(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023072482
(43)【公開日】2023-05-24
(54)【発明の名称】情報処理システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/063 20230101AFI20230517BHJP
G06Q 30/015 20230101ALI20230517BHJP
G06Q 30/0208 20230101ALI20230517BHJP
【FI】
G06Q10/06 300
G06Q30/02 470
G06Q30/02 322
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021185067
(22)【出願日】2021-11-12
(71)【出願人】
【識別番号】000155469
【氏名又は名称】株式会社野村総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】萩村 卓也
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049BB02
5L049BB07
5L049BB08
(57)【要約】
【課題】OMO(Online Merges with Offline)を活用した顧客体験の向上を支援する技術を提供する。
【解決手段】サーバ20は、通信網を介して送受信されたユーザに関連するオンライン情報を記憶する。サーバ20は、イベント会場に設置されたセンサ(例えば3Dライダー14)から出力されたデータに基づいて、イベント会場に来場したユーザの行動を検出する。サーバ20は、イベント会場に来場したユーザの行動に起因して得られたデータに基づいて、イベント会場に来場したユーザと、オンライン情報が記憶されたユーザとを関連付ける。サーバ20は、イベント会場に来場したユーザの行動情報とオンライン情報の少なくとも一方が所定の条件を満たす場合に、当該ユーザを対象とした所定の処理を実行する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信網を介して送受信されたユーザに関連するオンライン情報を記憶する記憶部と、
所定の現実空間に設置されたセンサから出力されたデータに基づいて、前記現実空間に来場したユーザの行動を検出する行動検出部と、
前記現実空間に来場したユーザの行動に起因して得られたデータに基づいて、前記現実空間に来場したユーザと、前記オンライン情報が記憶されたユーザとを関連付ける紐付け部と、
前記現実空間に来場したユーザの行動情報とオンライン情報の少なくとも一方が所定の条件を満たす場合に、当該ユーザを対象とした所定の処理を実行するユーザ処理部と、
を備える情報処理システム。
【請求項2】
前記オンライン情報は、前記現実空間でのユーザの認証に用いられるデータを含み、
前記紐付け部は、前記現実空間でのユーザの認証結果に基づいて、前記現実空間に来場したユーザと、前記オンライン情報が記憶されたユーザとを関連付ける、
請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項3】
前記紐付け部は、前記現実空間に来場したユーザの行動に起因して前記現実空間に設置された装置から所定のデータが受け付けられた場合にそのデータに基づくオンライン情報を生成し、生成したオンライン情報と前記現実空間に来場したユーザの行動情報とを関連付ける、
請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項4】
前記ユーザ処理部は、複数種類の販売促進用データのうち前記現実空間でのユーザの行動に適合する販売促進用データを、当該ユーザに関連付けられたオンライン情報に基づいて当該ユーザの端末へ送信する、
請求項1から3のいずれかに記載の情報処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、データ処理技術に関し、特に情報処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近距離無線通信を用いてユーザの導線を把握し、ユーザの行動履歴に基づいて、ユーザの嗜好を推定する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現在、商品やサービスの提供者と顧客とのオンライン接点とオフライン接点を融合させてより良い顧客体験を提供するマーケティング概念であるOMO(Online Merges with Offline)が提唱されている。今後、OMOを活用した顧客体験の向上がビジネスにおいて重要になると考えられる。
【0005】
本開示は、このような状況に鑑みなされたものであり、1つの目的は、OMOを活用した顧客体験の向上を支援する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示のある態様の情報処理システムは、通信網を介して送受信されたユーザに関連するオンライン情報を記憶する記憶部と、所定の現実空間に設置されたセンサから出力されたデータに基づいて、現実空間に来場したユーザの行動を検出する行動検出部と、現実空間に来場したユーザの行動に起因して得られたデータに基づいて、現実空間に来場したユーザと、オンライン情報が記憶されたユーザとを関連付ける紐付け部と、現実空間に来場したユーザの行動情報とオンライン情報の少なくとも一方が所定の条件を満たす場合に、当該ユーザを対象とした所定の処理を実行するユーザ処理部とを備える。
【0007】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本開示の表現を、装置、方法、コンピュータプログラム、コンピュータプログラムを格納した記録媒体などの間で変換したものもまた、本開示の態様として有効である。
【発明の効果】
【0008】
本開示の技術によれば、OMOを活用した顧客体験の向上を支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施例におけるOMOシステムの構成を示す図である。
【
図3】
図1のサーバの機能ブロックを示すブロック図である。
【
図4】第1実施例のOMOシステムにおけるユーザの動作とサーバの動作を示す図である。
【
図6】第2実施例のOMOシステムにおけるユーザの動作とサーバの動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示における装置または方法の主体は、コンピュータを備えている。このコンピュータがコンピュータプログラムを実行することによって、本開示における装置または方法の主体の機能が実現される。コンピュータは、コンピュータプログラムにしたがって動作するプロセッサを主なハードウェア構成として備える。プロセッサは、コンピュータプログラムを実行することによって機能を実現することができれば、その種類は問わない。プロセッサは、半導体集積回路(IC、LSI等)を含む1つまたは複数の電子回路で構成される。コンピュータプログラムは、コンピュータが読み取り可能なROM、光ディスク、ハードディスクドライブなどの非一時的な記録媒体に記録される。コンピュータプログラムは、記録媒体に予め格納されていてもよいし、インターネット等を含む広域通信網を介して記録媒体に供給されてもよい。
【0011】
実施例では、OMO(Online Merges with Offline)を活用した顧客体験の向上を支援する情報処理システムであるOMOシステムを提案する。OMOシステムは、ユーザのオンラインのIDとオフラインのIDとを関連付けることにより、ユーザに関するオンライン行動の情報とオフライン行動の情報とを関連付ける。OMOシステムは、関連付けたオンライン行動とオフライン行動に基づいて、ユーザへのアクションを実行する。
【0012】
オンライン行動は、コンピュータネットワークを介したユーザの行動と言え、例えば、イベント会場への来場予約や、EC(Electronic Commerce)サイト閲覧、オンラインでの資料請求やキャンペーンへの参加等を含む。オフライン行動は、現実空間でのユーザの行動と言え、例えば、イベント会場における行動・移動や、顔認証、体温計測等を含む。
【0013】
以下の第1実施例では、所定の現実空間としてのイベント会場に来場したユーザの顔認証(例えば事前登録データとの照合)の結果に基づいて、イベント会場に来場したユーザとオンラインのユーザとを関連付けるパターンを説明する。第2実施例では、所定の現実空間としての店舗を訪問したユーザの行動(具体的には二次元コードの提示によるキャンペーンへの参加)に基づいて、店舗を訪れたユーザとオンラインのユーザとを関連付けるパターンを説明する。
【0014】
<第1実施例>
図1は、第1実施例におけるOMOシステム10の構成を示す。OMOシステム10は、展示会が開催されるイベント会場に設置された顔認証装置12、3Dライダー14、二次元コードリーダ16、デジタルサイネージ18と、データセンタ等に設置されたサーバ20とを備える。サーバ20は、LAN、WAN、インターネット等を含む通信網を介して、イベント会場の各装置と通信する。
【0015】
顔認証装置12は、人の顔を撮像する撮像部を備え、被撮像者の顔の撮像データに基づいて被撮像者を認証する。3Dライダー14は、3D距離センサ装置とも言え、TOF(Time of Flight)センサを備える。3Dライダー14は、イベント会場での各人の位置の変化(移動の軌跡とも言え、導線とも言える)を計測する。二次元コードリーダ16は、読取部に提示された二次元コードを解析し、その二次元コードが示すデータをサーバ20へ送信する。デジタルサイネージ18は、サーバ20から提供された情報を表示部に表示する。
【0016】
サーバ20は、OMOのためのデータ処理を実行する情報処理装置である。第1実施例では、サーバ20は、イベント会場に来場する各ユーザのオンライン行動の情報とオフライン行動の情報の両方を管理する。サーバ20の詳細な構成は後述する。
【0017】
ユーザ端末22は、イベント会場に来場するユーザが携帯し、また、そのユーザにより操作されるモバイル端末である。例えば、ユーザ端末22は、スマートフォンであってもよく、タブレット端末であってもよい。ユーザ端末22は、インターネット等のネットワークを介してサーバ20と通信する。
【0018】
図2は、イベント会場の例を示す。イベント会場には、展示エリアA、展示エリアB、展示エリアC、商談エリアが設けられる。顔認証装置12は、イベント会場の入り口に設置される。ユーザは、イベント会場に入る際に、顔認証装置12での顔認証が求められる。また、イベント会場には複数の3Dライダー14が設置され、イベント会場の入口から出口までのユーザの導線が計測される。
【0019】
図3は、
図1のサーバ20の機能ブロックを示すブロック図である。本明細書のブロック図で示す各ブロックは、ハードウェア的には、コンピュータのプロセッサ(CPU等)、メモリをはじめとする素子や電子回路、機械装置で実現でき、ソフトウェア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0020】
サーバ20は、制御部30、記憶部32、通信部34を備える。制御部30は、各種データ処理を実行する。記憶部32は、制御部30により参照または更新されるデータを記憶する。通信部34は、所定の通信プロトコルにしたがって外部装置と通信する。例えば、制御部30は、通信部34を介して、イベント会場の各装置およびユーザ端末22とデータを送受信する。
【0021】
記憶部32は、オンライン情報記憶部36、フロア情報記憶部38、オフライン情報記憶部40、IDマッピングテーブル42を含む。
【0022】
オンライン情報記憶部36は、通信網を介して送受信された複数のユーザのそれぞれに関連するオンライン情報を記憶する。オンライン情報は、上記のオンライン行動に関する情報を含み、また、イベント会場に来場するユーザが事前登録したデータを含む。具体的には、オンライン情報は、デジタルID、顔ID、メールアドレス、顔画像、インスタントメッセージアプリケーションのID、ユーザによる資料請求に関するデータ、ユーザが参加したキャンペーンに関するデータ等を含み得る。デジタルIDは、オンラインでのユーザのIDとも言え、実施例ではユーザのメールアドレスが設定されることとする。
【0023】
フロア情報記憶部38は、ユーザが来場する所定の現実空間(第1実施例ではイベント会場)のフロアレイアウトに関する情報(以下「フロア情報」と呼ぶ。)を記憶する。フロア情報は、イベント会場内に設けられた複数のエリア(展示エリアA、展示エリアB等)と、イベント会場内の位置(第1実施例では座標データ)との対応関係を含む。
【0024】
オフライン情報記憶部40は、上記のオフライン行動に関する情報であるオフライン情報を記憶する。第1実施例のオフライン情報は、イベント会場に来場した複数のユーザそれぞれのイベント会場での行動を示す情報を含み、具体的には、イベント会場での各ユーザの導線データを含む。導線データは、各ユーザがイベント会場に入場してから退場するまでの、各ユーザの時系列での位置の変化を示すデータである。各ユーザの導線データは、TOFID(導線のID)、時系列での複数の座標データ(タイムスタンプと座標データの組)を含む。
【0025】
IDマッピングテーブル42は、同一のユーザに関するオンラインのIDとオフラインのIDとの対応関係を記憶する。例えば、IDマッピングテーブル42は、或るユーザのオンラインのIDとしてのデジタルIDと、当該ユーザのオフラインのIDとしてのTOFIDとを対応付けて記憶する。
【0026】
制御部30は、オンライン情報受付部44、行動検出部46、顔認証結果取得部48、紐付け部50、ユーザ処理部52を含む。これら複数の機能ブロックの機能が実装されたコンピュータプログラムがサーバ20のストレージ(記憶部32等)にインストールされてもよい。制御部30は、サーバ20のプロセッサ(CPU等)により実現されてもよい。サーバ20のプロセッサは、上記コンピュータプログラムをメインメモリに読み出して実行することにより、これら複数の機能ブロックの機能を発揮してもよい。
図3に示す複数の機能ブロックの機能は、1台のコンピュータに実装されてもよく、複数台のコンピュータに分散して実装されてもよい。
【0027】
オンライン情報受付部44は、通信網を介して送受信されたユーザに関するオンライン情報を受け付け、受け付けたオンライン情報をオンライン情報記憶部36に格納する。
【0028】
行動検出部46は、イベント会場に設置されたセンサ(第1実施例では3Dライダー14)から出力されたデータに基づいて、イベント会場に来場した各ユーザの行動を検出する。第1実施例では、行動検出部46は、イベント会場に来場した各ユーザの導線データを生成し、各ユーザの導線データをオフライン情報記憶部40に格納する。
【0029】
顔認証結果取得部48は、イベント会場に設置された顔認証装置12による顔認証の結果を示すデータを取得する。
【0030】
紐付け部50は、イベント会場に来場したユーザの行動に起因して得られたデータに基づいて、イベント会場に来場したユーザと、オンライン情報記憶部36にオンライン情報が記憶されたユーザとを関連付ける。第1実施例での上記ユーザの行動は、顔認証のための行動であり、例えば、顔認証装置12に自身の顔を撮像させる行動である。第1実施例では、紐付け部50は、或るユーザの顔認証に成功した旨のデータ(当該ユーザの顔IDを含む)が顔認証装置12から受け付けられた場合に、その顔IDに対応付けられた当該ユーザのデジタルIDと、顔認証装置12の位置に存在するユーザのTOFIDとを関連付けてIDマッピングテーブル42に格納する。
【0031】
ユーザ処理部52は、イベント会場に来場したユーザ(ここでは「対象ユーザ」と呼ぶ。)について、イベント会場での対象ユーザの行動情報と、対象ユーザのオンライン情報の少なくとも一方が所定の条件を満たす場合に、対象ユーザに対する所定の処理を実行する。イベント会場での対象ユーザの行動情報は、オフライン情報記憶部40に記憶された対象ユーザの導線データを含む。対象ユーザのオンライン情報は、オンライン情報記憶部36に記憶された対象ユーザのオンライン情報を含む。
【0032】
ユーザ処理部52は、対象ユーザに対する処理として、対象ユーザが興味を示した商品やサービスに関する紹介情報や販売促進情報を対象ユーザのユーザ端末22へ送信してもよい。また、ユーザ処理部52は、行動検出部46により対象ユーザの位置がイベント会場のデジタルサイネージ18の近傍であることが検知された場合に、上記の紹介情報や販売促進情報をデジタルサイネージ18に送信して表示させてもよい。これにより、ユーザ体験の向上を支援する。
【0033】
以上の構成によるOMOシステム10の動作を説明する。
図4は、第1実施例のOMOシステム10におけるユーザの動作とサーバ20の動作を示す。ユーザは、展示会が行われるイベント会場への来場前日に、ユーザ端末22を用いて展示会のウェブサイトにアクセスして来場登録を行う。この例では、ユーザ端末22は、ユーザの操作に応じて、事前登録データとして、ユーザのメールアドレスと顔画像をサーバ20へ送信する(S10)。後述するように、顔画像は、イベント会場でのユーザの認証に用いられる。
【0034】
サーバ20のオンライン情報受付部44は、ユーザ端末22から送信された事前登録データを受け付け、ユーザのデジタルIDと顔IDを採番する。第1実施例のデジタルIDは、ユーザのメールアドレスが設定される。オンライン情報受付部44は、ユーザのデジタルID、顔ID、顔画像を対応付けたオンライン情報をオンライン情報記憶部36に格納する(S11)。また、サーバ20の送信部(不図示)は、ユーザの顔IDと顔画像の組を顔認証装置12へ送信して記憶させる。
【0035】
翌日、ユーザは、イベント会場に入場する。ユーザは、イベント会場の入口に設置された顔認証装置12に自身の顔を撮像させることでチェックインを行う(S12)。イベント会場の3Dライダー14は、イベント会場にユーザが入場したことを検知し、新たなTOFID(ここでは「BBBB」とする)をユーザに割り当てる。3Dライダー14は、ユーザ(TOFID=BBBB)の位置の計測を開始し、計測したデータ(タイムスタンプを含む)をサーバ20へ逐次送信する。サーバ20の行動検出部46は、3Dライダー14から送信された計測データに基づいて、イベント会場でのユーザ(TOFID=BBBB)の導線を検知し、ユーザの導線データをオフライン情報記憶部40に格納する。
【0036】
イベント会場の顔認証装置12は、ユーザの顔を撮像してユーザの顔画像を取得し、また、ユーザの体温を計測する。顔認証装置12は、撮像部により撮像された来場ユーザの顔画像と、サーバ20から事前に提供された事前登録ユーザの顔画像とを照合し、両者の特徴が整合する場合に来場ユーザの認証に成功したと判定する。顔認証装置12は、タイムスタンプ、認証に成功したユーザの顔IDおよび体温の組をサーバ20に通知する。
【0037】
サーバ20の顔認証結果取得部48は、顔認証装置12から送信された、イベント会場でのユーザの認証結果(第1実施例ではタイムスタンプ、認証に成功した来場者の顔IDおよび体温のデータ)を取得する。顔認証結果取得部48は、タイムスタンプ、認証に成功した来場者の顔IDおよび体温のデータをオフライン情報記憶部40に格納する。
【0038】
サーバ20の紐付け部50は、イベント会場でのユーザの認証結果に基づいて、イベント空間に来場したユーザと、オンライン情報が記憶されたユーザとを関連付ける。
図4の例では、紐付け部50は、認証に成功したユーザの顔IDと、予めその顔IDに対応付けられたデジタルIDと、顔認証装置12の位置を示す導線のID(TOFID=BBBB)とをタイムスタンプをもとに関連付け、関連付けたそれらのIDをIDマッピングテーブル42に格納する(S13)。例えば、紐付け部50は、認証成功を示す認証結果のタイムスタンプの値と、顔認証装置12の位置を示す導線データのタイムスタンプの値との差が予め定められた閾値未満(例えば5秒未満)である場合に、認証結果の顔ID(およびそれに紐付くデジタルID)と、導線データのTOFIDとを関連付けてもよい。この時点で、イベント会場に来場したユーザと、オンライン情報が記憶されたユーザとが関連付くことになる。
【0039】
顔認証を済ませたユーザは、最初に展示エリアAに立ち寄る(S14)。サーバ20の行動検出部46は、3Dライダー14の計測データと、フロア情報とに基づいて、TOFID=BBBBのユーザが、展示エリアAに滞在したことを示す導線データをオフライン情報記憶部40に格納する(S15)。例えば、行動検出部46は、3Dライダー14の計測データが示すTOFID=BBBBのユーザの位置(座標値)が、フロア情報が示す展示エリアAの範囲に該当し、展示エリアAの範囲に所定時間以上(例えば2分以上)留まる場合に、行動検出部46は、TOFID=BBBBのユーザが、展示エリアAに滞在したと判定してもよい。
【0040】
次にユーザは、二次元コードリーダ16の場所へ移動する。ユーザは、ユーザ端末22に二次元コードを表示させ、その二次元コードを二次元コードリーダ16にかざして、所望の商品またはサービスの資料を請求する(S16)。サーバ20の行動検出部46は、3Dライダー14の計測データと、フロア情報とに基づいて、TOFID=BBBBのユーザが二次元コードリーダ16の場所に滞在したことを示す導線データをオフライン情報記憶部40に格納する(S17)。
【0041】
ユーザ端末22に表示される二次元コードは、S10の来場登録時にサーバ20から提供された二次元コードであってもよく、ユーザのデジタルIDと資料請求の対象がコード化されたものであってもよい。二次元コードリーダ16は、二次元コードが示すユーザのデジタルIDと、資料請求の対象を示すデータをサーバ20へ送信する。サーバ20のオンライン情報受付部44は、二次元コードリーダ16からの送信データを受け付け、ユーザのデジタルIDに対応付けて資料請求に関するデータ(例えば資料請求ID=1234)をオンライン情報記憶部36に格納する(S18)。
【0042】
次にユーザは、展示エリアBには興味を示さず展示エリアBを素通りする(S19)。サーバ20の行動検出部46は、3Dライダー14の計測データと、フロア情報とに基づいて、TOFID=BBBBのユーザが展示エリアBを通過したことを示す導線データをオフライン情報記憶部40に格納する(S20)。例えば、行動検出部46は、3Dライダー14の計測データが示すTOFID=BBBBのユーザの位置(座標値)が、フロア情報が示す展示エリアBの範囲に留まる時間が所定時間未満(例えば2分未満)である場合に、TOFID=BBBBのユーザが展示エリアBを通過したと判定してもよい。
【0043】
次にユーザは、ユーザ端末22を用いて展示会のウェブサイトにアクセスし、商談エリアの混雑状況を確認する(S21)。サーバ20のオンライン情報受付部44は、ユーザのデジタルIDに紐付けて、ユーザが混雑状況を確認したことを示す情報をオンライン情報記憶部36に格納する(S22)。
【0044】
次にユーザは、商談エリアにおいて展示会参加企業の担当者との商談を開始する(S23)。サーバ20の行動検出部46は、3Dライダー14の計測データと、フロア情報とに基づいて、TOFID=BBBBのユーザが商談エリアに着席したことを示す導線データをオフライン情報記憶部40に格納する(S24)。
【0045】
商談終了後、ユーザはイベント会場の出口から退場する(S25)。サーバ20の行動検出部46は、3Dライダー14の計測データと、フロア情報とに基づいて、TOFID=BBBBのユーザが出口を通過したことを示す導線データをオフライン情報記憶部40に格納する(S26)。
【0046】
サーバ20のユーザ処理部52は、行動計測に基づく動的オファーとして、ユーザがイベント会場を訪れた当日中に、イベント会場においてユーザが興味を示した製品の案内や、広告、資料を含む電子メールをユーザ端末22へ送信する(S27)。例えば、ユーザ処理部52は、IDマッピングテーブル42においてTOFIDと関連付けられたデジタルID(すなわちイベント会場に来場したユーザのID)を抽出し、そのデジタルIDをキーとするオンライン情報が示す資料請求対象の製品の情報をユーザ端末22へ送信してもよい。
【0047】
また、ユーザ処理部52は、予め記憶された複数種類の販売促進用データのうちイベント空間に来場したユーザのオフライン行動情報(すなわちイベント空間での行動内容)に適合する販売促進用データを、当該ユーザに関連付けられたオンライン情報に基づいて当該ユーザのユーザ端末22へ送信してもよい。例えば、ユーザ処理部52は、TOFID=BBBBで識別されるユーザの導線データを参照して、所定時間以上滞在した展示エリアに展示された製品に関する販売促進用データを、当該ユーザのオンライン情報が示すメールアドレスを用いて当該ユーザのユーザ端末22へ送信してもよい。
【0048】
ユーザは、ユーザ端末22でメーラーを起動し、サーバ20から送信された製品の案内を閲覧する(S28)。サーバ20のオンライン情報受付部44は、ユーザのデジタルIDに関連付けて、メールが開封されたことや、製品情報へのリンクがクリックされたことを示す情報をオンライン情報記憶部36に格納する(S29)。
【0049】
第1実施例のOMOシステム10によると、イベント会場に来場したユーザのオンライン行動の情報とオフライン行動の情報を、イベント会場での顔認証の結果をもとに関連付ける。これにより、ユーザのオンライン行動とオフライン行動の一方または両方に適合する有用な情報をイベント会場を訪れたユーザに提供することができる。
【0050】
<第2実施例>
本開示の第2実施例について、第1実施例と相違する点を中心に説明し、共通する点の説明を省略する。第2実施例の特徴は、第1実施例の特徴および変形例の特徴と任意の組合せが可能であることはもちろんである。第2実施例の構成要素のうち第1実施例の構成要素と同一または対応する構成要素には適宜、同一の符号を付して説明する。
【0051】
第2実施例では、ユーザは店舗を訪れる。第2実施例におけるOMOシステム10は、店舗に設置された3Dライダー14、二次元コードリーダ16、デジタルサイネージ18、検温装置24と、データセンタ等に設置されたサーバ20とを備える。サーバ20は、LAN、WAN、インターネット等を含む通信網を介して、店舗の各装置と通信する。
【0052】
図5は、店舗の例を示す。店舗の出入口には検温装置24が設置される。検温装置24は、人の顔を撮像する機能と、人の体温を計測する機能とを備えるが、顔認証機能を備えない。店舗には、棚A、棚B、棚C、レジが設置された会計エリアが設けられる。
【0053】
第2実施例のサーバ20が備える機能ブロックは、
図3に示した第1実施例におけるサーバ20が備える機能ブロックと同様である。ただし、第2実施例のサーバ20は、顔認証結果取得部48に代えて検温データ取得部(不図示)を備える。
【0054】
サーバ20の紐付け部50は、店舗を訪れたユーザの行動に起因して店舗に設置された装置(第2実施例では二次元コードリーダ16)から所定のデータが受け付けられた場合にそのデータに基づくオンライン情報を生成する。紐付け部50は、生成したオンライン情報と、店舗を訪れたユーザの行動情報(例えば店舗での導線データ)とを関連付ける。サーバ20のユーザ処理部52は、複数種類の販売促進用データのうち店舗を訪れたユーザの行動(例えばオフライン行動)に適合する販売促進用データを、当該ユーザに関連付けられたオンライン情報に基づいて当該ユーザの端末へ送信する。
【0055】
以上の構成によるOMOシステム10の動作を説明する。
図6は、第2実施例のOMOシステム10におけるユーザの動作とサーバ20の動作を示す。ユーザは、店舗に入店し、検温装置24に自身の顔を撮像させる(S40)。検温装置24は、ユーザの顔を撮像して顔画像を取得して顔IDを採番する。それとともに、検温装置24は、ユーザの体温を計測する。検温装置24は、ユーザの顔ID、顔画像、体温の組をサーバ20へ通知する。
【0056】
サーバ20の検温データ取得部は、検温装置24から送信された、店舗での検温結果(第2実施例では入店者の顔ID、顔画像、体温のデータ)を取得する。検温データ取得部は、入店者の顔ID、顔画像、体温のデータをオフライン情報記憶部40に格納する。
【0057】
店舗の3Dライダー14は、店舗にユーザが入店したことを検知し、TOFID(ここでは「BBBB」とする)をユーザに割り当てる。3Dライダー14は、ユーザ(TOFID=BBBB)の位置の計測を開始し、計測したデータをサーバ20へ逐次送信する。サーバ20の行動検出部46は、3Dライダー14から送信された計測データに基づいて、イベント会場でのユーザ(TOFID=BBBB)の導線を検知し、ユーザの導線データをオフライン情報記憶部40に格納する(S41)。
【0058】
検温を済ませたユーザは、棚Aの前を素通りする(S42)。サーバ20の行動検出部46は、3Dライダー14の計測データと、フロア情報とに基づいて、TOFID=BBBBのユーザが、棚Aを通過したことを示す導線データをオフライン情報記憶部40に格納する(S43)。
【0059】
次にユーザは、棚Bの前で2分間滞在して商品を選ぶ(S44)。サーバ20の行動検出部46は、3Dライダー14の計測データと、フロア情報とに基づいて、TOFID=BBBBのユーザが、棚Bに滞在したことを示す導線データをオフライン情報記憶部40に格納する(S45)。
【0060】
次にユーザは、二次元コードリーダ16の場所へ移動する。ユーザは、ユーザ端末22に二次元コードを表示させ、その二次元コードを二次元コードリーダ16にかざしてキャンペーンへの参加を登録する(S46)。サーバ20の行動検出部46は、3Dライダー14の計測データと、フロア情報とに基づいて、TOFID=BBBBのユーザが、二次元コードリーダ16の場所に滞在したことを示す導線データをオフライン情報記憶部40に格納する(S47)。
【0061】
ユーザ端末22に表示される二次元コードは、ユーザ端末22にインストールされたインスタントメッセージアプリケーション(以下「IMApp」とも呼ぶ。)において店舗のECサイトをフレンド登録した際に、店舗のECサイトから特典として提供されたものである。この二次元コードは、ユーザのメールアドレス、IMAppのID(以下「IMID」)、キャンペーンIDがコード化されたものである。
【0062】
二次元コードリーダ16は、二次元コードが示すユーザのメールアドレス、IMID、キャンペーンIDを含むキャンペーン参加データをサーバ20へ送信する。サーバ20の紐付け部50は、キャンペーン参加データを受け付け、ユーザのメールアドレスをユーザのデジタルIDとして設定する。オンライン情報受付部44は、ユーザのデジタルID、IMID、キャンペーンIDを含むオンライン情報をオンライン情報記憶部36に格納する(S48)。
【0063】
また、紐付け部50は、二次元コードリーダ16からキャンペーン参加データを受け付けた際、オフライン情報記憶部40に記憶された導線データ(タイムスタンプおよび座標を含む)を参照して、二次元コードリーダ16の位置に滞在中の導線を識別する。紐付け部50は、二次元コードリーダ16の位置に滞在中の導線のID(ここではTOFID=BBBB)と、ユーザのデジタルIDとを対応付けてIDマッピングテーブル42に格納する。この時点で、店舗に来店したユーザと、オンライン情報が記憶されたユーザとが関連付くことになる。
【0064】
サーバ20のユーザ処理部52は、オンライン情報受付部44に記憶された導線データに基づいて、ユーザの店内行動を識別する。例えば、ユーザ処理部52は、ユーザの店内行動として、店内での総滞在時間や、各棚での滞在時間、導線の形状の特徴等を識別してもよい。ユーザ処理部52は、ユーザの店内行動が所定の条件を満たす場合、リアルタイムオファーとして、即時に、ユーザの店内行動に適合する販売促進用メッセージ(第2実施例ではインスタントメッセージ)をユーザのユーザ端末22へ送信する。
【0065】
第2実施例では、販売促進用メッセージはインスタントメッセージであり、ユーザ処理部52は、オンライン情報記憶部36に記憶されたユーザのIMIDを用いて、販売促進用メッセージをユーザ端末22のIMAppへ送信する。ユーザ端末22のIMAppは、サーバ20から送信された販売促進用メッセージを表示部に表示させる。
【0066】
図7は、販売促進用メッセージの例を示す。
図7Aに示すメッセージ60は、ユーザが店内に20分以上滞在したことを条件としてユーザに提供される販売促進用メッセージである。メッセージ60は、欲しい商品があって店舗内を探したが、その商品を見つけられなかったユーザに対して、ECサイトを紹介する内容である。
【0067】
図7Bに示すメッセージ62は、ユーザが棚A(ABCショッピングの商品が陳列された棚)の前に30秒以上滞在したことを条件としてユーザに提供される販売促進用メッセージである。メッセージ62は、ABCショッピングの商品に興味を持つユーザに対して、棚Aに陳列された商品以外の取り寄せも可能であることを示す内容である。
【0068】
図7Cに示すメッセージ64は、ユーザが棚B(バッグやキャリーケースが陳列された棚)の前に20秒以上滞在したことを条件としてユーザに提供される販売促進用メッセージである。メッセージ64は、バッグまたはキャリーケースを店舗で購入するか否か思案するユーザに対して、割引クーポンを提供して購買を促す内容である。
【0069】
図6の例では、ユーザが棚B(バッグやキャリーケースが陳列された棚)の前に20秒以上滞在したこととする。ユーザ処理部52は、
図7Cに示した割引クーポンを含む販売促進用メッセージをユーザ端末22へ送信する(S49)。ユーザは、ユーザ端末22においてIMAppを起動して割引クーポンを受信する(S50)。サーバ20のオンライン情報受付部44は、ユーザのデジタルIDおよびIMIDに関連付けて、ユーザが販売促進用メッセージを読み、クーポンを取得した旨を示す情報をオンライン情報記憶部36に格納する(S51)。
【0070】
ユーザは、棚Bから所望の商品を選択し、配信された割引クーポンを用いて商品を購入する。そして、ユーザは会計エリアを通過する(S52)。サーバ20の行動検出部46は、3Dライダー14の計測データと、フロア情報とに基づいて、TOFID=BBBBのユーザが会計エリアを通過したことを示す導線データをオフライン情報記憶部40に格納する(S53)。
【0071】
商品購入後、ユーザは店舗を退店する(S54)。サーバ20の行動検出部46は、3Dライダー14の計測データと、フロア情報とに基づいて、TOFID=BBBBのユーザが店舗の出入口を通過したことを示す導線データをオフライン情報記憶部40に格納する(S55)。
【0072】
図6には不図示だが、店舗内または店舗外でユーザがユーザ端末22を用いてECサイトを閲覧した場合、サーバ20のオンライン情報受付部44は、ユーザのデジタルIDに関連付けてユーザが閲覧したウェブページや商品の情報をオンライン情報記憶部36に格納する。このように、OMOシステム10では、ユーザのオンラインの行動もリアルタイムに記録、蓄積される。
【0073】
サーバ20のユーザ処理部52は、行動計測に基づく動的オファーとして、ユーザのオンライン情報とオフライン情報に基づいて、ユーザのオンライン行動とオフライン行動に適合する商品やECサイトをレコメンドする内容の電子メールをユーザのユーザ端末22へ送信する(S56)。例えば、ユーザ処理部52は、ECサイトでユーザが閲覧した商品に関する情報、および/または、店舗でユーザが所定時間以上滞在した棚に陳列された商品に関する情報を含む電子メールを送信してもよい。
【0074】
ユーザは、電子メールを閲覧し、ECサイトへアクセスする(S57)。サーバ20のオンライン情報受付部44は、ユーザのデジタルIDに関連付けて、メールが開封されたこと、および、ECサイトへのリンクがクリックされ、ECサイトにアクセスされたことを示すオンライン情報をオンライン情報記憶部36に格納する(S58、S59)。
【0075】
第2実施例のOMOシステム10によると、店舗を訪れたユーザのオンライン行動の情報とオフライン行動の情報を、キャンペーンに参加するための店舗でのユーザの行動をもとに関連付ける。これにより、ユーザのオンライン行動とオフライン行動の一方または両方に適合する有用な情報を店舗を訪れたユーザに提供することができる。
【0076】
以上、本開示を第1実施例、第2実施例をもとに説明した。各実施例に記載の内容は例示であり、各実施例の構成要素や処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本開示の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0077】
上記実施例では、イベント会場や店舗を訪れたユーザに対するリアルタイムオファーや動的オファーをユーザ端末22へ送信した。変形例として、サーバ20のユーザ処理部52は、導線データに基づいてデジタルサイネージ18の前にユーザが存在すると判定される場合に、当該ユーザに対するオファーの内容をデジタルサイネージ18に表示させてもよい。
【0078】
別の変形例として、サーバ20のユーザ処理部52は、ユーザのオンライン情報とオフライン情報の一方または両方に基づいて、ユーザへの応対を指示する情報をイベント会場または店舗のスタッフの端末へ送信してもよい。例えば、ユーザのオンライン情報に記録されたECサイトでの購買額が所定額以上である場合、ユーザ処理部52は、ユーザのオフライン情報(導線データ)に記録されたユーザの現在位置と、当該ユーザに対して特別な待遇を提供するよう指示する情報とを店舗スタッフの端末へ送信してもよい。
【0079】
上記実施例では、3Dライダー14を用いて現実空間内でのユーザの行動(導線等)を取得したが、変形例として、AIカメラやビーコンを用いて現実空間内でのユーザの行動(導線等)を取得してもよい。
【0080】
上述した実施例および変形例の任意の組み合わせもまた本開示の実施の形態として有用である。組み合わせによって生じる新たな実施の形態は、組み合わされる実施例および変形例それぞれの効果をあわせもつ。また、請求項に記載の各構成要件が果たすべき機能は、実施例および変形例において示された各構成要素の単体もしくはそれらの連携によって実現されることも当業者には理解されるところである。
【符号の説明】
【0081】
10 OMOシステム、 20 サーバ、 22 ユーザ端末、 36 オンライン情報記憶部、 40 オフライン情報記憶部、 42 IDマッピングテーブル、 46 行動検出部、 50 紐付け部、 52 ユーザ処理部。