(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023072472
(43)【公開日】2023-05-24
(54)【発明の名称】光通信受信装置用のトランスインピーダンスアンプに設けられるローパスフィルタの時定数制御回路、時定数切替トランスインピーダンスアンプ(TIA)、光通信受信装置、受動光ネットワークシステムおよび車載光ネットワークシステム
(51)【国際特許分類】
H04B 10/69 20130101AFI20230517BHJP
H03F 3/08 20060101ALI20230517BHJP
H03H 11/04 20060101ALI20230517BHJP
【FI】
H04B10/69 130
H03F3/08
H03H11/04 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021185054
(22)【出願日】2021-11-12
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、国立研究開発法人情報通信研究機構委託事業、研究開発項目「Beyond 5G 超大容量無線通信を支える次世代エッジクラウドコンピューティング基盤の研究開発」副題「Beyond 5Gに向けた革新的高速大容量データ転送ハードウェア開発と高機能エッジクラウド情報処理基盤の研究開発」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】506158197
【氏名又は名称】公立大学法人 滋賀県立大学
(71)【出願人】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 敏之
(72)【発明者】
【氏名】岸根 桂路
(72)【発明者】
【氏名】土谷 亮
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 大輔
(72)【発明者】
【氏名】中村 誠
(72)【発明者】
【氏名】高橋 康宏
【テーマコード(参考)】
5J098
5J500
5K102
【Fターム(参考)】
5J098AA03
5J098AA06
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5J098AB02
5J098AB03
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5J500AH29
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5J500AT06
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5K102AA65
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5K102MA02
5K102MB17
5K102PH31
5K102RD15
5K102RD27
(57)【要約】
【課題】バースト信号に対する応答性を改善する時定数制御回路、時定数切替TIA、光通信受信装置、PONシステム、又は、車載光ネットワークシステムを提供する。
【解決手段】TIAのためのローパスフィルタの時定数制御回路100は、抵抗要素とキャパシタ要素から構成されるローパスフィルタ回路101と、ローパスフィルタ回路101の出力電圧V
LPFに応じて、時定数を切替える時定数切替信号を出力する切替信号発生部114とを備えている。ローパスフィルタ回路101は、時定数切替信号を受けて、抵抗値を切替える抵抗切替部111と、ローパスフィルタ回路101の出力電圧V
LPFでキャパシタ要素の一部のキャパシタを充電し、時定数切替信号を受けて、充電を停止するキャパシタ充電部113と、一部のキャパシタをローパスフィルタ回路101の出力に接続して、容量値を切替えるキャパシタ切替部112とを有している。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ローパスフィルタを含む時定数制御回路であって、
ローパスフィルタ回路と、
時定数切替信号を出力する切替信号発生部と、
を備え、
前記ローパスフィルタ回路は、前記時定数切替信号により制御されるキャパシタ切替部と、キャパシタ充電部と、
を有する、時定数制御回路。
【請求項2】
前記時定数切替信号は、前記ローパスフィルタ回路の出力値が変動を開始して、所定の時間が経過した後に反転する2値信号である、
請求項1に記載の時定数制御回路。
【請求項3】
前記時定数切替信号は、前記ローパスフィルタ回路の出力値が変動を開始して、所定の時間が経過した後に前記ローパスフィルタ回路の時定数が増大するように変化する、
請求項1に記載の時定数制御回路。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1項に記載の時定数制御回路と、
光通信受信装置用のトランスインピーダンスアンプ(TIA)と、
前記TIAの出力電圧と、前記ローパスフィルタ回路の前記出力電圧とを入力し、差動増幅信号を出力する差動増幅回路と、
を備える時定数切替TIA。
【請求項5】
光通信受信装置用のトランスインピーダンスアンプ(TIA)のためのローパスフィルタの時定数制御回路であって、
抵抗要素とキャパシタ要素とを有するローパスフィルタ回路と、
前記ローパスフィルタ回路の出力電圧に応じて、前記ローパスフィルタ回路の時定数を切替える時定数切替信号を出力する切替信号発生部と、を備え、
前記ローパスフィルタ回路は、
前記時定数切替信号を受けて、前記ローパスフィルタ回路の抵抗値を切替える抵抗切替部と、
前記ローパスフィルタ回路の出力電圧で、前記キャパシタ要素を構成する一部のキャパシタを充電し、前記時定数切替信号を受けて、充電を停止するキャパシタ充電部と、
前記時定数切替信号を受けて、前記一部のキャパシタを前記ローパスフィルタ回路の出力に接続して、前記ローパスフィルタ回路の容量値を切替えるキャパシタ切替部と、を有する、
時定数制御回路。
【請求項6】
前記切替信号発生部は、前記ローパスフィルタ回路の前記出力電圧が所定の閾値と比較して変化したときから、所定の遅延時間が経過した後に前記時定数切替信号を出力する、
請求項5に記載の時定数制御回路。
【請求項7】
前記抵抗切替部は、
前記抵抗要素と、第1のスイッチ要素を備え、
前記時定数切替信号を受けて、前記第1のスイッチ要素のオンオフを切替えて、前記ローパスフィルタ回路の前記抵抗値を増加させ、
前記キャパシタ切替部は、
前記キャパシタ要素と、第2のスイッチ要素を備え、
前記時定数切替信号を受けて、前記第2のスイッチ要素のオンオフを切替えることで、前記ローパスフィルタ回路の前記容量値を増加させ、
前記キャパシタ充電部は、
前記ローパスフィルタ回路の前記出力電圧に接続されるボルテージフォロワと、第3のスイッチ要素を備え、
前記時定数切替信号を受けて、前記第3のスイッチ要素のオンオフを切替えることで、前記一部のキャパシタを前記ボルテージフォロワを介した前記ローパスフィルタ回路の前記出力電圧から切り離す、
請求項6に記載の時定数制御回路。
【請求項8】
請求項5~7の何れか1項に記載の時定数制御回路と、
前記TIAと、
前記TIAの出力電圧と、前記ローパスフィルタ回路の前記出力電圧とを入力し、差動増幅信号を出力する差動増幅回路と、
を備える時定数切替TIA。
【請求項9】
光信号を入力するフォトダイオードと、
前記フォトダイオードが出力する電流信号を入力する請求項4または8に記載の時定数切替TIAと、
を備える光通信受信装置。
【請求項10】
前記光信号は、プリアンブル期間とペイロード期間を有するバースト信号であり、
前記バースト信号におけるプリアンブル期間の長さをTPA、前記ペイロード期間における同符号が連続する最大時間をTCIDとし、
前記プリアンブル期間において時定数を切替える前の前記ローパスフィルタ回路の時定数をTS、時定数を切替えた後の前記ローパスフィルタの時定数をTLとしたとき、
TPA/4≧TS、且つ、TL≧10TCID
を満足する、
請求項9に記載の光通信受信装置。
【請求項11】
複数の宅内装置と、
前記複数の宅内装置の各々に接続される光ファイバからの信号を結合し、光信号を出力する光結合器と、
前記光結合器が出力する前記光信号を受信する請求項9または10に記載の光通信受信装置とを有する光/電気信号変換装置と、
前記光/電気信号変換装置が出力する差動増幅信号を受信する信号処理装置と、
を備える受動光ネットワーク(PON)システム。
【請求項12】
マスターと複数のゲートウェイをリング状に光ファイバで接続した車載光ネットワークシステムであって、
前記複数のゲートウェイ何れかが、請求項9または10に記載の光通信受信装置を備える車載光ネットワークシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受動光ネットワークシステムあるいは車載光ネットワークシステム等の光通信受信装置用のトランスインピーダンスアンプ(TIA)に設けられるローパスフィルタの時定数を適切に制御する回路に関する。
【背景技術】
【0002】
受動光ネットワーク(PON:Passive Optical Network)システムに代表される光通信システムの開発が急速に進んでいる。光通信システムは通信事業にとどまらず、車載光ネットワークへの応用が検討されている。光通信システムにおいて、トランスインピーダンスアンプ(TIA)は、光通信受信装置内に備えられ、光信号を電気信号へ変換し、微弱な電気信号を高感度に増幅する機能を有している。TIAには、トランスインピーダンスゲインの調整や、単相信号から差動信号への変換が必要であり、これらにはローパスフィルタ(LPF)による、TIA出力の中間電圧検出が多く用いられる。ローパスフィルタの応答は、入力信号のパターンに応じて最適化が必要である。
【0003】
PONシステムにおける光信号は、プリアンブル期間とペイロード期間を有するバースト信号である。プリアンブル期間は、「1」と「0」のビットが交互に並ぶデータパターンを有している。ペイロード期間は同符号が連続する期間であるCID(Consecutive identical digit)期間を有しており、最大CID長は符号化方式に依存する。
【0004】
プリアンブル期間は、バースト信号の入力データフレームの先頭に表れ、その期間はペイロード期間よりもはるかに短い。TIA出力の中間電圧を検出するためのローパスフィルタの時定数は、フレーム先頭で動作を安定させるため、迅速な応答が必要であり、プリアンブル期間においては、ローパスフィルタの時定数は小さな値に設定する必要がある。一方、ペイロード期間内のローパスフィルタの時定数の値は、特にCID期間において中間電圧を安定させるのに十分な大きさである必要がある。そのため、ペイロード期間における適切な時定数は、プリアンブル期間における適切な時定数よりもはるかに大きくなり、両者を単一の時定数で満足させることはできない。
【0005】
特許文献1には、バースト信号を受信したときの信号初期に設定する時定数が、信号後期に設定する時定数より短くなるように時定数切替を行う制御回路を備えたバースト信号受信装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載のバースト信号受信装置は、ローパスフィルタの抵抗値のみを切替えるものである。ローパスフィルタの構成要素の抵抗値に加えて容量値を変化させることで、より大きな時定数への切替えが可能となり、バースト信号に対応する応答性を改善するための柔軟な回路設計が可能となる。ローパスフィルタの容量値を変化させるためには、ローパスフィルタの出力電圧が変化しないように、充電が完了したキャパシタを挿入する必要がある。しかし、ローパスフィルタの出力電圧でキャパシタを充電するためには、予めローパスフィルタ回路中にキャパシタが接続されていなければならないため、従来装置では時定数制御には用いられてこなかった。
【0008】
本発明の目的は、バースト信号に対する応答性を改善する時定数制御回路、時定数切替TIA、光通信受信装置、受動光ネットワークシステム、又は、車載光ネットワークシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る時定数制御回路は、ローパスフィルタ回路と、時定数切替信号を出力する切替信号発生部とを備え、ローパスフィルタ回路は、時定数切替信号により制御されるキャパシタ切替部と、キャパシタ充電部とを有することを特徴とする。これにより、ローパスフィルタ回路の容量値を切替えることができ、柔軟な回路設計が可能になる。
【0010】
本発明に係る時定数制御回路は、抵抗要素とキャパシタ要素とを有するローパスフィルタ回路と、ローパスフィルタ回路の出力電圧に応じて、ローパスフィルタ回路の時定数を切替える時定数切替信号を出力する切替信号発生部とを備える。ローパスフィルタ回路は、時定数切替信号を受けて、ローパスフィルタ回路の抵抗値を切替える抵抗切替部と、ローパスフィルタ回路の出力電圧で、キャパシタ要素を構成する一部のキャパシタを充電し、時定数切替信号を受けて、充電を停止するキャパシタ充電部と、時定数切替信号を受けて、一部のキャパシタをローパスフィルタ回路の出力に接続して、ローパスフィルタ回路の容量値を切替えるキャパシタ切替部とを有することを特徴とする。
【0011】
上記構成によれば、ローパスフィルタ回路の抵抗値と容量値の両方を切替えることが可能になるので、大きな時定数への切替えが容易となり、柔軟な回路設計が可能となる。また、ローパスフィルタ回路の出力電圧で、キャパシタ要素の一部のキャパシタを充電する構成としたので、時定数の切替えにおいて、キャパシタを挿入した際に、電荷の移動が起こらないので、ローパスフィルタ回路の動作への影響を抑制できる。
【0012】
本発明に係る時定数制御回路において、切替信号発生部は、ローパスフィルタ回路の出力電圧が所定の閾値と比較して変化したときから、所定の遅延時間が経過した後に時定数切替信号を出力するように構成することが好ましい。
【0013】
上記構成によれば、所定の遅延時間を経過してから、ローパスフィルタ回路の時定数を切替えるように構成したので、時定数を切替える前の時定数において、ローパスフィルタ回路の出力電圧が十分に安定してから、時定数を切替えることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る時定数制御回路、時定数切替TIA、光通信受信装置、受動光ネットワークシステムおよび車載光ネットワークシステムによれば、バースト信号に対する応答性を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係る受動光ネットワーク(PON)システムの構成図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る車載光ネットワークシステムの構成図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る時定数切替TIA及び光通信受信装置の回路図である。
【
図4】
図3における増幅回路の具体回路図の一例である。
【
図5】本発明の実施形態に係る時定数制御回路の回路図である。
【
図6】第1の時定数における
図5の時定数制御回路の等価回路図である。
【
図7】第2の時定数における
図5の時定数制御回路の等価回路図である。
【
図8】プリアンブル期間における波形であり、
図8(a)は入力電流波形であり、
図8(b)は、時定数制御回路の各部の電圧波形である。
【
図9】プリアンブル期間及びペイロード期間における波形であり、
図9(a)は、入力電流波形であり、
図9(b)は、ローパスフィルタ回路の出力電圧波形である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。以下の説明において、具体的な形状、材料、方向、数値等は、本発明の理解を容易にするための例示であって、用途、目的、仕様等に合わせて適宜変更することができる。また、以下で説明する実施形態および変形例の構成要素を選択的に組み合わせることは当初から想定されている。
【0017】
図1は、本発明の受動光ネットワーク(PON:Passive Optical Network)システム1の構成図である。PONシステム1は、光通信システムの一種であり、複数の宅内装置(ONU:Optical Network Unit)2A、2B、2C等から光ファイバで送信された光信号を、光結合器3で結合し、通信局舎内に設置された図示しない光回線終端装置(OLT、Optical Line Terminal)に導く技術である。近年、PONシステムの車載光ネットワークへの応用が検討されている。
【0018】
図1のPONシステム1は、複数の宅内装置(ONU)2、光結合器3、光/電気信号変換装置4、信号処理装置5を有するが、構成はこれに限定されない。
図1のPONシステム1は、ONU2A~2Cからの光信号が通信局舎内のOLTへ向かう上り通信経路のみを示している。
【0019】
ONU2A~2Cは、一般家庭内に設置される光回線終端装置である。ONU2A~2Cは、宅内におけるネットワークやコンピュータなどに接続される。各ONU2A~2Cは、通信局舎内に設置されたOLTと対となって光信号を送受信する。
【0020】
光結合器3は、複数のONU2A~2Cから光ケーブルで送信された光信号を一連の光信号に結合する役割を行う。光結合器3で結合した一連の光信号は、本発明におけるバースト信号である。
【0021】
光/電気信号変換装置4は、光結合器3から受信した光信号であるバースト信号を電流信号に変換する光/電気信号変換機能と、電流信号を電圧信号に変換する電流/電圧変換機能と、更に電圧信号を増幅して、単相信号を差動信号に変換する差動増幅機能を有する。光/電気信号変換装置4は、後述する光通信受信装置10である。
【0022】
信号処理装置5は、光/電気信号変換装置4から出力された差動信号を受けて、信号処理を行う。具体的には、信号処理装置5は、光回線から受け取った信号を上位ネットワーク側の回線や機器に取り次ぐ役目を行う。また、信号処理装置5は、図示していない下り通信経路では、各ONU2へ送信する光信号を合成して光回線に送出する機能も有するが、本発明では省略する。
【0023】
図2にPONシステムの応用である車載光ネットワークシステム6の構成図を示す。
図2の車載光ネットワークシステム6においては、受信系の構成のみを示している。車載光ネットワークシステム6は、一台のマスター7と複数のゲートウェイ(GW)81~8Nを備えている。各ゲートウェイは一方向性のリング状の光ファイバ9で接続されている。マスター7は、全てのゲートウェイ81~8Nに対する信号を、光ファイバ9を介してバースト信号によって送信する。各ゲートウェイ81~8Nの信号は、光スイッチSW1~SWNによって受信される。光スイッチSW1~SWNが受信した信号は、光通信受信装置RX1~RXNに入力される。光通信受信装置RX1~RXN内のフォトダイオードで光信号を電流信号に変換し、TIAで電流信号を電圧信号に変換して増幅する。増幅された信号は後段のECUに転送される。
【0024】
図2の車載光ネットワークシステム6においても、各ゲートウェイ81~8Nは、
図1のPONシステムと同様に、バースト信号を電流信号、電圧信号に変換し、更に電圧信号を増幅して、単相信号を差動信号に変換する光通信受信装置RX1~RXNを有している。
【0025】
次に光通信受信装置10について、詳細に説明する。
【0026】
図3は、PONシステム1における光/電気信号変換装置4を構成する光通信受信装置10の回路図である。光通信受信装置10は、バースト信号を受信するフォトダイオードPDと、フォトダイオードPDに接続されて、電流信号を受信する時定数切替TIA20を備えている。
【0027】
フォトダイオードPDは、
図1のPONシステム1における光結合器3が出力するバースト信号である光信号を受信する。フォトダイオードPDは、バースト信号を受信し、電流信号に変換する。
【0028】
時定数切替TIA20は、TIA21と時定数制御回路100と差動増幅回路DAを有している。後述するように、時定数制御回路100は、ローパスフィルタ回路(LPF)101と切替信号発生部114を有している。
【0029】
TIA21は、増幅回路(例えば、反転増幅回路)と帰還抵抗Rfを備えている。TIA21は、フォトダイオードPDから流れる電流信号を、電圧信号に変換し、増幅回路で増幅して出力電圧V
TIAとして出力する。入力電流の振幅をIiとしたとき、出力電圧V
TIAは、V
TIA=RfxIiとなる。但し、V
TIAは、電源電圧以下であり、大きな入力電流に対しては、出力電圧波形が歪む。また、増幅回路の周波数帯域がRfの減少とともに向上するため、入力電流レンジとビットレートに応じて、帰還抵抗Rfは適切に設定する必要がある。TIA21で変換された出力電圧V
TIAは、後段の差動増幅回路DA及びローパスフィルタ回路101(
図5参照)を有する時定数制御回路100に入力される。
【0030】
時定数制御回路100は、後述するようにローパスフィルタ回路101と時定数切替信号を出力する切替信号発生部114を備えている。時定数制御回路100のローパスフィルタ回路101は、TIA21からの電圧信号を入力して、中間電圧を出力する役割を持っている。本発明の時定数制御回路100は、ローパスフィルタ回路101の時定数を切替える機能を有している。詳細は後述する。
【0031】
差動増幅回路DAは、2つの入力端子と、2つの出力端子を有する。入力端子には、TIA21から出力された電圧VTIAと、時定数制御回路100(詳細には、ローパスフィルタ回路101)の出力電圧VLPFが入力されている。差動増幅回路DAの出力端子は、非反転出力端子と反転出力端子となっている。本実施形態の差動増幅回路DAにおいては、TIA21の出力電圧VTIAと時定数制御回路100の出力電圧VLPFの差の正負に応じて、同相と逆相の相補信号を出力する。既に述べたように、差動増幅回路DAの差動出力電圧は、後段の信号処理装置5に出力される。
【0032】
図4に増幅回路の一例である反転増幅回路の回路図を示す。反転増幅回路は、p-MOSFETとn-MOSFETを備えている。反転増幅回路は、p-MOSFETとn-MOSFETのそれぞれのドレイン端子同士、ゲート端子同士を接続している。p-MOSFETのソース端子は、電源電圧Vddに接続されている。n-MOSFETのソース端子は、回路グラウンド(GND)に接続されている。反転増幅回路は、IN端子(ゲート端子)に入力された電圧を反転増幅してOUT端子(ドレイン端子)に出力する。従って、
図3のTIA21においては、フォトダイオードPDの出力電流が増加すると、TIA21の出力電圧が減少するように動作する。
【0033】
図5~7を参照して、本発明の時定数制御回路100について詳細に説明する。
図5は、本発明の時定数制御回路100の回路図である。
図6は、ローパスフィルタ回路101が第1の時定数における
図5の時定数制御回路100の等価回路図であり、
図7は、ローパスフィルタ回路101が第2の時定数における
図5の時定数制御回路の等価回路図である。第1の時定数をT
S、第2の時定数をT
Lとしたとき、T
S<T
Lの関係がある。
【0034】
時定数制御回路100は、TIA21の出力端子VTIAと、差動増幅回路DAの入力端子の間に接続されている。時定数制御回路100は、ローパスフィルタ回路101と切替信号発生部114から構成されている。ローパスフィルタ回路101は、抵抗切替部111、キャパシタ切替部112、キャパシタ充電部113を備えている。
【0035】
ローパスフィルタ回路101は、複数の抵抗要素R1、R2と複数のキャパシタ要素C1、C2を備えるRCローパスフィルタを構成している。TIA21の出力電圧VTIAは、ローパスフィルタ回路101によって、電圧VLPFに変換される。ローパスフィルタ回路101の時定数を適切に設定することにより、ローパスフィルタ回路101の出力電圧VLPFは、TIA21の出力電圧VTIAの中間電圧とすることができる。
【0036】
ローパスフィルタ回路101の第1の時定数は、抵抗R1とキャパシタC1とで決定される。後述するように、バースト信号のプリアンブル期間の初期において、ローパスフィルタ回路101の時定数は、等価的に第1の時定数となる。以降、本発明において、抵抗R1等の値を参照するときには、R1と添え字を下付き文字として表すものとする。
【0037】
抵抗切替部111は、抵抗R1と、抵抗R2とこれに並列に接続されるトランスミッションゲートTG1を備えている。トランスミッションゲートTG1は、2つの制御端子に反転した信号を入力することで、低抵抗ronと高抵抗roffを切替えるスイッチとしての役割を果たす。従って、トランスミッションゲートTG1が抵抗R2に並列に接続されることによって、抵抗R2に並列の抵抗値が、低抵抗値ronと高抵抗値roffで切り替わることになる。低抵抗値ronと高抵抗値roffの関係は、ron<<R1,R2<<roffとなっている。トランスミッションゲートTG1が低抵抗ronのときは、抵抗R2の両端を実質的に短絡した状態となる。一方、トランスミッションゲートTG1が高抵抗roffのときは、抵抗R2の両端は実質的に開放状態となる。
【0038】
トランスミッションゲートTG1は、n-MOSFETとp-MOSFETのソース端子とドレイン端子を逆並列接続した構成をしている。トランスミッションゲートTG1は、ゲート端子に互いに論理が反転した電圧を入力することでスイッチとして作用させることができる。即ち、n-MOSFETのゲート端子にハイレベルの電圧、p-MOSFETのゲート端子にローレベルの電圧を入力することで、トランスミッションゲートTG1のドレイン-ソース間は低抵抗値ronとなる。n-MOSFETのゲート端子にローレベルの電圧、p-MOSFETのゲート端子にハイレベルの電圧を入力することで、トランスミッションゲートTG1のドレイン-ソース間は高抵抗値roffとなる。後述するトランスミッションゲートTG2、TG3も同様の動作を行う。
【0039】
キャパシタ切替部112は、キャパシタC1と、これに並列のトランスミッションゲートTG3とキャパシタC2の直列回路を備えている。キャパシタ切替部112は、ローパスフィルタ回路101の出力端(出力電圧VLPF)と電源電圧Vddの間に接続されている。トランスミッションゲートTG3のn-MOSFETのゲート端子にローレベルの電圧、p-MOSFETのゲート端子にハイレベルの電圧を入力することで、トランスミッションゲートTG3は高抵抗値roffとなり、実質的にキャパシタC2は、ローパスフィルタ回路101の出力端(出力電圧VLPF)からは切り離された状態となる。トランスミッションゲートTG3のn-MOSFETのゲート端子にハイレベル電圧、p-MOSFETのゲート端子にローレベルの電圧を入力することで、トランスミッションゲートTG3は低抵抗値ronとなり、実質的にキャパシタC2は、ローパスフィルタ回路101の出力端(出力電圧VLPF)に接続され、キャパシタC1の両端に接続された状態となる。
【0040】
キャパシタ充電部113は、ボルテージフォロワOPとトランスミッションゲートTG2の直列回路を備えている。ボルテージフォロワOPの入力は、ローパスフィルタ回路101の出力電圧VLPFが入力されている。従って、ボルテージフォロワOPの出力電圧もVLPFとなる。ボルテージフォロワOPはインピーダンス変換回路であり、入力と出力は分離されており、出力側に接続される回路の影響が入力側にほとんど影響を及ぼさない。トランスミッションゲートTG2のn-MOSFETのゲート端子にハイレベルの電圧、p-MOSFETのゲート端子にローレベルの電圧を入力することで、トランスミッションゲートTG2は低抵抗値ronとなり、キャパシタC2は、ローパスフィルタ回路101の出力電圧VLPFがボルテージフォロワOPを介して入力されることになる。よって、この場合、ローパスフィルタ回路101の出力電圧VLPFにほとんど影響を与えずに、ローパスフィルタ回路101の出力電圧VLPFで、キャパシタC2が充電されることになる。トランスミッションゲートTG2のn-MOSFETのゲート端子にローレベルの電圧、p-MOSFETのゲート端子にハイレベルの電圧を入力することで、トランスミッションゲートTG2は高抵抗値roffとなり、キャパシタC2は、ボルテージフォロワOPの出力、即ち、ローパスフィルタ回路101の出力電圧VLPFから切り離されることになり、キャパシタC2の充電を停止する。
【0041】
切替信号発生部114は、コンパレータCOMPと遅延回路115とインバータ116を備えている。切替信号発生部114は、時定数を切替える時定数切替信号VTG+とその反転信号VTG-(以後、VTG+、VTG-を合わせて、時定数切替信号と呼ぶ)を出力する。時定数切替信号VTG+、VTG-は、トランスミッションゲートTG1~TG3の制御端子に入力されて、上述したように、トランスミッションゲートTG1~TG3の状態(低抵抗値ronと高抵抗値roff)を切替えて、ローパスフィルタ回路101の時定数を切替える。
【0042】
切替信号発生部114は、コンパレータCOMPで、ローパスフィルタ回路101の出力電圧VLPFと所定の閾値電圧VREFとを比較し、ローパスフィルタ回路101の出力電圧VLPFが所定の閾値電圧VREFを下回ったとき、あるいは上回ったときから、所定の遅延時間Δtdが経過した後に、時定数切替信号VTG+、VTG-を出力する。具体的には、時定数切替信号VTG+、VTG-に、それまでと論理反転させた信号が出力され、トランスミッションゲートTG1~TG3の状態が変わることになる。
【0043】
遅延回路115は、複数のインバータ回路INVを直列に接続した構成をしている。遅延回路115は、前段のコンパレータCOMPの出力電圧VCOMPを入力し、VTG+を出力する。遅延回路115は、入力電圧と出力電圧の間に、インバータ回路INVの遅延時間を段数倍(偶数倍)した遅延時間Δtd(所定の遅延時間)を発生させる。従って、遅延回路115は、コンパレータCOMPの出力電圧VCOMPを所定の遅延時間Δtdだけ遅延させた電圧VTG+を出力し、先述した時定数切替信号VTG+とする。遅延回路115の出力電圧VTG+は、トランスミッションゲートTG1、TG2のn-MOSFETのゲート端子とトランスミッションゲートTG3のp-MOSFETのゲート端子に出力される。遅延回路115の出力電圧VTG+は、後段のインバータ116にも入力され、インバータ116は、電圧VTG+を反転させた電圧VTG-を出力する。電圧VTG-は、トランスミッションゲートTG1、TG2のp-MOSFETのゲート端子とトランスミッションゲートTG3のn-MOSFETのゲート端子に出力される。このように構成することで、トランスミッションゲートTG1、TG2は、低抵抗ronと高抵抗roffとなるタイミングが同じとなり、トランスミッションゲートTG3は、TG1、TG2とは、低抵抗ronと高抵抗roffとなるタイミングが反転することとなる。
【0044】
次に
図6~9を参照して、時定数の切替えの詳細について説明する。
図6、7は、時定数制御回路100の異なる時定数における等価回路である。
図8(a)は、プリアンブル期間における入力電流波形を示し、
図8(b)は、プリアンブル期間における時定数制御回路100の各部の電圧波形を示している。
図9(a)は、プリアンブル期間及びペイロード期間における入力電流波形を示し、
図9(b)は、対応する期間におけるローパスフィルタ回路101の出力電圧波形V
LPFを示している。
【0045】
図6は、バースト信号のプリアンブル期間において、ローパスフィルタ回路101の出力電圧V
LPFが所定の閾値電圧V
REFより大きいとき、及びローパスフィルタ回路101の出力電圧V
LPFが所定の閾値電圧V
REFを下回ってから所定の遅延時間Δ
tdが経過するまでの時定数制御回路100の等価回路図である。バースト信号を受けて、プリアンブル期間に入ると、
図8(a)に示すようにフォトダイオードPD(
図3参照)から電流が流れるようになる。TIA21の出力電圧V
TIAは、反転増幅回路の出力となっているので、フォトダイオードPDの電流が増加すると、TIA21の出力電圧V
TIAは減少する。従って、
図8(b)に示すように、プリアンブル期間に入ると、ローパスフィルタ回路101の出力電圧V
LPFは徐々に減少し、所定の閾値電圧V
REFを下回るようになる。
【0046】
プリアンブル期間で、V
LPF>V
REFのときは、コンパレータCOMPの出力電圧V
COMPはハイレベルである。従って、遅延回路115の出力電圧V
TG+もハイレベルである。インバータ116の出力電圧V
TG-はローレベルである。このとき、トランスミッションゲートTG1、TG2は、低抵抗r
onとなる。トランスミッションゲートTG3は、高抵抗r
offとなる。よって、時定数制御回路100の等価回路は、
図6に示すようになる。
【0047】
V
LPFがV
REFを下回ると、コンパレータCOMPの出力電圧V
COMPはローレベルに反転する。しかし、遅延時間Δt
dが経過するまでは、遅延回路115の出力電圧V
TG+はハイレベルを、インバータ116の出力電圧V
TG-はローレベルをそれぞれ維持する。従って、時定数制御回路100の等価回路は、
図6に示す回路を維持する。
【0048】
時定数制御回路100の等価回路が、
図6に示す回路であるときの、ローパスフィルタ回路101の時定数は次の通りとなる。
【0049】
抵抗R2に並列のトランスミッションゲートTG1は低抵抗r
onである。低抵抗r
onは、抵抗値R
2に比べて非常に抵抗値が小さく、ローパスフィルタ回路101の合成抵抗値は、実質的にR
1となる。一方、トランスミッションゲートTG3は高抵抗r
offであり、トランスミッションゲートTG2は低抵抗r
onであるので、キャパシタC2は、ボルテージフォロワOPを介して、ローパスフィルタ回路101の出力電圧V
LPFが入力され、ローパスフィルタ回路101の出力電圧V
LPFで充電されることになる。ボルテージフォロワOPは入力インピーダンスが非常に大きいため、キャパシタC2は、ローパスフィルタ回路101の出力電圧V
LPFにほとんど影響を与えない。ローパスフィルタ回路101の合成容量は、実質的にC
1となる。従って、
図6に示す回路のときのローパスフィルタ回路101の時定数T
Sは、R
1C
1となる。
【0050】
図7は、V
LPF<V
REFとなり、遅延時間Δ
tdが経過した後の時定数制御回路100の等価回路である。このとき、遅延回路115の出力電圧V
TG+はローレベルであり、インバータ116の出力電圧V
TG-はハイレベルとなる。このとき、トランスミッションゲートTG1、TG2は、高抵抗r
offとなる。トランスミッションゲートTG3は、低抵抗r
onとなる。よって、時定数制御回路100の等価回路は、
図7に示すようになる。
【0051】
時定数制御回路100の等価回路が、
図7に示す回路であるときの、ローパスフィルタ回路101の時定数は次の通りとなる。
【0052】
抵抗R2に並列のトランスミッションゲートTG1は高抵抗r
offである。高抵抗r
offは、抵抗値R
2と比べて非常に抵抗値が大きいので、ローパスフィルタ回路101の合成抵抗値は、実質的にR
1+R
2となる。一方、トランスミッションゲートTG3は低抵抗r
onであり、トランスミッションゲートTG2は高抵抗r
offであるので、キャパシタC2は、ボルテージフォロワOPから実質的に切り離され、トランスミッションゲートTG3の低抵抗r
onを介して、ローパスフィルタ回路101の出力端(出力電圧V
LPF)に接続されることになる。よって、キャパシタC2は実質的にキャパシタC1に並列に接続されることになり、ローパスフィルタ回路101の合成容量は、実質的にC
1+C
2となる。従って、
図7に示す回路のときのローパスフィルタ回路101の時定数T
Lは、(R
1+R
2)(C
1+C
2)となる。
【0053】
以上のことから、時定数制御回路100は、プリアンブル期間の初期の第1の時定数TS(=R1C1)から、これより大きな第2の時定数TL(=(R1+R2)(C1+C2))に切り替えることができる。本発明の時定数制御回路100は、ローパスフィルタ回路101を構成する合成抵抗値および合成容量値をともに切替えることができる。従って、本発明の時定数制御回路100によれば、大きな時定数の切替えに容易に対応できる。更に、切替える前のキャパシタC2をボルテージフォロワOPを介して充電することで、ローパスフィルタ回路101の動作にほとんど影響を与えずに、ローパスフィルタ回路101の出力電圧VLPFで充電が可能である。従って、キャパシタC2の接続によって、ローパスフィルタ回路101の出力電圧VLPFに影響を与えることなく、容量値の切替えが可能となる。
【0054】
次に時定数制御回路100における2つの時定数TS、TLとバースト信号の条件について述べる。
【0055】
ローパスフィルタ回路101の出力電圧VLPFは、TIA21の出力電圧VTIAの中間値検出として用いられるため、ビットレートをBRとすると、最小ビット幅は、Tbit=1/BRと表せるので、変動の少ない中間値波形を得るために、ローパスフィルタ回路101の時定数は、1/BRの10倍程度としておくことが望ましい。しかし、大きな時定数とすると、プリアンブル期間中にローパスフィルタ回路101の出力電圧VLPFが定常状態に達することができず、中間値の取得を完了できない可能性がある。プリアンブル期間の長さをTPAとすると、時定数の4倍の時間(定常値の98.2%となる時間)が、TPA以下となるようにして、プリアンブル期間中にローパスフィルタ回路101の出力電圧VLPFが定常状態に達するようにする必要がある。従って、時定数TSとの関係は、TPA/4≧TSとなるように、抵抗値R1、容量値C1を設定する必要がある。
【0056】
ペイロード期間には、同符号が連続するビットパターン(CID)が含まれる。
図9(a)に示すように、64b/66b方式においては、最大66ビット同符号が連続する場合(図中T
CIDの期間)がある。ペイロード期間においては、最大CID長T
CIDの間において、ローパスフィルタ回路101の出力電圧V
LPFが変化しないことが要求される。このためには、ローパスフィルタ回路101の時定数は、T
CIDの10倍程度としておくことが望ましい。従って、時定数T
Lとの関係は、T
L≧10T
CIDを満足するように、抵抗値R
1、R
2、容量値C
1、C
2を設定する必要がある。
【0057】
図9(b)に本発明の時定数制御回路100によるローパスフィルタ回路101の出力電圧波形V
LPFを示す。プリアンブル期間及びペイロード期間における最大CID長の期間においても、ローパスフィルタ回路101の出力電圧V
LPFは、安定して略一定の中間電圧を出力していることが分かる。
【0058】
バースト信号の無信号期間について考える。バースト信号の無信号期間の間に、ローパスフィルタ回路101の時定数は、第1の時定数TSに戻す必要がある。バースト信号の無信号期間の長さをTINTVとすると、第2の時定数TLの4倍の時間より長ければ、時定数切替信号VTG+は、ローレベルからハイレベルへと反転し、VTG-は、ハイレベルからローレベルへと反転する。よって、TINTV/4≧TLを満足するように、抵抗R1、R2、キャパシタC1、C2を設定すれば、特段にリセット回路を設けなくても、時定数をプリアンブル期間のための時定数に切替えることができる。
【0059】
なお、上述の実施形態の時定数制御回路100においては、ローパスフィルタ回路101の抵抗値と容量値を両方を変化させているが、容量値のみを変化させるように構成してもよい。また、ローパスフィルタ回路の構成は、RCフィルタ回路に限定されず、RLCフィルタ回路の抵抗値及び/又は容量値を切替えて、時定数を変化させることが可能である。
【0060】
なお、本開示は上述した実施形態およびその変形例に限定されるものではなく、本願の特許請求の範囲に記載された事項の範囲内において種々の変更や改良が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0061】
1 受動光ネットワーク(PON)システム、2、 宅内装置(ONU)、3 光結合器、4 光/電気信号変換装置、5 信号処理装置、6 車載光ネットワークシステム、7 マスター、81~8N ゲートウェイ、9 光ファイバ、10 光通信受信装置、20 時定数切替TIA、21 TIA、DA 差動増幅回路、100 時定数制御回路、101 ローパスフィルタ回路、111 抵抗切替部、112 キャパシタ切替部、113 キャパシタ充電部、114 切替信号発生部、115 遅延回路、116 インバータ