(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023072370
(43)【公開日】2023-05-24
(54)【発明の名称】無接点スイッチ及び電子装置
(51)【国際特許分類】
H01H 35/14 20060101AFI20230517BHJP
H01L 29/84 20060101ALI20230517BHJP
H01H 13/00 20060101ALI20230517BHJP
【FI】
H01H35/14 Z
H01L29/84
H01H13/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021184887
(22)【出願日】2021-11-12
(71)【出願人】
【識別番号】318015781
【氏名又は名称】ジャパン・イーエム・ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐野 恭三
【テーマコード(参考)】
4M112
5G056
5G206
【Fターム(参考)】
4M112AA02
4M112BA01
4M112BA07
4M112BA10
4M112GA03
5G056BD36
5G206AS36K
5G206KS07
5G206KS08
5G206KS10
(57)【要約】
【課題】無接点スイッチの外部環境の影響による誤検知を抑制する。
【解決手段】本無接点スイッチは、第1加速度センサーを含む基部と、上記基部に対して相対的に移動可能に設けられ、第2加速度センサーを含む被操作部と、上記第1加速度センサーの第1検出値及び上記第2加速度センサーの第2検出値を基に上記被操作部の位置を検出する制御部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1加速度センサーを含む基部と、
前記基部に対して相対的に移動可能に設けられ、第2加速度センサーを含む被操作部と、
前記第1加速度センサーの第1検出値及び前記第2加速度センサーの第2検出値を基に前記被操作部の位置を検出する制御部と、を備える、
無接点スイッチ。
【請求項2】
前記被操作部は、所定方向に移動可能であり、
前記制御部は、
前記第1検出値の前記所定方向成分と前記第2検出値の前記所定方向成分との差分を基に、前記所定方向に沿って移動する前記被操作部の位置を算出する、
請求項1に記載の無接点スイッチ。
【請求項3】
前記被操作部が静止した状態において前記第1加速度センサーの検出値及び前記第2加速度センサーの検出値を基に算出された補正値を記憶する記憶部をさらに備え、
前記制御部は、
前記補正値を用いて前記第1検出値及び前記第2検出値を補正し、
補正された前記第1検出値及び補正された前記第2検出値を基に前記被操作部の位置を検出する、
請求項1または2に記載の無接点スイッチ。
【請求項4】
前記被操作部が静止した状態において前記第1加速度センサーの検出値の前記所定方向成分及び前記第2加速度センサーの検出値の前記所定方向成分を基に算出された補正値を記憶する記憶部をさらに備え、
前記制御部は、
前記補正値を用いて前記第2検出値の所定方向成分を補正し、
前記第1検出値の所定方向成分及び補正された前記第2検出値の所定方向成分を基に前記被操作部の位置を検出する、
請求項2に記載の無接点スイッチ。
【請求項5】
前記被操作部は、円弧軌道に沿って移動可能であり、
前記円弧軌道上の複数位置の夫々において前記被操作部を静止させた状態における前記第2加速度センサーの検出値を基に算出した補正値を記憶する記憶部をさらに備え、
前記制御部は、
前記補正値を用いて前記第2検出値を補正し、
前記第1検出値及び補正された前記第2検出値を基に前記被操作部の位置を検出する、
請求項1に記載の無接点スイッチ。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の無接点スイッチを備えた、
電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無接点スイッチ及び電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
装置の動作切り替えや装置への入力の検出等にスイッチが利用される。このようなスイッチとしては、発光素子等を利用した無接点スイッチや機械的な接点を切り替えるスイッチを挙げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-123797号公報
【特許文献2】特開2010-040177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
無接点スイッチとしては、例えば、光センサーを用いた光学式スイッチ、静電容量の変化を検知する静電容量式スイッチ、コイル状のセンサーとコンデンサを含むLC発振回路における共振周波数の変化を検知する誘導式スイッチが挙げられる。
【0005】
光学式スイッチは外部等からの光の影響により、静電容量式スイッチは静電気やスイッチ近傍に配置された導体の影響により、誘導式スイッチはスイッチ近傍の磁界の影響により、誤検知を生じる虞がある。すなわち、従来の無接点スイッチは、外部環境の影響により誤検知を生じる虞があった。
【0006】
開示の技術の1つの側面は、外部環境の影響による誤検知を抑制できる無接点スイッチ及びこのような無接点スイッチを備えた電子装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
開示の技術の1つの側面は、次のような無接点スイッチによって例示される。本無接点スイッチは、第1加速度センサーを含む基部と、上記基部に対して相対的に移動可能に設けられ、第2加速度センサーを含む被操作部と、上記第1加速度センサーの第1検出値及び上記第2加速度センサーの第2検出値を基に上記被操作部の位置を検出する制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
開示の技術によれば、外部環境の影響による無接点スイッチの誤検知を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態に係る無接点スイッチの構成の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態における制御部によるスイッチの切り替え判定処理の処理フローの一例を示す図である。
【
図3】
図3は、第1のキャリブレーション方法を例示する図である。
【
図4】
図4は、第2のキャリブレーション方法を例示する図である。
【
図5】
図5は、変形例に係る無接点スイッチの構成の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、変形例における補正値テーブルの一例を示す図である。
【
図7】
図7は、変形例におけるキャリブレーション方法を例示する図である。
【
図8】
図8は、変形例における補正値適用処理の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<実施形態>
以下に示す実施形態の構成は例示であり、開示の技術は実施形態の構成に限定されない。実施形態に係る無接点スイッチは、例えば、以下の構成を備える。本実施形態に係る無接点スイッチは、第1加速度センサーを含む基部と、上記基部に対して相対的に移動可能に設けられ、第2加速度センサーを含む被操作部と、上記第1加速度センサーの第1検出値及び上記第2加速度センサーの第2検出値を基に上記被操作部の位置を検出する制御部と、を備える。
【0011】
第1加速度センサー及び第2加速度センサーが加速度を検知する軸は、1軸であっても3軸であってもよい。本無接点スイッチでは、被操作部の位置の検出に加速度センサーを採用することで、周囲の明るさ(外光)、無接点スイッチの近くに配置された導体、周囲の静電気や磁界による影響を抑制することでき、ひいては、無接点スイッチの誤検知を抑制することができる。
【0012】
また、本無接点スイッチは、被操作部と基部の双方に加速度センサーが設けられる。第1加速度センサーと第2加速度センサーに対して、仮に周辺環境から何らかの影響があった場合でも、第1加速度センサーの検出値と第2加速度センサーの検出値とを基にすることで、当該影響を相殺することができる。そのため、本無接点スイッチは、外部環境の影響による誤検知を抑制することができる。
【0013】
以下、図面を参照して上記無接点スイッチの実施形態についてさらに説明する。
図1は、実施形態に係る無接点スイッチ100の構成の一例を示す図である。無接点スイッチ100は、被操作部10、基部20、バネ30を含む。被操作部10と基部20とは、バネ30によって接続される。被操作部10は、基部20に対して移動方向C1に沿って相対的に移動可能である。無接点スイッチ100は、例えば、押しボタンタイプのスイッチである。被操作部10が指等で押されていない場合、被操作部10と基部20とは初期距離K1だけ離れている。被操作部10が指等によって基部20に向けて押されると、被操作部10は基部20に向けて接近する。また、指等が被操作部10から離れると、バネ30の弾性力によって被操作部10は元の位置(被操作部10と基部20とが初期距離K1となる位置)に戻る。
【0014】
図1において、移動方向C1は、Z方向に一致する。また、
図1の紙面手前から奥に向かう方向をY方向、Z方向及びY方向に直交する方向をX方向とする。Z方向のうち、被操作部10から基部20に向かう方向を+Z方向とする。すなわち、Z座標の値は、基部20に近づくほど大きくなる。移動方向C1は、「所定方向」の一例である。
【0015】
被操作部10は、ユーザーによる操作を受け付ける。被操作部10は、ユーザーからの操作に応じて、移動方向C1に沿って移動することで、基部20との距離が変動する。被操作部10は、加速度センサー11を含む。加速度センサー11は、被操作部10の移動によって生じる加速度を検知し、検知した加速度を信号線L1を介して制御部22に通知する。被操作部10は、「被操作部」の一例である。加速度センサー11は、「第2加速度センサー」の一例である。
【0016】
基部20は、無接点スイッチ100の土台となる。基部20は、加速度センサー21及び制御部22を含む。加速度センサー21は、基部20に生じる加速度を検知し、検知した加速度を信号線L2を介して制御部22に通知する。加速度センサー11及び加速度センサー21は、3軸の加速度センサーであってもよいし、1軸の加速度センサーであって
もよい。加速度センサー11及び加速度センサー21が1軸の加速度センサーである場合には、当該1軸が移動方向C1方向に沿うように加速度センサー11及び加速度センサー21が設けられることが好ましい。加速度センサー11及び加速度センサー21が加速度を検出する方式は、例えば、半導体方式を採用することができる。半導体方式としては、例えば、静電容量方式、ピエゾ抵抗方式、ガス温度分布方式を挙げることができる。基部20は、「基部」の一例である。加速度センサー21は、「第1加速度センサー」の一例である。
【0017】
制御部22は、プロセッサー221及びメモリー222を含む。プロセッサー221は、例えば、Central Processing Unit(CPU)である。メモリー222は、プロセッサー221から読み書き可能な記憶部である。メモリー222は、例えば、Random Access Memory(RAM)及びRead Only
Memory(ROM)を含む。メモリー222は、例えば、プロセッサー221によって実行されるプログラムや閾値TH1、TH2を記憶する。閾値TH1及び閾値TH2は、スイッチの切り替え判定において被操作部10の位置に対して用いられる閾値である。閾値TH1及び閾値TH2は、例えば、Z方向の座標を示す。
図1に例示するように、閾値TH1の方が閾値TH2よりも基部20に近い位置を示す。
【0018】
制御部22は、信号線L1によって加速度センサー11と接続され、信号線L2によって加速度センサー21と接続される。制御部22は、加速度センサー11及び加速度センサー21から通知された加速度を基に、被操作部10の現在位置を算出する。また、制御部22は、算出した被操作部10の現在位置と閾値TH1、TH2を基に、スイッチの切り替え判定判定を行う。制御部22は、「制御部」の一例である。
【0019】
<制御部22によるスイッチの切り替え判定処理>
制御部22は、所定間隔で被操作部10の現在位置の検出を行い、検出した被操作部10の現在位置を基にスイッチの切り替え判定処理を行う。
図2は、実施形態における制御部22によるスイッチの切り替え判定処理の処理フローの一例を示す図である。以下、
図2を参照して、実施形態における制御部22によるスイッチの切り替え判定処理の処理フローの一例について説明する。
【0020】
T1では、制御部22は、被操作部10の現在位置を初期化する。制御部22は、例えば、指等で押されていない状態の被操作部10の位置を0とする。制御部22は、例えば、被操作部10が初期化された位置から閾値TH2未満の範囲にある場合にスイッチオフを検出する。T1より後に実行されるT2からT8の処理は、所定時間で繰り返し実行されるループである。
【0021】
T2では、制御部22は、被操作部10と制御部22の加速度の差分を算出する。制御部22は、加速度センサー11から通知された加速度と加速度センサー21から通知された加速度の差分を算出する。
【0022】
T3では、T2で算出した加速度を基に、被操作部10の移動距離を算出する。なお、移動距離は、例えば、以下の式(1)、式(2)によって算出することができる。本実施形態では移動方向C1とZ軸方向とが一致しているので、加速度センサー11及び加速度センサー21の検出値のうちZ軸方向の値を用いて移動距離の算出を行う。Z軸方向の値は、「所定方向成分」の一例である。
【数1】
【0023】
式(1)において、nはループが実行された回数、z1は今回のループにおいて加速度センサー11によって検知されたZ軸方向の加速度、z2は今回のループにおいて加速度センサー21によって検知されたZ軸方向の加速度、tはループ1周の所定時間、vnはn回目のループ時において加速(または減速)された被操作部10のZ軸方向の速度を示す。v(n-1)は、前回のループにおいて算出された被操作部10の速度である。今回のループが初回のループである場合には、v(n-1)の値は、例えば、0とすればよい。制御部22は、算出した速度vnをメモリー222に記憶させる。
【0024】
制御部22は、前回のループにおける処理において式(1)によって算出されてメモリー222に記憶させた被操作部10の速度v
(n-1)を用いて、被操作部10の今回のループにおける移動距離を算出する。
【数2】
【0025】
式(2)において、Dnは、今回のループにおける被操作部10の移動距離である。v(n-1)は、前回のループにおいて算出された被操作部10の速度である。今回のループが初回のループである場合には、v(n-1)の値は、例えば、0とすればよい。制御部22は、算出した移動距離Dnをメモリー222に記憶させる。
【0026】
T4では、制御部22は、被操作部10の現在位置を算出する。現在位置の算出は、例えば、メモリー222に記憶済みの移動距離(D1、D2,・・・、D(n-1)、Dn)を積算することで行われる。現在位置は、例えば、Z方向の座標として算出される。T4で算出された被操作部10の現在位置が閾値TH1以上である場合(T5でYES)、処理はT6に進められ、制御部22はスイッチオンを検出する。算出された被操作部10の現在位置が閾値TH1未満である場合(T5でNO)、処理はT7に進められる。
【0027】
T7では、制御部22は、T4で算出された現在位置が閾値TH2以上である場合(T7でYES)、処理はT8に進められ、制御部22はスイッチの中間位置を検出する。T4で算出された被操作部10の現在位置が閾値TH2未満である場合(T7でNO)、スイッチのオン及び中間位置のいずれも検出されず、処理は次のループに進められる。
【0028】
制御部22は、例えば、被操作部10の現在位置がT1において初期化された位置に戻った場合には、ループを終了する。制御部22は、ループ終了の際には、例えば、メモリー222に記憶済みの移動距離や、被操作部10の速度をメモリー222から消去する。
【0029】
<キャリブレーション>
本実施形態では、被操作部10及び基部20の双方に加速度センサーを設けているが、被操作部10及び基部20の取付誤差等により、加速度センサー11が検知する加速度と加速度センサー21が検知する加速度との間にずれが生じる場合がある。以下では、このようなずれを抑制する2種類のキャリブレーション方法について説明する。
【0030】
(第1のキャリブレーション方法)
第1のキャリブレーション方法では、加速度センサー11及び加速度センサー21のいずれもが3軸の加速度センサーである場合に用いられる。
図3は、第1のキャリブレーション方法を例示する図である。以下、
図3を参照して、第1のキャリブレーション方法について説明する。
【0031】
T11では、制御部22は、被操作部10が指等によって押されていない状態(被操作
部10に力が加えられていない状態)において加速度センサー11によって検知されたXYZ軸夫々の加速度と、加速度センサー21によって検知されたXYZ軸夫々の加速度を取得する。
【0032】
T12では、制御部22は、T11において取得した加速度を基に、補正値を算出する。補正値の算出には、例えば、以下の式(3)、式(4)を用いることができる。
【数3】
【数4】
【0033】
式(3)において、XA1は加速度センサー11によって検知されたX軸方向の加速度、YA1は加速度センサー11によって検知されたY軸方向の加速度、ZA1は加速度センサー11によって検知されたZ軸方向の加速度である。また、式(4)において、XA2は加速度センサー21によって検知されたX軸方向の加速度、YA2は加速度センサー21によって検知されたY軸方向の加速度、ZA2は加速度センサー21によって検知されたZ軸方向の加速度である。a及びbは、加速度センサー11及び加速度センサー21によって検出された加速度に適用する補正値である。制御部22は、算出した補正値a、bをメモリー222に記憶させる。メモリー222は、「記憶部」の一例である。
【0034】
以上の処理で算出された補正値a、bによる補正を式(1)及び式(2)に適用すると、以下の式(5)、式(6)となる。
【数5】
【数6】
【0035】
制御部22は、このように算出された補正値a、bを用いることで、加速度センサー11の現在位置を高精度に算出することができるようになる。
【0036】
(第2のキャリブレーション方法)
第2のキャリブレーション方法は、第1のキャリブレーション方法よりも簡易に補正値を算出する方法である。第2のキャリブレーション方法では、加速度センサー11及び加速度センサー21は、1軸の加速度を算出するものであってよい。なお、当該1軸はZ軸に一致する。
図4は、第2のキャリブレーション方法を例示する図である。以下、
図4を参照して、第2のキャリブレーション方法について説明する。
【0037】
T21では、制御部22は、被操作部10が指等によって押されていない状態(被操作部10に力が加えられていない状態)において加速度センサー11によって検知されたZ
軸の加速度と、加速度センサー21によって検知されたZ軸の加速度を取得する。
【0038】
T22では、制御部22は、T11において取得した加速度を基に、補正値を算出する。補正値の算出には、例えば、以下の式(7)を用いることができる。
【数7】
【0039】
式(7)において、cは算出される補正値である。Z
A1及びZ
A2は、式(3)と同様である。以上の処理で算出された補正値cによる補正を式(1)及び式(2)に適用すると、以下の式(8)、式(9)となる。第2のキャリブレーション方法は、第1のキャリブレーション方法よりも補正値を算出する演算量が少なくて済む。そのため、第2のキャリブレーション方法を用いることで、第1のキャリブレーション方法を用いる場合よりも、制御部22の処理負荷及び消費電力を抑制することができる。一方で、第1のキャリブレーション方法を用いる場合、第2のキャリブレーション方法よりも高精度にキャリブレーションを行うことができる。
【数8】
【数9】
【0040】
<実施形態の作用効果>
本実施形態では、被操作部10の位置検出に加速度センサー11と加速度センサー21を採用した。このような加速度センサーを採用することで、周囲環境の明るさ、磁界、静電気や周囲に配置された導体による影響を抑制し、被操作部10の位置を高精度に検出することができる。
【0041】
本実施形態では、被操作部10は加速度センサー11を含み、基部20は加速度センサー21を含む。すなわち、被操作部10及び基部20の夫々に加速度センサーが設けられる。このように加速度センサーが設けられることで、周囲の振動による影響を加速度センサー11及び加速度センサー21で相殺することができ、被操作部10の位置の検出精度を高めることができる。
【0042】
本実施形態では、第1のキャリブレーション及び第2のキャリブレーションで説明したように、被操作部10の位置を補正する。そのため、本実施形態では、被操作部10及び基部20の取付誤差等による被操作部10の現在位置検出の誤差を抑制することができる。
【0043】
<変形例>
以上説明した実施形態では、被操作部10が基部20に向けて移動方向C1に沿って移動(直線的に移動)する。変形例では、被操作部10が円弧軌道を描くように移動する無接点スイッチ100について説明する。
【0044】
図5は、変形例に係る無接点スイッチ100aの構成の一例を示す図である。無接点スイッチ100aは、被操作部10が基部20に対して直線的に接近したり離れたりする無
接点スイッチ100とは異なり、被操作部10aは基部20aを中心とした円弧軌道O1上を移動する。無接点スイッチ100aは、例えば、トグルスイッチやジョイスティックである。
【0045】
被操作部10aは、基部20aを中心とした円弧軌道O1上を移動する。被操作部10aは、被操作部10と同様に、加速度センサー11を含む。基部20aは、円弧軌道O1上を移動する被操作部10aの支点(被操作部10aが描く円弧軌道O1の中心)に位置する。基部20aは、基部20と同様に、加速度センサー21及び制御部22を含む。
【0046】
<制御部22によるスイッチの切り替え判定処理>
変形例においても、実施形態と同様に、制御部22は、式(1)、式(2)を用いて被操作部10aの移動距離を算出し、算出した移動距離と閾値TH1、閾値TH2を用いて、スイッチの切り替え判定処理を行うことができる。
【0047】
<キャリブレーション>
被操作部10aが円弧軌道O1上を移動する場合、被操作部10aの位置に応じて加速度センサー11の軸の傾きが変動する。実施形態に係る無接点スイッチ100では被操作部10の移動経路上における1か所での加速度を用いてキャリブレーションを行ったが、変形例に係る無接点スイッチ100aでは、被操作部10の軸の傾きを考慮して、移動経路上における複数個所における加速度を用いてキャリブレーションを行う。本変形例では、被操作部10aが移動する円弧軌道O1上の第1の位置、第2の位置、第3の位置、第4の位置、第5の位置の5か所での加速度を用いてキャリブレーションを行う。
【0048】
本変形例では、キャリブレーションで取得した補正値を記憶するテーブルがメモリー222に記憶される。
図6は、変形例における補正値テーブル222aの一例を示す図である。補正値テーブル222aでは、現在位置と補正値とが対応付けられる。現在位置は、最小値及び最大値の項目を含む。
図6では、式(2)によって算出される被操作部10aの位置が、0から99の範囲となる場合が例示される。
【0049】
なお、
図5の1の位置は、
図6における最小値0から最大値19の範囲内の位置であるものとする。
図5の第2の位置は、
図6における最小値20から最大値39の範囲内の位置であるものとする。
図5の第3の位置は、
図6における最小値40から最大値59までの範囲内の位置であるものとする。
図5の第4の位置は、
図6における最小値60から最大値79までの範囲内の位置であるものとする。
図5の第5の位置は、
図6における最小値80から最大値99までの範囲内の位置であるものとする。
【0050】
(変形例におけるキャリブレーション方法)
図7は、変形例におけるキャリブレーション方法を例示する図である。
図7で例示するキャリブレーション方法では、補正値として、c(n)(nは被操作部10aの位置を示すポイント番号であり、その変域は0から4の整数)の5つの補正値を取得する。補正値c(0)は、被操作部10aの位置が第1の位置であるときに算出される補正値である。補正値c(1)は、被操作部10aの位置が第2の位置であるときに算出される補正値である。補正値c(2)は、被操作部10aの位置が第3の位置であるときに算出される補正値である。補正値c(3)は、被操作部10aの位置が第4の位置であるときに算出される補正値である。補正値c(4)は、被操作部10aの位置が第5の位置であるときに算出される補正値である。以下、
図7を参照して、変形例におけるキャリブレーション方法について説明する。
【0051】
T31では、制御部22は、ポイント番号を0に初期化する。また、被操作部10aは、第1の位置において静止する。
【0052】
T32では、制御部22は、
図4に例示されるキャリブレーション方法を実行し、補正値を算出する。例えば、現在のポイント番号が1の場合には、補正値c(1)が算出される。
【0053】
T33では、制御部22は、算出した補正値を補正値テーブル222aに格納する。制御部22は、例えば、現在のポイント番号が1の場合には、現在位置が最小値20から最大値39の範囲に対応付けて、算出した補正値c(1)を格納する。
【0054】
T34では、制御部22は、ポイント番号が最大値であるか否かを判定する。本変形例では、ポイント番号の最大値は4である。そのため、ポイント番号が4未満の場合には(T34でYES)、処理はT35に進められる。ポイント番号が4以上の場合には(T34でNO)、処理は終了される。
【0055】
T35では、制御部22は、ポイント番号をインクリメント(ポイント番号を1増加)させる。T36では、被操作部10aは、次のポイント(T35でインクリメントされたポイント番号に対応する位置)に移動されて静止される。その後、処理は、T32に進められる。
図7に例示される処理によって、補正値c(n)が算出され、算出された補正値の夫々が補正値テーブル222aに格納される。
【0056】
図8は、変形例における補正値適用処理の一例を示す図である。以下、
図8を参照して、変形例における補正値適用処理の一例について説明する。
【0057】
T41では、制御部22は、
図2のT4で算出した被操作部10aの現在位置に対応する補正値を補正値テーブル222aから取得する。
【0058】
T42では、制御部22は、T41で取得した補正値を用いて、
図2のT4で算出した現在位置の補正を行う。現在位置の補正には、例えば、式(8)、式(9)を用いることができる。
【0059】
変形例によれば、被操作部10aが円弧軌道O1上を移動する被操作部10aを備えた無接点スイッチ100aを実現することができる。そして、変形例に係る無接点スイッチ100aは、被操作部10aが円弧軌道O1上を移動することに伴って加速度センサー11の座標軸が傾いても、被操作部10aの位置を補正することができる。
【0060】
以上説明した実施形態に係る無接点スイッチ100及び変形例に係る無接点スイッチ100aは、様々な電子装置に適用することができる。電子装置としては、例えば、エレベーター、エスカレーター、工事用機器、農作業機器、情報処理装置等を挙げることができる。
【0061】
以上説明した実施形態に係る無接点スイッチ100及び変形例に係る無接点スイッチ100aでは、閾値TH1、TH2という2つの閾値を用いることで、スイッチのオン/オフのみならず、オンとオフの中間を検出した。しかしながら、無接点スイッチ100、100aは、閾値を一つに設定して、スイッチのオン/オフを検出するものとしてもよい。
【符号の説明】
【0062】
10・・被操作部
10a・・被操作部
11・・加速度センサー
20・・基部
20a・・基部
21・・加速度センサー
22・・制御部
30・・バネ
100・・無接点スイッチ
100a・・無接点スイッチ
221・・プロセッサー
222・・メモリー
222a・・補正値テーブル
C1・・移動方向
K1・・初期距離
L1・・信号線
L2・・信号線
O1・・円弧軌道
TH1・・閾値
TH2・・閾値