(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023072333
(43)【公開日】2023-05-24
(54)【発明の名称】半導体発光素子および半導体発光素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 33/44 20100101AFI20230517BHJP
H01L 33/32 20100101ALI20230517BHJP
【FI】
H01L33/44
H01L33/32
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021184804
(22)【出願日】2021-11-12
(71)【出願人】
【識別番号】000226242
【氏名又は名称】日機装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 紀隆
(72)【発明者】
【氏名】稲津 哲彦
【テーマコード(参考)】
5F241
【Fターム(参考)】
5F241AA43
5F241CA04
5F241CA05
5F241CA13
5F241CA22
5F241CA40
5F241CA65
5F241CA66
5F241CA73
5F241CA74
5F241CA77
5F241CA92
5F241CA93
5F241CB05
5F241CB11
(57)【要約】
【課題】信頼性を十分に確保できる半導体発光素子を提供する。
【解決手段】半導体発光素子10は、ベース層12上に設けられ、n型AlGaN系半導体材料から構成されるn型半導体層14と、n型半導体層14上に設けられ、AlGaN系半導体材料から構成される活性層16と、活性層16上に設けられるp型半導体層18と、p型半導体層18の上面18aと接触するp側コンタクト電極20と、p側コンタクト電極20を被覆し、p型半導体層18の上面18aと接触し、SiO
2から構成される誘電体保護層24と、活性層16およびp型半導体層18のそれぞれの側面16d、18dと接触し、p型半導体層18の上面18aと接触し、誘電体保護層24を被覆し、Al
2O
3から構成される誘電体被覆層26と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース層上に設けられ、n型AlGaN系半導体材料から構成されるn型半導体層と、
前記n型半導体層上に設けられ、AlGaN系半導体材料から構成される活性層と、
前記活性層上に設けられるp型半導体層と、
前記p型半導体層の上面と接触するp側コンタクト電極と、
前記p側コンタクト電極を被覆し、前記p型半導体層の上面と接触し、SiO2から構成される誘電体保護層と、
前記活性層および前記p型半導体層のそれぞれの側面と接触し、前記p型半導体層の上面と接触し、前記誘電体保護層を被覆し、Al2O3から構成される誘電体被覆層と、を備える半導体発光素子。
【請求項2】
前記p型半導体層の上面と前記誘電体保護層が接触する第1面積は、前記p型半導体層の上面と前記誘電体被覆層が接触する第2面積よりも小さい、請求項1に記載の半導体発光素子。
【請求項3】
ベース層上に、n型AlGaN系半導体材料から構成されるn型半導体層、AlGaN系半導体材料から構成される活性層、および、p型半導体層を順に形成する工程と、
前記活性層および前記p型半導体層を部分的に除去し、前記n型半導体層を露出させる工程と、
前記p型半導体層の上面と接触するp側コンタクト電極を形成する工程と、
前記p側コンタクト電極を被覆し、前記p型半導体層の上面と接触し、前記活性層および前記p型半導体層のそれぞれの側面と接触し、SiO2から構成される誘電体保護層を形成する工程と、
前記誘電体保護層上において、前記p側コンタクト電極の全体と重なる領域にマスクを形成する工程と、
前記マスクと重ならない領域にある前記誘電体保護層をウェットエッチングにより除去し、前記活性層および前記p型半導体層のそれぞれの側面を露出させる工程と、
前記誘電体保護層を被覆し、前記活性層および前記p型半導体層のそれぞれの側面と接触し、Al2O3から構成される誘電体被覆層を形成する工程と、を備える半導体発光素子の製造方法。
【請求項4】
前記誘電体保護層は、前記p型半導体層の上面の一部が露出するように除去され、
前記誘電体被覆層は、前記p型半導体層の上面と接触するように形成される、請求項3に記載の半導体発光素子の製造方法。
【請求項5】
前記p側コンタクト電極上の前記誘電体保護層および前記誘電体被覆層をドライエッチングにより除去して接続開口を形成する工程と、
前記接続開口において前記p側コンタクト電極と接続するp側電流拡散層を形成する工程と、をさらに備える、請求項3または4に記載の半導体発光素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体発光素子および半導体発光素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体発光素子は、基板上に積層されるn型半導体層、活性層およびp型半導体層を有する。n型半導体層、活性層およびp型半導体層は、傾斜した側面を有する。傾斜した側面は、SiO2からなる保護膜によって被覆される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
保護膜に含まれるSiが活性層やp型半導体層に拡散すると、活性層やp型半導体層の信頼性が低下するおそれがある。
【0005】
本発明はこうした課題に鑑みてなされたものであり、信頼性を十分に確保できる半導体発光素子および半導体発光素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様の半導体発光素子は、ベース層上に設けられ、n型AlGaN系半導体材料から構成されるn型半導体層と、前記n型半導体層上に設けられ、AlGaN系半導体材料から構成される活性層と、前記活性層上に設けられるp型半導体層と、前記p型半導体層の上面と接触するp側コンタクト電極と、前記p側コンタクト電極を被覆し、前記p型半導体層の上面と接触し、SiO2から構成される誘電体保護層と、前記活性層および前記p型半導体層のそれぞれの側面と接触し、前記p型半導体層の上面と接触し、前記誘電体保護層を被覆し、Al2O3から構成される誘電体被覆層と、を備える
【0007】
本発明の別の態様は、半導体発光素子の製造方法である。この方法は、ベース層上に、n型AlGaN系半導体材料から構成されるn型半導体層、AlGaN系半導体材料から構成される活性層、および、p型半導体層を順に形成する工程と、前記活性層および前記p型半導体層を部分的に除去し、前記n型半導体層を露出させる工程と、前記p型半導体層の上面と接触するp側コンタクト電極を形成する工程と、前記p側コンタクト電極を被覆し、前記p型半導体層の上面と接触し、前記活性層および前記p型半導体層のそれぞれの側面と接触し、SiO2から構成される誘電体保護層を形成する工程と、前記誘電体保護層上において、前記p側コンタクト電極の全体と重なる領域にマスクを形成する工程と、前記マスクと重ならない領域にある前記誘電体保護層をウェットエッチングにより除去し、前記活性層および前記p型半導体層のそれぞれの側面を露出させる工程と、前記誘電体保護層を被覆し、前記活性層および前記p型半導体層のそれぞれの側面と接触し、Al2O3から構成される誘電体被覆層を形成する工程と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、信頼性を十分に確保できる半導体発光素子および半導体発光素子の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態に係る半導体発光素子の構成を概略的に示す断面図である。
【
図2】半導体発光素子の製造工程を概略的に示す図である。
【
図3】半導体発光素子の製造工程を概略的に示す図である。
【
図4】半導体発光素子の製造工程を概略的に示す図である。
【
図5】半導体発光素子の製造工程を概略的に示す図である。
【
図6】半導体発光素子の製造工程を概略的に示す図である。
【
図7】半導体発光素子の製造工程を概略的に示す図である。
【
図8】半導体発光素子の製造工程を概略的に示す図である。
【
図9】半導体発光素子の製造工程を概略的に示す図である。
【
図10】半導体発光素子の製造工程を概略的に示す図である。
【
図11】半導体発光素子の製造工程を概略的に示す図である。
【
図12】半導体発光素子の製造工程を概略的に示す図である。
【
図13】半導体発光素子の製造工程を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、説明の理解を助けるため、各図面における各構成要素の寸法比は、必ずしも実際の発光素子の寸法比と一致しない。
【0011】
本実施の形態に係る半導体発光素子は、中心波長λが約360nm以下となる「深紫外光」を発するように構成され、いわゆるDUV-LED(Deep UltraViolet-Light Emitting Diode)チップである。このような波長の深紫外光を出力するため、バンドギャップが約3.4eV以上となる窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)系半導体材料が用いられる。本実施の形態では、特に、中心波長λが約240nm~320nmの深紫外光を発する場合について示す。
【0012】
本明細書において、「AlGaN系半導体材料」とは、少なくとも窒化アルミニウム(AlN)および窒化ガリウム(GaN)を含む半導体材料のことをいい、窒化インジウム(InN)などの他の材料を含有する半導体材料を含むものとする。したがって、本明細書にいう「AlGaN系半導体材料」は、例えば、In1-x-yAlxGayN(0<x+y≦1、0<x<1、0<y<1)の組成で表すことができ、AlGaNまたはInAlGaNを含む。本明細書の「AlGaN系半導体材料」とは、例えば、AlN比率およびGaN比率のそれぞれが1%以上であり、好ましくは5%以上、10%以上または20%以上である。
【0013】
また、AlNを含まない材料を区別するために「GaN系半導体材料」ということがある。「GaN系半導体材料」には、GaNやInGaNが含まれる。同様に、GaNを含まない材料を区別するために「AlN系半導体材料」ということがある。「AlN系半導体材料」には、AlNやInAlNが含まれる。
【0014】
図1は、実施の形態に係る半導体発光素子10の構成を概略的に示す断面図である。半導体発光素子10は、ベース層12と、n型半導体層14と、活性層16と、p型半導体層18と、p側コンタクト電極20と、p側被覆電極層22と、誘電体保護層24と、誘電体被覆層26と、n側コンタクト電極28と、p側電流拡散層30と、n側電流拡散層32と、誘電体封止層34と、p側パッド電極36と、n側パッド電極38とを備える。ベース層12は、基板40と、第1バッファ層42と、第2バッファ層44とを含む。
【0015】
図1において、矢印Aで示される方向を「上下方向」または「厚み方向」ということがある。また、ベース層12(または基板40)から見て、ベース層12(または基板40)から離れる方向を上側、ベース層12(または基板40)に向かう方向を下側ということがある。
【0016】
基板40は、半導体発光素子10が発する深紫外光に対して透光性を有する材料から構成され、例えば、サファイア(Al2O3)から構成される。基板40は、第1主面40aと、第1主面40aとは反対側の第2主面40bとを有する。第1主面40aは、第1バッファ層42からp型半導体層18までの各層を成長させるための結晶成長面である。第1主面40aは、深さおよびピッチがサブミクロン(1μm以下)である微細な凹凸パターンを有する。このような基板40は、パターン化サファイア基板(PSS;Patterned Sapphire Substrate)とも呼ばれる。第1主面40aは、パターン化されていない平坦面によって構成されてもよい。第2主面40bは、活性層16が発する深紫外光を外部に取り出すための光取出面12eである。
【0017】
第1バッファ層42は、基板40の第1主面40aに設けられる。第1バッファ層42は、第2バッファ層44を形成するための下地層(テンプレート層)である。第1バッファ層42は、例えば、アンドープのAlN層であり、高温成長させたAlN(HT-AlN;High Temperature-AlN)層である。第1バッファ層42は、アンドープのAlGaN層であってもよく、第2バッファ層44のAlN比率よりも高いAlN比率を有するAlGaN層であってもよい。第1バッファ層42は、1μm以上3μm以下の厚さを有し、例えば、2μm程度の厚さを有する。
【0018】
第2バッファ層44は、第1バッファ層42に設けられる。第2バッファ層44は、アンドープのAlGaN系半導体材料から構成され、例えば、第1バッファ層42のAlN比率よりも低いAlN比率を有するAlGaN層である。第2バッファ層44のAlN比率は、例えば、n型半導体層14のAlN比率と同じある。第2バッファ層44のAlN比率は、n型半導体層14のAlN比率より大きくてもよい。第2バッファ層44は、20nm以上200nm以下の厚さを有し、例えば、100nm程度の厚さを有する。
【0019】
第2バッファ層44は、シリコン(Si)などのn型不純物を実質的に含まないように構成される。第2バッファ層44のSi濃度は、例えば、5×1017cm-3以下である。第2バッファ層44は、n型半導体層14と比べてn型不純物濃度が低いために導電率が低い(つまり抵抗率が高い)。第2バッファ層44は、n側コンタクト電極28から活性層16に向けて電子を注入する際の導電に寄与しない。
【0020】
ベース層12は、第1上面12aと、第2上面12bと、第1角度θ1で傾斜する側面(または傾斜面)12cと、第3角度θ3で傾斜する側面(または傾斜面)12dと、光取出面12eとを有する。第1上面12aは、n型半導体層14が設けられる部分であり、例えば、第2バッファ層44の上面である。第2上面12bは、第1上面12aの外側に位置し、ベース層12の外周に沿って設けられる。第2上面12bは、n型半導体層14が設けられない部分であり、第1バッファ層42に設けられる。第1角度θ1で傾斜する側面12cは、第2バッファ層44に設けられる。第1角度θ1は、40度よりも大きく(つまり、40度を含まない)、70度以下である。第3角度θ3で傾斜する側面12dは、第1バッファ層42に設けられる。第3角度θ3は、第1角度θ1よりも小さく、40度以下である。
【0021】
n型半導体層14は、ベース層12の第1上面12aに設けられる。n型半導体層14は、n型のAlGaN系半導体材料から構成され、例えば、n型の不純物としてSiがドープされる。n型半導体層14のAlN比率は、例えば25%以上であり、好ましくは、40%以上または50%以上である。n型半導体層14のAlN比率は、80%以下であり、好ましくは70%以下である。n型半導体層14は、1μm以上3μm以下の厚さを有し、例えば、2μm程度の厚さを有する。n型半導体層14のSi濃度は、1×1018/cm3以上5×1019/cm3以下である。n型半導体層14のSi濃度は、好ましくは5×1018/cm3以上3×1019/cm3以下であり、より好ましくは7×1018/cm3以上2×1019/cm3以下である。
【0022】
n型半導体層14は、第1上面14aと、第2上面14bとを有する。第1上面14aは、活性層16が形成される部分であり、第2上面14bは、活性層16が形成されない部分である。n型半導体層14は、第1角度θ1で傾斜する側面(または傾斜面)14cと、第2角度θ2で傾斜する側面(または傾斜面)14dとを有する。第1角度θ1で傾斜する側面14cは、第2上面14bよりも下側に位置する。第2角度θ2で傾斜する側面14dは、第2上面14bよりも上側に位置する。第2角度θ2は、第1角度θ1よりも小さく、40度以下である。
【0023】
活性層16は、n型半導体層14の第1上面14aに設けられる。活性層16は、AlGaN系半導体材料から構成され、n型半導体層14とp型半導体層18の間に挟まれてダブルへテロ構造を形成する。活性層16は、355nm以下、例えば、320nm以下の波長を有する深紫外光を出力するようにAlN比率が選択される。活性層16は、第2角度θ2で傾斜する側面(または傾斜面)16dを有する。
【0024】
活性層16は、例えば、単層または多層の量子井戸構造を有し、アンドープのAlGaN系半導体材料から構成される障壁層と、アンドープのAlGaN系半導体材料から構成される井戸層とを含む。活性層16は、例えば、n型半導体層14と直接接触する第1障壁層と、第1障壁層上に設けられる第1井戸層とを含む。第1井戸層とp型半導体層18の間に、障壁層および井戸層の一以上のペアが追加的に設けられてもよい。障壁層および井戸層のそれぞれは、1nm以上20nm以下の厚さを有し、例えば、2nm以上10nm以下の厚さを有する。
【0025】
活性層16とp型半導体層18の間には、電子ブロック層がさらに設けられてもよい。電子ブロック層は、アンドープのAlGaN系半導体材料から構成される。電子ブロック層のAlN比率は、40%以上であり、好ましくは50%以上である。電子ブロック層のAlN比率は、80%以上であってもよい。電子ブロック層は、GaNを含有しないAlN系半導体材料から構成されてもよく、AlN層であってもよい。電子ブロック層は、1nm以上10nm以下の厚さを有し、例えば、2nm以上5nm以下の厚さを有する。電子ブロック層は、第2角度θで傾斜する側面(または傾斜面)を有する。
【0026】
p型半導体層18は、活性層16上に形成される。p型半導体層18は、電子ブロック層が設けられる場合、電子ブロック層上に形成される。p型半導体層18は、p型のAlGaN系半導体材料またはp型のGaN系半導体材料から構成される。p型半導体層18は、例えば、p型の不純物としてマグネシウム(Mg)がドープされるAlGaN層またはGaN層である。p型半導体層18は、例えば、20nm以上400nm以下の厚さを有する。p型半導体層18は、上面18aと、第2角度θ2で傾斜する側面(または傾斜面)18dとを有する。
【0027】
p型半導体層18は、複数層によって構成されてもよい。p型半導体層18は、例えば、p型クラッド層とp型コンタクト層を有してもよい。p型クラッド層は、p型コンタクト層と比較して相対的に高いAlN比率を有するp型AlGaN層であり、活性層16または電子ブロック層と直接接触する。p型コンタクト層は、p型クラッド層と比較して相対的に低いAlN比率を有するp型AlGaN層またはp型GaN層である。p型コンタクト層は、p型クラッド層上に設けられ、p側コンタクト電極20と直接接触する。p型クラッド層は、p型第1クラッド層と、p側第2クラッド層とを有してもよい。
【0028】
p型第1クラッド層のAlN比率は、p側第2クラッド層のAlN比率よりも大きい。p型第1クラッド層のAlN比率は、n型半導体層14のAlN比率と同程度、または、n型半導体層14のAlN比率よりも大きい。p型第1クラッド層のAlN比率は、25%以上であり、好ましくは40%以上または50%以上である。p型第1クラッド層のAlN比率は、70%以上または80%以上であってもよい。p型第1クラッド層は、10nm以上100nm以下の厚さを有し、例えば、15nm以上70nm以下の厚さを有する。
【0029】
p型第2クラッド層は、p型第1クラッド層上に設けられる。p型第2クラッド層のAlN比率は、p型第1クラッド層のAlN比率よりも低く、p型コンタクト層のAlN比率よりも高い。p型第2クラッド層のAlN比率は、25%以上であり、好ましくは40%以上または50%以上である。p型第2クラッド層のAlN比率は、例えば、n型半導体層14のAlN比率の±10%の範囲内である。p型第2クラッド層は、5nm以上250nm以下の厚さを有し、例えば、10nm以上150nm以下の厚さを有する。なお、p型第2クラッド層が設けられなくてもよく、p型クラッド層がp型第1クラッド層のみで構成されてもよい。
【0030】
p型コンタクト層は、p側コンタクト電極20と良好なオーミック接触を得るために、相対的に低いAlN比率を有する。p型コンタクト層のAlN比率は、20%以下であり、好ましくは10%以下、5%以下または0%である。p型コンタクト層は、p型AlGaN層またはp型GaN層である。p型コンタクト層は、実質的にAlNを含まないp型GaN系半導体材料から構成されてもよい。p型コンタクト層は、活性層16が発する深紫外光の吸収量を小さくするために薄く形成されることが好ましい。p型コンタクト層は、5nm以上30nm以下の厚さを有し、例えば、10nm以上20nm以下の厚さを有する。
【0031】
p側コンタクト電極20は、p型半導体層18の上面18aに設けられる。p側コンタクト電極20は、p型半導体層18(例えば、p型コンタクト層)とオーミック接触可能であり、深紫外光に対する反射率が高い材料で構成される。p側コンタクト電極20は、p型半導体層18の上面18aと直接接触するRh層を含む。p側コンタクト電極20は、例えばRh層のみからなる。p側コンタクト電極20に含まれるRh層の厚さは、50nm以上200nm以下であり、例えば70nm以上150nm以下である。p側コンタクト電極20に含まれるRh層の膜密度は、12g/cm3以上であり、例えば12.2g/cm3以上12.5g/cm3以下である。p側コンタクト電極20に含まれるRh層の膜密度を大きくすることにより、反射電極としての機能を高めることができる。Rh層の膜密度を12g/cm3以上とすることにより、波長280nmの紫外光に対して65%以上の反射率が得られる。
【0032】
p側被覆電極層22は、p側コンタクト電極20の上面20aおよび側面20bと直接接触し、p側コンタクト電極20の全体を被覆する。p側被覆電極層22の形成範囲W2は、p側コンタクト電極20の形成範囲W1よりも広い。p側被覆電極層22は、例えば、Ti/Rh/TiNの積層構造を有する。p側被覆電極層22のTi層の厚さは、1nm以上50nm以下であり、例えば、5nm以上25nm以下である。p側被覆電極層22のTi層は、p側コンタクト電極20のRh層とp側被覆電極層22のRh層の間の接着性を高める。p側被覆電極層22のRh層の厚さは、5nm以上100nm以下であり、例えば、10nm以上50nm以下である。p側被覆電極層22のTiN層は、導電性を有する窒化チタン(TiN)から構成される。p側被覆電極層22のTiN層の厚さは、5nm以上100nm以下であり、例えば、10nm以上50nm以下である。
【0033】
誘電体保護層24は、第1接続開口24pを有し、第1接続開口24pとは異なる箇所においてp側被覆電極層22を被覆する。誘電体保護層24は、第1接続開口24pとは異なる箇所においてp側コンタクト電極20を被覆する。誘電体保護層24は、p側被覆電極層22の上面22aおよび側面22bと直接接触し、p型半導体層18の上面18aと直接接触する。誘電体保護層24は、誘電体材料から構成され、例えば、酸化シリコン(SiO2)から構成される。誘電体保護層24の厚さは、50nm以上であり、例えば100nm以上500nm以下である。
【0034】
誘電体保護層24の形成範囲W3は、p側コンタクト電極20の形成範囲W1よりも広く、p側被覆電極層22の形成範囲W2よりも広く、p型半導体層18の上面18aの形成範囲W4よりも狭い。誘電体保護層24は、p型半導体層18の上面18aの外周から離れて設けられる。第1接続開口24pは、p側コンタクト電極20およびp側被覆電極層22の上方に位置する。第1接続開口24pの形成範囲W5は、p側被覆電極層22の形成範囲W2よりも狭く、例えば、p側コンタクト電極20の形成範囲W1よりも狭い。
【0035】
誘電体被覆層26は、ベース層12、n型半導体層14、活性層16、p型半導体層18、p側コンタクト電極20、p側被覆電極層22および誘電体保護層24を被覆する。誘電体被覆層26は、誘電体保護層24とは異なる誘電体材料から構成され、例えば、Al2O3から構成される。誘電体被覆層26の厚さは、10nm以上100nm以下であり、例えば20nm以上50nm以下である。
【0036】
誘電体被覆層26は、ベース層12の第2上面12bと、ベース層12の第3角度θ3で傾斜する側面(または傾斜面)12dと、ベース層12の第1角度θ1で傾斜する側面(または傾斜面)12cと直接接触し、これらを被覆する。誘電体被覆層26は、n型半導体層14の第2上面14bと、n型半導体層14の第1角度θ1で傾斜する側面(または傾斜面)14cと、n型半導体層14の第2角度θ2で傾斜する側面(または傾斜面)14dと直接接触し、これらを被覆する。誘電体被覆層26は、n型半導体層14の第2上面14bに設けられるコンタクト開口26nを有し、コンタクト開口26nとは異なる箇所においてn型半導体層14の第2上面14bを被覆する。
【0037】
誘電体被覆層26は、活性層16の第2角度θ2で傾斜する側面(または傾斜面)16dと直接接触して被覆する。誘電体被覆層26は、p型半導体層18の上面18aと、p型半導体層18の第2角度θ2で傾斜する側面(または傾斜面)18dと直接接触し、これらを被覆する。誘電体被覆層26は、誘電体保護層24の上面24aおよび側面24bと直接接触する。誘電体被覆層26は、第2接続開口26pを有し、第2接続開口26pとは異なる箇所において誘電体保護層24を被覆する。第2接続開口26pは、p側コンタクト電極20およびp側被覆電極層22の上方に位置する。第2接続開口26pの形成範囲は、p側被覆電極層22の形成範囲W2よりも狭く、例えば、p側コンタクト電極20の形成範囲W1よりも狭い。第2接続開口26pの形成範囲は、第1接続開口24pの形成範囲W5と同じである。第2接続開口26pの形成範囲は、第1接続開口24pの形成範囲W5より大きくてもよい。
【0038】
p型半導体層18の上面18aと誘電体保護層24が接触する第1面積S1(=W3-W2)およびp型半導体層18の上面18aと誘電体被覆層26が接触する範囲を第2面積S2(=W4-W3)は、第1面積S1と第2面積S2の合計面積S(=W4-W2)に対して所定の割合にあることが好ましい。第1面積S1は、例えば、合計面積Sの10%以上であり、好ましくは、合計面積Sの20%以上または30%以上である。第1面積S1を所定割合より大きくすることにより、誘電体保護層24によるp側被覆電極層22の被覆性を高めることができる。第1面積S1は、例えば、合計面積Sの90%未満であり、好ましくは、合計面積Sの80%未満または70%未満である。第1面積S1を所定割合より小さくすることにより、p型半導体層18へのSiの拡散を抑制できる。第1面積S1は、第2面積S2と同等であってもよく、例えば、合計面積Sの40%以上60%未満であってもよい。第1面積S1は、第2面積S2より小さくてもよい。第1面積S1は、合計面積Sの50%未満であってもよく、40%以下または30%以下であってもよい。この場合、p型半導体層18へのSiの拡散をより好適に抑制できる。
【0039】
n側コンタクト電極28は、n型半導体層14の第2上面14bに設けられる。n側コンタクト電極28は、コンタクト開口26nを塞ぐように設けられ、コンタクト開口26nの外側において誘電体被覆層26の上に重なる。n側コンタクト電極28の形成範囲W8は、コンタクト開口26nの形成範囲W7よりも広い。
【0040】
n側コンタクト電極28は、例えば、Ti/Al/Ti/TiNの積層構造を有する。n側コンタクト電極28の第1Ti層は、n型半導体層14の第2上面14bと直接接触する。n側コンタクト電極28の第1Ti層の厚さは、1nm以上10nm以下であり、好ましくは5nm以下または2nm以下である。n側コンタクト電極28のAl層は、第1Ti層上に設けられ、第1Ti層と直接接触する。n側コンタクト電極28のAl層の厚さは、200nm以上であり、例えば300nm以上1000nm以下である。n側コンタクト電極28の第2Ti層は、Al層上に設けられ、Al層と直接接触する。n側コンタクト電極28の第2Ti層の厚さは、1nm以上50nm以下であり、例えば、5nm以上25nm以下である。n側コンタクト電極28のTiN層は、第2Ti層上に設けられ、第2Ti層と直接接触する。n側コンタクト電極28のTiN層は、導電性を有するTiNから構成される。n側コンタクト電極28のTiN層の厚さは、5nm以上100nm以下であり、例えば、10nm以上50nm以下である。
【0041】
p側電流拡散層30は、p側被覆電極層22の上面22aに設けられ、接続開口(第1接続開口24pおよび第2接続開口26p)においてp側被覆電極層22と直接接触する。p側電流拡散層30は、第1接続開口24pおよび第2接続開口26pを塞ぐように設けられ、第2接続開口26pの外側において誘電体被覆層26と直接接触する。p側電流拡散層30の形成範囲W6は、第1接続開口24pの形成範囲W5よりも広い。p側電流拡散層30は、例えば、TiN/Ti/Rh/TiN/Ti/Auの積層構造を有する。
【0042】
n側電流拡散層32は、n側コンタクト電極28の上面28aおよび側面28bと直接接触し、n側コンタクト電極28を被覆する。n側電流拡散層32は、n側コンタクト電極28の外側において誘電体被覆層26と直接接触する。n側電流拡散層32の形成範囲W9は、n側コンタクト電極28の形成範囲W8よりも広い。n側電流拡散層32は、p側電流拡散層30と同様の構成を有し、例えば、TiN/Ti/Rh/TiN/Ti/Auの積層構造を有する。
【0043】
誘電体封止層34は、誘電体被覆層26、p側電流拡散層30およびn側電流拡散層32と直接接触してこれらを被覆する。誘電体封止層34は、p側電流拡散層30の上に設けられるp側パッド開口34pと、n側電流拡散層32の上に設けられるn側パッド開口34nとを有する。誘電体封止層34は、p側パッド開口34pとは異なる箇所においてp側電流拡散層30を被覆し、n側パッド開口34nとは異なる箇所においてn側電流拡散層32を被覆する。誘電体封止層34は、誘電体被覆層26とは異なる誘電体材料から構成され、例えば、SiO2から構成される。誘電体封止層34の厚さは、300nm以上1500nm以下であり、例えば、600nm以上1000nm以下である。
【0044】
p側パッド電極36は、p側電流拡散層30の上に設けられ、p側パッド開口34pにおいてp側電流拡散層30と接続する。p側パッド電極36は、p側パッド開口34pを塞ぐように設けられ、p側パッド開口34pの外側において誘電体封止層34と直接接触する。p側パッド電極36は、p側電流拡散層30およびp側被覆電極層22を介してp側コンタクト電極20と電気的に接続される。
【0045】
n側パッド電極38は、n側電流拡散層32の上に設けられ、n側パッド開口34nにおいてn側電流拡散層32と接続する。n側パッド電極38は、n側パッド開口34nを塞ぐように設けられ、n側パッド開口34nの外側において誘電体封止層34と直接接触する。n側パッド電極38は、n側電流拡散層32を介してn側コンタクト電極28と電気的に接続される。
【0046】
p側パッド電極36およびn側パッド電極38は、半導体発光素子10をパッケージ基板などに実装する際に接合される部分である。p側パッド電極36およびn側パッド電極38は、例えば、Ni/Au、Ti/AuまたはTi/Pt/Auの積層構造を含む。p側パッド電極36およびn側パッド電極38のそれぞれの厚さは、100nm以上であり、例えば200nm以上1000nm以下である。
【0047】
つづいて、半導体発光素子10の製造方法について説明する。
図2~
図13は、半導体発光素子10の製造工程を概略的に示す図である。まず、
図2において、基板40の第1主面40aの上に第1バッファ層42および第2バッファ層44を順に形成し、ベース層12を形成する。つづいて、ベース層12の第1上面12aの上にn型半導体層14、活性層16およびp型半導体層18を順に形成する。
【0048】
基板40は、例えばパターン化サファイア基板である。第1バッファ層42は、例えばアンドープのAlN層である。第2バッファ層44は、例えばアンドープのAlGaN層である。n型半導体層14は、例えばn型のAlGaN層である。活性層16は、例えばアンドープのAlGaN層である。p型半導体層18は、p型のAlGaN層またはp型のGaN層である。第1バッファ層42、第2バッファ層44、n型半導体層14、活性層16およびp型半導体層18は、有機金属化学気相成長(MOVPE;Metal Organic Vapor Phase Epitaxy)法や、分子線エピタキシ(MBE;Molecular Beam Epitaxy)法などの周知のエピタキシャル成長法を用いて形成できる。
【0049】
つづいて、
図2に示すように、例えば公知のリソグラフィ技術を用いて、p型半導体層18の上面18aに第1マスク50を形成する。第1マスク50は、p型半導体層18の上面18aの一部である第1マスク領域W11に形成される。第1マスク50は、傾斜した第1側面50aを有する。第1側面50aの傾斜角θaは、後続するエッチング工程において第1角度θ1で傾斜する側面(または傾斜面)を形成するように設定される。第1側面50aの傾斜角θaは、例えば、第1マスク50を構成するレジスト樹脂のポストベーク温度を制御することで調整可能である。例えば、レジスト樹脂のポストベーク温度を低くすることで第1側面50aの傾斜角θaを大きくすることができ、レジスト樹脂のポストベーク温度を高くすることで第1側面50aの傾斜角θaを小さくすることができる。
【0050】
つづいて、
図3に示すように、第1マスク50の上からn型半導体層14、活性層16およびp型半導体層18をドライエッチングすることにより、第1マスク50と重ならない外周領域W12においてベース層12が露出する。また、第1マスク領域W11のうち第1側面50aが位置した第1側面領域W13において、n型半導体層14、活性層16およびp型半導体層18のそれぞれに第1角度θ1で傾斜する側面14c,16c,18cが形成される。その後、第1マスク50が除去される。
【0051】
つづいて、
図4に示すように、例えば公知のリソグラフィ技術を用いて、p型半導体層18の上面18aに第2マスク52を形成する。第2マスク52は、p型半導体層18の上面18aの一部である第2マスク領域W14に形成される。第2マスク52は、p型半導体層18の上面18aのうち、第2マスク領域W14とは異なるマスク外領域W15には形成されない。第2マスク52は、傾斜した第2側面52bを有する。第2側面52bの傾斜角θbは、後続するエッチング工程において第2角度θ2で傾斜する側面(または傾斜面)を形成するように設定される。第2側面52bの傾斜角θbは、第1マスク50の第1側面50aと同様、第2マスク52を構成するレジスト樹脂のポストベーク温度を制御することで調整可能である。
【0052】
つづいて、
図5に示すように、第2マスク52の上からベース層12、n型半導体層14、活性層16およびp型半導体層18をドライエッチングする。
図5のドライエッチング工程は、マスク外領域W15においてn型半導体層14が露出して第2上面14bが形成されるまで実行される。第2マスク領域W14のうち第2側面52bが位置した第2側面領域W16において、n型半導体層14、活性層16およびp型半導体層18のそれぞれに第2角度θ2で傾斜する側面14d,16d,18dが形成される。また、第2マスク52が設けられていない領域のうち外周領域W12において、第1バッファ層42が露出して第2上面12bが形成される。第2マスク52が設けられていない領域のうち第1側面領域W13において、n型半導体層14および第1バッファ層42に第1角度θ1で傾斜する側面14c,12cが形成され、第2バッファ層44に第3角度θ3で傾斜する側面12dが形成される。第1側面領域W13において、第1角度θ1で傾斜する側面14c,16c,18cがマスクとして機能することにより、ベース層12およびn型半導体層14に傾斜する側面12c,12d,14cが形成される。
【0053】
第3角度θ3で傾斜する第1バッファ層42の側面12dは、n型半導体層14と第1バッファ層42の間の組成差に起因して形成される。第1バッファ層42のAlN比率は、n型半導体層14のAlN比率よりも高い。AlGaN系半導体材料では、AlN比率が高いほどエッチングされにくくなる。第1バッファ層42は、n型半導体層14に比べてエッチングされにくいため、同一のエッチング条件下において、第1バッファ層42のエッチング量は、n型半導体層14のエッチング量よりも少なくなる。その結果、第1バッファ層42の側面12cが傾斜する第3角度θ3は、n型半導体層14の側面14cが傾斜する第1角度θ1よりも小さくなる。一方、第2バッファ層44のAlN比率は、n型半導体層14のAlN比率と同じであるため、第2バッファ層44に第1角度θ1で傾斜する側面12cが形成される。その後、第2マスク52が除去される。
【0054】
つづいて、
図6に示すように、例えば公知のリソグラフィ技術を用いて、p型半導体層18の上面18aの一部となる範囲W1にp側コンタクト電極20を形成する。p側コンタクト電極20は、p型半導体層18の上面18aと直接接触するRh層を含む。p側コンタクト電極20のRh層は、蒸着法により100℃以下の温度で形成される。蒸着法によりRh層を形成することにより、スパッタリング法を用いる場合に比べて、p型半導体層18の上面18aに対するダメージを抑制でき、p側コンタクト電極20のコンタクト抵抗を向上できる。
【0055】
p側コンタクト電極20の形成後、p側コンタクト電極20をアニールする。p側コンタクト電極20は、例えば、RTA(Rapid Thermal Annealing)法を用いて、500℃以上650℃以下の温度にてアニールされる。p側コンタクト電極20のアニール処理により、p側コンタクト電極20のコンタクト抵抗が低下するとともに、p側コンタクト電極20に含まれるRh層の膜密度が12g/cm3以上に増加する。アニール処理後のRh層は、例えば12.2g/cm3以上12.5g/cm3以下の膜密度を有し、波長280nmの紫外光に対して65%以上の反射率、例えば66%~67%程度の反射率を有する。
【0056】
次に、
図6に示すように、例えば公知のリソグラフィ技術を用いて、p側コンタクト電極20の全体を被覆するようにp側被覆電極層22を形成する。p側被覆電極層22の形成範囲W2は、p側コンタクト電極20の形成範囲W1よりも広い。p側被覆電極層22は、p側コンタクト電極20の上面20aおよび側面20bと接触し、例えば、Ti/Rh/TiNの積層構造を有する。p側被覆電極層22は、例えば、スパッタリング法により100℃以下の温度で形成される。p側被覆電極層22をスパッタリング法により形成することにより、p側コンタクト電極20に対するp側被覆電極層22の接着性を高めることができる。
【0057】
つづいて、
図7に示すように、誘電体保護層24を形成する。誘電体保護層24は、素子構造の上部全面にわたって形成され、ベース層12、n型半導体層14、活性層16、p型半導体層18、p側コンタクト電極20およびp側被覆電極層22を被覆する。誘電体保護層24は、例えばSiO
2から構成され、プラズマ励起化学気相成長(PECVD;Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition)法により形成できる。
【0058】
図7において、誘電体保護層24は、ベース層12の第2上面12bと、ベース層12の第3角度θ3で傾斜する側面12dと、ベース層12の第1角度θ1で傾斜する側面12cと接触する。誘電体保護層24は、n型半導体層14の第2上面14bと、n型半導体層14の第1角度θ1で傾斜する側面14cと、n型半導体層14の第2角度θ2で傾斜する側面14dと接触する。誘電体保護層24は、活性層16の第1角度θ1で傾斜する側面16dと、p型半導体層18の第1角度θ1で傾斜する側面18dと接触する。誘電体保護層24は、p型半導体層18の上面18aと、p側被覆電極層22の上面22aおよび側面22bと接触する。
【0059】
つづいて、
図8に示すように、例えば公知のリソグラフィ技術を用いて、誘電体保護層24の上に第3マスク54を形成する。第3マスク54の形成範囲W3は、p側被覆電極層22の形成範囲W2よりも広く、p型半導体層18の上面18aの形成範囲W4よりも狭い。したがって、第3マスク54は、p側コンタクト電極20の全体と重なる領域に設けられる。第3マスク54の形成後、第3マスク54と重ならない領域にある誘電体保護層24をウェットエッチングにより除去する。誘電体保護層24がSiO
2から構成される場合、例えば、フッ化水素酸(HF)とフッ化アンモニウム(NH
4F)の混合液であるバッファードフッ酸(BHF)を用いて誘電体保護層24を除去できる。誘電体保護層24をウェットエッチングにより除去することで、ドライエッチングする場合に比べて、n型半導体層14、活性層16およびp型半導体層18へのダメージを低減できる。
【0060】
図8において、誘電体保護層24を部分的に除去すると、ベース層12の第2上面12bと、ベース層12の第3角度θ3で傾斜する側面12dと、ベース層12の第1角度θ1で傾斜する側面12cとが露出する。また、n型半導体層14の第2上面14bと、n型半導体層14の第1角度θ1で傾斜する側面14cと、n型半導体層14の第2角度θ2で傾斜する側面14dとが露出する。さらに、活性層16の第1角度θ1で傾斜する側面16dと、p型半導体層18の第1角度θ1で傾斜する側面18dと、p型半導体層18の上面18aの一部が露出する。
【0061】
つづいて、
図9に示すように、誘電体被覆層26を形成する。誘電体被覆層26は、素子構造の上部全面にわたって形成され、ベース層12、n型半導体層14、活性層16、p型半導体層18、p側コンタクト電極20、p側被覆電極層22および誘電体保護層24を被覆する。誘電体被覆層26は、誘電体保護層24は、例えばAl
2O
3から構成され、原子堆積(ALD;Atomic Layer Deposition)法により形成できる。
【0062】
図9において、誘電体被覆層26は、ベース層12の第2上面12bと、ベース層12の第3角度θ3で傾斜する側面12dと、ベース層12の第1角度θ1で傾斜する側面12cと接触する。誘電体被覆層26は、n型半導体層14の第2上面14bと、n型半導体層14の第1角度θ1で傾斜する側面14cと、n型半導体層14の第2角度θ2で傾斜する側面14dと接触する。誘電体被覆層26は、活性層16の第1角度θ1で傾斜する側面16dと、p型半導体層18の第1角度θ1で傾斜する側面18dと接触する。誘電体被覆層26は、p型半導体層18の上面18aと、誘電体保護層24の上面24aおよび側面24bと接触する。
【0063】
つづいて、
図10に示すように、例えば公知のリソグラフィ技術を用いて、誘電体被覆層26をドライエッチングなどにより部分的に除去し、コンタクト開口26nを形成する。コンタクト開口26nは、n型半導体層14の第2上面14bの一部となる範囲W7に形成される。コンタクト開口26nは、誘電体被覆層26を貫通するように形成され、コンタクト開口26nにおいてn型半導体層14の第2上面14bが露出する。
【0064】
次に、
図10に示すように、例えば公知のリソグラフィ技術を用いて、コンタクト開口26nを塞ぐようにn側コンタクト電極28を形成する。n側コンタクト電極28の形成範囲W8は、コンタクト開口26nの形成範囲W7よりも広い。n側コンタクト電極28は、例えば、n型半導体層14の第2上面14bと接触するTi/Al/Ti/TiNの積層構造を有する。n側コンタクト電極28は、スパッタリング法により形成できる。
【0065】
n側コンタクト電極28の形成後、n側コンタクト電極28をアニールする。n側コンタクト電極28は、例えば、RTA法を用いて、500℃以上650℃以下の温度にてアニールされる。n側コンタクト電極28のアニール処理により、n側コンタクト電極28のコンタクト抵抗が低下する。n側コンタクト電極28のアニール処理では、p側被覆電極層22も同時に500℃以上650℃以下の温度にてアニールされる。p側被覆電極層22をアニールすることにより、p側被覆電極層22と誘電体保護層24の間の接着性を高めることができる。
【0066】
次に、
図11に示すように、例えば公知のリソグラフィ技術を用いて、誘電体保護層24および誘電体被覆層26をドライエッチングなどにより部分的に除去し、第1接続開口24pおよび第2接続開口26p(総称して接続開口ともいう)を形成する。まず、誘電体被覆層26を貫通するように第2接続開口26pが形成され、つづいて、誘電体保護層24を貫通するように第1接続開口24pが形成される。第1接続開口24pにおいてp側被覆電極層22の上面22aが露出する。第1接続開口24pおよび第2接続開口26pの形成範囲W5は、p側被覆電極層22の形成範囲W2よりも狭く、例えば、p側コンタクト電極20の形成範囲W1よりも狭い。
【0067】
第1接続開口24pおよび第2接続開口26pは、共通のマスクを用いて連続的に形成することができる。なお、第1接続開口24pおよび第2接続開口26pは、共通のマスクではなく、個別のマスクを用いて形成されてもよい。第2接続開口26pは、n側コンタクト電極28の形成後に形成されてもよいし、n側コンタクト電極28の形成前に形成されてもよい。例えば、
図10に示すコンタクト開口26nを形成する工程において、第2接続開口26pを同時に形成してもよい。
【0068】
次に、
図12に示すように、例えば公知のリソグラフィ技術を用いて、接続開口(第1接続開口24pおよび第2接続開口26p)においてp側被覆電極層22と接続するp側電流拡散層30を形成し、n側コンタクト電極28の上面28aおよび側面28bを被覆するようにn側電流拡散層32を形成する。p側電流拡散層30の形成範囲W6は、第1接続開口24pの形成範囲W5よりも広い。n側電流拡散層32の形成範囲W9は、n側コンタクト電極28の形成範囲W8よりも広い。p側電流拡散層30およびn側電流拡散層32は、例えば、TiN/Ti/Rh/TiN/Ti/Auの積層構造を有する。p側電流拡散層30およびn側電流拡散層32は、スパッタリング法を用いて同時に形成できる。
【0069】
次に、
図13に示すように、誘電体封止層34が形成される。誘電体封止層34は、素子構造の上部全面にわたって形成され、誘電体被覆層26、p側電流拡散層30およびn側電流拡散層32と直接接触し、これらを被覆する。誘電体封止層34は、例えばSiO
2から構成され、PECVD法により形成できる。誘電体封止層34は、例えば、200℃以上300℃以下の温度にて形成される。
【0070】
次に、
図1に示すように、誘電体封止層34をドライエッチングなどにより部分的に除去し、p側パッド開口34pおよびn側パッド開口34nを形成する。p側パッド開口34pおよびn側パッド開口34nは、誘電体封止層34を貫通するように形成され、p側パッド開口34pにおいてp側電流拡散層30が露出し、n側パッド開口34nにおいてn側電流拡散層32が露出する。つづいて、p側パッド開口34pを塞ぐように、p側パッド開口34pにおいてp側電流拡散層30と接続するp側パッド電極36を形成し、n側パッド開口34nを塞ぐように、n側パッド開口34nにおいてn側電流拡散層32と接続するn側パッド電極38を形成する。p側パッド電極36およびn側パッド電極38は、同時に形成できるが、別々に形成されてもよい。
【0071】
以上の工程により、
図1に示す半導体発光素子10ができあがる。
【0072】
本実施の形態によれば、ベース層12の外周において第1角度θ1よりも小さい第3角度θ3で傾斜する側面12dを設けることで、誘電体保護層24および誘電体封止層34の割れや剥離を抑制できる。これにより、誘電体保護層24および誘電体封止層34の信頼性を高めることができる。
【0073】
本実施の形態によれば、第3角度θ3を40度以下にすることにより、誘電体保護層24および誘電体封止層34の割れや剥離をより好適に防止できる。さらに、第1角度θ1を70度以下にすることにより、誘電体被覆層26および誘電体封止層34の割れや剥離をより好適に防止できる。
【0074】
本実施の形態によれば、第1角度θ1を相対的に大きくし、例えば40度よりも大きくすることにより、n型半導体層14の第1上面14aおよび第2上面14bの面積を大きくすることができる。これにより、活性層16が占める面積やn側コンタクト電極28が占める面積を大きくすることができ、光取出面12eの単位面積あたりの発光効率を高めることができる。本実施の形態によれば、第2角度θ1を相対的に小さくし、例えば40度以下にすることにより、活性層16から水平方向に出射される深紫外光を第2角度θ1で傾斜する側面16dで反射させ、光取出面12eに向かわせることができ、光取出効率を高めることができる。
【0075】
本実施の形態によれば、活性層16と直接接触する誘電体被覆層26がSiO2から構成されるのではなく、Al2O3から構成されるため、活性層16へのSiの拡散を抑制できる。また、SiO2から構成される誘電体保護層24によりp側コンタクト電極20およびp側被覆電極層22を被覆することにより、p側コンタクト電極20およびp側被覆電極層22の劣化を抑制し、p側コンタクト電極20の反射特性の低下を抑制できる。さらに、誘電体被覆層26および誘電体封止層34により素子上部の全面を被覆することにより、n型半導体層14、活性層16およびp型半導体層18の劣化をより好適に抑制できる。
【0076】
本実施の形態によれば、SiO2から構成される誘電体保護層24の形成範囲W3をp型半導体層18の上面18aの形成範囲W4よりも狭くすることにより、p型半導体層18の上面18aと誘電体保護層24が接触する範囲をより小さくできる。これにより、p型半導体層18へのSiの拡散を抑制できる。特に、p型半導体層18の上面18aと誘電体保護層24が接触する第1面積S1(=W3-W2)をp型半導体層18の上面18aと誘電体被覆層26が接触する第2面積S2(=W4-W3)より小さくすることにより、p型半導体層18へのSiの拡散をより好適に抑制できる。
【0077】
本実施の形態によれば、第1角度θ1で傾斜する側面14c,16c,18cを形成した後に、第2角度θ2で傾斜する側面14d,16d,18dを形成することにより、第3角度θ3で傾斜する側面12dを同時に形成できる。これにより、第3角度θ3で傾斜する側面12dを形成するための専用のマスクが不要となるため、製造工程を簡略化できる。
【0078】
本実施の形態によれば、SiO2から構成される誘電体保護層24を素子上部の全面に形成した後に不要な部分を除去することにより、誘電体保護層24の品質を向上できる。また、SiO2から構成される誘電体保護層24をウェットエッチングにより除去することにより、n型半導体層14、活性層16およびp型半導体層18の側面14d,16d,18dへのダメージを抑制しつつ、誘電体保護層24の不要な部分をより確実に除去できる。
【0079】
上述の実施の形態では、サファイアから構成される基板40と、アンドープのAlNから構成される第1バッファ層42と、アンドープのAlGaNから構成される第2バッファ層44とを含むベース層12について説明した。ある実施の形態において、ベース層12が第2バッファ層44を含まなくてもよく、アンドープのAlN層である第1バッファ層42のすぐ上にn型半導体層14が設けられてもよい。ある実施の形態において、ベース層12は、AlNから構成される基板と、アンドープのAlGaNから構成されるバッファ層とを含んでもよい。この場合、AlNから構成される基板が第3角度θ3で傾斜する側面(または傾斜面)を有し、AlGaNから構成されるバッファ層が第1角度θ1で傾斜する側面(または傾斜面)を有してもよい。ある実施の形態において、第3角度θ3で傾斜する側面がサファイア基板に設けられてもよい。
【0080】
以上、本発明を実施例にもとづいて説明した。本発明は上述の実施の形態に限定されず、種々の設計変更が可能であり、様々な変形例が可能であること、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは、当業者に理解されるところである。
【0081】
以下、本発明のいくつかの態様について説明する。
【0082】
本発明の第1の態様は、ベース層上に設けられ、n型AlGaN系半導体材料から構成されるn型半導体層と、前記n型半導体層上に設けられ、AlGaN系半導体材料から構成される活性層と、前記活性層上に設けられるp型半導体層と、前記p型半導体層の上面と接触するp側コンタクト電極と、前記p側コンタクト電極を被覆し、前記p型半導体層の上面と接触し、SiO2から構成される誘電体保護層と、前記活性層および前記p型半導体層のそれぞれの側面と接触し、前記p型半導体層の上面と接触し、前記誘電体保護層を被覆し、Al2O3から構成される誘電体被覆層と、を備える半導体発光素子である。第1の態様によれば、活性層およびp型半導体層の側面と接触する誘電体被覆層がAl2O3から構成されるため、活性層およびp型半導体層へのSiの拡散を抑制できる。また、p側コンタクト電極をSiO2から構成される誘電体保護層で被覆し、誘電体保護層を誘電体被覆層で被覆することにより、p側コンタクト電極をより好適に保護できる。さらに、p型半導体層の上面と接触するように誘電体被覆層を設けることで、p型半導体層の上面と誘電体保護層が接触する範囲をより小さくでき、p型半導体層へのSiの拡散を抑制できる。
【0083】
本発明の第2の態様は、p型半導体層の上面と誘電体保護層が接触する第1面積は、p型半導体層の上面と誘電体被覆層が接触する第2面積よりも小さい、第1の態様に記載の半導体発光素子である。第2の態様によれば、p型半導体層の上面と誘電体保護層が接触する範囲をより小さくすることができ、p型半導体層へのSiの拡散をより好適に抑制できる。
【0084】
本発明の第3の態様は、ベース層上に、n型AlGaN系半導体材料から構成されるn型半導体層、AlGaN系半導体材料から構成される活性層、および、p型半導体層を順に形成する工程と、前記活性層および前記p型半導体層を部分的に除去し、前記n型半導体層を露出させる工程と、前記p型半導体層の上面と接触するp側コンタクト電極を形成する工程と、前記p側コンタクト電極を被覆し、前記p型半導体層の上面と接触し、前記活性層および前記p型半導体層のそれぞれの側面と接触し、SiO2から構成される誘電体保護層を形成する工程と、前記誘電体保護層上において、前記p側コンタクト電極の全体と重なる領域にマスクを形成する工程と、前記マスクと重ならない領域にある前記誘電体保護層をウェットエッチングにより除去し、前記活性層および前記p型半導体層のそれぞれの側面を露出させる工程と、前記誘電体保護層を被覆し、前記活性層および前記p型半導体層のそれぞれの側面と接触し、Al2O3から構成される誘電体被覆層を形成する工程と、を備える半導体発光素子の製造方法である。第3の態様によれば、SiO2から構成される誘電体保護層を素子上部の全面に形成した後に不要な部分を除去することにより、誘電体保護層の品質を向上できる。また、SiO2から構成される誘電体保護層をウェットエッチングにより除去することにより、n型半導体層、活性層およびp型半導体層の側面へのダメージを抑制しつつ、誘電体保護層の不要な部分をより確実に除去できる。さらに、活性層およびp型半導体層の側面と接触する誘電体被覆層がAl2O3から構成されるため、活性層およびp型半導体層へのSiの拡散を抑制できる。
【0085】
本発明の第4の態様は、前記誘電体保護層は、前記p型半導体層の上面の一部が露出するように除去され、前記誘電体被覆層は、前記p型半導体層の上面と接触するように形成される、第3の態様に記載の半導体発光素子の製造方法である。第4の態様によれば、p型半導体層の上面が露出するようにSiO2から構成される誘電体保護層を除去し、p型半導体層の上面と接触するようにAl2O3から構成される誘電体被覆層を形成することにより、p型半導体層の上面と誘電体保護層が接触する範囲をより小さくできる。これにより、p型半導体層へのSiの拡散を抑制できる。
【0086】
本発明の第5の態様は、前記p側コンタクト電極上の前記誘電体保護層および前記誘電体被覆層をドライエッチングにより除去して接続開口を形成する工程と、前記接続開口において前記p側コンタクト電極と接続するp側電流拡散層を形成する工程と、をさらに備える、第3または第4の態様に記載の半導体発光素子の製造方法である。第5の態様によれば、材料の異なる誘電体保護層および誘電体被覆層をドライエッチングによって連続的に除去できるため、接続開口を形成するための工程数を低減できる。
【符号の説明】
【0087】
10…半導体発光素子、12…ベース層、14…n型半導体層、16…活性層、18…p型半導体層、20…p側コンタクト電極、22…p側被覆電極層、24…誘電体保護層、26…誘電体被覆層、28…n側コンタクト電極、30…p側電流拡散層、32…n側電流拡散層、34…誘電体封止層、36…p側パッド電極、38…n側パッド電極、40…基板、42…第1バッファ層、44…第2バッファ層。