(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023072307
(43)【公開日】2023-05-24
(54)【発明の名称】防煙垂壁
(51)【国際特許分類】
A62C 2/06 20060101AFI20230517BHJP
E04B 2/74 20060101ALI20230517BHJP
【FI】
A62C2/06 506
E04B2/74 561B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021184761
(22)【出願日】2021-11-12
(71)【出願人】
【識別番号】000133319
【氏名又は名称】株式会社ダイケン
(71)【出願人】
【識別番号】000108719
【氏名又は名称】タキロンシーアイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001885
【氏名又は名称】弁理士法人IPRコンサルタント
(72)【発明者】
【氏名】下部 泰明
(72)【発明者】
【氏名】真山 淳哉
(72)【発明者】
【氏名】谷口 勝英
(57)【要約】
【課題】縦枠および横枠に取り付けられたシート材を直交する二方向へテンション調節することを可能とする防煙垂壁を提供する。
【解決手段】 天井に取り付けられる防煙垂壁であって、対向する一対の縦枠と、対向する一対の横枠と、前記縦枠および前記横枠に取り付けられるシート材と、隣り合う前記縦枠及び前記横枠のそれぞれと連結される連結部材と、前記連結部材に対して進退し、前記縦枠を縦方向に変位させる縦枠位置調整手段と、前記連結部材に対して進退し、前記横枠を横方向に変位させる横枠位置調整手段と、を具備することを特徴とする防煙垂壁。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井に取り付けられる防煙垂壁であって、
対向する一対の縦枠と、
対向する一対の横枠と、
前記縦枠および前記横枠に取り付けられるシート材と、
隣り合う前記縦枠及び前記横枠のそれぞれと連結される連結部材と、
前記連結部材に対して進退し、前記縦枠を縦方向に変位させる縦枠位置調整手段と、
前記連結部材に対して進退し、前記横枠を横方向に変位させる横枠位置調整手段と、
を具備することを特徴とする防煙垂壁。
【請求項2】
前記縦枠は前記連結部材と縦方向に変位可能に連結され、
前記横枠は前記連結部材と横方向に変位可能に連結されること、
を特徴とする請求項1に記載の防煙垂壁。
【請求項3】
前記縦枠位置調整手段は前記縦枠の端部と対向し、
前記横枠位置調整手段は前記横枠の端部と対向すること、
を特徴とする請求項1または2に記載の防煙垂壁。
【請求項4】
前記縦枠および前記横枠のうち少なくとも一方の端部と前記連結部材との間に介在し、前記縦枠位置調整手段および前記横枠位置調整手段のうち対応する位置調整手段に当接可能なスペーサー部材を有すること、
を特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の防煙垂壁。
【請求項5】
前記スペーサー部材は、前記縦枠の端部および前記横枠の端部と前記連結部材との間に介在し、前記縦枠位置調整手段および前記横枠位置調整手段の両方に当接可能であること、
を特徴とする請求項4に記載の防煙垂壁。
【請求項6】
前記縦枠は、縦方向に延びる第一ガイドを含み、
前記横枠は、横方向に延びる第二ガイドを含み、
前記連結部材は、前記第一ガイドに沿ってスライドする第一平板部と、前記第一平板部と接続されるとともに前記第二ガイドに沿ってスライドする第二平板部と、を含むこと、
を特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の防煙垂壁。
【請求項7】
前記縦枠と前記連結部材とを固定する縦枠位置固定手段と、
前記横枠と前記連結部材とを固定する横枠位置固定手段と、を更に具備すること、
を特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の防煙垂壁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防煙垂壁に関する。
【背景技術】
【0002】
防煙垂壁は、火災時の煙の拡散を防止し避難時間を確保することを目的として設置される。従来、その多くがガラス製であったが、近年、落下による二次災害が問題となり、樹脂シート製の防煙垂壁が増加している。
【0003】
樹脂シート製の防煙垂壁のうちパネルタイプのものでは、金属製フレームに両面テープなどで不燃シートを貼付けることが多いところ、シートに鉛直方向もしくは水平方向の皺が発生することがある。かかる皺は、シートをパネルに組み付ける際の精度だけでなく、パネルを設置する建築物自体のゆがみや、樹脂シートやパネルが温度変化により膨張・収縮することによっても起こりうる。
【0004】
そこで、例えば特許文献1(特開2016-77311号公報)では、不燃シートの皺を解消できるよう、シートにテンションをかける機構が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ただし、上記特許文献1は一方向(横方向)へのテンション調整に留まり、直交するもう一方向(縦方向)へのテンション調整機構を欠くために皺の解消が不十分となる。この点、縦方向へのテンション調整を中央のテンション棒で行うという方法もあるが、手間であり、見栄えを損なう。
【0007】
そこで、本発明の目的は、枠材(縦枠および横枠)に取り付けられたシート材を直交する二方向へ簡易にテンション調節することを可能とする防煙垂壁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決すべく、本発明は、
天井に取り付けられる防煙垂壁であって、
対向する一対の縦枠と、
対向する一対の横枠と、
前記縦枠および前記横枠に取り付けられるシート材と、
隣り合う前記縦枠及び前記横枠のそれぞれと連結される連結部材と、
前記連結部材に対して進退し、前記縦枠を縦方向に変位させる縦枠位置調整手段と、
前記連結部材に対して進退し、前記横枠を横方向に変位させる横枠位置調整手段と、
を具備することを特徴とする防煙垂壁、を提供する。
ここで、連結部材は少なくとも1箇所に設けられればよい。
【0009】
このような構成を有する本発明の防煙垂壁では、縦枠位置調整手段および横枠位置調整手段をそれぞれ連結部材に対して進退させるだけで、縦枠を縦方向に、横枠を横方向にそれぞれ変位させることができ、これにより上下および左右の両方向へのシート材のテンション調整が可能である。したがって、シート材のたるみをも考慮してシート材を正確に縦枠及び横枠に取り付ける必要がなくなり、シート材の取付を簡易迅速に行うことが可能となる。さらに、上下および左右へのシート材のテンション調整が可能であることから、縦枠及び横枠を現場で切断して長さ調整することが可能となる。
【0010】
本発明の防煙垂壁においては、前記縦枠は前記連結部材と縦方向に変位可能に連結され、前記横枠は前記連結部材と横方向に変位可能に連結されることが好ましい。
【0011】
このような構成を有する本発明の防煙垂壁によれば、連結部材は、縦枠とは縦方向に、横枠とは横方向に、それぞれ変位可能であるから、縦枠及び横枠の変位の方向をガイドして、確実にテンション調整することが可能である。
【0012】
また、本発明の防煙垂壁においては、前記縦枠位置調整手段は前記縦枠の端部と対向し、前記横枠位置調整手段は前記横枠の端部と対向することが好ましい。
【0013】
このような構成を有する本発明の防煙垂壁によれば、縦枠位置調整手段が縦枠の端部と、横枠位置調整手段が横枠の端部と対向することで、縦枠位置調整手段が直接的又は間接的に縦枠の端部を押圧し、また、横枠位置調整手段が直接的又は間接的に横枠の端部を押圧することができるので、縦枠位置調整手段および横枠位置調整手段を例えばネジのようなシンプルな構成とすることができる。
【0014】
また、本発明の防煙垂壁においては、前記縦枠および前記横枠のうち少なくとも一方の端部と前記連結部材との間に介在し、前記縦枠位置調整手段および前記横枠位置調整手段のうち対応する位置調整手段に当接可能なスペーサー部材を有すること、が好ましい。
【0015】
このような構成を有する本発明の防煙垂壁によれば、位置調整手段はスペーサー部材と接触し、縦枠および横枠には接触しないため、位置調整手段で押圧するために縦枠および横枠に端面を設ける必要性がなくなる。したがって、縦枠および横枠を所望の位置で切断することができ、現場での縦枠および横枠の長さ調整を容易に行うことが可能となる。
【0016】
また、本発明の防煙垂壁においては、前記スペーサー部材は、前記縦枠の端部および前記横枠の端部と前記連結部材との間に介在し、前記縦枠位置調整手段および前記横枠位置調整手段の両方に当接可能であること、が好ましい。
【0017】
このような構成を有する本発明の防煙垂壁によれば、スペーサー部材を縦枠と横枠で共通化することができるため作業性が良い。
【0018】
また、本発明の防煙垂壁においては、前記縦枠は、縦方向に延びる第一ガイドを含み、前記横枠は、横方向に延びる第二ガイドを含み、前記連結部材は、前記第一ガイドに沿ってスライドする第一平板部と、前記第一平板部と接続されるとともに前記第二ガイドに沿ってスライドする第二平板部と、を含むこと、が好ましい。
【0019】
このような構成を有する本発明の防煙垂壁によれば、連結部材のスライドの方向が縦方向および横方向のみに規制されるため、縦枠および横枠の連結や位置調整が容易となる。
【0020】
本発明の防煙垂壁においては、前記縦枠と前記連結部材とを固定する縦枠位置固定手段と、前記横枠と前記連結部材とを固定する横枠位置固定手段と、を更に具備すること、が好ましい。
【0021】
このような構成を有する本発明の防煙垂壁によれば、縦枠および横枠を所望の位置に確実に固定することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の防煙垂壁によれば、縦枠および横枠に取り付けられたシート材を直交する二方向へテンション調節することが可能である。したがって、シート材のたるみをも考慮してシート材を正確に縦枠及び横枠に取り付ける必要がなくなり、シート材の取付を簡易迅速に行うことが可能となる。さらに、上下および左右へのシート材のテンション調整が可能であることから、縦枠及び横枠を現場で切断して長さ調整することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】実施形態1に係る防煙垂壁1の正面図である。
【
図2】
図1のA部の部分拡大正面図、側面図及び底面図である。
【
図5】縦枠11及び横枠12の位置調節機構の模式図である。
【
図6】実施形態2に係る防煙垂壁2の正面図である。
【
図7】
図6のB部の部分拡大正面図、側面図及び底面図である。
【
図9】縦枠21及び横枠22の端部の形状を示す概略図である。
【
図10】縦枠21及び横枠22の位置調節機構の模式図である。
【
図11】実施形態1,2の変形例に係る防煙垂壁3の正面図である。
【
図12】縦枠31及び横枠32の位置調節機構の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る防煙垂壁の代表的な実施形態を詳細に説明する。但し、本発明は図示されるものに限られるものではない。また、各図面は本発明を概念的に説明するためのものであるから、理解容易のために必要に応じて大小や長短の比率や数量を誇張又は簡略化して表している場合もある。更に、以下の説明では、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略することがある。
【0025】
ここでは、説明の便宜上、座標軸を次のように定める。すなわち、Z軸を鉛直方向、すなわち縦枠11,21,31が延びる方向に取る。X軸を横枠12,22,32が延びる方向に取る。Y軸をX軸とZ軸とに直交する方向に取る。なお、Z軸方向を上下方向ないし縦方向と、X軸方向を左右方向ないし横方向と、Y軸方向を厚さ方向と、それぞれ言うことがある。
【0026】
1.実施形態1
図1~
図5を参照して、実施形態1に係る防煙垂壁1を説明する。
【0027】
1-1.防煙垂壁1の構成
防煙垂壁1は、対向する一対の縦枠11(11A,11B)と、対向する一対の横枠12(12A,12B)と、シート材13と、連結部材14と、縦枠位置調整手段15と、横枠位置調整手段16と、スペーサー部材17と、を具備する(
図1、
図2(A)参照)。縦枠11A,11B及び横枠12A,12Bは、略矩形に組み合わされて、防煙垂壁1の枠材ないしフレームを構成する。
【0028】
縦枠11は、略鉛直方向(Z軸方向)に延びる部材であり、連結部材14と縦方向に変位可能に連結される。縦枠11は、例えばアルミニウム合金などの金属材料の押出型材であり、中空構造を有する(
図4参照)。
【0029】
図2(A)~(C)に示すように、縦枠11は、縦方向に延びる第一ガイド112を含んでいてもよい。第一ガイド112は、連結部材14(第一平板部141)を縦枠11に沿って案内する。第一ガイド112は更に、連結部材14を縦枠11における所望の位置に保持する役割をも果たす。本実施形態において、第一ガイド112は、縦枠11の横方向の外面側に設けられた溝ないしレールとして構成されているが、これに限られない。
【0030】
より具体的には、第一ガイド112は、縦枠11の横方向の外面から突出する一対の鉤状部材112A,112Bから構成されている(
図3参照)。鉤状部材112A,112Bの先端(鉤部)同士は所定の距離だけ離間して向き合っており、したがって、鉤状部材112A,112Bと縦枠11の本体との間には、連結部材14のスライドのための空間が形成されている。また、鉤状部材112A,112Bの先端同士が離間することで、連結部材14の係合部145が外部に露出し、係合部145と縦枠位置固定手段18との係合を可能にしている。
【0031】
次いで、横枠12は、左右方向(X軸方向)に延びる部材であり、連結部材14と横方向に変位可能に連結される。横枠12は、例えばアルミニウム合金などの金属材料の押出型材であり、中空構造を有する(
図4参照)。
【0032】
図2(A)~(C)に示すように、横枠12は、横方向に延びる第二ガイド122を含んでいてもよい。第二ガイド122は、連結部材14(第二平板部142)を横枠12に沿って案内する。第二ガイド122は更に、連結部材14を横枠12における所望の位置に保持する役割をも果たす。本実施形態において、第二ガイド122は、横枠12の縦方向の外面側に設けられた溝ないしレールとして構成されているが、これに限られない。
【0033】
より具体的には、第二ガイド122は、横枠12の縦方向の外面から突出する一対の鉤状部材122A,122Bから構成されている(
図3参照)。鉤状部材122A,122Bの先端(鉤部)同士は所定の距離だけ離間して向き合っており、したがって、鉤状部材122A,122Bと横枠12の本体との間には、連結部材14のスライドのための空間が形成されている。また、鉤状部材122A,122Bの先端同士が離間することで、連結部材14の係合部146が外部に露出し、係合部146と横枠位置固定手段19との係合を可能にしている。
【0034】
シート材13の説明に移ると、シート材13は、枠材(縦枠11および横枠12)により形成される開口部(図示せず)を覆うべく、縦枠11および横枠12に取り付けられる(
図1参照)。シート材13は、不燃性を有する。また、シート材13は可撓性を有してもよく、透明又は半透明であってもよい。シート材13は、例えば繊維強化合成樹脂などの樹脂材料から作製されるが、これに限られない。シート材13は、例えば両面テープ等で枠材に取り付けることができる。
【0035】
次いで連結部材14について説明する。
連結部材14は、枠材の角部(縦枠11の端部111及び横枠12の端部121ないしその近傍)に配置され、縦枠11及び横枠12のそれぞれと連結される(例えば
図2(A)および
図3参照)。ここでは連結部材14は枠材の角部の全てに設けられているが、上下及び左右の両方向へのテンション調節が可能である限り、角部の全てに連結部材14が設けられることは必要でない。
【0036】
連結部材14は、略L字状に屈曲した板材として構成することができる。すなわち、連結部材14は、縦枠11の第一ガイド112に沿って延びるスライドする第一平板部141と、第一平板部141と接続されるとともに横枠12の第二ガイド122に沿ってスライドする第二平板部142と、を含んでいてよい(
図3,
図4参照)。連結部材14は、アルミニウム合金などの金属材料から作製されてよいが、求められる剛性及び強度を備える限り、樹脂などの他の材料で作製されてもよい。
【0037】
連結部材14は、縦枠位置調整手段15及び横枠位置調整手段16とそれぞれ係合するための係合部143,144を有する。ここでは、係合部143,144の一例として、位置調整手段15,16としてのネジ(位置調整ネジ)と係合するためのネジ孔が連結部材14に形成されているが、これに限られるものではない。係合部143,144は、スペーサー部材17を望む(あるいは対向する)位置に設けられ、縦枠位置調整手段15及び横枠位置調整手段16とスペーサー部材17との接触を可能にしている(
図4参照)。
【0038】
また、連結部材14は、縦枠位置固定手段18及び横枠位置固定手段19とそれぞれ係合するための係合部145,146を有する(
図3参照)。ここでは、係合部145,146の一例として、位置固定手段18,19としてのネジ(位置固定ネジ)と係合するためのネジ孔が連結部材14に形成されているが、これに限られるものではない。係合部145,146は、縦枠11及び横枠12を望む(あるいは対向する)位置に設けられ、縦枠位置固定手段18及び横枠位置固定手段19が縦枠11及び横枠12の本体とそれぞれ接触することを許容している。
【0039】
位置調整手段15,16の説明に移る。
縦枠位置調整手段15は、連結部材14に対して進退し、縦枠11を縦方向に変位させる。本実施形態では、縦枠位置調整手段15は、縦枠11との間に介在するスペーサー部材17を押圧することで間接的に縦枠11を縦方向に変位させる(
図3参照)。
【0040】
縦枠位置調整手段15の一例として、連結部材14の係合部143(ネジ孔)と係合しながら進退するネジ(位置調整ネジ)が挙げられる。すなわち、位置調整ネジは、その頭部の回転に伴って、連結部材14の係合部143(ネジ孔)と係合しながら連結部材14に対して進退する。そして、位置調整ネジは、その先端においてスペーサー部材17を押圧することで縦枠11を縦方向に変位させる。
【0041】
また、横枠位置調整手段16は、連結部材14に対して進退し、横枠12を横方向に変位させる。本実施形態では、横枠位置調整手段16は、横枠12との間に介在するスペーサー部材17を押圧することで間接的に横枠12を横方向に変位させる(
図3参照)。
【0042】
横枠位置調整手段16の一例として、連結部材14の係合部144(ネジ孔)と係合しながら進退するネジ(位置調整ネジ)が挙げられる。すなわち、位置調整ネジは、その頭部の回転に伴って、連結部材14の係合部144(ネジ孔)と係合しながら連結部材14に対して進退する。そして、位置調整ネジは、その先端においてスペーサー部材17を押圧することで横枠12を横方向に変位させる。
【0043】
スペーサー部材17の説明に移ると、スペーサー部材17は、縦枠11の端部111と連結部材14との間で、かつ、横枠12の端部121と連結部材14との間に介在するブロック状の部材である(例えば
図3および
図4参照)。あるいは、スペーサー部材17は、縦枠11の端部(端面)111および横枠12の端部(端面)121の両方を覆うカバー部材ないしキャップ部材と言ってもよい。したがって、スペーサー部材17は、縦枠位置調整手段15および横枠位置調整手段16の両方に当接可能である。
【0044】
換言すれば、中空構造である縦枠11及び横枠12は、端部111,121側から見たときに、位置調整ネジにとって僅かな端面しか持たないため、位置調整ネジとの間の接触面積を増加させるべく、縦枠11及び横枠12の端部にスペーサー部材17が装着されているのである。すなわち、スペーサー部材17は縦枠および横枠位置調整手段15,16による押圧を受けて縦枠11及び横枠12に伝達する役割を果たす。
【0045】
図4に示すように、スペーサー部材17は、縦枠11及び横枠12の中に挿入される挿入部171,172を有する。あるいは、挿入部171,172は、縦枠11及び横枠12の内部空間に向かって延びる突起部と言ってもよい。
【0046】
挿入部172の上下方向の幅(厚み)は、横枠12の上下方向の内面同士の距離よりも小さく、したがって、挿入部172は横枠12内で上下方向にアソビ(間隙)を有する。同様に、挿入部171の左右方向の幅(厚み)は、縦枠11の左右方向の内面同士の距離よりも小さく、したがって、挿入部171は縦枠11内で左右方向にアソビ(間隙)を有する。
【0047】
かかるアソビは、スペーサー部材17が縦枠位置調整手段15および横枠位置調整手段16の進退に伴って縦方向及び横方向に変位することを許容する。また、挿入部171,172の変位が縦枠11及び横枠12の内部空間という限られた範囲に規制されるため、挿入部171,172は、スペーサー部材17の位置ずれおよび枠材の位置ずれの防止機能を果たす。
【0048】
また、スペーサー部材17のY軸方向の外面は、Y軸方向において枠材の外面と同じ位置か、又は、枠材の外面よりも内側に位置することが好ましい。そのようにすることで、スペーサー部材17が枠材の外面に取り付けられたシート材13に当接することで発生する皺を防止することができる。
【0049】
また、挿入部172のY軸方向の幅(厚み)は、横枠12のY軸方向の内面同士の距離と略同じであることが好ましい。同様に、挿入部171のY軸方向の幅(厚み)は、縦枠11のY軸方向の内面同士の距離と略同じであることが好ましい。このようにすることで、スペーサー部材17のY軸方向への変位が抑制され、スペーサー部材17の当接によるシート材13の皺の発生をより好適に防止することができる。
【0050】
スペーサー部材17は、縦枠位置調整手段15および横枠位置調整手段16からの押圧に耐え得るほどの強度及び不燃性を有している限り、金属材料、樹脂材料などの素材を問わない。
【0051】
図3に示すように、防煙垂壁1は、縦枠11と連結部材14とを所望の位置関係で固定する縦枠位置固定手段18、及び、横枠12と連結部材14とを所望の位置関係で固定する横枠位置固定手段19を具備してもよい。縦枠位置固定手段18及び横枠位置固定手段19の一例としては、連結部材14の係合部(ネジ穴)145,146と係合するネジ(位置固定ネジ)が挙げられる。
【0052】
かかる位置固定ネジは、その頭部を回すことで連結部材14に対して進退する。位置固定ネジの前進に伴って位置固定ネジの先端が連結部材14から突出して枠材の本体に接触する。位置固定ネジの更なる前進に伴い、位置固定ネジにおける連結部材14からの突出長さが大きくなり、連結部材14が枠材の本体から遠ざけられる。このとき、連結部材14は、第一及び第二ガイド112,122の内面(具体的には鉤状部材112A,112Bおよび鉤状部材122A,122Bの先端部)に押し付けられ、移動(スライド)を規制される。これにより連結部材14が枠材に固定され、したがって縦枠11および横枠12の位置関係が固定される。
【0053】
1-2.防煙垂壁1の施工
本実施形態における防煙垂壁1の施工について説明する。
【0054】
(1)まず縦枠11と横枠12とを連結部材14で連結する。例えば、縦枠11にスペーサー部材17を取り付け、連結部材14の第一平板部141を第一ガイド112に挿入する。次いで、連結部材14の第二平板部142を第二ガイド122に挿入することで、縦枠11と横枠12とを連結する。なお、縦枠11および横枠12は、工場出荷時の長さのまま使用されてもよいし、取付場所の寸法等に応じて現場で長さ調節(切断等)してもよい。
【0055】
(2)両面テープ等の固定手段を用いて枠材にシート材13を取り付ける。このとき、シート材13に多少の皺が生じても差し支えない。また、シート材13に多少のたるみが生じても構わない。
【0056】
(3)縦枠位置調整手段15および横枠位置調整手段16を連結部材14に対して進退させて、縦枠11および横枠12の位置を調整する(
図5参照)。例えば、位置調節ネジをドライバー等で連結部材14のネジ孔にねじ込むことで、縦枠11および横枠12を縦方向及び横方向に変位させる。これにより、シート材13に掛かるテンションを調整して、シート材13の皺およびたるみを解消する。
【0057】
(4)縦枠位置固定手段18および横枠位置固定手段19を連結部材14に対して進めることで、連結部材14と縦枠11及び横枠12のそれぞれの位置関係を固定する。例えば、位置固定ネジをドライバー等で連結部材14の対応するネジ孔にねじ込む。これによって、縦枠11と横枠12との位置関係を固定する。
【0058】
このようにして組み立てた複数の防煙垂壁1を例えばレール、ジョイント等により連結して天井等に取り付けることで、防煙区画を所望の位置に取り付ける。
【0059】
1-3.実施形態1の効果
実施形態1では、縦枠位置調整手段15および横枠位置調整手段16をそれぞれ連結部材14に対して進退させることで、縦枠11を縦方向に、横枠12を横方向にそれぞれ変位させることが可能である。縦枠11及び横枠12の変位は、縦枠位置調整手段15および横枠位置調整手段16の一例としての位置調整ネジの調節により簡易に実施可能である。これにより上下および左右の両方向へのシート材13のテンション調整が簡易に実施可能となり、シート材13を正確に縦枠11及び横枠12に取り付ける必要がなくなるだけでなく、シート材13の取付を簡易迅速に行うことができる。
【0060】
より詳しく説明すると、連結部材14を縦枠11及び横枠12の外側に(第一及び第二ガイド112,122に)挿入・嵌合し、枠体の位置決めを行う。併せて、縦枠及び横枠位置調整手段15,16によりスペーサー部材17を押すことで、縦枠11及び横枠12を変位させ、縦方向及び横方向に適切なテンションをシート材13に掛けることが可能となる。
【0061】
加えて、2方向のテンション調整が可能となることで、縦枠11及び横枠12の長さのバラツキにより枠体の角部の直角度が崩れることで発生する皺の解消も容易に行うことができる。したがって、施工現場での長さ調節(切断等)を実施しやすくなる。
【0062】
また、スペーサー部材17が、縦枠11の端部111および横枠12の端部121と連結部材14との間に介在し、縦枠位置調整手段15および横枠位置調整手段16の両方に当接可能である。これにより、位置調整手段15,16はスペーサー部材17とのみ接触するため、縦枠11および横枠12の端面に位置調整手段15,16との接触面ないし押圧面を設ける必要性がなくなる。
【0063】
したがって、縦枠11および横枠12を所望の位置で切断することができ、現場での縦枠11および横枠12の長さ調整を容易に行うことが可能となる。加えて、スペーサー部材17を縦枠11と横枠12とで共通化でき、部品数を減らすことができるから、製造コスト削減につながる。
【0064】
また、連結部材14は、縦枠11の第一ガイド112に沿ってスライドするとともに、横枠12の第二ガイド122に沿ってスライドする。すなわち、連結部材14のスライドの方向が略直交する2方向に規制されるため、縦枠11および横枠12の連結や位置調整が容易となる。
【0065】
また、縦枠位置固定手段18が縦枠11と連結部材14とを固定し、横枠位置固定手段19が横枠12と前記連結部材14とを固定することで、縦枠11および横枠12を所望の位置関係で固定することができる。
【0066】
2.実施形態2
図6~
図10を参照して、実施形態2に係る防煙垂壁2を説明する。
【0067】
2-1.防煙垂壁2の構成
防煙垂壁2は、対向する一対の縦枠21(21A,21B)と、対向する一対の横枠22(22A,22B)と、シート材23と、連結部材24と、縦枠位置調整手段25と、横枠位置調整手段26と、スペーサー部材27と、縦枠位置固定手段28と、横枠位置固定手段29と、を具備する(例えば
図6~
図8参照)。実施形態1に係る防煙垂壁1との主な相違はスペーサー部材27にあるので、以下、スペーサー部材27を中心に防煙垂壁2を説明する。
【0068】
図8に示すように、スペーサー部材27は、縦枠21の端部211と連結部材24との間に介在するキャップ27A、及び、横枠22の端部221と連結部材24との間に介在するキャップ27Bを含む。キャップ27Aは縦枠位置調整手段25に、キャップ27Bは横枠位置調整手段26に、それぞれ当接可能である。
【0069】
本実施形態では縦枠21及び横枠22の端部211,221の両方にキャップ27A,27Bが設けられているが、縦枠21及び横枠22の端部211,221の一方にのみキャップが設けられてもよい。また、スペーサー部材27は、縦枠位置調整手段25および横枠位置調整手段26による押圧に耐えうる強度を有していれば、樹脂材料、金属材料など、どのような材料で作製されてもよい。
【0070】
このようなスペーサー部材27の採用に伴い、横枠22の端部221はキャップ27Bを介して連結部材24の第一平板部241に向かい合い、他方、縦枠21の端部211はキャップ27Aを介して横枠22の縦方向の内面に向かい合う。つまり、縦枠21の端部211およびキャップ27Aと連結部材24の第二平板部242および縦枠位置調節手段25との間に横枠22が介在する。
【0071】
かかる配置の下で縦枠21の縦方向への変位を可能にするため(つまり横枠22が縦枠位置調整手段25の進退を妨げないように)、横枠22の端部221には、縦枠位置調整手段25を挿通させるための長孔223(スリット、切欠き)が設けられている(
図9参照)。長孔223は、縦枠位置調整手段25の横方向の長さ(幅)よりも横方向に長く形成されており、横枠位置調整手段26の進退に伴う横枠22の変位を可能にする役割をも果たしている。
【0072】
あるいは、縦枠21および横枠22は、上記とは逆の配置でもよい。この場合、長孔223に相当する孔が縦枠21の端部211に形成されることになる。
【0073】
2-2.防煙垂壁2の施工
防煙垂壁2の施工について、実施形態1との相違を中心に説明する。
【0074】
(1)縦枠21及び横枠22の端部211,221にキャップ27A,27Bをそれぞれ取り付ける。必要に応じて、事前に縦枠21及び横枠22の長さを調整しておく。
【0075】
(2)縦枠21の第一ガイド212に連結部材24の第一平板部241を挿入する。次いで、横枠22の第二ガイド222に連結部材24の第二平板部242を挿入しながら、縦枠21及び横枠22を組み合わせる。このとき、長孔223を有する横枠22の端部221(キャップ27B)を連結部材24の第一平板部241に接近させ、次いで縦枠21の端部211(キャップ27A)を横枠22の内面に接近させる。
【0076】
(3)枠材にシート材23を取り付ける。このとき、シート材23の正確な位置決めは必要でない。
【0077】
(4)縦枠および横枠位置調整手段25,26を連結部材24に対して進退させて縦枠21および横枠22の位置を調整し、それによりシート材23に掛かるテンションを調整する。このとき、縦枠位置調整手段25は長孔223を通ってキャップ27Aに接触することができるから、縦枠位置調整手段25の進退によりキャップ27Aおよび縦枠21を縦方向に変位させることが可能となる(
図10参照)。また、長孔223が縦枠位置調整手段25の外径よりも横方向に長く形成されていることで、横枠22の横方向の変位を確保できる。
【0078】
2-3.実施形態2の効果
実施形態2に係る防煙垂壁2は、実施形態1と同様の効果を奏するが、とりわけ、縦枠および横枠位置調整手段25,26はスペーサー部材27(キャップ27A,27B)とだけ接触するため、縦枠21および横枠22のそれぞれに位置調整手段25,26との接触面ないし押圧面を設ける必要性がなくなる。したがって、縦枠21および横枠22を所望の位置で切断することができ、現場での縦枠21および横枠22の長さ調整を容易に行うことが可能となる。
【0079】
3.変形例
図11~
図12を参照して、実施形態1,2の変形例に係る防煙垂壁3を説明する。
【0080】
防煙垂壁3は、対向する一対の縦枠31(31A,31B)と、対向する一対の横枠32(32A,32B)と、シート材33と、連結部材34と、縦枠位置調整手段35と、横枠位置調整手段36と、を少なくとも具備する。すなわち、防煙垂壁3は、スペーサー部材17,27を備えないことを除き、実施形態1,2に係る防煙垂壁3と共通する。
【0081】
縦枠位置調整手段35及び横枠位置調整手段36は、縦枠31の端部311及び横枠32の端部321と直接的に接触し、縦枠31及び横枠32を変位させる(
図12参照)。
【0082】
防煙垂壁3は、実施形態1,2と同様に施工することができる。ただし、縦枠31及び横枠32は中空の部材であるから、この場合、縦枠位置調整手段35及び横枠位置調整手段36が縦枠31の端部311及び横枠32の端部321と確実に接触するように、縦枠位置調整手段35及び横枠位置調整手段36を適切に配置するものとする。また、枠材の端部を中実状に形成することも可能である。
【0083】
かかる変形例では、実施形態1,2と同様にシート材33に対して縦横へのテンション調節を許容しつつ、スペーサー部材17,27の分だけ部品点数が減ることから、製造コスト及び作業工程の低減につながる。
【0084】
以上、本発明の代表的な実施形態について説明したが、本発明はこれらのみに限定されるものではなく、種々の設計変更が可能であり、かかる設計変更後の態様(変形例)も本発明の技術的範囲に含まれることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0085】
1,2,3 防煙垂壁
11,11A,11B,21,21A,21B,31,31A,31B 縦枠
12,12A,12B,22,22A,22B,32,32A,32B 横枠
13,23,33 シート材
14,24,34 連結部材
15,25,35 縦枠位置調整手段
16,26,36 横枠位置調整手段
17,27 スペーサー部材
18,28 縦枠位置固定手段
19,29 横枠位置固定手段