(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023072362
(43)【公開日】2023-05-24
(54)【発明の名称】コネクタ組立体および防水キャップ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/52 20060101AFI20230517BHJP
【FI】
H01R13/52 302E
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021184873
(22)【出願日】2021-11-12
(71)【出願人】
【識別番号】000231073
【氏名又は名称】日本航空電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(72)【発明者】
【氏名】下牧 祐大
【テーマコード(参考)】
5E087
【Fターム(参考)】
5E087LL02
5E087LL04
5E087LL12
5E087LL17
5E087MM08
5E087RR12
(57)【要約】
【課題】簡単な構成で且つ大きなスペースを必要とすることなく、電子装置の筐体の挿入口からの水の浸入を防止することができるコネクタ組立体を提供する。
【解決手段】防水キャップ31が筐体11に装着された場合に、キャップ本体32の外周面から突出しつつ外周面の全周を連続的に囲み且つ弾性材料からなる第1の凸部は、筐体11の挿入口12に圧入され、挿入口12の内周面13の全周に対して弾性圧縮された状態で接触し、第1の凸部37の配置位置よりも嵌合方向におけるキャップ本体32の前端側の外周面から突出し且つ弾性材料からなる第2の凸部38は、コネクタ21の内部に挿入され、金属シェル24の互いに対向する一対の内面27および28に対して弾性圧縮された状態で接触する。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
嵌合方向に沿って相手側コネクタに嵌合されるコネクタと、
前記コネクタを収容し且つ前記相手側コネクタが挿入される挿入口を有する電子装置の筐体と、
前記筐体の外側から前記筐体に脱着可能に装着され且つ前記挿入口を閉じるための防水キャップと
を備え、
前記防水キャップは、
前記嵌合方向に沿って延びるキャップ本体と、
前記キャップ本体の外周面に配置され且つ前記嵌合方向に直交する面内において前記外周面から突出しつつ前記外周面の全周を連続的に囲み、弾性材料からなる第1の凸部と、
前記第1の凸部の配置位置よりも前記嵌合方向における前記キャップ本体の前端側の前記外周面に配置され且つ前記外周面から前記嵌合方向に直交する方向に突出し、弾性材料からなる第2の凸部と
を有し、
前記防水キャップが前記筐体に装着された場合に、前記第1の凸部は、前記筐体の前記挿入口に圧入され、前記挿入口の内周面の全周に対して弾性圧縮された状態で接触し、前記第2の凸部は、前記コネクタの内部に挿入され、少なくとも前記コネクタの内部の互いに対向する2面に対して弾性圧縮された状態で接触することを特徴とするコネクタ組立体。
【請求項2】
前記コネクタは、前記相手側コネクタとの嵌合時に、前記相手側コネクタの接続端子に接続される少なくとも1つの接続端子を有し、
前記キャップ本体は、前記キャップ本体の前記前端から前記キャップ本体の後部に向かって窪み且つ前記コネクタの前記少なくとも1つの接続端子を収容する凹部を有する請求項1に記載のコネクタ組立体。
【請求項3】
前記コネクタは、前記相手側コネクタが収容される凹状の相手側コネクタ収容部が形成された嵌合部材を有し、
前記防水キャップが前記筐体に装着された場合に、前記第2の凸部は、前記嵌合部材の前記相手側コネクタ収容部の内部に挿入され、少なくとも前記嵌合部材の互いに対向する2面に対して弾性圧縮された状態で接触する請求項1または2に記載のコネクタ組立体。
【請求項4】
前記嵌合部材は、金属シェルからなる請求項3に記載のコネクタ組立体。
【請求項5】
嵌合方向に沿って相手側コネクタに嵌合されるコネクタを収容し且つ前記相手側コネクタが挿入される挿入口を有する電子装置の筐体に、前記筐体の外側から脱着可能に装着され、前記挿入口を閉じる防水キャップであって、
前記嵌合方向に沿って延びるキャップ本体と、
前記キャップ本体の外周面に配置され且つ前記嵌合方向に直交する面内において前記外周面から突出しつつ前記外周面の全周を連続的に囲み、弾性材料からなる第1の凸部と、
前記第1の凸部の配置位置よりも前記嵌合方向における前記キャップ本体の前端側の前記外周面に配置され且つ前記外周面から前記嵌合方向に直交する方向に突出し、弾性材料からなる第2の凸部と
を備え、
前記防水キャップが前記筐体に装着された場合に、前記第1の凸部は、前記筐体の前記挿入口に圧入され、前記挿入口の内周面の全周に対して弾性圧縮された状態で接触し、前記第2の凸部は、前記コネクタの内部に挿入され、少なくとも前記コネクタの内部の互いに対向する2面に対して弾性圧縮された状態で接触することを特徴とする防水キャップ。
【請求項6】
前記キャップ本体は、前記キャップ本体の前記前端から前記キャップ本体の後部に向かって窪む凹部を有する請求項5に記載の防水キャップ。
【請求項7】
前記凹部は、前記嵌合方向において、前記第2の凸部と重複する位置に配置されている請求項6に記載の防水キャップ。
【請求項8】
前記キャップ本体は、絶縁性樹脂から形成され、
前記第1の凸部および前記第2の凸部は、それぞれゴム材から形成されている請求項5~7のいずれか一項に記載の防水キャップ。
【請求項9】
前記第1の凸部および前記第2の凸部が一体に形成された弾性部材を備える請求項8に記載の防水キャップ。
【請求項10】
前記第1の凸部が形成された第1の弾性部材と、前記第1の弾性部材から分離され且つ前記第2の凸部が形成された第2の弾性部材を備える請求項8に記載の防水キャップ。
【請求項11】
前記第2の凸部は、前記嵌合方向に直交する面内において前記キャップ本体の前記外周面から突出しつつ前記外周面の全周を連続的に囲んでいる請求項5~10のいずれか一項に記載の防水キャップ。
【請求項12】
前記嵌合方向に直交する方向から見て、前記キャップ本体の前記外周面の全周を連続的に囲む前記第1の凸部の両端間の最大距離は、前記キャップ本体の前記外周面の全周を連続的に囲む前記第2の凸部の両端間の最大距離よりも大きい請求項11に記載の防水キャップ。
【請求項13】
前記嵌合方向に沿って前記キャップ本体の後端に連結され且つ前記嵌合方向に直交する方向に前記キャップ本体よりも張り出すフランジ部を有する請求項5~12のいずれか一項に記載の防水キャップ。
【請求項14】
前記嵌合方向に直交する方向から見て、前記フランジ部の最大寸法は、前記キャップ本体の前記外周面の全周を連続的に囲む前記第1の凸部の両端間の最大距離よりも大きい請求項13に記載の防水キャップ。
【請求項15】
前記嵌合方向に沿って前記フランジ部の後端に連結されたつまみ部を有する請求項13または14に記載の防水キャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コネクタ組立体に係り、特に、コネクタの嵌合時に相手側コネクタが挿入される電子装置の筐体の挿入口を防水キャップで閉じるコネクタ組立体に関する。
また、この発明は、電子装置の筐体に脱着可能に装着されて挿入口を閉じる防水キャップにも関している。
【背景技術】
【0002】
従来から、外部装置と接続するためのコネクタを筐体内に備え、コネクタに近接するように相手側コネクタ挿入用の挿入口が筐体に形成されている電子装置において、コネクタを使用しない場合に、外部から筐体内への水の浸入を防止するために筐体の挿入口をキャップで覆う構造が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、
図14に示されるように、筐体1に挿入口2が形成され、挿入口2の内側にコネクタ3が配置された携帯端末が開示されている。図示しない相手側コネクタが挿入口2に挿入されてコネクタ3に嵌合することにより、コネクタ3を介して図示しない外部装置との接続が可能となる。挿入口2は、筐体1の前面に露出する矩形状の開口部2Aと、開口部2Aに連続して筐体1の内部にまで延びる長円形状の連通孔2Bを有している。
【0004】
挿入口2には、防水のために、
図15に示される蓋部材4が脱着可能に取り付けられる。蓋部材4は、挿入口2の開口部2Aを覆う矩形状の前面プレート部4Aと、前面プレート部4Aの内面に突出形成され且つ挿入口2の連通孔2Bに挿入される挿入部4Bを有している。挿入部4Bの外周部には、全周にわたって凹部5が形成され、挿入部4Bの長手方向の両端部には、一対の爪部6が形成されている。
【0005】
図16に示されるように、凹部5にOリング7が嵌められ、挿入部4Bを筐体1の連通孔2Bに挿入したときに、Oリング7が連通孔2Bの内周面2Cに加圧されつつ接触することにより、挿入口2における止水が行われる。さらに、爪部6が、連通孔2Bの内周面2Cよりも筐体1の内部側にまで挿入されて、連通孔2Bの内周面2Cの内側に形成されている縁部8に引っ掛かることで、挿入口2からの蓋部材4の脱落を防止している。
【0006】
なお、挿入口2に対する蓋部材4の着脱の際に、爪部6が連通孔2Bの内周面2Cを擦ることにより、内周面2Cが削れてOリング7による止水効果が低下することがないように、爪部6が引っ掛かる縁部8は、連通孔2Bの内周面2Cよりも筐体1の内部側で且つ内周面2Cよりも連通孔2Bの中心側に突出するように形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、挿入口2からの蓋部材4の脱落を防止するために、蓋部材4の一対の爪部6を、連通孔2Bの内周面2Cよりも筐体1の内部側にまで挿入させて縁部8に引っ掛ける必要があり、また、爪部6が連通孔2Bの内周面2Cを擦ることを防止するために、連通孔2Bの内周面2Cよりも筐体1の内部側で且つ内周面2Cよりも連通孔2Bの中心側に突出するように縁部8を形成する必要があり、筐体1の挿入口2と蓋部材4の構成が複雑になるという問題がある。
さらに、筐体1の挿入口2とコネクタ3との間に、爪部6を縁部8に引っ掛けるためのスペースを要するという問題もある。
【0009】
この発明は、このような従来の問題点を解消するためになされたもので、簡単な構成で且つ大きなスペースを必要とすることなく、電子装置の筐体の挿入口からの水の浸入を防止することができるコネクタ組立体を提供することを目的とする。
また、この発明は、電子装置の筐体の挿入口からの水の浸入を防止するための防水キャップを提供することも目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明に係るコネクタ組立体は、
嵌合方向に沿って相手側コネクタに嵌合されるコネクタと、
コネクタを収容し且つ相手側コネクタが挿入される挿入口を有する電子装置の筐体と、
筐体の外側から筐体に脱着可能に装着され且つ挿入口を閉じるための防水キャップと
を備え、
防水キャップは、
嵌合方向に沿って延びるキャップ本体と、
キャップ本体の外周面に配置され且つ嵌合方向に直交する面内において外周面から突出しつつ外周面の全周を連続的に囲み、弾性材料からなる第1の凸部と、
第1の凸部の配置位置よりも嵌合方向におけるキャップ本体の前端側の外周面に配置され且つ外周面から嵌合方向に直交する方向に突出し、弾性材料からなる第2の凸部と
を有し、
防水キャップが筐体に装着された場合に、第1の凸部は、筐体の挿入口に圧入され、挿入口の内周面の全周に対して弾性圧縮された状態で接触し、第2の凸部は、コネクタの内部に挿入され、少なくともコネクタの内部の互いに対向する2面に対して弾性圧縮された状態で接触するものである。
【0011】
コネクタは、相手側コネクタとの嵌合時に、相手側コネクタの接続端子に接続される少なくとも1つの接続端子を有し、
キャップ本体は、キャップ本体の前端からキャップ本体の後部に向かって窪み且つコネクタの少なくとも1つの接続端子を収容する凹部を有することができる。
【0012】
また、コネクタは、相手側コネクタが収容される凹状の相手側コネクタ収容部が形成された嵌合部材を有し、
防水キャップが筐体に装着された場合に、第2の凸部は、嵌合部材の相手側コネクタ収容部の内部に挿入され、少なくとも嵌合部材の互いに対向する2面に対して弾性圧縮された状態で接触することが好ましい。
嵌合部材としては、金属シェルを用いることができる。
【0013】
この発明に係る防水キャップは、
嵌合方向に沿って相手側コネクタに嵌合されるコネクタを収容し且つ相手側コネクタが挿入される挿入口を有する電子装置の筐体に、筐体の外側から脱着可能に装着され、挿入口を閉じる防水キャップであって、
嵌合方向に沿って延びるキャップ本体と、
キャップ本体の外周面に配置され且つ嵌合方向に直交する面内において外周面から突出しつつ外周面の全周を連続的に囲み、弾性材料からなる第1の凸部と、
第1の凸部の配置位置よりも嵌合方向におけるキャップ本体の前端側の外周面に配置され且つ外周面から嵌合方向に直交する方向に突出し、弾性材料からなる第2の凸部と
を備え、
防水キャップが筐体に装着された場合に、第1の凸部は、筐体の挿入口に圧入され、挿入口の内周面の全周に対して弾性圧縮された状態で接触し、第2の凸部は、コネクタの内部に挿入され、少なくともコネクタの内部の互いに対向する2面に対して弾性圧縮された状態で接触するものである。
【0014】
キャップ本体は、キャップ本体の前端からキャップ本体の後部に向かって窪む凹部を有することができる。
凹部は、嵌合方向において、第2の凸部と重複する位置に配置されていることが好ましい。
【0015】
キャップ本体は、絶縁性樹脂から形成され、
第1の凸部および第2の凸部は、それぞれゴム材から形成されていることが好ましい。
また、第1の凸部および第2の凸部が一体に形成された弾性部材を備えてもよく、あるいは、第1の凸部が形成された第1の弾性部材と、第1の弾性部材から分離され且つ第2の凸部が形成された第2の弾性部材を備えてもよい。
【0016】
第2の凸部は、嵌合方向に直交する面内においてキャップ本体の外周面から突出しつつ外周面の全周を連続的に囲むように構成することができる。
この場合、嵌合方向に直交する方向から見て、キャップ本体の外周面の全周を連続的に囲む第1の凸部の両端間の最大距離は、キャップ本体の外周面の全周を連続的に囲む第2の凸部の両端間の最大距離よりも大きいことが好ましい。
【0017】
嵌合方向に沿ってキャップ本体の後端に連結され且つ嵌合方向に直交する方向にキャップ本体よりも張り出すフランジ部を有することができる。
嵌合方向に直交する方向から見て、フランジ部の最大寸法は、キャップ本体の外周面の全周を連続的に囲む第1の凸部の両端間の最大距離よりも大きいことが好ましい。
さらに、嵌合方向に沿ってフランジ部の後端に連結されたつまみ部を有することができる。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、防水キャップは、キャップ本体の外周面に配置され且つ嵌合方向に直交する面内において外周面から突出しつつ外周面の全周を連続的に囲む第1の凸部と、第1の凸部の配置位置よりも嵌合方向におけるキャップ本体の前端側の外周面に配置され且つ外周面から嵌合方向に直交する方向に突出する第2の凸部とを有し、防水キャップが筐体に装着された場合に、第1の凸部は、筐体の挿入口に圧入され、挿入口の内周面の全周に対して弾性圧縮された状態で接触し、第2の凸部は、コネクタの内部に挿入され、少なくともコネクタの内部の互いに対向する2面に対して弾性圧縮された状態で接触するので、簡単な構成で且つ大きなスペースを必要とすることなく、電子装置の筐体の挿入口からの水の浸入を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】この発明の実施の形態1に係るコネクタ組立体を示す斜視図である。
【
図2】実施の形態1で用いられる電子装置の筐体の一部とコネクタを示す側面断面図である。
【
図3】実施の形態1で用いられる電子装置の筐体の一部を示す正面図である。
【
図5】実施の形態1で用いられる防水キャップを斜め後方から見た斜視図である。
【
図6】実施の形態1で用いられる防水キャップを斜め前方から見た斜視図である。
【
図7】実施の形態1で用いられる防水キャップを示す正面図である。
【
図8】実施の形態1で用いられる防水キャップを示す平面図である。
【
図9】実施の形態1で用いられる防水キャップを示す側面図である。
【
図11】電子装置の筐体に防水キャップが装着された状態の実施の形態1に係るコネクタ組立体を示す斜視図である。
【
図12】電子装置の筐体に防水キャップが装着された状態の実施の形態1に係るコネクタ組立体を示す側面断面図である。
【
図13】実施の形態2で用いられる防水キャップを示す側面断面図である。
【
図14】従来の携帯端末の筐体を示す部分斜視図である。
【
図15】従来の携帯端末に用いられる蓋部材を示す斜視図である。
【
図16】従来の携帯端末の筐体に蓋部材が装着された状態を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
実施の形態1
図1に、実施の形態1に係るコネクタ組立体の斜視図を示す。コネクタ組立体は、電子装置の筐体11と、筐体11の内部に収容されたコネクタ21と、筐体11に脱着可能に装着される防水キャップ31を備えている。
【0021】
電子装置の筐体11には、所定の方向に伸長する長円形状の挿入口12が形成されており、コネクタ21は、筐体11の内部から挿入口12を臨む位置に配置されている。また、コネクタ21は、嵌合方向Dに沿って図示しない相手側コネクタに嵌合されるものであり、相手側コネクタは、挿入口12を通して筐体11の外側から筐体11の内部に挿入され、コネクタ21に嵌合する。なお、挿入口12が形成されている部分の筐体11は、嵌合方向Dに対して直交する方向に延びているものとする。
【0022】
防水キャップ31は、図示しない相手側コネクタをコネクタ21に嵌合することなく、コネクタ21が使用されない場合に、挿入口12を通して筐体11の内部に水が浸入することを防止するために、筐体21の外側から筐体21に装着されて挿入口12を閉じるものである。
ここで、便宜上、嵌合方向Dに沿って図示しない相手側コネクタがコネクタ21に嵌合する方向を+Y方向、Y方向に直交し且つ筐体11の長円形状の挿入口12が伸長する方向をX方向、XY面に垂直な方向をZ方向と呼ぶこととする。
【0023】
図2に示されるように、コネクタ21は、電子装置の筐体11内に配置された回路基板41の上に搭載されており、少なくとも1つの接続端子22と、接続端子22を保持するインシュレータ23と、接続端子22およびインシュレータ23の周囲を覆う金属シェル24を有している。
【0024】
インシュレータ23は、嵌合方向Dに沿って-Y方向に突出する舌状部25を有し、接続端子22の-Y方向端部は、舌状部25の表面上に配置され、+Z方向に向かって露出している。また、接続端子22の+Y方向端部は、インシュレータ23から+Y方向に突出して、回路基板41の表面上に配置されている図示しない接続パッドに接続され、接続端子22のY方向の中央部分は、インシュレータ23に埋設されている。
【0025】
金属シェル24は、筒形状を有し、インシュレータ23の舌状部25の回りに凹状の相手側コネクタ収容部26を形成している。相手側コネクタ収容部26は、図示しない相手側コネクタが嵌合方向Dに沿ってコネクタ21に嵌合する際に、相手側コネクタの一部が収容される空間である。
【0026】
コネクタ21は、筐体11の挿入口12の+Y方向側で且つ挿入口12の近傍に配置されており、金属シェル24の相手側コネクタ収容部26は、筐体11の内部から筐体11の挿入口12を臨むように配置されている。
なお、筒形状の金属シェル24は、相手側コネクタ収容部26を挟んでZ方向に互いに対向する一対の内面27および28を有しており、これらの内面27および28は、Z方向に間隔Sを隔てて配置されている。
【0027】
図3に示されるように、筐体11の挿入口12は、X方向の長さがL0X、Z方向の長さがL0Zの長円形状の内周面13を有している。
また、
図4に示されるように、挿入口12の内周面13は、Y方向に沿った所定の長さLYを有している。
【0028】
防水キャップ31の構成を
図5および
図6に示す。防水キャップ31は、Y方向に延びるキャップ本体32と、キャップ本体32の後端である-Y方向端部に連結されたフランジ部33と、さらにフランジ部33の後端に連結されたつまみ部34を有している。
【0029】
キャップ本体32は、筐体11の長円形状の挿入口12に対応して、Y方向から見たときに、X方向に伸長する扁平な長円形状を有しており、キャップ本体32の内部に、キャップ本体32の前端である+Y方向端部からキャップ本体32の後部に向かって窪む凹部35が形成されている。
【0030】
キャップ本体32には、キャップ本体32の外周面の全周を連続的に囲む弾性部材36が取り付けられている。弾性部材36は、キャップ本体32の-Y方向側の後部の位置に配置された第1の凸部37と、第1の凸部37よりもキャップ本体32の+Y方向端部側の位置に配置された第2の凸部38を有している。第1の凸部37および第2の凸部38は、いずれも、Y方向に直交するXZ面内においてキャップ本体32の外周面からキャップ本体32の外方に向かって突出しつつ、キャップ本体32の外周面の全周を連続的に囲んでおり、互いに一体に形成されている。
【0031】
図7に示されるように、フランジ部33は、Y方向に直交するXZ面内において、X方向およびZ方向にキャップ本体32よりも張り出している。このフランジ部33は、キャップ本体32を筐体11の挿入口12に挿入しつつ防水キャップ31を筐体21の外側から筐体21に装着する際に、筐体11の外面に突き当たることで、筐体21に対する防水キャップ31のY方向の位置を規定するためのものである。
【0032】
図8に示されるように、Z方向から見て、キャップ本体32の外周面の全周を連続的に囲む第1の凸部37の両端間の最大距離L1Xは、キャップ本体32の外周面の全周を連続的に囲む第2の凸部38の両端間の最大距離L2Xよりも大きく設定されている。
また、Z方向から見て、フランジ部33の最大寸法L3Xは、キャップ本体32の外周面の全周を連続的に囲む第1の凸部37の両端間の最大距離L1Xよりも大きく設定されている。
【0033】
同様に、
図9に示されるように、X方向から見て、キャップ本体32の外周面の全周を連続的に囲む第1の凸部37の両端間の最大距離L1Zは、キャップ本体32の外周面の全周を連続的に囲む第2の凸部38の両端間の最大距離L2Zよりも大きく設定されている。
また、X方向から見て、フランジ部33の最大寸法L3Zは、キャップ本体32の外周面の全周を連続的に囲む第1の凸部37の両端間の最大距離L1Zよりも大きく設定されている。
【0034】
なお、
図3に示される筐体11の挿入口12の内周面13におけるX方向の長さL0Xは、第2の凸部38の両端間の最大距離L2Xよりも大きく、第1の凸部37の両端間の最大距離L1Xよりもわずかに小さく、フランジ部33の最大寸法L3Xよりも小さい関係を有している。
同様に、
図3に示される筐体11の挿入口12の内周面13におけるZ方向の長さL0Zは、第2の凸部38の両端間の最大距離L2Zよりも大きく、第1の凸部37の両端間の最大距離L1Zよりもわずかに小さく、フランジ部33の最大寸法L3Zよりも小さい関係を有している。
【0035】
挿入口12の内周面13におけるX方向の長さL0XおよびZ方向の長さL0Zが、それぞれ、第1の凸部37の両端間の最大距離L1XおよびL1Zよりもわずかに小さいため、キャップ本体32の外周面に配置された第1の凸部37をY方向から筐体11の挿入口12に圧入した場合に、第1の凸部37が弾性圧縮された状態で挿入口12の内周面13の全周に対して接触することができるように構成されている。
【0036】
また、
図2に示される金属シェル24の相手側コネクタ収容部26を挟んでZ方向に互いに対向する一対の内面27および28の間隔Sは、X方向から見たときの、第2の凸部38の両端間の最大距離L2Zよりもわずかに小さく設定されているものとする。これにより、キャップ本体32の+Y方向端部が金属シェル24の相手側コネクタ収容部26内に挿入された場合に、第2の凸部38が弾性圧縮された状態で金属シェル24の一対の内面27および28に対して接触することができるように構成されている。
【0037】
フランジ部33の後端に連結されたつまみ部34は、筐体11に対して防水キャップ31を装着する際および筐体11に装着された防水キャップ31を引き抜く際に、ユーザが把持するためのものである。
【0038】
このような防水キャップ31のキャップ本体32、フランジ部33およびつまみ部34は、絶縁性樹脂から一体に形成されており、第1の凸部37および第2の凸部38を含む弾性部材36は、弾性材料であるゴム材から形成されている。
図10に示されるように、キャップ本体32の外周面には、外周面の全周を連続的に囲む溝39が形成されており、弾性部材36は、溝39に嵌め込まれる、あるいは、モールドされることにより、キャップ本体32に取り付けられている。
なお、キャップ本体32の凹部35は、Y方向において、弾性部材36の第2の凸部38と重複する位置に配置されている。
【0039】
次に、筐体21に防水キャップ31が装着された状態のコネクタ組立体を
図11に示す。防水キャップ31は、筐体21の外側からY方向に沿って筐体21に装着され、防水キャップ31のフランジ部33が筐体11の外面に突き当たっており、筐体11の挿入口12は、フランジ部33により覆われて筐体21の外側から見えない状態になっている。
【0040】
このとき、
図12に示されるように、防水キャップ31のキャップ本体32が、筐体11の挿入口12に挿入され、キャップ本体32の外周面に配置されている弾性部材36の第1の凸部37が挿入口12に圧入される。挿入口12の内周面13におけるX方向の長さL0XおよびZ方向の長さL0Zは、それぞれ、第1の凸部37の両端間の最大距離L1XおよびL1Zよりもわずかに小さいため、第1の凸部37は、弾性圧縮された状態で挿入口12の内周面13の全周に対して接触し、これにより、挿入口12を通して筐体11の内部に水が浸入することが防止される。
【0041】
図4に示されるように、挿入口12の内周面13は、Y方向に沿った所定の長さLYを有しているので、この長さLYの範囲内で第1の凸部37が挿入口12の内周面13に接触することで、水の浸入を防止することができる。すなわち、たとえ防水キャップ31のフランジ部33が筐体11の外面に突き当たっていなくても、第1の凸部37が所定の長さLYの範囲内で挿入口12の内周面13に接触していれば、防水効果が得られ、信頼性よく防水を行うことが可能となる。
【0042】
また、
図12に示されるように、防水キャップ31が筐体21に装着されると、キャップ本体32の前端である+Y方向端部は、筐体11の内部に配置されているコネクタ21の金属シェル24の相手側コネクタ収容部26の内部にまで挿入される。
このとき、キャップ本体32の内部には、キャップ本体32の前端からキャップ本体32の後部に向かって窪む凹部35が形成されているため、コネクタ21の相手側コネクタ収容部26内で-Y方向に突出する舌状部25および舌状部25の表面上に配置されている接続端子22の-Y方向端部は、キャップ本体32の凹部35に収容される。従って、キャップ本体32の前端が舌状部25および接続端子22に突き当たることなく、防水キャップ31を筐体21に装着することができる。
【0043】
なお、キャップ本体32の凹部35は、内部に収容される舌状部25および接続端子22の-Y方向端部に対して、Y方向、Z方向およびX方向のいずれにも間隔を隔てて対向するような大きさに形成されており、舌状部25および接続端子22に接触することがないように構成されている。
【0044】
また、キャップ本体32の前端が、金属シェル24の相手側コネクタ収容部26の内部にまで挿入されることで、キャップ本体32の外周面に配置されている弾性部材36の、キャップ本体32の前端側に位置する第2の凸部38も、相手側コネクタ収容部26の内部に挿入される。
ここで、金属シェル24のZ方向に対向する一対の内面27および28の間隔Sは、X方向から見たときの、第2の凸部38の両端間の最大距離L2Zよりもわずかに小さく設定されているので、第2の凸部38は、弾性圧縮された状態で金属シェル24の内面27および28に接触し、金属シェル24の内面27および28から押し付け力を受けることとなる。
【0045】
これにより、筐体21に対する防水キャップ31の保持力が向上し、筐体21からの防水キャップ31の脱落を効果的に防止することが可能となる。
さらに、第2の凸部38を、コネクタ21の金属シェル24の一対の内面27および28に接触させているので、第2の凸部38を受けるための専用の部品または部分を形成することなく、簡単な構成で且つ大きなスペースを必要としないコネクタ組立体を実現することができる。
【0046】
防水キャップ31が筐体21に装着されることにより、挿入口12を通して筐体11の内部に水が浸入することが防止されている状態から、図示しない相手側コネクタをコネクタ21に接続する場合には、防水キャップ31のつまみ部34を把持し、筐体21から防水キャップ31を-Y方向に引き抜くことで、挿入口12が開放される。これにより、挿入口12を通して相手側コネクタを筐体11の内部のコネクタ21に嵌合することができる。
【0047】
なお、上記の実施の形態1では、防水キャップ31の第2の凸部38が、コネクタ21の金属シェル24のZ方向に対向する一対の内面27および28に接触しているが、これに限るものではなく、例えば、コネクタ21の金属シェル24のX方向に対向する一対の内面27および28に第2の凸部38が接触するように構成することもできる。
防水キャップ31の第2の凸部38は、少なくとも金属シェル24の互いに対向する2面に対して弾性圧縮された状態で接触すればよい。また、第2の凸部38は、必ずしも金属シェル24に接触する必要はなく、少なくともコネクタ21の内部の互いに対向する2面に対して接触すれば、同様に防水キャップ31の保持力を向上させることができる。
【0048】
上記の実施の形態1では、防水キャップ31の第2の凸部38が、キャップ本体32の外周面からキャップ本体32の外方に向かって突出しつつ、キャップ本体32の外周面の全周を連続的に囲んでいるので、第2の凸部38は、金属シェル24の一対の内面27および28だけでなく、弾性圧縮された状態で金属シェル24の内周面の全周に対して接触するように構成してもよい。これにより、防水キャップ31の保持力は、さらに向上することとなる。
【0049】
また、防水キャップ31の第2の凸部38が、金属シェル24のZ方向に対向する一対の内面27および28のみに接触する場合には、第2の凸部38は、キャップ本体32の外周面の全周を連続的に囲む必要はなく、キャップ本体32の外周面のうち、+Z方向および-Z方向を向いた部分にのみ第2の凸部を形成しても、同様にして、防水キャップ31の保持力を向上させることが可能となる。
【0050】
また、コネクタ21は、舌状部25の+Z方向側の表面上に配置された接続端子22のみを有しているが、舌状部25の+Z方向側の表面上および-Z方向側の表面上にそれぞれ接続端子22が配置されていてもよい。このようなコネクタが、筐体21の内部に配置された電子装置に対しても、防水キャップ31を筐体21に装着することにより、挿入口12を通して筐体11の内部に水が浸入することが防止される。
【0051】
実施の形態2
上記の実施の形態1では、防水キャップ31のキャップ本体32の外周面に、第1の凸部37および第2の凸部38が互いに一体に形成された弾性部材36が取り付けられているが、これに限るものではない。
【0052】
図13に、実施の形態2に係るコネクタ組立体で用いられる防水キャップ31Aの断面図を示す。防水キャップ31Aは、実施の形態1で用いられる防水キャップ31において、キャップ本体32の代わりにキャップ本体32Aを有し、弾性部材36の代わりに第1の弾性部材36Aおよび第2の弾性部材36Bをキャップ本体32Aに取り付けたものであり、その他の構成は、実施の形態1における防水キャップ31と同様である。
【0053】
キャップ本体32Aには、フランジ部33に近接するキャップ本体32Aの後部の外周面の全周を連続的に囲む第1の溝39Aと、第1の溝39Aよりもキャップ本体32Aの+Y方向端部側の位置において、キャップ本体32Aの外周面の全周を連続的に囲む第2の溝39Bが形成されている。
第1の弾性部材36Aは、第1の凸部37を有し且つゴム材から形成され、第1の溝39Aに嵌め込まれることにより、キャップ本体32Aに取り付けられている。同様に、第2の弾性部材36Bは、第2の凸部38を有し且つゴム材から形成され、第2の溝39Bに嵌め込まれることにより、キャップ本体32Aに取り付けられている。
【0054】
このように、第1の凸部37および第2の凸部38が、それぞれ専用の第1の弾性部材36Aおよび第2の弾性部材36Bに形成されていても、実施の形態1と同様に、筐体21の挿入口12を通して筐体11の内部に水が浸入することを防止し、また、防水キャップ31Aの保持力を向上させることができ、簡単な構成で且つ大きなスペースを必要としないコネクタ組立体を実現することが可能となる。
【0055】
なお、上記の実施の形態1における防水キャップ31のキャップ本体32、フランジ部33およびつまみ部34、並びに、実施の形態2における防水キャップ31Aのキャップ本体32A、フランジ部33およびつまみ部34は、絶縁性樹脂から形成されているが、これらの部材は、コネクタ21の接続端子22および金属シェル24に直接接触しないように構成されているため、金属等の導電性を有する材料により形成することもできる。
【符号の説明】
【0056】
1 筐体、2 挿入口、2A 開口部、2B 連通孔、3 コネクタ、4 蓋部材、4A 前面プレート部、4B 挿入部、5 凹部、6 爪部、7 Oリング、8 縁部、11 筐体、12 挿入口、13 内周面、21 コネクタ、22 接続端子、23 インシュレータ、24 金属シェル、25 舌状部、26 相手側コネクタ収容部、27,28 内面、31,31A 防水キャップ、32,32A キャップ本体、33 フランジ部、34 つまみ部、35 凹部、36 弾性部材、36A 第1の弾性部材、36B 第2の弾性部材、37 第1の凸部、38 第2の凸部、39 溝、39A 第1の溝、39B 第2の溝、41 回路基板、D 嵌合方向、S 間隔、L0X,L0Z,LY 長さ、L1X,L2X,L1Z,L2Z 最大距離、L3X,L3Z 最大寸法。