(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023072381
(43)【公開日】2023-05-24
(54)【発明の名称】液圧回転機
(51)【国際特許分類】
F04B 1/324 20200101AFI20230517BHJP
F04B 1/2078 20200101ALI20230517BHJP
【FI】
F04B1/324
F04B1/2078
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021184907
(22)【出願日】2021-11-12
(71)【出願人】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】武井 元
(72)【発明者】
【氏名】岩名地 哲也
(72)【発明者】
【氏名】久保井 宏暁
【テーマコード(参考)】
3H070
【Fターム(参考)】
3H070AA01
3H070BB04
3H070BB06
3H070CC12
3H070CC34
3H070DD44
3H070DD55
(57)【要約】
【課題】液圧回転機の大型化を抑制しつつ馬力制御の制御特性の自由度を向上させる。
【解決手段】ピストンポンプ100は、供給される制御圧に応じて斜板8を付勢する第1付勢部20と、第1付勢部20に抗するように斜板8を付勢する第2付勢部40と、第1付勢部20に導かれる制御圧をピストンポンプ100の自己圧に応じて制御するレギュレータ50と、を備え、レギュレータ50は、斜板8の傾転に追従して伸縮する外側スプリング51a及び内側スプリング51bの付勢力に応じて移動して、制御圧を調整する制御スプール52と、外側スプリング51a及び内側スプリング51bの付勢力に抗するように制御スプール52に対して付勢力を発揮する補助スプリング61と、補助スプリング61を収容する収容室65と、を有し、収容室65には、制御スプール52に対して推力を発揮する信号圧が導かれる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液圧回転機であって、
駆動軸と共に回転するシリンダブロックと、
前記シリンダブロックに形成され前記駆動軸の周方向に所定の間隔をもって配置される複数のシリンダと、
前記シリンダ内に摺動自在に挿入され前記シリンダの内部に容積室を区画するピストンと、
前記容積室を拡縮するように前記ピストンを往復動させる傾転可能な斜板と、
供給される制御圧に応じて前記斜板を付勢する第1付勢部と、
前記第1付勢部に抗するように前記斜板を付勢する第2付勢部と、
前記第1付勢部に導かれる前記制御圧を制御するレギュレータと、を備え、
前記レギュレータは、
前記斜板の傾転に追従して伸縮する付勢部材と、
前記付勢部材の付勢力に応じて移動して、前記制御圧を調整する制御スプールと、
前記付勢部材の付勢力に抗するように前記制御スプールに対して付勢力を発揮する補助付勢部材と、
前記補助付勢部材を収容する収容室と、を有し、
前記収容室には、前記付勢部材の付勢力に抗するように前記制御スプールに対して推力を発揮する信号圧が導かれることを特徴とする液圧回転機。
【請求項2】
請求項1に記載の液圧回転機であって、
前記補助付勢部材は、前記制御スプールに対して直接接触して付勢力を発揮することを特徴とする液圧回転機。
【請求項3】
請求項1に記載の液圧回転機であって、
前記レギュレータは、
前記補助付勢部材の一端が着座し前記制御スプールの移動方向に沿って移動自在に前記収容室内に設けられる着座部と、
前記着座部と前記制御スプールとの間に設けられ前記補助付勢部材の付勢力を前記制御スプールに伝達する伝達部と、をさらに有することを特徴とする液圧回転機。
【請求項4】
請求項3に記載の液圧回転機であって、
前記着座部は、前記制御スプールの移動方向に垂直な方向において前記収容室の内壁との間に隙間を空けて設けられることを特徴とする液圧回転機。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の液圧回転機であって、
前記伝達部は、球面状に形成されて前記着座部に接触する接触部を有することを特徴とする液圧回転機。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一つに記載の液圧回転機であって、
前記制御スプールが挿入されるスプール収容孔が設けられるケースを有し、
前記制御スプールは、
前記スプール収容孔に摺接する本体部と、
前記本体部の端部に設けられ前記本体部よりも大きな外径で形成されるフランジ部と、を有し、
前記ケースに設けられるストッパ部に対して前記フランジ部が前記制御スプールの移動に応じて当接することで、前記補助付勢部材が発揮する付勢力に沿った前記制御スプールのそれ以上の移動が規制され、
前記補助付勢部材の付勢力及び前記信号圧による推力は、前記フランジ部に作用するように構成されることを特徴とする液圧回転機。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一つに記載の液圧回転機であって、
前記信号圧は、電磁比例減圧弁によって生成されることを特徴とする液圧回転機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液圧回転機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、出力が略一定になるような定馬力特性で吐出圧と吐出流量を制御する馬力制御レギュレータを備える斜板式ピストンポンプが開示されている。この斜板式ピストンポンプは、斜板の傾転角を変える傾転アクチュエータとして、傾転角が大きくなる方向に駆動する小径ピストンと、斜板を傾転角が小さくなる方向に駆動する大径ピストンと、を備える。
【0003】
馬力制御レギュレータは、斜板に追従して変位するフィードバックピンを斜板側に押し付ける制御スプリングと、大径ピストンの圧力室に導かれる油圧を制御する制御スプールと、を備える。制御スプールには、吐出圧や信号圧といった油圧が作用しており、制御スプールは、油圧によって受ける力と制御スプリングによって受ける力とが均衡するように移動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示される馬力制御レギュレータでは、スプリングや油圧などによって受ける力が均衡するように制御スプールが移動することにより、大径ピストンの圧力室に導かれる油圧が制御される。よって、馬力制御レギュレータの制御特性は、制御スプールに作用する力に応じて定まる。
【0006】
このようなレギュレータにおいて種々の制御特性を実現するには、制御スプールに対して力を発揮する構成を複数設けて、設計の自由度を高めることが考えられる。しかしながら、制御スプールを付勢するための構成を複数設けると、液圧回転機の大型化を招いてしまう。
【0007】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、大型化を抑制しつつレギュレータによる制御特性の自由度を向上させることができる液圧回転機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、液圧回転機であって、駆動軸と共に回転するシリンダブロックと、シリンダブロックに形成され駆動軸の周方向に所定の間隔をもって配置される複数のシリンダと、シリンダ内に摺動自在に挿入されシリンダの内部に容積室を区画するピストンと、容積室を拡縮するようにピストンを往復動させる傾転可能な斜板と、供給される制御圧に応じて斜板を付勢する第1付勢部と、第1付勢部に抗するように斜板を付勢する第2付勢部と、第1付勢部に導かれる制御圧を制御するレギュレータと、を備え、レギュレータは、斜板の傾転に追従して伸縮する付勢部材と、付勢部材の付勢力に応じて移動して、制御圧を調整する制御スプールと、付勢部材の付勢力に抗するように制御スプールに対して付勢力を発揮する補助付勢部材と、補助付勢部材を収容する収容室と、を有し、収容室には、付勢部材の付勢力に抗するように制御スプールに対して推力を発揮する信号圧が導かれることを特徴とする。
【0009】
この発明では、制御スプールを付勢する補助付勢部材が収容される収容室に信号圧が導かれることで、信号圧によっても制御スプールに推力が発揮される。収容室が、補助付勢部材を収容するのに加えて、信号圧によって推力を発揮するための圧力室としても機能するため、収容室と圧力室とを別々に設ける場合と比較して小型化できる。よって、制御スプールを付勢する構成を複数設けたとしても、装置の大型化を抑制できる。
【0010】
また、本発明は、補助付勢部材が、制御スプールに対して直接接触して付勢力を発揮することを特徴とする。
【0011】
この発明では、構成を簡素化し、部品点数を削減することができる。
【0012】
また、本発明は、レギュレータが、補助付勢部材の一端が着座し制御スプールの移動方向に沿って移動自在に収容室内に設けられる着座部と、着座部と制御スプールとの間に設けられ補助付勢部材の付勢力を制御スプールに伝達する伝達部と、をさらに有することを特徴とする。
【0013】
この発明では、収容室内の信号圧による付勢力は、伝達部の断面積(受圧面積)に応じて制御スプールに対して発揮される。つまり、伝達部の断面積によって収容室内の信号圧による付勢力を調整することができるため、設計自由度が向上し、レギュレータによって種々の制御特性を発揮させやすくなる。
【0014】
また、本発明は、着座部が、制御スプールの移動方向に垂直な方向において収容室の内壁との間に隙間を空けて設けられることを特徴とする。
【0015】
この発明では、着座部が収容室の内壁と接触せずに収容室内で移動するため、着座部と収容室との間で摩擦力が生じてレギュレータによる制御特性に影響することを抑制できる。
【0016】
また、本発明は、伝達部が、球面状に形成されて着座部に接触する接触部を有することを特徴とする。
【0017】
この発明では、着座部と収容室との間に隙間が設けられることで着座部が収容室内で傾いたとしても、着座部に対する伝達部の接触部は球面状であるため、制御スプールの移動方向における伝達部の移動が妨げられにくくなる。
【0018】
また、本発明は、制御スプールが摺動自在に挿入されるスプール収容孔が設けられるケースを有し、制御スプールが、スプール収容孔に摺接する本体部と、本体部よりも大きな外径で形成され、スプール収容孔の内周に形成される段差部に対して制御スプールの移動に応じて当接するフランジ部と、を有し、フランジ部が段差部に当接することで、補助付勢部材が発揮する付勢力に沿った制御スプールのそれ以上の移動が規制され、補助付勢部材の付勢力及び信号圧による推力は、フランジ部に作用するように構成されることを特徴とする。
【0019】
この発明によれば、制御スプールでは、相対的に断面積が大きいフランジ部が本体部の端部に設けられる。制御スプールに作用する力がフランジ部に作用するように構成することで、力を受ける面積を確保することができる。よって、制御スプールに対して複数の構成によって力を作用させやすくなり、より多様な制御特性を実現することができる。
【0020】
また、本発明は、信号圧が、電磁比例減圧弁によって生成されることを特徴とする。
【0021】
この発明では、電気信号によって斜板の傾転角制御を行うことができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、液圧回転機の大型化を抑制しつつレギュレータによる制御特性の自由度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る液圧回転機の断面図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る液圧回転機のレギュレータの構成を示す図であり、
図1におけるA部の拡大断面図である。
【
図3】
図2に示す状態から制御スプールが移動してケース本体に当接した状態を示す図である。
【
図4】本発明の第1実施形態に係る液圧回転機の変形例を示す断面図であり、
図2に対応した図である。
【
図5】本発明の第2実施形態に係る液圧回転機のレギュレータの構成を示す断面図である。
【
図6】本発明の第2実施形態に係る液圧回転機のレギュレータの構成を示す図であり、
図2におけるB部の拡大断面図である。
【
図7】本発明の第2実施形態における伝達ピンの作用を説明するための図であり、伝達ピンと第2着座部との接触部分の拡大図である。
【
図8】本発明の第3実施形態に係る液圧回転機のレギュレータの構成を示す拡大断面図である。
【
図9】本発明の第4実施形態に係る液圧回転機の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(第1実施形態)
以下、図面を参照して、本発明の第1実施形態に係る液圧回転機100について説明する。
【0025】
液圧回転機100は、外部の駆動源からの動力によりシャフト(駆動軸)1が回転してピストン5が往復動することで、作動流体としての作動油を供給可能なピストンポンプとして機能する。また、液圧回転機100は、外部から供給される作動油の流体圧によりピストン5が往復動してシャフト1が回転することで、回転駆動力を出力可能なピストンモータとして機能する。なお、液圧回転機100は、ピストンポンプとしてのみ機能するものでもよいし、ピストンモータとしてのみ機能するものであってもよい。液圧回転機100を駆動する駆動源は、例えば、エンジンや電動モータである。
【0026】
以下の説明では、液圧回転機100をピストンポンプとして使用した場合について例示し、液圧回転機100を「ピストンポンプ100」と称する。
【0027】
ピストンポンプ100は、例えば駆動対象を駆動する油圧シリンダ等のアクチュエータ(図示省略)に作動油を供給する油圧供給源として使用される。ピストンポンプ100は、
図1に示すように、駆動源によって回転するシャフト1と、シャフト1に連結されシャフト1と共に回転するシリンダブロック2と、シリンダブロック2を収容するケース3と、を備える。
【0028】
ケース3は、有底筒状のケース本体3aと、ケース本体3aの開口端を封止しシャフト1が挿通するカバー3bと、後述する補助付勢部60を収容する補助ケース部3fと、を備える。ケース3の内部は、ドレン通路(図示省略)を通じてタンク(図示省略)に連通する。なお、ケース3の内部は、後述する吸込通路(図示省略)に連通してもよい。
【0029】
カバー3bの挿通孔3cを通じて外部に突出するシャフト1の一方の端部1aには、エンジン等の動力源(図示省略)が連結される。シャフト1の端部1aは、軸受4aを介してカバー3bの挿通孔3cに回転自在に支持される。シャフト1の他方の端部1bは、ケース本体3aの底部に設けられるシャフト収容孔3dに収容され、軸受4bを介して回転自在に支持される。図示は省略するが、シャフト1の他方の端部1bには、ピストンポンプ100と共に動力源によって駆動されるギヤポンプ等の他の油圧ポンプ(図示省略)の回転軸(図示省略)が、シャフト1と共に回転するように同軸的に連結される。
【0030】
シリンダブロック2は、シャフト1が貫通する貫通孔2aを有し、貫通孔2aを介してシャフト1とスプライン結合される。これにより、シリンダブロック2はシャフト1の回転に伴って回転する。
【0031】
シリンダブロック2には、一方の端面に開口部を有する複数のシリンダ2bがシャフト1と平行に形成される。複数のシリンダ2bは、シリンダブロック2の周方向に所定の間隔を持って形成される。シリンダ2bには、容積室6を区画する円柱状のピストン5が往復動自在に挿入される。ピストン5の先端側はシリンダ2bの開口部から突出し、その先端部には球面座5aが形成される。
【0032】
ピストンポンプ100は、ピストン5の球面座5aに回転自在に連結され球面座5aに摺接するシュー7と、シリンダブロック2の回転に伴ってシュー7が摺接する斜板8と、シリンダブロック2とケース本体3aの底部との間に設けられるバルブプレート9と、をさらに備える。
【0033】
シュー7は、各ピストン5の先端に形成される球面座5aを受容する受容部7aと、斜板8の摺接面8aに摺接する円形の平板部7bと、を備える。受容部7aの内面は球面状に形成され、受容した球面座5aの外面と摺接する。これにより、シュー7は球面座5aに対してあらゆる方向に角度変位可能である。
【0034】
斜板8は、ピストンポンプ100の吐出量を可変とするため、カバー3bに傾転可能に支持される。シュー7の平板部7bは、摺接面8aに対して面接触する。
【0035】
バルブプレート9は、シリンダブロック2の基端面が摺接する円板部材であり、ケース本体3aの底部に固定される。図示は省略するが、バルブプレート9には、シリンダブロック2に形成された吸込通路と容積室6とを接続する吸込ポートと、シリンダブロック2に形成された吐出通路と容積室6とを接続する吐出ポートと、が形成される。
【0036】
ピストンポンプ100は、供給される流体圧に応じて傾転角が小さくなる方向に斜板8を傾転させる第1付勢部20と、第1付勢部20が発揮する付勢力に抗して傾転角が大きくなる方向に斜板8を付勢する第2付勢部30と、第1付勢部20に導かれる流体圧を斜板8の傾転角に応じて制御するレギュレータ50と、をさらに備える。
【0037】
図1に示すように、第1付勢部20は、カバー3bに形成されるピストン収容孔21に摺動自在に挿入され斜板8に当接する制御ピストン22と、制御ピストン22によってピストン収容孔21内に区画される制御圧室23と、を有する。
【0038】
制御圧室23には、レギュレータ50によって調整される流体圧(以下、「制御圧」と称する。)が導かれる。制御ピストン22は、制御圧室23に導かれた制御圧によって、傾転角が小さくなる方向に斜板8を付勢する。
【0039】
第2付勢部30は、支持付勢部材としての支持スプリングである。以下では、第2付勢部30を「支持スプリング30」とも称する。支持スプリング30は、コイルスプリングであり、第1付勢部20の付勢力に抗するように付勢力を発揮して斜板8を支持する。
【0040】
図2に示すように、支持スプリング30は、一端が第1ばね座31に着座し、他端がケース本体3aの底部に着座する。支持スプリング30は、第1ばね座31とケース本体3aとの間に圧縮された状態で設けられる。ケース本体3aの底部には、支持スプリング30の他端部が着座し、当該他端部を支持する環状の支持溝3eが形成される。
【0041】
第1ばね座31は、略円柱状の部材であって、円柱状の摺動部32と、摺動部32よりも外径が小さく摺動部32から軸方向に突出する第1ボス部33と、第1ボス部33よりも外径が小さく第1ボス部33から軸方向に突出する第2ボス部34と、第2ボス部34よりも外径が小さく第2ボス部34から軸方向に突出する第3ボス部35と、を有する。
【0042】
支持スプリング30の一端は、摺動部32と第1ボス部33との外径差によって形成される段差面32aを着座面として第1ばね座31に着座する。第1ばね座31は、支持スプリング30及び後述する外側スプリング51aと内側スプリング51bの付勢力によって、斜板8の傾転に応じて移動する。
【0043】
第1ばね座31には、略球面状に形成されて斜板8に当接する当接部31aが設けられる。第1ばね座31の摺動部32は、ケース本体3aの内周に設けられるガイド壁部40に形成されたガイド孔41に摺動自在に挿入される。ガイド孔41は、その中心軸がシャフト1の中心軸と平行であり、後述する制御スプール52の中心軸と平行又は同軸(本実施形態では同軸)となるように、ガイド壁部40に形成される。
【0044】
第1ばね座31の摺動部32がガイド孔41に対して摺動することで、第1ばね座31は、ガイド孔41の中心軸方向に沿って案内される。これにより、支持スプリング30(及び後述する外側スプリング51aと内側スプリング51b)の付勢力が、第1ばね座31を介して、ガイド孔41の軸方向に沿って斜板8に付与される。言い換えれば、斜板8の傾転に追従するように第1ばね座31が移動し、支持スプリング30(及び後述する外側スプリング51aと内側スプリング51b)が伸縮される。このように、第1ばね座31は、斜板8の傾転をレギュレータ50に伝達するフィードバックピンとしても機能する。
【0045】
なお、第1ばね座31は、支持スプリング30、外側スプリング51a、及び内側スプリング51bが着座する部分と、ガイド孔41に案内されて斜板8に当接する部分と、に分けて別体に形成されてもよい。
【0046】
図1に示すように、第1付勢部20の制御ピストン22は、第1ばね座31とは斜板8を挟んで反対側に設けられる。つまり、制御ピストン22と第1ばね座31とは、シャフト1の中心軸に対する周方向の位置が互いに略一致するように配置される。
【0047】
レギュレータ50は、ピストンポンプ100を駆動する駆動源の負荷に応じて第1付勢部20の制御圧室23に導かれる制御圧を調整し、ピストンポンプ100の馬力(出力)を制御する。より具体的には、駆動源の負荷が変動すると、ピストンポンプ100の吐出圧も変動する。よって、本実施形態では、レギュレータ50は、ピストンポンプ100の自己圧に応じて制御圧を調整することで、駆動源の負荷に応じた馬力制御を実行する。
【0048】
レギュレータ50は、第1ばね座31を介して斜板8を付勢する付勢部材としての外側スプリング51a及び内側スプリング51bと、外側スプリング51a及び内側スプリング51bの付勢力に応じて移動して、制御圧を調整する制御スプール52と、外側スプリング51a及び内側スプリング51bが制御スプール52に対して発揮する付勢力に抗するように制御スプール52に対して付勢力を発揮する補助付勢部60と、を有する。
【0049】
外側スプリング51a及び内側スプリング51bは、それぞれコイルスプリングであり、斜板8の傾転に追従するように伸縮する。内側スプリング51bは、外側スプリング51aよりも巻き径が小さく、外側スプリング51aの内側に設けられる。また、外側スプリング51aは、支持スプリング30よりも巻き径が小さく、支持スプリング30の内側に設けられる。つまり、外側スプリング51a及び内側スプリング51bは、いずれも、支持スプリング30の内側に設けられている。
【0050】
外側スプリング51a及び内側スプリング51bの一端部は、第1ばね座31に着座する。具体的には、
図2に示すように、外側スプリング51aは、第1ばね座31の第1ボス部33と第2ボス部34との外径差によって形成される段差面33aを着座面として第1ばね座31に着座する。内側スプリング51bは、第1ばね座31の第2ボス部34と第3ボス部35との外径差によって生じる段差面34aを着座面として第1ばね座31に着座可能である。第3ボス部35は、内側スプリング51bの内側に挿入され、内側スプリング51bの内周を支持する。
【0051】
外側スプリング51a及び内側スプリング51bの他端部は、第2ばね座36を介して制御スプール52の端面に着座する。第2ばね座36は、制御スプール52と共に移動する。
【0052】
第2ばね座36は、外径が支持スプリング30の内径よりも小さく形成されて、支持スプリング30の内側に設けられている。上述のように、支持スプリング30の他端部は、第2ばね座36には着座せず、ケース本体3aの底部の支持溝3eに着座する。よって、支持スプリング30では、第1ばね座31に着座する一端部が斜板8の傾転に追従するように移動し、第2ばね座36に着座する他端部は斜板8の傾転に追従するように移動はしない。つまり、支持スプリング30の他端部は、斜板8の傾転による移動が生じないように構成されている。
【0053】
斜板8の傾転角が最大となる状態(
図1に示す状態)では、第2ばね座36は、ケース本体3aの底部とは接触せず、ケース本体3aの底部から離れて浮いた状態となる。
【0054】
外側スプリング51aの自然長(自由長)は、内側スプリング51bの自然長より長い。斜板8の傾転角が最大となる状態(
図1に示す状態)では、外側スプリング51aは第1ばね座31及び第2ばね座36によって圧縮された状態となる一方、内側スプリング51bはいずれかの端部がばね座(
図1では第1ばね座31)から離れて浮いた状態(自然長となる状態)となる。つまり、斜板8の傾転角が最大の状態から小さくなる際、初めのうちは外側スプリング51aのみが圧縮され、外側スプリング51aの長さが内側スプリング51bの自然長を超えて圧縮されると、外側スプリング51a及び内側スプリング51bの両方が圧縮される。これにより、第1ばね座31を介して斜板8に付与される外側スプリング51a及び内側スプリング51bからの弾性力が段階的に高まるように構成される。
【0055】
以上のように、支持スプリング30と、外側スプリング51a及び内側スプリング51bとは、互いに隣接して斜板8に対して並列に設けられている。より具体的には、外側スプリング51a及び内側スプリング51bは、支持スプリング30の径方向の内側に設けられている。さらにいえば、支持スプリング30の付勢力と、外側スプリング51a及び内側スプリング51bの付勢力とは、斜板8に対して並列に作用するように構成されている。
【0056】
ケース本体3aには、制御スプール52が摺動自在に挿入されるスプール収容孔50aが形成される。スプール収容孔50aは、ケース本体3aの端面3gに開口する。ケース本体3aの端面3gに対するスプール収容孔50aの開口は、ケース本体3aの端面3gに取り付けられる有底筒状の補助ケース部3fによって閉塞される。
【0057】
また、ケース本体3aには、ピストンポンプ100の吐出圧が導かれる吐出圧通路10と、制御ピストン22の制御圧室23に制御圧を導く制御圧通路11と、が形成される。吐出圧通路10には、ピストンポンプ100の吐出圧が常時導かれている。制御圧通路11は、カバー3bに形成されるカバー側通路(図示省略)を通じて制御圧室23に連通する。なお、
図1では、吐出圧通路10及び後述する信号圧通路12に対してピストンポンプ100の吐出圧を導くラインを、破線で模式的に示す。
【0058】
制御スプール52は、
図2に示すように、スプール収容孔50aの内周面に摺接する本体部53と、本体部53の一端部に設けられ本体部53よりも外径が大きく形成されるフランジ部54と、本体部53においてフランジ部54とは反対側の他端部に設けられ第2ばね座36に挿入される突出部55と、を有する。
【0059】
フランジ部54は、スプール収容孔50aからケース本体3aの外部に突出して、補助ケース部3fに収容される。突出部55は、本体部53より外径が小さく形成され、本体部53と突出部55の外径差により生じる段差面55aは、第2ばね座36に当接する。
【0060】
制御スプール52の外周には、第1制御ポート56a及び第2制御ポート56bが、それぞれ環状の溝として形成される。また、制御スプール52には、第1制御ポート56aに連通する制御通路57が、径方向に制御スプール52を貫通するように形成される。さらに、制御スプール52には、一端部(突出部55)から軸方向に沿って設けられる軸方向通路58が形成される。軸方向通路58は、制御通路57と、第2ばね座36に形成されケース本体3aの内部に開口する接続通路36aと、を連通する。
【0061】
このように、制御通路57は、軸方向通路58、及び第2ばね座36の接続通路36aを通じてケース3の内部と連通する。よって、制御通路57内の圧力は、タンク圧となる。
【0062】
補助付勢部60は、補助付勢部材としての補助スプリング61と、補助スプリング61の端部が着座する第1着座部70と、補助ケース部3fに形成され補助スプリング61を収容する収容室65と、補助スプリング61が発揮する付勢力を調整する調整機構80と、を有する。
【0063】
収容室65は、補助ケース部3fに形成される収容凹部66によって形成される。収容凹部66は、ケース本体3aの端面3gに取り付けられる補助ケース部3fの端面(取付面)3hに開口する有底筒状の凹部として形成される。つまり、収容凹部66の開口は、ケース本体3aの端面3gによって封止される。
【0064】
収容凹部66は、補助ケース部3fの取付面3hに開口する第1凹部66aと、第1凹部66aに連通し第1凹部66aよりも内径が小さい第2凹部66bと、第1凹部66aと第2凹部66bとの内径差により形成される段差面66cと、を有する。第1凹部66a及び第2凹部66bは、それぞれスプール収容孔50aと同軸に形成される円形断面を有する。
【0065】
第1凹部66aには、制御スプール52のフランジ部54が収容される。制御スプール52は、フランジ部54がケース本体3aの端面3gに当接するまで、外側スプリング51a及び内側スプリング51bの付勢力に抗して斜板8に向かう方向(
図2中右方向)に移動可能である。つまり、ケース本体3aの端面3gがストッパ部として機能し、フランジ部54が制御スプール52の移動に応じてケース本体3aの端面3gに当接することで、斜板8に向けたそれ以上の制御スプール52の移動が規制される(
図3参照)。
【0066】
また、制御スプール52は、フランジ部54が補助ケース部3fの収容凹部66の段差面66cに当接するまで、外側スプリング51a及び内側スプリング51bに付勢されて斜板8から離れる方向(
図2中左方向)に移動可能である。
図1及び
図2に示す斜板8の傾転角が最大の状態では、制御スプール52のフランジ部54が補助ケース部3fの段差面66cに当接する。つまり、収容凹部66の第1凹部66aの内径は、フランジ部54の内径よりも大きく、第2凹部66bの内径は、フランジ部54の内径よりも小さく形成される。
【0067】
補助スプリング61は、コイルスプリングであり、第1着座部70と制御スプール52のフランジ部54の端面との間に圧縮された状態で設けられる。つまり、補助スプリング61は、制御スプール52に対して直接接触して付勢力を付与する。補助スプリング61は、制御スプール52の移動方向に沿った方向に付勢力を発揮するように設けられる。
【0068】
補助スプリング61が着座するフランジ部54の端面には、両端がフランジ部54の外周面に開口する連通路54aが形成される。連通路54aは、フランジ部54の径方向に延びて形成されるスリットである。これにより、フランジ部54が段差面66cに当接した状態であっても、第1凹部66aの内側と第2凹部66bの内側とが、連通路54aによって連通する。よって、段差面66cへのフランジ部54の当接によって収容室65(収容凹部66)が2室に分離することが防止される。
【0069】
なお、連通路は、フランジ部54の端面に設けられるスリットに限定されない。例えば、収容凹部66の段差面66cにスリットを形成してもよい。また、フランジ部54を軸方向に貫通する貫通孔を連通路としてもよいし、制御スプール52の本体部53及びフランジ部54にわたって形成される通路を連通路としてもよい。このように、連通路は、段差面66cにフランジ部54が当接した状態で第1凹部66aと第2凹部66bとを連通するように、補助ケース部3f及び制御スプール52の少なくとも一方に設けられるものであればよい。
【0070】
第1着座部70は、収容凹部66の第2凹部66bに収容される。第1着座部70は、補助スプリング61の一端が着座する着座面71aが設けられる円板部71と、円板部71の着座面71aから突出して補助スプリング61を内側から支持する突起部72と、を有する。円板部71の外周には、第2凹部66bの内周との間の隙間を封止するシール部材(符示省略)が設けられる。
【0071】
図2に示すように、調整機構80は、補助ケース部3fの底部に形成される雌ねじ孔81と、雌ねじ孔81に螺合し第1着座部70を補助スプリング61の付勢方向に沿って進退させるねじ部材82と、雌ねじ孔81に対するねじ部材82の螺合位置を固定するナット83と、を有する。
【0072】
雌ねじ孔81は、補助ケース部3fの底部を貫通して第2凹部66bに開口する。ねじ部材82は、補助スプリング61が着座する側とは軸方向の反対側から第1着座部70に当接する。ねじ部材82は、雌ねじ孔81との螺合位置を調整することで、その軸方向(補助スプリング61の付勢力の方向)に沿って第1着座部70に対して進退する。つまり、ねじ部材82を進退させることで、補助スプリング61が伸縮するように第1着座部70が進退し、補助スプリング61のセット荷重(初期荷重)を調整することができる。これにより、補助スプリング61が発揮する付勢力が調整可能に構成される。ナット83がねじ部材82に螺合して補助ケース部3fに対して締め付けられることで、雌ねじ孔81に対するねじ部材82の螺合位置が固定される。
【0073】
補助スプリング61の付勢力(セット荷重)は、外側スプリング51a及び内側スプリング51bの付勢力の合力を超えない範囲で調整されことが望ましい。これによれば、補助スプリング61の付勢力の調整の際に外側スプリング51a及び内側スプリング51bが圧縮されることで生じる制御スプール52の意図しない移動が防止される。
【0074】
また、ケース本体3aには、収容室65に信号圧を導く信号圧通路12が形成される。信号圧通路12は、収容凹部66の第1凹部66aに臨むように、ケース本体3aの端面3gに開口して形成される。本実施形態では、駆動源の負荷に応じた信号圧として、ピストンポンプ100の吐出圧(自己圧)が収容室65に導かれる。信号圧が収容室65に導かれることにより、第1着座部70及び伝達ピン63を通じて信号圧による推力が制御スプール52に作用する。制御スプール52に作用する信号圧による推力の方向は、補助スプリング61と同じ方向、つまり、外側スプリング51a及び内側スプリング51bを圧縮するように制御スプール52を移動させる方向である。このように、収容室65は、補助スプリング61を収容すると共に、信号圧が導かれることによって制御スプール52に推力を発揮する信号圧室としても機能する。
【0075】
なお、信号圧通路12は、ケース本体3aの端面3gに当接するフランジ部54によって閉塞されないように構成されることが望ましい。具体的には、例えば、信号圧通路12がフランジ部54よりも径方向の外側の位置においてケース本体3aの端面3gに開口するように構成してもよい。また、ケース本体3aの端面3gに当接するフランジ部54のフランジ面に径方向に延びるスリットを形成したり、フランジ部54を軸方向に貫通する通路を形成したりして、当該スリットや通路を通じて信号圧通路12と第1凹部66aとを連通するように構成してもよい。
【0076】
また、フランジ部54が収容凹部66の段差面66cに当接した状態であっても、第1凹部66aと第2凹部66bとは遮断されないため、信号圧通路12は、第1凹部66a又は第2凹部66bに開口するように、補助ケース部3fに形成されてもよい。このように、本実施形態では、信号圧通路12を形成する位置の設計の自由度が向上する。なお、本実施形態のように、信号圧通路12をケース本体3aの端面に開口するように形成して、補助ケース部3fには信号圧通路12を形成しないようにすることで、信号圧通路12を形成するスペースを補助ケース部3fに確保する必要がない。このため、補助ケース部3fを小型化することができる。
【0077】
以上のように、制御スプール52は、外側スプリング51a及び内側スプリング51bによる付勢力によって斜板8から離れる方向(図中左方向)に付勢される。また、制御スプール52は、補助スプリング61による付勢力と、収容室65に導かれたピストンポンプ100の吐出圧(信号圧)の推力と、によって斜板8に近づく方向に付勢される。つまり、制御スプール52は、外側スプリング51a及び内側スプリング51b、補助スプリング61、及びピストンポンプ100の吐出圧による付勢力が釣り合うように移動する。
【0078】
具体的には、制御スプール52は、第1ポジションと第2ポジションとの2つのポジションの間で移動する。
図1及び
図2は、制御スプール52が第2ポジションである状態を示している。制御スプール52は、
図1及び
図2に示す第2ポジションから、図中右方向へ移動するのに伴い、
図3に示す第1ポジションに切り換わる。
【0079】
第1ポジションは、斜板8の傾転角を小さくしてピストンポンプ100の吐出容量を減少させるポジションである。第1ポジションでは、ケース本体3aの吐出圧通路10と制御圧通路11とが、制御スプール52の第2制御ポート56bを通じて連通し、制御スプール52の制御通路57と制御圧通路11とは連通が遮断される。よって、第1ポジションでは、第1付勢部20の制御圧室23には、ピストンポンプ100の吐出圧が導かれる。
【0080】
第2ポジションは、斜板8の傾転角を大きくしてピストンポンプ100の吐出容量を上昇させるポジションである。第2ポジションでは、制御圧通路11と制御スプール52の制御通路57とが第1制御ポート56aを通じて連通し、吐出圧通路10と制御圧通路11との連通が遮断される。よって、第2ポジションでは、制御圧室23には、タンク圧が導かれる。
【0081】
次に、ピストンポンプ100の作用について説明する。
【0082】
ピストンポンプ100では、レギュレータ50によって、ピストンポンプ100の吐出圧を一定に保つように、ピストンポンプ100の吐出容量(斜板8の傾転角)を制御する馬力制御が行われる。
【0083】
レギュレータ50の制御スプール52は、補助スプリング61による付勢力と収容室65に導かれるピストンポンプ100の吐出圧による付勢力とによって第1ポジションとなるように付勢される。また、制御スプール52は、外側スプリング51a及び内側スプリング51bの付勢力によって第2ポジションとなるように付勢される。
【0084】
ピストンポンプ100の吐出圧及び補助スプリング61による付勢力が外側スプリング51aの付勢力以下に保たれた状態では、レギュレータ50の制御スプール52は第2ポジションに位置し、斜板8の傾転角が最大に保たれる(
図1参照)。
【0085】
ピストンポンプ100の吐出圧は、ピストンポンプ100の吐出圧で駆動する油圧シリンダの負荷が上昇するのに伴い上昇する。斜板8の傾転角が最大に保たれた状態から、ピストンポンプ100の吐出圧が上昇すると、吐出圧及び補助スプリング61による付勢力の合力が外側スプリング51aの付勢力を上回るようになる。これにより、制御スプール52は、第2ポジションから第1ポジションに切り換わる方向(図中右方向)へ移動する。
【0086】
図3に示すように、制御スプール52が第1ポジションまで移動すると、制御圧通路11に吐出圧通路10から吐出圧が導かれるため、制御圧が上昇する。より具体的には、制御スプール52が第1ポジションに移動するにつれて、制御圧通路11に対する制御スプール52の第2制御ポート56bの開口面積(流路面積)が増加する。よって、第1ポジションに切り換わる方向(図中右方向)への制御スプール52の移動量が大きくなるについて、制御圧通路11に導かれる制御圧が上昇する。制御圧通路11に導かれる制御圧が上昇することにより、制御ピストン22(
図1参照)が斜板8に向けて移動し、傾転角が小さくなる方向に斜板8が傾転する。よって、ピストンポンプ100の吐出容量が減少する。
【0087】
傾転角が小さくなる方向に斜板8が傾転すると、第1ばね座31が、外側スプリング51a及び内側スプリング51bを圧縮するように、斜板8に追従して図中左方向へ移動する。言い換えれば、傾転角が小さくなる方向に斜板8が傾転すると、第1ばね座31が、第2ポジションに切り換わる方向へ外側スプリング51a(及び内側スプリング51b)を通じて制御スプール52を付勢するように移動する。これにより、制御スプール52が押し戻されて第2ポジションに切り換わる方向へ移動すると、制御圧通路11を通じて制御圧室23へ供給される制御圧が減少する。制御圧の減少に伴い、制御圧により斜板8に付与される付勢力が、外側スプリング51a(及び内側スプリング51b)から斜板8に付与される付勢力と釣り合うと、制御ピストン22の移動(斜板8の傾転)が停止する。このように、ピストンポンプ100の吐出圧が上昇すると、吐出容量が減少する。
【0088】
反対に、ピストンポンプ100の吐出圧は、ピストンポンプ100の吐出圧で駆動する油圧シリンダの負荷が低下するのに伴い低下する。ピストンポンプ100の吐出圧が低下すると、ピストンポンプ100の吐出圧及び補助スプリング61により制御スプール52に作用する付勢力の合力が外側スプリング51a及び内側スプリング51bによる付勢力を下回るようになる。これにより、制御スプール52は、第1ポジションから第2ポジションへ切り換わる方向へ移動する。制御スプール52が第2ポジションに移動すると、制御圧通路11がタンク圧である制御通路57に連通するため、制御圧は低下する。制御圧が低下することにより、外側スプリング51a及び内側スプリング51bの付勢力を受ける第1ばね座31によって傾転角が大きくなる方向に斜板8が傾転する。
【0089】
傾転角が大きくなる方向に斜板8が傾転すると、外側スプリング51a及び内側スプリング51bの付勢力を受ける第1ばね座31は、外側スプリング51a及び内側スプリング51bが伸長するように、斜板8に追従して図中右方向へ移動する。これにより、外側スプリング51a及び内側スプリング51bから制御スプール52が受ける付勢力が小さくなる。このため、制御スプール52は、収容室65に導かれる吐出圧及び補助スプリング61の付勢力を受けて、外側スプリング51a及び内側スプリング51bを圧縮する方向へ移動する。つまり、制御スプール52は、第1ばね座31に追従するように、第2ポジションから第1ポジションへと切り換わる方向へ移動する。制御スプール52が再び第1ポジションに位置して制御圧が上昇し、制御圧により斜板8に付与される付勢力が、外側スプリング51a(及び内側スプリング51b)から斜板8に付与される付勢力と釣り合うと、制御ピストン22の移動(斜板8の傾転)が停止する。このように、ピストンポンプ100の吐出圧が低下すると、吐出容量が増加する。
【0090】
以上のように、ピストンポンプ100の吐出圧が上昇することによりピストンポンプ100の吐出容量が減少し、吐出圧が低下することにより吐出容量が増加するように馬力制御が行われる。
【0091】
制御スプール52は、ピストンポンプ100の吐出圧(自己圧)による付勢力、外側スプリング51a及び内側スプリング51bが発揮する付勢力、及び補助スプリング61が発揮する付勢力が釣り合うように移動して、制御圧を調整する。これにより、ピストンポンプ100は馬力制御される。つまり、レギュレータ50による馬力制御の特性は、外側スプリング51a及び内側スプリング51bが発揮する付勢力と、補助スプリング61が発揮する付勢力と、自己圧による付勢力と、に影響される。このように、制御スプール52を付勢する構成を複数設けることで、種々の制御特性を実現するための設計の自由度を向上させることができ、より精度よく所望の制御特性を実現できる。
【0092】
以上の実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0093】
ピストンポンプ100では、補助スプリング61による付勢力と、信号圧による付勢力(推力)と、が制御スプール52に作用するため、レギュレータ50によって種々の制御特性を実現しやすくなる。また、収容室65は、補助スプリング61を収容すると共に、信号圧が導かれることによって制御スプール52に推力を発揮する信号圧室としても機能する。このため、信号圧室を収容室65とは別に設ける場合と比較して、装置構成を小型化することができる。よって、ピストンポンプ100では、装置の大型化を抑制しつつ、レギュレータ50によって、種々の制御特性を実現することができる。
【0094】
また、ピストンポンプ100では、補助ケース部3fは、収容凹部66が開口する端面3hがケース本体3aの端面3gに取り付けられる。このため、信号圧通路12をケース本体3aに形成して補助ケース部3fには形成しなくてよいため、補助ケース部3fを小型化できる。また、信号圧通路12は、ケース本体3a及び補助ケース部3fにわたって形成され、収容室65を区画する第1凹部66a又は第2凹部66bに開口するように形成してもよい。このように、ピストンポンプ100によれば、信号圧通路12を収容室65に対してどのようにして接続するかを任意に設定することができるため、設計の自由度が向上する。
【0095】
また、補助ケース部3fにおける収容凹部66の開口は、ケース本体3aの端面3gによって閉塞される構成であるため、収容凹部66の開口を封止するキャップやプラグ等を別途設ける必要がなく、部品点数を削減することができる。
【0096】
次に、
図4を参照して第1実施形態の変形例について説明する。
【0097】
制御スプール52は、スプール収容孔50aに対して、所定の摺動クリアランスをもって摺動する。このため、上記第1実施形態では、収容室65と吐出圧通路10との間で摺動クリアランスを通じた作動油の流れが生じる可能性がある。収容室65と吐出圧通路10とに圧力差があるような場合には、摺動クリアランスを通じた作動油の流れが特に生じやすい。
【0098】
第1実施形態では、このような摺動クリアランスを通じた収容室65と吐出圧通路10との間の作動油の流れを抑制するために、
図4に示すように、作動油を排出するドレン室13を形成してもよい。ドレン室13は、例えば、タンクに接続される。また、ドレン室13は、制御スプール52の軸方向において吐出圧通路10よりもスプール収容孔50aの開口側(
図4中左側)においてスプール収容孔50aの内周に環状に形成される。これにより、摺動クリアランスを通じた収容室65と吐出圧通路10との間で作動油の流れが生じても、ドレン室13を通じて排出することができる。
【0099】
(第2実施形態)
次に、
図5及び
図6を参照して、本発明の第2実施形態に係るピストンポンプ200について、説明する。以下では、上記第1実施形態と異なる点を中心に説明し、上記第1実施形態と同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0100】
上記第1実施形態では、補助スプリング61は、制御スプール52のフランジ部54に直接接触して、制御スプール52に対して付勢力を発揮する。
【0101】
これに対し、第2実施形態では、補助付勢部160は、補助スプリング61の付勢力を制御スプール52に伝達する伝達部としての伝達ピン63と、補助スプリング61の端部が着座する第2着座部(着座部)75と、をさらに有する。つまり、第2実施形態では、補助スプリング61の付勢力は、伝達ピン63を通じて制御スプール52に発揮される。
【0102】
以下、第2実施形態の構成について、具体的に説明する。
【0103】
図5に示すように、第2実施形態では、スプール収容孔50aは、端部凹部50bを通じてケース本体3aの端面3gに開口する。端部凹部50bは、スプール収容孔50aの内径よりも大きい円形穴である。スプール収容孔50aと端部凹部50bとの内径差によって、段差面50cが形成される。
【0104】
制御スプール52のフランジ部54は、端部凹部50bに収容される。制御スプール52は、フランジ部54が段差面50cに当接することで、斜板8へ向けたそれ以上の移動が規制される。つまり、第2実施形態では、段差面50cがストッパ部として機能する。
【0105】
ケース本体3aに対する端部凹部50bの開口は、有底筒状の補助ケース部3fによって閉塞される。第2実施形態では、補助ケース部3fは、収容凹部66が開口する端面とは反対側である底部側の端面3iがケース本体3aの端面3gに取り付けられる。制御スプール52は、補助ケース部3fの底部側の端面3iに当接することで、斜板8から離間する方向へのそれ以上の移動が規制される。
【0106】
補助ケース部3fの収容凹部66は、ケース本体3aに取り付けられる補助ケース部3fの端面3iとは、反対側に開口する。第2実施形態では、収容凹部66は、内径が軸方向に沿って一様な円形穴として形成される。第1実施形態と同様に、収容凹部66は、スプール収容孔50aと同軸に形成される。収容凹部66の開口は、外周に封止部材であるOリング(符示省略)が取り付けられたキャップ90によって封止される。
【0107】
補助ケース部3fには、収容凹部66に開口する信号圧通路12が形成される。よって、収容凹部66によって形成される収容室65には、信号圧通路12を通じて信号圧が導かれる。
【0108】
第1着座部70は、キャップ90に形成されるキャップ孔90a内に収容される。また、キャップ90には、調整機構80が設けられる。調整機構80の雌ねじ孔81は、キャップ90に形成される。ナット83がねじ部材82に螺合してキャップ90に対して締め付けられることで、雌ねじ孔81に対するねじ部材82の螺合位置が固定される。
【0109】
第2着座部75は、補助スプリング61と共に収容室65内に移動自在に収容される。第2着座部75は、制御スプール52の移動に応じて、補助スプリング61の伸縮に伴い収容室65内で移動する。
【0110】
第2着座部75は、補助スプリング61の他端が着座する着座面76aが設けられる円板部76と、円板部76の着座面76aから突出して補助スプリング61を内側から支持する突起部77、を有する。
【0111】
第2着座部75の円板部76の外径は、補助ケース部3fの収容凹部66の内径よりも小さく形成される。よって、第2着座部75の外周と収容室65の内壁(収容凹部66の内周面)との間には、径方向(言い換えれば、制御スプール52の移動方向に対して垂直方向)において隙間が設けられる。これにより、第2着座部75は、収容室65の内壁と干渉せずに制御スプール52の移動方向に沿って収容室65内で移動することができ、補助スプリング61から制御スプール52に伝達される付勢力のロスを抑制することができる。
【0112】
伝達ピン63は、第2着座部75と制御スプール52との間に設けられ、補助ケース部3fの収容凹部66の底部に形成されるピン孔65bに摺動自在に挿入される。ピン孔65bは、収容凹部66と同軸に形成され、一端が収容凹部66に開口する。ピン孔65bの他端は、ケース本体3aの端面に対向する補助ケース部3fの端面に開口する。
【0113】
図6に示すように、伝達ピン63は、略円柱状の部材であり、その両端には、球面状に形成される一対の接触部63a,63bを有する。一方の接触部63aは、球面状の外形面によって第2着座部75に対して接触する。他方の接触部63bは、球面状の外形面によって制御スプール52のフランジ部54の端面に対して接触する。よって、補助スプリング61から第2着座部75及び伝達ピン63によって伝達される力は、制御スプール52のフランジ部54に作用する。
【0114】
次に、
図7を参照して、球面状の接触部63a,63bの作用について説明する。
図7は、第2着座部75の円板部76が傾いた状態で伝達ピン63の一方の接触部63aと接触した状態の接触部分を拡大した模式図である。また、
図7において、破線で示すのは、接触部63aを有さず端部が中心軸に対して垂直な平坦面として形成された比較例としての伝達ピン163と当該伝達ピン163に接触する第2着座部75とである。
図7では、実施形態の伝達ピン63と比較例の伝達ピン163とは、その軸方向における位置(端部の位置)が同じ位置となるように図示している。
【0115】
端部(端面)が平坦面として形成された比較例の伝達ピン163では、第2着座部75の傾きがない状態では、伝達ピン163の平坦面と第2着座部75の円板部76の端面とが面接触する。これに対して、
図7に示すように、比較例では、第2着座部75がわずかに傾いただけでも、伝達ピン163は、端部の外周縁部(平坦面と外周の円筒面との境界部分)において円板部76と接触する。
【0116】
一方、本実施形態では、第2着座部75が傾いても、接触部63aの球面に沿うようにして傾く。このため、本実施形態の伝達ピン63では、円板部76との接触部分は、比較例のように外周部分ではなく、それよりも径方向内側の球面部分で接触する。このため、例えば、
図7に示すようにピン孔65bの開口縁部のある一点を基準点P0として考えると、本実施形態における伝達ピン63と円板部76との接触点P1と基準点P0との距離L1は、比較例における伝達ピン163と円板部76との接触点P2と基準点P0との距離L2よりも小さくなる(L1<L2)。よって、基準点P0回りに作用する力は、比較例よりも本実施形態の伝達ピン63の方が小さい。このため、第2着座部75が収容室65内で傾いたとしても、ピン孔65bに対して押し付けられる力が抑えられ伝達ピン63とピン孔65bとの間の摩擦の増加は比較的小さくすむ。したがって、伝達ピン63をスムーズに移動させることができ、その結果、制御スプール52に対して効率よく力を伝達することができる。
【0117】
伝達ピン63は、一つに限らず、複数設けられてもよい。複数の伝達ピン63が設けられる場合には、制御スプール52が傾かないように力のバランスを取るために、制御スプール52の中心軸に対して等距離や等角度間隔となるように複数の伝達ピン63を配置することが望ましい。
【0118】
以上のような第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、収容室65は、補助スプリング61を収容すると共に、信号圧が導かれて制御スプール52に推力を発揮する信号圧室としても機能する。このため、装置の大型化を抑制しつつ、レギュレータ50による種々の制御特性を実現することができる。
【0119】
また、第2実施形態では、収容室65内の信号圧による付勢力は、伝達ピン63の断面積(受圧面積)に応じて制御スプール52に対して発揮される。つまり、伝達ピン63の断面積によって収容室65内の信号圧による付勢力を調整することができるため、設計自由度が向上し、レギュレータ50によって種々の制御特性を発揮させやすくなる。また、例えば、収容室65内に導かれる信号圧を比較的高圧とし、伝達ピン63の断面積を比較的小さいものとすることで、ピストンポンプ200の大型化を防止しつつ、収容室65内の圧力によって充分な付勢力を発揮させることができる。
【0120】
また、ピストンポンプ200では、制御スプール52の移動方向に垂直な方向において、レギュレータ50の第2着座部75の外周と収容室65の内壁との間に隙間が設けられる。これにより、第2着座部75の移動に対して収容室65の内壁が干渉しないため、補助スプリング61から制御スプール52に伝達される付勢力のロスを抑制することができる。
【0121】
また、第2着座部の外周と収容室の内壁との間に隙間が生じることによって、制御スプールの移動方向に対して傾斜するおそれがある。第2着座部が傾斜することで、ピン孔内で伝達ピンが傾いて伝達ピンと補助ケース部との間の摩擦力が増大したり、伝達ピンから制御スプールへ伝達される力の向きが、制御スプールの移動方向に対して傾斜したりするおそれがある。
【0122】
これに対し、本実施形態では、伝達ピン63は、球面状の接触部63a,63bによって第2着座部75及び制御スプール52に対して接触する。このため、第2着座部75が収容室65内で傾斜しても、伝達ピン63に対しては接触部63aの球面に沿うようにして傾斜することとなり、伝達ピン63をピン孔65bに対して押し付ける力を比較的押さえることができる。したがって、伝達ピン63と補助ケース部3fとの間での補助スプリング61の付勢力のロスを抑制し、補助スプリング61の付勢力を第2着座部75及び伝達ピン63を通じて制御スプール52の移動方向に沿って効率よく伝達することができる。
【0123】
また、ピストンポンプ200では、伝達ピン63から伝達される力はフランジ部54に作用する。フランジ部54は、制御スプール52の移動に対するストッパとして機能するために制御スプール52の本体部53よりも外径が大きく断面積が大きいため、受圧面積を確保しやすい。このため、伝達ピン63を大径化したり、複数の伝達ピン63を設けたりすることが容易となるため、信号圧の受圧面積を大きくして信号圧による推力を確保しやすい。よって、レギュレータ50の馬力制御の制御特性の自由度をより向上させることができる。
【0124】
また、ピストンポンプ200では、収容室65の信号圧によって摺動する部分は、伝達ピン63とピン孔65bとの間の一箇所だけであるため、収容室65からの作動油の漏れを比較的抑制することができる。
【0125】
(第3実施形態)
次に、
図8を参照して、本発明の第3実施形態に係るピストンポンプ300ついて、説明する。以下では、上記第2実施形態と異なる点を中心に説明し、上記第2実施形態と同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。具体的には、第3実施形態は、補助付勢部260の構成が第2実施形態の補助付勢部160の構成と異なるのみであり、その他の構成は同様である。
【0126】
第3実施形態では、
図8に示すように、補助付勢部260は、一対の伝達ピン63を備える。また、第3実施形態では、補助付勢部260は、収容室65に導かれる信号圧とは異なる第2の信号圧が導かれる信号圧室67と、第2の信号圧が信号圧室67に導かれて発揮される推力を制御スプール52に伝達する推力伝達部としての第2伝達ピン68と、をさらに有する。
【0127】
一対の伝達ピン63は、制御スプール52の中心軸に対して対称となる位置に設けられる。補助ケース部3fには、一対の伝達ピン63の位置に対応して、ピン孔65bが形成される。
【0128】
ケース本体3aに対向する補助ケース部3fの端面には、信号圧室67を形成するため挿入穴65cが形成される。挿入穴65cには、第2伝達ピン68が摺動自在に挿入される。挿入穴65cは、有底の円形穴であり、挿入穴65cの底部と伝達ピン63の端部との間に信号圧室67が形成される。挿入穴65cは、スプール収容孔50aと同軸に形成され、スプール収容孔50aの端部凹部50bに臨んでいる。
【0129】
第2伝達ピン68の軸方向に沿った長さは、挿入穴65cの深さ(軸方向に沿った寸法)よりも短く形成される。これにより、制御スプール52は補助ケース部3fの端面に当接するまで移動することができ、制御スプール52が補助ケース部3fの端面に当接した状態でも第2伝達ピン68と挿入穴65cの底部との間に信号圧室67が形成される。
【0130】
また、補助ケース部3fには、信号圧室67に信号圧を導く信号圧通路12が形成される。第3実施形態では、収容室65に導かれる信号圧は、ピストンポンプ300と共に動力源によって駆動される他の油圧ポンプから吐出される外部ポンプ圧であり、信号圧室67に導かれる第2の信号圧は、ピストンポンプ300の吐出圧(自己圧)である。信号圧室67に第2の信号圧が導かれることにより、第2の信号圧に基づく推力が第2伝達ピン68を通じて制御スプール52に作用する。
【0131】
第3実施形態では、第2実施形態と同様に、制御スプール52は、外側スプリング51a及び内側スプリング51bによる付勢力によって斜板8から離れる方向(図中左方向)に付勢される。また、制御スプール52は、補助スプリング61による付勢力と、収容室65に導かれた外部ポンプ圧(信号圧)による推力と、第2信号圧室に導かれたピストンポンプ100の吐出圧(第2の信号圧)による推力と、によって斜板8に近づく方向に付勢される。つまり、制御スプール52は、外側スプリング51a及び内側スプリング51b、補助スプリング61、ピストンポンプ300の吐出圧、及び外部ポンプ圧による付勢力が釣り合うように移動する。
【0132】
第2実施形態と比較すると、第3実施形態では、信号圧としてピストンポンプ300の吐出圧及び外部ポンプ圧がそれぞれ制御スプール52を付勢する推力を発揮するため、より複雑な馬力制御特性を実現することができる。第3実施形態では、ピストンポンプ300の吐出圧が導かれる第2実施形態に加え、外部ポンプ圧によっても制御スプール52が斜板8に向けて付勢される。このように、自己圧による推力が外部ポンプ圧に補われるため、第3実施形態では、外部ポンプ圧の大きさの分だけ、第2実施形態よりも、馬力制御が実行される自己圧が小さい。このように、第3実施形態では、第2実施形態よりも制御スプール52を付勢する機構をさらに多く備えるため、馬力制御特性の設計の自由度が向上する。
【0133】
なお、第3実施形態では、伝達ピン63の数は、一対に限定されず、単数でもよいし、三以上でもよい。また、第2伝達ピン68も、単数に限られず、複数でもよい。
【0134】
また、第3実施形態では、収容室65に自己圧が導かれ、信号圧室67に外部ポンプ圧が導かれてもよい。また、収容室65に導かれる信号圧及び信号圧室67に導かれる第2の信号圧は、上記実施形態のものに限定されず、その他の圧力であってもよい。例えば、信号圧室67に導かれる第2の信号圧は、自己圧又は外部ポンプ圧をソレノイドバルブによって調圧した圧力であってもよい。また、第2の信号圧は、ON-OFFバルブによって信号圧室67への供給と遮断とを切り換えるように構成してもよい。
【0135】
(第4実施形態)
次に、
図9を参照して、本発明の第4実施形態に係るピストンポンプ400ついて、説明する。以下では、上記第1実施形態と異なる点を中心に説明し、上記第1実施形態と同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0136】
上記第1実施形態では、レギュレータ50は、ピストンポンプ100を駆動する駆動源の負荷に応じて制御圧を調整する馬力制御を行う。具体的には、ピストンポンプ100の自己圧が、レギュレータ50の収容室65に信号圧としてそのまま導かれる。
【0137】
これに対し、第4実施形態に係るピストンポンプ400では、
図9に示すように、レギュレータ50には、例えばギヤポンプなどの油圧源103からの圧力を電磁比例減圧弁101によって調整することで生成された圧力が信号圧として導かれる。
【0138】
電磁比例減圧弁101は、例えば、作業者の操作に応じてコントローラ102から出力される電気信号によって開度が調整される。このような構成とすることで、電気信号によって斜板8の傾転角制御をすることが可能であるため、作業者の操作に応じて任意の制御特性を実現させることができる。つまり、第4実施形態に係るピストンポンプ400は、馬力制御を行うものではなく、本発明に係るピストンポンプは、馬力制御が行われるものに限定されない。
【0139】
第4実施形態に係るピストンポンプ400では、
図9に示すように、付勢部材は、単一のスプリング51cによって構成されることが好ましい。これによれば、スプリング51cの線形特性に対応させて電磁比例減圧弁101を比例制御することで、制御を容易に行うことができる。
【0140】
また、第4実施形態では、油圧源103から供給される圧力と、ピストンポンプ400の自己圧と、のうち高圧の圧力を選択して吐出圧通路10に導く高圧選択弁104が設けられる。これにより、例えば、ピストンポンプ400の始動時など、ピストンポンプ400の自己圧が比較的低圧の状態であっても、油圧源103によって所定の圧力が吐出圧通路10に導かれるため、斜板8の傾転角を制御することができる。
【0141】
なお、上記第1実施形態と同様に、高圧選択弁104を設けず、ピストンポンプ400の自己圧、またはギヤポンプなどの油圧源103の圧力を単独で吐出圧通路10に導いてもよい。また、上記第1から第3実施形態に対して油圧源103及び高圧選択弁104を適用してもよい。
【0142】
また、信号圧を電磁比例減圧弁101によって生成する第4実施形態は、第1、第2、及び第3実施形態と同様に馬力制御を行うものでもよい。具体的に説明すると、ピストンポンプ400の駆動源の負荷に応じて電磁比例減圧弁101の開度を調整して、油圧源103の圧力又は自己圧を減圧して信号圧を生成し、当該信号圧を収容室65に導くことで、馬力制御を行うことができる。例えば、駆動源がエンジンである場合、コントローラ102がエンジントルクやエンジン回転数などから駆動源の負荷を算出し、当該負荷に基づいて電磁比例減圧弁101の開度を調整して信号圧を生成し、収容室65に導いてもよい。また、例えば、駆動源が電動モータである場合、コントローラ102が電動モータのトルク又は回転数から駆動源の負荷を算出し、当該負荷に基づいて電磁比例減圧弁101の開度を調整して信号圧を生成し、収容室65に導いてもよい。駆動源の負荷に応じて電磁比例減圧弁101の開度を調整して信号圧を生成する構成とすることで、馬力制御を電気的に制御することが可能となる。
【0143】
このように、電磁比例減圧弁101によって信号圧を生成する構成とすることで、電気的制御によって馬力制御を行うことも可能であるし、作業者の操作など駆動源の負荷以外の信号に基づくことで馬力制御以外の斜板の傾転角制御を行うことも可能である。例えば、第2実施形態及び第3実施形態において、馬力制御ではなく電磁比例減圧弁101によって斜板の傾転角を制御するように構成してもよい。また、第3実施形態では、第2の信号圧を、駆動源の負荷に基づいて電磁比例減圧弁101によって生成された信号圧としてもよい。
【0144】
以下、本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0145】
ピストンポンプ100,200,300,400は、シャフト1と共に回転するシリンダブロック2と、シリンダブロック2に形成されシャフト1の周方向に所定の間隔をもって配置される複数のシリンダ2bと、シリンダ2b内に摺動自在に挿入されシリンダ2bの内部に容積室6を区画するピストン5と、容積室6を拡縮するようにピストン5を往復動させる傾転可能な斜板8と、供給される制御圧に応じて斜板8を付勢する第1付勢部20と、第1付勢部20に抗するように斜板8を付勢する第2付勢部30と、第1付勢部20に導かれる制御圧を制御するレギュレータ50と、を備え、レギュレータ50は、斜板8の傾転に追従して伸縮する付勢部材(外側スプリング51a及び内側スプリング51b)と、付勢部材の付勢力に応じて移動して、制御圧を調整する制御スプール52と、付勢部材の付勢力に抗するように制御スプール52に対して付勢力を発揮する補助付勢部材(補助スプリング61)と、補助付勢部材を収容する収容室65と、を有し、収容室65には、付勢部材の付勢力に抗するように制御スプール52に対して推力を発揮する信号圧が導かれる。
【0146】
この構成では、制御スプール52を付勢する補助付勢部材が収容される収容室65に信号圧が導かれることで、信号圧によっても制御スプール52に推力が発揮される。収容室65が、補助付勢部材を収容するのに加えて、信号圧によって推力を発揮するための圧力室としても機能するため、収容室65と圧力室とを別々に設ける場合と比較して小型化できる。よって、制御スプール52を付勢する構成を複数設けたとしても、装置の大型化を抑制できる。したがって、ピストンポンプ100,200,300の大型化を抑制しつつレギュレータ50による制御特性の自由度を向上させることができる。
【0147】
また、第1実施形態に係るピストンポンプ100,400では、補助付勢部材は、制御スプール52に対して直接接触して付勢力を発揮する。
【0148】
この構成では、構成を簡素化し、部品点数を削減することができる。
【0149】
また、第2、第3実施形態に係るピストンポンプ200,300では、レギュレータ50は、補助付勢部材の一端が着座し制御スプール52の移動方向に沿って移動自在に収容室65内に設けられる着座部(第2着座部75)と、着座部と制御スプール52との間に設けられ補助付勢部材の付勢力を制御スプール52に伝達する伝達部(伝達ピン63)と、をさらに有する。
【0150】
この構成では、収容室65内の信号圧による付勢力は、伝達部の断面積(受圧面積)に応じて制御スプール52に対して発揮される。つまり、伝達部の断面積によって収容室65内の信号圧による付勢力を調整することができるため、設計自由度が向上し、レギュレータ50によって種々の制御特性を発揮させやすくなる。
【0151】
また、第2、第3実施形態に係るピストンポンプ200,300では、着座部は、制御スプール52の移動方向に垂直な方向において収容室65の内壁との間に隙間を空けて設けられる。
【0152】
この構成では、着座部が収容室65の内壁と接触せずに収容室65内で移動するため、着座部と収容室65との間で摩擦力が生じて制御特性に影響することを抑制できる。
【0153】
また、第2、第3実施形態に係るピストンポンプ200,300では、伝達部は、球面状に形成されて着座部に接触する接触部63aを有する。
【0154】
この構成では、着座部と収容室65との間に隙間が設けられることで着座部が収容室65内で傾いたとしても、着座部に対する伝達部の接触部63aは球面状であるため、制御スプール52の移動方向における伝達ピン63の移動が妨げられにくくなる。
【0155】
また、第3実施形態に係るピストンポンプ300では、補助付勢部260は、収容室65に導かれる信号圧とは異なる第2の信号圧が導かれる信号圧室67と、第2の信号圧が信号圧室67に導かれて発揮される推力を制御スプール52に伝達する推力伝達部(第2伝達ピン68)と、をさらに備える。
【0156】
この構成では、補助付勢部材の付勢力及び信号圧による推力に加えて、第2の信号圧による推力が制御スプール52に対して作用する。このため、より多様な制御特性を実現することができる。
【0157】
また、ピストンポンプ100,200,300,400は、制御スプール52が挿入されるスプール収容孔50aが設けられるケース3を有し、制御スプール52は、スプール収容孔50aに摺接する本体部53と、本体部53の端部に設けられ本体部53よりも大きな外径で形成されるフランジ部54と、を有し、ケース3に形成されるストッパ部(ケース本体3aの端面3g、段差面50c)に対してフランジ部54が制御スプール52の移動に応じて当接することで、補助付勢部材が発揮する付勢力に沿った制御スプール52のそれ以上の移動が規制され、補助付勢部材の付勢力及び信号圧による推力は、フランジ部54に作用するように構成される。
【0158】
この構成によれば、制御スプール52では、相対的に断面積が大きいフランジ部54が本体部53の端部に設けられる。制御スプール52に作用する力がフランジ部54に作用するように構成することで、制御スプール52が力を受ける面積を確保することができる。よって、制御スプール52に対して複数の構成によって力を作用させやすくなり、より多様な馬力制御の制御特性を実現することができる。
【0159】
また、ピストンポンプ400は、信号圧が、電磁比例減圧弁101によって生成される。
【0160】
この構成では、電気信号によって斜板の傾転角制御を行うことができる。
【0161】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0162】
上記第1実施形態では、制御スプール52のフランジ部54は、補助ケース部3fの収容凹部66の第1凹部66aに収容され、ケース本体3aの端面3gが制御スプール52の移動を規制するストッパ部として機能する。第2、第3実施形態では、フランジ部54は、ケース本体3aの端部凹部50bに収容され、端部凹部50bとスプール収容孔50aとの間の段差面50cがストッパ部として機能する。これに対し、第1実施形態において、第2、第3実施形態のように、ケース本体3aに端部凹部50b及び段差面50cを設けてもよい。また、第2、第3実施形態において、第1実施形態の第1凹部66aのように、ケース本体3aに対向する端面に凹部を設けてフランジ部54を収容するようにしてもよい。このように、フランジ部54を収容する凹部及びフランジ部54が当接するストッパ部は、ケース3に設けられるものであればよく、ケース本体3aに設けられてもよいし、補助ケース部3fに設けられてもよい。また、ケース本体3a及び補助ケース部3fの両方にフランジ部54を収容する凹部を設けてもよい。
【0163】
また、第2、第3実施形態では、伝達ピン63及び第2伝達ピン68は、球面状の接触部63a,63b,68aを有する。球面状の接触部63a,63b,68aを有する構成は、必須のものではなく、伝達ピン63及び第2伝達ピン68は、第2着座部75や制御スプール52のフランジ部54に対して、平坦面によって面接触してもよい。
【0164】
また、第2、第3実施形態では、第2着座部75の外周と収容室65の内壁(収容凹部66の内周)との間には、制御スプール52の径方向における隙間が設けられる。これに対し、第2着座部75は、収容凹部66の内周に対して摺接するものでもよい。この場合、収容室65は、第2着座部75によって、2つの部屋に仕切られる。この2つの部屋は、第2着座部75に形成される連通孔を通じて互いに連通させたり、信号圧通路12から信号圧をそれぞれ導いたりすることによって、互いに同じ油圧が導かれてもよい。また、第2着座部75によって収容室65内に仕切られる二つの部屋には、互いに異なる信号圧が導かれてもよい。この場合には、2つの部屋のうち第2着座部75と収容凹部66の底部との間に仕切られる部屋(伝達ピン63が収容される部屋)の圧力をもう一方の部屋に対して相対的に低い圧力とすればよい。このように構成することで、第2着座部75が収容凹部66に対して摺接する場合であっても、補助スプリング61の付勢力を第2着座部75及び伝達ピン63を通じて制御スプール52に伝達することができる。
【符号の説明】
【0165】
100,200,300,400…ピストンポンプ(液圧回転機)、1…シャフト(駆動軸)、2…シリンダブロック、2b…シリンダ、3…ケース、3g…端面(ストッパ部)、5…ピストン、6…容積室、8…斜板、20…第1付勢部、30…第2付勢部、50…レギュレータ、50a…スプール収容孔、50c…段差部(ストッパ部)、51a…外側スプリング(付勢部材)、51b…内側スプリング(付勢部材)、52…制御スプール、53…本体部、54…フランジ部、61…補助スプリング(補助付勢部材)、63…伝達ピン(伝達部)、63a…接触部、65…収容室、67…信号圧室、68…第2伝達ピン(推力伝達部)、75…第2着座部(着座部)、101…電磁比例減圧弁