IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社島津製作所の特許一覧

<>
  • 特開-自動試料注入装置 図1
  • 特開-自動試料注入装置 図2
  • 特開-自動試料注入装置 図3
  • 特開-自動試料注入装置 図4
  • 特開-自動試料注入装置 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023072480
(43)【公開日】2023-05-24
(54)【発明の名称】自動試料注入装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/24 20060101AFI20230517BHJP
【FI】
G01N30/24 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021185064
(22)【出願日】2021-11-12
(71)【出願人】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100141852
【弁理士】
【氏名又は名称】吉本 力
(72)【発明者】
【氏名】福島 大貴
(57)【要約】
【課題】保持部に温調機構を設けることなく、試料容器内の液体試料の温度変化を低減しつつ当該試料容器を保持することができる自動試料注入装置を提供する。
【解決手段】自動試料注入装置12は、試料気化室18の上方に配置され、試料容器60内の液体試料をシリンジ40で吸引して、シリンジ40内の液体試料を試料気化室18に注入する。自動試料注入装置12は、予め加熱又は冷却されたうえで搬送されてくる試料容器60を受け取って保持する第1保持部48aと、第1保持部48aにおける試料容器60に対向する面の少なくとも一部を断熱する第1断熱部材56とを備える。
【選択図】 図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料気化室の上方に配置され、試料容器内の液体試料をシリンジで吸引して、当該シリンジ内の液体試料を前記試料気化室に注入するための自動試料注入装置であって、
予め加熱又は冷却されたうえで搬送されてくる前記試料容器を受け取って保持する第1保持部と、
前記第1保持部における前記試料容器に対向する面の少なくとも一部を断熱する第1断熱部材とを備える、自動試料注入装置。
【請求項2】
前記第1保持部は、前記試料容器を収容する凹部を有しており、
前記第1断熱部材は、前記凹部の内面の少なくとも一部を断熱する、請求項1に記載の自動試料注入装置。
【請求項3】
前記シリンジに対向する位置に対して、前記第1保持部を移動させることが可能な駆動機構をさらに備える、請求項1又は2に記載の自動試料注入装置。
【請求項4】
前記シリンジを洗浄するための洗浄液が収容された洗浄液容器を保持する第2保持部と、
前記第2保持部における前記洗浄液容器に対向する面の少なくとも一部を断熱する第2断熱部材とをさらに備え、
前記駆動機構は、前記シリンジに対向する位置に対して、前記第2保持部を移動させることが可能である、請求項3に記載の自動試料注入装置。
【請求項5】
前記シリンジからの廃液を収容するための廃液容器を保持する第3保持部と、
前記第3保持部における前記廃液容器に対向する面の少なくとも一部を断熱する第3断熱部材とをさらに備え、
前記駆動機構は、前記シリンジに対向する位置に対して、前記第3保持部を移動させることが可能である、請求項3又は4に記載の自動試料注入装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動試料注入装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、下記特許文献1で開示されるような自動試料注入装置では、ラックのような保持部で試料容器を保持しつつ、その試料容器内の液体試料をガスクロマトグラフ装置の試料気化室に自動で注入する。当該特許文献1には、ラックに保持された試料容器内の液体試料が、冷却器によって温調(冷却)される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-134194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自動試料注入装置は、試料気化室に対して試料を自動で注入するため、その試料気化室の上方に配置される場合がある。また、試料気化室については、液体試料を気化するために、ヒータで加熱される。
【0005】
このような構成の場合、自動試料注入装置の保持部で保持される試料容器内の液体試料は、試料気化室から放出される熱に晒される。このことから、温調機構を備えていない自動試料注入装置では、試料気化室からの熱により、試料容器内の液体試料の温度が変化する場合がある。さらに、液体試料の温度が変化すると、その液体試料の分析結果等に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0006】
一方で、自動試料注入装置の保持部については、駆動箇所が数多くあり、配線等の観点から、その保持部に温調機構を設けることが困難な場合がある。なお、温調機構は、例えば、電気的に制御可能な素子及びその素子を制御するための回路基板等で構成される。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、保持部に温調機構を設けることなく、試料容器内の液体試料の温度変化を低減しつつ当該試料容器を保持することができる自動試料注入装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の態様は、試料気化室の上方に配置され、試料容器内の液体試料をシリンジで吸引して、当該シリンジ内の液体試料を前記試料気化室に注入するための自動試料注入装置であって、第1保持部と、第1断熱部材とを備える。前記第1保持部は、予め加熱又は冷却されたうえで搬送されてくる前記試料容器を受け取って保持する。前記第1断熱部材は、前記第1保持部における前記試料容器に対向する面の少なくとも一部を断熱する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、保持部に温調機構を設けることなく、試料容器内の液体試料の温度変化を低減しつつ当該試料容器を保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態のガスクロマトグラフシステムの構成の一例を示す概略図である。
図2】本実施形態の自動試料注入装置の構成の一例を示す概略図である。
図3】本実施形態の保持部の具体的な構成の一例を示す概略図である。
図4】本実施形態の試料導入部、シリンジ及び保持部の位置関係を示す概略図である。
図5】本実施形態の凹部の周辺の具体的な構成の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.ガスクロマトグラフシステムの構成
図1は、本実施形態のガスクロマトグラフシステム10の構成の一例を示す概略図である。ガスクロマトグラフシステム10は、自動試料注入装置12及びガスクロマトグラフ装置14を備える。なお、図1では、ガスクロマトグラフ装置14の一部を示す。
【0012】
自動試料注入装置12は、液体試料をガスクロマトグラフ装置14に自動で注入するための装置である。具体的に、自動試料注入装置12は、液体試料を後述する試料気化室18に注入する。
【0013】
ガスクロマトグラフ装置14は、カラム15、試料導入部16及び検出器17等を備える。カラム15は、カラムオーブン内で加熱される。試料導入部16からカラム15内に導入される試料中の各成分は、カラム15を通過する過程で分離され、検出器17により検出される。
【0014】
試料導入部16は、カラムにキャリアガス及び気化された液体試料(試料ガス)を導入するための試料導入ユニット(SPL)であり、セプタム(図示は省略)が設けられている。また、試料導入部16の内部には、試料気化室18が形成されている。
【0015】
また、試料導入部16には、ヒータ20が設けられる。ヒータ20によれば、試料導入部16及び試料気化室18が加熱される。したがって、試料導入部16の試料気化室18に注入された液体試料は、ヒータ20の発する熱により気化されたうえでカラム15内に導入される。
【0016】
このようなガスクロマトグラフシステム10では、自動試料注入装置12が試料導入部16の試料気化室18に対して液体試料を注入するため、その自動試料注入装置12は、試料気化室18の上方に配置される。
【0017】
2.自動試料注入装置の構成
図2は、本実施形態の自動試料注入装置12の構成の一例を示す概略図である。なお、図2は、上方から見た自動試料注入装置12を示す。自動試料注入装置12は、駆動機構22、サンプラ28及びインジェクタ41等備える。
【0018】
駆動機構22は、駆動部24を含む。駆動部24としては、たとえば、汎用のモータが用いられる。また、駆動機構22は、伝達機構26を含む。伝達機構26は、駆動部24の駆動に伴って生じる力を自動試料注入装置12の各種コンポーネントに伝達する機構である。駆動機構22によれば、サンプラ28及びインジェクタ41のそれぞれを適宜に動作させることができる。
【0019】
サンプラ28は、試料容器60を搬送するための搬送部である。本実施形態では、サンプラ28が、駆動機構22の駆動により自動的に試料容器60を搬送するオートサンプラとして機能する。サンプラ28は、テーブル30、温調機構34、搬送アーム36及び把持部38等を備える。テーブル30は、円形状であって、そのテーブル30には、収容部32が複数設けられる。また、各収容部32については、試料容器60の収容が可能とされる。試料容器60とは、液体試料を収容する容器である。
【0020】
温調機構34は、収容部32に収容される試料容器60を加熱又は冷却するための機構である。温調機構34は、電気的に制御可能な温調部品及びその素子を制御するための回路基板等から構成される。温調部品としては、たとえば、ヒータ又はペルチェ素子が用いられる。温調機構34は、テーブル30の収容部32が設けられる面と反対側の面に設けられる。
【0021】
なお、本実施形態では、試料容器60が加熱又は冷却される場合、そのことに併せて、試料容器60内の液体試料も加熱又は冷却される。つまり、試料容器60が加熱又は冷却されることは、液体試料が加熱又は冷却されることも意味する。試料容器60内の液体試料は、5~80℃程度の温度範囲内で、設定された温度に温調される。
【0022】
搬送アーム36は、テーブル30の上方で水平面内での回転及び直線移動が可能とされる。また、搬送アーム36の端部には、試料容器60を把持するための把持部38が設けられる。把持部38としては、たとえば、汎用のグリッパが用いられる。
【0023】
サンプラ28によれば、加熱又は冷却された試料容器60を把持部38で把持し、搬送アーム36を回転及び直線移動させることで、その試料容器60を搬送することができる。本実施形態では、加熱又は冷却された試料容器60は、インジェクタ41に搬送される。すなわち、試料容器60を把持する把持部38が、搬送アーム36の回転及び直線移動によりインジェクタ41の受渡し位置(後述する第1保持部48a)へと移動されることで、試料容器60が受渡し位置に搬送される。
【0024】
インジェクタ41は、シリンジ40及び保持部48等を備える。インジェクタ41は、試料容器60内の液体試料をシリンジ40で吸引して、試料気化室18内に吐出する。本実施形態では、インジェクタ41が、駆動機構22の駆動により自動的に液体試料の吸引及び吐出を行うオートインジェクタとして機能する。
【0025】
シリンジ40は、筒部42(図4参照)、プランジャ44(図4参照)及びニードル46(図4参照)等を備え、保持部48の上方に設けられる。シリンジ40では、液体の吸引及び吐出が行われる。なお、図2に示す例では、シリンジ40が自動試料注入装置12の筐体に覆われている。
【0026】
保持部48は、円形のテーブルであって、回転可能とされる。保持部48は、複数の凹部50を有する。複数の凹部50は、保持部48の動作方向に沿って並べられる。図2に示す保持部48は、回転可能であるため、上記動作方向は周方向であり、複数の凹部50は、周方向に沿って円を成すように並べられる。
【0027】
なお、保持部48は、円形に限定されない。保持部48は、たとえば、一直線状に延びる長尺形状であってもよい。さらに、保持部48は、たとえば、直線に沿って移動してもよい。なお、保持部48が直線に沿って移動する場合、上記動作方向は直線方向となり、複数の凹部50は、直線を成すように並べられる。
【0028】
各凹部50では、試料容器60、洗浄液容器62及び廃液容器64のいずれかを収容することが可能とされる。洗浄液容器62とは、洗浄液を収容する容器である。廃液容器64とは、シリンジ40からの廃液を収容する容器である。
【0029】
これらのことから、保持部48は、予め加熱又は冷却された試料容器60を受渡し位置でサンプラ28から受け取って、その試料容器60を保持することができる。また、保持部48は、洗浄液容器62及び廃液容器64についても保持することができる。洗浄液容器62及び廃液容器64は、ユーザにより保持部48に予め保持され、必要に応じてユーザにより入れ替えられる。
【0030】
図3は、本実施形態の保持部48の具体的な構成の一例を示す概略図である。保持部48は、第1保持部48a、第2保持部48b及び第3保持部48cを含む。また、凹部50は、第1凹部50a、第2凹部50b及び第3凹部50cを含む。
【0031】
第1保持部48aは、第1凹部50aを有し、この第1凹部50aには、試料容器60が収容される。つまり、第1保持部48aは、予め冷却又は加熱されたうえで搬送されてくる試料容器60を受け取って、その試料容器60を保持する。本実施形態では、第1保持部48aに複数の第1凹部50aが設けられているが、第1凹部50aが1つだけ設けられた構成であってもよい。
【0032】
第2保持部48bは、第2凹部50bを有し、この第2凹部50bには、洗浄液容器62が収容される。つまり、第2保持部48bは、洗浄液容器62を保持する。本実施形態では、第2保持部48bに複数の第2凹部50bが設けられているが、第2凹部50bが1つだけ設けられた構成であってもよい。
【0033】
第3保持部48cは、第3凹部50cを有し、この第3凹部50cには、廃液容器64が収容される。つまり、第3保持部48cは、廃液容器64を保持する。本実施形態では、第3保持部48cに複数の第3凹部50cが設けられているが、第3凹部50cが1つだけ設けられた構成であってもよい。
【0034】
なお、保持部48の動作は、駆動機構22によって行われ、かつ、シリンジ40は、保持部48の上方に設けられる。このことから、駆動機構22については、シリンジ40に対向する位置(シリンジ40の下方)に対して、第1保持部48a、第2保持部48b及び第3保持部48cのそれぞれを移動させることが可能と言える。
【0035】
また、保持部48には、切り欠き部54が設けられる。具体的には、切り欠き部54は、保持部48における各凹部50が並ぶ円周上の一部に設けられる。
【0036】
図4は、本実施形態の試料導入部16、シリンジ40及び保持部48の位置関係を示す概略図である。上述したように、シリンジ40は、筒部42、プランジャ44及びニードル46等を備えている。
【0037】
筒部42は、円筒状の部材であって、プランジャ44が摺動可能に挿入されている。ニードル46は、端部が針状とされる円筒状の部材であって、ニードル46の内部は、筒部42の内部と連通する。なお、ニードル46の針状の端部は、保持部48と対向する。
【0038】
シリンジ40によれば、プランジャ44を変位させることで、液体の吸引及び吐出が可能である。また、シリンジ40は、垂直方向に変位可能である。
【0039】
また、シリンジ40は、垂直方向において、凹部50に収容される容器及び切り欠き部54のどちらか一方と重なる。すなわち、保持部48の周方向の回転位置に応じて、シリンジ40の下方に、各凹部50に収容される容器のいずれか、又は、切り欠き部54が位置する。図4のように、シリンジ40が、垂直方向において、切り欠き部54と重なるとき、シリンジ40の試料導入部16に向かう変位及びシリンジ40の試料導入部16から離間する変位が可能とされる。
【0040】
これらのことから、自動試料注入装置12では、保持部48を動作させることで、各凹部50に収容される任意の容器からシリンジ40内に液体を吸引することができる。たとえば、シリンジ40が、垂直方向において、試料容器60と重なる場合、シリンジ40を変位させることで、ニードル46を試料容器60内に挿入することができる。さらに、ニードル46が試料容器60内に挿入された後に、プランジャ44を変位させることで、試料容器60内の液体試料をシリンジ40で吸引することができる。
【0041】
また、自動試料注入装置12では、保持部48を動作させることで、シリンジ40内の液体の吐出先を任意に選択することができる。たとえば、シリンジ40が、垂直方向において、切り欠き部54と重なる場合、シリンジ40を変位させることで、ニードル46を試料導入部16の試料気化室18内に挿入することができる。さらに、ニードル46が試料気化室18内に挿入された後に、プランジャ44を変位させることで、シリンジ40内の液体試料を試料気化室18内に吐出することができる。
【0042】
したがって、試料気化室18の上方に配置される自動試料注入装置12によれば、試料容器60内の液体試料をシリンジ40で吸引して、そのシリンジ40内の液体試料を試料気化室18に注入することができる。なお、自動試料注入装置12(保持部48)は、試料導入部16に対して、上方に近接又は当接している。
【0043】
また、自動試料注入装置12では、第1保持部48aに試料容器60が搬送されると、たとえば、第1洗浄工程、第2洗浄工程、準備工程及び注入工程の順にこれらを実施することができる。
【0044】
第1洗浄工程では、洗浄液容器62内の洗浄液を吸引し、その洗浄液を廃液容器64内に吐出する。第2洗浄工程では、試料容器60内の液体試料を吸引し、その液体試料を廃液容器64内に吐出する。つまり、第2洗浄工程では、シリンジ40内が共洗いされる。準備工程では、試料容器60内の液体試料の吸引及び吐出を繰り返し、シリンジ40内の液体試料に含まれる気泡を抜く。注入工程では、シリンジ40内の液体試料を試料気化室18に注入する。
【0045】
3.断熱部材について
図5は、本実施形態の凹部50の周辺の具体的な構成の一例を示す概略断面図である。図5に示すように、凹部50の内面52には、内周面52a及び底面52bが含まれる。なお、図5は、具体的に、第1凹部50aの周辺の構成を示す。
【0046】
本実施形態では、第1保持部48aには、断熱部材(第1断熱部材)56が設けられる。この場合、断熱部材56は、第1保持部48aの試料容器60に対向する面の少なくとも一部を断熱する。具体的に、断熱部材56は、第1凹部50aの内面52の少なくとも一部を断熱する。
【0047】
試料容器60内の液体試料の温度変化を低減するという観点では、断熱部材56は、図5に示すように、第1凹部50aの内面52全体に設けられることが好ましい。
【0048】
また、断熱部材56が、少なくとも第1凹部50aの内周面52aに設けられる場合、断熱部材56の試料容器60の底面からの高さは、試料容器60内における液体試料の液面の高さよりも高い。
【0049】
断熱部材56としては、たとえば、断熱素材を用いることができる。断熱素材の一例としては、鉱物繊維系断熱材が挙げられる。また、鉱物繊維系断熱材には、ロックウール又はグラスウール等が該当する。また、断熱部材56としては、断熱塗料を用いることもできる。断熱塗料の一例としては、セラミックが含まれる塗料が挙げられる。
【0050】
このように、第1保持部48aに断熱部材56を設けた場合、予め加熱又は冷却されたうえで搬送されてくる試料容器60を第1保持部48aで保持しつつ、その試料容器60内の液体試料の温度変化を低減することができる。したがって、本実施形態では、保持部48(第1保持部48a)に温調機構を設けることなく、試料容器60内の液体試料の温度変化を低減しつつ当該試料容器60を保持することができる。
【0051】
また、断熱部材56は、第1保持部48aに加え、第2保持部48b又は第3保持部48cにも上述したように設けられても良い。
【0052】
断熱部材(第2断熱部材)56が第2保持部48bに設けられる場合、断熱部材56は、第2保持部48bの洗浄液容器62に対向する面の少なくとも一部を断熱する。具体的に、断熱部材56は、第2保持部48bの凹部50、つまり、第2凹部50bの内面52の少なくとも一部を断熱する。
【0053】
このように、第2保持部48bに断熱部材56を設けた場合、洗浄液容器62を第2保持部48bで保持しつつ、その洗浄液容器62内の洗浄液の温度変化を低減することができる。また、このことから、試料気化室18から放出される熱等により、洗浄液容器62内の洗浄液が気化されるのを抑制することもできる。
【0054】
また、断熱部材(第3断熱部材)56が第3保持部48cに設けられる場合、断熱部材56は、第3保持部48cの廃液容器64に対向する面の少なくとも一部を断熱する。具体的に、断熱部材56は、第3保持部48cの凹部50、つまり、第3凹部50cの内面52の少なくとも一部を断熱する。
【0055】
このように、第3保持部48cに断熱部材56を設けた場合、廃液容器64を第3保持部48cで保持しつつ、その廃液容器64内の液体の温度変化を低減することができる。また、このことから、試料気化室18から放出される熱等により、廃液容器64内の液体が気化されるのを抑制することもできる。
【0056】
また、断熱部材56については、温調機構34のような電気を利用して加熱又は冷却するものではないため、軽量である。したがって、断熱部材56によれば、保持部48の動作が遅くなるのを防止することもできる。
【0057】
また、保持部48の動作は、シリンジ40の動作と連動しているため、保持部48の動作が遅くなるのを防止することができるのであれば、自動試料注入装置12の全体の動作が遅くなるのも防止することができる。
【0058】
また、保持部48の動作を停止させるときに、慣性力によって保持部48の停止位置がずれるのを防止することもできる。
【0059】
なお、本実施形態では、予め加熱又は冷却された試料容器60の搬送手段の一例として、サンプラ28を挙げているが、この搬送手段は特に限定されない。たとえば、サンプラ28の代わりに外部の装置を用いて、予め加熱又は冷却された試料容器60を保持部48に搬送してもよい。また、たとえば、予め加熱又は冷却された試料容器60は、ユーザにより人為的に保持部48に搬送されてもよい。
【0060】
断熱部材56は、凹部50の内面52全体に設けられた構成に限らず、凹部50の内周面52a又は底面52bのいずれか一方にのみ設けられた構成であってもよいし、内周面52aの一部、あるいは、底面52bの一部にのみ設けられた構成であってもよい。
【0061】
第1保持部48aは、第1凹部50a内に試料容器60を収容して保持するような構成に限らず、たとえば、試料容器60を挟持して保持するような構成であってもよい。このような場合であっても、第1保持部48aにおける試料容器に対向する面の少なくとも一部が断熱されていればよい。これは、第2保持部48b及び第3保持部48cについても同様である。
【0062】
4.態様
上述した複数の例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0063】
(第1項)一態様に係る自動試料注入装置は、
試料気化室の上方に配置され、試料容器内の液体試料をシリンジで吸引して、当該シリンジ内の液体試料を前記試料気化室に注入するための自動試料注入装置であって、
予め加熱又は冷却されたうえで搬送されてくる前記試料容器を受け取って保持する第1保持部と、
前記第1保持部における前記試料容器に対向する面の少なくとも一部を断熱する第1断熱部材とを備えてもよい。
【0064】
第1項に記載の自動試料注入装置によれば、予め加熱又は冷却されたうえで搬送されてくる試料容器を第1保持部で保持しつつ、その試料容器内の液体試料の温度変化を低減することができる。したがって、保持部(第1保持部)に温調機構を設けることなく、試料容器内の液体試料の温度変化を低減しつつ当該試料容器を保持することができる。
【0065】
(第2項)第1項に記載の自動試料注入装置において、
前記第1保持部は、前記試料容器を収容する凹部を有しており、
前記第1断熱部材は、前記凹部の内面の少なくとも一部を断熱してもよい。
【0066】
第2項に記載の自動試料注入装置によれば、凹部に収容される試料容器内の温度変化を低減することができる。
【0067】
(第3項)第1項又は第2項に記載の自動試料注入装置において、
前記シリンジに対向する位置に対して、前記第1保持部を移動させることが可能な駆動機構をさらに備えてもよい。
【0068】
第3項に記載の自動試料注入装置によれば、シリンジに対向する位置に対して、第1保持部を移動させる構成を有する自動試料注入装置において、第1保持部に温調機構を設けることなく、試料容器内の液体試料の温度変化を低減することができる。したがって、第1保持部に温調機構を設ける場合とは異なり、第1保持部の動作が遅くなったり、第1保持部を停止させるときに停止位置がずれたりするのを防止することができる。
【0069】
(第4項)第3項に記載の自動試料注入装置において、
前記シリンジを洗浄するための洗浄液が収容された洗浄液容器を保持する第2保持部と、
前記第2保持部における前記洗浄液容器に対向する面の少なくとも一部を断熱する第2断熱部材とをさらに備え、
前記駆動機構は、前記シリンジに対向する位置に対して、前記第2保持部を移動させることが可能であってもよい。
【0070】
第4項に記載の自動試料注入装置によれば、洗浄液容器を第2保持部で保持しつつ、その洗浄液容器内の洗浄液の温度変化を低減することができる。したがって、試料気化室から放出される熱等により、洗浄液容器内の洗浄液が気化されるのを抑制することができる。
【0071】
また、第4項に記載の自動試料注入装置によれば、シリンジに対向する位置に対して、第2保持部を移動させる構成を有する自動試料注入装置において、第2保持部に温調機構を設けることなく、洗浄液容器内の洗浄液の温度変化を低減することができる。したがって、第2保持部に温調機構を設ける場合とは異なり、第2保持部の動作が遅くなったり、第2保持部を停止させるときに停止位置がずれたりするのを防止することができる。
【0072】
(第5項)第3項又は第4項に記載の自動試料注入装置において、
前記シリンジからの廃液を収容するための廃液容器を保持する第3保持部と、
前記第3保持部における前記廃液容器に対向する面の少なくとも一部を断熱する第3断熱部材とをさらに備え、
前記駆動機構は、前記シリンジに対向する位置に対して、前記第3保持部を移動させることが可能であってもよい。
【0073】
第5項に記載の自動試料注入装置によれば、廃液容器を第3保持部で保持しつつ、その廃液容器内の液体の温度変化を低減することができる。したがって、試料気化室から放出される熱等により、廃液容器内の液体が気化されるのを抑制することができる。
【0074】
また、第5項に記載の自動試料注入装置によれば、シリンジに対向する位置に対して、第3保持部を移動させる構成を有する自動試料注入装置において、第3保持部に温調機構を設けることなく、廃液容器内の液体の温度変化を低減することができる。したがって、第3保持部に温調機構を設ける場合とは異なり、第3保持部の動作が遅くなったり、第3保持部を停止させるときに停止位置がずれたりするのを防止することができる。
【符号の説明】
【0075】
12 自動試料注入装置
18 試料気化室
22 駆動機構
40 シリンジ
48 保持部
48a 第1保持部
48b 第2保持部
48c 第3保持部
50 凹部
50a 第1凹部
50b 第2凹部
50c 第3凹部
56 断熱部材
60 試料容器
62 洗浄液容器
64 廃液容器
図1
図2
図3
図4
図5