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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023072385
(43)【公開日】2023-05-24
(54)【発明の名称】空気調和装置および方法
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/86 20180101AFI20230517BHJP
   F24F 11/88 20180101ALI20230517BHJP
   F24F 11/64 20180101ALI20230517BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20230517BHJP
   F24F 110/10 20180101ALN20230517BHJP
   F24F 140/20 20180101ALN20230517BHJP
   F24F 140/00 20180101ALN20230517BHJP
【FI】
F24F11/86
F24F11/88
F24F11/64
F25B1/00 361A
F25B1/00 371B
F25B1/00 371F
F24F110:10
F24F140:20
F24F140:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021184915
(22)【出願日】2021-11-12
(71)【出願人】
【識別番号】316011466
【氏名又は名称】日立ジョンソンコントロールズ空調株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000420
【氏名又は名称】弁理士法人MIP
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 太樹
【テーマコード(参考)】
3L260
【Fターム(参考)】
3L260AB02
3L260BA31
3L260CA12
3L260CB06
3L260CB62
3L260DA03
3L260EA24
3L260EA28
3L260FA01
3L260FB02
3L260HA06
(57)【要約】
【課題】 適切な制御定数によって圧縮機をフィードバック制御する空気調和装置および方法を提供すること。
【解決手段】 冷凍サイクルを構成する圧縮機35と、冷凍サイクルを構成する環境の温度を測定する温度センサ24と、圧縮機35の動作をフィードバック制御する圧縮機制御部234とを備える空気調和装置10であって、圧縮機制御部234は、ユーザによる操作入力に基づいてフィードバック制御の制御定数を設定する手動設定手段と、温度センサが測定した温度に基づいて前記制御定数を設定する自動設定手段と、を備え、手動設定手段および自動設定手段のいずれかの手段を切り替えて使用することができる。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷凍サイクルを構成する圧縮機と、前記冷凍サイクルを構成する環境の温度を測定する温度センサと、前記温度センサが測定した温度に基づいて前記圧縮機の動作をフィードバック制御する制御手段とを備える空気調和装置であって、
前記制御手段は、
ユーザによる操作入力に基づいて前記フィードバック制御の制御定数を設定する手動設定手段と、
前記温度センサが測定した温度に基づいて前記制御定数を設定する自動設定手段と、を備え、
前記手動設定手段および前記自動設定手段のいずれかの手段を切り替えて使用することができる、
空気調和装置。
【請求項2】
前記自動設定手段は、
前記圧縮機の始動から一定時間が経過するまでの間に、前記温度センサが測定した温度に基づいて前記制御定数を設定する、
請求項1に記載の空気調和装置。
【請求項3】
前記自動設定手段は、
温度変化が線形となったときの傾斜と、前記圧縮機が起動してからの無駄時間とに基づいて、前記制御定数を算出することを特徴とする、
請求項1または2に記載の空気調和装置。
【請求項4】
前記温度センサが測定する温度は、空気調和を行う空間の温度である、
請求項1~3のいずれか1項に記載の空気調和装置。
【請求項5】
前記温度センサが測定する温度は、室内熱交換器の冷媒の温度である、
請求項1~3のいずれか1項に記載の空気調和装置。
【請求項6】
前記空気調和装置は、前記制御手段および前記温度センサを備える室内機を複数含む、
請求項1~5のいずれか1項に記載の空気調和装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮機のPID制御を行う空気調和装置およびその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
空間を適切に空気調和するために、圧縮機の回転周波数をPID制御する空気調和装置が開発されている。
【0003】
例えば、特開平9-119696号公報(特許文献1)では、空調対象空間の温度および室内熱交換器温度をそれぞれ制御量とし、圧縮機駆動電動機に供給する電力の周波数を操作量としてPID制御する空気調和装置が開示されている。特許文献1によれば、温度のハンチングを防止することができる。
【0004】
しかしながら、PID制御は、空調対象空間の構造、空間内に存在する熱源、気候、その他の環境など種々の条件によって、影響を受け得る。そのため、PID制御の制御定数を条件に応じて適切に設定することが好ましいが、制御定数の設定には制御に関する専門的な知識が要求される。したがって、従来の空気調和装置では、制御定数は装置の製造段階で設定されたものを使用するのが一般的で、その後に制御定数を変更するという思想はなかった。
【0005】
そのため、従来の空気調和装置は、圧縮機を適切にPID制御できず、室内温度のハンチングなどを引き起こすことがあった。そこで、圧縮機を適切にPID制御するためのさらなる技術が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9-119696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来技術における課題に鑑みてなされたものであり、適切な制御定数によって圧縮機をフィードバック制御する空気調和装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明によれば、
冷凍サイクルを構成する圧縮機と、前記冷凍サイクルを構成する環境の温度を測定する温度センサと、前記温度センサが測定した温度に基づいて前記圧縮機の動作をフィードバック制御する制御手段とを備える空気調和装置であって、
前記制御手段は、
ユーザによる操作入力に基づいて前記フィードバック制御の制御定数を設定する手動設定手段と、
前記温度センサが測定した温度に基づいて前記制御定数を設定する自動設定手段と、を備え、
前記手動設定手段および前記自動設定手段のいずれかの手段を切り替えて使用することができる、
空気調和装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、適切な制御定数によって圧縮機をフィードバック制御する空気調和装置および方法が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】各実施形態における空気調和装置の概略構成を示す図。
図2】各実施形態の空気調和装置を構成する冷凍サイクルを示す図。
図3】各実施形態の空気調和装置の制御部に含まれるソフトウェアブロック図。
図4】第1の実施形態における制御ブロック図。
図5】第1の実施形態におけるPID制御の応答を示すグラフ。
図6】第1の実施形態におけるフィードバック制御を示すフローチャート。
図7】第1の実施形態の空気調和装置による室温の推移を示すグラフ。
図8】第2の実施形態における制御ブロック図。
図9】第3の実施形態における制御ブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を、いくつかの実施形態をもって説明するが、本発明は後述する実施形態に限定されるものではない。なお、以下に参照する各図においては、共通する要素について同じ符号を用い、適宜その説明を省略するものとする。また、以下の実施形態では、空気調和装置10はルームエアコン(RAC)を例示して説明しているが、空気調和装置10の形式は特に限定されることは無く、パッケージエアコン(PAC)、ビル用マルチエアコン(VRF)などであってもよい。なお、図1図3は、各実施形態に共通する構成を説明するものである。
【0012】
図1は、各実施形態における空気調和装置10の概略構成を示す図である。図1に示すように、空気調和装置10は、室内機20、室外機30、リモコン40を含んで構成される。
【0013】
室内機20は、空気調和が行われる対象空間内に配置され、ユーザが操作するリモコン40といった遠隔操作端末により、ユーザが所望する空気調和を提供する。室外機30は、対象空間の外部に設置され、膨張弁31、室外熱交換器32、圧縮機35などを備える。
【0014】
空気調和装置10は、室内機20および室外機30が配管で接続されて閉回路を構成する。この閉回路の中には冷媒が封入されており、冷媒が閉回路内を循環し、冷媒と空気との間で熱交換することで冷凍サイクルが実現される。なお、冷凍サイクルの詳細は、以下の図2を以て説明する。
【0015】
図2は、各実施形態の空気調和装置10を構成する冷凍サイクルを示す図である。図2に示すように、空気調和装置10における冷凍サイクルは、室内機20および室外機30から構成され、両者は配管を介して接続されている。
【0016】
室内機20は室内ファン21と、室内熱交換器22と、制御部23と、温度センサ24とを含んで構成される。また、室外機30は、膨張弁31と、室外熱交換器32と、室外ファン33と、四方弁34と、圧縮機35とを含んで構成される。ここで、図2中の矢印は、空気調和装置10が冷房運転時における冷媒の流れる方向を示しており、以下の冷凍サイクルの説明においては、便宜的に冷房運転時における動作を例に説明する。なお、暖房運転時には、冷媒の流れる方向は図4の矢印の方向から反転する。
【0017】
室内機20は、室内ファン21によって、室内空間の空気と、室内熱交換器22を流れる冷媒との間で熱交換をし、空気を再度室内に吐出することで、室内空間の空気調和を行う。冷房運転時における室内熱交換器22は、蒸発器として動作し、低温低圧の液冷媒と、室内ファン21から送風される空気とを熱交換する。室内機20は、熱交換された空気を吐出することで、室内空間の温度を下げることができる。なお、室内熱交換器22から流出した冷媒は、低温低圧のガス冷媒であり、冷媒配管を介して、室外機30に流れる。
【0018】
制御部23は、例えばリモコン40などから受けた信号に基づいて、空気調和装置10を構成する各ハードウェアの動作を制御する。これによって、空気調和装置10は、冷房運転、除湿運転、暖房運転などのユーザが所望する所定の運転動作を実行することができる。制御部23は、一例として、CPUなどの情報処理装置として構成することができる。
【0019】
温度センサ24は、PID制御の対象となる温度を測定するセンサであり、例えば、対象空間の室温や、室内熱交換器22を流れる冷媒の温度などといった冷凍サイクルを構成する環境の温度を測定することができる。温度センサ24は、測定した温度のデータを制御部23に出力する。これによって、制御部23は、測定温度に基づいたPID制御を行うことができる。なお、室内機20には、複数の温度センサ24が備えられていてもよい。
【0020】
次に室外機30について説明する。圧縮機35は、モータの駆動によって、室外機側から流入した低温低圧のガス冷媒を圧縮し、高温高圧のガス冷媒として吐出する。なお、説明する実施形態に係る圧縮機35は、制御部23からの駆動信号によって、動作周波数が制御される。圧縮機35から吐出されたガス冷媒は、四方弁34を通り、室外熱交換器32に流入する。室外熱交換器32は、内部を通流する冷媒と、室外ファン33から送り込まれる外気との間で熱交換を行う。冷房運転時における室外熱交換器32は、凝縮器として動作し、熱交換によって冷媒を高温の液体として吐出する。なお、室外熱交換器32は、暖房運転時には蒸発器として動作する。
【0021】
室外熱交換器32から吐出された冷媒は、膨張弁31によって体積が膨張され、減圧されることによって温度が低下する。その後、冷媒は室内機20に流れ、上述したように室内空間の温度を下げる冷房運転を行う。
【0022】
四方弁34は、空気調和装置10の運転モードに応じて、冷媒の流路を切り替える弁である。すなわち、冷房運転時には図2における実線のような接続となり、暖房運転時には破線のような接続とする。これによって、室内熱交換器22および室外熱交換器32のいずれか一方を凝縮器とし、他方を蒸発器として動作させることができ、適切な空気調和運転を行うことができる。
【0023】
次に、説明する実施形態において、PID制御を行う制御部23について図3を以て説明する。図3は、各実施形態の空気調和装置10の制御部23に含まれるソフトウェアブロック図である。制御部23は、目標温度設定部231、温度取得部232、制御定数設定部233、圧縮機制御部234の各機能手段を含む。これらの各機能手段は、記憶領域に記憶されたプログラム、あるいは回路などにより実現してもよい。
【0024】
目標温度設定部231は、PID制御によるフィードバック制御におけるパラメータとなる目標温度を設定する手段である。例えば、室温に基づくPID制御の場合には、目標温度設定部231は、リモコン40で設定された温度を目標温度として設定する。また、例えば、室内熱交換器22の冷媒の温度に基づくPID制御の場合には、目標温度設定部231は、冷媒の蒸発温度(冷房運転の場合)または凝縮温度(暖房運転の場合)を目標温度として設定する。
【0025】
温度取得部232は、温度センサ24が測定した測定値を取得する手段である。制御定数設定部233は、PID制御における制御定数を設定する手段である。なお、制御定数は、温度取得部232が取得した温度測定値に基づいて自動で設定してもよいし、手動で設定してもよい。手動で設定する例としては、空気調和装置10の検査時などにおいて、専門知識を有する作業者が行う場合が挙げられるが、特に実施形態を限定するものではない。
【0026】
圧縮機制御部234は、制御定数設定部233が設定した制御定数、設定温度、測定温度に基づいて、圧縮機35の動作周波数を算出し、圧縮機35の動作を制御する手段である。
【0027】
なお、上述したソフトウェアブロックは、説明する実施形態に係るプログラムをCPUなどが実行することで、各ハードウェアを機能させることにより、実現される機能手段に相当する。また、各実施形態に示した機能手段は、全部がソフトウェア的に実現されても良いし、その一部または全部を同等の機能を提供するハードウェアとして実装することもできる。このため、空気調和装置10は、これらの処理を実現するための、CPU、回路、記憶領域等を備えていても良い。また、空気調和装置10は、これらの機能の全部または一部を、通信ネットワークを介して外部のサーバ、クラウドなどに実現させるため、通信手段を備えていてもよい。
【0028】
ここまで、各実施形態に共通する構成について説明した。以下では、より具体的な実施形態について説明する。
【0029】
まず、第1の実施形態について説明する。第1の実施形態では、室温に基づいてPID制御を行う。図4は、第1の実施形態における制御ブロック図である。
【0030】
図4に示すように、リモコン40は、対象空間内のユーザが任意に設定した所望の室温を設定温度として出力する。また、温度取得部232は、温度センサ24による測定値を取得し、室内温度として出力する。設定温度と室内温度の差分は、圧縮機制御部234に出力される。
【0031】
制御定数設定部233は、設定した制御定数を圧縮機制御部234に出力する。制御定数設定部233が自動設定モードとなっている場合には、制御定数設定部233は、温度取得部232が出力した室内温度に基づいてPID制御における制御定数を算出する。制御定数設定部233が手動設定モードとなっている場合には、制御定数設定部233は、ユーザから受け付けた設定情報に基づいてPID制御における制御定数を決定する。なお、自動設定モードと手動設定モードの選択は、例えばリモコン40から行うことができる。
【0032】
また、制御定数設定部233が手動設定モードとなっている場合には、ユーザの操作によって比例項、積分項、微分項の制御定数を設定することができる。手動設定モードでは、例えば、ユーザがリモコン40によって任意に制御定数を設定する方法、装置開発時に設定された制御定数を選択する方法、各種運転モードを選択することで当該運転モードに対応する制御定数を設定する方法などによって、比例項、積分項、微分項の制御定数の組み合わせを設定することができる。例えば、高負荷時や低負荷時などに応じて制御定数K、K、K等の値の組が予め調整されて場合分けされた複数の運転モードから、ユーザがリモコン40などのコントローラからモードを選択することで制御定数を設定できる。この場合、負荷が大きく素早く室内温度を下げたい場合に対応した運転モードでは、制御定数Kが大きい組み合わせが選択され、制御量に対して出力が出やすいようにしてもよい。制御定数の設定には制御に関する専門的な知識が要求されるが、運転モードと制御定数の組を予め組み合わせて設定しておき、選択させることで、専門知識のないユーザであっても制御定数を設定させることができる。これにより、自動設定モードであっても諸条件により、温度調整が安定しない場合や、ユーザの好みにより自動設定の環境が合わない場合でも、手動設定により簡単に制御定数を変更できる。
【0033】
圧縮機制御部234は、設定温度と室内温度の差分と、制御定数設定部233が設定した制御定数とに基づいて、圧縮機35の動作周波数をPID制御するための操作量として出力する。
【0034】
次に、圧縮機35のPID制御による操作量およびPID制御における制御定数について説明する。圧縮機35の操作量uは、以下の式(1)によって算出することができる。
【0035】
【数1】
【0036】
ここで、un-1は前回のPID制御における操作量であり、Δuは以下の式(2)によって示される。
【0037】
【数2】
【0038】
式(2)中、e、en-1、en-2はそれぞれ今回、前回、前々回のPID制御時における制御量(例えば第1の実施形態の場合には室内温度)を示し、K、K、Kは、それぞれ比例項の定数、積分項の定数、微分項の定数を示す。
【0039】
説明する第1の実施形態では、室内温度に基づいて制御定数設定部233がK、K、Kを設定することで、対象空間の環境に応じて適切に圧縮機35を動作させることができ、室内温度のハンチングを防止することができる。第1の実施形態における制御定数設定部233は、圧縮機35の始動から室内温度が所定の変化量となるまでの時間と、制御対象である室内温度の変化量とに基づいて、制御定数K、K、Kを設定することができる。
【0040】
すなわち、制御定数K、K、Kは、図5に示すグラフに基づいて設定することができる。図5は、第1の実施形態におけるPID制御の応答を示すグラフである。図5のグラフは、縦軸が制御量(第1の実施形態の場合には室内温度)、横軸が時間tを示しており、圧縮機35は、t=0において動作を開始する。
【0041】
図5に示すように、一般に圧縮機35が始動しても、室内温度は直ちに変動せず、圧縮機35が動作したことによって室内温度に影響が及ぶまでには一定の時間がかかる。ここで、制御を開始(t=0)してから、制御量が線形に変動した場合における傾斜を延長した線と、制御開始時点(t=0)の制御量を延長した線とが交差するまでの時間を無駄時間Lとし、線形変動における制御量の傾斜を最大傾斜Rとした場合に、制御定数設定部233は、比例項、積分項、微分項の制御定数K、K、Kを以下の式(3)によって算出する。なお、式(3)中、a、b、cは、係数を示している。
【0042】
【数3】
【0043】
制御定数設定部233は、式(3)によって算出した制御定数を圧縮機制御部234に出力する。圧縮機制御部234は、出力された制御定数を式(1)、(2)に適用することで、圧縮機35の動作周波数、すなわち操作量を算出し、圧縮機35の動作を制御する。
【0044】
このように最大傾斜Rと無駄時間Lに基づいて算出した制御定数を使用してPID制御することで、第1の実施形態における圧縮機制御部234は、室内温度の変動しやすさを加味して圧縮機35を制御することができる。これによって、空気調和装置10は制御対象である室内温度のハンチングを防止することができ、効率的な空気調和を行うことができる。
【0045】
次に、第1の実施形態におけるフィードバック制御について説明する。図6は、第1の実施形態におけるフィードバック制御を示すフローチャートである。図6に示す処理は、主に制御部23が行う。
【0046】
制御部23は、ステップS1000から処理を開始する。ステップS1001では、制御部23は、圧縮機35を始動させる。始動制御では、圧縮機35の信頼性確保の観点から、一定時間、圧縮機35を定常運転時よりも高回転で動作させる。
【0047】
次いで、ステップS1002において、温度取得部232は温度センサ24が測定した室内温度を取得する。その後、制御定数設定部233は、ステップS1003において、PID制御の制御定数を算出する。制御定数設定部233は、算出した制御定数を圧縮機制御部234に出力する。すなわち、説明する実施形態においては、通常制御に移行後は、始動制御中の温度変化に基づいて算出した制御定数を使用して、圧縮機35の動作を制御する。
【0048】
圧縮機制御部234は、ステップS1004において、算出された制御定数に基づいて、圧縮機35の動作周波数を操作量として算出し、圧縮機35の動作を制御する。
【0049】
ステップS1004の後、ステップS1005に進み、処理を終了する。上述した処理を行うことで、制御部23は、室内温度を制御量としたPID制御を行うことができる。図6に示した処理によって、適切に設定された制御定数にてPID制御を行うことができ、空気調和装置10は、室内温度のハンチングを防止して空気調和を行うことができる。
【0050】
第1の実施形態を適用してPID制御を行う空気調和装置10の例を図7に示す。図7は、第1の実施形態の空気調和装置10による室温の推移を示すグラフである。図7中の実線は、第1の実施形態の方法によって制御定数を調整してPID制御した場合の室温を示し、破線は制御定数の調整を行わずにPID制御した場合の室温を示している。
【0051】
図7に示すように、第1の実施形態にかかる方法を適用することによって、室内温度のハンチングが抑制され、室内温度が短時間で設定温度に近づいている。したがって、第1の実施形態を適用することで、効率的な空気調和を行うことができることが示された。
【0052】
ここまで、第1の実施形態について説明した。次に、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態では、PID制御における制御量を室内熱交換器22の冷媒温度とする。なお、以下の第2の実施形態の説明において、第1の実施形態と共通する事項については、適宜省略するものとする。
【0053】
図8は、第2の実施形態における制御ブロック図である。第2の実施形態において目標温度設定部231は、制御量となる冷媒温度の目標値を算出し、設定温度として出力する。なお、目標値となる冷媒の温度は、リモコン40による室内の温度設定から算出してもよいし、数値を直接入力するものであってもよい。
【0054】
また、第2の実施形態における温度取得部232は、室内熱交換器22の近傍に設置された温度センサ24から、冷媒の温度を取得する。ここで、温度取得部232は、空気調和装置10が冷房運転している場合には冷媒の蒸発温度を取得し、空気調和装置10が暖房運転している場合には冷媒の凝縮温度を取得する。温度取得部232は、取得した温度を制御定数設定部233に出力する。
【0055】
制御定数設定部233は、取得した冷媒温度に基づいて、PID制御における制御定数を設定する。第2の実施形態における制御定数は、第1の実施形態で説明した方法と同様に、無駄時間Lと、冷媒温度の最大傾斜Rとに基づいて、式(3)から算出する。制御定数設定部233は、算出した制御定数を圧縮機制御部234に出力する。
【0056】
圧縮機制御部234は、設定温度と冷媒温度の差分と、制御定数設定部233が設定した制御定数とに基づいて、圧縮機35の動作周波数をPID制御するための操作量として出力する。
【0057】
このようにして、第2の実施形態では、冷媒温度を制御量として制御定数を設定し、PID制御を行う。これによって、冷媒温度のハンチングを防止でき、ひいては、室内温度のハンチングを防止して空気調和を行うことができる。
【0058】
次に、第3の実施形態について、図9を以て説明する。図9は、第3の実施形態における制御ブロック図である。第3の実施形態は、1つの室外機30に対して複数の室内機20を備える空気調和装置10における、圧縮機35のPID制御である。例えばVRFのような複数の室内機20を備える空気調和装置10の場合には、第3の実施形態のようにして圧縮機35を制御する。複数の室内機20が設置されている場合において圧縮機35をPID制御しようとすると、室内機20が設置されている空間の条件などが異なることから、従来では各室内機が必要とする圧縮機35の動作を適切に行えず、室内温度のハンチングの原因となっていた。そこで、第3の実施形態においても、PID制御の制御定数を適切に設定し、ハンチングを防止する。
【0059】
なお、説明する第3の実施形態では、第1の実施形態と同様に室内温度に基づいてPID制御する例を示しているが、特に実施形態を限定するものではない。したがって、第3の実施形態においても、第2の実施形態のように、冷媒温度に基づいてPID制御することとしてもよい。
【0060】
第3の実施形態における複数の室内機20は、それぞれに温度取得部232と制御定数設定部233を含む。ここでは、図9に示すように、2台の室内機20a、20bがあるものとする。なお、図9に示した室内機20の数は一例であり、第3の実施形態における室内機20は3台以上であってもよい。
【0061】
第3の実施形態では、各室内機20a、20bのそれぞれが制御定数を算出する。すなわち、室内機20aは、温度取得部232aが取得した室内温度に基づいて制御定数を設定して圧縮機制御部234に出力し、室内機20bは、温度取得部232bが取得した室内温度に基づいて制御定数を設定して圧縮機制御部234に出力する。
【0062】
圧縮機制御部234は、各室内機20a、20bの制御定数設定部233a、233bが出力した制御定数に基づいて圧縮機35の操作量を算出し、動作を制御する。室内機ごとに制御定数が異なる場合には、平均値を求めてもよいし、条件に応じていずれかの制御定数を選択してもよい。また、室内機20が3台以上ある場合には、各制御定数の値を重みづけするなどして、操作量を算出してもよい。
【0063】
説明した第3の実施形態では、室内機20が複数ある場合であっても、適切に制御定数を設定することができ、これによって、室内温度のハンチングを防止することができる。
【0064】
以上に説明した通り、第1~第3の実施形態によれば、PID制御における制御定数を適切に設定することができる。特に、従来は制御定数の設定には専門的な知識が必要とされ、空気調和装置10の設置後に制御定数を変更することは困難であったところ、説明した実施形態によれば、制御定数を最大傾斜Rと無駄時間Lに基づいて算出することで、空調空間の状態に応じた制御定数を設定することができる。これによって、室内温度を素早く所望の温度にすることができるため、快適で効率的な空気調和を提供することができる。
【0065】
また、説明した実施形態は、圧縮機35をPID制御するものであったが、特に実施形態を限定するものではない。したがって、圧縮機35以外の冷凍サイクルに係る装置をPID制御する場合であっても、説明した方法によって制御定数を設定してPID制御してもよい。
【0066】
以上、説明した本発明の実施形態によれば、適切な制御定数によって圧縮機をフィードバック制御する空気調和装置および方法を提供することができる。
【0067】
上述した本発明の実施形態の各機能は、C、C++、C#、Java(登録商標)等で記述された装置実行可能なプログラムにより実現でき、本実施形態のプログラムは、ハードディスク装置、CD-ROM、MO、DVD、フレキシブルディスク、EEPROM(登録商標)、EPROM等の装置可読な記録媒体に格納して頒布することができ、また他装置が可能な形式でネットワークを介して伝送することができる。
【0068】
以上、本発明について実施形態をもって説明してきたが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、当業者が推考しうる実施態様の範囲内において、本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0069】
10…空気調和装置、
20…室内機、
21…室内ファン、
22…室内熱交換器、
23…制御部、
24…温度センサ、
30…室外機、
31…膨張弁、
32…室外熱交換器、
33…室外ファン、
34…四方弁、
35…圧縮機、
40…リモコン、
231…目標温度設定部、
232…温度取得部、
233…制御定数設定部、
234…圧縮機制御部
図1
図2
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図9