(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023072382
(43)【公開日】2023-05-24
(54)【発明の名称】静止誘導機器
(51)【国際特許分類】
H01F 30/10 20060101AFI20230517BHJP
H01F 27/25 20060101ALI20230517BHJP
H01F 41/12 20060101ALI20230517BHJP
H01F 27/32 20060101ALI20230517BHJP
【FI】
H01F30/10 E
H01F30/10 A
H01F30/10 C
H01F27/25
H01F41/12 F
H01F27/32 150
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021184908
(22)【出願日】2021-11-12
(71)【出願人】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】田中 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】栗田 直幸
(72)【発明者】
【氏名】中ノ上 賢治
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 孝平
【テーマコード(参考)】
5E044
【Fターム(参考)】
5E044CA09
(57)【要約】
【課題】
鉄心破損防止、コイル絶縁性能の向上、巻線作業性向上、端末線取付け作業容易化、端末線と鉄心との接触回避に優れた静止誘導機器を提供する。
【解決手段】
鉄心と、前記鉄心にコイルを巻き付けるためのボビンとを有する静止誘導機器であって、前記ボビンは、前記鉄心の脚部を同芯とし、内側コイルを巻き付ける内側ボビンと、前記鉄心の脚部と前記内側ボビンを同芯とし、前記内側ボビンの外側で、外側コイルを巻き付ける際に、前記内側ボビンと独立して自転する外側ボビンと、を有する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄心と、前記鉄心にコイルを巻き付けるためのボビンとを有する静止誘導機器であって、
前記ボビンは、
前記鉄心の脚部を同芯とし、内側コイルを巻き付ける内側ボビンと、
前記鉄心の脚部と前記内側ボビンを同芯とし、前記内側ボビンの外側で、外側コイルを巻き付ける際に、前記内側ボビンと独立して自転する外側ボビンと、を有する
静止誘導機器。
【請求項2】
鉄心と、前記鉄心にコイルを巻き付けるためのボビンとを有する静止誘導機器であって、
前記ボビンは、
前記鉄心の脚部を同芯とする内側ボビンと、
前記鉄心の脚部と前記内側ボビンを同芯とし、前記内側ボビンの外側に配置される外側ボビンと、
前記内側ボビンに対し前記外側ボビンを摺動可能とする第1の摺動部材と、を有する
静止誘導機器。
【請求項3】
請求項1及び2の何れに記載の静止誘導機器において、
前記鉄心の脚部に装着され、前記内側ボビンと前記鉄心の脚部の間に配置される円筒巻枠を有する
静止誘導機器。
【請求項4】
請求項1及び2の何れかに記載の静止誘導機器において、
前記鉄心は、箔帯のアモルファスあるいはナノ結晶である
静止誘導機器。
【請求項5】
請求項3に記載の静止誘導機器において、
前記円筒巻枠を前記鉄心に固定し、前記円筒巻枠に対し前記内側ボビンを摺動可能とする第2の摺動部材を有する
静止誘導機器。
【請求項6】
請求項5に記載の静止誘導機器において、
前記円筒巻枠に対する前記内側ボビンの自転を止める第1の自転止め部材を有する
静止誘導機器。
【請求項7】
請求項6に記載の静止誘導機器において、
前記内側ボビンに対し、前記外側ボビンを自転止めする第2の自転止め部材を有する
静止誘導機器。
【請求項8】
請求項7に記載の静止誘導機器において、
前記第1の自転止め部材は、前記円筒巻枠と前記内側ボビンの穴に係合するU字ピンであり、
前記第2の自転止め部材は、前記内側ボビンと前記外側ボビンの穴に係合するU字ピンである
静止誘導機器。
【請求項9】
請求項1及び2の何れに記載の静止誘導機器において、
前記内側ボビンは、前記内側ボビンに巻線された内側コイルの巻始め端末線を収納する第1の端末線収納スペースを有する
静止誘導機器。
【請求項10】
請求項9の何れに記載の静止誘導機器において、
前記外側ボビンは、前記内側ボビンに巻線された内側コイルの巻終わり端末線を収納する第2の端末線収納スペースを有する
静止誘導機器。
【請求項11】
鉄心と、前記鉄心にコイルを巻き付けるためのボビンとを有する静止誘導機器であって、
前記ボビンは、前記鉄心の脚部を同芯とする内側ボビンと、前記鉄心の脚部と前記内側ボビンを同芯とし、前記内側ボビンの外側に配置される外側ボビンと、
前記鉄心の脚部に装着され、前記内側ボビンと前記鉄心の脚部の間に配置される円筒巻枠と、
前記円筒巻枠を前記鉄心に固定し、前記内側ボビンに対し前記外側ボビンを摺動可能とする第2の摺動部材と、
前記内側ボビンに対してコイルの巻線が完了した後、前記円筒巻枠に対し、前記内側ボビンを自転止めする第1の自転止め部材と、
前記内側ボビンの外側であって、前記外側ボビンを前記内側ボビンに対し自転可能に保持する第1の摺動部材と、
前記外側ボビンは、前記第1の摺動部材を介して、前記内側ボビンの外周に自転可能に取り付けられ、
前記外側ボビンに対してコイルの巻線が完了した後、前記内側ボビンに対し、前記外側ボビンを自転止めする第2の自転止め部材と、を有し、
前内側ボビンは、前記内側ボビンに巻線されたコイルの巻始め端末線を収納する第1の端末線収納スペースを有し、
前記外側ボビンは、前記内側ボビンに巻線されたコイルの巻終わり端末線を収納する第2の端末線収納スペースを有する
静止誘導機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変圧器およびリアクトル等の静止誘導機器に関する。
【背景技術】
【0002】
変圧器、リアクトル等の静止誘導機器は、環状に閉じた鉄心の周囲に巻線が巻回され、電磁誘導現象を利用して電圧変換、高調波信号のフィルタリング等の機能を実現する。主に電力系統中に接続される送配電、受配電用変圧器の鉄心は、方向性電磁鋼板、鉄を主成分とするアモルファス合金等の薄板状の軟磁性材料を複数枚積層、成形して構成される。
【0003】
第1の例として、
図1(a)に薄板状軟磁性材料からなる巻鉄心を用いた静止誘導機器の一般的な組立工程の概略図を示す。まず、所望の長さに切断した薄板状軟磁性材料1a(以下、軟磁性材料1a)を、鉛直方向に鉄心の設計厚さに相当する枚数分積層する。次に、軟磁性材料1aを積層した鉄心1を折り曲げて逆U字状とする。
【0004】
続いて、鉄心1の両端同士を接合し、ラップ接合部3を有する略矩形の閉磁路鉄心に成形する。この段階の軟磁性材料には鋳造時の応力が残留しており、さらに折り曲げ加工により、個々の軟磁性材料1aが本来持つ磁気性能が損なわれている。そこで鉄心1の磁路に沿って直流磁界2を作用させながら焼鈍処理を施し、残留応力を緩和して磁気性能を回復させる。
【0005】
焼鈍処理後、ラップ接合部3を開放して鉄心を再び逆U字状に開いた状態に戻し、開放端をあらかじめ製作しておいた複数の連続巻きコイル4に挿入する。
【0006】
最後に、巻線の下部から飛び出した薄帯の開放部を再びラップ接合して磁路を閉じることで、ラップ接合部3を有する巻鉄心を用いた静止誘導機器が完成する。このように、一般的な組立工程ではラップ接合作業を2回繰り返す必要がある。
【0007】
これに対して、
図1(b)に示したのは、鉄心に対してボビンを装着、回転させて巻線する工程を適用した組立工程の概略図である。この場合、ノーカット磁心の鉄心1にラップ接合部3は不要なので、薄板状軟磁性材料をロール状に巻いた母材1bから、巻き芯1cに軟磁性材料を引き出しながら巻回し、略矩形の鉄心1を成形する。
【0008】
次に、該鉄心1の磁路に沿って直流磁界2を作用させながら焼鈍処理を施す。
【0009】
続いて、鉄心1に対してボビンを装着、回転させてコイル4を巻線することで静止誘導機器が完成する。よって、後巻きコイルの巻線構造、巻線工程を適用することで、静止誘導機器の組立工程を短縮することができる。
【0010】
ここで後巻きコイルの背景技術としては、特開2015-141903号公報(特許文献1)がある。特許文献1では、ノーカット磁心を用いて、安定な巻線を行うことができ、放熱性の改善が可能なコイル部品を提供する、ことを目的とする。そして、ノーカット磁心20と、ノーカット磁心を収容する環状空間を有するケースと、分割片を組み合わせて筒状を成し、ケースの一部を囲う環状内周部を有し、ケース上で回転可能なコイル巻枠30a30bと、コイル巻枠に敷設されたコイルを備え、ケースはその外表面に、コイル巻枠の環状内周部を当接させ滑らせる複数の滑り部を備えたコイル部品が記載されている(要約参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献1の後巻きコイルを、静止誘導機器に適用した場合、断面が矩形状のアモルファス鉄心が支持部材となり、鉄心に装着したボビンの摺動性が悪いため、鉄心の角部に巻線の応力が集中し、鉄心が破損する課題がある。アモルファスは、鉄損(無負荷損失)を約3分の1~4分の1に低減できる一方、素材が非常に薄く脆いので組立作業性、支持構造上制約があり、鉄心の角部に巻線の応力が集中すると、鉄心が破損する課題がある。
【0013】
また、特許文献1では、低圧コイルと高圧コイルを同一ボビンで巻線するため、巻始め、巻終わりのコイルの端末線の取付け作業が困難であり、巻線作業性が悪化し、巻線作業が長時間になる課題やコイルの絶縁性能を確保することが困難となる課題がある。
【0014】
さらに、ノーカット磁心の鉄心では、取り付けた端末線が巻線時に鉄心と接触することも回避する必要がある。
【0015】
そこで、本発明は、鉄心破損防止、コイル絶縁性能の向上、巻線作業性向上、端末線取付け作業容易化、端末線と鉄心との接触回避に優れた静止誘導機器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するために、例えば特許請求の範囲に記載の構成を採用する。
【0017】
本発明は、上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、鉄心と、前記鉄心にコイルを巻き付けるためのボビンとを有する静止誘導機器であって、前記ボビンは、前記鉄心の脚部を同芯とし、内側コイルを巻き付ける内側ボビンと、前記鉄心の脚部と前記内側ボビンを同芯とし、前記内側ボビンの外側で、外側コイルを巻き付ける際に、前記内側ボビンと独立して自転する外側ボビンと、を有する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、静止誘導機器に用いる後巻きコイルにおいて、鉄心破損防止、コイル絶縁性能の向上、巻線作業性向上、端末線取付け作業容易化、端末線と鉄心との接触回避を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】従来の静止誘導機器の組立工程と、後巻きコイルを適用した場合の組立工程の概略図である。
【
図2】後巻きコイルの全体構造の一例を説明する斜視図である。
【
図3】後巻きコイルの組立途中工程(円筒巻枠と分割ボビンを鉄心に組み付ける方法)の一例を説明する断面図である。
【
図4】後巻きコイル構造の一例を説明する断面図である。
【
図5】後巻きコイルの巻線作業工程の概略(低圧コイル巻線、端末線取付け作業、高圧コイル巻線)の一例を説明する斜視図である。
【
図6】後巻きコイルの回り止め工程の一例を説明する断面図である。
【
図7】後巻きコイルの組立工程の一例を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、各実施例を図面を用いて説明する。
【0021】
以下の説明では、符号の添え字のアルファベットは、同じ符号の各個体の区別のために付されている。同じ構成が複数あり、それらの構成を区別する必要がない場合には、複数の構成を総称して添え字を省略して記載する。
【0022】
各図に示した内容は、発明を説明する一例であって、図面に開示した内容に限定されるものではない。
【実施例0023】
実施例1では、静止誘導機器に用いる後巻きコイルにおいて、鉄心破損防止、コイル絶縁性能の向上、巻線作業性向上、静止誘導機器の組み立て性向上に優れた静止誘導機器の例を説明する。
【0024】
図2は、後巻きコイルの全体構造を説明する斜視図である。鉄心1は、箔帯のアモルファスあるいはナノ結晶で構成され、その断面が矩形状となる。鉄心1の脚部の4辺に、1例として円筒巻枠5を組み付け、低圧コイル(内側コイル)8と高圧コイル(外側コイル)11を、それぞれ低圧用分割ボビン7、高圧用分割ボビン10により鉄心1に巻き付けた状態を示す。
【0025】
図3は、後巻きコイルの組立途中工程(円筒巻枠と分割ボビンを鉄心に組み付ける方法)を説明する断面図である。円筒巻枠5は、
図3に示すように、4つの部材で構成されている。
【0026】
低圧コイル8と高圧コイル11はそれぞれ低圧用分割ボビン7と高圧用分割ボビン10に巻きつけられていることから、1つのボビンに両コイルを巻き付けたものと比較して、コイルの絶縁性能の向上が期待できる。低圧用分割ボビン7と高圧用分割ボビン10は、鉄心1の脚部を同芯とし、低圧用分割ボビン7を内側ボビン、低圧用分割ボビン7の外側に配置される高圧用分割ボビン10を外側ボビンとして組み立てられる。
【0027】
尚、
図3においては、円筒巻枠5が4つの部材で構成されている例を示したが、それより少ない部材、あるいは多い部材で構成しても良い。また、内側ボビンを低圧用コイル8,外側ボビンを高圧用コイル11に巻き付ける構成を示したが、内側ボビンと外側ボビンに巻き付けられるコイルはこれに限定されてない。
【0028】
図3は、鉄心1の脚部の4辺に、1例として4つの部材で構成された円筒巻枠5の組み付け方と、低圧用分割ボビン7の組み付け方を示す。円筒巻枠5は断面が三日月形状の巻枠5a、5bを2個ずつ鉄心の脚部の4辺にあてがうことで、円筒形状を構成するものである。摺動部材を兼ねた固定部材の1例として、テフロンテープ(登録商標)があり、三日月形状巻枠5a、5bの周囲に巻き付けることで、円筒巻枠5を鉄心1に固定する。尚、鉄心1に対して円筒巻枠5の固定は、テフロンテープに加えて、鉄心1と円筒巻枠5を接着する接着剤や、テフロンテープ以外の強力テープによって固定しても良い。但し、何れの固定方法の場合であっても、テフロンテープは、少なくとも低圧用分割ボビン7に対して低圧コイルを巻き付ける際に、円筒巻枠5の外側において、低圧用分割ボビン7の内側に当接し、円筒巻枠5に対して低圧用分割ボビン7を、摺動可能で自転可能に保持するように設けられ、摺動部材として機能する。
【0029】
図3に示すように、円筒巻枠5に、2分割された低圧用分割ボビン7を装着する。低圧用分割ボビン7は、低圧用分割ボビン7a、7bから構成され、一方の低圧用分割ボビン7aの突合せ面にピン7a1を備え、他方の低圧用分割ボビン7bの突合せ面の穴7b1にピン7a1を嵌合することで、一つの低圧用分割ボビン7となる。ピン7a1と穴7b1が嵌合することでボビンの分解を防ぎ、分割ボビンの組立を容易にすることができる。尚、
図3では、ピン7a1、穴7b1の数を2つ示しているが、穴とピンの数はこれに限るものではない。ここで、鉄心1の脚部4辺に円筒巻枠5を装着することにより、鉄心1の角部の4隅において、巻線の応力が集中することを防止し、鉄心の破損を防止することができる。
【0030】
図4は、後巻きコイルの断面構造を示す。ボビンは、内側から低圧用分割ボビン7、高圧用分割ボビン10の二種類がある。低圧用分割ボビン7と高圧用分割ボビン10のそれぞれに対するコイルの巻線は独立して行われる。そのため、低圧コイル8を低圧用分割ボビン7に巻き付ける際には、鉄心1に対して低圧用分割ボビン7が自転可能な状態で保持する。また、高圧コイル11を高圧用分割ボビン10に巻き付ける際には、低圧用分割ボビン7に対して高圧用分割ボビン10が自転可能(低圧用分割ボビン7に対して独立して回転可能)な状態で保持する。これにより、高圧コイルを高圧用分割ボビンに巻き付ける際に、低圧用分割ボビン7の巻線径だけ、鉄心1からの径が大きくなるため、鉄心の角部に巻線の応力の集中を緩和することができ、巻線作業が容易となる。高圧コイル11を高圧用分割ボビン10に巻き付ける際には、低圧用分割ボビン7を鉄心1に固定した状態とすることが好ましい。
【0031】
図4に示す通り、円筒巻枠5の周囲には摺動部材6が巻き付けられている。摺動部材6の1例はテフロンテープであり、固定部材として機能も備えている。摺動部材6は、円筒巻枠5に対し、低圧用分割ボビン7を自転可能に保持する。低圧用分割ボビン7は摺動部材6を介して円筒巻枠5に組み付けられていることから、滑らかに回転することができ、低圧コイル8の巻線作業が容易となる。さらに、低圧用分割ボビン7の鍔71の周囲にも摺動部材9を取り付けた。高圧用分割ボビン10は、低圧用分割ボビン7に対して摺動部材9を介して自転可能に取り付けられることから、滑らかに回転することができる。このため高圧コイル11の巻線作業も容易となる。
箔状の導体(コイル)と端末線(バスバー)の接合は、例えば、TIG溶接、レーザ溶接、電子ビーム溶接、はんだ付け、ろう付けなどを用いて接合することができる。端末線15aは、低圧用分割ボビン7に低圧コイル8を巻き付ける際に、低圧コイル8の巻き付け時に鉄心1に損傷を与えないよう、端末線収納スペース(後述する)に格納される。
低圧コイル8の低圧用分割ボビン7に対する巻線が終了すると、低圧用分割ボビン7を自転止めして固定した状態で、高圧用分割ボビン10に対する高圧コイル11の巻線を行う。固定方法については後述するが、高圧コイル11の巻線時に、低圧用分割ボビン7が回転しないため、高圧コイルに巻始め端末線の取り付けが容易となる。また、高圧コイルを高圧用分割ボビンに巻き付ける際に、低圧用分割ボビン7の巻線径だけ、鉄心1からの径が大きくなるため、鉄心の角部に巻線の応力の集中を緩和することができる。
一方、高圧用分割ボビン10の固定方法として、高圧コイル11の巻線が完了した後、U字形状のピン12bを、低圧用分割ボビン7と高圧用分割ボビン10の穴に差し込むことで、高圧用分割ボビン10の低圧用分割ボビン7に対する自転を止めることがきる。これにより、高圧コイル11の巻終わり端末線の取付け作業が容易になるとともに、最終製品として必須となるコイルの回り止めを実現することができる。
低圧コイルが巻き終わった後、高圧コイルが巻線される際には、低圧用分割ボビン7は、鉄心1に対して、回転しないよう自転止めされるため、低圧コイルの巻終わり端末線の取付け作業が容易となる。また、高圧コイルを高圧用分割ボビン10に巻き付ける際に、低圧用分割ボビン7に低圧コイルが巻線され、鉄心1からの径が大きくなるため、鉄心1の角部に作用する巻線時の応力集中を更に緩和することができる。
また、高圧用分割ボビン10の巻き芯部に空洞(端末線収納スペース13b)を設けた。これにより、低圧コイルの巻終わり端末線15bや高圧コイルの巻始め端末線16aを、180°折り返して端末線収納スペース13bに収納することができる。これにより、低圧コイルの巻終わり端末線15b、高圧コイルの巻始め端末線16aを鉄心1の巻線作業中の接触を回避することができる。
以上、実施例2によれば、静止誘導機器に用いる後巻きコイルにおいて、端末線取付け作業容易化、端末線と鉄心との接触回避に優れた静止誘導機器を提供することができる。