(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023072408
(43)【公開日】2023-05-24
(54)【発明の名称】くつずりの構造及びくつずりの施工方法並びにくつずり用固定部材
(51)【国際特許分類】
E06B 1/70 20060101AFI20230517BHJP
【FI】
E06B1/70 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021184950
(22)【出願日】2021-11-12
(71)【出願人】
【識別番号】000239714
【氏名又は名称】文化シヤッター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067323
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 教光
(74)【代理人】
【識別番号】100124268
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 典行
(72)【発明者】
【氏名】野口 茂
【テーマコード(参考)】
2E011
【Fターム(参考)】
2E011MA10
(57)【要約】
【課題】容易な作業により、くつずりを無火器で施工することができ、枠の完全無火器化施工を実現できるくつずりの構造を提供する。
【解決手段】くつずり本体13と、くつずり本体13の下面15に固定されるくつずり用固定部17と、床面19をはつって設けられくつずり本体13が配置される溝21と、くつずり本体13の上面11を表出状態で溝21に充填される充填剤と、を有するくつずり25の構造であって、くつずり用固定部17は、下面15に固定される基部37と、基部37から延出する翼部39と、翼部39の先端部41における後方に穿設される固定穴43と、固定穴43を挟んで翼部39の両側に形成される屈曲誘導部45と、を備え、固定穴43に挿通された締結部材51の底面33への進入により屈曲誘導部45の位置で底面33に固定される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面を有するくつずり本体と、前記くつずり本体の下面に固定されるくつずり用固定部と、床面をはつって設けられ前記くつずり本体が内側に配置される溝と、前記くつずり本体の上面を表出状態で前記溝に充填される充填剤と、を有するくつずりの構造であって、
前記くつずり用固定部は、前記下面に固定される基部と、前記基部から延出する翼部と、前記翼部の先端部における後方に穿設される固定穴と、前記固定穴を挟んで前記翼部の両側に形成される屈曲誘導部と、を備え、
前記固定穴に挿通された締結部材の前記底面への進入により前記屈曲誘導部の位置で前記底面に固定されることを特徴とするくつずりの構造。
【請求項2】
請求項1に記載のくつずりの構造であって、
前記締結部材が進入すればする程、前記底面に追従して固定されることを特徴とするくつずりの構造。
【請求項3】
請求項1または2に記載のくつずりの構造であって、
前記翼部が、前記くつずり本体の長手方向に対して鋭角で延出していることを特徴とするくつずりの構造。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1つに記載のくつずりの構造であって、
前記基部に対して前記翼部の前記下面から離反する方向の折り曲げを容易とする折曲誘導部が設けられることを特徴とするくつずりの構造。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1つに記載のくつずりの構造であって、
前記屈曲誘導部は、前記翼部の幅方向の両縁から切欠形成されていることを特徴とするくつずりの構造。
【請求項6】
請求項5に記載のくつずりの構造であって、
前記屈曲誘導部は、前記翼部の延出方向に対して切欠中心軸が傾斜して切り込まれていることを特徴とするくつずりの構造。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1つに記載のくつずりの構造であって、
前記くつずり用固定部には、前記くつずり本体に対して前記翼部を位置決めするためのガイドが設けられていることを特徴とするくつずりの構造。
【請求項8】
床面をはつって溝を形成するはつり工程と、
くつずり本体を前記溝に納めて位置決めする建て込み工程と、
前記くつずり本体の下面に基部が固定されたくつずり用固定部の前記基部から延出する翼部を、前記翼部の先端部が前記溝の底面に当接するように曲げる曲げ工程と、
前記先端部の後方に穿設される固定穴に挿通した締結部材を前記溝の底面に進入させることで前記先端部を変形させ、前記締結部材が進入すればする程、前記底面に追従し、前記底面に対し固定する固定工程と、
前記くつずり本体の上面を表出状態で前記溝に充填される充填剤に、前記上面を除く前記くつずり本体の側面における少なくとも一部分と、前記くつずり用固定部とを埋入する充填剤充填工程と、
を含むことを特徴とするくつずりの施工方法。
【請求項9】
上面を有するくつずり本体の下面に固定され、床面をはつって設けられる溝の底面に固定するとともに、前記くつずり本体の上面を表出状態で前記溝に充填する充填剤に埋設されるくつずり用固定部材であって、
前記下面に固定される基部と、前記くつずり本体の長手方向に対して鋭角で傾斜して前記基部から前記下面と平行に延出する翼部と、前記くつずり本体の側縁から突出する先端部の後方に穿設される固定穴と、前記固定穴を挟む前記翼部の両側に形成される屈曲誘導部と、を備えることを特徴とするくつずり用固定部材。
【請求項10】
請求項9に記載のくつずり用固定部材であって、
前記基部に対して前記翼部の前記下面から離反する方向の折り曲げを容易とする折曲誘導部が設けられることを特徴とするくつずり用固定部材。
【請求項11】
請求項10に記載のくつずり用固定部材であって、
前記屈曲誘導部は、前記翼部の幅方向の両縁から切欠形成された凹部であることを特徴とするくつずり用固定部材。
【請求項12】
請求項11に記載のくつずり用固定部材であって、
前記凹部は、前記翼部の延出方向に対して切欠中心軸が所定角度で傾斜して先端部側から切り込まれていることを特徴とするくつずり用固定部材。
【請求項13】
請求項9~12のいずれか1つに記載のくつずり用固定部材であって、
前記翼部には、前記くつずり本体を位置決めするガイドが設けられていることを特徴とするくつずり用固定部材。
【請求項14】
請求項9~13のいずれか1つに記載のくつずり用固定部材であって、
前記くつずり本体に対し、前記くつずり本体の幅方向で対となって構成されて、それぞれの各基部が近接して前記下面に固定され、それぞれの各先端部が前記側縁から外方向へ突出することを特徴とするくつずり用固定部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、くつずりの構造及びくつずりの施工方法並びにくつずり用固定部材に関する。
【背景技術】
【0002】
国土交通省の建築工事標準仕様書によれば、コンクリート系下地に取り付ける鋼製建具のドア枠には、モルタルを充填するよう指示がされている。また、枠を建物躯体に固定してからではモルタルが充填できない場合には、予めモルタル充填を行ってから取付けるよう求めており、多くの建築現場で実施されている。特に建具を構成する沓摺は、床面と連続する部材となることから、沓摺の内部に空隙の無いようモルタルを充填しなければならない。例えば、特許文献1に開示される沓摺は、床面に、上面が開口される断面U字状の下地枠の底面を直接固定するとともに、この下地枠内にモルタルを充填し、モルタルの上面を、下面が開口されるコ字形状の沓摺本体により上方から覆い、下地枠の側面に沓摺本体の側面を固定してなる。これにより、沓摺内部にはモルタルが充填された構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、鋼製建具のくつずりは、それが納まる部分のコンクリート床をはつり取り、床とくつずりを高さレベル調整した位置で固定するため、溶接による固定が一般的である。鋼製建具を構成する三方枠、すなわち縦枠などは、溶接を行わない所謂無火器工法を採用し、建物躯体側への固定が行うことが可能な固定構造が実現されている。ところが、くつずりにはこの工法及び構造と同等の無火器工法を採用することは困難であった。つまり、くつずりは、三方枠とは異なり、床面との高さレベル調整した位置での固定となるとともに、上述したようにくつずり内にはモルタルを充填させることから、ねじ止めを行うことが困難であり、溶接を用いる必要があった。このことから、くつずりの施工を完全無火器化とする場合は、国交省の標準仕様書に乗っ取らない方法、すなわちくつずりを後付けする工法で対応せざるを得ず、この場合、構造が複雑になるとともに、作業も煩雑になるなど、有効とは言えないものであった。
【0005】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、その目的は、容易な作業により、くつずりを無火器で施工することができ、枠の完全無火器化施工を実現できるくつずりの構造及びくつずりの施工方法並びにくつずり用固定部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
次に、上記の課題を解決するための手段を、実施の形態に対応する図面を参照して説明する。
本発明の請求項1記載のくつずりの構造は、上面11を有するくつずり本体13と、前記くつずり本体13の下面15に固定されるくつずり用固定部17と、床面19をはつって設けられ前記くつずり本体13が内側に配置される溝21と、前記くつずり本体13の上面11を表出状態で前記溝21に充填される充填剤23と、を有するくつずりの構造であって、
前記くつずり用固定部17は、前記下面15に固定される基部37と、前記基部37から延出する翼部39と、前記翼部39の先端部41における後方に穿設される固定穴43と、前記固定穴43を挟んで前記翼部39の両側に形成される屈曲誘導部45と、を備え、
前記固定穴43に挿通された締結部材51の前記底面33への進入により前記屈曲誘導部45の位置で前記底面33に固定されることを特徴とする。
【0007】
このくつずりの構造では、くつずり本体13の下面15に、くつずり用固定部17が固定される。くつずり本体13は、溝21の底面33に対向する下面15に、くつずり用固定部17が固定されることになる。くつずり用固定部17は、くつずり本体13の下面15に固定される基部37を有する。翼部39は、基部37と同一材料により、基部37から下面15と平行に延出して形成される。
くつずり本体13は、例えば、三方枠に固定される。三方枠は、離間した平行な一対の縦枠35の上端同士が上枠で連結されている。くつずり本体13は、この三方枠における縦枠35の下端同士を連結して固定される。くつずり本体13は、三方枠が建て込まれることにより、溝21に納められて、溝21の所定位置に位置決めされる。
くつずり本体13の位置決めが完了した状態でくつずり用固定部17は、くつずり本体13の側縁から突出する先端部41が押下されて変形されることにより、底面33に翼部39の先端部41が当接するまで曲げられる。
下方へ曲げられた翼部39は、先端部41の固定穴43に締結部材51が挿通される。締結部材51は、底面33に進入、例えばねじ込まれる。翼部39は、締結部材51が底面33にねじ込まれることにより、固定穴43が底面33に接するまで変形した後、先端部41が底面33とほぼ平行となって固定される。この際、翼部39は、固定穴43を挟む翼部39の両側に形成される屈曲誘導部45により、傾斜する翼部本体57と、底面33と平行に変形する先端部41とが屈曲誘導部45を境に折れ曲がる(屈曲する)。つまり、翼部39は、両側に形成されている2つの屈曲誘導部45を結ぶ直線に沿って屈曲する。
これにより、位置決めの完了したくつずり本体13は、くつずり用固定部17を介して溝21の底面33へ無火器で固定が完了する。
くつずり本体13は、充填剤23が溝21に充填されることにより、床面19と面一となった充填剤23に、上面11を除くくつずり本体13の側面における少なくとも一部分と、くつずり用固定部17とが埋設される。
このくつずりの構造では、くつずり本体13が充填剤23に埋設されたくつずり用固定部17によってトラス構造となり溝21の底面33に強固に固定される。くつずり用固定部17は、基部37と翼部39とからなる簡素な構造で、単体部品で形成されて、くつずり本体13に固定される。従って、くつずり本体13は、溶接を行わずに、簡素な構造で、部品点数を増やさずに、溝21の底面33に固定が可能となる。溶接を行わず、すなわち無火器で施工が済むので、溶接装置の準備、搬入搬出などの煩雑な作業がなくなり、施工が容易となり、施工時間も短縮できる。
【0008】
本発明の請求項2記載のくつずりの構造は、請求項1に記載のくつずりの構造であって、
前記締結部材51が進入すればする程、前記底面33に追従して固定されることを特徴とする。
【0009】
このくつずりの構造では、締結部材51の底面33への進入が進むことで、底面33に追従して、屈曲誘導部45が変形し、底面33へ固定される。
【0010】
本発明の請求項3記載のくつずりの構造は、請求項1または2に記載のくつずりの構造であって、
前記翼部39が、前記くつずり本体13の長手方向に対して鋭角で延出していることを特徴とする。
【0011】
このくつずりの構造では、翼部39が、くつずり本体13の長手方向に対して鋭角に、例えば平面視で45°の角度で傾斜して、くつずり本体13に取り付けられている。このため、翼部39は、くつずり本体13の長手方向に対して直交方向で取り付けられる場合に比べ、延出長を大きく確保できる。これにより、翼部39は、くつずり本体13に直交方向で取り付けられる場合に比べ、浅い溝21から深い溝21まで接地が可能となる。
また、翼部39は、傾斜することにより、くつずり本体13の側面から充填剤23が充填される際、くつずり本体13の長手方向に対して直交方向で取り付けられる場合に比べ、充填剤23の流動抵抗が小さくなる。つまり、充填剤23が充填しやすくなり、充填作業が良好に行えるようになる。
【0012】
本発明の請求項4記載のくつずりの構造は、請求項1~3のいずれか1つに記載のくつずりの構造であって、
前記基部37に対して前記翼部39の前記下面15から離反する方向の折り曲げを容易とする折曲誘導部49が設けられることを特徴とする。
【0013】
このくつずりの構造では、翼部本体57と基部37との間に、折曲誘導部49が設けられている。折曲誘導部49は、単一の長穴(スリット等)、複数の穴(断続、連続)、厚み方向を小さくし薄厚とした溝21、ミシン目など、基部37と翼部本体57との折れ曲げを容易にする部分となる。翼部39は、くつずり本体13の下面15に固定された基部37に対して、この折曲誘導部49を境に、翼部本体57が下向きに傾斜して容易に折り曲げられるようになる。
【0014】
本発明の請求項5記載のくつずりの構造は、請求項1~4のいずれか1つに記載のくつずりの構造であって、
前記屈曲誘導部45は、前記翼部39の幅方向の両縁から切欠形成されていることを特徴とする。
【0015】
このくつずりの構造では、翼部39の幅方向の両縁から屈曲誘導部45が形成される。屈曲誘導部45は、翼部39の幅方向の両縁から切欠形成された例えば凹部53となる。上述のように、屈曲誘導部45は、固定穴43を挟む翼部39の両側に形成される。翼部39は、基部37に対して下向きに傾斜して、先端部41が溝21の底面33に接地するまで変形される。この先端部41が接地した状態では、まだ先端部41と翼部本体57とは、平板状となっている。
翼部39は、この状態で、固定穴43に挿通された締結部材51が、溝21の底面33にねじ込まれると、固定穴43が底面33に締め付けられ、先端部41が翼部本体57との境で屈曲する。この際、先端部41は、屈曲誘導部45が脆弱部となり、屈曲誘導部45の位置で曲げられる(屈曲する)ことになる。これにより、先端部41や翼部本体57が想定外の位置で変形することがなくなる。
翼部39は、幅方向の両縁から切り欠かれて形成された凹部53で曲がることにより、翼部本体57の端が角部となる。これにより、傾斜する翼部本体57は、端が線状である場合に比べ、不陸面となる底面33の凹凸を吸収しやすくなり、滑ることなく安定した接地が可能となる。
【0016】
本発明の請求項6記載のくつずりの構造は、請求項5に記載のくつずりの構造であって、
前記屈曲誘導部45は、前記翼部39の延出方向に対して切欠中心軸55が傾斜して切り込まれていることを特徴とする。
【0017】
このくつずりの構造では、屈曲誘導部45が、翼部39の延出方向に対して切欠中心軸55が傾斜して切り込まれている。例えば、この屈曲誘導部45を凹部53とした場合、この凹部53が、先端部側から切り込まれている。凹部53は、翼部39の延出方向に対して切欠中心軸55が所定角度で傾斜している。上述のように、翼部39は、平面視でくつずり本体13の長手方向に対して所定角度、例えば45°の角度で傾斜して延出する構成とすることができる。凹部53は、例えば長円を短軸方向で切ったU字状の切欠となる。この場合、凹部53は、長円の長軸方向が、切欠中心軸55となる。
このU字状の凹部53は、先端部41が締結部材51のねじ込みにより底面33と平行に屈曲すると、U字状の切欠中心軸55を境とした前側半分が、先端部41とともに底面33と平行となる。一方、U字状の凹部53は、後側半分が、くつずり本体13の下面15から下向きに傾斜する翼部本体57の両脇で尖端部59となって残る。
翼部本体57は、先端部41が締結部材51のねじ込みにより、底面33に締め付けられることにより、底面33に引き寄せられ、この尖端部59が底面33に食い込む形となる。これにより、翼部39は、不陸面になりがちな底面33の凹凸に左右されずに、翼部本体57の端がしっかりと底面33に着地可能となる。
【0018】
本発明の請求項7記載のくつずりの構造は、請求項1~6のいずれか1つに記載のくつずりの構造であって、
前記くつずり用固定部65には、前記くつずり本体13に対して前記翼部39を位置決めするためのガイド67が設けられていることを特徴とする。
【0019】
このくつずりの構造では、くつずり用固定部65が、くつずり本体13に対して翼部39を位置決めするためのガイド67を有している。くつずり用固定部65は、くつずり本体13に対して、例えば工場で溶接等により固定される。ガイド67は、例えば翼部39の両縁に形成したガイド凹部とすることができる。このガイド凹部は、反対側の側縁に形成されている屈曲誘導部45を結ぶ仮想線73が、翼部39の中心線75に対して45°の角度で傾斜する。
従って、翼部39は、くつずり本体13の下面15へ固定する際に、くつずり本体13の縁部に対し、屈曲誘導部45とガイド凹部とを位置あわせすることにより、平面視でくつずり本体13の長手方向に対して45°の角度で容易に位置決めすることができる。
【0020】
本発明の請求項8記載のくつずりの施工方法は、床面19をはつって溝21を形成するはつり工程と、
くつずり本体13を前記溝21に納めて位置決めする建て込み工程と、
前記くつずり本体13の下面15に基部37が固定されたくつずり用固定部65の前記基部37から延出する翼部39を、前記翼部39の先端部41が前記溝21の底面33に当接するように曲げる曲げ工程と、
前記先端部41の後方に穿設される固定穴43に挿通した締結部材51を前記溝21の底面33に進入させることで前記先端部41を変形させ、前記締結部材51が進入すればする程、前記底面33に追従し、前記底面33に対して固定する固定工程と、
前記くつずり本体13の上面11を表出状態で前記溝21に充填される充填剤23に、前記上面11を除く前記くつずり本体13の側面における少なくとも一部分と、前記くつずり用固定部17とを埋入する充填剤充填工程と、
を含むことを特徴とする。
【0021】
このくつずりの施工方法では、くつずり用固定部17が固定されたくつずり25が施工に用いられる。くつずり用固定部17は、くつずり本体13の下面15に固定された基部37から、翼部39が下面15と平行に延出して設けられている。くつずり本体13は、例えば三方枠に固定される。すなわち、くつずり本体13は、三方枠における縦枠35の下端同士を連結して固定される。この三方枠が取り付けられる例えば建物躯体の開口部には、床面19がはつられることにより、くつずり本体13が配置可能となる溝21が予め設けられる。くつずり本体13は、建て込み工程において、三方枠が建て込まれることにより、溝21に納められて、溝21の所定位置に位置決めされる。
位置決めが完了したくつずり本体13は、曲げ工程において、くつずり本体13の側縁から突出したくつずり用固定部17の先端部41が下方へ押し付けられ、翼部39が下向きに変形される。下向きに変形した翼部39は、先端部41が底面33に接地される。
先端部41が底面33に接地して曲げられた翼部39は、固定工程において、先端部41の後方に設けられている固定穴43に、締結部材51が挿通される。翼部39は、締結部材51が底面33にねじ込まれると、ねじ込まれが進むことで固定穴43の両側に形成される屈曲誘導部45の位置で先端部41が屈曲して底面33とほぼ平行となって固定される。つまり、先端部41は、翼部39の両側に形成されている2つの屈曲誘導部45を結ぶ直線に沿って変形する。翼部39は、先端部41よりも後方の翼部本体57の端が、底面33に締め込まれる先端部41に引き寄せられる。その結果、翼部本体57は、底面33に食い込む形となって、底面33にしっかりと接地されて不動となる。
これにより、位置決めの完了したくつずり本体13は、くつずり用固定部17を介して溝21の底面33への固定が完了する。
くつずり本体13は、充填剤充填工程において、充填剤23が溝21に充填されることにより、床面19と面一となる充填剤仕上げ面が形成される。充填剤23は、上面11を除くくつずり本体13の側面における少なくとも一部分と、くつずり用固定部17とを埋設する。この際、くつずり本体13は、底面33に固定されているくつずり用固定部17により、底面33からの浮き上がりが規制される。
このくつずりの施工方法では、くつずり本体13が充填剤23に埋設されたくつずり用固定部17によってトラス構造となって溝21の底面33との間で強固に固定される。くつずり本体13に固定されるくつずり用固定部17は、締結部材51により底面33へ固定される。従って、くつずりの施工方法では、溶接を行わず、つまり無火器で施工されることとなり、溶接装置を不要とし、簡素な構造で、部品点数を増やさずに、溝21の底面33にくつずり本体13が固定可能となる。
【0022】
本発明の請求項9記載のくつずり用固定部材47は、上面11を有するくつずり本体13の下面15に固定され、床面19をはつって設けられる溝21の底面33に固定するとともに、前記くつずり本体13の上面11を表出状態で前記溝21に充填する充填剤23に埋設されるくつずり用固定部材47であって、
前記下面15に固定される基部37と、前記くつずり本体13の長手方向に対して鋭角で傾斜して前記基部37から前記下面15と平行に延出する翼部39と、前記くつずり本体13の側縁から突出する先端部41の後方に穿設される固定穴43と、前記固定穴43を挟む前記翼部39の両側に形成される屈曲誘導部45と、を備えることを特徴とする。
【0023】
このくつずり用固定部材47では、くつずり本体13の下面15に固定される基部37に、先端部41を有する翼部39が形成される。つまり、くつずり用固定部材47は、基部37と、翼部39と、先端部41とからなる簡素な構造で、くつずり本体13に取り付け固定される単体部品で形成される。
くつずり用固定部材47は、例えば溶接により、基部37が、くつずり本体13の下面15に固定されて、くつずり本体13と一体となる。
位置決めが完了したくつずり本体13は、くつずり本体13の側縁から突出したくつずり用固定部材47の先端部41が下方へ押し付けられ、翼部39が下向きに変形される。下向きに変形した翼部39は、先端部41が底面33に接地される。
先端部41が底面33に接地して曲げられた翼部39は、先端部41の後方に設けられている固定穴43に、締結部材51が挿通される。翼部39は、締結部材51が底面33にねじ込まれると、固定穴43の両側に形成される屈曲誘導部45の位置で先端部41が屈曲して底面33とほぼ平行となって固定される。翼部39は、先端部41よりも後方の翼部本体57の端が、底面33に締め込まれる先端部41に引き寄せられる。その結果、翼部本体57は、底面33に食い込む形となって、底面33にしっかりと接地されて不動となる。
これにより、位置決めの完了したくつずり本体13は、くつずり用固定部材47を介して溝21の底面33へ無火器で固定が完了する。
くつずり用固定部材47は、充填剤23が溝21に充填されることにより、床面19と面一となった充填剤23に、上面11を除くくつずり本体13の側面における少なくとも一部分とともに埋設される。
くつずり用固定部材47は、トラス構造となってくつずり本体13を溝21の底面33との間で支える構造となり、強固に固定する。従って、くつずり用固定部材47は、溶接を不要として、簡素な構造で、部品点数を増やさずに、くつずり本体13を溝21の底面33に固定できる。
【0024】
本発明の請求項10記載のくつずり用固定部材47は、請求項9に記載のくつずり用固定部材47であって、
前記基部37に対して前記翼部39の前記下面15から離反する方向の折り曲げを容易とする折曲誘導部49が設けられることを特徴とする。
【0025】
このくつずり用固定部材47では、翼部本体57と基部37との間が折曲誘導部49となる。折曲誘導部49は、単一の長穴(スリット等)、複数の穴(断続、連続)、厚み方向を小さくし薄厚とした溝21、ミシン目など、基部37と翼部本体57との折れ曲げを容易にする部分となる。翼部39は、くつずり本体13の下面15に固定された基部37に対して、この折曲誘導部49を境に、翼部本体57が下向きに傾斜して容易に折り曲げられるようになる。
【0026】
本発明の請求項11記載のくつずり用固定部材47は、請求項10に記載のくつずり用固定部材47であって、
前記屈曲誘導部45は、前記翼部39の幅方向の両縁から切欠形成された凹部53であることを特徴とする。
【0027】
このくつずり用固定部材47では、翼部39の幅方向の両縁から屈曲誘導部45が形成される。
屈曲誘導部45は、翼部39の幅方向の両縁から切欠形成された凹部53となる。上述のように、屈曲誘導部45は、固定穴43を挟む翼部39の両側に形成される。翼部39は、基部37に対して下向きに傾斜して、先端部41が溝21の底面33に接地するまで変形される。この先端部41が接地した状態では、まだ先端部41と翼部本体57とは、平板状となっている。
翼部39は、この状態で、固定穴43に挿通された締結部材51が、溝21の底面33にねじ込まれると、固定穴43が底面33に締め付けられ、先端部41が翼部本体57との境で屈曲する。この際、先端部41は、屈曲誘導部45が脆弱部となり、屈曲誘導部45の位置で曲げられる(屈曲する)ことになる。これにより、先端部41や翼部本体57が想定外の位置で変形することがなくなる。
翼部39は、幅方向の両縁から切り欠かれて形成された凹部53で曲がることにより、翼部本体57の端が角部となる。これにより、傾斜する翼部本体57は、端が線状である場合に比べ、不陸面となる底面33の凹凸を吸収しやすくなり、滑ることなく安定した接地が可能となる。
【0028】
本発明の請求項12記載のくつずり用固定部材47は、請求項11に記載のくつずり用固定部材47であって、
前記凹部53は、前記翼部39の延出方向に対して切欠中心軸55が所定角度で傾斜して先端部側から切り込まれていることを特徴とする。
【0029】
このくつずり用固定部材47では、凹部53が、先端部側から切り込まれている。凹部53は、翼部39の延出方向に対して切欠中心軸55が所定角度で傾斜している。上述のように、翼部39は、平面視でくつずり本体13の長手方向に対して45°の角度で傾斜して延出する。凹部53は、例えば長円を短軸方向で切ったU字状の切欠となる。この場合、凹部53は、長円の長軸方向が、切欠中心軸55となる。
このU字状の凹部53は、先端部41が締結部材51のねじ込みにより底面33と平行に屈曲すると、U字状の切欠中心軸55を境とした前側半分が、先端部41とともに底面33と平行となる。一方、U字状の凹部53は、後側半分が、くつずり本体13の下面15から下向きに傾斜する翼部本体57の両脇で尖端部59となって残る。
翼部本体57は、先端部41が締結部材51のねじ込みにより、底面33に締め付けられることにより、底面33に引き寄せられ、この尖端部59が底面33に食い込む形となる。これにより、翼部39は、不陸面になりがちな底面33の凹凸に左右されずに、翼部本体57の端がしっかりと底面33に着地可能となる
【0030】
本発明の請求項13記載のくつずり用固定部材69は、請求項9~12のいずれか1つに記載のくつずり用固定部材69であって、
前記翼部39には、前記くつずり本体13を位置決めするガイド67が設けられていることを特徴とする。
【0031】
このくつずり用固定部材69では、くつずり本体13に対して翼部39を位置決めするためのガイド67を有している。くつずり用固定部材69は、くつずり本体13に対して、例えば工場で溶接等により固定される。ガイド67は、例えば翼部39の両縁に形成したガイド凹部とすることができる。このガイド凹部は、反対側の側縁に形成されている屈曲誘導部45を結ぶ仮想線73が、翼部39の中心線75に対して45°の角度で傾斜する。
従って、翼部39は、くつずり本体13の下面15へ固定する際に、くつずり本体13の縁部に対し、屈曲誘導部45と切欠とを位置あわせすることにより、平面視でくつずり本体13の長手方向に対して45°の角度で容易に位置決めすることができる。
【0032】
本発明の請求項14記載のくつずり用固定部材は、請求項9~13のいずれか1つに記載のくつずり用固定部材であって、
前記くつずり本体13に対し、前記くつずり本体13の幅方向で対となって構成されて、それぞれの各基部37が近接して前記下面15に固定され、それぞれの各先端部41が前記側縁から外方向へ突出することを特徴とする。
【0033】
このくつずり用固定部材では、くつずり本体13に対し、幅方向の両側に配置されるように2つ一組となり、それぞれの先端部41が側縁から突出する。くつずり本体13の下面に固定される各基部37は、干渉せずに近接位置で固定され、例えば、くつずり本体13の幅長に比べくつずり用固定部材自体の長さが長い場合など、くつずり本体13の幅が狭い場合、くつずり本体13の長手方向に直交する線分を挟んでその両側に各基部37を配置することができる。これにより、2つ一組のくつずり用固定部材は、くつずり本体13への固定時に相互干渉しにくくでき、様々な幅長のくつずり本体13に対応させることができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明に係る請求項1記載のくつずりの構造によれば、翼部を下方に曲げ先端部を溝の底面に締結部材で固定するという容易な作業により、くつずりを無火器で施工でき、すなわち、溶接装置を全く使うことなく施工を完了することができ、溶接装置の準備や搬入、搬出などの煩雑な作業工程をなくすことができ、施工の簡素化、施工時間の短縮を実現できる。
【0035】
本発明に係る請求項2記載のくつずりの構造によれば、締結部材の進入が進むことで、底面に追従して、屈曲誘導部が変形し、底面への固定が可能となる。
【0036】
本発明に係る請求項3記載のくつずりの構造によれば、翼部長を長く確保して、底面までの調節幅を大きくできるとともに、充填剤を流入させやすくできる。
【0037】
本発明に係る請求項4記載のくつずりの構造によれば、翼部を正確な位置で曲げやすくできる。
【0038】
本発明に係る請求項5記載のくつずりの構造によれば、翼部の先端部を屈曲しやすくできるとともに、この屈曲部分における翼部の端が切欠形成部分によって角部となり、底面に食い込みやすくできる。
【0039】
本発明に係る請求項6記載のくつずりの構造によれば、屈曲部分における翼部の端が尖端部となるので、翼部が底面に追従しやすくなるとともに、より底面に食い込みやすくなる。
【0040】
本発明に係る請求項7記載のくつずりの構造によれば、くつずり本体に対するくつずり用固定部の向きや角度が定まりやすくなり、くつずり本体への取付作業が容易となる。
【0041】
本発明に係る請求項8記載のくつずりの施工方法によれば、溶接装置を全く使うことなく無火器化施工を実現でき、溶接装置の準備や搬入、搬出などの煩雑な作業工程が不要になるので、施工を簡素化し、施工時間を短縮できる。
【0042】
本発明に係る請求項9記載のくつずり用固定部材によれば、溶接装置を全く使うことなくくつずり本体を溝の底面に無火器化施工で固定でき、溶接装置の準備や搬入、搬出などの煩雑な作業工程をなくし、施工の簡素化、施工時間の短縮を実現できる。
【0043】
本発明に係る請求項10記載のくつずり用固定部材によれば、翼部を正確な位置で曲げやすくできる。
【0044】
本発明に係る請求項11記載のくつずり用固定部材によれば、翼部の先端部を屈曲しやすくできるとともに、この屈曲部分における翼部の端が凹部によって角部となり、底面に食い込みやすくできる。
【0045】
本発明に係る請求項12記載のくつずり用固定部材によれば、屈曲部分における翼部の端が尖端部となるので、翼部が底面に追従しやすくなるとともに、より底面に食い込みやすくなる。
【0046】
本発明に係る請求項13記載のくつずり用固定部材によれば、くつずり本体に対する向きや角度が定まりやすくなり、くつずり本体への取付作業が容易となる。
【0047】
本発明に係る請求項14記載のくつずり用固定部材によれば、くつずり本体に対し、幅方向の両側に配置されるように2つ一組で構成でき、それぞれの先端部が側縁から突出し、下面に固定される各基部は、干渉せずに近接位置で固定することができる。これにより、2つ一組のくつずり用固定部材は、くつずり本体への固定時に相互干渉しにくくでき、様々な幅長のくつずり本体に対応させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【
図1】第1実施形態に係るくつずりの構造を表す斜視図である。
【
図2】溝に固定されたくつずりの長手方向直交方向の断面図である。
【
図5】くつずり本体が幅狭の場合の変形例に係るくつずりの構造を表す平面図である。
【
図6】屈曲誘導部が角形である変形例に係るくつずり用固定部材の平面図である。
【
図7】屈曲誘導部が括れである変形例に係るくつずり用固定部材の平面図である。
【
図8】(a)は屈曲誘導部が薄肉部である変形例に係るくつずり用固定部材の平面図、(b)は(a)の側面図である。
【
図9】くつずりの施工方法における建て込み工程の手順説明図である。
【
図10】くつずりの施工方法における曲げ工程を表す
図9のB-B矢視図である。
【
図11】くつずりの施工方法における固定工程の手順説明図である。
【
図12】くつずりの施工方法における固定工程完了後の手順説明図である。
【
図13】第2実施形態に係るくつずりの構造に用いられるくつずり用固定部の平面図である。
【
図14】
図13に示すくつずり用固定部材が取り付けられたくつずり本体の下面図である。
【
図15】ガイドが印刷等である変形例に係るくつずり用固定部材の平面図である。
【
図16】(a)はガイドがエンボス加工部である変形例に係るくつずり用固定部材の平面図、(b)は(a)の側面図である。
【
図17】ガイドが段差部である変形例に係るくつずり用固定部材の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下、本発明に係る実施形態を図面を参照して説明する。
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係るくつずりの構造を表す斜視図である。
本実施形態に係るくつずりの構造は、長尺な帯形状の上面11を有するくつずり本体13と、くつずり本体13の下面15に固定されるくつずり用固定部17と、くつずり本体13の幅長よりも広い幅で床面19をはつって設けられくつずり本体13が内側に配置される溝21と、くつずり本体13の上面11を表出状態で溝21に充填される充填剤23(
図2参照)と、を有する。
【0050】
なお、充填剤23は、モルタルやコンクリート、或いはケミカルアンカー(登録商標)等の接着系アンカー等でもよいが、以下の各実施形態においては、充填剤23は、モルタルとして説明する。
【0051】
くつずり25は、くつずり本体13とくつずり用固定部17とで大略構成される。本実施の形態において、くつずり本体13は、長尺方向に直交する断面が、下面15を有する帯板部27の幅方向一側部から上向き傾斜の傾斜段部29が折れ曲がったレ字形状を寝かせた形となる。傾斜段部29は、帯板部27から起立する起立片31により閉塞されて台形筒部状の所謂横木部となる。横木部は、帯板部27の上面11から段差を有して高くなる。
【0052】
なお、くつずり本体13の形状は、これに限定されない。くつずり本体13は、少なくとも上面11と下面15とを有する帯板部27を備えていればよい。くつずり本体13の材質としては、例えばスチールやステンレス、アルミニウム等が好適となる。くつずり本体13は、帯板部27の下面15が、平滑な長方形となる。くつずり本体13は、この下面15と溝21の底面33との間に、充填剤23が充填され、出入口下部で横木部が段差となって床から僅かに突出する。
【0053】
くつずり25は、三方枠に固定されて施工現場へ搬入される。三方枠は、離間した平行な一対の縦枠35の上端同士が上枠(不図示)で連結される。くつずり25は、くつずり本体13が、この三方枠における縦枠35の下端同士を連結した状態で設けられる。すなわち、三方枠は、くつずり25が設けられることにより、四角枠(四方枠)となっている。
【0054】
くつずり用固定部17は、下面15に固定される基部37と、基部37から下面15と平行に延出する翼部39と、くつずり本体13の側縁から突出する翼部39の先端部41における後方に穿設される固定穴43と、固定穴43を挟む翼部39の両側に形成される屈曲誘導部45と、を備える。なお、
図1に示すくつずり用固定部材47は、現場施工により曲げられた後の形状を示している。
【0055】
くつずり用固定部17は、くつずり本体13とは別体で形成される。くつずり用固定部17は、帯板状で形成される。くつずり用固定部17は、例えば鋼製である。鋼材としては、例えばスチールが好適となる。くつずり用固定部17の板厚は、例えば0.8mm、1.0mm、1.2mm、1.6mm、2.3mmなどとすることができる。くつずり用固定部17は、板金加工等により平坦な長方形状に成形される。くつずり用固定部17は、長手方向の基端側が略四角平板状の基部37となる。基部37には、リベット等が挿通される基部固定穴48が穿設される。なお、基部37は、後端角部が面取りされることにより最終的に半円形状に形成されてもよい。くつずり用固定部17は、基部37と反対側の先端部41が、三角形状の頂部となって尖る。基部37は、くつずり本体13の下面15に、例えばねじ、リベット、溶接等により固定される。これにより、くつずり用固定部17は、くつずり本体13と一体となって現場に搬入される。
【0056】
くつずり用固定部17は、基部37と翼部39との境に、折曲誘導部49が設けられる。折曲誘導部49は、基部37に対して翼部39の下面15から離反する方向の折り曲げを容易とする。くつずり用固定部17は、三角トラスを構成するので、所定の厚みを有した鋼板等で形成される。そこで、くつずり用固定部17は、折曲誘導部49を備えることにより、基部37との境での翼部39の折り曲げが容易となっている。折曲誘導部49は、例えばスリット、穴(断続穴、連続穴)や凹溝、ミシン目状の断続穴や断続凹部などとすることができる。
【0057】
くつずり用固定部17は、固定穴43に締結部材51が挿通される。締結部材51には、例えばコンクリート用のビスやコンクリート釘等が用いられる。基部37がくつずり本体13の下面15に固定されたくつずり用固定部17は、固定穴43に挿通した締結部材51が底面33へねじ込まれることにより、屈曲誘導部45の位置で先端部41が屈曲して底面33に固定される。締結部材51は、ドライバー等の工具により手作業で底面33にねじ込まれてもよい。この場合、底面33には、予め下穴を設けてもよい。また、締結部材51は、インパクトドリル等の工具を用いて一度に底面33にねじ込まれてもよい。
【0058】
なお、上述の折曲誘導部49は、翼部39を直接押下して折り曲げることから「折曲誘導部49」と称することとする。これに対し、屈曲誘導部45は、締結部材51の進入、例えばねじ込みにより間接的に屈曲変形することから「屈曲誘導部45」と称して、両者を区別している。
【0059】
図2は、溝21に固定されたくつずり25の長手方向直交方向の断面図である。
くつずり用固定部17は、くつずり本体13の幅方向の両側から先端部41が突出するように、2つ一組でくつずり本体13に固定される。くつずり用固定部17は、それぞれの翼部39がくつずり本体13の下面15から離反する方向に、折曲誘導部49で折り曲げられる。翼部39は、先端部41が溝21の底面33に接地してから固定穴43に締結部材51が挿通される。つまり、固定穴43は、締結部材51を底面33にねじ込む際の位置決め手段ともなる。くつずりの構造では、くつずり本体13の幅方向の両側から先端部41を突出させたくつずり用固定部17が底面33に固定される。これにより、くつずり用固定部17は、くつずり本体13の板幅方向両側から均等な固定力でくつずり本体13を溝21の底面33に固定できるようになっている。
【0060】
図3は、
図2のA-A矢視図である。
くつずりの構造は、翼部39が、平面視でくつずり本体13の長手方向に対して45°の角度で延出している。くつずり本体13の幅長は、狭い場合と、広い場合とがある。くつずり用固定部17は、取り付け角度が45°となることを考えると、2つに分けて、基部37の固定位置を変えれば、先端部41を同じようにくつずり本体13の両縁から突出させることが可能となる。くつずり用固定部17は、量産する際に、汎用性、共通部品とするため、同一形状品を回転して(向きを変えて)取り付けが可能となる点対称形状となっている。回転配置した一対のくつずり用固定部17は、くつずり本体13の長手方向に例えば10mm程度ずらされる。そして、一対のくつずり用固定部17は、くつずり本体13の長さに応じて複数箇所に設けられる。一例として、くつずり用固定部17のくつずり本体13に沿う方向における間隔長は500mm程度以内で、くつずり本体13の長手方向両端からは150mm程度の位置で設けられる。
【0061】
図4は、くつずり用固定部材47の平面図である。
屈曲誘導部45は、翼部39の幅方向の両縁から切欠形成された凹部53とすることができる。
【0062】
この凹部53は、翼部39の延出方向aに対して切欠中心軸55が所定角度θで傾斜して先端部側から切り込まれる。所定角度θは、例えば45°とすることができる。凹部53は、例えば長円を短軸方向で切ったU字状の切欠となる。この場合、凹部53は、長円の長軸方向が、切欠中心軸55となる。
【0063】
次に、第1実施形態に係るくつずりの構造の変形例を説明する。
【0064】
図5は、くつずり本体13が幅狭の場合の変形例に係るくつずりの構造を表す平面図である。
2つ一組のくつずり用固定部17は、くつずり本体13の幅が狭い場合、くつずり本体13の長手方向に直交する線分を挟んでその両側に配置することができる。これにより、2つ一組のくつずり用固定部17は、くつずり本体13への固定時に相互干渉しにくくできる。
【0065】
図6は、屈曲誘導部45が角形である変形例に係るくつずり用固定部材47の平面図である。
屈曲誘導部45は、角形の凹部53とすることができる。凹部53を角形とすることにより、先端部41が屈曲した後の翼部本体57の端に、鋭角の尖端部59を作ることができる。これにより、くつずり用固定部17は、底面33への食い込みを良好にできる。
また、この凹部53は、図示しないが、上述のU字状や角形の他、V字形状などの形状の切欠で形成される構成としてもよく、翼部39の幅方向の両縁から形成され、上記したように翼部39の延出方向aに対して切欠中心軸55が所定角度θで傾斜して先端部側から切り込まれることが好ましい。
【0066】
図7は、屈曲誘導部45が括れである変形例に係るくつずり用固定部材47の平面図である。
屈曲誘導部45は、括れ部61で形成することができる。屈曲誘導部45は、幅長を狭める括れ部61とすることにより、固定穴43の両側を、翼部39の幅長よりも細幅に形成されて先端部41に続く形状となり、固定穴43の両側における屈曲誘導部45を、上記の凹部53に比べて長く形成させることができ、締結部材51によるねじ込み時に容易に屈曲可能となる。また、底面33に食い込む鋭利な尖端部59が無く、運搬、作業時における安全性を高めることができる。
【0067】
図8(a)は屈曲誘導部45が薄肉部63である変形例に係るくつずり用固定部材47の平面図、(b)は(a)の側面図である。
折曲誘導部49及び屈曲誘導部45は、薄肉部63として形成することができる。くつずり用固定部17は、薄肉部63により折り曲げ強度を低くし、切り欠きに比べ強度の低下を抑制して、この脆弱部分で翼部39と先端部41との間を折り曲げやすくすることができる。
【0068】
次に、くつずり25の施工方法を説明する。
【0069】
図9は、くつずり25の施工方法における建て込み工程の手順説明図である。
本実施形態に係るくつずり25の施工方法は、はつり工程と、建て込み工程と、曲げ工程と、固定工程と、充填剤充填工程と、を含む。
【0070】
はつり工程は、床面19をはつって溝21を形成する。溝21は、くつずり本体13の板幅よりも大きい溝幅で形成される。溝21は、側面が、カッター(コンクリートカッター)の刃で削られるので、比較的滑らかな略垂直の面になる。一方、溝21の底面33は、たがねなどにより削り取っていくような作業、所謂はつり作業で作られる。このため、はつった底面33は凹凸の多いガタガタな面となる。つまり、底面33は、不陸面となる。また、溝21の溝幅は、三方枠の縦枠35の幅長よりも大きい溝幅で形成される。溝21は、くつずり本体13の上面11が床面19と面一若しくは3mm程度突出するようにくつずり本体13が配置され、このくつずり本体13の下方にモルタル23が流入可能な空間、すなわち充填剤導入部を備える深さで形成される。
【0071】
建て込み工程は、くつずり25が三方枠に取り付けられて建て込まれる。三方枠は、離間した平行な一対の縦枠35の上端同士が上枠(不図示)で連結されている。くつずり25は、三方枠における縦枠35の下端同士を連結した状態で設けられる。すなわち、三方枠は、くつずり25が設けられることにより、四角枠(四方枠)となっている。建て込み工程は、このくつずり25の取り付けられた三方枠を、くつずり本体13が溝21の所定位置に配置されるようにして建て込まれる。つまり、三方枠及びくつずり本体13が、位置決めされた所定位置で躯体(不図示)側へ固定される。この状態で、くつずり本体13は、幅方向の両側から、くつずり用固定部17の先端部41が突出している。
【0072】
図10は、くつずり25の施工方法における曲げ工程を表す
図9のB-B矢視図である。
曲げ工程は、くつずり本体13の下面15に基部37が固定されたくつずり用固定部17の基部37から延出する翼部39を、翼部39の先端部41が溝21の底面33に当接するように押し曲げる。この押し曲げは、折曲誘導部49を備えることで容易となる。これにより、先端部41を底面33に接地させる。
【0073】
図11は、くつずり25の施工方法における固定工程の手順説明図である。
固定工程は、底面33に接地した先端部41の後方に穿設される固定穴43に挿通した締結部材51を、溝21の底面33に進入させる。例えば、締結部材51を、ビスなどとした場合では、ドライバーやインパクトドリル等の工具81にて溝21の底面33にねじ込む。
【0074】
図12は、くつずり25の施工方法における固定工程完了後の手順説明図である。
くつずり用固定部17は、固定穴43に挿通した締結部材51を底面33にねじ込み、先端部41を締め込みにより変形させて底面33と平行となるようにして固定する。くつずり用固定部17は、底面33からの翼部39の角度が、33°程度で先端部41が接地し、45°程度の角度で折れ曲がり、翼部本体57の尖端部59が底面33に食い込む。
【0075】
なお、溝21の底面33は、はつり工程にて形成されるが、平滑な面に形成されることはなく、電動ピックやドリルなどで掘削するように形成されるので不連続な凹凸面、所謂不陸面となり、くつずり本体13からの間隔距離、つまりくつずり本体13の下面15と底面33との間隔距離にバラツキが生じてしまうが、翼部本体57の端から突出する尖端部59を不陸面に食い込ませることにより、このバラツキを吸収して翼部本体57の端を固定でき下面15をしっかりと底面33に対して固定することが可能となる。つまり、固定工程において、締結部材51が底面33に進入すればする程、この底面33の状態、すなわち不陸面となっている底面33の形状に追従して屈曲し、固定されることとなる。そして、翼部本体57の傾き角度により、下面15と不陸面となる底面33との間隔距離を調節しながら両面にわたって介設状態となる。この介設状態は、底面33に対するくつずり本体13の高さを支持し、くつずり本体13の沈み込みを防止し、且つ後工程である充填剤充填工程においてのくつずり本体13の浮き上がり防止となる。
【0076】
また、上述の建て込み工程においては、くつずり25を三方枠に連結せずに溝21に納める手順とする場合もある。すなわち、くつずり25のみを溝21内に配置して、上記曲げ工程を行う手順となる。この場合、はつり工程の後、建て込み工程として、くつずり25を溝21内へ搬入するとともに、底面33とくつずり本体13の下面15との間に、所定形状、例えばブロック状の支持部材(図示せず)を仮配置し、くつずり25を溝21の底面33に対して浮かせた状態として、溝21内に配置する。支持部材は、例えば複数個で構成され、くつずり25の長手方向に所定距離隔てて配置して、各支持部材がくつずり用固定部17に干渉しないように配置される。この状態は、くつずり25の下方に隙間を有した状態(
図10参照)となり、その浮上状態から曲げ工程となる。曲げ工程では、上記同様に翼部39の先端部41が溝21の底面33に当接するように押し曲げられ、接地させることとなる。その後、締結部材51による底面33への固定工程を経た後、上記支持部材を取り除く手順となる。すなわち、支持部材を用いて、くつずり25を溝21内に一時的に浮上させる手順を建て込み工程にて行う。この一時的にくつずり25を浮上状態とする際には、くつずり25の高さや水平レベルなどを調整することが好ましい。
【0077】
充填剤充填工程は、充填剤であるモルタル23が、床面19と面一となる仕上げ面が形成されるように、くつずり本体13が配置された溝21に充填される。モルタル23は、くつずり本体13の上面11を除く、くつずり本体13の側面における少なくとも一部分を埋入する。この際、くつずり用固定部17も同時にモルタル23に埋入する。溝21に充填されたモルタル23は、くつずり本体13の下面15、くつずり用固定部17に密着した状態で硬化させる。所定時間の養生により、モルタル23が固化することにより、くつずり本体13の上面11を除く側面の少なくとも一部分、くつずり用固定部17が埋設されて、モルタル23とくつずり本体13とが一体化し、くつずり25の施工が完了する。
【0078】
なお、上述したくつずり用固定部17は、くつずり本体13の下面15に固定され、くつずり本体13と一体となって使用される他、くつずり本体13とは別体の単体部品として取り扱われてもよい。この場合、くつずり本体13と別体となったくつずり用固定部17は、くつずり用固定部材47と称すことができる。くつずり用固定部材47は、例えば溶接、螺合具、係着等の取付手段により、種々の形状のくつずり本体13の下面15に後付けすることができる。
【0079】
このくつずり用固定部材47は、長尺な帯形状の上面11を有するくつずり本体13の下面15を、くつずり本体13の幅長よりも広い幅で床面19をはつって設けられる溝21の底面33に固定する。くつずり用固定部材47は、くつずり本体13の上面11を表出状態で溝21に充填するモルタル23に埋設される。くつずり用固定部材47は、くつずり用固定部17と同様に、下面15に固定される基部37と、くつずり本体13の長手方向に対して45°の角度で傾斜して基部37から下面15と平行に延出する翼部39と、くつずり本体13の側縁から突出する先端部41の後方に穿設される固定穴43と、固定穴43を挟む翼部39の両側に形成される屈曲誘導部45と、を備える。
【0080】
また、くつずり用固定部材47は、基部37に対して翼部39の下面15から離反する方向の折り曲げを容易とする折曲誘導部49が設けられる。
【0081】
また、くつずり用固定部材47は、屈曲誘導部45が、翼部39の幅方向の両縁から切欠形成された凹部53である。
【0082】
さらに、くつずり用固定部材47の凹部53は、翼部39の延出方向aに対して切欠中心軸55が所定角度θで傾斜して先端部側から切り込まれてもよい。
【0083】
次に、上記した構成の作用を説明する。
【0084】
本実施形態に係るくつずりの構造では、くつずり本体13の下面15に、くつずり用固定部17が固定される。くつずり本体13は、溝21の底面33に対向する下面15に、くつずり用固定部17が固定されることになる。くつずり用固定部17は、くつずり本体13の下面15に固定される基部37を有する。翼部39は、基部37と同一材料により、基部37から下面15と平行に延出して形成される。
【0085】
くつずり本体13は、例えば、三方枠に固定される。三方枠は、離間した平行な一対の縦枠35の上端同士が上枠で連結されている。くつずり本体13は、この三方枠における縦枠35の下端同士を連結して固定される。くつずり本体13は、三方枠が建て込まれることにより、溝21に納められて、溝21の所定位置に位置決めされる。
【0086】
くつずり本体13の位置決めが完了した状態でくつずり用固定部17は、くつずり本体13の側縁から突出する先端部41が押下されて基部37に対して翼部39が折曲位置Pb(
図4参照)で変形される(折り曲げられる)ことにより、底面33に翼部39の先端部41が当接するまで曲げられる。
【0087】
下方へ曲げられた翼部39は、先端部41の固定穴43に締結部材51が挿通される。締結部材51は、底面33にねじ込まれる。翼部39は、締結部材51が底面33にねじ込まれることにより、固定穴43が底面33に接するまで変形した後、先端部41が底面33とほぼ平行となって固定される。この際、翼部39は、固定穴43を挟む翼部39の両側に形成される屈曲誘導部45により、傾斜する翼部本体57と、底面33と平行に変形する先端部41とが両側の屈曲誘導部45を結ぶ屈曲位置Pk(
図4参照)を境に折れ曲がる(屈曲する)。つまり、翼部39は、両側に形成されている2つの屈曲誘導部45を結ぶ直線に沿って屈曲する。
【0088】
これにより、位置決めの完了したくつずり本体13は、くつずり用固定部17を介して溝21の底面33へ無火器で固定が完了する。
【0089】
くつずり本体13は、モルタル等の充填剤23が溝21に充填されることにより、床面19と面一となった充填剤23に、上面11を除くくつずり本体13の側面における少なくとも一部分と、くつずり用固定部17とが埋設される。
【0090】
このくつずりの構造では、くつずり本体13が充填剤23に埋設されたくつずり用固定部17によってトラス構造となり溝21の底面33に強固に固定される。くつずり用固定部17は、基部37と翼部39とからなる簡素な構造で、単体部品で形成されて、くつずり本体13に固定される。従って、くつずり本体13は、溶接を行わずに、簡素な構造で、部品点数を増やさずに、溝21の底面33に固定が可能となる。溶接を行わず、すなわち無火器で施工が済むので、溶接装置の準備、搬入搬出などの煩雑な作業がなくなり、施工が容易となり、施工時間も短縮できる。
【0091】
また、このくつずりの構造では、翼部39が、平面視でくつずり本体13の長手方向に対して45°の角度で傾斜して、くつずり本体13に取り付けられている。このため、翼部39は、くつずり本体13の長手方向に対して直交方向で取り付けられる場合に比べ、延出長を大きく確保できる。これにより、翼部39は、くつずり本体13に直交方向で取り付けられる場合に比べ、浅い溝21から深い溝21まで接地が可能となる。
【0092】
また、翼部39は、傾斜することにより、くつずり本体13の側面から充填剤23が充填される際、くつずり本体13の長手方向に対して直交方向で取り付けられる場合に比べ、充填剤23の流動抵抗が小さくなる。つまり、充填剤23が充填しやすくなり、充填作業が良好に行えるようになる。その結果、翼部長を長く確保して、底面33までの調節(アジャスト)幅を大きくできるとともに、充填剤23を流入させやすくできる。
【0093】
また、このくつずりの構造では、翼部本体57と基部37との間が折曲誘導部49となる。折曲誘導部49は、単一の長穴(スリット等)、複数の穴(断続、連続)、厚み方向を小さくし薄厚とした溝、ミシン目など、基部37と翼部本体57との折れ曲げを容易にする部分となる。翼部39は、くつずり本体13の下面15に固定された基部37に対して、この折曲誘導部49を境に、翼部本体57が下向きに傾斜して容易に折り曲げられるようになる。その結果、翼部39を正確な位置で曲げやすくできる。
【0094】
また、このくつずりの構造では、翼部39の幅方向の両縁から屈曲誘導部45が形成される。屈曲誘導部45は、翼部39の幅方向の両縁から切欠形成された凹部53となる。上述のように、屈曲誘導部45は、固定穴43を挟む翼部39の両側に形成される。翼部39は、基部37に対して下向きに傾斜して、先端部41が溝21の底面33に接地するまで変形される。この先端部41が接地した状態では、まだ先端部41と翼部本体57とは、平板状となっている。
【0095】
翼部39は、この状態で、固定穴43に挿通された締結部材51が、溝21の底面33にねじ込まれると、固定穴43の部分が底面33に締め付けられ、先端部41が翼部本体57との境で屈曲する。この際、先端部41は、屈曲誘導部45が脆弱部となり、屈曲誘導部45の位置で曲げられる(屈曲する)ことになる。これにより、先端部41や翼部本体57が想定外の位置で変形することがなくなる。
【0096】
翼部39は、幅方向の両縁から切り欠かれて形成された凹部53で曲がることにより、翼部本体57の端が角部となる。これにより、傾斜する翼部本体57は、端が線状である場合、つまり単純に折れ曲がり稜線となるような場合に比べ、不陸面となる底面33の凹凸を吸収しやすくなり、滑ることなく安定した接地が可能となる。その結果、翼部39の先端部41を屈曲しやすくできるとともに、この屈曲部分における翼部39の端が凹部53によって角部となり、底面33に食い込みやすくできる。
【0097】
また、このくつずりの構造では、凹部53が、先端部側から切り込まれている。凹部53は、翼部39の延出方向aに対して切欠中心軸55が所定角度θで傾斜している。上述のように、翼部39は、平面視でくつずり本体13の長手方向に対して45°の角度で傾斜して延出する。凹部53は、例えば長円を短軸方向で切ったU字状の切欠となる。この場合、凹部53は、長円の長軸方向が、切欠中心軸55となる。
【0098】
このU字状の凹部53は、先端部41が締結部材51のねじ込みにより底面33と平行に屈曲すると、U字状の切欠中心軸55を境とした前側半分が、先端部41とともに底面33と平行となる。一方、U字状の凹部53は、後側半分が、くつずり本体13の下面15から下向きに傾斜する翼部本体57の両脇で尖端部59となって残る。
【0099】
翼部本体57は、先端部41が締結部材51のねじ込みにより、底面33に締め付けられることにより、底面33に引き寄せられ、この尖端部59が底面33に食い込む形となる。これにより、翼部39は、不陸面になりがちな底面33の凹凸に左右されずに、翼部本体57の端がしっかりと底面33に着地可能となる。その結果、この屈曲部分における翼部39の端が凹部53によって尖端部59となるので、翼部39が底面33に追従しやすくなるとともに、より底面33に食い込みやすくなる。
【0100】
本実施形態に係るくつずりの施工方法では、くつずり用固定部17が固定されたくつずり25が施工に用いられる。くつずり用固定部17は、くつずり本体13の下面15に固定された基部37から、翼部39が下面15と平行に延出して設けられている。くつずり本体13は、三方枠に固定される。すなわち、くつずり本体13は、三方枠における縦枠35の下端同士を連結して固定される。この三方枠が取り付けられる例えば建物躯体の開口部には、床面19がはつられることにより、くつずり本体13が配置可能となる溝21が予め設けられる。くつずり本体13は、建て込み工程において、三方枠が建て込まれることにより、溝21に納められて、溝21の所定位置に位置決めされる。
【0101】
位置決めが完了したくつずり本体13は、曲げ工程において、くつずり本体13の側縁から突出したくつずり用固定部17の先端部41が下方へ押し付けられ、翼部39が下向きに変形される。下向きに変形した翼部39は、先端部41が底面33に接地される。
【0102】
先端部41が底面33に接地して曲げられた翼部39は、固定工程において、先端部41の後方に設けられている固定穴43に、締結部材51が挿通される。翼部39は、締結部材51が底面33にねじ込まれると、固定穴43の両側に形成される屈曲誘導部45の位置で先端部41が屈曲して底面33とほぼ平行となって固定される。つまり、先端部41は、翼部39の両側に形成されている2つの屈曲誘導部45を結ぶ直線に沿って変形する。翼部39は、先端部41よりも後方の翼部本体57の端が、底面33に締め込まれる先端部41に引き寄せられる。その結果、翼部本体57は、底面33に食い込む形となって、底面33にしっかりと接地されて不動となる。
【0103】
これにより、位置決めの完了したくつずり本体13は、くつずり用固定部17を介して溝21の底面33への固定が完了する。
【0104】
くつずり本体13は、充填剤充填工程において、モルタル等の充填剤23が溝21に充填されることにより、床面19と面一となる充填剤仕上げ面が形成される。充填剤23は、上面11を除くくつずり本体13の側面における少なくとも一部分と、くつずり用固定部17とを埋設する。この際、くつずり本体13は、底面33に固定されているくつずり用固定部17により、底面33からの浮き上がりが規制される。
【0105】
このくつずり25の施工方法では、くつずり本体13が充填剤23に埋設されたくつずり用固定部17によってトラス構造となって溝21の底面33との間で強固に固定される。くつずり本体13に固定されるくつずり用固定部17は、締結部材51により底面33へ固定される。従って、くつずり25の施工方法では、溶接を行わず、つまり無火器で施工されることとなり、溶接装置を不要とし、簡素な構造で、部品点数を増やさずに、溝21の底面33にくつずり本体13が固定可能となる。
【0106】
本実施形態に係るくつずり用固定部材47では、くつずり本体13の下面15に固定される基部37に、先端部41を有する翼部39が形成される。つまり、くつずり用固定部材47は、基部37と、翼部39と、先端部41とからなる簡素な構造で、くつずり本体13に取り付け固定される単体部品で形成される。
【0107】
くつずり用固定部材47は、例えば溶接により、基部37が、くつずり本体13の下面15に固定されて、くつずり本体13と一体となる。
【0108】
位置決めが完了したくつずり本体13は、くつずり本体13の側縁から突出したくつずり用固定部材47の先端部41が下方へ押し付けられ、翼部39が下向きに変形される。下向きに変形した翼部39は、先端部41が底面33に接地される。
【0109】
先端部41が底面33に接地して曲げられた翼部39は、先端部41の後方に設けられている固定穴43に、締結部材51が挿通される。翼部39は、締結部材51が底面33にねじ込まれると、固定穴43の両側に形成される屈曲誘導部45の位置で先端部41が屈曲して底面33とほぼ平行となって固定される。翼部39は、先端部41よりも後方の翼部本体57の端が、底面33に締め込まれる先端部41に引き寄せられる。その結果、翼部本体57は、底面33に食い込む形となって、底面33にしっかりと接地されて不動となる。
【0110】
これにより、位置決めの完了したくつずり本体13は、くつずり用固定部材47を介して溝21の底面33へ無火器で固定が完了する。
【0111】
くつずり用固定部材47は、充填剤23が溝21に充填されることにより、床面19と面一となった充填剤23に、上面11を除くくつずり本体13の側面における少なくとも一部分とともに埋設される。
【0112】
くつずり用固定部材47は、トラス構造となってくつずり本体13を溝21の底面33との間で支える構造となり、強固に固定する。従って、くつずり用固定部材47は、溶接を不要として、簡素な構造で、部品点数を増やさずに、くつずり本体13を溝21の底面33に固定できる。
【0113】
本実施形態に係るくつずり用固定部材47では、翼部本体57と基部37との間が折曲誘導部49となる。折曲誘導部49は、単一の長穴(スリット等)、複数の穴(断続、連続)、厚み方向を小さくし薄厚とした溝、ミシン目など、基部37と翼部本体57との折れ曲げを容易にする部分となる。翼部39は、くつずり本体13の下面15に固定された基部37に対して、この折曲誘導部49を境に、翼部本体57が下向きに傾斜して容易に折り曲げられるようになる。この折曲誘導部49を有したくつずり用固定部材47によれば、翼部39を正確な位置で曲げやすくできる。
【0114】
また、このくつずり用固定部材47では、翼部39の幅方向の両縁から屈曲誘導部45が形成される。
【0115】
屈曲誘導部45は、翼部39の幅方向の両縁から切欠形成された凹部53となる。上述のように、屈曲誘導部45は、固定穴43を挟む翼部39の両側に形成される。翼部39は、基部37に対して下向きに傾斜して、先端部41が溝21の底面33に接地するまで変形される。この先端部41が接地した状態では、まだ先端部41と翼部本体57とは、平板状となっている。
【0116】
翼部39は、この状態で、固定穴43に挿通された締結部材51が、溝21の底面33にねじ込まれると、固定穴43が底面33に締め付けられ、先端部41が翼部本体57との境で屈曲する。この際、先端部41は、屈曲誘導部45が脆弱部となり、屈曲誘導部45の位置で曲げられる(屈曲する)ことになる。これにより、先端部41や翼部本体57が想定外の位置で変形することがなくなる。
【0117】
翼部39は、幅方向の両縁から切り欠かれて形成された凹部53で曲がることにより、翼部本体57の端が角部となる。これにより、傾斜する翼部本体57は、端が線状である場合に比べ、不陸面となる底面33の凹凸を吸収しやすくなり、滑ることなく安定した接地が可能となる。その結果、翼部39の先端部41を屈曲しやすくできるとともに、この屈曲部分における翼部39の端が凹部53によって角部となり、底面33に食い込みやすくできる。
【0118】
また、このくつずり用固定部材47では、凹部53が、先端部側から切り込まれている。凹部53は、翼部39の延出方向aに対して切欠中心軸55が所定角度θで傾斜している。上述のように、翼部39は、平面視でくつずり本体13の長手方向に対して45°の角度で傾斜して延出する。凹部53は、例えば長円を短軸方向で切ったU字状の切欠となる。この場合、凹部53は、長円の長軸方向が、切欠中心軸55となる。
【0119】
このU字状の凹部53は、先端部41が締結部材51のねじ込みにより底面33と平行に屈曲すると、U字状の切欠中心軸55を境とした前側半分が、先端部41とともに底面33と平行となる。一方、U字状の凹部53は、後側半分が、くつずり本体13の下面15から下向きに傾斜する翼部本体57の両脇で尖端部59となって残る。
【0120】
翼部本体57は、先端部41が締結部材51のねじ込みにより、底面33に締め付けられることにより、底面33に引き寄せられ、この尖端部59が底面33に食い込む形となる。これにより、翼部39は、不陸面になりがちな底面33の凹凸に左右されずに、翼部本体57の端がしっかりと底面33に着地可能となるその結果、この屈曲部分における翼部39の端が凹部53によって尖端部59となるので、翼部39が底面33に追従しやすくなるとともに、より底面33に食い込みやすくなる。
【0121】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態を説明する。
【0122】
図13は、第2実施形態に係るくつずりの構造に用いられるくつずり用固定部65の平面図である。なお、この第2実施形態において、第1実施形態で示した部材・部位と同等の部材・部位には同一の符号を付し重複する説明は省略する。
第2実施形態に係るくつずりの構造は、くつずり用固定部65に、くつずり本体13に対して翼部39を位置決めするためのガイド67が設けられている。
【0123】
ガイド67は、くつずり用固定部65の両縁を切り欠いた例えばガイド凹部とすることができる。ガイド凹部は、くつずり用固定部65に形成されている屈曲誘導部45における切欠中心軸55の延長線上に配置される。第1実施形態と同様に、くつずり用固定部65は、くつずり本体13の長手方向に対して45°の角度で傾斜して、くつずり本体13の下面15に固定される。
【0124】
また、くつずり用固定部65は、基部37の後端が、三角形の頂部となって尖る。この三角形は、頂部を挟む二辺の挟角が90°となる。
【0125】
なお、第2実施形態に係るくつずり用固定部65も、2つ一組がくつずり本体13の下面15に固定され、くつずり本体13と一体となって使用される他、くつずり本体13とは別体の単体部品として取り扱われてもよい。この場合、くつずり本体13と別体となったくつずり用固定部65は、くつずり用固定部材69と称すことができる。くつずり用固定部材69は、例えば溶接、螺合具、係着等の取付手段により、種々の形状のくつずり本体13の下面15に後付けすることができる。
【0126】
図14は、
図13に示すくつずり用固定部材69が取り付けられたくつずり本体13の下面図である。
このくつずりの構造では、くつずり用固定部65が、くつずり本体13に対して翼部39を位置決めするためのガイド67を有している。くつずり用固定部65は、くつずり本体13に対して、例えば溶接部71が施工現場ではなく、施工現場搬入前に予め工場内で溶接固定される。ガイド67は、翼部39の両縁に形成したガイド凹部とすることができる。この切欠は、反対側の側縁に形成されている屈曲誘導部45とを結ぶ仮想線73(
図13参照)が、翼部39の中心線75(
図13参照)に対して45°の角度で傾斜する。
【0127】
従って、翼部39は、くつずり本体13の下面15へ固定する際に、くつずり本体13の縁部に対し、屈曲誘導部45とガイド67とを位置あわせすることにより、平面視でくつずり本体13の長手方向に対して45°の角度で容易に位置決めすることができる。その結果、くつずり本体13に対するくつずり用固定部65の向きや角度が定まりやすくなり、くつずり本体13への取付作業が容易となる。
【0128】
また、単体部品としてのくつずり用固定部材69も、くつずりの構造と同様に、くつずり本体13の下面15へ固定する際に、くつずり本体13の縁部に対し、屈曲誘導部45とガイド67とを位置あわせすることにより、平面視でくつずり本体13の長手方向に対して45°の角度で容易に位置決めすることができる。その結果、くつずり本体13に対するくつずり用固定部65の向きや角度が定まりやすくなり、くつずり本体13への取付作業が容易となる。
【0129】
次に、第2実施形態に係るくつずりの構造の変形例を説明する。
【0130】
図15は、ガイド67が印刷等である変形例に係るくつずり用固定部材69の平面図である。
ガイド67は、くつずり用固定部65の板面に付された線、標示等の印刷、刻印等であってもよい。印刷や刻印等のガイド67によれば、くつずり用固定部65の強度低下を抑制できる。
【0131】
図16(a)はガイド67がエンボス加工部である変形例に係るくつずり用固定部材69の平面図、(b)は(a)の側面図である。
また、ガイド67は、エンボス加工や板金加工により形成される膨出部77であってもよい。板金加工は、例えばタレットパンチプレスなどによる成形や、型抜きとエンボス加工とを同時に行う加工でもよい。膨出部77によるガイド67によれば、切欠に比べくつずり用固定部65の強度低下を抑制できる。また、位置合わせの際に、滑らずに位置決めが可能となる。
【0132】
図17は、ガイド67が段差部79である変形例に係るくつずり用固定部材69の平面図である。
また、ガイド67は、くつずり用固定部65の外形状に設けた段差部79としてもよい。段差部79によるガイド67によれば、切欠に比べくつずり用固定部65の強度低下を抑制できる。また、型抜き成形として簡素な形状となる。
【0133】
従って、本実施形態に係るくつずりの構造によれば、容易な作業により、くつずり25を無火器で溝21内に施工できる。
【0134】
本実施形態に係るくつずり25の施工方法によれば、溶接装置を全く使うことなく無火器化施工を実現でき、溶接装置の準備や搬入、搬出などの煩雑な作業工程が不要になるので、施工を簡素化し、施工時間を短縮できる。
【0135】
本実施形態に係るくつずり用固定部材47、くつずり用固定部材69によれば、溶接装置を全く使うことなくくつずり本体13を溝21の底面33に無火器化施工で固定でき、溶接装置の準備や搬入、搬出などの煩雑な作業工程をなくし、施工の簡素化、施工時間の短縮を実現できる。
【符号の説明】
【0136】
11…上面
13…くつずり本体
15…下面
17,65…くつずり用固定部
19…床面
21…溝
23…充填剤(モルタル)
25…くつずり
33…底面
35…縦枠
37…基部
39…翼部
41…先端部
43…固定穴
45…屈曲誘導部
47,69…くつずり用固定部材
49…折曲誘導部
51…締結部材
53…凹部
55…切欠中心軸
67…ガイド
θ…所定角度
a…延出方向