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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023072337
(43)【公開日】2023-05-24
(54)【発明の名称】ピッキング装置
(51)【国際特許分類】
   B65G 47/90 20060101AFI20230517BHJP
   B25J 13/00 20060101ALI20230517BHJP
【FI】
B65G47/90 A
B25J13/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021184810
(22)【出願日】2021-11-12
(71)【出願人】
【識別番号】000003643
【氏名又は名称】株式会社ダイフク
(74)【代理人】
【識別番号】100154014
【弁理士】
【氏名又は名称】正木 裕士
(74)【代理人】
【識別番号】100154520
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 祐子
(72)【発明者】
【氏名】清水 清
(72)【発明者】
【氏名】篠原 敏子
(72)【発明者】
【氏名】宝里 直幸
【テーマコード(参考)】
3C707
3F072
【Fターム(参考)】
3C707AS02
3C707AS04
3C707BS03
3C707FS01
3C707FT02
3C707KS23
3C707KS30
3C707KX05
3C707MT04
3C707MT08
3F072AA06
3F072GA05
3F072GD01
3F072GD03
3F072GF01
3F072GF10
3F072KD03
3F072KD30
(57)【要約】
【課題】本発明は、各種物品のピッキング作業時に生じる異常事態をリアルタイムに且つ確実に検出できる機能を備えたピッキング装置を提供すること。
【解決手段】水平面上で互いに直交するX軸方向とY軸方向、及び水平面に対して垂直なZ軸方向に移動可能なピッキングヘッドを備えたピッキング装置において、X軸方向と平行に一定高さに架設されたX軸ガイドレール、このX軸ガイドレールに下端部がX軸方向横動自在に支持され且つZ軸方向に起立するZ軸ガイドレール7、このZ軸ガイドレール7に一端部がZ軸方向昇降自在に支持され且つZ軸ガイドレール7から離れる水平Y軸方向に延出する片持ち状のY軸ガイドレール8、及びこのY軸ガイドレール8に支持されたピッキングハンド9から成り、前記Y軸ガイドレール8に、XYZ各方向の加速度を検出する加速度センサーを備えた加速度センサーユニット35が取り付けられた構成になっている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平面上で互いに直交するX軸方向とY軸方向、及び水平面に対して垂直なZ軸方向に移動可能なピッキングヘッドを備えたピッキング装置において、
X軸方向と平行に一定高さに架設されたX軸ガイドレール、このX軸ガイドレールに下端部がX軸方向横動自在に支持され且つZ軸方向に起立するZ軸ガイドレール、このZ軸ガイドレールに一端部がZ軸方向昇降自在に支持され且つZ軸ガイドレールから離れる水平Y軸方向に延出する片持ち状のY軸ガイドレール、及びこのY軸ガイドレールに支持されたピッキングハンドから成り、前記Y軸ガイドレールに、XYZ各方向の加速度を検出する加速度センサーが取り付けられている、ピッキング装置。
【請求項2】
前記加速度センサーは、Y軸ガイドレール上でのピッキングハンド移動領域の中央部、又は当該中央部から、当該Y軸ガイドレールのZ軸ガイドレールに支持される端部のある側とは反対の遊端部までの範囲内に取り付けられている、請求項1に記載のピッキング装置。
【請求項3】
前記Y軸ガイドレールは、長さ方向に連続する空洞部を有する中空構造体から構成され、前記加速度センサーは、このY軸ガイドレールの空洞部に配置されている、請求項1又は2に記載のピッキング装置。
【請求項4】
前記Y軸ガイドレールには、前記ピッキングハンドが位置する側とは反対側の側面に、Y軸ガイドレールの長さ方向に沿った横長で前記空洞部と連通する開口部と、この開口部の下側でY軸ガイドレールの長さ方向に連続する部材取付け用アリ溝が設けられ、前記開口部を経由して前記空洞部内に入り込む基板支持台には、前記開口部の外側で下向きに連設された取付け板部が設けられ、この取付け板部が前記部材取付け用アリ溝内に嵌合する雌ネジ体に取付け用ネジによって取り付けられ、前記基板支持台上に、前記加速度センサーを備え且つ前記開口部のY軸ガイドレール長さ方向の全長よりも長さが短い加速度センサー設置基板が支持され、前記取付け用ネジを外すことにより、前記加速度センサー設置基板が前記基板支持台と共に前記空洞部の外に引き出せるように構成されている、請求項3に記載のピッキング装置。
【請求項5】
前記基板支持台とこの上に支持されている前記加速度センサー設置基板が、前記開口部から外側に張り出している、請求項4に記載のピッキング装置。
【請求項6】
前記基板支持台には、前記取付け板部の両側に、前記開口部の外側で垂下する支持板部が連設され、これら一対の支持板部の下側辺には、前記部材取付け用アリ溝の下側辺で支持される内側への折曲板部が連設されている、請求項4又は5に記載のピッキング装置。
【請求項7】
前記Y軸ガイドレールの前記開口部を備えた側面に当該開口部を塞ぐカバーが着脱自在に取り付けられている、請求項4~6の何れか1項に記載のピッキング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送用コンテナにばら積みされている各種物品のピッキング作業時に生じる異常事態をリアルタイムに且つ確実に検出できる機能を備えたピッキング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のピッキング装置としては、例えば特許文献1に記載されているように、水平面上で互いに直交するX軸方向とY軸方向、及び水平面に対して垂直なZ軸方向に移動可能なピッキングヘッドを備えたピッキング装置が知られている。従来周知の、例えば特許文献1に記載されているピッキング装置では、所定位置にセットされた搬送用コンテナに干渉しない高さにおいて架設されたX軸ガイドレール、このX軸ガイドレールに支持されてX軸方向に往復移動自在なY軸ガイドレール、このY軸ガイドレールに支持されてY軸方向に往復移動自在なZ軸ガイドレール、このZ軸ガイドレールにZ軸方向昇降自在に支持されたZ軸昇降柱状体、及びこのZ軸昇降柱状体の下端にピッキングヘッドが取り付けられた構成となっていた。この構成では、Z軸昇降柱状体とその下端のピッキングヘッドとによって、ピッキングハンドが構成されていることになる。
【0003】
上記のようなピッキング装置において、例えば搬入用コンテナ内から目的の物品を吊り上げて搬出用コンテナ内の所定位置に降ろす作業を行ったとき、ピッキングヘッドから物品が外れて落下するような重度の異常事態の他、例えばピッキングヘッドが複数の吸着具を備えている場合に、物品が全ての吸着具で吸着される正常な保持状態から吸着具の1つから物品から外れて物品が傾くような事態、或いは包装されている物品を取り扱ったときに包装が破損してピッキングヘッドから物品がぶら下がるような事態など、比較的軽度の異常事態も生じる。これらの異常事態は、ピッキングヘッドによってコンテナ内から物品がコンテナ上方の所定高さまで吊り上げられる際に発生することが多いが、このような異常事態をリアルタイムに且つ確実に検出できるような機能を備えたピッキング装置が要望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-70155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようなピッキング装置において望まれる機能の実現には、力覚センサーや加速度センサーを使用すれば可能であることは明らかであるが、現実問題として、多くの物品がばら積みされているコンテナ内に入り込んで特定の物品をピッキングする、ピッキング装置の末端の比較的小さなピッキングヘッドに、前記センサーを取り付けて配線するということは非常に無理があり、実用的ではないばかりか、ピッキングヘッドの本来の機能にも悪影響が及ぶ恐れもある。従って、ピッキングヘッドから離れた場所に前記センサーを取り付けることが考えられるが、特許文献1に記載されているような従来周知のピッキング装置では、ピッキングヘッドに最も近い位置にあるものと言えば、下端にピッキングヘッドを取り付けているZ軸昇降柱状体、即ち、ピッキングハンド本体となるが、このピッキングハンド本体も、ピッキングヘッドと共にピッキング対象の物品が収納されているコンテナ内に入り込むものであることから、必要最小限の太さの柱状体に構成されているものであり、できることならばこのピッキングハンド本体の周面の一部が膨らむようなことになるセンサーの取り付けは、避けたい。
【0006】
勿論、センサーそのものは比較的小型のものも存在するが、実際には、センサーに給電する電源回路の他、センサーのXYZ各方向の検出信号の値を予め設定されているしきい値と比較演算し、しきい値を超える異常信号であるか否かを判別すると共に、その異常がどのような種類のものかをデータベースから判別するような制御回路が必要であり、これら電源回路と制御回路とをセンサー本体から分けて別の場所に配置して互いに配線接続するような構成も考えられるが、稼働中は常に複雑な動きを連続的に行うピッキング装置としては、配線が増えることも故障の原因となり、できることならば避けたい。
【0007】
従って、ピッキングハンドより一段上位の部材、即ち、ピッキングハンドを支持している部材に加速度センサーを取り付けることが考えられるが、特許文献1に示すような従来構成のピッキング装置では、ピッキングハンドを支持しているのはZ軸ガイドレールとなり、このZ軸ガイドレールは、Y軸ガイドレールに支持される下端部から垂直上方に直立する柱状体であるから、仮に最も振動を捉え易い上端部(遊端部)に加速度センサーを取り付けたとして、このZ軸ガイドレールに対してピッキングヘッドがコンテナ底部に達する下降限まで下降した状態と、逆にピッキングヘッドと保持した物品がコンテナの上方所定高さまで吊り上げられる上昇限まで上昇した状態とでは、振動検出対象のピッキングヘッドからZ軸ガイドレール上の加速度センサーまでの垂直上下方向の振動伝播経路の全長が著しく異なることになる。従って、ピッキングヘッドから吊上げ途中の物品が落下したときのように大きな異常振動が発生する重度の異常事態ではなく、先に説明したような比較的軽度の異常状態を加速度センサーが検出する異常振動値で検出しようとすると、異常検出のしきい値をピッキングヘッドの高さに対応させて自動調整する必要が生じ、制御系が複雑になって容易に実施し得なくなる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記のような従来の問題点を解消することのできるピッキング装置を提案するものであって、本発明に係るピッキング装置は、後述する実施例との関係を理解し易くするために、当該実施例の説明において使用した参照符号を括弧付きで付して示すと、水平面上で互いに直交するX軸方向とY軸方向、及び水平面に対して垂直なZ軸方向に移動可能なピッキングヘッド(17)を備えたピッキング装置において、X軸方向と平行に一定高さに架設されたX軸ガイドレール(2)、このX軸ガイドレール(2)に下端部がX軸方向横動自在に支持され且つZ軸方向に起立するZ軸ガイドレール(7)、このZ軸ガイドレール(7)に一端部がZ軸方向昇降自在に支持され且つZ軸ガイドレール(7)から離れる水平Y軸方向に延出する片持ち状のY軸ガイドレール(8)、及びこのY軸ガイドレール(8)に支持されたピッキングハンド(9)から成り、前記Y軸ガイドレール(8)に、XYZ各方向の加速度を検出する加速度センサー(47)が取り付けられた構成になっている。
【発明の効果】
【0009】
上記本発明の構成によれば、ピッキングハンドを支持する手段が、従来のようにZ軸ガイドレールではなく、当該Z軸ガイドレールに沿って昇降移動する片持ち状のY軸ガイドレールとなっている。そして加速度センサーは前記Y軸ガイドレールに取り付けられている。この構成によれば、前記加速度センサーとピッキングハンド下端のピッキングヘッドとの間の垂直上下方向の振動伝播経路の長さは、ピッキングヘッドがコンテナ内の底部に達する下降限位置から、ピッキングして保持している物品と共にピッキングヘッドがコンテナの上方所定高さに達する上昇限位置までの、昇降領域内の何れの高さにピッキングヘッドがある場合でも一定である。従って、先に説明したように物品の吊上げ途中に生じる比較的軽度の異常状態を、加速度センサーが検出する振動値で判別しようとする場合に、従来のような異常検出のしきい値をピッキングヘッドの高さに対応させて自動調整する必要がない。即ち、ピッキングヘッドが物品を吊り上げる状況において最も発生し易い種々の吊上げ異常の内、先に説明したような比較的軽度の異常状態であっても、その異常に対応して異常検出のしきい値を一定に設定しておけば、その吊上げ異常状態を確実に検出させることができる。
【0010】
尚、ピッキングヘッドで吊り上げた物品を受け入れ側のコンテナに搬入させる場合には、物品を吊り上げているピッキングハンドをY軸方向とX軸方向に移動させた後、再びピッキングハンドをZ軸方向に下降させる必要があるが、これらの過程においても、吊り上げている物品に生じる種々の異常を、加速度センサーによって検出できることは当然である。而して、X軸方向とZ軸方向に吊上げ物品を移動させる場合は、加速度センサーとピッキングハンド上端部との間の振動伝播経路の長さが変化しないが、ピッキングハンドをY軸方向に移動させるときは、加速度センサーとピッキングハンド上端部との間の振動伝播経路の長さが変化する。このピッキングハンドのY軸方向の移動範囲は、例えばピッキング作業対象のコンテナの平面形状が長方形の開口部の短辺方向の領域とすることによって、他のX軸方向の移動範囲やZ軸方向の昇降範囲と比較して短くすることができる。しかもピッキングヘッドからY軸ガイドレール上の加速度センサーまでの振動伝播経路の全長に比較して、ピッキングハンド上端からY軸ガイドレール上の加速度センサーまでの振動伝播経路は極短いので、実用上は、異常検出のしきい値をピッキングハンドのY軸方向の位置に対応させて自動的に微調整させなくとも、略所期通りの異常検出は可能である。
【0011】
上記の本発明を実施する場合、前記加速度センサー(47)は、Y軸ガイドレール(8)上でのピッキングハンド移動領域の中央部、又は当該中央部から、当該Y軸ガイドレール(8)のZ軸ガイドレール(7)に支持される端部のある側とは反対の遊端部までの範囲内に取り付けることが望ましい。加速度センサーをY軸ガイドレール上でのピッキングハンド移動領域の中央部に取り付ければ、ピッキングハンドのY軸方向の移動に伴うY軸方向の振動伝播経路長さが、最大でピッキングハンドのY軸方向の最大移動距離の半分となり、ピッキングヘッドからY軸ガイドレール上の加速度センサーまでの振動伝播経路の変動量を少なくして、異常検出の精度を高められる。勿論、加速度センサーをY軸ガイドレール上でのピッキングハンド移動領域のY軸ガイドレール遊端側に取り付けることもできる。この場合、ピッキングヘッドからY軸ガイドレール上の加速度センサーまでの振動伝播経路の変動量が少し増加するが、その反面、片持ち状のY軸ガイドレールの遊端側ほど振動は捉え易くなるので、この点では異常検出の精度を高めることができる。
【0012】
前記Y軸ガイドレール(8)が長さ方向に連続する空洞部(45)を有する中空構造体から構成されている場合は、前記加速度センサー(47)は、このY軸ガイドレール(8)の空洞部(45)に配置することができる。この構成によれば、加速度センサーやその付属回路などが保護され、他物との不測の接触による故障なども未然に回避できる。
【0013】
更に、前記Y軸ガイドレール(8)には、前記ピッキングハンド(9)が位置する側とは反対側の側面に、Y軸ガイドレール(8)の長さ方向に沿った横長で前記空洞部(45)と連通する開口部(46)と、この開口部(46)の下側でY軸ガイドレール(8)の長さ方向に連続する部材取付け用アリ溝(55)を設けておき、前記開口部(46)を経由して前記空洞部(45)内に入り込む基板支持台(36)には、前記開口部(46)の外側で下向きに連設された取付け板部(42)を設け、この取付け板部(42)を前記部材取付け用アリ溝(55)内に嵌合する雌ネジ体(56)に取付け用ネジ(57)によって取り付け、前記基板支持台(36)上に、前記加速度センサー(47)を備え且つ前記開口部(46)のY軸ガイドレール(8)長さ方向の全長よりも長さが短い加速度センサー設置基板(37)を支持させ、前記取付け用ネジ(57)を外すことにより、前記加速度センサー設置基板(37)を前記基板支持台(36)と共に前記空洞部(45)の外に引き出せるように構成することができる。基本的には、加速度センサー設置基板を直接Y軸ガイドレールの空洞部内壁面に取り付けることも考えられるが、上記の構成によれば、加速度センサー設置基板は前記基板支持台に支持されており、この基板支持台を加速度センサー設置基板と共にY軸ガイドレールの開口部から空洞部内に差し込み、Y軸ガイドレールに対する固定は、前記取付け板部と前記部材取付け用アリ溝内に嵌合する雌ネジ体、及び取付け用ネジにより、Y軸ガイドレールの外側で行うことができるので、作業が容易であると共に、メンテナンスのための加速度センサー設置基板の取り外しも簡単容易に行える。
【0014】
前記基板支持台(36)とこの上に支持されている前記加速度センサー設置基板(37)を、前記開口部(46)から外側に張り出すように構成することもできる。加速度センサー設置基板を、巾を狭めて細長い形状に構成すれば、Y軸ガイドレール内の空洞部の内巾が狭くとも当該空洞部内に加速度センサー設置基板を内装することは可能になるが、前記空洞部に対して加速度センサー設置基板を支持させた基板支持台を前記空洞部に対して出し入れするための開口部も長くなり、Y型ガイドレールの強度が低下する恐れも生じる。又、加速度センサー設置基板が細長くなると、この基板上に設置した加速度センサーに必要な制御回路の形成に必要な種々の電気部品の配置と配線の形成が難しくなるが、前記のように基板支持台とこの上に支持されている前記加速度センサー設置基板が前記開口部から外側に張り出しても良いということなら、電気部品の配置や配線の形成に都合の良い巾を持たせることが可能になる。又、基板支持台とこの上に支持されている前記加速度センサー設置基板を、前記開口部を経由してY軸ガイドレールの空洞部に対し出し入れする場合に、前記開口部から外に張り出している部分を把持した状態で作業を行えるので、当該作業が容易に行える。
【0015】
又、前記基板支持台(36)には、前記取付け板部(42)の両側に、前記開口部(46)の外側で垂下する支持板部(43,44)を連設し、これら一対の支持板部(43,44)の下側辺に、前記部材取付け用アリ溝(55)の下側辺(55a)で支持される内側への折曲板部(43a,44a)を連設することができる。この構成によれば、Y軸ガイドレール側にネジ止めする取付け板部を1本のネジで取り付けるようにしても、基板支持台をY軸ガイドレールと平行な向きに確実且つ容易に取り付けることができ、複数本のネジで取り付けなければならない場合と比較して、作業性が格段に向上する。
【0016】
尚、前記Y軸ガイドレール(8)の前記開口部(46)を備えた側面に当該開口部(46)を塞ぐカバー(39)を着脱自在に取り付けておくのが、加速度センサー設置基板を塵埃などから保護する上で望ましい。特に前記のように基板支持台とこの上に支持されている前記加速度センサー設置基板を、前記開口部から外側に張り出すように構成する場合には、カバーも外側に膨らんだ形状に形成しなければならないが、張り出している加速度センサー設置基板などに他物が不測に接触することに起因する故障を回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、ピッキング装置全体の正面図である。
図2図2は、同上平面図である。
図3図3は、同上右側面図である。
図4図4は、Y軸ガイドレールに支持されたピッキングハンドの詳細を示す右側面図である。
図5図5は、Z軸ガイドレールに対するY軸ガイドレールの支持構造を示す一部縦断正面図である。
図6図6は、カバーを取り外した状態での加速度センサーユニットのY軸ガイドレールへの取付け状態を示す要部の左側面図である。
図7図7は、図6の一部省略横断平面図である。
図8図8は、図6の基板支持台取付け用ネジの位置での縦断拡大正面図である。
図9図9は、図6の基板支持台手前の位置での要部縦断拡大正面図である。
図10図10は、図8の加速度センサーユニットの基板支持台を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の構成を適用できるピッキング装置の好適実施例を添付図に従って説明する。図1図3において、1Aは物品取出し作業対象の搬送用コンテナ、1Bは取出し物品を受け入れる物品搬入作業対象の搬送用コンテナである。これら各搬送用コンテナ1A,1Bは、平面形状が長方形のもので、短辺どうしが隣り合う状態で直列状態に作業用定位置にセットされる。図では省略しているが、各搬送用コンテナ1A,1Bは、作業用定位置PA,PBに対する搬入搬出用コンベヤによって取り扱われる。
【0019】
各搬送用コンテナ1A,1Bの作業用定位置PA,PBを内包するように本発明に係るピッキング装置が配設されるが、当該ピッキング装置は、水平面上での作業用定位置PA,PBの直列方向、即ち、各搬送用コンテナ1A,1Bの長辺方向をX軸方向とし、水平面上で前記X軸方向と直交する方向、即ち、各搬送用コンテナ1A,1Bの短辺方向をY軸方向とし、前記水平面に対する垂直上下方向をZ軸方向として、以下のように構成されている。平面視において作業用定位置PA,PBの周囲を取り囲むX軸方向が長い長方形の一方の長辺と重なるように、作業用定位置PA,PBにおける搬送用コンテナ1A,1Bの上端より適当距離上方の高さに、X軸方向と平行にX軸ガイドレール2が架台3によって支持されている。架台3は、X軸ガイドレール2の両端部と中間位置とを支持するものであって、それぞれY軸方向に平行な上側梁材4a~4cと下側梁材5a~5c、及び所要本数の柱材6によって組み立てられた枠組み構造体である。
【0020】
X軸ガイドレール2には、Z方向に起立するZ軸ガイドレール7の下端部がX軸方向に往復移動自在に支持され、このZ軸ガイドレール7には、Y軸方向と平行なY軸ガイドレール8の一端部がZ軸方向に昇降移動自在に支持され、このY軸ガイドレール8には、Z軸方向に長尺のピッキングハンド9の上端部がY軸方向に往復移動自在に支持されている。前記Z軸ガイドレール7は、その下端に設けられた架台部10がX軸ガイドレール2に設けられたレール材2a,2bにX軸方向移動自在に支持され、前記X軸ガイドレール2に敷設されたX軸方向のラックギヤと、前記架台部10に搭載されたモーター11(図3参照)によって正逆回転駆動されるピニオンギヤとの咬合により、前記モーター11を稼働させてZ軸ガイドレール7をX軸方向に往復移動させることができる16。
【0021】
Z軸ガイドレール7には、その上下両端部にY軸方向の支軸によってプーリー12a,12bが軸支されると共に、上側プーリー12aを正逆回転駆動するモーター13(図3参照)が搭載され、上下両プーリー12a,12b間には無端ベルト14が掛張されている。Y軸ガイドレール8の基端部には、図5に示すように、Z軸ガイドレール7に敷設されたレール材7a,7bによってZ軸方向に昇降自在に支持される架台部15が設けられ、この架台部15に前記無端ベルト14の左右両昇降径路部の一方が固定されている。従って、モーター13を稼働させて無端ベルト14を正逆回動させることにより、Y軸ガイドレール8をZ軸方向に昇降移動させることができる。ピッキングハンド9は、Z軸方向に長い柱状体であって、その上端には、Y軸ガイドレール8に支持される架台部16が取り付けられ、下端にはピッキングヘッド17が取り付けられている。
【0022】
図4及び図5に示すように、ピッキングハンド架台部16は、Y軸ガイドレール8の上下両側面に敷設されたレール材8a,8bにY軸方向往復移動自在に支持され、Y軸ガイドレール8の前側面に敷設されたラックギヤ18に咬合するピニオンギヤ19と、このピニオンギヤ19を正逆回転駆動する、Z軸方向に起立するモーター20を備え、モーター20を稼働させてピニオンギヤ19を正逆回転させることにより、ピッキングハンド9をY軸方向に往復移動させることができる。
【0023】
ピッキングハンド9は、その上端のZ軸方向の上端軸部21と、この上端軸部21の下端に同心状に連結された中継軸部22と、この中継軸部22の下端に同心状に連結された柱状本体軸部23から構成され、柱状本体軸部23の下端に前記ピッキングヘッド17が水平支軸17aの周りに傾動自在に軸支され、このピッキングハンド9を自転させる自転用駆動手段24と、ピッキングヘッド17を傾動させる傾動用駆動手段25が併設されている。この実施例のピッキングヘッド17には、3本の負圧吸着具34a~34cで物品の表面を負圧吸着する形式のものが使用されている。
【0024】
ピッキングハンド9の上端軸部21は、前記ピッキングハンド架台部16に上下一対の軸受け26a,26bによって自転可能に支承され、前記ピッキングハンド自転用駆動手段24は、前記上端軸部21のY軸方向の片側で前記ピッキングハンド架台部16に支持されたZ軸方向に起立するモーター27、このモーター27の出力軸に取り付けられた伝動プーリー28a、前記上側軸受け26aの直下で上端軸部21に取り付けられた受動プーリー28b、及び両プーリー28a,28b間に掛張された無端ベルト29から構成され、前記モーター27を稼働させて無端ベルト29を正逆回動させることにより、ピッキングハンド9をそのZ軸方向の軸心の周りに正逆自転駆動させることができるように構成されている。又、前記ピッキングヘッド傾動用駆動手段25は、ピッキングヘッド17の水平支軸17aと平行な向きで、前記中継軸部22を水平方向に貫通する駆動軸30、中継軸部22を挟むように配置され且つ前記駆動軸30に固定された一対のレバー31a,31b、これら両レバー31a,31bの遊端部とピッキングヘッド17の対応箇所とを連動連結する2本の押し引きロッド32a,32b、及び前記駆動軸30を一定角度範囲内で正逆回転駆動する水平向きのモーター33から構成されている。前記一対のレバー31a,31bは、図5に示すように駆動軸30から互いに逆向きに延出し、2本の押し引きロッド32a,32bを上下逆向きに押し引き駆動するように構成されている。従って、2本の押し引きロッド32a,32bの下端は、ピッキングヘッド17の傾動中心軸となっている水平支軸17aの軸心に対して直交する前後両側に振り分け状態でピッキングヘッド17の上側に軸支連結されている。
【0025】
以上のように構成されたピッキング装置は、例えば図1及び図2に示す作業用定位置PAに所定向きにセットされた物品取出し作業対象の搬送用コンテナ1A内のばら積み物品(ピッキングヘッド17の3つの負圧吸着具34a~34cによって吸着して吊り上げられる物品)の内、選択された特定物品を、ピッキングハンド9のピッキングヘッド17により吸着して吊り上げ、このピッキングした特定物品を、隣の作業用定位置PBにセットされている物品搬入作業対象の搬送用コンテナ1B内の所定位置に搬入するような作業に供される。この場合、ピッキングハンド9のピッキングヘッド17をX軸方向に移動させるときには、Z軸ガイドレール架台部10のモーター11を稼働させて、Z軸ガイドレール7をX軸ガイドレール2のレール材2a,2bに沿って移動させ、ピッキングハンド9のピッキングヘッド17をY軸方向に移動させるときには、ピッキングハンド架台部16のモーター20を稼働させて、ピッキングハンド9をY軸ガイドレール8のレール材8a,8bに沿ってY軸方向に往復移動させる。更に、ピッキングハンド9のピッキングヘッド17をZ軸方向に移動させるときには、Z軸ガイドレール架台部15の上端のモーター13を稼働させて、Y軸ガイドレール8をZ軸方向に昇降移動させれば良い。
【0026】
上記の搬送用コンテナ1A内の特定物品のピッキング作業と、ピッキングした特定物品を搬送用コンテナ1B内の所定位置に搬入する作業は、原則としてピッキングヘッド17が傾動前の水平姿勢で且つ自転待機状態にある向きのまま行われるが、ピッキング対象の物品の姿勢や向きなどによっては、ピッキングヘッド17の傾動用駆動手段25を稼働させてピッキングヘッド17を水平支軸17aの周りに傾動許容範囲内の任意の角度だけ傾動させたり、ピッキングハンド9の自転用駆動手段24を稼働させてピッキングヘッド17を所定の角度範囲内で自転させることができる。
【0027】
尚、上記実施例においては、ピッキングヘッド17として、3つの負圧吸着具34a~34cを自転軸心の周りに等間隔おきに配置した構造のものを例示しているが、これは一例であって、取り扱う物品の性状やサイズ、重量などに応じて、従来周知の磁気吸着タイプのもの、複数本の開閉指を使用して物品を把持する把持タイプのものなども利用できる。
【0028】
以上に説明したピッキング装置に本発明の構成を組み込んだ実施例を以下に説明すると、図1図2及び図5に示すように、Y軸ガイドレール8の遊端近傍位置で、ピッキングハンド9のある側とは反対側(裏側面)に加速度センサーユニット35が取り付けられている。外観上はカバー39のみが見えている。この加速度センサーユニット35の詳細構造を図6図10に基づいて説明すると、加速度センサーユニット35は、基板支持台36、加速度センサー設置基板37、電源基板38、及びカバー39から構成されている。図1図2及び図5に示される外観ではカバー39のみが見えている。基板支持台36は、長方形状の加速度センサー設置基板37と同一サイズの長方形本体40の片側長辺の両端から内側に等距離だけ離れた位置に、当該片側長辺から直角向きに切込み部40a,40bが形成され、この両切込み部40a,40b間の部分が下方に直角に折曲されて垂直板部41が形成され、この垂直板部41を長さ方向に3分割するように下側辺から直角向きに2つの切込み部41a,41bが形成され、両切込み部41a,41b間の中央部分は、そのまま巾方向の中央位置に取付け孔42aを備えた取付け板部42となっている。又、両切込み部41a,41bの外側の垂直板部は、下側辺から一定巾部分を内側に直角に折曲された折曲板部43a,44aを備えた支持板部43,44となっている。
【0029】
加速度センサーユニット35が取り付けられるY軸ガイドレール8は、図8に示すように、周囲が一定厚さの壁板部で形成された複数の空洞部が全長にわたって連続するように構成されたもので、そのY軸ガイドレール8の高さ方向の中央に位置する最大サイズで若干縦長の主空洞部45に前記加速度センサーユニット35が取り付けられるが、加速度センサーユニット35の横巾は主空洞部45の横巾よりも少し大きい。従って、前記Y軸ガイドレール8の裏側壁板部8cには、図6に示すように、加速度センサーユニット35の全長及び高さよりも大きな長さと高さから成る横長開口部46が設けられている。
【0030】
加速度センサー設置基板37は、この加速度センサー設置基板37の長さ方向の一端部に設置された加速度センサー47と、当該加速度センサー47からの出力信号を処理して異常検出信号を出力する制御回路48、及びこの加速度センサー設置基板37の長さ方向の他端上に設置された、制御信号出力用LANケーブルの接続コネクタ49から構成されている。電源基板38は、加速度センサー設置基板37と同一巾で長さが半分弱のもので、前記加速度センサー設置基板37が必要とする電力を当該加速度センサー設置基板37側に供給するための部品と回路から構成されたもので、前記加速度センサー設置基板37の上側に、当該加速度センサー設置基板37の両側長辺に沿って配置された複数の電源基板支持用スペーサー50を介して支持されている。尚、これら電源基板支持用スペーサー50は、電源基板38と加速度センサー設置基板37との間の電路形成手段として利用できる。前記加速度センサー設置基板37は、基板支持台36の四隅に設けられた取付け孔36aを下側から上向きに貫通して、各取付け孔36aの上側に配置されたスペーサー兼用長尺六角ナット51の下端側に螺合締結される下側取付けネジ52と、加速度センサー設置基板37の四隅に設けられた取付け孔37aを上側から下向きに貫通して、前記スペーサー兼用長尺六角ナット51の上端側に螺合締結される上側取付けネジ53によって、基板支持台36と平行で且つ一定高さに支持されている。
【0031】
Y軸ガイドレール8の裏側壁板部8cには、前記横長開口部46の上下位置に、当該Y軸ガイドレール8の長さ方向と平行に連続する部材取付け用アリ溝54,55が設けられている。これら部材取付け用アリ溝54,55を使用する際は、従来周知のように奥端の巾広溝部54a,55a内に長さ方向横動自在に嵌合している雌ネジ体56を利用して、Y軸ガイドレール8の裏側壁板部8cに接して部材をネジ止めできるように構成されている。前記加速度センサーユニット35の基板支持台36とカバー39は、横長開口部46の下側にある部材取付け用アリ溝55と雌ネジ体56,62a,62b、及び取付け用ネジ57,58a,58bを利用してY軸ガイドレール8の裏側壁板部8cに取り付けられている。
【0032】
即ち、図6図9に示すように、加速度センサー設置基板37及び電源基板38を支持している基板支持台36を、前記横長開口部46を経由させてY軸ガイドレール8の主空洞部45内に差し込む。この場合、横長開口部46の下側辺46a上で基板支持台36の長方形本体40を滑らすように挿入し、当該基板支持台36の垂直板部41(取付け板部42とその両側の支持板部43,44)をY軸ガイドレール8の裏側壁板部8cに当接させる。このとき左右一対の支持板部43,44の折曲板部43a,44aを、図9に示すように、前記部材取付け用アリ溝55内に挿入させると共に当該部材取付け用アリ溝55の下側辺55a上に支持させることができる。この状態で基板支持台36をY軸ガイドレール8の長さ方向に滑動させて、基板支持台36の長さ方向中心位置を横長開口部46の長さ方向中心位置に合わせ、部材取付け用アリ溝55内に予め嵌合させてある雌ネジ体56を取付け板部42の裏側で且つ取付け孔52aと略同心位置に配置させ、取付け孔52aを経由させて雌ネジ体56のネジ孔に締結用ネジ57を捩じ込むことにより、基板支持台36とこれに支持されている加速度センサー設置基板37及び電源基板38のY軸ガイドレール8への取り付けが完了する。この取付け完了状態では、基板支持台36、加速度センサー設置基板37、及び電源基板38の、基板支持台36の垂直板部41から外側に張り出している部分が横長開口部46の外側に張り出している。
【0033】
最後に前記カバー39を取り付けるが、このカバー39は、横長開口部46よりも長さ及び高さが大きい長方形のカバー天板部59と、このカバー天板部59の周囲から内向きに折曲連設させた4枚のカバー周側板部60、及び下側に位置する周側板部60の長さ方向両端部から直角下向きに折曲連設させた取付け孔付きの取付け板部61a,61bから成るものであって、両取付け板部61a,61bをY軸ガイドレール8の部材取付け用アリ溝55に、前記基板支持台36の取り付けと同様に、部材取付け用アリ溝55に前以て嵌合させた雌ネジ体62a,62bと締結用ネジ58a,58bを利用して取り付けることができる。このカバー39の取り付けに際しても、前記基板支持台36の取り付け時と同様に、カバー39の長さ方向中心位置を横長開口部46の長さ方向中心位置に合わせて取り付ける。このようにして取り付けられたカバー39は、そのカバー周側板部60の内端が横長開口部46の外側でY軸ガイドレール8の裏側壁板部8cに隣接し、カバー天板部59は、横長開口部46から外側に張り出している基板支持台36、加速度センサー設置基板37、及び電源基板38と干渉しないように、これらの外側に所定の間隙を隔てて位置している。
【0034】
上記のようにY軸ガイドレール8の遊端近くに加速度センサーユニット35が取り付けられていることにより、先に説明したように、ピッキングヘッド17をXYZ3軸方向に移動させて、物品取出し作業対象の搬送用コンテナ1A内から特定の物品を、ピッキングヘッド17の負圧吸着具34a~34cにより吸着して吊り上げるピッキング作業と、この吊り上げた特定の物品を物品搬入作業対象の搬送用コンテナ1B内の所定箇所に搬入する作業とを自動的に行わせるとき、ピッキングヘッド17には種々の異常現象に起因するXYZ3軸方向の振動が生じる。種々の異常現象としては、コンテナ1A,1B内でのピッキングヘッド17のXYZ3軸方向の移動時に所定位置でピッキングヘッド17が停止しなかったためにピッキングヘッド17がコンテナ周囲壁に接触する、作業対象でない物品にピッキングヘッド17が接触する、物品吊上げ動作途中に物品がピッキングヘッド17から外れて落下する、ピッキングヘッドの3つの負圧吸着具34a~34cの1つ又は2つから物品が外れて吊上げ中の物品の姿勢が変動する、包装されている物品のピッキング時に当該物品の包装が破損して吊上げ中の物品の姿勢が変動する、などがある。
【0035】
これら種々の異常現象発生時におけるピッキングヘッド17の振動は、ピッキングハンド9からY軸ガイドレール架台部15を経由してY軸ガイドレール8に伝播され、このY軸ガイドレール8の振動が、加速度センサーユニット35の加速度センサー設置基板37に搭載の加速度センサー47に感知される。この加速度センサー47が感知する振動は、予め異常現象ごとに検証された振動データと制御回路48において比較演算され、実際に異常現象として捉えるべきか否かが判定され、その判定結果に応じて、ピッキング装置全体を非常停止させる、ピッキングヘッド17の移動速度を減速させる、ピッキングヘッド17を目的のコンテナではなく別に設定された異常処理場所に移動させる、単に異常発生の警告(警告灯の点灯や警告ブザーの鳴動など)を実行させる、などの異常対策が自動的に実行される。
【0036】
尚、加速度センサー47にピッキングヘッド17の振動をできる限り減衰させないで伝播させるのが望ましい。以上に説明した本発明の構成によれば、ピッキングヘッド17が許容される最大の3次元移動空間内のどの位置にあっても、ピッキングヘッド17から加速度センサー47を保持しているY軸ガイドレール8までの垂直上下方向の距離、即ち、垂直上下方向の振動伝播経路長は一定であり、振動伝播経路長が変化するのは、ピッキングハンド9がY軸方向に移動したときである。上記の実施例では、ピッキングハンド9がY軸ガイドレール8上をY軸方向に移動したときだけ、ピッキングハンド9の上端のピッキングハンド架台部16と加速度センサー47との間のY軸方向の振動伝播経路長が変化することになる。既に詳細に説明したように、ピッキングヘッド17がY軸方向に移動する移動範囲は、作業対象の搬送用コンテナ1A,1Bの内部空間における短辺方向長さとなるので、他のX軸方向の移動範囲やZ軸方向の移動範囲と比較して小さい。
【0037】
この点から考察すれば、Y軸ガイドレール8に対する加速度センサーユニット35の取付け位置は、このY軸ガイドレール8におけるピッキングハンド9のY軸方向の移動経路範囲の中央位置とすれば、Y軸方向の振動伝播経路長の最大がY軸ガイドレール8におけるピッキングハンド9のY軸方向の移動経路範囲の半分長さとなるので、ピッキングヘッド17がY軸方向に移動する間に加速度センサー47に伝播される振動が減衰する程度が半減することになり、精度の良い異常検出が可能になる。勿論、加速度センサーユニット35の取付け位置は、基本的にY軸ガイドレール8のY軸ガイドレール架台部15のある基端側ではなく、遊端側であるのが望ましい。即ち、Y軸ガイドレール8は両端支持構造ではなく片持ち構造であるから、遊端側の方が基端側よりも振動性能が高いので、ピッキングヘッド17の微妙な振動も加速度センサー47によって取り込み易い。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明のピッキング装置は、ピッキングヘッドで保持した物品を搬送するときに生じる種々の異常現象を的確に捉えて然るべき対策を自動的に講ずるのに好適なピッキング装置として活用できるものである。
【符号の説明】
【0039】
1A 物品取出し作業対象の搬送用コンテナ
1B 物品搬入作業対象の搬送用コンテナ
2 X軸ガイドレール
2a,2b レール材
3 架台
4a~4c 上側梁材
5a~5c 下側梁材
6 柱材
7 Z軸ガイドレール
7a,7b レール材
8 Y軸ガイドレール
8a,8b レール材
8c Y軸ガイドレールの裏側壁板部
9 ピッキングハンド
10 Z軸ガイドレール架台部
11,13,18,20,27,33 モーター
12a,12b,28a,28b プーリー
14,29 無端ベルト
15 Y軸ガイドレール架台部
16 ピッキングハンド架台部
17 ピッキングヘッド
17a 水平支軸
19 ピニオンギヤ
21 上端軸部
22 中継軸部
23 柱状本体軸部
24 ピッキングハンド自転用駆動手段
25 ピッキングヘッド傾動用駆動手段
26a,26b 上下一対の軸受け
30 駆動軸
31a,31b 一対のレバー
32a,32b 2本の押し引きロッド
34a~34c 負圧吸着具
35 加速度センサーユニット
36 基板支持台
36a 取付け孔
37 加速度センサー設置基板
37a 取付け孔
38 電源基板
39 カバー
40 長方形本体
40a,40b,41a,41b 切込み部
41 垂直板部
42 取付け板部
42a 取付け孔
43,44 支持板部
43a,44a 折曲板部
45 主空洞部
46 横長開口部
46a 下側辺
47 加速度センサー
48 制御回路
49 制御信号出力用LANケーブルの接続コネクタ
50 電源基板支持用スペーサー
51 スペーサー兼用長尺六角ナット
52 下側取付けネジ
53 上側取付けネジ
54,55 部材取付け用アリ溝
55a アリ溝の下側辺
56,62a,62b 雌ネジ体
57,58a,58b 取付け用ネジ
59 カバー天板部
60 カバー周側板部
61a,61b 取付け板部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10