IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 早川ゴム株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-屋上防水シート用固定金具 図1
  • 特開-屋上防水シート用固定金具 図2
  • 特開-屋上防水シート用固定金具 図3
  • 特開-屋上防水シート用固定金具 図4
  • 特開-屋上防水シート用固定金具 図5
  • 特開-屋上防水シート用固定金具 図6
  • 特開-屋上防水シート用固定金具 図7
  • 特開-屋上防水シート用固定金具 図8
  • 特開-屋上防水シート用固定金具 図9
  • 特開-屋上防水シート用固定金具 図10
  • 特開-屋上防水シート用固定金具 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023072392
(43)【公開日】2023-05-24
(54)【発明の名称】屋上防水シート用固定金具
(51)【国際特許分類】
   E04D 5/14 20060101AFI20230517BHJP
【FI】
E04D5/14 T
E04D5/14 P
E04D5/14 Q
E04D5/14 F
E04D5/14 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021184929
(22)【出願日】2021-11-12
(71)【出願人】
【識別番号】591000506
【氏名又は名称】早川ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤田 洋基
(72)【発明者】
【氏名】早川 智史
(72)【発明者】
【氏名】新舎 巧
(57)【要約】
【課題】防水シートを固定するための固定金具を屋上の複数の部位で共通化しながら、各部位に適した絶縁処理が行えるようにする。
【解決手段】屋上防水シート用固定金具1は、基材2と、基材2に設けられ、防水シートに融着または溶着される被覆層3と、被覆層3における基材2の端末部に対応する部分に設けられた絶縁部材4とを備えている。絶縁部材4は、被覆層3の一端部に対して非固着とされた非固着部4cを有している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の屋上の躯体に固定され、防水シートが融着または溶着される屋上防水シート用固定金具であって、
水平方向に長い板状の基材と、
前記基材における前記防水シートが敷設される側を被覆するように該基材に設けられ、前記防水シートに融着または溶着される被覆層と、
前記被覆層における前記基材の端末部に対応する部分に設けられ、前記防水シートに対して非融着性及び非溶着性を有する絶縁部材とを備え、
前記絶縁部材は、前記被覆層における前記基材の長手方向に直交する方向の一端部に対して非固着とされた非固着部を有している屋上防水シート用固定金具。
【請求項2】
請求項1に記載の屋上防水シート用固定金具において、
前記基材は、水平方向に延びる横板部と、当該横板部の幅方向一端部から下方へ延びる縦板部とを有し、
前記被覆層は、前記横板部の幅方向他端部から前記縦板部の下端部まで設けられ、
前記絶縁部材は、前記被覆層における前記横板部の幅方向他端部から前記縦板部の下端部に対応する部分に亘って設けられ、
前記非固着部は、前記被覆層における前記縦板部の下端部に対応する部分に対して非固着とされる部分である屋上防水シート用固定金具。
【請求項3】
請求項1または2に記載の屋上防水シート用固定金具において、
前記絶縁部材は、粘着層を有するテープであり、前記粘着層が前記被覆層に固着され、
前記非固着部は、前記粘着層に非固着部材を貼り付けることによって構成されている屋上防水シート用固定金具。
【請求項4】
請求項1または2に記載の屋上防水シート用固定金具において、
前記絶縁部材は、粘着層を有するテープであり、前記粘着層が前記被覆層に固着され、
前記非固着部は、前記テープを折り返して前記粘着層同士が固着された部分である屋上防水シート用固定金具。
【請求項5】
請求項3または4に記載の屋上防水シート用固定金具において、
前記テープは塑性変形可能な金属製テープである屋上防水シート用固定金具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば建築物の屋上に防水シートを固定するための屋上防水シート用固定金具に関する。
【背景技術】
【0002】
各種建築物の屋上には防水層が設けられている。防水層は、例えば塩化ビニルや熱可塑性エラストマーシート等からなる防水シートを屋上に敷設することによって形成されている(例えば、特許文献1、2参照)。また、屋上にはパラペットと呼ばれる立ち上がり部が形成される場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-210180号公報
【特許文献2】特開2018-90968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、防水シートを屋上に敷設する場合には、塩ビ被覆鋼板からなる固定金具を使用することができる。すなわち、固定金具を建築物の躯体に固定してから、防水シートを敷設し、敷設した防水シートの裏側を固定金具の塩ビ層に熱で融着または溶剤で溶着する。防水シートが熱可塑性エラストマーシートの場合は、熱可塑性エラストマー積層鋼板を使用することで同様に固定できる。
【0005】
ここで、固定金具は予め所定長さに成形されているものなので、通常、施工現場では複数の固定金具を長手方向に並べ、ビスで躯体に固定することになる。複数の固定金具を用いることで、固定金具の端末部同士を突き合わせることによってできた目地部、即ち突き合わせ目地部が形成される。突き合わせ目地部には絶縁処理を施して防水シートが固着しないようにしておく必要がある。その理由は、昼夜や季節の移り変わりによる温度差に起因した防水シート及び固定金具の伸縮差、経年による防水シートの劣化に伴う当該防水シートの伸縮量低下から、防水シートの突合せ目地部に対応した部分に亀裂が入ってしまうからである。防水シートの一部にでも亀裂が入ると、そこから漏水してしまうので、上記絶縁処理は重要な処理である。
【0006】
絶縁処理の方法としては、固定金具の端末部の表面(塩ビ層が形成されている面)に絶縁部材を貼り付ける方法があるが、現地で施工する作業者が絶縁部材を貼り付けるのを忘れてしまうことが考えられる。この対策として、固定金具の出荷時に絶縁部材を予め貼り付けることが考えられるが、そのようにした場合、以下の問題が発生する。
【0007】
すなわち、固定金具の形状としては、例えば屋上の出隅部に取り付け可能にL字状に折り曲げられたものがあるが、このL字状の固定金具は、例えばパラペットの端部に固定して使用することもできるので、メーカーが取り扱う品種を減らして管理を容易にする上では、出隅部とパラペットの端部とは共通の固定金具を使用したい。
【0008】
ところが、パラペットの端部では、絶縁処理が不要な部分がある。その具体例について図8に基づいて説明する。図8は、パラペット102の端部に固定金具1を固定し、その固定金具1に防水シート200を融着または溶着した状態を示している。パラペット102においても、固定金具1の突き合わせ目地部では絶縁部材4による絶縁処理は必要であるが、固定金具1の下端部まで絶縁してしまうと、防水シート200の端末部が固定金具1から浮き上がり、見栄えが悪化する。よって、パラペット102では固定金具1の下端部のみ絶縁処理を行わないようにしたいので、出隅部と共通の固定金具を使用することはできず、結局、作業現場では施工場所に応じて絶縁部材を貼り分ける必要があった。尚、パラペットにおいて固定金具の下端部に絶縁処理を行わないと当該下端部では防水シートに亀裂が発生する懸念があるが、その部分は下端部であるという場所の関係上、亀裂が入ったとしても直ちに漏水に結びつくわけではない。
【0009】
本開示は、かかる点に鑑みたものであり、その目的とするところは、防水シートを固定するための固定金具を屋上の複数の部位で共通化しながら、各部位に適した絶縁処理が行えるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本開示の一態様は、建築物の屋上の躯体に固定され、防水シートが融着または溶着される屋上防水シート用固定金具を前提とすることができる。屋上防水シート用固定金具は、水平方向に長い板状の基材と、前記基材における前記防水シートが敷設される側を被覆するように該基材に設けられ、前記防水シートに融着または溶着される被覆層と、前記被覆層における前記基材の端末部に対応する部分に設けられ、前記防水シートに対して非融着性及び非溶着性を有する絶縁部材とを備えている。前記絶縁部材は、前記被覆層における前記基材の長手方向に直交する方向の一端部に対して非固着とされた非固着部を有している。
【0011】
この構成によれば、屋上防水シート用固定金具を屋上の出隅部や入隅部に沿って複数並べて固定した後、防水シートを敷設し、各屋上防水シート用固定金具の被覆層に熱で融着または溶剤で溶着することで、防水シートを屋上に固定できる。このとき、屋上防水シート用固定金具の端末部には、絶縁部材が固着されていて被覆層と防水シートとが適切に絶縁されているので、温度変化や経年に起因した防水シートへの亀裂の発生が抑制される。
【0012】
一方、屋上防水シート用固定金具を屋上のパラペットに固定して使用することもできる。この場合、絶縁部材の非固着部が下にくるように屋上防水シート用固定金具を配置しておき、非固着部を折り曲げたり、切断することで、被覆層の下端部を防水シートに融着または溶着できる。
【0013】
また、基材は、水平方向に延びる横板部と、当該横板部の幅方向一端部から下方へ延びる縦板部とを有する部材であってもよい。この場合、被覆層は、横板部の幅方向他端部から縦板部の下端部に亘って設けることができる。絶縁部材は、被覆層における横板部の幅方向他端部から縦板部の下端部に対応する部分に亘って設けることができる。非固着部は、被覆層における縦板部の下端部に対応する部分に対して非固着とされる部分である。
【0014】
この構成によれば、屋上防水シート用固定金具を出隅部に固定する場合には、出隅部の上面に沿うように横板部を配置し、出隅部の縦面に沿うように縦板部を配置することができる。また、屋上防水シート用固定金具をパラペットに固定する場合には、パラペットの上面に沿うように横板部を配置し、パラペットの縦面に沿うように縦板部を配置することができる。よって、屋上防水シート用固定金具を出隅部とパラペットの両方で共通化できる。パラペットで使用する場合には、絶縁部材の非固着部が縦板部の下端部に対応する部分に対して非固着とされているので、この非固着部を折り曲げたり、切断すれば、パラペットに適した絶縁処理を行うことができる。
【0015】
また、絶縁部材は、粘着層を有するテープであってもよい。この場合、粘着層を被覆層に固着し、非固着部は、粘着層に非固着部材を貼り付けることによって構成できる。
【0016】
この構成によれば、テープを被覆層に貼り付けることによって絶縁部材を容易に構成することができるとともに、テープの粘着層の一部に非固着部材を貼り付けることによって非固着部を容易に構成することができる。
【0017】
また、テープを折り返して当該テープの粘着層同士が固着された部分を非固着部としてもよい。この場合、テープを折り返すだけで非固着部を容易に得ることができる。
【0018】
また、金属製テープが塑性変形可能であってもよい。この構成によれば、被覆層の端部まで絶縁が必要な場合には、被覆層の端部まで覆うように金属製テープの形状を保持しておくことができる。一方、被覆層の端部の絶縁が不要な場合には、金属製テープが被覆層の端部を覆わないように折り曲げておくことができる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、絶縁部材が非固着部を有しているので、屋上防水シート用固定金具を屋上の複数の部位で共通化する場合に、非固着部を利用することで、各部位に適した絶縁処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態1に係る屋上防水シート用固定金具を上方から見た斜視図であり、屋上の出隅部に固定する場合を示す。
図2】屋上のパラペットに固定する場合を示す図1相当図である。
図3】複数の屋上防水シート用固定金具を屋上の出隅部に並べて固定した状態を示す断面図である。
図4】屋上の出隅部近傍の防水構造を示す断面図である。
図5図4におけるV-V線断面図である。
図6】複数の屋上防水シート用固定金具を屋上のパラペットに並べて固定した状態を示す断面図である。
図7】屋上のパラペット近傍の防水構造を示す断面図である。
図8図7におけるVIII-VIII線断面図である。
図9】本発明の実施形態2に係る屋上防水シート用固定金具の断面図である。
図10】実施形態2に係り、屋上の入隅部近傍の防水構造を示す断面図である。
図11】実施形態2に係り、屋上のパラペット近傍の防水構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0022】
(実施形態1)
図1及び図2は、本発明の実施形態1に係る屋上防水シート用固定金具1を示すものである。屋上防水シート用固定金具1は、図4に示す建築物の屋上の躯体100の出隅部101に固定されて防水シート200を出隅部101に固定する場合と、図7に示す躯体100のパラペット102に固定されて防水シート200をパラペット102に固定する場合との両方で使用可能な部材である。上記建築物は、例えば家屋、工場、店舗等であり、屋上の躯体100は例えばコンクリートや鋼材、木材、断熱材等で構成されている。防水シート200は、例えば、塩化ビニル製であってもよいし、ポリエチレン等の熱可塑性エラストマー製であってもよい。
【0023】
図1に示すように、屋上防水シート用固定金具1は、水平方向に長い基材2と、基材2を被覆する被覆層(樹脂層)3と、防水シート200と被覆層3とを絶縁するための絶縁部材4とを備えている。屋上防水シート用固定金具1の長手方向の寸法は、特に限定されるものではないが、例えば100cm以上とすることができ、本実施形態では運搬性等を考慮して200cmとされている。
【0024】
基材2は、例えば鋼板等で構成されており、水平方向に延びる横板部2aと、当該横板部2aの幅方向一端部から下方へ延びる縦板部2bとを有している。横板部2aと縦板部2bとは一体成形されており、例えば1枚の板材をプレス成形することで、横板部2a及び縦板部2bを得ることができる。横板部2aと縦板部2bとのなす角度は略直角である。横板部2aの幅方向は、基材2の幅方向と同じである。横板部2aは、図4に示すように出隅部101の上面に載置されて当該上面に沿って延びるとともに、図7に示すようにパラペット102の上面に載置されて当該上面に沿って延びる部分である。また、縦板部2bは、図4に示すように出隅部101の縦面に載置されて当該縦面に沿って延びるとともに、図7に示すようにパラペット102の縦面に載置されて当該縦面に沿って延びる部分である。この実施形態では、横板部2aの幅方向の寸法を縦板部2bの上下方向の寸法よりも長く設定しているが、横板部2aの幅方向の寸法を縦板部2bの上下方向の寸法よりも短く設定してもよいし、横板部2aの幅方向の寸法と縦板部2bの上下方向の寸法とを同じに設定してもよい。
【0025】
被覆層3は、基材2における防水シート200が敷設される側(表側ともいう)を被覆するように、該基材2に対して例えば固着された形態で設けられている。本実施形態では、基材2が横板部2aと縦板部2bとを有しているので、被覆層3は横板部2aの幅方向他端部から一端部を経て、縦板部2bの上端部から下端部まで連続して設けられている。被覆層3の厚みは、基材2に比べて大幅に薄く設定されている。
【0026】
防水シート200が塩化ビニル製の場合、被覆層3も塩化ビニルで構成され、また防水シート200が熱可塑性エラストマー製の場合、被覆層3も熱可塑性エラストマーで構成されている。被覆層3が塩化ビニルである場合、熱可塑性エラストマーである場合のいずれであっても、被覆層3を防水シート200に融着または溶着することができる。融着する際には、被覆層3乃至防水シート200に例えば200℃以上の熱風を当てて溶融させながら防水シート200を被覆層3に密着させる。溶着する際には、被覆層3を防水シート200に溶剤を付着させて溶融させ、防水シート200を被覆層3に密着させる。つまり、被覆層3は、防水シート200に対して融着性または溶着性の少なくとも一方を有しており、融着性及び溶着性の両方を有していてもよい。
【0027】
基材2に被覆層3が積層された積層鋼板を用いて屋上防水シート用固定金具1を構成することができる。屋上防水シート用固定金具1における横板部2aに対応する部分には、複数の固定孔1aが長手方向に互いに間隔をあけて設けられている。この固定孔1aは、横板部2a及び被覆層3を貫通するように形成されている。屋上防水シート用固定金具1を出隅部101やパラペット102に固定する際には、例えばビス等の締結部材A(図3に示す)を固定孔1aに挿通し、出隅部101やパラペット102にねじ込んだり、打ち込んだりすることで固定できる。屋上防水シート用固定金具1の固定構造は、上述した構造に限られるものではなく、各種固定構造を用いることができる。
【0028】
絶縁部材4は、被覆層3における基材2の両方の端末部(長手方向の両端末部)に対応する部分にそれぞれ設けられ、防水シート200に対して非融着性及び非溶着性を有する部材である。具体的には、絶縁部材4は基材層と粘着層とが積層されたテープで構成されている。基材層の材質は特に限定されないが、防水シート200に対して融着せず、かつ溶着しない材質であり、例えばアルミニウム合金やステンレス等のように塑性変形し、変形後に形状を保持する形状保持性を有する金属材を挙げることができる。アルミニウム合金の場合、ステンレスに比べて形状追従性が高いので、被覆層3に密着させた状態で貼り付ける際の作業性が良好になる点で好ましい。また、塑性変形する金属材を上記テープの基材層として用いることで、上記テープは塑性変形可能な金属製テープとなる。尚、上記テープの基材層としては、例えば紙や布等であってもよく、金属に限定されるものではない。
【0029】
上記テープの粘着層は、被覆層3に対して粘着性を発揮する粘着組成物で構成されている。この粘着組成物は、一般的なクラフトテープの粘着層として用いられているものであってもよい。
【0030】
絶縁部材4の幅方向は、屋上防水シート用固定金具1の長手方向であり、絶縁部材4の幅方向の寸法は、例えば10mm以上、また20mm以上に設定することができ、特に限定されるものではないが、温度変化や経年に起因した防水シート200への亀裂の発生が有意に抑制される程度の寸法が確保されていればよい。
【0031】
被覆層3における基材2の端末部を絶縁部材4で確実に覆うことができるように、絶縁部材4の幅方向の端部と基材2の端末部とが一致している。絶縁部材4は、被覆層3における横板部2aに対応する部分に貼り付けられた状態で固着する第1固着部4aと、被覆層3における縦板部2bに対応する部分に貼り付けられた状態で固着する第2固着部4bと、非固着部4cとを有している。第1固着部4aは、被覆層3における横板部2aの幅方向一端部から他端部に対応する部分まで連続している。第2固着部4bは、被覆層3における縦板部2bの上端部から上下方向中間部に対応する部分まで連続している。
【0032】
第1固着部4a及び第2固着部4bは上述したように被覆層3に固着される部分であるが、非固着部4cは被覆層3に固着されていない。すなわち、被覆層3における基材2の長手方向に直交する方向を上下方向と定義した場合、その一端部である下端部に対して非固着部4cが非固着とされている。この非固着部4cは、第2固着部4bの下端部に連続しており、図1に示すように被覆層3における縦板部2bの下端部に達する長さを有している。符号Lで示す一点鎖線は、第2固着部4bと非固着部4cとの境界を示しており、図1において線Lよりも下側部分が非固着部4cである。非固着部4cの上下方向の寸法は、例えば10mm以上とすることができる。
【0033】
非固着部4cは、被覆層3に対して固着されないようになっていればよく、その一例としては、テープの粘着層に非固着部材を貼り付ける構成を挙げることができる。非固着部材は、例えば金属や樹脂のフィルムやシート、紙や布のような粘着性及び接着性を有さない部材である。また、非固着部4cは、テープを折り返して粘着層同士が固着された部分で構成されていてもよい。これにより、テープの粘着層が露出しなくなるので、被覆層3に固着されることはない。
【0034】
非固着部4cが被覆層3に固着されていないので、図2に示すように非固着部4cを上へ折り曲げることができる。このとき、図1に示す線L近傍が回動中心となって非固着部4cが上方へ回動することになる。塑性変形可能な金属製テープで絶縁部材4が構成されているので、非固着部4cを上へ折り曲げた状態(第1の姿勢)で当該絶縁部材4の形状を保持できる。同様に、非固着部4cを下へ延ばした状態(第2の姿勢)で当該絶縁部材4の形状を保持できる。非固着部4cを折り曲げる際には特別な工具は必要なく、指で簡単に折り曲げることができる。
【0035】
(施工方法)
まず、図3図5に示す出隅部101への施工方法について説明する。図3に示すように、複数の屋上防水シート用固定金具1を長手方向に並べて出隅部101に載置した後、締結部材Aを各屋上防水シート用固定金具1の固定孔1aに挿通し、出隅部101にねじ込んで各屋上防水シート用固定金具1を固定する。このとき、隣合う屋上防水シート用固定金具1の長手方向の端末部同士を突き合わせておく。また、絶縁部材4の非固着部4cは、図1にも示すように下に延ばした状態にしておき、被覆層3における基材2の端末部に対応する部分の全体を絶縁部材4で覆っておく。尚、図3では、屋上防水シート用固定金具1の長手方向両端末部に絶縁部材4を設けているが、これに限らず、屋上防水シート用固定金具1の一方の端末部のみに絶縁部材4を設けてもよい。
【0036】
その後、図4及び図5に示すように、防水シート200を敷設して屋上防水シート用固定金具1の被覆層3に融着または溶着する。このとき、被覆層3における基材2の端末部に対応する部分の全体が防水シート200と絶縁されているので、防水シート200は、被覆層3における基材2の端末部に対応する部分の全体と融着及び溶着されない。
【0037】
次に、図6~8に示すパラペット102への施工方法について説明する。図6に示すように、複数の屋上防水シート用固定金具1を長手方向に並べてパラペット102に載置した後、締結部材Aを各屋上防水シート用固定金具1の固定孔1aに挿通し、パラペット102にねじ込んで各屋上防水シート用固定金具1を固定する。このとき、隣合う屋上防水シート用固定金具1の長手方向の端末部同士を突き合わせておく。また、絶縁部材4の非固着部4cは、図2にも示すように上に折り曲げた状態にしておく。絶縁部材4が形状保持性を有しているので、非固着部4cを別途固定しておく必要はない。非固着部4cを上に折り曲げておくことにより、被覆層3における縦板部2bの下端部に対応する部分を露出させることができる。また、非固着部4cを折り曲げることなく、非固着部4cを切断してもよい。尚、図6では、屋上防水シート用固定金具1の長手方向両端末部に絶縁部材4を設けているが、これに限らず、屋上防水シート用固定金具1の一方の端末部のみに絶縁部材4を設けてもよい。
【0038】
その後、図7及び図8に示すように、防水シート200を敷設して屋上防水シート用固定金具1の被覆層3に融着または溶着する。このとき、被覆層3における縦板部2bの下端部に対応する部分が絶縁されていないので、防水シート200は、被覆層3における縦板部2bの下端部に対応する部分に融着または溶着される。これにより、防水シート200の下端部が浮き上がることはない。また、非固着部4cを上へ折り返していることで上記テープが2枚重なった状態になり、厚みが増している。これにより、融着時の熱風による被覆層3の熱劣化が抑制される。
【0039】
尚、パラペット102で屋上防水シート用固定金具1の下端部に絶縁処理を行わないと当該下端部では防水シート200に亀裂が発生する懸念があるが、その部分は下端部であるという場所の関係上、亀裂が入ったとしても直ちに漏水に結びつくわけではない。
【0040】
(作用効果)
以上説明したように、本実施形態1によれば、屋上防水シート用固定金具1を屋上の出隅部101に沿って複数並べて固定した後、防水シート200を敷設し、各屋上防水シート用固定金具1の被覆層3に熱で融着または溶剤で溶着することで、防水シート200を屋上に強固に固定できる。このとき、屋上防水シート用固定金具1の端末部には、絶縁部材4が固着されていて被覆層3と防水シート200とが適切に絶縁されているので、温度変化や経年に起因した防水シート200への亀裂の発生が抑制される。
【0041】
一方、屋上防水シート用固定金具1を屋上のパラペット102に固定して使用することもできる。この場合、絶縁部材4の非固着部4cが下にくるように屋上防水シート用固定金具1を配置しておき、非固着部4cを上へ折り曲げることで、被覆層3の下端部を防水シート200に融着または溶着して見栄えを良好にすることができる。
【0042】
(実施形態2)
図9図11は、本発明の実施形態2に係る屋上防水シート用固定金具1及び屋上防水シート用固定金具1を用いた防水構造を示すものである。この実施形態2では、屋上防水シート用固定金具1を屋上の入隅部103に適用する点で実施形態1のものとは異なっている。以下、実施形態1と同じ部分には同じ符号を付して説明を省略し、異なる部分について詳細に説明する。
【0043】
図9に示すように、屋上防水シート用固定金具1の基材2は、水平に延びており、幅方向一端部が下方に折り返されている。被覆部3は、基材2の上面から折り返された部分の下面まで連続して設けられている。絶縁部材4は、被覆部3における基材2の上面の幅方向他端部から中間部に対応する部分に貼り付けられた状態で固着する固着部4dと、非固着部4eとを有している。非固着部4eの幅方向の寸法は、例えば10mm以上とすることができる。非固着部4eは、実線で示す姿勢と、幅方向他端側へ折り返された姿勢(仮想線で示す姿勢)とに切り替えられる。非固着部4eが実線で示す姿勢にあるときには、被覆部3における基材2の上面の幅方向他端部から一端部までを絶縁部材4によって連続して覆うことができる。一方、非固着部4eが仮想線で示す姿勢にあるときには、被覆部3における基材2の上面の幅方向一端部を露出させておくことができる。
【0044】
図10は、実施形態2に係る屋上防水シート用固定金具1を入隅部103に固定した場合を示している。屋上防水シート用固定金具1は、入隅部103に対して実施形態1と同様な締結部材(図示せず)により固定できる。この場合、非固着部4eは図9に実線で示す姿勢としておく。これにより、融着または溶着後、温度変化や経年に起因した防水シート200への亀裂の発生が抑制される。
【0045】
図11は、実施形態2に係る屋上防水シート用固定金具1をパラペット102に固定した場合を示している。屋上防水シート用固定金具1は、実施形態1の縦板部2bを有していないので、パラペット102の上面にのみ沿うように配置し、実施形態1と同様な締結部材(図示せず)により固定できる。この場合、非固着部4eは図9に仮想線で示す姿勢としておく。これにより、被覆層3の外側の端部を防水シート200に融着または溶着して見栄えを良好にすることができる。
【0046】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0047】
以上説明したように、本発明に係る屋上防水シート用固定金具は、例えば屋上の出隅部、入隅部、パラペットに防水シートを固定する場合に利用することができる。
【符号の説明】
【0048】
1 屋上防水シート用固定金具
2 基材
2a 横板部
2b 縦板部
3 被覆層
4 絶縁部材
4c、4e 非固着部
100 躯体
101 出隅部
102 パラペット
103 入隅部
200 防水シート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11