(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023072446
(43)【公開日】2023-05-24
(54)【発明の名称】炭化珪素半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 29/78 20060101AFI20230517BHJP
H01L 29/12 20060101ALI20230517BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20230517BHJP
H01L 29/739 20060101ALI20230517BHJP
【FI】
H01L29/78 652H
H01L29/78 652T
H01L29/78 653A
H01L29/78 658E
H01L29/78 658G
H01L29/78 658A
H01L29/78 655A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021185006
(22)【出願日】2021-11-12
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】富田 英幹
(57)【要約】
【課題】製造工程および製造時間の減少を図ることができるSiC半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】SJ構造を構成することでは、構成層120上に成膜マスク30を形成することと、構成層120のうちの第2導電型カラム領域13が形成される形成予定領域が開口するように成膜マスクに開口部30aを形成することと、成膜マスク30を用いてエッチングを行い、構成層120にマスク構成トレンチ121を形成して構成層120のうちのマスク構成トレンチ121を囲む部分をSiCマスク122とすることと、成膜マスク30およびSiCマスク122を含むイオン注入用マスク130を用い、マスク構成トレンチ121の底面に、第2導電型の不純物をイオン注入して第2導電型カラム領域13を形成することと、構成層120のうちのSiCマスク122となる部分を除去することとを行う。
【選択図】
図2E
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スーパージャンクション構造を有する炭化珪素半導体装置の製造方法であって、
炭化珪素で構成された第1導電型の構成層(120)を形成することと、
前記構成層にイオン注入を行って一方向を長手方向とする複数の第2導電型カラム領域(13)を形成することを行うことにより、前記構成層のうちの前記第2導電型カラム領域の間に残された部分によって第1導電型カラム領域(12a)を構成し、前記第1導電型カラム領域と前記第2導電型カラム領域とが前記長手方向と交差する方向に交互に繰り返し並べられた前記スーパージャンクション構造を形成することと、を行い、
前記スーパージャンクション構造を形成することでは、
前記構成層上に、成膜マスク(30)を形成することと、
前記構成層のうちの前記第2導電型カラム領域が形成される形成予定領域が開口するように前記成膜マスクに開口部(30a)を形成することと、
前記成膜マスクを用いてエッチングを行い、前記構成層にマスク構成トレンチ(121)を形成し、前記構成層のうちの前記マスク構成トレンチを囲む部分を前記成膜マスクより不純物の遮蔽率が高い炭化珪素マスク(122)とすることと、
前記成膜マスクおよび前記炭化珪素マスクを含むイオン注入用マスク(130)を用い、前記マスク構成トレンチの底面に、第2導電型の不純物を、加速エネルギを変更しながらイオン注入することにより、前記炭化珪素マスクに前記不純物がイオン注入された注入領域(140)を構成しつつ、前記マスク構成トレンチの底面から前記構成層の深さ方向に沿って延びる前記第2導電型カラム領域を形成することと、
前記構成層のうちの前記炭化珪素マスクとなる部分を除去することにより、前記構成層のうちの前記第2導電型カラム領域の間に残された部分を第1導電型カラム領域(12a)として、前記第1導電型カラム領域および前記第2導電型カラム領域を有する前記スーパージャンクション構造を形成することと、を行い、
前記マスク構成トレンチを形成することでは、前記第2導電型カラム領域を形成することの際、前記注入領域が前記炭化珪素マスク内で終端する深さとされた前記マスク構成トレンチを形成する炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記マスク構成トレンチを形成することの後、前記成膜マスクの開口部における側面および前記マスク構成トレンチの側面に沿って調整マスク(50)を形成することと、前記マスク構成トレンチの底面に配置された前記調整マスクを除去することと、を行い、
前記第2導電型カラム領域を形成することでは、前記成膜マスク、前記炭化珪素マスク、前記調整マスクを含む前記イオン注入用マスクを用いてイオン注入を行う請求項1に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記マスク構成トレンチを形成することでは、前記成膜マスクの厚さより、前記炭化珪素マスクが薄くなるように、前記マスク構成トレンチを形成する請求項1または2に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スーパージャンクション(以下では、単にSJともいう)構造を有し、炭化珪素(以下では、単にSiCともいう)で構成されるSiC半導体装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、オン抵抗の低減を図ると共に耐圧の向上を図るため、ドリフト領域としてのn型カラム領域とp型カラム領域とが交互に繰り返し配置されたSJ構造を有するSiC半導体装置が提案されている。例えば、このようなSiC半導体装置では、ドレイン領域上にSJ構造が配置されている。そして、SJ構造上には、ベース層が形成され、ベース層の表層部には、ソース層が形成されている。また、このようなSiC半導体装置では、ソース層およびベース層を貫通してn型カラム領域に達するトレンチが形成され、当該トレンチにゲート絶縁膜およびゲート電極が順に形成されてトレンチゲート構造が形成されている。
【0003】
そして、このようなSiC半導体装置では、n型カラム領域とp型カラム領域との総チャージ量が等しくなるように、例えば、p型カラム領域およびn型カラム領域の幅が等しくされると共に不純物濃度が等しくされる。
【0004】
ところで、このようなSiC半導体装置では、p型カラム領域およびn型カラム領域の幅を狭くして不純物濃度を高くしたり、p型カラム領域およびn型カラム領域の深さを深くすることにより、さらに、オン抵抗を低減したり、耐圧の向上を図ることができる。
【0005】
このため、非特許文献1には、SJ構造を形成する際、n型のエピタキシャル膜を成長させることと、イオン注入してエピタキシャル膜にp型カラム領域を構成する部分を形成することと、を繰り返し行う製造方法が提案されている。なお、n型カラム領域は、エピタキシャル膜のうちのp型カラム領域を構成する部分と異なる部分で構成される。これによれば、エピタキシャル膜を成長させることと、イオン注入することとを交互に繰り返し行うため、p型カラム領域およびn型カラム領域の幅を狭くしつつ、p型カラム領域およびn型カラム領域の深さを深くしたSiC半導体装置を製造できる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】T. Masuda, Y. Saito, T. Kumazawa, T. Hatayama1, and S. Harada, 「0.63 mΩcm2/ 1170V 4H-SiC Super Junction V-Groove Trench MOSFET, Preprint submitted to 2018 IEEE International Electron Devices Meeting (IEDM).Received August 3, 2018.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記の製造方法では、エピタキシャル膜を成長させることと、イオン注入を行うこととを交互に繰り返し行うため、製造工程および製造時間が増加し、ひいてはコストが増加し易い。
【0008】
本発明は上記点に鑑み、製造工程および製造時間の減少を図ることができるSiC半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための請求項1では、SJ構造を有するSiC半導体装置の製造方法であって、SiCで構成された第1導電型の構成層(120)を形成することと、構成層にイオン注入を行って一方向を長手方向とする複数の第2導電型カラム領域(13)を形成することを行うことにより、構成層のうちの第2導電型カラム領域の間に残された部分によって第1導電型カラム領域(12a)を構成し、第1導電型カラム領域と第2導電型カラム領域とが長手方向と交差する方向に交互に繰り返し並べられたSJ構造を形成することと、を行い、SJ構造を形成することでは、構成層上に、成膜マスク(30)を形成することと、構成層のうちの第2導電型カラム領域が形成される形成予定領域が開口するように成膜マスクに開口部(30a)を形成することと、成膜マスクを用いてエッチングを行い、構成層にマスク構成トレンチ(121)を形成し、構成層のうちのマスク構成トレンチを囲む部分を成膜マスクより不純物の遮蔽率が高いSiCマスク(122)とすることと、成膜マスクおよびSiCマスクを含むイオン注入用マスク(130)を用い、マスク構成トレンチの底面に、第2導電型の不純物を、加速エネルギを変更しながらイオン注入することにより、SiCマスクに不純物がイオン注入された注入領域(140)を構成しつつ、マスク構成トレンチの底面から構成層の深さ方向に沿って延びる第2導電型カラム領域を形成することと、構成層のうちのSiCマスクとなる部分を除去することにより、構成層のうちの第2導電型カラム領域の間に残された部分を第1導電型カラム領域(12a)として、第1カラム領域および第2導電型カラム領域を有するSJ構造を形成することと、を行い、マスク構成トレンチを形成することでは、第2導電型カラム領域を形成することの際、注入領域がSiCマスク内で終端する深さとされたマスク構成トレンチを形成する。
【0010】
これによれば、成膜マスクおよびSiCマスクを含んでイオン注入用マスクを構成している。このため、イオン注入用マスクの開口部の幅を狭くしつつ、厚さを厚くできる。また、SiCマスクは、成膜マスクよりも不純物の遮蔽率が高いため、十分にマスクとして用いることができる。そして、加速エネルギを変更しながらイオン注入を行うことにより、幅が狭いと共に深さが深い第2導電型カラム領域を形成できるため、幅が狭い共に深さが深い第1導電型カラム領域を形成できる。つまり、この製造方法では、エピタキシャル膜を成長させることと、イオン注入を行うこととを交互に繰り返し行うことなく、幅が狭いと共に深さが深い第1導電型カラム領域および第2導電型カラム領域を形成できる。したがって、製造工程および製造時間の減少を図りつつ、幅が狭いと共に深さが深い第1導電型カラム領域および第2導電型カラム領域を形成できる。
【0011】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施形態におけるSiC半導体装置の断面図である。
【
図2A】第1実施形態におけるSiC半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【
図2B】
図2Aに続くSiC半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【
図2C】
図2Bに続くSiC半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【
図2D】
図2Cに続くSiC半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【
図2E】
図2Dに続くSiC半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【
図2F】
図2Eに続くSiC半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【
図2G】
図2Fに続くSiC半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【
図3A】SiCにイオン注入を行った際の深さと不純物濃度との関係を示す図である。
【
図3B】SiO
2にイオン注入を行った際の深さと不純物濃度との関係を示す図である。
【
図4A】第2実施形態におけるSiC半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【
図4B】
図4Aに続くSiC半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【
図4C】
図4Bに続くSiC半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0014】
(第1実施形態)
第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。まず、本実施形態のSJ構造を有するSiC半導体装置の構成について説明する。なお、本実施形態の製造方法によって得られるSiC半導体装置は、例えば、自動車等の車両に搭載され、車両用の各種電子装置を駆動するための装置として適用されると好適である。また、本実施形態では、トレンチゲート構造の反転型のMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistorの略)が形成されているSiC半導体装置を例に挙げて説明する。
【0015】
本実施形態のSiC半導体装置は、
図1に示されるように、半導体基板10を用いて構成されている。具体的には、SiC半導体装置は、SiCからなるn
+型の基板11を備えている。基板11上には、エピタキシャル膜にて構成されるn型のドリフト層12が形成されている。なお、本実施形態では、基板11がドレイン領域を構成する。
【0016】
そして、ドリフト層12には、基板11の面方向における一方向を長手方向として複数のp型カラム領域13がストライプ状に形成されている。本実施形態では、p型カラム領域13が紙面奥行き方向に延設されている。なお、このp型カラム領域13は、後述するように、イオン注入によって構成される。そして、ドリフト層12のうちのp型カラム領域13の間に残された部分がn型カラム領域12aとされる。このため、基板11上には、n型カラム領域12aとp型カラム領域13とがストライプ状に交互に繰り返し形成された構造からなるSJ構造が配置された状態となっている。なお、以下では、n型カラム領域12aとp型カラム領域13との配列方向の長さを幅ともいい、
図1では、紙面左右方向の長さが幅となる。
【0017】
n型カラム領域12aおよびp型カラム領域13の表面には、p型のベース層14が形成されている。そして、ベース層14の表層部には、n型カラム領域12aよりも高不純物濃度とされたn+型のソース領域15が形成されていると共に、ベース層14よりも高不純物濃度とされたp+型のコンタクト領域16が形成されている。本実施形態では、ソース領域15は、後述するトレンチ17の側面に沿って形成され、コンタクト領域16は、ソース領域15を挟んでトレンチ17と反対側に形成されている。
【0018】
そして、本実施形態では、上記のように、基板11、ドリフト層12、n型カラム領域12a、p型カラム領域13、ベース層14、ソース領域15、コンタクト領域16が積層されて半導体基板10が構成されている。以下、半導体基板10のうちのベース層14側の面を一面10aとし、半導体基板10のうちの基板11側の面を他面10bとする。
【0019】
半導体基板10には、一面10a側からソース領域15およびベース層14を貫通してn型カラム領域12aに達するように、複数のトレンチ17が形成されている。具体的には、複数のトレンチ17は、p型カラム領域13およびn型カラム領域12aの長手方向に沿って延設されており、p型カラム領域13およびn型カラム領域12aの配列方向に沿って等間隔で並べられてストライプ状に形成されている。
【0020】
各トレンチ17には、内壁面にゲート絶縁膜18が形成され、ゲート絶縁膜18上には、ドープトPoly-Si等によって構成されるゲート電極19が形成されている。これにより、トレンチゲート構造が構成されている。
【0021】
また、半導体基板10の一面10a上には、レンチゲート構造を覆うように、BPSG(Borophosphosilicate Glassの略)等で構成される層間絶縁膜20が配置されている。層間絶縁膜20には、ソース領域15の一部およびコンタクト領域16を露出させるコンタクトホール20aが形成されている。そして、層間絶縁膜20上には、コンタクトホール20aを通じてソース領域15およびコンタクト領域16と接続されるように上部電極21が形成されている。なお、本実施形態では、上部電極21が第1電極に相当している。
【0022】
本実施形態の上部電極21は、例えば、Ni/Al等の複数の金属にて構成されている。そして、複数の金属のうちのn型SiC(すなわち、ソース領域15)を構成する部分と接触する部分は、n型SiCとオーミック接触可能な金属で構成されている。また、複数の金属のうちの少なくともp型SiC(すなわち、コンタクト領域16)と接触する部分は、p型SiCとオーミック接触可能な金属で構成されている。
【0023】
半導体基板10の他面10b側には、基板11と電気的に接続される下部電極22が形成されている。なお、本実施形態では、下部電極22が第2電極に相当している。
【0024】
本実施形態のSiC半導体装置では、このような構造により、nチャネルタイプの反転型であるトレンチゲート構造のMOSFETが構成されている。なお、本実施形態では、n型、n+型が第1導電型に相当し、p型、p+型が第2導電型に相当している。また、本実施形態では、n型カラム領域12aが第1導電型カラム領域に相当し、p型カラム領域13が第2導電型カラム領域に相当している。
【0025】
このようなSiC半導体装置では、ゲート電極19に印加されるゲート電圧が絶縁ゲート構造の閾値電圧以上とされると、上部電極21と下部電極22との間に電流が流れるオン状態となる。そして、SiC半導体装置は、ゲート電極19に印加されるゲート電圧が閾値電圧未満とされると、上部電極21と下部電極22との間に電流が流れないオフ状態となる。
【0026】
また、このようなSiC半導体装置では、SJ構造を構成するn型カラム領域12aとp型カラム領域13との総チャージ量が等しくなるように形成される。そして、本実施形態のSiC半導体装置では、後述するようにp型カラム領域13がイオン注入によって形成される。
【0027】
この場合、SiC半導体装置は、p型カラム領域13の不純物濃度を高くするほどn型カラム領域12aの不純物濃度も高くでき、オン抵抗の低減を図ることができる共に、耐圧を確保することができる。なお、p型カラム領域13の不純物濃度は、p型カラム領域13の幅を狭くするほど高くできる。また、SiC半導体装置では、p型カラム領域13の深さを深くするほどn型カラム領域12aの深さも深くでき、オン抵抗の低減を図ることができる共に、耐圧を確保することができる。このため、上記のようなSiC半導体装置では、イオン注入によって構成されるp型カラム領域13の幅を狭くしつつ、p型カラム領域13の深さを深くすることが好ましい。
【0028】
次に、上記SiC半導体装置の製造方法について、
図2A~
図2Gを参照しつつ説明する。なお、
図2A~
図2Gでは、
図1中の1本のp型カラム領域13を図示しているが、実際には、複数本のp型カラム領域13がイオン注入によって同時に形成される。
【0029】
まず、
図2Aに示されるように、基板11上にドリフト層12を構成するn型の構成層120をエピタキシャル成長させ、構成層120上にCVD(Chemical Vapor Depositionの略)法等によって成膜マスク30を形成する。なお、成膜マスク30は、SiO
2(すなわち、酸化膜)等で構成される。
【0030】
次に、
図2Bに示されるように、成膜マスク30上にレジスト40を配置する。そして、構成層120のうちのp型カラム領域13が形成される形成予定領域が開口するように、フォトリソグラフィーおよびエッチングを行って成膜マスク30に開口部30aを形成する。その後、
図2Cに示されるように、アッシング等によってレジスト40を除去する。
【0031】
ここで、成膜マスク30は、後述する
図2Eの工程にて、p型不純物をイオン注入してp型カラム領域13を構成する際にp型不純物を遮蔽するものである。そして、p型カラム領域13は、上記のように幅が狭く、深さが深いほど好ましい。また、イオン注入によってp型カラム領域13を深くまで形成する場合には、イオン注入を行う際の加速エネルギを大きくするため、成膜マスク30を厚くすることが必要となる。このため、成膜マスク30は、厚さを厚くしつつ、開口部30aの幅が狭くなるようにパターニングされることが好ましい。しかしながら、現状では、開口部30aの幅に対する成膜マスク30の厚さをアスペクト比すると、フォトリソグラフィーおよびエッチングの加工限界により、アスペクト比が所定値以上となるように成膜マスク30をパターニングすることが困難である。このため、成膜マスク30のみを用いて幅が狭いと共に深さが深いp型カラム領域13をイオン注入にて形成しようとした場合、成膜マスク30の下方に位置する構成層120(すなわち、n型カラム領域12aとなる部分)までp型不純物が注入される可能性がある。言い換えると、成膜マスク30のみを用いて幅が狭いp型カラム領域13をイオン注入して形成しようとした場合、深さが深いp型カラム領域13を形成することが困難である。
【0032】
したがって、本発明者らは、鋭意検討を行い、以下の知見を得た。具体的には、本発明者らは、SiO
2とSiCのp型不純物の遮蔽率について検討を行い、
図3Aおよび
図3Bに示される結果を得た。なお、
図3Aは、加速エネルギを変化させながらSiCにp型不純物をイオン注入した際の濃度プロファイルを示す図である。
図3Bは、
図3Aにて加速エネルギを最も大きくしてイオン注入を行った際の加速エネルギでSiO
2にp型不純物をイオン注入した際の濃度プロファイルを示す図である。
【0033】
図3Aおよび
図3Bに示されるように、p型不純物をイオン注入した際には、SiCの方がSiO
2よりもp型不純物が浅い部分までしか注入されないことが確認される。言い換えると、p型不純物をイオン注入した際には、SiCの方がSiO
2よりもp型不純物の遮蔽率が高いことが確認される。このため、本発明者らは、SiCの一部をマスクとして利用することを見出した。
【0034】
そして、本実施形態では、
図2Dに示されるように、成膜マスク30を用いてRIE(Reactive Ion Etchingの略)等のドライエッチングを行い、構成層120にマスク構成トレンチ121を形成する。そして、構成層120のうちのマスク構成トレンチ121を囲む部分をSiCマスク122とする。言い換えると、構成層120のうちのマスク構成トレンチ121と同じ深さに位置する部分をSiCマスク122とする。そして、成膜マスク30およびSiCマスク122を含むイオン注入用マスク130を構成する。これによれば、イオン注入用マスク130の開口部130aの幅を成膜マスク30の開口部30aの幅としつつ、イオン注入用マスク130の厚さを厚くできるため、イオン注入用マスク130の開口部130aの幅に対する厚さを厚くできる。つまり、アスペクト比の大きなイオン注入用マスク130を構成できる。
【0035】
なお、マスク構成トレンチ121を形成するためのドライエッチングは、SiCの選択性がSiO2の選択性より大きくなる条件で行われ、例えば、SiCとSiO2との選択比が5:1程度となる条件で行われる。また、成膜マスク30は、マスク構成トレンチ121を形成することにより、ドリフト層12側と反対側の表面が少し削れた状態となる。
【0036】
続いて、
図2Eに示されるように、成膜マスク30およびSiCマスク122をイオン注入用マスク130とし、構成層120に、マスク構成トレンチ121の底面から構成層120の深さ方向に沿って延びるp型カラム領域13を形成する。なお、p型カラム領域13を形成する際には、高電圧イオン注入装置を用い、加速エネルギを変更しながらAl等のp型不純物をイオン注入する。この際、加速エネルギを高くしてイオン注入を行うことにより、p型不純物を深い位置まで注入でき、p型カラム領域13の深さを深くできる。しかしながら、加速エネルギが高い状態でイオン注入を行うことにより、SiCマスク122にはp型不純物が注入された注入領域140が構成される。このため、マスク構成トレンチ121(すなわち、SiCマスク122)は、形成するp型カラム領域13の深さに基づき、注入領域140がSiCマスク122内で終端するように深さが調整される。但し、マスク構成トレンチ121は、SiCマスク122が成膜マスク30よりも厚さが薄くなるように形成されることが好ましい。
【0037】
次に、
図2Fに示されるように、エッチング等によって成膜マスク30を除去する。その後、
図2Gに示されるように、CMP(chemical mechanical polishingの略)法等により、構成層120をマスク構成トレンチ121と同じ深さまで除去する。つまり、構成層120のうちのSiCマスク122となる部分を除去する。これにより、p型カラム領域13と、p型カラム領域13で挟まれたn型カラム領域12aとを有するSJ構造が構成される。
【0038】
その後は特に図示しないが、一般的な半導体製造プロセスを行い、ベース層14、ソース領域15、コンタクト領域16、トレンチゲート構造、上部電極21、下部電極22等を形成することにより、
図1に示すSiC半導体装置が製造される。
【0039】
以上説明した本実施形態によれば、成膜マスク30およびSiCマスク122を含んでイオン注入用マスク130を構成している。このため、イオン注入用マスク130の幅130aを狭くしつつ、厚さを厚くできる。また、SiCマスク122は、成膜マスク30よりも不純物の遮蔽率が高いため、十分にマスクとして用いることができる。そして、本実施形態では、構成層120を形成した後、加速エネルギを変更しながら一工程のイオン注入により、幅が狭いと共に深さが深いp型カラム領域13を形成できるため、幅が狭いと共に深さが深いn型カラム領域12aを形成できる。つまり、本実施形態では、エピタキシャル膜を成長させることと、イオン注入を行うこととを交互に繰り返し行うことなく、幅が狭いと共に深さが深い第1導電型カラム領域および第2導電型カラム領域を形成できる。したがって、製造工程および製造時間の減少を図りつつ、幅が狭いと共に深さが深いn型カラム領域12aおよびp型カラム領域13を形成できる。
【0040】
(1)本実施形態では、SiCマスク122の厚さを成膜マスク30の厚さより薄くしている。このため、SiCマスク122を除去する際のSiCの量を削減でき、ひいてはコストの低減を図ることができる。
【0041】
(第2実施形態)
第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対し、マスク構成トレンチ121を形成した後に調整マスクを形成したものである。その他に関しては、第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0042】
本実施形態では、
図2Dの工程を行ってマスク構成トレンチ121を形成した後、
図4Aに示されるように、ALD(Atomic Layer Depositionの略)法等により、成膜マスク30の開口部30aにおける側面およびマスク構成トレンチ121の側面に調整マスク50を形成する。但し、調整マスク50は、開口部30aおよびマスク構成トレンチ121を埋め込まないように形成される。また、調整マスク50は、成膜マスク30のうちの構成層120と反対側の表面にも形成される。
【0043】
続いて、
図4Bに示されるように、エッチング等により、マスク構成トレンチ121の底面に形成された調整マスク50を除去し、成膜マスク30、SiCマスク122、調整マスク50にて構成されるイオン注入用マスク130を構成する。これにより、上記第1実施形態より開口部130aの幅が狭くされたイオン注入用マスク130が構成される。なお、調整マスク50は、マスク構成トレンチ121の底面に形成された部分が除去される際、調整マスク50のうちの構成層120と反対側の表面上に形成された部分も除去される。
【0044】
続いて、
図4Cに示されるように、
図2Eと同様の工程を行い、イオン注入を行ってp型カラム領域13を形成する。この際、本実施形態では、上記第1実施形態よりイオン注入用マスク130における開口部130aの幅が狭くされているため、上記第1実施形態より幅が狭くされたp型カラム領域13が形成される。なお、本実施形態では、上記第1実施形態との比較を理解し易くするためにp型カラム領域13の幅のみを狭くした図を示しているが、実際には、p型カラム領域13の幅を狭くした場合にはn型カラム領域12aの幅も調整される。
【0045】
その後は特に図示しないが、上記
図2F以降と同様の工程を行うことにより、幅が狭くされたp型カラム領域13を有するSiC半導体装置が製造される。
【0046】
以上説明した本実施形態によれば、成膜マスク30およびSiCマスク122を含んでイオン注入用マスク130を構成しているため、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0047】
(1)本実施形態では、調整マスク50を含んでイオン注入用マスク130を構成しており、イオン注入用マスク130の開口部130aの幅を狭くできる。したがって、さらに幅が狭くされたp型カラム領域13を形成できる。
【0048】
(他の実施形態)
本開示は、実施形態に準拠して記述されたが、本開示は当該実施形態や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【0049】
例えば、上記各実施形態では、第1導電型をn型、第2導電型をp型としたnチャネルタイプのトレンチゲート構造のMOSFETが形成されたSiC半導体装置について説明した。しかしながら、これは一例を示したに過ぎず、例えば、nチャネルタイプに対して各構成要素の導電型を反転させたpチャネルタイプのトレンチゲート構造のMOSFETが形成されたSiC半導体装置としてもよい。また、MOSFETは、トレンチゲート構造ではなく、プレーナゲート構造とされていてもよい。さらに、SiC半導体装置は、MOSFET以外に、同様の構造のIGBTが形成された構成とされていてもよい。IGBTの場合、上記各実施形態におけるn+型の基板11をp+型のコレクタ層に変更する以外は、上記各実施形態で説明したMOSFETと同様である。つまり、上記各実施形態のSiC半導体装置は、SJ構造を有するのであれば、その他の構成は特に限定されない。
【0050】
また、上記第1実施形態において、
図2Aの工程では、p型の構成層120を配置し、
図2Eの工程では、n型不純物をイオン注入してn型カラム領域12aを形成するようにしてもよい。同様に、上記第2実施形態において、p型の構成層120を配置し、
図4Cの工程では、n型不純物をイオン注入してn型カラム領域12aを形成するようにしてもよい。なお、特に図示しないが、n型不純物をイオン注入する際においても、SiCの方がSiO
2よりも不純物の遮蔽率が高くなる。
【0051】
さらに、上記各実施形態において、マスク構成トレンチ121は、SiCマスク122の方が成膜マスク30よりも厚くなるように形成されていてもよい。これによれば、SiCマスク122の方が成膜マスク30よりも不純物の遮蔽率が高いため、注入領域140がn型カラム領域12aに達することをさらに抑制できる。
【符号の説明】
【0052】
12a n型カラム領域(第1導電型カラム領域)
13 p型カラム領域(第2導電型カラム領域)
30 成膜マスク
121 マスク構成トレンチ
122 SiCマスク
130 イオン注入用マスク
140 イオン注入領域