断する(ステップS25)。植付クラッチ入待ち状態ではない場合(ステップS25:NO)、処理をリターンする。植付クラッチ入待ち状態である場合(ステップS25:YES)、制御部Uは、植付作業機6の下降動作が停止したか否かを判断する(ステップS26)。植付作業機6の下降動作が停止していない場合(ステップS26:NO)、処理をリターンする。植付作業機6の下降動作が停止している場合(ステップS26:YES)、制御部Uは、作業機操作カム45が植付ポジションとなるように作業機操作カムモータ42を駆動し(ステップS27)、処理をリターンする。
【0041】
ステップS24において作業機操作スイッチ(上側)35aがON操作された場合(ステップS24:あり)、制御部Uは、作業機状態が上昇かそれ以外かを判断する(ステップS29)。作業機状態が上昇の場合(ステップS29:上昇)、処理をリターンする。作業機状態が上昇以外の場合(ステップS29:上昇以外)、制御部Uは、更に作業機状態が下降(自動)かそれ以外かを判断する(ステップS32)。
【0042】
作業機状態が下降(自動)の場合(ステップS32:下降(自動))、制御部Uは、植付作業機6の下降動作が停止しているか否かを判断する(ステップS33)。植付作業機6の下降動作が停止している場合(ステップS33:YES)、制御部Uは、植付作業機6を上昇させ(ステップS34)、処理をリターンする。また、植付作業機6の下降動作が停止している場合(ステップS33:NO)、制御部Uは、作業機操作カム45が固定ポジションとなるように作業機操作カムモータ42を駆動させ(ステップS35)、処理をリターンする。
【0043】
また、ステップS32において作業機状態が下降(自動)以外の場合(ステップS32:自動以外)、制御部Uは、作業機状態が固定か植付かを判断する(ステップS39)。作業機状態が固定の場合(ステップS39:固定)、制御部Uは、上述のステップS34に進む。作業機状態が植付の場合(ステップS39:植付)、制御部Uは、作業機操作カム45が下降(自動)ポジションとなるように作業機操作カムモータ42を駆動させ(ステップS40)、処理をリターンする。このように、作業機操作スイッチ(上側)35aがON操作された場合(ステップS24:あり)、制御部Uは、植付→下降(自動)→固定→上昇というように、現状のポジションから一つ上のポジションに移行する。
【0044】
次に、図12のフローチャートに沿って、自動直進制御S2について説明する。図12に示すように、自動直進制御S2においては、制御部Uは、まず直進自動モード切替スイッチ94がONか否かを判断する(ステップS41)。直進自動モード切替スイッチ94がOFFの場合(ステップS41:NO)、処理をリターンする。
【0045】
直進自動モード切替スイッチ94がONの場合、すなわち自動直進制御S2を実行する自動モードがONの場合(ステップS41:YES)、制御部Uは、B点設定スイッチ97が押し操作されたか否かを判断する(ステップS42)。B点設定スイッチ97が押し操作されていない場合(ステップS42:なし)、制御部Uは、A点設定スイッチ96が押し操作されたか否かを判断する(ステップS43)。A点設定スイッチ96が押し操作された場合(ステップS43:あり)、制御部Uは、A点設定スイッチ96が押し操作された時点でのGPS受信機28が受信した座標情報(以下、A点座標とする)をRAM103に記憶し、処理をリターンする。
【0046】
ステップS42においてB点設定スイッチ97が押し操作された場合(ステップS42:あり)、制御部Uは、A点座標が設定されたか否か判断する(ステップS45)。A点座標が設定されていない場合(ステップS45:NO)、処理をリターンする。A点座標が設定されている場合(ステップS45:YES)、制御部Uは、B点設定スイッチ97が押し操作された時点でのGPS受信機28が受信した座標情報(以下、B点座標とする)をRAM103に記憶する。更に、制御部Uは、図13に示すように、A点座標とB点座標を通る直線L0を設定し、直線L0と平行でかつ所定距離ずつ離れた複数のターゲットラインL1,L2,L3,…を設定し(ステップS46)、処理をリターンする。
【0047】
ステップS43においてA点設定スイッチ96が押し操作されていない場合(ステップS43:なし)、制御部Uは、直進制御スイッチ95がONか否かを判断する(ステップS47)。直進制御スイッチ95がOFFの場合(ステップS47:NO)、処理をリターンする。直進制御スイッチ95がONの場合(ステップS47:YES)、制御部Uは、ターゲットラインL1,L2,L3,…のいずれかに走行機体3が沿うように、ステアリングモータ70を駆動し(ステップS48)、処理をリターンする。
【0048】
このように、自動直進制御S2では、直進自動モード切替スイッチ94がONの場合に、A点座標及びB点座標を設定できる。そして、これらA点座標及びB点座標からターゲットラインL1,L2,L3,…が設定された状態で直進制御スイッチ95がONであると、ターゲットラインL1,L2,L3,…のいずれかに走行機体3が沿うように、自動でマルチ田植機Pが操向操作される。
【0049】
次に、図14のフローチャートに沿って、シート切断制御S3について説明する。図14に示すように、シート切断制御S3においては、制御部Uは、まず作業準備スイッチ90がONか否かを判断する(ステップS51)。作業準備スイッチ90がOFFの場合(ステップS51:NO)、処理をリターンする。作業準備スイッチ90がONの場合(ステップS51:YES)、制御部Uは、切断自動モード切替スイッチ91が操作されることで、報知モードに設定されているか否かを判断する(ステップS52)。
【0050】
本実施の形態では、例えば切断自動モード切替スイッチ91が押し操作されることで、報知モード、切断・報知モード、非報知モードのいずれかに設定される。これらのモードは、切断自動モード切替スイッチ91に設けられたランプの点灯状態によって判別可能である。ランプの点灯状態は、消灯、点灯、点滅等のランプの光り方や、ランプの色の種類等が含まれる。報知モードは、後述するシートの自動切断(ステップS62)は実施せずに、シートの切断位置予告報知(ステップS61)のみを行うモードである。切断・報知モードは、シートの自動切断(ステップS62)並びにシートの切断位置予告報知(ステップS61)の両方を実施するモードである。非報知モードは、シートの自動切断(ステップS62)並びにシートの切断位置予告報知(ステップS61)の両方を実施しないモードである。
【0051】
ステップS52において、非報知モードに設定されている場合(ステップS52:NO)、処理をリターンする。報知モード又は報知・切断モードに設定されている場合(ステップS52:YES)、制御部Uは、警報停止スイッチ92の押し操作があったか否かを判断する(ステップS53)。警報停止スイッチ92の押し操作が無かった場合(ステップS53:NO)、制御部Uは、走行機体3の基準位置が直線gに達したか否かを判断する(ステップS54)。直線gについては、後述する。なお、本実施の形態では、走行機体3の基準位置は、GPS受信機28が設けられた位置(図1参照)としているが、これに限定されず、適宜設定して良い。
【0052】
走行機体3の基準位置が直線gに達していない場合(ステップS54:NO)、制御部Uは、走行機体3の基準位置が直線fに達したか否かを判断する(ステップS55)。直線fについては後述する。走行機体3の基準位置が直線gに達していない場合(ステップS55:NO)、制御部Uは、シート切断操作検出スイッチ82の検出結果に基づいて、シートSの切断があったか否かを判断する(ステップS56)。
【0053】
シートSの切断があった場合(ステップS56:あり)、制御部Uは、図15に示すように、シート切断された時点でのGPS受信機28が受信した座標情報(以下、D点座標とする)をRAM103に記憶する。なお、制御部Uは、植付作業機6が下降して圃場に接地した時点、すなわちシートSが敷設開始された時点でのGPS受信機28が受信した座標情報(以下、C点座標とする)をRAM103に記憶している(図16のステップS78参照)。そして、制御部Uは、第1位置としてのC点座標と第2位置としてのD点座標から1工程距離W1を算出し、RAM103に上書きする(ステップS57)。すなわち、1工程距離W1は、各ターゲットライン1工程分でのシートSの敷設長さである。言い換えれば、第1の値としての1工程距離W1は、植付処理における旋回終わりから次の旋回開始までに対応する1工程のシートSの使用量に相当する。次に、制御部Uは、警報ランプ85及び警報ブザー98による報知を終了させ(ステップS58)、処理をリターンする。
【0054】
ステップS56においてシートSの切断が無かった場合(ステップS56:なし)、制御部Uは、植付作業機6が下降して圃場に接地したか否かを判断する(ステップS59)。植付作業において、植付作業機6が下降して圃場に接地すると、シートSの敷設が開始されると共に植付が開始される。植付作業機6が下降して圃場に接地していない場合(ステップS59:NO)、処理をリターンする。
【0055】
植付作業機6が下降して圃場に接地した場合(ステップS59:YES)、制御部Uは、図15に示すように、接地した時点でのGPS受信機28が受信した座標情報(以下、E点座標とする)をRAM103に記憶する。そして、制御部Uは、ターゲットライン(例えばL2)上の、現工程の第1位置としてのE点座標から1工程距離W1だけ離れた位置をシート切断位置としてのG点座標に設定すると共に、G点座標から予備警報距離αだけ手前の位置をF点座標に設定する。更に、制御部Uは、G点座標を通りターゲットラインに直交する直線gと、F点座標を通りターゲットラインに直交する直線fと、を設定し(ステップS60)、処理をリターンする。言い換えれば、制御部Uは、前工程のターゲットライン(例えばL1)のC点座標及びE点座標から1工程距離W1を求め、現工程のターゲットライン(例えばL2)のE点座標並びに前工程で求められた1工程距離W1に基づいて、現工程のシート切断位置であるG点座標を設定する。なお、予備警報距離αは、スイッチパネル31のタイミング調整ダイヤル88(図8(a)参照)によって調整可能である。
【0056】
ステップS55において、走行機体3の基準位置が直線fに達した場合(ステップS55:YES)、制御部Uは、シート切断位置を予告するシート切断位置予告報知を開始する(ステップS61)。言い換えれば、制御部Uは、現工程の植付処理中に、シート切断位置としてのG点座標から所定距離(予備警報距離α)以内になるとシートSの切断を促す予告報知としてのシート切断位置予告報知を行う。シート切断位置予告報知が開始されることで、警報ランプ85及び警報ブザー98が作動する。
【0057】
ステップS54において、走行機体3の基準位置が直線gに達した場合(ステップS54:YES)、制御部Uは、シートSの切断を報知するシート切断報知を開始すると共に、カッターモータ81を駆動する(ステップS62)。シート切断報知が開始されることで、警報ランプ85及び警報ブザー98が作動する。また、カッターモータ81が駆動されることで、操作ワイヤ80が牽引され、シートカッター78cがシートSを切断する。すなわち、制御部Uは、直線gが通るG点座標において、シートSをシート切断機構15によって自動的に切断するように、モータとしてのカッターモータ81を駆動する。
【0058】
なお、ステップS61のシート切断位置予告報知と、ステップS62のシート切断報知と、では警報ランプ85及び警報ブザー98の作動の仕方に差異があってもよい。例えば、シート切断位置予告報知では、警報ランプ85が点滅すると共に、警報ブザー98が断続的に鳴動してもよい。また、シート切断報知では、警報ランプ85が連続的に点灯すると共に、警報ブザー98が連続的に鳴動してもよい。また、シート切断位置予告報知では、シート切断位置、すなわち直線gに近づくにつれて、警報ランプ85の点滅間隔や警報ブザー98の鳴動間隔や短くなるようにしてもよい。
【0059】
そして、ステップS53において警報停止スイッチ92の押し操作があった場合(ステップS53:YES)、制御部Uは、警報ランプ85及び警報ブザー98による報知を終了し(ステップS63)、処理をリターンする。
【0060】
次に、図16のフローチャートに沿って、使用量表示制御S4について説明する。図16に示すように、シート切断制御S3においては、制御部Uは、まず作業準備スイッチ90がONか否かを判断する(ステップS71)。作業準備スイッチ90がONの場合(ステップS71:YES)、制御部Uは、警報停止スイッチ92が押し操作されたか否かを判断する(ステップS72)。警報停止スイッチ92が押し操作されていない場合(ステップS72:NO)、制御部Uは、シート検出スイッチ56がONであるか否かを判断する(ステップS73)。
【0061】
シート検出スイッチ56がONの場合(ステップS73:YES)、制御部Uは、使用量表示モードがONか否かを判断する(ステップS74)。使用量表示モードは、シート長設定ダイヤル89を押し操作することでON又はOFFすることが可能となっている。また、使用量表示モードがONの場合(ステップS74:YES)、制御部Uは、リセットスイッチ93の押し操作があったか否かを判断する(ステップS75)。リセットスイッチ93の押し操作が無い場合(ステップS75:NO)、制御部Uは、シート切断操作検出スイッチ82の検出結果に基づいて、シートSの切断があったか否かを判断する(ステップS76)。
【0062】
シートSの切断がない場合(ステップS76:なし)、制御部Uは、植付作業機6が下降して圃場に接地したか否かを判断する(ステップS77)。植付作業機6が下降して圃場に接地した場合(ステップS77:YES)、制御部Uは、図15に示すように、植付作業機6が下降して圃場に接地した時点でのGPS受信機28が受信した座標情報(以下、C点座標とする)をRAM103に記憶し(ステップS78)、処理をリターンする。
【0063】
ステップS76においてシートSの切断があった場合(ステップS56:あり)、制御部Uは、図15に示すように、シート切断された時点でのGPS受信機28が受信した座標情報(以下、D点座標とする)をRAM103に記憶する。そして、制御部Uは、上述した図14のステップS57と同様に、図17に示すように、C点座標とD点座標から1工程距離W1を算出すると共に、積算距離W2を算出する(ステップS79)。積算距離W2は、植付作業開始から、マルチ田植機Pがターゲットライン(L1,L2,L3,…)上を走行した積算距離に相当する。すなわち、第2の値としての積算距離W2は、植付処理でのシートSの積算使用量に相当する。なお、ステップS79での演算は、シートSが切断されたタイミングで行われるので、積算距離W2は、1工程距離W1の自然数倍となる。
【0064】
ステップS77において植付作業機6が圃場に接地していない場合(ステップS77:NO)、制御部Uは、シート長設定ダイヤル89の操作があったか否かを判断する(ステップS80)。シート長設定ダイヤル89の操作がある場合(ステップS80:YES)、制御部Uは、シート長W0をRAM103に記憶し(ステップS81)、処理をリターンする。シート長設定ダイヤル89の操作がない場合(ステップS80:NO)、制御部Uは、シート情報表示部87(図7(b)参照)の第1表示部87a、第2表示部87b及び第3表示部87cに、RAM103に記憶された1工程距離W1、積算距離W2及びシート長W0をそれぞれ同時に表示し(ステップS82)、処理をリターンする。
【0065】
ステップS73においてシート検出スイッチ56がOFFの場合(ステップS73:NO)、制御部Uは、警報ランプ85及び警報ブザー98によって報知する紙切れ警報を開始する(ステップS83)。次に、制御部Uは、RAM103に記憶されたシート長W0、1工程距離W1及び積算距離W2をリセットし(ステップS84)、処理をリターンする。なお、ステップS75においてリセットスイッチ93が押し操作された場合(ステップS75:YES)でも、ステップS84に進む。
【0066】
そして、ステップS72において、警報停止スイッチ92の押し操作があった場合(ステップS72:YES)、制御部Uは、警報ランプ85及び警報ブザー98による警報を停止させる(ステップS85)。次に、制御部Uは、シート情報表示部(図7(b)参照)の第1表示部87a、第2表示部87b及び第3表示部87cに表示された1工程距離W1、積算距離W2及びシート長W0をそれぞれ非表示にし(ステップS86)、処理をリターンする。なお、ステップS74において使用量表示モードがOFF、すなわち使用量非表示モードの場合(ステップS74:NO)でも、ステップS86に進む。
【0067】
なお、シートSの紙切れが起きた場合(ステップS73,S83)に、前回と同様のロールのシートSを補充することがある。この場合には、ステップS84においてシート長W0をリセットしなくてもよく、またステップS86においてシート長W0を非表示にしなくてもよい。また、植付作業中にシートSの紙切れが起きた場合には、ターゲットライン(L1,L2,L3,…)における1工程距離W1は、紙切れ前と紙切れ後とで変わらない。このため、ステップS84において1工程距離W1をリセットしなくてもよく、またステップS86において1工程距離W1を非表示にしなくてもよい。
【0068】
以上のように、本実施の形態では、シート情報表示部87の第1表示部87a、第2表示部87b及び第3表示部87cにそれぞれ1工程距離W1、積算距離W2及びシート長W0を表示するので、オペレータは1工程のシートの使用量を容易に把握することができる。これにより、オペレータは、容易かつ正確にシート切れを予測することができる。
【0069】
例えば、圃場での植付処理において、オペレータは、圃場端でマルチ田植機Pを旋回させる際に、シート情報表示部87を確認する。この時、(W0-W2)<W1の関係が成立していると、旋回後にマルチ田植機Pが反対側の圃場端に到達する前にシートSが紙切れとなってしまう。ターゲットラインを直進走行して植付処理を行っている途中でシートSが無くなった場合には、紙切れとなった位置から再びシートSの敷設及び植付けを行う必要があり、煩わしい。本実施の形態では、シート情報表示部87をオペレータが確認することで、圃場端で容易にかつ確実にシート切れを予測することができるため、圃場内での直進走行の途中でシートSが紙切れとなることを抑制し、作業効率を向上することができる。
【0070】
なお、本実施の形態では、シート情報表示部87にシート長W0が表示されるが、これに限定されない。例えば、シート長W0が表示されずとも、未使用のシートSの長さをオペレータが把握していれば、シート情報表示部87に表示される1工程距離W1及び積算距離W2によって、容易かつ正確にシート切れを予測することができる。
【0071】
また、本実施の形態では、植付処理において、現工程のシートSの敷設開始時点(E点座標)で、直線f,gを設定する(図14のステップS60)。そして、走行機体3が直線fに到達すると、シートSの切断を促すシート切断位置予告報知が行われるので、オペレータは、シートSの切断忘れを低減できる。直線f,gの設定は、現工程のシートSの敷設開始位置(E点座標)と、現工程の直前の前工程におけるシートSの敷設開始位置(C点座標)及び敷設終了位置(D点座標)に基づいて設定されるので、直前の工程の動作結果の位置情報を利用するため、隣接するシート端のばらつきが少なく、シート間の隙間が生じにくい。このため、精度良くシートSを敷設することができる。
【0072】
また、走行機体3が直線gに到達すると、自動的にカッターモータ81が駆動され、シートSが切断される(図14のステップS62)ので、シートSの切断忘れを低減することができると共に、オペレータの作業負荷を低減することができる。また、上述した報知は、GPS受信機28による機体の位置情報を用いて行うので、車輪1,2のスリップ率に影響されず、適切なタイミングで報知することができる。
【0073】
また、本実施の形態では、前工程(例えばL1)において1工程距離W1を求め、現工程(例えばL2)のシートSの敷設開始位置であるE点座標から1工程距離W1だけ離れた位置をシート切断位置としてのG点座標と設定すると共に、G点座標よりも予告警報距離αだけ手前の位置を、シート切断位置予告報知が開始されるF点座標に設定したが、これに限定されない。例えば、前工程(例えばL1)におけるシートSの敷設開始位置であるC点座標に基づいて、現工程(例えばL2)のシート切断位置としてのG点座標を設定してもよい。例えば、制御部Uは、C点座標と、GPS受信機28とローラフロート12によるシートSの敷設開始位置との機体前後方向のずれと、GPS受信機28とシートカッター78cによるシートSの切断位置との機体前後方向のずれと、からG点座標を設定することができる。より具体的には、制御部Uは、図15において、C点座標と、GPS受信機28とローラフロート12によるシートSの敷設開始位置との機体前後方向のずれと、GPS受信機28とシートカッター78cによるシートSの切断位置との機体前後方向のずれと、から直線gを設定し、直線gとターゲットラインL2との交点をG点座標に設定することができる。この場合においても、制御部Uは、現工程(L2)の植付処理中に、シート切断位置としてのG点座標から所定距離(予備警報距離α)以内になるとシートSの切断を促す予告報知としてのシート切断位置予告報知を行う。該シート切断位置予告報知は、直前の工程の動作結果の位置情報を利用するため、隣接するシート端のばらつきが少なく、シート間の隙間が生じにくい。このため、精度良くシートSを敷設することができる。
【0074】
また、本実施の形態では、走行機体3(GPS受信機28の位置)が直線fに到達するとシート切断位置予告報知を行うが、更に植付作業機6による苗の植付作業を停止するように制御してもよい。
【0075】
また、上述の説明では、シート切断制御S3と使用量表示制御S4において、部分的に重複した処理を行っている箇所があるが、重複した処理は、適宜省略しても構わない。例えば、ステップS57とステップS79は、いずれか一方のみを実施してもよい。
【符号の説明】
【0076】
1,2 走行装置(車輪)
3 走行機体
6 植付作業機
10 シート収納部
15 シート切断機構
28 GPS受信機
81 モータ(カッターモータ)
85 報知部(警報ランプ)
87 表示部(シート情報表示部)
98 報知部(警報ブザー)
C,E 第1位置(C点座標、E点座標)
D 第2位置(D点座標)
P マルチ田植機
S シート
U 制御部
W0 第3の値(シート長)
W1 第1の値(1工程距離)
W2 第2の値(積算距離)
α 所定距離(予備警報距離)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17