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特開2023-72343熱伝導材用組成物、熱伝導材、及び熱伝導材の製造方法
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  • 特開-熱伝導材用組成物、熱伝導材、及び熱伝導材の製造方法 図1
  • 特開-熱伝導材用組成物、熱伝導材、及び熱伝導材の製造方法 図2
  • 特開-熱伝導材用組成物、熱伝導材、及び熱伝導材の製造方法 図3
  • 特開-熱伝導材用組成物、熱伝導材、及び熱伝導材の製造方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023072343
(43)【公開日】2023-05-24
(54)【発明の名称】熱伝導材用組成物、熱伝導材、及び熱伝導材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/44 20060101AFI20230517BHJP
   H01L 23/373 20060101ALI20230517BHJP
   H01L 23/36 20060101ALI20230517BHJP
   C08F 265/06 20060101ALI20230517BHJP
   C09K 5/14 20060101ALI20230517BHJP
【FI】
C08F2/44 Z
H01L23/36 M
H01L23/36 D
C08F265/06
C09K5/14 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021184829
(22)【出願日】2021-11-12
(71)【出願人】
【識別番号】000242231
【氏名又は名称】北川工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】李 健広
(72)【発明者】
【氏名】祐岡 輝明
【テーマコード(参考)】
4J011
4J026
5F136
【Fターム(参考)】
4J011PA02
4J011PA07
4J011PA08
4J011PA13
4J011PA69
4J011PB40
4J011PC02
4J011PC08
4J026AA45
4J026BA27
4J026BB03
4J026DB07
4J026DB13
4J026DB23
4J026DB32
4J026GA07
5F136BA03
5F136BC07
5F136FA14
5F136FA16
5F136FA17
5F136FA51
5F136FA55
5F136FA65
5F136FA82
(57)【要約】
【課題】高い熱伝導率を有する熱伝導材等の提供。
【解決手段】本発明の熱伝導材用組成物は、1種又は2種以上の(メタ)アクリレートを重合してなるアクリル系重合体、及び1種又は2種以上の(メタ)アクリレートを含むアクリル系組成物と、多官能モノマーと、重合開始剤と、熱伝導フィラーとを有する熱伝導材用組成物であって、前記アクリル系組成物100質量部に対して、前記多官能モノマーの配合量が0.1質量部以上0.5質量部以下、前記重合開始剤の配合量が0.1質量部以上1.5質量部以下、及び前記熱伝導フィラーの配合量が1550質量部以上1600質量部以下であり、前記熱伝導フィラーは、粒径が50μm以上150μm以下であり、かつ窒化アルミニウムからなる大粒径熱伝導フィラーと、粒径が7.5μm以上20μm以下である中粒径熱伝導フィラーと、粒径が3μm以下である小粒径熱伝導フィラーと含み、かつ前記アクリル系組成物100質量部に対して、前記大粒径熱伝導フィラーの配合量が680質量部以上750質量部以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種又は2種以上の(メタ)アクリレートを重合してなるアクリル系重合体、及び1種又は2種以上の(メタ)アクリレートを含むアクリル系組成物と、
多官能モノマーと、
重合開始剤と、
熱伝導フィラーとを有する熱伝導材用組成物であって、
前記アクリル系組成物100質量部に対して、前記多官能モノマーの配合量が0.1質量部以上0.5質量部以下、前記重合開始剤の配合量が0.1質量部以上1.5質量部以下、及び前記熱伝導フィラーの配合量が1550質量部以上1600質量部以下であり、
前記熱伝導フィラーは、粒径が50μm以上150μm以下であり、かつ窒化アルミニウムからなる大粒径熱伝導フィラーと、粒径が7.5μm以上20μm以下である中粒径熱伝導フィラーと、粒径が3μm以下である小粒径熱伝導フィラーと含み、かつ
前記アクリル系組成物100質量部に対して、前記大粒径熱伝導フィラーの配合量が680質量部以上750質量部以下である熱伝導材用組成物。
【請求項2】
前記アクリル系組成物100質量部に対して、前記中粒径熱伝導フィラーの配合量が、300質量部以上である請求項1に記載の熱伝導材用組成物。
【請求項3】
前記アクリル系組成物100質量部に対する前記小粒径熱伝導フィラーの配合量が、前記アクリル系組成物100質量部に対する前記中粒径熱伝導フィラーの配合量よりも多い請求項1又は請求項2に記載の熱伝導材用組成物。
【請求項4】
請求項1~3の何れか一項に記載の熱伝導材用組成物の硬化物からなり、
熱伝導率が7.2W/m・K以上である熱伝導材。
【請求項5】
請求項1~3の何れか一項に記載の熱伝導材用組成物を利用して熱伝導材を製造する熱伝導材の製造方法であって、
前記熱伝導材用組成物を、第1の剥離フィルムの表面に付与し、前記熱伝導材用組成物からなる付与物を形成する付与工程と、
前記第1の剥離フィルムとの間で前記付与物が挟まれるように、前記付与物の表面を、第2の剥離フィルムで被覆する被覆工程と、
前記第1の剥離フィルムと前記第2の剥離フィルムとの間で挟まれた状態の前記付与物をホットプレスすることにより、前記付与物を硬化させて、前記付与物の硬化物からなる高熱伝導材を得る加熱加圧工程とを備える熱伝導材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導材用組成物、熱伝導材、及び熱伝導材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アクリル系樹脂に、熱伝導フィラーを充填した熱伝導材が知られている(例えば、特許文献1)。この種の熱伝導材は、電子部品等の発熱体からの放熱を促すために、その発熱体に接触するように配置して使用される。具体的には、シート状の熱伝導材を、発熱体(例えば、CPU)とヒートシンクとの間に介在させる形で使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4009224号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の熱伝導材の熱伝導率は、3W/m・K程度(例えば、特許文献1)であり、改善の余地があった。
【0005】
本発明の目的は、高い熱伝導率を有する熱伝導材等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための手段は、以下の通りである。即ち、
<1> 1種又は2種以上の(メタ)アクリレートを重合してなるアクリル系重合体、及び1種又は2種以上の(メタ)アクリレートを含むアクリル系組成物と、多官能モノマーと、重合開始剤と、熱伝導フィラーとを有する熱伝導材用組成物であって、前記アクリル系組成物100質量部に対して、前記多官能モノマーの配合量が0.1質量部以上0.5質量部以下、前記重合開始剤の配合量が0.1質量部以上1.5質量部以下、及び前記熱伝導フィラーの配合量が1550質量部以上1600質量部以下であり、前記熱伝導フィラーは、粒径が50μm以上150μm以下であり、かつ窒化アルミニウムからなる大粒径熱伝導フィラーと、粒径が7.5μm以上20μm以下である中粒径熱伝導フィラーと、粒径が3μm以下である小粒径熱伝導フィラーと含み、かつ前記アクリル系組成物100質量部に対して、前記大粒径熱伝導フィラーの配合量が680質量部以上750質量部以下である熱伝導材用組成物。
【0007】
<2> 前記アクリル系組成物100質量部に対して、前記中粒径熱伝導フィラーの配合量が、300質量部以上である前記<1>に記載の熱伝導材用組成物。
【0008】
<3> 前記アクリル系組成物100質量部に対する前記小粒径熱伝導フィラーの配合量が、前記アクリル系組成物100質量部に対する前記中粒径熱伝導フィラーの配合量よりも多い前記<1>又は<2>に記載の熱伝導材用組成物。
【0009】
<4> 前記<1>~<3>の何れか1つに記載の熱伝導材用組成物の硬化物からなり、 熱伝導率が7.2W/m・K以上である熱伝導材。
【0010】
<5> 前記<1>~<3>の何れか1つに記載の熱伝導材用組成物を利用して熱伝導材を製造する熱伝導材の製造方法であって、前記熱伝導材用組成物を、第1の剥離フィルムの表面に付与し、前記熱伝導材用組成物からなる付与物を形成する付与工程と、前記第1の剥離フィルムとの間で前記付与物が挟まれるように、前記付与物の表面を、第2の剥離フィルムで被覆する被覆工程と、前記第1の剥離フィルムと前記第2の剥離フィルムとの間で挟まれた状態の前記付与物をホットプレスすることにより、前記付与物を硬化させて、前記付与物の硬化物からなる高熱伝導材を得る加熱加圧工程とを備える熱伝導材の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、高い熱伝導率を有する熱伝導材等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】熱伝導材の断面構成を模式的に表した説明図
図2】熱伝導材の使用例を示す説明図
図3】熱伝導材から剥離フィルムを剥離した際に、剥離フィルムに極微量の分離物の付着が認められた場合を示す図(写真)
図4】熱伝導材から剥離フィルムを剥離した際に、剥離フィルムに分離物の付着が認められる場合を示す図(写真)
【発明を実施するための形態】
【0013】
〔熱伝導材用組成物〕
本発明の熱伝導材用組成物は、高い熱伝導率を有する熱伝導材を作製するための組成物であり、室温(23℃)条件下で、通常、液状をなしている。
【0014】
熱伝導材用組成物は、主として、アクリル系組成物と、多官能モノマーと、重合開始剤と、熱伝導フィラーとを有する。
【0015】
アクリル系組成物は、1種又は2種以上の(メタ)アクリレートを重合してなるアクリル系重合体と、1種又は2種以上の(メタ)アクリレートとを少なくとも含む組成物である。なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、メタクリレート及び/又はアクリレートを意味する。
【0016】
アクリル系重合体としては、炭素数が2~18の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレート(以下、「アルキル(メタ)アクリレート」と称する場合がある。)を、単独で又は2種以上を組み合わせて重合したものからなる。アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、i-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、i-ペンチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、i-オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、i-ノニル(メタ)アクリレート、i-デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、i-ミリスチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、i-ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0017】
アクリル系組成物は、アクリル系重合体と共に、モノマーである(メタ)アクリレートを含んでいる。モノマーとしての(メタ)アクリレートは、上記アクリル系重合体の材料として例示した(メタ)アクリレート(つまり、アルキル(メタ)アクリレート)を単独で又は2種以上を組み合わせたものであってもよいし、アルキル(メタ)アクリレート以外の(メタ)アクリレートであってもよい。
【0018】
アクリル系組成物は、アクリル系重合体、及びモノマーとしての(メタ)アクリレート以外に、他の共重合性モノマーを含んでもよい。他の共重合性モノマーとしては、ビニル基を有する共重合性ビニルモノマー(例えば、アクリルアミド、アクリロニトリル、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、酢酸ビニル、塩化ビニル等)、芳香族系モノマー(例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート)等が挙げられる。これらは単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0019】
アクリル系組成物は、更に、芳香族系エステル類を含んでもよい。
【0020】
アクリル系組成物としては、上市されているもの(例えば、株式会社日本触媒製のアクリキュアー(登録商標)HD-Aシリーズ等)を用いてもよい。
【0021】
(多官能モノマー)
多官能モノマーは、分子内に2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有するモノマーからなる。本明細書において、「(メタ)アクリロイル基」は、アクリロイル基及び/又はメタクリロイル基を意味する。
【0022】
分子内に2つの(メタ)アクリロイル基を有する2官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、2-エチル-2-ブチル-プロパンジオール(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ステアリン酸変性ペンタエリスリトールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、2,2-ビス[4-(メタ)アクリロキシジエトキシフェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(メタ)アクリロキシプロポキシフェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(メタ)アクリロキシテトラエトキシフェニル]プロパン等が挙げられる。
【0023】
3官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス[(メタ)アクリロキシエチル]イソシアヌレート等が挙げられる。4官能以上の(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、ジメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0024】
多官能モノマーは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、 これらの多官能モノマーのうち、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等が好ましい。
【0025】
多官能モノマーの配合量は、アクリル系組成物100質量部に対して、0.1質量部以上、好ましくは0.15質量部以上、0.5質量部以下、好ましくは0.4質量部以下、より好ましくは0.3質量部以下である。熱伝導材用組成物において、多官能モノマーの配合量が上記範囲であると、高い熱伝導率等を備えた熱伝導材(成形体)が得られると共に、成形体(熱伝導材)の硬度が高くなり過ぎず、形状が維持される。
【0026】
(重合開始剤)
重合開始剤は、過酸化物からなり、所定温度以上に加熱されると、ラジカルを発生する。重合開始剤としては、例えば、ジ-(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ラウロイルパーオキサイド、t-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、4-(1,1-ジメチルエチル)シクロヘキサノール等の有機過酸化物等からなる。重合開始剤のうち、ジ-(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネートが好ましい。これらの重合開始剤は、単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0027】
重合開始剤の配合量は、アクリル系組成物100質量部に対して、0.1質量部以上、好ましくは0.4質量部以上、1.5質量部以下、好ましくは1.3質量部以下である。熱伝導用組成物において、重合開始剤の配合量が上記範囲であると、高い熱伝導率等を備えた熱伝導材(成形体)を得られると共に、成形体(熱伝導材)の硬度が高くなり過ぎず、形状が維持される。
【0028】
熱伝導フィラーは、大粒径熱伝導フィラー、中粒径熱伝導フィラー及び小粒径熱伝導フィラーを有する。
【0029】
大粒径熱伝導フィラーは、中粒径熱伝導フィラー、及び小粒径熱伝導フィラーよりも粒径が大きい熱伝導フィラーである。大粒径熱伝導フィラーの粒径は、50μm以上、好ましくは55μm以上、より好ましくは60μm以上、150μm以下、好ましくは130μm以下、より好ましくは110μm以下である。
【0030】
大粒径熱伝導フィラーは、窒化アルミニウム(AlN)の粉末(粒子状の窒化アルミニウム)が利用される。
【0031】
中粒径熱伝導フィラーは、大粒径熱伝導フィラーよりも粒径が小さく、かつ小粒径熱伝導フィラーよりも粒径が大きい熱伝導フィラーである。中粒径熱伝導フィラーの粒径は、7.5μm以上、好ましくは8.5μm以上、より好ましくは9.0μm以上、20μm以下、好ましくは16μm以下、より好ましくは13μm以下である。
【0032】
中粒径熱伝導フィラーは、例えば、炭化ケイ素(SiC)等の粉末が利用される。
【0033】
小粒径熱伝導フィラーは、大粒径熱伝導フィラー、及び中粒径熱伝導フィラーよりも粒径が小さい熱伝導フィラーである。小粒径熱伝導フィラーの粒径は、3μm以下、好ましくは2μm以下、より好ましくは1.5μm以下である。なお、小粒径熱伝導フィラーの粒径の下限値は、本発明の目的を損なわない限り特に限定されないが、例えば、0.01μm以上が好ましく、0.1μm以上がより好ましく、0.5μm以上が更に好ましい。
【0034】
小粒径熱伝導フィラーは、例えば、酸化アルミニウム(Al)等の粉末が利用される。
【0035】
熱伝導フィラー(大粒径熱伝導フィラー、中粒径熱伝導フィラー、及び小粒径熱伝導フィラー)の配合量は、アクリル系組成物100質量部に対して、1550質量部以上1600質量部以下である。熱伝導材用組成物において、熱伝導フィラー(大粒径熱伝導フィラー、中粒径熱伝導フィラー、及び小粒径熱伝導フィラー)の配合量が上記範囲であると、高い熱伝導率等を備えた熱伝導材(成形体)が得られると共に、熱伝導用組成物の粘度や成形体(熱伝導材)の硬度が高くなり過ぎることが抑制される。
【0036】
また、大粒径熱伝導フィラーの配合量は、アクリル系組成物100質量部に対して、680質量部以上750質量部以下である。熱伝導材用組成物において、大粒径熱伝導フィラーの配合量が上記範囲であると、高い熱伝導率等を備えた熱伝導材(成形体)が得られると共に、熱伝導材内に形成される大粒径熱伝導フィラー同士の間隔が適度に保たれ、しかも、熱伝導材(成形体)の表面にひび割れや凹凸が形成されることが抑制される。
【0037】
また、中粒径熱伝導フィラーの配合量は、アクリル系組成物100質量部に対して、300質量部以上の範囲が好ましく、350質量部以上がより好ましい。なお、中粒径熱伝導フィラーの配合量の上限値は、本発明の目的を損なわない限り特に制限はないが、例えば、アクリル系組成物100質量部に対して、450質量部以下が好ましく、400質量部以下がより好ましい。中粒径熱伝導フィラーの配合量が上記範囲であると、高い熱伝導率等を備えた熱伝導材(成形体)が得られ易くなると共に、熱伝導用組成物の粘度や成形体(熱伝導材)の硬度が高くなり過ぎることが抑制され易い。なお、中粒径熱伝導フィラーは、熱伝導材内において、大粒径熱伝導フィラー間に形成される隙間(間隔)を埋めるように配置される。
【0038】
また、熱伝導材用組成物において、アクリル系組成物100質量部に対する小粒径熱伝導フィラーの配合量が、アクリル系組成物100質量部に対する中粒径熱伝導フィラーの配合量よりも多いことが好ましい。
【0039】
小粒径熱伝導フィラーの配合量は、本発明の目的を損なわない限り特に制限はないが、例えば、アクリル系組成物100質量部に対して、好ましくは400質量部以上、より好ましくは450質量部以上、好ましくは550質量部以下、より好ましくは500質量部以下の範囲であってもよい。小粒径熱伝導フィラーの配合量が上記範囲であると、高い熱伝導率等を備えた熱伝導材(成形体)が得られ易くなると共に、熱伝導用組成物の粘度や成形体(熱伝導材)の硬度が高くなり過ぎることが抑制され易い。なお、小粒径熱伝導フィラーは、熱伝導材内において、大粒径熱伝導フィラー間に形成される隙間(間隔)、中粒径根雨伝導フィラー間に形成される隙間、及び大粒径熱伝導フィラーと中粒径熱伝導フィラーとの間に形成される隙間(間隔)をそれぞれ埋めるように配置される。
【0040】
なお、本明細書において、熱伝導フィラー(大粒径熱伝導フィラー、中粒径熱伝導フィラー、小粒径熱伝導フィラー)等の各種フィラーの粒径(μm)は、レーザー回折法による体積基準の粒径(D50)である。前記粒径(D50)は、レーザー回折式の粒度分布測定器を利用して測定することができる。
【0041】
熱伝導材用組成物は、更に、酸化防止剤、可塑剤、分散剤を有してもよい。
【0042】
(酸化防止剤)
酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、リン系加工熱安定剤、ラクトン系加工熱安定剤、イオウ系耐熱安定剤、フェノール・リン系酸化防止剤等が挙げられ、フェノール系酸化防止剤が好ましく、特にヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましい。酸化防止剤の配合量は、本発明の目的を損なわない限り特に制限はないが、例えば、アクリル系組成物100質量部に対して、2質量部以下の範囲(0~2質量部の範囲)であってもよい。なお、酸化防止剤は、熱伝導材用組成物において、必須の成分ではないため、含まなくてもよい。酸化防止剤は、熱伝導材用組成物より得られる熱伝導材の長期安定性、熱伝導材の硬度調整(製造時のアクリル系樹脂の重合反応の調整)等を目的として、適宜、使用されてもよい。
【0043】
酸化防止剤の市販品としては、例えば、商品名「アデカスタブ(登録商標) AO-60」(株式会社ADEKA製)を用いることができる。
【0044】
可塑剤としては、例えば、トリメリット酸エステル系可塑剤が好ましい。トリメリット酸エステル系可塑剤としては、例えば、トリメリット酸トリオクチル、トリメリット酸トリイソノニル、トリメリット酸トリイソデシル、トリメリット酸2-エチルヘキシル等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。トリメリット酸エステル系可塑剤の市販品としては、商品名「アデカサイザー(登録商標) C-880」(株式会社ADEKA製)を用いることができる。
【0045】
可塑剤の配合量は、アクリル系組成物100質量部に対して、好ましくは4質量部以上、より好ましくは6質量部以上、好ましくは15質量部以下、より好ましくは10質量部以下である。可塑剤の配合量がこのような範囲であると、熱伝導材を所望の硬度(アスカーC硬度)に調整し易い。可塑剤の配合量が上記範囲であると、高い熱伝導率等を備えた熱伝導材(成形体)が得られ易くなると共に、熱伝導用組成物の粘度や成形体(熱伝導材)の硬度が高くなり過ぎることが抑制され易い。
【0046】
分散剤としては、例えば、リン酸ポリエステルが好ましい。
【0047】
分散剤の配合量は、アクリル系組成物100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは7質量部以上、好ましくは14質量部以下、より好ましくは9質量部以下である。分散剤の配合量がこのような範囲であると、架橋阻害が起き難くなるため、熱伝導材用組成物の粘度を適度な範囲に調整し易く、例えば、熱伝導材の製造時に、剥離フィルム上に、熱伝導材用組成物からなる付与物を形成し易くなる(つまり、所定形状の成形体(例えば、シート)が得られ易くなる)。
【0048】
熱伝導材用組成物は、本発明の目的を損なわない限り、更に、他の成分が配合されてもよい。他の成分としては、例えば、着色剤(顔料、染料等)、紫外線吸収剤、難燃剤、防腐剤、溶剤、防カビ剤、老化防止剤、耐電防止剤、粘着付与剤等が挙げられる。
【0049】
〔熱伝導材の製造方法〕
本発明の熱伝導材の製造方法は、上述した熱伝導材用組成物を利用して熱伝導材を製造する方法である。熱伝導材の製造方法は、付与工程、被覆工程、加熱加圧工程を備える。
【0050】
付与工程は、熱伝導材用組成物を、第1の剥離フィルムの表面に付与し、熱伝導材用組成物からなる付与物を形成する工程である。
【0051】
被覆工程は、第1の剥離フィルムとの間で付与物が挟まれるように、付与物の表面を、第2の剥離フィルムで被覆する工程である。
【0052】
加熱加圧工程は、第1の剥離フィルムと第2の剥離フィルムとの間で挟まれた状態の付与物をホットプレスすることにより、付与物を硬化させて、付与物の硬化物からなる高熱伝導材を得る工程である。ホットプレスの条件は、例えば、加熱温度:100℃~110℃、プレス時間:5分~10分、圧力:20MPa~40MPaであってもよい。
【0053】
〔熱伝導材〕
熱伝導材は、上記熱伝導材用組成物を利用して製造されるものであり、優れた熱伝導性を備えている。具体的には、熱伝導材は、7.2W/m・K以上(好ましくは、7.5W/m・K以上、より好ましくは8.0W/m・K以上)の熱伝導率を備えている。熱伝導率の測定方法は、後述する。また、熱伝導材は、後述するように、剥離性に優れる。つまり、熱伝導材の表面から剥離フィルムを剥がした際に、剥離フィルムに熱伝導材の一部(分離物)が付着して移動することが抑制されるため、熱伝導材の表面に凹凸が形成されることが抑制される(つまり、熱伝導材の表面の平滑性が保たれる)。そのため、熱伝導材と、それが貼り付けられる対象物との間に空気(気泡)が溜まることが抑制され、熱伝導材の高い熱伝導率が維持される。また、熱伝導材は、その表面に粘着性がある。そのため、熱伝導材は、表面の粘着性(粘着力)を利用して対象物に貼り付くことが可能であり、対象物に対する位置決めや、対象物に対する固定を行うことができる。
【0054】
熱伝導材の硬度は、本発明の目的を損なわない限り特に制限はなく、適宜、設定される。熱伝導材の硬度(アスカーC硬度)は、例えば、10以上75以下であってもよい。
【0055】
図1は、熱伝導材1の断面構成を模式的に表した説明図である。熱伝導材1は、所定の厚みを有するシートであり、アクリル系樹脂層2と、アクリル系樹脂層2中に含まれる熱伝導フィラー3とを備える。熱伝導フィラー3は、大粒径熱伝導フィラー31,中粒径熱伝導フィラー32、小粒径熱伝導フィラー33からなる。熱伝導材11の表面及び裏面には、それぞれ剥離フィルム4,5が貼り付けられている。剥離フィルム5が「第1の剥離フィルム」に対応し、剥離フィルム4が「第2の剥離フィルム」に対応する。
【0056】
剥離フィルム4,5は、所定の厚みを有するPETフィルムからなる。剥離フィルム4,5が、熱伝導材11と直に接触する部分には、シリコーン樹脂等からなる離型剤が塗布されていてもよい。剥離フィルム4,5としては、PETフィルム以外に、他の樹脂(ポリオレフィン系樹脂等)からなるフィルムが使用されてもよい。
【0057】
図2は、熱伝導材1の使用例を示す説明図である。熱伝導材1は、例えば、プリント基板11上に実装された電子部品(CPU)10に、放熱部材20を取り付ける際に利用される。具体的には、電子部品10の上面に、剥離フィルム4,5(図1参照)を剥離した状態のシート状の放熱部材1を貼り付け、そして、その放熱部材1上に、放熱部材20の板状の底部21が貼り付けられる。底部21には、複数の放熱フィン22が立設されている。放熱部材1は、熱伝導性に優れる金属材料(例えば、アルミニウム)からなる。電子部品10から発生した熱は、放熱部材1内に存在する熱伝導フィラー3(31,32,33)からなる導電路を通りつつ、放熱部材1へ移動する。そして、放熱部材1により放熱される。
【0058】
なお、熱伝導材1の上記使用例は、一例であり、その他の用途に熱伝導材1を使用してもよい。
【実施例0059】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。なお、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0060】
〔熱伝導材用組成物〕
(実施例1)
アクリル系組成物100質量部に対して、多官能モノマー、重合開始剤、酸化防止剤、可塑剤、分散剤、及び熱伝導フィラー(大粒径熱伝導フィラー、中粒径熱伝導フィラー、小粒径熱伝導フィラー)を、表1に示される配合量(質量部)で添加し、それらを混合して、実施例1の熱伝導材用組成物を得た。各成分の詳細は、以下の通りである。
【0061】
「アクリル系組成物」:商品名「アクリキュアー(登録商標) HD-A218」(株式会社 日本触媒製、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(アクリル系重合体の一例)、アクリル酸2-エチルヘキシル((メタ)アクリレートの一例)及び芳香族系エステル類を含む組成物)
【0062】
「多官能モノマー」:商品名「ライトアクリレート(登録商標) 1.6HX-A」(共栄社化学株式会社製、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート)
【0063】
「重合開始剤」:商品名「パーカドックス(登録商標) 16」(化薬アクゾ株式会社製、ジ-(4-tert-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、4-(1,1-ジメチルエチル)シクロヘキサノール)
【0064】
「可塑剤」:商品名「アデカサイザー(登録商標) C-880」(株式会社ADEKA製、トリメリット酸エステル系可塑剤、粘度:100mPa・s(25℃))
【0065】
「分散剤」:商品名「BYK-W 9010」(BYK株式会社製、リン酸ポリエステル)
【0066】
「酸化防止剤」:商品名「アデカスタブ(登録商標) AO-60」(株式会社ADEKA製、テトラキス[メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン)
【0067】
「窒化アルミニウム(大粒径熱伝導フィラー)」:商品名「HF-100」(株式会社燃焼合成製、粒径100μm)
【0068】
「炭化ケイ素(大粒径熱伝導フィラー)」:商品名「NGF180」(太平洋ランダム株式会社製、粒径63μm)
【0069】
「炭化ケイ素(中粒径熱伝導フィラー)」:商品名「GC#1200」(太平洋ランダム株式会社製、粒径10μm)
【0070】
「酸化アルミニウム(小粒径熱伝導フィラー)」:商品名「AX1M」(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製、粒径1μm)
【0071】
(比較例1~3)
各成分の配合量(質量部)を、表1に示されるものに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1~3の組成物を得た。
【0072】
〔熱伝導材の作製〕
(実施例1)
実施例1の熱伝導材用組成物を用いて、以下に示される手順でシート(熱伝導材の一例。厚み:1.5mm)を作製した。先ず、所定の載置台上に、第1の剥離フィルム(PETフィルム、商品名「ピューレックスA50」、東洋紡フィルムソリューション株式会社製、厚み:50μm)を敷き、その第1の剥離フィルム上に、枠状のスペーサ(内枠の大きさ:120mm×130mm、厚み:5mm)を置いた。そして、その枠状のスペーサの内側(内枠内)に、液状の熱伝導材用組成物を入れることにより、第1の剥離フィルムの表面上に、熱伝導材用組成物からなる付与物を形成した(付与工程)。次いで、スペーサ内の付与物が、第1の剥離フィルムとの間で挟まれるように、付与物の表面を、第2の剥離フィルムで被覆した(被覆工程)。そして、スペーサ内において、第1の剥離フィルムと第2の剥離フィルム(厚み5μmのPETフィルムと、厚み50μmのPETフィルムとを積層した積層フィルム)との間で挟まれた状態の付与物をホットプレスすることにより、前記付与物を硬化させて、前記付与物の硬化物からなる高熱伝導材を得た(加熱加圧工程)。得られた高熱伝導材は、第1の剥離フィルムと、第2の剥離フィルムとの間で挟まれた状態となっている。なお、ホットプレスの条件は、加熱温度:100℃~110℃、プレス時間:5分~10分、圧力:20MPa~40MPaであった。
【0073】
(比較例1~3)
比較例1~3の組成物を用いて、実施例1と同様、シートの作製を試みた。比較例1,3の各組成物からは、それぞれ比較例1,3のシートが得られた。なお、比較例2の組成物は、粘度が高すぎるため、シートを成形できなかった。
【0074】
〔評価〕
(加工性)
実施例1等の各組成物について、シートの成形の可否で、加工性を評価した。結果は、表1に示した。表1において、シートを成形できた場合を「○」で示し、シートを成形できなかった場合を「×」で示した。
【0075】
(硬度)
実施例1等の成形体(厚み:1.5mmのシート(第1の剥離シート及び第2の剥離シートの各厚みを除く))から、50mm×100mmサイズに切り出した切片を7枚用意し、それら切片を7枚重ねたもの(厚み:10.5mm)を、硬度測定用の試験片とした。また、ゴム硬度計用定圧荷重器(有限会社エラストロン製)とアスカーC硬度計を用意した。試験片に硬度計の押針を接触させ、荷重がすべてかかった時点から30秒後の硬度計の値を読み取り、それを硬度(アスカーC)とした。結果は、表1に示した。
【0076】
(熱伝導率)
実施例1等の成形体(厚み:1.5mmのシート(第1の剥離シート及び第2の剥離シートの各厚みを除く))から、30mm×30mmサイズに切り出した切片を5枚重ねたものを試験片(厚み:7.5mm)とした。そして、そのような試験片を1組用意した。その1組の試験片の間でポリイミドセンサーを挟み込み、ホットディスク法によって、熱伝導率(W/m・K)を測定した。なお、測定には、ホットディスク熱特性測定装置(製品名「TPS500」、Hot Disk社製)を用いた。結果は、表1に示した。
【0077】
(粘着性)
実施例1等の成形体厚み:1.5mmのシート(第1の剥離シート及び第2の剥離シートの各厚みを除く))から、幅50mmの短冊を複数切り出し、それらを繋ぎ合わせて長さ1000mm、幅50mmの測定対象物を形成した。その測定対象物について、JIS Z 0237に準拠して、ローリングボールタック性試験を行い、ボールの転がり距離(cm)を測定した。結果は、表1に示した。なお、ボールの転がり距離が80cm未満の場合、「粘着性あり」と判断し、ボールの転がり距離が80cm以上の場合、「粘着なし」と判断した。ボールの転がり距離が、80cm未満であると、試験片を垂直に配置した際に、試験片に載せられたボールは、落ちずに試験片に付着した状態で維持される。これに対して、ボールの転がり距離が、80cm以上であると、試験片を垂直に配置した際に、試験片に載せられたボールは、試験片から離れて落下する。
【0078】
(剥離性)
実施例1等の成形体の表面に貼り付けられている第1の剥離フィルム(PETフィルム、厚み:50μm)を、成形体から剥離した際に、剥離フィルム側に、成形体から分離したフィラー等の分離物が転写されるか否かを、以下の評価基準に基づいて、目視で確認した。なお、第1の剥離フィルムとして使用したPETフィルムの表面には、シリコーン離型剤からなる離型層が形成されている。結果は、表1に示した。
【0079】
<評価基準>
・剥離フィルムに、分離物の付着が認められない又は、極微量の分離物の付着しか認められない場合 ・・・・・「○」
・剥離フィルムに、分離物の付着が認められる場合 ・・・・・「×」
【0080】
【表1】
【0081】
(熱伝導性について)
表1に示されるように、実施例1の熱伝導材は、熱伝導率が9.59W/m・Kであり、熱伝導性に優れることが確かめられた。
【0082】
比較例1は、大粒径熱伝導フィラーとしての窒化アルミニウムを含まず、大径の熱伝導フィラーとして炭化ケイ素(粒径:63μm)を含むものである。このような比較例1では熱伝導率が6.10W/m・Kとなり、熱伝導性が不十分であった。また、後述するように、剥離性にも問題があった。
【0083】
比較例2は、熱伝導フィラーの配合量が多過ぎる場合(特に、大粒径熱伝導フィラーの配合量が多過ぎる場合)である。このような比較例2では、上述したように、熱伝導材用組成物の粘度が高くなりすぎて、シートを成形できなかった。
【0084】
比較例3は、大粒径熱伝導フィラーとしての窒化アルミニウムを含まず、大径の熱伝導フィラーとして炭化ケイ素(粒径:63μm)を含む場合である。比較例3の場合、熱伝導性は優れるものの、後述するように、剥離性に問題があった。
【0085】
(粘着性について)
なお、実施例1については、熱伝導材の表面に粘着性があることが確かめられた。また、比較例1については、粘着性があり、比較例3については、粘着性がないことが確かめられた。
【0086】
(剥離性について)
実施例1では、第1の剥離フィルムに極微量の分離物(熱伝導フィラー等)の付着が認められた。参考として、剥離フィルムに極微量の分離物の付着が認められた場合を図3に示した。図3は、熱伝導材から剥離フィルムを剥離した際に、剥離フィルムに極微量の分離物の付着が認められた場合を示す図(写真)である。図3に示される円形の枠内に、熱伝導材から分離した熱伝導フィラー等からなる分離物が、極僅かに第1の剥離フィルムに付着している状態が示される。なお、熱伝導材の使用時に、極微量の分離物が剥離フィルムに付着しても、剥離フィルムを素早く除去する等により、分離物による汚染を極力抑えることができる。
【0087】
比較例1,3の場合、第1の剥離フィルムに、分離物の付着が認められた。参考として、剥離フィルムに、分離物の付着が認められる場合を図4に示した。図4は、熱伝導材から剥離フィルムを剥離した際に、剥離フィルムに分離物の付着が認められる場合を示す図(写真)である。図4に示される円形の枠内に、熱伝導材から分離した熱伝導フィラー等からなる粒状(塊状)の分離物が、剥離フィルムに付着している状態が示される。このような粒状の分離物が、剥離フィルムに付着すると、剥離フィルムから分離物が剥がれ落ちて、周囲の環境を汚染する虞がある。
【符号の説明】
【0088】
1…熱伝導材、2…アクリル系樹脂層、3…熱伝導フィラー、31…大粒径熱伝導フィラー、32…中粒径熱伝導フィラー、33…小粒径熱伝導フィラー、4,5…剥離フィルム
図1
図2
図3
図4