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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023072443
(43)【公開日】2023-05-24
(54)【発明の名称】水中油型化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/81 20060101AFI20230517BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20230517BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20230517BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20230517BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20230517BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20230517BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20230517BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20230517BHJP
【FI】
A61K8/81
A61K8/06
A61K8/37
A61K8/31
A61K8/73
A61K8/34
A61Q1/00
A61K8/86
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021185002
(22)【出願日】2021-11-12
(71)【出願人】
【識別番号】502439647
【氏名又は名称】株式会社ダリヤ
(72)【発明者】
【氏名】吉野 藍
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA112
4C083AA122
4C083AB172
4C083AB212
4C083AB222
4C083AB232
4C083AB242
4C083AB362
4C083AB432
4C083AB442
4C083AC011
4C083AC021
4C083AC022
4C083AC121
4C083AC122
4C083AC172
4C083AC351
4C083AC352
4C083AC421
4C083AC422
4C083AC441
4C083AC442
4C083AC532
4C083AC582
4C083AC712
4C083AD021
4C083AD022
4C083AD091
4C083AD092
4C083AD132
4C083AD351
4C083AD352
4C083AD492
4C083BB04
4C083BB21
4C083CC02
4C083DD33
4C083EE01
4C083EE06
(57)【要約】
【課題】しっとり感、肌へのなじみ、顔料の肌への定着力および高温安定性が良好な水中油型化粧料を提供する。
【解決手段】顔料を含有する水中油型化粧料であって、(A)25℃で液状のエステル油、(B)炭化水素油、(C)HLB7以下のノニオン性界面活性剤、(D)HLB10以上のノニオン性界面活性剤、(E)(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマーまたは(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/VP)コポリマーから選ばれる1種以上、(F)キサンタンガム、(G)1,3-ブチレングリコールまたはグリセリンから選ばれる1種以上、を含有することを特徴とする水中油型化粧料。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料を含有する水中油型化粧料であって、
(A)25℃で液状のエステル油、
(B)炭化水素油、
(C)HLB7以下のノニオン性界面活性剤、
(D)HLB10以上のノニオン性界面活性剤、
(E)(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマーまたは(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/VP)コポリマーから選ばれる1種以上、
(F)キサンタンガム、
(G)1,3-ブチレングリコールまたはグリセリンから選ばれる1種以上、
を含有することを特徴とする水中油型化粧料。
【請求項2】
前記(A)成分が、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、ミリスチン酸イソプロピルまたはパルミチン酸イソプロピルから選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1に記載の水中油型化粧料。
【請求項3】
前記(A)成分の含有量が、1~15質量%であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の水中油型化粧料。
【請求項4】
前記(B)成分が、スクワラン、ワセリン、流動パラフィン、流動イソパラフィンまたはα-オレフィンオリゴマーから選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の水中油型化粧料。
【請求項5】
前記(B)成分の含有量が、0.5~10質量%であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の水中油型化粧料。
【請求項6】
前記(C)成分が、ステアリン酸ソルビタン、イソステアリン酸ソルビタン、ステアリン酸グリセリルまたはイソステアリン酸グリセリルから選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の水中油型化粧料。
【請求項7】
前記(C)成分の含有量が、0.3~8質量%であることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の水中油型化粧料。
【請求項8】
前記(D)成分が、ラウリン酸ポリグリセリル-10、ステアリン酸ポリグリセリル-10またはイソステアリン酸ポリグリセリル-10から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の水中油型化粧料。
【請求項9】
前記(D)成分の含有量が、0.05~0.8質量%であることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の水中油型化粧料。
【請求項10】
前記(E)成分の含有量が、0.15~2.8質量%であることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の水中油型化粧料。
【請求項11】
前記(F)成分の含有量が、0.01~0.6質量%であることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の水中油型化粧料。
【請求項12】
前記(G)成分の含有量が、8~23質量%であることを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の水中油型化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中油型化粧料に関するものである。さらに詳しくは、顔料を含有した水中油型化粧料に関するものである。
【0002】
近年、生活様式の多様化から、クマ、しみ、ニキビ跡、赤味、毛穴などの肌悩みをしっかりと隠蔽し、美しく整えるファンデーションや化粧下地といったメイクアップ化粧料だけでなく、使用前後で見た目に大きな変化がなく、自然に肌悩みを目立たなくさせることのできる化粧料が注目されている。これらの化粧料は、メイクアップ化粧料とは異なり、ソフトフォーカス効果によって顔の印象を大きく変化させることなく、肌悩みを自然にぼかすことができるため、メイクアップ化粧料よりも気軽に使用できる特徴がある。
【0003】
メイクアップ化粧料とは、一般的に、製剤中に配合される様々な顔料の組み合わせによって肌の色や質感を美しく見せることができ、粉体組成物、油性組成物、乳化化粧料など、多様な剤型で提供されるが、中でも、メイクアップ化粧料としての乳化組成物は、簡便な使用性や良好な感触が広く好まれている。
【0004】
化粧料用の乳化組成物は、水溶性物質と油溶性物質から構成されており、基剤となる成分の組み合わせにより外相が水性である水中油型と外相が油性である油中水型に大別される。一般的に、水中油型化粧料は外相が水性であるため、伸びがよくみずみずしい使用感を与えやすいが、油溶性物質に起因するエモリエント感を与えにくい特徴を持つ。それに対し、油中水型化粧料は、油溶性物質によるエモリエント感を与えやすくするだけでなく、油膜による耐水性を有する効果が知られているものの、外相が油性であるため伸びにくくなじみが悪くなりやすいという特徴を持つ。強い隠蔽力や陰影の付与を求めない場合、自然な仕上がりや使い心地のよさを期待して水中油型化粧料が選択される場合も多い。
【0005】
従来より、肌への密着性に優れながら、化粧膜の柔軟性にも優れ、粉体分散性が良好な水中油型化粧料を提供することを目的として、キャンデリラワックスより抽出して得られた樹脂分、撥水処理粉体を含有する水中油型化粧料が提案されている(特許文献1)。
【0006】
また、べたつかず心地良い使用感が得られ、且つ乾き際によれが起こらない水中油型乳化化粧料を提供することを目的として、サクシノグリカン、疎水性粉末、疎水化処理粉体を含有する水中油型乳化化粧料が提案されている(特許文献2)。
【0007】
【特許文献1】特開2002-348209号公報
【特許文献2】特開2009-286748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1の水中油型化粧料は、肌への密着性や柔軟性に優れているが、高温安定性については検討されていない。また、上記特許文献2の水中油型乳化化粧料は、べたつかず心地良い使用感が得られ、且つ乾き際によれが起こらない特徴は持つものの、塗布時のしっとり感と顔料としての粉体の肌への定着力については検討されていない。
【0009】
このことから、しっとり感、肌へのなじみ、顔料の肌への定着力および高温安定性が良好な水中油型化粧料の開発が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、前記問題を解決するため鋭意検討した結果、顔料を含有する水中油型化粧料であって、(A)25℃で液状のエステル油、(B)炭化水素油、(C)HLB7以下のノニオン性界面活性剤、(D)HLB10以上のノニオン性界面活性剤、(E)(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマーまたは(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/VP)コポリマーから選ばれる1種以上、(F)キサンタンガム、(G)1,3-ブチレングリコールまたはグリセリンから選ばれる1種以上、を含有することを特徴とする水中油型化粧料とすることで、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、しっとり感、肌へのなじみ、顔料の肌への定着力および高温安定性が良好な水中油型化粧料を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、含有量を示す単位は、特に明記しない限り全て質量%である。
【0013】
本発明における高温安定性とは、40℃条件下で3カ月静置した後の水中油型化粧料の安定性を意味する。
【0014】
本発明の水中油型化粧料は、肌をトーンアップさせ、色味や凹凸を整えるための色調を調製するために、顔料を用いることができる。
【0015】
本発明で用いられる前記顔料としては、特に限定されないが、球状、板状、針状などの形状、煙霧状、微粒子、顔料級などの粒子径、多孔質、無孔質などの粒子構造は問わず、いずれのものも使用することができ、例えば、無機顔料、有機顔料、パール顔料または天然顔料などが挙げられる。これら顔料は1または2種以上を含有することができる。顔料は2種以上を含有した場合、様々な色調をつくることが可能となる。
【0016】
上記無機顔料の具体例としては、群青、酸化クロム、ベンガラ、黄酸化鉄、酸化チタン、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化コバルト、黒酸化鉄、水酸化クロム、水酸化アルミニウム、紺青、硫酸バリウム、含水珪酸塩、無水珪酸、珪酸アルミニウム、雲母、炭酸マグネシウム、マンガンバイオレット、カーボンブラック、アルミニウム、銅、金などが挙げられる。これら無機顔料は1種以上を含有することができる。
【0017】
上記有機顔料の具体例としては、赤202号、赤203号、赤204号、赤205号、赤206号、赤207号、赤208号、赤219号、赤220号、赤221号、赤228号、赤404号、赤405号、橙203号、橙204号、橙401号、黄205号、黄401号、青404号、赤104号アルミニウムレーキ、黄4号アルミニウムレーキ、黄203号アルミニウムレーキ、青1号アルミニウムレーキなどが挙げられる。これら有機顔料は1種以上を含有することができる。
【0018】
上記パール顔料の具体例としては、雲母チタン、ベンガラ被覆雲母、ベンガラ被覆雲母チタン、黒酸化鉄被覆雲母チタン、酸化クロム被覆雲母、マイカ/酸化チタン/酸化スズ、マイカ/酸化チタン/硫酸Ba、ケイ酸(Na/K/Al)/酸化チタン/シリカなどが挙げられる。これらパール顔料は1種以上を含有することができる。
【0019】
上記天然顔料の具体例としては、クレーなどの鉱物顔料、マダーレーキやコチニールレーキなどの天然染料レーキ、アゾ顔料、フタロシアニン顔料などが挙げられる。これら天然顔料は1種以上を含有することができる。
【0020】
本発明で用いられる顔料は、フッ素化合物、シリコーン系化合物、金属石ケン、ロウ、油脂、炭化水素、界面活性剤、アミノ酸系化合物、水溶性高分子などを用いて公知の方法により表面処理を施した表面処理顔料を用いることができる。これら表面処理顔料は1種以上を含有することができる。
【0021】
本発明で用いられる顔料は、必要に応じて分散剤と混合し、顔料分散体として用いることができる。分散剤は特に限定されないが、水分散体、1,3-ブチレングリコール分散体、シリコーン分散体、液状油分散体などが挙げられる。これら顔料分散体は1種以上を含有することができる。
【0022】
本発明で用いられる顔料の含有量は、特に限定されないが、好ましくは0.5~20%、より好ましくは1~18%、さらに好ましくは3~15%である。顔料の含有量が0.5%未満の場合、肌に付着する顔料が少なく、肌悩みを均一に補正できない恐れがある。顔料の含有量が20%を超える場合、肌に多量の顔料が付着するため、化粧膜が厚くなり、肌が不自然に白く見えるなど、自然な見た目を保てない恐れがある。
【0023】
本発明は、しっとり感および顔料の肌への定着力の観点から(A)25℃で液状のエステル油を含有する。
【0024】
前記(A)成分の具体例としては、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸イソセチル、ミリスチン酸イソプロピル、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、イソステアリン酸プロピレングリコール、セバシン酸ジエチルヘキシル、トリ2-エチルヘキサン酸トリメチルプロパン、コハク酸ジ2-エチルヘキシル、ジ(カプリル・カプリン酸)プロピレングリコール、2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリル酸2-エチルヘキシル、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル、トリオクタン酸トリメチロールプロパン、トリカプリル酸グリセリル、ジオクタン酸エチレングリコール、ジミリスチン酸グリセリル、ジラウリン酸ジエチレングリコール、テトラ2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリット、ジ酢酸モノステアリン酸グリセリル、安息香酸アルキル(C12~C15)、乳酸オクチルドデシル、乳酸オレイル、ジカプロン酸プロピレングリコール、セバシン酸ジイソプロピル、ジカプリン酸ジエチレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジ2-エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、ジヤシ油脂肪酸グリセリル、ジラウリン酸グリセリル、セスキオレイン酸グリセリル、モノオレイン酸エチレングリコール、乳酸セチル、セバシン酸ジエチル、ヒマシ油脂肪酸メチル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸エチレングリコール、ジピバリン酸トリプロピレングリコールおよびイソノナン酸イソトリデシルなどが挙げられる。これらは1種以上含有することができる。前記(A)成分のうち、しっとり感を付与する観点から、好ましくはミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、ミリスチン酸イソプロピルまたはパルミチン酸イソプロピルから選ばれる1種以上、より好ましくはミリスチン酸オクチルドデシルまたはパルミチン酸2-エチルヘキシルから選ばれる1種以上がよい。
【0025】
本発明で用いられる前記(A)成分の含有量は、特に限定されないが、好ましくは1~15%、より好ましくは3~15%、さらに好ましくは5~12%である。前記(A)成分の含有量が1%未満の場合、しっとり感や顔料の肌への定着力が低下する恐れがある。前記(A)成分が15%を超える場合、顔料の肌への定着力が低下する恐れがある。
【0026】
本発明は、しっとり感および肌へのなじみの観点から(B)炭化水素油を含有する。
【0027】
本発明で用いられる前記(B)成分としては、特に限定されないが、例えば、流動パラフィン、流動イソパラフィン、水添ポリイソブテン、イソパラフィン、パラフィン、α-オレフィンオリゴマー、オゾケライト、スクワラン、プリスタン、セレシン、スクワレン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスなどが挙げられる。これらは1種以上含有することができる。前記(B)成分のうち、しっとり感および肌へのなじみを向上させる観点から、好ましくはスクワラン、ワセリン、流動パラフィン、流動イソパラフィンまたはα-オレフィンオリゴマーから選ばれる1種以上、より好ましくはスクワランまたはワセリンから選ばれる1種以上がよい。
【0028】
本発明で用いられる前記(B)成分の含有量は、特に限定されないが、好ましくは0.5~10%、より好ましくは1~10%、さらに好ましくは2~8%である。前記(B)成分の含有量が0.5%未満の場合、しっとり感および肌へのなじみのよさが低下する恐れがある。前記(B)成分の含有量が10%を超える場合、高温安定性が低下する恐れがある。
【0029】
本発明は、高温安定性の観点から(C)HLB7以下のノニオン性界面活性剤を含有する。
【0030】
本発明で用いられる前記(C)成分としては、特に限定されないが、例えば、ステアリン酸ソルビタン、イソステアリン酸ソルビタン、ステアリン酸グリセリル、イソステアリン酸グリセリルなどが挙げられる。これらは1種以上含有することができる。前記(C)成分のうち、肌へのなじみおよび高温安定性の観点から、好ましくはステアリン酸ソルビタンがよい。
【0031】
本発明で用いられる前記(C)成分の含有量は、特に限定されないが、好ましくは0.3~8%、より好ましくは0.5~5.5%、さらに好ましくは0.8~3.5%である。前記(C)成分の含有量が0.3%未満の場合、高温安定性が低下する恐れがある。前記(C)成分の含有量が8%を超える場合、顔料の肌への定着力および高温安定性が低下する恐れがある。
【0032】
本発明においてノニオン性界面活性剤のHLBとは、親水性-親油性のバランス(Hydrophile-Lipophile Balance)を示す指標であり、種々の方法がある。ここでは、「Griffin法」および「ハンドブック-化粧品・製剤原料-改定版 日光ケミカルズ株式会社 1977年,854~855ページ」に記載されている「実測値による方法」のいずれかを用いて算出することが好ましい。「HLB値は7以下」とは、「Griffin法」および「実測値による方法」のいずれかにおいてHLBが7以下である界面活性剤を意味する。
【0033】
本発明は、顔料の肌への定着力および高温安定性の観点から(D)HLB10以上のノニオン性界面活性剤を含有する。
【0034】
本発明で用いられる前記(D)成分としては、特に限定されないが、例えば、ラウリン酸ポリグリセリル-10、ステアリン酸ポリグリセリル-10、イソステアリン酸ポリグリセリル-10などが挙げられる。これらは1種以上含有することができる。前記(D)成分のうち、顔料の肌への定着力および高温安定性の観点から、好ましくはラウリン酸ポリグリセリル-10がよい。
【0035】
本発明で用いられる前記(D)成分の含有量は、特に限定されないが、好ましくは0.05~0.8%、より好ましくは0.1~0.8%、さらに好ましくは0.15~0.6%である。前記(D)成分の含有量が0.05%未満の場合、顔料の肌への定着力および高温安定性が低下する恐れがある。前記(D)成分の含有量が0.8%を超える場合、顔料の肌への定着力が低下する恐れがある。
【0036】
本発明は、肌へのなじみ、顔料の肌への定着力および高温安定性の観点から(E)(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマーまたは(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/VP)コポリマーから選ばれる1種以上を含有する。
【0037】
なお、本発明に用いることのできる(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/VP)コポリマーのVPとは、ビニルピロリドンのことを指す。
【0038】
本発明で用いられる前記(E)成分は、顔料の肌への定着力の向上の観点から、(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマーおよび(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/VP)コポリマーを併用することが好ましい。
【0039】
本発明で用いられる前記(E)成分の含有量は、特に限定されないが、好ましくは0.15~2.8%、より好ましくは0.15~1.9%、さらに好ましくは0.45~1%である。前記(E)成分の含有量が0.15%未満の場合、肌へのなじみ、顔料の肌への定着力および高温安定性が低下する恐れがある。前記(E)成分の含有量が2.8%を超える場合、顔料の肌への定着力が低下する恐れがある。
【0040】
本発明は、顔料の肌への定着力および高温安定性の観点から(F)キサンタンガムを含有する。
【0041】
本発明で用いられる前記(F)成分の含有量は、特に限定されないが、好ましくは0.01~0.6%、より好ましくは0.05~0.6%、さらに好ましくは0.1~0.4%である。前記(F)成分の含有量が0.01%未満の場合、顔料の肌への定着力および高温安定性が低下する恐れがある。前記(F)成分の含有量が0.6%を超える場合、顔料の肌への定着力が低下する恐れがある。
【0042】
本発明は、顔料の肌への定着力および高温安定性の観点から(G)多価アルコールを含有する。
【0043】
本発明で用いられる前記(G)成分としては、特に限定されないが、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブチレングリコール、2,3-ブチレングリコール、1,4-ブタンジオール、2-ブテン-1,4-ジオール、1,2-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、イソプレングリコール、ヘキシレングリコール、オクタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリンモノ-2-エチルヘキシルエーテル、モノグリセリド(モノアシルグリセロール)などの2価アルコール、グリセリン、トリメチロールプロパンなどの3価アルコール、ジグリセリン、ペンタエリスリトール、1,2,6-ヘキサントリオールなどの4価アルコール、糖アルコール、2~4価アルコールの重合物などの5価以上のアルコールが挙げられる。これらは1種以上含有することができる。
【0044】
本発明で用いられる前記(G)成分の糖アルコールとしては、特に限定されないが、単糖アルコール、二糖アルコールなどが挙げられ、単糖アルコールとしては、ソルビトール、マンニトール、エリスリトール、キシリトール、ラクチトール、マルチトール、アラビトール、リビトール、ガラクチトール、グルシトールなどが挙げられ、二糖アルコールとしては、トレハロースなどが挙げられる。
【0045】
本発明で用いられる前記(G)成分の2~4価アルコールの重合物としては、特に限定されないが、ポリグリコール、ポリグリセリンなどが挙げられる。
【0046】
本発明で用いられる前記(G)成分のうち、顔料の肌への定着力および高温安定性の観点から、好ましくは1,3-ブチレングリコールまたはグリセリンから選ばれる1種以上、より好ましくは1,3-ブチレングリコールおよびグリセリンの併用である。
【0047】
本発明で用いられる前記(G)成分の含有量は、特に限定されないが、好ましくは8~23%、より好ましくは11~21%、さらに好ましくは13~18%である。前記(G)成分の含有量が8%未満の場合、顔料の肌への定着力および高温安定性が低下する恐れがある。前記(G)成分の含有量が23%を超える場合、肌へのなじみのよさ、顔料の肌への定着力および高温安定性が低下する恐れがある。
【0048】
本発明の水中油型化粧料には、前記成分の他に、通常の化粧料、医薬部外品、医薬品などに用いられる各種成分、例えば、前記(A)成分および前記(B)成分以外の油性成分、前記(C)成分および前記(D)成分以外の界面活性剤、前記(E)成分および前記(F)成分以外の高分子、保湿剤、アミノ酸類、キレート剤、加水分解タンパクまたはその誘導体、薬効成分、タンパク誘導体、安定化剤、酸化防止剤、植物性抽出物、生薬抽出物、ビタミン類、防腐剤、色素、pH調整剤、紫外線吸収剤、香料などを用いることができ、これらは1種または2種以上含有してもよい。ただし、これら例示に限定されるものでない。
【0049】
本発明の水中油型化粧料の20℃条件下での粘度は、特に限定されないが、使用性の観点から好ましくは30,000~200,000mPa・s、より好ましくは50,000~180,000mPa・sである。
【0050】
本発明による水中油型化粧料の20℃条件下での粘度は、常法にて調製し、得られた水中油型化粧料をサンプル瓶(食品140:第一硝子株式会社製)に120g充填し、20℃条件下で24時間静置した後に、粘度が30,000~100,000mPa・s未満の場合、B型粘度計(モデル:デジタル粘度計TVB-10M、東機産業株式会社製)を使用し、M4号ローターを用いて20℃、6rpmで1分間回転させた後に測定する。粘度が100,000mPa・s以上の場合はM4号ローターを用いて20℃、3rpmで2分間回転させた後に測定する。
【0051】
本発明の水中油型化粧料の20℃条件下でのpHは、特に限定されないが、使用性の観点から好ましくは5.0~8.0である。
【0052】
本発明による水中油型化粧料の20℃条件下でのpHは、常法にて調製し、得られた水中油型化粧料をサンプル瓶(食品140:第一硝子株式会社製)に120g充填し、20℃条件下で24時間静置した後に、ガラス電極式水素イオン濃度指示計(F-71:株式会社堀場製作所製)にて測定したものである。
【0053】
本発明の水中油型化粧料の使用部位は、特に限定されないが、好ましくは皮膚、より好ましくは顔である。
【実施例0054】
以下に実施例を挙げて本発明をより詳細に説明する。なお、これらは本発明を何ら限定するものではない。
【0055】
本明細書に示す評価試験において、水中油型化粧料に含まれる成分およびその含有量を種々変更しながら実施した。各成分の含有量を示す単位はすべて質量%であり、これを常法にて調製した。
【0056】
本発明に示す評価試験において、「しっとり感」、「肌へのなじみ」、「顔料の肌への定着力」および「高温安定性」について評価した。
【0057】
[しっとり感]
専門のパネラー15名が、実施例および比較例で得られた水中油型組成物1gを手に取り、顔面に塗布したときの、しっとり感を官能にて評価した。
(評価基準)
5:15人中14人以上がしっとり感があると評価した。
4:15人中11~13人がしっとり感があると評価した。
3:15人中8~10人がしっとり感があると評価した。
2:15人中5~7人がしっとり感があると評価した。
1:15人中4人以下がしっとり感があると評価した。
【0058】
[肌へのなじみ]
専門のパネラー15名が、実施例および比較例で得られた水中油型組成物1gを手に取り、顔面に塗布したときの、肌へのなじみのよさを官能にて評価した。
(評価基準)
5:15人中14人以上が肌なじみのよさを感じた。
4:15人中11~13人が肌なじみのよさを感じた。
3:15人中8~10人が肌なじみのよさを感じた。
2:15人中5~7人が肌なじみのよさを感じた。
1:15人中4人以下が肌なじみのよさを感じた。
【0059】
[顔料の肌への定着力]
専門のパネラー15名が、実施例および比較例で得られた水中油型組成物1gを手に取り、顔面に塗布したときの、顔料の肌への定着力を官能にて評価した。
(評価基準)
5:15人中14人以上が顔料が肌へ定着したと感じた。
4:15人中11~13人が顔料が肌へ定着したと感じた。
3:15人中8~10人が顔料が肌へ定着したと感じた。
2:15人中5~7人が顔料が肌へ定着したと感じた。
1:15人中4人以下が顔料が肌へ定着したと感じた。
【0060】
[高温安定性]
専門のパネラー1名が、サンプル瓶(食品140:第一硝子株式会社製)に120g充填し、40℃条件下で3ヶ月間静置した後、以下の評価基準に従い、高温安定性を目視にて評価した。
(評価基準)
5:表面に滴はなく、凝集、分離が確認されない。
4:表面にわずかに滴を確認する。
3:表面に滴を確認する。
2:わずかに凝集、分離を確認する。
1:凝集、分離を確認する。
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】
【0063】
【表3】
【0064】
【表4】
【0065】
【表5】
【0066】
【表6】
【0067】
【表7】
【0068】
表1~7に示す実施例1~55から、「しっとり感」、「肌へのなじみのよさ」、「顔料の肌への定着力」および「高温安定性」について良好な結果を得ることが確認された。
【0069】
実施例56~58で得られた水中油型化粧料を使用して各種評価試験を行っても、「しっとり感」、「肌へのなじみのよさ」、「顔料の肌への定着力」および「高温安定性」のいずれの評価も良好であった。
【0070】
<実施例56>
成分名 含有量(%)
(A)ミリスチン酸オクチルドデシル 7.00
(B)スクワラン 2.00
(B)ワセリン 2.00
(C)ステアリン酸ソルビタン(HLB:4.5) 2.00
(C)ステアリン酸グリセリル(HLB:3.0) 0.20
(D)ラウリン酸ポリグリセリル-10(HLB:15.5) 0.30
(E)(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー
0.45
(E)(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/VP)コポリマー 0.25
(F)キサンタンガム 0.20
(G)1,3-ブチレングリコール 13.00
(G)グリセリン 3.00
L-アルギニン 0.45
エデト酸二ナトリウム 0.40
グリセリンモノ2-エチルヘキシルエーテル 0.20
フェノキシエタノール 0.30
ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル) 0.15
トリメチルグリシン 0.50
カオリン 0.01
アクリル酸アルキル共重合体エマルション 0.08
ベルガモット果実油 0.01
ローズマリー葉油 0.01
ローズマリー葉エキス 0.01
ビルベリー葉エキス 0.01
セイヨウハッカ葉エキス 0.01
カミツレ花エキス 0.01
マイカ/酸化チタン/酸化スズ ※1 0.20
マイカ/酸化チタン/酸化スズ ※2 0.20
マイカ/酸化チタン/硫酸Ba ※3 0.80
ケイ酸(Na/K/Al)/酸化チタン/シリカ ※4 4.00
顔料分散体-1 ※5 1.75
顔料分散体-2 ※6 0.10
顔料分散体-3 ※7 0.06
香料 0.20
精製水 60.14
合計 100.00
pH(20℃):5.94
粘度(20℃):78,200mPa・s
※1 RonaFlair Balance Blue(メルク株式会社製)
※2 RonaFlair Balance Red(メルク株式会社製)
※3 RonaFlair Low Luster Pigment(メルク株式会社製)
※4 RonaFlair LDP White(メルク株式会社製)
※5 BG60PFCQ(株式会社KOBOディスパテック製)
※6 BG60GRQ(株式会社KOBOディスパテック製)
※7 BG45GYQ(株式会社KOBOディスパテック製)
【0071】
<実施例57>
成分名 含有量(%)
(A)ミリスチン酸オクチルドデシル 7.00
(B)スクワラン 2.00
(B)ワセリン 2.00
(C)ステアリン酸ソルビタン(HLB:4.5) 2.00
(C)ステアリン酸グリセリル(HLB:3.0) 0.20
(D)ラウリン酸ポリグリセリル-10(HLB:15.5) 0.30
(E)(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー
0.45
(E)(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/VP)コポリマー 0.25
(F)キサンタンガム 0.20
(G)1,3-ブチレングリコール 13.00
(G)グリセリン 3.00
L-アルギニン 0.45
エデト酸二ナトリウム 0.40
グリセリンモノ2-エチルヘキシルエーテル 0.20
フェノキシエタノール 0.30
ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル) 0.15
トリメチルグリシン 0.50
カオリン 0.01
アクリル酸アルキル共重合体エマルション 0.08
ベルガモット果実油 0.01
ローズマリー葉油 0.01
ローズマリー葉エキス 0.01
ビルベリー葉エキス 0.01
セイヨウハッカ葉エキス 0.01
カミツレ花エキス 0.01
マイカ/酸化チタン/酸化スズ ※1 0.20
マイカ/酸化チタン/酸化スズ ※2 0.20
マイカ/酸化チタン/硫酸Ba ※3 0.80
ケイ酸(Na/K/Al)/酸化チタン/シリカ ※4 4.00
顔料分散体-1 ※5 1.75
顔料分散体-2 ※6 0.20
顔料分散体-3 ※7 0.02
香料 0.20
精製水 60.08
合計 100.00
pH(20℃):6.03
粘度(20℃):75,600mPa・s
【0072】
<実施例58>
成分名 含有量(%)
(A)ミリスチン酸オクチルドデシル 7.00
(B)ワセリン 4.00
(C)ステアリン酸ソルビタン(HLB:4.5) 3.00
(D)ラウリン酸ポリグリセリル-10(HLB:15.5) 0.30
(E)(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー
0.45
(E)(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/VP)コポリマー 0.25
(F)キサンタンガム 0.20
(G)1,3-ブチレングリコール 13.00
(G)グリセリン 3.00
L-アルギニン 0.45
エデト酸二ナトリウム 0.40
グリセリンモノ2-エチルヘキシルエーテル 0.20
フェノキシエタノール 0.30
ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル) 0.15
トリメチルグリシン 0.50
カオリン 0.01
アクリル酸アルキル共重合体エマルション 0.08
ベルガモット果実油 0.01
ローズマリー葉油 0.01
ローズマリー葉エキス 0.01
ビルベリー葉エキス 0.01
セイヨウハッカ葉エキス 0.01
カミツレ花エキス 0.01
マイカ/酸化チタン/酸化スズ ※1 0.20
マイカ/酸化チタン/酸化スズ ※2 0.20
マイカ/酸化チタン/硫酸Ba ※3 0.80
ケイ酸(Na/K/Al)/酸化チタン/シリカ ※4 4.00
顔料分散体-1 ※5 1.75
顔料分散体-2 ※6 0.10
顔料分散体-3 ※7 0.06
香料 0.20
精製水 59.34
合計 100.00
pH(20℃):6.16
粘度(20℃):81,000mPa・s
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明により、しっとり感、肌へのなじみ、顔料の肌への定着力および高温安定性が良好な水中油型化粧料を得ることができる。