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特開2023-72318ブレーカー、安全回路及び2次電池パック
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023072318
(43)【公開日】2023-05-24
(54)【発明の名称】ブレーカー、安全回路及び2次電池パック
(51)【国際特許分類】
   H01H 37/04 20060101AFI20230517BHJP
   H01H 37/54 20060101ALI20230517BHJP
【FI】
H01H37/04 A
H01H37/54 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021184780
(22)【出願日】2021-11-12
(71)【出願人】
【識別番号】390025140
【氏名又は名称】ボーンズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(72)【発明者】
【氏名】浪川 勝史
【テーマコード(参考)】
5G041
【Fターム(参考)】
5G041AA20
5G041BB06
5G041CD03
5G041CD08
5G041CD10
5G041DA12
5G041DB07
5G041DC08
(57)【要約】
【課題】ケースの溶着時に切削粉の発生を抑制できるブレーカーを提供する。
【解決手段】ブレーカー1は、固定接点21と、弾性変形する弾性部44及び該弾性部44の一端部に可動接点41を有し、可動接点41を固定接点21に押圧して接触させる可動片4と、温度変化に伴って変形することにより、可動片4を可動接点41が固定接点21に接触する導通状態から可動接点41が固定接点21から離隔する遮断状態に移行させる熱応動素子5と、固定接点21、可動片4及び熱応動素子5を収容する収容凹部73を有するケース本体7と、ケース本体7に固着されて収容凹部73を覆う蓋部材8とを備える。蓋部材8は、可動片4の一部を埋設する埋設部と、蓋部材8の厚さ方向に陥没する第1凹部を有し、ケース本体7は、第1凹部に嵌め合わせられる第1凸部を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定接点と、
弾性変形する弾性部及び該弾性部の一端部に可動接点を有し、前記可動接点を前記固定接点に押圧して接触させる可動片と、
温度変化に伴って変形することにより、前記可動片を前記可動接点が前記固定接点に接触する導通状態から前記可動接点が前記固定接点から離隔する遮断状態に移行させる熱応動素子と、
前記固定接点、前記可動片及び前記熱応動素子を収容する収容凹部を有する第1樹脂ケースと、
前記第1樹脂ケースに固着されて前記収容凹部を覆う第2樹脂ケースとを備えたブレーカーであって、
前記第2樹脂ケースは、前記可動片の一部を埋設する埋設部と、前記第2樹脂ケースの厚さ方向に陥没する第1凹部を有し、
前記第1樹脂ケースは、前記第1凹部に嵌め合わせられる第1凸部を有する、
ブレーカー。
【請求項2】
前記第1凸部は、前記可動片の短手方向に垂直な第1側面と、前記可動片の長手方向に垂直な第2側面とを含む、請求項1に記載のブレーカー。
【請求項3】
前記第1樹脂ケースは、前記第1凸部の前記可動片の短手方向の外側に形成された第1スロープを有し、
前記第2樹脂ケースは、前記第1スロープに対応する第2スロープを有する、請求項1または2に記載のブレーカー。
【請求項4】
前記第2スロープには、前記第2樹脂ケースの外縁に沿って前記第1樹脂ケースの側に突出するリブが形成されている、請求項3に記載のブレーカー。
【請求項5】
前記リブは、前記第2スロープから前記埋設部に亘って連続的に形成されている、請求項4に記載のブレーカー。
【請求項6】
前記第1樹脂ケースは、前記固定接点の側に第2凹部を有し、
前記第2樹脂ケースは、前記第2凹部に嵌め合わせられる第2凸部を有する、請求項1ないし5のいずれか一項に記載のブレーカー。
【請求項7】
前記第1凸部は、前記収容凹部よりも前記可動片の長手方向の外側に配されている、請求項1ないし6のいずれか一項に記載のブレーカー。
【請求項8】
前記第2樹脂ケースは、前記埋設部から前記可動接点の側に突出する突出部を含み、
前記第1凹部は、前記突出部に対して前記可動片の短手方向の両側に形成されている、請求項1ないし7のいずれか一項に記載のブレーカー。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかに記載のブレーカーを備える、電気機器用の安全回路。
【請求項10】
請求項1ないし8のいずれかに記載のブレーカーを備える、2次電池パック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機器等に内蔵される小型のブレーカー等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種電気機器の2次電池やモーターやヒーター等の保護装置(安全回路)としてブレーカーが使用されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO2011/105175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1には、ケース本体と蓋部材とが超音波溶着されてケースを構成するブレーカーが開示されている。
【0005】
しかしながら、溶着時の振動で可動片がケース本体の収容凹部に対して位置ずれし、可動片がケース本体に干渉した状態で振動すると、ケース本体の樹脂が可動片によって削られ、切削粉が発生する。切削粉が移動して固定接点と可動接点との間に介在すると、接点不良が生ずるおそれがある。
【0006】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、ケースの溶着時に切削粉の発生を抑制できるブレーカーを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、固定接点と、弾性変形する弾性部及び該弾性部の一端部に可動接点を有し、前記可動接点を前記固定接点に押圧して接触させる可動片と、温度変化に伴って変形することにより、前記可動片を前記可動接点が前記固定接点に接触する導通状態から前記可動接点が前記固定接点から離隔する遮断状態に移行させる熱応動素子と、前記固定接点、前記可動片及び前記熱応動素子を収容する収容凹部を有する第1樹脂ケースと、前記第1樹脂ケースに固着されて前記収容凹部を覆う第2樹脂ケースとを備えたブレーカーであって、前記第2樹脂ケースは、前記可動片の一部を埋設する埋設部と、前記第2樹脂ケースの厚さ方向に陥没する第1凹部を有し、前記第1樹脂ケースは、前記第1凹部に嵌め合わせられる第1凸部を有する。
【0008】
本発明に係る前記ブレーカーにおいて、前記第1凸部は、前記可動片の短手方向に垂直な第1側面と、前記可動片の長手方向に垂直な第2側面とを含む、ことが望ましい。
【0009】
本発明に係る前記ブレーカーにおいて、前記第1樹脂ケースは、前記第1凸部の前記可動片の短手方向の外側に形成された第1スロープを有し、前記第2樹脂ケースは、前記第1スロープに対応する第2スロープを有する、ことが望ましい。
【0010】
本発明に係る前記ブレーカーにおいて、前記第2スロープには、前記第2樹脂ケースの外縁に沿って前記第1樹脂ケースの側に突出するリブが形成されている、ことが望ましい。
【0011】
本発明に係る前記ブレーカーにおいて、前記リブは、前記第2スロープから前記埋設部に亘って連続的に形成されている、ことが望ましい。
【0012】
本発明に係る前記ブレーカーにおいて、前記第1樹脂ケースは、前記固定接点の側に第2凹部を有し、前記第2樹脂ケースは、前記第2凹部に嵌め合わせられる第2凸部を有する、ことが望ましい。
【0013】
本発明に係る前記ブレーカーにおいて、前記第1凸部は、前記収容凹部よりも前記可動片の長手方向の外側に配されている、ことが望ましい。
【0014】
本発明に係る前記ブレーカーにおいて、前記第2樹脂ケースは、前記埋設部から前記可動接点の側に突出する突出部を含み、前記第1凹部は、前記突出部に対して前記可動片の短手方向の両側に形成されている、ことが望ましい。
【0015】
本発明は、前記ブレーカーを備える、電気機器用の安全回路である。
【0016】
本発明は、前記ブレーカーを備える、2次電池パックである。
【発明の効果】
【0017】
本発明のブレーカーでは、可動片の一部が第2樹脂ケースに埋設される。これにより、可動片が第2樹脂ケースに対して正確な位置に固定される。第1樹脂ケースは、第2樹脂ケースの第1凹部に嵌め合わせられる第1凸部を有する。第1凹部と第1凸部との嵌合により、溶着時における第1樹脂ケースに対する第2樹脂ケースの位置ずれが抑制される。従って、可動片が第1樹脂ケースに対して正確に位置決めされることとなり、溶着時の振動による可動片の位置ずれが抑制され、切削粉の発生が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明によって製造されるブレーカーの組立前の状態を示す斜視図。
図2】通常の充電又は放電状態における上記ブレーカーを示す断面図。
図3】過充電状態又は異常時などにおける上記ブレーカーを示す断面図。
図4】可動片及びカバー片が埋設された蓋部材を示す斜視図。
図5】固定片が埋設されたケース本体を示す斜視図。
図6】本発明の上記ブレーカーを備えた2次電池パックの構成を示す平面図。
図7】本発明の上記ブレーカーを備えた安全回路の回路図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の一実施形態によるブレーカーについて図面を参照して説明する。図1乃至図3は、本発明によって製造されるブレーカー1の構成を示している。ブレーカー1は、電気機器等に実装され、過度な温度上昇又は過電流から電気機器を保護する。
【0020】
ブレーカー1は、固定接点21を有する固定片2と、一端部に可動接点41を有する可動片4と、温度変化に伴って変形する熱応動素子5と、PTC(Positive Temperature Coefficient)サーミスター6と、固定片2、可動片4、熱応動素子5及びPTCサーミスター6を収容する樹脂ケース10等によって構成されている。樹脂ケース10は、ケース本体(第1樹脂ケース)7とケース本体7の上面に装着される蓋部材(第2樹脂ケース)8等によって構成されている。
【0021】
固定片2は、例えば、銅等を主成分とする金属板(この他、銅-チタニウム合金、洋白、黄銅などの金属板)をプレス加工することにより形成され、インサート成形によりケース本体7に埋め込まれている。固定片2の一端側には外部回路と電気的に接続される端子22が形成され、他端側には、PTCサーミスター6を支持する支持部23が形成されている。端子22は、ケース本体7の外側に突出している。PTCサーミスター6は、固定片2の支持部23に3箇所形成された凸状の突起(ダボ)24の上に載置されて、突起24に支持される。固定片2が階段状に曲げられることにより、固定接点21と支持部23とが段違いに配置され、PTCサーミスター6を収納する空間が容易に確保される。
【0022】
固定接点21は、銀、ニッケル、ニッケル-銀合金の他、銅-銀合金、金-銀合金などの導電性の良い材料のクラッド、メッキ、溶接又は塗布等により可動接点41に対向する位置に形成され、ケース本体7の内部に形成されている開口73aの一部から露出されている。端子22はケース本体7の端縁から外側に突き出されている。支持部23は、ケース本体7の内部に形成されている開口73dから露出されている。
【0023】
本出願においては、特に断りのない限り、固定片2において、固定接点21が形成されている側の面(すなわち図1において上側の面)を第1面、その反対側の面を第2面として説明している。他の部品、例えば、可動片4及び熱応動素子5、PTCサーミスター6、樹脂ケース10等についても同様である。
【0024】
可動片4は、銅等を主成分とする板状の金属材料をプレス加工することにより、長手方向の中心線に対して対称なアーム状に形成されている。可動片4の一部(後述する固定部43)は、蓋部材8にインサート成形により埋め込まれている。
【0025】
可動片4の長手方向の一端部には、可動接点41が形成されている。可動接点41は、例えば、固定接点21と同等の材料によって形成され、溶接の他、クラッド、かしめ(crimping)等の手法によって可動片4の一端部に接合されている。
【0026】
可動片4の他端部には、外部回路と電気的に接続される端子42が形成されている。端子42は、蓋部材8の端縁から外側に突き出されている。可動接点41と端子42との間には、蓋部材8に埋設され固定される固定部43が設けられている。固定部43は端子42の側に配されている。
【0027】
可動片4は、可動接点41と固定部43との間に、弾性部44を有している。弾性部44は、固定部43から可動接点41の側に延出されている。可動片4は、弾性部44の基端側の固定部43で、蓋部材8によって片持ち支持され、その状態で弾性部44が第1面の側に弾性変形することにより、弾性部44の先端部に形成されている可動接点41が固定接点21の側に押圧されて接触し、固定片2と可動片4とが通電可能となる。
【0028】
可動片4は、弾性部44において、プレス加工により湾曲又は屈曲されているのが望ましい。湾曲又は屈曲の度合いは、熱応動素子5を収納できる限り特に限定はなく、動作温度及び復帰温度における弾性力、接点の押圧力などを考慮して適宜設定すればよい。また、弾性部44の第2面には、熱応動素子5に対向して一対の突起(接触部)44a,44bが形成されている。突起44a,44bと熱応動素子5とは接触して、突起44a,44bを介して熱応動素子5の変形が弾性部44に伝達される(図1図2及び図3参照)。
【0029】
熱応動素子5は、可動片4とPTCサーミスター6との間に配されている。すなわち、熱応動素子5は、後述するPTCサーミスター6の第1面上に載置されている。熱応動素子5は、可動片4の状態を可動接点41が固定接点21に接触する導通状態から可動接点41が固定接点21から離隔する遮断状態に移行させる。熱応動素子5は、熱膨張率の異なる薄板材を積層することにより板状に形成され、断面が円弧状に湾曲した初期形状をなしている。過熱により反転動作温度に達すると、熱応動素子5の湾曲形状は、スナップモーションを伴って逆反りし、冷却により正転復帰温度を下回ると復元する。熱応動素子5の初期形状は、プレス加工により形成することができる。所期の温度で熱応動素子5の逆反り変形により可動片4の弾性部44が押し上げられ、かつ弾性部44の弾性力により元に戻る限り、熱応動素子5の材料及び形状は特に限定されるものでないが、生産性及び逆反り変形の効率性の観点から矩形状が望ましい。
【0030】
熱応動素子5の材料としては、洋白、黄銅、ステンレス鋼等の各種の合金からなる熱膨張率の異なる2種類の材料を積層したものが、所要条件に応じて組み合わせて使用される。例えば、安定した反転動作温度及び正転復帰温度が得られる熱応動素子5の材料としては、高膨脹側に銅-ニッケル-マンガン合金、低膨脹側に鉄-ニッケル合金を組み合わせたものが望ましい。また、化学的安定性の観点からさらに望ましい材料として、高膨脹側に鉄-ニッケル-クロム合金、低膨脹側に鉄-ニッケル合金を組み合わせたものが挙げられる。さらにまた、化学的安定性及び加工性の観点からさらに望ましい材料として、高膨脹側に鉄-ニッケル-クロム合金、低膨脹側に鉄-ニッケル-コバルト合金を組み合わせたものが挙げられる。
【0031】
PTCサーミスター6は、可動片4が遮断状態にあるとき、熱応動素子5を介して固定片2と可動片4とを導通させる。PTCサーミスター6は、固定片2と熱応動素子5との間に配設されている。すなわち、PTCサーミスター6を挟んで、固定片2の支持部23は熱応動素子5の直下に位置している。熱応動素子5の逆反り変形により固定片2と可動片4との通電が遮断されたとき、PTCサーミスター6に流れる電流が増大する。PTCサーミスター6は、温度上昇と共に抵抗値が増大して電流を制限する正特性サーミスターであれば、作動電流、作動電圧、作動温度、復帰温度などの必要に応じて種類を選択でき、その材料及び形状はこれらの諸特性を損なわない限り特に限定されるものではない。本実施形態では、チタニウム酸バリウム、チタニウム酸ストロンチウム又はチタニウム酸カルシウムを含むセラミック焼結体が用いられる。セラミック焼結体の他、ポリマーにカーボン等の導電性粒子を含有させたいわゆるポリマーPTCを用いてもよい。
【0032】
樹脂ケース10を構成するケース本体7及び蓋部材8は、難燃性のポリアミド、耐熱性に優れたポリフェニレンサルファイド(PPS)、液晶ポリマー(LCP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などの熱可塑性樹脂により成形されている。上述した樹脂と同等以上の特性が得られるのであれば、樹脂以外の材料を適用してもよい。
【0033】
ケース本体7の第1面側には、固定接点21、可動片4、熱応動素子5及びPTCサーミスター6などを収容するための内部空間である収容凹部73が形成されている。収容凹部73は、固定接点21、可動片4を収容するための開口73a、可動片4及び熱応動素子5を収容するための開口73c、並びに、PTCサーミスター6を収容するための開口73d等を有している。なお、ケース本体7に組み込まれた可動片4、熱応動素子5の端縁は、収容凹部73を構成する枠によってそれぞれ当接され、熱応動素子5の逆反り変形時に案内される。すなわち、収容凹部73は、可動片4及び熱応動素子5を変形可能に収容する。
【0034】
蓋部材8は、収容凹部73を覆うように構成されている。蓋部材8は、収容凹部73の少なくとも一部を覆う形態であってもよい。蓋部材8には、銅等を主成分とする金属板又はステンレス鋼等のカバー片9がインサート成形によって埋め込まれている。カバー片9は、可動片4の固定部43の第1面と当接した状態で、固定部43と共に蓋部材8に埋設される。カバー片9は、可動片4の動きを規制すると共に、蓋部材8ひいては筐体としての樹脂ケース10の剛性・強度を高めつつブレーカー1の小型化に貢献する。
【0035】
ケース本体7及び蓋部材8は、上記樹脂材料を用いた射出成形により形成される。既に述べたように、ケース本体7には、固定片2がインサートされ、蓋部材8には、可動片4及びカバー片9がインサートされる。
【0036】
図1が示すように、固定片2、可動片4、熱応動素子5及びPTCサーミスター6等を収容したケース本体7の開口73a、73c等を塞ぐように、蓋部材8が、ケース本体7に装着される。蓋部材8によって収容凹部73を覆われる。ケース本体7と蓋部材8とは、例えば超音波溶着によって接合される。これにより、樹脂ケース10が形成される。
【0037】
図2及び図3は、ブレーカー1の動作の概略を示している。図2は、通常の充電又は放電状態におけるブレーカー1の動作を示している。通常の充電又は放電状態においては、熱応動素子5は逆反り前の初期形状を維持している。弾性部44によって可動接点41が固定接点21の側に押圧されることにより、可動接点41と固定接点21とが接触し、可動片4の弾性部44を介してブレーカー1の固定片2と可動片4とが導通可能な状態とされる。
【0038】
可動片4の弾性部44と熱応動素子5とは接触していてもよい。この場合、可動片4、熱応動素子5、PTCサーミスター6及び固定片2は、回路として導通している。しかし、PTCサーミスター6の抵抗は、可動片4の抵抗に比べて圧倒的に大きいため、PTCサーミスター6を流れる電流は、固定接点21及び可動接点41を流れる量に比して実質的に無視できる程度である。
【0039】
図3は、過充電状態又は異常時などにおけるブレーカー1の動作を示している。熱膨張率の異なる薄板材が積層された構造の熱応動素子5は、温度上昇に伴い、図2に示される湾曲した初期形状が是正されるように変形する。そして、動作温度に達した熱応動素子5は、図3に示されるように逆反り形状にスナップ変形する。これにより、熱応動素子5が可動片4の弾性部44と接触し、熱応動素子5によって弾性部44が押し上げられて固定接点21と可動接点41とが離隔する。このとき、固定接点21と可動接点41の間を流れていた電流は遮断される。一方、熱応動素子5は、可動片4と接触して、僅かな漏れ電流が熱応動素子5及びPTCサーミスター6を通して流れることとなる。すなわち、PTCサーミスター6は、可動片4を遮断状態に移行させている熱応動素子5を介して、固定片2と可動片4とを導通させる。PTCサーミスター6は、このような漏れ電流の流れる限り発熱を続け、熱応動素子5を逆反り状態に維持させつつ抵抗値を激増させるので、電流は固定接点21と可動接点41の間の経路を流れず、上述の僅かな漏れ電流のみが存在する(自己保持回路を構成する)。この漏れ電流は安全装置の他の機能に充てることができる。
【0040】
過充電状態を解除し、又は異常状態を解消すると、PTCサーミスター6の発熱も収まり、熱応動素子5は正転復帰温度に戻り、元の初期形状に復元する。そして、可動片4の弾性部44の弾性力によって可動接点41と固定接点21とは再び接触し、回路は遮断状態を解かれ、図2に示す導通状態に復帰する。
【0041】
図4は、可動片4及びカバー片9が埋設された蓋部材8を示している。蓋部材8は、可動片4を埋設する埋設部81と、第1凹部82を有している。
【0042】
埋設部81は可動片4の固定部43を埋設する。これにより、可動片4が蓋部材8に対して正確な位置に固定される。埋設部81は、蓋部材8の端子42側の端縁に沿って可動片4の短手方向D1に延びて形成されている。本実施形態の埋設部81は、蓋部材8の短手方向D1の端縁まで延びている。
【0043】
第1凹部82は、埋設部81から蓋部材8の厚さ方向に陥没している。第1凹部82は、可動片4の短手方向D1の両外側に亘って形成されている。さらに、本実施形態の第1凹部82は、可動片4の長手方向D2に沿って形成されている。第1凹部82は、可動片4の可動接点41及び弾性部44を収容する収容凹部83の一部を構成する。蓋部材8に第1凹部82が形成されることにより、カバー片9は、収容凹部83に露出している。
【0044】
図5は、固定片2が埋設されたケース本体7を示している。ケース本体7は、蓋部材8の側に突出する第1凸部74を有している。第1凸部74は、第1凹部82に対応する位置及び形状に形成されている。蓋部材8がケース本体7に装着されるとき、ケース本体7の第1凸部74は、蓋部材8の第1凹部82に嵌め合わせられる。
【0045】
第1凹部82と第1凸部74との嵌合により、溶着時におけるケース本体7に対する蓋部材8の位置ずれが抑制される。このとき、可動片4はインサート成形により蓋部材8に対して正確な位置に固定されているので、可動片4が蓋部材8を介してケース本体7に対して正確に位置決めされる。これにより、溶着時の振動による収容凹部63に対する可動片4の位置ずれが抑制され、切削粉の発生が抑制される。
【0046】
第1凸部74は、可動片4の短手方向D1に垂直な第1側面74aと、可動片4の長手方向D2に垂直な第2側面74bとを含む、のが望ましい。第1側面74aと第2側面74bとは、互いに直交している。
【0047】
図4に示されるように、第1凹部82は、第1側面74aに対向する第3側面82aと、第2側面74bに対向する第4側面82bとを含んでいる。第1側面74aと第3側面82aとが当接することにより、ケース本体7に対する蓋部材8の短手方向D1の位置ずれが抑制される。第2側面74bと第4側面82bとが当接することにより、ケース本体7に対する蓋部材8の長手方向D2の位置ずれが抑制される。
【0048】
図4に示されるように、蓋部材8は、第1底面84aと第2底面84bとを有している。第1底面84aは、可動接点41の周辺から弾性部44の側方に亘って形成されている。第2底面84bは、埋設部81に形成されている。
【0049】
埋設部81は、可動片4の固定部43を埋設する関係上、ケース本体7の側に突出している。このため、第2底面84bは、第1底面84aよりもケース本体7の側に突出している。
【0050】
図5に示されるように、ケース本体7は、第1天面75aと第2天面75bとを有している。第1天面75aは、固定接点21の周辺から収容凹部73の側方の周辺に亘って形成されている。第2天面75bは、収容凹部73に対して可動片4の端子42の側に形成されている。
【0051】
図4、5に示されるように、第1天面75aに対する第2天面75bの高さは、第1底面84aに対する第2底面84bの高さに応じて設定される。このため、ケース本体7の底面(第2面)からの第1天面75aの高さは第2天面75bの高さよりも高く形成されている。ケース本体7に蓋部材8が装着されると、第1天面75aと第1底面84aとが当接し溶着され、第2天面75bと第2底面84bが当接し溶着される。
【0052】
ケース本体7には、一対の第1スロープ76が形成されている。第1スロープ76は、第1凸部74に対して短手方向D1の外側に形成されている。第1スロープ76は、第1天面75aと第2天面75bとの間に配され、高さ違いの第1天面75aと第2天面75bとを接続する。第1天面75a、第2天面75b及び第1スロープ76によって、ケース本体7の外縁を連続的に一周する外周部が構成される。
【0053】
蓋部材8には、一対の第2スロープ85が形成されている。第2スロープ85は、第1スロープ76に対応する位置すなわち第1凹部82に対して短手方向D1の外側に形成されている。第2スロープ85は、第1底面84aと第2底面84bとの間に配され、高さ違いの第1底面84aと第2底面84bとを接続する。第1底面84a、第2底面84b及び第2スロープ85によって、蓋部材8の外縁を連続的に一周する外周部が構成される。
【0054】
ケース本体7に蓋部材8が装着されると、第1スロープ76と第2スロープ85とが当接し溶着される。第1スロープ76及び第2スロープ85によって、第1天面75aと第2天面75bとの段差及び第1底面84aと第2底面84bとの段差が滑らかに吸収され、ケース本体7と蓋部材8との気密性が容易に高められる。
【0055】
第2スロープ85には、リブ86が形成されている、のが望ましい。リブ86は、蓋部材8の外縁に沿ってケース本体7の側に突出して形成されている。リブ86は、ケース本体7と蓋部材8とが溶着されるとき、その初期段階で溶融し、ケース本体7と蓋部材8との溶着を良好なものとする。
【0056】
リブ86は、第2スロープ85から埋設部81に亘って連続的に形成されている、のが望ましい。本実施形態のリブ86は、第1底面84a、第2スロープ85、第2底面84bに沿って蓋部材8の外縁を連続的に一周して形成されている。このようなリブ86によって、ケース本体7と蓋部材8との溶着がより一層良好となり、ケース本体7と蓋部材8との気密性が容易に高められる。
【0057】
リブ86の替わりに第1スロープ76にリブが形成されていてもよい。この場合、第1天面75a、第1スロープ76、第2天面75bに沿ってケース本体7の外縁を連続的に一周して形成されている、のが望ましい。
【0058】
ケース本体7には、第2凹部77が形成されている。第2凹部77は、熱応動素子5を収容するための開口73cよりも固定接点21の側に配されている。本実施形態では、固定接点21に対して短手方向D1の両側に、第2凹部77が設けられている。
【0059】
蓋部材8には、第2凸部87が形成されている。第2凸部87は、第2凹部77に対応する位置に形成されている。ケース本体7に蓋部材8が装着されたとき、第2凸部87は第2凹部77に嵌め合わせられる。第2凸部87が第2凹部77に嵌め合わせられることにより、固定接点21及び可動接点41の周辺で蓋部材8がケース本体7に対してより正確に位置決めされる。本実施形態では、第1凸部74と第1凹部82との嵌合及び第2凸部87と第2凹部77との嵌合によって、蓋部材8の全体が、ケース本体7に対してより正確に位置決めされ固着される。
【0060】
第1凸部74は、収容凹部73よりも長手方向D2の外側に配されている、のが望ましい。このような構成により、蓋部材8がケース本体7に対してより正確に位置決めされ固着される。さらに、第2凹部77は、収容凹部73を挟んで第1凸部74に対して長手方向D2の反対側に配されている、のが望ましい。このような構成により、蓋部材8が、その四隅の近傍で、ケース本体7に対してより正確に位置決めされ固着される。
【0061】
本実施形態の蓋部材8は、埋設部81から可動接点41の側に突出する突出部88を含んでいる。突出部88が設けられることにより、カバー片9と突出部88とによって可動片4が挟み込まれ、蓋部材8に対して可動片4が強固かつ正確な位置で固定される。
【0062】
突出部88は、一対の第1凹部82の間に形成されている、のが望ましい。換言すると、第1凹部82は、突出部88に対して短手方向D1の両側に形成されている、のが望ましい。このような配置によって、可動片4がケース本体7に対してより一層正確に位置決めされる。
【0063】
以上、本発明のブレーカー1が詳細に説明されたが、本発明は上記の具体的な実施形態に限定されることなく種々の態様に変更して実施される。
【0064】
すなわち、本発明のブレーカー1は、少なくとも、固定接点21と、弾性変形する弾性部44及び該弾性部44の一端部に可動接点41を有し、可動接点41を固定接点21に押圧して接触させる可動片4と、温度変化に伴って変形することにより、可動片4を可動接点41が固定接点21に接触する導通状態から可動接点41が固定接点21から離隔する遮断状態に移行させる熱応動素子5と、固定接点21、可動片4及び熱応動素子5を収容する収容凹部73を有するケース本体7と、ケース本体7に固着されて収容凹部73を覆う蓋部材8とを備えたブレーカー1であって、蓋部材8は、可動片4の一部を埋設する埋設部81と、蓋部材8の厚さ方向に陥没する第1凹部82を有し、ケース本体7は、第1凹部82に嵌め合わせられる第1凸部74を有していればよい。
【符号の説明】
【0065】
1 :ブレーカー
4 :可動片
5 :熱応動素子
6 :PTCサーミスター(熱応動素子)
7 :ケース本体(第1樹脂ケース)
8 :蓋部材(第2樹脂ケース)
10 :樹脂ケース
21 :固定接点
41 :可動接点
44 :弾性部
73 :収容凹部
74 :第1凸部
74a :第1側面
74b :第2側面
76 :第1スロープ
77 :第2凹部
81 :埋設部
82 :第1凹部
83 :収容凹部
85 :第2スロープ
86 :リブ
87 :第2凸部
88 :突出部
D1 :短手方向
D2 :長手方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7