(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023007244
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】血液浄化装置
(51)【国際特許分類】
A61M 1/16 20060101AFI20230111BHJP
【FI】
A61M1/16 185
A61M1/16 161
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021110364
(22)【出願日】2021-07-01
(71)【出願人】
【識別番号】000226242
【氏名又は名称】日機装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095614
【弁理士】
【氏名又は名称】越川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】河原林 理
(72)【発明者】
【氏名】豊田 将弘
(72)【発明者】
【氏名】田中 健作
【テーマコード(参考)】
4C077
【Fターム(参考)】
4C077AA05
4C077BB01
4C077GG02
4C077GG03
4C077GG13
4C077GG14
4C077HH10
4C077HH13
4C077HH14
4C077KK09
(57)【要約】
【課題】血液浄化治療工程で使用したB剤原液を脱油脂洗浄工程で使用するアルカリ剤として流用することができるとともに、脱油脂洗浄工程中に生じた二酸化炭素を取り除いて脱油脂洗浄を良好に行わせることができる血液浄化装置を提供する。
【解決手段】透析液導入ラインL1および排液排出ラインL2を有する配管部と、複式ポンプ1と、A剤原液及びB剤原液を配管部に導入して混合し、且つ、所定濃度に希釈することにより作製された透析液をダイアライザCに送液して血液浄化治療を行う血液浄化治療工程、および配管部にB剤原液を導入して加熱することにより得られた炭酸ナトリウム水溶液を流通させて配管部の油脂を除去する脱油脂洗浄を行う脱油脂洗浄工程を実行する制御部13とを具備し、制御部13は、脱油脂洗浄工程を実行しながら、炭酸ナトリウム水溶液を流通させる際に生じた二酸化炭素を配管部の外部に排出するものである。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液浄化器及び血液回路を通じて患者の血液を体外循環させ、前記血液を浄化する血液浄化装置であって、
前記血液浄化器に透析液を導入する透析液導入ライン、および前記血液浄化器から排液を排出する排液排出ラインを有する配管部と、
前記配管部の液体を送液させる送液部と、
A剤原液及びB剤原液を前記配管部に導入して混合し、且つ、所定濃度に希釈することにより作製された透析液を前記血液浄化器に送液して血液浄化治療を行う血液浄化治療工程、および前記配管部にB剤原液を導入して加熱することにより得られた重炭酸塩水溶液を流通させて前記配管部の油脂を除去する脱油脂洗浄を行う脱油脂洗浄工程を、前記送液部を制御することによって実行する制御部とを具備し、
前記制御部は、前記脱油脂洗浄工程を実行しながら、重炭酸塩水溶液を流通させる際に生じた二酸化炭素を前記配管部の外部に排出する、血液浄化装置。
【請求項2】
前記透析液導入ラインは、前記血液浄化治療工程において透析液を透過させつつ含有する気泡を捕捉する捕捉部が接続され、
前記脱油脂洗浄工程で重炭酸塩水溶液を流通させる際に前記捕捉部が二酸化炭素を捕捉する、請求項1記載の血液浄化装置。
【請求項3】
前記透析液導入ラインにおける前記捕捉部の下流側又は上流側に液圧を検出する液圧検出部をさらに具備し、
前記制御部は、前記脱油脂洗浄工程において前記液圧検出部が所定の液圧の変化を検出したことを条件として、前記捕捉部で捕捉した二酸化炭素を前記配管部の外部に排出する、請求項2記載の血液浄化装置。
【請求項4】
前記捕捉部は、前記捕捉部の上流側であって捕捉された気泡が収容される1次側部位、及び前記捕捉部の下流側であって透過した透析液が流通する2次側部位を有し、
前記配管部は、前記1次側部位と前記排液排出ラインとを接続して連通させるバイパスラインと、前記バイパスラインを開閉して流路を開放又は閉止する開閉弁とを有し、
前記制御部は、前記脱油脂洗浄工程において前記液圧検出部が所定の液圧の変化を検出したことを条件として、前記開閉弁を開状態として前記1次側部位の二酸化炭素を前記バイパスライン及び排液排出ラインを介して前記配管部の外部に排出する、請求項3記載の血液浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液浄化器及び血液回路を通じて患者の血液を体外循環させ、血液を浄化する血液浄化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
透析治療などで用いられる血液浄化装置としての透析装置は、通常、血液浄化器に透析液を導入する透析液導入ライン、および血液浄化器から排液を排出する排液排出ラインを有する配管部と、配管部内の透析液及び排液を送液させる送液部とを有し、患者の血液を体外循環させるための血液回路を血液浄化器に接続して構成されており、血液回路にて患者の血液を体外循環させつつ血液浄化器にて透析治療(血液浄化治療)を行わせるものとされている。
【0003】
かかる血液浄化装置は、通常、例えば炭酸ナトリウムや次亜塩素酸ナトリウムなどのアルカリ剤を配管部の流路に導入して流通させることにより脱油脂洗浄する脱油脂工程を定期的に実施することにより、長期に亘って衛生が保たれるようになっている。そして、従来、透析液を作製するためのB剤原液を加熱することにより炭酸ナトリウム水溶液を生成し、この得られた炭酸ナトリウム水溶液を脱油脂工程にて配管部に流通させるアルカリ剤として使用することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
このように、透析治療で透析液を作製するためのB剤原液を加熱し、生成された炭酸ナトリウム水溶液を脱油脂工程にて流通させるアルカリ剤として使用することにより、透析治療で残余したB剤原液を再利用することができ、薬剤の使用コストを低減させることができるとともに、脱油脂工程にて使用する薬剤の種類を削減することができ、管理の手間を低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の血液浄化装置においては、透析治療(血液浄化治療工程)で使用したB剤原液を脱油脂洗浄工程で使用するアルカリ剤(炭酸ナトリウム水溶液)として流用することができるものの、B剤原液を加熱した際に生じた二酸化炭素(CO2)が配管部で滞留してしまうことが予想され、脱油脂洗浄を良好に行うことができない虞があった。また、B剤原液を加熱した際に生じた二酸化炭素を予め脱気して取り除くことも考えられるが、その場合であっても、脱油脂洗浄工程中に生じた二酸化炭素が配管部で滞留してしまう虞があった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、血液浄化治療工程で使用したB剤原液を脱油脂洗浄工程で使用するアルカリ剤として流用することができるとともに、脱油脂洗浄工程中に生じた二酸化炭素を取り除いて脱油脂洗浄を良好に行わせることができる血液浄化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る一実施形態の血液浄化装置は、血液浄化器及び血液回路を通じて患者の血液を体外循環させ、前記血液を浄化する血液浄化装置であって、前記血液浄化器に透析液を導入する透析液導入ライン、および前記血液浄化器から排液を排出する排液排出ラインを有する配管部と、前記配管部の液体を送液させる送液部と、A剤原液及びB剤原液を前記配管部に導入して混合し、且つ、所定濃度に希釈することにより作製された透析液を前記血液浄化器に送液して血液浄化治療を行う血液浄化治療工程、および前記配管部にB剤原液を導入して加熱することにより得られた重炭酸塩水溶液を流通させて前記配管部の油脂を除去する脱油脂洗浄を行う脱油脂洗浄工程を、前記送液部を制御することによって実行する制御部とを具備し、前記制御部は、前記脱油脂洗浄工程を実行しながら、重炭酸塩水溶液を流通させる際に生じた二酸化炭素を前記配管部の外部に排出するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、脱油脂洗浄工程を実行しながら、重炭酸塩水溶液を流通させる際に生じた二酸化炭素を配管部の外部に排出するので、血液浄化治療工程で使用したB剤原液を脱油脂洗浄工程で使用するアルカリ剤として流用することができるとともに、脱油脂洗浄工程中に生じた二酸化炭素を取り除いて脱油脂洗浄を良好に行わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係る血液浄化装置を示す模式図
【
図2】同血液浄化装置で実行される血液浄化治療工程を説明するための模式図
【
図3】同血液浄化装置で実行される重炭酸塩水溶液生成工程を説明するための模式図
【
図4】同血液浄化装置で実行される脱油脂洗浄工程を説明するための模式図
【
図5】同血液浄化装置で実行される脱油脂洗浄工程中に二酸化炭素を排出する工程を説明するための模式図
【
図6】同血液浄化装置の制御部による制御を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
本実施形態に係る血液浄化装置は、血液浄化器及び血液回路を通じて患者の血液を体外循環させ、血液を浄化するもので、
図1に示すように、動脈側血液回路K1及び静脈側血液回路K2を有する血液回路Kと、血液浄化器としてのダイアライザCと、透析液導入ラインL1及び排液排出ラインL2等を有する配管部と、送液部としての複式ポンプ1と、制御部13とを有して構成されている。
【0012】
動脈側血液回路K1は、先端にコネクタが接続されており、当該コネクタを介して動脈側穿刺針が接続可能とされるとともに、途中にしごき型の血液ポンプ及び動脈側エアトラップチャンバが配設されている。一方、静脈側血液回路K2は、その先端にコネクタが接続されており、当該コネクタを介して静脈側穿刺針が接続可能とされるとともに、途中に静脈側エアトラップチャンバが接続されている。
【0013】
ダイアライザC(血液浄化器)は、その筐体部に、血液導入口C1(血液導入ポート)、血液導出口C2(血液導出ポート)、透析液導入口C3(透析液流路入口:透析液導入ポート)及び透析液導出口C4(透析液流路出口:透析液導出ポート)が形成されており、このうち血液導入口C1には動脈側血液回路K1が、血液導出口C2には静脈側血液回路K2がそれぞれ接続されている。また、透析液導入口C3及び透析液導出口C4は、透析液導入ラインL1及び排液排出ラインL2とそれぞれ接続されるようになっている。
【0014】
ダイアライザC内には、複数の中空糸膜(不図示)が収容されており、この中空糸が血液を浄化するための血液浄化膜を構成している。かかるダイアライザC内には、血液浄化膜を介して患者の血液が流れる血液流路(血液導入口C1と血液導出口C2との間の流路)及び透析液が流れる透析液流路(透析液導入口C3と透析液導出口C4との間の流路)が形成されている。そして、血液浄化膜を構成する中空糸膜には、その外周面と内周面とを貫通した微小な孔(ポア)が多数形成されて中空糸膜を形成しており、該膜を介して血液中の不純物等が透析液内に透過し得るよう構成されている。
【0015】
そして、動脈側血液回路K1の先端に接続された動脈側穿刺針及び静脈側血液回路K2の先端に接続された静脈側穿刺針を患者に穿刺した状態で、血液ポンプを駆動させると、患者の血液は、動脈側血液回路K1を通ってダイアライザCに至り、該ダイアライザCによって血液浄化治療が施された後、静脈側血液回路K2を通って患者の体内に戻るようになっている。これにより、患者の血液を血液回路Kにて体外循環させつつダイアライザCにて浄化し得るのである。
【0016】
一方、装置本体には、ダイアライザCに透析液を導入する透析液導入ラインL1、およびダイアライザCから排液を排出する排液排出ラインL2等を有した配管部と、配管部の透析液及び排液を送液させる複式ポンプ1(送液部)とを有している。複式ポンプ1は、透析液導入ラインL1に接続された吸入部1a及び排液排出ラインL2に接続された排出部1bを有し、透析液導入ラインL1及び排液排出ラインL2に跨って配設されたポンプから成る。そして、複式ポンプ1を駆動させると、透析液導入ラインL1からダイアライザCに対して透析液を導入させるとともに、ダイアライザCに導入された透析液を血液中の老廃物や余剰水分と共に排液排出ラインL2から排出させることができる。なお、かかる複式ポンプ1以外の手段(例えば所謂バランシングチャンバ等を利用するもの)を用いてもよい。
【0017】
また、配管部は、
図1に示すように、透析液導入ラインL1及び排液排出ラインL2の他、透析液導入ラインL1及び排液排出ラインL2に接続されたバイパスラインL3~L5、排液排出ラインL2における複式ポンプ1の排出部1bを迂回する迂回ラインL6と、透析液導入ラインL1に対してA剤原液収容タンクT1及びB剤原液収容タンクT2をそれぞれ接続するA剤原液導入ラインL7及びB剤原液導入ラインL8とを有している。
【0018】
バイパスラインL3~L5には、それぞれ電磁弁(V5~V7)が接続されるとともに、A剤原液導入ラインL7及びB剤原液導入ラインL8には、それぞれ電磁弁(V8、V9)が接続されている。そして、A剤原液導入ラインL7及びB剤原液導入ラインL8には、それぞれ注入ポンプ(8a、8b)が接続されており、電磁弁V8が開状態のとき、注入ポンプ8aを駆動させることによりA剤原液収容タンクT1内のA剤原液をA剤原液導入ラインL7を介して透析液導入ラインL1に導入するとともに、電磁弁V9が開状態のとき、注入ポンプ8bを駆動させることによりB剤原液収容タンクT2内のB剤原液をB剤原液導入ラインL8を介して透析液導入ラインL1に導入するようになっている。
【0019】
さらに、透析液導入ラインL1には、電磁弁(V1、V3)、熱交換器3、加熱部4、脱気用ポンプ7、脱気部5、撹拌チャンバ(9a、9b)及び捕捉部(10、11)がそれぞれ接続されている。熱交換器3は、透析液導入ラインL1に供給された清浄水(RO水)が流通する流路と、排液排出ラインL2の排液が流通する流路とを有し、これら流路間で熱交換して清浄水に排液の熱を伝達させ得るようになっている。
【0020】
加熱部4は、透析液導入ラインL1に取り付けられたヒータから成り、透析液導入ラインL1に供給された清浄水を加熱し得るようになっている。この加熱部4の下流側(
図1中右側)には、温度センサtが取り付けられており、加熱部4にて加熱された清浄水の温度(水温)を検出し得るよう構成されている。なお、温度センサtの下流側には、オリフィス部6が形成されており、脱気用ポンプ7の駆動によってオリフィス部6を通過した清浄水が脱気部5に導入されるようになっている。
【0021】
脱気部5は、透析液導入ラインL1に接続されたチャンバから成り、その下部から循環ラインL9(循環流路)が延設されている。この循環ラインL9は、透析液導入ラインL1における脱気部5より上流側の所定位置(熱交換器3と加熱部4との間の位置)に接続されており、透析液導入ラインL1に供給された清浄水を循環し得るよう構成されている。また、脱気部5の上部には、排液排出ラインL2まで延びる脱気ラインN1が接続されており、この脱気ラインN1を介して脱気部5で捕集した気泡を配管部の外部に排出可能とされている。
【0022】
A剤原液及びB剤原液は、透析液を構成する互いに異なる組成の溶液から成る。具体的には、A剤原液(A原液)は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム及び酢酸ナトリウムなどを含有する混合水溶液から成るとともに、B剤原液(B原液)は、炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)の水溶液から成る。これらA剤原液及びB剤原液は、それぞれA剤原液収容タンクT1及びB剤原液収容タンクT2に所定量ずつ収容されており、注入ポンプ(8a、8b)の駆動により、透析液導入ラインL1に導入されるようになっている。
【0023】
撹拌チャンバ(9a、9b)は、A剤原液導入ラインL7及びB剤原液導入ラインL8を介して透析液導入ラインL1に導入されたA剤原液及びB剤原液を清浄水と混合して希釈することにより、所定濃度の透析液を作製し得るものである。すなわち、透析液導入ラインL1に供給された清浄水は、循環ラインL9にて循環される過程において加熱部4による加熱及び脱気部5による脱気(気泡の排出)が行われた後、A剤原液及びB剤原液と混合されることにより、所定濃度の透析液が生成されるようになっている。
【0024】
捕捉部(10、11)は、血液浄化治療工程において透析液を透過させつつ含有する気泡を捕捉するもので、気泡フィルタ(10a、11a)を有するとともに、気泡フィルタ(10a、11a)の上流側であって捕捉された気泡が収容される1次側部位(10b、11b)、及び気泡フィルタ(10a、11a)の下流側であって透過した透析液が流通する2次側部位(10c、11c)を有して構成されている。そして、捕捉部10の1次側部位10bと排液排出ラインL2とがバイパスラインL4にて接続されるともに、捕捉部11の1次側部位11bと排液排出ラインL2とがバイパスラインL5にて接続されている。
【0025】
さらに、透析液導入ラインL1における気泡フィルタ(10a、11a)の下流側(又は上流側であってもよい)には、液圧を検出可能なセンサから成る液圧検出部(S1、S2)がそれぞれ配設されている。そして、血液浄化治療工程において液圧検出部(S1、S2)が所定の液圧の変化を検出したことを条件として、電磁弁(V6,V7)(開閉弁)を開状態として1次側部位(10b、11b)の気泡をバイパスライン(L4、L5)及び排液排出ラインL2を介して配管部の外部に排出するよう構成されている。
【0026】
一方、排液排出ラインL2には、電磁弁(V2、V4)、加圧ポンプP及び脱ガスチャンバ12がそれぞれ接続されるとともに、複式ポンプ1の排出部1bを迂回する迂回ラインL6には、除水ポンプ2が接続されている。この除水ポンプ2は、ダイアライザCを流れる患者の血液から水分(余剰水分)を除去して除水するためのものである。すなわち、除水ポンプ2を駆動させると、透析液導入ラインL1から導入される透析液量よりも排液排出ラインL2から排出される排液の容量が多くなり、その多い容量分だけ血液中から水分が除去されるのである。
【0027】
脱ガスチャンバ12は、排液排出ラインL2に接続されたチャンバから成り、その下部と迂回ラインL6の所定位置とが接続ラインL6aにて接続されている。また、脱ガスチャンバ12の上部には、排液排出ラインL2の下流部まで延びる脱気ラインN2が接続されており、この脱気ラインN2を介して脱ガスチャンバ12で捕集した気泡を配管部の外部に排出可能とされている。なお、脱気ラインN2には、電磁弁V10が接続されており、任意タイミングで開閉可能とされている。
【0028】
制御部13は、装置本体に配設されたマイコンから成り、A剤原液及びB剤原液を配管部に導入して混合し、且つ、所定濃度に希釈することにより作製された透析液をダイアライザCに送液して血液浄化治療を行う血液浄化治療工程を実行するものである。すなわち、血液浄化治療工程においては、
図2に示すように、電磁弁(V8、V9)を開状態としつつ注入ポンプ(8a、8b)とし、且つ、複式ポンプ1及び除水ポンプ2を駆動させることにより、透析液導入ラインL1に導入されたA剤原液及びB剤原液を清浄水に混合させて所定濃度の透析液を作製し、その透析液をダイアライザCに送液することにより患者の血液を浄化及び除水して透析治療することができる。
【0029】
ここで、本実施形態に係る制御部13は、血液浄化治療工程に加え、加熱部4及び脱気部5によって、二酸化炭素を排出しつつ所定容量の重炭酸塩水溶液を生成する重炭酸塩水溶液生成工程と、配管部にB剤原液を導入して加熱することにより得られた重炭酸塩水溶液を流通させて配管部の油脂を除去する脱油脂洗浄を行う脱油脂洗浄工程とを、複式ポンプ1を制御することによって実行可能とされている。重炭酸塩水溶液生成工程は、血液浄化治療工程で使用したB剤原液を利用して脱油脂洗浄工程で使用するアルカリ剤(炭酸ナトリウム水溶液)を生成する工程であり、脱油脂洗浄工程は、重炭酸塩水溶液生成工程で生成されたアルカリ剤を配管部に流通させて脱油脂洗浄する工程である。
【0030】
より具体的には、重炭酸塩水溶液生成工程においては、
図3に示すように、透析液導入ラインL1の先端と排液排出ラインL2の先端とをカプラDにて接続して短絡するとともに、電磁弁(V4、V5、V9)を開状態及び他の電磁弁を閉状態とし、且つ、脱気用ポンプ7及び注入ポンプ8bを駆動させる。このとき、複式ポンプ1及び除水ポンプ2等は停止状態とされる。これにより、B剤原液収容タンクT2内のB剤原液を透析液導入ラインL1に導入するとともに、そのB剤原液を循環ラインL9にて循環させつつ加熱部4により加熱することができる。
【0031】
そして、B剤原液(炭酸水素ナトリウム(NaHCO3))は、循環ラインL9を循環して希釈されつつ加熱部4で加熱(約65℃以上の加熱)されることにより、炭酸ナトリウム(Na2CO3)、水(H2O)及び二酸化炭素(CO2)に分解されることとなる。これにより、脱油脂洗浄工程で使用するアルカリ剤としての炭酸ナトリウム水溶液(重炭酸塩水溶液)をB剤原液から生成することができる。また、加熱部4でB剤原液を加熱した際に生成される二酸化炭素は、脱気部5にて捕集されるとともに、脱気ラインN1及び排液排出ラインL2を介して配管部の外部に排出されることとなる。
【0032】
しかるに、重炭酸塩水溶液生成工程においては、加熱部4は、配管部に導入したB剤原液を加熱するとともに、脱気部5は、加熱部4でB剤原液を加熱した際に生成される二酸化炭素を配管部の外部に排出することができる。すなわち、循環ラインL9でB剤原液を循環させる過程において、加熱部4でB剤原液を加熱して炭酸ナトリウム水溶液(重炭酸塩水溶液)を生成しつつ脱気部5にて二酸化炭素を排出することができるのである。
【0033】
このように、加熱部4及び脱気部5は、血液浄化治療工程においてA剤原液及びB剤原液を循環ラインL9で循環させつつ混合して所定濃度の透析液を作製するための清浄水を加熱及び脱気するとともに、重炭酸塩水溶液生成工程においてB剤原液を加熱して炭酸ナトリウム水溶液を生成しつつ二酸化炭素を排出することができる。そして、加熱部4及び脱気部5によって、二酸化炭素を排出しつつ所定容量の炭酸ナトリウム水溶液を生成する重炭酸塩水溶液生成工程が実行された後、その炭酸ナトリウム水溶液を用いて脱油脂洗浄工程が実行されることとなる。
【0034】
さらに、本実施形態においては、B剤原液を加熱して生成された所定容量の炭酸ナトリウム水溶液を貯留する貯留部を有している。この貯留部は、配管部を構成する所定部位の流路から成り、本実施形態においては、透析液導入ラインL1において排液排出ラインL1との間で熱交換する熱交換器3の熱交換流路を含むものとされている。すなわち、貯留部は、透析液導入ラインL1におけるB剤原液導入ラインL8との接続部より上流側(
図3中左側)の循環ラインL9、熱交換器3の熱交換流路及びバイパスラインL3を含む流路から成り、重炭酸塩水溶液生成工程で生成された炭酸ナトリウム水溶液を貯留し得るものとされている。
【0035】
脱油脂洗浄工程においては、
図4に示すように、透析液導入ラインL1の先端と排液排出ラインL2の先端とをカプラDにて接続した状態を維持するとともに、電磁弁(V1、V2、V5、V10)を開状態及び他の電磁弁を閉状態とし、且つ、脱気用ポンプ7、複式ポンプ1、除水ポンプ2及び加圧ポンプPを駆動させる。このとき、注入ポンプ(8a、8b)は停止状態とされる。なお、電磁弁(V5~V7)は、バイパスライン(L3~L5)を脱油脂洗浄する際に任意タイミングで開状態とされる。これにより、貯留部に貯留した炭酸ナトリウム水溶液を配管部で流通及び循環させて脱油脂洗浄することができる。
【0036】
ここで、本実施形態に係る制御部13は、脱油脂洗浄工程を実行しながら、炭酸ナトリウム水溶液を流通させる際に生じた二酸化炭素を配管部の外部に排出する制御を実行可能とされている。具体的には、制御部13は、脱油脂洗浄工程において液圧検出部S1が所定の液圧の変化(本実施形態においては液圧の上昇)を検出したことを条件として、捕捉部10の気泡フィルタ10aで捕捉した二酸化炭素を配管部の外部に排出するようになっている。
【0037】
すなわち、脱油脂洗浄工程において、捕捉部10の1次側部位10bに二酸化炭素が捕捉されて滞留することにより2次側部位10c側の液圧が上昇し、液圧検出部S1がその液圧の変化を検出すると、
図5に示すように、電磁弁(V4、V6、V10)を開状態及び他の電磁弁を閉状態とし、且つ、加圧ポンプPを駆動させる。このとき、脱気用ポンプ7、複式ポンプ1、除水ポンプ2及び注入ポンプ(8a、8b)は停止状態とされる。これにより、捕捉部10の気泡フィルタ10aで捕捉されて1次側部位10bで滞留した二酸化炭素は、バイパスラインL4を介して排液排出ラインL2に導かれるとともに、脱ガスチャンバ12の脱気ラインN2を介して配管部の外部に排出されることとなる。
【0038】
次に、本実施形態に係る制御部13による制御内容について、
図6のフローチャートに基づいて説明する。
先ず、透析液導入ラインL1の先端と排液排出ラインL2の先端とをカプラDにて接続して短絡するとともに、透析液導入ラインL1から清浄水を供給して配管部を構成する各流路に流通させることにより前洗浄動作を行う(S1)。これにより、配管部の透析液を洗い流すことができる。
【0039】
その後、
図3に示すように、B剤原液収容タンクT2内のB剤原液を透析液導入ラインL1に導入(S2)して重炭酸塩水溶液生成工程が実行される。これにより、B剤原液を循環ラインL9にて循環させつつ加熱部4により加熱して所定濃度の炭酸ナトリウム(Na
2CO
3)水溶液を生成するとともに、二酸化炭素(CO
2)を脱気ラインN1から排出させる(S3)。
【0040】
生成された炭酸ナトリウム水溶液は、透析液導入ラインL1におけるB剤原液導入ラインL8との接続部より上流側(
図3中左側)の循環ラインL9、熱交換器3の熱交換流路及びバイパスラインL3を含む流路から成る貯留部に貯留されることとなる。そして、S4にてB剤原液の注入量が規定値以上になったか否か判定し、規定値以上であると判定された場合、S5に進んで脱油脂洗浄工程が実行される。
【0041】
脱油脂洗浄工程においては、
図4に示すように、複式ポンプ1等を駆動させることにより、貯留部に貯留した炭酸ナトリウム水溶液を配管部の各流路にて循環させる(S5)。なお、脱油脂洗浄工程においては、A剤原液収容タンクT1及びB剤原液収容タンクT2をA剤原液導入ラインL7及びB剤原液導入ラインL8から取り外された状態とし、それらA剤原液導入ラインL7及びB剤原液導入ラインL8に炭酸ナトリウム水溶液を流通させて脱油脂洗浄してもよい。このように、炭酸ナトリウム水溶液の洗浄作用により患者由来のタンパク除去を行うことができ、配管部が脱油脂洗浄されることとなる。
【0042】
そして、炭酸ナトリウム水溶液が循環動作する過程において、液圧検出部S1の液圧変化に基づいてCO
2が検知されたか否か判定され(S6)、CO
2が検知されたと判定されると、
図5に示すように、捕捉部10の気泡フィルタ10aで捕捉されて1次側部位10bで滞留した二酸化炭素をバイパスラインL4を介して排液排出ラインL2に導き、脱ガスチャンバ12の脱気ラインN2を介して配管部の外部に排出させる(S7)。すなわち、脱油脂洗浄工程を実行しながら、炭酸ナトリウム水溶液を流通させる際に生じた二酸化炭素を捕捉して配管部から排出することができるのである。
【0043】
一方、S6にてCO2が検知されないと判定されると、透析液導入ラインL1から清浄水を供給して配管部を構成する各流路に流通させることにより後洗浄動作を行う(S8)。これにより、配管部の炭酸ナトリウム水溶液を洗い流すことができる。以上により、重炭酸塩水溶液生成工程及び脱油脂洗浄工程が終了し、配管部が洗浄及び消毒されるので、血液浄化治療工程を実行することができる。
【0044】
本実施形態によれば、脱油脂洗浄工程を実行しながら、炭酸ナトリウム水溶液を流通させる際に生じた二酸化炭素を配管部の外部に排出するので、血液浄化治療工程で使用したB剤原液を脱油脂洗浄工程で使用するアルカリ剤として流用することができるとともに、脱油脂洗浄工程中に生じた二酸化炭素を取り除いて脱油脂洗浄を良好に行わせることができる。特に、脱油脂洗浄工程で炭酸ナトリウム水溶液を流通させる際に捕捉部10の気泡フィルタ10aで二酸化炭素を捕捉するので、二酸化炭素を確実に捕捉することができる。
【0045】
また、脱油脂洗浄工程において液圧検出部S1が所定の液圧の変化を検出したことを条件として、捕捉部10の気泡フィルタ10aで捕捉した二酸化炭素を配管部の外部に排出するので、捕捉した二酸化炭素を自動的に配管部の外部に排出することができる。さらに、脱油脂洗浄工程において液圧検出部S1が所定の液圧の変化を検出したことを条件として、電磁弁V6(開閉弁)を開状態として1次側部位10bの二酸化炭素をバイパスラインL4及び排液排出ラインL2を介して配管部の外部に排出するので、血液浄化治療工程で使用されるバイパスラインL4を有効利用して二酸化炭素を配管部の外部に排出することができる。
【0046】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、例えば捕捉部10とは異なる手段を用いて、脱油脂洗浄工程を実行しながら、炭酸ナトリウム水溶液を流通させる際に生じた二酸化炭素を捕捉して排出するようにしてもよい。この場合、本実施形態の如く血液浄化治療工程で使用される手段を流用するものの他、血液浄化治療工程で使用されない捕捉のための専用手段であってもよい。
【0047】
また、本実施形態においては、配管部にB剤原液を導入して加熱することにより得られた炭酸ナトリウム水溶液を流通させて配管部を脱油脂洗浄するものとされているが、炭酸ナトリウム水溶液とは異なる重炭酸塩水溶液を流通させるようにしてもよい。さらに、本実施形態においては、個人用透析装置に適用されているが、多人数用透析装置等、他の形態の血液浄化装置に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の趣旨と同等の血液浄化装置であれば、外観形状が異なるもの或いは他の機能が付加されたもの等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 複式ポンプ(送液部)
1a 吸入部
1b 排出部
2 除水ポンプ
3 熱交換器
4 加熱部
5 脱気部
6 オリフィス部
7 脱気用ポンプ
8a、8b 注入ポンプ
9a、9b 撹拌チャンバ
10、11 捕捉部
10a、11a 気泡フィルタ
10b、11b 1次側部位
10c、11c 2次側部位
12 脱ガスチャンバ
13 制御部
L1 透析液導入ライン
L2 排液排出ライン
L3~L5 バイパスライン
L6 迂回ライン
L6a 接続ライン
L7 A剤原液導入ライン
L8 B剤原液導入ライン
L9 循環ライン
N1、N2 脱気ライン
C ダイアライザ(血液浄化器)
C1 血液導入口
C2 血液導出口
C3 透析液導入口
C4 透析液導出口
K 血液回路
K1 動脈側血液回路
K2 静脈側血液回路
T1 A剤原液収容タンク
T2 B剤原液収容タンク
t 温度センサ
S1、S2 液圧検出部
P 加圧ポンプ